あの作品のキャラがルイズに召喚されました part150at ANICHARA
あの作品のキャラがルイズに召喚されました part150 - 暇つぶし2ch42:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/30 23:12:39 2jeS+2u6
今日のNGID:「2gPFEZbg」

43:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/30 23:12:44 2gPFEZbg
157 :削除申請:2008/02/14(木) 20:56:50 ID:kMFXiYvI
管理人様
以下自作品の削除をお願いします。
(本人証明として、自ブログの方も削除致しました)

長編:1編
「ゼロのgrandma」
短編:2編
「色鮮やかな空へ」
「四系統だけど」

色々とご迷惑をお掛けしました。以降、忘却願います。






夜天の使い魔 第一部
夜天の使い魔 第二部

URLリンク(rein4t.blog123.fc2.com)

44:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/30 23:22:14 isJI4dx9
投下乙でした

>>42
荒らしのIDに微妙に似てて泣いた

45:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/30 23:24:30 XQ08KP1v
投下乙でした。

タバサ可愛いよタバサ。
イザベラ様かっこいいよイザベラ様。

……このスレでのイザベラ様の愛されっぷりは異常じゃね?

46:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/30 23:25:55 2jeS+2u6
>>45
それを言うならフーケもかと。

47:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/30 23:27:16 qM2U8id6
地龍の人、Aの人かレオの人
サハラに住むでっかいアリジゴクの幻獣を倒しにいくタバサの外伝が見たいす
つ蜃気楼の彼方の町にはブリミル=ノアの石像が…

48:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/30 23:36:25 jca33tA4
>38->>41何故糞テンプレを繰り返すのか。
MtLの余韻が台無しではないか。
クロスオーバーがどうしてオリジナル展開にばかり従い続けねばならないのか語るくらいしたらどうか。

それにしてもイザベラ様もかっけー。

49:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/30 23:40:41 83y+hd5n
>>48
荒らしに触らないように御願いします。

レスがついていると荒らしと判断されなくなります。
気持ちはわかりますが御願いします。

50:くろありー
08/06/30 23:44:48 7IWHPYmd
地竜の人が予約してますよね。
その次に予約させていただきまする

51:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/30 23:46:39 qhtEvJ7y
>>50
>>12
現在進路くりあー 投下して大丈夫かと

52:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/30 23:47:24 aUmvmI42
地竜の人は予約を撤回していますから進路はクリアです

53:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/30 23:47:49 34+vaVvS
>50
地竜の人は家の事情で投下後日になったかと

54:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/30 23:47:55 isJI4dx9
今日も投下が多くてうれしい限りだ。

55:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/30 23:48:07 7IWHPYmd
あら
じゃあ投下しまする
14話

56:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/30 23:49:37 B2KqCtYD
>>50
地竜の人はガタノゾーアに喰われています。
進路クリアー

57:虚無の魔術師と黒蟻の使い魔 14話
08/06/30 23:49:37 7IWHPYmd
「え? あの? すいません。何て言いました?」
そんなことを言う目の前の女性に、理不尽な怒りがこみ上げてくる。
しかし、その怒りがどれだけ理不尽なものか十分に理解している故、彼はその怒りを己の心のうちに留めておく。
結局、彼も現実を受け入れるのことが出来ていないのだ。何にでもいいから強い感情をぶつけて、現実から目を背けていたいのだ。
だが、それはしない。
彼は声と感情を押し殺して言う。
「もう一度言う……マチルダが死んだ」
彼は『土くれ』のフーケの協力者だった。
盗賊稼業に手を貸していたわけではない。フーケがその仕事で稼いだ金を預かり、それを食料品や生活雑貨に変えてアルビオンのウエストウッド村に届けていた。
そこにはフーケの妹分とも言うべき存在がいて、その妹分と、彼女が面倒を見ている孤児たちを養うため。
目の前にいる女性。ティファニア・ウエストウッドこそが、そのフーケの妹分である。
「え? うそ? 何を言ってるんですか××××さん」
ティファニアは何を言っているのか解らないという顔をしている。
事実、その言葉の意味が理解できていなかった。頭がそれを理解することを拒んでいた。
彼は怒鳴りたくなる衝動を抑える。
「事実だ。10日ほど前に、マチルダは死んだ」
マチルダ・オブ・サウスゴーダ。『土くれ』のフーケの本名。
マチルダ自身、長いこと名乗っていない名で、もう名乗る者のいなくなった名前だ。
ティファニアの口からは乾いた笑いが漏れている。
「そんな、××××さん。変な冗談はやめてください。マチルダ姉さんが聞いたら怒りますよ」
ティファニアが信じられないのも無理はない。
彼も信じることは出来なかった。
『土くれ』のフーケが死んだという話を耳にしてから、あらゆる手を尽くして情報をかき集めた。
そのどれもが、フーケが死んだというものばかりだった。
だが、それもマチルダが世間を手玉に取り、死んだと見せかけているに違いないと思った。
きっと、盗賊稼業を辞めてもティファニア達を養う算段がついて、フーケを死んだことにしたのだと。
だが、彼のもとにマチルダが現れることはなかった。
彼はいてもたってもいられなくなり、終に、衛兵の詰め所の死体置き場に潜り込み、フーケの死体といわれるそれを確認した。
黒く焼け焦げたそれは、とてもじゃないが個人を判別できるようなものではなかったが、彼はわかってしまった。
唇が焼け崩れて、むき出しになった歯。少し並びの悪いその歯は、めったに見せないマチルダの笑顔から漏れるそれと同じものだということに。
彼が密かに思いを寄せていたそれと同じものだということに。
「嘘じゃあ、ない。マチルダはもう戻ってこない」
「嘘」
「嘘じゃない。マチルダは……死んだんだ」
ティファニアの口からは、相変わらず乾いた笑いが漏れている。
しかし、それとは別の生き物のようにその目から涙がこぼれていた。
その涙が頬を伝い渇いた口を潤すと、ティファニアの口から漏れるのは乾いた笑いではなく、嗚咽に変わった。
「暫くここにいろ。そんな顔で子供たちの前に出てくるな。あいつらの面倒は見といてやる。それと、落ち着いたら身の振り方を考えろ。あいつから金を預かった分、3ヶ月ぐらいは俺が面倒見てやる。
それを考えられるぐらい落ち着いたら……、あいつがどうやって死んだか、教えてやる」
彼はそう言うと立ち上がり、ティファニアの元から離れていく。
「嘘です……嘘に決まってます!」
ティファニアはその背中に声を飛ばす。
「だって、××××さん、全然泣いてないじゃないですか! ××××さんはマチルダ姉さんのこと……」
ティファニアが最後までその言葉を継ぐ前に、彼は振り返った。
その目には、涙など浮かんではいない。
「……俺はもう泣いた」
それだけ言うと彼はティファニアから目を逸らし、再び歩き始めた。




58:虚無の魔術師と黒蟻の使い魔 14話
08/06/30 23:50:47 7IWHPYmd
「あらら。また叱られたわね、ルイズ」
キュルケがからかうように言うと、ルイズの隣へと座った。その隣にタバサも座る。
学院のオープンテラスのテーブルの一つを、3人で囲んでいる。
「うるさいわね。だって仕方ないじゃない。風は最強しか言わないんだもの、あの先生。そりゃあ居眠りの一つもしたくなるわよ」
ルイズはそう言うとだらしなくテーブルに突っ伏した。
ルイズは寝不足だった。
早朝、皆が寝静まっているころに起きると、デルフリンガーを背負って走る。そして、爆発音が他の生徒の眠りを妨げない所まで着くと、デルフリンガーを振ったり、系統魔法の練習をしたりする。
それは夜も行っている。夕食を食べた後、すぐにそれを行う。
そして、それを終え、風呂を浴びた後、寝る前に魔術審議を行う。
就寝時間こそ他の生徒たちと変わらないが、起きるのが早い分、必然的に睡眠時間は短くなる。
「ふあ」
キュルケが欠伸する。
「私も睡眠不足なのよね。睡眠不足は美容の敵っていうけど、アレは美容にいいっていうのよね。アレで睡眠不足だとどうなるのかしら」
「アンタの睡眠不足と私のを一緒にしないでよ!」
「下品」
キュルケの言葉に、ルイズとタバサが突っ込みを入れる。
「私はアンタと違って真面目な理由で寝不足なんだから!」
ルイズが言う。
「ふーん。でも、あんまり根を詰めすぎないほうがいいわよ……タバサも」
キュルケが突然タバサに水を向ける。
タバサはそれに対し、読んでいた本から一瞬目を離しただけだった。
キュルケは、この小さな親友が何か大きなものを抱えていることを、何とはなしに感じ取っていた。
そして、ルイズも。
タバサはルイズのトレーニングに時折付き合うようになった。
初めてタバサがルイズのトレーニングに顔を出したとき、タバサは神妙な顔をして言った。
「もし、あなたの夢の話を話してもいいと思えるときがきたら話して欲しい」
それに対するルイズの返答は沈黙だった。
タバサはシュラムッフェンの恐ろしさを知り、ルイズがそれを話すのを良しとしないことを承知しながらも、そう言った。
言ったのはその一度きり。
タバサにはタバサで、力を手に入れない理由があるのだろう。
ルイズはそう感じていた。
対するタバサは、ルイズとトレーニングするようになって、ルイズには得体の知れない力があると確信していた。
ルイズは幾ら繰り返そうと、魔法を使えるようになる気配を見せない。爆発の命中精度も上がったかと思えば戻りを繰り返している。
しかし、身体能力が尋常から外れたものになっている。
タバサは自分の身体能力にはある程度の自信がある。実践の中で鍛えられた身のこなし、素早さは、並みのメイジでは並ぶ者はいないと思っている。
現にルイズでもタバサには及ばない。
だが、一方で腕力に劣ることも自覚している。単純な力は、どうしても体格に依存する。タバサの体格では身につかないものもあるのだ。
だがルイズは違う。
ルイズとタバサの体格に大きな違いはない。
だがルイズは巨大な剣を振り回してみせる。その膂力はある程度鍛えられた男に匹敵するのではないか。
ルイズの力は決して人間離れしたものではない。だが、ルイズの体格からは十分に離れたものだ。
ルイズは人間の範疇を超えさえしなければその異常性を悟られることはないと思っている。
だが、タバサの目はそれをしっかりと捕らえていた。
ルイズの持つ得体の知れない力。いつか自分も手に入れる。
タバサの友情が必ずしも純粋なものだけかといえば、それは違った。
不純なものだけかといえば、それも違った。


59:虚無の魔術師と黒蟻の使い魔 14話
08/06/30 23:52:33 7IWHPYmd
シエスタが紅茶を3つルイズたちの前に並べる。
ルイズはポケットから色とりどりの飴玉の入ったビンを取り出すと、それを弄り回しながらシエスタの手際を眺める。
シエスタは紅茶を並べ終えると、一礼をし、立ち去ろうとする。
「ちょっと、シエスタ。急いでるんじゃなければちょっと寄ってきなさいよ」
ルイズがその背中に言った。
シエスタは振り返るが、少し複雑な、申し訳なさそうな顔をしている。
ルイズはすぐその表情の意味を悟る。
「あぁ、いいのよ、こいつらのことは気にしなくて」
ルイズはキュルケたちを指して言う。
「こいつら呼ばわりはないんじゃなくって、ルイズ」
キュルケがルイズに言うと、シエスタが恐縮する。
「だからってあなたが恐縮しないでよ。ルイズに文句言っただけなんだから。シエスタって言ったっけ? 私に気をつかわなくったっていいわよ」
キュルケはそう言うが、やはりシエスタの表情から恐縮した雰囲気が取れることはなかった。
「別に呼び止めたからって、特に用があったわけじゃないけど……」
ルイズはそう言いながら自分の手元のビンを見る。
「『おやつの時間だから、食べるといいんだ』」
ルイズはそう言うと飴の入ったビンをシエスタに手渡す。
シエスタは小首を傾げる。キュルケとタバサも奇妙なものを見たような顔をしている。
「なあに? 今の。おやつの時間?」
キュルケが言う。ルイズの言葉も口調も、何か奇妙なものだった。まるで何かの台詞を棒読みしているような。
「ちょっと『本』に出てきた台詞を真似しただけよ。そんな変なものを見たような顔しないでよ!」
ルイズが顔を赤くして言う。
「へえ? タバサは何の本か判る?」
キュルケがタバサに水を向けると、タバサは首を振る。
タバサも心当たりはないと言う。
「今度はどんな本なのよ」
「秘密よ」
キュルケの問いに、ルイズは答えなかった。
モッカニアが言った言葉。その調子が妙にルイズの頭に残っていたため、何となく真似してみたくなったのだ。
「あの……」
シエスタが控えめに声を上げる。
「その本の中で、次はその台詞になんて返すんですか?」
シエスタが少し頬を染めながら言う。
「え? えっと……『甘いものは好かん』って飴を返しちゃうのよね。でもシエスタは食べてよね。べ、別に、このビンを空っぽにして別のことに使いたいだけなんだからっ、遠慮することないわよ」
ルイズがそう言うと、
「はい。いただきます」
シエスタはそう言って笑った。

60:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/30 23:53:05 mOLYuzmD
sien

61:虚無の魔術師と黒蟻の使い魔 14話
08/06/30 23:53:34 7IWHPYmd
「好きな色の選んでいいわよ」
シエスタが選んだのは黄色い飴玉だった。
「綺麗……」
シエスタはそう言って、飴を日の光で透かして見てから口に放り込む。
「じゃあ、私も空にするのに協力するわよ」
キュルケはニヤニヤと笑いながら言う。
「別に欲しければあげるけど……アンタは赤いのにしなさいよ」
ルイズの言葉にキュルケは首をかしげながら赤い飴玉を取り出す。そして、タバサにもビンを回す。
「タバサは……青い飴玉を選んでもいいわよ」
ルイズが言う。
タバサはその言葉に素直に従い、青い飴玉を取り出す。
シエスタはそれを見て、髪の色に合わせているのか、などと思っていたが、ルイズはピンクの飴ではなく青い飴玉を選ぶ。ちなみにシエスタの髪の色である黒の飴はない。
「あ、なーるほどね」
キュルケが何かを思いついたらしく、楽しそうにニヤニヤと笑う。
「モンモランシーが言ってたわ。思い出した。おまじないっていうか、ジンクスっていうか」
「な、ななな、何のことかしらっ! 私はさっぱりわからないわ!」
ルイズが慌てて、しどろもどろになりながら否定する。
「何でも、赤い飴をなめると小さくなって、青い飴をなめると大きくなる、なんてねぇ」
キュルケは満面に得意げなニヤニヤ笑いを浮かべる。
「し、知らないわ! は、はは、初耳ね! な、何が大きくなったり小さくなったりするのかしら!」
ルイズはさらにしどろもどろになる。
「でも見直したわよ。タバサにも青い飴をあげるなんてねえ」
キュルケはそう言うと、楽しそうに口の中の飴をころころと転がす。
「でも、シエスタにも赤い飴をあげたほうがよかったんじゃなくって? そうでもしないと追いつけないわよ」
キュルケはルイズとシエスタの胸を交互に指差して笑った。
シエスタも思わず笑ってしまう。
ルイズは相変わらず顔を赤くしてキュルケの言葉を否定していた。
タバサはビンを振り、もう一個青い飴を取り出して口に入れた。



62:虚無の魔術師と黒蟻の使い魔 14話
08/06/30 23:54:08 7IWHPYmd
「でさあ、シエスタからも言ってやってよ。あんまり根を詰めすぎるなって」
キュルケはそう言うとティーカップを口に寄せる。
「別に、私は根を詰めすぎとかそんなことないわよ」
ルイズはキュルケの言葉を否定するが、シエスタは心配そうな顔をしてルイズを見ている。
「ミス・ヴァリエール。色々あったとは思いますが、無理して体を壊しでもしたら元も子もないですよ」
シエスタはそう言ってルイズの身を案じる。
シエスタは解ってくれない。ルイズはシエスタに案じられたいのではない。シエスタに頼られたい。そしてそれに応えたいのだ。
それなのにシエスタは心配そうな顔でルイズを見ていることが多い。
ルイズはそれを悔しく思うが、かといって、不快というわけでもなかった。
平民に心配されるというのは、ルイズにとっては憤慨するに足るようなことであるが、それがシエスタだったら不思議と悪い気はしなかった。
「それならば、その……」
シエスタはその続きを言いにくそうに、口ごもる。
しかし、すぐ意を決したように口を開く。
「今度私の村に来ませんか? 何もない所ですけど、すごいきれいな草原があって、その……ミス・ヴァリエールが毎朝毎晩、特訓なさってることは存じてますが、一度ゆっくり休むのも、いいんじゃないかって……」
シエスタの言葉は、最初だけ勢いがあったが尻切れに声のトーンが落ちていく。
「シエスタの村?」
「はい。タルブっていうんですけど……ミス・ヴァリエールには、その……いつも仲良くしていただいてますし……何かお返ししたくて……」
シエスタは言葉の途中から顔を赤くして、俯いて言う。
貴族の娘であるルイズを誘うということ自体が僭越であり、しかもタルブは名の知れた観光地でもないただの田舎の村。
シエスタは、普段メイドとしてルイズから声をかけられない限り、自分からルイズに声を掛けることなどなかった。平民から貴族にメイドとしての職務以外で話しかけるなど、無礼といわれてもおかしくないことである。
だがシエスタは、いつも何かと声をかけてくれるルイズに、自分からも何かしたいと思ったのだ。
「な、何言ってるのよ、シエスタ。私とあなたが仲良くしてるですって?」
ルイズの口からそんな言葉が発せられる。
シエスタは思わずルイズのほうをまじまじと見る。
やはり無礼だったか、そう思ったシエスタの目に映ったルイズは、顔を真っ赤にしてシエスタから視線を外しあらぬ方向を見ていた。
「な、仲良くしてるつもりだったら、『ミス・ヴァリエール』なんて呼ばないで、その……『ルイズ』って呼べばいいんじゃないかしらっ!」
ルイズはそう言うと、赤い顔をさらに赤くする。
シエスタはしばらくルイズの言葉が呑み込めないでいたが、すぐに理解する。
「は、はい。ルイズ様!」
だが、シエスタの言葉にルイズは不満そうに口をとがらせる。
「様付けじゃあ、ミスつけるのと変わらないわよ」
「じゃ、じゃあ、ルイズ、さん……で」
シエスタが言うと、ルイズが顔を綻ばせる。
「それでいいわ、シエスタ。じゃあ、今すぐってわけにはいかないから、夏休みとかまとまった休みに入ったら行ってみようかしら」
ルイズはそう言うと、満足げな笑みを浮かべてティーカップを口に運ぶ。
シエスタもルイズの言葉に花開いたように笑った。
キュルケはそれをにやにやと見ていた。
「忠告しとくけど、女同士は不毛よ」
ルイズは思いっきり紅茶を噴出した。



63:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/30 23:54:17 mOLYuzmD
支援

64:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/30 23:54:41 mOLYuzmD
支援

65:虚無の魔術師と黒蟻の使い魔 14話
08/06/30 23:55:09 7IWHPYmd
明くる日。
ルイズは相変わらず教室で欠伸をかみ殺していた。
今は火の授業。
だが、教壇の上には誰もいない。
担当教諭のコルベールが時間になっても現れないのだ。
結局コルベールは定時を10分ほど過ぎてから現れた。
何やら見慣れぬ物体をもって。
またか、と教室内のすべての生徒が思う。
コルベールの悪癖。発明趣味。
時折、意味のわからない発明品を持ってきては、それの説明で授業時間をつぶしてしまう。
生徒の中には、火の系統をすでに捨ててしまっている生徒も少なからずいれば、そもそも勉学にそれほど意欲を持たぬ者もいるので、授業がつぶれること自体にはそれほど不満は出ない。
それでもコルベールが満足するまで教室から出れないというのはいささかの不満がある。
「諸君は火の系統の本質を破壊と看做すものが多いようだが、私はそうは思わない」
コルベールが演説を始める。
キュルケがこれ見よがしに大きな欠伸をする。
彼女は火の系統の術者として、コルベールの言葉には真っ向から反対する思想を持っている。しかしそれはキュルケが特別なのではなく、それが火の術者の一般的な考え。
特別なのはコルベールだ。
ルイズも頬杖をつき、退屈そうにコルベールのほうを見ているし、タバサにいたっては、まるで話を聞かずに本に目を落としている。
コルベールの演説は続く。
「……それで完成したのがこの『愉快なへび君』。……こうしてふいごで油を気化させて……するとこの円筒内に……」
コルベールの演説に眠気を誘われたルイズがうとうととし始めた時、突如、爆発音がした。
「ほら見てごらんなさい! 円筒内で気化した油が爆発する力で、上下にピストンが動いているでしょう!」
眠りを妨げられたルイズが恨みがましい目でコルベールを見る。しかし、その眼は徐々に恨みがましいものから驚きの色へと変わっていく。
「それを動力として、車輪を伝って……ほら! ヘビ君が顔を出して御挨拶!」
ピストンの動きがクランクやギアを介して、最終的に不細工なへびの人形がぴょこぴょこと顔を出していた。
感極まっているコルベールを周りの生徒たちは冷めきった目で見ていた。
だが、ルイズは一人、机から身を乗り出さんばかりにしている。
「おお! ミス・ヴァリエールは興味がおありかな?」
コルベールがそんなルイズを目ざとく見つける。
「あの、先生。たとえばそれを使って車輪を回したりすれば……」
ルイズが恐る恐る言うと、コルベールは我が意を得たりとばかりに破顔する。
「そうなんですよ! すばらしい! よく解りましたね! これを使えばいずれは馬を使わない馬車もできると私は確信しているのですよ!」
コルベールは言うが、周りの生徒たちの反応は相変わらず薄い。馬で曳けばいいものをなぜそうしないのか。コルベールの発明品の意義が理解できない。
しかし、ルイズはコルベールの言葉により一層驚く。
『本』をいくら読んでも、魔法権利よりもよっぽど理解できないモッカニアの世界の科学技術。それが目の前で再現されていた。
(これって、モッカニアの世界でいう『エンジン』よね……)
目の前の禿げ上がった教師は、ルイズの思うよりよっぽど凄い人間なのかもしれない。
エンジンなんていうハルケギニアの人間からすれば「まるで魔法」といったものをゼロから作り上げてしまったのだから。
「すごい……」
ルイズの口から思わずそんな言葉が漏れると、近くに座るキュルケとタバサが奇異の目を向ける。
彼女たちはルイズが注目している、という理由でコルベールの発明品に注目した。

66:虚無の魔術師と黒蟻の使い魔 14話
08/06/30 23:55:39 7IWHPYmd
「素晴らしい! これの価値を分かってくれるとは! これの使い方次第ではいろいろな物を動かせるはずなのですよ! 馬車も! 船も!」
コルベールのテンションは右肩上がりで上がっていくが、ルイズの言葉がそれを遮る。
「空だって飛べる」
「そう空だって! ……空ですか? まぁフネの推力にすることはできるでしょうが」
コルベールは己の発明品にいろいろな夢を重ねていたが、空を飛ぶというのはその中にはなかった。
「できるわ」
ルイズは言う。
「風石なしでもその『エンジン』があれば空を飛ぶことはできます」
「ほほう」
コルベールは興味をひかれた顔をしているが、ふと首をかしげる。
「その『えんじん』というのはなんですか」
コルベールの言葉にルイズは己の失言を悟る。
「え、ええと、あれです!」
ルイズはあわてて取り繕う。
「その発明品。『トリステインに吹く熱風!』という意味で『エンジン』なんて名前はどうかなぁって思いまして!」
「どこの言葉なのか知りませんが……まあ、名前の候補の一つにしておきましょう」
コルベールはとりあえず『えんじん』という単語についてはそれ以上聞かなかった。
それよりも本題があった。
「で、ミス・ヴァリエール。あなたはこれを使って空を飛ばせる機械のアイデアがあるのですか?」
コルベールが尋ねる。
ルイズは必死に頭の中、『本』で読んだ記憶を辿る。
「そ、そうですね。まず、できるだけ軽い船を作ってですね、それに翼を付けます」
「翼、ですか? これを動力に羽ばたくわけですか……ちょっと厳しい気もしますが」
コルベールが頭の中で様々な試算をしながら言う。
「いや、羽ばたかないんです!」
ルイズは言いながらモッカニアの『本』の中で、最も理解しがたい科学の知識を総動員する。
「『エンジン』はあくまで前に進むための力で、浮くための力は……」
ルイズは指でこめかみを押さえる。
「えーっと、ほら! 斜めにした紙に息を吹きかけると舞い上がるじゃないですか! 翼に風を当てて上に上がる力にするんです!」
ルイズはうろ覚えの知識を総動員して、正しいのかどうか自分でも解らないことを言った。
殆どの武装司書は飛行機の運転ぐらいこなす。整備は者にもよるが、ある程度の原理は知識としてある。それは当然モッカニアも。
だが、ルイズには『ベルヌーイ』という単語が頭に残ってたりするだけで、原理なんて殆ど覚えてなかった。
周りの生徒たちは、何を言っているんだという目で見ているが、コルベールはあごに手を当てて考え込んでいる。
「ヘビ君を風車に……羽は羽ばたかない……角度を……」
コルベールはぶつぶつと言いながら黒板に次々と絵を描いていく。
ルイズはそれを見てまた驚く。
多少寸詰まりな感があるが、モッカニアの世界の飛行機に近いものがそこに描かれていた。
「うむ! これは飛びますぞ! もっと大きな力を生み出せるような改良が必要ですが……。ミス・ヴァリエール! 素晴らしい。素晴らしいインスピレーションをお持ちだ!」
コルベールはそう言うと、おもむろにルイズに拍手を送る。
それは、生徒たちの沈黙する教室にむなしく響き渡るが、キュルケが不意にその拍手に追従した。
それは、8割ルイズを、2割コルベールをからかう為のものだったが、それが伝染した。
タバサがパタリと本を閉じて、拍手しだしたかと思うと、今まで眠っていたギーシュが目を覚まし、よく解らないが拍手する空気なのかなと思い拍手する。
そこから先は加速度的に拍手するものが増え、最後にはルイズ以外の全員が拍手をしている。
「なんなのコレ?」
ルイズは顔を真っ赤にしながらつぶやいた。


67:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/30 23:55:40 aUmvmI42
shien

68:虚無の魔術師と黒蟻の使い魔 14話
08/06/30 23:56:26 7IWHPYmd
ギトーが教室に入ると、万雷の拍手で迎えられた。
というわけではもちろんない。
それはルイズへの拍手。コルベール以外の者はほとんど、そもそも何故自分が拍手しているかも理解していなかったが。
常に陰気な顔をしてて、生徒からの受けも悪いギトーが、珍しく目を見開いて驚く。
やがて、そんなギトーに気付いたのか、ひとり、二人と拍手をやめ、またコルベール一人の拍手に戻る。
それを見るや、ギトーが一つ大きく咳払いをする。
「いったいなんの授業なのか、ミスタ」
その言葉にコルベールが我に返る。
いや、そう言うには不十分なテンションを引きずっていた。
「おおう! ミスタ・ギトー! 私は素晴らしい才能に出会いました! 見てください! これは私が発明した……」
コルベールがそう言って指差す物を見て、ギトーはまたこの同僚の悪癖が発生したのだなと悟る。
困ったものだと、コルベールのことを思うが、ギトー自身も生徒からは困った教師と認識されていた。
往々にして、人は自分が一番困った人間だなどとは思わず、自分のことはいくら悪くても2番目か3番目あたりと思い込むものであった。
またギトーは咳ばらいをし、コルベールの言葉を遮る。
「私の要件を先に言わせてもらっていいかな。……アンリエッタ姫殿下が急遽、学院に行幸されるそうだ。生徒は歓迎の準備をするように、とのこと」
ギトーがそう言うと、生徒たちから歓声が上がる。
生徒たちはそれぞれに服装の相談などをしながら教室を出ていく。
あっという間に部屋にはコルベールだけが残され、彼も少し寂しげに発明品を抱えて教室を出て行った。


「あれ?」
シエスタは頓狂な声を上げる。
「どったの? シエスタ」
同僚のメイドがシエスタに聞く。
彼女たちは授業が終わった後の教室の清掃をしていた。
姫殿下が学院の設備を見たいと言い出すかもしれないので、急いで全教室を清掃しておけとのことだ。
「いや、この絵が……」
シエスタは黒板を指差して言う。
そこにはコルベールの描いた絵が残っていた。
「なんの絵だろね? なんか魔法っぽいあれじゃねーのぉ?」
同僚はめんどくさそうに言う。
「それより手を動かせい、手をぉ。他のメイドはエントランスとか客間だとかに持ってかれてんだ。くっちゃべってる暇はねぇってのよ」
そう言ってシエスタに雑巾を投げ渡す。
シエスタはそれを受け取ると、黒板に描かれた絵を消していく。
(なんか『竜の羽衣』に似てるような……)
そんなことを思ったが、それを口に出すことはなかった。

以上、14話終了


69:くろありー
08/06/30 23:57:13 7IWHPYmd
投下終了です
支援くださった方、ありがとう御座います
まあ、露骨なまでに繋ぎの回です。先の展開のために幾つか複線ばら撒いておこうっていう、作者の意図が透けて見えるいやらしい回。
精進が足りないなと書いてて思った。

補足しておきますと、××××はただの名無しキャラです。
実は誰某でしたなんていう風な伏字ではありません。
ティファニア側の話にはまた出てくるかもしれませんが、ルイズたちとの関わりを持たせるつもりはないので、適当な名前付けるよりいっそ名無しでいいかなって。
もしかしたら気が変わってルイズを背中から刺して鬱エンドとかやるかもしれないけど。まあ、ないなw
あと、××クラゲがメメクラゲになるような改変が彼に起こることもないと思う。
一応、ただのモブキャラ(シエスタの同僚とか)よりは存在感を与えてみたオリキャラなので、説明しておきます
オリキャラが主要登場人物になるとスレ違いになっちゃうので、あくまでちょっと優遇された名無しでしかないと言っておきます

しかし、日常の話を書こうとしてもなんか落ち着かない。
なんか、書いてから「儂の日常は百八式まであるぞ」とかいう声がどこからか聞こえてくるような
あと、ちょっと百合っぽさを醸してみようかなと思ったけど、やっぱり「儂の百合は百八式まであるぞ」という声が……
不慣れな感は否めないなー
しかし不慣れなことをするたびにそんな声が聞こえてくるのは何故なんじゃろー

70:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/30 23:59:44 qXJcUfUO

ティファニアはまだ先かな 本格的な登場は

71:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 00:01:13 APS9J0Qa
>>69
GJ
マルチダは生きてる!そんな風に思ってた時期もありましたOTZ
なんか今回の話で本当に死んだんだなと納得しました

前回の戦闘シーンからおっぱいの近況報告
話に引き込まれました


72:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 00:01:15 BxB3n98L

いいツンデレ回でした。

73:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 00:03:59 Kvp9vMq5
>>69
投下乙!しかし、テニヌは自重しろwww

74:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 00:27:06 hlA1i/+h
Mtl乙です。
イザベラ様とタバサの魅力最大限に生かしてますね。イザベラ様はあれだデレるのが遅すぎるツンデレなんだきっと
こんな燃えたのは気さく以来だ。カステルモールもしっかり役目があって空気じゃないのが良いね


二人とも原作でも救われればいいが・・・。重要な位置にいるはずなのに二人とも空気なんだよねえ・・・。

75:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 00:28:35 KgiEBO/q
乙したー。
名無しモブなら×使ってマスクワードにするよか
三点リーダーかダッシュを使った方がいいかもー。

76:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 00:30:41 OpfU2oZK
17 名前:”削除”依頼 投稿日:2008/06/28(土) 00:38:06 HOST:catv-147-041.tees.ne.jp
スレリンク(anichara板:10-13番)
スレリンク(anichara板:16番)
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6. 連続投稿・重複
連続投稿・コピー&ペースト

スレが立つ度に同様の内容を執拗にコピペしてきます。
削除および投稿者に何らかの対応をお願い申し上げます。



19 名前:”削除”依頼 投稿日:2008/06/30(月) 23:44:14 HOST:catv-147-041.tees.ne.jp
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スレリンク(anichara板:38番)
スレリンク(anichara板:40-41番)
スレリンク(anichara板:43番)

6. 連続投稿・重複
連続投稿・コピー&ペースト

スレが立つ度に同様の内容を執拗にコピペしてきます。
削除および投稿者に何らかの対応をお願い申し上げます。


>HOST:catv-147-041.tees.ne.jp
こいつは愛知県豊橋市か田原市在住
URLリンク(www.tees.ne.jp)

77:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 00:32:07 Ce8MA7YT
黒蟻さん乙です。
コルベールの授業にギトーが来るというパターンは珍しいですね。


78:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 00:36:14 in/sXuiM
MtL氏と黒蟻氏、乙
かたや進行形で熱い展開かと思えば、かたやネタを散りばめた日常編
どちらも面白かったです

79:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 00:38:41 fu1XcyFN
>>76
アク禁にされそうで焦ってるんですね、わかります
ざまあw

80:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 00:54:09 yGHI1EK9
>>79
相手にするな

81:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 01:21:36 etJxbPNZ
ルイズとシエスタの百合っぽい展開が期待出来そうな作品が増えたなぁw
もっとやれ(ぉ

82:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 01:36:31 hJVG9SPo
>>69
乙~
青いキャンディーと赤いキャンディーにふいたぜぇ

83:笑顔が好きだから-0/8
08/07/01 02:04:40 pXpEsFnr
MtLさん、黒アリさん乙でした。
カステラ君はてっきりヒドゥン・スペクターが化けてるもんだと思ってました。

予約がなければ10分過ぎ頃から4回目投下します。

84:笑顔が好きだから-1/8
08/07/01 02:11:37 pXpEsFnr
「ちょっと!あなた達、大丈夫!?」
 正気を取り戻したわたしは、思わず目の前でひっくり返っていた3人の子供のところへ駆け寄った。
 わたしの失敗魔法……爆発の威力は半端じゃない。
 わたしの爆発は、どういうわけか人間を巻き込むことはまず無いのだけれど、酷いときには教室一つを一瞬で
ほとんど完璧に破壊する。こんな真似はトライアングルクラスの火メイジ、ツェルプストーにだって出来ない。
教室を破壊することそのものは、グラモンみたいな土メイジがゴーレムを暴れさせれば出来るだろうけど、一瞬
でっていうのは無理。
 とにかく、その時わたしは焦っていた。
 どう見たって10歳そこそこにしか見えない子供達を、そんな爆発に巻き込んでしまったのだから。一生残る
怪我なんかさせたらどうしよう。それしか考えられなかった。
「怪我したりしてない?痛いところとか無い?」
 わたしが一番近いところにいた黒いローブを着た男の子を抱き起こすと、その男の子はにっこりと笑った。
 うっ!かわいい。天使みたいな笑顔って、こういうのをいうんじゃないかしら。
 いやいや、だめだめ、今はそれどころじゃないんだから!
「心配してくれてありがとうございます。」
 男の子はそう言って、服に付いた草や埃、爆発のときについちゃったんだろう、煤をぱたぱたと払い落とした。
「でも、大丈夫ですよ。ぼく達、こういうのには慣れてますから……あっ!」
 男の子の表情が急に変わる。なんか、酷く慌ててるみたい。
「チャチャさんは!?」
「チャチャ?」
「ええ、赤い頭巾をかぶったとっても可愛い女の子です。」
 男の子が慌てて振り返ると、ちょうどその赤い頭巾をかぶった女の子が起き上がるところだった。
「あいたたた。リーヤ、しいねちゃん、ごめーん。」
「チャチャさーん!」
 男の子が猛ダッシュで、てへへって笑う女の子のところへ走り出す。わたしもその後に続く。
「また、魔法失敗しちゃった。エアバッグ出なかったの。」
「いいんですよ、そんなこと。」
 男の子は女の子を助け起こすと、にっこりと笑いながら、ポケットから取り出したハンカチで女の子の顔につ
いた煤を拭ってあげた。
 うわぁ、なんていうか、う~ん。見てるこっちが照れちゃうくらい、羨ましいくらいのナイトっぷり。
 いいなぁ、わたしが魔法を失敗したって、心配してくれる男の子なんていないのに………。
 って、そういう場合じゃない!!!
 わたしは、男の子を押しのけて、女の子の肩をつかんで顔を覗き込んだ。
「あなた、大丈夫!?痛いところとか無い?女の子なんだから、顔に傷なんか付けたら大変なんだからね!」
「あ、えーと、その?」
 わたしの剣幕に、女の子はちょっとびっくりしたんだろう。おどおどとしていた。
「返事は、はい、か、いいえ、で短くハッキリと!」
「はっ、はい!どこも痛くありません!」
 女の子は、びくっと身体を震わせてそう答えた。

85:笑顔が好きだから-0/8
08/07/01 02:12:16 pXpEsFnr
 わたしは、女の子の顔をじーっと観察する。うん、ところどころ煤で汚れているけれど、擦り傷の一つもない。
 宝石を埋め込んだような大きな瞳が、居心地悪そうに震える。
 そりゃそうよね。いきなり爆発に巻き込まれて気が付いたと思ったら、見ず知らずの人間に顔をじろじろ見ら
れたら、わたしだってなんか嫌だ。
 けど、この場合はしょうがない。
「そう、良かった。」
 わたしがほっと胸をなでおろしたとき、後ろのほうで声がした。元気の良い、でも少し間延びした声。
「チャチャ~、大丈夫かぁ~」
 振り返ると青みがかった灰色の髪。平民の男の子が着ている、頭から被って着る半袖のシャツと、帆布みたい
な丈夫な布で作った半ズボンを穿いた男の子がふらふらと起き上がるところだった。
「あっ!リーヤ!」
 女の子の表情がぱっと明るくなる。ころころと表情が良く変わる女の子だなぁ。
「大丈夫だったー!?」
 女の子はするりとわたしの手の中から抜け出して、半袖の男の子に向かって駆けていく。
「おう、大丈夫だぞ。」
 半袖の男の子は煤だらけの顔をめくり上げたシャツの裾で拭きながら女の子に笑いかける。
「ぼく達がなんでもないのに、こいつがどうにかなるわけないじゃないですか。」
 そんな半袖の男の子の言葉に、黒髪の男の子が憎まれ口を叩く。
「ひどーい!しいねちゃん!」
「酷いのだ!ちょっとくらい心配してくれても罰はあたらないのだ!」
 楽しそうだな。
 そんな3人を見てて、わたしはそう思った。魔法学院に入学してから、あんなふうに楽しいことなんてなかっ
たから。
「とりあえず。」
 気が付くと、いつのまにか我に返ったコルベール先生が隣にたっていた。
「“使い魔”の召喚成功おめでとうと言うべきなのでしょうか。」
 使い魔の召喚成功おめでとう?
 わたしは、驚いて研究馬鹿のハゲ親父の顔を見上げた。
 使い魔の召喚成功って、本気で言ってるんだろうか?
「コルベール先生?」
「おや、おや、そんな顔で睨まないでくださいよ。ミス・ヴァリエール。」
 ハゲ親父はいかにも善人そうな顔で苦笑いをする。
「あの子達は、見たところ平民の子供のようですね。貴女の使い魔に相応しい動物をハルケギニアのどこかから
召喚するっていうサモン・サーヴァントの効果からは些か脱線している気もしますが、ミス・ヴァリエール、貴
女があの子達をどこかから召喚したという事実には変わりないでしょう。」
「ええ……」
 と返事を言いかけた時、やっぱり我に返ったんだろう、同級生達のざわめき声が聞こえてきた。
 でも、なんか変だ。


86:笑顔が好きだから-3/5
08/07/01 02:13:42 pXpEsFnr
「あの子達、何かしら。」
「何って、アレだろう。ヴァリエールが。」
「そうよね、ヴァリエールが起こした爆発から出てきたんだモノね。」
「子供……」
「さすがバリエールだな。」
「ああ、俺達には出来ないな。」
 なんか変だ。いつもだったら、今は間違いなく罵声と嘲笑を浴びせかけられている筈の場面なのに。
 なんていうか、こう、毒が足りないというか、なんというか。

「ですから、サモン・サーヴァントの魔法としては一応成功したと評価するべきところです。おめでとう。問題
はこの後です。」
 は!
 そうよ!問題はクラスの馬鹿達が大人しいとかそういうことじゃないんだった。
「先生!」
「はい。貴女が言いたいことは分かります。あの子達を親元に送り返して、サモン・サーヴァントのやり直しを
したいというのでしょう?」
 うんうん。わたしは猛スピードで首を上下に振る。
「でも、多分、同じ結果になりますよ。」
「はい?」
 なんですって?
「ご存知でしょう?サモン・サーヴァントの魔法は、貴女にぴったりの使い魔を召喚する魔法です。あの子供達
を動物扱いしたくないのは私も同感ですが、サモン・サーヴァントであの子供達が召喚された以上、ミス・ヴァリ
エール、貴女にぴったりな使い魔は、あの3人のうちの誰か、もしくはあの3人全員です。そして、あの3人の
誰かが貴女にぴったりな使い魔である以上、あの子達を親元に送り返してから再びサモン・サーヴァントを行っ
たとしても、召喚されるのはあの3人のうち誰かなのですよ。」
「うっ」
 そうだった。忘れてた。
 サモン・サーヴァントの魔法って、良く分からない魔法だったんだ。
 サモン・サーヴァントはその魔法を使ったメイジにぴったりの使い魔を召喚する。これは常識だ。だけど、ぴ
ったりな使い魔って、誰が決めるんだろう?
 そういう謎な決め方で決めた使い魔をどこから連れてくるの?
 そりゃ、宿敵ツェルプストーは火メイジだから火蜥蜴、その友達のタバサは風メイジだから風竜、水メイジの
モンモランシはカエル、土メイジのグラモンはモグラを召喚してるんだから、サモン・サーヴァントの魔法で呼
び出すのは自分にぴったりの使い魔なんだろう。
 でも、じゃぁ、あの子達がぴったりなわたしって、いったいなんなの?
「いずれにしても。」
 コルベール先生が小さく咳払いをして、わたしは我に返った。
「あの子達を親元に送り返すにしても、あの子達と契約して使い魔」
 わたしが睨みつける視線に気が付いたんだろう、ハゲは言い直した。
「ゴホン、小姓あるいは従者として召抱えるにしても、あの子達と話をしてからでしょう。」


87:笑顔が好きだから-4/8
08/07/01 02:14:28 pXpEsFnr
 近づいていくわたしとコルベール先生に気が付いたのは黒髪の男の子だった。
「あの、すいません。ここはどこですか?なんか、学校みたいですけど。ぼく達はうらら学園に登校する途中だ
ったんですけど、なんでここにいるんでしょうか?」
 男の子がこの場にいる唯一の大人コルベール先生に話しかけたのは当然で、わたしもコルベール先生が答える
ものだと思っていたのだけれど、コルベール先生はわたしの背中をちょんっと押した。
 わたしの魔法の失敗で呼び出してしまった子供達相手に色々説明をするのは、わたしの仕事ってことか。
 ま、しょうがないか。どっちにしても、暫くはわたしがこの子達の生活の面倒を見なければいけないのだし。
「そのことを説明する前に、まず名前を教えてくれるかな。」
 名前を知らないと話するの難いしからね。
「わたしはルイズ。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ。ここ、トリステイン魔法
学院」
「魔法学院!?」
 女の子と半袖の男の子の瞳がキラリンと光った。
「魔法学院って、魔法の勉強をする学校?」
「ええ、そうよ。」
 女の子の言葉に答えると、二人はいきなり盛り上がった。
「すごい!魔法の学校って本当にあったのだ!」
「すごいねぇ。はり・ぽたみたい!ねぇ、ねぇ、はりーはいる?はーまいおにーは?」
 はりー?はーまいおにー?はりぽた?なんのこと?
「チャチャさん、リーヤ!今はこのお姉さんが話してるところですよ!」。」
 黒髪の男の子が二人の前に立つ。
「どーも、すいません。この間ちゅるやでDVD借りてハリー・ポッターの映画見たもんだから、二人ともちょっ
と盛り上がってるんですよ。気にしないで続きをお願いします。
 男の子は苦笑いをしながらぺこりとお辞儀をした。なんか苦労人っぽいよ。
「え、あ、そう?」
 DVDとか映画っていうのも気になるんだけど、まぁ、いいか。
「ともかく、ここはトリステイン魔法学院。わたしは1年生で、今、2年生になるための進級試験……使い魔召
喚の儀式をやってるところよ。」
 進級試験っていうところで、それまで盛り上がっていた女の子と半袖シャツの男の子がピクって震えたのはな
んなんだろう。
「あなたは?」
 黒髪の男の子に話しかけると、男の子は右手を左胸、心臓の前に添えて、恭しくお辞儀をした。なんか動きの
一つ一つが妙に板に着いてない?
「はじめまして。ルイズさん。ぼくはうりずり山の魔女どろしー様の下で魔法を学んでいる、しいねと申します。
ぼくの事はしいねちゃんと呼んでください。」
 しいねちゃんがそう言って右手を出したのでわたしも右手を出して握手。
 って、なんか今、すごく聞き流しちゃいけないことを言われたような気がするんだけど?
 コルベール先生に目配せすると、コルベール先生はちいさく頷いた。話の腰を折るなってことだろうか。


88:笑顔が好きだから-5/8
08/07/01 02:15:38 pXpEsFnr
「で、こちらはチャチャさん。」
 そう言われた女の子が元気良く挨拶する。
「はーい!わたしチャチャでーす!もちもち山の世界一の魔法使いセラビー先生に魔法を教わってまーす!ルイ
ズちゃん、よろしくね!」
 チャチャは、わたしの両手を持って力いっぱいブンブンと振った。っていうか、また出た。
 魔法を学んでるって、この子達、メイジなの!?っていうことは、この子達、貴族の子供!?

 まずい。
 ここトリステインでは貴族は全員メイジだ。没落しちゃった元貴族で今は平民のメイジもいるからメイジが全
員貴族ってわけではないけれど。
 問題は、しいねちゃんとチャチャが、魔法の先生の名前に“うりずり山の”“もちもち山の”って地名をつけ
て呼んでいるっていう点。名前に地名が着くっていうことは、少なくともしいねちゃんとチャチャの魔法の先生
は最低でも準男爵とか男爵の地方領主クラスの貴族だってこと。
 そして、ここトリステインには没落して貴族じゃなくなったメイジの子供に魔法を教えようなんていう奇特な
貴族はまずいない以上、しいねちゃんとチャチャは貴族の子供だってことになる。
 この子達、しいねちゃんとチャチャの言うことが本当なら、これはすごくまずい。
 貴族の子供を使い魔として召喚しちゃったなんて、ひっじょ~~~~~~~~に、まずい。
 うりずり山やもちもち山なんて地名聞いたことないけど、トリステインの中だったら、ヴァリエール家の力で
なんとかもみ消すことも出来るかもしれないけど、もちもち山もうりずり山も、そんな地名聞いたことないし、
ガリアやゲルマニア、アルビオンの何処かの領主の子供とかいったら、確実に外交問題になっちゃう!
 しいねちゃんは、そんなわたしの懊悩も知らないで最後の一人を紹介してくれる。
「で、これはリーヤ。」
 しいねちゃんは最後の一人、半袖シャツの男の子を指差した。
「これって、なんだよ。しいねちゃん!」
 しいねちゃんに「これ」呼ばわりされた男の子が怒る。
「いいから早く挨拶しろよ。」
 けど、軽くかわされた。
 半袖の男の子はぶつぶつ言っていたけど、こちらに振り返った瞬間、すっごくいい顔で笑った。
「おれ、リーヤだ。強い子良い子の狼男だぞ。ルイズ、よろしくな!」
 狼男?狼男って、狼に変身する人間ってこと?それって、それって……。
 にこにこと差し出された右手。だれがどこから見てもただの子供の手。どう見たってハルケギニア最強の亜人
“人狼”の手には見えない。わたしがその手をとると、リーヤはチャチャに負けないくらい元気良く手を振った。
 それにしても。メイジの子供2人に人狼の子供って、わたしはいったい、何を召喚しちゃったっていうのよ!
 わたしは多分、唖然というか呆然っていうか、そういう顔をしてたんだと思う。
「あ、信じてませんね?」
 しいねちゃんが鼻の頭をぽりぽり掻きながら苦笑いをした。
「まぁ、こんな子供の言う事ですから、簡単に信じろって言っても無理ですよね……、と、そちらの方は?」
「これは失礼。」
 コルベール先生は、さっきしいねちゃんがそうしたように、右手を心臓の上にあててお辞儀をした。
「私はこのトリステイン魔法学院で教鞭を取っているコルベールと申します。よろしくお願いします。」
 コルベール先生がそう言って右手を差し出すと、しいねちゃん、チャチャ、リーヤは次々に握手をした。

89:笑顔が好きだから-6/8
08/07/01 02:16:57 pXpEsFnr
「さてと。さっきの質問の答えだけれど。」
 わたしは気を取り直して、しいねちゃん、チャチャ、リーヤの3人の目を見ながら話し始める。
 学院のカリキュラムの一つとはいえ、この3人を召喚してしまったのはわたしなんだから、可能な限りの責任
を取る必要がわたしにはある。
 しいねちゃん、チャチャ、リーヤはハルケギニアの人間であれば。
 問題はいろいろあるけれど、ご両親の元へ返してあげることは可能だろう。その上で、もう一度サモン・サー
ヴァントの魔法を使って、しいねちゃん、チャチャ、リーヤのうちの誰かが、じゃなかったら3人が召喚された
としたら、その時に、わたしの使い魔……人間なんだから小姓とか従者か……になってくれるかどうかを聞けば
いい。
 問題は、しいねちゃん、チャチャ、リーヤの3人が、ハルケギニア以外の場所から召喚されていた時。
 もし3人がハルケギニア以外のどこか、例えばロバ・アル・カイリエみたいなサハラの遥か東の遠い国から召
喚されてきてしまっていたら、この子達はもう2度とお父様やお母様に会えなくなってしまう……わたしのせい
で。
 それだけは避けたい。避けたいけれど、3人が目の前にいるのは変えられない事実。だったら、最善を尽くす
ためにまず必要なのはお互いについての情報だ。
 わたしが知っていることは全て話す必要があるし、しいねちゃん達が知っていることでわたしに話せることは
全部教えてもらわなければいけない。
「ここは、ハルケギニアのトリステインっていう国の王都トリスタニアから馬車2時間くらいのところにあるト
リステイン魔法学院の南に広がる草原よ。」
 しいねちゃんとチャチャがトリステインの貴族から魔法を教わっているとしたら、トリステイン、トリスタニ
アっていう地名は間違いなく知っているはずだ。
「今、出てきた地名に心当たりある?」
「うーん、ちょっと聞いたことありませんね。」
 しいねちゃんがこめかみに右手の人差し指をあてて頭を捻った。」
「チャチャさんは?」
「うーん、知らないわ。」
「リーヤは?狼男だけが知ってる地名とかある?」
「知らないのだ。」
「だよな。」
「じゃぁ、ねぇ。ゲルマニア、ガリア、アルビオン、ロマリアは?」
「あ、それなら聞いたことありますよ。えーと、確か……」
 しいねちゃんは、背中に背負っていたしっかりした造りの革の鞄から、つるつる、ぴかぴかした本みたいな何
かを取り出した。
「何、それ。」
「あ、これですか。ぼく達が通っている学校、うらら学園で使ってる地理の副読本。世界地図帳でよす。」
「世界地図帳?地図帳って、地図がいっぱいセットになってる本ってこと?」
「ええ。」
「なんで、あなたみたいな子供が世界地図なんて持ってるの?」

90:笑顔が好きだから-7/8
08/07/01 02:18:13 pXpEsFnr
 地図は貴重品だ。軍事的にはもちろん、領地の経営にも不可欠だし、商人達だって正確な地図だったら咽喉か
ら手が出るくらい欲しがって、モノによっては平民が10年くらい遊んで暮らせるだけの値段がついたりする。
そんなものを持ってる子供って。
 わたしがそう聞くと、しいねちゃんは怪訝な顔をした。
「なんでって、普通、学校に通う歳の子供ならみんな地図帳って持ってませんか?リーヤ!」
 しいねちゃんはそう言って、リーヤに声をかけた。
「リーヤの地図帳、ルイズさんに見せてやってくれない?」
「おう、いいぞ。」
 リーヤが肩にかけた布の鞄から落書きだらけの“地図帳”を取り出し、わたしに渡してくれる。
 ぱらぱらと“地図帳”を捲ってみると、中身もやっぱり落書きだらけ……あ、これチャチャの似顔絵だ。
 しいねちゃん達の国では、地図って貴重品じゃないの?。
 わたしは考える。
 わたし、もしかして、何かすごい勘違いしてない?
「あ、ありました。このページです。」
 しいねちゃんの弾んだ声に、わたしの思考は一時中断された。
「古代ローマ時代のヨーロッパのページ。」
 しいねちゃんが“世界地図”を開く。
 そこにあったのは、少しいびつだけれど綺麗に色分けされたハルケギニアの地図に良く似た地図だった。それ
と、わたしには読めない文字で細かくぎっしりと、色々説明が書いてあるんだろう。
「なによ、これ。ハルケギニアの地図じゃない。」
「違いますよ。ここに書いてあるでしょう?古代ローマ時代(紀元前100年~紀元0年頃)って。今から20
00年くらい前のヨーロッパの地図ですよ。ここ、大陸からちょっと離れたところにあるのがアルビオン。今の
イギリス王国ですね。それから、この辺がガリア。今のフランスとスイスのあたり。で、こっちがゲルマニアで、
地中海に飛び出してるブーツみたいなのの、脛のあたり、ここがローマ……」
 ん?ここに書いてあるでしょう?って、この子達、文字が読めるんだ。
「今から2000年前?ヨーロッパ?なによ、それ。」
「なによ、それって……う~ん。」
 しいねちゃんは、いきなり考え込み始めてしまった。
 丁度いい。わたしも少し頭の中を整理しよう。
 まず1)わたしはサモン・サーヴァントの魔法で平民の普通の子供を3人も召喚してしまったと思った。
 2)コルベール先生もそう思った。
 3)本人の言うことを信用するなら、しいねちゃんとチャチャは魔法を勉強している。
 4)同じくリーヤは“狼男”の子供。
 5)しいねちゃんはハルケギニアでは超貴重品である地図を持っている。
、6)リーヤの地図帳を見る限り、しいねちゃん達の国では、地図は貴重品ではない。。
 今までの会話で分かった事実はこれだけだ。
 これから想像できることっていうと。
 1)しいねちゃんとチャチャは、貴族の子供である可能性が高いけど、口ぶりからするとやっぱり平民っぽい。
 2)しいねちゃん、チャチャ、リーヤは同じ学校に通っているらしい。

91:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 02:18:43 Jt5EToX+
しえん

92:笑顔が好きだから-8/8
08/07/01 02:21:31 pXpEsFnr
 つまり、メイジと狼男……それだけじゃない、平民かもしれない、貴族かもしれない男の子と女の子、亜人の
男の子が同じ学校に通って、一緒に文字や地理、歴史なんかを勉強する国にしいねちゃん達は住んでる。
 滅茶苦茶だ。
 ハルケギニアではそんな国なんてありえない。
 でも、楽しいだろうな。

 ふと見ると、難しい顔で考え込んでいるしいねちゃんとわたしの顔を、チャチャとリーヤが心配そうに見てい
た。
 あー駄目、駄目。
 普通じゃないかもしれないって言ったって、しいねちゃんもチャチャもリーヤも子供なんだから。
 子供にこんな顔させちゃ駄目だ。
 パンパンと、わたしは手を叩く。
 チャチャとリーヤは目をパチクリとさせてわたしを見た。
 しいねちゃんもびっくりした目でわたしを見る。
「とにかく、ここは、しいねちゃんやチャチャやリーヤが住んでる世界とは全然違う何処かの世界の、ハル
ケギニアのトリステインのトリステイン魔法学院の南に広がる草原よ。それでいい?」
 わたしはそう言ってしいねちゃんをみた。
 チャチャとリーヤは、わたしの顔としいねちゃんの顔を交互に眺めている。
 しいねちゃんはというと、じっとわたしの顔を見て、なんだか居心地が悪くなるくらいじっとわたしの顔を見
て、そして、
「そういうことですね。」って言って、にっこりと笑った。


93:笑顔が好きだから-9/8
08/07/01 02:24:04 pXpEsFnr
今回投下分は以上です。

なんか予想以上にこっパゲ君がでしゃばってきたりして、予定を大幅にオーバーしてしまいました。
これでは、ただの通りすがりの皆さんの出番はいつになることやら。

94:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 02:25:36 +UImSQxb
GJ!!
のほほんとしていいね

95:紙袋の使い魔
08/07/01 03:18:44 IFXRKiQb
10話投下したいと思うのですが、さすがに人はいなさそうですね・・・。

96:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 03:19:26 rKuJQJZ5
>>95
俺はここにいる

97:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 03:20:07 fwLJL5Ic
>>95
俺もいるぜ

98:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 03:22:02 HWywcoux
>>95
君は一人じゃない

99:紙袋の使い魔
08/07/01 03:22:17 IFXRKiQb
それでは投下しちゃいます。

100:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 03:22:36 OCcSkpMO
俺で3人目だw

101:紙袋の使い魔
08/07/01 03:22:38 IFXRKiQb
 馬車は、深い森へと入っていった。
 昼間だというのに薄暗く、気味が悪い森だ。
 少し進んだ所で道が急に狭くなっている。これ以上は馬車では進めそうに無いので
 ルイズ達5人はそこからは歩いていく事になった。

 一行は開けた場所に出た。例の廃屋らしい建物がある広場である。学院の中庭程の広さは
 あるだろう。

 一行は、その廃屋の死角へと隠れ、廃屋の様子を伺った。

「わたくしの聞いた情報だと、あの中に入っていったようです」
 ミス・ロングビルが廃屋を指差して言った。
 人が住んでいる様子は見受けられない。

 ルイズ達は、作戦を立てた。仮にあの中にいるとするなら、先手必勝であると
 あちらは、自分たちの技量を上回る存在なのだ。対等にぶつかり合うよりも
 奇襲をかける方が上策と言えよう。

 タバサは地面に正座すると、地面に図を書いて自分の考えた作戦を披露する。
 まず偵察兼囮が小屋の様子を探り、中にフーケがいればこれを挑発し、外へとおびき出す。
 中にいてはゴーレムを作る土が使えない。外へ出てきた所を魔法の集中砲火で打ち倒す。

「分かりました。それでは皆さん、私が中へと行きますのでお願いしますねー」
「頼むわねファウスト」
「ええ。お任せ下さいルイズさん。いざとなったらすぐに逃げ出しますので!こう見えても後ろ歩きは速いんですよ!」

 軽い口調で告げると、そのまま廃屋の方へと向かっていく。
 そばまで近づき、中の様子を覗いた。部屋の中には、埃の積もった机と転がった椅子、部屋の隅には薪が置いてある。
 その隣に木で出来たチェストがあった。この部屋には雰囲気が合わない大きい箱である。暫く様子をみたが、人の
 気配は感じられないので、ファウストは、皆を呼んだ。

 タバサが、扉にむけて杖を振る。
 彼女の魔法では罠らしきモノは感知されなかった。
「ワナはない」
 そう呟いて、小屋の中に入る。
 ルイズも続いて小屋へと入る。すぐさまファウストは後に続いた。
 キュルケは外で見張りをすると言って、後に残った。
 ミス・ロングビルはあたりを偵察してきますと言って、森の中に消えた。


102:紙袋の使い魔
08/07/01 03:23:52 IFXRKiQb
 小屋の中でフーケの手がかりを探した。チェストの中を調べると・・・。
 そこには「爆炎の鎌閃」が入っていたのだ。ルイズはそれを手に取ると、皆に見えるように掲げた。
「あっけないわね!でもこれってほんとにマジックアイテムなの?」
 ファウストは爆炎の鎌閃を見つめルイズへと声をかけた。

「それが爆炎の鎌閃ですか?それは鎖鎌だと思いますよ」
「それってマジックアイテムじゃないの?」
「ええ・・・普通の武器ですね。私の知人が愛用しておりましたから」

 2人の会話を聞いていたキュルケだったが、2人の話へと割り込む。
「でも確かに秘宝の筈よ。以前、宝物庫を見学したときにそれを見たわ」

 その時、外の広場から異様な音が鳴り響いた。
 急いで、小屋から外へ出た皆が見たものは・・・。

 小屋へと向かってくる巨大なゴーレムであった。

「フーケ!?」
 ルイズが叫んだ。ファウストは、「爆炎の鎌閃」を鞄へとしまうと、ルイズ達を守るように前へと出る。
 タバサは、ゴーレムへと竜巻の呪文を唱えるが、その巨体の前では無力であった。
 キュルケも負けじと自らの得意とする炎の呪文でゴーレムを火に包み込んだが、生命体ではないゴーレムは
 それを意に介さずに向かってきた。

「どうしようもないじゃない!」
「一時撤退」
 キュルケとタバサは、一目散へと逃げ出したが、ルイズは残ってゴーレムと対峙していた。
 ルイズはゴーレムの前h出ると、呪文の詠唱を行った。気合と共に杖をゴーレムへと振る。
 彼女の魔法は爆発となりて、フーケのゴーレムの右足を吹き飛ばした。ゴーレムが倒れる。
「やったわ!これで・・」
 勝利を確信したルイズだが、ゴーレムの右足はみるみる内に修復されていった。

「そんな・・・!」
「ルイズさん!!」

ファウストはルイズへと駆けより、逃げるよう促す。が・・・。

「嫌よ!!私はあんたのお陰で魔法が使えるようになってきたわ!そのあんたが見ていてくれているのに
おめおめと逃げ出したりなんかできるもんですか!」
「ですがルイズさん・・・」
「それに私は貴族よ・・・。敵に後ろを見せない者を貴族と呼ぶのよ!!」
 ルイズの意志は固い、彼女の今の気持ちを変えるには時間が無さ過ぎる。
 その間にもゴーレムは彼らへと近づいてくる。

「分かりましたルイズさん。では不肖、闇医師ファウスト。助太刀させていただきます!ルイズさんは魔法で援護を!」
 その言葉にルイズは微笑みファウストの後方へとまわった。キュルケとタバサも後方援護に入る。

「では・・・いきますよ!出番です。ちびポチョムキンくん!
「相棒・・・俺は・・・」
「デルフちゃんは後です!」
「ひでぇ・・・」

 ファウストが手を振りあげると、そこには筋肉隆々としたちびポチョムキンなるものが現れる。
 一瞬、タバサは微笑んだ、が。
「・・・・・・かわいくない・・・」
 お気に召さなかったようだ。


103:紙袋の使い魔
08/07/01 03:24:31 IFXRKiQb
 ちびポチョムキンはゴーレムの方へと歩み寄ると・・・。
「メガ・フィストぉ!!」
 ゴーレムへと飛び掛る。ファウストはそこに追撃をかける。
「ごーいんぐ!まい!うぇい!」
 どうやっているかは分からないが、顔以外を回転させ、ゴーレムへと突っ込む。
 そのまま通り過ぎた。ゴーレムの体は着実にダメージを受けているようだ。
「回復が早いのなら、それ以上の速度でダメージを与えればいいのですよ!皆さん、援護を!」
 そういうが、ファウストとちびポチョムキンが邪魔で攻撃できない。
 タバサだけはエア・ハンマーで2人?の居ないところへと攻撃を加えていた。
 そこにちびファウストも援軍に入ると、戦いは荒れ模様と化していった。

 ゴーレムはまとわり付くちびファウストとファウストを引き剥がそうとするが、ちびポチョムキンとタバサの魔法に
 よる援護で上手くいかない。時間がたつにつれてゴーレムはその体積をみるみる内に削られていった。

「ハンマーフォール!!」
 ちびポチョムキンの攻撃についにゴーレムの動きが止まる。
 そのままちびポチョムキンはゴーレムを掴み持ち上げる。恐ろしい膂力だ。
「48の必殺技!ポチョムキィィィィィン・・・・・バスタァァァァァ!!」
 空高くゴーレムを持ち上げ、落下する。あの強固なゴーレムはついに砕け散ったのだった。
 ゴーレムの破片は辺りに降り注ぐと、土へと還る。後には小山のような土が残された。
 ファウスト以外の3人は目の前の光景にぽかーんとしている。

「次、いってみよ~う!後は問題の人物を探すだけですね・・・」
 フーケは自らのゴーレムが完膚なきまでに叩き潰されていくのを見届けた。が、ファウストの発言を
 耳にすると、急いでレビテーションをかけて逃げようとした・・・が。

「そこですね!!行きなさい!ちびファウスト君たち!」
 森の方へと投擲すると、絹を引き裂くような悲鳴と共に、フードを被りこんだ人物を連れてでてくる。
 
「わ、私をどうするつもりだい!?このフーケ様に向かって・・・」
「おや・・・貴女、ミス・ロングビルではありませんか」
「!?どうしてフードを外す前から分かったんだい・・・?」
「いえね。心臓の音に聞き覚えがありましてね。一度近くで聞いた音なら覚えていますよ」

 フードを外したフーケの正体に、ルイズ達は驚く。まさか自分たちとフーケ探索をしたミス・ロングビルが
 フーケだったとは。

「盗んだはいいが使い方が分からなかったんで、あんたらに調べさせようとしたんだけどそれどころじゃ
無かったようだね。まさかアンタがこんな化けモンだとは・・・」
「化けモンは酷くありません?あ、ちなみにこれはマジックアイテムじゃないですよ。私の知人が使っていた
只の武器ですね」
「なんだって・・・?それじゃぁなんでそんなもんを秘宝とか呼んでたんだい?」
「それは、オスマンさんに聞いて見るしかないでしょうねぇ」
「そんなことも分かんなかったなんて、アタシも焼きが回ったようだねぇ。で、これからどうするつもりだい?」

 ファウストの目の奥が光る。ルイズ達は、以前にもこのような目を見た記憶がある。

104:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 03:25:10 OCcSkpMO
支援ー


105:紙袋の使い魔
08/07/01 03:25:24 IFXRKiQb
「・・・オシオキをします。然る後に学院で対応していただきましょう・・・」
「ファウスト!いくら犯罪者だからってアレは拙いわ!」
「ルイズさん。これはケジメでありお約束なのです。誰にもこれは変えることは出来ません」
 2人の会話に全く付いていけないフーケ。そう、彼女はファウストとギーシュの決闘の結末を
 知らないのだ。あの時、所詮は子供の絡んだ決闘と見るのをやめたのである。
 言い知れない悪寒が彼女を襲う。しかしもう遅かった・・・。


「ではロングビルさん!みなさんお待ちかねのオ・シ・オ・キ!タ~イム!貴女はどんな声を聞かせて
くれますかねぇ~!」
 ちびファウスト達に体を押さえつけられ、身動きが出来ない彼女の前に宝箱が四つ現れた。

「この中から当たりを引き当てたら貴女へのオシオキはナッシング!さぁそれではお考え下さい!」
 訳が分からない・・・。だがこの展開の向こう側には恐ろしい予感がする。
 どうやら、当たりと引き当てれば、自分への悲劇を避ける事が出来るようだ。
 彼女は、盗賊人生の中でここまで本気で悩みぬいた事はないと言うほど、真剣に悩んだ。

 そして選ぶ・・・。盗賊としての本能と、乙女の感を信じて。

「一番左の宝箱に決めたわ・・・」
 ファウストの顔がいやらしく微笑む。紙袋に隠されて見えないはずなのだが、その顔はみ○もんたの
 ように微笑んでいた。

「ファイナルアンサー?」
「ファイ・・ナル・・・アンサー・・・」

 永く沈黙をし・・・ファウストは声を上げた。


「・・・・・正解!!しぎゃぴぃー!!」
 ファウストは爆発につつまれると、空高く、舞い上がった。皆さん!すまない!当たりを引かれたと叫ぶように。
 自分の戒めは解かれ、目の前の珍妙な人物も空高く飛んでいった。勝った!第一部完!!
 フーケは、今を好機と見た。残っているのは、自分のゴーレムの前では無力な生徒達。彼女は勝機を確信した。
 ありったけの力でゴーレムを作り出す。最初に作った物よりは若干小さいが、強度は前よりあげてある。再生させる
 余力すらない。これが本当の最後である。

「ファウストぉぉ!?」
 ルイズは同じ女性であるフーケがオシオキされる様子に居た堪れない気分で見ていたが、オシオキは実行されず
 ファウストが空へと吹き飛んでいく光景が目に飛び込んできた。
 拘束から抜け出したフーケがゴーレムを作り出し、自分たちの目の前から逃亡しようとしている。
 
 タバサ、キュルケはゴーレムへと魔法を放ったが、やはり効果は薄い。
 このままでは逃げられてしまう。と2人は魔法を連射していた。

106:紙袋の使い魔
08/07/01 03:26:28 IFXRKiQb
 だが、ルイズは一人後ろで呪文を詠唱していた。ファウストと練習した時に初めて成功した時の感覚を
 もう一度掴み直すように。ゆっくりと呪文を練り上げ、そして杖をゴーレムへと振り上げた。
「ガンフレイム!!!」

 その名前に意味はない。だが、気合を込めてそう叫ぶ。自分のあの爆発呪文にふさわしい名前と直感で感じた。
 凄まじい爆発音がすると、ゴーレムは跡形も無く吹き飛んでいた。

 フーケは、一瞬目の前の事に頭が追いつかなかったが、事実を確認するとルイズ達の前にくると座り込んだ。
「もう、今日は種切れだよ。もう逃げようとはしないさ。煮るなり焼くなり好きにしな」
 タバサとキュルケはルイズの起こした爆発を信じられないちいった様子でルイズを見ていた。
 ルイズは、フーケを縄で縛っていると、上からファウストが落ちてくる。

「面目ないですルイズさん・・・。まさか当てられるとは・・・。しかし見ていましたよ。グッドでした!」
「褒めたってなんもでやしないわよ。あんたが飛んでった時はさすがに焦ったわ」
 笑いながら談笑する二人にタバサ、キュルケが加わる。
「ルイズ。あんたいつの間にあんな魔法撃てる様になったの?火のトライアングル以上の威力じゃない」
「気になる。いったい何を」

 ルイズとファウストは目で合図を送ると
「「秘密」」とだけ言った。
 2人とも納得いかない様子であったが、ファウストが絡んでいるに違いないととりあえずは何も言わない事
 にする。

「それじゃ。秘宝も奪還したし、フーケも捕まえた。学院に戻りましょうか」
 ファウスト達は、ルイズの意見へと同意し帰途へとつく事になった。
「・・・テファ・・・ごめんね。お姉ちゃん・・・帰れそうにないよ・・」
 そう、聞こえない程の声で呟くのを聞こえていたのはファウスト一人であった。

107:紙袋の使い魔
08/07/01 03:27:11 IFXRKiQb
 学院長室で、オールド・オスマンはルイズ達の報告を聞いていた。
「ふむ、ミス・ロングビルが土くれのフーケじゃったとはな」
「一体、どこで採用されたんですか?」
 隣に控えたコルベールが尋ねた。
「街の居酒屋でな・・・彼女は給仕をしておった。あまりに美しいモンでな。つい・・・ワシの手が勝手に
尻を・・・」
「・・・で?」
「それでも怒らないんでな。気付いた時には秘書にならんかと言っておったわい」
「・・・去勢したほうがいいようですね」
「何じゃと!?」

 様子を伺っていたファウストが2人の会話に入った。
「よろしければ私がしましょうか?」
「ミスタ・ファウスト。出来るのですか?」
「はいコルベールさん。私は医者ですので」
「ほう。お医者様でいらっしゃったのですか・・。ならばお願いできますかな?」
「ええ・・・。一瞬で仕上げましょう。ミセス・オスマンの誕生デスね」

 真っ青な顔をしたオスマンは声を張り上げた。
「止めてぇぇ!!まだ若い証拠なの!!いつまでも元気でいたいのじゃぁ!だから・・・だから・・・
それだけは止めてくれぇ・・・」
 老人は泣いている。漢泣きである。
 コルベールは、オールド・オスマンが反省したようなので軽く笑い告げた。

「冗談ですよ。間に受けないで下さい」
「なんじゃー。コルちゃんったら・・・。イ・ケ・ズ」
「次は無いですから」
「・・・・ハイ」

 沈黙した後、生徒達の冷たい視線を感じたので、オスマンは話を変える事にした。

「さてと、君たちはよくぞフーケを捕まえ「爆炎の鎌閃」を取り戻してくれた」
 ルイズ達は、誇らしげに礼をした。
「フーケは城の衛士に引き渡した。「爆炎の鎌閃」は宝物庫でと収まった。一件落着じゃ」
 オスマンは、生徒たちの頭を一人ずつ撫でた。
「君達の『シュヴァリエ』の爵位申請と、ミス・タバサは既に『シュヴァリエ』の爵位を持っておるので
『精霊勲章』の授与を宮廷に申請しておいた」

 ルイズとキュルケは、自分たちへの爵位申請にも驚いたが、タバサが既にシュヴァリエであった事には
 さらに驚いた。
「タバサ。貴女ッたら凄いじゃないの!なんで言わなかったの?」
 あまり嬉しそうな顔をしなかったが、タバサは軽く頷いた。
「別にいうまでもないと思ったから」
 タバサの微妙な変化を感じ取ったキュルケは話をそこでお終いにした。
 すぐにオールド・オスマンへと話を振った。
「オールド・オスマン。ありがとう御座います」

108:紙袋の使い魔
08/07/01 03:27:47 IFXRKiQb
「うむ。当然じゃ。君たちはそれだけの事をしたのじゃから」
「オールド・オスマン。ファウストには何も無いのですか?
「すまんのう・・・。彼は使い魔じゃから・・・」
「いえ。お気になさらず。私は私の出来る事をしただけなのですからところでロングビルさんの
事なんですが・・・」
「盗賊は大抵極刑と決まっている。残念じゃがな」
「そうですか・・・」
 オスマンは手を叩いた。
「今日はフリッグ舞踏会じゃ。秘宝も戻ってきたのでな。予定通り執り行う」
 キュルケは顔をぱっと輝かせると、タバサを連れて足早に出て行った。
 ルイズも席を後にしようとしたがファウストとオールド・オスマンが見詰め合っているので
 黙って待つことにした。
 ふと、オールド・オスマンが喋りだした。

「ファウスト君・・・と言ったかの?少し話をしたいのじゃが時間はあるかね?」
「ええ。私もそう思って居た所です。ルイズさん、よろしいですか?」
 ルイズはどれに同意し、頷いた。

「それでは、ファウスト君。君から話をしてくれていいのじゃよ?君に爵位を授ける事は出来んが
出来るだけ力になろう。せめてものお礼じゃ」
「それでは・・・。あの「爆炎の鎌閃」何処で手に入れられました?」
「あれかね?あれを知っているのかね?」
「あれは元いた世界で私の知人が使っていた武器と同じようです」
 オスマンはその目を光らせた。
「どういう事じゃ?」
「私は、この世界の人間ではありません。あの日、ルイズさんの召喚の魔法で異世界からこの世界へと
召喚されました」
「なんと・・・!それは本当なのかね?」
 ファウストは、初めてルイズに自分の説明をしたときと同じ様にオールド・オスマンへと自分の力と医者で
 ある事を説明した。
「そうじゃったか・・・」
「ハイ。分かっていただいたようですね。それで、その「爆炎の鎌閃」をどうやって手に入れたのですか?」
 オスマンは、ため息をつくと昔を思い出すように語りだした。


109:紙袋の使い魔
08/07/01 03:28:12 IFXRKiQb
「あれは30年前の事じゃ森を散策していたワシは、ワイバーンの群れに襲われた。こりゃたまらんと逃げ出したのじゃが
追いつかれてしもうての。命の危機を感じたその時じゃ・・・彼が現れたのは・・・。彼はその「爆炎の鎌閃」にて
凄まじい炎を操るとワイバーンの群れを瞬く間に蹴散らしていったのじゃ。それも殺さずにな。全てのワイバーンを
気絶させると彼は人懐っこい笑みでワシへと話しかけてきたのじゃ」
「そこのじっちゃん!大丈夫だった?こいつらってギアかい?」
「ギア・・・?何のことじゃ?」
「アレ?違うのかい?そりゃまた失礼しました~」
「危ないと所を助けてもらい何と言っていいやら・・・せめて名前を聞かせていただけぬか?」
「いいって~いいって~!気にしちゃダメだよ!あ、ちなみに俺はアクセルって名前ねー」
「アクセル君・・・。改めて礼を言わせて貰おう。ワシの名はオスマンという。君さえよければワシの
内で礼をしたい。酒でも振舞わせてもらえないか?」
「にょほほ~!いいの!?お酒大好き!」

 
「ワシは彼を家に招待し、酒と馳走をふるまったのじゃ。彼と完全に打ち解けてきたころ、それは起こった・・・」


「オスマンのじっちゃんはいい人だね!今日は最高だ・・・あれ・・・まさか・・・」
「どうしたのじゃね!?アクセル君!体が光っているぞ!」
「アレが来たみたいだねぇ。オスマンのじっちゃん!楽しかったよ!いつの日かまたあおうぜ!」

「ワシは、彼が光っていたのでそれを召喚の光じゃと思った。離すまいと、つい恩人の武器を掴んでおった」
「あぁ!じっちゃん!はなし・・・・」

「彼はそういってワシの前から消えたのじゃよ・・・」

 オールド・オスマンの話を最後まで聞いたファウストは自分の思った通りであったので、オスマンへと
 説明をした。
 彼、アクセルが自分と同じ世界の住人だという事、彼が次元を超えてしまう体質の持ち主だという事
 そして彼の武器が炎を生んだのではなく、彼自身が法力にて炎を操っていた事を。

「そうじゃったか。これはただの武器じゃったのか。だとすればそのような強い炎を生み出す「法力」とやら
凄いものじゃのう・・・」


110:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 03:31:18 OCcSkpMO
弾幕うすいよ、何やってんのー!!
支援 支援

111:紙袋の使い魔
08/07/01 03:34:13 MPdlxqTP
すいません。さるさんにやられました……。

どなたか、避難所から代理投稿お願い出来ませんでしょうか?

112:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 03:34:32 rKuJQJZ5
支援
今週のYAMABAはいつ使ってくれるのかな?

113:代理します
08/07/01 03:46:57 OCcSkpMO
776 :紙袋の使い魔:2008/07/01(火) 03:30:39 ID:xZehqI6U

 そこで、オスマン達の目の前に光が現れた。中から男が一人出てくる。
「やぁ~っと見つけたよ!オスマンのじっちゃん!俺の鎖鎌返してもらいにきたよん!」
「ア、アクセル君!?」
「いやー。まさかあそこで武器をつかまれるとは思ってなかったんでねー!あれ?じっちゃん老けた?」
 思わず涙ぐみアクセルへと抱きつくオスマン。そんな彼に苦笑いしていたアクセルだが、見知った顔が自分を
 見ているのに気付いた。
「あっれー?ファウストの旦那じゃないの?どしたのこんなとこで?」
「アクセルさん。お久しぶりです」
 そういうと、ファウストはアクセルへ自分の事情を話した。
「へー。なんか変な事になってるんだねぇー。ていうか別世界だったのねココ。ぜーんぜん気付かんかった!
ん・・・どうやら、時間が来た様だね。オスマンのじっちゃん。ファウストの旦那、それと・・・えーと。ルイズ
ちゃん?俺様は御暇するよ!元気でねー・・・・・」

 そういうと、彼は光につつまれて消えていった。最初から最後まで騒がしい男だった。オスマンは満足そうな
 顔をしてファウストへと話しかけた。

「ファウスト君。君のお陰で恩人に再会出来た気がするよ。ワシの知っている事を話そう。君の左手のルーン・・・・
それは伝説の使い魔、ガンダールブの物じゃ」
「伝説の使い魔ですか?」
「そうじゃ。そのルーンを持つものはありとあらゆる武器を使いこなしたそうじゃ。始祖ブリミルの伝承にはそう
残っておる」

 ルイズは、椅子に座って話を聞いていたが、自分にも関係すると思われる話だったので、オスマンへと尋ねた。
「それでは、そのガンダールブを使い魔とする私は・・・」
「うむ。虚無の系統を継ぐ者・・・かもしれぬ」
「そう・・・ですか・・・」
「虚無の実態は伝承にも残されておらぬ。じゃが、ガンダールブが現れた以上、その可能性は高いじゃろう。虚無に関しては
ワシの方で調べてみるので待っていて欲しい」


114:代理
08/07/01 03:48:20 OCcSkpMO
777 :紙袋の使い魔:2008/07/01(火) 03:31:22 ID:xZehqI6U
 ファウストの言っていた事が最も事実に近しい事だったらしい。まさか・・・自分が・・・。ルイズは、自分の系統の解明に
 また一歩近づいたと嬉しい反面。ファウストの考えを知りたかった。

「ワシの知っている事はとりあえずそこまでじゃ。何か分かったらすぐに教えるのでな。それでは今日の事については改めて礼
を言わせて貰う。ありがとう。さて、疲れたじゃろう。今日のところは舞踏会に参加せずにゆっくりしたほうがいいじゃろう」

 2人はオスマンへと一礼し、自室へと戻った。
 2人きりになったルイズはファウストへと問いかけた。
「ファウスト・・・その・・・ガンダールブに関してなんだけど・・・」
「安心してくださいルイズさん。ガンダールブであろうがなんだろうが私には関係ありません。私はただの医者ですから
貴女を見捨てて自分の世界に帰りたいだなんて思って居ませんよ。ここにはまだ私を必要としている人たちがいるのです
から」
 ファウストの答えに、自分はまだまだ彼を信じきれていないのだな、と思い恥ずかしくなって布団へと潜り込んだ。
 ファウストも彼女の反応に微笑みながら、自室へと帰ろうとした。ドアを閉める際一言聞こえた。

「・・・ありがと。おやすみ」
「おやすみなさい」

 ルイズが眠るのを確認したファウストは本日最後の仕事へと取り掛かることにした。
 
 月明かりだけが唯一の光となった時間。フーケは鉄格子から外を眺めていた。
 明日を迎えれば、その日にでも処刑されるかもしれない。自分を待っていてくれる
 妹や、民衆達の笑顔を見るの事は無いと思うと、目頭が熱くなった。しかし
 困っている人のためとはいえ、自分は確かに罪を犯した。その事実は変わらない。
 フーケが自室の方へと目を向けたときそれは起こった。

「ちょいとお邪魔しますよ」
「あ、あんたは!?」
 急に壁に扉が出来るとその男は出てきた。
「ロングビルさん。お元気そうでなによりです」
「何が元気なもんか!こちとら明日が最後かも知れないってのに!」
 元はといえば自分はこいつのせいで捕まったのだ。そう思うと語気が荒くなる。


115:代理
08/07/01 03:49:39 OCcSkpMO
778 :紙袋の使い魔:2008/07/01(火) 03:34:42 ID:xZehqI6U
「ここから出してあげます」
「!?どういうこったい?自分たちで捕まえておいて・・・」
「いえ。貴女にも家族がいるでしょう?国に帰してあげます。貴女は確かに盗みを犯した。ですが、私たちを
傷付けようという意志は感じられなかった」
 図星を付かれて黙り込んでいるとファウストはそのまま話を続けた。

「テファさん・・ですか?」
「どうしてそれを!?」
「あの時、貴女が呟くのが聞こえましたので・・待っている家族が居る。ならば貴女はここで命を散らしては
なりません。家族の為にも生きるのです。だから、盗賊家業から足を洗ってください」
「・・・分かったよ。あんたの話。聞いとくよ。」
「それじゃぁロングビルさん。行きたい場所を思い浮かべて下さい」
「それでどうかなるのかい?」
「貴女をそこに送り届けます」
「そんな事できるのかい?ま、今更何がおきたって驚かないさね。それじゃあお願いするよ」
 何処○もどあーへと向かうフーケ。
「はい。ロングビルさん。お元気で」
「ロングビルじゃないよ」
「はい?」
 そういうとファウストへと向きなおす。
「アタシの本当の名はマチルダって言うんだ。あんたは何て呼べばいいんだい?」
「私は・・・ファウスト。医者です」
「ファウスト・・・先生ね。ファウスト先生!恩にきるよ!それじゃあサヨナラだね!」
「テファさんにもヨロシクお伝え下さい」
 分かったよ・・・と呟き彼女は扉の向こうへと消えていった。

 その日一人の少女の涙を流させない事が出来たのだ。
 ファウストの長い一日は終わりを告げた。
 彼は自室へと音も無く帰ると、目を閉じたのであった。

 だがしかし、その日、すすり泣くような声が響いたという。

「俺の・・出番・・・」
 
 哀れ。デルフリンガーであった。


116:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 03:51:19 ZGna10WH
相変わらず酷い荒れようだな
良作が多かった頃の面影も無い

117:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 03:52:12 dnVbmouR
>>116
ではその過去の良作を紹介してくれ。

118:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 03:57:44 OCcSkpMO
>紙袋さん乙です。
避難所分をこちらにコピペしました。これでよろしいですねー

119:紙袋の使い魔
08/07/01 04:06:05 IFXRKiQb
>>118

すいません。

助かりました。

それでは私は寝落ちします・・・。

120:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 04:07:00 CEj/TSAw
紙袋氏&代理人さん乙

改造までされたのに出番の無いデルフが哀れだw

121:紙袋の使い魔
08/07/01 04:11:48 IFXRKiQb
忘れてました。
>>112

一応、考えているのでしばしお待ち下さい・・・。

それでは・・・。

122:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 04:27:24 rKuJQJZ5
>>121

楽しみに待ってます

123:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 05:59:00 hlA1i/+h
>テファニア・ウエストウッド

黒アリさん、確かこの名はテファが学院に編入するときに付けた仮名で、この時点ではただのテファニアか
テファニア・モードとかテューダーとか言うと思います。

124:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 06:05:25 ewUxle/+
【芸能】世界のナベアツに不倫疑惑か!?お相手は約10年前に深夜番組で共演したあの人気声優! [080630]
スレリンク(liveplus板)

125:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 07:25:11 OPiAds+t
FF5からガラフ召喚(死亡後)とかどうだろう。
ルイズとは祖父と孫っぽい関係になるかな?

126:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 07:35:47 LrQRVPe9
FF5といえばバッツの続きはまだかなぁ

127:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 08:14:47 tXkihgbC
デルフは出番が無いというネタで出番があるからまだいいだろ。
アニエスやジュリオなんかほとんどのssでろくに名前すら出てこないぞ

128:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 08:18:32 aVQEC4B/
左手の人に至っては存在そのものが削除されたしな、ジュリオ

129:くろありー
08/07/01 09:08:38 eV5/t5Xw
>>123
確かにそうですね
後でまとめのほう訂正しときます
まとめwikiいじったことないけど まあ、簡単だと聞くしやってみます

130:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 09:15:02 cySKqXen
>>128
あれ?居なかったっけかジュリオ

ガンダが才人+V3でミョズがシェフィールド+V3だったから
てっきりヴィンダはジュリオ+V3だと思ってたんだぜ

131:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 09:32:52 aVQEC4B/
あれ、そうだっけ?>『左手』のジュリオ
読み直さないと。

132:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 09:42:15 DXQOWZ8s
左手23話に
> 「ジュリオ」
> 「はい、聖下」
> 「シロウから連絡が入った」
> 「では、アルビオンに?」
> 「うむ、到着したようだ。これから行動を開始すると言っている」

とある

133:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 09:44:26 hlA1i/+h
確かテファ以外はみんな原作使い魔+V3で召還してたと

134:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 09:45:29 RsX4K7gU
こうなるとテファも『もう一人』召喚してる可能性が出てくるかと。

135:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 10:00:01 ilRIjqoN
>>125
しかし鍛え上げた力は既に指輪だか何かに託してすっからかん

136:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 10:10:30 XGpYn/EW
戦いの中でかつての力を取戻していくシチュって燃えね?
つーか、FF5本編だって似たような物だろLv1で始まる暁の四戦士w

137:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 10:27:58 7PSX062j
なんか最近、さるさんにひっかかる人増えたような気がするんだけど、なんか厳しくなった?

138:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 10:53:26 VPvyC4G2
LV1でもしんりゅうにもやりよう次第で勝てるのがFF5の奥深さだぜ

139:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 11:57:32 ilRIjqoN
俺にとってFFは3まで、しかもFC版だが。
FF5の人気は高いな。

140:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 12:09:43 PeS9mL/5
ファウスト>>乙です
アクセル、何て便利で迷惑な能力ww
後、何故ガンフレイムww

141:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 12:52:37 ZwWOQIA8
名前:小ネタ 「ゼロと帝国」 その1[sage] 投稿日:2008/06/26(木) 02:38:51 ID:zqnGu+Jv
なによこれー!」

 何度かの失敗の後、ひときわ大きな爆発と共に現れた物を見て、ルイズが、いや、その場にいた全員が目を見張った。大きさに
してゆうに二百メイルはあろうかと思われる、巨大な鉄の塊。押しつぶされて死ぬ者が出なかっただけでも奇跡だった。
 その場にいた生徒の何人かが、理屈抜きの恐怖心からそれに攻撃魔法を放とうとする。が、呪文を唱えてもなぜか魔法が
発動しない。気を取り直したルイズが、その物体にコントラクト・サーヴァントを行おうとしても、やはり発動しない。

 あまりの異常事態が二度続いて、生徒どころか教師までもがパニックに陥りかける。そこへ学院から他の教師全員と、
学院長であるオールド・オスマンが駆けつけた。しかし、彼らにしても出来ることなどあるはずもない。学院の全員が
途方に暮れる中、その物体はふいに宙に浮き上がると、そのまま彼方へと飛び去って行った。

 それっきり何事も無かったため、数ヶ月もたてばこの事件は忘れ去られた。しかし、それから一年余り後、ハルケギニアに
ある変化が訪れる。『銀河帝国』と名乗る国の交易船──マストも帆も無い上、とんでもなく高速な船──が各地に現れ、
勝手に様々な、しかもおそろしく進歩した道具を売り始めたのである。

 連発式で、しかも数百メイル先の的を正確に撃てる銃、鉄でも切れ、なおかつ絶対に刃こぼれしないナイフや斧、魔法を
使わずとも遠く離れた場所と話せる道具など、ハルケギニアには絶対に有り得ない物ばかりであった。それを平民でも買える
値で売るのだから、誰もが飛びつかない筈がなく、飛ぶように売れる。
 そのことに気を良くした銀河帝国の商人たちは、王家や領主に伺いをたてることすらせず、勝手にハルケギニア中に現れ
ては、様々な進歩した道具を売りまくる。それを白い目で見る者も当然いたのだが、彼らは商売敵どころか、貴族や王家の
意向すら気にもとめなかった。

 商売敵である商人や、勝手なまねをされて怒った領主が脅しても、銀河帝国の船は多数の武器を積んでいる上、屈強な男
たちが数多く乗り込んでおり、いかなる脅しも圧力も、実力ではねのけてしまう。無論その男たちは、商売の邪魔をする相手
以外には決して手を出さないのだが……。

 業を煮やした現地の豪商が、メイジを雇って報復に出たこともあった。ところがそのメイジまでもが、返り討ちにあって
ズダボロにされてしまう。驚いて話を訊くと、銀河帝国側は、魔法の発動を不可能にする道具すら持っていたという。噂を
聞いて集まった者たちに、銀河帝国の商人は、その道具をすら商品として売り始めた。

142:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 12:52:58 ZwWOQIA8
0 名前:小ネタ 「ゼロと帝国」 その2[sage] 投稿日:2008/06/28(土) 00:25:02 ID:tPCdiCPR
 それから半年もたたずして、ある意味予想されたことが起こる。貴族に恨みを持つ平民たちが、それらの道具を復讐の
ために使い始めたのだ。何百メイルも離れた場所から銃で撃たれて死ぬ貴族、魔法の発動を封じられてなぶり殺しにされる
貴族が何人か出て、ついにハルケギニアの国すべてで、銀河帝国の道具を買う事、使う事が禁じられる。しかしそれは、
結果的に見れば、平民たちの不満という火種を、ハルケギニアすべてを焼く大火に燃え上がらせただけであった。

 銀河帝国側は、この機を逃さなかったのである。巧みに平民たちを扇動し、ハルケギニア全域で反乱を起こさせたのだ。
しかも辛辣なことに、あの道具のはるかに強力なものを使い、魔法の発動を、ハルケギニアすべてで完全に封じてしまった
のである。

 魔法を失った貴族たちは、銀河帝国の武器を持った平民たちの敵ではなかった。しかも反乱軍には、銀河帝国の屈強な
男たちも加わっている。武器には武器で対抗しようにも、そもそも数が絶対的に違う。それから三ヶ月たたずして、ハルケ
ギニアすべての国で、貴族や王族はほぼ皆殺しにされた。

 トリステイン魔法学院でも、生徒や教師はほぼすべて殺された。ギーシュもキュルケもマリコルヌも、オールド・オスマンも
ギトーもすべて死んだ。平民に対する差別意識を持たなかったコルベールは死を免れたが、魔法を失ってほとんど何の力も無い
役立たずに成り下がった。

 王宮において、アンリエッタ王女は死を免れたが、貴族制度の廃止と、王族の身分を捨てる事を、ハルケギニアすべてに向け
宣言させられた。

 貴族の中には、表向きおとなしく投降し、内心で、「この反乱が終われば、再び自分たちが必要とされるようになる」とほくそ
笑んでいた者もいた。しかしその思惑は、銀河帝国がさらに多くの道具を持ち込んだこと、その道具を作るための技術を教え始めた
ことで、水泡と帰す。

 銀河帝国の道具は、それまで「魔法を使わねば出来なかったこと」のほぼすべてを可能とした。ハルケギニアに、もう魔法は必要
なかった。平民たちにとって、銀河帝国の道具があれば魔法とメイジはもう無用の長物、何の価値も無いガラクタだったのである。

143:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 12:53:23 ZwWOQIA8
名前:小ネタ 「ゼロと帝国」 その3[sage] 投稿日:2008/06/28(土) 00:25:40 ID:tPCdiCPR
 やがて反乱という名の炎は、魔法学院を退学させられ、失意の内に故郷に引きこもっていたルイズの元へも迫る。

 ラ・ヴァリエール公爵は、おのれの名誉にかけて必死に抵抗したが、それは所詮、巨大な岩を素手で殴りつけるようなもので
しかなかった。公爵自身は斧で真っ二つにされ、夫人は頭蓋を叩き潰され、長女エレオノーレは杭で串刺しにされた。皮肉にも
病弱だったカトレアと、元々魔法を使えなかったルイズだけが、お目こぼしにあずかることができたのだった。

 しかし当然ながら屋敷も領地も財産も失い、カトレアとルイズに残されたのは、裕福な平民程度の家と財産にすぎなかった。
しかも家族の死と環境の激変で、カトレアの健康状態が急速に悪化し始める。治療しようにも、ハルケギニアに水の魔法はもう
存在しない。姉を死なせないため、ルイズは屈辱をこらえて、『銀河帝国』の人間に、水の魔法を復活させてくれるよう懇願
するしかなかった。

 幸い頭目らしき男が、「魔法を復活させることはできないが、銀河帝国の医者による治療を受けさせる」と約束してくれた。
ハルケギニアより遙かに進歩しているらしい銀河帝国の医術でも、生まれつきの虚弱体質を治すことは出来なかったが、どうにか
死の危険からは救い出すことができた。

 かろうじて──本当にかろうじて戻ってきた平穏な日々。その価値を痛感させられる中、ルイズは突然、あの頭目らしき
男に呼び出される。

 いぶかしく思いつつ向かったその先には、ルイズの見知った顔が何人か集められていた。アンリエッタ元王女も、コルベールも、
オールド・オスマンの秘書だったミス・ロングビルもいる。その他にも魔法学院のコックとメイドだった者、反乱軍のリーダーの
一人である女戦士もいた。

 あの頭目に話を訊いてみると、これから自分の上司に会ってほしいと言う。そこで初めて、ルイズたちは頭目の正体を聞かされる。
なんと彼は、銀河帝国正規軍の将校だというのだ。彼の上司が、ハルケギニアの住民の、生の声を聞きたがっているというのだ。

 それを聞いたあの女戦士が、厳しい顔で進み出る。

「以前から疑っていたが、やはりあなたがたは、ただの商人などではなかったのだな? この反乱は、あなたがた銀河帝国が
仕組んだ謀略、ないしは軍事作戦だったのだな?」

「つまりアニエス殿は、我々があなたがたを利用して、ハルケギニアを支配下におさめようとしたのではないかと疑っているわけか。」

 あまりにあからさまなその言葉に、一同が息を呑む。そんな彼らに、頭目は苦笑気味の笑いを見せた。

「当然だろうな。しかし、我々にそんな意図は無い。ハルケギニアなど支配したところで、銀河帝国にはまったく何のメリットも
無いのだ。そもそも、支配するつもりならこんな回りくどい手は使わん。直接攻め込んで征服している。」

「…信じられんな。第一、何の得にもならないのなら、なぜわざわざこんなことをした?」

「今すぐ理解しろと言っても無理だろうが……。ハルケギニアにおける社会の現状が、我々にとって、決して許せないものだったからだ。」

「……わけがわからん。どういう意味だ?」

「それは私の上司が説明してくれるだろう。」

144:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 12:53:44 ZwWOQIA8
小ネタ 「ゼロと帝国」 その4[sage] 投稿日:2008/06/28(土) 00:27:08 ID:tPCdiCPR
 そのまま船の一室に押し込まれ、海上を飛ぶこと一刻余り。いかなる陸地からも遠く離れた洋上で、巨大な船(らしきもの)が
十数隻空中に浮かんでいた。もちろんただの船ではあるまい。これは明らかに銀河帝国の艦隊であり、当然ながらすべて軍艦に
決まっている。
 壁のスクリーン(彼ら自身は「開くことのできない舷窓」だと思っている)を通じ、感嘆の思いでそれを見つめる彼ら。ところが
その時、中の一隻に目を留めたルイズとコルベールが、揃って叫び声を上げた。

「あれは!」

 それは二年前、彼女がサモン・サーヴァントで呼び出した、あの物体であった。その時は何なのかすら判らなかったが、銀河帝国の
軍艦だったのか──。新たな事実に二人が呆然とする中、彼らの乗る「小船」は、艦隊中でひときわ巨大な艦──全長にして千
メイル以上あるであろう。当然ながら旗艦に違いあるまい──に接舷する。

 あの頭目──黒と銀の軍服に着替えている──に先導され、艦内の通路を進む彼ら。ある扉の前で威儀を正すと、頭目は声を張り上げた。

「シェーンコップです。お望みの者たちを連れて来ました。」

「ご苦労。入りたまえ。」

 中から、驚くほど端正で魅力的な声が答える。それと共に扉が開き、一同は部屋へと通された。

 正面で、巨大なデスクに一人の男が着いていた。背後に部下らしき男が何人か控え、両脇には、白い全身鎧をまとった兵士が警護に
ついている。この男が、頭目──シェーンコップ──の言っていた上司に違いあるまい。しかしそれにしては、拍子抜けするほど
「普通」の男であった。

 年齢は三十代前半だろうか。中肉中背、黒髪に黒い目。顔立ちは端正な方だが、目立つほどの美男でもない。服装もごく普通の白い
ブラウスに黒のスラックスで、正直街のどこにでもいそうな平凡な男である。無論ルイズ達とて、人間を外見で測ることの愚かさは
百も承知している。が、見るからに「只者ではない」と思わせるシェーンコップの上司にしては、落胆させる人物と言うしかなかった。

「それで、彼らはいったいどういう人々なんだ?」

 視線をシェーンコップに向け、その男が問いを発する。あの端正な声は、この男のものであった。それに対し、シェーンコップが
手短に彼らの素性を説明する。

「なるほど。元王女が一人、反乱軍のリーダー格が一人、元メイジだが平民に偏見の無い学者に、同じくメイジだが貴族嫌いな女性。
まったくの平民二人に、大貴族の娘だが魔法が使えなかった少女が一人か。少なくとも間違った人選ではないな。」

 男がそう言いつつ机のどこかに触れると、隣室から人数分の椅子がその場に運び込まれる。一同をそれに座らせ、彼は改めて
ルイズ達に顔を向けた

145:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 12:54:16 ZwWOQIA8
名前:小ネタ 「ゼロと帝国」 その5[sage] 投稿日:2008/06/28(土) 00:28:00 ID:tPCdiCPR
「わざわざ呼びつけてすまない。すでにシェーンコップから聞いていると思うが、私に、君たちの生の声を聞かせて貰いたいんだ。
もちろん君たちは、自分の思った通りのことを言ってくれてかまわないし、ここで何を言ったところで、咎め立てされることは無い。
私が聞きたいのは君たちの本音であって、建前やお世辞ではないんだからね。」

「その前に、教えていただきたいのですが。」

 男を正面から見据え、アンリエッタが逆にそう問い返す。その顔には、露骨な疑惑の表情が浮かんでいた。

「何をだい?」

『シェーンコップの上司』は、穏やかな微笑を浮かべながらそれに相対する。

「あなたは、いったい何者なのです? ここに来るまでの兵士たちの態度から、シェーンコップ殿がかなりの上位者であることは
わかっています。その上司であるというあなたは、いったい何者なのですか? それに、『民衆の生の声を聞きたい』というのは、
最上位に立つ者の発想です。おそらくは、ハルケギニアに派遣された銀河帝国軍の総司令官、あるいはそれに準ずる立場の方と
見ましたが、違いますか?」

 元王女の鋭い指摘に、ほとんどの者が息を呑む。その中で、一人冷静だったアニエスが後を続けた。

「私も訊きたい。シェーンコップ殿の話では、銀河帝国には地位はあっても身分は無く、貴族もすべて名前だけの存在だと言う。
その地位も実力と実績と人望のみで決まり、血筋や家柄はまったく考慮されないと言うことだ。加えてシェーンコップ殿は、私の
目から見ても極めて優れた戦士であり指揮官でもある。その上司であるあなたは、すなわちシェーンコップ殿以上の実力者という
ことになるが?」

 それに対し、男の微笑が苦笑へと変わる。

「元王女の肩書きも、反乱軍リーダーの肩書きも、伊達ではないということだね──。しかし、それは買い被りだよ。と言うより
適材適所かな? 私は将ないし軍師としてはともかく、戦士としてはまったくの役立たずだ。」

「銀河帝国では、戦士として役立たずでも将や軍師になれるのか?」

「そうだよ。戦士の資質と将や軍師の資質は、まったく別のものだからね。」

「はぐらかすのはやめてください!」

 ごまかすつもりだったのだろう男に、アンリエッタの鋭い声が飛ぶ。

「もう一度訊きます。あなたはいったい何者なのですか?」

「──やれやれ、自己紹介は後にしたかったのだが、やむを得ないな。」

『まいったね』と言うように頭をかきつつ、男は言葉の──とんでもない事実の爆弾を落とした。

「私の名はウェンリー・ヤン。銀河帝国の、一応、皇帝ということになる。」

「──な!!」

「後にしたかったわけが解っただろう? こんなことを明かせば、君たちが本音を言ってくれなくなるかもしれないからね。」

 あまりの事実に一同が絶句する中、最初に我に返ったのはルイズであった。

146:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 12:54:40 ZwWOQIA8
小ネタ 「ゼロと帝国」 その6[sage] 投稿日:2008/06/28(土) 00:28:49 ID:tPCdiCPR
「こ、皇帝ですってー!」

 恨みに我を忘れ、『皇帝』に飛びかかろうとする彼女。しかし所詮は、非力な少女にすぎない。警護の兵に、あっという間に
取り押さえられてしまう。

「く──。」

 床に押さえつけられ歯がみするルイズに、皇帝は悲しみのこもった眼を向けた。

「私が憎いかね?」

「当たり前でしょう! あなたのせいで父様も母様も、エレオノーレ姉様も!」

「そうだろうな。」

 穏やかな口調で、しかしはっきりとそう断言する。これには、ルイズのほうが怪訝な顔になった。

「怒らないの?」

「恨まれて当然だからね。──実際、こんなことは過去何度もあった。かつて、戦場で倒した提督の息子に殺されかけたことも
ある。その子も君と同じ、まったくの子供だった。」

 その言葉にルイズは、目の前の人物が才能も器量も備えていることを知った。が、中の一言が彼女の心にカチンとくる。

「子供じゃないわ! これでも十八よ!」

 そう言われ、今度は皇帝のほうが怪訝な顔になる。かたわらの部下に顔を向け、小声で問うた。

「この星の一年は、我々のそれより短いのかい?」

「いえ、むしろ、わずかながら長いはずですが。」

 ルイズは内心で地団駄を踏んだ。身長と体型のせいで幼く見られるのには、もう馴れている。だからといって、子供扱いされて
気分が良いはずはない──。そんな彼女に『皇帝』が、申しわけなさそうな顔を向けた。

「それは済まなかった。──しかし、君に言っておかねばならないことがある。かつて貴族に愛する者を奪われ、今の君と同じ
思いを味合わされた平民が、ハルケギニア全体でどれだけいたと思う?」

「う……。」

「彼らの気持ちがわからないとは言わせない。それとも、貴族と平民はまったく別の存在で、大切なのは貴族だけ。平民などは
どうでもよいと言うのかな? だとしたら、私もここにいる者たちも、君を許さない。」

「………。」

「それに、君の両親と姉上にも、生きのびる機会は与えられていた筈だが?」

「地位も身分も財産も、すべて捨てた上でのことでしょう! そんなこと、誇り高い貴族が受け入れるもんですか!」

「……誇りを持つのは結構なことだが、その対象が『貴族であること』というのは感心しないな。」

「どういう意味よ!」

「はっきり言おう。貴族であることに価値など無い。血筋や家柄など何の価値も無い。そんなものが、人間の価値を左右しては
ならない。人間の価値を決定づけるのは、1に人格2に能力で、他にあるとすれば、過去の実績だけだ。」

 どうやら銀河帝国では、それが「国是」であり「正しい考え」であるらしい。価値観も考え方もハルケギニアのそれとは根本的に
違っていて、ハルケギニアの論理は通用しないということだ。だとすれば彼らを言い負かすのは不可能である。唇を噛むルイズだが、
すぐ逆襲のすべを見つけた。

147:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 12:55:16 ZwWOQIA8
名前:小ネタ 「ゼロと帝国」 その7[sage] 投稿日:2008/06/28(土) 00:29:27 ID:tPCdiCPR
「……何よ! 血筋や家柄に価値が無いなら、あなたは何なのよ! 皇帝なんでしょう! 血筋でその地位を得たんじゃないの?!」

 それに対し『皇帝』が、初めてむっとした表情を見せる。だが、彼が口を開く前に、背後に控えていた中年の男が進み出た。

「陛下、ここは私におまかせを。」

 そう言ってルイズに向き直る男。長身で痩せぎす、半分白くなった髪で、少しだけあの「マザリーニ枢機卿」を思わせる。が、
こちらの方がはるかに冷徹というか、冷酷そうな印象だ。

「ルイズといったな。本気でそう思っているとしたら、君は愚か者ということになる。」

「なぜよ?!」

「血筋によって皇帝の地位を得た者が、みずからその価値を否定すると思うかな?」

「なんですってえ?!」

「そうだ。ウェンリー陛下は、先帝陛下とはまったく血の繋がりは無い。」

「それじゃ─もしかして─あんた簒奪者?!」

 皇帝に視線を向け叫ぶルイズ。それに答えたのは、中年男のほうであった。

「それも違う。ウェンリー陛下が現在皇帝の地位に着いているのは、先帝陛下によって指名されたからだ。」

「つまり、銀河帝国では、皇帝さえも血筋では決まらないって言うの!」

「そうだ、銀河帝国においては、皇帝も職務上の地位にすぎない。人格と能力のみで選ばれ、血筋など考慮されることもない。
──だから銀河帝国には、皇帝はいても王朝は存在せず、皇妃はいても皇子や皇女は存在しないのだ。」

「そんな………。」

「銀河帝国では、血筋や家柄に価値など無い──。だからこそ我々は、ハルケギニアの貴族たちが許せなかった。」

「その通りだ。特にトリステイン王国では、貴族がすべてを独占し、平民はほとんど人間あつかいすらされなかったと聞く。
そんな貴族たちの振る舞いこそ、我々には絶対に許せないものだった。」

「だから──だから貴族を滅ぼしたって言うの! 何の得にもならないのに!」

「──では訊こう。もし目の前で、決して許せない事を誰かがやっていたら、君はどうする? 自分自身の損得など度外視して、
やめさせようとするのではないかな?」

「く……。」

「ハルケギニアにおける貴族と平民との差別、魔法を使える者と使えない者との差別こそ、我々には許せないものだった。我々は、
それをやめさせたかった。そのためには、貴族を滅ぼし、魔法を滅ぼす以外に方法が無かった。──ま、君たちとの最初の接触で、
ある種の電磁波が魔法の発動を不可能にするとわかっていなかったら、もっと苦労しただろうが。」

148:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 12:57:30 ZwWOQIA8
小ネタ 「ゼロと帝国」 8 ラスト[sage] 投稿日:2008/06/28(土) 00:30:23 ID:tPCdiCPR
「……あれ? 待ってよ! 銀河帝国でも、能力の違いは認められているんでしょう! 貴族と平民との間には、魔法を使える
使えないという、れっきとした能力の違いがあるじゃない!」

「……もう一つ我々が許せなかったのは、ハルケギニアにおいては、魔法の才能が何より優先するとされていたことだった。」

「…どうしてよ! それのどこがいけないの!」

「国を治めるまつりごとの才能と、魔法の才能との間に、関係があると思うかい? 兵を指揮する将の才能、作戦を立てる軍師の
才能と、魔法の才能との間に関係があると思うかい?」

「………無いわ。確かに。」

「本来重視されるべき能力より魔法のそれが優先され、魔法が使えなければ、それ以外でどれだけ優れていても認めてもらえない──。
それもまた、我々には許せないことだったんだよ。」

「そのために──そのために魔法を滅ぼしたって言うの! 魔法の才能に価値を無くすために! そんなことのために!」

「──確か君は、大貴族の娘でありながら魔法が使えなかったんだろう? 魔法以外のことで認めてもらえたら、と思ったことは
無いのかい?」

「……有るわよ! それは認めるわよ! でも、魔法そのものがこの世に無かったら、なんて思ったことは一度も無いわ! 第一
そのせいで父様も母様も、エレオノーレ姉様も!」

「──魔法を使える者と使えない者との差別、それを無くすためには、少なくとも一度、魔法そのものを滅ぼすしか無かった。
そして魔法が滅びれば、貴族が滅びるのは必然だった。」

 歯ぎしりするルイズだが、その言葉に秘められた裏の意味に気づく。

「……待って! 今言ったわよね! 『少なくとも一度、魔法を滅ぼす』と! つまり、いつかは魔法が復活すると言うの?!」

「ああ、いつかは復活する。しかしそれは、今から少なくとも三、四十年後──魔法も貴族も、完全に過去の遺物となってからの
ことだ。その頃には魔法は、『役には立つが不必要なもの』になっている。当然、魔法の才能も、大して価値の無いものになっている
だろう。」

「………。」

「いずれにせよ、ハルケギニアにもう魔法は存在しない。魔法の才能は、もう何の価値も無い。貴族と平民の区別ももう無い──。
魔法と貴族の時代は終わり、科学と民衆の時代が来る──。君もこのままで終わりたくないなら、魔法以外で認められるよう、
努力することだ。」

「そうですよ、ルイズさん。元々、魔法の実技以外では学院でもトップクラスだったじゃないですか。」

 黙って聞いていたシエスタが、この時口を挟んだ──。


──結局、彼らが生きている間に、魔法が復活することは無かった。そしてウェンリー皇帝の言葉通り、復活した時には完全に過去の
遺物でしかなくなっていた。魔法とメイジが社会の主流を占めることは、二度と無かった。しかしアンリエッタ・ド・トリステインと、
ルイズ・ド・ラ・ヴァリエールの名は、ハルケギニアの一時代を支えた女流政治家の名として、歴史に刻まれている──。


-『銀河英雄伝説』より、帝国軍駆逐艦を召還。

あの作品のキャラがルイズに召喚されました part133
スレリンク(anichara板:349-357番)


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