あの作品のキャラがルイズに召喚されました part150at ANICHARA
あの作品のキャラがルイズに召喚されました part150 - 暇つぶし2ch141:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 12:52:37 ZwWOQIA8
名前:小ネタ 「ゼロと帝国」 その1[sage] 投稿日:2008/06/26(木) 02:38:51 ID:zqnGu+Jv
なによこれー!」

 何度かの失敗の後、ひときわ大きな爆発と共に現れた物を見て、ルイズが、いや、その場にいた全員が目を見張った。大きさに
してゆうに二百メイルはあろうかと思われる、巨大な鉄の塊。押しつぶされて死ぬ者が出なかっただけでも奇跡だった。
 その場にいた生徒の何人かが、理屈抜きの恐怖心からそれに攻撃魔法を放とうとする。が、呪文を唱えてもなぜか魔法が
発動しない。気を取り直したルイズが、その物体にコントラクト・サーヴァントを行おうとしても、やはり発動しない。

 あまりの異常事態が二度続いて、生徒どころか教師までもがパニックに陥りかける。そこへ学院から他の教師全員と、
学院長であるオールド・オスマンが駆けつけた。しかし、彼らにしても出来ることなどあるはずもない。学院の全員が
途方に暮れる中、その物体はふいに宙に浮き上がると、そのまま彼方へと飛び去って行った。

 それっきり何事も無かったため、数ヶ月もたてばこの事件は忘れ去られた。しかし、それから一年余り後、ハルケギニアに
ある変化が訪れる。『銀河帝国』と名乗る国の交易船──マストも帆も無い上、とんでもなく高速な船──が各地に現れ、
勝手に様々な、しかもおそろしく進歩した道具を売り始めたのである。

 連発式で、しかも数百メイル先の的を正確に撃てる銃、鉄でも切れ、なおかつ絶対に刃こぼれしないナイフや斧、魔法を
使わずとも遠く離れた場所と話せる道具など、ハルケギニアには絶対に有り得ない物ばかりであった。それを平民でも買える
値で売るのだから、誰もが飛びつかない筈がなく、飛ぶように売れる。
 そのことに気を良くした銀河帝国の商人たちは、王家や領主に伺いをたてることすらせず、勝手にハルケギニア中に現れ
ては、様々な進歩した道具を売りまくる。それを白い目で見る者も当然いたのだが、彼らは商売敵どころか、貴族や王家の
意向すら気にもとめなかった。

 商売敵である商人や、勝手なまねをされて怒った領主が脅しても、銀河帝国の船は多数の武器を積んでいる上、屈強な男
たちが数多く乗り込んでおり、いかなる脅しも圧力も、実力ではねのけてしまう。無論その男たちは、商売の邪魔をする相手
以外には決して手を出さないのだが……。

 業を煮やした現地の豪商が、メイジを雇って報復に出たこともあった。ところがそのメイジまでもが、返り討ちにあって
ズダボロにされてしまう。驚いて話を訊くと、銀河帝国側は、魔法の発動を不可能にする道具すら持っていたという。噂を
聞いて集まった者たちに、銀河帝国の商人は、その道具をすら商品として売り始めた。

142:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 12:52:58 ZwWOQIA8
0 名前:小ネタ 「ゼロと帝国」 その2[sage] 投稿日:2008/06/28(土) 00:25:02 ID:tPCdiCPR
 それから半年もたたずして、ある意味予想されたことが起こる。貴族に恨みを持つ平民たちが、それらの道具を復讐の
ために使い始めたのだ。何百メイルも離れた場所から銃で撃たれて死ぬ貴族、魔法の発動を封じられてなぶり殺しにされる
貴族が何人か出て、ついにハルケギニアの国すべてで、銀河帝国の道具を買う事、使う事が禁じられる。しかしそれは、
結果的に見れば、平民たちの不満という火種を、ハルケギニアすべてを焼く大火に燃え上がらせただけであった。

 銀河帝国側は、この機を逃さなかったのである。巧みに平民たちを扇動し、ハルケギニア全域で反乱を起こさせたのだ。
しかも辛辣なことに、あの道具のはるかに強力なものを使い、魔法の発動を、ハルケギニアすべてで完全に封じてしまった
のである。

 魔法を失った貴族たちは、銀河帝国の武器を持った平民たちの敵ではなかった。しかも反乱軍には、銀河帝国の屈強な
男たちも加わっている。武器には武器で対抗しようにも、そもそも数が絶対的に違う。それから三ヶ月たたずして、ハルケ
ギニアすべての国で、貴族や王族はほぼ皆殺しにされた。

 トリステイン魔法学院でも、生徒や教師はほぼすべて殺された。ギーシュもキュルケもマリコルヌも、オールド・オスマンも
ギトーもすべて死んだ。平民に対する差別意識を持たなかったコルベールは死を免れたが、魔法を失ってほとんど何の力も無い
役立たずに成り下がった。

 王宮において、アンリエッタ王女は死を免れたが、貴族制度の廃止と、王族の身分を捨てる事を、ハルケギニアすべてに向け
宣言させられた。

 貴族の中には、表向きおとなしく投降し、内心で、「この反乱が終われば、再び自分たちが必要とされるようになる」とほくそ
笑んでいた者もいた。しかしその思惑は、銀河帝国がさらに多くの道具を持ち込んだこと、その道具を作るための技術を教え始めた
ことで、水泡と帰す。

 銀河帝国の道具は、それまで「魔法を使わねば出来なかったこと」のほぼすべてを可能とした。ハルケギニアに、もう魔法は必要
なかった。平民たちにとって、銀河帝国の道具があれば魔法とメイジはもう無用の長物、何の価値も無いガラクタだったのである。

143:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 12:53:23 ZwWOQIA8
名前:小ネタ 「ゼロと帝国」 その3[sage] 投稿日:2008/06/28(土) 00:25:40 ID:tPCdiCPR
 やがて反乱という名の炎は、魔法学院を退学させられ、失意の内に故郷に引きこもっていたルイズの元へも迫る。

 ラ・ヴァリエール公爵は、おのれの名誉にかけて必死に抵抗したが、それは所詮、巨大な岩を素手で殴りつけるようなもので
しかなかった。公爵自身は斧で真っ二つにされ、夫人は頭蓋を叩き潰され、長女エレオノーレは杭で串刺しにされた。皮肉にも
病弱だったカトレアと、元々魔法を使えなかったルイズだけが、お目こぼしにあずかることができたのだった。

 しかし当然ながら屋敷も領地も財産も失い、カトレアとルイズに残されたのは、裕福な平民程度の家と財産にすぎなかった。
しかも家族の死と環境の激変で、カトレアの健康状態が急速に悪化し始める。治療しようにも、ハルケギニアに水の魔法はもう
存在しない。姉を死なせないため、ルイズは屈辱をこらえて、『銀河帝国』の人間に、水の魔法を復活させてくれるよう懇願
するしかなかった。

 幸い頭目らしき男が、「魔法を復活させることはできないが、銀河帝国の医者による治療を受けさせる」と約束してくれた。
ハルケギニアより遙かに進歩しているらしい銀河帝国の医術でも、生まれつきの虚弱体質を治すことは出来なかったが、どうにか
死の危険からは救い出すことができた。

 かろうじて──本当にかろうじて戻ってきた平穏な日々。その価値を痛感させられる中、ルイズは突然、あの頭目らしき
男に呼び出される。

 いぶかしく思いつつ向かったその先には、ルイズの見知った顔が何人か集められていた。アンリエッタ元王女も、コルベールも、
オールド・オスマンの秘書だったミス・ロングビルもいる。その他にも魔法学院のコックとメイドだった者、反乱軍のリーダーの
一人である女戦士もいた。

 あの頭目に話を訊いてみると、これから自分の上司に会ってほしいと言う。そこで初めて、ルイズたちは頭目の正体を聞かされる。
なんと彼は、銀河帝国正規軍の将校だというのだ。彼の上司が、ハルケギニアの住民の、生の声を聞きたがっているというのだ。

 それを聞いたあの女戦士が、厳しい顔で進み出る。

「以前から疑っていたが、やはりあなたがたは、ただの商人などではなかったのだな? この反乱は、あなたがた銀河帝国が
仕組んだ謀略、ないしは軍事作戦だったのだな?」

「つまりアニエス殿は、我々があなたがたを利用して、ハルケギニアを支配下におさめようとしたのではないかと疑っているわけか。」

 あまりにあからさまなその言葉に、一同が息を呑む。そんな彼らに、頭目は苦笑気味の笑いを見せた。

「当然だろうな。しかし、我々にそんな意図は無い。ハルケギニアなど支配したところで、銀河帝国にはまったく何のメリットも
無いのだ。そもそも、支配するつもりならこんな回りくどい手は使わん。直接攻め込んで征服している。」

「…信じられんな。第一、何の得にもならないのなら、なぜわざわざこんなことをした?」

「今すぐ理解しろと言っても無理だろうが……。ハルケギニアにおける社会の現状が、我々にとって、決して許せないものだったからだ。」

「……わけがわからん。どういう意味だ?」

「それは私の上司が説明してくれるだろう。」

144:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 12:53:44 ZwWOQIA8
小ネタ 「ゼロと帝国」 その4[sage] 投稿日:2008/06/28(土) 00:27:08 ID:tPCdiCPR
 そのまま船の一室に押し込まれ、海上を飛ぶこと一刻余り。いかなる陸地からも遠く離れた洋上で、巨大な船(らしきもの)が
十数隻空中に浮かんでいた。もちろんただの船ではあるまい。これは明らかに銀河帝国の艦隊であり、当然ながらすべて軍艦に
決まっている。
 壁のスクリーン(彼ら自身は「開くことのできない舷窓」だと思っている)を通じ、感嘆の思いでそれを見つめる彼ら。ところが
その時、中の一隻に目を留めたルイズとコルベールが、揃って叫び声を上げた。

「あれは!」

 それは二年前、彼女がサモン・サーヴァントで呼び出した、あの物体であった。その時は何なのかすら判らなかったが、銀河帝国の
軍艦だったのか──。新たな事実に二人が呆然とする中、彼らの乗る「小船」は、艦隊中でひときわ巨大な艦──全長にして千
メイル以上あるであろう。当然ながら旗艦に違いあるまい──に接舷する。

 あの頭目──黒と銀の軍服に着替えている──に先導され、艦内の通路を進む彼ら。ある扉の前で威儀を正すと、頭目は声を張り上げた。

「シェーンコップです。お望みの者たちを連れて来ました。」

「ご苦労。入りたまえ。」

 中から、驚くほど端正で魅力的な声が答える。それと共に扉が開き、一同は部屋へと通された。

 正面で、巨大なデスクに一人の男が着いていた。背後に部下らしき男が何人か控え、両脇には、白い全身鎧をまとった兵士が警護に
ついている。この男が、頭目──シェーンコップ──の言っていた上司に違いあるまい。しかしそれにしては、拍子抜けするほど
「普通」の男であった。

 年齢は三十代前半だろうか。中肉中背、黒髪に黒い目。顔立ちは端正な方だが、目立つほどの美男でもない。服装もごく普通の白い
ブラウスに黒のスラックスで、正直街のどこにでもいそうな平凡な男である。無論ルイズ達とて、人間を外見で測ることの愚かさは
百も承知している。が、見るからに「只者ではない」と思わせるシェーンコップの上司にしては、落胆させる人物と言うしかなかった。

「それで、彼らはいったいどういう人々なんだ?」

 視線をシェーンコップに向け、その男が問いを発する。あの端正な声は、この男のものであった。それに対し、シェーンコップが
手短に彼らの素性を説明する。

「なるほど。元王女が一人、反乱軍のリーダー格が一人、元メイジだが平民に偏見の無い学者に、同じくメイジだが貴族嫌いな女性。
まったくの平民二人に、大貴族の娘だが魔法が使えなかった少女が一人か。少なくとも間違った人選ではないな。」

 男がそう言いつつ机のどこかに触れると、隣室から人数分の椅子がその場に運び込まれる。一同をそれに座らせ、彼は改めて
ルイズ達に顔を向けた

145:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 12:54:16 ZwWOQIA8
名前:小ネタ 「ゼロと帝国」 その5[sage] 投稿日:2008/06/28(土) 00:28:00 ID:tPCdiCPR
「わざわざ呼びつけてすまない。すでにシェーンコップから聞いていると思うが、私に、君たちの生の声を聞かせて貰いたいんだ。
もちろん君たちは、自分の思った通りのことを言ってくれてかまわないし、ここで何を言ったところで、咎め立てされることは無い。
私が聞きたいのは君たちの本音であって、建前やお世辞ではないんだからね。」

「その前に、教えていただきたいのですが。」

 男を正面から見据え、アンリエッタが逆にそう問い返す。その顔には、露骨な疑惑の表情が浮かんでいた。

「何をだい?」

『シェーンコップの上司』は、穏やかな微笑を浮かべながらそれに相対する。

「あなたは、いったい何者なのです? ここに来るまでの兵士たちの態度から、シェーンコップ殿がかなりの上位者であることは
わかっています。その上司であるというあなたは、いったい何者なのですか? それに、『民衆の生の声を聞きたい』というのは、
最上位に立つ者の発想です。おそらくは、ハルケギニアに派遣された銀河帝国軍の総司令官、あるいはそれに準ずる立場の方と
見ましたが、違いますか?」

 元王女の鋭い指摘に、ほとんどの者が息を呑む。その中で、一人冷静だったアニエスが後を続けた。

「私も訊きたい。シェーンコップ殿の話では、銀河帝国には地位はあっても身分は無く、貴族もすべて名前だけの存在だと言う。
その地位も実力と実績と人望のみで決まり、血筋や家柄はまったく考慮されないと言うことだ。加えてシェーンコップ殿は、私の
目から見ても極めて優れた戦士であり指揮官でもある。その上司であるあなたは、すなわちシェーンコップ殿以上の実力者という
ことになるが?」

 それに対し、男の微笑が苦笑へと変わる。

「元王女の肩書きも、反乱軍リーダーの肩書きも、伊達ではないということだね──。しかし、それは買い被りだよ。と言うより
適材適所かな? 私は将ないし軍師としてはともかく、戦士としてはまったくの役立たずだ。」

「銀河帝国では、戦士として役立たずでも将や軍師になれるのか?」

「そうだよ。戦士の資質と将や軍師の資質は、まったく別のものだからね。」

「はぐらかすのはやめてください!」

 ごまかすつもりだったのだろう男に、アンリエッタの鋭い声が飛ぶ。

「もう一度訊きます。あなたはいったい何者なのですか?」

「──やれやれ、自己紹介は後にしたかったのだが、やむを得ないな。」

『まいったね』と言うように頭をかきつつ、男は言葉の──とんでもない事実の爆弾を落とした。

「私の名はウェンリー・ヤン。銀河帝国の、一応、皇帝ということになる。」

「──な!!」

「後にしたかったわけが解っただろう? こんなことを明かせば、君たちが本音を言ってくれなくなるかもしれないからね。」

 あまりの事実に一同が絶句する中、最初に我に返ったのはルイズであった。

146:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 12:54:40 ZwWOQIA8
小ネタ 「ゼロと帝国」 その6[sage] 投稿日:2008/06/28(土) 00:28:49 ID:tPCdiCPR
「こ、皇帝ですってー!」

 恨みに我を忘れ、『皇帝』に飛びかかろうとする彼女。しかし所詮は、非力な少女にすぎない。警護の兵に、あっという間に
取り押さえられてしまう。

「く──。」

 床に押さえつけられ歯がみするルイズに、皇帝は悲しみのこもった眼を向けた。

「私が憎いかね?」

「当たり前でしょう! あなたのせいで父様も母様も、エレオノーレ姉様も!」

「そうだろうな。」

 穏やかな口調で、しかしはっきりとそう断言する。これには、ルイズのほうが怪訝な顔になった。

「怒らないの?」

「恨まれて当然だからね。──実際、こんなことは過去何度もあった。かつて、戦場で倒した提督の息子に殺されかけたことも
ある。その子も君と同じ、まったくの子供だった。」

 その言葉にルイズは、目の前の人物が才能も器量も備えていることを知った。が、中の一言が彼女の心にカチンとくる。

「子供じゃないわ! これでも十八よ!」

 そう言われ、今度は皇帝のほうが怪訝な顔になる。かたわらの部下に顔を向け、小声で問うた。

「この星の一年は、我々のそれより短いのかい?」

「いえ、むしろ、わずかながら長いはずですが。」

 ルイズは内心で地団駄を踏んだ。身長と体型のせいで幼く見られるのには、もう馴れている。だからといって、子供扱いされて
気分が良いはずはない──。そんな彼女に『皇帝』が、申しわけなさそうな顔を向けた。

「それは済まなかった。──しかし、君に言っておかねばならないことがある。かつて貴族に愛する者を奪われ、今の君と同じ
思いを味合わされた平民が、ハルケギニア全体でどれだけいたと思う?」

「う……。」

「彼らの気持ちがわからないとは言わせない。それとも、貴族と平民はまったく別の存在で、大切なのは貴族だけ。平民などは
どうでもよいと言うのかな? だとしたら、私もここにいる者たちも、君を許さない。」

「………。」

「それに、君の両親と姉上にも、生きのびる機会は与えられていた筈だが?」

「地位も身分も財産も、すべて捨てた上でのことでしょう! そんなこと、誇り高い貴族が受け入れるもんですか!」

「……誇りを持つのは結構なことだが、その対象が『貴族であること』というのは感心しないな。」

「どういう意味よ!」

「はっきり言おう。貴族であることに価値など無い。血筋や家柄など何の価値も無い。そんなものが、人間の価値を左右しては
ならない。人間の価値を決定づけるのは、1に人格2に能力で、他にあるとすれば、過去の実績だけだ。」

 どうやら銀河帝国では、それが「国是」であり「正しい考え」であるらしい。価値観も考え方もハルケギニアのそれとは根本的に
違っていて、ハルケギニアの論理は通用しないということだ。だとすれば彼らを言い負かすのは不可能である。唇を噛むルイズだが、
すぐ逆襲のすべを見つけた。

147:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 12:55:16 ZwWOQIA8
名前:小ネタ 「ゼロと帝国」 その7[sage] 投稿日:2008/06/28(土) 00:29:27 ID:tPCdiCPR
「……何よ! 血筋や家柄に価値が無いなら、あなたは何なのよ! 皇帝なんでしょう! 血筋でその地位を得たんじゃないの?!」

 それに対し『皇帝』が、初めてむっとした表情を見せる。だが、彼が口を開く前に、背後に控えていた中年の男が進み出た。

「陛下、ここは私におまかせを。」

 そう言ってルイズに向き直る男。長身で痩せぎす、半分白くなった髪で、少しだけあの「マザリーニ枢機卿」を思わせる。が、
こちらの方がはるかに冷徹というか、冷酷そうな印象だ。

「ルイズといったな。本気でそう思っているとしたら、君は愚か者ということになる。」

「なぜよ?!」

「血筋によって皇帝の地位を得た者が、みずからその価値を否定すると思うかな?」

「なんですってえ?!」

「そうだ。ウェンリー陛下は、先帝陛下とはまったく血の繋がりは無い。」

「それじゃ─もしかして─あんた簒奪者?!」

 皇帝に視線を向け叫ぶルイズ。それに答えたのは、中年男のほうであった。

「それも違う。ウェンリー陛下が現在皇帝の地位に着いているのは、先帝陛下によって指名されたからだ。」

「つまり、銀河帝国では、皇帝さえも血筋では決まらないって言うの!」

「そうだ、銀河帝国においては、皇帝も職務上の地位にすぎない。人格と能力のみで選ばれ、血筋など考慮されることもない。
──だから銀河帝国には、皇帝はいても王朝は存在せず、皇妃はいても皇子や皇女は存在しないのだ。」

「そんな………。」

「銀河帝国では、血筋や家柄に価値など無い──。だからこそ我々は、ハルケギニアの貴族たちが許せなかった。」

「その通りだ。特にトリステイン王国では、貴族がすべてを独占し、平民はほとんど人間あつかいすらされなかったと聞く。
そんな貴族たちの振る舞いこそ、我々には絶対に許せないものだった。」

「だから──だから貴族を滅ぼしたって言うの! 何の得にもならないのに!」

「──では訊こう。もし目の前で、決して許せない事を誰かがやっていたら、君はどうする? 自分自身の損得など度外視して、
やめさせようとするのではないかな?」

「く……。」

「ハルケギニアにおける貴族と平民との差別、魔法を使える者と使えない者との差別こそ、我々には許せないものだった。我々は、
それをやめさせたかった。そのためには、貴族を滅ぼし、魔法を滅ぼす以外に方法が無かった。──ま、君たちとの最初の接触で、
ある種の電磁波が魔法の発動を不可能にするとわかっていなかったら、もっと苦労しただろうが。」

148:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 12:57:30 ZwWOQIA8
小ネタ 「ゼロと帝国」 8 ラスト[sage] 投稿日:2008/06/28(土) 00:30:23 ID:tPCdiCPR
「……あれ? 待ってよ! 銀河帝国でも、能力の違いは認められているんでしょう! 貴族と平民との間には、魔法を使える
使えないという、れっきとした能力の違いがあるじゃない!」

「……もう一つ我々が許せなかったのは、ハルケギニアにおいては、魔法の才能が何より優先するとされていたことだった。」

「…どうしてよ! それのどこがいけないの!」

「国を治めるまつりごとの才能と、魔法の才能との間に、関係があると思うかい? 兵を指揮する将の才能、作戦を立てる軍師の
才能と、魔法の才能との間に関係があると思うかい?」

「………無いわ。確かに。」

「本来重視されるべき能力より魔法のそれが優先され、魔法が使えなければ、それ以外でどれだけ優れていても認めてもらえない──。
それもまた、我々には許せないことだったんだよ。」

「そのために──そのために魔法を滅ぼしたって言うの! 魔法の才能に価値を無くすために! そんなことのために!」

「──確か君は、大貴族の娘でありながら魔法が使えなかったんだろう? 魔法以外のことで認めてもらえたら、と思ったことは
無いのかい?」

「……有るわよ! それは認めるわよ! でも、魔法そのものがこの世に無かったら、なんて思ったことは一度も無いわ! 第一
そのせいで父様も母様も、エレオノーレ姉様も!」

「──魔法を使える者と使えない者との差別、それを無くすためには、少なくとも一度、魔法そのものを滅ぼすしか無かった。
そして魔法が滅びれば、貴族が滅びるのは必然だった。」

 歯ぎしりするルイズだが、その言葉に秘められた裏の意味に気づく。

「……待って! 今言ったわよね! 『少なくとも一度、魔法を滅ぼす』と! つまり、いつかは魔法が復活すると言うの?!」

「ああ、いつかは復活する。しかしそれは、今から少なくとも三、四十年後──魔法も貴族も、完全に過去の遺物となってからの
ことだ。その頃には魔法は、『役には立つが不必要なもの』になっている。当然、魔法の才能も、大して価値の無いものになっている
だろう。」

「………。」

「いずれにせよ、ハルケギニアにもう魔法は存在しない。魔法の才能は、もう何の価値も無い。貴族と平民の区別ももう無い──。
魔法と貴族の時代は終わり、科学と民衆の時代が来る──。君もこのままで終わりたくないなら、魔法以外で認められるよう、
努力することだ。」

「そうですよ、ルイズさん。元々、魔法の実技以外では学院でもトップクラスだったじゃないですか。」

 黙って聞いていたシエスタが、この時口を挟んだ──。


──結局、彼らが生きている間に、魔法が復活することは無かった。そしてウェンリー皇帝の言葉通り、復活した時には完全に過去の
遺物でしかなくなっていた。魔法とメイジが社会の主流を占めることは、二度と無かった。しかしアンリエッタ・ド・トリステインと、
ルイズ・ド・ラ・ヴァリエールの名は、ハルケギニアの一時代を支えた女流政治家の名として、歴史に刻まれている──。


-『銀河英雄伝説』より、帝国軍駆逐艦を召還。

あの作品のキャラがルイズに召喚されました part133
スレリンク(anichara板:349-357番)

149:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 12:57:49 SD/lYHex
スル-

150:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 13:00:51 kTIL2t/+
あぼーんしとこう

151:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 13:05:04 RxpBmSRw
>>139
俺は6までかな、7でポリゴンになったのが受付けなかった。
3はダーククリスタルの存在に気付かずラスボスに特攻しまくってたなぁ…
5は名作だと思う、ミスティッククエストも楽しめた俺が言うのもなんだがw

152:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 13:38:45 tXkihgbC
俺も一番は6だな。
小学生のころだったけどセリスが身を投げるシーンではゲームで初めて泣いた。

153:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 13:58:53 SD/lYHex
召喚からズレて思い出話になってるんだがw

154:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 14:03:21 aVQEC4B/
ここでFFは5しかやったことの無い俺惨状
しかもリフレクリングが取れなくて第2世界のエクスデス城で投げた!

まじごめんなさいorz

155:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 14:06:47 bDu4R3Xw
>>153
じゃあ光速の異名を持ち重力を自在に操る高貴なる女性騎士を召喚
と軌道修正してみるw

156:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 14:16:03 keVjAW/f
シルドラ喚んでファリスを思い出させたりシルフィードといい仲にと思ったこともあるけど投げた

157:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 15:28:55 2S2uxhGt
FF9のビビ……生きるという事、死ぬという事を真正面から受け止めて言ったあの姿はゼロ魔世界でも通用すると思う。
黒魔導師としての能力が高くとも、日常的にはジタンにくっついていく気の弱さとか、体格的な弱さは書きやすいかもしれないし。
……文才の無い身には無念な話ですが。

158:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 15:44:29 /kPe2iYY
FF5からものまねしゴゴを召喚。
「わたしーの名前、ゴゴ。もーのまねーの達人よー。
もーのまねーの極意は……、まねするーこと。
だから、ルイズちゃんをーわたしーの使い魔ーにするよー」


ものまねをしなかったギーシュ、フーケ、ワルド、その他大勢の敵には、
「ものまねーはもうやめー! でなおしてきなしゃーい!」
メテオ連発。

159:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 16:03:24 hlA1i/+h
乗り物付き召喚で6のセッツァーかな、自前のカジノでタバサに大負けするとか
タルブにはかつての友、ダリルのファルコン号が

160:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 16:25:08 4iBg7sq0
FF7で白マテリア召喚 ガリア王あたりが黒マテリア

161:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 16:37:28 JYTxrwF0
タルブの村にはダンカン(FF6)の子孫がいる
→シエスタに「ひっさつわざ」


162:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 16:49:39 rKuJQJZ5
ルイズがマッシュを喚んでシエスタとダブル無幻闘舞ですね?

163:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 17:23:35 vcirJA33
どうしてシエスタはムキムキキャラと組ませられやすいんだ。
そのうち赤くなってパワータイプとか言い出すんじゃないのか?

164:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 17:38:14 JYTxrwF0
タルブ+FF+東方から来た男+デルフ
→むっつりで機械音痴でござる口調のシエスタ

165:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 17:49:56 qXV3Lyjz
>>163
青くなるとスカイタイプですかそうですか

166:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 17:51:23 ilRIjqoN
>>163
胸は力なり

167:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 17:58:23 BxB3n98L
荒ぶる肉体に全てを賭けた不動筋肉陣

168:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 18:00:38 X+DsAWXa
>>167
残念、鏡の盾を装備していたようだ

169:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 18:12:38 XGpYn/EW
だってシエスタは平民で魔法は使えないってのが基本だし
となると肉体言語で説得するようなタイプに持っていくのがルイズたちメイジと対比させやすい
それにほら、後衛を守る前衛は必要だろ?
一応ガンダだけでも事足りてはいるけど

170:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 18:54:02 g2tWOwK+
せっかくだからシエスタにガンダ印を付けてみる。



おお、形見のゼロ戦を自前で飛ばせるではないか。

171:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 18:57:06 M3iJzq8N
金剛石のシエスタはWiz侍だからそのうち魔法が使えるようになるはずなんだよな。
ひょっとしたらもう使えるのかもしれないけど。
それ以前に更新絶望的?なのが残念だが。

172:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 19:04:01 /l1negZ9
そういや黒蟻の人の所では竜の羽衣は誰が動かすのだ?
ど素人がルーンも無しで零戦なんてピーキーな代物いきなり飛ばそうなんて自殺行為だぞ?

173:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 19:09:16 ycFD2JIP
黒蟻のルイズは自分が異端と自覚してるし、人前じゃ自重するだろ。
んでそうする限りガソリンは手に入らず整備もできないからオブジェと化す。
フーケ再登場の展開を切って殺す、と同様にゼロ戦の出番も切るんだろう。

174:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 19:10:19 8sNUQbe/
ゴーストバスターズとマシュマロマンが召喚されました

175:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 19:13:15 ztl32eVM
前スレ>922
そういえば、エピGと言えば。
影技な人たち召喚とかは違和感少なくやれそうではある。一般的には聖闘士ほど化け物じゃないし。
字持ちならvs7万やvsヨルムンも行けるだろうしな。ガンダ補正+デルフ涙目確定だが。

176:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 19:17:10 Egl5sEBm
>>170
ゼロのアトリエ超オススメ。
名作だ。

177:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 19:23:05 Lmhb2P+Q
タルブ村にパンジャンドラムが。

178:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 19:28:05 GoR9UTzD
FF6の召喚だとタルブ村にあるのはブラックジャック号かファルコン号

でも動力が違うとは言え飛空挺だとコルベールはあんまり興奮しないかな

179:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 19:31:35 yGHI1EK9
>>175
更新がもう一年近く止まってるけど、カインが召喚されたSSならある(ただし、ヴィンダールヴでガンダはおそらくサイ=オー)
(何故か)五万の大軍を撃退とかもやってたな…

個人的にはディアスなんていいんじゃないかと思う
兄さん人格者だし、修練闘士並に強いけど体壊してて全力出せないし

あとはアニメ版のロウなんてのも面白いかもな

180:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 19:35:54 nR3aE/2I
>>178
いや、巨大かつ完成度極限のエンジンをみて、
コッパゲが食いつかないわけがないと思うんだが。

181:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 19:36:21 tXkihgbC
FF6から飛空挺以外だと、インペリアル・エアフォースの空中戦艦エアフォースは?
タルブ村の地底から発進してアルビオン艦隊を魔導レーザーで撃破、さらにアルビオン大陸を波動砲で粉砕。

182:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 19:48:34 gD5dwVg7
波動砲ならヤマトと言いたいがサイズの問題があるのでR-9で妥協しない?

183:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 19:52:54 gyu2nC1X
>>182

R-戦闘機?

184:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 19:58:19 16ViiUG4
BWのメガちゃん召喚なんてどうかな。
中学の時体操部だったことが明かされるところから召喚されてさ。

「台本にそう書いてあるから仕方ない」で従う理由も解決するぞ。

185:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 20:03:25 dHEBamdu
タルブの地下にはロンカの遺跡が………。
アルビオン艦隊に波動砲。ランチャーで風竜たちを狙い撃ち。

186:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 20:04:15 dt40WSHw
>>182
R-9も十分過ぎる程出鱈目だけどな。


187:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 20:19:18 bSZaFYEb
>>185
攻略法はライトニングクラウド超連発だな

188:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 20:22:39 9QBmM19v
>>184
前スレだか前々スレで呼ばれた

189:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 20:23:33 c4TDnG5V
>>172-173
ルイズはモッカニアの本で操縦してるとこを見ている可能性はあるんだな
だからと言って操縦できるとは思えんが
そもそも原作でモッカニアが飛行機乗ってる記述はないんだよな
まあ、自分で自分を古臭いって言ってるおっさんキャラのビザクが飛行機乗ってることを考えれば、武装司書は全員飛行機乗れると考えてよさそうだけど
乗れないとしたらクジラに乗って移動できるボンボぐらいじゃないかね
黒アリの人も武装司書は皆のれる的な設定にしてるっぽいし

だから乗る乗らないはともかく、本を読んで操縦方法を勉強することはできるんだよな

190:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 20:34:09 ilRIjqoN
普通にコルビー先生が「お手本」として齧り付くだろう。
大まかな原理はルイズがインスピレーション提供してく感じで。

191:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 20:38:08 tXkihgbC
>>182
ヤマトがだめならアンドロメダならどうだ?
半自動制御で人員は少なくてすむし、メンテナンスも自動で進む。
ショックカノンもカートリッジ式でなきゃ弾切れは無いだろ。

波動エンジンに燃料はいらんし、高速チャージが可能な拡散波動砲は言うに及ばず。

192:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 20:47:32 ri8qG8oz
オーバーキルが嫌ならSaGa3のステスロスについてるはどうほうなんてどうだい?

193:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 20:48:32 VnbYtL07
蹂躙物は独立してやれよ

194:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 21:03:42 0P5DRZLx
MTGの人乙!
どんどん白熱していくタバサの大冒険にワクテカが止まりません
タバサやイザベラの感情の表現が良かったなぁ。

195:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 21:13:37 8sNUQbe/
>>192
もっと もっとだ! グヘッ

196:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 21:17:17 ilRIjqoN
>>192
大阪開発室の悪夢はいらん

197:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 21:20:17 sQrEB/xr
>>194
毎度毎度見入るよね、この描写
目に浮かぶようにスッと頭の中にイメージが浮かぶような自然な魅せ方で、それを経て更に内容が盛り上がって行く。

実に、実に素晴らしいですよMtlの方…!乙です

198:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 21:56:30 3M6Z0Yy3
シューティングはSFものが多いので
ファンタジーのゼロ魔との組み合わせは難しいかと…

パイロットの顔が分からない作品もあるしなあ
R-TYPEやグラディウスから自機召喚は俺も妄想したが…

199:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 21:59:28 FZaxcwhO
>198
パンツァードラグーンのように、ルイズが乗るタイプならどうだろうか。

200:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 22:02:03 +qmi4mpi
R-9って人道的に問題があるんじゃなかったか

201:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 22:02:08 phdudWaf
地龍マダカナー

202:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 22:06:23 ri8qG8oz
畳で空飛ぶアイン左衛門ガンバード2仕様なんてどうだろう?
子孫っぽいのがストライカーズ1945で震電乗ってるしそっちもアリかもしれないけど

203:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 22:08:04 BxB3n98L
ブルードラゴン召喚できたら大当たりだな…

204:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 22:11:57 VHftATwv
>>185
タルブにある兵器がオメガになりそうだな

少年時代に散々苦戦して
最近買ったGBA版で量産されてたのを見たときの衝撃は未だに忘れられない

205:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 22:17:49 6YsbzyDK
むしろ、タルブにはまだ手つかずのアポロンのハープがあるんじゃないかな

206:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 22:21:07 dwJCwFCy
>>189
ルイズ「プリパレーションチェック」
シエスタ「プリパレーションチェック」
シ「IRS・モード・セレクターズ
ル「NAV」
シ「ヨー・ダンパー・スイッチズ」
ル「オン」

シ「フュエル・コントロール・スイッチズ
ル「カットオフ」
シ「フラップス」
ル「アップ」
シ「エンジン・アンド・APU・ファイアパネル」
ル「ノーマル」

シ「エルロン・アンド・ラダー・トリム
ル「セット・ゼロ(「ぼーいんぐ767」っていったかしらこの飛行機…ちょっと最後の最後でしゃくに障るわね…)」
シ「プリパレーションチェックコンプリートでーす」
ル「はーい」
<<グラウンドです、5分前出ました。どーぞー>>

なぜか旅客機を操縦しようとしている光景が浮かんだ。

207:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 22:21:08 kuAkYjL+
>>178
言ったろう? 世界最速のハゲだって。(ふさぁ)

‥‥コルベール先生にセッツァーの代わりは無理がありすぎるなぁ。
主に頭部。

208:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 22:25:00 VHftATwv
飛空艇の風になびく長髪が輝くおつむに・・・

209:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 22:25:33 GoR9UTzD
FF6ってエンディングで世界から幻獣とか魔法が無くなっちゃったわけだし
ED後のFF6キャラを召喚しても魔法は使えないんだよな
エドガーとかマッシュとかまるで苦にしないヤツも多いけど

210:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 22:28:11 p5IYNCd/
しかしFF6だと、ニューカッスル攻防戦も、タブル攻防戦も、対7万戦も、
ルイズが虚無の力で敵全員にバニッシュ→デジョンのコンボをかまして終わり
そうな悪寒がする。

211:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 22:28:13 rKuJQJZ5
FF6は魔法を主体としたキャラのほうが少ない

212:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 22:28:32 kuAkYjL+
>>209
そこで頭にドリル装備ですよ。(SFC版のみ)

213:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 22:30:54 KgiEBO/q
>>206
なんか好きだな、こういうノリ。

214:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 22:36:33 t63Gbu6q
>206
本日は王立トリステイン航空をご利用頂きまして、誠にありがとうございます。
機長のルイズ・中略・ヴァリエールです…

215:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 22:39:59 /HW69gV6
FF7のクラウドを召喚するとルイズがユフィになってしまう気がする

ル「大人しくそのマテリアとやらを渡しなさい!」
ク「だが断る」
ル「ちょっと! ご主人様が渡しなさいって言ってんのよ!?」
ク「子供の玩具じゃないんでね」
ル「こ……子供ですって~~~~!!!」

……ユフィではないか。

216:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 22:41:24 SGJ/1fFQ
>>214
うっかり燃料を少なく入れ間違えた時のために風のメイジも乗せているのですね
わかります

217:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 22:46:25 QwweMgYz
>>214
 最近は料金値上がりで青息吐息ですね
 分かります

218:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 22:46:56 dwJCwFCy
>>216
そしてこうなるわけですね、分かります
~ギムリ宅~
                                     ___     __
                                  _/ |___,,,,,//
                               ∑∠___二___,,ヽ._l ‐― ― ― ―
                                   \ \  ̄
                                       ̄

\○/ ナンカデッカイノキター!!
  │
 <\ =3
  ↑ギムリ

219:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 22:47:40 9QBmM19v
>>216
お客様の中に風のメイジ様はおられませんか

220:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 22:48:03 O8EIdkS+
今思っていることの逆が正解だ。しかしそれは大きなミステイク

FF6と言えばこのセリフが意味不明だった。
結果より後悔しない決断が大事だって意味なんだろうけど
当時はサッパリだったわ

221:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 22:49:31 tXkihgbC
>>214
着陸脚に爆弾を仕込まれたら高速エレベーターカーの出番ですね。

222:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 22:53:33 rKuJQJZ5
ルイズがウーマロを召喚
決闘のルールが理解できずギーシュが杖を落としてもタコ殴りされたりデルフがただの玩具扱いに

223:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 22:54:33 p5IYNCd/
>>206

ル:Examin data link.
シ:Main trans engine No.1, 2 On. No.3, 4 Off. No.5, 6, 7 On.

こうですか?

銀河漂流ヴァイファムからロディを召喚するとか。
タバサがまんまカチュアっぽいからなぁ。

224:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 22:55:00 Kvp9vMq5
>>202
アインはガチホモだぞ、あれはアインの妹の子孫。


225:ライドウの人
08/07/01 22:56:43 sihuMU2J
続きができましたので投下させていただきたく思います。全然話が進んでないですけど

226:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 22:56:45 ZFv6USsg
>221
そこでD-LIVE!!の斑鳩悟登場ですね、わかります

227:ゼロの仲魔
08/07/01 22:59:03 sihuMU2J
 謹慎が解けるまでの数日、ルイズたちは買い物のあと、特に変わったことはなく普段どおりに生活をしていた。
 日中ルイズが自室で勉学に没頭している間、ライドウはというと洗濯をすませ、奉公に来ているものたちと同じく雑用をこなす。
 もともと彼がする義務もないのだが、ある菓子を作ってもらった礼にと進んで手伝いを申し出たのだ。
 任された仕事の一つは薪割りだった。彼と『葛葉』にかかれば硬い木がバターのように切れてしまうのでもうこれは彼の仕事になってしまっていた。そのあとは食堂の掃除である。
 午前の授業が終わる前、スープの蒸気などでほんのわずかに汚れてしまった窓を拭いていき、床にも雑巾をかけていく。
 魔法は便利だが、綺麗なままに保存しておくといったものはなかった。平民の仕事を奪うことになるので使うわけにはいかないのだが。
 一通りやり終えたあたりで、ライドウにシエスタというここに奉公に来ている少女が話しかけてきた。
「お疲れ様です。ライドウさん」
「これぐらいかまいません」
 彼女は先ほどまでテーブルクロスをしいていたため、ほんのりと汗をかいているがさほど疲れた様子はなかった。お盆を持っており、そこには二人ぶんの食事が盛られていた。
「こちらミス・ヴァリエールと、ライドウさんのお食事です」
「毎度毎度、ありがとうございます」
 ライドウは深々と頭を下げてからそれを受け取った。

 以前、ここへきたばかりのときは食堂で賄いをいただいていたのだが、ライドウが己の仲魔を出した決闘から、彼が調理場の中へ入ることはなくなった。
 仕方のないことである。メイジにとってライドウの仲魔は強力な使い魔というだけだが、平民にしてみたら命を脅かす獣と同等だ。
 表面上は気にしない風に装っていても、恐怖はどうしても生まれてしまう。 気丈なマルトー、ギーシュの言いがかりから助けてもらったという恩があるシエスタ以外は、ぎこちなくなってしまうのだ。

228:眠りの地龍
08/07/01 22:59:51 Ps5/lqB/
昨日は失礼しました。
ライドウの人の投下終了10分後あたりに投下予約します。
支援。

229:ゼロの仲魔
08/07/01 23:00:22 sihuMU2J
「ところでライドウさん」
「はい?」
 ライドウが食堂を去ろうとしたところで、シエスタが声をかけてきた。
「この前のお話、考えてくれましたか?」
「この前っていうのは……」
「私の村へと来ていただくことです」
 ライドウは困った顔を見せた。頬をかく。
「駄目ですか?」
「駄目といいますか、僕は使い魔という立場ですから勝手に出て行くわけには」
「それもそうですね。だったら、今度ミス・ヴァリールに休暇を願ってはどうでしょうか。恐らく、もっと先になるでしょうけど。私もそこに休みをあわせてもらいますから」
「はあ……あの、素朴な疑問ですけどいいでしょうか」
「はい。なんなりと」
「そもそも、どうして僕をシエスタさんは村へ誘うんですか? なにか特別な理由でもあるんですか?」
「これがあるんです」
 にこりと屈託のない笑みを浮かべた。
「最初はただの不幸な人かと思ってたんですけど、あの二回目の決闘でピンときちゃったんです。ああ、この人は村へとこないといけないって」
「ピンときちゃったんですか」
「きちゃったんです」
 ふふと、まるで秘密を楽しむ子供のような態度だった。
「まあ、無理は言えません。ですけど、ライドウさんには絶対に来てもらわないといけません。ですから、忘れないでくださいね。それでは」
 シエスタは小さく頭を下げてその場を離れた。ライドウも頭を下げると、お盆を持って食堂を出て行った。

230:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 23:00:41 GoR9UTzD
支援

231:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 23:01:32 J0t93H4c
アインの一族は代々必ず兄妹で生まれて妹の血筋が家を継いでいる
兄の方は必ずハードゲイ

232:ゼロの仲魔
08/07/01 23:02:01 sihuMU2J
 その後、寄り道もせず、授業で静まり返っている学院を歩いていきルイズと自分の部屋にやってきた。ノック。了承をもらってから中へと入る。
 ライドウは机で教科書を読みふけっているルイズに声をかけた。
「食事もって来ました。勉強はどうですか?」
「んー、悪くないわ。もともと今日やる予定だったやつはとっくに理解してるんだもの」
「思ったんですが、結構成績いいんですね。授業でもすらすら教師の問いに答えてましたし」
「実践では駄目駄目だけどね」
 ライドウは言葉を返さない。
 ルイズは教科書をぽーんと手放して、謝った。
「ごめんなさい。いまのは八つ当たりだわ。気を悪くしないで」
「いえいえ、かまいません」
「そういってくれると気が楽だわ。食事にしましょう」
「はい」
 マルトーが用意したのは普段のものとかわらないものだった。おかげでライドウも豪勢な昼食にありつけることができたのだったが、彼は味が好みではないのかすぐに満腹になってしまっていた。
 だが、デザート、彼がマルトーに懇願してメニューに入れてもらったそれだけは何個も平らげていった。それを見てさしものルイズも溜息が出てしまう。
「あんたほんと好きよね。その大学芋っていうの」
「ええ。ルイズ様、契約ですからお一つ譲ってください」
「わかってるわよ」
 ルイズは自分の皿にあったものをわけてやった。
 もともとこれの作り方をマルトーは知らなかった。大学芋というものの名前さえもだ。それをライドウが懸命に再現し、製法を教え、作ってもらっているのだ。
 これのためにわざわざ仕事をしているといっても過言ではなかった。
 一通り食べ終わると、いつもならライドウが食器を食堂へ持ち帰るのだが今日はそうならなかった。
「ルイズ様、実は、シエスタさんというここで奉公をしている人に言われたのですが、」
「なにを?」
「村へこないかと」
「なんで?」
「それが、具体的には教えてくれませんでしたが、なにか特別な理由があるそうです」
「特別な、ね」
 ルイズはオレンジを一切れ口に含み、飲み込んでから答えた。
「別にかまわないわ。求婚していたわけじゃないんでしょう。学院が長期休暇に入ったときにはメイドも暇を与えられるから、そのときにあなたも一緒にいきなさい」
「ありがとうございます」

233:ゼロの仲魔
08/07/01 23:04:08 sihuMU2J
 ライドウは空になった食器を盆に戻し、部屋を出て行った。そして食堂でシエスタに返すと、ちょうど昼休みになるので次の仕事に入る。
 調理されていない生肉やらくず野菜などをリヤカーに積み込んでからヴェストリの広場に出る。
 そこでは学院の使い魔たちが思い思いに休みを取っていたが、彼らはライドウの姿を認めるとぞろぞろと統率の取れた動きで集まりだした。
 モグラ、蛙、サラマンダー、大きなものから小さなものまで学院中の使い魔が彼のもとにいる。先日の馬も混ざっていたが目立っていなかった。
「はい並んで。お食事です」
 様々な鳴き声とともに使い魔たちは一列に並んだ。これがライドウが重宝されているもう一つであった。契約をしていても獣の本性は失われない。餌やりの人間に噛み付くこともある。
 ところが、ライドウの場合は静々と礼儀正しい人間のようにに食事を取ってくれるのだ。他ではこうはならない。
 そうしてすべての使い魔たちに食事を配ると、肉の血で手が汚れているので水で洗っていると、ライドウへ一人の少女が近づいてきた。
「……なにか、用でしょうか」
 ライドウはその、眼鏡をかけた青色の髪をした小柄な少女に尋ねた。
「あなたに、聞きたいことがある」
「はあ、なんでしょうか」
「あなたの右手にあるルーン、それはいつからある?」
 ライドウは自分の右手を見た。そこには文字が描かれていた。
「これは確か、ルイズ様と契約してからできましたね。使い魔の証とか言ってましたけど」
「そう」
 彼女は短くそういい、懐から紙とペンを取り出してスケッチをしだした。
「動かないで」
「は、はあ……」
 時間はさほどかからずに終了する。彼女は礼をいってから食堂に戻っていった。ライドウはすぐさま仕事に戻っていった。

234:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 23:04:09 iUHZTLdd
>>198
式神の城かサイキックフォースから呼べば、OK!

そういや、前スレで自力で帰還できるキャラの召還の話が出てたけど、
無名世界の有名キャラなら世界間移動こなす人結構いるよね。

ルイズに少年探偵、キュルケに「贅沢にしか生きられない」ニーギ、
タバサにふみこたんあたりで。

235:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 23:04:31 6MGUjxVq
支援

236:ゼロの仲魔
08/07/01 23:07:27 sihuMU2J
 夜、ライドウが新たに薪を割る、ではなく切っていたらゴウトがやってきた。鳥目というのがあるが、彼にとってそれは問題ないようであった。
 迷うことなくライドウの肩に着陸すると、小声で仕入れた情報を語り始めた。
「ある田舎村で耳にしたんだが、この国のある領主がまるで人が変わったかのように優しくなったらしい」
「というと?」
「それまでは人買いといったことを堂々としていてな。民からは恐怖の対象として見られていたようだ。それがいまや聖人君子になっているらしい。贅沢もやめてなかなか質素な生活をしているのだとか」
「他には?」
「アルビオンという国の政治家たちが、まるで人が変わったかのように王家を糾弾しているらしい。このままでは革命も起きるやもというほどだ」
「イギリスみたいに?」
「いや、ここにおいての王家を打ち倒すというのはあちらでのとは意味合いが違ってくる。調べたところ、ここでの王家とは神に相当するものから与えられた力だからな。それを滅ぼすなど、考えられん。
恐らくだが、彼奴らが関わっている」
「恐らく、じゃなく、確実に関わってるだろうな」
 ゴウトは反論しなかった。
 早計だとか、いまだ様子見が必要だとか。
 なぜなら彼もまた、確信を持っているからであった。
 ライドウは心底疲れたかのような、重い、溜息をついた。
「あいつらは、こっちでやるつもりなんだろう。でも、科学がないから、周到な準備をしないといけない」
「これは布石といったところか。いつ出る?」
 ゴウトの問い、ライドウは薪を切りながら答えた。
「今夜にでも。ルイズ様が寝入ってから、その領主のところへ」
 そういって葛葉を鞘に収め、腰から弾がこめられていない銃を抜いた。
 引き金を引く。弾は出なかった。

237:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 23:08:56 eyBU5zQ2
支援

238:ライドウの人
08/07/01 23:09:40 sihuMU2J
これで投下は終わりです。支援アリガトウございました。

239:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 23:14:37 KgiEBO/q
乙したー。
なんてーか、キレのいいルイズですな。こういう感じは大好きです。
ツンデレキャラはある種の高潔さを持ち合わせてないと
ただウザイだけではないかと思う今日この頃。

>>234
「豪華絢爛にしか生きられない」じゃなかったっけか。
絢爛舞踏と引っかけてるんだと思うし。

240:眠りの地龍
08/07/01 23:15:19 Ps5/lqB/
乙です、では30分から投下開始。

241: ◆6RW/qJehaM
08/07/01 23:17:49 aHQdoVO8
>>240

しまた。
さきこされた。

242:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 23:21:37 ilRIjqoN
乙でしたー!

>>207-208
飛空挺の舳先に腕を組んで颯爽と立ち、高空の日差しを頭頂部で反射させるコルベール。
その輝きが船と共に空を翔る事から、新たな二つ名は「光」。
あるいは「流星」のコルベールと呼ばれ、実情を誤解されたままイメージだけが広まることに。

243:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 23:23:13 phdudWaf
ならば「閃光」のワルドとは……まさかあの帽子ッ……

244:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 23:23:17 uOMz/5Ia
>>220
今思っていることの逆が正解だ(セッツァー談)
しかしそれは大きなミステイク(ダリル談)

このセリフを言う場面では今思っていることの逆が正解だったから、この賭けはセッツァーの勝ちってこと

245:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 23:25:00 KgiEBO/q
>>243
な、なんと恐ろしい……。

246: ◆6RW/qJehaM
08/07/01 23:28:04 aHQdoVO8
まさか、太陽拳の使い手か!?

247:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 23:29:13 GoR9UTzD
>>まさか、太陽拳の使い手か!?
DBの天津飯を召喚して「太陽の使い魔」ってタイトルを思いついた
タイトルだけ

248:眠りの地龍
08/07/01 23:30:46 Ps5/lqB/
それでは投下します。

249:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 23:30:45 dt40WSHw
>>234
どいつもこいつもどう考えても絶対と言っていい程従わないけどな。
特にニーギとふみこ。
契約とか強要しようもならガチで殺しに来る。
あいつらその辺マジで容赦ないし。


250:眠りの地龍
08/07/01 23:31:45 Ps5/lqB/

国王の財力、エルフの先住魔法、そして異世界人の知謀が結集し造り果せた、冷たき2体の巨人。


ガリア王国の何処かにある、広く薄暗い室内で、その巨人達は眠っていた。
ぴたりと並んいるその2体は、血を分け与えた双子の兄弟にも見える。
それほど、よく似ていた。


2体を外見がら個別化する為に用意された、蒼きを染めし鎧と、紅を司る鎧。
その彩色が、後に偶然ながら、彼等に付けられる名称の由来となり、
そしてさる事毎に因果な按排を弾き出すとは、ガリア王国の長とて現段階では予知すら叶わない。


彼等は光という存在を知らずにいる。
未だ1度たりとも、起き上がるのを赦されていないから。
仄暗い無の世界を漂う先に見つけるものは、果たしてガリア王が望する正しき事なのか、
はたまた、2体の誕生に携わった異世界人の危惧する、過ちの繰り返しなのか。


その運命を委ねるはガリア王、そして蘇りし神の頭脳次第。
遠くない未来、神の頭脳が灯す光は、彼等を何処へ導くのだろうか。
子は親を選べないとは、先人とてよくも適切な言葉を残したものだ。


何れにせよこの2体の巨人が、まだ目覚めてはならぬが故に彼等を固く束縛する、
強靭な紐から解き放たれる為には、暫時の経過を必要とした。




 眠りの地龍  第3話  「あしなが姉さん」


251:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 23:32:05 6MGUjxVq
支援

252:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 23:32:09 phdudWaf
かっこよく死艶

253:眠りの地龍
08/07/01 23:32:48 Ps5/lqB/

ゴモちゃんで良いじゃない、とけんもほろろ気味に言うのはキュルケ。


生き物、よりも置き物、として認識され始めた感すらある、動かざる眠りの地龍ゴモラの名称について、
毎日散々思考する挙句、結局は決まらない事を悪循環的にひどく悩むルイズが、
少々プライドを捨て、この日授業の直前、キュルケに相談した処、前記の答えが返ってきた次第である。

やっぱこのゲルマニア女なんかに聞くんじゃなかった、とルイズは溜息をつく。
だが、キュルケとの雑談は続いた。それもわりと和気藹藹に、だ。
学院1年生の頃の彼女達は、犬猿の仲を具体的に表した仲の悪さであった。
同じ机に、それも隣同士で座るなど、例え天地が引っ繰り返りようとも考えられなかった程に。

ルイズは魔法が不得意とするが、それは周知の事実にも程があるので、敢てその詳細は省くとして、
爆発乃至、発光しか能がない彼女を嘲弄していたのは、何もキュルケに限った事ではない。
2人の仲が悪かった原因として、そこだけを指摘するのは見当違いではなかろうかと思える。
また、ゴモラたる大層な使い魔を召喚したから、2人は仲良くなったと捉えるのもまた然り。

確かに魔法劣等者ではあるが、ルイズは努力を怠ってはいない。ただ何故だか報われないだけだ。
それに早い段階で感ずいた者もいたのに、当のルイズは性分からか強がってしまい、
理解しようとしてくれた者達を、これまで遠ざけてしまったきらいは大いにあると言える。
そう、孤独の巌窟に片足を突っ込んだのは、他ならぬルイズであり、
召喚されたゴモラは、その巌窟から脱出するチャンスを、無意識がら与えてくれたのに過ぎないのである。
ルイズ自身にその気がなければ、何を召喚しようが、キュルケ達との距離は今も遠かったであろう。

「あの、さ。マウンテンガリバー、なんてどうかな?」

さて、そんな2人の少女の会話に、唐突に顔を突っ込むは、後の座席から乗り出す膨よかなる少年マリコルヌ。
その丸っこい顔に備え付けられた口から放ったのは、どうやらゴモラの名前についての発言らしい。
ルイズとキュルケは、彼の弾力のありそうな事実柔らかい頬を目の当たりにし、軽く怯む。
そして、ルイズはマリコルヌの案を即座に却下した。
ガリバーだなんて、いかにも男っぽい名前じゃ駄目よ、長いし。
と。

ゴモラの性別は未だ不明である。
昏睡状態なのではと疑ってしまう程に深く眠り、なかなか目覚めないため、
通常使い主と使い魔が可能とする、意思の疎通が儘ならないからなのも原因の1つだが、
最大の理由は、単純明快に生殖器による雄雌の判断がつかないからである。

竜の生殖器は、大抵他種の生物と同じ様に尻尾の付け根にある。
これに倣いゴモラの尻尾の付け根を調べた処、所謂突起物の類は見受けられなかった。
だが、まだ雌だとは断定をしかねる。何故なら、ゴモラはその巨体をうつ伏せにさせ眠っているため、
或いは案外小さな生殖器が、巨体と大地の合間に埋もれている可能性が高いからだ。
依然未確認のままのルーンと同じく、性別の方も曖昧模糊なのが暗黙の了解となっている
(半陰陽、という単語も浮かび上がるが、生物学的にそれはあり得るのだろうか)。
目覚めてくれれば、そう事が有耶無耶に縺れる必然性も消えうせるのだが、
起き上がらない巨体を目の前に、ほとほと待ち惚けを喰らっているのが現状だ。

そんな良く言えばミステリアス、悪く言えば真偽があやふやではっきりとしない、
物言わぬゴモラは、今は如何な夢を見ているのだろうか。


254:眠りの地龍
08/07/01 23:34:00 Ps5/lqB/

マリコルヌの方に視線を戻してみると、絶対的な命名決定権を握るルイズからの冷たい即答を受け、
軽く残念がっているのだが、そんな彼を煽るが如く、
そうそう、君にはセンスがないよ。とさらに横入りする、頬に真新しい火傷の痕を負ったギムリの姿がある。
キュルケはギムリをルイズ越しに目にすると、少しげんなりとした表情を見せた。
大方昨晩あたり、その火傷に繋がる、何かしらの関わり合いがあったのは間違いない。

センスがないだなんて、君に言われたくないぞと指差し反論するマリコルヌに、
少なくとも君よりも高貴な名を考える自信はあるね、と胸張って言う妙に自信ありげなギムリ。
2人のやり取りを封切りに、他の生徒達もゴモラの名称について各々語り始めた。
たとえその正体が地龍であると知らずとも、ゴモラの存在に憧れを抱く者は少なくなく、
その名付け親になれるのならばなってみたい、と衝動にかられたのかもしれない。
最初はほんの雑談程度だったのだが、次第に誰が名をつけるか、どんな名をつけるかの口論に発展した。
何故に使い主である私の意志は無視なのよ、と当然至極なルイズの主張をも掠れ消してしまう程に。

その議論は、ギトーの風魔法の授業が始まっても尚継続するほど白熱し、
授業中だぞ、厳粛にできんのか、と怒鳴るギトーを誰もが無視した、というか気づいていない。
痺れを切らしたギトーが、いい加減にしゃぁがれこの糞餓鬼どもが!
と教師らしかぬ暴言を吐こうとした直前であった。

「グノーム」

囂然たる場をまるでサイレントの魔法の如く沈め、そしてギトーのモラル崩壊を未然に防いだのは、
それまでキュルケの隣で、普段通り淡々と本を読んでいたタバサである。
彼女の声は極めて小さく、鶴の一声と例えるのも怪しいものだったが、まさか想定外の参入に人目を引かせた。
何かしら魔法の呪文でも詠唱したのかと勘違いした者もいるが、
それは普段から勉学を疎かにしている証拠である。
実技の結果はともかく、毎日の勉強を欠かさないルイズは、すぐにタバサの放った言葉の意味を理解した。

「土の精?」

以前何かの本で読んだか、或いは1年生の時授業で学んだ覚えがある。
四系統魔法と呼ばれる、火、水、風、土には、それぞれ系統の名を冠とする精霊が存在する。
火の精はサラマンダー、水の精はウンディーネ。
風の精はシルフィード。そして、土の精はグノーム。

そう、タバサの使い魔の名シルフィードは、ここからの因由なのである。
蒼い体色で、空を自由に飛び回る韻竜(表沙汰では風竜)には秀逸な命名と言えよう。

妥当、いやこれは秀逸かもしれない、とルイズは断案に達した。
グノーム、であれば、後々雄か雌か判別した際に、それに沿った名前に変える必要も無い。
土の精という意味ならば、地龍への命名由来としては十二分である。
それに、ゴモちゃんやらマウンテンガリバーやらなんかよりも、よっぽど響きが良く、程よく短いし、
何よりタバサの使い魔と共通点のある名というのも気に入った。
他の生徒達も概ね納得したらしく、感嘆や反論の声が僅かに漏れるのを除き、教室内は治まりを見せる。
なんかよく解らんがこれで授業が再開できる、とギトーもタバサに心の中で感謝の意を表したのであった。

その後、ゴモラを嫌うシルフィードが「んな、なんじゃとてなのねぇぇぇぇ!?」
と悲観に打ちひしがれて叫んだのは、敢えて記するまでもない。


255:眠りの地龍
08/07/01 23:35:06 Ps5/lqB/

それ自体が、巨大な風石の塊であるという説がある。

始祖ブリミルの力が時節「ナンデモアリ」的な意味合いで取られる謂れの1つに、
その始祖の息子が作り上げたという、ここ浮遊大陸アルビオンが挙げられる場合が多い。
常に地上から3000メイルの位置にて、巨大な1つの大陸が浮かぶ光景は圧巻である。
そこでは、人々や動物達が、地上と然程変わらぬ生活を送っており、
高度3000メイルだからと、高山病の類、酸素欠病症等に苦悶する例は殆ど無い。
森林などの自然環境が調っているから、と言えるが、
その自然環境も何故、雲の上なぞで、地上と大差無しに成り立っているのだろうか。
それもまた、ブリミルの「ナンデモアリ」が干渉しているのかもしれないが、だとすれば、
本当に「ナンデモアリ」である。


そのアルビオンのサウスゴータ地方、何かを隠すのに適する程深い森に囲まれた、ウエストウッド村は、
住人の平均年齢が一桁という、端から‘活気ある村’を志していない、小さな村である。
しかし活気はなくとも元気は溢れており、常に笑い声が絶えないのがこの村の特徴で、
収入源の皆無による貧困の対策は、とある1人の女怪盗によって成されている。

村から10メイル程森の中を突き進んだ場所に、せいぜい雑草が生い茂る程度の、広場とも言える更地がある。
木々の中にぽかんと開いたその空間に、さらに場違いと言わざるを得ない異様な物体が、ずんと身を置いていた。
岩山である。
いや、岩山と記述するのも怪しい。
何故ならそれは、少なく見積っても3つの色彩が塗りたくられているからだ。

「悪い事は言わない。今すぐこの化物と、なんとかしてでも絶縁するんだよ」

カラフルなる岩山を見据えそう言う、緑色の髪を生やす麗人は、
数日前まではトリステイン学院に身を置いていた、ロングビルであった。
髪を下ろし、眼鏡を外したその姿は、身に纏う黒い衣類と相俟って、
御淑やかな学院長秘書とはかけ離れた雰囲気を醸し出している。
前述の1人の女怪盗とは彼女の事であるが、なるほどその目付きたるは、がめつい盗人に相応しくもある。

「縁を切れって、何を言い出すの? マチルダ姉さん。ティルは私達の大切な家族なのよ?」

ロングビルのすぐ隣に、これまた麗人と言わざるを得ない少女の姿がある。
その少女の特異点たるは、1つや2つ指摘するだけでは済まない。
まず長い耳は明らかに人間の備える類ではないく、それは彼女が混血なる身であるのを示している。
しかし長いブロンドヘアーは、宝石と見違えんばかりの鮮麗さを放ち、端正な顔立ちを際立たせている。
さらに胸部は布地からはみ出さんばかりに豊満でいて、
対照的にすらりとした細い肢体が、彼女の女性としての外見的魅力を、必要以上に見せつけている。
身に着る服は、肩と腋を惜しげなく露出させ(透明の衣は被っている)、腰を纏うスカート部分の両腰側面には、
大きな切れ目があるため、足の付け根に程近い肌白き太ももが、ありありと眼に飛び込んでくる。
その肌の魅せ具合は、健全なる青少年の海綿体を刺激為兼ねず、周りの目を気にしないからこその服装である。
彼女こそが、ロングビルがこのウエストウッド村に投資を重ねる起因である、ティファニアだ。

(因みにマチルダとは、ロングビルの本名であり、以降彼女の事はマチルダと記す。
 何故マチルダは、身を呈してウエストウッド村に尽くしているかの経由は、またいずれに)

化け物、そして大切な家族とは、2人の目の前にある岩山であるらしい。
カラフルな岩山の正体は、竜であった。


256:眠りの地龍
08/07/01 23:37:36 Ps5/lqB/

以前、冬の終わりかけだったか、このウエストウッドに立ち寄った際、初めてマチルダはこの竜を目にした。
これまでティファニアは、魔法を扱えるながらも、使い魔を召喚する運びには至らなかったのだが、

「呼んで欲しい、と願われたから」というよく解らない理由で召喚していた巨大なドラゴンが、これだった。
当時は、こりゃまた面倒なものを呼び出しちまったねぇ、と飼育資金面に関しての懸念は抱いたが、
あくまでサイズの大きい、えらく長く眠る竜とだけ認識し、マチルダはそのまま学院へと戻った。
しかしその後、学院での召喚儀式によって出現したゴモラを目にするや、
‘地龍の生き残り’という聞き捨てならない単語が脳裏を過り、もしやと思い‘地龍録’を読んでみた処、
あのサウスゴータの森で眠る竜と、瓜二つな地龍の解説項目を発見した時は、青ざめたものである。
「十数メイルもある大きな竜」ではなく、「十数メイルしかない小さな地龍」だったのだ。
直後にオスマンから、休暇の許可をすんなり得られたのは僥倖であった。
逸早くアルビオンへのフネに乗り、一息足りとも休む事無く、ついぞ先ほどティファニアと再会した次第だ。

紅い色の頭部から発せられる低音の唸りは、恐らく竜の鼾と考定される。
額にあたる個所が、角の様に前にのめり出す形で突起しており、
図太い首元には、まるで人工物の装甲ではないのかと見違えんばかりの、
段々に構造された硬い皮膚が覆われている。この皮膚が、3色の内の灰色をなしていた。
太い前脚と後ろ脚は、濃い青色に染め、所々に数は僅かだか小さな斑点も見られる。
大凡に見計らって、尻尾も合わせ大きさ15メイル弱程だろうか。学院のゴモラの半分以下である。
まだ成体にまでは成長し切っていないのか、さもなくば生まれて間もないのかもしれない。
しかし、1匹の生物の大きさとしては、やはり非常識であると評するに差当り支障は無い。

「いいかい? ティファニア。何故この古代の竜が、おまえに呼ばれたのかは解らない。
 だけどね、このままじゃ碌な結果を生まないよ。
 幸い、こいつはまだ夢の中。今の内にここから離れる支度をするんだ」

ハーフエルフと、絶滅したはずの地龍。嫌でも目立ってしまうこの組み合わせは、非常に芳しくない。
万が一にも使い魔の儀式が失敗していて、目覚めたと同時に暴れ狂ってしまえば、太刀打ちできる道理もあらず。
マチルダは、これまでの悪行もとい窃盗(それ自体はティファニアには伏せている)で得た資金で、
ウエストウッド村の子供達と共々、少しでもこの地龍から逃れようと算段していた。

今この瞬間にでも、巨大土ゴーレムを造り、ゴルザを不意打ちし葬ってやりたいが、
いくらなんでも妹や村の子供達の目前で、それを実行するには危険が伴う上良心も痛むし、
第一、戦闘能力が未知数の地龍を相手に、果たして自分の戦法が通じるのか、という不安要素もある。
一旦ここから身を離した後、この地龍の存在をアルビオンの政府だかアカデミーだかに匿名で知らせばいい。
危険な存在と看做され、軍に退治されるもよし、アカデミーの研究材料として捕獲されるもよし。
場合によっては、此処ウエストウッド村に戻ってこれなくなるかもしれないが、致し方なかろう。
新たなる安住の地を見つけるには、どれほどの時間を費やさねばならぬか、苦悶を余儀無くされない。

「聞いて姉さん、ティルは―」

そんな風に1人で悶々と、今後についての不安を胸に廻らせているマチルダに、
ティファニアが複雑そうな表情で、心境を伝えようとした、その瞬間。
岩山が、ピクリと動いた。

さらに、岩山から重い轟音が迸る。
それは鼾ではなく、その地龍が眠りから覚めた事を示す、欠伸の咆哮であった。


257:眠りの地龍
08/07/01 23:39:21 Ps5/lqB/

岩の様に固定されていた身体が縦に震え、地表が軋む音が、辺りに佇んでいた鳥や小動物の逃走を促した。
ゆっくりと上半身を持ち上げると、その岩のような身体の先端、紅い顔面から、2つの微光が放たれる。
その光の正体が眼球であるのが判った刹那、日光が思いの外刺激を与えたのか、すぐさま眼を閉じた。
そして、眼の下部がばっくりと穴開き、その穴から鋭い牙と長い舌を見せると同時に、
断続的な唸り声が放たられた。低く、重たい音程を轟かせるその唸りは、
大型の獣の咆哮、というよりも寧ろ男性の荒い鼾を彷彿とさせる。
眠りから自為的に目覚め、豪快な欠伸を無意識に披露している、その地龍。

「―ゴルザ!」

マチルダは再度、あの日『地龍録』で目にし記憶に刻んだ竜の名を反芻した。
忘れもしない、地龍「ゴルザ」。
立ち上がった事により、その外見の全貌が、より鮮明と肉眼で確認できる。
やはり、挿絵として描かれていたものと酷似しているし、第一「起立する竜」は、地龍以外に考えられない。

現在既存する殆どの竜は、余程の事態でも舞い降りない限り、
前脚は常時地面に付け、後ろ脚は屈折させ、爬虫類と同様4足で佇む。
求愛行動などに限り、2足で歩行する場合もあるらしいが、あくまで稀でしかない。

だが地龍は、太い後ろ脚をぴんと伸ばし、尻尾をぐでんと垂らして重心を調整することにより、
人間や猿が直立した体制と似た姿勢を、難なく常にとることを可能としている。
また、直立するにより、必然的に地面から離れる前脚は、もはや『腕』であると断言して良く、
その腕で大小様々な物を掴み、持ち上げる事ができるなど、竜としてはありえない動作をやってのける。
地龍の体の構造は、その種類によりけりだが、竜でありながら哺乳類と非常に似ているのだ
(故か、そもそも地龍は実は竜族で無く、皮膚等が特異なだけの哺乳類なのでは、という極端説が存在する)。


258:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 23:40:05 aVQEC4B/
>>234
239が言っている通り「豪華絢爛にしか生きられない」だな。
たぶん質素な生活様式してても勝手に豪華絢爛になってしまうんだろう。いろんな意味で。

そして地龍の人支援

259:眠りの地龍
08/07/01 23:41:28 Ps5/lqB/

長い欠伸を終えると同時に、ゴルザは瞼を再び開かせ、ぎょろりとした漆黒の眼をティファニア達に向けた。
まさか目覚めてしまうとは夢にも思わなかったマチルダは、血相を変え、咄嗟に杖を構えようとするが、
慌てて落してしまい、素早く拾おうと身を屈ませた寸前、ゴルザの鼻息が彼女の身を強張らせた。
マチルダにとって、その鼻息が醸す恐怖は、大砲による砲丸発射の爆音にも等しい。
杖に構うのは諦めた。先ずは、ティファニアの身を護らなければ……と、
マチルダは妹のいる方へ身を翻したが、そこに見えたティファニアの様子は、なんともはや落ち着いていた。

事の状況に驚愕としている面構えではないのは、見るに明らか。
どうやら、ゴルザが起床する現場に居合わせたのは、これが初めてではないらしい。
ティファニアは、おはようティル、と10メイル程上空にあるゴルザの顔を見上げながら、明るく声をかける。
そんな彼女と対照的に、マチルダは冷汗を垂らし、その場から1歩後退りした。
ゴルザ―基、ティルという名のそれは、見慣れない客人、マチルダを視野に入れると、
警戒心からか鋭い目つきで彼女を睨み、短く唸る。
思わず腰が抜けそうになったマチルダを、ティファニアは守る様に寄り付き、その姿勢でティルに一喝した。

「ティル! 駄目よ、この人はマチルダ姉さんよ! 前に話したでしょう!」

明らかに動揺した仕草を見せる、ティル。
鋭く光らせていた威嚇の目付きを、何度か瞬くことで緩んだ表情へと変え、
少しばかり気の弱く感じる唸り声を上げると、その巨体を数歩後退させた。
もう大丈夫よ、とティファニアがマチルダに言う。
一瞬の出来事に、マチルダの脳内が、数秒の合間真っ白な世界に染まったのも束の間、
ティファニアがこの地龍を、こうまで忠実に手懐けていた事に驚き、目を丸くした。


260:眠りの地龍
08/07/01 23:42:53 Ps5/lqB/

ゴモラがそうであるように、地龍は長期間床に伏せ、そうは起きない性質だと想定していたのだが、
このゴルザはとっくに長い眠りから覚めていた。
マチルダが地上で出稼ぎをしている合間、目覚めてしまった裂帛なる風貌を相手に、
名を付け従わせる情景を想像してみると、それに如何な勇気を注げなければならなかったか、考えるに難しくない。
ティファニアは、少なくともメンタルの部分では、マチルダの思っていた以上に逞しく成長していたのだ。
危ない喰われる近づくな、と警告するだけ無駄な気配りであろう。

しかし『地龍録』によると、ゴルザの生態的特徴は、火山地帯を住処とし、
地龍の中でも随一に好戦的で凶暴な性質だった、とある。
一説によれば、溶岩を好んで食し、栄養源に変換してしまうという、
地龍においてもかなりの常識はずれな特殊種生物であるらしいが、果たして、本当なのだろうか?
ティファニアの説教に大人しく耳を傾けている姿からは、凶暴性に関してはその名残すらも喪失している。
寧ろ滑稽さすら感じたが、火山生息で溶岩摂取を可能とする生物と同一のものとは到底思えない。

火山の、それもサラマンダーすらめったに近寄らない、溶岩を容易に口にできる程の灼熱地帯となると、
ウエストウッドの森のような緑が鬱葱と青茂る森林との環境の差は、そこに生息する生物の生態を及ぼす。
簡単且極端に例えるなら、人間は海中で呼吸できないし、魚も地上での鰓呼吸は不可能。のようなものだ。
二酸化炭素を吸収した植物達が放つ酸素濃度が、召喚されたゴルザの物質代謝に、
多かれ少なかれの悪影響を及しているとは考えられないだろうか。

百歩譲って、森の中でも生息できる理由は高い適応能力を備えているからだとしても、
ティルと名付けられたこのゴルザは、ここで何を食べているのだろうか?
森で採れる食物が、溶岩を喰らう奇想天外龍の口に合うの否かは甚だ疑わしい。
若しくはこの個体が、ゴルザそのものでなく、ゴルザと外見酷似した亜種目である可能性もありうる。
そうであってくれれば、草食であったり小食だとしても、さして疑問を抱く面倒も回避できるのだが。

ふとその時、幼い、奇声ともとれる荒ただしい声が、村から聞こえたかと思うと、
小さな影が続々とマチルダ達のいる元へ集まってきた。

それは、ティルの欠伸の咆哮を聞いて、そら起きたぞとばかりに駆け付けた子供達の姿だった。
禍々しい地龍の風貌に臆しもせず、その脚部に豪快に飛びつくと、純粋無垢なる楽しげな声を挙げ、
まるで父親だかに甘えるかのように、じゃれ惚けている。
当のティルは、さも関心を示していないかの様な、感情の読み取れない双眸で眼下を見据えてるが、
うっかり踏みつぶしてしまわないようにか足を微動だにさせない辺り、子供達を考慮しているのが窺えた。


261:眠りの地龍
08/07/01 23:43:59 Ps5/lqB/

この日何度目かの「呆気に取られている」のはマチルダである。
子供達との仲もここまで進展し、直に触れ合うとは、
俄かに信じがたい光景だが、トリステイン学院でのゴモラの人気ぶりを思い出してみると、
さりとて違和感は覚えなかった、と自分に言い聞かせたい処だが、
すぐにこの状況を受け入れるのには、やはり無理があった。

この地龍の生き残りが危険極まりないのに変わりはない。
確かによく懐いているかもしれないが、その巨体を地表に晒すだけで、
巡邏中のアルビオン竜騎兵だかに発見されてしまう可能性は大いにある。
そうなってしまうと、今まで大切に守り続けてきたこの村の秩序が崩壊するのは、瞬く間であろう。
何よりハーフエルフであるティファニアが、世間に知られた挙句忌み嫌われ、虐げられるのを一番恐れていた。

だがそのティファニア曰く、今日はたまたま地上で昼寝をしていただけで、
普段は地面に浅く身を潜らせており、大人しくしているという。
何より、この森の木々が姿を晦ましてくれるから、絶対に見つからない、とも。

「お願い姉さん、私達はちゃんとやっていけている。だから、ティルを屠るだなんて、言わないで」

マチルダの肩をぎゅっと掴んで訴えるその瞳は、いつの間にか潤んでいた。
こうまで感情移入されると、「いいえ」とは即答できない。
それに彼女達の絆は、たかが怪盗如きが盗めやしない程に、既に固く結ばれていたようだ。

「……あぁ、わかった。誰にもゴルザ……ティルのことは言出しないよ。だから、泣くのはおよし」

我が意思を捻じ曲げない、そんな妹の屈強な精神に、ついにマチルダは折れた。
金色の長髪に手を触れ、優しく告げると、彼女も内心で決意した。
こうなれば、どんな運命にだって一緒に立ち向かってやろう。何も今に始まったことではない、と。


262:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 23:47:48 eyBU5zQ2
支援
あと葛葉ライドウさん乙です

263:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 23:51:54 p26oUczc
gnomeのgは発音しないから、表記するなら「ノーム」なんだ支援

264:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 23:51:56 phdudWaf
火竜山脈へ不法投棄支援

265:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 23:52:44 tXkihgbC
人造の巨人……テラノイドか?
支援

266:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 23:52:59 SGJ/1fFQ
不法投棄イクナイ支援

267:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 23:56:08 yGHI1EK9
>>249
では、新井木を召喚して当事者達(新井木含む)も気付かないうちに救ってもらうのはどうだ?

ついでと言ってはナンだが、支援

268:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 23:57:34 phdudWaf
さるさんかな?

269:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/02 00:08:04 6G3LC6Pg
支援

270:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/02 00:08:26 0zJiQdTg
代理投下します

271:地龍代理
08/07/02 00:09:23 0zJiQdTg
 
やや興奮していたが、落着きを取り戻したティファニアは、持ってくる物があると言い、1人村へと戻った。

マチルダは、これまでの緊張を解し、ティルの足元に群がる子供達の姿を見た後、先程落とした杖を広う。
そして、地表から約10メイルにある、ティルの顔を恐る恐る見上げてみる。
眼が合ったが、その眼光から悟れるは、先の威勢は去勢し、マチルダを味方として迎え受ける感情だった。
素直に喜んでいいんだか、少し複雑な気分になったマチルダは、暫く空虚に立ち尽くしていると、
背後でティファニアの呼ぶ声が聞こえた。

いつの間にかその手には、何やら赤い果実が詰められた籠が抱えられている。
ティルとのアイコンタクトを試みている間に、取りに戻った物とはこれであるらしい。
今朝摘んだばかりの新鮮な木イチゴを、おやつに食べようとのこと。

そう言えば、昨日から不安の余り、何も口にしなかったのを思い出したマチルダは、
途端に湧いて出てきた食欲を抑えきれず、座るのに頃合いな岩を見つけると、そこに座る。
隣に腰を下ろしたティファニアが、愛くるしい笑顔で先程の籠を差し出した。
好意を受け、マチルダは籠に山盛りにされた木イチゴを1粒掴み、口に入れる。
小さな果肉を噛むごとに、甘酸っぱい香りが口内に広がり、鼻孔にも酸味が伝わった。

久し振りに食べた、懐かしい味に余韻に浸っているさ最中、
子供達の内の1人、エマが、ひょこひょことマチルダ達の元へ近寄った。
するとエマは、ティファニアに許容を得てから、籠から木イチゴを1粒手にする。
それを頬張るのかと思いきや

「いっくよー、ティル!」

と、後ろに振り向き、ティルの口元目掛け、思い切り木イチゴを放り投げた。


272:地龍代理
08/07/02 00:10:04 0zJiQdTg

しかし、年端もいかない女の子が放った弾道は頼りなく、
大して高く上がらないまま、落下の一途を辿ろうとしていた。

その時だった、立ち尽くしたままで1歩たりとも動かなかったティルが、
顎を大きく開き、上半身を素早く前のめりにさせたかと思うや否や、その木イチゴをパクリと口に入れたのは。
人間と同じような味覚器官を備えているのかも疑わしい地龍だが、木イチゴなぞ口に合うのだろうか。
吐き出す行為は見て取られない処を見ると、少なくとも毒になりはしない様だ。
それどころか、再び口を開き低く短く唸った。2つめをねだっているのか?
きゃっきゃと笑うエマを撫でるティファニアが、

「姉さん、仲直りの印に」

と、木イチゴをマチルダに渡す。
仲直り? それはつまり、こう、木イチゴを、ゴルザあいやティルの口元に投げてやれということか?
マチルダは、ままよ、と果実を放る。さすがにエマが投げたのと比べて、真っ直ぐ正確に飛んだ木イチゴを、
ティルは難なくとらえ、咀嚼を開始した。

やったぁ、と笑うエマが、マチルダに対しガッツポーズを示している。
気づいた時、マチルダも心の底から、声に出して朗らかに笑っていた。
これだけ笑ったのは、何時だかぶりだろうか。
笑い合うマチルダとエマに自然とつられたか、ティファニアも眼福たる笑顔を振舞う。

よくよく鑑みてみれば、ティファニアや子供達の笑顔に、以前よりも純粋さが増した気がしないでもない。
威嚇や警戒の意思が感じられない、呑気な呻きを鳴らしている新しい家族、ティルが、
この笑顔を齎しているのだとしたら、自分が勝手に遂行しようとした事は、愚行だったのかもしれない。

しばしマチルダは、この穏やかなひと時を、大切な人々と1匹の地龍と共に噛み締めることにした。

273:地龍代理
08/07/02 00:10:29 0zJiQdTg
以上です。

274:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/02 00:11:09 XrccGDvW
代理乙でした。

275: ◆6RW/qJehaM
08/07/02 00:21:18 bYWZTjvQ
0040時に投下しようかと

276:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/02 00:23:37 p1yNCB01
乙!&GJ!

277:絶望の街の魔王、降臨-3 ◆6RW/qJehaM
08/07/02 00:41:12 bYWZTjvQ
 ルイズは、図書館に入り浸っていた。ジルを元の場所に─異世界とかの話は信じてない
が─戻す手段を探す為に。
 誇りでできている様なルイズが、使い魔の為に奔走しているのは、数日前の、召喚した次
の日の会話と行動による。

「貴方を殺せば、私は元の世界に戻れるの?」

 使い魔か主が死ねば、契約は解除される。それから弾き出される疑問を、ただ口にしただ
けだ。
 『死ねば』ではなく『殺せば』である。流石にジルも子供を殺しはしないが、ルイズはそ
の言葉に怯えてしまった。ジルは、人を殺した事がある。直感で、それを悟ったのだ。
 無論、即答でそれを否定した。
「契約が解除されるだけで、使い魔は残るわ」
 その答えに、暫く考え込む。
「貴女は、私、いいえ、平民が使い魔である事に不満なのよね?」
 召喚された時、コルベールに抗議していた姿を思い出す。
「え、ええ」
「そして、私がいなくなればどうなるの」
「多分、契約は解除されるわ」
「その場合、使い魔は?」
「また召喚する事になるわ。使い魔が死んだ場合の話だけど」
 ジルが微笑みを浮かべる。
「利害は一致したわね」
「え?」
「貴女は普通の使い魔が欲しい。私がいなくなれば、私が元の世界に戻れば、また別の使い
魔を召喚できる」
「成程ね」
「貴女は私を元の世界に戻す方法を探す。対価として、私は貴女の使い魔をしてあげる。ど
う?なかなかの条件じゃない?」
「乗っ……らないわよ!何で私が平民の指図なんか……!」
 文句を言おうとして、封じられる。ジルに睨まれたからだ。生物として逆らってはいけな
い何か、それを感じさせる瞳だった。
「感覚の共有や、秘薬の材料集めはできないけど、護衛に関してはかなり使えるわよ」
 ジルはルイズが起きる前、見舞いに来たコルベールから大雑把な話を聞いて、使い魔の役
目を知っていた。
「そ、そう。判ったわ。貴女を元に戻す方法を探してあげるわ。感謝しなさいよ」
「そう、それでいいのよ、ルイズ」
「御主人様と呼びなさいよ」
「嫌よ。私にそんな趣味は無いわ」
 軽くあしらわれる。
「くううううう……」

278:絶望の街の魔王、降臨-3 ◆6RW/qJehaM
08/07/02 00:42:58 bYWZTjvQ
 それから、ジルは大人しく雑用をして、ルイズは図書館に入り浸る様になった。
 その次の日の授業。
 ルイズとジルが教室に入ると、ざわついた教室が一瞬、静かになる。ジルが美人だから、
それだけではない。ズタボロの状態で召喚され、その疲労と傷は一ヶ月はマトモに動けない
、そんな話を噂で聞いていた(一部の生徒はコルベールに訊いて裏を取った)のに、もうピ
ンピンとしてルイズについて歩いている。本当に人間か、と疑いたくなるのも無理は無い。
普通、サモン・サーヴァントで人間は喚ばれないのだから。
 そんな視線など知ったこっちゃないと言わんばかりに、堂々と歩を進め、席に座るルイズ
。その隣に、普通に座るジル。
 その堂々とした姿に畏怖を覚え、誰も追及する事はできなかった。
 微妙な緊張の中、ひそひそ話で静かにざわつく教室に、やがてふくよかな中年女性の教師
が入ってきた。今度こそ、全員沈黙する。
 一度、教室を見渡して、
「使い魔召喚は、皆さん成功ですわね。このシュヴルーズ、春の新学期に様々な使い魔を見
るのが楽しみなのですよ」
 更に、今度はルイズを見て、
「ミス・ヴァリエールはまた変わった、使い魔を……召喚しましたね」
 何かに気圧される、そんな気分を感じながらも、シュヴルーズは言葉を最後まで言い切っ
た。
 ルイズの使い魔にから、言い表せない何かを感じたのだ。ルイズなら威圧感、コルベール
なら殺意と表現するだろうが、本人は『余計な事を言うな』と言いたいだけである。
 この数日でルイズが蔑まれている事を知ったジルは、空気を読まないシュヴルーズに生徒
達を調子づかす発言をさせたくなかったのだ。一応、使い魔として契約したのだ、義務を果
たそうとした。

279:絶望の街の魔王、降臨-3 ◆6RW/qJehaM
08/07/02 00:44:16 bYWZTjvQ
「ゼロのルイズ!召喚できなかったからってそこら辺歩いてた平民を連れてくるなよ!」
 案の定、一人の生徒が騒ぎだす。
「なっ……」
 反論しようとしたが、ジルに止められた。
「ああいった馬鹿は、無視するに限るわ。相手にすると調子に乗るから」
 そうは言うが、その生徒とシュヴルーズにそれぞれ『黙れ、殺すぞ』『早く駆逐しろ』と
オーラを送る。
 シュヴルーズ以上に空気の読めない生徒は更に囃し立て、シュヴルーズはそれを諫める。
「侮辱はおやめなさい」
「しかし先生、これは真実です。実際にゼロのルイズは魔法がぼっ」
 生徒達は何が起きたか、一瞬判らなかった。
 先程の少年を見ると、口から赤土を掻き出していた。
「貴方はそのまま授業を受けなさい」
 残酷にも、口に赤土が大量に残っている状態で授業を受ける羽目になった。
「ね、正解でしょう?」
 と、悪戯が成功した少女の様な笑みを浮かべるジル。
 それからは、授業は順調に進んだ。一年の時の復習の様な授業で、ルイズは退屈そうに聞
いていたが、意外にも、ジルが真剣な顔で授業を聞いていた。
 やがて手本を見せ、生徒に実践をさせようと教室を見渡して、ある一人の生徒に白羽の矢
が立った。
「ミス・ヴァリエール、この小石を望む金属に変えなさい」
 教室を独特の緊張感が包んだ。

280:絶望の街の魔王、降臨-3 ◆6RW/qJehaM
08/07/02 00:44:58 bYWZTjvQ
「ミス・シュヴルーズ!危険です!」
 声の元はジルの斜め後ろ、紅い髪と褐色の肌の美人だった。キュルケだ。
「何故です、ミス・ツェルプストー?」
「先生は知らないからそんな事が言えるんです。あの威力は……」
 召喚の時の、あの威力を思い出す。大砲などメではない。上手く使えば対艦戦闘すら可能
なのだ。
 しかしシュヴルーズはそれを聞き入れず、ルイズは頭から湯気を出しながら教卓に向かっ
ていった。非常に怒っているのだ。
 ジルがキュルケを止めなかったのは、その声が本気だったからだ。
「すううぅぅぅぅ……はあああぁぁぁぁぁァァ……」
 深呼吸をして頭を冷やす。気を落ち着かせ、集中する。そして詠唱。
「錬金!」
 閃光、破片、爆風、爆炎、そして爆音。
 ジルは爆心にいたルイズの死を確信した。
 それ程の爆発だった。
 しかし彼女は生きていた。元いた場所に平然と立っていた。酷いのはシュヴルーズだ。壁
際まで吹き飛ばされ、小さな破片が刺さっている。いつもより甚大な被害に、教室がパニッ
クに陥る。

281:絶望の街の魔王、降臨-3 ◆6RW/qJehaM
08/07/02 00:46:17 bYWZTjvQ
「シュヴルーズ先生が死んだ!」
「メディーック!」
「ふざけてないで水!回復!」
「モンモン!」
「誰がモンモンよ!」
 誰も助ける気は無い様で、一つ嘆息したジルは、シュヴルーズに近寄る。軍も警察も経験
している彼女は、かなりの救急技術を持っている。バイオハザードでかなりレベルアップせ
ざるを得なかったので、外傷に関しては相当なものだ。いざとなれば、魔法より魔法らしい
『回復薬』を使えばいい。
 傷は軽い。頭を強打した痕跡は無い。純粋に衝撃波で頭を揺さぶられたのだろう。念のた
め救急スプレーをかける。火傷や傷が瞬時に消え、破片が落ちる。いったいどんな薬なのだ
ろうか?
「誰か、運ぶの手伝いなさい」
 いつの間にか静かになった教室で、ジルの声はよく通った。
「へ、平民の分際で……」
 バシュ。言葉にするとそんな音がした。傲慢な反論をした生徒の額に、筒が刺さっていた。
「ふ、ふりぇぃ……」
 数秒の硬直の後、パタリと倒れる。ホルスタに麻酔銃を戻し、教室を見渡す。
 『反論は許さない』と、その行為は如実に語っていた。しかし、名乗り出る者はいない。
「仕方ないわね……ルイズ。医療設備のある場所まで案内して」
 気絶したシュヴルーズを軽々と担ぎ上げ、ルイズに先導させる。
 残された生徒達は、その役立たずぶりにより、駆けつけたコルベールに教室の片付けを命
ぜられる事になった。

282:絶望の街の魔王、降臨-3 ◆6RW/qJehaM
08/07/02 00:47:59 bYWZTjvQ
 その日の昼食時に、トラブルがあった。
 色ボケと名高いギーシュがヘマをしでかし、そのとばっちりを受けたジルが決闘をする羽
目になったのだ。
 事の一端を担うメイドは顔を青くして逃げ、ルイズはジルに謝る様に言うが、当の本人は
知った事じゃないと言わん限りのスルーっぷりを発揮し、決戦の場ヴェストリの広場に向か
う。
 そこでルイズは今までの常識が如何に儚いかを知った。



 その騒ぎの数刻前、ちまちまと書類の処理をするオールド・オスマンの学院長室に、騒が
しくコルベールが入ってきた。
「なんじゃコル君。ノックぐらいしたらどうじゃ」
「コルベールです。すみません、これを」
 分厚い書籍を二冊と、数枚の紙を差し出す。
「ミス・ヴァリエールの使い魔に現れたルーンですが、とんでもない事が判りましたぞ!」
 鼻息荒くまくしたてるコルベールに、迷惑そうな顔をしながら、仕方ないと言わんばかり
に訊く。
「何が判ったんじゃ、コルネオ君」
「コ・ル・ベ・ェ・ル。彼女はガンダールヴです」
 本の一つを手に取り、付箋の場所を探り、そのページを開く。本の題名は『始祖の使い魔
達』。

283:絶望の街の魔王、降臨-3 ◆6RW/qJehaM
08/07/02 00:48:40 bYWZTjvQ
「真か!?」
「それしか考えられません。ルーンの形は完全に一致します」
 紙に描かれたスケッチと、本の図は、どう見ても一致した。
「やれやれ、また厄介事の種ができたわい」
「残念ですが、まだ厄介な話はあります。これを」
 もう一冊の本を広げる。
「『霞の中より現れし使い魔、この世の者に非ず。其の者、伝説を纏い、伝説を破り、伝説
となる。
其の者、不死に非ず。しかし剣も魔法も効かず。異界の理を以て、世を変える。
全ての歴史は、其の者と、禿頭の男と共に始まる。其の者、理と知恵を男に授ける。
世は変わる。しかし争いは無くならず』」
「なんじゃそれは」
「始祖の言葉でありますぞ」
 題名は『始祖の予言書』。これも幾つか付箋が挟んでであった。
「私は、これがあの使い魔の様に思えて仕方無いのです」
「考え過ぎじゃろうて」
「そうだといいのですが……後、これを」
「何じゃ?」
 紙の束を渡される。それらには、絵が描かれていた。
「彼女の持ち物です。全て合わせるとかなりの重さですが……それは置いておいて……これ
とこれとこれを」
 束から幾つか紙を選り出す。
「現物を見た方がいいですぞ。あれを造る技術は、このハルケギニアのどこにもありません
。中には素材すら判らぬ物も。この世の者とは思えんのです」
 全て、ジルの装備のスケッチであった。ジルが気絶している間に調べ上げたが、全く判ら
なかった。
「ふむぅ……」
 暫く考える素振りをして、
「コルサコフ君。これは他言してはならん」
「コルベールです。何故です?」
「暇を持て余している貴族に知れたらどうなる?また戦争じゃ。それに伝説の真相は大抵が
ロクでもない内容じゃ」
「そうですか……」
「じゃが、調査は続けておいてくれ。備えあれば憂い無し、じゃ」
「判りました」
 結論がでたところで、外が騒がしくなる。
「何じゃ?」
 オスマンの秘書、ミス・ロングビルが駆け込んできた。
「決闘です。ミスタ・グラモンとミス・ヴァリエールの使い魔が決闘を。生徒が制圧不可能
なので、教師が眠りの鐘の使用許可を求めています」
「何と、まあ……」
「どうしますか?」
「アホか。ガキの喧嘩に秘宝を使う馬鹿がどこにいる」
 コルベールの言葉にそう返す。しかし、
「オールド・オスマン。ミス・ヴァリエールの使い魔ですぞ」
 と反論される。
「そ、そうじゃった。許可する。ただし、どちらかが負傷するまで使うな。そう伝えてくれ
、ミス・ロングビル」
「判りました」
 有能な秘書は、すぐに学院長室から出ていった。
「さて、高見の見物といくかね、コルホーズ君」
「私は集団農場ですか。そうしますか」
 オスマンが杖を振ると、鏡が現れた。鏡面には、決闘の場ヴェストリの広場が俯瞰視点で
映っていた。

284:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/02 00:51:33 5kqzY1BS
魔龍伝の6話はまだ?

285:絶望の街の魔王、降臨-3 ◆6RW/qJehaM
08/07/02 00:52:04 bYWZTjvQ
以上で終わりです。

ジルが召喚されたことにより世界が変わっていく予定です。


286:ゼロの魔龍伝 ◆DQUn79OCQE
08/07/02 00:55:01 bJxYzy6M
バイオの人乙

>>284
投下しようと思ったら人が続いてたのでしばらく様子見してました
このレスの10分後に投下します

287: ◆6RW/qJehaM
08/07/02 00:56:56 bYWZTjvQ
期待

288:ゼロの魔龍伝6話 1/5 ◆DQUn79OCQE
08/07/02 01:06:24 bJxYzy6M
6.ブルドンネ街

決闘から三日、ルイズの周囲は少しずつ変わっていった。
まず表立って馬鹿にする生徒が少なくなったのである。
メイジについて表す言葉に「メイジの実力を見るなら使い魔を見ろ」というのもあり
「ギーシュのゴーレムを圧倒的かつ一瞬で葬り去ったのはルイズの使い魔」
という衝撃的事実はあっという間に学院内を駆け巡っていた。
元々魔法以外の成績はトップクラスであり、家系もトリステインの中では相当に有名な部類に入るので
「あのルイズがとうとう」と感心する者もいたという。
「どうせ嘘に決まっている」「ルイズが凄いのではなく使い魔が凄い」
人づてに話を聞いた者や、ルイズを侮蔑目的でからかっている心無い者もいたものの
決闘の当事者であるギーシュとルイズ、更にこの決闘を見ていた彼女らのクラスメートも多く
何より使い魔の名前が「ゼロ」であったためルイズのクラスでは「ゼロ」とルイズを馬鹿にする者は一人もいなくなった。

「アンタが名前をゼロゼロ言うから私の二つ名が“ゼロ”のままじゃないのよーーーーーーー!!!!」

当人はこんな感じで相変わらずご立腹であったが。


「買い物に行くわよ」
その日の夜、ルイズから提案があった。
話によると明日は休日にあたる虚無の曜日なので街へ買い物に行くとの事らしい。
「それで、アンタの寝具と…剣ね、それを買うわ」
「…どういう風の吹き回しだ」
「あんたがボロっちぃマントで寝てるのがみっともないからよ!
使い魔の管理をするのも私の仕事!それに…私が受けた決闘で剣、壊しちゃったみたいだし…」
今までの待遇からするとあり得ない提案とちょっとしおらしくなった言動に疑心暗鬼になるゼロ。
この娘の事だ、何か物を買わせてまた雑務を押し付けるに違いないと彼は思ってしまった。

「物で釣っても俺は着替えの手伝いもしないし顔は洗わんからな」

使い魔が出来て色々と雑務をさせようというルイズの企みは事実失敗に終わっていた。
呼び出して2日目の朝は何とかなったものの、それ以降は着替えと洗顔に関しては
「そのぐらい自分でやれ」と断固として断られたのだ。(水は朝の鍛錬のついでに汲んでくれているようだが)
更に部屋の掃除と洗濯は率先してシエスタがやるようになってゼロをこき使う機会も無くなってしまった。
着替えと洗顔をやらないなら飯を抜こう、とは思い立ったがシエスタの話では
決闘で気を良くした厨房の人達がご飯を出してくれており、ゼロも
「俺の飯と、シエスタがルイズの世話をしている礼だ」
と薪割りや物の持ち運びなどの力仕事や使い魔への餌やり(使い魔達がゼロに妙に懐くかららしい)を
行っているので「言う事聞かないから飯を抜く」とはとても言い出せなかった。
しかし決闘で見事圧倒的な力の差を見せ勝利した使い魔、
褒美で何か買ってやろうという気持ちも無い訳ではなかった。
それがゼロの一言で見事に打ち砕かれた。
ゼロの鈍感な言葉にルイズの心に火が灯り、それは徐々に炎を形作る。

「あー…っそ! アンタ異世界から来たなら当然この世界のお金ってのは持って無いわよね?」
「そういえば…そうだな。元々流浪の身だから手持ちは殆ど無かったが…」
「いくら強くても騎士たるもの、剣を持ってないと駄目よねぇ…!」
「確かに…いや、向こう側にいた頃のように魔物を退治をして路銀を…」
「私がそんな事許可すると思う?それより何より、アンタの種族はこの世界でアンタだけ。
信用されるどころか下手すると魔物扱い、追う筈が追われる立場にねぇ…」
「くっ!」
この世界での路銀と、決闘で使い物にならなくなった剣の調達。
食事と寝床が保障された学院に数日いたおかげでそこまでゼロの考えが回っていなかった。
実を言えば雷龍剣には剣を使わない技もあるのだが、的確な指摘をされたゼロは
すっかりルイズのペースに呑まれてしまいぐうの音も出なかった。

289:ゼロの魔龍伝6話 2/5 ◆DQUn79OCQE
08/07/02 01:07:21 bJxYzy6M
「まぁ、別に物を買い与えて働けって訳じゃないのよ?
私は決闘ですっごい活躍したゼロになんか買ってあげようかなーって思っただけ。
でも、そう思ってたのにガンダムが「物で釣っても働かない」って勝手に決めつけちゃって…」
「ぬぬ…」
「あー傷ついたなー、ご主人様すっごい悲しいなー」
あからさまな演技なのは分かっているのだが、もはや言い返す言葉が見つからないゼロ。
彼女が「あの言葉」を要求しているのは何となく感じてはいるが自分の意地がそれを言わせまいとしていた。
「ガンダムがもうちょっと素直ならねぇ…」
「(迂闊に疑ってしまった俺にも非がある… 仕方が無い、背に腹はかえられん…)」

「疑り深くなって…すまなかったな、ルイズ」

「もっと分かりやすく簡潔に」
「何?」
「反省しているんでしょ?じゃあもっと分かりやすい言葉がいいわ」
ルイズの顔はとてもにんまりしていた。
しかしそれはクックベリーパイを前にした時のような無邪気なものではなく、
何か黒いものが奥底にあるような邪悪なにんまり顔。
その顔を前にゼロはその言葉を言わざるを得なかった。

「……ごめんなさい」
「よろしい、じゃあ明日はお買い物ね」

ルイズ、召喚して以来初めてゼロより優位に立った瞬間であった。


「…プフッ」
「何がおかしい」
明くる朝、魔法学院前の正門前。
馬に乗ったゼロを見てルイズは思わずちょっと吹き出していた。
ゼロの身長こそルイズよりも大きいとはいえ、ゼロの頭身は大体2.5~3頭身であり
馬に乗っているゼロの姿はルイズの目にはなんともユーモラスに映っていたのだから。
「何でもないわよ……ックク」
「昨夜か!?昨夜のアレか!?俺はもう謝ったぞ!」
「じゃあ私が先導するから付いてらっしゃいな」
「おい!」
昨夜のやり取りの事かと思ったゼロが話しかけても、どこ吹く風といったルイズは
ゼロをよそに楽しそうに馬を走らせていった。


ブルドンネ街、トリステイン王国で一番の大通りである。
休日で人がごった返すそこを窮屈そうに歩くルイズと、それに付いてくる
フードを目深にすっぽり被った何か…もといゼロ。
何があったかというと、街に近づくちょっと前に馬を止めたルイズから
「ゴーレムにしてはかなり例外な見た目だし喋るから目立つわよね…」
という懸念から来る提案で表向きは「自分で喋る珍しいゴーレム」という扱いで行動することになった。
無論ゼロも余計な騒ぎは好かなかったので
「ルイズにしては中々真っ当な考えだな」
と彼女に蹴りを入れられるような感想を返しつつ素直に承諾した。
街の入り口にある駅で馬を預けた時も最初は駅の者に珍しい目で見られたが
それだけだったので一安心で街へを繰り出せたのである。

「ん~と、確かこの路地を入って……四辻を抜ければ近くに武器屋だったかな…」
記憶を辿りながらルイズは人ごみを外れて街の裏路地へと入ってゆく。
建物の間に位置する日の差さない路地は昼間でも薄暗く、そこらに汚物やゴミが散らかっており
ゴロツキやならず者の溜まり場になっていた。
昼間はそこまでたむろしている訳でもなく、壁にもたれかかったり地べたに座ってる者が
ほんの少しいるぐらいでここを通るルイズとゼロを一瞥するとまた視線を元に戻していた。

290:ゼロの魔龍伝6話 3/5 ◆DQUn79OCQE
08/07/02 01:09:04 bJxYzy6M
「おいお嬢ちゃん」

が、もうすぐ四辻に出ようという所で道端に座っていた男に声をかけられてしまった。
そいつがすっくと立ち上がって前に立ちふさがると同時に、後ろからも男が三人ほど
こちらに向かって歩いてきておりちょうど挟まれた形になる。
「…ちょっとそこを通して欲しいんだけど」
「通して欲しいってかお嬢ちゃん!げひゃひゃひゃ!」
前にいる男の片方が卑下た笑いをし周りの男達もニヤニヤと笑いを浮かべる。
しかめっ面で対峙しているルイズをよそにゼロは男達の観察をする。
後ろから来た男達はちらつかせてはいないものの腰元に短剣をぶら下げていて
いつでも抜けるような態勢になっており、前の男はというと何も持っておらず
腰にも何かぶら下げている様子は無かった。
「(……後ろ三人はともかく前の奴は何も持っていないな、一体どういう事だ?)」
「ここは俺達の縄張りって奴でな、通る奴には通行料を頂いてるんだ」
「で、いくらたかろうってのよ」
「お嬢ちゃん可愛い見た目して言い方キツいねぇ、じゃあ金貨20枚って所だな」
ルイズが買い物に持ってきた金額は新金貨300枚。ルイズが200枚、ゼロが100枚持っており
出せない金額ではないもののカツアゲとあっては貴族のプライドが黙ってはいなかった。
「ゴロツキに出すものは何も無いわ、そこをどきなさい」
いつもの調子でルイズが言い放つとやはり男達は卑下た笑いを浮かべた。
「よぅし分かった、じゃあ払わない場合どうなるかご覧頂こうか」
前に立ちふさがる男が後ろのズボンをまさぐると短い棒―即ちワンドを取り出した。
「悪いが俺はこのブルドンネの裏通りじゃちょいと有名でね」
そう言った片方の男がワンドを壁に向け呪文を唱える。
小さな炎がワンドの先に発生しそれは膨れてあっという間に火球へと変貌してゆく。
ファイヤーボール、火球を発生させそれを放つ火系統の魔法である。
杖を向けた瞬間から身構えるルイズとゼロに余裕ありげに男が話す
「おっと今は当てないから大丈夫、い・ま・は」
そう言うと発生した火球が二個、三個と増えてゆく。
「兄貴を怒らせると痛い目に遭うぜぇ!」
「何せトライアングルだからな兄貴は!治療が追いつかねぇほど爛れちまうかもなァ!」
「悪いが後ろへ逃げようとしても、呪文を唱えようとしても、俺達がブスリ!といくぜぇ…」
後ろにいた男達が腰の短剣を抜いて構える。
「(ゼ、ゼロに何とかしてもらわないと…って剣使えないじゃない!
壊れたからって学園内に置いてきてたんだった!でも壊れてるからあの技は使えないんだし
持って来てもしょうがないって言うか…えーっとえーっと…)」
目があちこちに泳ぎどうしようもないルイズの様子に「カモれる」とふんだ男達がにじり寄ろうとしていたその瞬間であった。

「お待ちください!我々とて争いは好みません、金貨はお支払いしますので
袋から金貨を取り出すまでお待ちいただけないでしょうか!」

ゼロは確かにそう言い放った。
それを聞いて唖然とするルイズと、話がまとまったと思い返事をする男。
「従者さんは賢い事で!おい、お前らそこで止まっときな!何か怪しい素振りをしたら俺が始末する」
「ちょっと!何言っ…」
「お嬢様申し訳ございません!ここはひとつ彼らに!」
ゼロはそう言うとルイズの手を掴み引き寄せる。ファイヤーボールが周囲を照らしているものの
薄暗い場所なので鼻先まで近づかないと深くフードを被ったゼロの顔は見えない。
鼻先までゼロの顔が近くに来た時、小声でゼロが喋った。
「いいか、俺が合図をしたら後ろの三人の男の誰でもいい、手に持ってるナイフを錬金してみろ」
「いきなり何なのよ、そこまで正確に狙いつけてやった事無いし」
「これも経験だ、前のメイジは俺がやる」
「アンタ剣無いじゃない」
「心配するな、手はある」
「手だけあってもしょうがないじゃない!」
「そういう意味の手じゃない!」
「おい従者さんよぉ!いい加減早くしてもらえねぇかなぁ!何なら従者さんから先に焼いちまってもいいんだぜ!」
「申し訳ありません!早速お金を…」
「とにかくお前を信じてるからな」と言いルイズの前に立ち金貨の詰まった袋を前に掲げる。
ひゅぅ、と男が袋を確認しゼロ達に向けていた杖を下ろしたその時。

291:ゼロの魔龍伝6話 3/5 ◆DQUn79OCQE
08/07/02 01:10:19 bJxYzy6M
「今だ!」
ゼロの袋を持ってない空いた片手が男の方に向くのと、ルイズの杖が後ろの男達に向いたのはほぼ同時だった。

「錬金ッ!」
「雷電破(サンダーエレクトロン)!」

ゼロの手から稲妻が男に向かって迸る、それは杖を向きなおした男にとってあまりにも早すぎる攻撃であった。
火球を飛ばす間もなく稲妻が男の体を貫き、火球が虚しく掻き消えながら男が崩れ落ちる。
ルイズの錬金は狙いを外す事無く、見事真ん中の男のナイフに作用しいつもの失敗のようにナイフが爆発した。
「武器屋に走るぞ!」
「う、うん!」
ゼロの呼びかけにルイズが走り二人はその場を走り去ってゆく。
倒れた男の手に持っていた杖が走ってゆく二人に踏まれ、虚しく軽い音を立て割れた。

余談だが、そのほんの少し後に爆発音に気づいた通行人が様子を見に行った所、気絶している男と
何かに吹き飛ばされたかのように壁に打ち付けられて気絶した煤だらけの男三人が発見された。
男達は「貴族のガキとフードを被った従者にやられた」と証言しているものの
ここらへんで顔の知れたゴロツキであるのと証言のみで信用に乏しく、この件に関しては
「内輪もめの喧嘩」として処理されたそうだ。

閑話休題

ゼロとルイズは何とか武器屋の前まで辿り着いていた。
周囲を見回しているゼロに対し、恐らくはあまり運動をしていないであろうルイズは
すっかり息を荒くしており肩で息をしていた。
「…この様子だと奴らは全員気絶していると見て間違いないだろうな、上手くやったな」
「アンタ…さっき…かっ……雷を…ぜぇ…手から撃ってなかった…?」
「あれも雷龍剣の技だ。まぁかなり加減はしてあるが」
「なんなのよもう…なんでもありじゃない…」
「しかしこれぐらいで息が上がるとは鍛えが足りないな、少し運動しろ」
「う…うっさ…い!」

「店の前で何だいあんたら!買うなら買うでさっさと入りな、冷やかしならさっさと…」
「買うわ!買うわよ!」

いつの間にか武器屋の入り口に立っていた五十がらみの男が、パイプを片手にうっとおしそうに二人へ話しかけてきた。
しかし勢いよく買うわと答えながら振り向いたルイズの胸に紐タイ留めに描かれてある五芒星を見て

「これはこれは貴族様でございましたか!」

と、彼はころっと態度を変えつつ、もみ手しながら二人を店まで案内したのであった。


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