08/02/03 13:42:25 1lDw0dn6
@節分ということでSSをば
切っ掛けは、黒板の日付を見た圭一のこの一言だった。
「今日は、節分か。帰ったら豆まきだな」
「みー?圭一、何故節分で豆を撒くのですか?」
梨花は、ぽかんとした面持ちで問いかけた。一瞬冗談かと思った圭一だったが、どうやら本気の問いと分かり、
「…へっ?…知らないのか?節分の日に、豆を鬼にぶつけて邪気を追い払い、一年間無病息災でありますように、っていう行事だよ。
他にも柊鰯を玄関に立てたり、恵方巻を食べたりとか」
「柊鰯や恵方巻は知ってますです。でも、鬼に豆をぶつけるというのは知らないのですよ」
「へぇ、梨花ちゃん家は神社だから、てっきり…うちは毎年、親父が手描きのお面をかぶって鬼の役をやるんだよ。『鬼は外、福は内』って」
※澪尽しルート
「みー、そういう習慣があるのですか。雛見沢では無いのですよ」
「じゃあ、梨花ちゃんも一緒にうちでやるか。豆撒き」
ここ数ヶ月の付き合いで、梨花が新鮮な事象や体験を人一倍喜ぶのを知っていた圭一は、初めての豆撒きを梨花に体験させることにした。
「「そおれっ、鬼は外、福は内っ」」
「うが~」
お面をかぶって鬼に扮した伊知郎を、圭一と藍子が豆をぶつける。
だが、梨花は豆を持ったまま、立ち尽くしていた。
「どうした、梨花ちゃん。さっき教えたとおりに…」
「圭一、鬼さんをお外に追い出すのはかわいそかわいそなのです」
「へっ?」
妙に真剣な表情で言う梨花に、前原一家は三人揃って鳩が豆鉄砲を食らったような顔になる。
「雛見沢では、人と鬼は仲良しさんなのです。鬼を蔑んではいけないのです」
その言葉を聞いた時。圭一の脳裏に一瞬、かつて見た夢がフラッシュバックする。
角を生やし、バケモノと蔑まれた者の顔が―
「…そう、だったのか。道理で豆撒きをしないわけだ」
「だからこうするのですよ。…『鬼は~内、福は~内』!」
「さて、歳の数だけ豆を食べるわけだが…」
豆撒きが終わった後、圭一は何故かニタニタ笑いながら大豆がこんもりと盛られた入れ物を差し出す。
「ちょ、圭一っ!こんなに沢山…?」
「だって、梨花ちゃんは“百年生きた魔女”なんだろ?なら百個食べないとな、へっへっへ」
魔女気取りの思考や言動はあまり好まない圭一は、皮肉たっぷりに言った。
「バカッ」
梨花は頬を膨らませて、ぷいっとそっぽを向いてしまった。