【涼宮ハルヒ】佐々木とくっくっ part26【変な女】at ANICHARA2
【涼宮ハルヒ】佐々木とくっくっ part26【変な女】 - 暇つぶし2ch1:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/06 17:40:57 3mQ37kNW
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・前スレ
【涼宮ハルヒ】佐々木とくっくっ part23【変な女】(実質24)
スレリンク(anichara2板)

・佐々木とくっくっ避難所
URLリンク(jbbs.livedoor.jp)
・佐々木とくっくっ避難所(携帯用)
URLリンク(jbbs.livedoor.jp)

・佐々木SSの保管庫
Part1-10まで URLリンク(blog.goo.ne.jp)
Part11以降  URLリンク(www10.atwiki.jp)

・佐々木 = 例の変な女
 自称「キョンの親友」、中学時代はキョンの自転車に二人乗りで塾に行く間柄
 キョンとは学校内外でつるむ回数がクラスメイトの誰よりも多かった
 キョンは否定するも傍からみるとどう考えても...
 古泉曰く「十人中八人が一見して目を惹かれる、実に魅力的な女性」
 恐るべきことに名実共にハルヒと対になる神的存在であることが明らかに

・次スレは>>970が立ててくれたまえ。立てられない時は遠慮せずに言うといい。
 このスレの住人は快くキミの代役に名乗り出てくれるだろう、くっくっ

・このスレは基本sage進行だ、間違えてageるならまだしも
 意図的にageるような行為は慎んでくれたまえ。


2:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/06 17:41:42 3mQ37kNW
僕からの追加のお願いだ。
・リンクを貼るときは直リンは禁止してくれると僕も助かるよ。
・荒らし、それに反応する人への対応は無視するのが一番と昔から決まっているんだ。
・次スレは立候補した人が責任を持って立ててくれたまえ。
 ただし、無理な場合はその所信表明を行い、次なる立候補者を集うべきだね。
・次スレへの誘導リンクが貼られるまでは今まで通り書き込みは控えるのが最良の手立てと僕は思う。

あと、SS保管庫の中の人からこんなコメントをいただいている。
判断はみんなに任せるよ。くれぐれもこれで争うことの無いようにしてくれたまえ。
201    wiki [ sage ]  2007/08/26(日) 09:33:29 ID:lc10YmQU
 どーもwikiの中の人です。
 タイトルにSSってつける件ですが、個人的にはなくても無問題です。
 SSかどうかはみればわかるし。
 今までどおりでOK。
 それよりも、SSにはタイトル(名前欄でも文中でも)と長編なら通し番号をつけてもらえるとありがたいです。
 あと、未完成ならそれがわかるようにしてもらえるとなおよし。

3:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/06 17:49:19 JKECoyju
     , -‐- 、
    ,'. /  ト、 ヽ 早い、早いよ!
.   i. ((从ソ #从〉
   l. (|┳ ┳i!l \\  人
.   ハNiヘ  ヮ ノハ!  | |<  >∧∩
    ⊂)"ー'゙i )   | |  ∨"Д")/>>1
     /ュュュ/ソ   | |  ., -‐- 、、/
     <_ノ//    | | 人 u ; ヽヾ
       #   //<   >ノリ从))
       # 彡     ∨| > <|!|
                | トリ、'' (フ''ノ'!|
                 レ゙ {i"づ_iづリ

4:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/06 18:58:08 XSSgbnHN
キ「はあはあ、うっ!」
佐「早い、早いよ!」

5:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/06 19:05:27 WdZgc1mE
>>1乙、佐々木さんも乙

6:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/06 19:27:40 drw3YK7X
>>1乙だが
早い、早いよ!


7:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/06 19:55:17 mum1pK3F
>>1乙でも早いです

8:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/06 20:03:45 +xoBCfTU
            ,ィュ-‐-、_
         /: : : : : : : : : :`ヽ
         /: : : : : : : : : : : : : : :ヽ
       イ : : : : ,ィ ./リ| ト、: : : : : ゝ 立てんのはやいよ…
        !: :/: :,AZ__ |/' >r.、: :N
        !'ヽ: :! ―-   ニ| .! .!ノ
         _人_l、u.   i .(ヾ| .! iヽ
    _,..-'´/:::::| ヽ ~ ,.ネ、   ト、
  r'´:::::::::::::く:::::::|  ノ` =く. .|::ヤ   .|:::`゙ー、
 /:!::::::::::::::::::/::::::.レ'^YニY/レ!:::ヽz='=i::::::::ヽ
/::::::!::::::::::::::::ヽ:::::::|  .〉-〈 /::::::〈:::::::::::::|:::::::::::!


9:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/06 20:06:47 Ww6K1WO6
早すぎwww

10:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/06 20:51:45 3tOTIfHd
  !. :./: : : : : : : : : : |: : : : : : : : : : : ,'.:.!    \:ヽ : :.、:.:.:!:.:.:.ヽ
 l: . .!. : : . : : . : : : :.!: : : : : : : : : : :,':./   _ゝ‐-: :|、:.!:.:.:.:.ヽ
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. !. . |: : : : : : : : : : : :ト; : : : : : : :.! l !イ       !ヽ |.!/:.:.:.:.:.:.:l
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 !. : : ',: ヽ:.´.:ヽ、:.ヘ xz≠ミk           ゝ- ´ ! :.:.:.:.Y.:.:.:...ヘ
 l. : : : ヽ: ヽ、:.\X〈!ら::..:;.ぅ           |:.:.:.:.:.i.:.:.:.:.|.:ヽ
. ',. : : : : ` -`_t xz、 ヘヒr- ´    、        |. :.:.:.:.:.!.:.:.:.:ト、.:ヽ  僕のまんこくっせええええ   
.  ', : : : : : :.:.:.:.iヘしヽ           ,     ,.l :./:l./:.ィ:ハ.}  ー`   
   ', : : : ヽ :.:.:.ヽ ニ >       ー "´     イi:.////ソ リ
   i : : : : ヽ: .:.:.::.:.:.:..:.:.ヽ、 _           / リ/iイ'
.   }: : :.ト: :、ヽ:.:\.:.:.:.:..:.:.:.:.、ニ ― t - '   メ
    | : :.ヽヽ:.ー 、_ヽ_Zー‐ ̄ー` i        ' ,
    l: ハ:トヘ  ̄             j        ` - _
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              /レ '  __    r ' ´ ̄    <´: :/: : : : : : : :.i
            _ ,ヘ: :.ラ      `          そ: / . . : : : : : : :ヽ
          ,´: : : :ヽ::}            _ ― :.: ̄i      . : : ヽ
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11:ササッキーのラブソング
07/12/06 21:16:51 mum1pK3F
あんまりフラクラしないで
君はいつでもフラクラ
余所見をするのは止めてよ
僕は誰より一番
好きよ好きよウッフン
好きよ好きよウフフ

星達が輝く夜更け
夢見るよキョンの全て
愛しても君は知らん振りで、今頃は巨乳に夢中
あー、君って人は何人嫁候補を持っていんだ
あー優しさをばら蒔いて
僕を悩ませるよ

12:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/06 21:18:03 mum1pK3F
すまん、新スレに書いてしまった。

13:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/06 22:04:42 e33It0cJ
前スレが間違ってる。

【涼宮ハルヒ】佐々木とくっくっ part25【変な女】
スレリンク(anichara2板)l50


14:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/06 22:35:53 mum1pK3F
さては、そのまま貼ったな。よくあることだ。

15:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/06 23:48:10 9DgxtN2y
⌒(´・ω・`)⌒ きょこーん

16:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/06 23:50:40 z+clOdbe
乙りんこ

17:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/07 00:56:19 nkN72v5e
1乙なのね

18:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/07 06:42:11 Qqisjwr/
スレッガーさんかい?早い!早いよ!


まあ次スレ立てる時に修正ヨロシク>>970

19:SS驚愕にて
07/12/07 10:31:19 nkN72v5e
キ「ところで、ハルヒの神の能力はどうやって移すんだ?」
藤「フン、禁則だ」
橘「えーと、佐々木さんの閉鎖空間に丸三日いてもらいます。心配しなくても食べ物や飲み物のことは大丈夫です」
キ「それが、方法か。いるだけで良いのか?
それで、佐々木は納得したのか?」
佐「僕は神の能力はいらないけれど、その移植方法に興味があってね
端的に言うと、中学時代に出来なかったことだよ。くつくつ」
 心なしか、佐々木は照れたように頬を赤らめているようだった。
キ「それで、閉鎖空間で三日間、俺は寝てれば良いのか?」
橘「そう、寝るんですよ。判っちゃいましたか。ははは」
藤「勘が鋭いな、現地人。
本当は閉鎖空間で無くてどこでも良いがな。邪魔が入らないとなると、あそこしかない。」
 九曜さんは赤ん坊をあやす姉のようにガラガラをいじっている。
九「――10月後―楽しみ――」
佐「できちゃったとしても、スポンサーが資金援助してくれるし、法律くらい変えてくれる」
 いまいち意味が判らないが、何もしないで良いなら楽かな?


キ「なあ、そうしたいというわけじゃないけど、能力を移せるのは佐々木だけなのか?他の人間にはできないのか?」
佐「そんなことをすると、僕が君を刺すよ」
橘「駄目です。才能の無い人に移すとその瞬間に死んじゃいますよ。もしかしたら、世界を巻き込んで」
 その様子は本当らしいな。しかし、佐々木が俺を刺すって。神にして大丈夫か?
佐(今気付いたけど、朝比奈さんや長門さんには才能あるのかな?だから、、、)

キ「ハルヒは駄目で、佐々木なら大丈夫という根拠は、一体何処にあるんだ?」
橘「キョンさんは一生涼宮さんのお守りをしているつもりですか?
涼宮さんはキョンさんがいても、いつ爆発するか判らないのです。
佐々木さんはキョンさんがいれば大丈夫なのです」
 本当か?おい
キ「ハルヒは随分まともになったぞ。もう少しまともになって、彼氏作るまでの我慢だな。
多分、卒業するまでには何とかなるだろう」
 まー、ハルヒに彼氏できれば正直さびしいけれど。早くて3か月かな―?
橘「な!」
 女超能力は電池の切れたロボットの様に停止した。

橘「私達はあなたを見誤ってました。涼宮さんの精神が安定していないのも道理です」
キ「なんで、俺の責任なんだ」
橘「てっきり、涼宮さんの性格がアレなので、彼氏になるのを拒否していたと思ってたのです。
でもそれで、中学時代のことも納得しました」
キ「俺がその気でも、ハルヒがその気になることなど無いだろ」
橘「はあー」

 対照的に、佐々木はクリスマス直前の子供のようにはしゃぐ。
佐「それで、閉鎖空間のことだが、どうせなら今日、今から始めて。期間も2週間に伸ばすのはどうかな?キョン
橘さんも良いですか?」モジモジ
キ「あまり長くいたくないが、2週間くらいなら、」
橘『作る気マンマンなのは良いですけど。無駄です。今のキョンさんなら2週間が1年でも、何も起こりませんよ』
佐『そうなの?』ショボーン

(終わり)

20:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/07 14:52:00 P5s5w2WB
モデル付き恋愛小説1万ヒットおめでとう

21:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/07 19:24:26 P5s5w2WB
忘れていた、1乙

22:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/07 19:52:54 zZEz+gUq
>>1乙なのです!

23:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/07 20:15:29 ZFcdzsfF
前スレ>>1000到達

24:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/07 20:27:21 LQ3JRKxJ
>>1

25:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/07 20:54:18 iCUFXOys
せっかちさんの>>1






ところで…ポンジーネタ用意してて間に合わなかった人手を挙げて
ノシ

26:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/07 21:07:04 iZ0oqfYK
前1000
やってくれたなww

27:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/07 21:23:47 ZLlkPXmJ
最近投下してないな。ネタが浮かばないぜ…

28:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/07 22:14:23 7gh01itT
>>前スレ1000
まさに驚愕だ

明日本屋覗くか

29:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/07 22:17:43 3EaSdBMl
wikiトップ絵はもしかしてアッーなのか?

30:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/07 22:18:24 3EaSdBMl
誤爆

31:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/07 22:45:09 P5s5w2WB
定期あげ

32:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/07 23:31:48 Y5oA7S8y
自分のサイトからss持ってきてここに貼るのって宣伝っぽくなるから辞めた方が良いかね?

33:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/07 23:32:31 P5s5w2WB
昔よく本を読んだーーー>今はあまり好きでなくなるーーー>長門に会うーーー>また本を読むようになった
昔超常現象にあこがれたーーー>今はそんな物無いと思うーーー>ハルヒに会うーーー>超常現象にあふれる世界を体験する

ということで
昔勉強好きだったーーー>あまり好きでなくなるーーー>佐々木に会うーーー>また勉強好きになった
となるのかな?

34:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/07 23:34:26 ZLlkPXmJ
>>32
俺は一考に構わない!投下するんだ

35:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/07 23:34:50 DCYmtQQN
ササッキーは別に勉強好きじゃなかったような

36:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/07 23:38:42 P5s5w2WB
>>32
良いのじゃない?
保管庫の「佐々木を保管するページ」もサイトの宣伝みたいなものだし。
佐々木画像やSSの良質な物が拝めるなら大歓迎だぞ。

37:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/07 23:41:41 Y5oA7S8y
>>34>>36
了解


38:36
07/12/07 23:42:04 P5s5w2WB
すまん、「佐々木を補足するページ」だった

39:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/08 00:22:07 jYqwSPBq
>>37です。んじゃお言葉に甘えて投下します。10レスくらいになる予定

40:SS 茜色の雫
07/12/08 00:24:03 jYqwSPBq
 一日が終わる二十四時。窓から見える世界は暗闇に包まれていた。
俺は今日という日に、主に、涼宮ハルヒよって作り出された、我が身に降り注がれる疲労感を一掃させるべく、
いつもよりかは少し、早めに就寝しようと考えて、布団の中に入ろうとする行動を始めようとした、今、まさに、
「ブーッ、ブーッ」
 ベットの上にある携帯が、小刻みに震えだす。
誰だよ、こんな夜中に。迷惑な野郎だ。きっと電話を掛けてきた相手も、俺の精神を不快にさせる人物に違いない。例えば?…古泉とか古泉とか古泉とか。
 そしてもしも、この電話の相手が朝比奈さんだった場合、俺は、そこの窓から喜んで飛び降りようじゃないか。
誰あろう朝比奈さんをあの年中ニヤケ面の不可思議超能力機関の一員なんぞと同じ扱いにしてしまったのだ。…やべ、あいつの顔思い出したら腹立ってきた。
それにだ、この電話の相手が朝比奈さんだったのなら、それは素直に喜ぶべき事だ。一日の終わりに、朝比奈ボイスが聞けるという事なのだから、俺の鼓膜もさぞ嬉しかろう。
 そんな妄想を繰り返している内に、5コール目に入った着信音。
あわててディスプレイを見る。そこには古泉以上に、俺を不快にさせる名前が記されていた。
深い溜息を吐きながら、渋々電話に出る。

「なんだよ」
「お久しぶりなのです。」
 そんなにお久しぶりでもねえだろうよ。
俺の記憶が正しいのなら一ヶ月程前に、佐々木と、天秤領域女と、あの忌々しい未来人と、お前とで、茶店で会話を交わしていたはずだぜ。さっさと抹消させたい記憶ではあるが。
 電話の相手は橘京子だった。
「相変わらず口が悪い人ですね。」
普段の俺はそうでもないさ。多分、話し相手によるんだと思うな。
「…段々声を聞いてるのも不快になってきたので、手早く用件を伝えようと思います」
 ああ、そうしてくれ。俺がそう言うと、橘京子は手元にある台本を読むかのようにこう喋りだした。
「明日の午前九時に市民プールに集合です。持ち物はプールバッグ、お金は、まあそこら辺はご勝手に。ではさようなら。」
 コホン…。ちょっと待ってくれよ。さすがの俺も、これは引き止めるね。橘京子よ、理由くらい述べてくれ。何をする気だ?そこには誰がいるんだ?お前だけなのか?
集合場所と持参品あたりで予測すれば、何をするかくらいは大体わかるが。お前が俺を呼び出す理由が抜けてるじゃねーかよ。
 そこまで俺が言ってやると橘京子は、溜息交じりにこう言い放つ。
「相変わらず、面倒臭い人ですね」
 手に持っている携帯をそこの窓から思いっきり遠投してやりたくなる衝動に駆られるが、それは理性で止めておく。怒りに身を委ねるのは良くない事だ。
それにしても、会話手段が電話で良かったな橘。流石に電話だと、俺はお前を殴れない。
「面倒臭い人ではありましたが、か弱い女の子を殴ろうとするような人だとは思っていませんでした。」
 本当にか弱い女の子は、か弱い女の子を誘拐したりはしないさ。そもそもそれはお前が勝手に俺の人柄を決め付けているだけだろう。
俺は限度を超えるほど腹が立ったら、例え女でも容赦しないさ。多分な。
 次の瞬間、橘は呆れ返ったような声色で俺に反論する。
「嘘ばっかり。あたしの知っている貴方はそんな事しません」、と。
 俺は言い返す。お前に俺の何がわかるんだろうな?と。
すると橘京子はそろそろ面倒臭くなったのか、はたまた興味が無くなったのか、
それとも、俺との電話以外に、手早く用件を済ませなければならない「何か」が橘京子の身の回りで生じたのか。
理由はまったくわからないが、橘京子は既にめちゃくちゃになりかけている本題を、まとめようとし始めていた。
「まぁその話は良いです。とりあえず理由を話します。」

41:SS 茜色の雫
07/12/08 00:24:53 jYqwSPBq
 その後、だらだらと橘京子は俺を誘う理由を話し出した。
とりあえず簡単に説明しよう。俺が橘に呼び出された理由を。
ずばり、『二人で市民プールに泳ぎに行こうぜ!』みたいな内容だったのだ。しかしそれは橘京子とでは無い。
俺と、そしてもう一人は佐々木とで、だ。メンバーは佐々木と俺のみ。とりあえず、それを聞いてホッとする。あの忌々しい未来人野郎と、誘拐女の顔は見ずに済んだからな。
「私がいなくて、残念ですか?」と、受話器からは笑えない冗談が聞こえてきたので
「ご冗談を」と、俺は一応紳士的に返答しておいた。
いやしかし、古きからの親友と二人きりでプールとは、なかなか青春じゃないか。うむ。
だがしかし、それならお前じゃなくて佐々木が直接俺に電話すれば良いんじゃないのか?なぜお前が俺を誘うんだ?と、俺は至極当然な疑問を橘京子にぶつける。
返って来た答えはこうだ。

「それは佐々木さんからの私に対するお願いなのです。
貴方みたいな人にはわからないでしょうけど、佐々木さんはああ見えて意外と乙女なんです。
しかも恥ずかしがり屋なのです。佐々木さんが何を恥ずかしがっているのかは私にもよくわかりませんが、
とにかくあの人は恥ずかしくて貴方に電話出来ないそうです。つまり、そういう事なのです。」
 …いや、俺には意味がちっーともわからないんだが。
「貴方は本当に乙女心がわからない人ですね…。佐々木さんは新しいビキニを買ったのです!だから貴方と二人でプールに行きたいそうです。ではこれで、さようなら!」
 一方的に電話を切られた。佐々木がビキニ?あの貧乳が…。…いや、ここは皆まで言わないでおこう。これ以上言ってしまうと謎の訪問者が俺の命を奪いに来そうだ。
まぁ、誰あろう佐々木の頼みとなれば、しょうがない。それに明日はどうせ暇であったし、その暇をどう潰そうかと考えていたくらいだからな。
 部屋の中は心地良い夜の沈黙に満たされている。現在の時刻二十五時。そして明日の待ち合わせ時間は午前十時。起きれるだろうか?多分、遅刻はなくても佐々木より遅くなるのは間違いないだろうと思う。
それでは、佐々木をあまり待たせないように、今日はもう寝ますかね。おやすみシャミ。腹に乗るな。

「にゃ~」

42:SS 茜色の雫
07/12/08 00:25:53 jYqwSPBq
 耳に張り付くような蝉の鳴き声。見てると吸い込まれそうな青い空。
そしてそこに位置する入道雲。どこからか鳴り響く風鈴の音。カンカン照りの太陽。
激しく飛び散る水しぶき。25mもある水溜り。そしてそこに浸かっている年齢一桁台達。
その中を、隠れるように浸かっているいるのは、先ほどからニコニコと何がそんなに嬉しいのかよくわからないが、不気味な笑みを浮かべている神様第二候補者と、どこにでもいる平凡な地球人。まさしくこの俺である。
 俺は与えられた、ある程度の描写説明という役割をとりあえず終えたので、一言言わせてもらう事にしようかな。
「 なんで俺はこんな所にいるんだったっけか 」
バタバタ。という擬音の後に、どこからともなく返答が俺の耳に入ってくる。

「理由なんて、あって無いようなものさ」
 いや、嘘をつくな、嘘を。
確か俺がここに呼ばれた理由は、このプールでビキニ鑑賞会が開催されているからだと聞いたのだが。…しかし、佐々木よ。なかなか似合ってるんじゃないか?うん。
佐々木の細く美しい体の大事な部分を守っているのは、なんと、紐の水着である。色は明るいオレンジで、今日の太陽のように、夏らしく、正直、めちゃくちゃ似合っている。
貧乳…、いや、微乳ながらも、スレンダーで美曲線を描いている佐々木の体は、まさにモデルのそれと、ほぼ変わらない。
いや、本物のモデルさんを見た事は無いが、多分佐々木の体も、勝るとも劣らないくらいであろう。モデルっつってもピンキリだしよ。
 佐々木を見つめてみる。佐々木は必死で浮き輪に掴まりながら、これまた嬉しそうな表情で前髪をかき上げ、空を眺めていた。
「キミのおかげで、とても充実した一日になりそうだ。今日はありがとう」
佐々木はニコリと微笑んで、そう言った。いつもの『くっくっ』というような、特徴的な微笑み方では無い。心底俺に感謝しているような、そんな仕草だった。
「別に。感謝されるような事は俺はしていない。自慢じゃねぇけど、結構暇なんだよ、これでも」
「宇宙人や超能力者を知人に持つキミでも、暇があると言うのかい?それは驚くべき事体だね」
今度は、いつものように、佐々木は「くっくっ」と、実におかしいと言うように。右手で口元を隠すように笑う。
…その瞬間だった。佐々木が必死で掴んでいる浮き輪が、ひっくり返りそうになる。
佐々木は「うわっ」、と、実にらしくない焦り方をする。ジタバタしながら、必死に浮き輪を掴んで、離さない。
――そう、実は佐々木は、カナヅチなのだ。

43:SS 茜色の雫
07/12/08 00:27:13 jYqwSPBq
 思い返すと中学時代、こいつの数少ない不得意科目には、「水泳」があった。
あまりにも泳げない佐々木を見て、体育教師に、「佐々木、お前は水泳には出なくて良いぞ」とまで言われていたくらいだった。
佐々木は毎回面白いように溺れては、最後は保健室に連れて行かれるのでな。
だが、根はとんでもないくらい負けず嫌いの佐々木は、一度クロール25mのタイムを測定するときに、急にプールサイドにあるベンチから飛び出し、
「私、いきます。」と、突然名乗り出て、まあ……案の定、5mも持たずに溺れていた事があった。
その時俺は無意識的に一目散に佐々木にクロールで駆け寄り、抱きかかえて保健室まで連れて行った挙句、体育終了後、クラス中から温かい目で見られたという思い出がある。
まぁ佐々木には悪いが、俺にとっちゃそんな事も、今となってはすっかり良い思い出なのさ。
 思い出話を終えると、佐々木は恥ずかしそうに呟く。
「よくもまぁキミは…そんな憎たらしい記憶を脳裏の片隅に放置しておけるね…」
 おいおいそうは言うがな佐々木。お前にとっては憎たらしくても、俺にとっては良い思い出なんだってば、本当に。
なかなか叶わない努力をしているお前は輝いていたぞ?お前はカナヅチの天才だ。あの溺れっぷりは…悪いが、見ていて腹を抱えてしまう程笑った。
足の届く所なんだから死にはしないってのによ。

 佐々木は悔しそうに、そして恥ずかしそうに、顔を赤らめる。
「…もしかしなくてもキミは僕を馬鹿しているようだね」
 そう言い終えてから佐々木は表情を覆うように、浮き輪に顔をうずめた。かなりご立腹の様子。
ちょっとした冗談だよ。ジョークジョーク。ごめんな?…おい。佐々木。こっちを向け。
俺が慰めていると、佐々木は、『リベンジしてやる。』と言わんばかりの、サドっぽい笑みを俺に静かに向ける。
「はぁ~…それじゃあ僕もキョンのとびっきりの黒歴史を誰かに暴露してしまおうかな~?」
 お、脅しかよ!くそっ。あの事はさっさと忘れろよ!っていうか、謝ってるんだから潔く許せ!それに、そもそも俺はお前を馬鹿にした訳じゃないんだぞ。
俺は『そんな佐々木も可愛かったな~』っと言ってるだけだ。だから…な?許せ。
「溺れてる僕が可愛いはずないだろっ!あんなに醜いポーズなんだから!」
 …いやまぁ、確かに、溺れてるときのお前は悲惨だった。目も当てられないくらいで、同情すらした。描写するのも怖いくらいだ。あんな動きが人間に出来たとはな。と言うか、どうやったらあんなに醜い姿で溺れられるんだ?
…と、思いはしたが、口にはしないでおく。そんな事を言おうものなら、佐々木の堪忍袋は大震災を起こすところだ。
 だがな佐々木。俺が言いたいのは、苦手な事に挑戦して努力するお前の姿に俺は感動したんだ。あの醜いポーズで溺れてしまっても、別に良いじゃないか。佐々木。そういうのもマニアは喜ぶもんなんだぞ?

「………………」

 佐々木は口元を水面に沈めて、ブクブクさせながら、かなり恨めしそうな目でジトーッと俺を見つめる。
「やっぱりキョンは僕の事を馬鹿にしてるんじゃないか……」
 てな事を言われてしまった。だから違うんだ、佐々木。冗談だよ冗談。
そう言いながら佐々木の頭を、俺はなるべく優しく撫でる。…そうすると佐々木は、また口元を水中に入れて、空気を出してブクブクさせる。相変わらず、いじめ甲斐のある奴だ。まったく。
まあ、いつもは逆に、俺がいじめられる場面ばかりなのだが、舞台がプールという事だと別だ。「水泳」という検索ワードで調べると、佐々木の面白話然り、赤面話は、それこそ永遠と出てくる。
 なんせ俺は一昨年の夏、佐々木の水泳弱点克服の為に、佐々木と共にこの市民プールに何度も通っていた事があるのだ。…まあ、案の定、佐々木の水泳技術が上がる事は無く、俺のクロールに磨きが懸かるばかりであった。
しかも佐々木は、毎回のように溺れ、そしてこの市民プールで、あの怖いくらい醜いポーズを、周りにいる子供達に披露しては爆笑されるだけだった。
その後の帰り道に、悔しさと恥ずかしさで、今にも泣き出しそうな佐々木を慰めるのには骨が折れたが、まぁそれも今となっては良い思い出さ。

44:SS 茜色の雫
07/12/08 00:29:26 jYqwSPBq
「キミは僕の理解して欲しい部分は少しも触れないでおきながら、あえて僕の理解して欲しくない部分をこれ以上ないくらいに抉り取るような、嫌味な人間だね」
 やべ、ちょっと怒ってる。しょうがないな。宥めてやるか。っというか、お前には俺に理解して欲しい部分なんてあるのか?
「い、色々あるのだよ。僕くらいの年頃の女性にはね。まあキミに理解出来るはずもないだろう」
 必死に浮き輪に掴まりながらいじける佐々木は、悪いが少し、滑稽だった。
ってか、お前は女であって女じゃないようなモンだろ。自分の事を呼ぶ際も、「僕」だしさ。心は男だよな。
…と、俺は慰めるつもりで、もちろん冗談半分で、そう言い放った、のだが。この場面でこの言葉は、史上最悪のNGワードだった事を、俺は次の瞬間に思い知らされる事となるのだ。
…佐々木が浸かっている水面が、プルプルと振動しているのがすぐにわかった。
なんだなんだ?そう思って俺は佐々木の顔を覗き込む。…完全に涙目で、耳が真っ赤だ。
必死で浮き輪を掴んでいる佐々木のその拳は、これまたプルプルと震えている。
どうやら俺は、『親友』を、完全に怒らせちまったらしい。

「もうキョンなんて知らない…!」

 珍しく、佐々木が怒りを露にしているという事で唖然としている俺の顔に、顔を真っ赤に染めながら瞳に涙を浮かべる佐々木は、そう言い放った。
佐々木は水中で、プイッと俺に背を向けて、バタ足で必死にプールサイドへ向かっていく。おいおいおい、これはちょっと本格的にまずい空気だぞ。佐々木をここまで怒らせたのは、初めてかもしれない。
「おい佐々木っ!」俺は必死にバタ足して、しかもなかなか進まない佐々木の背中に、そう叫んだ。
返答はない。振り返ってもくれない。
――そこで事件は起きた。


「きゃあっ!」
 という、甲高い声がプール全体に響く。
クロール25mの競争をしていた子供達が…!なんと浮き輪無しではこの水中の世界を生きてはいけない女、佐々木にぶつかってしまったのである。
「まずい!」、と俺は、咄嗟に思った。 
溺れた佐々木を助ける事だけならイアン・ソープともなかなかの勝負が出来る事で有名になれる、かもしれない俺が、クロールで出陣。


 だが、時すでに遅し。
いつかのシーンが俺の脳裏で鮮明にフラッシュバックしていた。
佐々木は大方の予想通り、見事にあの、「怖いくらい醜い姿」。を、久々にこの市民プールで披露して見せたのだ。

「なんだよー。お姉ちゃん気持ち悪いよー。体の構造どうなってんだよー」

 …という、佐々木にぶつかった子供達の声も、遥か遠くに聞こえる。俺の背筋は、ただただ。冷たく凍り付いていた。そして、額からは嫌な汗がどんどん出てくる。
俺の指先が、恐怖により震えている。…このあと俺は、佐々木にどんな仕打ちを受けるのだろう?と、想像しただけで、俺の全身は細かく震える。
「もう終わった…」。そう、自然と呟いている自分に気づく。これは決して大袈裟の事では無い。佐々木という人間を怒らせたらどうなるのか。そんなこと、想像したくもなかった。
ここら辺で俺は、「ハッ!」となる。そうだ、後の事はとにかく謝れば良い。なんなら土下座でも、靴の裏でも舐めてやる。
 でも今はそうじゃない。今はとにかく、佐々木を助けなければ!勝負だイアン・ソープ!俺のクロールに酔いしれろ!

――そして俺は、年齢一桁台達の脇を駆け抜け、いつかのように佐々木の下に賭け付け、そして抱きかかえ救出したのだった。

45:SS 茜色の雫
07/12/08 00:31:30 jYqwSPBq
――そんな事があってから、もう一時間は経っているかな。
俺は今、この世の冷酷さと無情さを、その身をもって痛感していた。

「…………………。」
今しがた帰路を歩く佐々木の背中は、未だ怒りを物語っていた。俺より前方を早足で歩く佐々木の存在が、やけに怖い。そして冷たい。
「どうしたものか」と、悩んでいる暇は,俺には無いのだ。とにかく謝らなければ。そう思って俺は佐々木に向かって、何度も謝ってはいる。
「佐々木…さっきは本当に悪かった…恥かかせてしまって…」
返答はもちろん、

「…………………。」
やはり、長い沈黙しか返ってこない。長門にだって話しかけたら、もう少しくらいリアクションをくれるだろうによ。
 不意に、向かい風が吹く。佐々木が身に纏っている白いスカートが揺れる。見えそうで見えな…ではなくてだな…。
さて、どうしたものか。と俺は、茜色に染まりあがってく空を見上げ、思う。さすがにあそこまで怒らせてしまってはなぁ。
 あの事件があってから、佐々木は無言で更衣室に向かい、そして更衣室から出てきた。
しかも、無言でだ。会話どころか、そもそも俺は未だに佐々木の顔もまともに見れちゃいない。佐々木はずーっと俯いて、地面を見ている。前髪で眼が隠れていて、それが異様に怖い。
佐々木はただ黙って自宅に向かう道を歩く。淡々と。そして俺はそれに付いていく。
 俺は先ほど二本購入したコーヒーを、佐々木に一本手渡し、そこから会話を広げよう!…という、なんとも古臭い作戦に出てみたものの、駄目だった。受け取ってもくれない。
 だが俺はまだ、最終兵器を隠し持っているのだ。
これさえ使えば、どんな状態でも佐々木を一発で上機嫌にさせる。そんな凄い兵器が、な。
それを発揮するには、今は申し分ない場面であろう。よし、行くか。

「佐々木、手を貸してくれ。」

 そう言っても、貸してはくれない。そればかりか、振り向いてもくれない。ピクリと反応すらしないのだ。だが、俺はこんな事も想定内さ。
俺は小走りで佐々木の隣まで行く。やっと佐々木の表情が目に入った。なるほど、かなり落ち込んでいるな。
 次の瞬間、俺は佐々木の手を、強引に奪い取った。
「あんまり早く歩かないでくれよ。見失うかもしれないだろ?」
俺は今自分が出来る限り、飛びっきりの笑顔で、佐々木に告げる。だが佐々木の返答は、

「…………………。」
相変わらず、沈黙である。だが表情は見る限り、まだむくれているはいるが、頬には桜色が灯っていた。

46:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/08 00:32:25 rV4jNiom
支援

47:SS 茜色の雫
07/12/08 00:33:00 jYqwSPBq
 

 昔、岡本に言われた事があるのだ。佐々木と少し、すれ違いがあった時、俺は相談相手に岡本を選び、そして、岡本は快く俺の相談に乗ってくれた。
そんなある日、岡本は得意げに言った。『そういうときはね、ササッキーの手を、こう、強引に握ってしまえば良いんだよ!』…とのアドバイスを、な。
ちなみにササッキーってのは、佐々木のあだ名だ。
 そして俺はその翌日あたりに、半信半疑で佐々木に対して実行してみた。『強引に手を握る』という行為を。
まあこれが。ズバリ的中のナイス采配だった訳なのだ。
手を握ってしまうと、すぐに佐々木は上機嫌になった。理由は今でもよく知らん。もしかして俺の秘めたる超能力なのか?とも思ったが、首を振ってすぐに否定する。「んな馬鹿な」と。
 
 …だが、これは列記とした事実なのだ。本当に、俺が手を握って優しく謝るだけで、佐々木はどんな喧嘩の後でも、すぐに機嫌を良くする。手を繋いだだけでだぜ?
やっぱり、少し変わった奴なんだなー。と、俺は改めて思わされる訳だ。
 しかし、佐々木と手を繋いでいると、やはり男として、何だか俺まで少し変な気分になってくる。
それもそのはず、佐々木の手は小さくて、綺麗で、そして触り心地がとてつもなく良いので、俺もどうしようもなく興奮してしまうのだった。

…まあそんな変態染みた話はどこか隅にでも置いておいて、俺は、「佐々木」と、呼びかける。まあ、もちろん、返答はない。
だか俺は言う。俺は続ける。手を握って、今も少し顔を赤らめている佐々木の横顔に、俺は言う。
「最後はあんなになっちまったけど…」
 佐々木は、未だ沈黙。口を堅く閉ざしている。意地でも喋らないつもりらしい。
俺は、先ほどの笑顔を大きく上回る、今日一番の笑顔を向けて、佐々木に言い放った。

「今日は楽しかったよ。誘ってくれてありがとな、佐々木」

 ついでに、お前の水着姿もめちゃくちゃ似合っていたしな。と、俺は続けて、佐々木の頭に手を置く。柔らかい髪質だ。その髪から、少し香る、甘い匂い。そんな佐々木の頭を、俺は優しく撫でる。
佐々木の顔は、笑えるほど赤かった。
そして同時に、とても悔しそうだった。
 …これで俺の事を、佐々木に許してもらえなければ、俺はもう最悪土下座をするしかねぇな、と。
まさに、そう思いかけた時だった。

48:SS 茜色の雫
07/12/08 00:34:47 jYqwSPBq

「キミって奴は…」
 と、佐々木はモジモジしながらも、やっと口を開いてくれたのだ。
だが、やはりそこには少し恥ずかしさがあるのか、俺と目を合わせてはくれない。
 俺は昨晩の橘京子との電話のやり取りを思い出す。佐々木は乙女で、しかも恥ずかしがり屋らしいな。
そのせいなのだろうか、顔はまだ赤い。
 だかそれも、今にも沈みそうな夕日のせいかもしれないな。と俺は勝手に思っていた。
「キミは本当にずるい奴だよ」
 それはそれは。すまないね。
「そろそろ僕の頭の上に置いている手をどけてくれないかな?」
 おっと。すまない。ずっと撫でていたようだ。…ふふ。なんだ?どうした佐々木、顔が赤いぞ?
「…あんまり女性はからかわない方が良いと思うぞ?キミの為に言っているんだ」
 別に自覚は無いのだが、まあすみませんね。…それにしてもだ、佐々木、今日は楽しかったな。
「とても…とても恥ずかしかったよ。僕はね」
 でもまあ、それも含めて、ちょっとは楽しかっただろ?久しぶりにあのポーズもとれた事だし。観衆の注目を集めた事だしさ。
「ばかっ」
 バカですまないね。
「…キミには少しお灸が必要のようだね」
 そう言い終えてすぐに、佐々木は急に俺の腕に体全体を傾けてきた。と思ったら、俺の腕に佐々木の腕が絡まってくる。俗に言う、腕を絡めてきたのだ。
そして、佐々木の何か二つの柔らかい物が、俺の腕に僅かに当たっている。…ほんとーに、僅かにな。ほんの少しだけだ。マジでわずかに。
 …っというか、佐々木。重いぞ?歩きにくいし。

「うるさいうるさい。黙りたまえ。これは今日のキミに対する、罰だ。よくも僕に恥をかかせてくれたね?」
 罰を与えてるにしては、なんかお前も楽しそうだな。
「くっくっ…気のせいじゃないか?あるいはキミの脳内でおきている勝手な妄想だとか」
 そんな佐々木の言葉を聞いて、俺達は笑いあった。
確かにあまり会えないとは言え、俺は今でもお前の親友だぜ?お前が本当に楽しそうにしてるか、否かなんてのは、俺にはまさに手に取るようにわかるさ。
そこまで俺が言うと、佐々木は先ほどまでの様子とは、まるで正反対に、とてつもなく上機嫌そうな笑みを見せてから、

「悪かったね。白状しようか。そうさ、僕は今凄く楽しいよ。とても憎たらしい、キョンという名の悪戯坊主を、僕が今成敗している所だからね」
 そう言って、堪え切れなかったのか、珍しく佐々木は口元に手を置いて、腹を抱えて大爆笑してた。俺もそれにつられて、ついつい吹き出してしまう。
男女の高校生が道路の真ん中で、腕を組み、寄り添いあい、体を密着させながら、爆笑しているような所を、道行くおばさん達は迷惑そうに、或いは温かい眼差しを向けながら見つめてくる。だが俺はそんな事も気にせず、佐々木と笑い合っていた。
 …心から、岡本には感謝しておこう。訳わからんくらい上機嫌だな。佐々木よ。
そんな佐々木を見ていると俺だって、少なからず嬉しいような、そんな気持ちが湧いてくるってもんだ。こんな時間が愛しい。心からそう思う。


49:SS 茜色の雫
07/12/08 00:36:55 jYqwSPBq

 なぁ佐々木。たまにで良いから、連絡くれよな?そんで、こうやってまた遊ぼうぜ。
「ばか。それは僕の台詞だろう?僕は毎日だってキミと会いたたがっているのだよ。
それに、男性のキミからアプローチの意味で連絡をくれるのが、世間一般的な常識なんじゃないかな?
…それにだね、今日は僕が誘ったんだから、次の約束は、キョン。キミが僕を誘うのが、道理としては正しい。と、僕は思うのだけれど?」
 
 いや、…お前が誘ったというか、俺は橘に誘われたんだけどな。
「…それは言わない約束だろう…」
 そう言われて佐々木にコツンと頭を叩かれた。…おい佐々木、人を叩いておいて微笑むとは何事だ。
俺がそう言うと佐々木は、心底楽しそうに、しかし、少しだけ、物哀しそうに、話出した。
「いやぁね、キミとの時間は本当に充実していて…それ故に…僕の心の中に、やり場の無い 寂しさが芽生えてしまう程だよ」
 
 やたらと、佐々木の声が沈んでいくのがわかった。
寂しいさが芽生える?楽しいのに、寂しいのか?わかってはいたが、不思議な奴だな。と俺は言う。
すると佐々木は俺を見上げて、心底呆れ返った様子で、呟く。
「本当にキミは乙女心のわからない奴だなぁ…」
 …その台詞なら、昨晩忌々しい女超能力者に聞かされたところだよ。
「つまりだ、キョン。よく聞きたまえ。僕はだね、これほどまでに、キミといる時間が充実しているからこそ、僕は、キミと会っていない時間が余計に寂しく、中身の無い物になってしまうと、それが哀しいと、僕は言っているのだよ。わかったな?僕の乙女心がキミにも」

 佐々木は、今にも泣き出しそうな表情を浮かべていた。だが、それは見ない振りをしておこう。
負けず嫌いなこいつの事だ。指摘したらまた機嫌を悪くするだろう。
俺は佐々木の問いには返答せずにいた。しかし、その代わりと言うように、佐々木を少し抱き寄せる。相変わらず俺の右腕には、佐々木の全体重が掛かっている。
信じられないくらい軽い。こいつは普段何食ってんだ?と不安になるほどだ。

50:SS 茜色の雫
07/12/08 00:38:35 jYqwSPBq

 ふと、気づくと、蝉の音が少し遠くに…。そして入道雲は、夕日の仕業で、茜色染まっている。
俺は、この世でもっとも、美しい風景を眼にしているのかもしれない。
そうだ。もうそろそろ本格的に、秋になっていくんだなと、思わされる。

 一昨年の。中学三年時の、この季節は、俺は何をしていたかな?多分、塾と学校に追われながらも、でも、それなりに楽しくやっていたんだろう。
なぜなら、俺の隣にはずっと、佐々木がいたからな。
今となっては、過去になってしまった、あの頃を思い出しながら、「ふぅ」と、俺は一つ息を吐く。

――今にも泣き出しそうな親友に向かって、俺は一言、言ってやる事にした。
「電話くらいなら、いつでも受け付けてるから。なんかあったらいつでも電話してこいよ」
 と、早口で言い放つ。佐々木の表情は、なんだか呆気にとられていたようで、口がポカンと開いていた。
そして俺の言葉の意味を理解した瞬間、佐々木は、面白いくらいにあわてるのだ。あたふたしている様子の佐々木を見て、
俺は少し、幸せの中に隠れている、胸の奥底から込み上げてくる感情に気づく。
 目頭が、少し熱い。

…不味いな、これは佐々木には隠し通さなければ。

「珍しいね。キミは電話による会話手段を、面倒臭いと豪語して避けていたじゃないか。僕の記憶違いか…?」
 ぐすっ。と、俺は涙を隠す。そして平静を装い、返答する。
「確かにどうでもいい奴との会話なんて、電話じゃなくても極力したくないさ。だかな、逆に、お前となら、さ。話してても最高に面白いし…だから…お前だけは、俺に遠慮なんてしないでくれ。」
 …そこまで俺が言い終えると、うん。まぁ、なんと言うか…俺は、胸の奥底から込み上げて来る感情に、…涙腺が、負けてしまったのだ。
目頭がカーッと熱くなり、そして次の瞬間、俺の瞼からは大粒の涙が零れ出てしまう。…制御したい。でも、そう思う度に、涙の粒は大きくなる。
 俺はついに、声を漏らして泣いてしまう。そこで佐々木はやっと、俺が泣いている事に気づいたらしい。
ふと見た佐々木の表情は、今日一番のサディズムスマイル。悪戯娘が、「良いものを見つけた!」というかのように、それはそれは嬉しそうに、「ニヤリ」と微笑んだのだ。
 俺は佐々木に、一番見せてはいけないものを見せてしまったのかもしれない。


51:SS 茜色の雫
07/12/08 00:41:01 jYqwSPBq

「…泣いているね?」
 と、佐々木は小さく呟く。そして次の瞬間、「うふふっ」と、あの個性的な笑い方では無く、別の笑い声が聞こえてくる。
くそっ、心底俺は悔しくなる。佐々木のような悪戯娘の前で泣いたりするのは、この世で最もやってはいけない事の一つに、間違いなくランクインするだろう。
「…わ゛るいがよ゛っ…」
 と、俺は涙のせいで、上手く返答出来無いが、それでも言う。「悪いかよ?」と言ったつもりが、酷く声が震えてしまう。
だが佐々木は俺の言葉を理解し、そして、返答してくれる。

「全然、悪くない。むしろ、うん。僕は今、とても嬉しいよ。この際はっきり言ってしまうとさ、正直、凄く不安だったんだぞ?
この春キミとたまたま駅前で出会うまで、『キミは僕の事を完全に忘却しきっているのではないか』と思っていたし、
まあ、その他色々な感情に取り巻かれて、僕はとても不安だったんだよ?…キミのせいでね」

 佐々木は、思い出しながら話をしているような、そんな口調だった。
とても慎重に、佐々木は言葉を選んでいる。選んで、選んで、絞って、切り捨てて、そして、とても大切に、大事そうに、選んだ言葉を佐々木は声に出す。
すると、佐々木が放つその言葉は、まるで命を持つかのように俺の耳に、脳に、全身に、染み込んでくる。どうしようもなく心地良かった。この瞬間が。
佐々木はまた、言葉を選ぶ。そして、続ける。

「でも、目に見える現実として、キミはこうして僕と、今ある時間を共有して、感極まって泣き出してしまうほどにキミは、僕と共にいる事に感動してくれている。
これほど、僕にとって幸せな事は無いんだ。…キョン。本当だよ?…僕は、今…そう……とても……っ……」

 そこまで佐々木は言うと、話すのを止めた。というより、話すことが出来なかった。次の瞬間、俺の耳に響くのは、佐々木の泣き声だった。
とても深く、弱々しく、とても…とても綺麗な涙だった。佐々木は声も出さずに、だが、俺のそれとは比べものにならないくらいの、大粒の涙を流していた。
その涙は、留まる事を知らず、佐々木の大きな瞳から、止め処なく零れだしてくる。

――色んな想いが、そこにはあったんだろう。そして、それよりも多くの不安を、佐々木はきっと、その小さい背中に背負っていた。
俺は佐々木の涙を見て、とても深く、後悔する。なんでだよ。
なんで、俺はもっと早く、佐々木に会えなかったのだろう。こいつがこんなに不安になってしまう前に、電話の一本でもして、会ってしまわなかったのだろうと、後悔する。
ハルヒ達と出会ってからも、俺は決して佐々木を忘れていた訳では無い。時々思い出し、「あの頃もあの頃で楽しかった」と、嘆く程度ではあったが、だか、それでも俺は佐々木を忘れたりはしなかった。

 佐々木の瞼から零れ落ちる涙を、夕日は照らし出す。茜色の涙。
俺は佐々木の頬を伝うその涙を、指で優しく拭い取る。佐々木の頬は温かかった。

 少し時間も経つと、佐々木は、気持ち的にも落ち着いたのか、呼吸も一定のリズムを保ち始めた。だがまだ、哀しい余韻を残すかのように、少し、嗚咽をあげている。
 夕暮れの茜色が、時に切なく、俺達二人の影を映し出す。
佐々木は、必死に声を絞り出し、消え入りそうな声色ではあったが、確かに、俺に向けて言葉を発していた。


「僕はもう、不安になったりはしないよ」
 その声に、その言葉に対し、俺は強く頷く。お前を不安にさせるなんて事は、俺がさせない。もう二度と、だ。
俺は佐々木と目を合わせて、そう宣言する。佐々木は、目に少し涙を浮かべながら、またも頬を赤く染める。
「うむ。頼んだよ。次、僕が涙を流したりしたら、それはキミのせいだからな?わかっているね?僕の大切な、キョン」
 はいはい。わかっておりますとも。ええ、よぉくこの身に言い聞かせておきますとも。
俺と佐々木はまた、笑い合った。

 もう二度と、哀しい涙を流したりはしないように。

52:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/08 00:44:42 rV4jNiom
支援

53:51
07/12/08 00:44:52 jYqwSPBq
以上です。佐々木スレで投下は初めてだったので何か無駄に緊張したw
ブログに載せているのでもしかしたら見た事ある人もいるかもしれません。
そんな人にはとりあえず謝っときます。すんませんでした

54:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/08 00:49:52 cq1VJLPQ
佐々木さんSS読んでるときの俺の脳内森永理科本気で自重しろwww

55:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/08 00:58:24 xTKSyPBq
>>53
感動した、GJ!
ひょっとして巨人の人?ブログあるなら見たいな。

56:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/08 01:03:21 rV4jNiom
>>53
GJ
恋愛に慣れてなくて、ぎこちない感じの二人が良いよ。

57:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/08 01:21:50 iCnsXfEw
gj
佐々木さんかわいいよ

58:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/08 01:25:04 jYqwSPBq
>>55
巨人の人では無いですw
URLは貼れないけど、ブログ名くらいは出しても大丈夫なのかな?
でもそれも宣伝になっちゃうか…

59:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/08 01:43:13 IoPVVQqi
テラgj

すんごい良かった。綺麗な文章。

60:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/08 01:57:45 IoPVVQqi
すまぬ。あげちゃった。本当にごめんなさい。
どうかご容赦を

61:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/08 02:18:51 rV4jNiom
中学時代の佐々木さんの話に岡本さんや須藤達を出すのも面白そうだな。

須藤→岡本→キョン説もあるけど、須藤と岡本は佐々木×キョンみたいに、恋人未満の関係だったと個人的に思っている。

62:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/08 08:29:59 Qy8r9Dwu
お早う、そして一寸ビターな甘さのSSありがとう。

GJ!

63:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/08 11:41:08 3cfIwi0k
今日も雪降り、寒いよ佐々木さん

64:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/08 12:00:13 bu7MsSQ4
>>54
 森永理科って本当に佐々木に似合いそーだよな。

>>53
ぐっじょぶ。 すんごく良かった。

65:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/08 12:32:34 Q0xJA/oj
佐々木さん可愛いよ佐々木さん
ビキニに泣き顔とは大サービスだなあ。

青春いいじゃないかっ。

66:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/08 13:06:50 rV4jNiom
流れ読まずにビターなSSというか小ネタ投下

67:SS赤い糸
07/12/08 13:13:37 rV4jNiom
君の小指の赤い糸は誰とつながっているかな?
まー、判らないだろうな。
人は、結ばれる運命にある異性と左手の小指に結ばれた赤い糸でつながっているらしい。有名な話だが。
 ・
 ・
 ・
佐々木やハルヒ達に「誰を選ぶ?」と詰め寄られ、佐々木を選んだ俺だった。

「キョン、僕を選んだ、僕を選んだ。エヘヘ。
キョンと僕は赤い糸でつながっていたんだ」
選ばれた佐々木は幸せそうな顔で、はっきり言って馬鹿面だった。


「キョン、晴れて夫婦となったからには、これからは毎日やらしてあげるよ」
夫婦?今のところ恋人では?

「その代わり、浮気したら、、、
わかるね?

閉鎖空間に幽閉だからね。くつくつ」
そう言った佐々木には、女神の美しさと残酷さが同居していた。

その時、俺は初めて、神:佐々木を怖いと思った。それとも、これは女の怖さなのだろうか。
今まで、普通に会話できたのが不思議だ。


その後の俺は、常に閉鎖空間に囚われた、いや見えない鎖に縛られているようで、自由を感じることは無かった。
早まったか?いや、誰を選んでも同じだったはず。
それに、これは本来、結婚している人すべてが縛られている鎖のはず。俺だけじゃない。
佐々木に不満を持つなんて贅沢だ。
 ・
 ・
 ・
君の指の赤い鎖は誰とつながっているかな?
(終わり)

68:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/08 13:26:38 YL8+UMio
乙~
しかし佐々木と聞くと同級生を連想するから困る
しかも男

69:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/08 14:52:59 Qy8r9Dwu
>>67
佐々木さんなかなかの壊れっぷり乙

『結婚は人生の墓場だ』

という言葉を思い出す…

70:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/08 15:18:23 uIVNutR8
結婚なんてつまらない。
死ぬまで夫婦の約束を守らなくちゃならないんだもの。
そんなバカげた約束を誰ができて?明日どんな風が吹くか、神様だってご存知ないわ。

ミア・フォロー(アメリカの女優)


結婚をしないで、なんて私は馬鹿だったんでしょう。
これまで見たものの中で最も美しかったものは、
腕を組んで歩く老夫婦の姿でした。

グレタ・ガルボ(スウェーデン出身のハリウッド女優)


どちらも両極端な言葉だが、それだけにどちらも真理だ
個人的には、キョンと結ばれる女性、佐々木さんでも長門でもハルヒでもいいんだが、
生涯愛し合って幸せに暮らして、グレタ・ガルボの言葉にあるような
「腕を組んで歩く老夫婦」であって欲しいと思うぜ

71:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/08 15:32:48 ma+BkScn
腕を両側から捕まえられて連行されるキョン
しか思い浮かばないのは何故だろう……

72:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/08 15:42:00 uIVNutR8
結婚をしないで、なんて私は利口だったんでしょう。
これまで見た修羅場の中で最も酷かったものは、
涼宮と長門と佐々木に両腕を捕まえられて連行されるキョンの姿でした。

谷口(日本の高校生・WAWAWA忘れ物の開祖)

73:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/08 15:49:50 QTc7jDxN
SS作家や絵師の皆さん。
そろそろクリスマス・大晦日・正月の季節となってきました。
また、エキスポランド閉園ネタもありますので、皆さん頑張ってください。

74:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/08 16:09:31 Qy8r9Dwu
コラ>>71-72、せっかく>>70でうんうんと納得してしんみりしたのに吹いてしまったではないかw

と思ったら>>70>>72は同じ人物とな!?ますますよくやったと言わざるを得ないww

75:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/08 17:39:31 rV4jNiom
>>72
谷口GJ

76:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/08 17:56:52 6jvxwzkA
「佐々木さんのフラグをどうやって
あの無敵のフラクラのキョンさんに対して立てるんですか?
メルアドの交換から・・・」

「NON
時間がかかりすぎる
あいつらが現状にいつまでも満足しているとも限らん
休みのたびの外出の取り付け」

「NON
SOS団の活動があります
あの涼宮さんが許可をするとは思えません
毎日校門近くでの待ち伏せ」

「NON
TFEIの監視で学校周辺では
待ち伏せはおろか接近すらもできない
正面からの告白」

「NON
長門さんは切り抜けてもフラクラがあります」

「結論は神もTFEIもフラクラをも物ともせず
キョンに対してこの僕のフラグを立たせることのできる
そんな方法だ」

「――まさしく―無理難題――」

「ダヨネ・・・」

77:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/08 20:30:44 XwGiYmKw
ヒント:人生、宇宙、すべての答え=42

78:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/09 00:04:36 7KLFYVP1
>>76
佐々木さんがむばれ

79:SS橘の呼び出し
07/12/09 00:33:34 31xlLpL4
ある日、橘に呼び出された。
喫茶店で、橘にははっきりと怒りのオーラが見えた。
女の子と二人きりでも喜べない状況なのは、何かの呪いか?誰か助けてくれ
「昨日、また佐々木さんの閉鎖空間に神人が発生したのです」
「俺の責任とか言う口振りだな」
「100%、キョンさんの責任なのです。男らしく佐々木さんに対して責任とるのです!」
声がでかいぞ。周りから注目をあびている。

ヒソヒソ
(責任取れだって?)
(あの子を妊娠させたのよ)
(違うわよ、話の流れから言って、妊娠したのは、あの子の友達よ)
(佐々木とか言ったわね)
(まだ高校生なのに)

古泉といい、橘といい、超能力者は俺に責任転嫁することが趣味らしいな。
「いつものように、佐々木が俺の家に来て、勉強して、食事しただけで、いかがわしいことはしていないぞ」
溜息をつきながら橘は言った。
「あきれました。映画の券とレストランの食事券をあげるので、明日にでも佐々木さんを誘って下さい」
「そうだな、映画を見て食事でもすれば、佐々木の気分も落ち着く、ん?どうした?」

橘は、うちのシャミセンがセミの抜け殻を見つけた時の目をした。
そういや、いつか古泉もその目をしていたな。
それ、超能力者の間で、はやっているのか?

「あきれて言葉も出ないのです。キョンさんがこんな馬鹿だったとは」
「俺が馬鹿なのは認めるが、面と向かって言われると傷つくな」
「ずっと見ていて気付かないのですか?
佐々木さんはキョンさんを恋人として独占したくて、日々悶々としているのです。それとも涼宮さんの方が良いのですか?」
周囲の視線が刺さって痛い。

ヒソヒソ
(聞いた、二股よ二股、それも一人が妊娠)
(女の敵よね)
(どっかで見たと思ったら北高校の涼宮さんの彼氏よ)
(ということは、涼宮さんは二股かけられていたの?ザマー見やがれ、じゃなくてかわいそう)
(私は、涼宮さんみたいなDQNがまともな男に相手されるわけがない、とずっと思っていたわ)
(佐々木というと、彼の元彼女よ、確かそうだわ)

橘には、以下のことを言われた。
①正式に告白して、今後佐々木を恋人扱いすること
②他の女の子に色目を使わないこと
③優しくすること
④デートの時には最低でも抱き締めたりキスすること
⑤時々Hすること
⑥卒業したら結婚すること
⑦浮気しないこと
⑧佐々木を第一に考えること
⑨育児や家事は分担すること
⑩ギャンブルはしない
⑪煙草は吸わない
⑫酒は二十歳からで、適量を
「佐々木さんとの約束ですからね。絶対守って下さいね」
約束って、お前の一方的な要求だろうが。
「ここは私が払っておきます。明日はよろしくお願いしますよ」
おーい、俺はYESともNOとも言ってないぞー

なお、その後、古泉と喜緑さんにも似たようなことを言われた。
俺の選ぶべき相手はハルヒ、長門と違っていたけど。しかし、俺はどうすれば良いのだよー
(終わり)

80:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/09 00:50:49 wexgPbjU
>>79
ひょっとして、取り巻きの方が苦労している?

81:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/09 02:36:11 wexgPbjU
>>79
次の日、涼宮と佐々木に両腕を捕まえられ、長門に背中を押されて連行されるキョンの姿があった。
それが、俺達が『キョン』の姿を見た最後だった。
キョンは人生の墓場に行ってしまった。ある意味、俺達の知っているキョンはその時死んだのだった。

次の日から、『キョン』は存在しなかった。
代わりに『佐々木の婿』が『キョン』の席に座った。
ちなみに、『佐々木の婿』は生まれ変わったキョンのことだ。

谷口談
(おしまい)

82:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/09 03:40:48 wexgPbjU
>>73
万博会場だったエキスポランド閉園するのか。
大阪大学工学部キャンパスの近くなんだね。

83:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/09 03:44:52 ECR2Tn8x
グレイのように連行されるにも、腕が1本足りない展開w
TFEIは卑怯だろ、つか参謀が極あk...

84:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/09 04:16:45 31xlLpL4
谷川スレで見たけど、TFEIって機関の人が使っている隠語らしいよ。何の略かは不明。

85:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/09 04:32:02 31xlLpL4
案外、Tとても、Fファンキーで、Eエロい、I淫乱な奴等とかいう意味だったり。

86:俺の愛車は軽トラだ MK.Ⅳ 1/4
07/12/09 10:17:33 K3115ozz
「そこだ、キョン。最大のボトルネックは流通構造なんだよ!」

 その佐々木の言葉を聞いた時、こいつは何を言っているんだと怪訝な瞳で佐々木の顔を見つめたのが本当のところだった。
だからいつもの様に話を聞き流してしまえばいいだろうといういう、俺の考えが甘かった。
佐々木の話はいつもの雑談・勉強モードから懸け離れており、魚の流通に関して淡々と述べていた。
事業目的は鮮魚・地魚の急送による直接販売であり、港と料理屋や小売店に流通経路を発掘する事であった。
最大のネックである既存の流通経路に対抗するには、ニッチ分野でのルート開発しか有り得ないだろうと・・・・。

 佐々木は喜々とした表情で話を進めてゆき、その話の相手をしている内に夜が明けてしまったので、佐々木を車に乗せて家まで乗せ
て帰る事にした。年頃の娘を二日連続外泊させたんだから、親御さんに俺から謝りの1つでも入れておこうとも思った訳だ。
助手席で眠る佐々木を横目で見ると、実に満足感に溢れた表情をして穏やかに眠っていた。この表情を見れるのは家に着くまでだ。
 ・・・・後で写メで撮っておこう。
佐々木を家まで送り親御さんにお詫びをして家に帰った俺は2日分の疲れを癒すべく、最長睡眠時間記録を更新してやろうと思いなが
ら寝床に着いた。


ぷるるるる・・・・
 電話が鳴っている。ウザいぞ。寝たばかりなのにまた邪魔する気か。
ぷるるるる・・・・
 ほっといてくれ。俺は眠いんだ。
ぷるるるる・・・・
 やれやれ、俺には落ち着ける時間も暇もないのか。液体金属の中でクロールしている様な重さを感じつつ電話をとった。
「・・・・・・」
 ノイズひとつ無い沈黙の時間。間違い電話ならとっとと謝って切るのがマナーなんだぜ。最近の若い奴は礼儀も知らな・・!
・・・長門か?
「・・・・図書館まで、来て欲しい」
 電話は必要最低限の内容を伝えただけで着信モードへと切り替わり、ふたたび沈黙の時間の時間を取り戻した。
長門が電話してくるなんて最近は珍しいな。あいつが電話してくる以上は何だかの宇宙的・未来的・超能力者的な問題が起こっている
に違いない。寝床から起きた俺は頭を掻き毟りつつやがて1つの言葉を呟いていた。
「やれやれ」




87:俺の愛車は軽トラだ MK.Ⅳ 2/4
07/12/09 10:19:22 K3115ozz
 徒歩と自転車と軽トラ。図書館までの道のりを何を使って行くべきか脳内会議を行い、俺は軽トラを使って行くべきと判断した。
最近は運動不足気味でもあり徒歩と自転車で向かいたい気持ちもあったが、俺を呼び出した相手の事を考えると火急速やかに行くべき
と判断した。もっとも、家からの距離と車の出し入れの時間を考えると自転車の方が早いかも知れなかったけどな。
 図書館の駐車場に愛車を止めた俺は長門を探しに図書館に足を踏み入れたのだが、電話をとった時に居場所まで聞いていなかったし
長門も伝えてくれなかったので、俺は書架を巡る事になった。
あいつと図書館の組み合わせは何度かあった組み合わせの1つであり、最初は高一の時のSOS団第一回不思議探索の時にまで遡る。
その時はハルヒに眠りをぶち壊されて狼狽しつつ長門を探しあて図書館カードを作って帰ったのだが、その後も何度か図書館と長門の
組み合わせはあった。大抵の場合は俺が本に飽きて寝てしまい、そろそろ時間だと思って長門を探しに館内を巡ったのだった。

 デニム地のシャツとすらりとしたジーンズをまとった長門がそこに居た。
少し着古した感じの色が長門のイメージカラーに合い、体のラインに合わせたかの様なデザインはアップテンポな軽快さを感じさせた。
 ・・・・よう、長門。久しぶりだな。
「あなたに伝えたい事がある・・・・。こっちへ」
 長門は音も立てずに颯爽と俺を導き、自習スペースへと歩を進めた。机の上には夥しい程の本が整然と平積みされていた。
一体これは何なのだろう?長門はこれだけの本を俺に読めと言っているのか。何の為だかさっぱり見当が付かず少しばかり驚いた表情
で長門へと振り返った俺なのだが、あいつが取った行動が俺を更に驚かせる事になる。
俺の手の平を優しく掴んだ長門は、その手を自らの胸の前まで採り上げて両手で包み込んだ。まるで耶蘇の人が祈るかの様子で。
 予想外の動作に俺は少し戸惑いを感じて長門を見詰めようとしたが、頭をもたげているのでその表情は分からない。やがて首を上げ
て俺を真正面に捕らえた長門は、星々が一杯詰まっているかの様な瞳を向け、ひと言だけ俺に言葉を投げ掛けた。
「あなたは・・・・あなたは、きっと大丈夫。だから・・・」
 それだけを言うと踵を返して小走りに駆けて行き、俺は本と共に取り残された。




88:俺の愛車は軽トラだ MK.Ⅳ 3/4
07/12/09 10:20:02 K3115ozz
 一人取り残された俺は本の山を一瞥した。
本には引き千切ったメモ帳らしき白い紙の小片が挟まれており、ジャンルに区分けされているかの様だった。長門らしさを感じさせる
几帳面さで本が並べられており背表紙を一覧する事が出来たのだが、どうもこれは会社設立に必要な知識の倉庫らしかった。
とても一人では片付けられそうにないと感じた俺は、本の虫を自称している娘に電話する事にした。
 恐らくは俺よりも寝起きは悪かったであろう佐々木は電話先で声をひそめて笑い「今度は図書館デートかい?」とつぶやいた。
違う、違うんだって!思わず声を上げて突っ込みを入れた俺は、ここがドリンクコーナーである事を幸運に感謝した。

 やがて佐々木は初夏に相応しい軽快で機能的な衣装をまとって図書館にやってきたのだが、本の山を見るなり絶句する事になる。
「キミは僕の話をちゃんと聞いてくれていたんだ。僕、なんか嬉しいな」
 ・・・・ここで宇宙的な介入があったと言うのは止めておいた方が良さそうだ。
「僕とキミとでこの本を調べ尽くそうって事だね。ちょっと力がみなぎってきたよ」
 ・・・・まぁ、そう言う事だ。と言っておくのが無難であろう。佐々木はよく調べたねとか、これは適切な選択だと何やらつぶやい
ていたが、おもむろに本の山を自分と俺の分に切り分けると空いている自習スペースへ潜り込んだ。どうやら佐々木が自分の分として
持って行った本は法律や経理に関する本らしい。
どうやら俺には残された経営・経済・営業の指南書と格闘する事が定められたらしい。まったく手を付けないと佐々木に後で何を言わ
れるかわからないと思った俺は、随分とコミカルな表紙をしたビジネス書を手に取った。
父親の急死で中堅企業の社長になった女子高生を主人公としたラノベらしい。


 俺はどちらかと言えば、これはハッキリと言える事だと思うがお金に対してはダークなイメージしか持っていなかった。
自分で本を読んで初めて気が付いたのだが、金が無ければ世の中は機能しない様になっているのを論理的に理解出来たし身近なものだ
と感じた。そしてその流れに翻弄されるばかりではなく、自分の意思・意図をもって介入したいという気が起きてくるのは自然な物の
考え方では無かろうか?
 その事を佐々木に話すと最初は少し戸惑いの表情を見せつつも、我が意を得たりといったちょっとした悪戯を思い付いた子供の様な
表情をさせながら「それじゃ僕と一緒に思考実験をしてみないか」と俺に促した。

 思考実験と言っても、そう大した物じゃない。事務職1名と仕入・営業を兼ねる1名で事業を興し、損益分岐点がどこかとか事業を
行う上でボトルネックはどこになるかと机上で語り合うだけの事だ。
はじめに意見がぶつかったのは従業員に対する賃金の事だった。自分がしたい事を自分の手で行う訳だから無給でも無休でも構わない
だろうと思ったのだが、佐々木は無給や無休では法人登記が出来ないと返してきた。
「それに将来の事を考えると、ある程度はキミも僕も手取りが要ると思わないか」
 まぁ、世の中の仕組みがそうなっているなら仕方無いよな。
佐々木が望んだ回答を俺がしたのだろうか?頬を桜色に染めた佐々木は握った右手を唇に当て、声を堪えて笑っていた。
そんな会話をしつつ二人でビジネスモデルを考える日々が続き、やがてそんな日々は終わりを迎える事になる。




89:俺の愛車は軽トラだ MK.Ⅳ 4/4
07/12/09 10:20:45 K3115ozz
 最初はお互いに無視していたのだが、結局は避けられない問題点が残った。要するに元手をどうするかだった。
さすがの佐々木もこの問題の解決法は思い浮かばなかった様子で悩んでいる。時々俺の方をちらっと眺めて視線を逸らす動作を何度も
繰り返すのだが、俺にだってこんな問題は解けないのはこいつだって判ってはいるだろう。確かにマトモではない方法なら思い付く。
未だ存在する変人組織をそそのかして無心するとか、宇宙的存在に本物を超えた偽物を用意して貰うとか、未来的存在に預金を預けて、
未来の口座から預金を引き出すとか思い付くが、こんな事を言うと拳を突き上げて佐々木は怒るに違いない。
 この気まずい雰囲気を突き崩したのは手を組み、祈りのポーズをした佐々木だった。
「キョ・・キョン!もし・・・・万が一にもキミがそれでいいならば僕に一計があるのだが、聞くだけ聞いて貰えないだろうか?」

 どうやらこいつは出資者に覚えがあるらしい。


 俺はその話に否応もなく賛同し、それに向けての準備を行う事にした。
人を説き伏せるのであれば直感的な方が好ましいし、より視覚的に訴えた方が効果的だ。学校の授業で民間会社から助教として教鞭を
執っていたエンジニアがそう言っていたし、結局の所は人を動かす力がない限りは優れた考察も埋もれて消えると。
佐々木と話し合った事はメモや日記に書いていたが、それを1つのストーリーとして他人に理解して貰うのは非常に大変な事だった。

 俺は今、大人の前で大人として話をしている。佐々木が借り切った日本料理の店の中に俺達は居た。
どちらかと言えば人前で話をするのは苦手な分野に属する事であって、俺はそんな自分を補強すべく資料を整えた。
まずは事業の意味と意義を説くべく日本の食文化に属する事から話を始め、それが危機的な状態にあると訴えた。ただ単に危機を煽る
だけでは押売と同じだから、俺は各種の統計を例に出して問題点を列挙し、解決方法として二人で考えたビジネスプランを提示した。
資料は佐々木の目を通さずに俺一人で作り上げて出来映えが心配な所ではあったが、横目で見る佐々木の様子からするに遡及点は貰え
そうな資料になっている様で、時折大きくうなづくのを見ると提示の仕方も悪くは無いようだ。
しかし、これだけでは説得力に乏しいと考えていた俺は、資料に用意していない台詞を訴えるように言い放った。
「このモデルを成立させるのは俺一人では出来ません。是非とも俺に娘さんを預けて頂きたい」

 世界が静止したような時間がしばし流れた。
ウチの両親が「やれやれ」とつぶやき、妹は「キョン君、恥ずかし~」と囃し立て、佐々木の両親はくつくつと笑っていた。
・・・・なぁ、ここまで来たら俺達はもう引き返せないぜ。
横へ視線を向けると陶酔感に満ち溢れたのか、すっかり惚けたような表情をしている佐々木がいた。



90:俺の愛車は軽トラだ MK.Ⅳ
07/12/09 10:24:23 K3115ozz
とりあえず、プロポーズ大作戦編は終了です。

このシリーズでは以下を参照してつくられました。
 ・原作
 ・秒速5センチメートル
 ・女子高生ちえの社長日記
 ・スレ住人の愛情

91:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/09 11:19:22 tTGn76OW
>>90
GJ!

92:俺の愛車は軽トラだ MK.Ⅴ 1/5
07/12/09 14:17:49 K3115ozz
 その後の慌ただしい日々は俺は焦燥感を相棒に共に過ごす事になった。
自分の腕1つでどこまで出来るか確かめたい気分であったし、あいつの微笑みを見たかったからだ。
「キミはよくやったよ、うん」
勉強を見て貰っていた時に満足気な表情を浮かべて微笑む仕草が妙に恋しかった。今までは目先が分かり切った課題を解くだけの人生
だったが今度の相手は先が読めない相手だから、そんな中で回答を導き出して驚かせてみようという気持ちがあったのは否めない。
事業を始めるに当たって必要不可欠な事務処理を二人で一緒にこなした俺は、愛車と共に見果てぬ荒野に目指していた。

 最初は挫折の連続で生来、楽天家の俺もめげそうになる事も屡々あった訳なのだが、あいつに俺は元気とアイデアを貰って再び外に
出掛ける日々が何日も何日も繰り返された。石を積み上げては崩されまた積み上げる、まるで昔の刑罰の様な日々だった。
 そしてある日、初めての取引が成立した。
『☆入金確認☆』短いメールを受け取った俺は小さな宴を催す事を考えた。そんなに俺にも手持ちが残っている訳でもなく、コンビニ
で買ったチューハイと俺が仕入れた魚で祝う事にした。
魚は地魚ではなかったが、街中では絶対にお目に掛かれない新鮮な秋刀魚だった。
俺は台所に立つと包丁を使わずに指だけで秋刀魚をおろしにして、これ見よがしに新鮮さをアピールした。
普通は秋刀魚を処理するならば柳刃包丁を用いた繊細なテクニックが求められるのだが、鮮度がいいなら鰯を処理する要領で腸と骨を
一緒に抜けて、ちょいと掴んで引っ張れば綺麗に皮も剥けるものだ。
「これはプレゼンテーションに使えるよ。僕にも教えてくれないか?」
 不意に秋刀魚祭りが始まって、久しぶりに俺が帰郷のを眺めたいのであろうか、親達や妹が集まりだして祭りは賑やかになってきた。

最初の1つの成功は小さな自信となり、次の成功の一歩となった。
そんな事を繰り返しながら俺の20代前半は過ぎてゆき、最初の目標であった損益分岐のラインを超える事に成功した。
俺は軽トラの冷凍庫に黒ペンキを使い、何度も繰り返して練習した文字を鮮やかに描き上げた。

「 (株)佐々木鮮魚 」




93:俺の愛車は軽トラだ MK.Ⅴ 2/5
07/12/09 14:19:42 K3115ozz
 最近になると事業がうまくいっている証として、ひとづてに紹介をされる事も多くなって港では意欲的な漁師に出会い、街に戻れば
新進で活躍する店主と出会う事になって色んな話を聞く立場へと変わり、時には産地と消費地を繋ぐ仲介業的な立場にもなったし、
色々な店を巡っている関係で店のコンサルっぽい事もする様になった。
俺は事業拡大は蜜の罠と考えていたので料理屋の経営とかをネタに銀行が融資話を持ち込み俺は丁重にお断りをしていたが、顧客の
事業拡大には諸手を挙げて賛同するようにしていた。その方が仕事甲斐があるしな。
 やがて取扱量が増えていくと軽トラでは間に合わなくなり、中型トラックへ愛車が替わった。色んな思い出が詰まった愛車を手放す
のは一抹の寂しさを憶える事だったが、これは必要な事だからと自分自身を納得させて思いを断ち切った。


 ひと言に俺の仕事を魚屋さんと言うのも出来るのだが、これはこれで結構手間の掛かる仕事だ。
思いっ切り要約すれば、自分で魚を仕入れて自分で売り歩くという事になるのだが、実務を考えると思いの外大変だったりする。
最高の鮮度で仕入れようと思うと漁船が港に戻る時を狙うのがいいのだが、時期や魚種で時間がマチマチだったりするので完全に一人
でこなすのはどのみち無理な事だ。
だからこそ漁師のつてを頼って魚を確保して貰う必要があったし、販売先の顧客の方も開店時間に間に合わせる必要があった。
 この顧客に合わせるというのも中々の苦労を要するのだ。
店によっては開店時間中に珍しい魚を手で運び、いわばパフォーマー的な存在を求められる時もあるし、仕込時間中に納品しなければ
いけない客もいる。これに珍魚好き・近海好き・鮮魚好きが混じれば、俺の行動は徹底的に効率化しないと注文を捌き切れないのだ。
 確かに忙しい毎日が続いていたが、俺はそれを満足していたし不満など奈辺にもありはしなかった。
俺は自分の体に鞭を打ち走り続け、20代後半は足早に去っていった。


そんなある日、高速道路のサービスエリアでしばしの惰眠を貪っていた時にそれは起こった。

ドンドン・・
 誰かがドアを叩いている。ウザいな。駐車ラインはキッチリ守っているぞ。。
ドンドンドン・・
 エンジンは切っているからエコなんだよ。俺は眠いんだ。
ドンドンドンドン・・
 やれやれ、愛車を壊されたら叶わないからな。すっかり強ばった体の重さを感じつつ俺は体を起こして音源の方へと振り向いた。
「あほ!さっさと起きなさい!中に入れなさ~い!!」
 なんでハルヒがここに居るのだ?




94:俺の愛車は軽トラだ MK.Ⅴ 3/5
07/12/09 14:20:39 K3115ozz
 ―よぉ、ハルヒ。随分と久しぶりだな。
言い終わるが先に俺がドアロックを開いた途端、ハルヒが息を切らせながら助手席に乗り込んできた。
 ―車に乗り込むだけで息が上がるとはお前も寄る年波には勝てないのか?
そんな戯れ言を言おうとする間も無く、俺はハルヒに腕を掴まれ車外に引き摺り出されていた。相変わらずこいつは粗暴者だな。

 寒い夜だった。高速道路の照明がハルヒを橙色に染め上げてはいたが、明かりの色とは無関係に寒々とした空気が俺達を包み込んで
いたし、ハルヒの表情も怒っているかのようでいて冷たい感じの表情と視線を俺に向けていた。
「ねぇ、キョン」
 ―どうした、ハルヒ。
「・・・・」
 ―こんな所でお前に出会うとは思ってなかったよ。
「・・・・」
 ―どうしたんだ?俺に声をかける以上、俺に何か用事でもあったんじゃないか
「なんで・・・
 ・・・何であたしがこんな事しなくちゃいけないのよ!!」
 悲鳴に近い叫びを上げたハルヒは全身の力を手の平に集めて俺に平手打ちを食らわせて、よろめいた俺の襟首を両手で掴んで締め上
げると愛車にぶつけるようにして俺から逃げ場を奪った。
「あんた、自分がやっている事がどんな事かわかる!?
 自分で自分の大切なものを奪い去ろうとしているのよ!
 本当にあんたって奴は救い様もないバカだわ!!そんなあんたに付き合っているあたしもホント、馬鹿馬鹿しいわ!」
 ・・・・何の事かさっぱり判らないが、ここはひとつ連絡でも入れた方がいいかも知れないと思った俺は携帯電話を取り出して、久
しぶりとなる生声の業務連絡を入れようとボタンを押した。

「現在、この番号はお客様の都合により・・・・」
頭からすぅっと血が引いていく感触を感じ、俺は力無く地面へへたり込んだ。
 ―何があったんだ、ハルヒ。俺に教えてくれ。
ハルヒは何も言おうとしなかった。俺の前に正立して手は硬く握られて小さく震えていた。
視線を俺から逸らしてきつく唇を閉じていたハルヒはしばらくして大きな深呼吸を何度も繰り返し、右手を俺に差し向けた。
「ねぇ、キョン。
 今ならば、今だったら戻れるかも知れないわよ」
 それは今までに見た事がない、優しげで包容力に満ち溢れたをたたえたハルヒの微笑みであった。

俺は差し出されたハルヒの手を見詰め、こいつの手はこんなに小さく白かったのかと思った。




95:俺の愛車は軽トラだ MK.Ⅴ 4/5
07/12/09 14:22:04 K3115ozz
「さぁ、キョンこっちについて来なさい」
不安で一杯になった迷子の幼児を引き連れるかのようにハルヒは俺を引き連れていった。
そこには懐かしい車があった。「 (株)佐々木鮮魚 」とペイントされた、随分と前に分かれた愛車がそこにあった。


・・・・随分と昔の事を思い出した。
「お姉ちゃん、お姉ちゃん。本当に帰れるの?大丈夫なの?」
「だ、大丈夫なんだからっ。あったしにど~んとまかせなさい!」
 妹が産まれる前か後か、帰省先で従兄弟の姉ちゃんに連れられて虫取りに出掛けた時だった。姉ちゃんは俺を喜ばせようと遠くまで
一緒に出掛けたのだが、帰りの道が途中で判らなくなりすっかり陽は降りた暗い夜道をさまよう事になった。その時の俺は今思えば情
け無いが泣いていた。姉ちゃんはそんな俺をなぐさめながら、時には歌をうたって俺の手を引いていた。
 姉ちゃんの手の平の感触を俺は妙にはっきりと憶えていた。
帰りが遅くなった俺達は散々絞り上げられたのだが、今となっては懐かしい思い出だ。
・・・・なんで今更に思い出したのだろうか。
そうか、これは夢の世界に違いない。
夢ならば、いつかは目覚めないといけないんだよな。



「キョン、キョン。着いたから起きなさい」
肩を小さく揺さ振られる感触がして俺は目を覚ました。暖かい柔らかな感触を手に感じていたので目をやると白い手があった。
「いい加減、手を離してくれない?片手運転はホント大変だったのよ」
 ―色々と済まないな。
ハルヒは俺を連れて目の前にある白い建物へ入っていった。
この中にアイツが居るんだと思うと緊張感がみなぎってきた。俺は叫びたい駆け出したい気持ちで一杯となったが、その衝動を鎮めて
ハルヒに従って歩みを進めた。
常に冷静でありたいというのがポリシーだし俺もそうありたいと思っていた。たとえこの先に何があろうともだ。

 やがて1つの部屋の前に立ったハルヒは手を肩まで上げ、人差し指でドアを指し示した。
「ここから先は、あんたが行きなさい」
 ・・・・ああ、判っているよ。でもな、俺がここまで来られたのはお前のおかげなんだから、俺はお前と一緒に入るぞ。
緊張感で涌いてきた唾を呑み込むと俺はドアノブに手を掛けた。




96:俺の愛車は軽トラだ MK.Ⅴ 5/5
07/12/09 14:23:15 K3115ozz
「お帰りなさい、キョン」
そこにはベッドに身をゆだねた佐々木が手をひらひらと振っている姿があった。
「まったくキミという人間の底知れ無さは僕をいつも驚かせる。このまま戻ってこないんじゃないかと思ったよ」
 ―なぜお前が病院で休んでいるのだ。
「ここまで言われるとさすがの僕も怒るよ。
 キョン、君はね。世間で云うところの"お父さん"になったんだよ」

俺は頭がクラクラとして床にへたり込む事になった。
一日、何度までなら許してもらえるかね。

97:俺の愛車は軽トラだ MK.Ⅴ
07/12/09 14:33:37 K3115ozz
これで「俺の愛車は軽トラだ」シリーズを終了とします。
ただし、もしかすると番外編が入るかも知れません。

98:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/09 14:50:41 tTGn76OW
>>97
これで終わりか…GJでした


余談だが……普通街中で秋刀魚って見かけないのか?
普通に置いてあるだが……

99:97
07/12/09 15:05:08 K3115ozz
>>98
「新鮮な秋刀魚」と云う事でご理解下さい。
漁港ではありふれた光景みたいですが、地元の人達ってトロ箱抱えて魚を買いに行くのがデフォルトみたいで、
とれたてぴちぴちの秋刀魚も4~5㌔を数百円で買っていくのです。
そして家で手捌きさばいて一気に食べちゃうんですよね。
そんな昔見た光景を、今は会えない娘の事を思い出しながら書きました。


100:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/09 16:26:39 tm1XWIyh
>>99
お前の過去に一体何が……

101:佐々木vsキョン
07/12/09 16:58:24 tm1XWIyh
佐々木「魔法カード≪恋文≫発動!」
キョン「恋文?」
佐々木「このカードは自分フィールド上にモンスターが存在し、尚且つ魔法・罠ゾーンに
     カードがセットされている時に発動可能なカードで、二つの効果から相手が
     一つを選択して発動するんだ」
キョン「佐々木のモンスターを貰うか、それとも佐々木が俺にセットカードを寄越すか……
     よし、じゃあセットカードの方を貰うぞ」
佐々木「君ならそっちを選ぶと思ってたよ。君のフィールドにこの伏せカードを渡そう。
     そして更に、魔法カード≪ハリケーン≫を発動! フィールドに伏せられた
     魔法・罠カードを全て持ち主の手札に戻す! キョン、君のフィールドにセットされた
     このカードが僕の手札に戻った事で、効果が発動するよ」
キョン「何っ!?」
佐々木「魔法カード≪秘めた思い≫の効果発動! 僕は1000ポイントのライフを回復し、
     君は1000ポイントのダメージを受ける! さあキョン、どうかな? 僕の秘めた想いの
     伏せカードの威力は?」
キョン「随分回りくどいバーンカードだな。≪ご隠居の猛毒薬≫辺りでいいんじゃないか?」
佐々木「…………」

キョン「≪アックス・レイダー≫で、佐々木の≪恋する乙女≫に攻撃! アックス・クラッシュ!」
佐々木「くっ……だけど、恋する乙女は戦闘では破壊されない! そして恋する乙女を
     攻撃したモンスターには、乙女カウンターが一つ乗るんだよ」
キョン「乙女カウンター? 何だそりゃ」
佐々木「すぐわかるさ、くっくっ……僕のターン! 恋する乙女に≪キュービッド・キス≫を装備!」
     そして恋する乙女でアックス・レイダーに攻撃する!」
キョン「何だ? それじゃお前のライフが削られるばかりだぜ」
佐々木「その通り、僕のライフは減る。だけど、キューピッド・キスの効果で、恋する乙女を
     傷つけたモンスターのコントロールを得ることが出来るのさ。どうかなキョン?
     僕を……もとい、僕のモンスターを傷つけた君……のモンスターには、きっちりと
     責任を取ってもらって……」
キョン「永続罠発動、≪洗脳解除≫。全てのモンスターは元々のコントローラーの元へ帰るぜ。
     キューピッド・キスの効果でコントロールを奪われたアックス・レイダーも戻ってくる。
     残念だったな、佐々木」
佐々木「…………」



佐々木「……僕が! あんなにアピールしてるのに! キョン専用デッキまで組んだのに!
     キョンは気づかないどころか除去カードで恋する乙女を破壊したりして!
     キョンのバカー!!」
橘「さ、佐々木さん落ち着いて! アッー! 閉鎖空間にモンスターっぽい『神人』がー!」

102:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/09 18:27:02 NR6hu8zy
>>86-97乙&GJ!
長門とハルヒとなにより(元?)佐々木さんに感謝しろよ?キョン

103:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/09 19:02:40 NR6hu8zy
連レスだったら失礼、今VIPまとめに挙がってるパンジーの優雅な休日って、
前に春日局でささっきーが『ポンジーがVIPでも大活躍』って言ってたやつ?

104:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/09 19:14:03 KKvq7/Vz
トラック、GJ

105:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/09 21:53:06 VZn4C+Iu
軽トラの話、意味不明なんだが。
誰か解説してくれないか。

ハルヒの「自分で自分の大切なものを奪い去ろうとしているのよ!」って何のこと?
佐々木が、仕事ばかりで構ってくれないキョンと分かれようしてるってことか?
長門の行動もよく分からない。何が大丈夫なんだ?

106:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/09 21:57:35 31xlLpL4
トラックGJ

>>103
多分それだ。懐かしい。

107:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/09 22:00:23 BXUs8Iqa
佐々木夫妻の仁義なき戦い
キョンと佐々木の七日

108:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/09 22:54:29 EEmxI/Fw
いつも面白いお話が読めるとは限らない

109:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/09 23:23:16 NR6hu8zy
>>105
長門のは頑張って佐々木との会社を成功させろ、って応援してるんだと思う。
ハルヒのは…>>99見る限り言っちゃいけない雰囲気が(ry
まあ解釈の仕方だから全然違う可能性も充分あるけどね

>>106
おお、やはりそうでしたか。ポンジーなかなか面白かったw

110:αで佐々木が出ない理由
07/12/09 23:52:03 31xlLpL4
「というわけで、私もキョンも神能力移植には反対だわ」
「判りました。佐々木さんが神になりたくないというなら、その意志を尊重します。
これから我々は付きまといません」
「判ってくれましたか?」
「ということで、これからはキョンさんに会わないで下さい。
我々は、これからは、機関と共に涼宮さんの管理をするのです」
「・・・・・・
え?何で会ったら駄目なの?」
「佐々木さんがいると、涼宮さんが嫉妬して良くないことが起こるのです。
佐々木さん自身にとっても、世界にとっても」
「・・・・・・」
「それが無難だな」
「―もう――彼に――会えない――」

「・・・・・・
えー?そんなー」
「―考え――直す?――」

私はキョンに何も言わずに組織の資金で長期の海外留学をすることになった。
(終わり)

111:あたしの愛車は冷凍車 1/5
07/12/10 00:34:52 jj7j0lYe
 起こった事を端的に言い表すとあたしはキョンに見放された訳なのよ。
佐々木さんに負けたとはあたしは認めたくなかったし、負けるという言葉に反応してしまったのも理由の1つかもね。
負けたと思ったら自分がほんとうに惨めになるし、少しでも根性がねじ曲がっていたら逆恨みの原因にもなりかねないから。
 あたしはこう考えたの。あたしに落ち度がいっぱいあって、それが原因にキョンに振られてしまい見放されてしまったのよ。
そう思うと胸の中のヤキモキはすっきりしてきた。あたしの胸に秘めていればアイツにも迷惑掛からないしさ。
今夜は一晩ず~っと泣いて泣いて過ごして、明日になったら一歩踏み出そう。


やがて学校を卒業して社会に飛び立つ日が来たけど、あたしはその群衆の中から"あの二人"が居ないように心に願った。
もっともこれはあたしの記憶違いだった様子で"あの二人"はあれから直ぐに学校を辞め、二人で事業を始めたらしかった。
その時はキャンパスでも噂になったねと、卒業の日に思い出話の1つとして語られたけどあたしには全然興味がない話だし聞きたくも
無かったから、耳をふさいでその場を立ち去った。

 就職したのは地元の水産会社で家から近いと云うだけでなんの取り柄も無い会社だった。
あたしはここで頑張って輝いてみせるんだと思ったけど、これが意外に長続きしなかった。
切っ掛けはよくある話で上司や同僚とかと仕事で色々あったのよ。結局はみんな同じ方向に向かっているんだけど、その方法が回りく
どく非効率と感じたあたしは独断で改革してみようと思って行動した。
 すると仕事の効率は上がったけど上司から独断は許さない、新入りのクセに生意気だと目を付けられた。
同僚の、あたしから見れば只のヒヨッ子連中は自分で物事を判断出来ないクセに上司へとなびいていった。
ここはあたしの居場所じゃないと思った時には辞表を出した後だった。2年ぐらいは働いたかな。

 次に就職したのはまたも近所の惣菜製造の元締めをしている会社だった。ここは少し長かった。
商品企画グループに配属されたあたしにある程度の裁量が与えられ、惣菜物に関する独自の調査を行う事が出来て、自分自身の企画で
新製品を発表する事が出来た。小さな満足感は次の企画へのチャレンジ精神に変わり、次々へシリーズ化の展開を行って業界でも少し
名前が知られるようになったのはそれほど時間は掛からなかった。
 でもある日、その会社の御曹司があたしに声を掛けてきた時からすっかり調子が出なくなった。色々と優しくはしてくれる人だった
し、悪い事は絶対考えもしない本当にいい人と思いはしたけれど、それだけでは社会に出られないと思った瞬間からその御曹司に冷酷
な対応を取ってしまう事になった。
 もうこの会社では居られないと思ったあたしは思い立ったらと辞表を書いていた。3年ぐらいは働いたかな。

 あたしの手元には昔からでは思いも付かないようなお金が残っていた。
大してお金が掛かるような事には使っていなかったし、そんな時間も無かったから手元に残っただけの話だった。
両親はそのお金を使って自分を磨いてそろそろ相手を見付けなさいと言ったけど、全然乗り気じゃなかったあたしは親の言う事も無視
して次の仕事を探していた。
 色んな会社を受けてみたけれど、大きな会社では履歴書だけでハネられていた。人に言われて初めて気が付いたけど、自分の職歴に
書く内容の何と短い事。その上に実際に働いた年数も短かったから、あたしは根性無し新人類と見られているようだった。

 そんな事があったから、発想の転換としてバイトから始めようと陳腐な行動をとったのも当然だと思う。




112:あたしの愛車は冷凍車 2/5
07/12/10 00:35:34 jj7j0lYe
 あたしは自分が出来そうな仕事は片っ端からやってみた。
色んな出来事があってそれなりの経験は積んだつもりだったけど、何故かいつもあたしはドロップダウンをしていた。
そんな事を繰り返してるうちに、自分が独りぼっちになっている事に気が付いた。

 あたしは家に居る事が多くなった。
起きては何も考えずにぼ~っとする事が多くなり、睡眠時間は極端に長くなっていった。
何もない毎日を繰り返している間に、あたしが居なければすべて解決するんだと思い至った。
親に見付からないように身辺整理を始めていた。最初は仕事関連の資料とかを思い切って捨てた。
次は大学時代の物を捨て去った。ついでに詰まらなかった中学時代の遺物を捨て去り、何もかも思い切って全部捨ててやった。

 もう残っている物はあたし自身しかなかった。
「じゃぁね。つまらなかったあたしの人生」
 当然訪れるだろうその時をあたしはジッとして待っていたけれど、何も起きなかった。
 ・
 ・
 ・
 焦れったいわよね。早く来なさいよ!
「やれやれだな」
 何よ、その言い様は!
「・・・・お困りの団長様を見捨てる俺じゃないぞ」




113:あたしの愛車は冷凍車 3/5
07/12/10 00:36:09 jj7j0lYe
 いきなりキョンのイメージが頭の中に拡がった。
何で、何でなのよ!いつもあんたはあたしの前に飛び出してきて勝手に去って行く。
あんたさえ居なければあたしの人生はもっと充実していたし、こんな思いはしなかったわよ!
とっくの昔に捨て去ったと思ったら、女々しくもあたしの心の中で巣くっていたとはお天道様もビックリだわ。
悪魔のとおりは黒装束だけど、あたしの場合は赤の方がいいかしら?今から迎えに行ってあげるから、首を洗って待ってなさい。

 あたしは夜の街へ当て処もなく車を走らせる事にした。
キョンの居場所は判らないけれど、どこかへ走ればきっと出会えるに違いない。あの夜空をもう一度二人で見たかったし、あの光景の
中で二人で逝けるならきっとキョンも満足するに違いない。そう思うと居ても立っても居られなかった。


  あたしの愛車は冷凍車。
  初めて買った大きな買い物。
  あの人が乗っていた、小さな小さな頼れる奴。
  ごみ捨て場に捨て置かれた、今のあたしの相棒よ。
  あたしは必死に磨き上げ、今宵も夜空を眺めてる。
  戻って欲しいと思うほど、想う程に離れて行く。


 キョンを見付け出すのにそれほどの時間は掛からなかった。
今すぐ頸根っこを押さえてやろうかと思ったけれど、あいつが今何をしているのかが気になった。
出来れば今のあたしと同じに不幸のどん底で喘いでいれば嬉しかったし、艱難辛苦のど真ん中に居て欲しかったから、キョンの様子を
少し眺めてみる事にした。

 あいつは疲れ切っている様子だった。
港と街の往復で半時たりとも同じ場所には居なかった。休みを取る時はホンの数分で、寝ている時は身動きひとつしなかった。
 それはとても嬉しいけれど、なんであいつは動くのか。
人と会えば笑顔を絶やさず、おばちゃん達の輪の中にも、おみやげ片手に乗り込んでいた。
あいつはいつも微笑んで、人の中へ融け込んでいた。

 キョンを見ている自分が無様に思えたから、あたしは街へ戻る事にした。
その原動力を、その根本と向き合う事が必要だと思ったから。




114:あたしの愛車は冷凍車 4/5
07/12/10 00:36:48 jj7j0lYe
 あたしは迷う事無く佐々木さんの会社を訪れていた。
キョンはもう何ヶ月も会社へは戻っていないのは確認してるから、ドアを開けるのにためらう事はなかった。
そこはベージュを基調としたシンプルな作りだけど、ほんのりと暖かさを持った空間だった。
「いらっしゃい、涼宮さん」
植木の向こうから澄んだ声が響いてきて、あたしの足は自然とその方向へと向かった。

 なによ、なによこの女。
人がせっかく来てあげているのに、椅子から立つ気は無いらしい。あたしの方がずっと礼儀正しくできるわよ。
そう思ったあたしは手近な椅子をたぐり寄せ、どかりと座って相手の瞳を見ようとした。

「そろそろ涼宮さんが来ると思って、私はずっと待ってたの」
・・・・あなたが待っていたのはあたしじゃなくてキョンじゃなかったの。
「そうね、そうかも知れないけれど、待てどもキョンは帰って来なかった」
・・・・いい気味じゃない。
「そうだね、まったく涼宮さんの言う通りだわ」
・・・・いい夢見れたんじゃないの?
「分不相応な夢は見れたけど、いつの間にかお互い違う夢を見るようになっていた。
 待つのには慣れた積もりではいたけれど、私もそろそろ限界が迫ってきたみたい」

 佐々木さんは立ち上がろうとしてよろめいた。
よろめいた彼女は机を支えにして何とか立ち上がると、お腹に手をあてて苦渋の表情であたしにこう言った。
「わたしはキョンを止める事が出来なかった。繋ぎ止める事は出来なかったの。
 今の彼を引き留める事はわたしには出来ないから、お願いだから涼宮さん。キョンの事をお願いします」
・・・・ちょっといきなり何なのよ!?それに佐々木さん、その体はどうしたのよ。

 佐々木さんはあたしの問いかけに応じる事無く床へ静かに倒れ込んだ。




115:あたしの愛車は冷凍車 5/5
07/12/10 00:38:06 jj7j0lYe
 その時のあたしが何を思って行動していたか、きっと思い出さない方がいい。
気が付くとあたしはハサミを、新聞のスクラッチに使うような大きなハサミを握りしめて佐々木さんの横でぼ~っとしてた。
何をやっているのよ、あ・た・し!!
でもこんなのひどくは無い?なんであたしがこんな事をしなきゃいけないのよ。これもかれもみんなキョンのせいなの。
不承不服な思いを感じつつ、今のあたしに出来る最善の施しを佐々木さんにおこない、ふたたびキョンを探しに出た。

  あたしは小さな相棒と、ふたり一緒に夜の道。
  二人して暗闇を、走っているとまた逢える。
  そんな気がした夜の道。
  待っていてよね、あたしのキョン。

 あいつを見付け出したのは暗い夜道のサービスエリアだった。
既に誰の物とも判らなくなった憤りをキョンにぶつけると、大人しくあたしについてきた。
懐かしいあの軽トラに引き合わせると泣き出した。泣き出すのはまだまだ早いわ。
あんたに引き合わせたいのはこの子だけじゃないんだからね。あたしはキョンを連れて道を戻った。

  あなたを想っている人は、必ずあなたを待ってます。
  だからあなたは大丈夫。きっとあなたは大丈夫。


~俺の愛車は軽トラだ~ 番外編 おわり

116:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/10 00:44:51 4tqGQvyi
番外編GJ

117:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/10 00:47:08 73gNdPQ9
>>1
「やあ、こんばんは。1乙、多少フライング気味だったが大丈夫だったようだね。さて、26スレ
目だね。26といえば、26文字で構成される表音文字のアルファベットを想起するね。知ってい
るだろうが、我々日本人が一般的に言うアルファベットとはローマ字、つまりラテン文字のアル
ファベットのことだ。実際にはスペイン語やドイツ語のアルファベットのように独自の拡張を行
なっているものもある。だからアルファベット=26文字というわけではない、ということだね。
思いこみと決めつけで物事の本質を見失わないように気を付けてくれ。と、言ったところで、
たいへんこれが難しいことなのだよね。たとえば僕のように女子でありながら、男言葉を使う
人間は“変なヤツ”というレッテルを貼られることになる。当然のことながら、多くの人々はそれ
でおしまいだ。ま、そういうのが楽だったから、僕はそういう生き方を選んだわけだよ。
まぁ今にしてみればもっとうまいやり方があっただろうとも思うのだけど。それは今更言っても
詮無いことさ。それにまだまだ僕も未熟者だからね。これからだって、こんなことはいくつもあ
るはずさ。だからさっきの言葉は僕のためにあるようなものなのだ。思いこみと決めつけと予断
は排除して客観視して物事を判断する。難しいことだが、実践できるようにしなければね。さて、
このスレッドでは僕はどんな人間なのだろうね、僕はそれにとても興味があるのだ。自分がど
んな風に他人に思われているのか、僕のような人間だってそんなことには興味があるのさ」

 そういって、佐々木は軽く片目を閉じて見せた。


 今日の佐々木さんは客観的でいたいようです。


118:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/10 00:53:12 4tqGQvyi
1乙乙

119:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/10 01:07:16 NpKbjidh
>>111
すごく、ヤンデレです。

120:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/10 01:08:28 IjM8+ANa
>>101
今遊戯王にはまってる俺にタイムリーwww
俺もなんか遊戯王ネタ書こうかな…

121:1/3
07/12/10 01:40:23 0q1yF8/Z
佐々木さんの、子猫の目の日々4
Der Mechanismus der Catzen.Auf welche Weise funktionieren Die? 
というかマタタビ、マタタビ、マタタビの巻

今、ひと時の安らぎを求めて、帰宅路をのんびり歩いている俺は、SOS団所属のごく一般的な男子高校生。
強いていつもと違うところをあげるとすれば、 ポケットにマタタビが入っていることか……。

古泉が薦めてくれた、最初の1Pだけ読んだ漫画のマネはおいておくとして。
実際問題、俺のポケットには粉末のマタタビが入っている。ペットショップで数百円で手に入るものだ。
何のために買ったかといえば、
勿論こいつのためだ。
「やあキョン、おかえり。随分と寒くニャってきたね。風邪が流行っているようだから、
 外から帰ったらまずうがいと手洗いをしたまえ」
俺の部屋で、炬燵に入ってくつろぐ猫耳の佐々木、本人の希望するところの呼び方ではシャシャキ。
今日はことのほかご機嫌らしく、炬燵から覗くしっぽがリズミカルに踊っている。
なんか日に日に我が部屋でくつろぐ頻度が高くなってないかシャ……佐々木よ。
しかも問題解決のための努力を最近放棄してないか。
「さあ、半分は猫ニャので、そうそう複雑なことを求められても困るのだよ。くっくっ。
 まあ君に実害はかけていないと思うのだが、どうだろう」
いつもの笑顔で平然と返すシャシャキである。ああまただくそ。こっちも不本意ながら、
こいつが居座る我が部屋という状況に急速に慣れてしまいつつある。
自分の環境対応性がこういう時は恨めしい。SOS団で無駄に慣れてしまったからなあ、非常識な事態には。

しかし何時までもこのままではよろしくない。
健全な男子高校生には家人にすら伏せられるべきプライバシーな衝動が……いやそうじゃなくて。
ハルヒと顔を会わせても、何故か隠し事をしている気分になるし、気のせいか長門の視線が痛くて仕方ない時があるし。
そんなわけで買ってきたのがこのマタタビである。
誤解されることうけあいなので先に言っておくが、猫にとってまたたびは、沈静作用もあるのだ。
これで、シャシャキ化しているシャミを眠らせて、時間切れリングアウト勝ちを繰り返し、
佐々木に自分の体に戻っていただくよう遠まわしに実力行使するという、涙ぐましい作戦なのである。
確かにこの絵面は、コンパにコークスクリューをそ知らぬ顔で出し、さらに目薬まで入れるスーパーに自由な連中と
酷似していることは我ながら認めざるを得ない。だが、これはあくまで自衛手段であって、
そこに邪な感情は寸毫もない。眠った後のシャシャキをどうこうしようとかそういう考えはないんだ。ないんだったら。
「どうしたのだねキョン、入り口でずっと立っていられると冷えるだけだよ。早く炬燵に入りたまえよ」
無邪気に微笑むシャ……佐々木の顔に良心が僅かに疼くが、これもこいつ本人のためなのだ。
そう必死に自分に言い聞かせていると、佐々木が僅かに鼻をうごめかした。
「キョン。帰りに寄り道して買い食いでもしたのかな? 何か甘いような臭いがするのだけど」
「そ、そうか? 気のせいじゃないか」
鋭い。感覚器はシャミ並みか。
早速使ってしまおうかと思っていたのだが、これは隙を見つけるまで待つしかあるまい。
「そうかい。残念だニャ。最近特売チラシで、ペット用品大安売りが出ていたものだから、
劣情を持て余したキョンが、思い余ってマタタビを大量に買い込んで、僕を前後不覚に酔わせた上で、
思いのたけをありったけ肉体的にぶつけるというシチュエーションを想定していたのだが、
それも無駄となったか。
僕としても将来的にはそうした過激な方向もマンネリ化を防ぐためにアリだと思うが、
最初くらいは意識のはっきりした状態での方が望ましいと思うので、まあ仕方なしとするかニャ」
…………。
どこの三毛猫ホームズなんだ佐々木。動機と方向性は真逆だが、途中経過だけは全く推理の通りだよ。
この作戦もまた作戦だおれか。仕方あるまい。
ズボンのポケットに入れたマタタビは、後で捨てておこう。まあいい、どうせ数百円の出費だ。
ハルヒ達のコーヒーを一杯余計に頼んだと思えばいいさ。

122:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/10 01:41:14 0q1yF8/Z
鞄をベッドに放り投げ、炬燵に足を入れる。おお、暖かい。
まとわりつく佐々木の足を払いつつ、いつか聞いてみようと思っていたことをきりだしてみた。
「ところで佐々木……」
「シャシャキと呼んでくれたまえ、キョン」
ええい、畜生。
「し、シャシャキ、前から疑問に思っていたんだが、こんなに俺のところに入り浸っていて、お前自身の
生活は大丈夫なのか。ってか、お前がこっちにいる間、本体の方はどうなってるんだ。
また前の時みたいに意識不明になってるなんてのは勘弁してくれよ」
「ああ、それは大丈夫だよ。流石にこれ以上両親を哀しませるのは願い下げだしね」
そう願うよ。俺も短期間に2度も3度も入院したくないからな。しかしそうなると、お前の意識はどうなってるんだ。
「そもそもキョン、ここいる僕が、というか僕の意識が、君と同じ時間軸の僕だと、誰が保障したのかニャ?」
はい? なんだそりゃ。
「僕も完全に仕組みを理解しているわけではないのだけどね。
 大体のところ、僕の本体が眠っている間に、
 僕の精神はこのシャミくんの体を借りて、君の部屋にお邪魔しているようニャんだ。
 ところが、僕がこうしているのは殆ど放課後の時間帯で、勿論今の時間帯、僕は学校か、塾に行っている最中だ。
 だから、考えられる帰結としては、今こうして喋っている僕は昨日の夜の僕かもしれニャいし、
 或いは明日の夜の僕の意識なのかもしれニャい。先ほど広告のことを挙げたけれど、
 多分それを見たのが何日前か比べてみると、君の今と、僕の今がどれだけ違うか分かると思うよ。
 ねえキョン、時間というのは全く不思議なものだね」
不思議というか不可思議なのはお前のほうだ。
「僕本体に聞いても、多分今の状態のことはあいまいにしか覚えていニャいはずだよ。
 ただし、最近夢見がよいというか、良い夢としての時間をすごしているから、基本的に体調はすこぶる好調だけどね。
 くっくっ」
こっちでストレス発散して、いい夢みたで日常はスッキリってか。
まったく、何と言うややこしい仕組みを、こんなしょうもないことに使いやがって。
朝比奈さんとか長門が聞いたら、二人して目を回すぞまったく。
「キョン、僕にとってこの時間、君とこうしていられる時間は、何にもまして大切なものニャんだよ。
 だから、決してしょうもなくなんか、ニャいんだよ」
そ、そんな真剣なまなざしで見つめるな。思わずドキリとしたじゃないか。
猫口調と後ろで揺れる尻尾がなけりゃ、もう少しまじめに受け取ってしまう所だぞ。
「まあ、涼宮さんたちに、唯一勝る場所だしね。
 僕は割りと長い睡眠を取るほうだから、最長七時間はこの状況を連続して楽しめるわけニャのさ。
 意識だけの状態の1秒が、果たして現実の1秒と同等かという命題も未検証だけれどね。
 今度、どれだけ長くい続けられるか試してみようか」
試さんでいい、試さんでいい。
「そうかね。それは残念。
 まあともかく、今の状況を僕は充分に楽しんで、良きリフレッシュの場としているので、
 君もこの時間に楽しみを見出してくれることを希望するよ。くっくっ」
へいへい。まあ、お前の日常に負担がかかってないってんなら、それでいいけどな。

123:3/3
07/12/10 01:41:53 0q1yF8/Z
何かが解決したわけでもないんだが、佐々木の生活に害がないというのなら、
このへんてこりんな状況とも、まあ気長につきあっていきますか。
「さて、じゃ飲み物でも取ってくるわ」
「ああ、僕は暖めたミルクに蜂蜜を溶いたものがあれば嬉しいな。できればぬるめで」
ええい、注文のうるさいヤツめ。
炬燵から立ち上がったとき、姿勢の関係でポケットから何か滑り落ちた。
「おや、キョン、この袋は何かね?」
いかん! 今更になんってあんなもん見られては。
焦ったのがよくなかった。
とっさに足で踏みつけたビニールのパックはものの見事にずるりと滑り、
結果としてねじれちぎれて中身をシャシャキの方に盛大にぶちまけ、俺は盛大にすっころんだ。
「痛っ!」
「うにゃあっ!!」
軽くぶつけた頭をさすりつつ起き上がりシャシャキの方を見ると、なんだかうつむいて震えている。
すまんシャシャキ、大丈夫か? 
「き、キョン……」
いや本当すまん……って、シャシャキさん、あの、もしもし……
「ぼ、ぼ、僕は、僕はもう我慢できないニャーーー!!!」
いやあああああああ!!


翌日、SOS団の活動を休んで、俺は佐々木を呼び出した。
活動を休むにあたってハルヒは色々言いたそうだったが、俺の顔を見て余計なことは何も言わずに許可をくれた。
「やあキョン、どうしたんだね君から会いたいなどと……」
佐々木、お前に今すぐ伝えておかねばならんことがある。
いいか佐々木、親友として忠告する。飲酒だけはやめろ。
二十歳になろうと何があろうと、決して酒を飲んではいかん。マタタビ酒などもってのほかだ。
「ち、ちょっとキョン、どうしたんだい突然。それに、その顔は」
お前自身と、なにより周囲の人間の身の安全のために、酒は控えてくれ。頼む。
「……まるでライオンに襲い掛かられたような有様だよキョン。集団暴行でも受けたのかい?」
お前にやられたんだよ。この暴れ上戸め。普段のストレスを暴力で解消せんでくれ。
あ痛たたた。まったく、やれやれ。
                                                  おしまい


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