涼宮ハルヒ【いじめSOS団】第八弾at ANICHARA2
涼宮ハルヒ【いじめSOS団】第八弾 - 暇つぶし2ch163:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/22 20:45:14 xyQA0oPj
 その言葉を聞いた朝倉は、満面の笑顔を俺に向けこう言った。
「ありがとう。キョンくん」
 この時からかもしれない、俺の心にある変化が起きたのは。

 俺は正直に悩みを打ち明けた。大体はSOS団というかハルヒへの不満。その他は特に語るような事もない下らない悩み
ばかり。というか、ハルヒへの不満に比べたら、他のことなんか雛鳥のように可愛い不満ばかりだからな。まあ、その不満
はここでは自粛させて貰う。好きに想像してくれ。
 朝倉は俺の悩みを真摯に聞いてくれた。今なら朝倉に対する愚行の数々を詫びる代わりに刺されたっていい。
 朝倉と会話する中で、俺は一つの答えを導き出した。
 SOS団との縁を断ち切ろう、と。
 世界の破滅なんか知るか。大体俺は、古泉が以前言ってたように、普通の高校生であり人間だ。朝比奈さんや長門や古泉
のような特殊な人間ならまだわかる。だが、俺はあくまでただの人間、そう普遍的な凡人なんだ。なのに、どうして世界の
崩壊を防ぐなんて重たい指命を背負いこまされねばならんのだ。それも強制的に、だ。こんな理不尽な事があってたまるか。
今ならまだ引き返せるはずさ。俺はまだきっと片足首までを底無し沼に沈めたぐらいに過ぎないハズだ。いや、もっとかも
しれない…。だが、まだ助かる。てか、助からなきゃ困る。助かるさ。きっと。俺だってそこらにいる高校生みたい自由に
暮らしたいし、自由に生きたいんだよ。この支配から卒業したいんだ。
 ただそれだけなんだ。
「ねぇ、キョンくん。キョンくんってば…」
「あ、わりぃ朝倉、なんだ?」
「あのね。わたし、明日から学校に戻ろうと思うの。だから、よかったら明日も話してくれない?」
「ああ、もちろんだよ」
 その返事を聞いた朝倉は小指を出し、
「じゃあ、ちゃんと約束。指きりして?」
「わかった」
 俺もすかさず小指を出し、朝倉の小指を俺の小指に絡めた。
 この時、俺の心に恐怖はまったく無かった。あるのは安堵感、ただそれだけだった。

 …
 ……
 ………

 とまあこんな感じだ。笑いたいなら笑ってくれ。
「キョンくん。じゃあ、帰ろっか」
 それもそうだな。今日もいろいろと疲れたし、それにあいつらともあまり会いたい気分じゃないからな。あいつらが活動
を終える前にさっさと学校をふけるとするか。

 しかし、今日は大変だったな。さっきのSOS団の件はもちろんだが、朝倉が戻ってきた時のハルヒときたら「これは事
件だわ。今日の放課後は会議よ!」とか言って張り切りやがって。まあ結局俺は会議などには参加せずに、こうやって朝倉
と肩を並べて帰っているのだが、今頃あいつらはハルヒの下らん戯れ事に付き合わされているんだろうな。つくづく可哀相
だ。まあ、それがあいつらの任務だから別にとやかく言う気は無いが。

 ちょっと小腹が空いた俺は、朝倉を誘ってコンビニに寄ることにした。
 今になって思う。素直に帰っておけばよかったと。
「キョンくん。そんなに食べちゃうと、晩御飯食べられなくなっちゃうよ?」
 ウチの親が妹へ口癖のように言ってるような事を言う奴である。
 カレーパンとソーセージサンドぐらいじゃ、俺の腹の容量は微動だにしないのさ。
「朝倉は何か買わないのか?」
「ううん、わたしはいい」
「悪いな。付き合わせちまって」
 お詫びとしてジュースの一本ぐらい買ってやろうと思ったのだが、今の懐のぬくもりではそれをしてやる事すら困難だ。

164:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/22 20:55:09 h9ZSaYTw
>>155
深刻なシーンのはずなのにww

165:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/22 21:25:17 LDIKgUzc
      +
 +
     ∧_∧  +
  + (。0´∀`)
    (0゚つと )   +
 +  と__)__)

166:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/22 21:37:21 XhGWTXvX
>>163
どうみてもプロの(ry
さーて、次はいつ投下してくれるんだ?教えてもらおうじゃないか

167:SOS団の終焉
08/03/22 22:54:54 uU/6Zibh
やっとエピローグまで終わった。
では最後になります。

168:SOS団の終焉
08/03/22 22:55:31 uU/6Zibh
>>158
少し惜しかったなw

169:SOS団の終焉
08/03/22 22:59:41 uU/6Zibh
【みくる視点】
「うふふ、面白かったあ。こんなに上手くいくとは思わなかったわ。」
その夜、家に帰ってもついつい笑みが出てしまう。
涼宮ハルヒをどん底まで追い詰める作戦は大成功でした。
「それにしても・・・」テーブルに置かれたカチューシャとカツラを見る。
我ながら良く見つけたものね、涼宮にそっくりなカツラなんて。
これをかぶって、禁則事項で涼宮と同じ声にしただけで引っ掛かるなんて、機関も案外抜けてますね♪
原始人の集まりなんてちょろいものw
古泉君もこれで完全に涼宮ハルヒと決別するだろう。古泉君の彼女には気の毒ですが。
あ、でもあの橘って女、以前私を車で誘拐した犯人でしたよね?
ふふふ・・・じゃあ自業自得ですね♪
土手で待ち伏せして涼宮の声で「古泉君の事で相談があるの。」って言ったら
「はい、分かったのです。」なんて間の抜けた返事しちゃって。
バットでフルボッコにした時の「痛いのです!死んじゃうのです!」という悲鳴も爽快だった。
最後に古泉君がいじめた報復と思わせる台詞残したらまんまとはまってくれたし。
けど古泉君も馬鹿ですよね。大人しくガチホモに甘んじていれば良かったのに、
彼女作るからこういう目にあうんですよ・・・。
凶器に使用した金属バットは、翌日映画撮影で行った森林公園の山中に埋めてきました。
機関が警察に依頼することは無いと思うけど念のためです。証拠はみんな隠蔽です♪
この変装セットも早めに焼却処分した方がいいかな。
ともあれ、これで涼宮ハルヒは完全に追い詰めました。私の初恋を台無しにした女・・・
私を今まで散々おもちゃにした女・・・絶対に許さないんだから!
キンコーン 
突然家のチャイムが鳴った。何だろう、こんな時間に?
集金ならこの前払ったばかりだし・・・。
「ひゃーい♪」とりあえず返事してドアを開ける。そこにいたのは・・・
「キョン君?」
そこには傘をさし、暗い表情のキョン君がいた。いつの間にか外は雨になっていた。


170:SOS団の終焉
08/03/22 23:03:15 uU/6Zibh
どうしてキョン君がいるの?彼は私の家は知らないはずなのに・・・。
「あれ~キョン君どうしたんですか?こんな夜遅くに。
1人暮らしの女の子の家に突然来ちゃ駄目ですよ♪」
つとめて冷静を装ってみる。
「朝比奈さん・・・。」キョン君が厳しい顔で詰め寄る。
「全部貴方の仕業だったんですね・・・。」
な、なんでそれを?
「え~、何の話ですかあ?それよりお茶でも飲みませんか?今入れてあげ・・・」
「とぼけないで下さい!長門から全部聞きましたよ!
古泉をハルヒと決別させる目的で橘を襲ったんでしょう。証拠品も見つけましたよ!!」
キョン君が突き出したもの。それは橘京子を殴打したあの金属バット。
嘘、ちゃんと埋めたのに・・・。
「埋めた場所も長門が正確に教えてくれましたよ。動かぬ証拠です。」
あの根暗宇宙人、余計な事をキョン君にたらし込んだな!最初に長門さんを何とかするんだった!
もう誤魔化しはきかない・・・。
「朝比奈さん、貴方は狂っていますよ!ハルヒが朝比奈さんを傷つけたのは悪いです。
けどだからってここまでやるなんて・・・こんな事して何になるっていうんですか!!」
「・・・キョン君が悪いんですよ。そうやっていつも涼宮さんの味方ばっかりするから。」
「朝比奈さん・・・。」
「いっつもキョン君は私が涼宮さんにいじめられてる時、表面上は私に同情しといて、
必ずあの女の言いなりになってきたじゃないですか!」
今まで溜めてきた不満をキョン君に向けて叫びに変える。
「私もうあの女と一緒にSOS団にいりなんて我慢できないの!あいつを抹殺したい!
キョン君は私を助けてくれますよね?」
「・・・・・・。」
「キョン君が仲間になればあの女は孤立して自殺でもしてくれますよ。ね、キョン君。
キョン君は優しいもんね♪私を助けてくれますよね♪」
私はキョン君に抱きつき身体をすりつける。私の胸にいつも欲情してるキョン君ならイチコロ・・・
ドンッ!
信じられない反応。思い切り私は突き飛ばされ壁に叩きつけられる。
いつもの優しいキョン君では無かった。キョン君が私をはっきり拒絶している。
「朝比奈さん。貴方は最低だ。もう貴方には何を言っても無駄みたいですね。
そういう事なら俺も最後の手段に出ます。」そう言うとキョン君は踵を返した。
「ど、どこに行くの!?」
「警察です。朝比奈さんが暴力行為をしたのを全部言います!
このバットは証拠品として提出します。さようなら!」
キョン君は部屋を出て行く。どうして私の邪魔をするの?悪いのはあいつじゃない・・・。
私が狂ってる?狂ってるのはあの女の方なのに・・・。私を敵視するキョン君が涼宮本人に思えてきた。
憎い、憎い、憎い・・・。
私は走り出すと、キョン君の背中に思い切り体当たりした。
不意をつかれてキョン君が倒れ、持っていたバットが足元に転がる。

涼宮ハルヒは私の敵。それを助ける貴方も敵。

気がついたら私は金属バットでキョン君の頭を殴りつけていた。キョン君は一撃で気を失った。
許せない涼宮ハルヒ・・・コロシテヤル!

171:SOS団の終焉
08/03/22 23:05:23 uU/6Zibh
【ハルヒ視点】
みくるちゃんだけでなく古泉君にまで拒絶された。
頭の中は真っ白になって、昼休みからのことは何も記憶に無い。
気がついたら自分の部屋でパソコンの前に座っていた。
私はこの1週間余りで大切な人に裏切られる痛さを嫌というほど味合わされた。
SOS団のマスコットキャラみくるちゃん、何でも私の要望を叶えてくれる副団長の古泉君。
私の大切な仲間が2人も私と決別した。有希は何も言わないけど、
あの娘だって内心では私に不満を溜めてたはずだわ。
私の思い出、ううん、私の存在そのものだったSOS団は今崩壊しようとしている。
元はと言えば私のせいだ。誰も責められない・・・。

昼間、キョンだけは最後まで私をかばってくれてた。
思えばわたしはあいつに一番むちゃくちゃ言ってきた。私はキョンに甘えてきた。
キョンが好きだったのよ。今だから分かる。でも・・・だからこそ今のままじゃいけない。
きっとみくるちゃんと古泉君はこれからも私をいじめる。キョンはきっと1人で私をかばうわ。
集団のいじめを1人で止める人の結末は大体決まっている。
巻き添え・・・。古泉君の昼休みの言葉が浮かぶ。
『これ以上涼宮ハルヒの肩を持つなら、貴方も僕の敵として扱います。』
下手をすればいじめの矛先は私からキョンに移る。それだけは嫌!
私の最愛の人がいじめられるのを見るのは私自身がいじめられるより嫌。
キョンを助けるには・・・私自身がこの世から消えるしかない・・・。
私は今自殺サイトを巡っている。もうこれ以上キョンを巻き込みたくない。
SOS団が消えたら生きてる意味が無い。
もういい。疲れた・・・・・・。外の土砂降りは今の私の心そのもの。


172:SOS団の終焉
08/03/22 23:06:53 uU/6Zibh
突然雨の音を破って携帯が鳴り響いた。携帯を取る。
なぜだろう。私はディスプレイを見る前から誰の電話か直感的に気付いた。
「・・・もしもし。」
「遅いなぁ。さっさと出なよ電波女。」
「みくるちゃん・・・・・・。」その声からはかつての愛らしい響きは消え失せていた。
「あのさあ、話があるんだけど今から会わない?今までの事、全部清算しちゃいんです。」
「いい・・・もう私に関わらないで。」
「へえ、いいんですか?そんなこと言ってキョン君がどうなっても知りませんよ?」
キョンが!?どうして??
「みくるちゃん!キョンに何したの!?」
「さあ・・・来れば分かりますよ。すぐ来てくださいね♪新池で待ってます。」
「分かったわ、今から行く!だからお願い、キョンには手を出さないで!」
「偉そうな口聞いてんじゃねぇよ、さっさと来い電波女!!」そこで電話は切れた。
行きたくない。でもキョンが危ない!
私は両親に気付かれない様にドアを開けると土砂降りの中、傘も持たずに飛び出していった。

173:SOS団の終焉
08/03/22 23:14:36 uU/6Zibh
家から走って5分程の所にある待ち合わせの池。
ここは1年前、SOS団の映画撮影会でロケしたあの池だ。
撮影したのは池にあった桟橋みたいな場所。そこを見ると桟橋の上に1人の傘をさした人影が見える。
あれね、間違い無いわ。私は桟橋に走っていく。
「みくるちゃん!」
「どれだけ待たすのよ?おかげでハイネケン二缶開けちゃったよぉ♪」
みくるちゃんはそう言って、持っていた空缶を池に投げ捨てた。
傘もささずに走ってきた私は身体も服もずぶ濡れになっていた。
「みくるちゃん!キョンは?キョンは何処よ!?」
「そんなに焦らなくても、私の後ろにいるでしょ。」
みくるちゃんが後を指した先、桟橋の先端の広い部分に人が1人横たわっていた。
「キョン!!」
「大丈夫、バットで頭殴ったけど、気を失ってるだけよ。
もっとも、私がちょっと押して池に落とせば死ぬわねフフ・・・。」
「止めて!キョンを助けて!」「それは貴方次第ですよ。」
キョンを人質にして私を呼び寄せたみくるちゃん。用件はもう分かっていた。
「ねえ、この池覚えてるわよね?貴方は映画撮影の時、その場の思いつきだけで私を池に放り込んだわ。
この薄汚い池にね!その時どれだけ私が身体と心に傷をおったかしら。」
そうだったわね。今にして思えば私って本当に酷いことばかりしてた気がする。
「あの映画のロケでどれだけ傷心したか・・・。
それ以外にも、キモいコスプレさせたり、マスコットにされたり、
お前のいいおもちゃにされたわ。SOS団に入ってから私には地獄の毎日だった・・・。」

174:SOS団の終焉
08/03/22 23:15:56 uU/6Zibh
「みくるちゃん・・・謝る、謝るよ・・・。私どうしようもない女だよね。
許してもらえるなんて思ってないわ。だからせめてキョンだけは助けて・・・。
こんな酷いことするなんてみくるちゃんじゃ・・・」
「うるさい!!」みくるちゃんの叫びが雨の中をつんざく。
「そうやっていつもいつも、私をこういうキャラだってお前の思い込みだけで決めつけて!!
そういうとこが一番嫌いなんだよ!!」みくるちゃん・・・。
「お前はいつもそうやって自己中してる癖に、人をおもちゃにしてるくせに、
勉強が出来て運動も出来て行動力があって。私、何にも勝てなかった。
お前みたいな奴に・・・!何でも出来るお前が羨ましかった!
そんな奴にコンプレックス持つ何も出来ない駄目な自分が嫌いだった!
だから自分を変えようと努力したのに・・・やっと好きな男性が出来て、
これでやっと変われると思ったのに・・・。それをまたお前が邪魔して・・・
うっ、うう・・・。」
みくるちゃんの顔が濡れてるのは雨のせいだけじゃ無かった。
「許せない!許せない許せない許せない!!お前さえいなければ!!」
ガンッ!みくるちゃんが傘を足元に叩きつける。
「・・・死んでよ。」そう言って懐から取り出したのはサバイバルナイフ・・・。
「お前が生きてる限り私は不幸なのよ。お前さえ死ねば私は変われるんだ!」
みくるちゃんはナイフを振り上げるとこっちに突進してきた。
「わあああああああああ!!」ドスッ・・・

175:SOS団の終焉
08/03/22 23:17:39 uU/6Zibh
【みくる視点】
自分でも訳が分からなくなって、めちゃくちゃにナイフを振り回す。
激しい雨の中、私と涼宮ハルヒはくっついたまま動かない。
「・・・どうして・・・どうして避けなかったの・・・」
ナイフは彼女の胸に深々と突き刺さっていた。
涼宮ハルヒの服が見る見る赤く染め、ナイフを伝って私の手も染めた。
「お前なら、簡単に避けられたはずなのに・・・。」
「・・・かもね・・・。でも、もう終わりにしたかった・・・くっ」
胸を押さえてその場に膝をつく。
「み、みくるちゃんは・・・私と・・・一緒、だったんだよ・・・。」
な、何を分からない事を?「どうして私がお前と?」
「私は・・・みくるちゃんが羨ましかったの・・・。みんなから優しくされて・・・
心配してもらって・・・周りから変人扱いばかり・・・されてた・・・
私には・・・みくるちゃんが羨ましかった。」
そんな・・・涼宮さん。
「キョンもそう。私には文句ばかりの癖に・・・みくるちゃんにだけ優しくって・・・
私は悔しかった・・・。」
「涼宮・・・さん。」
「アハハ・・・久しぶりに・・・普通に呼んでくれたね・・・。嬉しい・・・・・・。
私・・・楽しかったよ・・・高校に入って最高の仲間に会えて・・・。」
そう言うと涼宮さんは力を失い倒れました。
「もう止めて!涼宮さん死んじゃいます!」
「いいの・・・これ以上私の思うままに生きてても・・・みんなに迷惑が・・・。
痛いよ・・・苦しいよ。でも・・・みくるちゃんも苦しんでたもんね・・・。
最後のお願い・・・。私が死んでも・・・それは全て受け止めて、乗り越えて・・・!
そうすれば・・・みくるちゃんは変われる・・・。誰よりも優しい人に・・・。」
「分かったから!分かりましたから!死なないで下さい、涼宮さん!!」
息も途切れ途切れ・・・もう喋らないで!
「みくるちゃん・・・自信を持って・・・。みくるちゃんは・・・
本当は誰よりも・・・強くて優しい娘・・・・・・。」
・・・・・・。嘘・・・でしょ?
「涼宮さん!目を開けて!死なないで下さい!!」
けれど涼宮さんはもう答えなかった・・・。
「涼宮さん!涼宮さん!」
降りしきる雨の中、こんなに呼んでるのに・・・私のそばにいるのに・・・。
「涼宮さん!いやあああああああああああ!!」完


176:SOS団の終焉
08/03/22 23:20:21 uU/6Zibh
エンディング 歌詞が最後のハルヒとみくるに一番合ってたので。
URLリンク(www.youtube.com)
後の画像は無視で・・・。

177:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/22 23:22:33 legLL7E/
・・・なかなかなEND・・・なのか?
結構楽しめました

178:SOS団の終焉
08/03/22 23:22:56 uU/6Zibh
【エピローグ 長門視点】
もうすぐ年越しと呼ばれる時期になる。涼宮ハルヒが死んで1ヶ月が経つ。
彼女が刺された時、私はマンションの自室で事態を全て把握していた。何も出来ずに。
その時、私は初めて涙と言うものを流した。
偽りの生命なはずの私に悲しみという感情があったのか・・・。
私は最後まで何1つ手出しすることを許可されなかった。
涼宮ハルヒの観察という任務をこれほど邪魔に感じたことはない。
そして、そうまでして涼宮ハルヒの情報爆発による進化の過程のヒントを求めていた
情報統合思念体の期待と裏腹に、涼宮ハルヒが死んでも世界は何も変化が起こらなかった。
4年前に観測されたあの情報爆発は一体何だったのか?
回答を見出せないまま失望した情報統合思念体は、観測価値を失った地球を去っていった。
そのため地球に駐在していたインターフェイスも皆消去され情報生命体に戻った。
私も他のインターフェイス同様に消去される予定だった。

しかし私はあえてそれを拒否した。
この身体のまま地球に残ると申請し、条件付きで残ることが許された。


179:SOS団の終焉
08/03/22 23:24:31 uU/6Zibh
他の元SOS団員のその後にも触れておく。
朝比奈みくるはあの後警察署に行き、全てを自首した。現在も服役中。
TPDDを使用すればすぐに未来に逃げられるはずだが、彼女はあえて刑期を終えるまで服役するそうだ。
未来に帰れば更に命令違反の重罪で厳罰が下るだろうが、彼女はそれも全て受ける覚悟でいる。
あの朝比奈みくるの異時間同位体は全ての罰を乗り越えた姿なのだろう。

古泉一樹は事件の数日後に転校した。橘京子闇打ち事件は涼宮ハルヒの仕業では無かった。
更に謝るべき相手の涼宮ハルヒはこの世にいない。
そうした事実に古泉一樹の精神は限界に達したのだと思われる。
誰にも告げずにこの街を去っていった。もう2度と私達の前に姿を見せることは無いだろう。

こうして涼宮ハルヒの作り上げたSOS団は涼宮ハルヒの死によって終焉を迎えた。
『宇宙人未来人超能力者と遊びたい』涼宮ハルヒの願望が具現化されたSOS団。
しかし固いと思われた絆はあっけなく崩壊した。私達の友情は危ういバランスの上にあったのだ。
ふとしたきっかけで、すぐに崩れ去ってしまう・・・。
けれど1つだけまだ残された絆がある。一見最も薄そうでいて最も厚かった絆が・・・。


180:SOS団の終焉
08/03/22 23:26:31 uU/6Zibh
昼休み、私は今学校の中庭にいる。中庭にある木の下。そこに今日も彼はいた。
「・・・なんだ長門か。・・・いつ以来だお前の顔見るの?」「139時間ぶり。」
「お前の説明は相変わらず分かり辛いな・・・。」興味無さそうにそっぽを向く彼。
涼宮ハルヒの死以降、彼は変わってしまった。
涼宮ハルヒが殺された時、一番近くにいながら気を失っていたせいで助けられなかった。
その罪悪感から彼は塞ぎこみ、他人との接触を一切拒むようになってしまった。
クラスメイトとさえ最近は全く会話していない様だ。学校に来ない日も珍しくない。
このままでは遠からず彼は駄目になる。私が情報統合思念体に地球に残ると要請した理由がこれだ。
彼を助けたい。彼は何度も私の危機を救った。今度は私が彼を助ける。
「・・・・・・。」「な、なんだよ長門?」
気付いたら私は彼を抱きしめていた。今の私にはこれしかしてあげる事が無いから・・・。

地球に残るにあたり情報統合思念体が提示した条件、
それはインターフェイスとしての能力を全て排除する事。
地球を捨てる以上、インターフェイス等置いても意味が無いからだ。
つまり今の私は特殊な能力の無くなったただの女子高生。
構わない。むしろ私の望む結果と言える。
やっと人間として彼に接することが出来るのだから・・・。
私は彼を愛していた。けれど涼宮ハルヒも彼を愛してるのを知ってる以上彼に想いは伝えられない。
そもそも人間でない私にそれを言う資格などない。けれど今は涼宮ハルヒはいない。
彼を救える人間も誰もいない。もう私の想いを妨げる要素は一切無かった。
涼宮ハルヒの死に涙したと言いながら、反面で満足している自分が嫌いになる時もある。
涼宮ハルヒの死も、SOS団の終焉も全部私の望んだ結果では無かったのか?
私は人間としては恐らく最低な部類に属するだろう。
けれどそれでもいい。彼のそばにいられるのなら。
だから私は言わずにいられなかった。
「貴方を・・・・・・愛してる・・・。誰よりも・・・・・・。」


181:SOS団の終焉
08/03/22 23:27:59 uU/6Zibh
長々と書き続けてきたがこれで終わりです。
最後の長門のエンディングは蛇足だった気もするが。

今後はしばらく読む側に回って楽しみたい。

182:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/22 23:33:56 legLL7E/
お疲れ様でしたm(__)m

183:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/23 01:26:42 24Fqe91T
>>181


んじゃ、>>163氏の続きが投下されるまでのツナギとして俺の作品でも読んでみてください


題名【谷口テクニック】
よう、みんな。俺だよ俺。天下のナンパ師谷口だよ。
今日はな、天からのお告げだか虫の知らせなのかは知らんが、俺の脳みそはある電波を受信しちまった。
そう、それは何かと言うと
『お前は教室に忘れ物をした』
という電波だ。そしてさらにオマケで
『今のタイミングで戻れば貴重な体験。そしていいおもいも出来る』
という電波も受信しちまったわけだ。
この俺が受信した電波だ。間違いなどあるはずがない。
きっとAAランクプラスの朝倉、もしくはAランクマイナーの長門あたりが教室にいて、
『谷口くん、私ずっとあなたのことが…』
ほっほーい!ちょ俺自重

てな事になるに違いない。
男谷口。据え膳食わぬ訳にはいかない。
という事で、だ。俺は閉められた教室のドアを勢いよく開けることにした。
ついでに女をイチコロにする俺自慢の鼻歌も忘れはしない。
よし、入るか。
俺、参上。
「WAWAWA忘れ物」
ぬぉわ!ちょっと待てよ!話が違うぜ…。
オイオイ…なんで朝倉や長門じゃないんだ…。最低でも涼宮ぐらいにしておいてくれよ…。
つかなんでキョンと、あれは確か最近涼宮が作った変な部活に入部してた転校生の古泉とかいったな。で、その二人がこんな所で…、しかもこんな事を…。
見損なったぜキョン。お前はそういう趣味があったのか…。
変なことされる前に俺は退散するか…。
「すまん、ごゆっくり~!」

184:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/23 01:27:25 24Fqe91T
へっへ~ん。逃げるが勝ちってな。
ここまでくればもう安全だろ。しかし今日は嫌なモン見ちまった。
よりにもよってあんな濃厚な…オエッ…考えただけでも反吐が出そうだぜ。
今日ははやく帰って寝るとするか。
はぁ、今日も下駄箱には何にもなしかよ…。いい加減俺の魅力に気付いてくれる女子はいないのかよ…
ってキョン!なんでお前がここに!?
オイ待て、話せばわかるって…。だからこれ以上近付くな…。
うわあっ!テメェ一体俺をドコへ連れて行きやがるつもりだ!

視聴覚室?
テメェこんな所で一体何を!
いてぇな…。そんな勢いよく放り込む事ねぇだろ。
しかも薄暗くて何も見えねぇ… 。
うおっ、まぶしっ!
電気付けるなら俺を放り込む前に付けやがれ。
って古泉。お前なんでこんな所に!?
いるんだったら電気ぐらい付けとけよ。まったくコイツも悪趣味な奴だ。さすが涼宮に勧誘されるだけあるぜ。
ん?背後から殺気が!
オイキョン!パイプ椅子なんか振り上げて一体何しようってんだよ。まさかソイツで俺の頭を…ぬぉわ!

………
……


いってぇ…。頭がジンジンしやがる。しかも電気まで消しやがって…。畜生。キョンのヤロウ覚えてろよ…。
ん?なんだ?手足の自由が利かねぇぞ。って待てよ!一体なんだこりゃ!
なんで俺がロープで机に貼り付けにされてんだ!?
畜生、しかもよりによってこんな格好で…。

あ?俺がどんな格好で貼り付けにされてるか知りたいだと?

185:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/23 01:28:33 24Fqe91T
仕方ねぇな教えてやるよ。
俺は今まさに普通のどこにでも教室の机に仰向けに載せられ、机から伸びる足にそれぞれの四肢を一本づつ荒縄でくくり付けられてやがる。
簡単に言えば逆コの字の体制だ。俺って意外と体が柔らかかったんだな。
くそぉ…しかし情けねぇ…。せめてこのおっぴろげられた股を閉じたいぜ。
そうだ。そういえば奴らはどこに行った?
暗くて何も見えねえ…。
クソ、今日ははやく帰りてぇのによ。マジアイツら許さねぇからな。

「ぬぉわ!」
突如視聴覚室の扉が開き、横から強烈な光が俺を照らしやがった。
畜生驚かせやがって!

「おい!テメェら一体俺をどうするつもりだ!!」

………。

あれ?なんか様子がおかしいぞ。
俺は首を思いっきりひん曲げて光が射すほうを見てみた。
ん?待てよ。なんで岡部が!?
「おい谷口。お前こんなとこで何やってんだ!」
「待って下さい!これには深い事情が」
「言い訳はいい、お前何時だと思ってんだ!もう夜の10時だぞ!」
何!?アイツら俺を放置して帰りやがったってのか!?
「ほら、何してる!さっさと帰れ!」
オイオイ無茶言うなよ。こんな状態なのに帰れるわけねーだろ。

俺は岡部に縄を解いてもらい、ようやく愛しの帰路についた。
岡部がたまたま学校の見回りをしてくれていて助かったぜ。

186:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/23 01:29:11 vWE3yXLw
乙です。
もしかしてらき☆すたのSSも書いてた人かな?
こなたが死ぬやつなんだけど。

187:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/23 01:29:55 24Fqe91T
で、次の日。
昨日あんなことあったし学校を休みたかった所だが。俺は母親につまみ出されるように学校に行かされる羽目になっちまった。

しかし胸糞悪い。何がだって?決まってるだろ。キョンだよキョン。あの野郎。昨日はあんな事した挙げ句放置プレイまでしやがって。
しかも今日は何だ。昨日の出来事はどこ吹く風でいきなり朝俺に挨拶までしてきやがった。
そして今は昼休み。俺達はいつもの三人で仲良くランチタイムって奴だ。
おい国木田。騙されんなよ。コイツは今だからこそ普通にお前と喋ってはいるが、とてつもなく恐ろしい奴なんだぞ?
これは嘘じゃねぇ。俺の実体験をもとにしているんだ。
コイツがいなけりゃ今にでも国木田、お前に教えてるとこだぜ。

で、放課後だ。
俺は今昨日と同じ視聴覚室にいる。
授業が終わるなりキョンの野郎がいきなり俺をここに引っ張り出しやがった。
「キョン。もういい加減にしてくれ。昨日あった事は誰にも言ったりしねぇよ。だからさ…」
クソ、古泉と一緒になってニタニタしやがって。俺の話は無視かよ。
オイ何だよ!いきなり張り倒す事ねえだろ…。
ん、なんだって?助けてもいいが朝比奈さんを…。そ、そんな事出来るわけねーだろ!
ふざけんのも大概に…うわっ!いってぇ。ムチで叩く事ねぇだろ…。てかそのムチどこから…。
オイ次は何だ!?古泉、止めてくれ!ロープでまた俺の手足を縛ろうってのか!頼む。勘弁してくれ!
わかった!わかったやるよ!やればいいんだろ!
というわけで俺は今、学校の門の前で朝比奈さんを襲撃する準備をしているんだが、一向に来る気配がねぇ。
もう夜の9時だぜ?いくら明日が休みだからって涼宮達はこんな時間まで残ってるのか?
それにそろそろ用も足したくなってきたし…。
「なあキョン。もう俺帰っていいか?頼むよ。来週の月曜に絶対やるからさ…」
何だよキョン。ニヤニヤしながら近づいてきてよ…。
え?
「 や ら な い か 」
キョン。やらないかって何をだよ…。

188:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/23 01:30:52 24Fqe91T
ちょっ!古泉。いきなり手を引っ張るなよ!
オイオイ、俺は一体どこに連れていかれちまうんだ…?

………
……


そうして、俺がキョン達に連れて行かれたのは、近所でも有名なハッテン場のトイレだった。
トイレに入るなり、俺はキョン達に素裸に剥かれちまった。
「キョン。一体ここで何を…」
「よかったのか、ホイホイ付いて来て」
てめぇらが勝手に連れてきたんだろうが。
「僕たちはノンケでも構わず食べてしまう人間なんですよ?」
知らねぇよ。頼むから今日は返してくれよ。
「わかったからさぁ、さっきも言ったが朝比奈さんの件は月曜日に…」
「嬉しいことを言ってくれるではないですか」
だから人の話を聞けって!
ぬぅわ!
「それじゃあ、とことん喜ばせてやるか」
言葉通りに、キョンはすばらしいテクニシャンだった。
俺はというと、精神に与えられる恐怖の波に身を震わせて悶えていた。
しかしその時、予期せぬ出来事が…
「うっ……出そう……」
「ん。もうか?意外に早いんだな」
「ち、違う。実はさっきから小便がしたかったんだ…。帰ろうとしたのもそのためで…」
「そうか…。いい事思いついた。お前、俺のケツの中でションベンしろ」
「えーっ!ケツの中にか!?」
「男は度胸!何でも試してみるものさ。きっといい気持ちだぜ。ほら、遠慮しないで入れてみろ」
キョンはそう言うと、素肌にまとった制服を脱ぎ捨て、たくましい尻を俺の前に突き出しやがった。
自分の肛門の中に小便をさせるなんて、なんて野郎だ。
しかし、キョンの鬼のような形相を見た俺は、死にたくないという生存本能が…。
「それじゃ…やるよ……」
ズズッ
ズッ
「は、入ったぜ…」
「ああ、次はションベンだ」
「それじゃ、出すぜ……」
シャーッ
チュチューッ
「いいぞ、腹の中にどんどん入ってくるのがわかるよ」
チューッ
「しっかり、ケツの穴を閉めとかないとな」
「くうっ……」

189:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/23 01:31:34 24Fqe91T
この初めての体験は、今までには計り知れない恐怖と絶望感を俺にもたらした。
あまりに激しい恐怖に、小便を出し切ったと同時に俺のペニスは、肛門の尿の海にあっけなく果てちまった。
「この分だと相当我慢してたみたいだな。腹ん中がパンパンだぜ」
はぁ……。
「どうした?」
「あ、あまりに気持ちよくてな……。こ、こんな事したの初めてだからよ………」
「だろうな。俺もお前とは初めてだ」
「ところで、僕のキンタマを見て下さい。コレをどう思いますか?」
なんだよ古泉いきなり…。
「すごく…大きいな……」
これでいいだろ。だからもう帰してくれ…。
「デカいのはいいですから、二人の行為を見てしまっては、僕も収まりがつかないんですよ」
「ああっ……!?」
「今度は僕の番ですよ」
もう、やめてくれ…。
「いいですね。よく閉まって吸い付いてきますよ」
「で、出ちまう……」
「どうしたのです?先程出したばかりなのに、もう出てしまうというのですか?性欲絶倫なんですね」
「ち、ちげぇよ……」
「何です!?今度はウンコですか!?あなた、僕をバキュームカーか何かと勘違いしてるのでは?」
「しーましェーん!!」
「仕方ないですね。いいですよ。僕が栓をしておきますから、このままどうぞ?」
「ああ、クソまみれでやるのもいいかもしれないな」
「えーっ!?」

と、こんなわけで俺の初めてのイジメ(ハッテン場)体験はくそみそな結果に終わっちまった…。


fin

190:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/23 01:45:13 y7XPtof5
夜中に笑わすなwwwwww
面白かった。乙

191:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/23 01:58:53 SJ7WEaEC
なんといういじめ

192:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/23 02:02:23 zsUG6AcR
性的いじめwwwwwwwwwww

口直しってレベルじゃねーぞ!

193:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/23 02:42:02 Fg/310Fd
いじめっていうから相当酷いことやってんのかなって
思ってこのスレ開いたけどそうでもなかった
SOS団の終焉に限ってはね。

ハルヒ関連のSSでこんなに感動したのはこれが始めてだ。
ただ、あのあとハルヒを病院にみくるが連れて行って
奇跡的に助かったっていうほうが良かったかも。

194:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/23 08:20:53 L+Oshug1
>>176
乙です!
すばらしかったです!!

195:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/23 08:25:28 L+Oshug1
>>189
も乙

196:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/23 11:58:42 eGe3rAbz
涙からネタまで提供してくれる、何だこのスレは(w

>>181
乙でした。
これは予想外の結末だった。
みくるがここまで策謀を巡らすなんて・・・。
ちょっとした推理ものの気分で楽しめました。

197:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/23 14:53:07 L+Oshug1
>>181

でも、
ハイネケンで吹いたww

198:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/23 17:52:51 Ds9Si3Us
>>181
不覚ながら感動した
ギャグSSでよく見るネタがたまに混じるのが今まで楽しく過ごしてたんだなぁ、と
感慨を感じると共に鬱展開のギャップが際立つね。
実はみくるいじめに転換するのかと予想してた、罪を背負って生きるのもハルヒかと。
あとキャラが下衆ではなくて狂ってはいるが根はわりとまともなのが切ないね。
でも長門はヤンデレになるのかな?

>>189
不覚ながら吹いたw
でもホモに迫られるのって普通の男にとっちゃいじめより怖いよなw
テラくそみそwww

199:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/24 01:03:10 jyoVLACp
では、こっそり>>163からの続き投下してみる



 ますますやるせないぜ…。
 まあ朝倉が笑顔で「大丈夫だよ」って言ってくれたし、そのお言葉を有り難く頂戴しておくか。
 そういや昨日の喫茶店代も払ってないじゃないか…。小遣いが入り次第至急返金しよう。

 店員にやる気の無いお送りの常套句を聞かされ店を出た俺は、一気に血の気が引いた。まるで親に見られたくないものを見つけられてしまった時と感覚が似ている。
 そう、何を隠そう俺の目と鼻の先には、いつもの四人組がいたからである。
 さらに、あろう事かハルヒは仁王立ちを決め込み、俺のほうをサバンナで獲物を捕らえようとしているライオンがごとき
鋭い眼差しで睨みを利かせている。長門と古泉はいつもの表情そのものだったが、どこか威圧的で軽蔑的なオーラを放って
いるようにさえ感じる。これが俺の思い込みなのか否かは定かではない。朝比奈さんは相変わらずだな。ハルヒと俺の顔を
交互に見てオドオドしている。いやー、この人はいつもお決まりの反応をしてくれるので実に助かる。やっぱり自分の予測
範囲内で行動してくれる人間が一人ぐらい居てくれないとな。
 なんて、考えている場合では無さそうだ。ハルヒが腕を組んだまま、俺たちの方ににじり寄ってきた。
 ハルヒに何を言われるか予想し、それにどう抵抗するかをオーバーレブ寸前に脳みそをフル回転させていたまさにその時。
「アンタ、一体どういうつもりなの?!」
 ハルヒの怒号が俺の左横に飛んで行った。
 そう、朝倉の方向にである。
「へ?」
 すっかり拍子抜けしてしまった俺の口から間抜けな声が飛び出る。
 その声を聞いたのか聞いてないのかは知らんが、ハルヒは俺に一別をくれて再び朝倉に厳つい視線を浴びせる。
「どういうつもり…って、一体何が?」
 朝倉はいつもと変わらぬ笑みを浮かべ返した。
 するとハルヒはもう一度俺に視線の照準を合わせ、
「何がじゃないでしょ。どうしてアンタがこいつと一緒にいるのよ」
 隣から、
「だって、今日はわたしと一緒に帰ろう。ってわたしが誘ったんだもの」
 と、いつも通りの朝倉の爽やかな声が飛ぶ。
 俺はハルヒの鬼のような眼光から目を背けそっぽを向いた。仕方ないだろ、あんな殺気に満ちあふれた形相をしている奴とにらめっこ出来る奴がいるなら、是非
名乗り出てほしいものだ。まあ居るはずないだろうが。

 ハルヒは俺がそっぽを向いてから一、二呼吸置きぐらいした後にわざとらしく大きな溜め息をつき、
「あっそう。もういいわよ」
 振り返りざまにそう言い残し、SOS団の連中の元へ戻って行き、いつものやかましい声で、
「みんな! 帰るわよ!」
 という言葉を俺の耳に残し、ハルヒ達の背中は街の喧騒に消えた。
 あいつらの姿が完全に見えなくなってから、俺も朝倉と別れ家路についた。
 帰り際に朝倉が言ってくれた、
「よかったね。涼宮さん達から離れることが出来て」
 という言葉に、何故かわからなかったが俺は素直に喜ぶことが出来なかった。
 俺の心には、まるで喉につっかえた魚の骨みたいに胸糞悪いものが残った感覚がした。

200:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/24 01:04:54 jyoVLACp
 そして次の日の朝、なんだか目覚めがすごく悪い。いつものように妹から無理矢理起こされたから、というのもあるのだが…。やはり夜更かしはよくないな。
 しかし、俺だって好きで夜更かしなどしていたわけじゃない。喉につっかえた魚の骨が、いくら水を飲んでも取れなかったせいだ。
 それに喉に骨がつっかえてる感覚が未だにする。これ程に調子の悪い朝は生まれて初めてだ。

 石のように重たい体をなんとか起こし、重労働かのような朝の支度を済ませて学校へ向かっている最中、いつものアイツが話しかけてきた。
「よう、キョン」
 今のグロッキーな状態でこいつと肩を並べて歩くのは非常に過酷だ。出来れば一人にしていただきたい。
 しかし、こいつはそんな切なる願いを無視し、いつもの谷口節を利かせて延々と喋ってやがる。
 俺はというと、ひたすらこいつの演説に適当な相槌を打つだけである。
「オイ聞いてんのかキョン?」
「ああ、聞いてるよ。昨日言ってた女子の話だろ?」
こいつの言いたいことなんざ聞いてなくてもわかるさ。女の話、次点に涼宮の数知れぬ蛮行に対する愚痴と陰口、そして先生への不満。こんなところだろう。
「ちげーよ、その話はさっき終わった。涼宮だよ涼宮」
 そんなにハルヒが好きならSOS団にでも入団すればいいじゃないか、きっと仲良くなれるぞ。嫌気がさすぐらいにな。

谷口との無意味な話、というか演説を聞かされ教室に行くと、朝倉が笑顔で出迎えてくれた。
「おはよう」
 俺も軽くおはようと返し、自分の席へと足を進める。
 そう、いつもハルヒが後ろで待ち構えている俺の席に。
 しかし今日はいつもと違っていた。そう、カバンはあるがハルヒの姿が無い。それどころか机の様子もおかしい。
 どうしてハルヒの席にクシャクシャになった紙が乗せられているのだろうか。
 まあ、あいつの事だ。なんか下らない考察でもまとめていたのだろう。そして没になった考察をクシャクシャにして机の上にでも放置しているのだろう。
 それに今あいつがいないのは、紙を全部使い果たして印刷室にでも用紙をかっさらいに行ってるのか、完成した考察をあいつらに渡すためにコピーしに行ってるのか。のどっちかだろうな。
って、俺は何考えてるのだろうか、あいつとはもう何も関係無いというのに…。

 谷口や国木田の話しをしながら始業のベルを待っていると、始業のベルと同時にハルヒが教室に入ってきた。
 それと同時に、谷口も国木田に誘われるように自分の席へ戻っていく。
 先生が教室に来たのもそれからまもなくしてだった。
 それまで、俺とハルヒの間に会話は無かった。
 無論会話したくないが故にハルヒが後ろで何をしていたか、どんな体制で先生を待ち構えているのか、知る由もない。
 朝のホームルームの最中、先生はある提案を出してきた。それは何かと言うと、
「最近、授業中にも関わらずお前達がうるさいといろいろな先生から苦情があってな」
 あからさまにこっちのほうを見て言わないで頂きたい。
「せっかく朝倉も戻ってきたことだし、席替えでもするか。心機一転。これでお前達も心を入れ替え、真面目に授業を受けるんだぞ」
 まあこっちとしても都合がいいな。もしや後ろの奴とも離れられるチャンスだし。

201:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/24 01:07:02 jyoVLACp
 というわけで席替えをしたのだが、どういう訳かハルヒはいつものポールポジションを外さない。さすが神様、進化の可能性、時空の歪みと言った所だ。
でもって俺はというと、どういう訳かハルヒとは一番離れた席。つまり廊下側の一番前の席に選ばれた。
これで今度こそ、さらばハルヒ、フォーエバーと言ったやつだ。

 しかし俺はまだこの時、この居慣れたクラスが今まで俺が知っていたクラスとはまったく別のクラスになっていた事にまったく気付いてなかった。
 俺が異変に気付き始めたのは昼休みになってからである。
 谷口や国木田と机を囲みながらご飯を食べていた時の事である。
 いつもなら学食に行っているであろうハルヒが教室にいた。しかも机に頭を突っ伏せている。
 珍しい事もあったものだ。財布を持ってくるのでも忘れたのだろうか。
 そんな時だった。数人の女子がハルヒに話しかけた。ここからじゃ話の内容はよく聞き取れなかったが、なんかハルヒの事を心配している様子だ。
 どうしたんだ。今まではハルヒなんかと話そうとする奴も居なかったのに。それにこういうのは朝倉の役目じゃなかったのか。
 俺は教室を少し見渡し、朝倉たちが仲睦まじくお弁当を並べているグループに目をやった。
 朝倉は俺の視線を感じ取ったのか、こっちのほうを向いて微笑みを返す。
 なんだか隣がやかましい。そう谷口だ。谷口は朝倉の笑顔を見るなり
「やっぱいいよな朝倉。前にも言ったがアイツはAAランク+の…」
 また始まったよ。女評論と恋愛指南をするのはいいが、それを少しは実践で役立てたらどうだ。
 俺は谷口の話に耳を傾けるふりをしながらハルヒが居る席のほうに今一度目をやった。
 しかし、さっきまでいたハルヒと女子達の姿は消えていた。どこへ行ってしまったのだろうか。ハルヒの事だろうから、
恐らく「あんた達、あたしに学食の一つや二つおごりなさいよ!」とでも脅して飯を奢らせているのだろう。
さっきの女子達気が弱そうな連中しか居なかったからな。ほら見ろ、ハルヒと関わるとロクな事がないんだよ。
 すると、いきなり心地のいい透き通った声が上から降ってきた。
「どうしたの。わたしの話してるみたいだけど?」
 振り向くと当然ながら朝倉がそこにいた。
 俺の方を見てそんな事言われても困る。お前の話をしていたのは、今俺の前ですっかり黙り込んでだらしない馬鹿面を浮かべている谷口であって、俺じゃないんだからな。
「いったいどんな噂話してたの。教えてよ」
 だから俺に言われても困る。
「いや、お前の噂話をしていたのは谷口であって俺じゃない。聞くなら谷口に聞いてくれ」
 それを聞くなり谷口は、
「あのーっ…変な話じゃなくて! あのですね。朝倉さんは可愛いなって話をですね…。な、国木田?」
 オイオイ、さっきまでの威勢はどうした。偉そうに恋愛講座を開講してたのはドコの誰だよ。
「え? 僕に振られても困るよ」
 ほら、無茶振りするから国木田も困ってるだろ。やれやれ
「まあ、ともかく変な話じゃないから安心してくれ。あそこの女子達も待ってるぞ。だから戻ってくれ」
 朝倉は少し悩ましい表情をした後すぐ笑顔に戻り、
「うん、わかった。あっ、それとキョンくん。今日、一緒に帰ろう?」
 まあ、これから俺は晴れて自由の身だしな。まあ別にいいだろう。
 俺は朝倉に快くオーケーの返事を出した。
 すると朝倉は、
「ありがとう」
 と言いながら首を少し横に傾げてウインクをして、朝倉を待つ女子の元へ、その流れるようなロングヘアーをなびかせ戻っていった。

202:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/24 01:08:11 jyoVLACp
 この時、俺が底知れぬ優越感に浸ったのは言うまでも無い。
「俺たち、友達だよな!
 無論、このセリフを吐いたのは谷口である。
 やっぱこいつはアホだ。

 しばらくして、涼宮に話しかけていた女子達が戻ってきたのだが、そこに涼宮の姿は無かった。
 まあ差し詰め、金を渡すなり、「あんた達の役目は終わったわ! さっさと帰りなさい!」とでも言われて追い返されたのだろう。
 何故かあいつらが笑っているのは気掛かりだが…。まあ、ハルヒの陰口にすっかり花が咲いて盛り上がりでもしていたのだろうか…。
 まあいい、考えるだけ無駄だ。ハルヒと俺はもう無関係。赤の他人なんだからな。
 結局ハルヒは放課後まで戻ってこなかった。部活動に熱心なのはいいが、少しは社会のマナーというのを考えたらどうだ。
ていうかあいつがSOS団の活動をしていたと決まったわけではないが、きっとあいつなら恐らくそうに違いない。
 それより先生、不良高校生を取り締まるそぶりを少しは見せたらどうです? 確かにあいつは言って聞くような人間じゃ無いけど、カバンはあるのに生徒がいないという
謎の机の存在を、少しは指摘してもいいとは思うんですが…。

 で、放課後である。俺は今、約束通り朝倉と肩を並べて下校をしているわけなのだが。何故か嬉しくない。それは、と言うと谷口や国木田までもがいるからだ。
 特に谷口。お前は何だ。本来俺の役割である朝倉との会話を奪いやがって。
 何が「朝倉さんて本当に頭がいいんスね」だよ。以前お前が偉そうに述べていた。
女は一気にガツンと落とすのが鉄則。
という教えはどうしたんだ。忘れたとは言わさんぞ。
 まあ仕方ない、俺は国木田と話すか。そういやこいつらと一緒に帰るのも久々だしな。
 そんな時だった。前方目測約10m付近に、見覚えのある栗毛のふわふわロングヘアーと、深緑のベリーベリーロングヘアーの二人がユサユサと髪をなびかせながら歩いているじゃないか。
 一瞬話しかけようとも思ったが、何せ間合いがありすぎるし、第一俺もう、あの二人とは無関係の人間なんだ。
もう一度言うが、俺はSOS団とは無関係、赤の他人なんだからな。
あの美味しいお茶を飲めなくなるのと、可愛らしいメイド姿を拝見出来なくなるのは残念だが…。これから普通の高校生としての人生を贈ることが出来るなら、
それぐらいのリスクも仕方ないだろうし、我慢も出来る。
 しかし、鶴屋さんはいいとして、どうして朝比奈さんもこんな早い時間に帰ってしまっているのだろう。ハルヒの気まぐれで本日は休部にでもなったのか?
まあいい。しつこいようだが、もう一度言わせてもらう。
 俺とSOS団は無関係、全くもって赤の他人だ。

203:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/24 01:24:21 V2goddyI
wktk

204:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/24 02:31:12 jSc3eOFW
なんという生殺し
しかしキョン。これはいいツンデレww
頼む、はやく続きを投下してくれ

205:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/24 07:22:11 wk7DnJi0
>>202
続き頼む

206:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/24 17:30:01 C0Wjo664
流石……。

207:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/24 20:51:48 fF/vobAP
消失世界みたいな・・・。

208:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/24 22:08:28 jyoVLACp
なかなか完結しないし投稿遅くてすまん

では>>202からの続きをちっと


 そして次の朝。俺はいつもより早い時間に学校へ向かった。それは何故かと言うと。
 俺の憂鬱な朝は妹の顔を見て始まる。しかし今日は違っていた。
俺を夢から現実に引き戻してくれたのは、ウチのペットであり妹の友達でもある猫のシャミセンだった。
あろう事かシャミセンは俺の顔を寝床にしようとしていたのだ。吸入口を塞がれた俺は、呼吸困難のお陰で夢から醒め、
6時30分という何とも微妙な時間に起きた。いや起こされた俺は、このまま再び床に就いたら寝過ごしてしまうだろうと踏んでそのまま起きていたのである。
 まあ、俺を起こそうと部屋に入ったのであろう妹の驚いた表情を見れたのでまあいいとしよう。
 とりあえず俺のどうでもいい朝の出来事を語るのはこれぐらいにして、先程も述べたが、俺は今いつもより早く学校へ向かっている。
 そんな時だった。俺のすぐ前をまたもや栗毛色のロングヘアーが、ひょこひょこと可愛い歩調で歩いているでは無いか。
 何を血迷ったか、ついつい俺は、その栗毛色のロングヘアーの持ち主もとい朝比奈さんに話し掛けてしまっていた。
「お、おはようございます朝比奈さん」
 少し控えめな感じで、軽く会釈までする俺。
 朝比奈さんは立ち止まり、ちょっとキョトンとした表情を浮かべ、
「あ、はあ…。おはようございます…」
 こちらも俺と同じように少し控えめな感じで、さらに会釈を返し、何事も無かったかのようにまた前を向いて歩き出してしまった。
さっきまでの歩調より少し速いのは気のせいだろうか。
 しかし今の反応は気掛かりだ。普段なら「あ、キョンくんおはようございましゅ~」などとエンジェルボイスとキューティースマイルを俺に向けてくれるはずなのに。
もしやハルヒの奴、朝比奈さんに俺を無視するように吹き込んだか…。
だとしたら許す事は出来ないな。朝比奈みくるファンクラブがあったとしたら、会員NO.00番になりたいぐらい慕っているこの俺に、こんな仕打ちをするとは。
「よう、キョン」
 あ? なんだ谷口か。
「どうしたよキョン。こんな所で馬鹿みたいに立ち止まってよ」
 どうでもいいだろ。てかお前にだけは馬鹿とは言われたくないぞ。
 しかし、いつもより15分は早く来ているというのに、なんでお前がこんな時間に登校してるんだ?
「それがよ~キョン聞いてくれよ。俺はいつもみてぇに目覚まし時計に起こされたんだよ。だがな。何故かいつもの時間とちげーんだ。だから早く来たってわけさ」
 つまりなんだ。目覚ましのタイマー設定を間違えて、せっかく早起きしたから、学校にも早く来たって訳だな。
 こいつらしいと言ったらこいつらしい理由だ。
「そういやお前も早いよな。どうしたんだ?」
 なんとなくこいつには朝の出来事を話したくなかった俺は、適当に。
「たまにはな」
 と返しておくとしよう。
「なんだキョン。実は言えない理由でもあるんだろ?」
 まったく面倒くさい奴だ。
「ねーよ」
「隠すなよ」
 こんな下らない掛け合いをしているうちに教室についた俺は、新しい席と今までの席を間違えぬよう注意し、新しい我が席に腰を下ろした。
 しばらくすると、ほかのクラスメイトたちも順々にわらわらと入って来た。

209:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/24 22:09:57 jyoVLACp
 その中の女子の団体様の中から
「おはよう」
 という声が。そう、谷口の大好物こと朝倉である。
 挨拶と同時にこっちに笑顔を向けてくれたのは気のせいなどではないと信じたい。
 朝倉は自分の席にカバンを置くなり、すぐに他の仲間たちが恋しそうに待つ女子達の輪の中に埋もれていった。
 それからまもなくして、ハルヒも教室へと入ってきた。しかも他の女子達と一緒にである。さらに驚いたことに、昨日話し掛けられていた女子達とはまた別の女子達とである。
 さらに驚くのはこれだけではない。ハルヒのトレードマークとも言うべきリボン付きカチューシャがあいつの頭には装着されていなかった。
そう、まさに何も乗っていないまんま素の状態だったのである。
 あいつカチューシャ取るとあんな感じだったんだな。って、俺は何を考えているのだろうか。ハルヒがカチューシャを取ろうが取るまいが関係無いじゃないか。
って、またまた論点が違う。カチューシャがどうとか以前に、いつの間にあいつは様々な女子と交流を持つような社交的な性格に変貌してしまったんだ?
 そんな事を考えているうちにハルヒは、さっきの女子達と昨日同様どこかへ去って行ってしまった。
 しかし、いくら社交的になっても、あいつのぶっきらぼうな面は変わらないんだな。
「おはよう、今日は二人とも早いんだね」
 そう話し掛けてきたのは国木田である。
「ああ、たまにはな」
 国木田になら朝の出来事を話してもいいと思ったが、谷口がいたのでやはり黙っておこう。
 谷口は谷口で自慢げに今朝の事を話してるし、まあ黙って聞いておくか。
 まあそんなこんなをしているうちに始業のベルが鳴り、先生も教室に入ってきたので、それぞれは黒板の方を向いた。
 そういやハルヒがまだ来てないな。さっき一緒に出掛けた女子達はいつの間にか帰ってきてるというのに。しかもまた先生は無視してホームルーム続けてやがるし。

 こうして、結局ハルヒが教室に戻ってきたのは俺達が昼飯を食べ終え、さっき俺達三人の話の輪に交じってきた朝倉等と会話をしているときである。

210:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/24 22:11:01 jyoVLACp
 しかしあいつは午前中何をしてたんだ? 制服をあんなに汚して。しかもどこか湿っている気もする。
 おっ、そうか。これで線が一本につながったぞ。俺の考察はこうだ。
 朝。ハルヒは数名の女子を連れ出し、裏山の森かどこかへ行き、「あんた達も一緒に不思議を探すわよ!」などとがやり付け、ハルヒは先陣を切って不思議を探しに行った。
ハルヒの蛮行を見た女子達は、呆れかえって帰ってきてしまった。しかしハルヒはそんな事とはつゆ知らず、一人で不思議を探していた。
 と、こんな感じであろう多分。
 しかし気の毒だなハルヒ。他の奴らが帰ってしまったのにも関わらず一人で探していたなんてな。まあせいぜい不思議探しでも頑張るがいいさ。
「どうしたのキョンくん? ぼーっとしちゃって」
 いや、別にぼーっとしていたわけではないのだが。
「いや、ちょっと考え事しててな」
「考え事って何だよ? 教えてろよ」
 谷口、またお前は一々。
「僕も知りたいな。キョン、どんな考え事してたんだい?」
 国木田、お前もか。
 どうして同じ事を聞かれているのに谷口だと苛立ちを感じるのだろうか。これはきっと聞き方以外に、何か他の原因があるに違いない。
「大したことじゃない。あ、そういや次の授業って何だっけ?」
 とりあえずこの台詞でごまかしておこう。
「えっ? う~ん…。次の授業は国語だよ」
「国語かよ…。俺はどうもあいつの授業はニガテなんだよなぁ」
 俺の気持ちを察してくれたのか、単に次の授業は何か思い出していたのかは知らないけど、朝倉が助け舟を渡してくれた。
ま、朝倉の事だから前者だと思うが。
 すると、丁度いいタイミングで予鈴が鳴ってくれた。
 ひとまずはこれで安心だ。
 俺は、今のハルヒの事を他の誰かに喋りたくなかった。自分の中だけに留めておきたい不安が、現実になってしまいそうで…。表面的にはアイツの存在を消していたのかもしれない。

 ………
 ……
 …

 SOS団とは無縁の生活を始め、大体二週間が経過した頃である。
 その頃になると、下校時は朝倉達のグループと俺達のグループは一緒になって帰るようになっていた。

211:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/25 00:05:28 S2n5pjG4
続きwktk

212:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/25 07:55:18 uQvt0le6
>>210
続き書いてくれ

気になって眠れなさそう

213:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/25 20:10:15 BmhFSb0A
いじめ描写少なすぎてすまん
とりあえず完結したんで全部投稿してみる

では>>210からの続き


 そんな時である。朝倉がこっそりと俺に耳打ちをしてきたと。その内容は何かと言うと。
(明日の放課後、時間大丈夫?)
 と言った内容である。
 一瞬俺の脳裏にすごく嫌な思い出がよぎったが、俺は快く(オッケー)と(何か俺に用でもあるのか?)と朝倉に耳打ちし返した。
 すると朝倉は、(秘密。ここじゃ恥ずかしいもん。だから、この手紙読んで)と、ソフトクリームのような返事を返してきたと同時にポケットに恐らく手紙を入れられた。
 ん? タバスコと刃物の間違いだって? いやいや御冗談を。今の朝倉は俺の踏む限り全く一般的な女子高生だ。まさか、いきなりナイフを向けるなんて事。
「なんだよ二人でコソコソ。俺にも教えろよ」
 さすがは谷口だ。俺と朝倉の不振な掛け合いを見て黙っているハズが無い。
 谷口。言っておくが、こういう場合は空気というものを読んだ方がいいぞ。
 ほらみろ。他の連中も便乗してきたじゃないか。
 しかし、こういうのもたまにはいいかもしれんな。俺が望む高校生活って言うのは、変な灰色空間で巨人に襲われるのでもなければ、害虫に襲われるのでもない、
ましてや終わらない夏休みを延々と繰り返す事じゃない。こういうものだったんだ。俺だって一人の男であり高校生。
なんかこう、甘酸っぱい青春に胸を踊らせたいと思ったりもするのさ。
 まあとりあえず明日までに、上手く国木田他を撒く上手い口実を考えておかねば。

 というわけで次の日の放課後。
 何とか谷口達を撒いた俺は、教室に誰もいなくなると予想される時間までブラブラと校舎をさまようことにした。
 さっき少々ネタバレしてしまったが、皆さんも気になるであろうから手紙の内容を公開しよう。
『放課後、あなたにだけの用があるので教室で待ってます。 朝倉』
 一々手紙にするほどの事でも無いと思うのだが。
 それに、せっかくなら人っけの無いところで要件を済ませればいいのでは? とも思ったが、この無駄に高鳴る鼓動を維持し続けるのもいい。

「はあ……」
 この溜め息は俺のこの昴ぶる気持ちから来たものでは無い。そう、気付くと俺は旧館もといSOS団の部室があるであろう部室棟の入り口に、足を踏み入れようとしていたのである。
 何やってんだ俺は…。今更あいつらの所へ行ったとて、何言われるか解らんし、合わせる顔もない。それにもしかしたらSOS団なんかもう…。
 俺は振り返り元来た軌跡を辿ろうとしたその時である。
 俺の視界に、今一番会いたくない奴の姿が飛び込んできた。
 そうハルヒである。さらにあろう事か視線まで会ってしまっている。
 どうやらハルヒは中庭から校舎に戻ろうとしたらしい。
 最近では見慣れてしまったハルヒの体操着姿。
 今日もやられたのか。

214:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/25 20:11:20 BmhFSb0A
「何……?」
 ハルヒが話し掛けてきた。しかしほんの二、三週間前とは打って変わって顔と言葉に覇気はない。そりゃそうだよな…。
「い、いや別に…」
 俺はそっぽを向いてそう返事をする。
「そう……」
 ハルヒが俺から視線を外し、下駄箱のほうへ目をやった。
「涼宮…!」
 そう放ったのは俺である。
 ハルヒは再び俺のほうを向いた。
 しかし俺は、言葉を続ける事が出来なかった。今の俺には、こんな事言える資格は無いのかもしれない。と思ったからだ。
 数秒の沈黙の後、ハルヒは下駄箱のほうへ向かって歩いて行った。
 情けない。つくづく毒な男だな、俺は。
 俺とハルヒのやり取りを見ていたのか、数名の女子達が俺に歩み寄ってきて、そのうちの女子一人が。
「何? キョンくんってあんな奴と仲良かったの?」
 そう、ハルヒはいじめられてるんだ。
「いやそんなんじゃないって、アイツが勝手に話し掛けてきたんだよ。俺だってあんな奴と話したくもねーよ」
 こんな言葉を返すことしかできない俺。
「だよねー」
 この意味のわからない掛け合いにも慣れた。
 あえて誰にも言わなかったが、確実に世界は変わってしまっている。俺がSOS団を抜けた時から。
 長門や古泉、特に長門に話せば真相を掴む事が出来るのかもしれないが、俺には出来なかった。別に長門がこの世界にいないというわけではない。長門の姿は廊下で数回見た。
 ただ聞けなかっただけさ。もちろん朝比奈さんの時みたいな態度を取られるんじゃないか。という心配はあったが、何より俺は甘えたかったんだ。
この普通の学生生活に。誰がこんな事しでかしたのかはわからない、というより確証が無いのでアイツがやったと認めたくないし、そう信じたくも無かった。
そう、俺はこの生活にまだ浸っていたかった。そんな事を考えてしまう俺がつくづく嫌になる。
 ほら、また嫌なもん見ちまった。
 さっきの女子達がハルヒをどこかに連れだそうとしてやがる。もういいと思うんだがな。アイツ、もう着替えの服無いと思うし。

 最初の一週間だな。ハルヒはいじめられていないと自分を誤魔化せたのは。
 まだ隠れたいじめだったし。でも、それ以降は流石に誤魔化す事が出来なかった。
 教室外から教室内のいじめに変わったからな。
 おかげで机が蹴られる音にも慣れてしまった。
 大体ハルヒが下校する時は体操着姿だ。どうせ便所の水でもかけられているのだろう。
 毎日毎日、死ぬとかブタとか臭いとか肉便器とか言われてよく黙っていられたものだ。俺だったら怒って殴りかかってるぞ。
 とまあ偉そうな事言っときながら、俺達は俺達で、何もない、まるでアイツらとは別の世界にいるような感じでのうのうと雑談を楽しんでいたんだがな。
 おかげで谷口もあんなに好きだった涼宮話も全くしないようになり。変わりに、朝倉話をよくするようになった。
 畜生。
 さて、アイツらどうせ教室でハルヒに何かするんだろうし、もう少し校舎をほっつき歩くか、と思ったその時、見慣れた顔の男が下駄箱の方へ向かって行くのが見えた。
 そう古泉だ。

215:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/25 20:13:01 BmhFSb0A
 俺は古泉がいる下駄箱のほうへ急いで向かった。
「古泉! 一樹君ですか…?」
 こいつに敬語を喋るのは何だかムカつくが、致し方ない。
「はい、そうですが。一体どなたでしょうか?」
 やっぱり世界は変わっちまってたんだな…。でも、俺にはどうしても知りたいことがあるんだ。俺は自分の名を名乗りこう続けた。
「いきなり初対面でんな事言って、変な奴だと思われるかもしれないが…。SOS団って知って…ますか?」
 予想通り古泉は驚いたような表情をし、少し考え込み。
「いえ、ご存知無いです。何かのドラマの架空組織でしょうか?」
 やっぱりな。でも、久々にお前と話せてよかったよ。
 俺は、
「わかりました。すいません変な事聞いて」
 そう言い、一目散に部室棟へ向かった。もちろん長門に会いに行くため、そして今は無きSOS団の本部へ行くため。
 もう自分を騙して生きていくのはいい加減ウンザリだ。確かに今の生活はすごく充実していて楽しい。でも、ハルヒの苦しむ顔は見たくない。何よりアイツの笑顔に心から喜べない。
前の世界には、そりゃもう腐る程の不満はあった。その不満の原因の内訳は、今地獄のような苦しみを受けてるハルヒへの不満が大多数を占めてる。
でも、俺はハルヒが苦しんでる顔より笑ってる顔が見たい。元気過ぎてうるさいぐらいの声が聞きたい。ハルヒ、いやSOS団の連中ともっと沢山話がしたい。
「長門!」
 部室のドアを開けるなり俺はそう言い放った。もちろん長門が居る保証は無い。でも、俺はここに長門が居ると信じて疑わなかった。
「……何?」
 やっぱり長門は居てくれた。
 俺は長門が座るパイプ椅子のほうへ向かい。
「長門、俺の事覚えてるか?」
 数秒の沈黙の後、首が僅かに縦に揺れた。
「なら話は早い。誰なんだ。こんな事をした奴は?」
「……わからない。情報統合思念体との通信が遮断されている」
 どういう事だ?
「いつから?」
「この世界が構築された時から…」
 となるとあの火曜か…。
「私がわかるのは、今の涼宮ハルヒからはもう、進化の可能性は見いだせない。という事だけ」
 それぐらい俺だってわかる。ハルヒがこんな世界望むわけが無い。
「わかった。ありがとう」
 畜生。あの長門でもダメだったのか。疑いたくないが…。やっぱりあいつに聞くしか…。
 俺は部室を飛び出し、教室へ向かった。空はすっかり赤に染まっている。まるであの時みたいだ。
 俺はあいつの前ではハルヒの話をするのはあえて避けてきた。ずっとあの時の事が気になっていたからだ。
 突如俺の前に現れた朝倉、朝倉に打ち明けたハルヒへの不満、「罪滅ぼしがしたい」、「よかったね。涼宮さん達から離れる事が出来て」
 さらに、他の奴らの記憶は消えてしまったのに、俺だけ記憶が残っている。さらにさっき知った長門と情報統合思念体との通信遮断。
これらの事を考えるとやっぱりあいつの顔しか思い浮かばない。
 なあ、朝倉。やっぱりお前なのか…。

216:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/25 20:14:23 BmhFSb0A
 とりあえず考えていても仕方がない。教室に入って朝倉に話を付けよう。
 俺は、いつも開け慣れた教室のドアを、今までに無いくらい慎重に、そしてゆっくり開けた。
「遅いよ」
「あぁ、すまん」
「あんまり遅いから帰っちゃったのかと思った」
 そう言いながら朝倉は、後ろ手を組んでゆっくりとこっちへ向かってくる。
「ほんとすまん。待たせちまって…」
「いいよ、だってキョンくん来てくれたもの」
 朝倉はいつもと変わらぬ優しい笑顔でそう返す。
「そうか、サンキューな。ところで朝倉、俺に用ってなんだ?」
「う~ん。用っていうかお話なんだけどね…。あのね…」
 朝倉は、後ろに組んでいた手を前に組み、上目遣いでモジモジしはじめる。
 俺は甘えを拭うために切り出した。
「実は俺も話があるんだ」
 朝倉は一瞬驚いたような表情をして顔を上げ、「うん…。キョンくんから話していいよ」
 そう言い、再び上目遣いに戻る。
「じゃ、じゃあ…。あのさ、あの時お前が言った言葉覚えてるか?」
「あの時…っていつ?」
 朝倉は、上目遣いながらも不思議そうな顔をする。
「あの日の夜、喫茶店でだよ」
 朝倉はさらに不思議そうな顔をする。
「もしかして、覚えてないのか…?」
「ごめんなさい…」
 どういう事だ。朝倉の仕業じゃないのか?
「じゃあ、涼宮が作ったSOS団も、俺がお前に涼宮の悩みを話した事も…覚えてないのか?」
 わずかな時間、沈黙が教室を支配した。
「やっぱり…。そうだったんだ…」
 その沈黙を破り捨てたのは朝倉だった。
「薄々そうじゃないかって気付いてたんだ…。キョンくん、涼宮さんの事ばっかり見てたもんね…」
 やはり気付かれていたのか…。
「本当はね…、キョンくんの事好きです。って言おうと思ったけど…。やっぱり止めた。キョンくんがその気じゃないならしょうがないもんね…」
「あぁ…」
 数秒間の沈黙。
「ほら、キョンくん。涼宮さんの所に行ってあげなよ。さっき、校庭に居るの見たから…」
 考えていても仕方ない。
「そうか、ありがとな。朝倉」
 そう言って教室を出ようとしたその時、
「キョンくん…。今までまとわりついててごめんね…」
 朝倉は床を向いたままそう言った。
「まとわりつくだなんてそんな…。お前といろいろ話してる時、すごい楽しかったぜ。だから変な事言うなよ」
 朝倉は依然と下を向いたまま。
「だからさ、これからも…」
「ほ~ら、あんまりモタモタしてると涼宮さん、またどこかに行っちゃうよ?」
 俺の話を中断するように、朝倉がそう切り出した。
「あ、ああ…、そうだな。またな朝倉」
「ううん、キョンくん。じゃあね!」
 そう言い残した朝倉の顔は、一見いつもの笑顔であったが、どこか悲しそうでもあった…。

 校庭に到着した俺は、とりあえずハルヒを探すことにした。しかし、どうしてうちの高校の校庭は無駄にだだっ広いのだろうか。
 校庭を見渡していると、野球部のベンチに人影があった。髪型から解るが、明らかに野球部員では無い。そうハルヒである。
 一体何をやってるのだろうか。俺はハルヒがいる野球部のベンチへ向かって走った。
 ハルヒはまた、さっきの体操着姿から制服姿に着替えていた。

217:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/25 20:15:24 BmhFSb0A
「よ、よう涼宮…」
 その声が聞こえたのか、ハルヒの肩がピクッと持ち上がった。
 本当にどうしちまったんだよ…。今までのお前なら、そんなビクビクしないだろ…。
 俺が話し掛けてから数秒後、ゆっくりとハルヒがこっちを向き、
「何?」
 と、相変わらず覇気のない声で返す。
「い、いや…。こんな所で何やってるのかと思ってさ…」
 ハルヒの後方のベンチを見たところ、背もたれに体操着がかかっていた。
 オイオイ。もう夕方というかほぼ夜に近いぞ、星だって見え始めてるし…。今から乾かそうとしたって…。
「そっちもこんな所に居ていいの? 朝倉を待たせてるんでしょ…」
「え?」
「さっきあんたと会った後、教室行ったら朝倉がいたからさ…」
 やっぱり教室に連れて行かれたのか…。
「いや、あの件はもう済んだんだ。だからここに来た」
「あっそ…」
 俺はゆっくりとハルヒとの間合いを、距離を縮めた。
「あのさ…。信じてもらえないかもしれないが、俺とお前はほんの二、三週間前まではSOS団っていう部活に所属しててさ…。そこでお前は団長やってたんだ…」
「ふざけないでよ! 馬鹿にしに来たならもう帰って…」
 久し振りにハルヒの怒鳴り声を聞いた気がする。
「ふざけてなんかいねぇよ! 団長の時のお前は今とは違って、声も一々うるさくて、無駄に偉そうで、意味もなく感情の起伏が激しくて…」
「お願いだから帰ってよ!」
 ハルヒの泣いてる顔を見るのは二度目か…。
「帰らねえよ!」
 俺はさらに間合いを積める。
「俺はお前が好きだ! いや、お前だけじゃない。前の世界にいた連中皆が好きだ!」
「何言ってんのよ…」
「俺はもう、お前が苦しむ姿なんか見たくないんだよ!」
 怯えるハルヒを、俺は 強引に抱き寄せた。制服が少々湿っぽいが構いやしない。
「ちょっと…止めて…。止めなさいよ! バカ…」
 口ではそう言っているが、抵抗はしてこなかった。
「涼宮…、いやハルヒ。あっちの世界に戻ったら、さっき言えなかった事言うよ」
「え…?」
 俺のセリフに疑問を覚えたのかどうかは知らないが、ハルヒは顔を上げた。
 暗くてよく確認は出来なかったが、頬はどこか紅潮していたような気がする。
 俺はすかさず、桃色に煌めくハルヒの唇に、自分の唇を乗せた。

 俺が出来る事はもうそれ以外に無い。それ以外の手段が見つからない。

 すると次の瞬間。周りが一瞬これでもかと言うぐらいに光った気がした。何ゆえ、目を閉じていたので周りの景色がどうなっているのか解らなかった。
もちろんハルヒがどんな顔をしているかもわからない。

 すると、頭が急にドシンと重くなったと同時に、腹にも荷重が加わった。
 さらにほのかに眩しい。そして聞き覚えのあるノイズが…

218:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/25 20:16:59 BmhFSb0A
「キョンくん、起きて~」
 その声を聞き、俺はベッドから飛び起きた。
「あっ、キョンくん起きた~」
 もしかして、俺は戻って来れたのか?

 ………
 ……
 …

 俺は今、放課後の部室にいる。もちろんSOS団のな。
そして、古泉とゲームをしながら朝比奈さんの美味しいお茶に心ときめかせ、俺が体験した摩訶不思議な出来事を、連中に説明しながら団長様であるハルヒを待っている所である。
「なあ長門、ほんとに知らないのか?」
「そう」
 しかし、不思議なことが多すぎる。長門は俺が別の世界に飛ばされていた事を知らないらしいし、情報を操作された記録も無いという。
それに、古泉の話によると、そんな大規模な閉鎖空間は発生していなかったという。
「古泉。本当に何も知らないのか?」
「ええ、そうですよ。それに、そのような事態が実際にあったと仮定しましょう。だとして、彼女がそんな自分に不都合な事しか無い世界を望むでしょうか?」
「確かにそうだが…」
しかも俺が登校した時、朝倉は学校にはいなかった。さらにあろう事か、一度転校して以来学校には戻ってきて無いという。
朝倉の件を長門に話してもみたところ。朝倉が復活した記録はやはり無いと言っていた。
 さらに朝比奈さんの話によると、
「時間の歪みを検出したという情報は入って来てないですぅ…」
「そうですか…」
 じゃあ約三週間前。いや修正後、というか実際の時間軸だと、おとといか。あの出来事は何だったのであろうか。それにあの約三週間の日々も一体…。
さらに、俺がハルヒに吐いた数々の暴言も、まるでなかった事になっている。
 その証拠に今日の朝っぱら、ハルヒはいつもと変わらぬ様子。いや、いつもよりハイなテンションで「今日は会議だからね! 絶対に遅刻しちゃダメよ!」
等と眩しいくらいの笑顔を俺に向けてくれた。
 やはりみんなの俺はとても長い夢を見ていたのだろうか…。
 いや、そんなハズは無い。
 だって、俺のポケットの中には、朝倉から貰った手紙がまだ入ってるからな。
 あの三週間の体験は夢でもなければ幻でもない。現実にあった事なんだ。
 そうだよな? 朝倉。

 ガシャン!
 懐かしいこの響き。そう、我らが団長涼宮ハルヒがようやく登場だ。
「さあて、みんな集まってるわね!」
 いつもの甲高い声。
「なあ、一つ言わせてくれ…」
「何よキョン。これから大事な会議よ。私語は慎みなさい!」
 さて、あの時言えなかったこいつとの約束を果たすか。
「なあハルヒ。俺はいつまでも、お前の味方だ」



END

219:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/25 20:47:44 DeyQDu8Q
ああ、泣きそうだ。GJです。

220:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/25 21:01:15 IFwOBnCc
乙そしてGJ!!!


221:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/25 21:34:27 fpq1e2OZ
>>218
おまえは神なのか?
ハッピーエンドで俺の涙まで持って行きやがって、どう責任を取ってくれるんだ

そういやタイトル何?

222:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/26 00:29:54 cWSEWpFG
乙です。盛り上がってまいりました。

223:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/26 01:36:35 6tg5L85G
>>218
原因不明でエンドというのも、どこかヒッチコック的な不気味さがあって面白いな。しかもハッピーエンド(元に戻っただけ?)ってのもいいw

先日までの過疎っぷりがウソのような投下ラッシュでうれしいよ

224:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/26 08:26:37 fR22jxzB
>>218
GJ!です!

225:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/26 21:00:07 UwbyHTOb
>>223
うん。こういう終わり方ができるのはSFの要素を含んでいるハルヒならでは。
それにしてもここのSSはクオリティが高い
ただのいじめで終わらないところも好感が持てる

226:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/27 13:26:01 5AQwqfZ6
なるほど

227:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/29 07:51:43 XugEOkqH
誰も来ないね

228:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/29 17:40:35 gt1CFshL
人が来ないのは微妙にスレ違いなのも1つじゃね?
次スレからは文芸サロンに移転しないか?

229:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/30 07:45:08 fjD+jvKr
そう文芸板に押し込めなくてもいいじゃん。佐々木や橘は殆ど出てこないし、特殊な指向のネタSS提供の場と思えば。  
当初は自分もVIP向きのスレかとも思ったが。

230:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/30 19:09:58 j9b/0tNh
ここでひっそりやるのも別に俺は悪くないと思う

231:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/30 22:51:05 DV+eJM7A
>>229
一応VIPにもその系統のスレはあるんだけどね

232:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/31 23:10:02 rrgpOr5w
あれ?

233:名無しさん@お腹いっぱい。
08/04/02 08:39:59 X+3GvBvs
過疎ですね…

234:名無しさん@お腹いっぱい。
08/04/02 21:55:51 mF28o2uz
「長門に重大なエラーが発生しました。」
近日公開!

235:名無しさん@お腹いっぱい。
08/04/03 20:18:27 LMSS2Iqj


236:朝比奈いじめ
08/04/03 22:16:32 kVRZ700D
朝比奈さんは今日もハルヒにいじめられていた


まず放課後SOS団の部室に俺が来た時からハルヒのいじめは始まっていた
部室の扉を開けて信じられない光景を見た
なんと全裸の朝比奈さんがロープに縛られていたのだ
俺は鼻血を出した
ハルヒ「あ・・キョンいいところに来たわね みくるちゃんの体触っていいわよ」
俺「ハルヒ いい加減にしろ」
俺は切れた
だがハルヒは俺の手をつかんで朝比奈さんの胸に当てた
柔らかい マシュマロみたいだ 
俺「うおおおおおおおお もう我慢できねえ」 
俺は理性を失って朝比奈さんの胸を触りまくった
そして俺は朝比奈さんのあそこにチンぽを突っ込んだ
朝比奈「キャーーー痛い・・痛いよーー」
朝比奈さんは悲鳴をあげた 
でもそんなの関係ねー 俺は大量の精子を出し倒れた

俺が倒れた後朝比奈さんは裸のまま走って逃げだした
そして俺は数分後にめを覚ました
そしてすぐに状況をハルヒに知らされて俺はショックをうけた
俺「ああ・・俺はなんて事をしてしまったんだ・・でもそんなの関係ね~」
ハルヒ「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
しらけてしまった
俺はその後服を着て家に帰って行った
      
             完 


237:名無しさん@お腹いっぱい。
08/04/04 08:17:56 5VeDZnH7
SS更新まだみたいだね

238:名無しさん@お腹いっぱい。
08/04/05 00:08:01 AL9EENvH
                     厶:::::::.:/:/,.. :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ  ̄         _  --‐‐
                   __ /r〃:.::.:ぃ:.:.-__;;.:.:.:.:.:.:..:.:.:.:.:.:} __   --‐‐   ̄
        _  --―   ̄   {レ″`⌒ヽ}^ヽ⌒¨j:.:.、:.:.ヽ:.:.l
--‐‐    ̄           _ '∟._    j   }  }_:.:.:.ゝ-vリ-_ニ二¨¨`ー¬
             __  --‐‐   ̄   }‐t: ; ^ニ__‐-、   ´Vr'^ }ム´-::.<´  - 、 }
__   --‐‐   ̄            _,.! /   ´└'`   ヘ>、 ハ:::::::::.:.ヘ`   ^ヘ-―… "¨´ ̄
                  ,. '´ .', { _           广´  ヽ:::いヽミ......   ヽ
    _,,.. -―……-―----'´一…‐ ヘ`___       , ′     `丶、_:..:..:..:..   \
,. '"´      . -―… ‐- ...:..:..:.,>‐ i',ー`¨"    /           /:.:`フー-- .._ }   __,,..
       /.:.:.:.:.:. ...:.:.:.:.:.:.:.:.:.\'´    l:ヘ.     /     !       /:.:.:.:.:/        `ヽ ̄-‐ _
   ....  , ':. : :.:. ...:.:.:.li.:.:l;ハ:.、:';::ヽ:',    |:.:.:::T¨"、    / i     /:::::::::/_          ',
__:..:..:..:../.:.:. .:.:/.:.::l:.l:.:!j斗-_い:i:ト、い  l::.:.:.:.:',  \          _,厶-‐'´「             .   _
  `丶;'.:.::i:.:.:::!.:l::l:!:|i:l,.ィヘ^‐ヘ}リ代ヘ} '丁 ̄-ヘ   }     /´ ̄ ァ''"´ ̄{              ∨´
 .:..:..:.i:.:.:::!:.:.::l::l::l,iイl|   `ー'  './1   !:.:.:.:.:.:.:.:ヽ           /:.:.:.:.:.:::::::',           \
    -|.:::::i::/´Vハ川      , -‐ i ∨:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:\_ 、 __,,/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: ',
     l.:::::∧ '__ 〉         "´ | |::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.-‐ ̄:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:、
..:..:  ..:.!小:、:`ー-r          ! ,l:::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ. -┬‐-
 .:.   レヘいーぃi   ` ー-  、-‐'/..:!::::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/:.:',:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:::::`フ´l
    /   ―-ヽ、  、     |"´.:..:..:..ヽ:::::.:.:.:.:.:.:.:.:.:./:::.:.:.\:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::::::::::/::::::::!,.-‐'´ ̄¨¨`
 .:..i′          \ \   ヽ-- :..___:.\::::::.:.:.:/:::::.:.:.:.:.:.:ヽ:.:.:`:ー‐一:.'´.:::;:-‐'´..:..:..:..:..:..:..:....
.:..:..ヘ -‐-  _    \-ー-  '´        ̄`¨ヽ::::::::::.:.:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./:/..:..:..:..:..:..:..:..:..:..:..:..:.
:..:..:..:..\    `丶、    \         〈  `、::::::.:.:.:.:.:.i::.:.:.:.:.:.:.:.:.:,. :'´.:..:..:..:..:..:..:..:..:..:..:..:..:..:..
:..:..:..:..:..:..\          \ ヽ       ',   ;:::::.:.:.:.:.:l:::::.:.:.:.:./ .:..:..:_;,. -‐   ̄,: '´.:..:..:.
-一ー:/ `ヽ、          \}        ヽ  ヘ::::::.:.:.:.|::::::/ .;.  '"´    ..:,. '´   ..:/
―--/      `  ‐- 、  、    ヽヽ      \   ',:::::.:.:./ /    ....:..;. '´  ...:..:../
   ,′          \ ヽ     `ー-、    (ノ、 ヽ/     ..:..:..;. '´  ...:_;  '/  ,
  :i              `i     、 ヽ     ', /   ....:..:..:.,: '´  _,. - '´ /  .:..;.'
-_,,.:|               ',    ! ヽ  ぃ、 _,/  ...:..:..:..;. '´_,,.. -‐'´   /  .:..:..:/
:..:..:._!        ,.    rっ  ヽ、       i、 Y´ .:..:..:..:..:..:._∠-‐'´      /  .:..:..:..:/
 '´ i        个ー- ..___,,..  i ハ 卜 l゙i |:..:.._;,. -‐'"´            /  .:..:..:..:..:/
   .:_!        |            |.丨i  |:.l | ! !´          .....:.../  .:..:..:..:..:..:/    .
 / |         ト、       ,. l !:..! l :| ! `´     .......:..:..:..:..:.. /  ..:..:..:..:..:..:..:/    ..:..:.

239:名無しさん@お腹いっぱい。
08/04/05 15:26:31 y3bXXXoB
いじめカッコ悪いさんのSSをもう一度みたいな
IKAOHさんもいないし
管理人さんもいないし

240:名無しさん@お腹いっぱい。
08/04/05 16:35:28 RYKdTD9B
↑こういう懐古厨が一番嫌われる

241:名無しさん@お腹いっぱい。
08/04/05 16:58:43 sJjA9IHP
クレイジー・ザ・キョンもね

242:名無しさん@お腹いっぱい。
08/04/05 18:55:29 y3bXXXoB
>>240
死ね

243:名無しさん@お腹いっぱい。
08/04/05 22:25:00 JfyXQLva
俺はマッガーレ氏のが読んでみたいな
個人的に小指でぎゅっが良作だった。ただ俺が朝倉さん萌えだからかもしれんが
てかこんなに語っといて俺が言えた義理じゃないんだが
あんまこういう話しはしないほうがいいのかもな
なんつーか投稿しづらい感じになると、以前もこのスレで問題になったし
とりあえず、誰か投稿してくれ!俺は飢えに飢えてるぞ!

244:名無しさん@お腹いっぱい。
08/04/06 13:57:05 /ETGTs1w
誰かいませんか?

245:名無しさん@お腹いっぱい。
08/04/07 15:00:46 1iw6F47N
落ちませんように…

246:イソローク
08/04/07 18:09:32 RMOqQcAz
久々に見てスレ伸びてると思ったら回顧厨ばかり・・・。
少しは自分でSS書けよ。

247:名無しさん@お腹いっぱい。
08/04/07 18:19:56 6XE8sthg
>>1
他のアニメとかアニメキャラクターとか使っていいにしたら、書きやすいんじゃないかな
取り敢えず楽しくマッタリやればいいよ

248:名無しさん@お腹いっぱい。
08/04/07 21:00:23 1iw6F47N
>>247
ほかのキャラクターを使う時点でこのスレ終わり

249:名無しさん@お腹いっぱい。
08/04/08 18:01:59 syT8ZEwE
もっと神を越えたSS職人はいないものか

250:名無しさん@お腹いっぱい。
08/04/08 21:45:05 DLNWGGrV
SSをまたひっそりと投下させてもらうか
今回も例によって完成してないので、途中までの投下だけど、神が現れるまでの暇潰しにでも読んでみてくれ
あと今回はちゃんとタイトル考えといた
ぐだぐだ書くのもあれなんでさっそく投下してみる

タイトル『エス・オーエス・ハイスクール』


「失礼しました」
 はあ…、また明日も補習かよ。
 今日だって散々やらされたってのに。いい加減この勉強地獄から解放されたいぜ…。
 何故俺がこんなに憂鬱で、補習漬けなのかというと。それは今回の中間テストにおいて、ほとんどの教科で赤点を貰ってしまったからだ。
 おかげで親は学校に呼び出され、放課後は毎日のように補習。
 それもこれもアイツのせいだ。テスト期間だというのに、毎日毎日夜遅くまで部活動をさせやがるし。
 しかも夜遅くまで何をやっているのかと言うと、不良ドラマのビデオ鑑賞である。
 そのお陰でテスト勉強すら出来なかった。まあそうなると普段から予習復習をしておけという話になるのだが、当然SOS団の活動は年中無休なので、そんな事をする時間的余裕はすべからくして無い。
 そもそも、どうしてハルヒが不良ドラマにハマり出したのかと言うと、一ヶ月ほど前にテレビでやっていたビーなんとかハイスクールとかいうドラマのせいである。
そのドラマを見たハルヒは、すっかり不良ドラマの虜になってしまい。「不良ドラマ、フルコンプするわよ!」
等と宣言し、それ以来毎週のようにビデオレンタル店に行っては、その手のドラマやら映画やらを借りまくっているのである。
 お陰で俺の財布は悲鳴を上げる始末だ。
 まあその話はこれぐらいにして、どうして俺以外の団員はこうもいい成績を残せるのだろうか。是非上手い時間の使い方をご教示賜りたいものだ。
特にハルヒ、お前は何だ。授業という授業はほとんどと言っていいほど昼寝、もしくは俺の妨害しかしていない癖に、すべての教科で90点以上を獲得しやがって。
こんな理不尽な事を許してる奴誰だ。出てきやがれ。
 畜生…。
 なんだかすこぶる機嫌が悪い。しかもこれからさらに説教が待っている。そう、ハルヒからだ。大体、ハルヒが原因で赤点を取ってしまったというのに、何故ハルヒから説教を受けねばならんのだ。
 等とハルヒへの募る不満を脳内レポート用紙に書き足しながら、渋々部室へ足を運んでいる時の事である。
「イッテェ!」

251:名無しさん@お腹いっぱい。
08/04/08 21:46:45 DLNWGGrV
 誰かと肩がぶつかった。
 何がイッテェだ。肩がぶつかったくらいで叫びやがって。
「オイ、肩がぶつかったんだよ! シカトしてんじゃねーぞ!」
 ったくなんなんだよ、それぐらいで。
「うるせーな」
 怒りに任せてそう呟く俺。さらにそれだけでは怒りが収まらなかった俺は、肩がぶつかったぐらいでガタガタ騒ぐ貧弱モヤシ野郎の顔を見てやろうと振り返りながら
「肩がぶつかったぐらいでな…」
 んだよ。と続けようとした時、俺の視界にはとんでもない光景が飛び込んで来やがった。
 それと同時に、背筋に液体窒素でもかけられたかのような身も砕かれる程の寒気が走る。
「あ? 何だテメェ? もう一回言って見ろやオイ!」
 皆さんおわかりだろうが、敢えて状況説明をさせてもらう。
 俺と肩をぶつけたのは、この異常な絡み方と、いかにもな容姿と口調からして、この学校ではハルヒに次いで在校生ならその名を知らないと言っていいぐらいの有名人、
そして学校一のヤンキーと言っても過言では無い程の不良学生が仕切る、二年の不良グループである。ビデオではこのような光景すっかり見慣れてしまったが、
実際に体験するとなると底知れぬ恐怖を感じる…。
 むしろドラマを見てしまったせいかも知れない…。次に何をされるのかが予想できてしまう。どんなにルートを変えて考えてもボコボコにされるフラグしか立たない…。
「オイテメェ、シカトコいてんじゃねぇぞ!」
 そう言って俺のネクタイを掴んで無理矢理引っ張って来やがった。
「オマエよぉ~、山田さんに肩ぶつけといてタダで済むと思うなよ」
 そして、今まさに俺はその不良グループに絡まれてるのである。名前は山田と…。まあ、その取り巻き達。噂によるとコイツらは、最近三年が進路活動で大人しくなったのをいい事に、
突如我が物顔で学校を闊歩し始めた全く持ってタチの悪い連中なのである。
 さらに理不尽な事に、コイツらは下級生に無理矢理因縁を付けては、金を巻き上げたり、手足のようにコキ使わせたり、万引きやらひったくりやらを強要させたりと、
まさに下劣極まりない下衆野郎共の吹き溜まりみたいな集団なのである。
 そういやついこの間、俺のクラスメイトである山根も、コイツらに絡まれて困ってたっけ。まったく、ちゃんと注意して生活して無いからそうなるんだ。
 まあ、かく言う俺も今まさにコイツらに絡まれてネクタイを引っ張り上げられ、軽い呼吸困難に陥ってる所なんだが…。って、そうだよ。こんな悠長に状況説明+人物紹介をしている場合じゃない。
俺は今、とてつもなく最悪な状況に身を置かれてるんじゃないか? ああそうだ、そうに違いない…。
「オイ! テメェ聞いてんのかオラ!」
 そう言って掴んだネクタイをさらに引っ張り上げる取り巻き。
 頼むからそれ以上締め上げないでくれ…。
「オマエさ、山田さんをあんま怒らせない方がいいぜ?」
 と、さらに取り巻きの一人が俺の顔を馬鹿にしたように見下ろす。
「ああ、山田さんをマジで怒らせっと死ぬぜ。オマエ? はやいとこ謝っとけよ」
 と、もう一人の取り巻きも便乗。
「す…、すいま…せん…」
 首がネクタイに絞められて上手く声が出せねぇし呼吸もできねぇ…。
「あ? よく聞こえねーぞオラ!」
 だったら、今その手に掴んでるネクタイを離してくれ。いくらでも謝ってやるから…。

252:名無しさん@お腹いっぱい。
08/04/08 21:47:41 DLNWGGrV
 と、その時である。
「それぐらいにしといてやれ」
 なんと、俺と肩がぶつかった山田の取り巻きから救いの言葉が。
「コイツだってワザとオレにぶつかって来た訳じゃ無さそうだしな」
 あれ? 噂と違うぞ…。
「山田さんがそう言うなら…」
 はあ…。助かった。ってあれ? 俺と肩がぶつかった奴が山田だったのか。てっきりさっきまで俺のネクタイを力任せに引っ張ってた奴が山田なのかと思っていたぜ。
 まあそんな事はどうでもいい。なんだ、山田って全然いい人じゃないか。やっぱ噂は所詮噂だな。
 よし、じゃあ速いとこ謝って部室へと向かうか。
「ありがとうございます。今度から気を付けますんで…。本当にすいませんでした…」
「何を勘違いしている。俺の話はまだ終わってないぞ」
 え?
「謝って済むなら警察はいらないんだよ。この落とし前はちゃんと付けてもらうぞ。そうだ、お前。今からジュースをここにいる全員分買ってこい」
 前言撤回。やっぱ最低だコイツ。
「オラ! はやく買ってこいやオラ!」
 さっきからオラオラうるせーなコイツは。買ってくればいいんだろ。買ってくれば…。
「わかりました…。じゃあ、皆さんは何が飲みたいんですか?」
「日本酒」
「ビールだオラ」
「焼酎」
「ウィスキー」
「……ウォッカ」
 えっと、五人分か…。今の財政状況じゃ痛い出費だ…。ただでさえビデオレンタル代でお手上げだと言うのに。
 って、ちょっと待てよ。それはジュースじゃなく酒だろ…。それにお前らは未成年じゃないのか? って、不良にそのツッコミはナンセンスか…。
 てかその前に、そんなもん買ってこられる訳ねーだろ。当然ながら俺だって未成年なんだし。
「あのー…。俺未成年なんですけど…」
 すると山田が。
「それぐらいわかっている。誰がお前に飲ませると言った?」
 そうじゃねーよ。
「それはわかってます。ですから…。俺、未成年なんで…。そう言うのは買えないんですけど…」
 それを聞いて、さっきからオラオラうるさい取り巻きが声を荒げながら。
「あ? 未成年? なんだそりゃ? 俺らはもう心は成人してんだよオラ!」
 だから何だよ。こっちはお前の精神状態なんか聞いちゃいねーよ。
 すると、さっきまでずっと黙り込んで、俺が絡まれてから「ウォッカ」としか口にしなかった取り巻きが、
「……俺が付いて行ってやる。それなら買えるだろ」
 確かに。って、何故俺が納得してしまったのかと言うと、どう見てもコイツはオッサンにしか見えなかったからだ。制服がスーツに見えてしまう程にブレザー姿が似合っている。
これで制服の上下が同色だったら完璧にスーツにしか見えんだろう。
「わ、わかりました…。ありがとうございます…」
 って、俺は何承諾しちまってんだか…。

253:名無しさん@お腹いっぱい。
08/04/08 21:49:56 DLNWGGrV
 そんなこんなで俺は、地獄の坂を下っている最中なのだが、ものすごく気まずい…。ただでさえ、今日知り合った上級生と肩を並べて歩くのだって気まずいってのに、
さらにその上級生は不良と来たもんだ。オマケに何も喋らないし。まだあのオラオラ言ってる奴が同伴の方が良かったかも知れないぜ…。
 結局お互い無言のまま、学校から一番近くというか無口な不良に無言で道を案内されるまま酒屋に来てしまった。
 俺は早いとこ買って戻ろうと思い、店に入ろうとしたその時である。
「…オイ、お前は外にいろ」
 いきなり口を開いたかと思ったらそんな事を言いやがった。
 もしかして代わりに買ってきてくれるのだろうか。だとしたら非常にありがたい。
 俺はお言葉に甘えて外で待つことにした。
 暇なので店の外から中の様子を見ることにした。すると、とんでもない光景が飛び込んできた。なんと、カゴにお酒を入れたかと思ったら、なんとそのまま店を出てきてしまったのである。
そう、いわゆるカゴだしである。さらに驚いたのは店員の対応である。「またかよ」みたいな目で見つめているだけ。さすがは不良、地元住民はもう恐怖してしまって何も出来ないらしい。
 しかしこれはあまりにもマズいだろ…。カゴの中をざっと見ただけでも5000円分ぐらいはあるぞ…。やっぱりここは注意を促して置かないと。
「あ、あの…。さすがにこれはマズいんじゃないですか…?」
 五秒程の間が空き。
「……お前に酒の味がわかるのか?」
 そうじゃなくって…。コイツには罪悪感の欠片も無いのか…。
「いや、さすがにお金ぐらい払っておかないと…」
 また五秒程の間が空き。
「…この店は俺ん家が経営している。だからいいんだ」
 結局は自分の首を自分で絞めているのだから、そういう問題じゃないと思うんだが…。
「でも、やっぱり…。品物は品物なんですし…」
 またもや五秒程の間が空き。
「…だったらお前が支払うか? せっかく今回は特別に奢ってやろうと思ったんだがな」
 そこまで言われては仕方ない。
「いっ、いえ…。ゴチャゴチャ言ってすいませんでした…」

 まあそんなこんなで、学校に戻ってきたのだが…。時刻はすっかり夜の七時を過ぎてしまっていた。
 ハルヒの事だからまだ学校に残って不良ドラマのビデオを見ているのだろうが、今から行ったら何言われるかわからん…。かと言って行かない訳には行かない。明日何言われるかわからんし…。
 まあ、今日行くしかないのだろうな。仕方ない、ある程度の覚悟はしておくか…。

254:名無しさん@お腹いっぱい。
08/04/08 21:51:48 DLNWGGrV
「じゃあ先輩方、俺はこれで帰りますんで…。色々と用事もあるし…」
 そう言って背を向け、部室に向かおうとした時、肩に凄まじい荷重が加わった。
「な、なんすか…」
 恐る恐る振り向く俺。
「貴様、誰が帰っていいと言った?」
 山田である。山田は俺の肩をがっしりと掴んで離そうとしない。
「いや、でもこんな時間だし…」
 すると取り巻きの一人が。
「馬鹿かお前は、これから楽しくなる時間だろが」
 いいよ別に、興味ないし。はやく自由にしてくれ。
「…お前も飲みに付き合え」
 と、万引き犯。
 俺は一体どうなっちまうんだ…。


 と言うわけで俺は今、二年の教室で不良達に混ざって飲み会とやらをしているのだが、当然のように俺はお酒などには一口も手を付けてはいない。
酒の怖さは夏休みの合宿で十分思い知らされたからな。
 しかし、コイツらも可愛い奴らである。飲み会の準備をしろ。等と俺に言い、何をするのかと思いきや、小学校でよくある六人班の形に机を並べろ。と言い出した。
 しかも俺は何故か真ん中。しかも向かいの席は山田というなんとも嫌な席に座らされてしまった。
 俺はどうすりゃいいんだ? まさかこのまま、コイツらのバカ騒ぎを見物してなきゃいけないのだろうか…。だとしたら、まだドラマを見ていた方がマシだぞ…。
ドラマなら絡まれる心配は無いし、タバコの煙たさも、酒の匂いも伝わって来ないからな。
「おいお前、なんか芸やってみろ」
 言わんこっちゃない…。
「そう言われましても、俺そういうのはちょっと…」
 残念だが、俺は人前に出せるような芸を持っちゃいないし、考えたこともないぞ。
「あんだとオラ! 何でもいいからやれって言ってんだよオラ!」
 うるさい奴だな。こんな所で醜態は晒したくないんだよ。
「はやくやれよ」
「ほら、こっちは時間ねーんだよ」
 ったく、野次るなよ。やりたくないもんはやりたくないんだ。
「だから…。そういうのはあんまり…」
 と、俺がひけ腰にぺこぺこしながら否定の意を表してるとき、山田が口を開いた。
「お前、何組だ?」
 いきなりなんだよ…。
「一年五組…。ですけど…」
 クラスなんか知ってどうするつもりなんだ?
「そうか五組か…」
 どうしたんだ? 黙り込んで。
 すると山田は取り巻きの一人に。
「そうだ。おい、アイツ呼びだせ」
 ん、アイツって誰だ?
「わかりました。アイツっすね」
 そう言って教室を後にする取り巻きの一人。というか、よくアイツという言葉一つで誰だかわかったな。
 教室を沈黙が包む。
 廊下からかすかに声が聞こえる。
 なんだか、麻雀だのタバコだのはやく来いだの殺すぞだの聞こえる。
 どうやら俺と同じ運命を辿った哀れな仲間を呼び出しているらしい。
 すると声が止み、取り巻きの一人が教室に戻ってきた。そして山田の所へ近づき、
「すぐに来るそうですぜ」
 そう言い、定位置に戻った。
 すると山田が、
「今、お前の兄弟を呼んでやったぞ。お前もこれから来る兄弟の態度を見て、自分がどうするべきかよく考えるんだな」
 そう言い、山田は酒瓶を片手でかざし、
「よし、続きでもするか」
 と威勢のいい声を上げ、飲み会は再開された。
 俺の兄弟と言われても、妹しかいないんだが…。って、そんな無粋なツッコミはどうだっていい。てか俺はもうコイツらの舎弟になってしまったのか…。一体誰が来るのだろうか。
 やれやれ。

255:名無しさん@お腹いっぱい。
08/04/08 23:08:08 syT8ZEwE
wktk

256:名無しさん@お腹いっぱい。
08/04/10 02:49:42 m1fxou+e
wktk

257:名無しさん@お腹いっぱい。
08/04/10 21:00:43 h3wQWRmw
>>254からの続き



 不良共に理不尽な絡まれ方や要求をされながら待つこと約三十分。やっと俺の兄弟とやらは現れた。
 そいつの顔を見て俺はつい声を漏らした。
「山根…」
 そういや山根もコイツらに絡まれて困ってたっけ。
 すると山根は。
「や、やあ…。キョン君…君もいたのか…」
 走ってここまできたのかは知らないがずいぶんと息が荒い。それに、結構な荷物も抱えている。
「よう、山根…」
 状況が状況なので、すごく気まずい。なんだか、お互い見られたくないものを見られてしまった感じで。
 まあなんだ。とりあえず、そのズレた眼鏡直せ。
 山根が来るなり、あのうるさい不良が。
「オイ山根オラ! お前の十八番コイツに見せてやれよオラ」
 と、俺を顎で指す。
「い、今からですか…」
 と、弱気な口調で山根。
「そうだよ! はやくやれやオラ!」
「は、はい…」
 どうやら山根は、何か芸を見せてくれるらしい。嫌なら断ればいいのにね…。
 すると山根は教卓の上に立ち、
「こ、これから…げ、芸やります…」
 と、声を震わせながら言い放ち、芸をはじめた。
 正直、見るに耐えない。山根はベソをかきながら必死に芸をしている。それとは裏腹に、この不良達は嘲笑しながら
「つまんねーんだよ。バーカ」
「もっと面白い事やってみろや!」
「オイどうした? 仲間が見てんぞ、仲間が?」
 などと罵声を浴びせている。
 さすがにコイツらには殺意が湧いた。やらせといてその言いぐさはあんまりだろ。しかも十八番等と墨も付けといて。
 それと同時に山根にも対しても怒りがこみ上げてくる。
 泣きながらやるくらいなら断れよ。断ったら何されるかわからないって恐怖があるから断れないのだろうが…。
 と、取り巻きの一人が席を立ち、山根が芸をしている教卓へ向かった。
 嫌な予感を脳裏に過ぎらせながら見ていると。
「いい加減つまんねーんだよ」
 そう言って教卓を思いっきり蹴飛ばしやがった。
 嫌な予感的中だ…。
 教室に響く、けたたましい金属音と鈍い音。そう、山根は教卓から落下し床に頭をぶつけてしまったのだ。
 山根はピクリとも動かない。そんな山根を見て大笑いする不良連中。
 さらに教卓を蹴飛ばした取り巻きは、倒れてぐったりする山根の後ろ襟を掴んで持ち上げ、
「オイ、倒れてんじゃねーぞ。はやく芸の続きやれよ!」
 等と言いながら山根を床に叩きつけた。
 さらにあのうるさい取り巻きも山根のほうへ向かい、

258:名無しさん@お腹いっぱい。
08/04/10 21:01:42 h3wQWRmw
「寝てんじゃねーぞオラ!」
 と叫びながら山根の腹を思いっきり蹴り上げた。
 当然ながら咳き込む山根。
 さらにもう一人の取り巻きも席を立って山根のほうへ向かい、
「オイ、そっちの肩もってくれ」
 そう言って、ぐったりする山根の上半身を持ち上げた。
 すると取り巻きの一人が。
「山田さんもコイツに喝入れてやって下さいよ」
 等と言い出しやがった。
 すると山田は。
「おう、丁度この拳も鈍ってたしな」
 そう指をコキコキ鳴らしながらゆっくり席を立ち、山根のほうへ向かい、右手を思いっきり振りかぶって山根の腹にパンチを食らわせた。
 声にもなってない声を上げる山根。
 そんな山根をお構いなしに何度も殴り付ける山田。
 いくら酒が入ってるからってこれはやり過ぎだろ…。
 これじゃ山根があんまりだ。
 俺が耐えきれず席を立とうとした瞬間、片手にずっしりと重みが加わった。
 その重みの正体は万引き犯のオヤジであった。
 数秒目が合い、
「…やめておけ」
 と、小さめの音量で言ってきた。
「で、でも…」
 クラスメイトがこんな事されてるのに、黙って見てられるか…。
「…今行ったら、お前もやられるぞ。それでもいいのか?」
 俺は渋々席に着いた。
 結局は己の体を大事にしてしまう自分に嫌悪感を抱きながら。
 しかし、何故コイツは俺をかばってくれたのだろうか。さっきから少々気になっていたが、コイツらは他の奴らとは違うオーラを感じる。
 するといきなり山田が、
「オイ、お前もやってみろ」
 そう言って俺を呼び出した。
 何故か起立する俺。
「な、なんでですか」
 当然ながら反論する。
「だらしない兄弟に、お前も喝を入れてやれ」
 そんな事言われたって…。
「い、いや…」
 出来ません。と言おうとしたとき、再び片手に荷重が加わる。
 そう、万引き犯のオヤジだ。
「…今は言う事を聞け」
 そう俺に小声で助言する。

259:名無しさん@お腹いっぱい。
08/04/10 21:02:59 h3wQWRmw
「は、はい…」
 俺は仕方なく承諾した…。

 しかし、コイツらもひどい奴らだ。山根は口の隙間から血をにじませてるというのに…。って、これから殴ろうとしてる俺が言えた事じゃないな…。
「すまん山根…」
 俺は小声でそう詫びを入れ、軽く腹を殴った。
「ウッ…」
 山根の苦しむ声がかすかに聞こえた。
 激しい罪悪感が俺を襲い、心臓が潰れちまいそうになる。
「なんだ? まだ喝が足りてないらしいな。ほら、もっとやってやれ」
 無論、そう口にしたのは山田である。
 しかし、これ以上やると山根も俺もどうにかなっちまう…。
「もういいじゃないですか…。山根も十分喝入れられたと思いますし…」
 俺はやんわりと抵抗してみた。
 だが、山田は俺の言う事をまったく聞こうともせず、なら次はお前が殴られてみるか? と言わんばかりの目で俺を睨みつける。
 ヤバい、マジでくたばる五秒前…。
 するとその時である。真っ当な生き方をしている俺を、天は見放さなかった。
「…なあ山田、そいつをオモチャにするのはそこまでにして、飲みを続けようじゃねーか。俺はまだ飲み足りないんでな」
 と、ドスの利いた声を発したのは、もちろん万引き犯のオヤジである。この人には本当に助けられた。こんな呼び方もあれだし、この飲み会が終わったら名前を聞いておこう。
 まあ、ワガママを一つ言わせてもらえるのであったとしたら、俺が呼び出された時にそう言ってもらいたかった。

 何はともあれ、俺はあれ以上山根を殴らずに済んだ。これでひとまずは安心だ。
 というわけで飲み会は再開された。
 山田達は山田達で、山根が持ってきた麻雀セットで、これまた山根に買わせてきたタバコをふかしながら、麻雀をジャラジャラと騒音を立ててやっている。
 しかも山根は、さっきのが十分効いたのか、教卓に背をもたれたままうんともすんとも言わない。
 まあ、隣の騒音が止まないうちは安全だろう。さすがに山田達も麻雀で勝つことに夢中になってて、山根の事は眼中にないからな。
 で。俺は今、万引き犯とちょっとした会話をしている所だ。
 飲み会が終わったら聞こうと思っていたんだが、まあせっかくだし今名前を聞いておくか。
「あの…そういや名前はなんでしたっけ?」
 約三秒の間の後。
「…鮫島だ」
 鮫島っていうのか。下の名前は…。まあいいか。
「あの鮫島さん、どうしてあなたみたいな人が、こいつらとつるんでるんです?」
 周りに聞こえたらちょっと面倒な事になりそうなので、少し声のボリュームを下げて問いかけてみた。
 今度は八秒程の間が空き、
「…そんな事はどうだっていいだろ。さあ、お前も飲め」
 そう言って、俺に缶ビールを手渡そうとし、こう続けた。
「俺はめったにこうやって他人には酒を勧めないぞ」
 なんだか上手くはぐらかされた気もしないでもない…。
 それに俺はもう酒は飲まないと心に誓ったのだ。でもまあ、こんな事言われたら仕方がない。一本ぐらいなら問題無いであろう。
 そう思って悪魔の囁きに耳を貸し、まんまと飲んでしまったのが運の尽きであった。
 無論、空けた缶の本数は一本だけに留まらなかった。

260:名無しさん@お腹いっぱい。
08/04/10 21:05:18 h3wQWRmw
 まあ結論から言うと、俺がシラフに戻ったのは日が出てからである。どうやら俺は酔いつぶれてそのまま寝てしまったらしい。
 ふと携帯を見てみた。
 朝の六時…。しかも親とハルヒ、その他SOS団員から何件も着信が来ている…。
 一体何言われるやら…。まあ、親が血迷って警察に捜索願を出していないこと祈ろう。
 でもって、俺は辺りを見渡してみた。もちろんの事、山田達も机に突っ伏している。それに何故か山根が全裸で床に倒れて寝ている。
 そういえば、よく記憶には残っていないが、山田達は山根をこんな姿にして、いかがわしい事をやるよう強要していたような…。
 止められなかったのは俺の責任でもあるかもしれないし、山根には後で謝っておこう…。
 まずはこいつらを起こさねば…。とも思ったのだが、今起こしたとして、寝起きの悪そうコイツらは何をしでかすかわからん…。
 なんか足りない気もしたのだが、とりあえず山根から起こそう。
山根から剥かれた制服を、山根の大切な場所にかぶせ、
「おい、山根…。起きろ、朝だ」
 体を軽く揺すってやる。
 何回か揺すってやると、山根は顔を隠すように片手を被せ、
「うぅん……。何ママ? もう朝? 僕まだ眠いよ…」
 …。今のは聞かなかったことにしよう…。
「山根、しっかりしろ。ここは家じゃない、学校だ」
 すると山根は。寝ぼけ眼を擦りながら、
「……え? あれ? あっ! キ、キョンくん!?」
 俺の顔を見るなり、完全に夢から醒めたらしく、いきなり飛び上がったかと思ったら、床に思いっきり尻餅をついた。
 しかしこの驚きぶりは異常だろ…。確かに、自分起き場所が学校で、さらには全裸、極めつけに自分の赤裸々なプライベート生活を、少々暴露してしまったのだから仕方ないとは思うのだが…。
 こいつは酒を飲んでいなかったのだからそれぐらいの状況判断力はちゃんと身につけて置いてほしいものだ。
 いや…待てよ…。そういえばこいつも山田達に無理矢理酒を飲まされていたような…。うろ覚えなのでどうとも言えんが…。
「どどど、どうして僕が…。こんな所に…」
 やっぱり飲まされたのか…。こいつも飲んでしまうと記憶が吹っ飛ぶタイプの人間なのか。というか…。
「わかったから、とりあえず服を着てくれ…。まあなんだ、その…丸見えだぞ?」
 それを聞くなり、
「ひゃああああ!」のようなわけのわからん悲鳴を上げ、服を持って廊下へと出て行った。
 まったく、さっきの悲鳴でコイツらが起きてしまったらどうするんだ…。こっちは完全に眠気が醒めたぞ。
 と、もう一度山田達のほうへ目をやる。
 よく見るとアイツがいない…。そう、鮫島である。俺は不覚にもこの中では重要人物とも言える 鮫島の存在を寝ぼけて忘れてしまっていたとは…。
 しかし鮫島も気の利かない奴だ。帰るのであれば、俺達を起こしてくれれば良かったのに…。

261:名無しさん@お腹いっぱい。
08/04/10 21:08:35 h3wQWRmw
みんなには申し訳ないけど、投下の頻度が遅れるかもしれない…orz
でも完成はさせるので気長に待っててくれたら嬉しいです…

262:名無しさん@お腹いっぱい。
08/04/10 21:34:01 ukdPmmpt
あらあら
>>261
いつでも待ってますので
続きお願いします


次ページ
最新レス表示
レスジャンプ
類似スレ一覧
スレッドの検索
話題のニュース
おまかせリスト
オプション
しおりを挟む
スレッドに書込
スレッドの一覧
暇つぶし2ch