08/04/03 03:04:20 jm3ZvQyr
「でも……嬉しいけど。複雑だけど……困っちゃうなあ、それは……困る……」
その態度に、今度はサヤがほえ?と言う顔を見せ、どうして、と問うと。
「だってあの時は……そんなふうに考えなかったし……」
それに、とキリノが続け、サヤがふんふん、と頷くと。
「あたしもう、好きな人いるしねー」
っは、と、驚愕とも感嘆とも快哉とも付かない歓声をあげるサヤ。
よく見ると……キリノの視線の先には―いつ拵えたのかも分からないが―枕元に並ぶ無数のコジロー人形が、どっさりと並べられている。
(にひゃ、256…?)
その一番端の人形に付けられたフダには、コジロー人形Mark256、と銘打たれており―否応無しに、キリノのこの半年間がどんなものであったか、想像させられた。
それをうっとり、という視線で眺めるキリノにはいはい、と嘆息を漏らしながらも。
「……あんた、こないだの一件以来、随分と感情表現がストレートになったわねー」
「ええー、そうかなあ?」
苦笑混じりにサヤがそう告げると、やや不思議そうにはにかむキリノ。
「いやいや、いいコトなんだよ、きっと」
そうとだけ告げると、座布団から立ち上がり、大きく伸びをするサヤ。
「…どっちにしても!あと3ヶ月かぁ、なんて思ってたけど……」
「うん!これから楽しくなりそうだね、剣道部!」
思い返せば、この半年間、今キリノの部屋でこんな事を話しているなんて想像もできなかった、サヤ。
完全に沈んでいた自分を恥じると共に、新たな心の強さを、確かな拠り所を手に入れた、キリノ。
二人は、身体じゅうで実感していた。
止まっていた時間が、ようやく動き出したのだと。
[終]
どうでもいいけど、ここまでアニメだと5分くらいですむ内容ですね;
42さんとか某所のユーウラさんみたいな、流れるように文章を綴れる技術が自分にも欲しいよ。