08/07/06 15:07:47 vwx1PppV
鉄球姫エミリーより、エミリー姫を召喚とか
ル「ご褒美に体のどこか一か所を触らせてあげるわ」
エ「むう、それは困ったな」
ル「な、何を言ってるのよ。普段は触らせろ、撫でさせろ、揉ませろ、吸わせろって迫ってくるじゃない」
エ「いやな、おぬしは妾(わらわ)に体の一か所のみを責めてイカせろといっておるのだろ?
妾の指業をもってしても、その条件はキツイのでな」
ル「ななな、何言ってるのよ! そんな訳無い……」
エ「よいよい、みなまで言うな。つまり“ご主人様”は妾に『それぐらいやって見せろ』と言うてるのだろ?」
ル「いい、い、いや~~~!」
エ「お? 鬼ごっこも追加か? 面白い趣向だな。
さあ、待つがよいぞルイズ。ガハハハハ!!」
うん、ダメだ。
701:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 15:17:43 X2+ms9PG
>>694
じゃあアニエスやジュリオをギャグキャラにするのもありかな。
あの二人がルイズの魔法で黒こげになってるのは笑えた。
702:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 15:27:35 vyBVzSwS
ジュリオはそろそろただのイヤミキザから、真っ当なキャラの道に行って欲しいぜ。
703:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 15:37:26 wsJ28Mr0
原作がよりイヤミキザの道をひた走った上に
狂信者属性までくっついてしまったし、かなり無茶がきもする
704:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 15:41:24 vyBVzSwS
そのお陰か、SSでも滅多に見ないよな。
キャラとして使い道が無いから。
705:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 15:45:03 ivq1leUI
>ただのイヤミキザ
昔のギーシュか。もっとも彼はすぐギャグキャラの烙印を押されたが……
706:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 15:52:25 S5egGrU2
>>日食の帰還ルートとかざらにあるし。
それどころか、作品によっては「月食」でもOKであることを発見し、平賀一族みんな
ハルケギニアにやってきたり、地球側から最新兵器や工作機器・電子機器まで持ち込ん
んだり、果ては救出したタバサ母を日本の病院へ入院させる凄まじい話まであります。
もはやなんでもあり・・・ついにゼロ魔SSもここまで来たかとある種感銘を受けました。
707:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 15:53:11 wpSiD/CA
聞きたいんだが、「デルフ」って必要なの?
このままSSを書いていると、出番が無いんだけど・・・やっぱり駄目かな?
708:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 15:54:03 PoR2Jxlm
タバサママンにディスペルかけるとどうなるんだろうな
>>707
そっとしておいてあげても誰も文句は言わないさ
デルフだもの
709:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 15:55:44 wpSiD/CA
>>708
サンクス
書き上げたら投下します。
710:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 15:56:39 wsJ28Mr0
>>707
パワーバランスとしては、一般人と比べて強力な存在を呼んだら不要
虚無等の情報を語るキャラとしては、チートじみた洞察力とかで
呼んだキャラが虚無のことに気がつける、俺スゲーするなら不要
711:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 15:57:05 KmSsnBGg
>>707
その気になればデルフが剣である必要すらないよ。
712:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 15:58:16 vyBVzSwS
>そっとしておいてあげても誰も文句は言わないさ
>デルフだもの
なにこの胸にストンと落ちる名言。
713:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 16:02:26 wpSiD/CA
みなさん、返答有難う御座います。
714:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 16:04:24 R65yL9om
デルフも魔力吸収と使い手の操作だけじゃなくて他にも能力があればなぁ。
吸収した魔力を攻撃に転用できるとか。
あとデルフ内部の魔力を外付けバッテリーみたいにできるとか。
715:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 16:06:21 PLNT9G4a
デルフは「盾」の役割だからな
716:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 16:06:42 vyBVzSwS
デルフの知性レベルをちょっと引き上げて、アドバイザー性能を微妙に強化するとか。
717:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 16:09:34 LGseZCdP
ADAとか雪風くらいになればいいわけだな。
718:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 16:10:22 78JrVBDD
破壊の杖、シエスタのじいさんは変更するのにデルフだけそのままの設定にするのが多いのは何故なんだい?
719:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 16:10:57 wsJ28Mr0
最大の問題は、基本のデルフのスペックで物足りないよーなキャラだと
デルフのスペックを上げても、敵が居なくてオーバーキルになるだけなんだよな
720:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 16:12:37 KpO8JAW5
>>706
ゼロ〇才人か。
721:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 16:12:40 LGseZCdP
相棒をすてるなんてとんでもない
722:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 16:16:22 GHWM9qGz
>>718
正確なルーツがまだ明らかになってないからじゃないか?
どう作られたのか、誰に作られたのか、という情報が原作に出てくれば、そこをいじる作者も出てくるんじゃないかね。
723:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 16:22:33 JiDCZdMT
>>718
デルフはアイテムというより登場人物っぽいからじゃない?
724:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 16:24:37 lka1AIpN
つまりゼロの使い魔からデルフを召喚するんだね?
725:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 16:25:37 wsJ28Mr0
そういえば、ブリミルや初代ガンダは情報が出たのに
デルフの過去はマジさっぱり出てこないんだよなー
と、いうか最新刊で出番削除と言う涙目なことにw
726:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 16:25:37 pErChso6
ディセプティコン・ゼロやゼロの蛮人ではデルフが大活躍しているぜ
727:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 16:28:57 cN7H/gZa
登場した瞬間に消滅した話もあったなぁ。
728:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 16:29:17 PLLBuPXn
>>723
才人「・・・・・・・・・・・。」
729:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 16:31:09 8jVC8ybc
お前はキャラ交代対象の筆頭だからw
730:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 16:32:34 cN7H/gZa
>>723
しゃべるだけで、一見ありふれた物体じゃないと困るからじゃね?
基本的に、ハルケギニア謹製の物体だし、明らかなオーパーツだとアカデミーがほっとくわけないし。
731:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 16:35:04 PoR2Jxlm
>>727
この物語に、インテリジェンスソードの長刀は 登場しない―。
ほんとは一種登場してたけどな
732:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 16:37:08 78JrVBDD
>>723
なるほど・・・つまりシエスタのじいさんとそれに伴うシエスタの変更が多いのは・・・
登場人物ではなくアイテムだからなのかーーー!!
733:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 16:37:09 vyBVzSwS
>>718
一巻丸々台詞無い場合もあるけどレギュラーキャラだからじゃね?
基本的な人格維持したまま外見変更パターンもあっていいかも知れないが。
734:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 16:40:10 S5egGrU2
>>720
>ゼロ〇才人か。
yes
735:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 16:40:57 OTw5XM0N
破壊の杖、シエスタの爺さんは召喚キャラ世界由来だからまだ改変はアリかもしれんが、デルフリンガーは現状ハルケ生まれハルケ育ち。それを改変アリならこのキャラも…とかなって「ゼロ魔蹂躙SSキエロ」で荒れる気がする
>>674
ファミコン版のタッチ程じゃあないな
736:ゼロの旋風
08/07/06 16:48:22 S5egGrU2
少々予告
実は、デルフの能力の内、魔力吸収能力については今後大いに活用させていただく予定です。
あと、それと関連して、ロングビルこと「おマチ」姐さんのゴーレム形成能力も…
とにかく今週中にはなんとかUPする予定ですので、ご期待を。
ゼロの旋風(ブラスターキッド)
737:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 17:22:42 PoR2Jxlm
デルフといい地下水といい
持ち主の体操るわ魔法吸収するわ魔法唱えるわで滅茶苦茶ハイスペックだよな
738:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 17:39:50 HD/dmhWi
>>737
デルフも地下水も世が世なら「勝利すべき黄金の○」や
「無○祭祀書」クラスの伝説のアイテムなのでしょう きっと
739:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 17:41:36 vqCSqhdb
>>737
GS美神の世界の住人からみれば剣にとりついた悪霊にしか見えないよな
740:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 18:01:00 NTOkQAqx
>>707
ギーシュ名前だけ
シエスタ出ない
破壊の杖でない
フーケ一瞬
デルフなにそれ?
な作品もあるんだし、作者の好きにすればいいと思うよ
がんばれ
741:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 18:16:01 oGCughIu
てか、短編書くときにはデルフに出番がないのを落ちに持って行ったりするしな。
742:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 18:18:24 nSIo4X+7
>>707
面白ければいいんだよ
むしろ出して不自然になる流れなら出さないほうがいいんだよ
743:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 18:24:03 rs0ws+nF
考証がしっかりしていて
ヘイトにもなっておらず
投下ルールをしっかり守っていても
面白くなきゃアレだな
むしろ頻繁に投下とかされると無能な働き者ぽくてアレだ
逆に面白ければ正義だけれど、投下ルールは守ろうな
744:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 18:37:32 XZ/30dxg
二次創作の様式と言っても、まずその前に「読み物」としての質が大事だからな
745:鋼の人 ◆qtfp0iDgnk
08/07/06 18:42:46 KmSsnBGg
さて、札幌は暑い…
ゼロ魔が10巻までそろったや。全巻持たないで書くのはやっぱり危険かなぁ…
それはともかく、書けたんだけどどうしようかな。
支援の名を知るもの来たれ(サガ違い
746:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 18:45:18 CJq5aTwe
よろしい。それでは支援だ
747:鋼の人 ◆qtfp0iDgnk
08/07/06 18:47:06 KmSsnBGg
んでは、きりよく50分から投下します。
748:鋼の使い魔 ◆qtfp0iDgnk
08/07/06 18:51:07 KmSsnBGg
土くれのフーケ襲撃事件から、既に半月が過ぎようとしていた。
舞踏会の翌日からギュスターヴを待ち受けていたのは、厨房以下奉公平民衆からの惜しみない賞賛の声だった。
特に懇意にしてくれた料理長マルトーは、顔を真っ赤にして喜んでくれた。
「すっげぇじゃねぇか!ギュス!貴族が息巻いて追いかけてたような盗賊を捕まえるなんてよ!」
朝食をもらおうと厨房にやってきた瞬間、歓声とともに駆け寄ってきたマルトーの声と抱擁に驚いた。ギュスターヴは気持ち逸るマルトーを一度なだめて話す。
「捕まえたっていっても、俺は手伝っただけさ。一応、使い魔だからな」
「何言ってやがる。前にも貴族に喧嘩売られて返り討ちにしてたじゃないか」
「あれもまぁ、まぐれみたいなものさ。魔法ってどんなものかわからなかったし」
マルトーの言葉にあくまで謙虚に答えるギュスターヴだったが、マルトーの脳裏ではどうやら別の解釈で刻まれたらしい。
マルトーは振り返って厨房を見渡すようにして声を張った。
「お前達、聞いたか!ギュスは俺らと同じ平民だが、貴族にも負けねぇくらい強い!だのに手前を自慢したりしねぇ!見習えよ!」
「おっす!」
マルトーの言葉尻にくっついてマルトーの弟子達が応える。
ギュスターヴがこそばゆい気持ちを味わっていると、やはりマルトーがギュスターヴを引いて食堂のテーブルに着かせた。そこには他のテーブルとは違い、一品だけ、
貴族向けに出されるメニューにも負けない彩りが盛られた皿が置かれていた。
「ギュス。これは俺からのプレゼントだ。マルトー特製ガリア牛のテールスープよ」
魔法学院の食を一手に引き受けるマルトーが、食堂に通さない雑肉の中から最も美味と考えているテール部分を選び、一晩煮込んで作った極上のスープである。
テールから溶け出した旨みが一緒に煮込まれた野菜のエキスと組み合わされ、スープの水面に映る様だ。
ギュスターヴとしては嬉しいものの、困惑を隠しきれない。
「マルトー。気持ちはとても嬉しいが、俺一人でこれを食べるのは忍びないよ。他の皆はいつものメニューじゃないか」
「ギュ~ス、だから言ってるだろう?これは俺からお前への贈り物よ。お前さんは貴族様のせいで何処とも知れねぇところからこんな場所に呼ばれちまったくせに、
俺らでも出来ないような大手柄を取ったんだぜ。それが、俺にとっては何につけても嬉しいのよ。だからよ、あれこれ言わねぇで喰っちまえよ!」
バンバンとギュスターヴの背中を職人の掌で叩くマルトー。その表情は快晴のようである。周りに座る厨房の皆も同じように、ギュスターヴを見ていた。
ギュスターヴはスプーンを取って、スープから掬った。解けたテール肉とスープを盛り、口に入れた。
「…どうよ」
マルトーはギュスターヴの言葉を待った。料理人としての誇りを賭けた一皿である。
ギュスターヴは口の中で柔らかな肉とスープを良く味わってから、ゆっくりと嚥下した。外目に見ても判るほど。その間の沈黙が、マルトーには長く感じられる。
「……美味い。とても美味いよ。こんな美味いスープは初めてだ。こんなご馳走もらって本当にいいのかな」
微笑み混じりに応えたギュスターヴ。マルトーは感極まって涙交じりに笑った。
「おお!ギュ~ス!その一言が嬉しいぜ!俺はお前にキスしてやるぜ!」
「おいおい…」
厨房が暖かな空気で満たされた時だった。
『教える者、教えられる者』
749:鋼の使い魔 ◆qtfp0iDgnk
08/07/06 18:52:51 KmSsnBGg
そんな具合に、ギュスターヴは学院に奉公する平民達から『我らの剣』と呼ばれて祭り上げられた。
担ぎ上げられるのは人生経験として慣れた部類とて、本人としては掛け値なしに喜べないのが苦しい。
しかしながら、そんな周囲からの評価が上がっていく割に、ギュスターヴはあくまでルイズの使い魔らしく、ルイズの部屋角に寝泊りし、ルイズを起こしたり、
部屋を掃除してみたりするのが日課だった。初日に窘められて以降、流石にルイズも服をもってこい、服を着せろ、などとは言わなくなった。
言えなくなったというのが正しいかもしれない。
授業を受けながら、ルイズはぼんやりと己の使い魔である男のことを考えた。
(ギュスターヴ、私の使い魔をやってくれる、って言うのは素直に受け取るわ。とりあえず身の回りの世話はそれなりにするし、護衛としてはこの上ないくらい有能だし。
…でも…持て余すっていうのかしら?歩に合わない感じがしてならないのはどうしてだろう…)
ルイズは自身が一人前のメイジではない、という自覚から逃げられない。それはギュスターヴの忠勤ぶりを見るほどに深まり、人知れずルイズの苦悩を深めた。
座学はともかく、実践が伴わないのが一層その事実をルイズに刻み付ける。
知らずに漏れるため息が何度目かになったとき、自分の机の横に誰かが立っているのに気付いた。
「授業はもう終わりましたよ。ミス・ヴァリエール」
「ミスタ・コルベール…」
講義を済ませ教室の後片付けをしようとしていたコルベールは、授業が終わっても席を立たずにいたルイズに声をかけたのだった。
「質問をしてよろしいでしょうか。ミスタ・コルベール」
「なんでしょう?」
「なぜ私の魔法は失敗しかしないのでしょうか。それに失敗するとなぜ爆発しかしないのでしょうか」
ルイズの記憶がさかのぼる。この質問は今まで何度、口にしたのだろうかと。たぶん初めは母に、ついで父に、一番上の姉に、二番目の姉に、そして家庭教師にも
したはずだった。
二番目の姉以外は、着せる衣は変わっても、内容は同じだった。『練習が足らない』と。
だからいつからか、そんな質問をするのはやめてしまったのだが、ふと、この一見冴えない教師に問うてみたくなった。
コルベールはそんなルイズを見て、一度呼吸を吐いてから、応えるべく努めた。
「……そうですね。使い慣れない魔法、或いは属性が合わない魔法を唱えれば失敗します。それはメイジの上達過程では必ず起こりうることです」
「しかし私はどの属性の初歩を使おうとも失敗します…」
「判っていますよ。しかしですね、ミス。この世に属性が4つだけ、とは限らないでしょう?いえ、虚無を合せれば、5つですか」
驚愕がルイズを包む。
「驚かれましたかな?学院に勤める教師ともあろう者が、始祖より受け賜りし魔法が他にあると、六千年の間に未だ知られぬ属性体系が存在するのではないかと、
そんなことを言う」
「え…えぇ…」
「つまり、そういう考え方もあるということですよ。何故と思うなら、前提を捨てなさい。その方が考える選択肢が増えますぞ」
目元に皺を作ってコルベールは笑いかけた。
「同じ事が失敗の爆発にもいえますぞ。確かに四属性の魔法失敗は、不発動で終わるものです。であるなら、四属性を選択肢から除外するだけです。
そこから先の選択肢は、自分で見つけるものでしょう」
「……見つかるでしょうか」
「それは貴方次第ですぞ。少なくとも、失敗しか起きないからと周囲と壁を作っていた頃よりは、幾分かマシな質問をしてくれて、先生はうれしいですぞ」
教師らしからぬ毒気が混じった言葉にルイズはたじろぐ。
「…少しは生徒を労わってくれません?」
「いえいえ。向上心のない人こそ労わるものです。貴方は自分で進めるでしょう」
「…はい。頑張ってみます」
要はなりふり構っていられないのだ。失敗の爆発をコントロールして使おうとしたのもそういう意味では間違いではなかったのだな、とルイズは
少しだけ自分を前向きに見ることが出来た。
「助力は惜しみませんぞ。……っと、そうでした。ちょうどいい。ミス・ヴァリエール。貴方にお願いがあるのです」
「お願い…ですか?」
そう言うコルベールの目は、教師の目から研究者の目に変わっていた。
750:鋼の使い魔 ◆qtfp0iDgnk
08/07/06 18:53:59 KmSsnBGg
同じ頃、学院付属図書館の一角。
小さな机に連ねて二つの椅子に、一方には短く揃えた蒼髪の少女が、一方には背が高く立派な体躯の男が座り、二人で一冊の本を読んでいた。
「『雨はまだやみません』…と、これで読了だ」
「合格」
本を机に置いてギュスターヴはうんと背を伸ばした。
ギュスターヴがタバサに字を習い始めて暫く経つ。今日はテストと称して、500語ほどの短文を読むように指示されたのである。
「とりあえず、ある程度読めて、数字と名前くらいは書けるようになったかな」
机には秘かに持ち込んだ紙とペンが置かれ、ハルケギニア語で書かれた数字と、ギュスターヴと読める一語が書き綴られている。
生徒の上達振りを確認した風情のタバサは、机に出していた本を持って棚に向かい、新たな本を持って戻ってきた。
「読んでみて」
それは今まで読んでいた本よりも装丁が甘い。木を使った表紙ではなく、紙と革をあわせたような感じで、比較すると一段下がる格式のように見える。
ギュスターヴは本を受け取り、表紙に書かれた題名を読み取ろうとした。
「ん……『十の角の家の倒し方』?」
首を振るタバサ、ギュスターヴから本をとり、指先で題名をなぞりながら応えた。
「『十角館の殺人』と読む。文芸が読めて理解できれば、あとは書くだけ」
教師としてのタバサは結構なスパルタであった。
陽が徐々に傾いてきて、図書館の人もまばらになってきた頃合に、ギュスターヴとタバサは図書館を出た。
行く先は広場の木陰。以前ギュスターヴの短剣を披露した場所である。
図書館の受付で預かられていたデルフがカタカタとしゃべりだす。
「しかしちびっこよー。おまえさんメイジの癖に剣使いたいなんてかわってるよなー」
タバサの手には鞘に収まったままの短剣が握られ、だらりと地面に向かって剣先が下がっている。
タバサは最初、剣のからくりを知りたくてギュスターヴの教師を買って出たわけだが、結局、剣自体には何のからくりもないと本人にも言われてしまった。
ならば、本人からその剣を習うことで何か秘密を知ることが出来るのではないか、というのがタバサの発想だった。
それは己に来るべき時のための力を身につけさせるという意味でも悪くない考えだった。
元々只で字を教えてもらうのに引け目があったギュスターヴは、タバサの提案を飲んだ。後にルイズにも確認を取ったが「あの子もかわってるわねー」と言ったきりで
特に咎めもしなかった。
しかしタバサが剣を使うにはいくつか問題があった。
まず、剣を振れないのだ。
普段タバサが使う杖は長大な代物だが、中抜きがしてあるため見た目以上に軽く、素材の木も丈夫な為問題はないのだが、ギュスターヴの短剣は
40サント程度の刀身とはいえ殆ど装飾のない鋼で出来ているため、実は見た目よりぐっと重いのだ。
そんな状態で、ギュスターヴがまずタバサに科した練習は、『剣に慣れる事』だった。
鞘にいれたまま短剣を貸してもらい、持つ。自分で鞘から抜いて構え、鞘に戻す。その動作がある程度自然に出来るくらいになるまで、毎日やって10日掛かった。
次に『剣を構える事』を現在、練習としてタバサはこなしていた。
本来片手で構える短剣を、タバサは小さな手先で両手に構えて立っている。
それをギュスターヴの指示する順番に構えを変えていく。上段、中段、下段、払い、けさ、突き、という具合に。
10セットもやっていると、タバサの額に汗が浮いてくる。雪風の二つ名の少女が熱い息を吐きながら紅潮した肌に汗を浮かす。
メイジが剣を握って四苦八苦している様子を広場の他の場所にいる生徒達は奇妙な目で見ていたのだった。
751:鋼の使い魔 ◆qtfp0iDgnk
08/07/06 18:55:37 KmSsnBGg
目標一日100セット。その合間に何度か休憩を取っていると、広場の出入り口から二つの人影が入り、木陰に向かって歩いてきた。
「やっぱりここでやっていたのね…っていうか、本当に剣習ってるし」
ルイズはギュスターヴの前で短剣を握って立っているタバサを見た。
「見所あるの?」
「人前で言う事じゃない。…と、コルベール先生、何か」
「そうよ、あんたにお願いがあるんですって」
ルイズがつれてきたのはコルベールその人だった。まだ天空にある太陽の光が広い額に照り付けている。
「はい。ミスタ・ギュス。以前から興味がありました、貴方の鎧についてなのですが」
「俺の鎧?」
「えぇ、是非ともお貸ししてくれないかと」
ギュスターヴは要領を得ない。
「何故俺の鎧などを」
「貴方がサモン・サーヴァントでこちらに来られた時に検分してからずっと興味が有ったのです。あれはトリステイン、いや、ハルケギニアの職工の手では
作られたものではございませんな」
瞬間、走る緊張。ギュスターヴがとてつもなく遠くからやってきたのは周知であるが、それが異界『サンダイル』というところであるのを知るのはタバサとルイズ、
それにオスマンだけである。
「えぇ、まぁ」
らしくなく曖昧に答える。
「ですので、後学のためにどうか分析してみたいのです」
「はぁ……。ルイズが良いというなら、俺は構いませんが」
困惑の混じった視線がルイズに向けられる。ルイズはギュスターヴに近寄って小声で話す。
「鎧見せたらあんたが異世界の人間だってばれるんじゃない?」
「どうかな…素材はともかく、出来はありふれた鎧なんだが」
「何処で作られたかって聞かれたらどうするのよ」
「自分で作ったって言えばいいだろ。本当のことだし」
ひそひそと話し込んでいる使い魔と主人を、木陰に立つタバサとコルベールが観察している。
タバサとしては、ギュスターヴの素性があまり明らかにならないほうが個人的な利益になる。だからむやみに情報が漏れるような行動は取って欲しくない…という
心境だが、積極的に相談に入らず、外面的に第三者を決め込んだ。
「どうでしょうか」
コルベールが返答を待っていた。ギュスターヴはルイズを一度見てから答えた。
「…構いませんよ。ルイズの部屋に置いてあるんですけど、部屋主にとっては邪魔だろうし」
ニヤついた顔でギュスターヴがルイズを覗くと、ルイズは眉間を寄せてそっぽを向いてしまった。
コルベールはそれらに気付かず、まるで子供のように喜んだ。
「そうですか!ありがとうございます!では、今から早速受け取りに行きますので。ミス・ヴァリエール、よろしいですかな?」
「え?あ、はい」
「では、失礼!」
「え?えぇ?」
その場からコルベールはルイズの手を引っつかんで退散してしまった。部屋主同伴であれば寮を歩き回っても一応文句は言われまい。
そしてその場にはギュスターヴとタバサ、そして木に立てかけられたデルフが残った。
「…いいの?」
「ん?」
「鎧」
「そうだぜ相棒。お前さん異界人だってばれたら多分やばいぜ。下手したら教会とか国とかに捕まるかもしれないぜー」
ロマリア皇国を頂点にハルケギニアに普及しているブリミル信仰は、始祖と魔法を絶対とするものだ。ここ、トリステインを含め、始祖から王権を与えられた国は
その信仰と価値観から国が為っている。異邦人で、魔法と始祖に畏敬を持たない人間がいれば、それは先住のエルフや亜人と同じ、外敵と見られるかもしれない。
「そうだな…あの鎧一つでわかる事はそんなにないだろう。形は珍しいかもしれないが、こちらにだって鉄の鎧はあるだろう?」
「そりゃそーだけどよー…」
「それに」
「それに?」
「コルベール先生は、多分俺がサンダイルから来たって言っても、教会とかに告発するような気がしないんだよ」
「なんだよそれ…」
呆れるデルフ。ギュスターヴは立ち上がると、デルフを鞘から抜いて、瞬くように構えて振った。一閃、二閃、三閃、四閃…。
「勘さ。あの人はそういうことはしない、っていう、俺がそう思っただけさ。…さて、タバサ。今やったみたいに出来るのが、当面の目標だ。頑張れよ」
「わかった」
タバサは静かにうなずいた。その口元が仄かにほころんでいるのだが、ギュスターヴは果たして、少女のわずかな変化を理解できたのだろうか。
木漏れ日の揺れが、デルフと短剣を煌かせている。
752:鋼の使い魔(後書き) ◆qtfp0iDgnk
08/07/06 18:57:24 KmSsnBGg
投下終了。2巻目分のプロットが旨く組めなくて四苦八苦。
なんていうか考えるほどにマルトー・ギュス・コルベールのおっさんトリオが目立つ空気に…
もうちょっとルイズが目立つように頑張ります。
753:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 18:59:04 FAxJANyr
乙でしたー
>マルトー・ギュス・コルベールのおっさんトリオが目立つ空気に…
私は一向に構わんッッ!!!!
754:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 19:29:50 qoUYQhqk
シエスタとハゲがいればどら焼連携できるな。
755:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 19:30:14 0Os6h4QT
乙ー。
北の大地なのに暑いよな>札幌
釧路辺りに行けばマシなんだろうが。
>マルトー・ギュス・コルベールのおっさんトリオが目立つ空気
カッコイイおっさんなら大好物です
756:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 19:40:24 FYsDGuNu
おっさんおっさん
757:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 19:50:31 PcTc1bPf
鋼の人乙、ひさびさだな、次回も活躍期待
758:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 20:09:28 9gb2ceEP
やはりおっさんはいいな
誰かあやかしあやしのユキアツを書いてみないか?
759:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 20:10:54 7dF5QfAl
鋼の人乙です~
ギュスの名につられて最近このスレ見始めました
760:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 20:12:28 7dF5QfAl
鋼の人乙です~
ギュスの名につられて最近このスレ見始めました
761:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 20:19:35 DRBjAKRK
ペンタゴン繋がりで米国防総省を・・・
とか頭を過ぎったが展開が浮かばなかった
762:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 20:21:41 WMLZCyRV
ペンタゴンつったら、ウォーズマンに負けてグレたアメリカの超人だろw
763:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 20:25:29 pErChso6
こいつらか
r ‐、
| ○ | r‐‐、
_,;ト - イ、 ∧l☆│∧
(⌒` ⌒ヽ /,、,,ト.-イ/,、 l
|ヽ ~~⌒γ⌒) r'⌒ `!´ `⌒)
│ ヽー―'^ー-' ( ⌒γ⌒~~ /|
│ 〉 |│ |`ー^ー― r' |
│ /──| | |/ | l ト、 |
| irー-、 ー ,} | / i
| / `X´ ヽ / 入 |
ブラックホールから元の世界に帰れそうな連中だがな
764:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 20:27:42 IzFtpj2c
乙でしたー。
ゼロ魔に足りないのはおっさん分(若者を導く人生の先達分、とも)
ではないかと思う今日この頃。
おっさんが目立つのは大歓迎です。
765:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 20:29:41 IzFtpj2c
四方二三矢召喚。
バット(木の杖に見えないこともない)に家紋のドーマンセーマン(要するにペンタゴン)書いてるから、
色々とあらぬ勘違いを引き起こしそうだ。
766:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 20:33:21 kJPJhhg/
>>763
四次元殺法コンビとはナツカシスw
767:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 20:33:28 R4rdEdxL
モンモンがロビンマスクを召喚というのはどうだろうか。
768:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 20:42:13 2Dd1RLBQ
ペンタゴンというと、ネイキッドスネークに握手を要求する人を連想する
769:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 20:43:27 b/W9ZCfW
>>768
後にオセロットに頃されるんですね
分かります
770:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 20:45:41 qExXf+wf
おっさん作品でまず先にウルザが浮かんだ。
なんか超存在になってるワルドもおっさんだし。
スネーク召喚。
ガンダールヴの力でメタルギアREXを動かし悪と決戦だ!
771:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 20:48:24 WMLZCyRV
26でおっさんか・・・、かなしいな~
772:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 20:59:16 KpO8JAW5
おっさんか。
俺、リック・バウマンは漫画史上最もカッコイイおっさんの一人だと思うんだけど。
773:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 21:01:25 gHOz7wSh
あれ?蛇のおっちゃんを召喚したSS、有るような気がするけど・・・・
774:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 21:08:03 B1DmEyLb
鋼の人GJ!
ちょ、アヤツジw
775:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 21:10:54 QUjxrg0m
「諸君、決闘だ」
「レオパルドン、いきます!」
「グオゴゴゴ……」
「ワルキューレ・チョップ!」
「ギャアーーーッ」
ズン!
776:もう一人の『左手』(その33) ◆utAARsQ0ec
08/07/06 21:13:25 9A8uTBA+
10分後から投下します。
777:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 21:16:33 NP42hmZF
まってたぜ!
778:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 21:17:52 xKvAI+P5
初遭遇だ!
支援
779:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 21:19:34 B0Ql1ESG
sien
780:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 21:20:46 FpRMpRE2
支援
781:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 21:23:20 S0j6MqQG
支援しますとも。
782:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 21:23:49 YEvN2RQH
支援します
783:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 21:24:14 8f+4cxV5
紫炎します
784:もう一人の『左手』(その33) ◆utAARsQ0ec
08/07/06 21:27:06 9A8uTBA+
.
「撤退だそうだ」
「撤退って、……どっちが?」
「信じられんが、我が軍の方らしい」
「―はあっ!? 何で!? 貴族派の連中は白旗挙げたんだぜっ!?」
「俺が知るかっ!! とにかくクロムウェルのクソ坊主と直接話したウェールズ殿下が、その指示を出したんだってよっ!!」
「……何でそうなるんだよ……? 王子様、『レコン・キスタ』の国賊どもに毒でも一服盛られちまったんじゃねえの?」
「かもな。あのクソ坊主は特に一筋縄じゃいかねえって聞くしな。停戦交渉で盃に毒を盛るくらいはやりかねないぜ」
「―で、撤退ってどこへ行くんだ? 地下道に穴あけちまったから、もうニューカッスルには戻れねえぞ」
「いや、それがな……どうもトリステインらしい」
「じゃあ、撤退っていうのは……アルビオンからの……って意味なのか……ッッッ!?」
王党派の兵たちの口さがない私語を聞きながら、眉をしかめる“ブイスリー”―いや、ややこしいので、風見の姿に戻った彼のことを以降は、“カザミ”と呼ぶことにしよう。
そして、そんな“カザミ”をさらに不機嫌な表情で見下ろす、風見志郎―ミョズ風見。
まるで双子のように同じ顔をした彼らではあるが、そのうち一人の額には例の“ミョズニトニルン”と記された使い魔のルーンが刻まれているため、二人の区別は容易であった。
そして、この場における第三の改造人間。
「くくっ……まったく、愉快な奴らだぜ、このファンタジー世界の連中はよぉ」
そう笑いながら、ワインの瓶をあおる筋骨隆々の男―元デストロン怪人カメバズーカこと平田拓馬。
停戦の花火が夜空に輝いて以降、王党派と貴族派の兵団は、互いに緊張状態を維持しながらも対峙していた。―が、やはり勢いに乗った進軍を、理由も分からず突如停止された王党派の兵たちは、フラストレーションに任せて怒声を上げまくっていた。
それは先陣の二人の風見―ミョズ風見と“カザミ”も例外ではなく、彼らはいつでも殺し合いを再開せんばかりの険悪な雰囲気のままであったが……平田は、そんな二人ごと、双方の軍が睨めっこを続けざるを得ない、この現状を愉しんでいた。
「よぉ」
平田が、空になった瓶を投げ捨てると、二人の風見を振り返った。
「お前ら、……そもそも何で、こんなところで戦争なんかしてるんだい?」
その声を聞いて、“カザミ”はキョトンとなった。何を言ってるんだコイツは?―そう言わんばかりの表情に。
「俺は王党派の一兵士だ。王家のために戦うのは当然だろう?」
「一兵士である前に、貴様は仮面ライダーV3であるはずだろう?」
ミョズ風見が、叩き斬るように冷えた口調で言い切る。
だが、その言葉にも“カザミ”は確たる反応を見せない。むしろ、さっきにも増してワケが分からないという顔をする。
「さっきから君が言う、その『カメンライダー』とは何だ? 俺は“ブイスリー”ではあるが、ただの名だ。それ以上でもそれ以下でもない」
「ただの名、だと……!?」
ミョズ風見にとって、―いや、全ての仮面ライダーにとって、その一言は、聞き流していい台詞ではない。だが、“カザミ”はさらに言葉を続ける。
「俺には、主に召される以前の記憶がない。『カメンライダー』とは何だ? 俺が一体何者だったのか、君たちは知っているのか?」
唖然とするミョズ風見。
同じく、言葉を失っていたが、やがて平田は含み笑いを噛み殺し切れなくなったようだ。
「なるほど……くっくっくっ……そういう事なら、まだ話は分かるぜ。少なくとも俺やコイツが『レコン・キスタ』に参加しているよりはな」
耳障りに低音な笑い声が、神経を苛立たせるが、それで表情を変えるほどミョズ風見も子供ではない。むしろ、彼も納得がいった顔で、改めて憮然となる。その不機嫌の矛先は、もはや“カザミ”ではない。むしろ自分自身だ。
(もし、それが本当なら、……俺はとんだピエロだってことか……?)
過去を失った男に、過去への誇りを問う愚劣は言うまでもない。知らぬ事とはいえ、それを延々続けていた羞恥が、どっと押し寄せてきたのだ。
785:もう一人の『左手』(その33) ◆utAARsQ0ec
08/07/06 21:28:27 9A8uTBA+
.
「おい」
平田が、肘でミョズ風見をつつく。答えてやれよ、とその目が言っている。
その視線を受け、ミョズ風見は、小さく息を吐いた。
「仮面ライダーは戦士ではあるが、兵士ではない。従うのは上官の命令ではなく、自らの魂が規定する正義だけだ」
その台詞を聞いて、“カザミ”はさすがに硬い視線を投げかける。
「ならば、君が『レコン・キスタ』に組している理由は何だ!? 叛徒に混じって国家への反逆を続けることを、君の魂は“正義”と認めたというのか!?」
「……」
「教えろ、君の言う“正義”とは何だ? 国家を転覆し、この国を泥沼の内戦へと引きずり込んだ者たちを、なぜ“正義”と呼ぶ!?」
さすがに平田も真顔になっている。
もっとも話題が話題だ。笑い続けられるほど空気を読めない男ではない。
ミョズ風見は向き直った。
同じ顔、同じ肉、同じ細胞を持つ二人が、真正面から視線を交し合う。だが、そこに殺気はない。問いし者が、固唾を飲んで問われし者の答えを待つ。その緊張感が在るだけだ。
彼は口を開いた。
「確かに、な。……貴様の言い分は正しい」
“カザミ”の視線がさらに険しくなる。
自らの正義に従うといった本人が、『レコン・キスタ』に正義はないと理解した上で、なお彼らに荷担したというのか?
だが、ミョズ風見は言葉を続ける。
「万人にとっての“真の正義”とは何か。親切か? 慈善か? 博愛か?―それを答えられる者など、この世のどこにもいはしない。“正義”とは主観だ。客観ではない。百人の人間がいれば百通りの“正義”が存在するからだ」
「その答えを納得しろと言うのか……ッッッ」
そう言いながら“カザミ”が、怒りに満ちた表情で立ち上がる。だが、ミョズ風見の表情は、なおも沈鬱なままだ。
「納得しろとは言わん。納得できるとも思ってはいない。だが、かつて俺たちが戦っていたのは“悪”だ。“悪”を撃滅することで実行する“正義”。それこそが俺と、俺と同じく仮面ライダーを名乗る仲間たちの使命だった」
「矛盾しているぞ。“正義”が主観だというなら、“悪”もまた個人の主観に過ぎないはずだ。それとも『レコン・キスタ』の行為は、君の主観では“悪”にあらずとでも言うつもりか?」
「そうは言わん。―だが、俺たちが戦っていた“悪”は『レコン・キスタ』ごときとはワケが違う。立場を変えれば主張を理解できる余地があるような、生半可な“悪”じゃない。破壊と殺戮と混乱、恐怖と悲嘆と絶望……それ自体を生み出す事を目的とする“純粋悪”」
―やつらを打倒する事こそが、俺たち仮面ライダーの存在の証たる“正義”だったのだ。
そう語るミョズ風見の双眸に迷いはない。
己の信念に1ミリたりとも後ろめたさを感じていない者のみが初めて可能な、一直線な眼差し。それは“カザミ”が、かつてウェールズの瞳に見た光でもあった。
「そして奴らは、今もなお虎視眈々と活動を続けている。奴らと戦えるのは俺たちだけだ。―分かるか? 俺たちの世界はまだ俺を必要としている。ならば俺の“正義”とはただ一つ。どんな手を使っても地球に、日本に帰ることだ」
「どんな手を、使っても……?」
「そうだ。そのためにこそ俺は契約した。俺を召喚した、あの男とな」
「元の世界に帰る。そのためならば、使い魔となって、何でも言うことを聞く、と?」
蔑んだような目で“カザミ”が言う。
実際、ミョズ風見の言うことは、彼からすれば、とても納得のいかない事であった。元の世界に帰るためならば、歴然たる反逆者に荷担する事さえ辞さない。それは自らを王党派の一兵卒だと規定する自分よりもさらに悪質ではないのか?
そんな男が、やれ戦士の誇りだの、自らの魂の規定する正義だの、まさしく噴飯モノの言い草だ。
786:もう一人の『左手』(その33) ◆utAARsQ0ec
08/07/06 21:30:44 9A8uTBA+
.
だが、ミョズ風見の表情は揺るがない。
「何とでも笑え。何を言ったところで、記憶を持たぬ貴様に理解は出来まい。それに、契約を結んだとはいえ、俺は犬じゃない。命令を選ぶ権利くらいはある」
その一言に“カザミ”は怪訝な表情をする。
「どんな手を使っても、と言ったんじゃなかったのか?」
「それでも、出来る事と出来ない事があるということさ。事情も分からん内戦に放り込まれて、無関係の人間を敵として殺して来いと言われても、さすがに従えない」
「……どういう事だ?」
「俺が契約に当たって承諾した命令はただ一つ」
彼はそう言って、じろりと無遠慮な視線を“カザミ”に向けると、
「―貴様を含む、三人のV3の首を取ることだけだ」
やる気なのか。
いまここで。
“カザミ”の目に、ふたたび戦闘的な輝きが灯った。
だが、ミョズ風見は、その殺気をあっさり受け流す。
「やらねえよ」
「……なぜ?」
「俺とお前が戦えばタダの喧嘩じゃ済まない。必ずやそれに乗じて軍が動く。そうなったら、せっかく停戦まで漕ぎ付けた戦が、元の木阿弥だ。さすがにそこまで野暮じゃないさ」
確かにその通りだ。“カザミ”は鼻を鳴らしてそっぽを向いた。
「決着は、また今度までお預けだ。異存はあるか?」
“カザミ”はしばし冷たい視線を、自分と同じ顔をした男に向けたが、やがて静かに首を振った。
「なら、話はここまでだ」
ミョズ風見は立ち上がると、無防備な背中を見せ、歩き出した。
何かを言おうとする“カザミ”。だが、
「―待てよ」
彼を呼び止めたのは、平田だった。その声には、先程までのような揶揄するような響きはない。
「最後に聞かせろ。お前を召喚した“あの男”ってのは、誰なんだ?」
返答の代わりに、刺すような目線が彼から放たれる。アイツの事を思い出させるんじゃねえ。そう言いたげな空気が確実に伝わってくるほどに、彼の拒絶反応は露骨だった。
「聞いてどうする?」
並みの人間なら、一睨みで震え上がってしまいそうな鋭い眼差しだったが、平田拓馬は―カメバズーカはただの人間ではない。むしろ苛立つような響きが、彼の太い声に上乗せされただけだった。
「それを聞いて、俺がどうするかは俺が決める。―御託はいいからとっとと言えっ!!」
「……ガリア国王ジョゼフ1世」
まるで名を口にするのも厭うように言うと、そのままミョズ風見は、去った。
後に残された、二人の改造人間。元デストロン怪人と元仮面ライダー。
「知ってるか?」
平田は、数週間前にフーケに盗み出されるまで、“破壊の杖”として魔法学院宝物庫で眠っていた身だ。当然、ハルケギニアの世間事情に詳しくない。
「ガリアは、ハルケギニア最大の国家で、その王は確か『無能王』とか言われていたと思うけど、……あの男が、まさか王様の使い魔だったなんて……」
呆気にとられたように朴訥な口調で話す“カザミ”。
だが、驚くべきはそこではない。
平田は僅かな期間だが、ワルドやクロムウェルといった『レコン・キスタ』の関係者と接触を持っている。その組織に、額に全く同じルーンを刻む人物が二人、それぞれ影響力のある重要なポストを担っている。
かたや、組織の首領クロムウェルの秘書として。
かたや、王党派の『赤い悪魔』への切り札として。
彼らを送り込んだ一人の権力者。
つまり―、
「『レコン・キスタ』の本当の黒幕は、そのガリア王とやらだって、話さ」
おもしれえ。
そう言いたげな獰猛な笑みを、平田は口元に浮かべた。
787:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 21:30:52 rr236Ntf
鋼の人乙
そしてブイスリャー支援
788:もう一人の『左手』(その33) ◆utAARsQ0ec
08/07/06 21:32:42 9A8uTBA+
.
「……本当なのか?」
ティファニアは震えながらも深々と頷いた。
だが、風見は容易に信じられなかった。
彼女が使い魔として召喚した改造人間―“ブイスリー”は、自分で自分の記憶を消してくれ、とティファニアに依頼したのだという。
「わたしだって、人から記憶を奪うという事の意味くらいは考えた事はあります。だから、何度も断ったんです。何度も何度も断ったんです。でも……」
確かに信じがたい。
だが、このエルフの血を引く少女が嘘をついていないのも分かる。
数日間ではあるが、同じ釜の飯を食い、一つ屋根の下で過ごした仲なのだ。
そして、“ブイスリー”のことも、信じがたいが完全に理解できないワケではない。
―あいつは、“俺”だ。
両親と妹をデストロンに殺され、復讐のために自ら改造手術を志願し、『人間を辞める』ことを承知の上で、戦い続ける道を選択した風見志郎。
無限に存在する平行世界の中には、無論、仮面ライダーになる事を選ばなかった風見志郎もいるだろう。選ぶまでもなく殺されてしまった風見志郎もいるだろうし、そもそもデストロンと関わる事無く、一般人として安穏と暮らしている風見志郎もいるかも知れない。
だが、あいつ―“ブイスリー”は違う。少なくとも改造人間になる事を、仮面ライダーになる事を選択した風見志郎。すなわち自分と同じ道を選んだ、“俺”と呼ぶことが出来る存在なのだ。
なればこそ、風見には理解できる。
改造された肉体と、ライダーとして生き続けることを宿命付けられた魂。そのいずれか一方から解放される事が出来るならば、どれほど楽になれるだろうということが。どれほど世界が違って見えるだろうということが。
―そこには、想像もつかない地平が広がっているはずだ。
“ブイスリー”の選択を責める気にはなれない。
そんな権利は、自分にはない。
何故なら、仮面ライダーとして“生きずに済む”世界を、風見が想像したこともなかったと言えば、それは明らかな嘘にしかならないからだ。
「アイツは、俺よりも強いのかも知れないな」
「―え?」
「俺には多分、君にそんなことを頼めない。自分の過去を捨ててまで人生の再出発を図ろうとは、とても思えない。仮面ライダーとしての記憶は、……もう、俺の生きる拠り所の全てだからな……。だが、あいつは違う」
「……」
風見は、ティファニアの頭を優しく撫でた。
「あいつに代わって礼を言っておく。……ありがとう」
「“ブイスリー”……」
「ティファニア、もう俺をその名で呼ぶな」
「え? でも―」
風見は、手袋を外し、左手のルーンを見せつける。彼女の使い魔と、自分が別人である事を証明できる、唯一の身体的特徴。
「君が“ブイスリー”と呼ぶべき男は、この世にたった一人だけだ。そして、それは俺じゃない」
「……」
「俺の名は風見志郎。次から俺を呼びたかったら、カザミと呼んでくれ」
「わたし……あなたが怒ってると思ってた」
風見が傍らの少女を見る。
「だから、謝ろうと思って……あの魔法は、もう使うなって言われると、そう思ってた」
「怒ってなかったわけじゃない」
風見は、そう言いながら頭を掻いた。
「もし君が、“ブイスリー”から記憶を奪って無理やり『家族』の一員に仕立てたのなら、俺は多分、君を許せなかっただろう。でも、違った。君はあいつを苦しみから解放してやった当の本人だ。ならば俺が感じた怒りなど筋違いもいいところさ」
「あなたたちの背負った過去って、そんなにつらいものなの……?」
「……」
風見はその質問に答えられなかった。
ただ、睨むような視線を虚空にやるしかなかった。
789:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 21:34:45 NP42hmZF
しえんだ!
790:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 21:34:49 YEvN2RQH
sien
791:もう一人の『左手』(その33) ◆utAARsQ0ec
08/07/06 21:35:16 9A8uTBA+
.
「じゃ、じゃあ、カザミっ! お願いがあるのっ!!」
すがりつくようにティファニアは、潤んだ瞳を彼に向ける。
「お願い……ニューカッスルに行って」
「ニューカッスルに?」
「“ブイスリー”に、ここへ帰ってくるように言って欲しいの」
「……いいのか? 奴の軍功に、君の実家の再興がかかっているんだろう?」
だが、ティファニアはニッコリ笑うと、ふるふると首を振る。
「いいの、そんなこと。わたしはこの村で家族と、平和で穏やかな暮らしが出来れば、もうそれでいいの。だから、そんなことのために“ブイスリー”に人殺しをさせ続けてることの方が、よっぽど嫌なの。……それに」
「それに?」
「この耳じゃ、……このエルフそのままの顔じゃあ……貴族になんてなれやしないわ……」
自嘲するように言うティファニア。
それは、この数日間で風見が耳にした、自分の境遇に対するティファニアの唯一の愚痴だった。
「……わかった」
「え?」
「今夜から出かければ、明後日の朝には帰って来れるだろう。待っててくれ」
風見は、少女が洩らした最後の一言に、あえて触れなかった。
己の肉体に抱く、一言で表現しがたい感情。―それは彼にも十分に理解できる事だったからだ。
もうメンヌヴィルに浴びせられた火傷の痛みも、ほぼ感じない。
風見は、解き放たれた獣のような速度で、街道の方角へと駆け出した。
XXXXXXXXXX
一夜が明けた。
徹夜で行われた王党派の撤兵作業は、払暁にようやく終了し、浮遊大陸を震撼させたアルビオンの大反乱は、貴族派の勝利で幕を閉じた。
ジェームズ1世を筆頭とする三百の兵団は、無事トリスタニアに入城を果たし、太后マリアンヌ・宰相コルベール・王女アンリエッタの三人は、国を挙げて彼らを歓迎した。
―少なくとも、表面上は。
「殿下、一体どういうおつもりですかな……!?」
枢機卿の殺気すら伴う問いかけに、太后マリアンヌは思わず顔をそむける。
『鳥の骨』などと揶揄されながらも、老練の政治家として、永きにわたって一国を切り回してきた男の視線は、鋼の硬度と、鈍く光る冷たさを兼ね備えていた。
「お答え下され姫殿下。おふざけやお戯れにしては、今回の一件はいささか度が過ぎておりますぞ」
だが、その視線と質問を一身に受け止める17歳の美少女は、顔色一つ変えなかった。
「どういうつもりも枢機卿、あなたが何を怒っているのか、わたくしにはまるで見当がつきませんわ」
その言葉とは裏腹に、全てを把握し理解している瞳で彼女はうそぶく。
―アンリエッタ・ド・トリステイン。それがトリステイン第一王女たる、彼女の名であった。
「おとぼけになられては困りますな殿下……ッッッ!!」
今にもこめかみの青筋から血を噴出しそうな形相を剥き出しながら、老人は、孫ほどの年齢の王女に向ける視線に、一層の厳しさを加える。
「貴女が御自分の勝手な判断で受け入れた、アルビオンの王党派の事でございますよっ!!」
792:もう一人の『左手』(その33) ◆utAARsQ0ec
08/07/06 21:36:31 9A8uTBA+
.
その剣幕は、いまにも殴りかからんばかりだ。
だが、いかに彼が国政を牛耳る宰相であっても、臣下であることには違いない。マリアンヌは思わず彼をたしなめた。
「枢機卿、あなたの気持ちは分かりますが、少々お控えなさい。娘とて怯えておりましょうが」
母として、一応マリアンヌはアンリエッタを庇う。
だがやはり、当のアンリエッタの表情は変わらない。いや、それどころか眼前でいきり立つ枢機卿を揶揄するように、口元には薄い笑みさえ浮かんでいる。
「年甲斐もなく、何を憤慨しているのかと思えば、……かのジェームズ陛下は、ともに始祖の血を引く王族であり、わたくしの敬愛する伯父なのですよ? そのお命をお助けするのに何の遠慮が要りましょうか?」
「殿下、理解しておられるのですか……? 王党派の亡命を受け入れるということは、かの簒奪者どもとの戦を回避することが、もはや不可能になったという事なのですぞ……? 殿下は、我が国を戦火の渦に巻き込むおつもりなのですか……ッッッ!?」
「そこまで仰るのでしたら枢機卿、あなたの権限で、改めて陛下を追い出せば宜しいではございませんこと? 『せっかく亡命して頂いて申し訳ございませんが『レコン・キスタ』が怖いので、やはり他所を当たって下さい』とでも申し上げて」
「殿下ッッッ!!」
マザリーニは、思わずテーブルに拳を叩き付けていた。
そんな事が出来るなら苦労はしない。その拳は、そう語っていた。
“亡命”という行為は、端的にいえば祖国を見限るという事である。
それは国家に対する重大な侮辱であり、背信であり、反逆でさえある。
ならばこそ、それを為す者を受け入れる国家には重大な覚悟が問われる。祖国を侮辱した者を、他国が保護するという事は、見方を変えれば国交断絶、宣戦布告と解釈されても仕方がない行為なのだから。
逆に言えば、一度保護した亡命者を、あっさり引渡すような政権は、諸国から例外なく嘲笑を浴び、それ以上の信用を失う。
ましてや彼らは王族だ。国家反逆どころか反逆者に国を追われてきた者たちだ。そんな彼らを『レコン・キスタ』に引渡したりしたら、それはもはや妥協どころか屈服に他ならない。トリステイン王政府の名は、その日のうちに地に堕ちるだろう。
「―申し訳ございません。少し取り乱しました」
ハンカチを取り出した枢機卿が、汗を拭きながら間を外す。だが、その表情からして、彼の怒りが、いまだ冷めやらぬものである事は明白だ。
「お母様」
そんな枢機卿に一瞥すら向けず、アンリエッタは母親に厳しい目を向けた。
「いま枢機卿が、愉快な事を仰っていましたが、ハルケギニア統一を謳う『レコン・キスタ』と、このトリステインが戦わずに済む道があると、本当にお思いですか?」
太后マリアンヌは、娘の真摯な問いに、しばし瞑目していたが、やがてゆっくり口を開いた。
「―はい」
「『レコン・キスタ』がトリステインに攻めて来ない、と正気でお考えですか?」
どうせ放っておいても攻め寄せてくる『レコン・キスタ』を相手に、いまさら機嫌を取るような真似をする必要がどこにある。―そう言わんばかりのアンリエッタの口調は、物静かであったが、それ以上に毅然としていた。
だが、それに答えるマリアンヌの物腰も、冷静そのものであった。
「ええ。この母も枢機卿も同じくそう思っておりますわ。―こちらから刺激しない限り彼らは攻めて来ない、と」
「根拠は?」
「無論、ありますとも」
そう言ったのはマリアンヌではなく、皮肉な笑みを浮かべたマザリーニであった。
「ニューカッスルの戦で『レコン・キスタ』どもが予想以上に疲弊した、という報告が入っております。そして艦隊の再建と地盤固めの必要性。さらにはきゃつらの組織形態を考慮した上で、そういう結論に至りました」
「分かるように言いなさいマザリーニ」
アンリエッタの厳しい声が飛ぶ。彼女がマザリーニを“枢機卿”という官位ではなく名で呼ぶのは、例外なく怒気が激しい時だ。……もっとも、事ここに至っては、怒気を発しているのは、お互い様というべきだが。
793:ピノキオ ◆raTa7DwsRU
08/07/06 21:39:23 xH+uvbOO
投下ではなく支援!
794:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 21:42:39 bLAZhenn
支援!
795:sage
08/07/06 21:43:34 bLAZhenn
すまん、下げ忘れた
796:もう一人の『左手』(その33) ◆utAARsQ0ec
08/07/06 21:45:02 9A8uTBA+
.
「報告によると、あの簒奪者どもは、最後の会戦で四個艦隊の戦力を喪失しております。その分の艦隊再建、そして更なる軍備増強のためには、彼らはまず、足元のアルビオンの内政を固めるところから始めねばならないでしょう」
攻め寄せるどころか、むしろ守りを固めねばならないのは『レコン・キスタ』の方である。そのためには、これまでのテューダー朝時代と同じく、ハルケギニア各国と通商を結び、風石輸出をはじめとする経済活動を再開するはずだ。
「そうでなければ、軍備再建の軍資金など、とても工面できませんからな」
落ち着いた口調でマザリーニはそう言った。
「そして『レコン・キスタ』はただの貴族連合ではない。きゃつらは王権否定の政治団体であると同時に、議会制共和主義の思想団体でもある。さらに、彼らの首領のクロムウェルという男は、謀略に長けた人物であると聞きます」
陰謀に長じた者が、思想という武器を手にしたなら、最初に始めるのは、問答無用の武力活動ではありえない。まずは調略の触手を伸ばすはずだ。
王家ならずとも政権を握れるという共和政の魅力と、『レコン・キスタ』の現在の勢いを鑑みれば、クロムウェルが本気になって口説けば、各国の貴族たちは平然と祖国を裏切り『レコン・キスタ』になびくだろう。ならばまず仮想敵国の内部から切り崩すのは当然だ。
―だが、調略には時間がかかる。そして、その分だけ、こっちは時間を稼ぐ事が出来る。
「そして最後に、王なき政府などに、アルビオンの民がいつまでも従うとは到底思えません」
ハルケギニアの絶対王政と、始祖ブリミルからの王権神授説は、六千年の伝統を誇る。
六千年という時間がどれほどのものか、僅かでも想像できるならば、その磐石さの程が少しは理解できるはずだ。
少なくとも、利権に釣られて連帯したような『レコン・キスタ』ごときのハネッ返りどもに覆せるほど、六千年の伝統とは軽いものではない。必ずや失政を重ね、民からの支持を失うはずだ。
マザリーニとマリアンヌは協議の結果、そのメドを3年と見た。
王という調停者を持たぬ『レコン・キスタ』の諸侯どもは、好き勝手に党派を組み、派閥抗争を行い、議会工作は必ずや武力衝突に発展するだろう。長くとも3年も放って置けば、内輪揉めで他国を侵略するどころではなくなるはずだ。
そこで初めて軍を派遣し、『レコン・キスタ』を駆逐すればいい。そのあとで誰か一人、テューダー家の血を引く人物を即位させて、王家を再興させてもいいし、それとも王など立てず、各国の共同統治地にしてもいい。
それまでは、当たらず触らず、放って置こう。
そういう見地に立てば、アルビオンの新政府といたずらに対立せずに、むしろ彼らを利用しようと考えるのは、為政者としては当然であったろう。
どのみち、現在のトリステインが、風石の大半をアルビオン産でまかなっている以上、そう簡単に彼らと喧嘩は出来ない。風石の供給が絶えるということは、軍事・流通両方の面で、それこそ致命的な損害なのだから。
アルビオンと国交を維持できるなら、それに越した事はないのだ。
……それが、国政の頂点に立つ二人の『レコン・キスタ』に対する見解だった。
だから、ジェームズ1世の亡命など、マザリーニが真っ先に情報を掴んでいれば、受け入れるはずがなかった。彼の存在など『レコン・キスタ』を無意味に刺激するだけの、文字通り国家にとって無用有害な存在でしかなかったからだ。
アンリエッタは、彼らのそういう思惑を、それこそ机ごと引っくり返してしまったのだ。
そして、それはアンリエッタも承知している。
マザリーニとマリアンヌの思惑も、現在のアルビオンの情勢も、今後のトリステインの政略も、……何かもかも理解した上で、王女はそのテーブルを引っくり返したのだ。
「分かっています。あなた方が仰ったことは全て。その上で“手紙”を書いたのですから」
今度は、宰相と太后が絶句する番だった。
“手紙”とは言うまでもない。アンリエッタがしたため、ルイズからウェールズに手渡された手紙のことである。ルイズによるヴァリエール紋章旗掲揚事件で、王女が公爵令嬢に与えた密命のことは、すでに国家首脳の知るところとなっていた。
ウェールズは父を脱出させるに当たり、その手紙をジェームズに託した。何故なら、その手紙には、こう記されていたからだ。
『トリステインは、アルビオン王家とそれを支援する全ての方々を受け入れる準備があります』と。
797:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 21:45:11 vwx1PppV
sageはメール欄にな、支援
798:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 21:45:18 bLAZhenn
あぅ、更にスマ。ちょっと吊ってくる
799:もう一人の『左手』(その33) ◆utAARsQ0ec
08/07/06 21:47:15 9A8uTBA+
.
―無論、国家の正式決定でも何でもない。すべてアンリエッタの独断によるものだ。
だが、仮にも一国の旧王が、王女の直筆でそう書かれた手紙を持って現れれば、門前払いを食わせる事など、絶対に不可能だ。
「こうなる事を承知の上で……ヴァリエールの小娘に密命を下したと言うのですか……!?」
呆然と声を上げるマリアンヌを、見下すような視線でアンリエッタは頷いた。
アンリエッタが手紙に何を書いたところで、ウェールズが素直に亡命してくるとは、実は彼女自身も思っていなかった。彼女が愛する王子様は、祖国と部下を見捨てて一人逃げ出すような男ではない。死ぬほどツライ結論だが、アンリエッタにはその確信があった。
むしろ彼自身は踏みとどまりつつも、その手紙を使って部下や父親を逃がそうとするはずだ。
―そして、アンリエッタの予想は現実のものとなった。
王党派の亡命を受け入れた以上、もはや『レコン・キスタ』との関係修復は不可能だ。
つまり……、
「いったい……いったい何故……そんな真似を……ッッッ!?」
震える声で訊くマザリーニに、アンリエッタは一瞥すら与えない。
「決まっているでしょう」
彼女は椅子から立ち上がると、静かにマリアンヌに向けて歩を進めた。
「ウェールズ様を殺めた逆賊どもを、ウェールズ様から国を奪った簒奪者どもを、一人残らず皆殺しにするためですわ」
淡々と吐かれた言葉であるからこそ、そこに込められた殺意の深さは、容易に想像できるものであった。
マリアンヌが、化物でも見るような目で、近付いてくる娘を見る。
「しっ、しかし、アンリエッタや、ウェールズ殿下の訃報はまだ報告されておりませんよ」
「秘されているのでしょう。わたくしには分かります。ウェールズ様を生かしておく事の危険性を、クロムウェルが理解できぬはずがありません」
「でっ、ですがっ……」
「『レコン・キスタ』と和平なんか結ばせてたまるものですか。今すぐ攻め寄せ、今すぐ反逆者どもの首を掻き切らなければ、……わたくしはこの先、生きていく事さえ出来ないでしょう……ッッッ!!」
「アンリエッタ……」
「もっとも……わたくしは“そのために”ゲルマニアごときに降嫁するのでしょう?」
そう言いながらアンリエッタは、恐怖でのけぞった母親の腹に、優しく手を置いた。
「アルビオンで内戦が始まるや否や、同盟締結をダシに、あなた方が急ぎまとめた婚儀の約束」
アンリエッタの瞳が、さらに冷たく光る。
「でもね、お母様……わたくしは、知っているのですよ。何故あなた方がわたくしの婚儀を焦るのか。わたくしがゲルマニアに嫁いだ後、誰がトリステイン王家を継ぐことになるか……」
マリアンヌは、自分の腹を優しく撫でまわす実の娘に、吐き気さえ覚えそうになっていた。
「ねえ、お母様、この子の父親は……枢機卿なのですか……?」
その一言は、凍り付いていた母親と宰相を、さらなる恐怖へと叩き込む。
王女は、そんな二人に静かに微笑むと、
「ご安心下さい。わたくしは何も怒ってはおりませぬ」
「え……?」
「ウェールズ様の苦境に際して、テューダー王家に一兵すらも送るどころか、あの御方の死を前提とした婚儀を勝手に決められた事も。それどころか、わたくしの輿入れ自体が、その子に玉座を継がせんが為の計らいであった事も……わたくしは怒っておりませんわ」
「その復讐のために……祖国を戦に引きずり込もうと言うのですか……ッッッ!?」
「わたくしは、この婚儀の本来の役目を果たすだけですわ」
そう言いながら枢機卿に微笑んだアンリエッタの言葉に、もはや嘘があろう筈がない。
彼女は全身全霊を持ってゲルマニア皇帝を篭絡し、彼を『レコン・キスタ』への敵対者たらしめるだろう。そして両国は足並みを揃えて杖を携え、ウェールズの仇討ちの戦に邁進することになる。……それがアンリエッタの、いまの望み。
「では、お母様、ごきげんよう。どうかお体を御自愛くださいませ」
800:もう一人の『左手』(その33) ◆utAARsQ0ec
08/07/06 21:49:32 9A8uTBA+
.
言葉もなく立ち竦む二人を後にして、アンリエッタはきびすを返した。
だが彼女は、……ウェールズの生存と、彼がクロムウェルと提携した事実を、いまだ知らない。
#############
「生き……てる……?」
少年は、目覚めた。
おかしいな、確か、おれは空中に放り出されて……、
「きゅいきゅいっ、サイトっ、やっと目を覚ましたのねっ!!」
そのとき少年は、そう言いながら自分の首っ玉に飛び込んできた青い髪の女性によって、何も言えなくなった。
彼から言葉を奪ったのは、まともにぶつけられた女の感情ではなく、ほのかに匂う女臭さでもなく、―その巨大な胸の感触であった。
(ルイズを相手にしてたら忘れがちだけど……やっぱ、巨乳って、いい……)
「おやおや、やっぱり若い者はいいねえ」
桶に水を汲んで部屋に入って来た、中年の男性。それほど上質の衣服ではないので、おそらくは平民であろうか。
途端に真っ赤になって、シルフィードを引き剥がそうとする才人だが、この韻竜はいささか常識が通じない。「きゅいっ?」と不思議そうに言うと、抵抗するように、さっきよりさらに激しく才人にしがみ付いた。
―たっぷり二分ほど。
「済んだかね?」
男性が、さすがに眉をひそめながら質問し、才人は顔を上げることも出来ずに、黙って頷いた。
「まあ、傷が浅かったのは不幸中の幸いだが、しばらくは動かん方がいいぞ」
―傷? そういえば、身体中に包帯が巻いてあるが、これが傷なのだろうか?
「ま、今は農閑期だし、怪我人を追い出すような真似はしねえ。ゆっくりしていったらええ」
「あの―」
才人の声に、男性は「ん?」といった表情で振り向く。
「助けていただいて有難うございます。―で、その……ここはどこなんですか?」
「ここはタルブの村だ。うちのワインはトリステイン一なんじゃが、お前にはちょっと早いわな」
そう笑うと、男は出て行った。
「タルブ……」
ハルケギニアの土地鑑がない才人には、どのみち聞き覚えのない場所であった。
801:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 21:49:47 zmcUGEO8
なんつーどす黒い母娘だw支援
802:もう一人の『左手』(その33) ◆utAARsQ0ec
08/07/06 21:50:25 9A8uTBA+
今回はここまでです。
803:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 21:50:45 S0j6MqQG
支援支援
804:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 21:50:57 OtcHUtHo
邪悪すぎて吹くしかないw支援
805:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 21:52:09 vwx1PppV
わはは、アンアンが黒い方向に覚醒してて、イイ感じだ。
806:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 21:52:12 xKvAI+P5
トリステイン王家黒過ぎてコワイ
807:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 21:52:17 gHOz7wSh
ザビ家も真っ青の恐ろしい家系だ
・・・・・・いや、いい勝負なのかな
808:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 21:53:55 rMvAqjBs
おそらくこれまで一番怖いアンアンだ…
809:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 21:53:57 aqV1Lw2d
いつもながらお疲れ様です。
黒アンリエッタ―なんて悪夢。
ウェールズがレコンキスタに与している事を知ったら狂喜しそうで怖いな。
810:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 21:54:10 zmcUGEO8
投下乙です
マリアンヌとマザリーニがデキてる作品って初めてよんだな
しかしアンアン、ウェールズが生きてるの知ったらどーすんだろ?
レコン・キスタに寝返るのかそれともウェールズが裏切ったと逆ギレすんのか?
あと才人ときゅいきゅいのラブラブシーンは数少ない癒しw
811:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 21:54:44 aM31rRSE
しかし、自らの思惑がとんでもなくはずれまくっていることを、アンリエッタは知らない……。
812:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 21:59:03 IzFtpj2c
>>810
寝返るんじゃないかな。
なにしろ原作並みにウェールズに依存してる上に、
原作以上に行動が先鋭化してるから。
おっと、乙でしたー。
にしても右も左も真っ黒だのう、この作品(苦笑
813:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 21:59:14 ToDcn0AT
なんつー母子だ。トリスティンの未来は真っ暗だな。乙でした
814:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 22:00:14 R65yL9om
アルビオンからタルブってどんだけ吹っ飛ばされてんだよサイト&きゅいきゅいwww
アンアンもどうなることやら…
815:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 22:02:25 M1YyJgbk
昼ドラ真っ青でワロスw
トリステイン王家に漂う淫靡な雰囲気がたまらんな。
816:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 22:04:08 aXgxmuEc
いや、奸智に長けるアンアンすごくかっこいい!!
かっこいいんだけど・・・・
こわいよう・・・(泣
817:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 22:04:12 zmcUGEO8
>>812
ふと思ったがルイズも原作以上に才人に依存しているが、(この作品での)トリステインの女性は
皆似たような傾向なのだろーか
才人がきゅいきゅいとイチャイチャしているのを見たらどうなるかwktk
818:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 22:11:04 vyBVzSwS
>>816
その壊…じゃなくて怖格好良さがいいんじゃないか。
このアンアンはデキる!
819:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 22:30:57 B0Ql1ESG
こいつはくせぇーーーっ!
ゲロ以下の臭いがプンプンするぜぇーーーっ!
まじでトリステイン王宮オワットル
820:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 22:33:20 NP42hmZF
アンアンは壊れると怖いぜ……姉妹スレでもすごいのがいたが……。
821:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 22:37:42 XOyBgIEs
怖い人ばっかり・・・・・
ウェールズとアンリエッタ、全面対決もありえるかも・・・・・
822:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 22:38:55 aqV1Lw2d
作者さんのためにも展開予測は控えめに。
……とはいえ、ウェールズの現状を知った時のアンリエッタの反応が楽しみです。
823:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 22:45:01 Y8Gz3b3b
ウェールズの首を抱えてNice boat.するアン様を幻視した。
824:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 22:46:57 k3K9/wDF
ウェールズとワルドが漢な一方で女陣がヤバ過ぎるww
もうおっぱいときゅいきゅいが数少ない癒しっすよねー……
825:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 22:47:47 rKLvpL/g
アンアンはやればデキル子
826:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 22:51:36 pErChso6
アンアンヤればデキるよね
827:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 22:53:31 LGseZCdP
r ‐、
| ○ | r‐‐、
_,;ト - イ、 ∧l☆│∧ 良い子の諸君!
(⌒` ⌒ヽ /,、,,ト.-イ/,、 l
|ヽ ~~⌒γ⌒) r'⌒ `!´ `⌒) 「やればできる」
│ ヽー―'^ー-' ( ⌒γ⌒~~ /| いい言葉だな!
│ 〉 |│ |`ー^ー― r' | 我々に避妊の大切さを教えてくれている!
│ /──| | |/ | l ト、 |
| irー-、 ー ,} | / i
| / `X´ ヽ / 入 |
828:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 22:53:45 k3K9/wDF
むしろ鳥の骨がヤれば出来る人だった件
全部アンアンの妄想とかだったら笑えるけど
829:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 22:56:04 aXgxmuEc
そろそろ、鳥の骨にこのスレにおける、
イザベラ様張りの主人公待遇を与えてもいいと思うんだぜ?
あとは、モッド伯とか
830:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 22:58:48 cbUr0OIT
>>827
ゾフィー兄さんが何か言いたがっています。
831:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 22:58:49 PLNT9G4a
思いついた小ネタで
シルエットミラージュの主人公シャイナを召喚
2つほどいただきます
832:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 22:59:21 95EBX9fs
暗リエッタが凄かった。
833:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 22:59:43 PLNT9G4a
「ジョーダンでしょ…」
平野を一望できる丘にたたずみ、行軍中の部隊を眺めていた少女、シャイナ・ネラ・シャイナは、うんざりしながら呟いた。
奇妙な少女だった。
足首まで伸びた金髪は四つ又に分かれ、被っている鍔の広い帽子と、
ノースリーブのコートの胸の中心には天使と悪魔の羽をあしらった装飾が施されている。
その衣装は見事に体の半分から赤、青の色に分かれていた。
そして、その手には自分の身の丈以上もある、片刃の大剣が握られていた。
「カンベンしてよね、って言ったのになー」
眼下に広がるは反乱軍、アルビオン軍。その数、総勢7万。
これからシャイナは、ルイズたちが逃げ切る時間を稼ぐ為、たった一人でその数に立ち向かわなければならない。
はぁ、とため息を付き、やれやれといった具合に後の台詞を続けた。
「あれ?相棒、そんなセリフいつ言ってたっけ?」
鍔をカタカタと鳴らしながら、手にした大剣、デルフリンガーが尋ねる。
「あたしがこっちの世界に来る前の話よ」
「ああ、相棒はアレだ、世界を救った正義の使者、だったんだっけ?」
「そうよ。もうあたしは使命を果たしたから、ヒロインごっこも終わるつもり、だったんだけどね…」
そう言って、シャイナは静かに目を閉じ、これまでの経緯を思い起こしていた。
834:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 23:00:14 PLNT9G4a
かつて地球で起きた災厄、別れの日。
シルエットとミラージュという属性分子を発見した人類は、それらが生物に与える影響を研究するため、危険な人体実験にまで手を染めた。
その中でも特に過酷な実験を受けた被験者の少年は、その非道な行いに怒り狂い、研究機関のシステムを暴走させた。
結果、シルエットとミラージュの属性分子は地球全域に振りまかれ、あらゆる生物は分子の影響を受け、異形の姿へと変貌した。
そんな世界を元に戻すために、過去の世界の人類が願いを託し、作られたのが彼女だった。
激闘の末、シャイナは世界を元に戻すことに成功するが、
元の世界には、改造を受ける前の記憶は無く、世界が元通りになってからも一人異形の姿でありつづける彼女を、受け入れる場所も人もなかった。
いつも通りあてもなくフラフラと夜の街を歩いていた折、偶然にルイズの唱えた召喚ゲートをくぐって来たのだった。
回想をやめ、ふう、とため息を付き、シャイナは、続けた。
「こっちに来て、もう少しだけ、正義の使者でいる必要が出来たわ。でも、これがホントに最後になるかもね」
眼下の大部隊を見て、わずかに頬に汗を流し、引きつった笑みを浮かべながら答える。
「なあ、今更だけどよ、相棒はもう使命を果たしてこっちに来たんだから、もうそんなに気張る必要なかったんじゃねーか?」
「そこなんだけどさ、多分あたしの性格なんだろうなあ。すぐ首突っ込みたくなるっていうか…
自分でも損な性格だと思うわ。ホントつらい、つらすぎるわ。それに…」
「それに?」
「別れ際にジュリオにもおんなじセリフを、言ったんだけどさ…。
人知れず現れ、事件を解決去っていく。これがヒーローってもんじゃない」
今度は満面の笑みを浮かべ、大剣に答える。
「かっこいいねえ、相棒」
「あたしの世界でもおんなじセリフ言ったんだけどさ。やっぱりそういう答えが返ってきたわ」
夕日が沈みかけ、そよ風が闇に染まる草原を吹き抜けていく。
「じゃあ、そろそろ行きますか!」
「おう、期待してるぜ、相棒」
「…元気でね、ルイズ」
最後にそう呟き、ちらりと港の方角に目を向けたシャイナは、しかしすぐにきっ、と眼下の大軍を見据え、大剣を構えると、
帽子の羽をはためかせながら、残像を引くスピードで7万人の部隊に向かい駆け抜けていった。
835:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 23:00:23 k3K9/wDF
>>829
オカマ拳法使いなあの人が最高に輝いていたと思う
836:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 23:08:08 IzFtpj2c
>>833
乙したー。
どうでもいいが「平野」を「ひらの」と読んで頭の中にヒラコー絵で
情景が展開された俺。
837:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 23:11:37 a5rdqR0w
ここでシャイナが勝てばいいが
もし死んだりしたら世界をメギドの炎が包む最悪の結果に
838:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 23:12:52 j2jPNSUq
ゼロな提督といい
左手といい
いいよ~マザリーニいいよ~
いいよ~マリアンヌいいよ~
839:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 23:19:22 PoR2Jxlm
怖いアンアンもそうだがサイト無事だったのが素直に嬉しいぜ
840:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 23:23:31 9gb2ceEP
原作キャラを出さないのって最大のヘイトじゃね?
841:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 23:25:16 LGseZCdP
つまりサイトはみんなに嫌われているということか…
842:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 23:27:24 OByqciqi
>>835
ああ・・・なんかエデンの林檎の続きを読みたくなったよ
843:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 23:28:26 vyBVzSwS
>>839
いい目も見てたしなw
844:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 23:34:36 KpO8JAW5
アンアン輝きすぎw
クロスキャラでアンアンを教育できそうな奴いるかなー、と考えてたらジルオールのエリス様が思い浮かんだ。
845:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 23:35:30 IzFtpj2c
>>840
「毎回フルボッコにされるギーシュを見て不憫だと思ってたけど、
これを見たら出番がある分マシだと思った」
って何かの作品のレスであったな。
846:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 23:35:44 aXgxmuEc
>>842
ワの字もモッドはんもおマチさんも漂白されて、
しかも共闘したり、
ギーシュがどんどんかっこよく、強くなっていく燃える展開に
ジャンプマンガのDNAを感じた。
847:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 23:35:54 AJ7d8zXt
左手さんGJ、マジGJなんだけど…
ちょっとやり過ぎなんじゃ…アン様黒過ぎだし、トリステイン王家ヤバ過ぎだし、展開が恐ろし過ぎだし、
あと才人羨まし過ぎだし、きゅいきゅい可愛過ぎだし、レコンの連中格好良過ぎだし、これからの展開が楽しみ過ぎだし…
…やっぱりもっとやり過ぎて下さい。
848:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 23:38:28 IzFtpj2c
>>846
燃える展開っつーと俺的にはアースガルズか。
あれの決闘シーンは白眉の出来だと思う。
849:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 23:39:37 P7D+UvXf
左手さん乙です。
うわあ……昼ドラ真っ青の展開。なんて恐ろしい女達だ。
アンリエッタのドス黒い性格がたまらん。
850:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 23:41:35 GmPrqFWF
むしろ王侯貴族の女はこれぐらいが丁度いいと思う。
もちろん身近にいないければと言うのが前提の話だが。
851:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 23:43:37 T5GNuPsR
ピノキオの人、さっき支援してたけど投下はないのかな?
続きが楽しみなんだけに、投下が来るのか来ないのか、気になる~~~w
852:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 23:44:50 sZZx8y1V
アンアンを酷い目に遭わせてください。
853:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 23:45:02 9gb2ceEP
>>845
存在自体をなかったことにされるなんて最大の侮辱だよな
やっぱりサイトを出しつつ他作品のキャラも出すのが一番だよ
854:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 23:48:17 rKLvpL/g
アンリエッタが普通に優秀だとサイト達の活躍する余地が無くなってしまうのでは?
先回りして対処ということになるから、ルイズやその使い魔を頼ったりしないで
ルイズ使い魔召喚 → 何事もなく使い魔と平穏に暮らしましたとさ 完
となって物語にならないだろう
855:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 23:49:31 vyBVzSwS
>>853を見て思ったこと
ああワルド… つД`)・゚・。・゚゚・*:.。
856:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 23:51:54 jzKrqHC5
>>854
一応、アンアン一人だけで対処できないことはあるだろうけどな。
一巻のイベントは普通に発生するし、
レコン・キスタが攻めてくるのもアンアン一人では止められないだろう。
857:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 23:52:16 aXgxmuEc
>>854
無能王と教皇をなめてはいけない
858:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/06 23:53:28 vyBVzSwS
>>854
いくつかの事件は起こらないけど、それが全てじゃないさ。
859:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/07 00:01:42 /fltUPSB
少なくともアンアンの絡まない決闘騒ぎや惚れ薬騒動は普通に起こるな
860:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/07 00:01:53 zMJkxUiz
>>841
まぁ、サイトの代わりに誰々召喚ってのがこのスレの主旨だから、
サイトに関しては仕方ないとしか言えんな・・・・・・
861:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/07 00:05:51 ND8OV09K
アンアンが優秀だと、鳥の骨に手紙の事を話して対処してもらうことになって
普通にマザリーニに信頼されてるワルドが手紙を受け取りに潜入する事となり
普通にトリステンが滅亡ENDによりそうな気がするのは気のせいかね?
862:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/07 00:07:31 Yn1NM7Zs
>>845
その作品、食堂決闘イベントがなかっただけで、後からちゃんと出てきたんだけどね。
863:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/07 00:09:07 qSI5K9Il
>854
豆粒みたいに使い魔とキャッキャウフフしてればいいさ
864:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/07 00:12:59 BIeG65xL
エデンの林檎読み返したけどやっぱり面白かった
オカマ拳法かっこいいよオカマ拳法
Mr.0の使い魔にもボンちゃん出ないかなあ……
ほら、黒髪で黒い瞳?のオカマもいることだし
865:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/07 00:13:12 errpLNvx
そういう癒し系もいいね
866:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/07 00:15:28 FxzqvEUc
ミ・マドモワゼルが癒し系だと……?
867:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/07 00:15:41 NYU/mmTD
風の谷のナウシカ(1982年):
トルメキア王国は王族による王位継承争いがおこっており、
ヴ王がクシャナの幼い頃に毒の入った杯を飲ませ謀殺しようとした事があった。
しかし、その毒を代わりにクシャナの母が飲み乱心してしまった。
クシャナの母は心を病み、いつも手放さない人形をクシャナと思い込み、
クシャナ自身をクシャナ(人形)を奪いにきた者と思い込んでいる。
URLリンク(ranobe.sakuratan.com)
ゼロの使い魔(2004年):
ガリア王国は王族による王位継承争いがおこっており、
ジョゼフ王がシャルロットの幼い頃に毒の入った杯を飲ませ謀殺しようとした事があった。
しかし、その毒を代わりにシャルロットの母が飲み乱心してしまった。
シャルロットの母は心を病み、いつも手放さない人形をシャルロットと思い込み、
シャルロット自身をシャルロット(人形)を奪いにきた者と思い込んでいる。
-------------------------------------------------------------------------
クシャナ「母上」
母 「そなたは何者です?わかっておる私のクシャナをとりに来たのであろう」
クシャナ「お別れにまいりました」
母 「(人形に)ああごめんなさいせっかく眠っていたのに」
母 「この子は誰にも渡さぬ。クシャナは私の子じゃ、立ち去れ」
クシャナ「あなたとあなたの娘を苦しめた毒蛇どもの牙をこれから砕きにまいります。」
クシャナ「どうか、心安らかな日々を」
タバサ. 「ただいま帰りました。母さま」
母 「下がりなさい無礼者。王家の回し者ね?私からシャルロットを奪おうというのね?
誰があなたがたに、かわいいシャルロットをわたすものですか」
タバサ. 「あなたの夫を殺し、あなたをこのようにしたものどもの首を
いずれここに並べに戻ってまいります。
その日まであなたが娘に与えた人形が仇どもを欺けるようにお祈りください」
868:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/07 00:16:33 uLN9qjfl
癒し系といえば虎丸とか超癒し系。男塾の。
869:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/07 00:16:49 errpLNvx
>>866
わかってて怖ろしいボケを飛ばさないでくれw
870:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/07 00:23:53 YwFbYfqm
いやあ、もう一人の左手、実によいですな。
原作の矛盾をうまく解決している。
ものすごくナゾだったマザリーニの外交政策。
問:なんで歳が似合いの王妃をゲルマニア皇帝と結婚させないんだ?
答:王妃とマザリーニが出来てるからです
問:後継者=事実上の現在以後の女王であるアンリエッタをゲルマニアに
やっちまったら人質にされてトリステインいいようにされ、滅ぶのと同義だぞ!?
答:後継者作ったから大丈夫です。
問:40男ので好色で知られている皇帝アルブレヒトはいい歳した王子が複数いるはずだ。
ゲルマニアをトリステインの地で乗っ取ることすら不可能だ。
答:自分達で作った後継者が後押しすればなんとかるんでね? 出来なくても別にいいし?
問:皇帝の子供生む以前に早々にアンリエッタ暗殺されるでしょ、普通。
ゲルマニアの王子にね。何しろ、自分のライバル生むメスなんぞ百害あって一理なしだ。
答:私達の愛に割り込んだアルビオン王弟なんぞとのおぞましい子供は早く死んだほうがいいでしょう。
問:王妃様ってアンリエッタ即位後はまったく出てこないけどどうしたの?
答:引退の名の下に目に付かないようにして子供生みました。二人して愛の結晶をかわいがっています。
こういう方向に持っていけるように一皮向けてくれたアンリエッタには大感謝だよん!
871:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/07 00:26:23 errpLNvx
いや、お前のはちょっとアレだ。
872:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/07 00:27:19 GtdVBffx
>870
そんな権力志向の強い奴なら前王死んですぐにマリアンヌ王位に付けさせて、今頃は堂々と後釜に座ってるよ
873:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/07 00:29:28 XcPFYd1s
要するに原作者が何にも考えていなかったからSS作者がフォローしなければならな
(ズギューン!)
874:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/07 00:29:36 YS3mp1zG
マザリーニと王妃の関係は史実が元だろ
マザランはアンヌ大后の愛人だった説がある
875:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/07 00:31:08 Ri6UVD0h
歳くってからの子は無条件に可愛いって言うしな。
先読みはしても書き込みは控えるのもマナーだと思うよ。
するなとは言わないけど程ほどにな。
876:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/07 00:31:53 YwFbYfqm
すまん、確かにちょっとアレだな。
ただまあ、そうとでも解釈しないと原作のアレ具合が・・・(w
権力志向というか、マザリーニの場合王妃の暮らすトリステインを守るのが目的。
その裏に王妃の愛(爆笑もんだが一応)があって、表沙汰にすると
王妃様が非難の矢面に立たされるから、あんまり非難されない状況を、ってことだね。
877:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/07 00:32:26 GtdVBffx
つーか、太后が私生児産んでそれを後継者にとかやらかしたら左手のジェームス以上の反感食ってレコンキスタの侵攻前に自滅するぞ、提督のアンアンの逃亡直後みたいな混乱の末に
878:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/07 00:34:06 YwFbYfqm
>>875
いや、すまん、先読みじゃないはずだよ、これは。
SSで今回出された、原作の矛盾への回答をまとめただけだよ。
全部基本的に黒アンアンの台詞で出てきてるでしょ。
879:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/07 00:36:42 YwFbYfqm
>太后が私生児産んでそれを後継者にとかやらかしたら
反感買わないような状況をわざとマザリーニが作った、
というのがもう一人の左手の人の原作フォロー展開では。
つまり
>>873 要するに原作者が何にも考えていなかったからSS作者がフォローしなければならな (ズギューン!)
880:虚無の魔術師と黒蟻の使い魔 15話
08/07/07 00:38:02 jvE7wm+b
投下よろしいでしょか?
どうもあんまり筆がのらないので、きりがいいところで投下しちまおうって感じでかなり短めです。
さるさん食らわないからそれもまたいいかななんて開き直ったり
よろしければ投下します
881:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/07 00:38:10 GtdVBffx
そんなこれが絶対正しい公式裏設定みたいな言い方されてもなあ
あくまでも左手世界での辻褄合わせだろ
二次設定はどれだけうまくこじつけても二次設定、矛盾してても一次設定以外は公式にゃならないって
882:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/07 00:38:25 /fltUPSB
まとめたからって誰が得するんだ
883:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/07 00:39:40 /Zkz/nk0
>880
いいぞ!全部俺の上に落としてくれ!全部だ!
884:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/07 00:40:10 YwFbYfqm
投下されるときは自重するもんだ、支援!
885:虚無の魔術師と黒蟻の使い魔 15話
08/07/07 00:40:30 jvE7wm+b
「ボーっとしちまって、どうしたんだ相棒」
デルフリンガーがカチカチと音を立てながら言う。
「うん」
しかしルイズの反応は鈍い。
アンリエッタ姫の歓迎の式典が終わってから、ずっとこの調子である。
ルイズは久しぶりに見たアンリエッタともう一人のことで頭がいっぱいだった。
「まぁ、ボーっとするのは構わねえけどよお、俺の扱いがちょっとどうかと思うんだがよ……」
ルイズはボーっとしながらも、デルフをその手に持ち上下に動かしていた。
ダンベルのように。
「そういう使い方されると、おれの剣としての自尊心が……激しく傷ついちゃうんだよ……」
しかしルイズはにべもない。
「部屋の中で振り回したら危ないじゃない」
デルフの言葉を意に介さず、ダンベル運動を続ける。
そんな折、部屋の中に控えめなノックの音が響き渡った。
控えめではあるが、規則正しいノックの音。長く2回。短く3回。
ルイズはハッとして、デルフを投げ捨て扉へ駆け寄る。
扉を開けると、そこには黒い頭巾をかぶった小さな影。
「ひ……」
その影を見たルイズが口を開こうとするが、その影は口の前に指をあててそれを遮る。
そして影が杖を振る。光の粉が部屋中に漂う。
それはディテクトマジック。
その結果に満足したのか影は頭巾を取る。
「どこに耳が、目が光っているかわかりませんからね」
そう言いながら露になった顔にルイズは覚えがある。ノックの音を聞いた時から予感していた顔。
「姫殿下!」
昼間、学院総出で出迎えたトリステイン王女、アンリエッタがそこにいた。
886:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/07 00:41:01 GtdVBffx
なんかここまで固執されるとID:YwFbYfqmが左手作者本人で、ファンの力でこれを公式設定にするようノボルに働きかけよう!という運動での始めたいのかと邪推したくなるw
>>880
どうぞ
887:虚無の魔術師と黒蟻の使い魔 15話
08/07/07 00:41:29 jvE7wm+b
ルイズとアンリエッタは思い出話に花を咲かせる。
ルイズは幼少の頃、アンリエッタの遊び相手を務めていたことがあった。
その頃のことを二人は顔に楽しそうな笑みを浮かべながら語り合う。
しかし、そんな和やかな空気もいつまでも続きはしなかった。
アンリエッタの顔からいつの間にか笑顔が消えている。
「……本当、楽しいことばかりでしたわね、あの頃は……」
言葉の裏を読むまでもない。昔を思い出して笑うことはできても、今、現在のアンリエッタを笑わせるようなことはないということ。
ルイズはアンリエッタの現状に思いを馳せる。
アンリエッタの父親でもある先王が3年前に急逝した。
その後今に至るまで、王の座は空いたまま。アンリエッタの母であるマリアンヌ大后も女王の座に就く意思はなく、アンリエッタは国民の期待を一身に受ける立場になってしまった。
今は宰相のマザリーニが政治を取り仕切っているが、アンリエッタに求められるものも増えていっているのだろう。
しかしそれは……。
「結婚するのよ、わたくし。……ゲルマニアの皇帝と」
アンリエッタが肺腑の中身をすべて吐き出すかのように言う。
「それは!」
アンリエッタの言葉に、ルイズは思わず声を荒げるが、すぐに声のトーンを落とす。
「それは……おめでとうございます」
ルイズは言った。それがアンリエッタの望む結婚ではないことも、そして、自分がそれを祝う気になどなれないことを知っていながら。
それは仕方のないことなのだ。
ルイズが、貴族として上に立つ以上、下に立つ平民のために力を振るおうと決めているように、上に立つ者にはその特権的な地位に相応しい責任がある。
そしてアンリエッタは王族。
このトリステインにおいて、最も特権的な立場にある存在だ。
「……レコン・キスタですね」
ルイズは吐き捨てるように言う。
レコン・キスタ。最近いやでも耳に入ってくる名だ。
ハルケギニアの統一と、聖地の奪回などという名目のもとに、アルビオンで反乱を起こしている者たち。
アルビオン王家の旗色は悪く、早晩アルビオン王家は滅びるだろうといわれている。
そうなったら次は、地理的にトリステインに攻め込んでくるに違いない。
しかし、歴史はあれど小国にすぎぬトリステイン。しかも求心力たる王の座も空いたまま。
アルビオン王家を滅ぼすような相手に、立ち向かうには厳しいものがある。
そこで、アンリエッタがゲルマニアに嫁ぐことで軍事同盟を敷き、アルビオンに立ち向かおうというのだ。
それはトリステインが生き残るためにとりうるほぼ唯一といっていい手段。
「ええ。王権に楯突く不埒者どもに対抗するには、これしかないのでしょう」
アンリエッタの表情は暗い。
目の前の王女は、ある意味でルイズと同じなのだ。
ルイズが貴族でありながら系統魔法が使えないように、アンリエッタは王族でありながら王者としての力を持たない。
先王の急逝によってアンリエッタは国を背負う力を持たぬまま、それを背負うことになった。
888:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/07 00:41:30 Ri6UVD0h
>>880
砂糖を用意して待ってます。
889:虚無の魔術師と黒蟻の使い魔 15話
08/07/07 00:42:00 jvE7wm+b
「でも……」
アンリエッタが気まずそうな表情をしている。
「どうかなさいましたか?」
ルイズがそれを気に掛けるも、
「いえ、どうかしてたんだわ。こんなことお願いできるわけないじゃない」
アンリエッタはそう言って首を振る。
どうやらルイズに「お願い」があって、わざわざ人目を盗んでルイズに会いに来たらしい。
そして、それはとても言いづらい事らしい。
「姫様。私でよければ何なりとお申し付けください」
ルイズは言うと片膝をついて頭を垂れた。
アンリエッタの話をまとめるとこうだ。
ゲルマニア皇帝との婚姻の妨げとなる手紙が存在する。
それはアルビオンの皇太子、ウェールズのもとにある。
このままではアルビオンが敗れたとき、その手紙がレコン・キスタに渡り、同盟の妨げになるだろう。
故に誰かが取りに行かねばならない。
「ああ! ルイズ。聞かなかったことにして頂戴。こんな危険なことあなたに話してもどうなるものでもないのに」
アンリエッタが嘆く。
婚姻の妨げになる手紙。
つまりは恋文ということだろう。
しかも、それがただの結婚ではない、軍事同盟を背景とした婚姻にすら影響するというのならば、始祖のもとに愛を誓った、そういうことだろう。
ルイズは口には出さないがそう結論する。
ルイズは心をきめて口を開く。
「姫様。手紙奪回のその任務、私にお任せください」
始祖の名のもとに誓ってしまった愛をなかったことにする。それは実に自分にぴったりの仕事ではないか。
ルイズはそう考えた。
自分が異端であることをばれなければいいと思っているように、その手紙もなかったことにし、ばれなければいいのだ。
そして目の前の姫君。
アンリエッタ自身が言ったとおり、本来ルイズのような一学生に言ったところでどうにもならぬ問題だ。
だが、アンリエッタには頼れる人間としてルイズ以外の者がいなかった。それゆえにこの部屋にいる。
アンリエッタも頼れる力を持たぬ、弱い者なのだ。
ならばルイズは弱い者のためにその力をふるうことに異議はないし、それが幼少のころ同じ時を過ごした友人であるなら尚更だ。
「しかし……よろしいのですか?」
アンリエッタがルイズに視線を向ける。
ルイズはそれに対してまっすぐに力強い視線を返す。
「……ではお願いしますわ」
アンリエッタはそう言うと懐から一枚の紙を取り出して、手紙をしたためる。
そしてその手紙と一緒におのれの指にはまっている指輪をはずし、ルイズに手渡す。
「これが私の使者としての身の証になるはずです」
それは水がそのまま固まったかのような青く透き通った宝石のついた指輪だった。
「それでは明朝、すぐにでも発ちます」
ルイズはそう言うとアンリエッタを扉の所まで連れて行く。
ルイズはドアノブに手をかけながら、アンリエッタのほうを向く。
「姫様。ゲルマニアに嫁がれましたら早く信頼できる者を見つけ、そばに置かれますよう」
アンリエッタに頼るべき力がないからこそ、ルイズはこの任務を引き受けた。
しかし、アンリエッタが力を持たないでいていいわけがないのだ。
例え先王の急逝ということがあったとしても、アンリエッタは早く己の懐刀というべき存在を見つけておかなくてはならなかった。
それを怠ったが故にルイズのような学生に頼ることになる。
自分が異端になってまで力を手に入れようとしているように、アンリエッタも相応の力を手に入れるよう努力しなければならない。
ルイズはアンリエッタの返答を待たずに扉を開けた。
ギーシュがいた。
890:虚無の魔術師と黒蟻の使い魔 15話
08/07/07 00:43:44 jvE7wm+b
「さあ! いざ行かん! アルビオンへ!」
ギーシュは杖を振りかざし高らかに宣言する。
「馬鹿」
ルイズはそう言うとギーシュの後頭部をぽかりと殴る。
「何をするんだ!」
「アンタねえ、隠密って言葉の意味解ってるの?」
不遜にもアンリエッタの後をつけ、そして部屋をのぞき見話を盗み聞きしていたギーシュは、結局ルイズとともにアルビオン行の任務に就くこととなった。
早朝の魔法学院の正門で2頭の馬が轡を並べている。
「あ、あぁ、そうだった。すまない」
後頭部を抑えながら謝るギーシュの足もとの地面もこもこと盛り上がる。
するとそこから巨大なモグラが顔を出した。
モグラはルイズをつぶらな瞳で見つめている。
「紹介するよ。僕の使い魔、ジャイアントモールのヴェルダンテさ! どうだ! 美しいだろう!」
そう言うとギーシュはヴェルダンテを抱きしめて頬ずりをする。
ルイズが再びギーシュの後頭部を叩く。
「アンタは黙るってことを知らないのかしら?」
そう言うルイズだが、それは殴った理由の半分にすぎない。
もう半分は単純にモグラに頬ずりするギーシュの図が気持ち悪かったからだ。
ギーシュが頭を押さえてうずくまる。
なおも拳を握っているルイズを見ると、ギーシュはどうしても何時ぞやの決闘を思い出してしまい、少し腰が引けてしまう。
「そのモグラにはちゃんと留守番させておくのよ。急ぎだし、目的地が目的地だし」
ルイズがそう言って馬の手綱を取り、馬に跨ろうとしたところ、それを遮るものがあった。
ヴェルダンテだ。
「あぶねえ相棒!」
馬の鞍にくくりつけられたデルフリンガーが叫ぶ。
ヴェルダンテがルイズに猛然と飛び掛かるが、ルイズはデルフリンガーの言葉に反応し、ヴェルダンテが飛びかかる頃には何とかそちらを向いていた。
ルイズは両の手でヴェルダンテの突進を抱え止める。
がっぷり四つ。
早朝の魔法学院の正門前。
少女とモグラの異種族間相撲が行われていた。
「あぁ、ヴェルダンテ! 僕を殴るルイズを懲らしめてくれようとしてるんだね。なんて主人思いの素晴らしい使い魔なんだ!」
ギーシュはそう言うと感極まった顔をしている。
しかし当のヴェルダンテは何やら鼻をひくつかせ、ルイズの体をまさぐろうとしている。
それに対してルイズは、
「さっきから鼻を鳴らしてるんじゃないわよ~!」
突如始まった相撲で、己の腋から汗がにじみ出るのを感じていた。
鼻をひくつかせるヴェルダンテがまるでルイズの腋のかほりを嗅いでいるようで、ルイズの顔が羞恥で赤くなる。
「どっせ~い!」
「ああっ! ヴェルダンテ!」
ルイズは腰のひねりをつかってヴェルダンテを豪快に投げ飛ばした。
肩で息をしながら鬼の形相のルイズ。
その視界に、グリフォンに跨った、見覚えのある顔がいた。
「ワルド……様?」
その顔はえらく引いた顔をしていた。
891:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/07 00:45:47 FxzqvEUc
なんと豪快なルイズ
支援
892:くろありー
08/07/07 00:45:50 jvE7wm+b
以上です
支援ありがとう御座います
えらく短い
普段は短いパートで20k前後なのに10kもいってな
893:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/07 00:46:11 YfX8Ovwe
支援する!
894:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/07 00:46:19 EXKf6dFH
ガップリ四つは実に新しい!支援
895:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/07 00:48:25 GtdVBffx
乙
…そりゃ引くわなw>ルイズ山○(うっちゃり)●ヴェルダンデ川
896:くろありー
08/07/07 00:48:39 jvE7wm+b
なんつーかアルビオンに着くまでって、サイト的キャラがいないとワルドにもやもやした感情抱いたりしないから
どうにも書くことがなくて筆がのらんです
ヴェルダンテを投げた後、鬼の形相でごっちゃんネタやろうとか
ワルドがルイズのわきの汗のにおいでおっきして、純情パインネタやろうとか
ジャンプ打ち切り漫画ネタばっか書きたくなってしまったけど、自重しといた
897:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/07 00:51:27 zMJkxUiz
黒蟻さん乙です
>>870
こういうのは避難所向きだと思うんだがどうだろう?
あと問の二つ目な
後継者ができたと言っても一人しかいなければ意味ないし、
二人なら百年戦争フラグだなw
898:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/07 00:54:28 Wb4Jvu3S
つっぱれ有栖川おもいだした
899:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/07 00:55:54 pW2tUKb6
黒蟻の方、乙です
ルイズの腋の香り…いい趣味してるな、ヴェルダンデ
900:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/07 00:58:17 YwFbYfqm
黒ありの方お疲れ様でした!
901:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/07 01:07:54 ZF+zXV6u
鬼無双ですね。わかります
902:松下
08/07/07 01:09:53 9QppQT8H
黒蟻さん、乙でしたー。
さてと、10分後に千年王国が参ります。お気をつけ下さい。
903:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/07 01:11:14 GtdVBffx
僕の可愛いルイズが、庭の小舟で僕にしがみついて泣いていたあの子が。
ちょっと離れていた間にジャイアントモールを投げ飛ばすほど逞しく育っていたよママン…。
ん?そう言えばフーケ死んでるからワルドもガンダールヴを従えているルイズの系統は虚無だという推測は立てられないはずだよな?
爆発だけで虚無と見破るんだろうか?それとも体格から考えて非常識な怪力はガンダールヴの力と予想するんだろうか?
まさか野心を持つ切っ掛けが無くなって綺麗なワルド化?
904:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/07 01:11:32 krES8Pgf
相撲取りの召喚…
播磨灘、ウルフマン、エドモンド本田、他に誰がいたっけなあ
905:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/07 01:15:02 Wb4Jvu3S
>>904
うっちゃれ五所瓦より五所瓦角
修羅の門より南洋竜
906:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/07 01:16:14 Ri6UVD0h
大相撲刑事っていたよな。
907:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/07 01:18:51 s/Cb7D5n
GS美神の恐山だな。
あの美神令子が得意の卑怯技を使っても、赤字覚悟の破魔札乱れ撃ちをしても勝てない程の強さ。
体育会系で、後輩に稽古を付けてやる良い先輩だし、ちゃんこ料理の腕もある。
幽霊だけどw
908:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/07 01:19:06 zMJkxUiz
鉄拳にもいなかったっけ
909:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/07 01:20:41 krES8Pgf
でも誰を召喚しても最初は、
「ゼロのルイズが裸のデブを召喚したぞwww」
なんだろうなあw
910:復活・使い魔くん千年王国 第四章 虚無への供物 1/6
08/07/07 01:20:51 9QppQT8H
えー、では投下開始。なんかもう、いろいろ危険です。
《主は我が牧者なり、われ乏しきことあらじ。主はわれを緑の野に伏させ、憩いの水際に伴いたもう。
主は我が魂を生かし、御名のゆえをもて、われを正しき路に導きたもう。
たといわれ死の陰の谷を歩むとも、災いを恐れじ。汝われとともにいませばなり》
(旧約聖書『詩篇』第二十三章より)
反逆地獄へ落ちた松下たちを待っていたのは、妙にニヒリストでシニカルな案内人。
彼に案内されて、一行は地獄の中心からアルビオンへ帰還する、復活への旅路を歩み出した。
「なーによマツシタ、こいつにもう少し言い返してやらないの?
あんたの生きる理由ってやつが、とっても冷ややかに嘲笑われたのに」
「彼の言うことにも一理はある。別に腹も立たんね。
ここのような、時間のない永劫の場所から見れば、地上での千年や六千年や一万年など、ほんの一瞬と変わらんよ。
それに、ぼくのすべきことは、やたらに他人と言い争うことではなく、現在苦しむ人々を救うことなのだからね」
松下が相変わらずマイペースなので、ルイズは少々期待が外れて不満そうだ。
……ふと、ある疑問が彼女の頭に浮かぶ。
「そういえばさぁ、あんたって私に召喚される40年以上前に、一度死んでいるじゃないの。
その間は何やっていたのよ。死にっぱなしで寝ていたわけ?」
「いや。ぼくはあの時、すでに『死んでも生きる方法』を発見していたのでね……。
つまり、霊体に魔力を纏わせて肉体とし、霊界で復活する秘術のことだ」
「!?」
何を淡々とトンデモないことを言い出すのだ、このガキは。
「そのまま死の世界へ降りていって、10年ほどかけて悪魔どもと戦い、乱れた地獄を統一していた。
そして地獄の魔物を率いて地上へ攻めあがって行って、日本の首都を再占領したんだが、すぐ天界に拉致されてね。
まだ時が満ちていなかったんだろう。それから30年ばかりは、勉学と修行と瞑想だよ。
霊界は時間の流れが現世とは異なるから、あまり成長はしていないが」
「宇宙規模で迷惑なガキなのね、あんたって……やれやれ」
どうにもこいつは、生きていようが死んでいようが尋常ではない。
ルイズはいつものように、額を押さえて溜息をついた。どこぞの雑用係みたいに「やれやれ」が口癖になったらどうする。
よく考えたら、8歳で死んでから44年ということは、普通に生きていれば今年で50歳過ぎ。
自分の両親と同い年ぐらいではないか、確かにそんな貫禄はあるが。
いやに老けた子供というべきか、幼い容姿の壮年というべきか。……やっぱり悪魔か。
911:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/07 01:21:16 krES8Pgf
雑談をうっちゃって支援
912:復活・使い魔くん千年王国 第四章 虚無への供物 2/6
08/07/07 01:22:19 9QppQT8H
くっくっ、とその後ろで忍び笑いがした。松下が振り向く。
「何がおかしいんだ、佐藤」
「スミマセン。いやあ、メシアのそばにこんな美少女が二人も付き添っているなんて、と思ってしまいましてねえ」
「あらいやですわサトウさん、私が美少女だなんて! うふふ」
シエスタがなんだかオバサンくさく照れる。
「まあ、以前の十二使徒は、変な連中ばかりだったからなぁ。女性と言っても、フクロウや中年魔女や幽霊とかだったし」
「あんたが一番変なのよ。『類は友を呼ぶ』って言うじゃないの!」
「じゃあ、ぼくを呼び寄せたきみも相当変な奴ということだな。人のことが言えるか御主人サマ、『ゼロのルイズ』」
「ななななな、ナニヌネノ……!!」
あっさりと松下にあしらわれ、言葉のカウンターを食らって、ギリギリとルイズは歯軋りした。
死んでもある意味明るい連中である。
「でも、メシア。この佐藤が生きていた頃は、メシアが地獄から攻め寄せてきたなんて大事件は、
少なくとも東京では起きていませんでしたが……」
「じゃあ、お前の存在しない異世界の東京に攻め込んだのかな。それとも天界側が人間界の記憶操作でもしたか」
しばらく歩くが、案内人はまだ立ち止まらない。この深淵を渡るフネが用意してあるとのことだが、本当だろうか。
「ところでルイズ。今気がついたことなんだが」
「あによ」
「ぼくの右手のルーンが消えている」
タハッ、とルイズが変な声を出してつんのめった。さっきから驚いてばかりだ。
「…………え、ええええええ!?」
「使い魔と主人の契約というのは、『どちらかが死ねば外れる』ものだったよな。
なにしろ、今は両方とも死んでいるからなぁ。肉体が死ねばルーンも外れるんだろう」
「ど、どーすんのよ」
こんな悪魔人間を縛り付ける契約のルーンが外れたら、自分は、世の中はどうなってしまうのだ?
「獣を操る能力も便利ではあるし、《虚無の使い魔》ということで箔がついてはいたが……。
ここは動物もいそうにないし、今のところヴィンダールヴはいらないな。
復活したら再契約に挑戦してみるか? いくら腐れ縁とはいえ、すっぱり縁が切れては少々寂しいじゃないか」
「使い魔召喚のゲートは、基本的にアトランダムに開くのよ。召喚するのもされるのも運命としか言えないわ。
異世界の人間が召喚されるなんて、いままで聞いたこともなかったし」
「なるほど、じゃあぼく以外の者が使い魔として召喚される可能性も充分あるわけだ。
そこを歩いている虚無主義の案内人とかどうだい。右手が三本もあるぜ」
「ふんだ、次はもうちょっとマトモな人格の使い魔を召喚してやるわよ!」