ギャラクシーエンジェルのSSを集めるスレat ANICHARA2
ギャラクシーエンジェルのSSを集めるスレ - 暇つぶし2ch2:猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ
08/01/14 23:08:25 tJ30ac5L BE:89829656-2BP(6504)
私も投下してみようと思います。

1945GAサイレントラヴァーズ(エンジェル隊が1945年にタイムスリップ)
今までのお話
URLリンク(ga1945.hp.infoseek.co.jp)



3:猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ
08/01/14 23:14:55 tJ30ac5L BE:53897292-2BP(6504)
第四部Aパート「ヒロシマより愛を込めて・・・・」

昭和20年4月9日 ハッピートリガー PM04:30
横須賀軍港を後にしたハッピートリガーは機体を夕日に煌かせて西へと飛行している。
「ヴァニラの様子はどうだい?」
フォルテは頻繁にヴァニラの容態を気にしていた。紋章機とはいえ負傷者を運ぶのははじめてである。
「大丈夫ですよ。安定しています」
付き添いの軍医はすぐにヴァニラの無事を知らせてくれた。
高度3000メートル当たりを飛行しているため下界もよく見える、静岡県上空は雲ひとつなく富士山もよく見えている。
「あれが富士山っていうものかい?」
「ええ、この日本を代表する山ですわね。とても綺麗なお姿ですわね」
隣に立っているミントも夕焼けに染まる富士山に見とれていた。
「これは紅富士といって美しいものらしいですね。でもこんなに綺麗な富士山が見られるのは運がいいらしいですよ」
ノーマッドが富士山について解説してくれる。
「だって富士山はとても嫉妬深く美人の女性が来るとその姿を雲で隠してしまうというのですから、今日はよく見えてますがアハハ・・・」
「アハハそりゃあよかった、よかった」
「そうですわね」
「ぎゃぁあああああああ!」
ノーマッドが恒例のお仕置きを受け断末魔の声を上げる。
「コホン、さてもう後数十分で関西と呼ばれる地域に差し掛かりますわ。おそらく日没後なので目標物が特にありませんが頼みますわね」
「はいはい任せな、明石海峡が瀬戸内の玄関口なんだろ?」
「はい、その通りですわ」
ミントはフォルテの問いに海図を見ながら答える。
『それにしても烏丸大佐達は大丈夫なのでしょうか・・・・・』
はるか後方に抜き去った輸送艦隊の方をミントは心配そうに見届けた。


4:猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ
08/01/14 23:16:03 tJ30ac5L BE:104800875-2BP(6504)
第四部Aパート「ヒロシマより愛を込めて・・・・」

昭和20年4月9日 紋章機輸送艦隊 PM04:30
それぞれの方向に分かれるエンジェル隊を旗艦鹿島の艦橋から見送った正光は東京湾内であるにもかかわらず機雷への神経を尖らせていた。
すでに接雷事故も起こっていたのだ。
しかしこんなものは序の口に過ぎない、浦賀水道を抜ければ太平洋の外海で米潜水艦が牙をむいているのだ。
ました艦隊の速度も遅く、潜水艦に捕まっては逃げ切るのは困難であろう。
「烏丸参謀、久々の海に緊張されていますか」
鹿島艦長平岡は正光の硬い表情を察し一声かけてくれた。
「ええ、これからの事を思うとね・・・・」
「大丈夫、うまくいくよ」
平岡は正光の肩を叩いて艦の業務へと戻る。正光も少し息を吐き再び気合を入れなおすことが出来た。
丁度その時爆音が艦隊上空に聞こえてきた。すぐに見張員が双眼鏡を向け、正光もそれに続いた。
双発エンジンの航空機が数機群れを成してこちらに向かってくる。三式一号潜水艦磁気探知機装備の陸上哨戒機東海である。
「友軍機です!」
見張員の声が響く。
「おお!館山の901航空隊のおでましか」
正光はすぐに所属部隊を察して声を上げた。東海は対潜水艦迎撃において台湾海峡や済州島、小笠原などで1週間7隻を海に葬る戦果を上げていたのだ。
「おーい!おーい!」
甲板の兵達は友軍機に大きく手を振る先に機体を夕日にてらして東海は通過していった。


5:猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ
08/01/14 23:17:14 tJ30ac5L BE:41921227-2BP(6504)
第四部Aパート「ヒロシマより愛を込めて・・・・」

昭和20年4月9日 佐世保軍港引込み線 PM06:00
D51貨物専用蒸気機関車がゆっくりとバックで入線してくる。黒煙あげドレインから水蒸気を噴出し停車すると補助員炭水車に後方でカンテラを振る。
D51はゆっくり後退しまたカンテラの合図で停車する。
そしてまたカンテラが振られるとゆっくり後退しガシャンと連結作業を終了した。
「今日の荷は機密の物もありますから注意してくれ」
作業を見守る下士官が機関士と機関助士に話しかける。
「中身は何です?新兵器ですか?」
若い機関助士は興味本位で下士官に尋ねた。
「コラ、機密だといわれているだろう」
下士官より先に機関士が機関助士の頭をコツいた。
「はっはっは、まあいいじゃないか」
下士官と機関士は顔見知りであるため笑って済まされる。そして機関士に耳打ちでこっそりと積荷を教えた。
「実は沖縄で上がった重戦闘機の残骸とかで、ばらしてでも陸路で運ぶそうなんだ。気をつけろ車掌車には見張りも乗り込むぞ」
「そりゃ物騒なものだな。こっちも気をつけるよ。で、貨物15両の18時5分発と」
「うむ頼むぞ」
「はいはい」
機関士と機関助士は簡単な敬礼を交わし本務機へと乗り込んだ。
すぐに信号機は青信号に変わる。蒸気機関車独特の出発前の音が聞こえ始め勢いよく汽笛が鳴らされた。
「出発進行!」
「出発進行!」
D51の動輪がゆっくり動き始め力強く貨車を牽引していく。
「定時!」
「はい定時!」
規律正しい復唱を聞けば、後ろの貨車達もゴトゴトと動き始めてゆく。
行き先は呉軍港への鉄路の旅でこちらも紋章機輸送作戦を開始した。


6:猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ
08/01/14 23:20:25 tJ30ac5L BE:83840674-2BP(6504)
昭和20年4月9日 ハッピートリガー PM06:30
松山航空隊の支援を受けながらハッピートリガーは呉軍港上空へと差し掛かりつつある。
「フォルテさん、呉軍港沖合いに漁船が待機しているそうですわ。そちらでわたくしとヴァニラさんを」
「あいよ、ミント。広島までご同行頼んだよ」
ハッピートリガーは速度を落としつつ暗い海に浮かぶ漁船の灯りを探していた。
「あれだね」
ハッピートリガーの前方映像を拡大すると漁船がかすかな灯りを灯して待機している。
「あれですわね。ノーマッドさん格納庫のハッチを開けますから注意してくださいまし」
付き添いの医師や看護婦はヴァニラの横たわるベッドを押さえつける。
「そうです、注意してくださいよ。ヴァニラさんが海に落ちでもしたら・・・えああ~」
ハッチが開き始めるとノーマッドが海側にコロコロ転がりだす。
「たすけて~」
コロコロと転がりながらノーマッドはハッチから飛び出していった。しかしフォルテは漁船の僅差に機体を静止させホバーリングさせているためお先に漁船側にポトリと落っこちる形となる。
「お待ちしていました!それでは患者をお願いします」
漁船から手際よく漁師に扮した水兵が乗り込んできた。そしてあっという間にヴァニラを漁船に移し横須賀から来た医師たち乗り移り残るはミントのみとなる。
「ブラマンシュ少尉お早くお願いします!」
急かす水平の声にミントは渋い表情を浮かべる。
「もう、まだお話がありますのに!!」
「いいよ、早く行ってやんや。あたしも早く輸送艦隊の援護に回らなきゃね」
「分かりましたわ、続きはフォルテさんの帰還後にしますわ。それでは行ってまいります」
「ああ、じゃああたしもあんたら降ろしたらすぐに行くよ」
短い別れの後ミントはすぐに漁船へと飛び移った。
「ふぅ・・・・さてと烏丸大佐の援護へともどりますか」
ハッピートリガーはハッチを閉め再び上昇すると東の空に消えていった。


7:猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ
08/01/14 23:22:30 tJ30ac5L BE:26949233-2BP(6504)
第四部Aパート「ヒロシマより愛を込めて・・・・」

昭和20年4月9日 船内 PM06:45
ハッピートリガーが東の空に消えると漁船の機関音がより大きくなった。
「出発します。船内にお入りください」
漁師に扮した水兵に促されミントは船内へと入ると船はゆっくりと動き出した。
「舟入あたりに陸軍のトラックが来ていますのでそこからは陸路でお願いします」
「病院のほうはもう受け入れていただけますの?」
「昨日一部屋確保したとのことです。部屋の大掃除も済んでいますから安心してご静養ください」
「わかりましたわ。ありがとうございます」
ミントは陸軍病院の状況を心配していたが歓迎はされているようだったのでひとまず安心した。
「もうすぐ広島市内が見えるところにはいりますよ」
水兵が気を利かせてミントに広島市内が見えるところ教えてくれた。
「まぁこの地方においては大きな街と聞いておりますわ」
「ここは日清戦争の時大本営が置かれていました。陸軍病院からも近いのでお帰りの時はぜひご覧下さい」
「ありがとうございますわ」
ミントがやさしく微笑むと水兵は不器用な苦笑いを浮かべた。
「さてそれでは・・・」
ミントは立ち上がると広島市内の街並みを見ようと身体をのばした。しかし、灯火規制の広島市内は闇の中である。
ミントは残念そうに腰を下ろすとふと眠気に襲われる。漁船の機関から伝わる振動はとても心地よく疲れもありご自慢の耳を
アイマスクに眠り始めた。
「お疲れでいらっしゃるのね」
ヴァニラに付き添っている看護婦が予備の毛布をミントにかけてやる。
「後40分程度でつくと思いますので」
水兵も眠りを邪魔しないよう付き添いの医師たちそっと到着時間を教えてくれた。



8:猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ
08/01/14 23:23:54 tJ30ac5L BE:53898629-2BP(6504)
昭和20年4月9日 紋章機輸送艦隊 PM06:30
こちら輸送艦隊は大島を左手に伊豆半島を迂回しながら下田港を右手に驀進している。
日もすっかり落ち索敵の結果潜水艦や航空機は発見できなかったので正光も少し気を楽に海を眺めている。
「航海は至って順調、日も落ち波も静かなり」
平岡艦長がそっとつぶやく。
「そうですね。今のところは・・・・もうすぐ浜松か」
伊豆半島を抜けると浜松沖を通過する事になる。思い出されるのは航空母艦信濃のことであった。
「なぁに大丈夫さね参謀、信濃のように未完の器じゃなかろうね」
初めて海を渡る二機の紋章機を信じろと平岡は正光の肩をたたいた。
「失礼します!エンジェル隊分隊より入電、我ら分隊は硫黄島千鳥、元山両飛行場を奇襲し戦闘機郡を壊滅せり」
その瞬間周りの参謀や士官がどっと声を上げる。
硫黄島玉砕の一報から早数週間、米軍に第二の痛手をつけたのである。


9:名無し陸戦隊 ◆ozOtJW9BFA
08/01/14 23:25:39 S5U7cqpp
>>1
猛虎☆全勝様、今年初スレ立て乙であります!!

10:猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ
08/01/15 00:23:24 UPgFb4xe BE:95818548-2BP(6504)
第四部Aパート「ヒロシマより愛を込めて・・・・」
昭和20年4月9日 広島市街地 PM7:30
舟入での乗り換えは驚くべき速さで終り逃げるようにトラックは出発した。
トラックは厳重に締め切られているもののいたる所に穴が開いている。ミントはそこから暗闇の広島を見ている。
「もう相生橋です、もうちょっとで第二病院ですわ」
T字の鉄橋を渡り広島県産業奨励館という所を過ぎるとトラックは広島城の方へと曲がって行った。
「もうすぐ広島城ですわ、ここはねー日清戦争の時大本営が置かれまして今でもその建物がありますんで見に行ってください」
ミントにご当地自慢をする兵士はとても満足げに笑っている。
「そうですわね。時間がございましたら伺わせていただきますわ」
ミントも丁寧にそのすすめにニッコリと笑って答えた。
「ブラマンシュ少尉、もうまもなく到着です」
もう1人の兵士が外の様子を見ながらミントに到着を教えてくれた。
トラックはゆっくり門を通過すると玄関前で停車した。
後ろの目隠しがバッと外されると軍医と看護婦が全員外に出てミント、ヴァニラの到着を待っていた。
「敬礼!」
全員が統率の取れた敬礼をミント、ヴァニラに送るとミントは慌てて敬礼を返す。
「直れ!ヴァニラ・H少尉は診察室へミント・ブラマンシュ少尉を病室にお連れしろ」
「はい!」
軍医のキビキビした命令に看護婦たちがいそいそと動き始めた。


11:猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ
08/01/17 10:16:31 AY0K6sbe BE:89829465-2BP(6504)
第四部Aパート「ヒロシマより愛を込めて・・・・」
昭和20年4月9日 広島市街地 PM7:45
ヴァニラはすぐに診察室に運ばれ、ミントは病室へと案内された。
病室はとても広く細部にわたるまで掃除されていた。本日はミントも泊まるということで仮眠用の布団もしかれている。
「ここはおそらく大部屋ですね。ヴァニラさんVIP待遇じゃないですか」
「陸軍の見栄とはいえちょっとやりすぎですわね」
ミントはあきれた様にノーマッドに答える。そしてノーマッドを花瓶の横に置くと窓を一杯に開けて夜風を呼び込む。
陸軍第二病院は太田川のそばにあり、すぐに爽やかな風が病室へと吹き込んでくる。横須賀とは違い広島の風は肌寒くなく心地よいもので
ミントはしばらく窓から外の眺めながら髪を夜風にそよがせていた。
「ブラマンシュ少尉失礼します」
「あ、はい」
窓を閉めて振り返ると看護婦が立っており、ミントは髪を直しながら振り返った。
「松崎五郎先生がお見えです」
「とうぞ、かまいませんわ」
看護婦が扉を開けると中年男性が入ってくる。
「遠路遥々ご苦労様でした。アッシュ少尉の治療を担当する松崎です」
「はじめまして、ミント・ブラマンシュです。よろしくお願いします」
ミントが深々とお辞儀をする。
「さて、まずは診断結果だが航空機の機銃に撃たれたわりには軽症のようですな。アッシュ少尉の力に関してカルテと一緒に報告を受けています」
ナノマシンについて松崎はすでに理解をしているようでミントに説明は求めないようである。
「素晴らしい医療であるようですな、医者たるものあのような力は皆ほしがるでしょう。あーしかしだ、アッシュ少尉自身体力が相当落ちていると私は見受けます」
「大丈夫なんでしょうか?」
松崎の言葉にミントは不安そうな表情で質問する。
「なぁに安静にしていれば大丈夫ですよ。当面はナノマシン治療を認めることは出来ませんが人間には自然治癒力もあります。体力が回復するまではそれに頼りましょうや」
「わかりました。本日よりお世話になりますわ」
「うむ、では私はこれで・・・・ブラマンシュ少尉も今日はゆっくり休んでください」
松崎は再び診察室へ戻っていった。
「看護婦は交代で待機していますからいつでもおよびください」
看護婦も後から病室を出て行く。
「ふぅ・・・とりあえずは当分ここのお世話になりそうですわね」
ヴァニラの診断を聞いてミントは少し肩の荷が降りたようであった。鞄からメモ用紙を出すと何かを確認している。
「なんですか?」
「え、これですの?呉への帰り方ですわ。明日は呉に戻りませんとフォルテさんは輸送艦隊の支援にいかれましたし私が着任挨拶に行って紋章機格納場所も視察しませんと」
「1人で大丈夫なんですかね」
意地悪そうな声でノーマッドが尋ねる。
「広島県産業奨励館まで歩いて市電乗って広島駅へそこから呉線で呉、どうです?」
ミントは勝ち誇ったようにノーマッドを見る。
「すごくねーよ」
「ともかく!明日は午前中にここを立ちますからヴァニラさんの事を頼みますわよ」
その後、渡されたブラウスとモンペを鞄から出すとミントはため息をついた。
「そ、それ着るんですか。あはははは!」
ノーマッドをつかんで壁にたたきつける。
「・・・・・・・・・・・・」
「いいですの!わたくしだってこんなしたくありませんわよ。でもこの制服では街は歩けませんし・・・」
自分に言い聞かせるように変装用の服を枕元におくとヴァニラの寝るベッドに腰を降ろしてヴァニラの到着を待った。



12:名無し陸戦隊 ◆ozOtJW9BFA
08/01/17 23:36:53 fXzytfr2
回想 1944  

昭和19年 10月23日 西部太平洋 第3艦隊 空母大鳳艦内

前衛の伊吹から発光信号が届いてから間もなく、右舷前方の水平線上に、複数のマストが現れた。
双眼鏡を覗いてみると、重巡らしき艦を先頭に数隻、こちらへと向かってきている。
しかしまだ距離があるので、艦型の特定までは出来ないが間違いない。
無線封鎖の為、連絡を取る事が出来ないが、現れた艦隊は、台湾を出撃した志摩艦隊の様だ。
相手もこちらの存在を確認したのか、信号が送られてくる。
そこでようやく、艦橋の司令部要員達からも緊張が解けた。
内地を出港してから現在まで、第3艦隊の行動は順調に進んでいる。
ここで志摩艦隊を加えれば、後はフィリピン沖へと向かうだけだ。
このまま行けば明日には敵攻撃圏内に入るだろう。
双眼鏡を下ろした上田中佐は、小沢長官を見た。
小沢長官の表彰は明るく、窓の外を眺めていたが、こちらへ振り返り航海参謀に言った。
「この後の航路に変更はない、予定通り隊形を変更する」
小沢長官の発言に、皆は頷き、次の行動へと移る。
速度を上げた大鳳からは、準備を済ませていた爆装済みの戦闘機が発艦を開始した。
空に上がった戦爆は高度を下げると、周囲海上の見張りに入り、
他の空母からも電探を搭載した艦攻等、数機ずつ上がり、これで哨戒も万全である。
伊予灘から縦列隊形で航行を続けていた艦隊は、命令を受け、警戒機が飛ぶ中、対空輪形陣への隊形変更を開始した。
前後に位置していた巡洋艦、駆逐艦は速度を上げ、2席ずつ分けられている空母の周りに集まり始め、
やがて、左右に巡洋艦が着き、外延に駆逐艦が囲むと、大きな輪が完成する。
既にここから確認できないが、艦隊の前方には、前衛部隊の伊勢・日向、2隻の戦艦と、
残りの駆逐艦部隊が、対潜・対空警戒を行いつつ先行しているはずだった・・・

13:猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ
08/01/21 00:27:45 tGYulUnB BE:29943252-2BP(6504)
第四部Aパート「ヒロシマより愛を込めて・・・・」
昭和20年4月9日 瀬戸内海 PM8:00
ミント達を下ろしたフォルテはハッピートリガーをとんぼ返りさせ輸送艦隊との合流を目指していた。
レーダーで輸送艦隊の進路を確認しながら距離を詰めていくハッピートリガー、周辺にはこれと言った敵の反応はない。
とはいっても紋章機のレーダーに連動する識別信号もなくトリックマスター、ハーベスターの放つ信号で区別する輸送艦隊以外の海上に展開する艦船航空機は
全てアンノウンとして映し出されていた。
艦隊は無論無線封鎖を行っており、フォルテは頭をかきながら映し出されているレーダーを見つめていた。
「うーん・・・・これは味方なのか?敵なのか?」
ハッピートリガーのコンピューターは動きと速度から輸送艦隊周辺の潜水艦を確認しているが怪しい動きがなく見極められない状態だった。
「それにしてもこの時代の戦争はのんびりしているねぇ・・・・」
索敵技術は両軍フォルテから見て初歩も初歩、先に見つけて攻撃を仕掛けるという言わば原始に近い戦闘方法思わず呟いてしまう。
しかし、それは嘲笑ではない。かつて自分がやった最初の戦いを皆がやっているという懐かしさのものでもあった。
「まぁ・・・・烏丸大佐がついているんだ。速度維持のままでよしとしようかね・・・さて・・・」
おもむろに席から乗り出すと沖縄で手に入れた三八式歩兵銃を取り出す。
「ん~いいねぇ!こういうのは本当にいいよぉ~」
思わず口が緩み三八式に頬ずり、ガンマニアに悲しい性である。
守備隊に配給されていた銃で手入れもろくすっぽされていなかったものだがこの数日で博物館に飾れるほどの手入れが施されている。
三八式の長さはフォルテの心をつかんでいるのである。
「ハンドガンタイプも早く見せてくれないかねー」
フォルテは三八式を抱きしめながらまた目を輝かせていた。





14:名無し陸戦隊 ◆ozOtJW9BFA
08/01/21 01:59:48 lEfeN9Ck
回想 1944年

昭和19年 10月23日 西部太平洋 第3艦隊上空

哨戒飛び立ってからというもの、単調な飛行が続いていた。
大鳳を飛び出し、山口大尉の後ろに付いた白浪少尉の閃電は、艦隊を望みながら、碧い海原を周り続けた。
整備されたハー43発動機は、すこぶる好調で、速度を落とすのに苦労するほどだ。
訓練と変わらない飛行で、操縦に不安は無かったが、 退屈と言うわけでもない。
変わりに広い海を飛びながら、慣れない見張りをするのは、非常に神経を使う。
低速とはいえ、視界を駆け巡る海面から、敵潜水艦を見つけるのは簡単なものではなかった。
潜水艦の影といっても、海面に溶け込んでいるし、非常に小さく見つけづらいものである。
潜望鏡などは、米粒程の物を見つけるに等しいし、何より白浪少尉は敵潜がどんなものか実際に見た事もなかった。
とはいえ、万が一見逃したりしたら、母艦が雷撃を受ける可能性もあるので責任は重大である。
少しでもそれらしき物を見つけたら、すぐさま大尉に通報し攻撃しなければならないのだ。
少尉の機体の両翼下には、対潜用の3番爆弾が吊り下げられており、
敵影を確認したら、上空からこれを投下するのだが、爆撃訓練はやり方を一通り習った程度であり、
装備している射爆照準機と、少尉の腕では命中も期待出来ないだろう。
だが、今少尉の他に飛んでいる3機の分を合わせれば8発になる。
一斉に投下すれば、当たり所がよければいくらか損傷を与えられるはずだ。
無理に沈めなくとも良い。とりあえず敵潜に雷撃の機会さえ与えなければ、
その間に艦隊は、斜線から抜ける事が出来る。
こちらは潜む辺りを飛び回り、動きを封じていれば良い訳だ。
気持ちを抑え、白浪少尉は風越しに身を乗り出すと、見張りに意識を集中していると、
前を飛ぶ山口大尉機がバンクして機体を大きく旋回させた。
少尉も合図に従い大尉の機に追上して旋回する。さらに後方の2機も少尉のそれに習った。
夕方まで、およそ1時間弱の時間が残っていた。

15:名無し陸戦隊 ◆ozOtJW9BFA
08/01/21 02:34:19 lEfeN9Ck
初めて見る方もいると思いますので、
今更ながら作品についての簡単な御説明を・・・

回想1944年は一応、猛虎☆全勝様の作品。
1945GAサイレントラヴァーズの外伝から生まれた作品であります。
本編1部から約半年前の過去に遡り、
外伝に登場させた人物達の行動を描いたお話となっています。


その他補足


閃電とは何ぞや?


三菱17試艦戦(烈風)を基に作られた局地戦闘機。
航空本部の支援を受けて完成した。2千馬力級エンジン、ハー43発動機を搭載していて、
17試艦戦と異なり、速度・上昇性能を重視した重戦闘機となっています。
閃電という名称は、史実の双胴式だった閃電の開発中止に伴い、
変わりに付けられたものと言う設定です。


空母太鳳はマリアナで沈んでないかい?

建造計画の変更によって未完だった伊吹、鞍馬を防空巡洋艦に改造した為、
マリアナ戦には間に合わなかったと言う事にしました。
その分、建造に時間をかけているので、不都合部分の補修やマリアナの戦訓も取り入れた改装。
噴進砲や大口径機銃等の武装が追加されています。

16:名無しさん@お腹いっぱい。
08/01/21 07:00:33 70jHXTpy
この板にあるG.A.のスレって3つ?

17:名無しさん@お腹いっぱい。
08/01/22 08:18:51 +E0wI3ZH
いや、二つみたいだね

18:名無しさん@お腹いっぱい。
08/01/23 22:13:44 BtoVXRak
保守

19:名無しさん@お腹いっぱい。
08/01/25 03:28:52 vYfRWIGx
SS投下する人いないの?

20:名無しさん@お腹いっぱい。
08/01/27 00:19:50 7lpB7/dT
期待上げ

21:名無しさん@お腹いっぱい。
08/01/27 00:28:53 gGp6iV2y
る~んやってた頃は本編があれだったんでいろいろ妄想を投下してたなぁ
ネタ切れでオーバーヒートしたけど

22:名無し陸戦隊 ◆ozOtJW9BFA
08/01/28 04:03:55 zQf9CQLn
回想 1944年



艦隊の航行隊形の変更も終わり、陽も沈み始めようとする頃。
航空隊の哨戒任務も終わり、燃料の少ない機体は既に母艦に着艦を始めていた。
あの後白浪少尉達は、すぐ隣の海域を警戒していた艦攻の知らせを受け、すぐさま攻撃に向かった。
旋回している艦攻からは、電信員が必死な形相で一方を指差し、
少尉が海面に目を向ければ、そこには間違いなく鯨の様な黒い影が視認できた。
小さくなりつつある影を認めた山口大尉は、落ち着いた動きで緩降下から銃撃を加えつつ爆弾を投下し、
後から少尉も急いで爆弾を切り離す。海中に没した対潜爆弾は、やや間を置いて連続して水柱が立ち昇らせ、
波間に広がった波紋が収まると、油の帯が漂いっていた。
その後、暫く上空を旋回していたが、撃沈に至ったのかは不明のままだった。
艦の装甲に被害を与えたかもしれないが、その規模も知るすべがない。
出撃前、母艦で教えられた話では、腕の良い潜水艦は潜行の際、
偽装の為にわざと廃油やゴミを流す者もいると言う。
今回攻撃した敵潜が、それに当てはまるかは分からないが、戦果は期待しないほうが良さそうだ。
ともあれ、敵潜の動きは確実に封じた様であるし、攻撃の心配はないと思えた。

23:猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ
08/01/29 22:28:39 79sKArWA BE:35932043-2BP(6504)
アク規制解除になりました。明日より再開しますね

名無し陸戦隊殿ご迷惑おかけしました

24:猛虎☆全勝 ◆Aur0rKhDNQ
08/01/30 21:02:46 98fJrmsS BE:35932526-2BP(6504)
第四部Aパート「ヒロシマより愛を込めて・・・・」
昭和20年4月9日 相模灘 PM8:00
紋章機輸送艦隊は美しい陣形を組み相模灘を西へと驀進していた。
海は漆黒に染まり、波も穏やかである。
「嵐の前の静けさかね?」
「艦長よしてください縁起でもない」
艦長平岡の冗談に正光は寒気が走る。
「夕方にあれだけ爆雷を放り込んだんだ、近海に潜んでいるなら木っ端微塵だろう」
「しかし残骸の報告もありませんよ。夜とはいえ気がかりです」
「うむ、見張員!状況はどうか?」
「浮遊物は視認できません!」
見張員のキビキビシした声が返ってきた。
「よし対潜警戒おこたるな!」
平岡もいい声を返す。
その時である。そら高く大型機の爆音が聞こえてきた。
「所属不明機接近!」
「対空戦闘っ!!」
「対空戦闘用ー意!総員は位置につけ!」
鹿島の艦内にラッパが鳴り響いた。同時に爆音はだんだん近づいてくる。
正光も暗がりの空を望遠鏡で覗いた。
「おそらくB-29だ、単機か・・・・・間違いないこの艦隊を探している」
聞き覚えのある爆音、正光はすぐにB-29である事を察した。しかし、単機でかなり高度をとっている。
「なんだー?奴さん気がついてねーんじゃねーの!」
「あっはっは!おーいここだここだ!」
若い水平が高高度を飛ぶB-29をからかっている。その時!B-29の方からから凄まじい閃光を放つ物体が出現した。
「しまった!照明弾だ!」





25:名無し陸戦隊 ◆ozOtJW9BFA
08/02/02 02:38:03 soogpWoj
回想 1944年


あの後、母艦に戻ると大尉は、飛行長に報告を済ませて、
少尉達に、ねぎらいの言葉がかけて任務は終わった。
この日下された戦果の判定は、山口大尉達の共同による1隻撃破不確実となった。
この事を聞いた白浪少尉は、あまり実感が湧かず他人事の様に考えていた。
確かに、自分も攻撃に参加したとは言え、あまり貢献出来たとは言いがたく、
それは、少尉と一緒に飛んでいた搭乗員達も一緒である。
だが大尉は「別にどうでもいいさ、俺だって当てたかどうか分からんし、お前達も箔がついていいだろう?
俺にとっちゃあ、全員無事に帰還した方が大切なんだ。分かったら早く戻って休んどけ」
そう言って士官室へ引き上げていってしまった。
夜になるとガンルームでは、昼の飛行や次の決戦について盛り上がっていた。
明日はいよいよ決戦になると言う事で、艦内では酒が配られ、 飲める者は管を巻いた。
酔った勢いもあり話は勢いを増していく・・・
一方の白浪少尉と言えば、下戸とは言わないまでも、
あまり飲める方でもないので、汁粉をすすりながら会話に加わる。
砂糖をふんだんに使った汁粉は非常に甘くて、操縦で疲れた体には大変ありがたいものだった。
士官の中には、少尉と同じく初めて実践に望む者も少なくない。
明日は訓練の成果を敵に見せてやろうと、白浪少尉も混じり予科練出身者同士で語り合い、最後の英気を養った。

26:名無し陸戦隊 ◆ozOtJW9BFA
08/02/02 02:40:51 soogpWoj
>>23
猛虎☆全勝様 早い復活で安心しました。
迷惑だなんてそんな事はありませんよ。


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