08/06/02 22:02:51 Z5Ji40uz
「両軍ごくわずかの犠牲をもち、この無意味な戦いを終結とする」
曹操の宣言は、戦場近くを飛んでいたワルド達の耳にもしっかりと届いていた。
彼等は目撃していた、砂塵の中からクロムウェルの死骸が現れる瞬間を。
ワルドは聡明な男である。
しかし今回ばかりは聡明である事が災いした。
かれは聡明であったが故に、レコン・キスタがクロムウェルの私兵に近い烏合の衆である事に気づいていた。
クロムウェルという名の最高責任者が消えれば、とたんに崩れ始めるだろうと予測していた。
もしもワルドの内通を知る者がクロムウェルただ一人ならば、ルイズの口を封じて何事も無かったかのようにトリステインに戻るという手もあった。
しかし現実には彼の内通を知る者は何人かおり、レコン・キスタが無くなるのであれば、
少しでも責任を逃れるために自己の知りうる全てを喋る者は必ずいるだろう。
つまりワルドが反逆者として処刑されないためにはレコン・キスタの存続が不可欠で、
レコン・キスタの存続にはクロムウェルの存命が不可欠で、
そのクロムウェルは最悪のタイミングで殺害されてしまったのである。
ワルドは追いつめられない限り冷静さを失わない男だったが、予定外の事態に遭遇するとすぐに冷静さを失う悪い癖があった。
その結果、彼は逐電逃亡を決断するのにほんの僅かばかりではあるが時間がかかり、それが後に偶然かつ突発的な戦いが起こる事となる。