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夏も秋も冬も、君に連絡しようと思った。タイミングも考えた。
でも駄目だった。その度目の前に広がった黒い床が這い出てき
て恨み言を言うんだ。
「貴女は『僕』を殺して『私』になったのでしょう」
それがトレモロする。そのせいで知りきった住所と電話番号に
アクセスすることが、どうしてもできなかった。
そうして時間は過ぎていき、いつしか風の噂で君のSOS団で
の活躍を聞いた。そこに僕はいなかった。
「私」だけがここに、君の隣町にいた。
それから春のある日、新入生が眩しそうに入学してきた頃だ。何
と言うことだろう。僕は君に再び邂逅したんだ。心底驚いた反面、
驚くほど落ち着き払って君に呼びかけている僕がいた。
そんな僕を昨日別れた友人のように、忘れた時間割を聞くように、君は
返事を返してくれた。
一体何だったのだろう。その瞬間、僕の目の前の黒い何かが再び
僕の中に溶け込んでまばゆく光りだすのを感じたんだ。涙と共に
君の胸元に飛び込みたい衝動に駆られたけど、それは『僕』が許
さないだろうし、キョンに迷惑がかかると言う分別は残っていた
から何とか収まった。
でもね、その時決めたんだ。僕は沈めた『僕』を救い上げて、再び
君に向かっていこうと。確かに僕は、既にとんでもない過ちを犯し
ている。君を秤にかけて掲げあげたというね。それでも、それさえ
もこの邂逅の為だったのではないかと思ってしまったのだよ。キョ
ン、もう躊躇わないよ。
進路のせいにしないさ。僕は僕の道を歩みながら、君と交われる事
を知ってしまったんだ。
長門さんにも、朝比奈さんにも、涼宮さんにも、誰にも負けない。
僕は僕が歩く道の上に君がいる事を信じている。いや、確信してい
る。くっくっ。
また、連絡するよ、キョン。