あの作品のキャラがルイズに召喚されました part134at ANICHARA
あの作品のキャラがルイズに召喚されました part134 - 暇つぶし2ch2:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 14:34:07 PEmOem56
以上、テンプレ終わり。

3:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 14:39:10 CHoT2I0c
>>1乙ー

4:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 14:42:20 AQVP0hxm


5:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 14:54:38 lU+pmzDf
乙!
このぐらいまで…以下略

6:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 15:01:55 015lm6Y9 BE:992218368-2BP(30)
>>1

そして何気に>>5も乙
次からこうしようか。

7:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 15:04:07 hKi5K5YS
乙言主

8:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 15:33:06 J3Wbc/ly
乙。

そしてこれはオイラからのプレゼントだ。
自分も書いてみたいけど、文章力が・・・
という人は一度覗いてくる事をオススメする。
そして、より強く「書きたい!」という気持ちになって帰って来る事を期待している。

やる夫が小説家になるようです
URLリンク(urasoku.blog106.fc2.com)

完結:やる夫が小説家になるようです
URLリンク(urasoku.blog106.fc2.com)

やる夫が「売れっ子」ラノベ作家を目指すそうです
URLリンク(urasoku.blog106.fc2.com)

やる夫が同人小説家になるようです
URLリンク(urasoku.blog106.fc2.com)

9:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 17:01:55 gJPmgFVM
ルールじゃないけどマナー上しておく方が良い事・システム上の注意事項
投下時はタイトルをコテハンとする、トリップ推奨
予告でクロス元他必ず説明する(一発ネタ等でばらすと面白くないならその旨明示)
 ※過去「投下してもいい?・投下します」等の予告から
  最低の荒らし投稿を強行した馬鹿者が居たため同類認定されるリスク極大

1時間に一定量超える投下は「さるさん」規制に遭うので注意
連投規制には有効な支援レスもこれには何の役にも立たない
文章量(kB)と分割予定数の事前申告をしておけば、規制に伴う代理投下をしてもらいやすい
投稿量カウントも規制も正時(00分)にリセットと言われている
他スレでの実験により規制ボーダーは8.5kBらしいという未確認情報あり


10:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 17:20:07 mIQmDGNc
皆さん乙です。余計なテンプレもどきが無いだけできれいに見えるなぁ

11:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 17:52:40 sHZi4waE
●     「こっ、こっ、こっ、こっ、こっ、この…バカ犬っ!!!」
┠~~~┐ちゃんとここにいてぇ、わたしのちかくでぇ
┃  ●  ∫ ずっとわたしをい~んつもい~んつもみ~んつめてなぁさぁ~い
┠~~~┘  よそみしてたでしょ、ほかのおんなのこぉ~
┃         おしおきするのふぅ~らりふぅ~らりふぅ~らちなやつうは
┃          (ん、ちゃちゃちゃちゃちゃちゃ)
┃           どんたーちきかないからねいーいーわ~けは
┃            たちみーつ~んかれたかぁ~ら
┃             ね・え・かたをっかしてよっ
┃              す~き~よ~ンなんてうそ~よっ
┃               き~ら~い~ンこれもうそだわん
┃                ないないないぃだめよかんちがいぃ~~~~~っ
┃                 だからすぅきぃよっなんていわない
┃                  のんのんのんどっこかへいったら
┃                   ぜえったいにっゆるさないからねぇ~~~~ん  ・・・だぁって
┃                    ほんと~はだれ~よ~りそンばンにンいンたあ~いの
┃                     あ~い~の~く~さ~り~でっさんっぽっしましょ
敬礼 (`・ω・´)ゞ

12:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 17:55:24 hVY8JOGh
乙 >>1は褒美にハシバミ草サラダ食い放題だ

13:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 17:58:24 dcT3DIM+
>>1

そういやSNK関連のキャラクターって召喚されてないね
京、庵、テリー、ロック、K'、その他諸々
どれをよんでも結構面白そうだけど

14:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 18:10:05 mnBuPrSv
このぐらいまで単純化できそうな気がする。

爆発召喚
キス契約
「ゼロ」の由来判明(教室で爆発)
使い魔の能力が明らかに(ギーシュ戦)
デルフ購入
フーケ戦
舞踏会

最近はその流れでいかに飽きない話を作るかに凝りがち>>16

爆発
平民プゲラ
コルベール問答無用さっさと汁
キス契約
フライに唖然とする
説明はぁどこの田舎者?
何者であろうと今日からあんたは奴隷
二つの月にびっくり
洗濯シエスタと接触
キュロケフレイム顔見見せ
みすぼらしい食事厨房でマルトー
教室で爆発片付け
昼食シエスタの手伝い香水イベント
オスマンコルベール覗き見
ギーシュフルボッコ場合によって使い魔に弟子入り
キュルケセクロスの誘いしかし使い魔はインポテンツか童貞w
ルイズ寝取られの歴史を切々と語る
休日街でデルフ入手 キュルケタバサがついてくる
ルイズが爆破訓練宝物庫破壊フーケ侵入お宝げっと
この段階でフーケは絶対つかまらない
翌朝捜索隊保身に走る教師一同
教育者オスマン犯罪捜索を未熟な子供にマル投げ
小屋で破壊の杖ゲットフーケフルボッコしかし絶対死なない
オスマンから褒章 舞踏会 終わり

15:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 18:10:32 mnBuPrSv
姉妹スレ一覧

【アニキャラ総合】
【ジョジョ】ゼロの奇妙な使い魔【召喚80人目】
スレリンク(anichara板)l50

ソードワールドのキャラがルイズに召還されました
スレリンク(anichara板)l50

ダイの大冒険のキャラがルイズに召喚されました
スレリンク(anichara板)l50

ハガレンのエドがルイズに召喚されたようです
スレリンク(anichara板)l50

型月のキャラがルイズに召喚されましたpart5
スレリンク(anichara板)l50

【カオス】ゼロのルイズが以下略【召喚70002人目】 SEED
スレリンク(anichara板)

【漫画サロン】
HELLSINGのキャラがルイズに召喚されました part6
スレリンク(csaloon板)l50

【旧シャア専用】
ガンダムキャラがルイズに召還されました 2人目
スレリンク(x3板)
(『もしルイズが召喚したのがトレーズ様だったら』の次ぎスレです)

【エヴァ】
もしルイズが召喚したのがシンジだったら 第弐話
スレリンク(eva板)l50

各スレまとめ一覧

ゼロの奇妙な使い魔 まとめ
URLリンク(www22.atwiki.jp)
ゼロ使×型月クロスSSスレまとめwiki
URLリンク(www13.atwiki.jp)
ハガレンのエドがルイズに召還されたようですまとめサイト@wiki
URLリンク(www34.atwiki.jp)
新世紀エヴァンゲリオン×ゼロの使い魔 ~想いは時を越えて~@ ウィキ
URLリンク(www10.atwiki.jp)

16:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 18:11:19 mnBuPrSv
157 :削除申請:2008/02/14(木) 20:56:50 ID:kMFXiYvI
管理人様
以下自作品の削除をお願いします。
(本人証明として、自ブログの方も削除致しました)

長編:1編
「ゼロのgrandma」
短編:2編
「色鮮やかな空へ」
「四系統だけど」

色々とご迷惑をお掛けしました。以降、忘却願います。






夜天の使い魔 第一部
夜天の使い魔 第二部

URLリンク(rein4t.blog123.fc2.com)


17:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 18:23:03 eZ2YRe0O
またか このクズ野郎

18:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 18:30:43 lU+pmzDf
ID:mnBuPrSvはいらない子

19:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 18:36:32 mIQmDGNc
>>14
死んじゃえ

20:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 18:40:33 yM6G42uo
>>14
> このぐらいまで単純化できそうな気がする。
>
> 爆発召喚
> キス契約
> 「ゼロ」の由来判明(教室で爆発)
> 使い魔の能力が明らかに(ギーシュ戦)
> デルフ購入
> フーケ戦
> 舞踏会

途中飛ばすけど、

 対7万戦と再召喚(一度使い魔契約が切れ、まっさらな状態からルイズとの関係を再構築)

を追加で。

21:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 18:51:37 CdbaGpcG
即消去即NGID

22:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 19:31:19 jucIRtAc
>>8
これすごく面白いな

ところでwikiでどの作品がどれだけ読まれてるか表示したら面白いんじゃない?

ある程度の差別化や淘汰は良作を生むのに有効だと思う

23:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 19:34:59 wLQGmme3
>>22
ここの住人が自演しないと思うか?

24:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 19:38:38 5lboifkB
>>14
今日は書き込むのが少し遅かったんですね^^
こんな時間まで寝てたんですか^^;

25:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 19:39:00 47JwOEi7
>>22
トップページのカウンターなら知ってるけど
ページ別のカウンターの文法はしらんなぁ

ip丸見えの投票じゃだめなのか?

26:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 19:40:37 qrilXsDW
>>24
せっかく透明あぼ~んしてるのにアンカーつけないでくれ……

27:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 19:41:21 H4Wbj8xS
ID:mnBuPrSvは偏執狂

28:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 19:48:12 47JwOEi7
・・・

【レス抽出】
対象スレ: あの作品のキャラがルイズに召喚されました part133
キーワード: mnBuPrSv


937 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2008/05/07(水) 12:31:02 ID:mnBuPrSv
空の境界から橙子
なのはからフェイト
の二人を召喚するSSを昼休みに思いつきました。
家に帰って夜9時ごろに投下するので予約しときますね。


▼ 938 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2008/05/07(水) 12:39:06 ID:wLQGmme3
>>937
型月は禁止

▼ 940 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2008/05/07(水) 12:50:52 ID:AQVP0hxm
>>937
空の境界はタイプムーン関連作品だから
>>6にリンクがある姉妹スレにしとけ。

多重クロスなら避難所への投下が無難だぞ。

▼ 941 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2008/05/07(水) 12:56:35 ID:KXa5lq2o
>>937
多重クロスな上に型月か
死ねよ

29:よし燃料だ
08/05/07 19:52:09 F3c5RByX
種癌から切羅・大和

「仕事しろよ」
「ぼくは、ぼくは・・・うぅ」
(物凄く暗い平民だなぁ・・・)

ギーシュに相手にされず姫様襲来まで原作イベント全スルー
「アルビオンまで行ってほしいの」
「はい、レディアン」
「ぼくは、とりかえしつかないことを ・・・うぅっ」
秘薬でトリップしている大和少年を無視してストーリーは進む

そして夢遊病者のように徘徊した大和少年はある日、タバサの部屋に入り
机の上にあったナイフ(地下水)でリスカを試みる

「・・・駄目だ、コーディネーター脅威の回復力ですぐに傷が塞がってしまう。欝だ死のう」
「おいまてよ」
「ああなんてことだ、幻聴が聞こえてきたよ」
「切るなら頚動脈にしろよ」
「死神の声が聞こえる・・・ニコル」
「ニコルじゃねえよ地下水だよ」
「カズィ」
「死んでねえよ」
「トール」
「そうそうトール・・・ってちがーう」

「姫様」

30:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 19:58:22 WGhno9aI
GWは終わったのに何か沸いてるね









31:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 19:59:06 cQY8KSKp
>>29
もっとふさわしいスレがある

ガンダムキャラがルイズに召還されました 2人目
スレリンク(x3板)

32:使い魔はじめました ◆xq/C1v8U32
08/05/07 20:32:54 XJA8laG6
こんばんは、投下よろしいでしょうか?
8時40分くらいから始めさせていただきたいと思います


33:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 20:35:36 gX5K3eVD
型月作品以上に危険アラレちゃんとのクロスが見たぜ
ドラえもん有る意味危険かな

34:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 20:38:27 nw/XSytS
しーえん

35:使い魔はじめました ◆xq/C1v8U32
08/05/07 20:39:28 XJA8laG6
では、投下させていただきます

使い魔はじめました―第六話―

教室で爆発の起きた2時間後、目を覚ましたシュヴルーズは、
魔法を使わずに教室を片付けるよう命じた
「まったくもう、ゼロのルイズと来たら!」
「いい加減にしてほしいものだ!」
同級生達はざわざわと騒ぎながら、教室を出ていく
後に残ったのは、ルイズとサララ、そしてチョコだけである
「……はぁ……」
机を拭いているルイズがすっかり落ち込んでいる様子なのを、
サララはちらちらと横目に見ていた
「……分かったでしょ、私が『ゼロ』って呼ばれるわけ……」
どうやら自身が魔法を使えないことがバレたのにショックを受けたようだ
「私、魔法が使えないの。何をやっても、爆発しちゃうのよ……」
そうしてまたがっくりと肩を落としている
「ねえ、サララ。あなたも、魔法使えないのよね?」
サララに向き直ったルイズは、哀しげだった
その言葉に、サララは頷く
自分も、何度も魔法を使いたいと思ったことがある
だから、ルイズが苦しいのも哀しいのも、よく分かる、と返答する
「……そう、よね。……こんなこと言っちゃ駄目かもしれないけど、
 あなたがいてくれてよかった。……あなたは、分かってくれるものね」
今まで、自分と同じ苦しみを共有してくれる人は居なかった
厳しく接する母と姉、優しくしてくれる下の姉
けれど、彼女達は決して自分の苦しみを共有してはくれなかった
自分と同じ、魔法の使えない魔法使いであるサララが、
この苦しみを分かってくれる、馬鹿にしないでくれる
それが嬉しくて、ルイズはほんの少しだけ微笑んだ
ルイズは笑っている方が可愛いな、とサララも釣られて微笑んだ
しかし、それにしたってルイズは随分とひどい格好だ
爆発のせいで、全身煤だらけだし、服も何箇所か破れている
ここは自分が片付けておくので、チョコと一緒に部屋に戻り、着替えて、
ついでにそろそろ昼食の時間なので食堂に行った方がよくないか、と告げる
「そう? ……じゃあ、お願いするわね。おいで、チョコ」
サララに謝ると、ルイズはチョコを連れて教室を出て行く
この時、ルイズもサララもは気がつかなかった
普段ならうるさいくらいのチョコが黙りこくっていることに

36:使い魔はじめました ◆xq/C1v8U32
08/05/07 20:40:28 XJA8laG6
着替え終わったルイズは、チョコを連れて食堂へ向かう
だが、着替える間も教室から食堂へ向かう今も、
黙ったままで、トボトボと歩いているチョコが気にかかる
「ねえ」
「……」
呼びかけてみるが、俯いたまま、返事をしない
「ねえってば」
「……」
やはり、返事がない
思わずイライラしたルイズが、チョコの首根っこを掴み上げ抱きかかえる
「ちょっと、返事くらいしなさいよ!」
「わわ!」
いきなり抱きかかえられ、チョコは驚いたような声を上げる
「どうしたのよ、あんた。いつもならギャアギャアうるさいのに、
 さっきから、すっかり黙りこくっちゃって」
ルイズのその言葉に、青い瞳を伏せたまま、チョコが言葉を紡いだ
「……やっぱり、辛い?」
「え?」
チョコの言葉にルイズは何のことだ、と首を傾げる
「……魔法が、使えないの。他の人みたいに、魔法が使えないの」
「え、ええ……。……どうしたの、チョコ?」
控えめに返事をしたルイズに、チョコは告げる
「ボクの、せいなんだ」
チョコの声が、わずかに震えていた
「サララが、魔法使えないのは、ボクの、せいなんだ」
「あんたの、せい?」
「……ケガして、弱って、捨てられてたボクを、サララが助けてくれたんだ。
 ボクが可哀想だから、サララはボクをパートナーに選んでくれた。
 ボクには、魔法媒体としての才能がない。だから、魔法が使えない。
 ボクは、足のケガのせいでホウキに乗ることができないから、
 空を飛ぶことを助けても、あげられない。だから、空も飛べない。
 ……けど、今までは、ちっとも、そんなことが辛いって、
 サララが、言わないから、平気なんだって、思ってたんだ」
チョコがポロポロと涙をこぼし始める
「でも、さっきサララは、自分も魔法を使いたかったって、言った。
 魔法が使えないルイズの苦しみや哀しみが分かるって、言った。
 それは、サララが苦しかった、哀しかった、ってことなんでしょ?」
涙ながらのチョコの叫びに、ルイズは脳天に雷が落ちたかのような衝撃を受けた
サララは、魔法が使えなくても不平不満を言わなかった
魔法が使えなくても、自分なりに懸命に生きてきたのだ
そんなに強い心を持った彼女を、自分は使い魔にした
彼女に相応しい主に、パートナーなれるだろうか
召喚したことに、ちゃんと責任を持てるだろうか
小さな命を救うために、どんなに辛くても苦しくても、
魔法を使えない道を選んだ彼女のようになれるだろうか
ここは任せてくれ、と言った小さなサララの姿が、
母や姉達のようにずっと大きな姿に見えてくる
「……大丈夫よ、チョコ」
腕の中のチョコを強く抱きしめる
「魔法が使えなくても、サララは、笑っていられるんだもの。
 あなたのパートナーは、それだけ強いってことじゃない?
 だからきっと、めそめそしてたら笑われちゃうわ」
「……うん、そうだよね」
その言葉に、チョコも少し生来の元気を取り戻したらしい
「さ、ご飯にしましょ? きっと、お腹が空いてるから、
 後ろ向きなことばっかり考えちゃうんだわ!」
ルイズは、思い切り微笑むとチョコを抱えて走り出した
魔法が使えなくても笑っていられる、サララのように、
笑うことから始めよう、と決意して、ルイズは食堂へと向かった

37:使い魔はじめました ◆xq/C1v8U32
08/05/07 20:41:30 XJA8laG6
一方のサララは、教室の片付けをある程度終えて一息ついたところだった
しかし、困ったことに新しい机や椅子を運びこむことはできても、
天井に刺さった破片を片付けたり、新しいガラスをはめ込んだりするには
いかんせん、サララの身長が足りない
こんなことなら、せめてそれだけでもルイズにやってもらうべきだったかなぁ、
と、思いながらサララはガラスと天井を交互に見つめていた
「あら、どうかなさいました?」
教室の扉を開けて入ってきた一人の女性がそんなサララに声をかけた
ここの教師の一人だろうか?と首を傾げる
そんなサララの表情を読み取ったらしい女性が自己紹介を始める
「はじめまして。ロングビルと申します。
 学院長であるオールドオスマンの秘書をやっておりますの」
にっこりと微笑んだ彼女に、サララも微笑を返す
ただ、彼女は油断ならないな、と商人としての直感が告げていた
「ミス・ヴァリエールが片付けをしているので、様子を見てくるように、
 と言われたのですが……ミス・ヴァリエールは?」
ルイズはサララの助言に従って、着替えるために部屋へ戻り、
おそらく既に食堂へ向かっただろうことをロングビルに説明する
その説明の後、教室をぐるりと見回し、天井の破片と
はまっていないガラスに目をやった彼女は笑った
「……どうやら、あなた一人ではどうにもならないようですわね?」
う、とサララは言葉に詰まる
そんなサララを見て、どこか茶目っけを含んだ顔でロングビルは笑う
「では、お手を貸しますわ」
ロングビルが杖を振り、何やら呪文を呟く
天井の破片はまるで吸収されてしまったかのようになくなり、
ガラスは一人でに浮き上がって窓にハマる
その様子を、サララは目を輝かせながら見ていた
やはり、魔法は凄い、と
「さて……では、私は教室が午後からは使えそうだと報告してきますわ。
 あなたも、そろそろ昼食へ向かった方がよろしいのでは?」
ロングビルのその言葉に、サララはシエスタとの約束があったことを思い出す
丁重にロングビルにお礼を述べた後、とてとてと走り出した
そんなサララの後姿をロングビルは怪しげな目つきで見やる
「フフ……恩を売っておくにこしたことはないからねえ。
 見たこともないマジックアイテムを持った魔法の使えないメイジ……。
 あいつの持ち物に、『魔王の宝玉』以上のお宝があればいいけど」
そんなロングビルの呟きを聞いたものは、誰も居なかった

38:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 20:41:47 cQY8KSKp
支援

39:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 20:43:57 ataNi0+U
お久し振りっス支援!

40:使い魔はじめました ◆xq/C1v8U32
08/05/07 20:44:34 XJA8laG6
以上で投下終了です
支援ありがとうございました
文章がちぐはぐというか稚拙というかですいません
使い魔のせいで魔女なのに魔法が使えないことを、
ちっとも気にしてないらしいサララは凄いと思います

41:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 20:50:06 ataNi0+U
GJ&投下乙、サララやルイズ&チョコに萌えつつ次回に期待。
やはりこの話はほのぼのしくて大好きです。

42:もう一人の『左手』(その26) ◆utAARsQ0ec
08/05/07 20:58:39 AmAJEAnR
お久しぶりです。10分後に投下します。

43:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 21:00:00 QKlAgdtn
ならば支援だ

44:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 21:00:05 ataNi0+U
うおお支援支援!

45:もう一人の『左手』(その27) ◆utAARsQ0ec
08/05/07 21:11:24 AmAJEAnR
.
「敵突入部隊、接近してきます!!」
「指揮官は分かるか!?」
「そっ、それが……」
「どうしたっ!?」
「ウェールズ殿下本人が率いているようですっ!!」

 その瞬間、『レキシントン』の幕僚たちを、沈黙が包み込んだ。
―ウェールズ殿下が、来る……!!
 かつての自分たちの主君にして上司。
 アルビオン史上類を見ないほどの大反乱を巻き起こした国王ジェームズ1世の虐政。だが、失望させられ続けてきたアルビオンの国民にとって、皇太子ウェールズは、王家に残された最後の希望だった。
 その若き王子が、自らこのフネに乗り込んでくる。叛徒逆賊として、我々を殺すために。
 ならば我々はどうだ? ボーウッドは自問する。
 いかに敵とはいえ、杖を向けることが出来るか!? あのウェールズ殿下を、直接その手に掛ける事が出来るか!?

―ボーウッドは自答する。
(やるしかない……!!)
 自分は軍人なのだ。
 軍人として戦に臨む以上、私情は捨てねばならない。
 再び背筋を伸ばした時、ボーウッドは迷いを捨てていた。

「対空砲火で応戦せよ!!」
 索敵班の伝令に『レキシントン』の副長が、そう怒鳴り返すが、ヘンリー・ボーウッドは、その命令を制し、冷静な声音で指示を出す。
「無駄だ、撃ったところで当たりはせん。むしろ全砲門を閉じさせい」

 そうなのだ。一人の敵兵を狙撃するのが大砲の役目でもないし、そんな小さな的を狙ったところで、当てるほどの命中精度も期待できない。軍艦が装備する火砲とは、あくまでも“面”を攻撃する兵器であり、“点”を狙うものではないからだ。
 むしろ迂闊に砲門を開いていて、大砲の射出口に火矢でも射掛けられたら、たちまち火薬に引火して、こんな木造艦など木っ端微塵だ。

“フライ”で移動中のメイジは魔法を使えないが、王立空軍のメイジたちは、白兵戦のために、全員が長弓や弩・銃などの訓練を欠かさない。
 それは“フライ”で飛翔しながら敵を攻撃するためであり、たとえ魔力が切れても戦闘を続行するためだ。無論、普通のメイジなら、たとえ軍人と言えど杖以外の武器など持たないが。
 だが、王立空軍の司令官にウェールズが就任した時、彼は就任演説で、こう言い放った。軍人とは、精神力が切れれば何も出来ない者を呼ぶのではない、たとえ素手でも敵と戦う者をよぶのだと。
 彼の方針に反感を抱いたメイジたちは少なくなかったが、それでもウェールズの持論が正論である事は間違いない。敵として、彼の斬り込みに相対した今、それは否応なく思い知らされる。
「艦内総員に通達! 敵の斬り込みが来る。戦闘員は至急、第一種兵装にて甲板で待機!たとえウェールズ殿下本人であろうとも容赦はいらん! 敵突入部隊を一人たりとも乗り込ませるな!!」

 その時だった。
「索敵班から報告! 味方竜騎士隊が全騎180度回頭!『レキシントン』に向かってきます!!」


46:もう一人の『左手』(その27) ◆utAARsQ0ec
08/05/07 21:15:05 AmAJEAnR
.
 バカどもめ!!
 ボーウッドはそう思った。
 竜騎士たちは、どうやら我が艦の援護に回るつもりらしい。
 竜騎士の機動性と小回りなら、ドッグファイトになっても“フライ”で自在に飛翔するメイジにも優位に立てる。いわんや竜騎士は、飛翔中のメイジとは違い、魔法も使えれば竜のブレスという『攻撃兵器』もある。空中戦の有利は言うまでも無い。
 だが、今からでは遅い。竜騎士たちが敵に追いつく前に、敵は『レキシントン』の甲板に取り付いてしまうだろう。ならば、むしろ早々と『イーグル』号を撃墜してくれた方が助かる。
「竜騎士に発光信号を送れっ! 当艦には構わず、いそぎ敵艦を撃滅せよとな!!」
 
 そのとき、ある竜騎士の吐いたブレスが、『レキシントン』の帆に命中する。メインマストは音を立てて炎上し始めた。

 ヘンリー・ボーウッドは愕然とした。
 こんな初歩的なミスを、歴戦の竜騎士ともあろう者がやるとは思わなかったのだ。
 味方の艦に接近中の敵に向かって、背後から攻撃を仕掛けるときは、流れ弾が味方の艦を直撃しないように、射角に注意するのは、空戦に於ける基本中の基本なのだ。つまり『レキシントン』に接近する王党派の突撃部隊の存在に、よほど慌てたという事だろうか。
(ばかどもがっ!! だから言わんこっちゃない!!)
 ボーウッドは、床を激しく踏み鳴らした。
「発光信号を用意っ、接近中の竜騎士に通達せよっ!! 『軍令に従い、直ちに敵艦を攻撃せよ。これ以上、当艦に接近するならば、我が軍への反逆と見なす』となっ!!」
「はっ、はいっ!!」

「艦長、周辺の僚艦に連絡を」
 シェフィールドが、またもや口を開いた。
 しかし、その瞳にはもはや、いつもの嘲るような光は宿ってはいない。
 だが、それでもボーウッドからすれば、彼女は所詮、耳障りな雑音を撒き散らす、でしゃばり素人に過ぎない。彼は聞こえないフリを決め込んだ。
「竜騎士が旗艦に攻撃を仕掛けた場合は、当艦もろとも竜騎士を狙撃せよ。そう伝えて下さい」

 ボーウッドは一瞬、ぽかんと口を開いた。
 何を言っているのだ、この女は!?
 まるで、竜騎士どもの離反が、すでに決定事項であるかのような口を利く。
「ミス・シェフィールドっ!! これ以上、余計な差し出口をされるようだと、艦橋から退出していただきますぞっ!!」
 そう言って、ボーウッドが女を睨みつける。
 だが、シェフィールドは怯まない。
「彼ら竜騎士の目標は、間違いなく当艦です。急ぎ『レキシントン』を後退させ、弾幕を張って下さい。さもないと、この艦は沈みます」

 たまらず、幕僚たちが口を開いた。
「ミス・シェフィールド! 彼らの反逆が事実であるという根拠は!?」
「理由もなく味方を誹謗する事は許されませんぞ!!」

 しかし―、
 そのとき、三十騎の竜騎士が一斉に吐いたブレスは、残らず『レキシントン』に吸い込まれた。


 

「甲板員に消火を急がせろっ!! 『レキシントン』取り舵一杯っ!!」
「とっ、取り舵一杯、サー!!」
 ボーウッドの悲鳴のような指示に、操舵手が舵を切る。だが、メインマストに損傷を受けたフネは、のろのろと手負いの獣のような、もたついた動きを見せるだけだ。
 副長が、たまらず叫ぶ。

「全砲門開けっ、王党派の突撃隊は構うなっ!! 当たらずとも良い、裏切り者の竜騎士を接近させるなっ!!」


47:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 21:15:44 QKlAgdtn
支援

48:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 21:17:21 ataNi0+U
支援仕る

49:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 21:18:12 S7UGzD59
支援

50:もう一人の『左手』(その27) ◆utAARsQ0ec
08/05/07 21:18:57 AmAJEAnR
.
(なんということだ……!!)

 ボーウッドは、思わず己の爪を噛みそうになる。
 竜騎士隊が『イーグル』号から反転した時、彼らの離反をまったく疑っていなかったといえば、実のところ、それは嘘に近い。
―ヘンリー・ボーウッド個人も、このレコン・キスタを名乗る反乱軍に身を置き、かつて忠誠を誓った王党派に刃を向けている自分を、密かに恥じていたのだから。
 そして、彼は知っていた。貴族派に於いて、我が身を恥ながら戦っているのは、おそらく自分だけではないであろう、とも。
 しかし、戦況を鑑みて、いくら何でも裏切りはすまいとタカを括っていたのは事実なのだ。……そう思って油断していた自分が許せない。王党派を追い込めば追い込むほど、彼らに心を残す者たちがどう動くか、それを甘く見ていた自分が許せなかった。
―そして、戦況はまさに、シェフィールドが予言した通りになった……!!

 だが、実を言えば、竜騎士たちの反逆行為は、全てヴィンダールヴ風見の仕業であり、ボーウッドの考えている事はまったくの的外れなのだが、それを理解しているのは、この場ではシェフィールドただ一人であり、無論、彼女はそれを説明する気は無かった。



「白旗を揚げよ」



 その場にいた全員が振り返った。
「聞こえたろう艦長。白旗を揚げ、次いで停戦の発光信号を打ち上げよ」
 まるで他人事のような涼しい顔で、艦長にそう命じる一人の男。
 ブザマな失神からようやく目覚めた、クロムウェルが屹立していた。

 オリヴァー・クロムウェル大司教。
 アルビオン貴族派連合軍総司令官にしてレコン・キスタ貴族院議長を兼任する、事実上の貴族派の首魁。だが、一見すれば、漆黒の僧衣を纏った、痩せぎすの男に過ぎない。
 しかし、その眼鏡の奥に光る蛇のような瞳は、先程までだらしなく意識喪失していたとは、まるで思えない炯々とした輝きを放っていた。

 だが、ボーウッドとしても、一人の軍人として、その命令に簡単に頷くわけには行かなかった。
「しっ、しかし、閣下! まだ戦は終わったわけではありませんぞっ!?」
「君の判断は聞くつもりは無い。それとも、あの竜騎士たち同様、君もわたしに逆らう気なのか?」
「……!!」
 そう言われては、もはや彼としても返す言葉も無い。
 結局ボーウッドは、副長を振り返ると、重く頷いた。


%%%%%%%%%

 重さ1トンにも及ぶ鉄柱を挟んで、二人の改造人間が対峙していた。
 
 ここは戦場。
 貴族派本陣に自沈攻撃を仕掛けた『マリーガラント』号に積まれていた硫黄は、なおも燃え続け、天空の双月と相まって、夜にもかかわらず、まるで昼間のような明るさで大地を包む。
 総勢五万を号する貴族派連合軍の重包囲網を、まるでナイフのように真一文字に切り裂く王党派二百の鉄騎軍。―だが、刃の切っ先となるべき仮面の男は、まるで凍てついたように、その動きを止めていた。


51:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 21:20:28 /NqpUiXs
しえーん

52:もう一人の『左手』(その27) ◆utAARsQ0ec
08/05/07 21:21:17 AmAJEAnR
.
 彼には、ティファニアに召喚される前の記憶がない。つまりハルケギニアに召喚される以前、何処で何をやっていたのか、そもそも自分は一体何者なのかという記憶を持っていない。覚えていたのは“ブイスリー”という名だけだ。
 だから、眼前に対峙する、自分と同じ姿をした男を見た時、骨が震えるような感覚に襲われた。
“ブイスリー”は感じたのだ。
 眼前に立つこの者は、まさしく自分と、まったく寸分違わぬ『同じ存在』であると。
 双子の兄弟どころではない。肉体を組成する細胞の一片までも、完全に一致する同位体。文字通りのもう一人の『自分』。
 相違点があるとするならば、ルーンの位置―“ブイスリー”が胸部にルーンを刻まれているのに対し、眼前の『自分』は、額にルーンを刻んでいた―くらいであろう。
 つまり“ブイスリー”は、動けなかった。
 そんな不可解極まりない存在が、いきなり出現したのだ。動揺するなと言う方が無理な話だ。

 しかし、不意に出現したドッペルゲンガーを前にして“ブイスリー”の脳裡に、とある考えが電光のように浮かぶ。
(こいつなら、あるいは俺が何者か知っているかもしれない)
 記憶を失った彼が、一瞬、そういう思いを巡らせたとしても、誰もそれを責める事は出来ないだろう。眼前に屹立している男は、まぎれも無い『自分』なのだ。本来在るべき、失われた記憶を持ち合わせているとしても、まったく不自然ではないはずだ。
 知りたい事は無限にある。訊きたい事はそれ以上にある。だが、それを追求するためには、この奇怪な睨み合いの成り行きを呆然と見ている味方たちが邪魔だった。
 自分が王党派のために戦っているのと同様、この不可解な闖入者も、貴族派に合力する者かも知れない。ならば、今の自分がやろうとしているのは、まぎれもない『敵との対話』であるからだ。それは少なくとも、戦闘中に許される行為ではない。

「マーヴェリー卿、こいつは俺が引き受けます。今すぐ軍を動かしてください」

 周囲の兵と同じく、同じ顔をした亜人同士の、奇妙な一騎打ちに眼を奪われていた王軍の指揮官ジェラルド・マーヴェリー伯爵は、“ブイスリー”の声に込められた強い意思によって、まるで尻を叩かれたようにびくりと震えた。
(ここにいては巻き込まれる!? ……この怪物同士の戦闘に……!!)
 その超人的な戦闘能力によって、落日のニューカッスル城の防衛を、ほぼ一手に引き受けていた“ブイスリー”。そして、そんな彼と全く同じ姿をした、もう一人の赤い仮面。
―恐竜と恐竜の戦いに人間が巻き込まれれば一体どうなるか。結果は火を見るより明らかだ。
 何より、ここで王党派の勢いを停止させるわけにはいかない。五万の包囲網を中央突破し、貴族派の混乱をなおも助長せねば、寡兵の王軍に勝ち目は無い。そのためにも―、
「ゆくぞ皆の者!!」
 マーヴェリー卿の声と同時に、王党派鉄騎兵たちは、ふたたび馬蹄を轟かせ、突撃を開始する。
「武運を祈るぞ“ブイスリー”!! いずれ勝利の祝宴でまた会おうぞ!!」


「軍人気取りか……いい気なものだな」
 額のルーンを輝かせ、赤い仮面が皮肉を利かす。
“ブイスリー”は答えない。
 王軍の存亡を一手に担う“ブイスリー”は、当然のように自分の事を『王党派の一兵士』であると認識している。だから軍人気取りと言われては、さすがにカチンときたが、それでも沈黙を守ったのは、興味が怒りを凌駕したからだ。
―眼前のドッペルゲンガーが、一体自分に何を語ろうとしているのかという、純粋な興味が。
 
「一つだけ訊いておこう」
 ドッペルゲンガーは言葉を続ける。
「仮面ライダーたる誇りを投げ捨て、改造人間のパワーを以って、ただの人間を殺戮する。―何故だ?」


53:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 21:21:26 ataNi0+U
支援

54:もう一人の『左手』(その27) ◆utAARsQ0ec
08/05/07 21:23:39 AmAJEAnR
.
 やはり“ブイスリー”には、彼の言わんとする意図が理解できない。
 カメンライダーという言葉の意味は分からんが、敵と戦うのが兵士であり、敵を殺すのが戦争ではないか。そして俺は兵士であり、ここは戦場だ。
 だから“ブイスリー”は、こう答えた。


「それの、なにが悪い」


「そうか。……やはり貴様は……」
 眼前の男の口調が、あからさまに変わったように“ブイスリー”には聞こえた。

“ブイスリー”としては、実のところ、もう少し彼の話を聞きたくはある。―だが、眼前の『自分』の複眼を見た瞬間、もはや戦闘以外の一切の問答は無用である事を“ブイスリー”は知った。
 彼が発していたものは、バカでも分かるほど明瞭な“殺気”であったからだ。
(『敵』……こいつは『俺』なんかじゃない。俺の前に立ちふさがる、ただの『敵』だ!!)

「殺す。貴様はこの世にあってはいけない存在だ」
 
 そう言い放つや、額に『ミョズニトニルン』と刻まれた、もう一人の改造人間は、まるで綱引きのように引っ張り合っていた巨大な鉄柱を放り出し、その瞬間に赤い疾風と化していた。
 忽然と姿を消した彼を追って、“ブイスリー”も反射的に地面を蹴る。まるで瞬間移動のような素早さで、彼らは、地上数十メイルもの上空へ跳躍したのだ。 
 その差は、まさしく一秒の数十分の一程度のものでしかなかったであろう。だが、先手を取る形で跳躍したミョズV3の攻撃は、下からジャンプしてくる“ブイスリー”を、必然的に上から迎撃する形になっていた。

(もらった!!)
 ミョズV3が、心中そう叫んだかどうかは分からない。
 だが、身体性能が同等である以上、ものをいうのはタイミングや体勢といった二次的な条件である事は言うまでも無い。
 
―V3キック。

 仮面ライダーV3の一番スタンダードな決め技であり、無論、一撃必殺の破壊力は充分にある。
 空気を切り裂かんばかりの速度で蹴り出された二本の右脚は、天空の双月を背景に、あたかもロボットアニメのドッキングシーンのような正確さで足裏を重ね合い、それぞれの力のベクトルを真正面からぶつけ合った。
「くうっ!!」
 だが、パワーが同じなら、位置的・体勢的に有利な側の威力が上回るのは、物理法則上の必然だ。“ブイスリー”は、弾かれたように吹き飛ばされ、壮大な地響きを立てながら大地に激突する。
 
「ふっ……」
 この程度かと言わんばかりに鼻で笑いながら、ミョズV3は軽やかに着地する。
 その時だった。
「……っっ!?」
 下半身から力が、不意に抜けた。
(なっ、なにいっ!?)
 信じられなかった。
 彼は膝をついていた。
 蹴り勝ったのは自分のはずなのだ。現に“ブイスリー”は、同じキックを放っていながらもブザマに撃墜され、土埃にまみれて転がっている。
 なのに、―なのに、この俺が……足を痺れさせて大地に膝を屈している!?

「~~~~~~~っっっっっっ!!」

 足腰に無理やり力を込め、立ち上がる。
 思わずふらつきそうになる下半身を、気力で支え、“奴”を振り向く。
“ブイスリー”は、そこにいた。
 派手に吹き飛ばされ、ずっとダメージは大きいはずなのに、何事も無かったかのように、そこに屹立している。
 まるで、ミョズV3が立ち上がるのを、待っていたかのようであった。


55:もう一人の『左手』(その27) ◆utAARsQ0ec
08/05/07 21:27:43 AmAJEAnR
.
 こんな風に扱われる自分を、許す事は出来んっっ!!
 自身に対する怒りが、ミョズV3の身体にエネルギーを注ぐ。
 だが、感情論で、体力が回復できるとは、いくら彼でも思ってはいない。
 時間を稼がねばならない。
 あと30秒。―30秒攻撃を喰らわなければ、下半身に力が戻ってくる。
 だが、いくら何でも“奴”が、そんな甘い敵であるはずがない。
 ミョズV3は両腕を交差し、『スイッチ』を入れた。
 クロスハンド……V3・26の秘密の一つ。両腕を交差して、細胞強化装置を作動させる事で、一時的に全身の防御力を上昇させる。
 
 ゆらり。
 身体が揺らめいたと思った瞬間、“ブイスリー”が土煙を舞い上げ、こっちに猛然と走り寄って来た。しかも、そのままの勢いで反動をつけ、右の拳を叩き込もうとしているらしい。
―何というテレフォンパンチ……。
 むしろ呆れるような失望感を伴いながらも、“ブイスリー”の右フックを廻し受けで捌き、ミョズV3は、カウンターの正拳を“奴”の顔面に叩き込んだ。

「なっ!?」

 まともに入ったはずだった。
 並みの人間ならば、頭蓋が砕けてザクロのように吹き飛んでいる。
 たとえ腰に力が入りきらずとも、このタイミングで彼のパンチをまともに喰らったなら、その程度の威力は充分にあったはずだった。
 だが、もろに入ったはずの彼の鉄拳を、“ブイスリー”はその場から一歩も引かず、頬で受け止め、微動だにしない。
「ばかな……!!」

 その瞬間、するりと“ブイスリー”の両腕が動いた。
 蛇のように巻きついた両手が、ミョズV3の頚骨を砕き折らんばかりにガッチリと掴み、締め上げる。恐るべきパワーだった。それは、これまでデストロンの怪人相手に戦闘経験を繰り広げていた彼でさえ、経験した事が無いほどに。
「くああああっっっ!!」
 ミョズV3のアンテナが煌くような光を発すると、文字通り、稲妻のような衝撃が“ブイスリー”を襲った。
 V3サンダー……V3・26の秘密の一つで、触覚から放つ、接近戦用の高圧電流。
 だが―。
(こっ、こいつ……!! サンダーが効いていない、のか!?)
“ブイスリー”は首を絞める手を一向に緩めない。むしろ、その腕力は上がっているように感じる。
 
 その瞬間、ミョズV3の体がふわりと浮いた。
 いや、そう感じただけだ。“ブイスリー”が、首を絞めたまま彼の体を、まるで人形のように軽々と放り投げたのだ。
「くうっ!!」
 20メイルもの距離を、地面と平行にぶん投げられた赤い仮面が、派手な土煙をあげて大地に叩き付けられる。絵だけ見れば先程のキック合戦と同じだ。相違点があるとすれば、いま地面を這っているのは、さっきとは逆に、額にルーンを刻まれた側だということか。

(どういうことだ……!?)
 ダメージを負ったボディを叱咤し、懸命に立ち上がろうとするミョズV3。
 どうもこうも……もう間違いない。
 コイツは―この“個体”が持つパワーは、明らかに自分より上だ。残念ながら、そう判断せざるを得ない。
 しかし、しかし何故だ!?
 彼には分かる。
 この“ブイスリー”の肉体条件は現在の自分と完全に同じだ。決して、再改造で超電子ダイナモやマーキュリー回路を内蔵しているわけではない。ギギやガガの腕輪といった外的要因で身体性能の増強を図っているわけでもない。
 
(ルーン、か……!?)


56:もう一人の『左手』(その27) ◆utAARsQ0ec
08/05/07 21:29:44 AmAJEAnR
.
 なおも炎上を続ける貴族派本陣をバックに、逆光になった“ブイスリー”の姿が目に映る。蒼白く輝くルーン文字をレッドボーンに刻み込んだ、おそるべき殺戮の兵士。
 もし彼の推察通り、胸のルーンが“奴”に力を与えているのならば、それこそミョズV3の容認できることではない。使い魔の烙印ごときの力を借りて、パワーアップを果たす仮面ライダー。その“個体”に手も足も出ない仮面ライダー。
「恥知らずにも程があるだろ……!!」

 彼の中で何かがごとりと音を立てた。
 凄まじいまでの闘志が湧き上がってくる。
―いや、やはり戦いというものは、そうこなくてはな……!!
 こういう逆境でこそ俺は―『風見志郎』は燃える男だったはずだ。
 その瞬間、身を焦がすほどだった憤怒は消えた。羞恥も屈辱も消えた。あるのはただ、眼前のドッペルゲンガーに対する、純粋なまでの闘志、それだけだった。
 彼は“ブイスリー”に対し、無意識の内に口走っていた。
「いいだろう。遊びはここまでだ」
 ただパワーで自分を凌駕する相手、というだけならば、今までゲップが出るほど戦い、生き延びてきた。その気になれば、やりようはいくらでもある―。

 その時だった。
 上空に、見事なまでの満開の花火が打ち上がり、その瞬間、戦場の空気が変わった。

「そこまでだぜ、ズ~~~カ~~~」

 大砲を背負ったカメという、V3の数倍以上の異形な肉体を持った怪人。
 胸部にルーンを持つ、もう一人の改造人間。
―カメバズーカが、そこに立っていた。
「あの花火は停戦の合図だ。そうなったらお前ら、もう戦うことは許されねえ。王党派にとっても、レコン・キスタにとってもなぁ」



$$$$$$$$
 クロムウェルが指示した、停戦信号と白旗の効果は絶大だったようだ。
 あれほど執拗に周囲を飛び回っていた竜騎士たちも、攻撃を止め、どこかへ飛び去ってしまったようだ。
 だが、それで命の安堵を喜ぶ者は、この『レキシントン』の艦橋にはいない。艦長ヘンリー・ボーウッドを始め、その幕僚たちは皆、憤然とした表情をありありとクロムウェルに見せ付けていた。

 ワルドは艦橋を出ると、廊下の壁にもたれ、パイプに火をつけた。
「いいかい?」
 フーケが、ひょいと顔を出し、訝しげな視線を艦橋に―おそらくはクロムウェルに―向けた。
「あんた軍人だろ、分かりやすく説明してくんない? 一体何がどうなって白旗なんて揚げるハメになってるのさ?」
 その言葉を聞いて、ワルドは薄く笑った。
「ちょっと、何がおかしいのさ?」
 声を荒げるフーケをなだめるように、ワルドは優しい眼を向ける。
「お前が怒るほど悪い“策”ではないということさ」
 そう言われては、フーケの剣幕も水をかけられたのと同じだ。
「“策”って、それじゃあやっぱり……!?」
「当然だろう」
 クロムウェルは―と、ワルドは呼び捨てると、

「最初から降伏する気なんかないさ」

 フーケは開いた口が塞がらないといった顔をする。


57:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 21:29:45 ataNi0+U
支援

58:もう一人の『左手』(その27) ◆utAARsQ0ec
08/05/07 21:31:39 AmAJEAnR
.
「さっきまでの戦況は把握しているな?」
 フーケは無言で頷く。
「実際、かなり我が軍は危機的状況にあった。王党派の地上部隊は、包囲網を中央突破しかねない勢いにあったし、空では竜騎士に裏切られ、旗艦は敵に直接乗り込まれそうになっていたしな」
「……敗北寸前だったってこと?」
「ああ。だが、ここで大事なことが一つある。分かるか?」
 フーケは無言で首を振る。
「敗北寸前と『敗北』は違うってことだ。このまま戦を続けていたとすれば、我が方の混乱に乗じて、敵はいよいよ勢いを増すだろう。旗艦は撃墜され、包囲網は突破され、貴族派は四分五裂になってしまうだろう。つまりそれが―『敗北』だ」
「だから『敗北』してしまう前に、自分から白旗を揚げて戦を止めたって言うのかい!?」
 愕然としたようにフーケが言う。
「そうだ。『敗北』する前に『降伏』を選び、自軍の勢力を温存する。普通の軍人には絶対に出来ない選択だ」

 そこまで言われれば、さすがにフーケでもクロムウェルの肚は読める。
 自軍の勢力を維持したまま停戦するというのは、いつでも戦を仕切り直せるということなのだ。
 そして、停戦によって王党派の破竹の勢いは水をかけられ、いざ再戦ということになれば、そこにあるのは、圧倒的な兵力の多寡という、物理的な有利のみが貴族派に残る。
 そうなれば、むしろ交渉で下風に立たざるを得ないのはウェールズの方だ。再戦を回避せねばならない彼としては、出せるカードに決定的にハンディキャップがついているも同然だからだ。
 そしてクロムウェルとしては、時間を稼いで兵に休息を取らせ終わり次第、交渉もクソもなく戦争を再開する事だろう。結果として言えば、貴族派の勝利だけが残る。
 フーケはボーウッドたちが、あれほど苦い顔をしているわけを、ようやく理解できた気がした。

「小賢しいにも限度ってモンがあるだろう……騎士道もクソも無いじゃないか……!!」

「だが、古の武人はこうも言っている。勝てば官軍、とな」
 そう言いながら廊下に顔を出したのは、采配を取ったクロムウェル本人であった。さすがのフーケも真っ青になって、顔を伏せる。そんな彼女に、クロムウェルは一見無邪気な笑顔を送る。
「フーケ君は不服なようだが、わたしは軍人たちよりさらに一歩、上からの視線を持たねばならないのでね。たとえ卑怯と謗られようが、それも為政者のつらいところさ。―まあ、部屋に入りたまえ」

 ワルドはパイプの火を消すと、蒼くなっているフーケに肩をすくめて笑顔を見せ、僧衣を纏った蛇のような目をした男を追って、艦橋に入室する。

「艦長」
 不意に、クロムウェルがボーウッドを振り返った。
「突入部隊を率いておるのは、本当にウェールズ本人なのか?」
 ボーウッドは、何故そんな事を訊くと言わんばかりの硬い声で返答する。
「はい。索敵班の報告に拠れば、間違いないと思われます」
「ならば、話は早いな」
 そう言うと、クロムウェルは亀裂のような笑みを見せた。
「停戦交渉はこの艦橋で執り行おう。白旗を揚げた側に、勝者が出向いて頂くというのもおかしな話だが、王党派の総帥が自ら乗り込んできているとすれば、その場で会談を始めた方が合理的だ」
 そして、シェフィールドをちらりと、悪戯っぽい目で見ると、
「幸か不幸か、私もここにいる事だしな」

 しかし、クロムウェルが何を言いたいのか、ワルドでさえよく分からない。
「その停戦交渉の場で、ワルド子爵―」
 クロムウェルは眼鏡を外すと、まるでこともなげに言い放った。


「ウェールズを殺したまえ」


 ワルドも、フーケも、ボーウッドも、この艦橋にいた『レキシントン』の全てのクルーが、クロムウェルのその言葉を聞いて唖然とした。
 ただシェフィールドと、眼鏡のレンズをハンカチで拭いているクロムウェルだけが、変わらず爬虫類のような冷たい笑いを浮かべていた。


59:もう一人の『左手』(その27) ◆utAARsQ0ec
08/05/07 21:33:36 AmAJEAnR
今回はここまでです。

60:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 21:35:55 ataNi0+U
また焦らし…………可及的速やかに続編を所望します!GJ&乙でした。

61:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 21:46:42 6ZltjW5T
相変わらず凄い所で切るなぁ……
なんという焦らしプレイ

62:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 22:22:22 frPzOk0B
GJ
いつもながらおもしろい!

63:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 22:33:28 PF+dljMJ
ん~、いいねいいねいいね

でも、仮面ライダーって、こんなにシリアスなノリだったっけ・・・?

64:よし燃料だ
08/05/07 22:38:47 F3c5RByX
史上最強の弟子ケンイチからケンイチ

「愛に飢えて婚約者を求め続けていたのか」
「ア”ア”ッ」
「それを炉利道と言うんだ、ワルド!!」
「ばかなっ、リミッターを外したロリペドを止めやがった!?」
逆上するワルド
「おのれぇ」
「ボクが止めなければ、あなたはいつか犯罪に走るような気がする・・・」

65:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 22:40:08 fl5T8vfK
>>63
本来仮面ライダーは「改造痕を隠すために仮面をつけた改造人間(怪人)」だからこんな感じだ。
TV版は明るいけど漫画版や小説版は暗いよ。

66:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 22:41:53 015lm6Y9 BE:868191067-2BP(30)
>>64
ちょっwwwwww
今長編に挑戦中なのに火が付きそうになっちまっただろwwwww

67:ゼロのエルクゥ15 0/7 ◆yxbMPy6fic
08/05/07 22:57:19 cJQ+uhki
お二人ともお疲れさまでした。
予定が無ければ5分後に投下したいと思いますが、大丈夫でしょうか?

68:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 22:57:35 rBjw/IG9
勘違いしてる奴が多いがワルドはロリコンじゃねえ

奴は真性の マ ザ コ ン だ

69:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 22:59:04 2pNYTUDj
>>66
つまり地球では
長老「な~に、人間長生きしとると…突然鏡の中に引き込まれて、異世界を冒険することもあるもんじゃよ!」
てなるわけだ。

>>67
おk

70:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 23:00:34 k2sFDGjD
>>67
しゃーこいやー!

>>68
つまり
「ルイズは私の母になってくれるかもしれん女性だ!
 それを奪ったのは貴様だ!」
「おかあさん……ルイズが……?」
ですか、わかりません!

71:ゼロのエルクゥ15 1/7 ◆yxbMPy6fic
08/05/07 23:02:07 cJQ+uhki
「根元から見ると圧巻だなぁ……」

 ラ・ロシェールの『港』である巨大な世界樹の枯れ木を見上げ、耕一は呆然と呟いた。
 その丈は数百メートルにも届こうかという大樹。既に枯れて葉はなく、太い枝だけが『桟橋』として残されている。その枝々には、まるで花か木の実のようにいくつもの船がくっついていた。
 枯れていても朽ちないのは、この大樹全てに『固定化』の魔法が掛けられているからという。

「チャーターした船は中腹ほどにある『マリー・ガラント号』だ。行こう」

 根元には、洞窟よろしくいくつもの穴が空いている。
 中に入ると、大樹はまるまる中身がくり抜かれていて、遥か上方へと続く階段の向こうに、『桟橋』たる枝への出口などが垣間見えた。
 超高層ビルをまるまる吹き抜けにしたような光景に、耕一はルイズ達の後ろを歩きつつ、真上を向いて口をあんぐりと開けていた。

 ――これ、階段で昇るのか。いや俺は大丈夫だけどさ。普通の人とか、無理だろ。

 耕一の心配をよそに、ワルドに抱きとめられたルイズは、ワルドの『フライ』の魔法によって階段を無視して飛んでいく。

「い、いいわよ。階段で昇るから」
「あの使い魔君ならともかく、君では昇りきる頃にはへとへとになっているよ」

 などという会話が聞こえてきて、おいおい俺でも疲れるんだぞ、とぼやいたら、数百リーグ走って息も切れねぇ奴が何言ってやがんだ、とデルフリンガーにツッコまれた。いい相棒である。いや、この場合、相方、と言うべきか。
 目的の『桟橋』は、言葉通り、大樹の中腹ほどにあった。枝からまさに木の実のように船が宙吊りにされていて、タラップで降りるような構造になっている。
 ギシギシと枝がたわみ、折れないのだろうか、とちょっと心配になった。

「どうも子爵様。お待ちしておりましたよ」
「ああ。早速出発してくれ」
「へえ。お急ぎと言う事なんで、既に準備は整えさせてありやす。おいてめえら! 出港だ! 錨を降ろせぇ!」
「アイアイ・サー!」

 一体いくらの追加料金を渡されたのか、急な依頼に応対した初老の船長の顔は終始笑顔であった。
 『錨を降ろせ』とは耕一には聞き慣れない言葉だったが、この場合の『錨』とは船と桟橋とを繋いでいる縄であるらしい。
 船員達は、先端に重りのついているそれを一斉に解きに掛かり、解き終わると、がくん、と一段下がるような感覚の後、船はさーっと空を滑り出した。

「おお、すげー!」

 飛行機にもろくに乗ったことのない耕一は、結構感動の目で船の縁から顔を出していた。

「向こうへは、約半日ほどだったね」
「へえ。今からなら、夕方にはスカボローの港に到着しまさ」
「と言う事だ。スカボローからニューカッスルまでは馬で一日ほど。昨日と同じ強行軍でいけば夜半には到着するだろう。今のうちに休んでおくといい」

 ワルドの言葉に従って、あまり睡眠の足りなかったらしいルイズは早々に船室へと入っていく。
 ワルドもその後を追い、甲板にいるのは耕一だけとなった。

「相棒は、休まなくていいのかい」
「半日もあるんなら、少しぐらいいいさ。昨日も早く寝たしな」
「そうかい。ま、なかなかの絶景だからな」

 地上の大樹は、もう小さくなりかけている。船はぐんぐんと高度を増しているようだった。

72:ゼロのエルクゥ15 2/7 ◆yxbMPy6fic
08/05/07 23:03:21 cJQ+uhki
「しかし、ルイズの話だともう少し時間が掛かるような事を言ってたけど、結構早く着くんだな」
「娘っ子、前に家族で旅行に来た記憶で話をしたらしいぜ。港も、スカボローじゃなくてロサイスって言ってたしな。観光と強行軍を一緒にしちゃいけねえよな」
「あらら。って、なんでデルフがそんな事知ってるんだ?」
「一昨日と昨日、娘っ子が寝る前に呟いてた」

 一刻を争う密使としてはまったく笑い事ではなかったが、異邦人根性の抜けない二人は、わはは、と大口を開けて笑った。

§

「あれが、アルビオン……」

 耕一は、ラ・ロシェールの『港』を見た時以上の驚きを込めて、それを見上げた。
 ゲームに出てきた、天空に浮かぶ城を思い出した。雲の大地に乗った城。同じように、下半分を雲に包まれた巨大すぎる岩石の塊。空に浮かぶそびえ立つ山脈。乗っている船が豆粒に思えるような、幅も高さも何百キロとある岩塊。
 それが、浮遊大陸アルビオンだった。

「こりゃあ、とんでもないなあ……」

 仮眠から起きて甲板に出ると、あまりにファンタジックな光景が目の前に広がっていて、思わず足を止めてしまったのだった。

「驚いているようだね、ミスタ。アルビオンは初めてかい?」

 既に甲板にいたワルドが、微笑みながら近寄ってくる。傍にいたルイズも、その後ろに付いてきていた。

「ええ。ハルケギニアじゃないところから召喚されてきたんで、こんなのがある事すら知りませんでしたよ」
「ほう……それは興味深い。惜しいな。もっと早く言ってくれれば、詳しい話が聞けたというのに」
「……ワルド?」

 ワルドは珍しく好青年の態度を崩し、どこか研究者のような深い目の光を湛えて、本気で悔しがっているようだった。

「まだ到着までには時間があるでしょう? 話ぐらいは出来ますよ」
「いや……どうやら、そんな暇はなさそうでね」
「え?」

 ワルドの言葉に、耕一とルイズが視線の方向を見ると、黒い粒のようなものが空に浮かんでいた。
 それは、見る間に粒から大きさを増していく。

「……船?」
「右舷上方の雲中より、船が一隻接近してきます!」

 耕一が呟くと、見張り台の船員が声を張り上げた。
 船長が何事かを指示し、船員の一人がぱたぱたと手旗信号を送り始める。

「は、反応ありません! あの船は旗を掲げていないそうです!」
「は、旗がない? 空賊船か!? 逃げろ、取り舵いっぱい!」
「空賊ですって!?」

 マリー・ガラント号がようやく離れようと慌て始めた頃には、黒船は既に向こうの甲板に乗る人影が見えるぐらいにまで距離を縮め、並走していた。
 その人影は数十を下らず、全員黒い服装にバンダナを巻き、弓やら銃やらで武装している。接舷したら今にも飛び掛ってきそうに、気勢を荒げていた。

73:ゼロのエルクゥ15 3/7 ◆yxbMPy6fic
08/05/07 23:05:11 cJQ+uhki
「海だから海賊、空だから空賊ってわけか……」
「この状況でまだ余裕だね相棒ってうひゃあ、大砲撃ってきたあ!」

 デルフリンガーの緊張感の少ない悲鳴から刹那、どごん! と遠くから響く花火のような重音が響き、放たれた砲弾がマリー・ガラント号の鼻先を掠めていった。
 甲板に繋がれていたワルドのグリフォンが、ぎゃあぎゃあと騒ぎ始める。

「くっ、反撃は?」
「商船だ。ろくな武装はなかろう」

 耕一の呟きに、隣にいたワルドが冷静そのものの声色で答える。事実、マリー・ガラント号には側面据付の艦砲などは無く、甲板に古めかしい車輪つきの砲台――石火矢と言った方が適切かもしれない――が3基ほど置かれているだけであった。
 側面にズラリと20ほどの砲を並べている黒船とは、とても勝負にならなそうだ。

「に、逃げ切れるの? ど、どんどん追いついてくるんだけど!」
「相手の船は専用の砲台がある軍事用だ。足もあちらの方が明らかに早いな」
「何とかする方法は? 魔法とか」
「遺憾ではあるが、僕の風を全力でこの船のスピードに当てても、あの船を振り切る事は出来まい。撃退しようにも、あまり強行に抵抗すれば、船ごと撃沈される怖れもある」
「風のスクウェアのあなたでも、無理なの?」
「ああ。商船というのは、荷物を多く積めるように設計されている分、速度に優れてはいない。対して向こうの船は機動性を重視したつくりのようだ。それに……ほら、向こうにもメイジがいる」

 視線の先を見ると、暴れていたグリフォンの周囲に青白い霧のようなものが発生していた。こてん、とグリフォンが首を落とし、寝息を立て始める。

「トライアングル・スペル、"スリーピング・クラウド"だ。いくら僕がスクウェアでも、相手にもトライアングルがいたら機体の性能は埋めきれない。ま、空賊は商船を撃墜はしないよ。船を壊してしまったら積荷が手に入らないからね」

 冗談だか本気だか判断のつきかねるワルドの言葉にひきつった笑みを返すと、船長の弱々しい声色の指示に従って船員達が帆を裏返し、船の速度が下がっていく。
 がくん、と船が接舷の衝撃に揺れた。

§

「船ごと全部買った。料金はてめえらの命だ」

 真っ黒なちぢれ毛の頭髪に赤いバンダナを巻き、無精ひげに覆われた顔に片目だけ黒い眼帯をつけた男が、マリー・ガラント号の船長から帽子をひょいと奪い取って言う。
 幅広のシミターをひたひたと船長の頬に貼り付けているそいつが、空賊の頭であるらしかった。

 ――黒ひげ危機一髪。

 あまりにあまりなその風貌に、耕一は緊急事態に緊迫しながらも、日本人の8割が連想するであろう名前を思い浮かべていた。

「あん? 貴族の客なんか乗せてんのか。貨物船なのに珍しいな。へへ、こいつはカモネギだ」

 黒ひげが、ワルドとルイズを見やってニヤニヤと近付いてくる。
 耕一は近くに寄ったそれを見て……どこか不思議そうに眉を顰めた。


「おいおめえら! 丁重にお貴族様のお杖をお持ちしてやんな! 従者の兄ちゃんのご立派そうな剣も忘れずにな!」
「へい! おかしら!」
「くっ、は、離しなさいっ!」

74:ゼロのエルクゥ15 4/7 ◆yxbMPy6fic
08/05/07 23:06:46 cJQ+uhki
 取り付く空賊達に、ルイズが身をよじらせる。

「ルイズ、抵抗すれば船の人々が危ない。ここは大人しく従おう」
「ワルド……っく、わかったわ」

 ワルドの言葉に、歯噛みしながら杖を渡すルイズ。

「てめーら! 剣はもっと丁寧に運びやがれ!」
「うわ、剣が喋った!?」
「へえ、インテリジェンスソードか。さすが貴族様の従者、珍しい品をお持ちだ。おら、何してやがる! お貴族様をお部屋へお連れしなきゃ失礼だろうが! 身代金が貰えなくなるぞ!」
「へい! おかしら!」
「くっ……」

 デルフリンガーは杖と一緒にどこかに運ばれていき、3人は両脇を空賊達に挟まれ、空賊の船へと連れていかれる。
 耕一はされるがままにしながら、じっと空賊の頭目を見つめていた。

§

 連れていかれた先は船倉だった。
 空間自体は狭くないが、何かの樽だのずだ袋だの砲弾だのが種々雑多に積まれていて、お世辞にも快適な空間とは言えなかった。
 唯一の扉がばたんと閉められ、鍵がかけられた。

「くっ……こんなところでモタモタしてる場合じゃないのに……」

 ルイズは立ったまま俯き、身を震わせている。

「落ち着くんだ、ルイズ。空の上では僕達の方が不利だ」
「でも……」

 ワルドはその肩を叩いて、耳元に口を寄せ、扉の外で見張っている看守に聞こえないよう、穏やかに語りかけた。

「焦っても仕方ない。行動を起こすなら、船が奴等のアジトに着いた時だ。こちらには、ミスタという心強い使い魔がいるんだからね」
「……そう、ね」

 杖がないメイジは平民と変わらないが、剣を取り上げられても耕一の力はそのままだ。
 まだ切り札はある。八方塞りじゃない。
 そう思い直し、ルイズは一つ深呼吸をすると、手近な樽に腰を下ろした。

「というわけだ、ミスタ。今は大人しくしているしかないようだな」
「ですね……」

 耕一も、やる方なく床に座り込んだ。
 ワルドは、積まれた荷物を興味深そうに眺め始める。

「……む」

 しばらく荷物を検分していたワルドは、目を見開いてしゃがみこみ、ぶつぶつと呟いた後……耕一のところに近寄ってきた。

75:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 23:07:20 ylgBlrFe
支援走り!


76:ゼロのエルクゥ15 5/7 ◆yxbMPy6fic
08/05/07 23:07:38 cJQ+uhki
「そうだ、ちょうどいい。ミスタが住んでいたところの話というのを聞かせてくれないかい?」
「俺の、ですか?」
「ああ。歴史や文化には個人的に興味があってね。ハルケギニアの外の世界の話というのは是非聞きたいんだ。……あと、一人の戦士としては、ミスタの能力にも、ね」

 そう言って浮かべた微笑みは、ぞっとするほど深いものだった。
 そう、まるでそれは、あの当時、夢に出てきていたエルクゥのような――。

「――まあ、ぼーっとしてるのもアレですしね。いいですよ。たぶん、期待とは違うと思いますけど……」
「新鮮な驚きこそ知識を得る醍醐味、望むところって奴さ。そう聞けばますます聞きたくなるね」
「そうですか……じゃあ、どこから話そうか――」

 そんな感想を飲み込んで、耕一は1ヶ月前まで住んでいた日本の事を頭に浮かべ始める。
 話し始める二人を見やって、呑気なものよね、と半分呆れながら同時に、あれが自分の実力に自信を持っている者の余裕なのだろうか、とルイズは知らず、唇を噛んでいた。

§

「アルビオン王国皇太子、ウェールズ・テューダーだ。アルビオン王国へようこそ、大使殿。さて、御用の向きをうかがおうか」

 黒ひげ船長がバンダナと眼帯とカツラと付け髭を取り去った姿である金髪碧眼の美青年が、恭しく頭を下げた。
 ルイズは呆然として口を開け、ワルドと耕一はどこか予想通りだという様子で空賊の頭――ウェールズ王子を見つめていた。

「おや、殿方達にはあまり驚いてもらえなかったようだね。結構、自信があった変装だったんだが」
「なんというか……あまりに海賊っぽすぎて、コスプレみたいで逆に怪しかったというか」
「船倉の荷物に、王立空軍御用達の火薬や砲弾があっては、本気で誤魔化す気もなかったでしょう、王子」
「はは、ディテールに凝りすぎたか。そちらもよく見つけられた。厳重にカモフラージュはしておいたはずなんだがね。さすがは大使の任を授けられた方々だ」

 耕一とワルドの感想を、はははと笑い飛ばすウェールズ。さすが船乗りと言うべきなのか、見た目とは違い、結構豪放な性格であるらしい。
 ルイズは、開いた口が塞がらない、という様子でそれを見つめていたが、やっとという風情で声を絞り出した。

「ほ、本当に、ウェールズ王子、なのですか?」
「ご婦人は逆にまだ信じられぬらしい。ああ、本当だよ。いや、大使殿には真に失礼を致した」
「なぜ、空賊に扮したりなどと……」
「なに、今や趨勢を決め、勝ち馬に乗ろうとする各所の援助に事欠かぬ金持ちの反乱軍には、次々と物資が運び込まれる。さて敵の補給を断つは戦の基本だが、堂々と王軍の旗を掲げては、この『イーグル』号一機だけの王立空軍など、数十倍ある反乱軍の艦に囲まれるだけ」
「だから、混乱に乗じて私腹を肥やそうとする空賊を装って、商船やら輜重隊やらを狙っていた、というわけですか」
「ま、そういう事さ」

 軍事的な話題には疎いルイズは、打てば響くようなウェールズとワルドの話に首をひねるばかりだった。

「何度も試すような真似をしてすまなかった。なにせ、あんなにも正直に我々に味方する勢力がいるとは、とても信じられなかったのだよ」
「……お恥ずかしい限りですわ」
「頭を上げてくれ、レディ。僕はそういう貴族の方が好きさ。今や裏方の我々としては裏仕事を否定するつもりもないが、敵と死と裏切りを前にしても引かなかったそのまっすぐな誇りは、とても好ましいものだと思うよ」

 ま、密使としてはどうかと思うがね、と笑って付け加えたウェールズに、ルイズは、羞恥やら喜びやら恐縮やら……色々な表情の混じった複雑な表情を浮かべた。

「それで大使殿は、亡国の王子に何の御用かな?」
「は。トリステイン王国は、アンリエッタ姫殿下より、密書を言付かって参りました」

 ワルドがさっと膝をついて頭を垂れた。ルイズと耕一も慌ててそれに倣う。

77:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 23:08:12 0n3LQUZT
し・えーんを忘れない。
それこそがノブレスオブリージュ



78:ゼロのエルクゥ15 6/7 ◆yxbMPy6fic
08/05/07 23:09:09 cJQ+uhki
「ふむ。姫殿下とな。君たちの名を伺おう」
「申し遅れました。私は、トリステイン王国魔法衛士、グリフォン隊隊長、ワルド。子爵の位を授けられております」

 そして、その長い腕を、ルイズと耕一に向かって広げる。

「こちらが姫殿下より大使の任を仰せつかった、ラ・ヴァリエール公爵嬢。そして、その使い魔の青年、ミスタ・カシワギにございます」

 ウェールズは、零れるような笑みを浮かべた。

「ほう! 人の使い魔とな! なるほど、君達のような者があと十人ばかり我が親衛隊にいれば、このような惨めな今日を迎える事もなかったであろうになあ。して、その密書とやらは?」
「こ、ここに」

 ルイズが慌てて、胸のポケットから手紙を取り出す。
 しかし、ウェールズの前まで進み出たところで、逡巡したように足を止めた。

「あ、あの……」
「どうかしたのかね?」
「その、失礼ですが、本当に皇太子さま?」

 ウェールズは、一瞬キョトンとした後、豪快に笑った。

「ははは。まあ、さっきまでの様子を見れば無理もない。よろしい、証拠をお見せしよう」

 ウェールズは自らの薬指に光る大きな宝石の着いた指輪を外すと、ルイズの手を取り、同じデザインである『水のルビー』の指輪に自分の指輪を近づけた。

「わっ?」

 途端に光り出した二つの宝石に、ルイズが驚いた声を上げる。
 共鳴するように、それらは虹色の光を放ち始めた。

「これは、我がアルビオン王国に伝わる『風のルビー』だ。ミス・ヴァリエールが嵌めているこれは、アンリエッタが嵌めていた『水のルビー』。そうだね?」

 ウェールズの言葉に頷くルイズ。
 そうしているうちに、虹色の光は宝石と宝石を繋ぎ、小さな虹そのものを作り出した。

「水と風は、虹を作る。王家の間に掛かる虹の橋さ」
「た、大変失礼をば致しました」

 ルイズは恐縮した様子で一礼すると、手紙をウェールズに差し出した。
 手紙を受け取ったウェールズは、表面の宛名書きを見て、愛しげにその手紙を撫で付けた。
 耕一の顔が強張る。

 ――この人も、こんな顔しやがって。

 一見して幸福そうなウェールズの顔に、耕一は別のものを見出していた。
 人なる身では届かぬ高みの崖に咲いている一輪の花を、崖の下から静かに見上げるような……穏やかで、清らかな諦めに満ちた、優しく見守るような……そんな感情だった。
 ウェールズはその花押に恭しく口付け、慎重に封を開いて、真剣な顔で手紙の文字を追い始めた。

79:ゼロのエルクゥ15 7/7 ◆yxbMPy6fic
08/05/07 23:09:52 cJQ+uhki
「……姫は結婚するのか。あの……愛らしいアンリエッタが。私の可愛い……従妹は」

 ウェールズが言いよどみ、飲み込んだその先の言葉を――耕一には、正確に予想する事が出来た。
 ワルドとルイズは、無言で頭を下げる。

「あいわかった。私が姫より賜ったあの手紙を返して欲しいという事だね。何より大切な姫からの手紙だが、姫の望みは私の望みだ。そのようにしよう」

 ウェールズの言葉に、ルイズの顔が、安堵したように輝く。

「しかしながら、今、手元には無い。ニューカッスルの城に置いてあるんだ。姫の手紙を、下賎な空賊船に置いておく訳にはいかぬのでね」

 何事もないように微笑む金髪の美青年に、耕一はまるで自分の事のように、奥歯を噛み締めていた。

「多少面倒だが、我らが最後の砦までご足労願いたい。なに、航海中の安全は保障しよう。アルビオン王家テューダー朝、歴史上最後に迎えた大使に何かあったとなれば、我が王立空軍は歴史に一生の汚点を残すだろうからね」

 自らの破滅を示唆しながら、ウェールズの笑顔には、一点の曇りも無かった。
 それがまた、耕一の焦燥を煽るのだった。

80:ゼロのエルクゥ ◆yxbMPy6fic
08/05/07 23:11:14 cJQ+uhki
以上です。支援ありがとうございました。楽しんでいただければ幸い……と言っても、ほとんど原作と変わるところがありませんが。

81:燃料投下
08/05/07 23:20:39 F3c5RByX
至上最強の弟子ケンイチからアパチャイ・ホパチャイ

「大変よ、今夜は梁山泊ハンバーグの日よ」
「おなかいっぱいそのハンバーグとかいうの食べさせてあげるから使い魔やりなさい」
「うん、いいよ」
ニコニコ

「(大丈夫かしらこの平民)それで使い魔の説明はわかった?」
「ルイズを守るよ」
「そうね、じゃあこれ洗っておいて。おやすみ」ぱちん
「おー凄いよ、手品」
パチパチ
「早く寝なさい」

次の日シエスタに怯えられながら洗濯を終えたアパチャイは
決闘イベントにおいてチャイキックを使用
全身凶器にプラスしてガンダールヴの効果により
当たったワルキューレがその場で粉砕
腰を抜かしたギーシュが負けを認め一件落着

「それでね、ルイズがすごいくしゃみをしたのよそうしたら教室が凄いことになったの」
庭でほかの使い魔相手に喋っていた
「きゅいきゅい、ルイズは失敗ばかりなのね」
「そうよ、ルイズのくしゃみは凄いよ。」
微妙に話が噛み合っていない

そしてアパチャイへのルイズのおねがいとは

次回「私にムエタイを教えなさい」

82:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 23:23:43 y5Ejby5Y
エルクゥの人乙!
刻一刻とロリコン同士の対決が迫ってきていてwktk

83:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 23:25:37 os5O8V7A
>>81
ちょwww
武器使わないのにガンダールヴ発動とはアパチャイさん、全身凶器認定ですかww

84:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 23:25:46 0n3LQUZT
エルクゥ乙です

耕一はロリじゃないよ、ただちょっと恋人がつるぺたなだけさ
つるぺたをこよなく愛しているだけなのさ

85:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 23:25:59 ylgBlrFe
ここいらでテンプレ展開から脱却して欲しいところではありますがお疲れ様でした。


86:ピノキオの大冒険♯キカイダー
08/05/07 23:35:29 iKCeIWt/
エルクゥの人お疲れ様です。
ピノキオの大冒険第三話を40分から投下したいのですが、よろしいでしょうか?

87:ピノキオの大冒険♯キカイダー
08/05/07 23:36:17 iKCeIWt/
うわ、何かミスった

88:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 23:37:34 2mpTDuK6
そういえば両者とも恋人は従姉妹なんだな。
そこら辺で話が進むのだろうか…ともかく期待。


89:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 23:37:43 Ua9CZ+Oa
鳥やべぇww

90:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 23:37:51 6xHWviNi
トリップやるならシャープもその次の文字も半角で。
 
今やったのは破棄して新しいので行ってくださいませ。

91:ピノキオの大冒険
08/05/07 23:39:56 iKCeIWt/
すみません、普通に間違えました。
改めて、投下予告です。
とりあえず、45分から……

92:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 23:44:01 gkPdQgQ4
エルクゥおちゅ&キカイダー支援


ハカイダーあたりも召喚されないかな
劇場版の

93:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 23:45:13 KDcD/CT6
カトレアがサモンサーヴァントでリトルスノー召還
異界の魂の特殊能力で治療方法を教えてカトレア元気に
後に平民を召還したルイズは使い魔につらくあたることがないのでアキラを召還しても険悪になることもなく
というのを考えたがリトルスノーなんか召還したらルイズがさっさと虚無に目覚めて話にならないことに気づいた

94:ピノキオの大冒険
08/05/07 23:46:16 iKCeIWt/
青髪の少女の言うとおり、厨房は食堂の裏にあった。二、三度程、扉を叩くとメイドが出てきた。シエスタではなかったが、とりあえず皿を渡すと笑顔で受け取ってくれた。
礼を言うと、ジローは食事が終わっただろう主人の下へと向かった。
入り口前では食事を終えた生徒たちで入り口はごった返していたが、その中でルイズを発見できたのは、ジローの能力だけで無く、彼女の桃色の髪のお陰だろう。
他の生徒の邪魔にならぬよう、間をすり抜けながら、ジローはルイズの下へと向かった。

「ちょうど良い時間だったみたいだね」
「アンタねぇ……素直かと思えば、自分勝手な行動をするし……いい? 次こんなことしたら、ご飯抜きだからね!」

ジローを指差しながら、ルイズは怒鳴った。
随分とご立腹のようだ。食事抜きで一向に構わないのだが、一々荒波を立てることも無いだろうと思い、ジローは一応、謝っておくことにした。

「悪かった」
「ふん……どこまでが本気なんだか……」

疑いの目を向けながらルイズは歩き始める。何も言わず、ジローもその後を追う。
しばらく歩いていると食堂程ではないが大きな扉があった。すでにあけられた扉の向こうには石造りの階段状の机が並んでいた。
席にはすでに生徒たちが座っており、ルイズもあいている席へと移動した。
恐らく教室だろう。次々と部屋に入ってくる生徒を眺めながら、ジローはルイズにたずねた。


95:ピノキオの大冒険
08/05/07 23:47:44 iKCeIWt/
「今から授業かい?」
「そうよ。分かっていると思うけど……」
「使い魔は席には座れない……だろ?」

朝の食堂でのやり取りから考えればあたり前の結果だろう。ジローはその場に座り込んだ。
この教室に入ってからだが、周りの生徒たちは自分たちを見てはクスクスと笑っていた。本人たちは聞こえていないつもりだろうが、ジローの耳にはルイズへの誹謗の言葉が聞こえていた。
中にはあからさまに馬鹿にした視線を向ける者もいたが、ルイズは慣れなのかそれとも気にしていないのか、それらを無視していた。
しかし、だんだんとルイズの顔が険しくなっていくのを見れば、爆発も時間の問題かも知れなかった。
そんな中、扉が開くと中年の女性が入ってきた。それと同時に生徒たちの話し声は無くなり、全員一斉に女性へと向いた。
教卓まで移動した女性は一度回りを見渡すと、微笑みながら言った。

「皆さん、春の使い魔召喚は大成功のようですね。このシュヴルーズ、皆さんの様々な使い魔を見るのがとても楽しみです」

そう言いながら、シュヴルーズは右端から順番に生徒たちの使い魔を見渡していた。そして、ジローに目が留まった。
嫌な予感がした。ジローは叶うはずの無い願いを祈っていた。

「おやおや、ミス・ヴァリエールは変わった使い魔を召喚したようですね」

的中。嫌なぐらいに見事にジローの予想は的中した。
恐らくシュヴルーズに悪気は無かったのだろう。しかし、彼女の言葉が引き金となり、教室中は一斉に騒がしくなった。
ジローは『頭痛』がするとしたらこういった場面なのだろうと悟った。こめかみを押さえながら、小さくため息をついた。

「ゼロのルイズ! 使い魔を召喚出来ないからって、その辺の平民を連れてくるなよ!」

ルイズの近くに座っていた小太りの少年の言葉に遂に堪忍袋の尾が切れたのか、ルイズは立ち上がり、いつもの要領で怒鳴った。

「ちゃんと召喚したわ! こいつが勝手にやってきただけよ!」
「嘘をつくなよ! サモン・サーヴァントができなかったんだろう?」

その後、ルイズと少年の言い争いが続いたが、見かねたシュヴルーズが杖を振るうとルイズと少年の口に粘土が現れ、口を防いだ。騒がしかった教室は一変して静かにはなったが、やはり小さな声でルイズを馬鹿にする言葉は聞こえてくる。
気が滅入るのでそれらの言葉にはフィルターを掛け、授業を見ることにした。
シュヴルーズの教える内容は『錬金』というものらしい。
意外に魔法の授業というのは聞いているだけでも面白いものだった。
シュヴルーズが杖を振るう度に、石ころが別の金属へと変化する。さすがは魔法といったところだった。どういう理屈かは分からないが、ここまで物質を変化させるのはたいしたものである。


96:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 23:51:15 PHO4KXe0
支援。

>>63
つ【仮面ライダーSPIRITS】

97:ピノキオの大冒険
08/05/07 23:52:57 iKCeIWt/
それ以外にもジローが興味を持ったのは、この世界における魔法の位置づけであった。シュヴルーズの話を聞く限りでは彼女の属性は『土』、この属性は人々の生活に大きく関わっていた。『錬金』によって金属を生み出し、
加工する。石などもこの『錬金』を用いて加工するらしい。
他にも『土』の属性らしく、田畑を耕すのにも使用され、農作物などにも関係してくる。他の魔法の属性がどのような役割を担うのかは不明ではあるが、
この世界では機械技術に変わって魔法がそれらの変わりを担っていた。
魔法を扱えるのは貴族、メイジのみと限られれば、魔法使いたちの立場が上になるのは当たり前だろう。

(この関係はそう簡単には崩れないな)

元いた世界では貴族制度は幾多の革命により衰退していった。貴族という存在は残っていてもそれらにはこの世界ほどの権力はすでに無い。
革命により貴族の立場が弱まったのは彼らがただの人間だったからだ。しかし、この世界では貴族は魔法を使うことが可能であり、その力は平民たちを恐れさせた。ルイズを初めとして、
貴族が平民を馬鹿にするのはそれらの関係があるからだろう。
この世界での革命が成功するとしたら、ジローの世界で言う近代のレベルまでは待たなければいけないだろう。
しかし、それはジローには関係のないことだった。

(このまま、こういった生活が続けばそれでいい)

少々……だいぶ我が儘だが可愛らしい主人に仕える生活は悪くはない。贅沢を言えば、もう少し生活環境の改善を求めるのだが、この少し騒がしい日常が続けばいい。
ただそれだけをジローは求めていた。


静かな教室には箒を履く小さな音だけが聞こえていた。箒を履くのはジロー。ルイズは椅子に座りながら、割れた窓を眺め、時折横目でジローを見ているという動作が繰り返された。
ジローは手を止めて、ルイズに言った。

「君はやらないのかい?」
「うるさい」

短い言葉で返され、ジローは肩をすくめた。
授業中の出来事であった。シュヴルーズに『錬金』の実践を指名されたルイズは若干、緊張しながらも、『錬金』を行った。何故かルイズが『錬金』を行う際に周囲の生徒たちは必死になってそれを止めようとしていた。
仕切りに『ゼロのルイズ』という言葉が聞こえたが、それが何をしていたのかはすぐに分かった。
周囲の懇願むなしく、ルイズは『錬金』を行った。結果は大爆発。何の比喩表現も無く、ただ爆発が起きたのだ。そのお陰で教室中は大騒ぎに陥った。主人に従順とは言え、本来は野生の獣であった使い魔たちは爆発音に驚き、
主人の命令を聞くことなく暴れだした。それは主人たちも例外ではなく、使い魔が暴れると同時に彼らもまた混乱し始めた。
魔法成功率ゼロ、だから『ゼロのルイズ』とは言い得て妙なあだ名ではあった。
それからしばらくは両者とも無言だった。その間もジローは黙々と仕事をこなしていった。

「わかったでしょう」

長い沈黙に耐えられなかったのか、小さな声でルイズは言った。

「皆が私のことを『ゼロのルイズ』って呼ぶ理由が。何をやっても成功しない、初歩的な魔法すらもできない。魔法成功率ゼロだから『ゼロのルイズ』……」

自嘲気味に話すルイズの姿はどこか儚げな印象があった。
ジローはそんなルイズの気持ちが分からないでもなかった。自身もまた『心』について苦しんだことがある。それは今でも続いている。

「……」

本来なら何か言ってあげたいところだが、ジローには言葉が思いつかなかった。
下手なことをいってルイズを怒らせてしまうという心配もあったが、自分も偉そうにいえる立場でないことも理由の一つだった。
しかし……ジローはほうっては置けなかった。

98:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/07 23:53:33 Xb7DPbQX
支援

99:ピノキオの大冒険
08/05/07 23:54:55 iKCeIWt/
「ある所にウサギとカメがいました」

おもむろにジローは自分のよく知る物語を語り始めた。

「その歩みの鈍さをウサギに馬鹿にされたカメはウサギに山のふもとまで駆けっこの勝負を挑みました。駆けっこを始めると、当然のようにウサギはカメをどんどんと引き離していきました」
「そりゃそうよ……カメがウサギに勝てるはずないわ……何が言いたいの?」
「ウサギは引き離したカメを待ってやろうと余裕綽々で居眠りをしてしまいました。その間にもカメは少しずつ、けれども確実に進み、遂にはウサギを追い越してしまいました。
そして、ウサギが目を覚ますと、そこにはゴールに到着して大喜びするカメの姿がありましたとさ……ルイズ、どうしてカメが勝って、ウサギが負けたと思う?」

突然の質問にルイズは一瞬戸惑ったが、答えは簡単だった。

「ウサギは油断したのよ。カメは絶対にウサギには勝てないって思っていたから。だけど、カメは諦めずに休むことも無くゴールを目指したわ。ウサギのように居眠りもせずにただひたすらゴールを目指したのよ」
「そう。例えばウサギを君を馬鹿にしていた生徒、カメを君とすれば、ルイズ、君さえ諦めなければ、他の生徒にも追いつける、いや、もっと高いところまでいける。誰も追いつけないような場所へ」
「そんな物語のように……上手くいくはずないわよ」
「何故諦める! 君はそれで良いのかい? ずっと、このまま馬鹿にされて、悔しくないのか! ここで諦めるのなら君は一生、ゼロのままだ、それでいいのか!」
「……ッ! 良いわけないでしょ!」

ジローの激励にも負けない大声でルイズは返した。

「時々思っていたけれど、やっぱりアンタ生意気だわ! 見てなさい、いつかそんな態度もできないようなメイジになってやる! 馬鹿にしていた奴らを見返してやる!」
「ふふ……」
「な、何笑っているのよ!」
「いや、元気になったみたいだから」
「あ……私は元々元気よ! ジロー、いいからちゃっちゃっと片付けるわよ!」

照れ隠しのつもりか、ルイズは頬を赤らめながら、大声をだした。
ジローはルイズの言うとおりに掃除を再開した。


苦労の甲斐あってか、教室の片付けは思いのほか早く済んだ。とは言え、昼食の時間を大きく削ってしまったことには変わりなく、二人は急ぎ食堂へと向かった。

「あぁ、ルイズ」
「なに?」
「僕の料理だけど……」
「あぁ~そのこと何だけど……」

あそこまで励まされたにも関わらず、ルイズが用意していたのは朝食と同じ料理であった。とはいえ、わざとではない。これはまさかあのような出来事があるとは思っても見なかったし、朝昼晩全てその質素な料理を出すように料理人に命じたからである。

「厨房に行って何か貰ってくるよ。まかない位は貰えるさ」
「そう……」

ジローもそれを察していた。酷い言い方かも知れないが、ジローにとってこれはまた好都合であった。料理を食べる必要が無くなる機会を巧い具合に手に入れることができたのだから。

「それじゃ」

そういってジローはとりあえず、厨房へと向かった。しかし、その中に入ることはせず、どうしたものかと立ち往生していた。
暇ができてしまった。今頃になって、質素な料理をあの子供の竜に持っていってあげればよかったなどと後悔していた。さらに邪魔になると思いギターをルイズの部屋に置いてきてしまったのはミスであった。
あれこれ考えていると、突然後ろから声がした。

100:ピノキオの大冒険
08/05/07 23:57:14 iKCeIWt/
「あら、ジローさん?」
「ウン?」

振り返るとそこには大きなトレイでデザートを運ぶシエスタの姿があった。今朝のときのように人当たりの良い笑顔をこちらに向けていた。

「どうしたんです、こんなところで?」
「ルイズの食事が終わるまで暇でね。どうしたものかと思っていたんだ……」

ふと、ジローはトレイに目を落とした。そのときあることひらめいた。これならいい具合に暇が潰れると思った。

「シエスタ……」
「もしよろしければ、デザートを配るのを手伝っていただけないでしょうか? 今日は数が多くて、人手が足りないんです」
「あぁ、まかせて」

ジローが手伝いを申し出ようとした瞬間、申し訳なさそうにシエスタが手伝いを求めてきた。少し意表をつかれてしまったが、それを了承する。
厨房からトレイを受け取ったジローはシエスタと共にデザートを運ぶことになった。難なく出来ると思った仕事ではあったが、どうやら食器の配置に決まりがあるらしく、何気なくデザート
を置こうとした瞬間にシエスタに注意された。

「面倒なものなんだね?」
「はい。貴族らしい食事の仕方というものがあるみたいで、少しでも間違えるとお怒りになる貴族様もいらっしゃるんです。ジローさんも気をつけてくださいね」
「わかった」

その後もジローが失敗しそうになったり、どうしたらよいのかわからない時はシエスタに色々と教えてもらいながらデザートを配ってゆく。従者の仕事を何も知らないジローに親切に内容を
教えてくれるシエスタにジローはどこか懐かしいものを感じた。

「ジローさん?」
『ジロー』

ほんの一瞬、シエスタの顔に別の女性の顔が映し出された。反応の遅れたジローは重なった女性に対しての返事をしてしまった。

「あ、はい」
「ふふ、どうしたんです。改まってしまわれて?」
「あ、いや……はは、少し懐かしい人を思い出してね」

最初で最後、ジローが愛した女性。何故かシエスタを見ているとその女性を思い出す。改めてみれば、瓜二つというわけではない、似ているとしたら黒髪とそして……

「さぁ、早く仕事を終わらせましょう」

優しい声であった。
唯一、思い出しても心が痛まない記憶を思い出したジローはほんの少しだけ癒された気分がした。
シエスタの言う通りにジローは仕事を再開した。二人でデザートを配っていると近くで貴族の少年たちの談笑が耳に入る。話の中心にいるのは金髪の少年だった。フリルのついたシャツを着た
少年は周りの少年たちになにやら冷やかしを受けているようだったが、焦ることも無く余裕の顔で対応していた。

「おい、ギーシュ! お前、今誰と付き合ってるんだよ?」
「付き合う? 僕に特定の女性なんていないさ。薔薇を多くの人を楽しませるためにあるのだから」

薔薇を片手に語る少年、ギーシュ。出てくる台詞は所々キザったらしいが、話している内容は他愛もないものだった。元の世界の学生たちもこれくらいの会話はしている。
貴族などと言ってはいるが、こういう場面を見れば学生らしいというものだ。

「おや?」

そんな少年たちを見ていると彼らの足元にビンが転がっているのを発見する。紫色の液体の入ったビンであった。

101:ピノキオの大冒険
08/05/07 23:58:39 iKCeIWt/
(断定はできないが香水か……)

瞬時に液体の成分を調べるとジローは男が香水とはまた洒落たものだなと思いながら、拾ってやろうと歩みだした。

「待ってください」

しかし服の袖をシエスタに捉まれてしまい、足を止めた。

「拾わないほうがいいですよ。面倒な事に巻き込まれます」
「え……どういう意味だい?」
「勘ですよ。とにかく、あのビンからは嫌なものが感じられるんです。さ、行きましょう」
「あぁ……わかった」

本当に良いのだろうかと思いながらもシエスタの後を追うジロー。その後もしばらくデザートを配っていったのだが、突然シエスタが顔色を変えた。

「いけない!」

柄にも無くおろおろとしている様子のシエスタは急ぎ足で先ほどの少年たちの下へと向かった。ジローも何事かと思い後を追いかける。

「シエスタ、どうしたんだ?」
「あぁ……!」

少年たちの近くまで移動した二人の目の前にはシエスタと同じくメイド服を着込んだ少女がビンを拾う瞬間であった。
シエスタよりも年下に見える少女は親切心でそのビンを拾ったのだろうが、それが思わぬ事態を招くなどとはその少女は思わなかっただろう。

「あの、落し物でございます」

少女は何のためらいも無くそのビンを少年たちの中心にいるギーシュへと渡そうとした。恐らく自分たちよりも前にそのビンが落ちる瞬間を目にしていたのだろう。

「何のことかな? これは僕のじゃないよ」

ギーシュは特にそのビンを見るわけでもなく否定したが、周りの友人たちがそのビンに心当たりがあったらしく騒がしくなった。

「おや? それはモンモランシーの香水じゃないのか?」
「確かに、その鮮やかな紫はモンモランシーが自分のためだけに調合するもののはずだ!」
「それがお前のだとしたら、お前が今付き合っているのはモンモランシーだな!」
「おいおい、何を言い出すんだい? 彼女の名誉のために言っておくが……」

ギーシュがなにやら言い訳を言おうとした時、一人の少女が彼の下へとやってきた。小柄な体格から見ると、彼らより年下と見える。
少女は彼の目の前に立つや否や、ボロボロと涙を流しはじめた。

「酷いです、ギーシュさま……」
「あぁ、違うんだよ、僕の可愛いケティ……これには深いわけが……」

何とかなだめようしたギーシュだったが、最後まで言う前にケティの平手打ちが右頬に炸裂した。

「その香水をギーシュさまが持っていたことが何よりの証拠ですわ! さようなら!」

頬をさすりながら走り去るケティを唖然と見送るギーシュ。しかし、彼の不幸はそれだけでは収まらなかった。
騒ぎを聞きつけたのか、遠くの席に座っていた金髪の巻き毛の少女が険しい形相でギーシュの下へとやってくる。

102:ピノキオの大冒険
08/05/07 23:59:34 iKCeIWt/
「やっぱり、あの一年に手を出していたのね」

口調は穏やかそうに聞こえるが怒りがひしひしと伝わってくるようだった。

「ち、違うんだよモンモランシー! 彼女とはラ・ロシェールの森へ遠乗りしただけで……」

冷や汗をかきながら、ギーシュは何とか冷静な態度を装っていた。
しかし、モンモランシーは黙ってテーブルに置かれたワイングラスを持つと中身をギーシュにかけた。

「貴方とはもうおしまいよ!」

ケティに叩かれた頬とは反対側に平手打ちを食らわせ、その場から去ってゆく。
その場に取り残されたギーシュはハンカチを取り出し、顔を拭きながら、芝居がかった仕草で言った。

「彼女たちは薔薇の存在の意味を理解していないようだ」

一通り顔を拭き終えたギーシュはゆっくりと体を回転させ、ビンを拾った少女へ向く。
ギーシュはやれやれといった感じの顔を少女に向けると足を組みながら、言った。

「さて……君の軽率な行動のお陰で、二人のレディの名誉に傷がついてしまった」
「あ……あの」

少女は体を強張らせ、恐怖で顔が蒼白になっていた。
それまで黙っていたジローはギーシュのあまりの身勝手さに怒りを覚え、彼らの下へと向かう。

「ジローさん!」

シエスタの声も無視して、ジローは未だ少女を責め続けるギーシュに向かって大声で抗議した。

「いい加減にしないか!」
「ン? 誰かと思えば、君はゼロのルイズが召喚した平民じゃないか。君には関係のないことだ。引っ込んでいたまえ」
「さっきから見ていたが、彼女は何も悪くない。君にこの子を責める筋合いはない!」
「そうだぞ、ギーシュ! もとはお前が二股していたのが悪い!」

野次を飛ばす友人たちがどっと笑うとギーシュの顔にさっと赤みが差した。
どう考えても非があるのはギーシュの方である。それなのに少女を責めるギーシュをジローの良心が許さなかった。いや、これはそんなものが働かずともジローの意思で彼に抗議しただろう。

「彼女に謝れ。そしてさっきの女の子たちにも謝るんだ」
「ふん、何故僕がそんなことしなければいけないのだい? 第一、平民が貴族に指図するとは……やはり、君はゼロのルイズの使い魔だ。礼儀もなっちゃいない」
「自分の非を認めない君よりは礼儀は知っている」
「なんだと?」

癇に障ったのか、ギーシュは声色を変えると目元を鋭くするとキッとジローをにらみつけた。ギーシュは怒りをあらわにしながら、高圧的な態度を崩さず、言い放った。

「先ほどから君の態度には腹が立つ……平民ごときが貴族に対して取って良い態度ではない……」

そういうとギーシュは薔薇をジローに向ける。

「君には教育が必要なようだね。貴族に対する礼儀というものを教えてやろう」
「遠慮しておこう。君に教わる礼儀はない」

それだけを言い放つとジローは怯える少女の肩を抱きながら、シエスタの方へと押しやった。自分もその場を立ち去ろうとしたのだが、ギーシュの言った言葉を無視することはできなかった。

「主人が主人なら使い魔もとんだろくでなしだな……」
「……」

ジローは立ち止まると無言でギーシュに顔を向けた。
それに気がついた、ギーシュは腕を組みながら、続けた。

103:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/08 00:02:16 bkakPudA
ギーシュにデンジ・エンドフラグか

支援

104:ピノキオの大冒険
08/05/08 00:02:38 U0jSNVZ1
「おや、聞こえたのかい? 気にしないでくれたまえ、本当のことだ」

髪を弄りながらギーシュは見下した視線をジローに向ける。その態度にジローの怒りは最高潮へと達した。
それは自分を馬鹿にされたからではない。明らかなルイズへの悪口。彼女の努力を知るジローにとってそれは聞き捨てならない言葉であった。

「ルイズを馬鹿にしたな?」
「だからどうしたというのだ? まさか主人を侮辱されたから僕に謝罪を求めているのかい?」
「そうだ」

ジローは短く返した。対するギーシュはその言葉を待っていたといわんばかりに、ニヤリと笑みを浮かべる。
その瞬間、ジローは嫌な予感がした。

「そうか。ならば、決闘だ。君は僕を侮辱した……決闘に君が負ければ、君は僕に謝罪するんだ。そして、万が一にも僕が負けるようなことがあれば、僕は君に言う通りに四人に謝ろうじゃないか」
「……」

うかつだったと後悔しても遅い。まさか決闘などと、そんなものにまで発展するとは思っても見なかった。決闘とは戦いである。どのような形であれ、ジローは戦うことは避けたかった。

「どうしたんだい? まさか、アレだけの事を言って怖気ついたはないだろう?」

返事の無いジローをギーシュは挑発するように言った。
奥歯をギリリと噛み締め、ジローは決断を下した。

「いいだろう。約束は守れ」
「ふん、ならばヴェストリの広場まで来たまえ」

ギーシュは体を翻すと、すたすたと立ち去ってゆく。その後をわくわくした顔で仲間たちが追いかけていった。
ジローも後を追おうとするが、後ろからの聞き覚えのある声で足を止めた。

「ジロー!」

振り返ると顔を真っ赤にし、怒鳴りながらこちらに走ってくるルイズの姿があった。
息を切らせながら、ルイズは再度ジローに怒鳴った。

「アンタ、何考えてんの!」
「彼は君を馬鹿にした。それだけじゃない、他にも三人の女の子を傷つけた……」
「そんなの、ほうっておきなさい! 大体、平民が貴族に勝てると思ってるの?」
「勝つさ……勝たなきゃいけない」

ジローはそういいながらギーシュたちの後を追った。
許せなかったのだ。貴族とは言え、身勝手な理由で罪をなすりつけ、あまつさえ無関係の人間を侮辱する、ギーシュの態度を心から許せなかったのだ。
残されたルイズは何度もジローを呼び止めたが止まる気配は無かった。

「あぁもお! 待ちなさい!」

ルイズはいつもの大声をあげながらジローの後を追った。
そして、残された二人のメイド。シエスタは泣きじゃくる年下のメイドをあやしながら、これからおきる出来事に不安を募らせた。

「大丈夫かしら……」

105:ピノキオの大冒険
08/05/08 00:04:14 U0jSNVZ1
投下終了です。
いや、本当、今日はミスがプライベートでもミスが続く日でした。
テレビ占いでは良いとこにいたんですがねぇ。

今回は声優ネタも使ってみました。大して物語に影響ありませんけど。

106:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/08 00:04:14 ZdPbmOXQ
支援

107:燃料投下2
08/05/08 00:08:36 jZRCvrL3
至上最強の弟子ケンイチからアパチャイ・ホパチャイ2
ワルド 堕つ

「ヴェルダンデが怒ってるよ」
「ああそれは済まなかったね」
「とても痛かったと言ってるよ」
「(ヴィンダールフの能力まで持っているのか!!)それは済まなかったね」
「アパチャイ、もういいよ。ワルドさんも謝ってくれたんだからさ」
「わかったよ」

動物を苛めたワルドを悪人認定したアパチャイ
空賊に捕まりウェールズ皇子に会い、城に到着

「あぱ、おいしいよ」
あぱぱぱ 言いながら料理をむさぼる
だが、ワルドがルイズを伴ないどこかに行くのを見ると
急にシリアス顔に
そして求愛ワルドに気づかれないよう後をおった

「ワルド、ルイズを苛めたら許さないよ」

「結婚するんだ、君には関係ないだろう」
「ルイズ嫌がってるよ」
「そんな事無いだろうルイズ?」
ワルドに聞かれ無言になるルイズ
「ワルド、答えはこうよ」

ソ ー ク ・ ク ラ ブ
回 転 肘 撃 ち
 +
エクスプロージョン

指向性爆発により頭が吹っ飛び、色が薄くなり陽炎のように消え去るワルド
「このロリコンめ!」
「ルイズ、今のよかったよ。天才よ」
「ケンイチって誰よ・・・やっぱりワルドは何かたくらんでいたわね」
からんとその場に残ったのはあの仮面メイジが被っていたものだった
それを拾って確かめつつルイズは返答する

アパチャイによりムエタイを習い始めた
ルイズはその爆発をムエタイと組み合わせる事により
新たな技を編み出し
いつか使ってやろうと機会を狙っていたのだが
明らかに不自然な行動を取り続けるワルドに
疑惑を持ち、イライラをつのらせ
空気を読まずにいきなり結婚しようというワルドに怒りがピークに達し
動の気を解放したのだ

「ふう、それでこれからどうするのかよね」
「ワルド捕まえるよ」
「捕まえても逃げられたらおしまいだけど、凄腕だから気を付けないとね」

城のねずみや小鳥に教えてもらったアパチャイが手加減無しでワルドを撃破
オリジナルはルイズがカウロイにより玉を二つ潰し
何とか生きたまま捕縛することに成功したのあった

次回 むちプリ(テファ)登場

108:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/08 00:09:04 6V/77oln
>>105
乙!&GJ!

109:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/08 00:25:03 sOwR+BXf
投下乙ー。それはそうと、
↓の元ネタの曲を動画で聞いていたら、何故かルイズが頭に浮かんだ。
ルイズって愛国心強いしね。なので、しょうもない小ネタを…


(先の戦争でのルイズの歌声を想像しつつ↓)
『トリステイン愛国行進曲』

1.見ヨ東方ノ 空アケテ
  旭日高ク 溌剌ト
  希望ハ踊ル トリステイン
  オゝ晴朗ノ 朝雲ニ
  聳ユル王城(シロ)ノ 姿コソ
  金甌無欠 揺ルギナキ
  我ガ王国ノ 誇リナレ

2.起テ一系ノ 大君ヲ
  魔法ト永久ニ 戴キテ
  臣民ワレラ 皆トモニ
  御稜威ニ副ワン 大使命
  往ケ系統ヲ 宇(イエ)トナシ
  世界ノ人ヲ 導キテ
  正シキ平和 打チ立テン
  理想ハ花ト 咲キ薫ル

3.イマ幾度カ 我ガ上ニ
  試練ノ嵐 猛ルトモ
  断固ト守レ ソノ正義
  進マン道ハ 一ツノミ  
  アゝ悠遠ノ 始祖代ヨリ
  轟ク歩調 受ケ継ギテ
  大行進ノ行ク 彼方
  王国恒ニ 栄エアレ
―――――
元ネタ:『愛国行進曲』
URLリンク(jp.youtube.com)
ちなみに原曲は内閣情報部(当時)の方針により
著作権フリーだった為、幾つも種類があります。

110:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/08 00:32:07 ISGoNadF
>>93
俺もカトレアが召喚でなんか話を考えてるんだが、
ここの既存の作品でカトレア物があったら参考がてらに知りたい。
検索だとちょっと引っ掛かりにくいんだよなー。

111:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/08 00:34:36 SDWRoGC1
カトレアしゃんが南方仁先生を召喚でしゅね!

112:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/08 00:35:13 BllUMi08
姉妹スレでトニ男さん、生ハム召喚。
小ネタでギーグ、ゲンさん召喚。
後はお好みで。

113:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/08 00:35:37 KxhYBjt8
姉妹スレでトニオさんが召喚とはいえないがカトレアさんとくっついてたな
あとマザーからギーグが呼ばれてたが更新が途絶したままだ

姉と妹がひんぬーで次女がきょぬーなあたり
カリン女史の若い頃のバストサイズが気になる

114:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/08 00:40:15 6V/77oln
召喚じゃないかもしれないが未来悟飯もあるな

続き待ってます

115:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/08 00:52:16 ISGoNadF
サンクス、姉妹スレ合わせても極端に少ないのな。

116:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/08 00:53:58 HBkvNW8P
>>105
GJ!
『愛した女性』はやっぱりミツコさんのこと?
そういや、アニメ版キカイダーのミツコさんの声は堀江由衣だったっけ
二人とも黒髪でカチューシャだし、声も同じならダブって見えるのも無理はないかもw

117:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/08 00:54:47 RTeEXkU+
>110
消えそうな命二つ。
小ネタでマザ3のギーグ召喚。
姉妹スレのお嬢様の恋人。

このあたりか。
カトレアメインって縛りだけなら姉妹スレに色々あるんだが……

118:ルイズの恐竜惑星
08/05/08 01:15:19 bkE0hmTp
今話の内容を大幅に描き直し中。
タイトルも「ゼロと高校生と改造恐竜」に変えようと思っています(ようするに才人も召還される)

119:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/08 01:29:54 PmGLHemm
SUMOU召喚

120:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/08 01:35:42 OiqCCySP
吉幾三(IKUZO)召喚
タルブ村の農地が開墾されて拡大し、「われらの鍬」と呼ばれる

121:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/08 01:50:03 hXfkpgfj
完全に避難所向けになるけど、史上最強の弟子ネタでちと思いついた。
ルイズが6の異世界から6人の全く異なるタイプの魔法使いを召喚してその弟子となるってのはどうだろ?

ウォート(ロードス島戦記):古代語魔術。哲学する大賢者の異名を持つ偏屈大魔術師。
古代語魔術の奥義と膨大な知識、戦略的思考をルイズに伝える。

蒼月紫暮(うしおととら):法力。あまりの昼行灯さゆえ、光覇明宗を追放されかけたケンカ百段の異名を持つ法力使い。
法力に根ざした対魔獣戦闘技術を担当。

若カオス(GS美神):魔道科学。西洋魔術と錬金術の申し子の異名を持つ魔道技術の天才。
錬金術を基本に、魔法を効率よく扱う術とそれを応用した様々なマジックアイテムの作成と運用を教える。

チャイルドマン・パウダーフィールド(魔術師オーフェン):音声魔術。
あらゆる魔術戦闘の達人の異名を持つ魔術暗殺者(ソーサレススタッバー)。
音声魔術は流石にルイズには使えないため、主として魔術士に対抗する為の『技術』を教える。

ティア・フラット(スプリガン):ルーン魔術。数十年に渡り命がけの裏の戦いを生き抜いてきており、
裏魔術界の死神の異名を持つ。
紙に書いた簡易魔方陣による幻獣召喚と政治学、経済学を担当。

ダーク・シュナイダー(バスタード):曲者揃いの師匠連中らをまとめ上げる長老であり、
無敵超人の異名を持つ大魔法使い中の大魔法使い。
コントラクト・サーヴァントでルーシェにされた挙句、その状態で散々「犬」と仕込まれた為、
元の姿に戻ってもなんだかんだでルイズには逆らえない体質に。

落ちこぼれ魔法使いルイズが、6人の師匠と類まれなる努力の才能で『史上最強の弟子』と呼ばれるまでの話。
ちなみに師匠たちには「弟子の喧嘩に師匠は手を出さない」というルールがあるため、
基本的にすべてのイベントはルイズ(とその学友達)の実力で切り抜けなければなりません

122:ルイズと不思議な魔法の本
08/05/08 01:53:43 RTeEXkU+
2時から投下よかですか?
本当は長編にしようと思ってた作品ですがどうにもまとまらず、小ネタとして練り直してみました。
元ネタは最後で

123:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/08 01:55:30 qOtCBgg4 BE:289397827-2BP(30)
>>121
纏め上げる事が出来れば面白そうだけど、ハッキリ言おう
無茶だ。

>>122
さてどの魔法の本かな?
支援

124:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/08 01:56:44 OiqCCySP
その面子をうまくまとめ切れたら褒めてやろう。ルイズがストレスで過労死しそうだが
そして六人全員の才能を合わせたらハルケギニア文明世界が崩壊する

125:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/08 01:57:04 PRwDDeI+
>>122
ケロちゃんか?支援

126:ルイズと不思議な魔法の本
08/05/08 02:00:45 RTeEXkU+
 ルイズと不思議な魔法の本


 トリステイン魔法学院に一人、嫌われ者の教師がいる。
 教師と言うのは大概嫌われるものだが、しかしそのなかでも特筆に価するほど彼が嫌われているのは口を開けば「風」の系統の自慢しかしないからだ。
 なにかあれば、やれ「風はすべてを吹き飛ばす」だの「最強の系統は風だ!」と授業そっちのけでのたまい、あまつさえそれが行き過ぎて生徒に怪我を負わせかねない行いをしたことすらある。
 だが、今そんな彼のことを熱い瞳で見つめるものがあった。
 キラキラと輝く、まさしく師を仰ぎ見るかのような視線の主は言うまでもなく某「ゼロ」のメイジである。
 いや、それは正しくない。
 彼女はこの人間としてどうかと思う教師に師事して以来、「ゼロ」の二つ名を返上したのだから。

「それではミスヴァリエール、君に問おう。最強の系統とは何かね?」

 ギトーにとってもそんな視線を受けるのはけして不快ではない、故に少々―いやかなり彼女のことを優遇してしまっても仕方のないことだった。 

「それは風です!」
「その通り、風は全てをなぎ払う」

 ため息すら付きながら風の長所を延々と並べ続ける二人の変人、自己陶酔に浸る二人を処置なしと切って捨ててからキュルケは何故こんなことになったのか肩をすくめる。
 思い出すのはあの日のこよ、キュルケが最愛の相方であるフレイムを呼び出し、そしてルイズが今フレイムの背中の上でマルトーが作ったシチューを鍋から直接がっついているおかしな生き物を召喚した時のこと。






次ページ
最新レス表示
レスジャンプ
類似スレ一覧
スレッドの検索
話題のニュース
おまかせリスト
オプション
しおりを挟む
スレッドに書込
スレッドの一覧
暇つぶし2ch