あの作品のキャラがルイズに召喚されました part150at ANICHARA
あの作品のキャラがルイズに召喚されました part150 - 暇つぶし2ch189:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 20:23:33 c4TDnG5V
>>172-173
ルイズはモッカニアの本で操縦してるとこを見ている可能性はあるんだな
だからと言って操縦できるとは思えんが
そもそも原作でモッカニアが飛行機乗ってる記述はないんだよな
まあ、自分で自分を古臭いって言ってるおっさんキャラのビザクが飛行機乗ってることを考えれば、武装司書は全員飛行機乗れると考えてよさそうだけど
乗れないとしたらクジラに乗って移動できるボンボぐらいじゃないかね
黒アリの人も武装司書は皆のれる的な設定にしてるっぽいし

だから乗る乗らないはともかく、本を読んで操縦方法を勉強することはできるんだよな

190:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 20:34:09 ilRIjqoN
普通にコルビー先生が「お手本」として齧り付くだろう。
大まかな原理はルイズがインスピレーション提供してく感じで。

191:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 20:38:08 tXkihgbC
>>182
ヤマトがだめならアンドロメダならどうだ?
半自動制御で人員は少なくてすむし、メンテナンスも自動で進む。
ショックカノンもカートリッジ式でなきゃ弾切れは無いだろ。

波動エンジンに燃料はいらんし、高速チャージが可能な拡散波動砲は言うに及ばず。

192:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 20:47:32 ri8qG8oz
オーバーキルが嫌ならSaGa3のステスロスについてるはどうほうなんてどうだい?

193:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 20:48:32 VnbYtL07
蹂躙物は独立してやれよ

194:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 21:03:42 0P5DRZLx
MTGの人乙!
どんどん白熱していくタバサの大冒険にワクテカが止まりません
タバサやイザベラの感情の表現が良かったなぁ。

195:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 21:13:37 8sNUQbe/
>>192
もっと もっとだ! グヘッ

196:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 21:17:17 ilRIjqoN
>>192
大阪開発室の悪夢はいらん

197:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 21:20:17 sQrEB/xr
>>194
毎度毎度見入るよね、この描写
目に浮かぶようにスッと頭の中にイメージが浮かぶような自然な魅せ方で、それを経て更に内容が盛り上がって行く。

実に、実に素晴らしいですよMtlの方…!乙です

198:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 21:56:30 3M6Z0Yy3
シューティングはSFものが多いので
ファンタジーのゼロ魔との組み合わせは難しいかと…

パイロットの顔が分からない作品もあるしなあ
R-TYPEやグラディウスから自機召喚は俺も妄想したが…

199:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 21:59:28 FZaxcwhO
>198
パンツァードラグーンのように、ルイズが乗るタイプならどうだろうか。

200:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 22:02:03 +qmi4mpi
R-9って人道的に問題があるんじゃなかったか

201:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 22:02:08 phdudWaf
地龍マダカナー

202:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 22:06:23 ri8qG8oz
畳で空飛ぶアイン左衛門ガンバード2仕様なんてどうだろう?
子孫っぽいのがストライカーズ1945で震電乗ってるしそっちもアリかもしれないけど

203:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 22:08:04 BxB3n98L
ブルードラゴン召喚できたら大当たりだな…

204:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 22:11:57 VHftATwv
>>185
タルブにある兵器がオメガになりそうだな

少年時代に散々苦戦して
最近買ったGBA版で量産されてたのを見たときの衝撃は未だに忘れられない

205:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 22:17:49 6YsbzyDK
むしろ、タルブにはまだ手つかずのアポロンのハープがあるんじゃないかな

206:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 22:21:07 dwJCwFCy
>>189
ルイズ「プリパレーションチェック」
シエスタ「プリパレーションチェック」
シ「IRS・モード・セレクターズ
ル「NAV」
シ「ヨー・ダンパー・スイッチズ」
ル「オン」

シ「フュエル・コントロール・スイッチズ
ル「カットオフ」
シ「フラップス」
ル「アップ」
シ「エンジン・アンド・APU・ファイアパネル」
ル「ノーマル」

シ「エルロン・アンド・ラダー・トリム
ル「セット・ゼロ(「ぼーいんぐ767」っていったかしらこの飛行機…ちょっと最後の最後でしゃくに障るわね…)」
シ「プリパレーションチェックコンプリートでーす」
ル「はーい」
<<グラウンドです、5分前出ました。どーぞー>>

なぜか旅客機を操縦しようとしている光景が浮かんだ。

207:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 22:21:08 kuAkYjL+
>>178
言ったろう? 世界最速のハゲだって。(ふさぁ)

‥‥コルベール先生にセッツァーの代わりは無理がありすぎるなぁ。
主に頭部。

208:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 22:25:00 VHftATwv
飛空艇の風になびく長髪が輝くおつむに・・・

209:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 22:25:33 GoR9UTzD
FF6ってエンディングで世界から幻獣とか魔法が無くなっちゃったわけだし
ED後のFF6キャラを召喚しても魔法は使えないんだよな
エドガーとかマッシュとかまるで苦にしないヤツも多いけど

210:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 22:28:11 p5IYNCd/
しかしFF6だと、ニューカッスル攻防戦も、タブル攻防戦も、対7万戦も、
ルイズが虚無の力で敵全員にバニッシュ→デジョンのコンボをかまして終わり
そうな悪寒がする。

211:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 22:28:13 rKuJQJZ5
FF6は魔法を主体としたキャラのほうが少ない

212:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 22:28:32 kuAkYjL+
>>209
そこで頭にドリル装備ですよ。(SFC版のみ)

213:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 22:30:54 KgiEBO/q
>>206
なんか好きだな、こういうノリ。

214:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 22:36:33 t63Gbu6q
>206
本日は王立トリステイン航空をご利用頂きまして、誠にありがとうございます。
機長のルイズ・中略・ヴァリエールです…

215:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 22:39:59 /HW69gV6
FF7のクラウドを召喚するとルイズがユフィになってしまう気がする

ル「大人しくそのマテリアとやらを渡しなさい!」
ク「だが断る」
ル「ちょっと! ご主人様が渡しなさいって言ってんのよ!?」
ク「子供の玩具じゃないんでね」
ル「こ……子供ですって~~~~!!!」

……ユフィではないか。

216:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 22:41:24 SGJ/1fFQ
>>214
うっかり燃料を少なく入れ間違えた時のために風のメイジも乗せているのですね
わかります

217:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 22:46:25 QwweMgYz
>>214
 最近は料金値上がりで青息吐息ですね
 分かります

218:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 22:46:56 dwJCwFCy
>>216
そしてこうなるわけですね、分かります
~ギムリ宅~
                                     ___     __
                                  _/ |___,,,,,//
                               ∑∠___二___,,ヽ._l ‐― ― ― ―
                                   \ \  ̄
                                       ̄

\○/ ナンカデッカイノキター!!
  │
 <\ =3
  ↑ギムリ

219:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 22:47:40 9QBmM19v
>>216
お客様の中に風のメイジ様はおられませんか

220:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 22:48:03 O8EIdkS+
今思っていることの逆が正解だ。しかしそれは大きなミステイク

FF6と言えばこのセリフが意味不明だった。
結果より後悔しない決断が大事だって意味なんだろうけど
当時はサッパリだったわ

221:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 22:49:31 tXkihgbC
>>214
着陸脚に爆弾を仕込まれたら高速エレベーターカーの出番ですね。

222:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 22:53:33 rKuJQJZ5
ルイズがウーマロを召喚
決闘のルールが理解できずギーシュが杖を落としてもタコ殴りされたりデルフがただの玩具扱いに

223:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 22:54:33 p5IYNCd/
>>206

ル:Examin data link.
シ:Main trans engine No.1, 2 On. No.3, 4 Off. No.5, 6, 7 On.

こうですか?

銀河漂流ヴァイファムからロディを召喚するとか。
タバサがまんまカチュアっぽいからなぁ。

224:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 22:55:00 Kvp9vMq5
>>202
アインはガチホモだぞ、あれはアインの妹の子孫。


225:ライドウの人
08/07/01 22:56:43 sihuMU2J
続きができましたので投下させていただきたく思います。全然話が進んでないですけど

226:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 22:56:45 ZFv6USsg
>221
そこでD-LIVE!!の斑鳩悟登場ですね、わかります

227:ゼロの仲魔
08/07/01 22:59:03 sihuMU2J
 謹慎が解けるまでの数日、ルイズたちは買い物のあと、特に変わったことはなく普段どおりに生活をしていた。
 日中ルイズが自室で勉学に没頭している間、ライドウはというと洗濯をすませ、奉公に来ているものたちと同じく雑用をこなす。
 もともと彼がする義務もないのだが、ある菓子を作ってもらった礼にと進んで手伝いを申し出たのだ。
 任された仕事の一つは薪割りだった。彼と『葛葉』にかかれば硬い木がバターのように切れてしまうのでもうこれは彼の仕事になってしまっていた。そのあとは食堂の掃除である。
 午前の授業が終わる前、スープの蒸気などでほんのわずかに汚れてしまった窓を拭いていき、床にも雑巾をかけていく。
 魔法は便利だが、綺麗なままに保存しておくといったものはなかった。平民の仕事を奪うことになるので使うわけにはいかないのだが。
 一通りやり終えたあたりで、ライドウにシエスタというここに奉公に来ている少女が話しかけてきた。
「お疲れ様です。ライドウさん」
「これぐらいかまいません」
 彼女は先ほどまでテーブルクロスをしいていたため、ほんのりと汗をかいているがさほど疲れた様子はなかった。お盆を持っており、そこには二人ぶんの食事が盛られていた。
「こちらミス・ヴァリエールと、ライドウさんのお食事です」
「毎度毎度、ありがとうございます」
 ライドウは深々と頭を下げてからそれを受け取った。

 以前、ここへきたばかりのときは食堂で賄いをいただいていたのだが、ライドウが己の仲魔を出した決闘から、彼が調理場の中へ入ることはなくなった。
 仕方のないことである。メイジにとってライドウの仲魔は強力な使い魔というだけだが、平民にしてみたら命を脅かす獣と同等だ。
 表面上は気にしない風に装っていても、恐怖はどうしても生まれてしまう。 気丈なマルトー、ギーシュの言いがかりから助けてもらったという恩があるシエスタ以外は、ぎこちなくなってしまうのだ。

228:眠りの地龍
08/07/01 22:59:51 Ps5/lqB/
昨日は失礼しました。
ライドウの人の投下終了10分後あたりに投下予約します。
支援。

229:ゼロの仲魔
08/07/01 23:00:22 sihuMU2J
「ところでライドウさん」
「はい?」
 ライドウが食堂を去ろうとしたところで、シエスタが声をかけてきた。
「この前のお話、考えてくれましたか?」
「この前っていうのは……」
「私の村へと来ていただくことです」
 ライドウは困った顔を見せた。頬をかく。
「駄目ですか?」
「駄目といいますか、僕は使い魔という立場ですから勝手に出て行くわけには」
「それもそうですね。だったら、今度ミス・ヴァリールに休暇を願ってはどうでしょうか。恐らく、もっと先になるでしょうけど。私もそこに休みをあわせてもらいますから」
「はあ……あの、素朴な疑問ですけどいいでしょうか」
「はい。なんなりと」
「そもそも、どうして僕をシエスタさんは村へ誘うんですか? なにか特別な理由でもあるんですか?」
「これがあるんです」
 にこりと屈託のない笑みを浮かべた。
「最初はただの不幸な人かと思ってたんですけど、あの二回目の決闘でピンときちゃったんです。ああ、この人は村へとこないといけないって」
「ピンときちゃったんですか」
「きちゃったんです」
 ふふと、まるで秘密を楽しむ子供のような態度だった。
「まあ、無理は言えません。ですけど、ライドウさんには絶対に来てもらわないといけません。ですから、忘れないでくださいね。それでは」
 シエスタは小さく頭を下げてその場を離れた。ライドウも頭を下げると、お盆を持って食堂を出て行った。

230:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 23:00:41 GoR9UTzD
支援

231:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 23:01:32 J0t93H4c
アインの一族は代々必ず兄妹で生まれて妹の血筋が家を継いでいる
兄の方は必ずハードゲイ

232:ゼロの仲魔
08/07/01 23:02:01 sihuMU2J
 その後、寄り道もせず、授業で静まり返っている学院を歩いていきルイズと自分の部屋にやってきた。ノック。了承をもらってから中へと入る。
 ライドウは机で教科書を読みふけっているルイズに声をかけた。
「食事もって来ました。勉強はどうですか?」
「んー、悪くないわ。もともと今日やる予定だったやつはとっくに理解してるんだもの」
「思ったんですが、結構成績いいんですね。授業でもすらすら教師の問いに答えてましたし」
「実践では駄目駄目だけどね」
 ライドウは言葉を返さない。
 ルイズは教科書をぽーんと手放して、謝った。
「ごめんなさい。いまのは八つ当たりだわ。気を悪くしないで」
「いえいえ、かまいません」
「そういってくれると気が楽だわ。食事にしましょう」
「はい」
 マルトーが用意したのは普段のものとかわらないものだった。おかげでライドウも豪勢な昼食にありつけることができたのだったが、彼は味が好みではないのかすぐに満腹になってしまっていた。
 だが、デザート、彼がマルトーに懇願してメニューに入れてもらったそれだけは何個も平らげていった。それを見てさしものルイズも溜息が出てしまう。
「あんたほんと好きよね。その大学芋っていうの」
「ええ。ルイズ様、契約ですからお一つ譲ってください」
「わかってるわよ」
 ルイズは自分の皿にあったものをわけてやった。
 もともとこれの作り方をマルトーは知らなかった。大学芋というものの名前さえもだ。それをライドウが懸命に再現し、製法を教え、作ってもらっているのだ。
 これのためにわざわざ仕事をしているといっても過言ではなかった。
 一通り食べ終わると、いつもならライドウが食器を食堂へ持ち帰るのだが今日はそうならなかった。
「ルイズ様、実は、シエスタさんというここで奉公をしている人に言われたのですが、」
「なにを?」
「村へこないかと」
「なんで?」
「それが、具体的には教えてくれませんでしたが、なにか特別な理由があるそうです」
「特別な、ね」
 ルイズはオレンジを一切れ口に含み、飲み込んでから答えた。
「別にかまわないわ。求婚していたわけじゃないんでしょう。学院が長期休暇に入ったときにはメイドも暇を与えられるから、そのときにあなたも一緒にいきなさい」
「ありがとうございます」

233:ゼロの仲魔
08/07/01 23:04:08 sihuMU2J
 ライドウは空になった食器を盆に戻し、部屋を出て行った。そして食堂でシエスタに返すと、ちょうど昼休みになるので次の仕事に入る。
 調理されていない生肉やらくず野菜などをリヤカーに積み込んでからヴェストリの広場に出る。
 そこでは学院の使い魔たちが思い思いに休みを取っていたが、彼らはライドウの姿を認めるとぞろぞろと統率の取れた動きで集まりだした。
 モグラ、蛙、サラマンダー、大きなものから小さなものまで学院中の使い魔が彼のもとにいる。先日の馬も混ざっていたが目立っていなかった。
「はい並んで。お食事です」
 様々な鳴き声とともに使い魔たちは一列に並んだ。これがライドウが重宝されているもう一つであった。契約をしていても獣の本性は失われない。餌やりの人間に噛み付くこともある。
 ところが、ライドウの場合は静々と礼儀正しい人間のようにに食事を取ってくれるのだ。他ではこうはならない。
 そうしてすべての使い魔たちに食事を配ると、肉の血で手が汚れているので水で洗っていると、ライドウへ一人の少女が近づいてきた。
「……なにか、用でしょうか」
 ライドウはその、眼鏡をかけた青色の髪をした小柄な少女に尋ねた。
「あなたに、聞きたいことがある」
「はあ、なんでしょうか」
「あなたの右手にあるルーン、それはいつからある?」
 ライドウは自分の右手を見た。そこには文字が描かれていた。
「これは確か、ルイズ様と契約してからできましたね。使い魔の証とか言ってましたけど」
「そう」
 彼女は短くそういい、懐から紙とペンを取り出してスケッチをしだした。
「動かないで」
「は、はあ……」
 時間はさほどかからずに終了する。彼女は礼をいってから食堂に戻っていった。ライドウはすぐさま仕事に戻っていった。

234:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 23:04:09 iUHZTLdd
>>198
式神の城かサイキックフォースから呼べば、OK!

そういや、前スレで自力で帰還できるキャラの召還の話が出てたけど、
無名世界の有名キャラなら世界間移動こなす人結構いるよね。

ルイズに少年探偵、キュルケに「贅沢にしか生きられない」ニーギ、
タバサにふみこたんあたりで。

235:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 23:04:31 6MGUjxVq
支援

236:ゼロの仲魔
08/07/01 23:07:27 sihuMU2J
 夜、ライドウが新たに薪を割る、ではなく切っていたらゴウトがやってきた。鳥目というのがあるが、彼にとってそれは問題ないようであった。
 迷うことなくライドウの肩に着陸すると、小声で仕入れた情報を語り始めた。
「ある田舎村で耳にしたんだが、この国のある領主がまるで人が変わったかのように優しくなったらしい」
「というと?」
「それまでは人買いといったことを堂々としていてな。民からは恐怖の対象として見られていたようだ。それがいまや聖人君子になっているらしい。贅沢もやめてなかなか質素な生活をしているのだとか」
「他には?」
「アルビオンという国の政治家たちが、まるで人が変わったかのように王家を糾弾しているらしい。このままでは革命も起きるやもというほどだ」
「イギリスみたいに?」
「いや、ここにおいての王家を打ち倒すというのはあちらでのとは意味合いが違ってくる。調べたところ、ここでの王家とは神に相当するものから与えられた力だからな。それを滅ぼすなど、考えられん。
恐らくだが、彼奴らが関わっている」
「恐らく、じゃなく、確実に関わってるだろうな」
 ゴウトは反論しなかった。
 早計だとか、いまだ様子見が必要だとか。
 なぜなら彼もまた、確信を持っているからであった。
 ライドウは心底疲れたかのような、重い、溜息をついた。
「あいつらは、こっちでやるつもりなんだろう。でも、科学がないから、周到な準備をしないといけない」
「これは布石といったところか。いつ出る?」
 ゴウトの問い、ライドウは薪を切りながら答えた。
「今夜にでも。ルイズ様が寝入ってから、その領主のところへ」
 そういって葛葉を鞘に収め、腰から弾がこめられていない銃を抜いた。
 引き金を引く。弾は出なかった。

237:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 23:08:56 eyBU5zQ2
支援

238:ライドウの人
08/07/01 23:09:40 sihuMU2J
これで投下は終わりです。支援アリガトウございました。

239:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 23:14:37 KgiEBO/q
乙したー。
なんてーか、キレのいいルイズですな。こういう感じは大好きです。
ツンデレキャラはある種の高潔さを持ち合わせてないと
ただウザイだけではないかと思う今日この頃。

>>234
「豪華絢爛にしか生きられない」じゃなかったっけか。
絢爛舞踏と引っかけてるんだと思うし。

240:眠りの地龍
08/07/01 23:15:19 Ps5/lqB/
乙です、では30分から投下開始。

241: ◆6RW/qJehaM
08/07/01 23:17:49 aHQdoVO8
>>240

しまた。
さきこされた。

242:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 23:21:37 ilRIjqoN
乙でしたー!

>>207-208
飛空挺の舳先に腕を組んで颯爽と立ち、高空の日差しを頭頂部で反射させるコルベール。
その輝きが船と共に空を翔る事から、新たな二つ名は「光」。
あるいは「流星」のコルベールと呼ばれ、実情を誤解されたままイメージだけが広まることに。

243:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 23:23:13 phdudWaf
ならば「閃光」のワルドとは……まさかあの帽子ッ……

244:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 23:23:17 uOMz/5Ia
>>220
今思っていることの逆が正解だ(セッツァー談)
しかしそれは大きなミステイク(ダリル談)

このセリフを言う場面では今思っていることの逆が正解だったから、この賭けはセッツァーの勝ちってこと

245:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 23:25:00 KgiEBO/q
>>243
な、なんと恐ろしい……。

246: ◆6RW/qJehaM
08/07/01 23:28:04 aHQdoVO8
まさか、太陽拳の使い手か!?

247:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 23:29:13 GoR9UTzD
>>まさか、太陽拳の使い手か!?
DBの天津飯を召喚して「太陽の使い魔」ってタイトルを思いついた
タイトルだけ

248:眠りの地龍
08/07/01 23:30:46 Ps5/lqB/
それでは投下します。

249:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 23:30:45 dt40WSHw
>>234
どいつもこいつもどう考えても絶対と言っていい程従わないけどな。
特にニーギとふみこ。
契約とか強要しようもならガチで殺しに来る。
あいつらその辺マジで容赦ないし。


250:眠りの地龍
08/07/01 23:31:45 Ps5/lqB/

国王の財力、エルフの先住魔法、そして異世界人の知謀が結集し造り果せた、冷たき2体の巨人。


ガリア王国の何処かにある、広く薄暗い室内で、その巨人達は眠っていた。
ぴたりと並んいるその2体は、血を分け与えた双子の兄弟にも見える。
それほど、よく似ていた。


2体を外見がら個別化する為に用意された、蒼きを染めし鎧と、紅を司る鎧。
その彩色が、後に偶然ながら、彼等に付けられる名称の由来となり、
そしてさる事毎に因果な按排を弾き出すとは、ガリア王国の長とて現段階では予知すら叶わない。


彼等は光という存在を知らずにいる。
未だ1度たりとも、起き上がるのを赦されていないから。
仄暗い無の世界を漂う先に見つけるものは、果たしてガリア王が望する正しき事なのか、
はたまた、2体の誕生に携わった異世界人の危惧する、過ちの繰り返しなのか。


その運命を委ねるはガリア王、そして蘇りし神の頭脳次第。
遠くない未来、神の頭脳が灯す光は、彼等を何処へ導くのだろうか。
子は親を選べないとは、先人とてよくも適切な言葉を残したものだ。


何れにせよこの2体の巨人が、まだ目覚めてはならぬが故に彼等を固く束縛する、
強靭な紐から解き放たれる為には、暫時の経過を必要とした。




 眠りの地龍  第3話  「あしなが姉さん」


251:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 23:32:05 6MGUjxVq
支援

252:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 23:32:09 phdudWaf
かっこよく死艶

253:眠りの地龍
08/07/01 23:32:48 Ps5/lqB/

ゴモちゃんで良いじゃない、とけんもほろろ気味に言うのはキュルケ。


生き物、よりも置き物、として認識され始めた感すらある、動かざる眠りの地龍ゴモラの名称について、
毎日散々思考する挙句、結局は決まらない事を悪循環的にひどく悩むルイズが、
少々プライドを捨て、この日授業の直前、キュルケに相談した処、前記の答えが返ってきた次第である。

やっぱこのゲルマニア女なんかに聞くんじゃなかった、とルイズは溜息をつく。
だが、キュルケとの雑談は続いた。それもわりと和気藹藹に、だ。
学院1年生の頃の彼女達は、犬猿の仲を具体的に表した仲の悪さであった。
同じ机に、それも隣同士で座るなど、例え天地が引っ繰り返りようとも考えられなかった程に。

ルイズは魔法が不得意とするが、それは周知の事実にも程があるので、敢てその詳細は省くとして、
爆発乃至、発光しか能がない彼女を嘲弄していたのは、何もキュルケに限った事ではない。
2人の仲が悪かった原因として、そこだけを指摘するのは見当違いではなかろうかと思える。
また、ゴモラたる大層な使い魔を召喚したから、2人は仲良くなったと捉えるのもまた然り。

確かに魔法劣等者ではあるが、ルイズは努力を怠ってはいない。ただ何故だか報われないだけだ。
それに早い段階で感ずいた者もいたのに、当のルイズは性分からか強がってしまい、
理解しようとしてくれた者達を、これまで遠ざけてしまったきらいは大いにあると言える。
そう、孤独の巌窟に片足を突っ込んだのは、他ならぬルイズであり、
召喚されたゴモラは、その巌窟から脱出するチャンスを、無意識がら与えてくれたのに過ぎないのである。
ルイズ自身にその気がなければ、何を召喚しようが、キュルケ達との距離は今も遠かったであろう。

「あの、さ。マウンテンガリバー、なんてどうかな?」

さて、そんな2人の少女の会話に、唐突に顔を突っ込むは、後の座席から乗り出す膨よかなる少年マリコルヌ。
その丸っこい顔に備え付けられた口から放ったのは、どうやらゴモラの名前についての発言らしい。
ルイズとキュルケは、彼の弾力のありそうな事実柔らかい頬を目の当たりにし、軽く怯む。
そして、ルイズはマリコルヌの案を即座に却下した。
ガリバーだなんて、いかにも男っぽい名前じゃ駄目よ、長いし。
と。

ゴモラの性別は未だ不明である。
昏睡状態なのではと疑ってしまう程に深く眠り、なかなか目覚めないため、
通常使い主と使い魔が可能とする、意思の疎通が儘ならないからなのも原因の1つだが、
最大の理由は、単純明快に生殖器による雄雌の判断がつかないからである。

竜の生殖器は、大抵他種の生物と同じ様に尻尾の付け根にある。
これに倣いゴモラの尻尾の付け根を調べた処、所謂突起物の類は見受けられなかった。
だが、まだ雌だとは断定をしかねる。何故なら、ゴモラはその巨体をうつ伏せにさせ眠っているため、
或いは案外小さな生殖器が、巨体と大地の合間に埋もれている可能性が高いからだ。
依然未確認のままのルーンと同じく、性別の方も曖昧模糊なのが暗黙の了解となっている
(半陰陽、という単語も浮かび上がるが、生物学的にそれはあり得るのだろうか)。
目覚めてくれれば、そう事が有耶無耶に縺れる必然性も消えうせるのだが、
起き上がらない巨体を目の前に、ほとほと待ち惚けを喰らっているのが現状だ。

そんな良く言えばミステリアス、悪く言えば真偽があやふやではっきりとしない、
物言わぬゴモラは、今は如何な夢を見ているのだろうか。


254:眠りの地龍
08/07/01 23:34:00 Ps5/lqB/

マリコルヌの方に視線を戻してみると、絶対的な命名決定権を握るルイズからの冷たい即答を受け、
軽く残念がっているのだが、そんな彼を煽るが如く、
そうそう、君にはセンスがないよ。とさらに横入りする、頬に真新しい火傷の痕を負ったギムリの姿がある。
キュルケはギムリをルイズ越しに目にすると、少しげんなりとした表情を見せた。
大方昨晩あたり、その火傷に繋がる、何かしらの関わり合いがあったのは間違いない。

センスがないだなんて、君に言われたくないぞと指差し反論するマリコルヌに、
少なくとも君よりも高貴な名を考える自信はあるね、と胸張って言う妙に自信ありげなギムリ。
2人のやり取りを封切りに、他の生徒達もゴモラの名称について各々語り始めた。
たとえその正体が地龍であると知らずとも、ゴモラの存在に憧れを抱く者は少なくなく、
その名付け親になれるのならばなってみたい、と衝動にかられたのかもしれない。
最初はほんの雑談程度だったのだが、次第に誰が名をつけるか、どんな名をつけるかの口論に発展した。
何故に使い主である私の意志は無視なのよ、と当然至極なルイズの主張をも掠れ消してしまう程に。

その議論は、ギトーの風魔法の授業が始まっても尚継続するほど白熱し、
授業中だぞ、厳粛にできんのか、と怒鳴るギトーを誰もが無視した、というか気づいていない。
痺れを切らしたギトーが、いい加減にしゃぁがれこの糞餓鬼どもが!
と教師らしかぬ暴言を吐こうとした直前であった。

「グノーム」

囂然たる場をまるでサイレントの魔法の如く沈め、そしてギトーのモラル崩壊を未然に防いだのは、
それまでキュルケの隣で、普段通り淡々と本を読んでいたタバサである。
彼女の声は極めて小さく、鶴の一声と例えるのも怪しいものだったが、まさか想定外の参入に人目を引かせた。
何かしら魔法の呪文でも詠唱したのかと勘違いした者もいるが、
それは普段から勉学を疎かにしている証拠である。
実技の結果はともかく、毎日の勉強を欠かさないルイズは、すぐにタバサの放った言葉の意味を理解した。

「土の精?」

以前何かの本で読んだか、或いは1年生の時授業で学んだ覚えがある。
四系統魔法と呼ばれる、火、水、風、土には、それぞれ系統の名を冠とする精霊が存在する。
火の精はサラマンダー、水の精はウンディーネ。
風の精はシルフィード。そして、土の精はグノーム。

そう、タバサの使い魔の名シルフィードは、ここからの因由なのである。
蒼い体色で、空を自由に飛び回る韻竜(表沙汰では風竜)には秀逸な命名と言えよう。

妥当、いやこれは秀逸かもしれない、とルイズは断案に達した。
グノーム、であれば、後々雄か雌か判別した際に、それに沿った名前に変える必要も無い。
土の精という意味ならば、地龍への命名由来としては十二分である。
それに、ゴモちゃんやらマウンテンガリバーやらなんかよりも、よっぽど響きが良く、程よく短いし、
何よりタバサの使い魔と共通点のある名というのも気に入った。
他の生徒達も概ね納得したらしく、感嘆や反論の声が僅かに漏れるのを除き、教室内は治まりを見せる。
なんかよく解らんがこれで授業が再開できる、とギトーもタバサに心の中で感謝の意を表したのであった。

その後、ゴモラを嫌うシルフィードが「んな、なんじゃとてなのねぇぇぇぇ!?」
と悲観に打ちひしがれて叫んだのは、敢えて記するまでもない。


255:眠りの地龍
08/07/01 23:35:06 Ps5/lqB/

それ自体が、巨大な風石の塊であるという説がある。

始祖ブリミルの力が時節「ナンデモアリ」的な意味合いで取られる謂れの1つに、
その始祖の息子が作り上げたという、ここ浮遊大陸アルビオンが挙げられる場合が多い。
常に地上から3000メイルの位置にて、巨大な1つの大陸が浮かぶ光景は圧巻である。
そこでは、人々や動物達が、地上と然程変わらぬ生活を送っており、
高度3000メイルだからと、高山病の類、酸素欠病症等に苦悶する例は殆ど無い。
森林などの自然環境が調っているから、と言えるが、
その自然環境も何故、雲の上なぞで、地上と大差無しに成り立っているのだろうか。
それもまた、ブリミルの「ナンデモアリ」が干渉しているのかもしれないが、だとすれば、
本当に「ナンデモアリ」である。


そのアルビオンのサウスゴータ地方、何かを隠すのに適する程深い森に囲まれた、ウエストウッド村は、
住人の平均年齢が一桁という、端から‘活気ある村’を志していない、小さな村である。
しかし活気はなくとも元気は溢れており、常に笑い声が絶えないのがこの村の特徴で、
収入源の皆無による貧困の対策は、とある1人の女怪盗によって成されている。

村から10メイル程森の中を突き進んだ場所に、せいぜい雑草が生い茂る程度の、広場とも言える更地がある。
木々の中にぽかんと開いたその空間に、さらに場違いと言わざるを得ない異様な物体が、ずんと身を置いていた。
岩山である。
いや、岩山と記述するのも怪しい。
何故ならそれは、少なく見積っても3つの色彩が塗りたくられているからだ。

「悪い事は言わない。今すぐこの化物と、なんとかしてでも絶縁するんだよ」

カラフルなる岩山を見据えそう言う、緑色の髪を生やす麗人は、
数日前まではトリステイン学院に身を置いていた、ロングビルであった。
髪を下ろし、眼鏡を外したその姿は、身に纏う黒い衣類と相俟って、
御淑やかな学院長秘書とはかけ離れた雰囲気を醸し出している。
前述の1人の女怪盗とは彼女の事であるが、なるほどその目付きたるは、がめつい盗人に相応しくもある。

「縁を切れって、何を言い出すの? マチルダ姉さん。ティルは私達の大切な家族なのよ?」

ロングビルのすぐ隣に、これまた麗人と言わざるを得ない少女の姿がある。
その少女の特異点たるは、1つや2つ指摘するだけでは済まない。
まず長い耳は明らかに人間の備える類ではないく、それは彼女が混血なる身であるのを示している。
しかし長いブロンドヘアーは、宝石と見違えんばかりの鮮麗さを放ち、端正な顔立ちを際立たせている。
さらに胸部は布地からはみ出さんばかりに豊満でいて、
対照的にすらりとした細い肢体が、彼女の女性としての外見的魅力を、必要以上に見せつけている。
身に着る服は、肩と腋を惜しげなく露出させ(透明の衣は被っている)、腰を纏うスカート部分の両腰側面には、
大きな切れ目があるため、足の付け根に程近い肌白き太ももが、ありありと眼に飛び込んでくる。
その肌の魅せ具合は、健全なる青少年の海綿体を刺激為兼ねず、周りの目を気にしないからこその服装である。
彼女こそが、ロングビルがこのウエストウッド村に投資を重ねる起因である、ティファニアだ。

(因みにマチルダとは、ロングビルの本名であり、以降彼女の事はマチルダと記す。
 何故マチルダは、身を呈してウエストウッド村に尽くしているかの経由は、またいずれに)

化け物、そして大切な家族とは、2人の目の前にある岩山であるらしい。
カラフルな岩山の正体は、竜であった。


256:眠りの地龍
08/07/01 23:37:36 Ps5/lqB/

以前、冬の終わりかけだったか、このウエストウッドに立ち寄った際、初めてマチルダはこの竜を目にした。
これまでティファニアは、魔法を扱えるながらも、使い魔を召喚する運びには至らなかったのだが、

「呼んで欲しい、と願われたから」というよく解らない理由で召喚していた巨大なドラゴンが、これだった。
当時は、こりゃまた面倒なものを呼び出しちまったねぇ、と飼育資金面に関しての懸念は抱いたが、
あくまでサイズの大きい、えらく長く眠る竜とだけ認識し、マチルダはそのまま学院へと戻った。
しかしその後、学院での召喚儀式によって出現したゴモラを目にするや、
‘地龍の生き残り’という聞き捨てならない単語が脳裏を過り、もしやと思い‘地龍録’を読んでみた処、
あのサウスゴータの森で眠る竜と、瓜二つな地龍の解説項目を発見した時は、青ざめたものである。
「十数メイルもある大きな竜」ではなく、「十数メイルしかない小さな地龍」だったのだ。
直後にオスマンから、休暇の許可をすんなり得られたのは僥倖であった。
逸早くアルビオンへのフネに乗り、一息足りとも休む事無く、ついぞ先ほどティファニアと再会した次第だ。

紅い色の頭部から発せられる低音の唸りは、恐らく竜の鼾と考定される。
額にあたる個所が、角の様に前にのめり出す形で突起しており、
図太い首元には、まるで人工物の装甲ではないのかと見違えんばかりの、
段々に構造された硬い皮膚が覆われている。この皮膚が、3色の内の灰色をなしていた。
太い前脚と後ろ脚は、濃い青色に染め、所々に数は僅かだか小さな斑点も見られる。
大凡に見計らって、尻尾も合わせ大きさ15メイル弱程だろうか。学院のゴモラの半分以下である。
まだ成体にまでは成長し切っていないのか、さもなくば生まれて間もないのかもしれない。
しかし、1匹の生物の大きさとしては、やはり非常識であると評するに差当り支障は無い。

「いいかい? ティファニア。何故この古代の竜が、おまえに呼ばれたのかは解らない。
 だけどね、このままじゃ碌な結果を生まないよ。
 幸い、こいつはまだ夢の中。今の内にここから離れる支度をするんだ」

ハーフエルフと、絶滅したはずの地龍。嫌でも目立ってしまうこの組み合わせは、非常に芳しくない。
万が一にも使い魔の儀式が失敗していて、目覚めたと同時に暴れ狂ってしまえば、太刀打ちできる道理もあらず。
マチルダは、これまでの悪行もとい窃盗(それ自体はティファニアには伏せている)で得た資金で、
ウエストウッド村の子供達と共々、少しでもこの地龍から逃れようと算段していた。

今この瞬間にでも、巨大土ゴーレムを造り、ゴルザを不意打ちし葬ってやりたいが、
いくらなんでも妹や村の子供達の目前で、それを実行するには危険が伴う上良心も痛むし、
第一、戦闘能力が未知数の地龍を相手に、果たして自分の戦法が通じるのか、という不安要素もある。
一旦ここから身を離した後、この地龍の存在をアルビオンの政府だかアカデミーだかに匿名で知らせばいい。
危険な存在と看做され、軍に退治されるもよし、アカデミーの研究材料として捕獲されるもよし。
場合によっては、此処ウエストウッド村に戻ってこれなくなるかもしれないが、致し方なかろう。
新たなる安住の地を見つけるには、どれほどの時間を費やさねばならぬか、苦悶を余儀無くされない。

「聞いて姉さん、ティルは―」

そんな風に1人で悶々と、今後についての不安を胸に廻らせているマチルダに、
ティファニアが複雑そうな表情で、心境を伝えようとした、その瞬間。
岩山が、ピクリと動いた。

さらに、岩山から重い轟音が迸る。
それは鼾ではなく、その地龍が眠りから覚めた事を示す、欠伸の咆哮であった。


257:眠りの地龍
08/07/01 23:39:21 Ps5/lqB/

岩の様に固定されていた身体が縦に震え、地表が軋む音が、辺りに佇んでいた鳥や小動物の逃走を促した。
ゆっくりと上半身を持ち上げると、その岩のような身体の先端、紅い顔面から、2つの微光が放たれる。
その光の正体が眼球であるのが判った刹那、日光が思いの外刺激を与えたのか、すぐさま眼を閉じた。
そして、眼の下部がばっくりと穴開き、その穴から鋭い牙と長い舌を見せると同時に、
断続的な唸り声が放たられた。低く、重たい音程を轟かせるその唸りは、
大型の獣の咆哮、というよりも寧ろ男性の荒い鼾を彷彿とさせる。
眠りから自為的に目覚め、豪快な欠伸を無意識に披露している、その地龍。

「―ゴルザ!」

マチルダは再度、あの日『地龍録』で目にし記憶に刻んだ竜の名を反芻した。
忘れもしない、地龍「ゴルザ」。
立ち上がった事により、その外見の全貌が、より鮮明と肉眼で確認できる。
やはり、挿絵として描かれていたものと酷似しているし、第一「起立する竜」は、地龍以外に考えられない。

現在既存する殆どの竜は、余程の事態でも舞い降りない限り、
前脚は常時地面に付け、後ろ脚は屈折させ、爬虫類と同様4足で佇む。
求愛行動などに限り、2足で歩行する場合もあるらしいが、あくまで稀でしかない。

だが地龍は、太い後ろ脚をぴんと伸ばし、尻尾をぐでんと垂らして重心を調整することにより、
人間や猿が直立した体制と似た姿勢を、難なく常にとることを可能としている。
また、直立するにより、必然的に地面から離れる前脚は、もはや『腕』であると断言して良く、
その腕で大小様々な物を掴み、持ち上げる事ができるなど、竜としてはありえない動作をやってのける。
地龍の体の構造は、その種類によりけりだが、竜でありながら哺乳類と非常に似ているのだ
(故か、そもそも地龍は実は竜族で無く、皮膚等が特異なだけの哺乳類なのでは、という極端説が存在する)。


258:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 23:40:05 aVQEC4B/
>>234
239が言っている通り「豪華絢爛にしか生きられない」だな。
たぶん質素な生活様式してても勝手に豪華絢爛になってしまうんだろう。いろんな意味で。

そして地龍の人支援

259:眠りの地龍
08/07/01 23:41:28 Ps5/lqB/

長い欠伸を終えると同時に、ゴルザは瞼を再び開かせ、ぎょろりとした漆黒の眼をティファニア達に向けた。
まさか目覚めてしまうとは夢にも思わなかったマチルダは、血相を変え、咄嗟に杖を構えようとするが、
慌てて落してしまい、素早く拾おうと身を屈ませた寸前、ゴルザの鼻息が彼女の身を強張らせた。
マチルダにとって、その鼻息が醸す恐怖は、大砲による砲丸発射の爆音にも等しい。
杖に構うのは諦めた。先ずは、ティファニアの身を護らなければ……と、
マチルダは妹のいる方へ身を翻したが、そこに見えたティファニアの様子は、なんともはや落ち着いていた。

事の状況に驚愕としている面構えではないのは、見るに明らか。
どうやら、ゴルザが起床する現場に居合わせたのは、これが初めてではないらしい。
ティファニアは、おはようティル、と10メイル程上空にあるゴルザの顔を見上げながら、明るく声をかける。
そんな彼女と対照的に、マチルダは冷汗を垂らし、その場から1歩後退りした。
ゴルザ―基、ティルという名のそれは、見慣れない客人、マチルダを視野に入れると、
警戒心からか鋭い目つきで彼女を睨み、短く唸る。
思わず腰が抜けそうになったマチルダを、ティファニアは守る様に寄り付き、その姿勢でティルに一喝した。

「ティル! 駄目よ、この人はマチルダ姉さんよ! 前に話したでしょう!」

明らかに動揺した仕草を見せる、ティル。
鋭く光らせていた威嚇の目付きを、何度か瞬くことで緩んだ表情へと変え、
少しばかり気の弱く感じる唸り声を上げると、その巨体を数歩後退させた。
もう大丈夫よ、とティファニアがマチルダに言う。
一瞬の出来事に、マチルダの脳内が、数秒の合間真っ白な世界に染まったのも束の間、
ティファニアがこの地龍を、こうまで忠実に手懐けていた事に驚き、目を丸くした。


260:眠りの地龍
08/07/01 23:42:53 Ps5/lqB/

ゴモラがそうであるように、地龍は長期間床に伏せ、そうは起きない性質だと想定していたのだが、
このゴルザはとっくに長い眠りから覚めていた。
マチルダが地上で出稼ぎをしている合間、目覚めてしまった裂帛なる風貌を相手に、
名を付け従わせる情景を想像してみると、それに如何な勇気を注げなければならなかったか、考えるに難しくない。
ティファニアは、少なくともメンタルの部分では、マチルダの思っていた以上に逞しく成長していたのだ。
危ない喰われる近づくな、と警告するだけ無駄な気配りであろう。

しかし『地龍録』によると、ゴルザの生態的特徴は、火山地帯を住処とし、
地龍の中でも随一に好戦的で凶暴な性質だった、とある。
一説によれば、溶岩を好んで食し、栄養源に変換してしまうという、
地龍においてもかなりの常識はずれな特殊種生物であるらしいが、果たして、本当なのだろうか?
ティファニアの説教に大人しく耳を傾けている姿からは、凶暴性に関してはその名残すらも喪失している。
寧ろ滑稽さすら感じたが、火山生息で溶岩摂取を可能とする生物と同一のものとは到底思えない。

火山の、それもサラマンダーすらめったに近寄らない、溶岩を容易に口にできる程の灼熱地帯となると、
ウエストウッドの森のような緑が鬱葱と青茂る森林との環境の差は、そこに生息する生物の生態を及ぼす。
簡単且極端に例えるなら、人間は海中で呼吸できないし、魚も地上での鰓呼吸は不可能。のようなものだ。
二酸化炭素を吸収した植物達が放つ酸素濃度が、召喚されたゴルザの物質代謝に、
多かれ少なかれの悪影響を及しているとは考えられないだろうか。

百歩譲って、森の中でも生息できる理由は高い適応能力を備えているからだとしても、
ティルと名付けられたこのゴルザは、ここで何を食べているのだろうか?
森で採れる食物が、溶岩を喰らう奇想天外龍の口に合うの否かは甚だ疑わしい。
若しくはこの個体が、ゴルザそのものでなく、ゴルザと外見酷似した亜種目である可能性もありうる。
そうであってくれれば、草食であったり小食だとしても、さして疑問を抱く面倒も回避できるのだが。

ふとその時、幼い、奇声ともとれる荒ただしい声が、村から聞こえたかと思うと、
小さな影が続々とマチルダ達のいる元へ集まってきた。

それは、ティルの欠伸の咆哮を聞いて、そら起きたぞとばかりに駆け付けた子供達の姿だった。
禍々しい地龍の風貌に臆しもせず、その脚部に豪快に飛びつくと、純粋無垢なる楽しげな声を挙げ、
まるで父親だかに甘えるかのように、じゃれ惚けている。
当のティルは、さも関心を示していないかの様な、感情の読み取れない双眸で眼下を見据えてるが、
うっかり踏みつぶしてしまわないようにか足を微動だにさせない辺り、子供達を考慮しているのが窺えた。


261:眠りの地龍
08/07/01 23:43:59 Ps5/lqB/

この日何度目かの「呆気に取られている」のはマチルダである。
子供達との仲もここまで進展し、直に触れ合うとは、
俄かに信じがたい光景だが、トリステイン学院でのゴモラの人気ぶりを思い出してみると、
さりとて違和感は覚えなかった、と自分に言い聞かせたい処だが、
すぐにこの状況を受け入れるのには、やはり無理があった。

この地龍の生き残りが危険極まりないのに変わりはない。
確かによく懐いているかもしれないが、その巨体を地表に晒すだけで、
巡邏中のアルビオン竜騎兵だかに発見されてしまう可能性は大いにある。
そうなってしまうと、今まで大切に守り続けてきたこの村の秩序が崩壊するのは、瞬く間であろう。
何よりハーフエルフであるティファニアが、世間に知られた挙句忌み嫌われ、虐げられるのを一番恐れていた。

だがそのティファニア曰く、今日はたまたま地上で昼寝をしていただけで、
普段は地面に浅く身を潜らせており、大人しくしているという。
何より、この森の木々が姿を晦ましてくれるから、絶対に見つからない、とも。

「お願い姉さん、私達はちゃんとやっていけている。だから、ティルを屠るだなんて、言わないで」

マチルダの肩をぎゅっと掴んで訴えるその瞳は、いつの間にか潤んでいた。
こうまで感情移入されると、「いいえ」とは即答できない。
それに彼女達の絆は、たかが怪盗如きが盗めやしない程に、既に固く結ばれていたようだ。

「……あぁ、わかった。誰にもゴルザ……ティルのことは言出しないよ。だから、泣くのはおよし」

我が意思を捻じ曲げない、そんな妹の屈強な精神に、ついにマチルダは折れた。
金色の長髪に手を触れ、優しく告げると、彼女も内心で決意した。
こうなれば、どんな運命にだって一緒に立ち向かってやろう。何も今に始まったことではない、と。


262:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 23:47:48 eyBU5zQ2
支援
あと葛葉ライドウさん乙です

263:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 23:51:54 p26oUczc
gnomeのgは発音しないから、表記するなら「ノーム」なんだ支援

264:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 23:51:56 phdudWaf
火竜山脈へ不法投棄支援

265:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 23:52:44 tXkihgbC
人造の巨人……テラノイドか?
支援

266:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 23:52:59 SGJ/1fFQ
不法投棄イクナイ支援

267:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 23:56:08 yGHI1EK9
>>249
では、新井木を召喚して当事者達(新井木含む)も気付かないうちに救ってもらうのはどうだ?

ついでと言ってはナンだが、支援

268:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 23:57:34 phdudWaf
さるさんかな?

269:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/02 00:08:04 6G3LC6Pg
支援

270:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/02 00:08:26 0zJiQdTg
代理投下します

271:地龍代理
08/07/02 00:09:23 0zJiQdTg
 
やや興奮していたが、落着きを取り戻したティファニアは、持ってくる物があると言い、1人村へと戻った。

マチルダは、これまでの緊張を解し、ティルの足元に群がる子供達の姿を見た後、先程落とした杖を広う。
そして、地表から約10メイルにある、ティルの顔を恐る恐る見上げてみる。
眼が合ったが、その眼光から悟れるは、先の威勢は去勢し、マチルダを味方として迎え受ける感情だった。
素直に喜んでいいんだか、少し複雑な気分になったマチルダは、暫く空虚に立ち尽くしていると、
背後でティファニアの呼ぶ声が聞こえた。

いつの間にかその手には、何やら赤い果実が詰められた籠が抱えられている。
ティルとのアイコンタクトを試みている間に、取りに戻った物とはこれであるらしい。
今朝摘んだばかりの新鮮な木イチゴを、おやつに食べようとのこと。

そう言えば、昨日から不安の余り、何も口にしなかったのを思い出したマチルダは、
途端に湧いて出てきた食欲を抑えきれず、座るのに頃合いな岩を見つけると、そこに座る。
隣に腰を下ろしたティファニアが、愛くるしい笑顔で先程の籠を差し出した。
好意を受け、マチルダは籠に山盛りにされた木イチゴを1粒掴み、口に入れる。
小さな果肉を噛むごとに、甘酸っぱい香りが口内に広がり、鼻孔にも酸味が伝わった。

久し振りに食べた、懐かしい味に余韻に浸っているさ最中、
子供達の内の1人、エマが、ひょこひょことマチルダ達の元へ近寄った。
するとエマは、ティファニアに許容を得てから、籠から木イチゴを1粒手にする。
それを頬張るのかと思いきや

「いっくよー、ティル!」

と、後ろに振り向き、ティルの口元目掛け、思い切り木イチゴを放り投げた。


272:地龍代理
08/07/02 00:10:04 0zJiQdTg

しかし、年端もいかない女の子が放った弾道は頼りなく、
大して高く上がらないまま、落下の一途を辿ろうとしていた。

その時だった、立ち尽くしたままで1歩たりとも動かなかったティルが、
顎を大きく開き、上半身を素早く前のめりにさせたかと思うや否や、その木イチゴをパクリと口に入れたのは。
人間と同じような味覚器官を備えているのかも疑わしい地龍だが、木イチゴなぞ口に合うのだろうか。
吐き出す行為は見て取られない処を見ると、少なくとも毒になりはしない様だ。
それどころか、再び口を開き低く短く唸った。2つめをねだっているのか?
きゃっきゃと笑うエマを撫でるティファニアが、

「姉さん、仲直りの印に」

と、木イチゴをマチルダに渡す。
仲直り? それはつまり、こう、木イチゴを、ゴルザあいやティルの口元に投げてやれということか?
マチルダは、ままよ、と果実を放る。さすがにエマが投げたのと比べて、真っ直ぐ正確に飛んだ木イチゴを、
ティルは難なくとらえ、咀嚼を開始した。

やったぁ、と笑うエマが、マチルダに対しガッツポーズを示している。
気づいた時、マチルダも心の底から、声に出して朗らかに笑っていた。
これだけ笑ったのは、何時だかぶりだろうか。
笑い合うマチルダとエマに自然とつられたか、ティファニアも眼福たる笑顔を振舞う。

よくよく鑑みてみれば、ティファニアや子供達の笑顔に、以前よりも純粋さが増した気がしないでもない。
威嚇や警戒の意思が感じられない、呑気な呻きを鳴らしている新しい家族、ティルが、
この笑顔を齎しているのだとしたら、自分が勝手に遂行しようとした事は、愚行だったのかもしれない。

しばしマチルダは、この穏やかなひと時を、大切な人々と1匹の地龍と共に噛み締めることにした。

273:地龍代理
08/07/02 00:10:29 0zJiQdTg
以上です。

274:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/02 00:11:09 XrccGDvW
代理乙でした。

275: ◆6RW/qJehaM
08/07/02 00:21:18 bYWZTjvQ
0040時に投下しようかと

276:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/02 00:23:37 p1yNCB01
乙!&GJ!

277:絶望の街の魔王、降臨-3 ◆6RW/qJehaM
08/07/02 00:41:12 bYWZTjvQ
 ルイズは、図書館に入り浸っていた。ジルを元の場所に─異世界とかの話は信じてない
が─戻す手段を探す為に。
 誇りでできている様なルイズが、使い魔の為に奔走しているのは、数日前の、召喚した次
の日の会話と行動による。

「貴方を殺せば、私は元の世界に戻れるの?」

 使い魔か主が死ねば、契約は解除される。それから弾き出される疑問を、ただ口にしただ
けだ。
 『死ねば』ではなく『殺せば』である。流石にジルも子供を殺しはしないが、ルイズはそ
の言葉に怯えてしまった。ジルは、人を殺した事がある。直感で、それを悟ったのだ。
 無論、即答でそれを否定した。
「契約が解除されるだけで、使い魔は残るわ」
 その答えに、暫く考え込む。
「貴女は、私、いいえ、平民が使い魔である事に不満なのよね?」
 召喚された時、コルベールに抗議していた姿を思い出す。
「え、ええ」
「そして、私がいなくなればどうなるの」
「多分、契約は解除されるわ」
「その場合、使い魔は?」
「また召喚する事になるわ。使い魔が死んだ場合の話だけど」
 ジルが微笑みを浮かべる。
「利害は一致したわね」
「え?」
「貴女は普通の使い魔が欲しい。私がいなくなれば、私が元の世界に戻れば、また別の使い
魔を召喚できる」
「成程ね」
「貴女は私を元の世界に戻す方法を探す。対価として、私は貴女の使い魔をしてあげる。ど
う?なかなかの条件じゃない?」
「乗っ……らないわよ!何で私が平民の指図なんか……!」
 文句を言おうとして、封じられる。ジルに睨まれたからだ。生物として逆らってはいけな
い何か、それを感じさせる瞳だった。
「感覚の共有や、秘薬の材料集めはできないけど、護衛に関してはかなり使えるわよ」
 ジルはルイズが起きる前、見舞いに来たコルベールから大雑把な話を聞いて、使い魔の役
目を知っていた。
「そ、そう。判ったわ。貴女を元に戻す方法を探してあげるわ。感謝しなさいよ」
「そう、それでいいのよ、ルイズ」
「御主人様と呼びなさいよ」
「嫌よ。私にそんな趣味は無いわ」
 軽くあしらわれる。
「くううううう……」

278:絶望の街の魔王、降臨-3 ◆6RW/qJehaM
08/07/02 00:42:58 bYWZTjvQ
 それから、ジルは大人しく雑用をして、ルイズは図書館に入り浸る様になった。
 その次の日の授業。
 ルイズとジルが教室に入ると、ざわついた教室が一瞬、静かになる。ジルが美人だから、
それだけではない。ズタボロの状態で召喚され、その疲労と傷は一ヶ月はマトモに動けない
、そんな話を噂で聞いていた(一部の生徒はコルベールに訊いて裏を取った)のに、もうピ
ンピンとしてルイズについて歩いている。本当に人間か、と疑いたくなるのも無理は無い。
普通、サモン・サーヴァントで人間は喚ばれないのだから。
 そんな視線など知ったこっちゃないと言わんばかりに、堂々と歩を進め、席に座るルイズ
。その隣に、普通に座るジル。
 その堂々とした姿に畏怖を覚え、誰も追及する事はできなかった。
 微妙な緊張の中、ひそひそ話で静かにざわつく教室に、やがてふくよかな中年女性の教師
が入ってきた。今度こそ、全員沈黙する。
 一度、教室を見渡して、
「使い魔召喚は、皆さん成功ですわね。このシュヴルーズ、春の新学期に様々な使い魔を見
るのが楽しみなのですよ」
 更に、今度はルイズを見て、
「ミス・ヴァリエールはまた変わった、使い魔を……召喚しましたね」
 何かに気圧される、そんな気分を感じながらも、シュヴルーズは言葉を最後まで言い切っ
た。
 ルイズの使い魔にから、言い表せない何かを感じたのだ。ルイズなら威圧感、コルベール
なら殺意と表現するだろうが、本人は『余計な事を言うな』と言いたいだけである。
 この数日でルイズが蔑まれている事を知ったジルは、空気を読まないシュヴルーズに生徒
達を調子づかす発言をさせたくなかったのだ。一応、使い魔として契約したのだ、義務を果
たそうとした。

279:絶望の街の魔王、降臨-3 ◆6RW/qJehaM
08/07/02 00:44:16 bYWZTjvQ
「ゼロのルイズ!召喚できなかったからってそこら辺歩いてた平民を連れてくるなよ!」
 案の定、一人の生徒が騒ぎだす。
「なっ……」
 反論しようとしたが、ジルに止められた。
「ああいった馬鹿は、無視するに限るわ。相手にすると調子に乗るから」
 そうは言うが、その生徒とシュヴルーズにそれぞれ『黙れ、殺すぞ』『早く駆逐しろ』と
オーラを送る。
 シュヴルーズ以上に空気の読めない生徒は更に囃し立て、シュヴルーズはそれを諫める。
「侮辱はおやめなさい」
「しかし先生、これは真実です。実際にゼロのルイズは魔法がぼっ」
 生徒達は何が起きたか、一瞬判らなかった。
 先程の少年を見ると、口から赤土を掻き出していた。
「貴方はそのまま授業を受けなさい」
 残酷にも、口に赤土が大量に残っている状態で授業を受ける羽目になった。
「ね、正解でしょう?」
 と、悪戯が成功した少女の様な笑みを浮かべるジル。
 それからは、授業は順調に進んだ。一年の時の復習の様な授業で、ルイズは退屈そうに聞
いていたが、意外にも、ジルが真剣な顔で授業を聞いていた。
 やがて手本を見せ、生徒に実践をさせようと教室を見渡して、ある一人の生徒に白羽の矢
が立った。
「ミス・ヴァリエール、この小石を望む金属に変えなさい」
 教室を独特の緊張感が包んだ。

280:絶望の街の魔王、降臨-3 ◆6RW/qJehaM
08/07/02 00:44:58 bYWZTjvQ
「ミス・シュヴルーズ!危険です!」
 声の元はジルの斜め後ろ、紅い髪と褐色の肌の美人だった。キュルケだ。
「何故です、ミス・ツェルプストー?」
「先生は知らないからそんな事が言えるんです。あの威力は……」
 召喚の時の、あの威力を思い出す。大砲などメではない。上手く使えば対艦戦闘すら可能
なのだ。
 しかしシュヴルーズはそれを聞き入れず、ルイズは頭から湯気を出しながら教卓に向かっ
ていった。非常に怒っているのだ。
 ジルがキュルケを止めなかったのは、その声が本気だったからだ。
「すううぅぅぅぅ……はあああぁぁぁぁぁァァ……」
 深呼吸をして頭を冷やす。気を落ち着かせ、集中する。そして詠唱。
「錬金!」
 閃光、破片、爆風、爆炎、そして爆音。
 ジルは爆心にいたルイズの死を確信した。
 それ程の爆発だった。
 しかし彼女は生きていた。元いた場所に平然と立っていた。酷いのはシュヴルーズだ。壁
際まで吹き飛ばされ、小さな破片が刺さっている。いつもより甚大な被害に、教室がパニッ
クに陥る。

281:絶望の街の魔王、降臨-3 ◆6RW/qJehaM
08/07/02 00:46:17 bYWZTjvQ
「シュヴルーズ先生が死んだ!」
「メディーック!」
「ふざけてないで水!回復!」
「モンモン!」
「誰がモンモンよ!」
 誰も助ける気は無い様で、一つ嘆息したジルは、シュヴルーズに近寄る。軍も警察も経験
している彼女は、かなりの救急技術を持っている。バイオハザードでかなりレベルアップせ
ざるを得なかったので、外傷に関しては相当なものだ。いざとなれば、魔法より魔法らしい
『回復薬』を使えばいい。
 傷は軽い。頭を強打した痕跡は無い。純粋に衝撃波で頭を揺さぶられたのだろう。念のた
め救急スプレーをかける。火傷や傷が瞬時に消え、破片が落ちる。いったいどんな薬なのだ
ろうか?
「誰か、運ぶの手伝いなさい」
 いつの間にか静かになった教室で、ジルの声はよく通った。
「へ、平民の分際で……」
 バシュ。言葉にするとそんな音がした。傲慢な反論をした生徒の額に、筒が刺さっていた。
「ふ、ふりぇぃ……」
 数秒の硬直の後、パタリと倒れる。ホルスタに麻酔銃を戻し、教室を見渡す。
 『反論は許さない』と、その行為は如実に語っていた。しかし、名乗り出る者はいない。
「仕方ないわね……ルイズ。医療設備のある場所まで案内して」
 気絶したシュヴルーズを軽々と担ぎ上げ、ルイズに先導させる。
 残された生徒達は、その役立たずぶりにより、駆けつけたコルベールに教室の片付けを命
ぜられる事になった。

282:絶望の街の魔王、降臨-3 ◆6RW/qJehaM
08/07/02 00:47:59 bYWZTjvQ
 その日の昼食時に、トラブルがあった。
 色ボケと名高いギーシュがヘマをしでかし、そのとばっちりを受けたジルが決闘をする羽
目になったのだ。
 事の一端を担うメイドは顔を青くして逃げ、ルイズはジルに謝る様に言うが、当の本人は
知った事じゃないと言わん限りのスルーっぷりを発揮し、決戦の場ヴェストリの広場に向か
う。
 そこでルイズは今までの常識が如何に儚いかを知った。



 その騒ぎの数刻前、ちまちまと書類の処理をするオールド・オスマンの学院長室に、騒が
しくコルベールが入ってきた。
「なんじゃコル君。ノックぐらいしたらどうじゃ」
「コルベールです。すみません、これを」
 分厚い書籍を二冊と、数枚の紙を差し出す。
「ミス・ヴァリエールの使い魔に現れたルーンですが、とんでもない事が判りましたぞ!」
 鼻息荒くまくしたてるコルベールに、迷惑そうな顔をしながら、仕方ないと言わんばかり
に訊く。
「何が判ったんじゃ、コルネオ君」
「コ・ル・ベ・ェ・ル。彼女はガンダールヴです」
 本の一つを手に取り、付箋の場所を探り、そのページを開く。本の題名は『始祖の使い魔
達』。

283:絶望の街の魔王、降臨-3 ◆6RW/qJehaM
08/07/02 00:48:40 bYWZTjvQ
「真か!?」
「それしか考えられません。ルーンの形は完全に一致します」
 紙に描かれたスケッチと、本の図は、どう見ても一致した。
「やれやれ、また厄介事の種ができたわい」
「残念ですが、まだ厄介な話はあります。これを」
 もう一冊の本を広げる。
「『霞の中より現れし使い魔、この世の者に非ず。其の者、伝説を纏い、伝説を破り、伝説
となる。
其の者、不死に非ず。しかし剣も魔法も効かず。異界の理を以て、世を変える。
全ての歴史は、其の者と、禿頭の男と共に始まる。其の者、理と知恵を男に授ける。
世は変わる。しかし争いは無くならず』」
「なんじゃそれは」
「始祖の言葉でありますぞ」
 題名は『始祖の予言書』。これも幾つか付箋が挟んでであった。
「私は、これがあの使い魔の様に思えて仕方無いのです」
「考え過ぎじゃろうて」
「そうだといいのですが……後、これを」
「何じゃ?」
 紙の束を渡される。それらには、絵が描かれていた。
「彼女の持ち物です。全て合わせるとかなりの重さですが……それは置いておいて……これ
とこれとこれを」
 束から幾つか紙を選り出す。
「現物を見た方がいいですぞ。あれを造る技術は、このハルケギニアのどこにもありません
。中には素材すら判らぬ物も。この世の者とは思えんのです」
 全て、ジルの装備のスケッチであった。ジルが気絶している間に調べ上げたが、全く判ら
なかった。
「ふむぅ……」
 暫く考える素振りをして、
「コルサコフ君。これは他言してはならん」
「コルベールです。何故です?」
「暇を持て余している貴族に知れたらどうなる?また戦争じゃ。それに伝説の真相は大抵が
ロクでもない内容じゃ」
「そうですか……」
「じゃが、調査は続けておいてくれ。備えあれば憂い無し、じゃ」
「判りました」
 結論がでたところで、外が騒がしくなる。
「何じゃ?」
 オスマンの秘書、ミス・ロングビルが駆け込んできた。
「決闘です。ミスタ・グラモンとミス・ヴァリエールの使い魔が決闘を。生徒が制圧不可能
なので、教師が眠りの鐘の使用許可を求めています」
「何と、まあ……」
「どうしますか?」
「アホか。ガキの喧嘩に秘宝を使う馬鹿がどこにいる」
 コルベールの言葉にそう返す。しかし、
「オールド・オスマン。ミス・ヴァリエールの使い魔ですぞ」
 と反論される。
「そ、そうじゃった。許可する。ただし、どちらかが負傷するまで使うな。そう伝えてくれ
、ミス・ロングビル」
「判りました」
 有能な秘書は、すぐに学院長室から出ていった。
「さて、高見の見物といくかね、コルホーズ君」
「私は集団農場ですか。そうしますか」
 オスマンが杖を振ると、鏡が現れた。鏡面には、決闘の場ヴェストリの広場が俯瞰視点で
映っていた。

284:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/02 00:51:33 5kqzY1BS
魔龍伝の6話はまだ?

285:絶望の街の魔王、降臨-3 ◆6RW/qJehaM
08/07/02 00:52:04 bYWZTjvQ
以上で終わりです。

ジルが召喚されたことにより世界が変わっていく予定です。


286:ゼロの魔龍伝 ◆DQUn79OCQE
08/07/02 00:55:01 bJxYzy6M
バイオの人乙

>>284
投下しようと思ったら人が続いてたのでしばらく様子見してました
このレスの10分後に投下します

287: ◆6RW/qJehaM
08/07/02 00:56:56 bYWZTjvQ
期待

288:ゼロの魔龍伝6話 1/5 ◆DQUn79OCQE
08/07/02 01:06:24 bJxYzy6M
6.ブルドンネ街

決闘から三日、ルイズの周囲は少しずつ変わっていった。
まず表立って馬鹿にする生徒が少なくなったのである。
メイジについて表す言葉に「メイジの実力を見るなら使い魔を見ろ」というのもあり
「ギーシュのゴーレムを圧倒的かつ一瞬で葬り去ったのはルイズの使い魔」
という衝撃的事実はあっという間に学院内を駆け巡っていた。
元々魔法以外の成績はトップクラスであり、家系もトリステインの中では相当に有名な部類に入るので
「あのルイズがとうとう」と感心する者もいたという。
「どうせ嘘に決まっている」「ルイズが凄いのではなく使い魔が凄い」
人づてに話を聞いた者や、ルイズを侮蔑目的でからかっている心無い者もいたものの
決闘の当事者であるギーシュとルイズ、更にこの決闘を見ていた彼女らのクラスメートも多く
何より使い魔の名前が「ゼロ」であったためルイズのクラスでは「ゼロ」とルイズを馬鹿にする者は一人もいなくなった。

「アンタが名前をゼロゼロ言うから私の二つ名が“ゼロ”のままじゃないのよーーーーーーー!!!!」

当人はこんな感じで相変わらずご立腹であったが。


「買い物に行くわよ」
その日の夜、ルイズから提案があった。
話によると明日は休日にあたる虚無の曜日なので街へ買い物に行くとの事らしい。
「それで、アンタの寝具と…剣ね、それを買うわ」
「…どういう風の吹き回しだ」
「あんたがボロっちぃマントで寝てるのがみっともないからよ!
使い魔の管理をするのも私の仕事!それに…私が受けた決闘で剣、壊しちゃったみたいだし…」
今までの待遇からするとあり得ない提案とちょっとしおらしくなった言動に疑心暗鬼になるゼロ。
この娘の事だ、何か物を買わせてまた雑務を押し付けるに違いないと彼は思ってしまった。

「物で釣っても俺は着替えの手伝いもしないし顔は洗わんからな」

使い魔が出来て色々と雑務をさせようというルイズの企みは事実失敗に終わっていた。
呼び出して2日目の朝は何とかなったものの、それ以降は着替えと洗顔に関しては
「そのぐらい自分でやれ」と断固として断られたのだ。(水は朝の鍛錬のついでに汲んでくれているようだが)
更に部屋の掃除と洗濯は率先してシエスタがやるようになってゼロをこき使う機会も無くなってしまった。
着替えと洗顔をやらないなら飯を抜こう、とは思い立ったがシエスタの話では
決闘で気を良くした厨房の人達がご飯を出してくれており、ゼロも
「俺の飯と、シエスタがルイズの世話をしている礼だ」
と薪割りや物の持ち運びなどの力仕事や使い魔への餌やり(使い魔達がゼロに妙に懐くかららしい)を
行っているので「言う事聞かないから飯を抜く」とはとても言い出せなかった。
しかし決闘で見事圧倒的な力の差を見せ勝利した使い魔、
褒美で何か買ってやろうという気持ちも無い訳ではなかった。
それがゼロの一言で見事に打ち砕かれた。
ゼロの鈍感な言葉にルイズの心に火が灯り、それは徐々に炎を形作る。

「あー…っそ! アンタ異世界から来たなら当然この世界のお金ってのは持って無いわよね?」
「そういえば…そうだな。元々流浪の身だから手持ちは殆ど無かったが…」
「いくら強くても騎士たるもの、剣を持ってないと駄目よねぇ…!」
「確かに…いや、向こう側にいた頃のように魔物を退治をして路銀を…」
「私がそんな事許可すると思う?それより何より、アンタの種族はこの世界でアンタだけ。
信用されるどころか下手すると魔物扱い、追う筈が追われる立場にねぇ…」
「くっ!」
この世界での路銀と、決闘で使い物にならなくなった剣の調達。
食事と寝床が保障された学院に数日いたおかげでそこまでゼロの考えが回っていなかった。
実を言えば雷龍剣には剣を使わない技もあるのだが、的確な指摘をされたゼロは
すっかりルイズのペースに呑まれてしまいぐうの音も出なかった。

289:ゼロの魔龍伝6話 2/5 ◆DQUn79OCQE
08/07/02 01:07:21 bJxYzy6M
「まぁ、別に物を買い与えて働けって訳じゃないのよ?
私は決闘ですっごい活躍したゼロになんか買ってあげようかなーって思っただけ。
でも、そう思ってたのにガンダムが「物で釣っても働かない」って勝手に決めつけちゃって…」
「ぬぬ…」
「あー傷ついたなー、ご主人様すっごい悲しいなー」
あからさまな演技なのは分かっているのだが、もはや言い返す言葉が見つからないゼロ。
彼女が「あの言葉」を要求しているのは何となく感じてはいるが自分の意地がそれを言わせまいとしていた。
「ガンダムがもうちょっと素直ならねぇ…」
「(迂闊に疑ってしまった俺にも非がある… 仕方が無い、背に腹はかえられん…)」

「疑り深くなって…すまなかったな、ルイズ」

「もっと分かりやすく簡潔に」
「何?」
「反省しているんでしょ?じゃあもっと分かりやすい言葉がいいわ」
ルイズの顔はとてもにんまりしていた。
しかしそれはクックベリーパイを前にした時のような無邪気なものではなく、
何か黒いものが奥底にあるような邪悪なにんまり顔。
その顔を前にゼロはその言葉を言わざるを得なかった。

「……ごめんなさい」
「よろしい、じゃあ明日はお買い物ね」

ルイズ、召喚して以来初めてゼロより優位に立った瞬間であった。


「…プフッ」
「何がおかしい」
明くる朝、魔法学院前の正門前。
馬に乗ったゼロを見てルイズは思わずちょっと吹き出していた。
ゼロの身長こそルイズよりも大きいとはいえ、ゼロの頭身は大体2.5~3頭身であり
馬に乗っているゼロの姿はルイズの目にはなんともユーモラスに映っていたのだから。
「何でもないわよ……ックク」
「昨夜か!?昨夜のアレか!?俺はもう謝ったぞ!」
「じゃあ私が先導するから付いてらっしゃいな」
「おい!」
昨夜のやり取りの事かと思ったゼロが話しかけても、どこ吹く風といったルイズは
ゼロをよそに楽しそうに馬を走らせていった。


ブルドンネ街、トリステイン王国で一番の大通りである。
休日で人がごった返すそこを窮屈そうに歩くルイズと、それに付いてくる
フードを目深にすっぽり被った何か…もといゼロ。
何があったかというと、街に近づくちょっと前に馬を止めたルイズから
「ゴーレムにしてはかなり例外な見た目だし喋るから目立つわよね…」
という懸念から来る提案で表向きは「自分で喋る珍しいゴーレム」という扱いで行動することになった。
無論ゼロも余計な騒ぎは好かなかったので
「ルイズにしては中々真っ当な考えだな」
と彼女に蹴りを入れられるような感想を返しつつ素直に承諾した。
街の入り口にある駅で馬を預けた時も最初は駅の者に珍しい目で見られたが
それだけだったので一安心で街へを繰り出せたのである。

「ん~と、確かこの路地を入って……四辻を抜ければ近くに武器屋だったかな…」
記憶を辿りながらルイズは人ごみを外れて街の裏路地へと入ってゆく。
建物の間に位置する日の差さない路地は昼間でも薄暗く、そこらに汚物やゴミが散らかっており
ゴロツキやならず者の溜まり場になっていた。
昼間はそこまでたむろしている訳でもなく、壁にもたれかかったり地べたに座ってる者が
ほんの少しいるぐらいでここを通るルイズとゼロを一瞥するとまた視線を元に戻していた。

290:ゼロの魔龍伝6話 3/5 ◆DQUn79OCQE
08/07/02 01:09:04 bJxYzy6M
「おいお嬢ちゃん」

が、もうすぐ四辻に出ようという所で道端に座っていた男に声をかけられてしまった。
そいつがすっくと立ち上がって前に立ちふさがると同時に、後ろからも男が三人ほど
こちらに向かって歩いてきておりちょうど挟まれた形になる。
「…ちょっとそこを通して欲しいんだけど」
「通して欲しいってかお嬢ちゃん!げひゃひゃひゃ!」
前にいる男の片方が卑下た笑いをし周りの男達もニヤニヤと笑いを浮かべる。
しかめっ面で対峙しているルイズをよそにゼロは男達の観察をする。
後ろから来た男達はちらつかせてはいないものの腰元に短剣をぶら下げていて
いつでも抜けるような態勢になっており、前の男はというと何も持っておらず
腰にも何かぶら下げている様子は無かった。
「(……後ろ三人はともかく前の奴は何も持っていないな、一体どういう事だ?)」
「ここは俺達の縄張りって奴でな、通る奴には通行料を頂いてるんだ」
「で、いくらたかろうってのよ」
「お嬢ちゃん可愛い見た目して言い方キツいねぇ、じゃあ金貨20枚って所だな」
ルイズが買い物に持ってきた金額は新金貨300枚。ルイズが200枚、ゼロが100枚持っており
出せない金額ではないもののカツアゲとあっては貴族のプライドが黙ってはいなかった。
「ゴロツキに出すものは何も無いわ、そこをどきなさい」
いつもの調子でルイズが言い放つとやはり男達は卑下た笑いを浮かべた。
「よぅし分かった、じゃあ払わない場合どうなるかご覧頂こうか」
前に立ちふさがる男が後ろのズボンをまさぐると短い棒―即ちワンドを取り出した。
「悪いが俺はこのブルドンネの裏通りじゃちょいと有名でね」
そう言った片方の男がワンドを壁に向け呪文を唱える。
小さな炎がワンドの先に発生しそれは膨れてあっという間に火球へと変貌してゆく。
ファイヤーボール、火球を発生させそれを放つ火系統の魔法である。
杖を向けた瞬間から身構えるルイズとゼロに余裕ありげに男が話す
「おっと今は当てないから大丈夫、い・ま・は」
そう言うと発生した火球が二個、三個と増えてゆく。
「兄貴を怒らせると痛い目に遭うぜぇ!」
「何せトライアングルだからな兄貴は!治療が追いつかねぇほど爛れちまうかもなァ!」
「悪いが後ろへ逃げようとしても、呪文を唱えようとしても、俺達がブスリ!といくぜぇ…」
後ろにいた男達が腰の短剣を抜いて構える。
「(ゼ、ゼロに何とかしてもらわないと…って剣使えないじゃない!
壊れたからって学園内に置いてきてたんだった!でも壊れてるからあの技は使えないんだし
持って来てもしょうがないって言うか…えーっとえーっと…)」
目があちこちに泳ぎどうしようもないルイズの様子に「カモれる」とふんだ男達がにじり寄ろうとしていたその瞬間であった。

「お待ちください!我々とて争いは好みません、金貨はお支払いしますので
袋から金貨を取り出すまでお待ちいただけないでしょうか!」

ゼロは確かにそう言い放った。
それを聞いて唖然とするルイズと、話がまとまったと思い返事をする男。
「従者さんは賢い事で!おい、お前らそこで止まっときな!何か怪しい素振りをしたら俺が始末する」
「ちょっと!何言っ…」
「お嬢様申し訳ございません!ここはひとつ彼らに!」
ゼロはそう言うとルイズの手を掴み引き寄せる。ファイヤーボールが周囲を照らしているものの
薄暗い場所なので鼻先まで近づかないと深くフードを被ったゼロの顔は見えない。
鼻先までゼロの顔が近くに来た時、小声でゼロが喋った。
「いいか、俺が合図をしたら後ろの三人の男の誰でもいい、手に持ってるナイフを錬金してみろ」
「いきなり何なのよ、そこまで正確に狙いつけてやった事無いし」
「これも経験だ、前のメイジは俺がやる」
「アンタ剣無いじゃない」
「心配するな、手はある」
「手だけあってもしょうがないじゃない!」
「そういう意味の手じゃない!」
「おい従者さんよぉ!いい加減早くしてもらえねぇかなぁ!何なら従者さんから先に焼いちまってもいいんだぜ!」
「申し訳ありません!早速お金を…」
「とにかくお前を信じてるからな」と言いルイズの前に立ち金貨の詰まった袋を前に掲げる。
ひゅぅ、と男が袋を確認しゼロ達に向けていた杖を下ろしたその時。

291:ゼロの魔龍伝6話 3/5 ◆DQUn79OCQE
08/07/02 01:10:19 bJxYzy6M
「今だ!」
ゼロの袋を持ってない空いた片手が男の方に向くのと、ルイズの杖が後ろの男達に向いたのはほぼ同時だった。

「錬金ッ!」
「雷電破(サンダーエレクトロン)!」

ゼロの手から稲妻が男に向かって迸る、それは杖を向きなおした男にとってあまりにも早すぎる攻撃であった。
火球を飛ばす間もなく稲妻が男の体を貫き、火球が虚しく掻き消えながら男が崩れ落ちる。
ルイズの錬金は狙いを外す事無く、見事真ん中の男のナイフに作用しいつもの失敗のようにナイフが爆発した。
「武器屋に走るぞ!」
「う、うん!」
ゼロの呼びかけにルイズが走り二人はその場を走り去ってゆく。
倒れた男の手に持っていた杖が走ってゆく二人に踏まれ、虚しく軽い音を立て割れた。

余談だが、そのほんの少し後に爆発音に気づいた通行人が様子を見に行った所、気絶している男と
何かに吹き飛ばされたかのように壁に打ち付けられて気絶した煤だらけの男三人が発見された。
男達は「貴族のガキとフードを被った従者にやられた」と証言しているものの
ここらへんで顔の知れたゴロツキであるのと証言のみで信用に乏しく、この件に関しては
「内輪もめの喧嘩」として処理されたそうだ。

閑話休題

ゼロとルイズは何とか武器屋の前まで辿り着いていた。
周囲を見回しているゼロに対し、恐らくはあまり運動をしていないであろうルイズは
すっかり息を荒くしており肩で息をしていた。
「…この様子だと奴らは全員気絶していると見て間違いないだろうな、上手くやったな」
「アンタ…さっき…かっ……雷を…ぜぇ…手から撃ってなかった…?」
「あれも雷龍剣の技だ。まぁかなり加減はしてあるが」
「なんなのよもう…なんでもありじゃない…」
「しかしこれぐらいで息が上がるとは鍛えが足りないな、少し運動しろ」
「う…うっさ…い!」

「店の前で何だいあんたら!買うなら買うでさっさと入りな、冷やかしならさっさと…」
「買うわ!買うわよ!」

いつの間にか武器屋の入り口に立っていた五十がらみの男が、パイプを片手にうっとおしそうに二人へ話しかけてきた。
しかし勢いよく買うわと答えながら振り向いたルイズの胸に紐タイ留めに描かれてある五芒星を見て

「これはこれは貴族様でございましたか!」

と、彼はころっと態度を変えつつ、もみ手しながら二人を店まで案内したのであった。

292:ゼロの魔龍伝6話 5/5 ◆DQUn79OCQE
08/07/02 01:12:05 bJxYzy6M
その頃、魔法学院内の学院長室―――

「ミス・ロングビルや」
「はい、なんでしょうオールドオスマン」
「おっぱい揉みたい」 「今度は折りますよ」
いつものようにオスマンのセクハラな質問を書き物をしているロングビルが無慈悲な返答で返す。
「…ちょっと位ケチケチせんでもええのに、まーええわい。ミス・ロングビルや、この間宝物庫の目録を作りたいと言っておったの。
今用事があって宝物庫に入るところでな……行ってみるかえ?」
「えぇ、是非」
施錠の魔法がかかった引き出しを開錠し、大人の掌ほどの頑丈そうな鍵を一つ取り出したオスマンとロングビルは学院長室を後にした。
オスマンの後ろを歩くロングビルの顔が今までにない、歪んだ笑みを浮かべていたのには
前を歩いていたオスマンが気づくはずも無かった。

「ここが…宝物庫」
箱に収められているアイテムが大半であるが、様々な杖がかけられている一画があったり
また別の壁に目をやれば見た事も無い剣や鎧などが置かれておりそれらが一体となって
尋常ではない空気をかもし出していた。
「わしはちょっと探し物をするから、ロングビルは目録を頼むぞい」
「はい」
宝物庫の奥へと進むオスマンを見届けると、ロングビルは目録を記しつつ保管している箱や
飾られている鎧をやけに丁寧に眺めた。
「…飾ってあるのは大体かさばるような大きさで…箱は魔法で施錠…流石に今ここで…ってのは無理、ね」
「何か言ったかのー!」
「い、いえ、なんでもありませんわオールド・オスマン!」
「…お、あったあった」
オスマンの方から声が聞こえ、つい声に出してしまったとハッとするロングビル。
しばらく目録を作る作業に打ち込んでいるとオスマンがレビテーションの魔法で大きな箱を三つほど浮かせて持って来た。
「よいしょと、ふぃー…長らくしまっておると出すのにもひと苦労じゃわい」
「それは何ですか?」
「聞きたい?」
宝物庫の開けた場所に置かれた三つの箱を前に、オスマンの手がいやらしくわきわきと動く。
「一揉み100エキューはいただきましょうか」
「…しゅ、しゅみません」
にっこりとした顔でオスマンの襟を締め上げるロングビルにどうしようも出来ず、
素直にオスマンはこの箱について話す事にした。
「これは三つ合わせて「三獣の武具」とワシは呼んでおる。
それぞれ獅子と、梟と、竜をあしらった武具じゃから三つ纏めて“三獣”という訳じゃな」
「三獣の武具…思い出しました、宝物庫に納められている物の中でも指折りのものだと聞いております。
確か斧・杖・盾の三つでしたわね。しかしそのような代物を何故?」
「これを受け取るべき者が現われた、とでも言うておこうかの」
「受け取るべき…者…」
「これでいつでも武具は渡せる準備は整ったの、ではここから出るぞい」
「はい」
オスマンの後に続いて部屋を後にするロングビル。
閉じてゆく扉の向こう側にある三つの箱を見ている眼差しはいつもとは違う、獲物を定める狩人の眼差しであった。


――――――三獣の武具、今度の獲物はこいつに決まりだねぇ

293:ゼロの魔龍伝6話  ◆DQUn79OCQE
08/07/02 01:14:35 bJxYzy6M
投下終了、3/5が二回続いたのはミスです
宝物庫でロングビルが品定めする展開はやや強引だったかな…うーん

294:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/02 01:21:20 sSXWHswT
乙!
アルガス騎士団の武装が来るとは思ってなかった……まじで続きが楽しみ

295:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/02 01:22:07 y2NVOv1g
ああ、アルガスの騎士団のあれか。


296:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/02 01:26:27 jCRZvEzm
>>156
遅レスだが、海竜だから死ぬだろ常考。

297:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/02 01:27:08 6WMOEtrt
投下した方々乙です

それにしてもジオダンテの武具が出るとはwktkせざるをえない

298:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/02 01:31:17 2XXqFCJB
地龍を読んでたらおらぁグズラだぞを思い出した

299:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/02 01:44:31 Px7diBEc
アルガスと聞くとどうしても某家畜に(ry
の人を思い出してしまうw
もしアルガスが召喚されたらどうなるのかな?
最初の決闘の所もギーシュと一緒になってシエスタを虐めてる姿しか浮かんでこないw
まあでもアルガスもハルケギニアでは魔法が使えないから貴族扱いされなくて性格がさらに歪みそうだな

300:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/02 01:44:43 6x00HVHN
地龍の人乙
タルブの村にはウルトラホーク一号のアルファー号があって実は存命だったシエスタの祖父がルイズを人質にジャックするなんてどうでしょ?

301:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/02 01:51:38 Umpfn9hk
>>300
竜の血が主食だったせいで体に引火して焼け死ぬのかね?

302:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/02 01:52:37 o3jPK9dy
魔龍の人、乙です
使い魔はゼロなのに重要な言葉、宝はジークジオン編w
これからどうなるんだw

303:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/02 02:01:03 6x00HVHN
>>301
スンマセン、ベータ号間違いすね、残り二機はロマリアの地下に
意味無くコッパゲにルイズが
「コニチワ、がそりんヲクゥダサイナ…」
とか声かけて欲しい
いまだにあの外人のねーちゃんの出演理由がわからん

304:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/02 02:16:46 9m3Kc97G
なぜか
開国シテクダサイヨ~
を思い出した

305:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/02 03:49:10 zyJSHb7w
スレ違いっぽいが、こんなSSを読んでみたい…
URLリンク(zero0.x0.com)

306:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/02 04:04:16 ZUe2ygnG
>>305
スレ違いながらも答えるが、たしかどっかで短編を見た記憶があるぞ
場所は失念したがその絵のもう一方の題材の2ch系列のSS保管所を
片っ端から調べて回れば多分見つかる…と思う

307:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/02 04:23:29 bWrLTung
これだな。短いけど。
URLリンク(eroparo.s13.dxbeat.com)

308:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/02 04:28:13 zyJSHb7w
おお、thx!読んできます

309:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/02 04:45:57 O/oP+u3P
>>305-308
おまいらの息のあいすぎにびっくりです。
この時間にw


310:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/02 05:26:09 FpQ5O2JU
ズドーーーーン!
今や魔法学院の風物詩となった、ゼロのルイズこと『ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール』の失敗魔法。
だが、今回に限っては辛うじて成功したようである。
進級試験も兼ねた使い魔召喚の儀、サモンサーヴァント。
立ちこめる煙の中から現れたのは、羊(?)のぬいぐるみを胸に抱きスプーンのような形をした妙な杖を持ちマントを羽織った小柄な少女だった。

「に、人間…」
「ゼロのルイズがメイジを召喚したぞっ!」



てな感じのななついろものが読んでみたい今日この頃。


311:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/02 05:34:05 vXfgNBvb
>>263
普通に考えるとそうなんだけど、なぜかグノームって読んでる
ファンタジー関係の考察本が結構あるよ。
英語じゃない発音なんじゃないの? たぶん。
サラマンダー・シルフ・ウンディーネ・ノームって表記に対して
サラマンドラ・シルフィード・アンダイン・グノームって表記になる。
きゅいきゅいがシルフィードである以上、グノームって呼び方で
おKだと思うよ。

312:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/02 05:55:30 J+yGSdZg
Swordを「スウォード」と読むようなもんだな
D&Dかよ

313:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/02 06:25:59 qqF8Lzx2
その辺の考察は、フレイムがサラマンダーであることを考えるとノボルクオリティとしか言えないけどな。
まあでも、問題ではないと思う。

314:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/02 06:39:07 mnKOmE3y
しばらくスレ見れなかったから遅レスになるけど、紙袋の使い魔に関して突っ込み
アクセルの炎はどうやって出しているのかは不明、ですが少なくとも法力ではありません
これに関しては初代GGの攻略本で明記してあります

315:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/02 06:45:23 sSXWHswT
初代GGって・・・設定としちゃ糞古いんじゃねーのか。

アクセルの炎は法力ってのはどっかで見た記憶あるし、
とっくに設定上書きされてるだろ。

316:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/02 06:47:57 l8BbEGZf
「ゼロのルイズが貴族を召喚したぞー!」
「流石にシャレにならねーぜ!」
そう。春の儀式でルイズが召喚したのは貴族だった。
杖もマントも身に付けていないが間違い無い。
瀟洒な衣装、お洒落なお髭、何よりその手に持ったワイングラスが、彼が貴族であることを証明していた。
「ルネッサーンス!」

ひげ男爵がルイズに召喚されました出オチ。

317:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/02 06:51:04 6x00HVHN
ああ、男爵ディーノですね、わかります

318:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/02 07:38:11 k4jXrKOY
>>311
X Window Systemのデスクトップ環境のGNOMEはグノームと発音する事になってる。
頭のGを発音するかどうかは慣例みたいなもんで
発音しても不自然ってわけではないのかも。

319:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/02 07:53:11 6x00HVHN
たまにはゼロ戦以外の第二次大戦機がタルブにあるのが見たいな。

紫電改とか
同一作者作品の多重クロスはありみたい?だから
スーパーちばてつや大戦風にして
ガンダ:上杉鉄兵
ヴィンダ:石田国松
記す事も:力石徹

あたりにして、タルブには滝城太郎曹長の墓と彼の愛機が…

320:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/02 08:25:59 nrwcDmiN
魔龍さん乙です。
ルイズが自分の杖と梟の杖をニューのように構えるのを想像しました。
盾と斧と杖は誰が持つのか楽しみです。

盾と斧と杖ですが鎧闘神でデュオ達が使ってましたね。

321:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/02 08:37:36 W2cplAPM
>>318
それは略語だからGNUのGを発音するという別の話じゃね。

語源的にはグノームでいいらしいが。
URLリンク(ja.wikipedia.org)

322:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/02 08:53:22 ncJlWf/g
ノームだとイメージが柔らか過ぎるけど
グノームだと怪獣に居そうでかっこいいじゃないか
地底怪獣グノーム的な

323:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/02 09:04:00 8k+ZqB6f
>>319
タルブ村にあったのは大日本帝国の最終決戦兵器「桜花」だった
シエスタ「サイトさん、これなら巨大戦艦だろうと一撃で轟沈です!」
ルイズ 「サイト!男らしくイってらっしゃい!異世界の大和魂とやらを見せなさい」
コッパゲ「特別にこの250kg蛇くんを着けといてあげよう」
タバサ 「…水杯…」

324:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/02 09:15:26 rW45EYta
>>323
単体で離陸できないし、そもそもどうやって着陸したのかと

325:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/02 09:25:04 nnq9RwrU
ココは回天だろうjk

326:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/02 09:27:10 XZ3J/QNN
14巻ラストの付近の戦車に乗ってるルイズを見ると
「両津のバカはどこへいった!」と戦車で水精霊騎士団の詰め所に怒鳴り込むルイズが見たくなります。

327:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/02 09:28:06 Umpfn9hk
>>325
日向ネジを召喚とな?

328:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/02 09:42:02 kPEqmKXM
アスラーダ呼ぼうぜ

329:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/02 09:42:57 U1lhfGlH
ゼロが付く戦闘機という事でマクロスゼロのVF-0を
通称フェニックスだからマザリーニの出まかせにも対応

330:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/02 09:43:35 /TOTyK7v
竜の盾(どんな攻撃も防げる)梟の杖、獅子の斧(それぞれ魔力、力倍増)
梟の杖はメイジにとってはどんな事をしても欲しい宝だろうな。

331:GUILTY GEAR XO
08/07/02 09:47:26 9BxHEX0v
どうも。
何時ぞやにGGXからディズィーを召喚した作品を書くと言ったものです。
何の支障もなければ10時から投下したいと思いますが、今回の投下は
31.5kbあるのでかなり時間がかかるかもしれません。

332:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/02 09:49:25 Umpfn9hk
よかろう、ならば支援だ

333:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/02 09:50:46 2XXqFCJB
ティガー戦車をチハタンにすれば無敵

334:GUILTY GEAR XO
08/07/02 09:51:11 9BxHEX0v
多分、10レス近くかかると思うので、規制に引っかかったら避難所に投下しておきます。
そうなった際は何卒よろしくお願いします。なにぶん初めてなものなので。

335:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/02 09:57:48 YfJvL+1Z
支援支援支援(残響音含む)

336:GUILTY GEAR XO
08/07/02 10:00:15 9BxHEX0v
 ルイズはこの日を待ち望んでいた。
 今日は二年生への進級の際に行われる、春の使い魔召喚の儀式を執り行う日である。
 それによって召喚された使い魔の種類により、二年生達は今後のトリステイン魔法学院
で学ぶ各々の魔法の属性を固定し、属性に特化した専門課程へと進む事になっている。
 今まで散々、ゼロのルイズという有り難くも何とも無い、否、むしろ自尊心を著しく傷付け
てくれる二つ名を付けてくれた級友達が、全員でも及ばないような、宇宙の果ての何処か
に居る、心より訴え求める、神聖で美しく、そして強力な使い魔を呼び出し、自分を馬鹿に
してきた遍く全ての人々を見返してやる筈であった。
 今日は記念すべき人生再出発の日。 今までの汚辱に塗れた日々は仮初に過ぎない。
強く美しい使い魔を召喚し、由緒正しく旧い家柄を誇る、かの名高き大貴族ヴァリエール家に
生まれ育った子女として、それに相応しい優秀なメイジである事を証明するのだ。
 少女がその小さな胸にそう希望を抱いた矢先の出来事であった。
 召喚魔法サモン・サーヴァントが失敗し、何時も通りの盛大な爆発が巻き起こったのは。
当然、周囲にいた生徒達は爆風に煽り飛ばされ、其処彼処からは聞き慣れた誹謗中傷、
冷やかしの声が上がった。
 だが何時もの事だ、とそれらに慣れてしまったルイズは適当に聞き流していた。
 ただ、今は、自分が召喚してしまった得体の知れない物体に視線が釘付けだった。
 また失敗したとばかり思っていたのに、実は成功していた!―その事実に、一瞬我を
忘れて飛び上がる程に嬉しくなったが、召喚された得体の知れない物体が何であるかを
視認した瞬間、期待が萎んで代わりに絶望と驚愕が胸中を満たしていった。
 爆風が晴れると、ルイズの足元には見知らぬ少女が気を失って倒れていた。 着ている
質素な衣服から推察するに平民―なのだろう。 少なくとも貴族ではなさそうだ。
 年の頃はルイズと同年か、十代半ばから後半といったところだろう。 若干ながら、あど
けない顔立ちは非常に整っているが何処となく儚げな印象を受けた。 しかし幼さの残る
面差しとは裏腹にその姿態は、女性の成熟度から言えば、未だ発展途上にある少女の
ものとは言い難く、手足はすらりと長く伸び、しなやかな肢体を黒を基調とした丈が膝まで
ある質素なワンピースに包んでおり、ゆったりとした衣服の上からでもツンと形良く上を向
いた胸の豊かな膨らみが見て取れた。 深みのある鮮やかな瑠璃色の髪はさらさらとして
いて、扇状に広がったそれは春の陽光を受けて柔らかく輝き、まるで後光のように見える。
露出した首筋は肉付きが薄く、肌は肌理が細かく雪のように白い。
「こ、こんなのが…神聖で美しく、そして強力な………」
 ルイズの鈴のように良く通る上品な声は微かに震え、くりっとした鳶色の瞳には涙が滲み、
可愛らしい顔は受け入れ難い現実に引き攣っていた。
 この少女は、体型は兎も角容姿にはそれなりの自信があるルイズから見ても目を見張る
程の美貌を備えていた。 派手さはないが、高山にひっそりと咲く花のように慎ましやかで、
何処か侵し難い神聖な美しさがある。 しかし、彼女が求める美しさというのはこういったもの
ではなく、もっと別のもの―幻獣の人ならざる獣ゆえに持つ美しさである。 
 やはり、というか、案の定またか。 
 ルイズを含め、ある程度の距離を置いて彼女を見守っていた教師と生徒達の誰もが、口には
出さないがそう思っていた。
 何を如何こうして間違ったのかは定かではないが、ルイズは幻獣ではなく人間を召喚して
しまった。 それも平民の少女をである。 流石にこの事態は、彼女自身を含めた誰もが予期して
いなかったが、慌てる心を落ち着かせ、ルイズが口を開けたのはまさに奇跡だった。
「あんた誰?」
 取り敢えず、ルイズは足元の少女に声を掛けた。

337:GUILTY GEAR XO
08/07/02 10:00:42 9BxHEX0v
 深層に沈んでいたディズィーの意識は、陽気に暖まった空気から香る土と草の優しい
匂い、春の柔らかな日差し、耳元でかさこそと音を立てる草の囀り―そして誰かの呼び
声によってゆっくりと覚醒した。
 繊細な睫毛が震え、薄っすらと赤茶色の無垢な双眸が開かれていく―目を覚ますと、
何処までも広がる蒼穹を背景に、薄桃色の可愛らしい〝生き物〟が自分の顔を覗き込ん
でいるのが視界に映った。
 年の頃は十五、六歳ぐらいだろうか。少なくとも人間よりも成長の早い自分よりは年上と
見てまず間違いはないだろう。人間は成長速度が早く調整されているGEARと違ってこれ
ぐらいの大きさにまでなるには十数年と少しの時間が掛かる筈だから。黒いマントの下には
白い長袖のブラウス、綺麗な折り目の入ったグレーのプリーツスカートといった出で立ちで、
肩に羽織った魔法使いのようなマントを除けば、年相応の女の子に見えなくもない。
 白い肌に、陽光を受けて薄桃色に光るブロンドの髪、高貴な西洋人形のように美しく整った
顔立ちからは少女の生まれと育ちの良さがそこはかとなく察せられる。裕福な仏蘭西系の
お嬢様といった形容が相応しいと思われた。
「…人間の…女の子?……」
 ディズィーは、自分の顔を怪訝そうな表情で覗き込む人間の少女を、焦点の定まらない、
寝起きの瞳でぼんやりと暢気に眺めていた。が、意識が徐々に明瞭になってくるにつれて、
それが如何いった意味を示しているのかを思い出すと、驚愕に目を大きく見開いた。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 人間の女の子がいる!

 それはディズィーにとっては到底信じられぬ事であった。聖戦時には、此処はGEARの
拠点の一つが存在し、人が何度も襲われた為に何時しか悪魔が棲んでいるという噂が広
まり、近隣の村人も気味悪がって誰一人近寄ろうとはしなかった―ただし、彼女の小さ
な友達であるジョゼフィーヌを除いては。
 だが、ジョゼフィーヌはもうディズィーの元から去ってしまった。人間が立ち寄らない静か
過ぎる森で、孤独と寂しさに日々堪えながら生きてきたディズィーにとっては、唯一無二の
掛け替えの無い友達だったが、ジョゼが去ってしまったのは生態兵器GEARとして生まれ
ながらに備えた強大過ぎる力を制御しきれなかったからだ。嫌われて当然だった。自分が
GEARである事を隠し、彼女が盲目であるのを良い事にその純真な心を騙し続けたばか
りか、その生まれ育った村まで跡形も無く焼き払ってしまった。それはディズィーには如何
する事も出来ない不可抗力が招いた結果だったとはいえ、やはり許されるべき事ではない。

 一体この少女は、何故、此処にいるのだろうか? 

 まさか、自分の首に懸けられた500000ワールド$という高額な賞金を狙ってやって来た
賞金稼ぎなのだろうか。成程、確かにそう考えれば合点がいく。 わざわざこんな辺境に
まで人間がやって来る理由は自分に懸けられた賞金が目当てとしか考えられないからだ。
しかし、現在の悪魔の棲む森はテスタメントによって守られている。如何見ても目の前の
少女がその彼を出し抜いて此処まで辿り着けるような人物とは思えない。それに懸賞金が
目当てなら、眠っている間に命を奪えば簡単に済む筈だ。

 何故そうしなかったのか? 

 間違っても、わざわざ眠りこけているGEARを起こし、馬鹿正直に正々堂々と真正面から
戦いを仕掛ける為ではなかろう。魔法の理論化に伴い、その技術を応用して生み出された
生態兵器であるGEARのその戦闘能力及び生命力は並の人間を遥かに凌駕している。
そんな危険な存在を真っ向から相手にすれば無事で済む筈が無いのだから。 それに目の
前の少女が、GEARを相手に戦えるような人間には欠片も見えなかった。
 起き抜けで、いきなり目の前に人間の少女が佇んでいたという事実に多少は戸惑ってし
まったが、冷静に考えれば色々と不可解な点が多過ぎる。 それに、自分の顔を覗き込ん
でいる少女は怪訝そうな表情こそすれ敵意は見当たらない。 ディズィーは少女の様子を
窺いながら、身体を起こしてその場に足を揃えて斜めにして座った。

338:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/02 10:01:34 Hn0H1t8f
チハたんは愛でるもんだろ支援

339:GUILTY GEAR XO
08/07/02 10:02:01 9BxHEX0v
 そしてそこで漸く自身に起こった異変に気が付いた。
 ディズィーは、木々が鬱蒼と生い茂った悪魔の森ではなく、何時の間にか自分が陽光の
下にあるだだっ広い草原にいるのに気が付いた。 そして目の前の人間の少女の他にも、
同じ格好をした少年少女が一定の距離を置いて自分に対して後期の眼差しを向けている。
何だか珍獣でも見るようなその視線にディズィーは居た堪れなくなった。 豊かな草原が
広がるその向こうには、幽玄な佇まいの石造りの巨大な古城さえ見える。
 現在、自分が置かれている常軌を遥かに逸した状況を目の当たりにして、ディズィーは
困惑を通り越して異質な恐怖さえ感じていた。 一体全体自分の身に何が起こったという
のか―急速に膨れ上がる不安で胸が押し潰されそうだった。
 心細さに揺れる気持ちを抑えて、取り敢えず、目の前の桃色の髪の少女にこの不可解な
状況の答えを求めた方が無難だろうとディズィーは考え、問うた。
「此処は……何処? 貴女は?」
 ディズィーの声音は弱々しく、心なしか震えていた。 地上最強のGEARである彼女が、
見る限り非力な人間の少女に怯える道理は少しも無いのだが、今は状況が状況である。
それにこれ程の大勢の人間を見られ、囲まれるのは苦手だった。生まれ育った村を追い
出された、あの忌まわしく恐ろしい夜を思い出すから。だが、周囲の反応から察するに、
未だ自分がGEARである事は悟られていないようだ。 容姿が一見すると普通の人間とは
区別が付かない完全な人型であった事と、少々大きめのゆったりとしたワンピースを身に
纏っている事が背中の翼と尻尾を誤魔化すのに役立ち、幸いしたのだろう。 自分が忌み
嫌われるGEARである事を知られたら、と考えるだけでとても怖くなった。
「ちょっとあんた、何様の心算よ。先ず私の質問に答えなさいよ」
 ディズィーのおどおどした態度が気に入らなかったのか、目の前の少女は今にも噛み
付かんばかりに詰め寄った。 思わずその迫力にディズィーは圧倒されたじろいでしまう。
体躯は小さいが、まるで獅子のような少女だ。
「もう一度訊くわよ。あんたは誰なの?」
「あ、えっと・・・・・・あの、秘密です」
 その言葉を言った直後、ディズィーは慌てて口を噤んだ。目の前の少女の怒りが頂点に
達するのが傍目にも分かった。尤も正直に、GEARです、と言える筈も無い。ディズィーと
しては、なるべく自分がGEARである事を悟られまいと思って答えた心算なのだが、結果
としてそれが余計に少女の怒りを買う事になってしまった。
「くやしー! あんたまで私を馬鹿にするのね!? 私なんかには名前も教えないっていうのね!?」
「そんな…私はそういう心算で……」
 病的なまでに激昂し、感情を統御出来ない少女の反応にディズィーは如何すれば良い
のか分からなかった。 先程の自分の配慮が足りなかった発言は、多少なりとも彼女の
神経を逆撫でるようなものだったかもしれないが、何もそんなに怒る必要は無いのでは。
 そう困り果てていると、意外な方向から助け舟が出された。

「おいおいルイズ、サモン・サーヴァントで呼び出した平民なんかに八つ当たりするなよ!」
「さっすがゼロのルイズ! 期待を裏切らないな!」
「平民にまで馬鹿にされるとは貴族としての威厳もゼロだな!」

 直後、ルイズと呼ばれた目の前の少女以外の全員が大声で笑った。
「ちょ、ちょっと間違っただけよ!」
 周囲から笑い者にされた目の前の少女が、怒りの矛先をディズィーから周囲の生徒達に
変え、鈴のように良く通る声で自棄っぱちに怒鳴った。

340:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/02 10:02:09 Umpfn9hk
支援

341:GUILTY GEAR XO
08/07/02 10:02:42 9BxHEX0v
「間違いって、ルイズは何時もそうじゃん」
「流石はゼロのルイズだ!」

 誰かがそうからかうと、人垣が再度どっと爆笑の渦に巻き込まれる。 今の一連の遣り
取りから、目の前の少女の名はルイズというらしい。
 取り敢えず、少女の名前がルイズと分かっただけでも随分と進展したが、問題なのは
この不可解な状況を誰かが説明してくれる事だ。 だが、当面の間はディズィーの疑問を
誰も解決してくれそうにない。 そう判断して諦め、彼女は大人しく状況の推移を静観する
事にした。それにまた余計な事を言ってルイズを怒らせる訳にもいかないだろう。
「ミスタ・コルベール!」
 ルイズが怒鳴ると、生徒達の人垣が左右にさっと割れ、真っ黒なローブに身を包んだ
中年男性が現れた。手には大きな杖を携えている。
「何だね。ミス・ヴァリエール」
「あの、もう一回やらせて下さい! こんなのが私の使い魔だなんて納得できません!」
 ルイズは必死になって抗議しているが、その願いはにべもなく一蹴された。
「それは出来ません」
「何故ですか!?」
「使い魔召喚の儀式はメイジとして一生を決める神聖なもの。 やり直すなどとは儀式そのものに
対する冒涜ですぞ。 好むと好まざるに関わらず、彼女は君の使い魔に決まったのです」
「でも、私、平民を使い魔にするなんて聞いた事がありません!」
「その少女はただの平民かもしれないが、君だけを例外として認めるわけにはいかない。
召喚されたからには契約を結んで貰わねばならない。 それが決まりなんだ」
「そんな……」
 ルイズはまだ何か言いたげな様子だが、やがてがくりと肩を落とし、諦めた。
「さて、それでは儀式の続きを」
「……本当にこの娘(こ)と?」
「そうだ。春の使い魔召喚の儀式のルールはあらゆるルールに優先する。例え相手が
平民であろうと何であろうと―女の子であろと、だ。 それに君は召喚にどれだけ時間を
費やしたと思っているのかね? 何度も失敗してやっと呼び出せたんだ。 いいから早く契約したまえ」
 何かを渋るルイズを、コルベールは有無を言わさぬ態度で促している。 それに続いて
周囲の生徒達からも「早くやれ」と野次が飛ぶ。 困り果てた顔で彼女は、未だに状況が
よく飲み込めずに不安そうな顔をしているディズィーを見詰めた。

 一体、何をされるのだろうか?

 更に胸の不安が大きく膨らむ。 ルイズは、自分に対して危害を加える心算は無いのだ
ろうが、間違いなくこれから何かをするようだ。 ディズィーは身体を緊張で硬く強張らせ、
万が一に備えて身構えた。
「ねえ」
 ルイズは少し苛立たしげにディズィーに声を掛けた。
「はい」
「あんた、いい加減名前ぐらい教えなさいよ」
 そう言えば未だ名乗ってもいなかったのをディズィーは思い出した。
「私はディズィー。 貴女は…ええと、ゼロのルイズさん?」
「……!ッ 卑しい平民風情が!………一体何処まで私を馬鹿にすれば気が済むの!? 
私にはルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールという立派な名前があるの!!
今度その忌々しい二つ名で呼んだら怒るわよ!!!」
「ご、ごめんなさい…」
 如何やらまた知らず知らずの内にルイズを怒らせてしまったようだ。一見すれば仔猫の
ような可愛らしさとは裏腹に、凄まじい剣幕で食って掛かられ、ディズィーは傍から見ても
気の毒な程ぎゅっと身を竦ませて謝った。

342:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/02 10:05:09 Hn0H1t8f
支援ヌゥルポーォア!

343:GUILTY GEAR XO
08/07/02 10:05:27 9BxHEX0v
「はぁはぁ…フン、まあいいわ。無知な平民の無礼な振る舞いぐらい許してあげる。
でなければ貴族は務まらないものね」
 漸く落ち着きを取り戻し、ルイズは威儀を正してディズィーに向き直る。 手に持った小さな
杖を、ディズィーの目の前で軽やかに振った。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
 朗々と呪文を唱え上げ、杖の先端をディズィーの額に置いた。 そして地面に膝を着き、
彼女と目線を同じ高さに合わせ、すっと顔を近付ける。
「な、何をするんですか」
 予想だにしなかったルイズの突然の行動にディズィーは驚きを隠せず、距離を取ろうと
反射的に尻で草を擦って後退る。 間近に迫ったルイズの真剣な面差しに、如何してかは
分からないが、どきりと胸が高鳴った。
「いいからじっとしていなさいよ」
 少しだけ怒気を含んだ声でルイズが言う。離れた間を詰めようと、彼女の顔が再度近付く。
「えと、その、あ、あの、ルイズさん。な、何をしようというんですか」
 ルイズの、少し湿り気を帯びた吐息を頬に感じた。 彼女がこれから何をしようとしている
のか全く分からず、ディズィーの胸中は混乱と未知に対する恐怖が綯い交ぜになっていた。
訳も分からず、身体が小刻みに震えている。
「ああもう! じっとしてなさいって言ったじゃない!」
 逃げようとするディズィーに痺れを切らしたルイズは、逃がすまいと咄嗟に伸ばした左手を
彼女の形の良い頤に添え、くいっと上を向かせた。
「あ」
 ディズィーの口から小さい声が漏れる。 見上げた先にはルイズの顔があったが、その
表情は逆光でよく窺い知れない。 だが、ディズィーには、影に沈んだその鳶色の瞳が、
少しだけ悲しそうに見えた。
「……契約の方法が、誰がキスなんて決めたの?」
 
 キスって何だろう?

 初めて聞くその言葉に不思議そうな顔をしていると、ルイズの顔が急に下げられて、
ディズィーの唇に近付いた。
「ん……」
 どちらのとも知れぬ声が漏れ出た。
 柔らかく、湿った感触を不意に唇に感じた。 この世に生を受けてから三年というあまり
にも短い月日の中で初めて経験する、全く未知の感覚に、傷つきやすく、脆く、感受性の
高い彼女の心は、戸惑い、悩み、狼狽し、赤茶色の無垢な瞳が驚きに見開かれる。
 唇に、ルイズの唇が重ねられている。 この行為の意味は何だろう、とディズィーは考える。
そして心に生まれたこの不思議な感情は何だろう。 重ねられた柔らかく瑞々しい唇から
伝わる、人肌のなんとも言えない優しい穏やかな温もりが、まるで氷のように冷えたきった
心の奥底にある蟠りを、ゆっくりと溶かすかのようだ。 ルイズの桃色の髪から仄かに香る、
石鹸の良い匂いが鼻腔を擽り、肺を一杯に満たした。
 解らない―だが、決して嫌な感覚ではない。 何とも言い表し難く、複雑で、けれども
優しい気持ちになれる、甘く神秘的な情動―驚きに開かれていたその瞳は徐々に蕩け
るように潤み、やがては陶酔の境地にさえ至っていた。
 一体、どれ程の間、そうして口付けを交わしていたのだろうか。 ほんの数秒の出来事に
過ぎなかったのかもしれないが、ディズィーにとっては常しえに思えた。 それ程までに
この口付けというものは、彼女の幼い魂にとっては凄烈な衝撃を齎したのだ。
 やがて、その刹那とも永劫とも思える甘美なひと時は、始まりと同様に唐突に終わりを告げる。


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