あの作品のキャラがルイズに召喚されました part159at ANICHARA
あの作品のキャラがルイズに召喚されました part159 - 暇つぶし2ch150:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 13:04:00 AFaTU0nN
支援するお

151:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 13:05:56 QQ22VglB
支援だ!

152:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 13:06:55 +Wf2VTZX
>>144
zipのpassを書いたtxtをそのzipの中に入れてしまうほどのアホさ加減だな

153:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 13:08:33 5yGY1lMz
虚無の力の源=心の闇なら、注意書き封印はうっかりじゃなくてわざとかもしれないけどな
メイジ(系統魔法使用者)を支配階級にすえて、魔法が権威の象徴な制度を作ったのもブリミルなわけだし
その状況で注意書きがちゃんと読めるようにしたら虚無の使い手たちは系統魔法が使えないことに悩むどころか最初から伝説扱いになる
そう考えると暗愚というより邪悪というか、今回ジョゼフに反逆くらったのも、自業自得ではあるな

154:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 13:09:13 yYCQXbHo
>>148
降ってきた火の粉を払うのは普通です
払うな、無抵抗でいろってなれるほど誰もお人好しでもないしね

支援

155:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 13:11:55 oBOIIQpq
>zipのpassを書いたtxtをそのzipの中に入れてしまうほどのアホさ加減だな
アーカイバーによってはそのtxtだけpass無しで仕込んだり解凍できたりと自在なんだが

156:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 13:13:00 QQ22VglB
各自、雑談をやめて支援に回れ。
これは訓練ではない。繰り返す、これは訓練ではない。

157:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 13:13:57 T4Ild9YS
《こちらオメガ11、了解。支援する》

158:鋼の使い魔 ◆qtfp0iDgnk
08/08/03 13:15:57 aRKAlXaM
 夕日が差し込む練兵場跡地。
 タバサとギュスターヴの二人だけがその場所にいた。タバサはレイピアを抜いて構えから素振りを繰り返し、ギュスターヴはそれを見守っている。
初めは剣を持ち歩くのすらたどたどしいものだったタバサだが、熱心な修練によりやっと剣の稽古らしい稽古が出来るようになった。といっても形にはなっているものの、
体躯とのバランスで剣の振り終わりに体がぐらつく。タバサの体とのバランスで見るとどうしても今のレイピアは長すぎるのだった。
懐紙で短剣を拭きながらギュスターヴがタバサを止めた。
「出先だから軽くでいいぞ。教えておきたい事があるから」
「何?」
 剣を振るのをやめたタバサの声に、期待がわずかに滲んでいる。
「そんな期待することじゃないぞ。……そうだな、今から教えるのは『技』じゃない。戦闘中、特に一対一でなければ使えない。そんな限定的なものだ」
 言うとギュスターヴはタバサの前に立って短剣を緩く構えた。
「打ち込んでみろ。好きなように」
 言われたタバサも剣を構える。ギュスターヴはタバサが打ち込みやすいように剣を少し下げると、タバサが大きく振りかぶって切り込んでくる。
ギュスターヴはそれをよく見てから、半歩踏み込む。そして短剣を振った。
短剣とレイピアが交差する。レイピアの切っ先がギュスターヴの胸元をわずかにかすめ、タバサのわき腹にギュスターヴは短剣の腹を優しく押し当てた。
「!!」
 直後、切り込んだはずのタバサの体が後方へ大きく吹き飛んだ。
3.4メイル程は弾かれたタバサの体がとさりと地面に落ちる。
「っと、…すまん。怪我はないか?」
「いい…大丈夫」
 腰から落ちたタバサはすぐに立ち上がった。軽くしりもちをついただけで怪我らしい怪我はない。
「今のは?」
「うん。相手と自分の攻撃が極めて近いタイミングで重なる時、相手の攻撃を受けつつもさらに踏み込んで自分の攻撃を倍加させて相手に与える。一種の
カウンター効果だな」
 言われてタバサは短剣を当てられたわき腹を撫でさすった。軽く押し当てただけで体が飛んだのだ。全力で振り切っていたらタバサなど木の葉を切るように
真っ二つになっていたかもしれない。
「今のを『相抜け』という。利点は相手の出方が判ればこちらから意図的に『相抜け』による攻撃が可能な事。欠点は出方が判らなければ使えないし、
多人数が相手じゃこんなことをしている余裕はないだろう」
「使えない?」
「かもな」
 指摘されてギュスターヴがばつ悪そうに頭をかく。
「でも覚えておいて損はないだろう。剣以外でも同じ効果が狙える」
「魔法でも?」
「多分な」
 そう言って植え込みの下までギュスターヴが下がり、短剣を収めた。
「じゃ、今のを覚えつつ各構えから素振りを100本」
「わかった」
 タバサは脳内で今のやり取りを反芻しながら、黙々と剣を振るのだった。



『襲来!土くれのフーケ』





159:鋼の使い魔 ◆qtfp0iDgnk
08/08/03 13:16:58 aRKAlXaM
「まぁーったく。主人ほったらかしてなーにやってるんだか……」
宿つきのバーでかっぱかっぱと水割りワインを飲んで管巻いているのは勿論ルイズである。ワルドは今日朝早くから何処かへ出かけ、タバサはギュスターヴとともに
練兵場で稽古をしている。仕方無しに酒場で酒でも飲みながらぼんやりと過していた。
「あら。婚約者の前で照れ照れしてたくせにそういうことを言うのね」
「ワルドは関係ないでしょ!」
 近くのテーブルで花の砂糖漬けを舐めていたキュルケの言葉を砕くようにどん!と手のジョッキを叩きつける。
「関係ないと、本当にそう思ってるの?」
「当然じゃない。ギュスターヴと私は使い魔と主人よ。使い魔なら主人の機嫌くらいとって見せるべきだわ」
「…ルイズ。貴女って前から馬鹿だと思ってたけど、相当あの髭の殿方にほだされてるみたいね」
「何ですって!」
 コーティングの溶けた花びらをパクリ、と口に入れたキュルケ。
「ギュスは貴女が思ってるより考えが深くてよ。使い魔だからとか、そういう目で見てると、失望されるわよきっと。…それって、貴女にとっても
あまりよろしくないんじゃないかしら」
「ツ、ツ、ツェルプストーの分際でぇ、わ、わ、私に意見しようってぇ言うの?!」
 酒気も帯びているせいか微妙に舌の回らないルイズを見て、キュルケは緩く息を吐いて席を立つ。
「逃げるつもり?」
「今の貴女じゃ相手しても詰まらないから。ちょっと出かけてくるわ」
 そしてそのままキュルケは宿を出て町へと出かけてしまった。
ルイズは空のジョッキをバーテンに渡して突っ伏す。
「……それくらい、わかってるわよぉ。バカァ……」
 
ルイズは、ゼロのままでも必要としてくれているワルドに甘えていたのだ。それはとても甘美で、苦力して疲れているルイズには抗いがたかった。
同時に自分を見捨てずに見守ってくれてきたギュスターヴに対して、裏切りのような暗い気持ちを抱きつつある事も。
「どうしろって、いうのよ……」
 


夜。
 ルイズは部屋でひとりぼんやりと外を眺めていた。月が一昨日よりも重なってなお、明るい。
「どうして、今頃ワルドに会ってしまったんだろう…」
「ワルドがどうかしたのか?」
 振り返ると、ギュスターヴがバスケット片手に部屋に入ってきていた。
 テーブルにバスケットを置く。
「何しに来たのよ」
「何しにって…そうだな。ここしばらく相手して差し上げなかった主人の機嫌をとりに、かな」
「馬鹿にしないでよ。私が淋しがっているように見えた?残念でした。私には愛しいワルドという人が居て、彼は私を必要としてくれているのよ。使いでのない
中年使い魔なんて、置く場所が無いんだから…」
 まくし立ててから、ルイズは一層に暗い気持ちを自分に打ち付けてしまった。なんて意地汚い娘なんだ、自分は、と。
 そんなルイズを悟ったのかどうか判らないが、ギュスターヴは困ったように少し笑った。
「…それは要らぬ節介だったな。……そうか。ワルドはルイズを必要だといっているのか」
「…ええ」
 バスケットからワインボトルを取り出し、二つのグラスのうち一方に注ぐ。
「…何故だろうな」
「え?」
 持ったグラスを揺らしながら話すギュスターヴ。グラスに残る涙を通してルイズを見ているように。
「男と女なら、好いた惚れたは上等。貴族子女の結婚なら、それが無い場合もある。ないならないで、それは割りとはっきりと見せるものだ。よほどがなければな」
「…何が言いたいのよ」
 ギュスターヴは空のままのグラスをルイズに渡した。
「…ワルドはルイズが好きだといってくれたのか?」
 


160:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 13:17:44 ieG5hsdK
さて、支援しようか

161:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 13:17:46 AFaTU0nN
しえん

162:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 13:17:54 QQ22VglB
し、支援!

163:鋼の使い魔 ◆qtfp0iDgnk
08/08/03 13:18:09 aRKAlXaM
「えっ?……そ、そうよ」
 ルイズは自信がなかった。ワルドと再会してこの旅の途中、幾度と言葉は交わしたけれど、好きだと言われたわけではない。ただそれらしい言葉を
返してくれただけだからだ。
「…そうか。なら、いいじゃないか。婚約者なら、いずれ結婚するんだろう?」
「多分ね…」
「その時は、俺が祝福するよ。花嫁の使い魔らしくな」
 そう言われた時、ルイズの心は淋しくなった。冷たい風が吹き込むように悲しい、冷めた気持ちが広がっていく。
 これは、何…?


 それが深くて涙が出そうになる瞬間、ふと窓から入っていた月明かりが陰った。
「…何?」
 窓を覗いたルイズの視界に、巨大な、巨大な人影が写る。縮尺が可笑しいかのように見えるごつごつとした人影。それは宿の正面からどすどすと地響きを立てて
向かってくる岩のゴーレムだ。その足元にはお世辞にも綺麗といえない格好の男立ちが率いられている。
ゴーレムの肩には、仁王立ちでこちらを見据える女性がいた。その視線がルイズと交わる。
「まさか……『土くれのフーケ』?!」
 


宿を目指して足元にたむろする傭兵を従えて進むゴーレム。
 その肩に当たる部分にはまさしく土くれのフーケが立っていた。その手に杖は、ない。
「あそこを襲えばいいんだろう?」
「そうだ。できるだけ騒げ」
 答えるのは『フライ』でフーケの隣を浮遊している仮面の男だ。
彼は昨日、フーケに雇わせた傭兵の残りを率いて『女神の杵』亭を襲うことを決めたのだった。
「あまり荒事は好きじゃないんだけど、この足の分は働く約束だしね。それに…」
「なんだ?」
「あの貴族の小娘どものせいで、こんなはめになったんだ。お礼参りくらいはさせてもらっても罰はあたらないさ」
「ふん。好きにしろ」
 


急いで階下のバーに下りたギュスターヴとルイズだが、一階には既に矢玉が飛び込んで大騒ぎになっていた。
 傭兵達が打ち込む矢をかわすためにテーブルを倒して盾にし、矢のお返しとばかりに魔法を放っているワルド、キュルケ、タバサ。
他の客も中には同じように応戦をしているメイジもいたが、多くはテーブルの影にうずくまって震えている。バーテンもカウンターの下に引っ込んでいた。
「ルイズ、ギュス!」
「皆無事みたいね」
 身を低くしてテーブルの裏に集まった。
「この前の夜盗の残りかしら」
「さぁな。しかし率いているのはフーケだ」
「フーケ?!牢獄に居るはずじゃないの」
「誰かが逃がしたらしいな。となると、狙いは俺達だろう」
「諸君、ここは二手に分かれた方がいいだろう」
 ワルドが羽帽子を押さえながら答える。
「僕らは急ぎアルビオンに向かわなきゃいけない。ここで囮になるものが必要だ」
「じゃ、私達がやらせてもらおうかしら、ね。タバサ」
 頷くタバサ。
「キュルケ。あんた…」
「誤解しちゃ駄目よルイズ。ここらであのうるさい年増とも決着をつけたいだけよ。『破壊の杖』の時は、ギュスが相手してくれたしね。だからさっさと
アルビオンでやることやって、帰ってきなさい」
「わ、わかったわよ…」
 ワルド、ルイズ、ギュスターヴの三人は、その場にキュルケとタバサを残し、バーから裏手の厨房へ抜け、厨房の裏口から外へと脱出した。
 月明かりの中、先頭を切るワルドを追うように走るルイズとギュスターヴ。
 振り向けば、『女神の杵』亭から煙と爆発音が沸きあがった。
「始まったみたいね…」
「急ぐぞ、ルイズ」
 ギュスターヴの声で、ルイズは前を向いて走った。




164:鋼の使い魔 ◆qtfp0iDgnk
08/08/03 13:18:49 aRKAlXaM
無事に脱出できたらしい三人を見送ったキュルケとタバサは、再び矢玉が飛び込んでくる出入り口を見た。
「さて、どうしようかしら?タバサ」
「待ってて」
 言うとタバサは這ってテーブルの影を進み、カウンターの下でうずくまっていたバーテンに話しかけた。
「ここで一番強いお酒は何?」
「へ?!あ、あの。ご注文ですかい?」
「いいから持ってきて。今、必要だから」
 有無を言わさぬタバサにバーテンは半べそをかきながら地下の酒庫扉を開けて潜り、暫くしてなにやらラベルの剥げかけたタルを押して持ってきた。
「うちで一番強い、ブランデーの50年ものでさ。ゲルマニアの北方で飲まれるやつで、産地でも真冬じゃこれ一口で一晩暖かく過せる代物ですよ」
 商売人らしくこんな時でも商品説明をするバーテンを無視して、タバサはタルを持ってテーブルの影に戻った。
「これを使う」
「あら、ちょっと勿体無いわね」
 タバサが戻ってくるまで、なんとキュルケは化粧を直していた。
 持ち出されたタルの栓を開け、栓に染み付いた芳香に頬を緩めるキュルケ。
 タバサは栓の開いたままのタルを『レビテーション』でふわり、と浮かせた。
「それじゃ、無粋な盗賊と殿方たちに、一口おすそ分けねっ!」
 浮いたタルがボールを投げるように弧を描いて傭兵が詰め寄る出入り口に投げ込まれ、空かさず『エア・カッター』を繰り出して宙を舞うタルを切り裂いた。
箍が切れて中の酒をばら撒くタルに向かって、キュルケが『フレイム・ボール』をぶつけると、火のついた酒が炎の波となって傭兵達を飲み込んだ。
頭から炎を被った傭兵達は悲鳴を上げながら外へ飛び出していく。
「ふふふ。お口に合わなかったみたいね」
 出入り口や外へ向かって燃え広がった炎に照らされるキュルケ。火に炙られてその瞳が一層に潤いを湛えている。

 
 外はゴーレムの上で傭兵達をけしかけていたフーケだが、鋒鋩の体で傭兵が逃げてしまうと舌を鳴らして顔をゆがめた。
「けっ!所詮傭兵なんてこんなものか」
「俺は逃げた連中を追う」
「好きにしな」
 いうと仮面の男は『フライ』で飛び上がり、何処かへと消えてしまった。
 フーケが眼下の宿を睨むように見下ろす。
「さー…あの端正な顔をぐちゃぐちゃにしてやるよ!」
 フーケの一声でゴーレムが振り上げた足を宿屋の出入り口へ踏み下ろした。


キュルケとタバサの視界に出入り口を粉砕した巨大なゴーレムの足が広がっている。
「さて、次はあのおばさんをどうにかしなくちゃね」
 そう言っている間にもゴーレムの足が揺れ動いて宿屋を削るように壊していくのだ。
タバサは散乱するバーを見渡すと、捨て置かれた木の丸テーブルに手をかけて外に向かって転がした。
 タバサの目を見たキュルケは、転がっていくテーブルの影に入って店の外へ抜ける。
「逃げるんじゃないよ!」
 それを見逃すフーケではない。ゴーレムの拳が振り下ろされ様とした時、宿の脇から飛び出したシルフィードが視界を遮った。
「この、またこのドラゴンか!」
 きゅい、きゅいぃー!と鳴きながら、時たま拙いブレスを吐いてゴーレムの動きをけん制するシルフィード。
 ゴーレムの腕がシルフィードを捉えようと空を掻いていると、ヒュン、とフーケの足元を何かが掠めた。
 キュルケと同じく外へ脱出したタバサの『エア・カッター』である。
「ちぃ!」
 足元のタバサをゴーレムで踏み潰そうと足を上げた、その時。
「上がお留守よ、オバサマ?」
 キュルケが遥か上空から「落下しながら」フレイム・ボールでフーケを狙った。



165:鋼の使い魔 ◆qtfp0iDgnk
08/08/03 13:19:30 aRKAlXaM
キュルケはタバサとシルフィードがフーケの注意を引いている間、少し離れた場所から『フライ』で上空へと上がったのだ。
 通常『フライ』で昇れる高度は精々30メイルから50メイルの間である。それは上昇速度などの兼ね合いからであるが、今回キュルケは時間をかけて高度100メイルまで
『フライ』で上昇したのだ。
 上昇してから『フライ』をやめて『フレイム・ボール』の詠唱に切り替えると、当然地面へと落下してしまうが、地面に着くまでにわずかであるが時間が出来る。
その時間と落下による加速を利用した作戦だった。

 落下加速がついた大火球は寸分たがわず真上からフーケに命中し、足を上げていたゴーレムは糸が切れたように膝を落とした。
 すぐさまタバサの指笛でシルフィードが落下するキュルケを掬い取った。
「ふー、ありがとう、シルフィード」
 きゅいーと一鳴くシルフィード。そしてタバサの傍へと降り立つ。
「これでもう大丈夫よね、タバサ」
「多分」
「もう、心配性なんだか…ら…?」
 二人の目の前で徐々に形を崩すゴーレムだった岩の山。その頂で燃えている人型は、よろよろとよろめきながらも『立っている』
そしてよろめく火の玉は、一度腰を落とすと岩の上から跳び、身体を反転させて飛び込んできた。
「究極!サウスゴータキィィック!!」
 

 フーケの叫びとともに火の尾を引くフーケがとび蹴りを放って吶喊してきたのを、キュルケとタバサは『偶然』かわすことが出来た。
 地面に到達したフーケの蹴りは大地をがりがりと数メイルに渡って削り取り、やがて止まった。
体から煙を上げながらも両足で地面に降り立つフーケの顔は、荒ぶるドラゴンのように烈としている。
「い、生きてる?!」
「こんな事で私は死にはしないんだよ!」
 一足でキュルケの懐にフーケが飛び込んできた、そして繰り出された蹴りがキュルケの手元から杖を弾く。
「きゃ!」
「さっきはよくもやってくれたねぇ。お陰で大事な一張羅が台無しだ」
 怒りで顔をゆがめるフーケ。煤に塗れたローブを脱ぎ捨てると、胴着のようになっている衣服が現れる。その両手にも、懐の如何なる部分にも杖らしきものはない。
「貴方…杖を持っていない?」
「それがどうしたのさ?貴族のお嬢さん!」
 後ずさっていたキュルケに迫るフーケ。その中段蹴りがキュルケの鳩尾にめり込んだ。
「あぐっ!」
 しなやかなキュルケの腹部を蹴り抜いて。肉のメリメリという音が聞こえる。
蹴り飛ばされたキュルケは4.5メイルは吹き飛んで地面に落ちて、気を失った。

「さて、次はおまえだよ…」
 その殺意の篭る目でタバサを見るフーケ。
 タバサは杖を振って『エア・カッター』を繰り出す。
「無駄だよ!」
 言うとフーケの前に地面から壁がせり出して『エア・カッター』を弾いた。そして壁はまた地面へと沈んでいった。
「『岩壁』【ロック・ウォール】…魔法を使っている?」
「不思議かい?青いおちびさん…お前も蹴り殺してやるよ!」
 ダッシュして間合いをつめるフーケ。その上段蹴りがタバサの頭部を狙うが、とっさにタバサは杖の頭で側頭部に迫るフーケの足を受け止めた。
ピンと蹴り足を伸ばしたまま感心するフーケ。
「ほぅ…ちょっとは持ちこたえられそうだね。でも、まだまだだよ!」
 風を切るように素早く繰り出されるフーケの連続蹴りを杖で受け捌くタバサ。しかし体格差によって徐々に追い込まれる。そんな
タバサを見かねたシルフィードが低空で二人の間に割って入ろうと飛び掛っていく。
「邪魔するんじゃないよ!」
 また地面から今度は円錐状の岩が飛び出し、シルフィードの進路を塞ぐ。シルフィードは急上昇してそれをかわしたが、岩の先を柔らかなお腹を掠めた。
タバサがその隙に間合いを取って構える。
「『石槍』【グレイブ】…貴方はどこかに杖を持っている」
「それがわかったとして、どうするんだね」
 間合いが取られて対峙する二人。
タバサははっと何かに気付いたように目を開くと、背中から剣を抜いて、握る。
「おやおや…今度はその剣で勝負するつもりかい?」
 左に杖、右に剣を持ったタバサに、フーケがじりじりと間合いを詰めていく。
 



166:鋼の使い魔 ◆qtfp0iDgnk
08/08/03 13:20:11 aRKAlXaM
 徐々に距離を殺していたフーケに、タバサが杖を捨てて飛び掛った。
 フーケも水平に飛んで中段蹴りを放つ。
タバサはそれを見てからレイピアを横なぎに振るった。二人の攻撃点が重なる。剣先が滑る様に動いて、フーケの右脛に食い込んでいく。
「っ!!」
 タバサの鳩尾にフーケの足が食い込む。もとより軽いタバサの体が弾き飛んだ。
 しかしタバサの剣は振り切られている。その剣先はフーケの右足を両断し、足先をなくしたフーケは蹴りの着地が出来ず無様に倒れこんだ。
「あうっ!…足!足ぃ!私の足がぁっ…」
 フーケの切られた足からは、血の一滴も流れていなかった。
 倒れたフーケは残りの足と両腕で這うように動き、なくした片足を捜している。切り落とされた足先には魔法の杖に使われる木材の光沢が見受けられた。
土くれのフーケと呼ばれた女盗賊の両足はその実、巧妙に作られた魔法の義足に成り代わっていたのである。

「ちっ…今日の所は、この辺が潮時か…」
苦い顔をして拾った足を断面に『繋ぎ』、『フライ』で逃げるようにフーケが遁走した。
 上空で旋回していたシルフィードは降下してタバサの前に下りる。舌先で倒れたタバサの頬を舐めた。
「……シルフィード…?」
 か細いタバサの声にきゅい!と鳴く。
 タバサはよろよろと起き上がると剣と杖を拾い、遠く倒れているキュルケに駆け寄った。
 倒れたキュルケは動かない。タバサは険しい顔でキュルケの肩を揺すった。
「…キュルケ、キュルケ」
「……タバサ?」
 キュルケは腹部の痛みに顔を引きつらせながら目を覚まし、ゆっくりと身体を起こした。
「大丈夫?」
「馬鹿ね。貴女もボロボロじゃない…」
「私は平気……いつものことだから」
「そんなこと、言っちゃ駄目よ…」
小さなタバサに肩を借り、近くに落ちている杖を月明かりの中で拾う。
「とりあえず…囮にはなれたかしらね」
「多分」
 宿を襲った傭兵もフーケも退散し、何事かと周囲から人が集まっている。
「まず、宿に戻りましょ…頑張りなさい、ルイズ。それと」
 見捨ててあげないでね、ギュス。
 言葉を呑んでタバサとともに歩いていくキュルケだった。

167:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 13:20:48 AFaTU0nN
しぇん

168:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 13:21:00 QQ22VglB
は、早い、早すぎるよ!
支援が間に合わ

169:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 13:21:07 yYCQXbHo
しえん

170:鋼の人 ◆qtfp0iDgnk
08/08/03 13:21:34 aRKAlXaM
投下終了。
ギーシュがいないからちょっと頭を捻ったよ。
小ネタは、まぁ、色々な今後の展開の(小ネタ的)伏線でもありetc
展開が遅いのは勘弁ですねー・・・。

171:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 13:23:04 AFaTU0nN
必殺技じじゅうw
アルビオン関係者がいたら正体がばれるところだぜ…

172:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 13:30:04 QQ22VglB
鋼の人乙!

投下が早いのは良いんだけど、早すぎて読んでたら支援が間に合わなかったぜ!
さるさん対策もかねて、1レスの投下間隔は1,2分開けた方がいいかも。

173:鋼の人 ◆qtfp0iDgnk
08/08/03 13:31:46 aRKAlXaM
>投下間隔をあける。
どうもo(´□`o)ぽんぽん!と投下すると良くないみたいなので今度から心がけますです。はい

174:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 13:47:03 S16NveVk
提督の作者様へ。
最終話ですが、使えるプロットが有ると思います。
半年後、病に倒れたラインハルトが、治療法を求めてハルケギニアにやって来る
ところから始めれば良いのでは。

175:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 13:51:38 sn4OxfGm
提督の人は薔薇乙女のひとだったのか
その筆(キーボード?)さばきに燃え尽きるかの如き嫉妬

なによりも、長編と称される長さで、途中で投げ出された作品がネットにはどれほど溢れ返っていることやら
そういう意味では完結されただけでも賞賛に値します。

ただ、できればきちんと閉めてほしいナァ

お疲れ様でした

176:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 13:57:48 T4Ild9YS
鋼の人、乙したー。
原作を見る限り、この頃のルイズってぇのは「自分が一番可愛い」んですよね。
ワルド様とはいちゃいちゃしたい、でも使い魔が自分に構わないのもムカツク、という。
ギュス様はサイトと違って大人ですが……さてはて。

提督の人も乙でした。
ずっとジョセフのターン! でしたね(苦笑
確かに本編のエンドとしてはこれ以外にないと思います
(すいません、正直言って薔薇乙女の終わり方は打ち切りくさいなーとか思ってました)が、
他の人も言うようにエピローグが欲しいところです。
筆が乗れば、是非「伝説が終わり、歴史が始まる」過程の一ページを。


177:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 14:01:50 +Wf2VTZX
1ヶ月後、そこには顔の傷も心の傷も癒え元気に走り回るジョゼフの姿が!

178:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 14:02:21 qrHoX239
>なによりも、長編と称される長さで、途中で投げ出された作品がネットにはどれほど溢れ返っていることやら
まったくだな(10Pに満たないものの数の多さを見ながら)
ううっ…続きが読みたいのに1年近く更新されぬ悲しさよ
まるで某ラノベのようだ

179:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 14:03:37 +Wf2VTZX
>>178
突然消失したり暴走したりするラノベですね。分かります

180:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 14:08:48 dcmYS8Am
提督のジョゼフは最高に良かった
しかし、教皇にからんでる姿がクマーのAAを思い出して笑い死にしかけたwwww

181:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 14:08:55 lgiqhIPf
>>174
お前は何を言っているんだ

182:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 14:14:09 DDcxTVbR
流れが落ち着いたね。
ここらで北野君ネタを落としても良いだろうか。


今回の主役はタバサだが。。。

183:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 14:16:54 HEnn60Uh
進路、空いてますか? これより10分後SSを投下開始を予定します

クロス先は申し訳ありませんがネタばれ保持の為、有名4コマとだけ表記させて頂きます

繰り返します、これより10分後SSを投下開始を予定します

184:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 14:19:18 HEnn60Uh
183より 進路に先に投下予定の機影を確認しました 投下を延期し、支援に回ります

185:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 14:19:23 sn4OxfGm
>>182
北野!北野!北野が来たぞ!北野君のお通りだ! 支援

>>183
カブってしまわれたようなのでしばしお待ち願えますか?
それにしても今日は豊作だな

186:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 14:19:33 DDcxTVbR
被ったか…?

187:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 14:20:04 xhgkPvm6
提督の人 乙 !!!

鋼の人 乙!! 支援!!

188:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 14:21:13 +Wf2VTZX
<<this is control tower,JT2182, 10km to touch down, over.>>

189:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 14:22:51 DDcxTVbR
  あらすじ

 これは北野誠一郎くんが召喚してまだ日がなかった頃のお話。

登場人物
 ルイズ:北野誠一郎の召喚者(マスター)。今回はあんまり出番がない。

 北野誠一郎:ルイズに召喚された使い魔(サーヴァント)悪魔のような顔と天使のような
純粋な心を持った男子高校生。

 タバサ:ルイズたちと同じ学院に通う女子生徒。基本的に大人しい性格だが、その実力
は…。

  プロローグ

 昼下がりの魔法学院。
「こことこの文章が繋がる」
「なかなか複雑だね」
「慣れれば大したことはない」
 青い髪をした少女が、悪魔のような顔をした少年に本を見せつつ文字の
読み方を教えているようだった。
 その様子を少し離れた場所から見つめている桃色の長い髪の少女。誠一郎
のマスターでもある彼女、ルイズ・フランソワーズは隣にいた褐色の肌の女子
生徒につぶやく。
「タバサと誠一郎って、あんなに仲が良かったっけ?キュルケ…」
「そうねえ、なんかいつの間にか仲良くなってたっていうか」キュルケと呼ばれる少女
は、ルイズと同じように二人の様子を眺めながら言った。
「タバサのことだから、最初から誠一郎の本質を見抜いていたんじゃないの?」
「そんなことないわよ」
「え…?」
「少なくとも誠一郎がこの世界に来たばかりの頃は、かなり警戒してたわ」
「警戒?そんな風には見えなかったけど…」
「私、あのコとは付き合い長いからわかるの。アンタは誠一郎につきっきりで気付かな
かったでしょうけど」
「そうなんだ」
「なんか、きっかけがあったのかしらね」空を見上げながら、何か独り言のように呟くキュ
ルケ。
「きっかけか…」
 ルイズは、キュルケと同じように空を見上げた。


   最「恐」の使い魔3
   ~氷の中の少女~


 暗がりの中で囲まれた。人数は六人、いや八人か。手には槍や剣、それに弓矢などの武器
を持った者ばかりだ。
 何日か前、魔法使い(メイジ)含む複数人の盗賊が出没するとの報告を受けたガリア王宮政
府がタバサをこの場所に派遣した。たった一人。でもタバサにはそれで十分だった。むしろチー
ムワークなどという面倒なことはいらないと彼女は常々思う。彼女の実力に合わせられる戦士
は、少ないからだ。
「ふざけやがって、こんな子供に何ができるってんだ?」
「バカ野郎、こいつはガリアのメイジだぜ。警戒しろ!」
「撃て!撃て!」

190:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 14:24:50 rSHrkOpL
支援

191:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 14:27:17 DDcxTVbR
 一見するとまるで普通の少女のような外見のタバサに対して、盗賊どもは一斉に矢を放
つ。よく見ると光を帯びたその矢は、明らかに魔法がかかっている。矢の軌道をすべて見
きったタバサは、身を翻してそれをかわすと、素早く呪文の詠唱にうつる。
「魔法を出させるな!一気に潰…」盗賊の一人がそう言おうとした瞬間、彼の両足は凍って
おり、バランスを崩したそいつは転倒した。
「化け物か…」次々に倒されていく盗賊の仲間を見ながらリーダー各の男がつぶやき、そし
て自身も詠唱に入る。
 貴族崩れの下衆。タバサはそう心の中でつぶやくと素早く氷の矢を放った。
「ふぐっ!」間一髪のところで炎の壁を作ったその盗賊の頭目は素早く反撃のための魔法
を繰り出そうとするも、タバサはその前に攻撃魔法をねじ込んでその動きを封じた。戦う相
手の考えや動きは、手に取るようにわかる。それが彼女の自信にもなった。

   *

「悪魔だあああ、ルイズが悪魔を召喚したぞおお!」
 タバサの平穏が乱されたのは、留学先のトリステイン魔法学院で二年生の春に行われる
使い魔召喚の儀式からであった。タバサはここで、見たこともない生物に出会うことになる。
 同じ学校で学ぶヴァリエール家の三女、ルイズ・フランソワーズが召喚した使い魔(サー
ヴァント)。北野誠一郎と名乗るその使い魔は彼女がこれまで見たこともないような生物、いや、
生物であるかどうかすら疑わしい外見。
 彼女はこれまで大抵のメイジや戦士たちの戦闘力をその眼力で見抜くことができた。何度も
戦闘を経験してきたけれども、その眼力には絶対的な自信があった。故に彼女はこれまでも
生きてこれたのである。
 しかしあの使い魔、北野誠一郎に対してだけはその眼力が通用しなかった。
わからない。あの使い魔の実力がわからない…。タバサは一度気になりだすとそれを確かめ
ずにはいられない性質であった。一見大人しそうな外見は何事にも興味のないような雰囲気を
持っているけれども、それは抑えきれないほどの探究心から自身を守るためにほどこした壁の
一つである。
 彼女は密かに北野誠一郎の観察をはじめた。誠一郎のマスターであるルイズは、「彼は普通
の人間なの」と言っていたが信じられるものか。私は自分の確かめたこと以外は信じない。タバ
サは常にそう思っていた。


 ある日、彼女は学院の廊下で北野誠一郎とすれ違う機会を得た。間近で誠一郎を観察する機会
はあまりないので、このさいだからじっくり見てやろう、と思いよそ見をするふりをしながら彼の動き
に全神経を集中させた。魔力を持っているようには見えない。しかしなぜか人を寄せ付けないオーラ
のようなものは感じる。でも強いのか?体は特別に鍛えているようには見えないし、脚なんかも細い。
今、体重の乗っているほうの脚を払えば簡単に…。
 次の瞬間、北野誠一郎はタバサの顔のすぐ前で拳を握っていた。
「危なかった、もう少しでやられてしまうところだったよ…」誠一郎はそうつぶやくと、またどこかへ歩い
ていった。
 私の殺気を感じた…?
 確かにその時タバサは、自分が北野誠一郎を攻撃するとどうなるだろう、と考えていた。けれども
それは、相手に反撃されることを前提とした考えだ。にもかかわらず、彼女は誠一郎の動きに反応
できていなかった。
 あの拳が止まっていなければ、私はやられていた…。愕然とするタバサ。今までどんな多くの敵と
対峙しても恐れることのなかった彼女がはじめて感じる恐怖。恐怖はあの時から、自分の感情を捨て
てただ強くなろうと決意したあの日から忘れていると思っていた。しかし違った。
脚が、震えている。

192:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 14:27:29 phv1n4Al
ゼロの提督がなくころに~罪滅ぼし編~完結!!

あとは「悪魔の脚本」のTIPSを見なきゃね!\(^o^)/


193:最「恐」の使い魔3
08/08/03 14:32:02 DDcxTVbR
心の蔵の音が耳元で鳴り響く。妙に汗も出る。
この学院では、教師たちを除けば自分に勝てる者は一人もいないと思っていた。事実彼女
の魔法の実力はずば抜けたものがある。にもかかわらず、正体不明の使い魔に対して
彼女は恐怖していた。
恐怖は無知からくるものが大半。真実を見てしまえば解消する。タバサは大きく息を吸い、
心の中で自分にそう言い聞かせた。
確かめなければ、北野誠一郎の実力を…。


   *


 廊下で数少ない知り合いに会った北野誠一郎は、声をかけた。
「ねえねえ、ギーシュくん」
「は、はい。なんっすか北野さん」やや緊張した面持ちでギーシュが答える。
「そこの窓、ちょっと開けてほしいんだ」
「はい」ギーシュは素早く窓を開けた。
 すると誠一郎は窓から手を出し、握っていた右拳をゆっくりと開いた。掌から大きな蜂が飛び
立っていった。
「蜂、ですか」
「うん、今さっき女子生徒の目の前を飛んでたんでね。危ないから捕まえたんだよ」
「素手でつかんであぶなくないっすか?」
「え?夢中だったんで気がつかなかったよ」
「蜂なんてその場で殺しちゃえばよかったのに」
「そんな事をしたらかわいそうでしょう?」
 北野さんって、残忍そうに見えるけど実は、自然とか生き物を大切にする魔王なんだな。と
ギーシュは思った。


   *


 北野誠一郎は常にマスターのルイズ・フランソワーズと行動をしている。マスターとサーヴァ
ントなのだからそれは当然なのかもしれないがしかし、誠一郎の実力を調べるためにはマス
ターの存在は邪魔であった。決闘は一応禁止されている。タバサは入学以来、不良性と相手
に数々の決闘をこなしてきたけれども、それは学校側に見つからないように密かにやった行為
であり、相手側もそれで納得しているから通報されることもない。
 もちろんわざわざ決闘をする必要はない。ただ北野誠一郎の実力がわかればそれでよいの
だ。タバサは自分にそう言い聞かせて機会を待った。彼が、誠一郎が一人になったとき攻撃を
しかけてみる。実際に魔法に対する反応を見たら、その実力もわかるはずだ。
 そんな機会は、意外にも早く訪れた。
 北野誠一郎は毎朝マスターの服や下着などを洗濯する。早朝なら目撃者も少ないだろうから、
攻撃するにはうってつけだ、とタバサは考えた。そして翌日、いつもより早く起床したタバサは、
攻撃用の杖を持ち北野誠一郎の出現を待った。
 足音もなく歩く北野誠一郎。まったく気配を感じさせないその動きは、まるで幽鬼がただよって
いるようでもあった。手には洗濯物を入れた桶を持っている。
 彼女は前日に、誠一郎の通りそうな場所を予想して魔法地雷を仕掛けておいた。といっても、
戦場で敵の手足を吹き飛ばすような正規のものではなく踏めば強い光が出る程度の魔法である。
それでも牽制には十分だ。
 しかしなぜか、誠一郎は魔法地雷のある場所を踏まない。絶妙なバランスで中庭を横切る彼の
動きは、まるでこちらの仕掛けた魔法を見抜いているようでもあった。
 やはり並の悪魔ではなかったか…。そう心の中でつぶやいたタバサは、杖を強く握った。
 こうなったら実力行使しかない。
 タバサは素早く攻撃魔法の詠唱に入った。相手の実力がわからない以上、並の魔法を使えば
こちらがやられる。実戦の中で学んだ教訓を胸に、タバサは特別強力な氷魔法を放つ。

194:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 14:32:54 otydS2BW
もっとひどくなるとな、佐藤某症候群っていう病気も出てくるんだぜ……

195:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 14:33:35 +Wf2VTZX
<<イマジェンシッ シエーン シエーン>>

196:最「恐」の使い魔3
08/08/03 14:34:34 DDcxTVbR
「あれ?なんだこれは」
 不意に間の抜けた声がしたと思ったら、誠一郎は身をかがめる。
 なに!?
 誠一郎の体のすぐ上を複数の氷の槍が通りすぎていく。
 私の魔法を、かわした…?
ショックを受ける間もなく、タバサは次の戦闘態勢を整えなければならなかったが、悪魔
はこちらの動きに気がついたようだ。
「やはりこの程度の不意打ち、あなたは見抜いていたようね」タバサは誠一郎の前に歩み
出ると、そう言った。
「・・・」無言でこちらを見つめる悪魔。
「こうなったら正々堂々とやりましょう」そう言って彼女が杖を構えたとき、
「誠一郎、こっちの下着もついでに…、きょえええええ!!!」
「は!」
 北野誠一郎のマスター、ルイズ・フランソワーズが中庭に仕掛けておいた魔法地雷を踏ん
だらしい。
 しまった、地雷を解除するのを忘れていた。しかも強い光だけを出すつもりだったのに、
少し爆発している。でもまあいいか、ルイズだし。そう思ったタバサは誠一郎に向けて言う。
「邪魔が入った。この決着はいずれつける」そう言うとタバサは素早くその場から立ち去った。
 誰も見えなくなったところでタバサは大きく息を吸った。そして変な汗をかいてしまったので、
ポケットに入れていたハンカチーフを取り出し、汗を拭こうとしたものの、そのハンカチーフは
なかった。
 変だな。昨日入れたはずなのに…。

   *

「なんなのよこれは…」軽い爆発ではあったが大きな怪我をしなかったのは、いつも自分の
魔法で爆発には慣れているためか。そう思いつつルイズは立ち上がる。
「ルイズちゃん、大丈夫?」
「平気よ誠一郎、このくらい。それより、この洗濯物もお願い」彼女の右手にはボロボロになった
下着らしきものがあった。
「うん、わかったよ」
「あれ?その手に持っているもの何?」ルイズは誠一郎の手に持っているものを指さして言う。
「あ、ハンカチのようだね。さっき落ちてたの拾ったんだ」
「それあなたの?私、そんなの持ってないわよ」
「うーん、僕のじゃないよ。誰かが落としたのかな」

   *

 その日の夕刻、タバサは親友のキュルケに頼んでルイズを別の場所に連れて行ってもらい、
北野誠一郎を一人にさせた。
「ああ、私もそんなことやってたわねえ」などとニヤニヤしながら言う親友の言葉は、何か別の
ことを考えているようでもあったけれど、今はそんな事を気にしている場合ではない。
「北野誠一郎…」
「は、はい」
 中庭に一人たたずむ彼の前にタバサは立った。夕日に写る誠一郎の顔は、一段と怖さを増し
ているようにも見える。
「ちょっと、付き合ってほしい」タバサがそう言うと、彼女の背後に彼女の使い魔である風竜の
シルフィードが砂塵を舞い上げながら降り立った。

197:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 14:36:54 jWp/Nlz1
きょえええええww
支援

198:最「恐」の使い魔3
08/08/03 14:37:14 DDcxTVbR
 森の中に少し開けた場所がある。そこには木々や草がなく、広さもちょうど良い。何よ
り人に見られないというのが好都合だ。
「朝は邪魔が入った。ここで決着をつける…」そう静かに言い放つタバサ。
「決着…?」
 とぼけた声を出す悪魔にタバサは苛立ちをおぼえた。いい加減に本性を現してほしい。
「そっちが行かないならこちらからいく」そう言うとタバサは杖をかかげた。
「うわ!なに?」
 複数の光の玉が誠一郎の周りで爆発する。
 タバサ自身、爆発の魔法はあまり好きではないのだが確実に葬り去るには爆発ものが
一番であることを悪魔のマスターであるルイズから学んだ。
「きええええええ!」
 走って逃げようとする悪魔の前に氷の壁を作る。ここで逃がしてなるものか。この男が
実力を出すまでは逃がさない。
「さあ!あなたの実力を見せて頂戴」
「実力って…、なに?」
「まだとぼけるの?」
 タバサは氷を混ぜた竜巻を起こして誠一郎にぶつけた。しかし間一髪のところでそれを
かわす悪魔。
 やはりタダものではない。
 魔法の命中率には自信のあったタバサだが、こう簡単にかわされてしまう事態に彼女の
プライドはえらく傷ついた。
「くっ…!」
 彼女はこれまでよりも一段レベルの高い魔法を繰り出す。誘導魔法。どこまでも敵を
追いかける魔法だ。敵の殺気に反応するその魔法は、非常に難易度が高い。
「スネークアロー!!」蛇のように素早く、そしてしつこく追いかけまわるその魔法を放つ。
「きえええええええええ!!!!」
 再び怪鳥のような声が森に響き渡り鳥たちが一斉に飛び立った。
「これで、終わりね」タバサが誘導魔法にさらに魔力を注入した。
 しかしその時、魔法を避けようとした誠一郎がこちらに向かってきているのが見えた。
「きええええええええええ!!」
 彼の背後には、タバサが自分で放った魔法の矢が複数追いかけてきていた。
 しまった…!
 誘導魔法は相手の殺気に反応する。つまり、自分自身にも反応するリスクをも伴っている
のだ。
 まずい。タバサは素早く防御魔法の詠唱に入ったが、それよりも早く目の前に北野誠一郎
の姿があった。
 間に合わない!!
 タバサは基本的に接近戦を苦手としていた。杖も接近戦に合わせたコンパクトなものでは
なく長いものを使用している。ただし、並の相手なら彼女に近づく前にやられてしまうだろう。

 そう、並の相手ならば。

199:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 14:37:41 rSHrkOpL
投下しようと思っていたら元ネタが被っていたのでどうしようか支援

200:最「恐」の使い魔3
08/08/03 14:41:22 DDcxTVbR
 次の瞬間、タバサは誠一郎の肩越しに自分の放った光の矢を見た。そして、その矢は森
の木々を次々になぎ倒してどこかへ飛んで行ったようである。
「…は!」
 冷静になって状況を把握してみると、今自分は北野誠一郎に両腕で強く抱きしめられて
いる状況であることに気がついた。まずい、これはまずい。いつの間にか杖が手から離れて
いたので、魔法も使えない。
「ご、ごめん…!」なぜか急に体を離した悪魔は、懐から何かを取り出した。
「…!」タバサは相手から目を離さずに素早く自分の杖を取ろうとしたが、杖は離れた場所に
転がっていた。
 まずいまずいまずい…!
 目の前が真っ暗になった気がした。
 お母様。救ってあげられなくてごめん…。
 そう思い目をつぶろうとした時、彼の、北野誠一郎の手には見覚えのあるものがあるのに気
がつく。
「これは…」
タバサが母親からもらったお気に入りのハンカチーフ。今朝なくしていたものだった。
「中庭で拾ったんだ。君、僕がこれを盗んだと思ったのかい?」
北野誠一郎は、こちらをまっすぐ見つめてそう言った。
「私の…」
「君のだったんだね。返すよ、ほら」
 そう言って誠一郎はタバサの手にハンカチーフを握らせた。
「あなた…」
「ん、なに?」
「本当に普通の人だったの…?」
「…そうだよ」



 その後、タバサは少しの間誠一郎のことを聞く。誠一郎、というよりも他人とこうやってじっくり話し
合ったことなど久し振りだとタバサは思う。
 彼の元いた世界のこと、家族のこと、好きな食べ物、趣味。こうして話を聞いていると、違う世界
の住民ということだけで本当に普通の少年だった。彼の戦闘力が推し量れなかったのは当然で
ある。彼には戦う意思がないのだから。しかも彼は、勘違いで攻撃をしかけてきた自分の浅はかな
行動を笑って許してくれた。その優しさはもはや天使としかいいようがない。人が良すぎる。これで
は悪いやつに騙されてしまうかもしれない。
 ああ、そうか。だからこそ彼のマスターであるルイズは、彼の世話を焼くのか。
 タバサは自分の中にある氷が解けるような気がして少し嬉しくなった。
 日も陰り始めた森の中、そろそろ帰ろうと思った時…、
「危ない!」
 無意識のうちにタバサの体が動いた。
「タバサちゃん!?」
 誠一郎を庇おうとしてタバサの左肩に矢が刺さった。それもただの矢ではない。
 ぐっ…、毒か。
 矢には毒が塗られていた。それも特別なもの。そう、魔法の力を弱めるための毒だ。解毒の魔法は
使用可能だが時間がかかる。何より解毒をしている最中に無防備になってしまう。しかしそれより何
より…。タバサは誠一郎の顔を見た。明らかに動揺している。それはそうだろう。目の前で人が矢に射ら
れて驚かない者はいない。
 敵の殺気が近づく。少なくとも十人はいる。
 今まで誠一郎に気を取られていて、周囲の警戒を怠っていた自分を激しく悔いた。
 せめて彼だけでも。
 混濁しはじめる意識の中で、タバサは立ち上がる。
「だ、ダメだよタバサちゃん!矢が刺さったままだよ!」
「大丈夫。この程度の矢、平気」
 余計心配させると思い毒のことは口に出さなかった。

201:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 14:43:03 DXSrMzLZ
>>199
イイジャンyou投下しちゃいなyo!
間に>>183の人が入るから平気だと思うze!

そして支援

202:最「恐」の使い魔3
08/08/03 14:44:23 DDcxTVbR
「くる…!」
「ザマないな。『雪風』」
 皮の鎧を着た男。盗賊の類か。見覚えはないが、その声は明らかに自分を知っているよ
うな口ぶりだった。
「以前、俺の仲間が世話になったらしいな」
 かつてガリアで退治した盗賊一味か。
「兄貴の仇を討とうとトリステインまで来てみたが、好都合だった。こんな場所で男と密会し
てくれるとはな」
「ぐ…」
「効くだろう?メイジ殺しのために開発された毒薬。お前には賞金がかかってるからな、すぐ
には殺さねえよ」
 気がつくとすでに囲まれていた。すぐに脱出したかったが毒がまわって上手く動けない。
何より、誠一郎をおいて逃げるわけにはいかない。
「ほう、この毒矢をくらってまだ立てるか。だが立っているだけが限界のようだな。撃て!」
リーダーらしい男がそう言うと、タバサと誠一郎に向かって一斉に矢が射られた。
「ふんっ」タバサは杖を振って風を起こし、すべての矢をなぎ払った。
「まだそんな力が残っていたのか。だが時間の問題だ。顔色が悪いぜ」
 手に剣や槍を持ちじりじりと距離を詰める男たち。
 遠くに避難させておいたシルフィードを呼ぶ間もない。
 でもせめて誠一郎だけでも…。
「きえええええええええええええ!!!!」
「ぬわああ!なんだこいつは」
「落ち着け!そいつは顔が怖いだけで普通の…うわああああ」
「おい!今人が飛んだぞ」
「こいつメイジか」
「バカな!こんな魔法見たことねええ」
「こっちくるな…」
「うわ!逃げ…」
「ああ」
 薄れゆく意識の中で、タバサには数人の盗賊が空に浮き上がっている姿が見えた。
 あんな風に人が吹き飛ぶなんてありえない。
 ああ、そうか。私は死ぬのだ…。そう思いつつタバサは瞼を閉じた。


 死というものを怖いと感じたことはなかった。
 むしろどこかで死を望んでいたのかもしれない。今のこの状態から解放されるならば、いっそ
死んだ方が…。
 とても暖かい気持ち。かつて、まだ母親が元気だったころに感じた気持ち。こんなに心地よい
のなら、死も悪くないのでは…。
 そう思った瞬間目が覚めた。
「ここは…。痛っ!」左肩にはまだ痛みが残っている。そうだ、自分は盗賊の放つ毒矢に射られた
うえに、意識を失っていたのだ。布でまかれた応急処置がなされている自分の肩を見つめながら、
もうすっかり暗くなっている森の道を歩く誠一郎の背中。
 背中…?
 ぼやけていた世界がはっきりしていく。
「気がついた」
「う、うん」
 タバサは誠一郎の背中に背負われていたのだ。

203:最「恐」の使い魔3
08/08/03 14:48:38 DDcxTVbR
「応急処置、あんまりうまくできなかったけど」
「盗賊は」
「逃げたみたい」
「誠一郎が倒したの?」
「いや、僕が倒したっていうか…」言葉を濁す誠一郎。
「私、ほとんど覚えてないんだけど。あなたが戦っていたことは、なんとなくわかった」
「う、うん。本当は好きじゃないんだけど。人を傷つけるってこと…」
「強いのね、あなた」
「いや、全然。僕なんて」
「強い。私よりもずっと…」
 そう言ってタバサは目を細めた。
 彼の背中。なぜ安心するんだろう。
「僕はその、戦うとかあんまり好きじゃなくて」
「でもあいつらと戦ってくれた」
「それは、キミを守らなくちゃって思ったから」
「え…」
 人に守ってもらう。それはタバサにとっては初めての経験であった。いや、正確に言う
と強くなってからはじめてと言った方がいいか。昔は父や母によく守ってもらっていた。
魔法の力に覚醒してからは、特にその必要はなくなったけれども、同時に誰かを守ると
いう行為もしてはいなかった。守るのは常に自分自身。たった一人で戦っていた彼女に
は当然ともいえる。しかし、戦うことが嫌いだと言うその少年が戦った理由。
 それは守るべきものがあるから。
 本来戦いとはそうあるべきものなのに、自分はなんと浅い考えをしていたのか。盗賊ごとき
の不意打ちにやられるのも当然かもしれない。タバサはそう思い唇を強く噛んだ。
「誠一郎…」
「なに」
「その…、ごめん」
「どうして?」
「え、だって」
「タバサちゃんは、フラフラになりながらも僕を守るために魔法を使って助けてくれたじゃ
ない?」
「…うん」
「だから僕もキミを守るために、できる限りのことをしようって、思っただけだよ」
「でも私、あなたに酷いことをした」
「あんなの慣れっこだよ。誤解されるのも日常茶飯事だし」
「誠一郎、まるであなたは…」
「なに?」
「天使のようね」
「そんな、僕なんて全然」
「ありがとう」
 タバサは誠一郎の体をほんの少し強く抱きしめた。
 シルフィードを呼べばすぐに魔法学院に帰れるのだけど、もう少しのままでいたかったから、
しばらく何も言わないでおいた。



   おしまい

204:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 14:50:42 jWp/Nlz1
乙!
タバサが小磯良子ポジションになってるw

205:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 14:51:33 WACwVVI0
きええええええ!!!!(GJ!!!!)

北野君の理解者が出来た回か。

206:ゼロのエンジェル
08/08/03 14:52:13 rSHrkOpL
GJ!
自分が書くのとは違う北野君を魅せて貰いました。
まあネタが被らないか結構ビクビクして読んでもいるのですが。

あと>>183の人の後に投下予約しておきますね。
間を考えて四時くらいですかね。

207:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 14:55:19 bASo7DMN
投下乙かれ様でした
183です では15:20ほどより投下を開始します

208:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 14:57:35 vZxd8g7C
きええGJ

209:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 14:59:52 ho9oW8zl
>「究極!サウスゴータキィィック!!」
まさにサウスゴータのゲシュペンスト(幽霊)と言った所かw
この後ワルドと義手義足コンビになったりしてな

210:10
08/08/03 15:12:38 zUYQo6fa
最恐の方乙っしたー

>>207
おはよー・・・眠い・・・ではその後を予約しておきますです。


211:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 15:14:01 RlV8WVYU
投下予定が3作とは豪勢ですなあ
やっぱこういう波ってあるもんなんだね

212:183
08/08/03 15:20:15 bASo7DMN
ではそろそろ、いかせて頂きます

213:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 15:20:21 zELY4o9v
夏休みの日曜日だからな



・・・・・旅行行きてえ・・・・ハルケギニアとか

214:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 15:20:24 CXTswtyB
月初は書き溜めしておいたのを放出というサイクルかもね


215:とりすていん大王
08/08/03 15:21:59 bASo7DMN
とりすていん大王 一回目

ドカーーン ドカーーン

今日はトリステイン魔法学院の2年進級の大切な使い魔召喚の日、みんなが思い思いの使い魔を呼び出す中、
この物語の(一応)主人公 ルイズは魔法を爆発させるばかりで成功しません
ドカーーン ドカーーン
そして何十回目かの失敗の後、ついに!!

「見ろ、煙の向こうに何かいる!!」
「ついに召喚されたのか?」
「あ、あれは・・・」
それはオレンジの体毛に包まれたふよふよと宙に浮かぶ座布団のよーな猫のよーな何かでした
「「「「なんだ?あれ?」」」」

誰もが見た事も無い物体に首をかしげる中、一人だけ目を見開いて驚愕の表情でその召喚された何かを見つめる女の子がいました
名前をタバサといいます
「あ・・・あれは・・・・」
ぷるぷるとその可愛らしい指先を謎の物体に向けて指すタバサちゃん
「え、タバサあれが何か知ってるの?」
お友達のキュルケが驚いた表情でタバサちゃんの次の一言を待ちます そして出てきた言葉はとんでもないものでした。
「あれは、お父さん!!」
「「「「お父さん!?」」」」
その場にいた全ての人が絶叫しました
「ちょ、ちょっと!!何、あの変なのが貴方のお父さんな訳!?」
召喚者のルイズはかなり取り乱しまくりです、そりゃそうです、魔法学院に通う子供の父親と言うことは少なくとも貴族、
しかもタバサちゃんは留学生、つまり、他国の貴族の強制拉致、国際問題です 殆ど涙目、と言うか泣いてます。
そんなルイズの思いを知ってか知らずか、タバサちゃんはまたハッキリといいました
「違う、私のお父さんじゃない」
その言葉に少し安心したのか、勢いを取り戻したルイズがタバサちゃんに喰ってかかりました
「何よ!!紛らわしいじゃない!!じゃあ誰のお父さんだって言うのよ!!」
するとタバサちゃんは冷静にまたとんでも無い事を言ったのです
「モンモランシーの」
「・・・・・・え?」

その瞬間、お父さんと呼ばれていた物体が急に大声を上げて光りだしました
「ぶっるうううわあああああ!!!」
「きゃああ!?」
「な、何と言う覇気だ、こんな覇気は私も経験した事が無い」
そして光が収まったその時、お父さんは引率のミスター○コミズに
「コルベールだ!!」
失礼、ミスターコルベールに
「始めまして、娘がいつもお世話になっております、モンモランシーの父です」
「あ、これはご丁寧に」
「これはつまらないモノですが・・・」
「いえいえ、お気になさらず」
貴族のご挨拶のお土産ランキング第4位、(貴族の友社調べ)ラグドリアン湖饅頭(こし餡12個いり)をコルベール先生に大人の挨拶で手渡してました
「「「ええーーーー?」」」
ここに(モンモランシーの?)お父さんの使い魔生活が始まるのでした。

216:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 15:23:16 zELY4o9v
さーたーあんたぎー吹いた

217:とりすていん大王
08/08/03 15:23:18 bASo7DMN
「いやいやいやいや!!始まらない!!始まったら問題!!」
大慌てで拒否の姿勢を示すルイズ、それもそうです見た目は変な猫?かもしれませんが級友のお父さんを使い魔なんかにしたなんて
実家のお母さんやお父さんに知られた日にゃあ、そりゃあ、もう、ねぇ、ほんと、・・・・・・・・・ご愁傷さまです
「何よ!!そのもう駄目だね見たいな言い方!!第一、あれは本当にモンモランシーの父親なの!?」
ルイズの言う事ももっともです ですが、
「あれを・・・」
タバサちゃんの指差す先には・・・・・・
ビコーーーン、ビコーーン、ビコーーーン・・・と目を点滅させてモンモランシーを見つめるお父さんと、
ミョーーン、ミョーーン、ミョーーン・・・・・・とロール髪を伸ばしたり、縮めたりと反応するモンモランシーが!!
「あれこそ親子の証明」
「あ、ああああ!!頭が!!頭が割れるよーに痛いわ!!」
頭を抱えて本気で悩みこむルイズに影が差します その主はいわずと知れたお父さん
「やぁ、君がルイズちゃんだね」
ふよふと浮きながらシュピっと手を上げてフレンドリー全開なお父さんは
「娘とコルベール先生から話は聞いたよ、使い魔の儀式をしてたそうだね」
ルイズはハッと思い出して謝りだしました
「御免なさい!!きっと何かの間違いだったんです!!モンモランシーのお父さんを呼び出すつもりは無かったんです!!
 ですからどうかどうか、この今回の件は穏便にお願いします!!特にお母様にはご内密にまだ死ニタクナイッス!!」
ところがお父さんの答えは意外なモノでした
「使い魔は・・・・好きかい?」
「は?」
突然のお父さんの質問にルイズは一瞬固まって、よく考えて、答えました
「は、はい、好きです」
お父さんの表情がいっぺんしてあたりが暗黒に包まれます
「使い魔が好きだというのか!!」
「ひぃ!!は、はい」
そのお父さんのオーラにルイズが脅えます
「そうか・・・・・」
そう呟くとお父さんは今度はふよふよと空に上がっていきます
「え、ええーーー!?」
「ルイズちゃん、実は私は君の使い魔ではない」
「あ、安心したよーな安心できないよーな」
「君は自分の使い魔を探すんだ」
いつの間にか空は晴れ、鐘が鳴り響き、光が差す中で、お父さんはどんどん上昇していきます
「ええ、私の使い魔って!?」
もう何がなんだか解らないルイズは涙声混じりにお父さんに聞きます
「私に聞かれてもなぁーーー」
空の上からお父さんの無責任な声が聞こえてきました
「そんなぁーーーーー」
ルイズの絶叫が空しく空に響くのでした


その日の夜、結局使い魔は召喚できませんでしたが、進級に関しては学院長から太鼓判を押してもらったルイズは自分の部屋に帰ります
「・・・散々な一日だったわ・・・」
召喚の儀式の疲れがどっと来たルイズはもう寝ようと部屋の扉を開けると・・・・・・・・・
「やぁ、遅かったね 君の使い魔が見つかるまで代わりを務めてあげよう」
「なんでいるのよーーーー!?」
ベットの上でごろごろするおとうさんを見て本日、何度目かになるかわからない叫びをあげるルイズなのでした
                                                 続くよ

218:とりすていん大王
08/08/03 15:24:56 bASo7DMN
短いかと思いますが今回はここまでで終了です

元ネタは あずまんが大王 より お父さん です

それでは次の方の支援に回ります

219:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 15:29:44 zELY4o9v
しーくわーさージュース吹いた
期待して次回を待つ

220:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 15:29:56 1OKaAtWl
モンモランシーはなんで飛ぶのん?

ともあれ投下乙。
ついでに前スレ埋め完了報告。

221:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 15:30:51 4rdfbbyN
投下乙ですー。
腹筋痛ぇw

>モンモランシーはなんで飛ぶのん?
じぇっとえんじんやからー

222:蒼い使い魔
08/08/03 15:34:26 w2XyNNti
な、なんだか大作がすごい投下されている…
そんななか投下していいのかわからないけど俺も投下予告だッ!
えーと…17時くらいにしておきますです

223:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 15:34:56 z/16oCBw
なんという全部「大丈夫、跳ね返した」ですましそうなおとうさんw

224:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 15:36:23 vcYtmCRj
投下乙でした
今日はいつにもまして投下の量がハンパないな

225:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 15:39:45 jWp/Nlz1
確かに今日の投下量は、すさまじいな…。
昔のエヴァの確変連チャン並だw

226:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 15:42:52 LhqlTzDh
提督の人、長いあいだお疲れ様でした。
ゼロ魔作品世界のメイジ至上社会とブリミルを見事断罪してくれたので、読んでいて気持ちよかったです。

大王の人も乙です。
ブゥゥゥゥゥリミル思い出したww

227:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 15:43:13 sqJCLXUc
今日で1スレ使い切っちまう勢いだな

228:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 15:44:15 neFZWHva
>>224
善哉善哉

229:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 15:46:49 DMoJ2eTY
>>183
>クロス先は申し訳ありませんがネタばれ保持の為、有名4コマとだけ表記させて頂きます
これはネタばれとは言わん、出オチだw

230:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 15:47:30 neFZWHva
>>229
ふむ、支援するのに吝かではないな

231:10
08/08/03 15:50:56 zUYQo6fa
たk、じゃなくて北野君お先どうぞ

232:ゼロのエンジェル
08/08/03 15:58:22 rSHrkOpL
ではそろそろ第六話の投下を始めます。
しかし投下しようと確認リロードしたら最「恐」の使い魔が投下され始めたのには吹いたw
なんというシンクロ…

233:ゼロのエンジェル(1/6)
08/08/03 16:00:16 rSHrkOpL
『モンモランシー』

だがその瞬間、脳裏にギーシュの笑顔が浮かんだ。
まだ――死ねない!
その想いだけでモンモランシーは咄嗟に跳ねるように立ち上がり、悪魔から距離をとる。
だが、悪魔は執拗だった。
彼は逃げ道を塞ぐような動きでこちらを牽制してきたのだ。
こうなってしまってはもはや逃げることすら叶わない。

「ちょうどよかった」

ニタリ、と悪魔が笑う。
何がちょうどよかったのだろうか。
三人では足りないから獲物が増えてよかったということか?
やはり、自分は食べられてしまうのか…?
不安に怯えるモンモランシーの涙腺はもはや決壊寸前だった。

「申し訳ありませんが、部屋の中の彼女たちを見ていてもらえませんか?」

だが、悪魔の口から出てきたのは意外な申し出だった。
戸惑うモンモランシー。
しかし、次の言葉によってすぐさま彼女はその言葉の意味を察することになった。

「それと、できれば食堂か調理場の場所を教えてもらいたいんですが…」

調味料か。
彼女たちを味付けするための調味料が必要なのか…!
流石の悪魔といえども生のままでは人間を食べることはできないようだ。
そして、自分にはそれらをとりに行く間の見張りをやれということか。
勿論、食堂の場所を教えることなどできるはずがない。
しかし悪魔に睨みつけられている状況では拒否するという選択肢は存在しなかった。
コクコクと頷きながら、ブルブルと震える指先でアルヴィーズ食堂がある方向を指し示す。

「ありがとうございます」

ニタァ、と微笑んで悪魔は一礼するとその場を立ち去っていく。
その姿が見えなくなると、モンモランシーはヘナヘナ…と倒れこむように廊下に座り込む。

「た、助かっ……た」

234:ゼロのエンジェル(2/6)
08/08/03 16:02:36 rSHrkOpL
悪魔が立ち去った後、モンモランシーは北野君との約束(主観的には脅迫)を守り、ルイズの部屋にいた。

「…とりあえず、三人とも気絶してるだけのようね」

ベッドに横たわっている三人の少女を簡単に診察したロール少女はほっと息を吐いた。
食べやすいように身体が溶かされているとか裸に剥かれているとかそういったことはなかったようだ。
何故かルイズが失禁して下着を濡らしているのが謎だが。
だが、安心してばかりもいられない。
こうしている間にも悪魔はこの三人を食べる準備を着々と進めているのだ。
いっそ三人を強引にでも起こして自分共々逃がすべきか?
ふと浮かんだ考えをモンモランシーは首を激しく振ることで否定した。
ダメだ、そんなことをすれば悪魔の怒りをかってしまう。
そうなれば自分はおろか、家族にまで災厄の手が及ぶかもしれない。
何よりも、ここには見張りがいる。

(まさか、他人の使い魔に命令できる力があるだなんて…)

じいっとこちらを見つめている火トカゲの存在にモンモランシーは戦慄する。
実際のところ、フレイムは目の前の金髪ロールが主人たちに危害を加えないかと見張っているだけだった。
だが、そんなことがわかるはずがない彼女からすればその視線は自分への監視以外の何者でもない。
一体どうすればいいのか。
このままここにいて悪魔が戻ってきたとして、自分は解放されるのだろうか?
いや、そんなはずはない、獲物を引きずり込む現場を見た人間を逃がすわけがないではないか。
かといって逃げ出すことはできない、完全に八方ふさがりだった。

(こんなことなら食堂の場所なんて嘘を教えれば……って、あっ!?)

そこでモンモランシーは気がついた。
もうすぐ、午前の授業が終わる。
自分(ルイズたちもだが)は既に遅刻どころか無断欠席確定だろう。
だが、問題はそこではない。
授業が終わる――つまり、学生たちは食堂に向かうということだ。

(ギーシュ!)

気がつけば少女の脚は駆け出していた。
悪魔への恐怖も、気絶したままの三人の少女のことも一切が頭の中から消える。
残っていたのはただ、愛しい少年のことだけ。
腹ペコ状態の悪魔とギーシュを遭遇させるわけにはいかない。
モンモランシーは顔面を蒼白にして、ルイズの部屋から飛び出した。

235:ゼロのエンジェル(3/6)
08/08/03 16:05:10 rSHrkOpL
「それにしても、いい人がいてくれてよかったな」

ルイズの部屋でモンモランシーが悩みぬいている頃、北野君は食堂へと向かって歩いていた。
ドアを開けた時、女の子が尻餅をついていたのには吃驚したものだ。
しかも、その女の子は大股を開けているため下着が丸見えという状態。
これはまずいとばかりに頭を下げつつも、服の乱れを指摘しようと指を伸ばせば跳ねるように少女は立ち上がった。
怒っているのだろうか、そう北野君が考えたのも無理はない。
それはそうだ、下着を覗かれて怒らない女の子がいるはずがない。
だが、あまりしつこく謝るのも少女に気恥ずかしい思いをさせるばかりである。
だからこそ北野君はあえてその件をスキップし、本来の目的を果たそうとした。
つまり、折角人に出会ったのだから食堂の場所を聞こうとしたのである。
しかし少女は余程怒っているのか口を開こうともせずに逃げ出そうとするばかりだった。
が、数秒後、ようやく落ち着いてくれたのか少女は大人しくしてくれた。
しかも、彼女は怒っていたであろうに、道を教えてくれただけではなく、ルイズたちの看病をも承諾してくれたのだ。

(後で改めて御礼を言わないとね)

そして、これによって北野君はもう一つの懸念をも解消していた。
少女はルイズたちと同じ制服を着ていたのだ。
その彼女が授業について言及していなかったということは、つまりこの時間帯に授業はないということだ。
主となった少女、及び気絶してしまった二人の少女が遅刻ないしは無断欠席にならなかったという事実が素直に嬉しい。
そうほっとする北野君の鼻に、美味しそうな料理の匂いが漂ってくる。

(いい匂いだな……あそこが食堂かな?)

食堂らしき施設を発見した北野君はふと立ち止まると正面入口を迂回した。
学生でもない自分が堂々と真正面から入るのはどうかと思ったのである。

(コックさんに料理をわけてもらおう。皿洗いとか皮むきくらいならできるし、大丈夫だよね)

責任者の人が気難しい人じゃなければいいんだけど。
北野君は期待と不安を半々に浮かべながら食堂の裏手へと回る。
すると、そこには意外な光景があった。

「うわあ…」

感嘆の声を上げる北野君の目の前にはまず日本ではお目にかかれない光景が広がっていた。
犬、猫、鳥、亀、馬、蛇、もぐら…
多種多様な動物たちが広大な広場の中でたむろっていたのだ。
動物園でもまずここまで多くの動物はいないだろう、という状態に北野君は目を輝かせる。

236:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 16:06:48 C0GzN1Z+
しえん

237:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 16:08:00 jWp/Nlz1
支援!!

238:ゼロのエンジェル(4/6)
08/08/03 16:08:16 rSHrkOpL
(うわっ、見たことがない鳥がいる…それにあれはグリフォン? あの火トカゲもそうだったけどここは本当に異世界なんだなぁ)

中でも、地球では幻想世界にしか存在しない動物たちの存在にはただ感心するばかりであった。
北野君は動物が好きで、また好かれていた。
動物たちは外見で人を判断せず、内面を見て接してくる。
つまり、天使の心を持つ北野君は動物に懐かれる性質なのだ。
と、自分たちを見つめている存在に気がついたのか、数匹の動物が彼へと近寄ってくる。

(うわ、大きいモグラだな)

人一人くらいの大きさのモグラが北野君の目の前に立ち、見つめてくる。
つぶらで愛らしい瞳がどことなくキラキラと光っているように見えるのは気のせいだろうか。
なんとなくこのモグラに触りたくなった北野君はそっと手を伸ばす。
すると、モグラは頭に触れられる直前に顔を上げるとペロリと北野君の手を舐めた。

「わっ」

これには驚いて北野君は慌てて手を引っ込める。
が、別に噛まれたわけでもないので再度手を差し伸べてみる。
ペロペロ。
やはりモグラは北野君の手を舐めた。

(うわあ、可愛いな)

可愛らしいモグラの反応に北野君はご満悦だった。
と、モグラの周りにいた動物たちがコイツだけずるいぞとばかりに北野君の周りに集まってくる。
空いたもう片方の手を、我先に争うように動物たちは舐め始める。

「あははっ、くすぐったいよ」

思わぬ歓迎に北野君は戸惑いながらも喜色を浮かべる。
と、その時。
今まで北野君のご執心だったはずの動物たちが一斉に身を引いた。
一体どうしたのだろうか?
北野君が疑問を頭に浮かべたのと同時に、その頭上に影が降りた。

「え?」

バサッ…
空いた空間に舞い降りたのは、青い表皮を身に纏わせた一体のドラゴンだった。

239:ゼロのエンジェル(5/6)
08/08/03 16:11:12 rSHrkOpL
「きゅい?」

鳴き声(?)をあげながらこちらを見つめてくるドラゴンを北野君は呆然と見詰める。
恐怖心はなかった。
いや、あるにはあったのだが、それを上回る好奇心と感動が彼を突き動かす。
何せ目の前にいるのはドラゴン、竜である。
幻想の動物の中でも知名度、格好よさ、強靭さ、威厳ではトップクラスの生物だ。
ファンタジーを知る年頃の少年ならばまず憧れないことはない。
そして、北野君はその例に漏れなかった。

(か、格好いい…!)

本物のドラゴンを目の前に北野君は感激に打ち震える。
昨日見たときは着ぐるみか何かだと誤解していたが、こうして至近距離で見てみるとそれがおろかな誤解だったことがよくわかる。
目の前の竜は間違いなく生きている、動いている、存在しているのだ。
火は吐くのだろうか? 人を乗せるのだろうか? 鱗は硬いのだろうか?
少年らしい好奇心で北野君の胸は張り裂けそうだった。

(この男の子、シルフィのことじっと見てる…)

一方、見つめられる立場のドラゴンことシルフィードは寄せられる視線に戸惑っていた。
この場には数々の使い魔がいるが、その中でもドラゴンは珍しい。
そういう意味では少年の視線も納得できなくはない。
だが、この熱い視線はどうか。
恐れを抱かず、あるのはただ自分への好意だけ。
感じ慣れない視線にシルフィードは思わず恥ずかしくなってぷいっと視線をそらしてしまう。
が、視線が気になるのは変わらない。
横目でチラチラと見てみればやはり少年はこちらをキラキラと輝かせた瞳で見つめている。
単にご飯を食べに来ただけだというのにこの展開はどういうことだろう。

(も、もしかして…この男の子、シルフィのこと、気づいてる!?)

戦慄にわななく青き竜。
彼女は竜の中でも特に希少とされる風韻竜である。
強烈なブレスや先住魔法を使いこなし、人語を操るなど知能も高い強力なドラゴンだが、現在は絶滅したとされている古代の幻種だ。
面倒を避けるため、また主人であるタバサからの命で普段は風竜だと偽っているのだが、まさか見破られてしまったのか。
冷や汗をかきつつ、少年を観察する。
やはり彼はこちらに興味津々な視線を向け続けている。
まずい、非常にまずい。
自分が風韻竜だとバレてはいけないと主人の少女から厳命された次の日にいきなりバレそうだ。
なんとかしなければ…!

240:ゼロのエンジェル(6/6)
08/08/03 16:13:54 rSHrkOpL
とりあえずこの場は逃げてしまおうか。
そう考えかけたシルフィードの機先を制すように北野君が動いた。
好奇心を抑えられなくなり、彼は彼女の身体に触ろうと手を伸ばしたのだ。

「きゅいっ!?」

慌てて回避するシルフィード。
別に身をかわす必要などなかったのだが、混乱していたために反射的に回避行動をとってしまったのだ。

「あ、ごめんね…」
「あ、謝るのはこっちのほうなのね! ごめんなさい!」
「え……しゃ、喋った?」
「あ」

しまった、とばかりに口をつぐむ。
しかし時は既に遅し。
思いっきり人語を喋ったことを記憶されてしまっていた。
けれど、仕方がないではないか。
別に彼が悪いわけでもないのにあんな風に申し訳なさそうに謝られたら…
シルフィードは混乱の中、自己の正当化へと勤しむ。
タバサは「自分以外の人と会話してはダメ」と言っていた。
これは見事にそれを破っている。
このままでは叱られてしまう…と、その瞬間。
怯える彼女の頭に天啓が閃いた。
そうだ、会話してはいけないのは『人』だ!

「き、気のせいだったのかな? そうだよね、竜が喋るなんて」
「気のせいなんかじゃないのね、きゅいきゅい!」
「や、やっぱり喋った! 凄い、会話までできるなんて!」
「シルフィは特別だから喋れるのね。あ、でも今のは秘密よ?」
「え? あ、うん。わかったよ」

コクコクと頷く少年を見ながらシルフィードは満足気に微笑んだ。
そう、彼は主人がいうところの悪魔なのだ、決して人間ではない。
自分から見ればどう見ても人間なのだが、主人がそういうのならそうなのだろう。
だが、どちらにしろシルフィードには関係ない。
タバサが悪魔だという以上、彼と会話することにはなんの問題もないのだから。
会話相手が増える、こんなに嬉しいことはない。
シルフィードは嬉しさのあまり、北野君の顔をぺろんと舐めあげた。

241:ゼロのエンジェル
08/08/03 16:15:09 rSHrkOpL
うちの北野君はヴィンダールヴの力もあり、動物に好かれまくります。
まあ、素でも好かれるとは思いますが…原作ではその辺が不明だったんですよね、確か動物と接する場面ありませんでしたし。

242:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 16:18:09 I0sdS+Qb
投下乙です
しかしこれ周りから見てると、竜すら魅了する恐るべき悪魔って感じなんだろーなw

243:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 16:18:18 jWp/Nlz1
原作やOVAだと、犬やスズメに怖がられていた描写があるぞw
しかし、これもヴィンダールブの力ということで納得できるw
GJ!!


244:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 16:18:29 g9J3dAMn
猫に逃げられたことがあったようななかったような・・・
しかしシルフィ、なんという叙述トリック(?)ww

245:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 16:18:53 zUYQo6fa
乙でした
もう片方はヴィンダールヴだったのか…コッパゲ先生調べてくれなかったのか?
北野君、動物に好かれでもしないとルイズ達への誤解解消フラグ立たないのかな
良い人なのになぁ   外見はともかく。

では自分も4時半から投下させて頂きます。

246:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 16:19:21 vZxd8g7C
人間扱いされてねえw乙

247:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 16:20:49 1OKaAtWl
横目チラ見しるふぃが、やるおAAに見えたのはナイショですが。
投下乙。

248:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 16:21:46 IyF4DNaG
動物と戯れる北野くん可愛ぇw

249:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 16:24:22 OGvC1l6i
北野くんは異世界にくることで動物に好かれるようになったんやーっ!
しかし、食事を摂るというミッションはこなせるのだろうか。

250:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 16:27:16 WYpkfKiF
ゼロの提督グッジョブ!!
ジョゼフファンとしては最高の内容だった。

銀凡伝も完結してしまったし、これから楽しみが減ってしまう。

251:虚無の鍛聖 その前に
08/08/03 16:31:55 zUYQo6fa
今回の注意

今回色々と内心でキャラ達が考えていますが、色々な人が考えるような考えの1つです
そんなワケ無いだろ!!とか、ふざけんな!!と言った意見もあるかと思います。
ある作品を批判しているように取れる部分もあるかと思いますが、1つの意見として聞き流してください。
では始まるザマスよ!!

252:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 16:33:22 4rdfbbyN
おおっと、支援

253:虚無の鍛聖  第3夜 決闘の昼のその前に  (クリュウ)
08/08/03 16:34:25 zUYQo6fa
起きたら、やっぱり月が2つ。シュガレットはまだ寝ていて起こそうかどうしようか迷った挙句、やめた。
リィンバウムにいた時寝る前で、こっちに来たら昼間で、頭がごちゃごちゃしてワケが分からないままに寝たけれどどれだけ寝たのかよく分からない。

(――寝不足じゃないだけいいのかな。何もされて無いし荷物も無事だし。なんとかなるかな……まだみんな寝てるし、でもちょっとお腹減ったなぁ…)

こっちの世界はどんな食習慣か分からない。調味料も何があるか分からない。分からない以上は安全な物を食べるしかないんだけど……何を食べればいいのか。
そこらの動物捕まえて食べるにも毒とかあるかもしれない。多分無いけど在ったら怖い。
決闘前にお腹壊しました、なんてどう見ても聞いても言い訳だよね。駄目だ駄目だ、こうなったら昼まで我慢して…(この間13秒)…ごめん無理。
とりあえず水だけでも飲まなきゃ。身体が動かない事にはどうしようもない。
そう思って井戸に行くと、ばったり。

「きゅい♪」(おはよう!)
「……………………おやすみ」

土埃に塗れた蒼い髪の小さい………     名前なんだったっけ?
あの赤い髪の(赤髪の人はボクの苦手なタイプが多いので覚えやすい)浅黒いコと一緒にいたコ。
起き抜けだから、眠くてお腹が減っていて良く思い出せない。朝に弱いのは鍛冶師として致命的らしいけど、こればっかりはどうしようもないよね?
眠くてお腹が減ってるのは向こうも同じみたいだ。シルフィードは元気いっぱいみたいだから危険だったのかどうかはともかく彼女も疲れてるだけかな。
それでも睨まれてる。サクロさんの「信用されるには信用しろ」だけど、この状況でもやっぱりそうすべきかな。

「あ、ちょっと待ってタバサ…さん、ルイズさんの部屋ってどこ?」
「………呼び捨てで良い。彼女は貴方を認めていない。……先生の誰かに言われたとしても行かない方がいい」
それを言い終えると彼女の身体が浮いて窓の1つに吸い込まれるように―――――がつっ…ごっ……がすっ…
・・・・・・・・アレ、やばくないかな?

「君のご主人様大丈夫?」
「きゅい!」(もちろんなのね!)
まかせとけ!!って感じに元気に声を張り上げるシルフィード。この子、ちゃんと現状把握してるのかな?タバサさん怪我してないといいけど。
あんな状態で魔法を使える彼女も凄いと褒めるべきだったかもしれないけど、何となく口には出せなかった。
―――――つんつん。…ぐいっ!!
「何?うわっ!?ちょっと何するのシルフィード!?」
「くー!!くぅー!!」(んー!人間の割に重いのー!)
「ボクは食べられないってば。キミが肉食だったとしても、このまま食べたらお腹壊すよ?」
シルフィードは確かに大きいけどボクを丸ごと飲み込めそうなほどには大きくない。…と、待てよ?この子普段どこに住んでるんだ?
「きゅぅ!!」(てりゃっ)
「うわっ・・・と!」
気合い一発、すぽーん、と上空にすっ飛ばされて空に向かって堕ちていく。どんな勢いなんだか。    これ位の高さなら何度も堕ちてるんだけどね。
ぺこ、とちょっと情けない音を出して思ったより柔らかいウロコの上に受け止められた。

「きゅい!!きゅいきゅい♪」(成功したのねっ!!どう?どう?)
「楽しいかって?うん、空を飛ぶのは初めてだから。でも良かったの?タバサに怒られたりしない?」
「………」(あ…………)

中庭に戻るとタバサが待っていて コンッ! と音を立ててシルフィードをお仕置きするとそのまま近くの階段に座ったまま眠り始めた。
そして・・・

「――――――随分と楽しい空中散歩だったみたいですね、クリュウ様♪」(にっこり♪)


朝っぱらから最強魔法のラピッズバーストを至近距離で撃つのはどうなんですかシュガレットさん。貴女は一体どこの言ってる事が説得力皆無の白い魔導師ですか?


254:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 16:34:35 AglPlLxi
支援します。

255:虚無の鍛聖  第3夜 決闘の昼のその前に  (クリュウ)
08/08/03 16:37:19 zUYQo6fa
「ようクリュウ、朝っぱらからびしょ濡れで水も滴るいい男ってか?」
「…水に濡れていい男になれるなら溺死すればいい事になりませんか?分かってて言ってるでしょマルトーさん。それにそれを言うなら女性に対してですよ」
「細かい事きにすんな、さあ食え食え。お前さんはこれからが大変なんだろ」

ワハハハと豪快に笑うマルトーさん。どこの世界でも親方みたいな立場にある人はこんな風になっちゃうんだろうか。
昨日のキッチンナイフの代金分は食事で払うという事で、賄い料理の具沢山のスープとサラダを貰った。鶏肉は全部シュガレットに取られた。
そんな様子をシエスタにまで苦笑いされた。ボクは悪くないよね?何もしてないよね…?

平民の人達が貴族の人達よりも先に食事をする理由はマルトーさんに曰く「良い物は早い者勝ち」だから。
実際には朝早くから働くからそれくらいに食べないとやっていられないって事なんだろうな。「勤勉かつ真直ぐ務めに励む者こそ国の主たるべし」って感じでいいかな?
これも書いておこう。

「この後どうするつもりだ?お前さん、あのヴァリエールのお嬢様には大層嫌われたらしいじゃないか」
「何で知ってるんですか。あそこには誰も平民の人達はいませんでしたよ?」
「知ってるも何も、貴族の坊ちゃん連中やらお嬢様達が五月蠅いくらいに騒いでたんだ。あれじゃあ外回りの連中にだって聞こえたかもな」
「それは…参ったなぁ。この後彼女に付き合って授業も一緒にいなきゃいけないらしいんですよ」
「あーあ……そりゃ難儀なこったな」
「その上、お昼には先生方とルイズさんがそれぞれ選んだ決闘相手と戦わなくちゃいけないんですよ。ねえクリュウ様」

まだ怒ってらっしゃいますか。だから何故そうなるのか教えてよ。ヴァリラもサナレもラジィもハリオもへリオも母さん達も溜め息吐くだけで教えてくれないし。
一体何の事なのやら。

「クリュウさん、お昼の配膳手伝ってくださいませんか?よろしければ、シュガレット様にも手伝ってもらえないかなぁ、なんて……」
「私は構いません。で決闘がありますからクリュウ様は正午までしかできませんよ?それから、様付けされるほど私は偉くありませんよ、シエスタさん」
「ですが、精霊をそんな風に軽々しく扱うなんて事は…」
「人間であれ獣や草花であれ悪魔であれ…神であってさえ、命は等しく平等に尊い物なんです。それを態々貶める様な言い方をしてはいけませんよ。ごちそうさまでした」
「んぐっ!?……っ、ごちそうさまでしたっ!!」
「え、あ、いってらっしゃい……お気をつけて」
いつの間にか食べ終えていたシュガレットが立ちあがったので慌てて食べ終えて後を追いかけた。


「おはようございますルイズさん。お目覚めですか?あらためて、本日より貴女にお仕えする事になりましたのでお迎えにあがりました」

メッチャ事務口調ですねシュガレットさん。これは相当に昨日の事頭に来てるんだろうなぁ……。サプレスの上位の人達はプライド高い人(?)達多いんだよね。

「……そういえばそうだったわね。まあいいわ、着替えさせなさい。それからシーツ片づけて昨日の服洗濯しておいてくれる?」
「ええ分かりました。それではクリュウ様はルイズさんをお願いします」

シュガレットさん、不機嫌ゲージ増大。笑顔の端っこが固くなってきてる。眉がぴくぴく動いてる。現在20%って感じ……って、ボクさ、脇役っぽくなってない?
そういえば食堂の人達以外で男性に会った事無いや。
・・・・・・あ、校長先生とコルベール先生も男性だったっけ。


256:虚無の鍛聖  第3夜 決闘の昼のその前に  (ルイズ)
08/08/03 16:39:39 zUYQo6fa
私の目覚めはあまり良くは無かったが無事に目が覚めた事と2年生になれた事に満足しよう。
そうしないと嫌な事を思い出して仕方がない。ともかく2年生になって最初の日。しっかり学生と貴族の本分を果たしに行こう。

「授業って初めてなんだよねー。つまらないって聞くけど新しい事を聞くのがつまんないワケないのにな」

どう見ても私より数歳年上の男のセリフには思えない。肩より伸びた灰色の髪が声に合わせて軽く揺れるのさえ腹立たしいがガマンしよう。
私は貴族なのだから、些細な事にいちいち口を出していてはキリがない。精霊を連れた男が些細な事しか引き起こせないのも何か納得いかないけど。

「あ、おはようクリュウ。…あら、ルイズもおはよう」
「おはよう。ええと…キュルケさん、だったよね?」

私がついでみたいな扱いなのはいつも通りとして、この平民も平民で何平然と挨拶してるのよ。

「朝から随分な挨拶じゃない、キュルケ。そんな平民に挨拶するだなんてよっぽど余裕がないのね」
「余裕と胸が無いのはそっちでしょう?私の様に召喚を成功したわけでもないのに。ねえフレイム」

暑い…違う、熱い。何か重い物を引きずるような音と一緒に紅い塊がのっそりと出てきた。…これって

「火竜山脈産のサラマンダーよ。元気も良くて、そこらのレッサーワイバーン程度に負けないくらいに強いんだから」
「ふんっ、どうせたまたま大きいだけじゃない。お先に」


立ち去ろうとした途端、間の抜けた声が背中に当たって足を止めさせられた。

「へー…本当にシッポが炎なんだ。ボディガードにもぴったりだね。触っていい?」
「いいけど、火傷しちゃうわよ。私みたいに♪」
「女の子のそういう言葉には慣れてるし痛い目見てるよ。……ボクはホントに何もしてないのにさ……何でだよ……。フレイム、今日からよろしくね」
「……………」
「大丈夫だよ。君をケガさせたりなんかしないから。良い子だね…大人だったらごめん」

じーっと見つめるサラマンダーの目が単なる好奇心だけに見えないのは私が人間でメイジだからだろう。
って…

「ちょっと、触ったりなんかしたら…!!」
「平気平気。鍛冶師の手袋は溶けた鉄に触る事だってあるんだから。……熱いのに硬い鱗かぁ…みっちり詰まってるのは断熱性を高める為なのか逆なのか…良い鱗だね」
「良い手袋ね、譲ってくれないかしら?言い値で構わないわよ」
「良いよ、まだ代わりがあるから。その代わり決闘の後でボクの頼み事を聞いてもらうけどいい?そんなに無理は言わないつもりだから」
「喜んで。フレイム、これであなたに触ってあげられるわね」

パチパチと鋲を外すとあっさり外して手渡す。

「決闘?何の事?」
「あー、やっぱりその事は……ってさ、2人とも授業はいいの?」


あ。



257:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 16:45:10 AglPlLxi
支援支援


258:虚無の鍛聖  第3夜 決闘の昼のその前に  (シュガレット)
08/08/03 16:48:45 zUYQo6fa
私が辿り着いた時にはすでに授業は始まっていました。ドアが開いていなかったので、はしたないですが仕方なく窓から入る事にしました。
教室は石造りの巨大な会議室を2つに割った大きな空間、その前の中心に教師が立って教える、と言う感じの場所でした。
あちこちに私の知らない生き物達が沢山います。それらの生き物達の力を観る限りは全てがこの世界の中に生まれ出てきた命だという事が感じ取れます。
お話の中では知っている生き物達も沢山いて、それらが楽しそうに話しあっているのは多分人間には聞こえてはいないでしょう。
あるいは、主従契約とやらを結んでいる関係なら別なのかもしれませんが。

「クリュウ様、ルイズさん、遅れて申し訳ありません。先生にも授業の途中で入ってしまった事をお詫びします」
「話は聞いています。あなたが精霊のシュガレットね。使い魔達と一緒にいてくださるとありがたいわ。さて授業に戻りますよ、みなさん、静かになさい」
この世界では精霊は余程珍しい存在の様で、私を下に置く事をしようとしない人が大半です。魔法や精霊とて、たかが世界のルールや存在の1つに過ぎないというのに。

「待って下さい先生、精霊と仰いましたが彼女は本当に精霊なのですか?もしそうだとしたらむぐ!?」
「だからと言って授業を疎かにするなど許されません。貴方はそのままで授業を受けなさい。良いですね、ミスタ・マリコルヌ」
彼と同じようにざわついていた生徒さん達の口に赤い粘土がへばりついて教室があっという間に静かになりました。
クリュウ様はといえば、階段状になっている通路で何か腕を動かして書いている。……多分日記でも書いてらっしゃるんだと思いますが何をしているのやら。
見渡せば、皆さん1人残らず短い棒を持っていらっしゃいます。昨日も見かけましたが、この世界では魔法の発動に必須な発動体の様ですね。

「では『錬金』の魔法を覚えてもらいます。1年生で覚えた人もいるでしょうが、基本に忠実にもう一度覚えてもらいましょう。いきますよ」
呟いて杖を振るうと、机の上の石が眩く輝く鉱石に…あー、でもあれは・・・あー・・・
多分素人さんには分からないでしょうけど、やはりと言うか何と言うか。先生も人間で女性と言う事なんでしょうね。
「お、黄金ですかミス・シュヴルーズ!?」「真鍮だよ」
身を乗り出して驚いたキュルケさんにクリュウ様が間髪入れずに言いました。…言ってしまったと言うべきですよねこの場合。

「……その通り、これは真鍮ですよ。『土』系統の魔法は―――――――」
すみません先生。クリュウ様は悪くないんです。ただ場の空気を読む事が苦手なだけなんです。
やや気落ちしてしまったシュヴルーズ先生の話が長かったので後ろの方にいた髪を縦に螺旋状にしたお嬢様の(全員貴族である以上は以下略ですが)子に要約してもらうと
・魔法には土水火風の4つの系統があり、始祖ブリミル以来使われた事の無い『虚無』という系統の魔法の系統によって魔法が確立している事。
・土系統は物体の組成や変化に最も関わるモノであり、ゴーレム等を始めとして建築や農業など社会や生活の基盤に関わる
・水系統は水そのものを操る他に生物の体内に作用して病気やケガを癒したりと生命に深く関わり、自分も水系統を学ぶメイジだと言う事。
・風系統は風を操るだけに限らず、速度を強化させたり、分身を作りだしたりと風自体よりそちらの発展形を用いるメイジが多いのだと言う事。
・火系統は戦いに向いた系統であり、何かを作り出す事は出来ないモノであり、ほぼ炎を扱う事に終始していると言う事。
・幾つ系統を扱えるのかによりメイジとしての強さが決定すると言う事。系統を足す事によって魔法を強化出来るのがその主な理由。
・1つの系統ならドット、2つならライン、3つならトライアングル、4つならスクウェア。虚無を使える人はいないのでペンタゴンはいない。


259:虚無の鍛聖  第3夜 決闘の昼のその前に  (シュガレット)
08/08/03 16:50:53 zUYQo6fa
私にとって最も気になったのはやはり土の系統でした。リィンバウムでしか手に入らない鉱物ならともかく、それ以外なら作り放題というのはイコール元手タダという事。
何て言うか、詐欺ですよね。実力でやる事ですから加工や品質はその人次第である事は理解できますけど…
そういう能力って生まれで大差がつく事もあるじゃないですか。後から努力したんだーとか言った所でオンリーワンがナンバーワンに勝てる理由にはなりませんし。

そういうの、私は嫌いです。どれだけの精霊が許しても、神が望もうが魔王がそれで世界を満たそうが、私はそれを望みません。
たとえそれをクリュウ様が望もうと。…無論その様な意志が無いからこそクリュウ様と護衛獣として契約したわけですが。
初めから力を持つ者など、全ての世界において不要なはず。  
そんな世界が存在しなければならないとすれば、それは創造主が元々創造主足り得るだけの格の無い出来損ないである事以外に理由はあり得ません。

と。私を使い魔である生き物達がギョッとした目で見ているのに気付きました。……ちょっと本性の姿が見えかけてしまっていたみたいです
私の2つ名は妖姫。聖と魔、どちらかと言うまでもなく魔の側に属するモノであって、そう見られてしまうのも仕方ない事なのですがちょっとショックです。
話しを聞き終えた私は教室を見渡せる後方の吹き抜けの窓に腰かけて授業を見る事にしました。これならクリュウ様の行動も見ていられます。

「―――――待ってくださいミス・シュヴルーズ!!彼女は!!」
「何ですミス・ツェルプストー。静かにしていなさい」

キュルケさんが少し慌てた様子で叫んで先生にたしなめられました。
何だか嫌な予感がします。 生徒のみなさんが机の下に潜ってます。でも地震が起きるような場所には見え―――――――――――?



260:虚無の鍛聖  第3夜 決闘の昼のその前に  (クリュウ)
08/08/03 16:52:41 zUYQo6fa
――――――ごがっ!!!!

爆発があった。爆音もあったはずなんだけどそんなものは聞こえなかった。耳には届いたんだろうけど頭には届かなかった。
先生の後ろの壁が爆風を受けて吹っ飛んだせいでその破片が飛んできたんだ、と気付いた瞬間思わず身体が反応してた。

ボクの体重の5倍はあるだろう重さの瓦礫の塊が向かって来た途端、瞬間的に左手で腰の剣を抜いてしまっていた。
自分に驚く間も無く跳躍して生徒達に当たらないように瓦礫を斬って蹴り上げたり弾いたりを繰り返した。我ながら人間やめてるよね。どうしてこんなになったんだろ?
自分としては初めて地下迷宮に潜った時から取り立てて特別な事をしてるつもりなんて欠片も無いのに。まあ、ちょっと危ない事も多かったのは認めるけど。
爆発が1発で済んだせいかそれで気を抜いてしまっていた。

「荒れ狂い、そよぎ、巡るままに、吾の言霊と共に渦巻け――――ウインドストームッ!!!!」

聞き慣れているはずなのに、聞き惚れてしまうような研ぎ澄まされた水晶よりも澄んだ鋭い声。
その声と共に粉塵と瓦礫が翠色の巨大な螺旋に一纏めにされて壁の大穴へと飛び出していく。竜でさえ引き下がらせてしまう魔法なのだからそれくらいは容易い。
爆発の中心地には爆風で吹き飛んだせいで気絶したらしいちょっと焦げたルイズさんと壁にぶつかってやっぱり気絶中のシュ…ナントカ先生。

「ごめん、シュガレット。そっちの子達にはケガはない?」
「まったく、気を抜いちゃ駄目じゃないですか。「大技よりも怖いのは小技」ってクリュウ様が自分で言ってる事ですよ?こっちの子達には何もありません、大丈夫ですよ」
「そっか、良かった。ルイズさーん、先生ー、大丈夫ですかー?」
「……完全に気絶しちゃってるみたいですね。普通の人間なら耐えられるものでもありませんし」
苦笑するシュガレットを机の下から這って出てきた生徒達が見上げてた。何て言うか、憧れと言うよりも神様に祈るみたいなみっともない情けない顔で。
口々に何か言ってるけど、聞く気になんかなれない。ああいう顔した人間が言う事は大抵決まってるんだから。

旅に出てからああいう顔をした人間を何度も見たけど、1人もロクな人間なんていなかった。中には人殺しな上に罪の意識を感じてない人間までいた。
勇者や英雄、聖女に聖人、魔王だの悪魔だの言われる人間がいるのは別に構わない。本人達がそうしたかったからなのかどうかも別に知った事じゃない。
けど、それを勝手に評価する周囲の人間やそれを聞いて勝手に囃し立てる人間は好きになれない。無責任どころか彼らの責任までその人達に被せられるのが許せないから。
唯一正しい正義なんか無い。犯罪者を捕える方だって相手の希望と人生奪うんだから同罪なんだ。勝手なルールでその人達を排除したいだけじゃないか。
英雄何て呼ばれてる連中が自分のやり方を正しいなんて思っていたら…もしそんな人間がいたなら迷いなく斬り捨てる。そうするのがその人の為でもあるって思うから。
考えを変えていくから人間なんだ。変えない想いがあったとしても、その人間は変わっていかなくちゃ、って言うのがボクの考え方。
だからこの考え方も変わっては行くだろうけど、でも多分この子達がしている様な醜い憧憬の顔は―――――きっと死ぬまで好きにはなれない。



261:虚無の鍛聖  第3夜 決闘の昼のその前に  (クリュウ)
08/08/03 16:55:01 zUYQo6fa
「助かったわ。カッコ良かったわよ、クリュウ!!」

いきなりパン!と肩を叩かれた。背の高い綺麗な長い赤毛と短くて青くて小さい背丈。
キュルケさんは興奮しているのか顔の色が髪の色に近い色になってる。タバサは逆に変わらずに涼しい顔のまま本を読んでた。

「すごいじゃない、あんなの風のメイジにだって出来るのは少ないわよ?それにあっちの子だってあんな魔法ラインのメイジにもそうそう出せないわよ?」
「シュガレットがすごいのは認めるけど、ボクはそんな凄い事なんてしてないよ。2人ともケガは無かった?使い魔の子達は大丈夫?」
「ええ!!…そんな顔しないで。この世界では精霊が特別に見られるのは仕方ない事なのよ。トリステインもメイジ至上主義だものね」

・・・そうじゃないんだけどな。

…ボクも汚くなったな、って思う。曖昧に笑ってごまかすなんて、友達同士や分かり合ってる相手にしか、しなかったじゃないか。
ルべーテさんの気持ちが今なら少しだけ分かる。…自分の思うがままに心のままに振る舞う為にはチカラが必要なんだって事だ。偉くなって力を入れて、何が欲しい?
―――――結局、自由が欲しいんだ。呆れかえるほどのお金や食べ物に豪華な生き方。そんな物、意味の無いただのオマケでしかないんだ。
自由に生きたいという気持ちを満足させたい。それは我儘で汚くて卑怯で卑劣で………でも何より人間らしい純粋な気持ちなんだ。それは否定なんてしちゃいけない。
だから争いは起こってしまう。全ての人が、生き物が幸せに生きる事なんてそれこそ絶対に無理なんだ。そう感じる世界があるとしたらそんなの狂ってる。
だけど、それはそれぞれの命が求めるものなんだ。何かに頼っても意味なんか無い。大勢でやったとしても…そんなの幻だ。
そうして気付いていても止められなかったのが過去のリィンバウムで起きた戦争。どの世界でも人間の様な心を持つ生き物がいる限り起きる戦争なんだ。
……あれ?考えがずれてきちゃったみたいだ。……やだなぁ、もう。大人になるって事がこういう事なんだとしたら本当に生きる事って試練なんだね。

「クリュウ?」
「え?あ…うん。ちょっと考えちゃった。ボクも学校に通ってたら色々考える時間があったのかな、なんてね。…あーあ、どうしよう、これ」
「………。瓦礫は殆ど飛んでいったから、ルイズが説教されて終わりでしょうね。それはそうと講義が潰れたし、お昼を一緒にどうかしら?」
「気持ちは嬉しいんだけど、ごめん。マルトーさんにみんなの昼食の手伝いするように頼まれてるし」
「・・・・・・決闘がある」
ボソリと呟いてすぐに本に目を戻すタバサ。そんなに本が好きなのかな?…って以前なら思えたのに。

「先生達にそう言われちゃったから断りようが無くって。ルイズさんに認めてもらう為にもそうするべきだし、逃げても逃げ切れないだろうから」
「帰る方法なんてすぐに見つかるわよ。逃げるとか考えず気楽にしてたらいいのに」

今の彼女みたいな、こんな優しいウソばかりならいいのに。


262:虚無の鍛聖  第3夜 決闘の昼のその前に
08/08/03 16:58:25 zUYQo6fa
「シエスタさん、お手伝いに来ましたよー!」
「約束通り来たよー!!」

2人の声が同時に厨房に響くと2人にとっては馴染みのある、この国にしては珍しい黒髪の少女が出てきた。背はそこそこなのに発育がかなり良い。
・・・が、

普段から露出が多いのに発育を遂げてきているパートナーのシュガレット。
ちょっとだけクリュウより年上で姉譲りのスタイルの良さになった赤い髪のサナレ。
姉妹揃って美人でスタイルも文句無しのクリュウの前でのみ伊達メガネを外す双子のハリオ(姉)とへリオ(妹)。
数年前には考えられなかった有り得ない胸や腰の発育(byサナレ)を遂げたクリュウを兄と慕う小麦色の肌の少女のラジィ。

・・・以下省略。

そんな周囲が存在する中で(彼としては一切恋愛感情抜きに)過ごして来たクリュウにとってシエスタは「可愛い給仕服を着た女の子」という位置づけでしかない。
付け加えると「可愛い給仕服」であって「給仕服を着た」「可愛い女の子」ではない。
どうやら数年前のとある一件で彼の中で「給仕服=可愛い」とイメージ付けがなされたらしい。同様に他の件とも合わせ「ギャップ萌え」という嗜好にもなったらしい。
女性と言うのは恐ろしい物で、あっという間にそれは彼の与り知らぬ所で共通認識となり激しい鬩ぎ合いがあったのだ。
シエスタがそんな理由を知らぬが為にシュガレットも彼女を敵視したりせず良好な関係を築きつつある事をクリュウは知らない。
閑話休題。

「正午までまだ時間がありますからよろしくお願いしますね。クリュウさんは食堂で食べ終わった方々のお皿の片づけをお願いしていいですか?
私とシュガレットさんはデザートを食堂に出すという仕事になるのですが……いいでしょうか?」
「何遠慮してるんですか。任せて下さいシエスタさん!きっちり仕事を終えて正午までに終わらせましょう!!」
「そうですね、頑張りましょう!!」
そんなわけで、やたらと気合いの入った女性2人と

「じゃ、頑張るかな」
それとは対照的に長期休暇の課題をやる学生が如く諦め半分な表情(残り半分は今になって睡眠不足の影響が出たせいで眠くなってきた顔)の青年
それぞれがそれぞれの用途のカートを掴むと食堂へと出て行った。
なお、ルイズとシュヴルーズの2人はまだ医務室で香ばしい匂いをさせたままである事を述べておく。決して忘れていたわけでは無い。          一応。

しゃかしゃかじゃかしゃかしゃかしゃか・・・
「量があると大変だよねー」
つまらなそうにざかざかと皿を積み上げてはカートに入れていく。元々凝り性なのだ、彼は。作業的に何かを延々とする行為は彼にとって退屈でしかなかった。

彼にとって「は」。

「何なのアレ……さっきの男の人よね?」
食後の紅茶を楽しみながらボンヤリと優雅な空気を味わっていた縦ドリルことモンモランシ―は高速で動くカチャカチャ音に目を向けた。
何か動いてる。高速で皿が積み上がってはカートに乗せられる事が繰り返される。
空腹を満たした胃に血が行ったせいか、あまり考える気になれなかったので考えない事にした。

その彼の向こうにギーシュがいたのだが、モンモランシ―は騒ぎが起きるまで意識を向ける事なく紅茶を飲み続けた。
相変わらず自分の知らない女の子を引っかけているらしい彼の頭をどうやって冷やしてやろうかとボンヤリ考えながら。

【ツヅク・・・】

263:虚無の鍛聖
08/08/03 17:00:10 zUYQo6fa
以上です。支援してくれた方ありがとうございます
批判も受け付けます。それではまた。

264:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 17:01:23 AglPlLxi
乙でしたぁ。次回も楽しみに待ってます。

265:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 17:03:39 4rdfbbyN
乙でしたー
ギャップ萌え合戦って…なんか物凄く壮絶な争いに発展しそうな気がするのは自分だけだろうか…。
傍から見てたら笑えるを通り越して怖いかもw。

266:蒼い使い魔
08/08/03 17:05:58 w2XyNNti
お疲れ様です、
投下は…20分頃にいたそうと思います

267:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 17:07:44 34A3eAN3
今日は多いな
特に鋼の人乙
おもしろいし提督終わった今、楽しみなのは
元ネタわかるあなたの作品だけだわ
にしても足に仕込むのは某兄貴を彷彿させるな

268:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 17:11:09 vZxd8g7C
鍛聖の人乙。

269:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/03 17:11:10 bN1rlo3p
バージルさんが来る!支援の用意だ!!

270:蒼い使い魔 第十一話
08/08/03 17:21:01 w2XyNNti
―フッ…
突如タバサの視界からバージルが消える
「…っ!?」
ズガンッ!一瞬でタバサの上空まで間合いを詰めたバージルのヘルムブレイカーが襲いかかった。
一瞬バージルを見失ったものの上空からの凄まじい殺気を感じ
横へ転がるように避けたタバサはすぐさま魔法の詠唱へと移る
「エア・ハンマー」
かつて彼を昏倒させた魔法を使う、今回は昏倒とまでは行かなくとも距離を取るつもりで放つ
バージルは即座に反応、閻魔刀を抜き放ち魔力が込められた空気の塊を両断、
両者の間に大きな風の流れが巻き起こった。
タバサはフライを使い距離を取りつつ次の魔法の詠唱へと入る、
その隙をバージルが逃す筈もなく、デルフに魔力を込めタバサに思いっきり投げ付けた
「いやあああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
広場にデルフの悲鳴が木霊する、回転しながらすっ飛んで来るデルフを何なく躱し、
次の動作に入ろうとする、が
「……ぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!!」
後ろから戻ってくる悲鳴を上げる剣にすんでの所で気が付き杖で受け流す。
ガキィン!という音とともにデルフは宙を舞いバージルの手元に吸い込まれるように収まった
「あ、あぶねーな相棒!いきなりぶん投げるなんて!」
「黙れ、貴様が叫ばなければ決着はついていた」
杖に固定化が掛っていなければ戻って来た剣に杖ごと真っ二つにされていただろう。
手にはまだしびれが残っている。


271:蒼い使い魔 第十一話
08/08/03 17:21:36 w2XyNNti
「Humph, What's wrong? "―フン、どうした?"」
「ウィンディ・アイシクル」
バージルの挑発に反応するかのように魔法を放つ
多数の氷の槍がバージルに襲い掛かる、バージルは閻魔刀を使いそれらを叩き落とす、
その様子を見ながら(?)おずおずと背中のデルフが話しかける
「あ、あの~相棒?」
「なんだ」
「俺っちもそれに似たようなことが出来ることを思い出したんだけど…使う気ない…」
「ない」
そう冷たく言いながら全ての氷の槍を叩き落としたバージルはタバサに向かいスティンガーを突き放つ。
「エア・ハンマー」
バージルがスティンガーを放つのと同時にタバサも魔法を放つ、
空気の塊とデルフが激突する、すると空気の塊がふっとかき消え、勢いの衰えぬスティンガーがタバサに襲い掛かる
「!?」
自らの死を覚悟したタバサは杖をぎゅっと握り締め目をつぶった、
―ズガンッ!と激しい音とともにタバサの身体が杖と共に木の葉のように吹き飛ばされる
地面に強かに打ちつけられ意識を手放しかける。
「くっ…かはっ!」
激しい衝撃とともに全身に痛みが走る、だがなぜか死んではいない、仰向けになり霞む目で杖を探す、杖は運よく手を少し伸ばせば届く場所に落ちていた
右手を必死に伸ばし杖を取ろうとする、が、バージルがタバサの腕を踏みつけそれを阻止した、
「ぁうっ…」
無言のまま閻魔刀を抜き放ちタバサの首に突き付ける、少しでも妙な動きをすれば斬るつもりだろう。
バージルの眼はゾッとするほど冷たく感情などまるで窺うことが出来なかった。


272:蒼い使い魔 第十一話
08/08/03 17:22:19 w2XyNNti
「愚かだな」
ギリッと右腕を踏む力が強くなる、
「うっ…!」
「愚かだ」
「っ…!」
「力なくては何も守れはしない」
ゴキッ!骨が砕ける音が広場に響く
「あぐっ!!!」
「―自分の身さえもな」
年端もいかぬ少女の腕をへし折りながらバージルは呟く、
まるで自分自身に言い聞かせるように…。

その言葉が終わると同時にタバサは意識を手放した。

「おい相棒…いくらなんでもやりすぎなんじゃねぇの?」
閻魔刀を静かに納刀するバージルにデルフが話しかける、
「この女から仕掛けて来た、降りかかる火の粉を払っただけだ」
「でもまさか腕折っちまうなんてな…、あの突きで娘っ子の杖を狙った時はいいとこあるとおもったんだがねぇ。
相棒はやっぱり正真正銘の悪魔だよ…」
「フン…ところで、あの魔法どうやって消した」
「あぁ、あれか、俺、あのくらいの魔法なら吸収できるのよ、だから激突した瞬間消えたワケ、
使う気ないとか言っといてしっかり使ってくれちゃって、俺っちうれしくて泣きそうだったぜ!」
「黙れ」
そう言いながらバージルはコートを翻し広場を後にした。
「(この女も…俺と同じ…)」
「ところで相棒、なんか落としたぜ?」
「…」


「う…うぐっ…」
バージルが立ち去ってからしばらくして、激痛にタバサが意識を取り戻す。
負けた、今まで数多くの危険な任務をこなし、生き残って来た
そんな自信があった、なのにあの男の足元にも及ばない。
今まで戦ってきた相手とは明らかにレベルが違う、
そもそもあの男はギーシュとの決闘時に使った幻影剣や居合を使ってはこなかった、
まるで手に入れたばかりの剣を試すかのように、遊ばれたのだ。
情けなくて涙が出る、感情を殺すと決めたのに。
「力…」
あの男が去り際に言っていた…

『―力なくては何も守れはしない、自分の身さえも』

そうだ、力だ、かあさまを守るために、復讐を果たすために力が欲しい
だが自身の持つ力は、あの男にまるで及ばない、だがさらに高めることは出来る
「もっと力を…」
そう呟き、右腕を抑えながら杖を取ろうと立ち上がる、ふと足元をみると緑色に光る石が落ちていた
なんだろうと思い緑色に光る星の形をした石を手に取る、おそらくあの男が落としていったのだろう。
「きれい…」
そう呟くと、―パリンッ!という音とともに砕け散ってしまった
すると光がタバサを包み、体の傷が癒えて行く、
砕けていた右腕の痛みも消えている、
試しに右手を動かして見ると痛みも感じないしなんの不自由もなく動いた。
「治った…」
タバサは信じられないと言った表情で広場に立ち尽くしていた。


273:蒼い使い魔 第十一話
08/08/03 17:23:03 w2XyNNti
翌朝
バージルが廊下を歩いていると部屋のドアが開き、中からタバサが出て来た。
バージルはまるでそこにはなにも存在していないと言わんばかりに通り過ぎる、
そんなバージルにタバサは声をかけた。
「昨日は…」
「……」
バージルは立ち止まるが振り向かずに話を聞いた
「ごめんなさい」
「……用は済んだか」
そう言うや立ち去ろうとするバージルにタバサは言葉をつづけた
「あの石は」
「フン、俺には必要ないものだ」
「そう…、私は…力が欲しい…かあさまを守る力が、復讐を果たす力が。」
かあさま、その言葉にバージルが少し反応する、
「やはり貴様も…俺と同じ…か…」
「え…?」
「いや、こっちの話だ」
そう言い残し、バージルは立ち去る、その背中を追うようにタバサも歩き出した。



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