あの作品のキャラがルイズに召喚されました part122at ANICHARA
あの作品のキャラがルイズに召喚されました part122 - 暇つぶし2ch234:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/20 21:42:08 T+MpzNs3
シゲキックスが食べたくなった。

235:チキの人
08/03/20 21:47:10 EdnJYKfp
10分後くらいから投下しても宜しいでしょうか? 
今回投下する話の次から、ほのぼのにシリアスを加え……るのは無理そうです。
でも少しずつ、原作みたいに熱血な展開を。

236:ゼロの軌跡
08/03/20 21:49:42 Ljh4hxqQ
じゃあチキの人が終わったら僕投下しまーす。
ってことで支援。

237:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/20 21:53:59 Itf9Ll+o
支援仕る

238:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/20 21:55:08 +yadwEEC
>>234
首領パッチのご先祖の方か

239:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/20 21:58:09 jZG/Zw+S
ゼロの軌跡さんへ
感想タイムは開けてから投下お願いしますね。

支援!

240:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/20 21:59:49 woE3emIx
支援

241:ゼロのルイズとマムクートプリンセス 第五話
08/03/20 22:00:29 EdnJYKfp
 部屋が元通りになってから二日。
 ベッドが増えた事以外は、特に何事も無く過ぎて行った。
 今日は虚無の曜日で授業はお休み、チキと街に行く約束をしている。道中は馬車を使って移動することを考えている。
 もちろん私が馬を捌く。ルイズのお姉ちゃん格好良い! というチキの言葉が思い浮かんだ。
 学生なので制服を着て出発する。チキは私とは違って服装も自由なんだけども、
「このお洋服はね、ガトー様が夜なべして編んでくれたの」
 と言って、私が用意させた服を着るのをやんわりと断った。フリフリで装飾がいっぱいのワンピースはタバサに上げた。すっごい気にいってた。
 そうそう、二日の間にチキに友達が増えた。
 タバサの知り合いのシルフィという名前の少女らしい、私はまだ会った事が無いけどとても可愛いんだとか。
 ギーシュとマリコルヌは決闘の結果、ギーシュが勝利した。ワルキューレに蹂躙されたマリコルヌは何故か嬉しそうな顔をして現在も眠っている。
 制服を着た私とチキは、馬車のある小屋に向かっていた。朝も早いから人もまだらだけど全てが使用人だ。
 キュルケとタバサはいないな……? 私は周りを見回す。楽しそうだからという理由で二人きりの休日を邪魔されるわけには行かない。
 このチキとおてて繋いで、トリステインの城下町を巡る。美味しいパイのある喫茶店も調べておいた。演劇の見れる劇場もチェックした。夕方に噴水の出る公園もリサーチした。
 そんな完璧な休日をあんなゲルマニアの女に邪魔されるわけには……。
「んなっ、な、なによ!」
 晴れの日だって言うのに突然辺りが暗くなった、上を見ると巨大な竜が高度を下げて来ている。
 コレは確か……タバサの使い魔の風竜?
「はーいルイズ、キュルケさんが二人の邪魔をしに来たわよー♪」
「……呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃーん」
 唖然とする私をよそに風竜は華麗に着地した後、二人がわざわざフライを使って降りてきた。
 くっ、魔法が使えない私の前でなんてえげつない行為!
「馬車で行くより、やっぱり竜の方が早いわよ二人とも」
「……サラマンダーより、はやーい」
 にやりとムカつく笑みを浮かべるキュルケと、さっきから聞いてはいけない言葉を連呼している気がするタバサ。
 そして何より、風竜に興味深そうな視線を向けているチキの姿が何とも言えない。
 ここは“ルイズのおねえちゃん”として馬車の素晴らしさを語らなければ。
「ねえ、」
「この子に乗って行こうよ、みんなの方がきっと楽しいよ」
「はい」
 きょとんとした表情をするチキに、何でもないよと心で泣いて、私は風竜の上に乗せて貰った。


242:ゼロのルイズとマムクートプリンセス 第五話
08/03/20 22:01:06 EdnJYKfp
トリステインの城下町は今日も人で溢れていた。
 チキは多少気圧されたような仕草をとったけど、ここは私のテリトリー、来た事は何度かしかないけど、どこぞの留学生に比べれば知識は上よ。
 だいじょうぶ、私が絶対に守ってみせるからね。
「そういえば、美味しいデザートの店があるらしいわね」
 こちらに意味深な視線を向けるキュルケ……知らないわよそんな店、クックベリーパイが名物の店しか調べてないもの。
「あ、でも」
「じゃあ、そのお店にみんなで行く?」
「そうね、そうしましょうか」
「……合点承知の助」
 チキの何気ない意見で皆がまとまる……文句なんて、言えるはずも無かった。
 キュルケが紹介したお店は木造のオシャレな作りのカフェテラスだ、だけどあまりお客が入っていないように見える、てか一人もいない。私が首を傾げると、タバサが貸切にしたと呟いたので納得した。
 私達も相当早く出たのにいつの間にそんなことを? タバサってもしかして意外と街に抜け出してるとか?
 いや、キュルケじゃあるまいし。
 室内と外で食べるか迷ったものの、今日は陽射しが気持ち良いからとの理由で外になる。丸いテーブルを中心にしてチキ、私、タバサ、キュルケの順に座った。
 メニューを読めないチキの代わりに私が同じものを注文しようとした所、タバサの杖が私の眼前に迫った。
「……チキは私と同じものにする」
 え? 何を言ってるのよタバサ、チキは私と同じクックベリーパイを食べるに決まっているじゃないの。
 という意図を込めた視線で、タバサを睨みつけた。
「チキは私と同じものにするんだもんねー?」
「えと、うーん、私は何でも良いんだけどなあ」
「だから、私と同じものにするんだから」
「……違う、私と同じの」
 しかしこんなにタバサが食い下がるなんて、意外だ。
 まさか何か弱みでも握られているんじゃないよね? ここでチキの機嫌を取らなかったら殺されるとか? 
「チキ、ストロベリーのタルトにしましょう」
「クックベリーパイだって」
「ブリミルショートケーキにする?」
 なんじゃそのキュルケのやつは、始祖の名を語ったケーキなんて私もワクワクしてくるじゃないか……あーでも、クックベリーパイもここで食べないとしばらくお預けだからなあ。
 うーん。
「じゃあ、タバサのにするよ」
 しまった、私が考え込んでいる間にタバサに抜け駆けをされてしまった。くー、キュルケめぇ……私を惑わすなんてぇ!
 と、怒りに燃えている間にそのキュルケがウェイトレスを呼んでメニューを注文した。
 キュルケの心遣いでメニューにティーセットが加わったが、特に異論は無い。が、次々に行動を決められてしまうのはいかんともしがたい。
 パートナーであるチキ楽しんでもらう為に二人の休日を企画したのに、私はまだ良い所見せてない。馬はタバサに、店はキュルケに持って行かれてしまった。
 私に、私に何ができる。喜んでもらう為にはどうしたら良い?
「お待たせしましたー」
 なんて思っている間にメニューが届いた。
 一口かじる。美味しい、コレはなかなか美味じゃないか。
 チキにも少しあげようかな……もう一口食べてからにしよう。
「チキ、ちょっと分けてあげるわ」
「わー、ありがとうキュルケー」
 チキにケーキを差し出すキュルケに意味深な視線を向けられた。
 私だって今渡そうと思ってたんだから! 勘違いしないでよね!
「チ……」
「ふぅ、コレだけもらえば良いかなぁ」
 私の言葉が宙を迷って、元の場所に戻る。飲み込むたびに心苦しさが倍増したけど、ルイズは強い子なのでだいじょうぶ。
 きょとんとしたチキにどうしたのと聞かれたけど、美味しくて涙が出たと嘘をついた。


243:ゼロのルイズとマムクートプリンセス 第五話
08/03/20 22:01:58 EdnJYKfp
「さてと、そろそろ行きましょうか」
 皆が食べ終わった所でキュルケに声をかけられた。どこに? と視線で問うと。
「良い所よ」
 との答え。
 特に意見を言う気力もないし、タバサもチキもキュルケに同意したのでぞろぞろと四人揃って動き出す。
 城下町にはいくらか裏道も存在する。
 暗くて人通りの少ない道がほとんどだけど、真っ当な商売をしていない人間は存在しない。私の友人である王女様を中心にした王家がきちんと監視をしていらっしゃるから。
 ……そう聞いてはいたんだけど、チキの隣に歩く私も不安になる。慣れているのかタバサやキュルケはどんどん先に進むんだけど、どう考えても表の人間じゃないよねって人が多い。
 が、その不安になってるのは私だけで、チキはちょっと楽しそう、何故。 
「ここよ」
 やっと到着した……と思って、キュルケの指さした先を見ると、
「ん? 武器屋?」
「そうよ、チキにプレゼントしてあげようかと思って」
 んな!? そうか、プレゼント作戦があったのか! ふふっ、キュルケも甘いわね、チキの好みは完全に理解していてよ。
 せいぜいテケトーな物を差し出してやんわりと断られれば良いんだわ!
 そんな意気込みをしながら前を歩く二人に続き店の中に入る。
 商品を売る気があるのかどうかは分からないが、乱雑に置かれた剣や槍。さすがに錆び付いてはいないようだけど、もっと良い店なら沢山あるだろうに。
 店の主人は突然の貴族の来訪に驚いたみたいだけど、タバサが客だと呟くと安心したように腰を降ろした。
「んんー、チキに似合う剣ねえ」
「私、武器なんて要らないよ……?」
「いいのよ、こういうのは持ってるだけで、チキならインパクト大だから」
 私が探している横で、キュルケが適当にとても実用的じゃ無さそうな、レイピアなんかを手にとっている。タバサはタバサでえらい真剣な面持ちで、とにかく軽そうなフルーレの剣先を指で弾いたりしてる。
 二人ともチキが使えるであろう物を選んでるな……甘い、甘すぎる。
 私はあえてチキが受け取ったら絶対に喜ぶであろう剣を選んでみせる!


244:ゼロのルイズとマムクートプリンセス 第五話
08/03/20 22:03:00 EdnJYKfp
「主人、この店でエレガントでゴージャスで一番大きな剣はどれ?」
「少々お待ちください、貴族様」
「ルイズ……あんたって子は」
 私が訴えかけるとキュルケは呆れたように首を振り、チキに小型のナイフを渡したりしている。ふん、そんなちっちゃいのはダメダメよ。
 私がそんな風に鼻を鳴らして待っていると、主人がやたら大きな剣を抱えて戻って来た。確かに豪華な装飾はエレガントでゴージャスだ。
「主人、値段は?」
「2500エキューってところでさ」
 トリステインの奥地に家が建つー♪ あはは、あははは……
「って、高いじゃないの!」
「最近は物騒になってきましたからね、土くれのフーケとかいう怪盗が貴族の屋敷を荒らしまわってるそうですし身を守る物は必要ですぜ……それに、良い剣に値段は関係なし、一生ものだと思えば安いもんでさ」
 ううむ……確かに、一生に一本使えるならその値段でも……うん? 考え込む私の横で、チキが不機嫌そうな顔をして剣を睨んでいた。
 え、もしかしてこういう剣は気に食わないとか? 
「これ、ダメだよ、ルイズのおねえちゃん」
「ダメって?」
「折れちゃう、たぶん私が本気で叩いたら壊れちゃう」
 あはは、まさか。
 そんな剣を2500エキューで売ったら、とんだぼったくりじゃないの。
「エア・ハンマー」
 私が笑いながらチキの頭を撫でていると、タバサが急に呪文を唱えた。もちろん家の中だから軽い物だけど、ちょうど剣を直撃する形になる。
 その剣は根元から場きっと折れ、唖然とした私を中心に、キュルケがおかしそうに笑い、チキはやっぱりと呟き、タバサは当然と鼻を鳴らした。
 いや、確かにぼったくりだったかもしれないけど、タバサのやった行動はかなりまずいんじゃないの?
 ううむ、考えろ考えるんだルイズ。マリコルヌに責任転嫁したみたいにこの状況を誤魔化してみろ! 衝撃で固まっている主人が解凍する前に。
「ねえ、主人?」
「何しやがる! 魔法を使うなんて卑怯だぞ!」
「私コレでも公爵家に連なる者なんだけど?」
「は?」
「どんな人間を騙そうとしていたのか、もう一度その頭で考えてみなさい」
 私が思いっきり心の中で謝罪しながら睨みつけると、全身を震え上げた後に奥の部屋に引っ込んだ、がちゃがちゃと金属の擦り上げる音と一緒に何かがこちらに飛んできた。
「……なにこの古ぼけた剣」
 キュルケが手に取り、鞘から剣を抜いた。
「バーッケラッタ!」
「んな!?」
 すると突然、中年の男性の声が店内に響く。しかしタバサは、私の台詞を取られたと呟き、苦虫を噛み潰したような表情をしていた。
「いやぁー、さっきの話は聞いてましたぜ、公爵家のお嬢さん。オレの魅力がわからねえ店主には飽き飽きしていた所だ、オレを連れて行けよ、少なくても折れちまった剣よりかは役に立つぜ」
 誰より何よりチキが驚いていた。怖がって腰の辺りに抱きついてきたのを、僥倖僥倖とニヤニヤしてみる。
 私が見たのも久しぶりになるけど、これはインテリジェンスソードと言う、別段珍しいわけでもないけどお目にかかる事は少ない剣。
 別名は知性を持った剣で、特徴は今の通り人語を発すること。
「ねえ、勘違いしてるみたいだけど。公爵家のお嬢さんはそこのピンク髪よ」
「へ? 違うのか、こりゃーうっかりだ!」
 タバサがまた、やられた! という表情をした。
 無機物と何張り合っとりますかね、彼女は。
 インテリジェンスソードは器用に自分の身体を跳ねさせて、私の所に飛んできた。しかしさっきと違って柄の部分が飛び出しているわけだから、危険極まりない。
 私は思わずチキに覆いかぶさり、全身の力を使って抱きしめた。
「うきゃ!?」
「だいじょうぶチキ、私が守ってあげるわ!」
 がたがたと震えながら、衝撃を待つもののなかなかやって来ない。
 しばらく時間が経った後で、困り果てたような声が背中越しに響いた。
「お嬢さんはとんだ怖がりだ、まあ、いいけどよ」
 振り向くと剣は床に突き刺さり、鎬の部分を動かすようにして笑っている。
 ちょっと恥ずかしくなったので、こほんと咳払いを一つ。
「このように、いざとなればこうしてチキを守ることが出来るんだから、剣なんて必要ないわよね!」
「そりゃねーよお嬢! オレは一生ついて行くぜ!」
「ええい! 寄るな、笑うな、喋るな!」


245:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/20 22:04:30 Itf9Ll+o
…………あれ?
タバサが可愛いのは知ってたけど、ルイズってこんなに可愛かったっけ?支援

246:ゼロのルイズとマムクートプリンセス 第五話
08/03/20 22:05:30 EdnJYKfp
 結局、このデルフことインテリジェンスソードを買い取る。 
 騙そうとした事は、このデルフの代金を無料にすることによって許す。
 そして剣は私の物となり、チキはキュルケからレイピアを貰っていた。
「マルスのおにいちゃんが使ってたから私でも使えそう」
 との理由らしい。
 ……疲れた、今日は帰ってすぐに寝よう。


~~~~~
投下終了です。明らかにペース配分をミスしましたorz
支援も感想も感謝です。マルスのお兄ちゃんの疑いが晴れる事は無いでしょう。
格好良いマルスさんは、スマブラで見るのが良いです……本編orz

247:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/20 22:07:14 Itf9Ll+o
GJ&乙でした。
どのキャラも言動がホントに微笑ましくて良いなあw

248:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/20 22:08:02 U5SzzW2U
乙ですた。
すかし幼女にプレゼントだっつうて武器屋に連れて行くのキュルケさんどーよそこらへん
せめておもちゃ屋。何故かおもちゃの剣に囲まれてさびしく売られているデルフつうのが見たい。

249:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/20 22:11:46 VFgjAiYZ
>>207
×ロリ顔ショタ
   ↓
○ロリ顔ロリ

250:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/20 22:13:28 jZG/Zw+S
>>おもちゃの剣に囲まれてさびしく売られているデルフ
ぐっじょぶ!
ちきに間違って買われるデルフリンガー想像して吹いた(w

チキかわいいよ、チキ!
ルイズもお姉ちゃんとしていいとこ見せようとしてるせいかかわいいよ!
嫉妬前面に出ない分かわいいよ! さすがチキだよ!

251:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/20 22:16:19 7rr3hS56
>>249
こらこらwww
まあ普通の私服で女子に間違われる主人公だがw

252:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/20 22:20:45 woE3emIx
チキの人乙

一部のひとにこれまたトラウマな台詞をw
フレイムカワイソス

253:ゼロの軌跡
08/03/20 22:23:47 Ljh4hxqQ
そろそろいいですかね。
あと五分位したら投下しますねー。

254:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/20 22:27:13 dCvH1s/h
チキの方乙です
そして支援

255:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/20 22:28:58 woE3emIx
軌跡支援

256:ゼロの軌跡
08/03/20 22:29:26 Ljh4hxqQ
ゼロの軌跡

第十話 蝕、繋がる世界


「ヴァリエール様、レンちゃん。ようこそ、タルブ村へ!」
「久しぶり、シエスタ。元気そうで嬉しいわ」
「紅茶とデザートが楽しみで飛んできたのよ」
「今日は村を挙げて歓迎しますから。覚悟しておいてくださいね」

 タルブ村に着いたルイズとレンはシエスタの歓迎を受けた。
 覚悟?と首を捻る二人だったが、それを問う間もなく腕を引かれ彼女の家へと押し込まれる。村人の歓声が、二人の後ろで閉じた扉をこじ開けんばかりに揺るがした。
 
「来たぞ、われら平民の救世主!」
「ミス・ヴァリエール!気高くも偉大な公爵令嬢!」
「ミス・レン!可愛らしくも異才の天才戦士!」
「新しい貴族。平民を守る女神の来訪だ!」

「村の人達に一体何て伝えたのよ、シエスタ」
「いえ、私のせいだけではないんですよ。だけ、では…」

 恰幅のよい女性がいきなり抱きついてくるのをかわすことも出来ず、ルイズは右腕にレンは左腕にそれぞれかき抱かれた。二人よりも遥かに豊満な胸。濃厚な木と草の香りが立ち込める。
 ひとしきり揉みくちゃにされながらもどうにか解放されたルイズとレンの周りにはたちまち人垣が出来る。口々に褒め称える村人への対応に苦慮しながら、後でシエスタを問い詰めようと固く決意する二人だった。



 遠いところを旅されてお疲れだから、とシエスタのとりなしの甲斐あってかやっと落ち着くことの出来たルイズとレン。客間へとあがり、淹れてもらったお茶を飲みながら話を聞くことにした。

「で、シエスタ。どんな英雄譚を村中にばら撒いたのかしら?レンは何匹のドラゴン相手に大立ち回りをやってのけたことになってるの?」
「そんな人聞きの悪いことを言わないで、レンちゃん。あの、ルイズ様もそんな目で見ないでください。
 ありのままを話しただけですよ。他の貴族が徒党を組む中で彼らに喧嘩を売って、平民の私を助けてくれたんだって」

 悪びれずに答えるシエスタ。思わず頭を抱えるルイズ。一人優雅にカップを傾けるレン。

「それにしたってあの熱狂振りはねぇ…。なんでも私は気高くて偉大な公爵令嬢らしいじゃない」
「レンは天才戦士なんですって。まあ間違いじゃないけどね」
「そうですよ、ルイズ様ももっと堂々と振舞ってください」

 ゼロであることを認めたとはいえ、ルイズから劣等感が完全に払拭されたわけでは無論なかった。
 最後まで一人で彼らに立ち向かえたのならばまだしも、レンに助けてもらったと認めているルイズは素直にその賛辞を受けることが出来なかった。しかも、肝心の決闘は全てレン一人の実力ではないか。
 
 そう考えるとやはり自分はその賞賛に値しない。ルイズは懊悩する。
 結果、行き場のない戸惑いは糾弾にその姿を変えて矛先をシエスタに向けた。

「それだけでああも歓迎されるとは思えないけど。大方、覚えのない善行を二、三十創りあげたでしょう。今なら正直に話せば許してあげるわよ」
「そんなことしてないですって。本当ですよ。ヴァリエール様。
 もう一つの理由は、あれです。ヴァリエール様とレンちゃんが町や村を周って平民の力になってるっていうじゃないですか。その話を何人もの旅の方が触れ回ってるらしくて。うちの村にも来て熱く語っていましたよ」





257:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/20 22:29:45 7MmP2a/H
支援しますよ

258:ゼロの軌跡
08/03/20 22:30:23 Ljh4hxqQ
 その答えにルイズは目を見開き、レンはカップを持つ手を止めた。
 二人ともそこまで評判になることをやっていたという自覚はなかったのだ。
 
 メイジではなくとも立派な貴族としての、その自らの修行の一環としてそれを行っていたのだし、
レンはといえばその理由の多くを、帰還の手がかりを探すことが占めていた。無論のこと、ルイズとの旅は楽しかったし、行く先々で感謝されるのには確かに喜びを感じてはいたが。

「あのね、シエスタ。私別にそんなつもりでいたわけじゃ…」
「なら更に素晴らしいじゃないですか!意図しての人気取りでなく、その自らの望む姿にかくあろうとした、無為から生まれた行為だなんて。流石はヴァリエール様です。これはみんなに伝えないと!」
「…もう何を言っても駄目みたいよ、ルイズ」

 早速新たなルイズ伝を広めようと立ち上がったシエスタを押し留める。
 尾ひれ背びれをつけないよう厳重に釘を刺し、給仕のために下に降りていくシエスタを見送る二人。

「大丈夫かしら…」
「レンはシエスタが大騒ぎする方にナサロークの皮三枚賭けるわ」
「私も同じ方にペレグリンの羽五枚」

 賭けにならないじゃない、とレンが口を尖らせた時、階下の拍手と喝采が床を震わせた。

「なんていうか…」
「良くも悪くも田舎よねぇ…」





 夕食までの時間を釣りや散策でのんびり過ごしたルイズとレンを待っていたのは、シエスタが腕によりをかけた料理だった。
 ヨシェナヴェという奇妙な語感のそれは名前と同じく二人の舌には馴染みのないものであったが、美食を食べなれているルイズをも存分に満足させた。
 が、久方ぶりの村の宴がそのまま大人しく終わりを迎えるはずもなく。


「なるほど。覚悟、ね」

 思わずレンは一人ごちる。
 皿に大盛りにされた具もなくなり鍋の底が見え始めた頃には、場は惨状を呈していた。
 周りに赤い顔をしていない人間は一人もいないし、既に足元には酔いつぶれた男たちで立錐の余地もない。
 誰も彼もが相手を選ばずに踊り狂い、歓声と嬌声は途切れずに広間を飛び交う。誰かが歌を口ずさめばたちまちソロはデュエットになり、コーラスへとその場の人間を巻き込み広がっていく。
 主人も客も上座も下座も貴族も平民もなく手を鳴らし足を打ちつけ、笑顔で開かれた口は決して閉じることはない。

 その喧騒の中でも一際大きく響くのはグラスが打ち鳴らされる音。乾杯の声は一瞬たりとも途切れてはいなかった。
 レンは年齢を理由に差し出される酒を断ることも出来たが、ルイズはそうもいかず。一杯飲み干せば二杯の酒が、二杯を空にすれば五杯のグラスが、息つく暇もなく更に多くのワインが注がれた。
 シエスタにいたっては完全に出来上がって、先ほどから少佐もかくやという演説をぶちかましていた。

「私はレンちゃんが好きだ。私はレンちゃんが好きだ。私はレンちゃんが大好きだ」

 酒と料理で熱く火照ったレンの身を貫く悪寒、首に冷たく氷の柱。夜のシエスタには気をつけろと囁く本能に従い、倒れる寸前のルイズを引き摺って外に出る。
 
 その背中に突き刺さる、シエスタの恐ろしいまでにうららかな宣誓。

「我が家の名物特製ヤムィナヴェ、行きますよー!」

 魔女の釜はまだまだその蓋を開けたばかりのようだった。





259:ゼロの軌跡
08/03/20 22:31:05 Ljh4hxqQ
「有難う、レン。助かったわ」
「ルイズがまたアンロックでも唱えるのはいただけないからよ」

 涼しい風が二人を優しく撫でる。回った酒も心地いい冷気に醒めていくようだった。

 そういえば数日前にもこうやってレンと歩いたことをルイズは思い出す。
 その時はレンが少しだけ、その外見に相応しい少女らしさを垣間見せた気がする。
 もしかすると今夜も彼女の話を聞けないだろうか。

「ねぇ、レン」
「なあに、ルイズ」
「その…、元の世界にはやっぱり帰りたいのよね」

 直接的に聞くことも躊躇われ、かといって話の接ぎ穂にも困り、ルイズは今まで隠してきた自分の願望交じりの言葉を吐き出してしまう。

 今のルイズにとって、レンはかけがえのない親友でもあり盟友でもある。少なくともルイズはそう思っていた。レンがルイズのことをどう思っているかは未だ確たる答えを得てはいなかったが。
 これを聞いてしまうと、ルイズは自分の心が覗かれてしまうような気がしていたのだ。

「どうかしらね。よくわからないわ」

 返ってきた声は冷静で、以前見せた緩みはなかった。
 レンなりに先日の失態を、勿論ルイズは失態などとは思っていないが、気にしているのかもしれなかった。
 
「トリステインでの暮らしも悪くないし、リベールに戻って何かするわけではないのだけど」

 レンの答えはそこで途切れる。
 否定で終わったその言葉の続きが気になったが、ルイズにそれを問うことは出来なかった。
 
 会話がとまり、不自然な沈黙から目をそらす様に向けた視線の先。村の外れ、一角だけ不自然に整理された木立がルイズの目を引いた。
 そこにまるで祀られているかのように、石碑が置かれていた。

「あれ、なにかしら?タルブ村の守り神か何「…ッ!!」」

 ルイズの言葉に視線をそちらに向けた時、レンのつぶらな瞳は大きく見開かれた。
 そしてレンはルイズの言葉を聞かずに石碑に向かって走り出した。





260:ゼロの軌跡
08/03/20 22:31:36 Ljh4hxqQ
 間違いない。あれだ、あの石碑だ。
 アンカー。アーティファクトによって作られた揺らぐ虚構世界の中で、庭園と星層を繋ぎとめていたそれ。
 あれこそが、トリステインを含むこの世界とリベールを含むあちらの世界を結ぶ鎖。
 遂に見つけた、元の世界に帰るための通行証。

 レンは脇目もふらずに石碑に走り寄る。

「ちょっと、レン。どうしたのよ」
「ティータ、クローゼ。聞こえる?レンはここよ。オリビエ、アガット、ジン。誰か返事をして」

 ルイズの声も耳には入らないのか、闇に佇む石碑に向かってレンは必死に呼びかける。

「シェラザード、ミュラー、ユリア、リシャール、ケビン、リース」

 それでも石碑は何の反応も見せなかった。
 それをわかっていながらも、レンは叫ばずにはいられなかった。

「…エステル!ヨシュア!」

 かそけきその祈りが女神に届いたのか、その名前こそに込められていたものがあったのか。
 石碑は青い輝きと共に、佇む人影をを映し出した。

 
 中空に描き出されるスクリーンにはエステルとヨシュアの姿があった。
 場所はどこかの湖畔だろうか。雲一つない青空の下、釣り糸をたれるエステルと少し離れて火を熾すヨシュア。
 しかし、姿は見えども声はせず。届けられるのは映像だけで、魚の跳ねる音はおろか、火の爆ぜる音も二人の声一つすら聞こえてはこなかった。

「あの人がエステル…」
「ねぇ、エステル!こっちを向いて!」

 叫べども叫べども、声は辺りの闇に吸い込まれるばかり。
 石碑が青い光を失い、次第に朧げになっていくその姿に耐え切れず、遂にレンは悲鳴のように彼女にすがった。

「助けて!レンを助けて!エステルッ!!」


 その時、エステルが振り向いた。
 無邪気なその顔には驚愕が彩られ、レンに手を伸ばす。
 
 レンもその短い腕を、あらんかぎりに伸べる。
 しかし、その手は繋がることなく、石碑が光を失うと同時にエステルとヨシュアの姿も溶けるように消えていった。

 伸ばしたその腕を力なく下ろし、レンは膝をついた。
 ルイズもまた、言葉もなく立ち尽くすばかりだった。

 
 このままではいけないと、一歩踏み出したルイズにレンは一言、彼女を拒絶した。

「来ないで。…しばらく一人にしておいて」

261:ゼロの軌跡
08/03/20 22:33:13 Ljh4hxqQ
続いて11話投下します。大丈夫とは思いますが、さるさん食らったら代理お願いします。

262:ゼロの軌跡
08/03/20 22:33:38 Ljh4hxqQ
ゼロの軌跡

第十一話 絆の在り処


 次の日、レンは何事もなかったかのように朝の食卓についていた。
 昨日の今日で彼女が平然と食事を平らげる様子を見て、ルイズは恐ろしくも悲しく感じた。
 あの、いつものようにシエスタにお茶のおかわりを求める、それすらもきっと執行者『レン』としての顔なのだろう。
 昨夜のレンの叫びがルイズの脳裏に甦る。口先でなんと言おうと、間違いなくレンは帰還を望んでいる。エステルの元に。
 だというのに、ルイズに出来ることは何一つとしてなかった。

「レンちゃんは今日どうするの?」
「そうね、近くの森を<パテル=マテル>とお散歩しようかと思うわ」
「ルイズ様はどうしますか?」

 いつの間にか名前で呼ばれていることにも気にならず、ルイズは生返事を返して席を立った。昨日の酒も抜けきってはいないし、なによりレンと一緒にいられる自信が今はなかった。
 部屋に戻って横になっても、騙し絵のように思考が輪をなして休むことも出来なかった。目を閉じても冴え冴えと浮かぶ昨夜の情景。
 そのうちに意識を保つことにも疲れ、ルイズは眠りに沈んでいった。


 昼食の準備が出来たとシエスタに起こされたのが昼過ぎ。軽くて消化のいいものを作りましたからどうぞ、と乞われ眠い目を擦りながら席に着くとそこにレンの姿は無かった。

「レンちゃんならお弁当を持ってまた出かけていきましたよ。<パテル=マテル>も一緒です」
「…気を使わせたかしら」
「はい、何かおっしゃいましたか?」

 なんでもないわ、このスープおいしいわね、とルイズは誤魔化してスプーンを持つ手を動かした。
 
「それよりさっきからルイズって呼んでるけど…」
「あ、も、申し訳ございません。昨日の宴会の際にそうお呼びしてよいと仰っていただいたもので。やっぱり失礼ですよね」
「そんなことないわ。これからもそう呼んで頂戴、シエスタ」

 そんな記憶は丸ごと頭から抜け落ちていたルイズだったが、彼女にそう呼ばれることは嫌ではなく、同年代の親しい友人が出来たようで嬉しささえ感じた。
 その答えに破顔するシエスタ。

 そして、レンと話せない鬱屈を晴らすかのように、ルイズはシエスタとずっと話し込んだ。

 


263:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/20 22:34:12 EFsX204v
支援

264:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/20 22:34:18 7MmP2a/H
ジャパニーズYA☆MI☆NA☆BEと申したか

265:ゼロの軌跡
08/03/20 22:34:23 Ljh4hxqQ
「従姉妹が酒場で働いてるんですよ。ルイズ様も行きませんか?あまり女性向けの店とは言えないんですが」
「そういう所は行ったことがないから楽しみだわ。シエスタの休暇が終わる前に行きましょうか」
「店長さんがすごく変な人なんですよ。悪い方じゃないんですけど…」

「オールド・オスマンってどこらへんが偉大なメイジなのかいまいちわからないわよね」
「よく使い魔の鼠が女性の周りをうろつくので破瓜のメイドのみんなも困ってるんです。ルイズ様、なんとか
出来ませんか」
「あのスケベジジイったら。もうちょっと脅かされた方がよかったのかしらね」

「それでね、そのおじいさんったら幼馴染が作った料理が忘れられないから作ってくれ、なんて言うのよ」
「あはは、オウガ退治の次はレシピ探しですか。貴族修行も大変ですね」
「あちこち走り回る羽目になったわ。そのおかげで色んな人に会えたけど」



 話の種も尽きてもルイズはレンの事を話そうとはしなかった。
 そのことに薄々気づいていたシエスタだったが、彼女はルイズのためにも、踏み込むことを決めた。

「ルイズ様とレンちゃんはこれからも旅を続けられるのですか?」
「…レンのことは?」
「レンちゃん本人からある程度のことは聞いています。ゼムリア大陸のリベール、おそらくは別世界であるところから来たと」
「レンはなんでもないように振舞っているけど、きっと帰りたがっているわ。昨日その手がかりを見つけたけれど、殆ど得るものもないままに終わってしまった」
「あの石碑のことでしょうか。今朝レンちゃんにも聞かれたのですが、生憎私は何も知りません。ずいぶんと昔からあるものみたいですが」

 他の人があれについて話してるのを聞いたこともないですね。とシエスタは語尾をしぼませて申し訳なさそうに言った。
 それを聞いてルイズはレンの気持ちを思って顔を伏せた。

 
 そんなルイズを見たシエスタから優しく言葉を掛けられる。

「それでも、レンちゃんを召喚したのがルイズ様で本当に良かったと思っています」
「どういうこと、シエスタ?」
「ルイズ様は気づいていらっしゃらないと思いますけど、他の誰かといるときとルイズ様がいるときとではレンちゃんの様子が違うんですよ。なんというか、落ち着いているような安心できるような、そんな感じです」

 目を丸くするルイズ。シエスタは微笑んでそのまま話し続けた。

「あの年頃の少女がどうして人殺しに長けているのか、どうして鉄のゴーレムを連れているのかは私は知りません。また、そうなるまでにどんな苦しみがあったのかも。
 元いた世界から切り離されて見知らぬ人の中で一人ぼっち。それはきっととても辛いことです。でも、レンちゃんはルイズ様の存在を救いとして、またそれを必要としている。
 
 ルイズ様がレンちゃんを召喚したのはただの偶然であったのかも知れません。けれど、レンちゃんと出会ってルイズ様は変わられました。貴族として、良い方向へ。
 なら、きっとレンちゃんもルイズ様と一緒にいる中で生まれ変われると思うんです。今よりずっと幸せな生活が送れるように。

 他人との絆があって、初めて人間は立って歩くことが出来る。人と人が出会うということはきっと、そういうことではないでしょうか」

 おじいさんの受け売りなんですけどね。そう言ってシエスタは照れたように舌を出した。
 
 ルイズは何も言わずに立ち上がった。
 レンを迎えにいこう。

「もうすぐお夕食の時間ですから、仲良く帰ってきてくださいね」

 シエスタに見送られて、ルイズは歩き出した。







266:ゼロの軌跡
08/03/20 22:34:56 Ljh4hxqQ
 向かったのは昨日歩いた村の外れ。やはりそこにレンと<パテル=マテル>の姿はあった。
 ルイズが近づくと<パテル=マテル>が反応して蒸気を噴出す。しかし、それに気づいていないはずもないだろうに、レンは石碑の前に座り込んで振り向こうとはしなかった。
 ルイズはその様子に一瞬躊躇ったが意を決して声をかけた。

「レン」
「…」

 答えはなかった。それでもルイズは語りかけた。
 
 ルイズはこれまでレンに多く助けてもらった。レンの存在があったからこそ自分の望む貴族として生きようと決意できたのだし、他の貴族と決闘になったときもレンの助勢があった。
 旅をしている時も数多くの難問にぶつかったがいつだってレンがそばにいてくれた。ある時はその力を、またある時はその知恵を。レンがいなかったら今の自分はない。

 ならば今こそ、自分はレンの力になろう。

「また旅を始めましょう。今度はレンが帰るための手がかりを探す為に」
「ルイズ…」

 思わず立ち上がって振り向いたレン。驚きか喜びか、その顔は泣いているようにさえ見えた。

「でもまた駄目かもしれないわ」
「なら何度でも探せばいい。タルブ村にあったんですもの。他のところにもあるかもしれないわ。トリステインが駄目ならゲルマニアでもアルビオンでもガリアでも。
 それでもないなら東へ向かいましょう。聖地ロバ・アル・カリイエ。エルフなんてレンと<パテル=マテル>なら物の数じゃないわよ」
「でも…」

 ここで諦めてはシエスタに向ける顔がない。
 ルイズは微笑んで言葉を続けた。ルイズを励ましてくれたシエスタのように。

「ほんの少しの間だったけれど、確かに世界は繋がった。エステルはレンに手を伸ばしてくれた。
 レンとエステルの絆は決して切れてなんていない。希望を捨てない限り、レンは誰かと一緒にいられる。
 
 だから、私たちも歩き出しましょう」

 二人はお互いの手をとって、シエスタの待つ家へと歩き出した。





 翌日、たっぷりと寝坊したルイズとレンが遅めの朝食を摂りに下へようとした時、けたたましい音を断ててシエスタが階段を上ってくる音が聞こえた。
 いつもメイド然とした歩き方をするシエスタには似つかわしくないその様子に、二人は何か凶報を感じ取る。顔を真っ青にしたシエスタが話すのを聞いて、その予感が当たったことを知った。
  
「一体どうしたの、シエスタ」
「アルビオンが、レコン・キスタの軍が攻めて来たんです!」

 タルブ村での短い休暇はこうして終わりを告げた。 

267:ゼロの軌跡
08/03/20 22:40:30 Ljh4hxqQ
投下終了です。支援感謝です。空気読めない子ですみません。

>>265
×破瓜→○他

なんという誤字。エロエロですね。流石メイド。俺はえろくない。

おつきあいいただきありがとうございました。

268:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/20 22:44:04 5+iijOcq
そんなハカな!

269:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/20 22:46:48 HTHEXWBI
投下おつかれさまです。
おまたせして申し訳ないですな支援です。

270:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/20 22:53:18 wyvC3tbw
投下お疲れ様でした~~~

271:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/20 22:54:51 aCydgpH2
初物のメイドを喰いまくる鬼畜オスマンの陵辱学園物じゃないのか?
残念!

272:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/20 22:56:19 EFsX204v
乙!

273:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/20 22:58:51 38zvQ7fT
乙!

よりにもよって破瓜とはw

274:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/20 23:02:38 9y6DdGHC
乙!

その単語が一発変換で出るとはw
他で書いてるSSの内容が知りたくなるw

275:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/20 23:09:19 MGTpp93w
これこれ、それを聞くのは酷というものだぞ


生暖かく見守ってあげなさい

276:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/20 23:10:38 xI/jzueb
投下乙!
だが、破瓜で台無しなんだぜw


>>271
『疾風』のギトー先生の位置に『鬼畜』のイトー先生がいるんですね? 分かります。

277:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/20 23:11:26 9F2frGCC
つーか、「破瓜」って「はか」って読むんじゃないの?
どう考えても「他」の変換ミスじゃないよね?

278:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/20 23:13:20 vSykzIQF
「ほか」と「はか」だろ?
まあ、確かにタイプミスで変換ミスではないけど。

279:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/20 23:21:40 NF/CeSPa
携帯なんじゃねと言ってみる

280:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/20 23:26:06 jOlSHqgF
まぁ、そもそも「破瓜」とは、女子16歳を指す言葉で……

と空気読めない発言をしてみる

281:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/20 23:30:35 xx3pXbKr
>>280
そーなのか

282:ゼロの戦乙女 ◆5ZSwcPATsg
08/03/20 23:32:13 HZK7dB+o
視界良好であれば、五分後にSS投下します。
ヴァルキリープロファイルとのクロスです。

283:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/20 23:37:48 7jpCZCaY
>>282
VIS 9999

284:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/20 23:38:21 7jpCZCaY
途中で送ってしまった
VIS 9999。投下どーぞ

285:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/20 23:38:51 7MmP2a/H
期待支援

286:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/20 23:39:35 4eLCF5JN
インフレゲームのインフレキャラ支援

287:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/20 23:39:54 7MmP2a/H
期待支援

288:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/20 23:40:09 8EgWvkh4
ギーシュ「戦乙女でヴァルキリーとな? ついに僕の時代が!」
モンモン「ゼロって書いてるでしょ、諦めなさい」

支援。

289:ゼロの戦乙女 ◆5ZSwcPATsg
08/03/20 23:41:35 HZK7dB+o
ちょっと行数が長すぎたので、調整してきます。
終了したらまた報告します。
申し訳ない。

290:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/20 23:42:38 t3TeatU5
戦乙女ヴァルキリーかと思って期待してしまった

291:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/20 23:43:27 Itf9Ll+o
>>290
おまえはおれだ!ww

292:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/20 23:43:33 7MmP2a/H
支援開始。

293:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/20 23:44:57 4eLCF5JN
>>290
一瞬何が違うんだと思ったらエロゲの方かwww

294:ゼロの戦乙女 ◆5ZSwcPATsg
08/03/20 23:46:43 HZK7dB+o
調整完了。
今度こそ五分後に投稿します。
先程も言いましたが、ヴァルキリープロファイルとのクロスです。

295:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/20 23:47:13 7jpCZCaY
さっきレイピアという単語を見てその次にヴァルキリーときたもんだから、
例のコピペを思い出してしまったのは俺だけでいい

296:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/20 23:47:40 T+MpzNs3
ヴァルキリーフロハイル

297:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/20 23:51:31 0+zfYdhZ
とうとうウェールズ様も活躍できる機会が与えられるんですね支援

298:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/20 23:51:38 38zvQ7fT
>>290
ナニそのエロゲ。

それはともかく誰が来るかな~、支援支援

299:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/20 23:51:39 Py8FaLTO
支援の先を逝く者たちよ!

300:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/20 23:52:48 xx3pXbKr
>>296
フロに入ってどうする?w

支援

301:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/20 23:52:56 +e8Ef1gX
ヴァルキリーと言ったらやっぱり……駄目だVFやYFは「バルキリー」だった
>>286
真のインフレゲームは「日本一」の作品だと思うが…もちろん「岐阜」にある奴

でもヴァルキリー召喚って事はミョルはやっぱり「変態メガネ」なんだろうな

302:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/20 23:54:12 MFCur3kY
……改めて考えてみるとエロゲ出身者結構いるなぁ
つい最近でもとらハやら痕やら

濡れ場突入はまぁたぶんないだろうが……


>>296
セガガガのことかーっ!?

303:ゼロの戦乙女 ◆5ZSwcPATsg
08/03/20 23:54:28 HZK7dB+o
ゼロの戦乙女
プロローグ


 光陰矢のごとしとはよく言ったもので、ラグナロクでレナスがロキを滅ぼしてからもう二十年が経つ。
一度はロキの終末の炎によって荒廃したアスガルドも、レナスの創造の力により元の美しい姿を取り戻し
て久しい。
 しかし、新しい世界の創造主となったレナスは、未だに多くの問題を抱えていた。
 ラグナロクが終わり、多くのエインフェリアがその役目を終えてミッドガルドに転生していく中、過去
に頑なに神界転送を拒み続けたアリューゼやメルティーナなど、一部のエインフェリアは転生を拒んで今
もなおレナスの内に存在している。
 また、旧世界においてアース神族の主神であったオーディーンが、ロキに破れたことを理由に主神の座
を退いた。代わって新たな主神の座についたレナスだが、彼女は同時に一つの幽体を三つの精神が共有す
る戦乙女ヴァルキリーでもあり、残った姉妹たちの精神をどうするのかという問題もあった。
 他にもロキに従ったヴァン神族に対する処遇や、人間界で暗躍している不死者の王ブラムス、今もなお
何処かでレナスを狙っているであろうレザード・ヴァレスなど、レナスが抱えている問題は挙げればきり
が無い。元々第六級神に過ぎないレナスは、創造主という新たな己の地位を持て余しているのが現状なの
だ。
 プラチナとしての記憶を取り戻したレナスは、主神としての日々で擦り減った己の心を、鈴蘭の草原で
癒すことを日課にしており、その日も夜風に揺れる鈴蘭に囲まれながら、実体化して独りルシオを想って
いた。
 冷徹な戦乙女として厳正に魂を選定するレナスにプラチナの影を見出し、ロキの姦計に乗せられ水鏡の
間の水鏡を無断使用するという大罪を犯した青年は、ドラゴンオーブを盗んだロキによって全ての罪を被
せられ殺されてしまった。その彼も、レナスによって再び魂を創造され、既にミッドガルドに転生してい
るはずだった。
 彼がくれたイヤリングは今もなおレナスの耳を飾っており、レナスはこの片方だけのイヤリングをあら
ゆるアーティファクトよりも大切にしていた。

(ルシオ)

 心の中でそっと彼の名を呟くだけで、レナスの心には十年経った今でも変
わらぬ思慕が沸き起こる。鈴蘭の草原に来るとプラチナとしての感情が強く
なり、ルシオが恋しくなってしまう。それでも、レナスは彼を転生させたこ
とを悔いてはいない。
 神と人では寿命も住むべき世界も違うし、そもそも人間の精神は、神々と
違って永遠の命に耐えられるようにはできていない。そのことをよく理解し
ているレナスは、転生したルシオが新たな伴侶を得て幸せになってくれれば
それでいいと思っている。それだけでもレナスは幸せなのだ。

「……あら?」

 ふと物思いから覚めたレナスは、自分の目の前に光り輝く鏡のようなもの
が浮いているのに気が付いた。
 夜の暗闇の中に輝くそれはどこか幻想的で、レナスは興味を惹かれ手を伸
ばす。

「何かしら」

 鏡の表面に触れた瞬間、強い力にレナスは引かれる。
 武装する間も無く鏡の中に引きずり込まれ、成す術も無くレナスの姿は鏡
の向こうに消えた。
 誰もいなくなり沈黙を取り戻した草原で、鈴蘭が静かに夜風に揺れていた。


304:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/20 23:57:06 42cVWl4y
支援

305:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/20 23:57:13 +e8Ef1gX
>>297
それはどうかな?

湖畔にて
変態メガネ「ウェールズ王子、彼は『不死者』となったのです!!」
アン「イヤァァァァーー」

注訳:ヴァルプロでは不死者になると倒されても消滅するだけで魂が残りません

306:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/20 23:59:11 7MmP2a/H
ふられストーカーがレナスのスキルニルを作ってにゃんにゃんしようと襲いかかってくるんですね
把握しましたb

307:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/21 00:01:24 K6CcJyHo
元ネタ知らないけど

支援

308:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/21 00:03:19 rcjj6yKl
流れはレナスか支援

309:ゼロの戦乙女 ◆5ZSwcPATsg
08/03/21 00:06:01 7ZBt7v+F
ゼロの戦乙女
第一話


 レナスが突如現れた鏡に飲み込まれる少し前、アスガルドの神々が認識していない人間界─ハルケギニアで、使い魔召喚の儀式が行われていた。
 舞台となるのは国境をゲルマニアとガリアに挟まれた小国であるトリステイン。そのトリステイン魔法学院で、緩く波打った桃色のブロンドを背中ほどにまで伸ばしている少女が、何度も何度も杖を振っては爆発音を響かせている。

「おい、ゼロのルイズがまた失敗したぞ」
「サモンサーヴァントまで失敗するなんて、ゼロの面目躍如よね~。名は体を現すって感じ?」
「……十三回目」

 既に召喚を終え、契約まで済ませた生徒たちが、ルイズが爆発が起こす度に思い思いに騒ぎ立てる。
 また一つ杖を振り下ろして爆発を起こしたルイズは、観客の声に顔を真っ赤にして怒鳴った。

「五月蝿い! 集中できないじゃない! 特にツェルプストー!」

 名指しされた、赤毛の長髪に小麦色の肌を持ったグラマラスな少女がやれやれと手を掲げてぼやく。

「そんなこと言ったって、あんたの順番になってからもう一時間も経ったじゃない。つき合わされてる私たちの身にもなってちょうだいよ」

「次こそ成功させてみせるわよ! 見てなさい、絶対アンタより凄い使い魔を呼び出してみせるんだから!」

 噛み付くように赤毛の少女に言い返した少女は、掌の汗をローブで拭い、改めて杖を構える。その表情は真剣だが、心なしか焦りが窺える。見た目が可憐な美少女なだけに、失敗を重ねて追い詰められた姿は哀れを誘う。

(大丈夫、絶対できる。自分の才能を信じるのよ、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール!)

 誰も励ましてくれないので、心の中で自分を励ましてルイズは杖を振り上げた。

「宇宙の果ての何処かにいる私の僕よ! 神聖で美しく、そして強力な使い魔よ! 私は心より求め、訴えるわ! 我が導きに答えなさい!」

310:ゼロの戦乙女 ◆5ZSwcPATsg
08/03/21 00:08:52 7ZBt7v+F
ゼロの戦乙女
第一話


 レナスが突如現れた鏡に飲み込まれる少し前、アスガルドの神々が認識していない人間界─ハルケギニアで、使い魔召喚の儀式が行われていた。
 舞台となるのは国境をゲルマニアとガリアに挟まれた小国であるトリステイン。そのトリステイン魔法学院で、緩く波打った桃色のブロンドを背中ほどにまで伸ばしている少女が、何度も何度も杖を振っては爆発音を響かせている。

「おい、ゼロのルイズがまた失敗したぞ」
「サモンサーヴァントまで失敗するなんて、ゼロの面目躍如よね~。名は体を現すって感じ?」
「……十三回目」

 既に召喚を終え、契約まで済ませた生徒たちが、ルイズが爆発が起こす度に思い思いに騒ぎ立てる。
 また一つ杖を振り下ろして爆発を起こしたルイズは、観客の声に顔を真っ赤にして怒鳴った。

「五月蝿い! 集中できないじゃない! 特にツェルプストー!」

 名指しされた、赤毛の長髪に小麦色の肌を持ったグラマラスな少女がやれやれと手を掲げてぼやく。

「そんなこと言ったって、あんたの順番になってからもう一時間も経ったじゃない。つき合わされてる私たちの身にもなってちょうだいよ」

「次こそ成功させてみせるわよ! 見てなさい、絶対アンタより凄い使い魔を呼び出してみせるんだから!」

 噛み付くように赤毛の少女に言い返した少女は、掌の汗をローブで拭い、改めて杖を構える。その表情は真剣だが、心なしか焦りが窺える。見た目が可憐な美少女なだけに、失敗を重ねて追い詰められた姿は哀れを誘う。

(大丈夫、絶対できる。自分の才能を信じるのよ、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール!)

 誰も励ましてくれないので、心の中で自分を励ましてルイズは杖を振り上げた。

「宇宙の果ての何処かにいる私の僕よ! 神聖で美しく、そして強力な使い魔よ! 私は心より求め、訴えるわ! 我が導きに答えなさい!」

 今までとは違い、十四回目のサモンサーヴァントは、長い詠唱で行われた。
 不必要に華美な詠唱は、失敗を重ねている事実を鑑みると、勢いばかりが先行していると言わざるを得ない。だがそれ故に、成功を願うルイズの気持ちを代弁している。
 杖を振り下ろした瞬間、一際大きな音と共に、ルイズの眼の前で今までで一番大きい爆発が起こる。

「また失敗かよ!」

 爆発が起こり野次が上がるが、ルイズはその言葉が聞こえていないかのように爆発で出来た煙を凝視していた。
 いや、実際に聞いていないのだ。振り下ろした杖に、今までとは違う確かな手応えがあったのだから。

(お願い、来て、私の使い魔! ゼロと言われるのはもう嫌なの!)

 手に汗握るルイズを焦らすように、ゆっくりと煙が晴れていく。
 幻獣ならば言うことはないが、最悪小動物でもよかった。とにかく、ちゃんとした使い魔ならば、ルイズは何が来ようと文句をつけるつもりはなかった。
 しかしそんな願いとは裏腹に、煙が消えたルイズの眼前には、幻獣でも動物でもなく、平民の格好をした銀髪の女性が、突然の事態に混乱しているのか、眼を白黒させて座り込んでいるだけだった。


311:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/21 00:09:02 l16voRsK
支援


312:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/21 00:10:17 Q4s8jHnw
<302 
知ってる人が要るとわとは思わなかった。

支援

313:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/21 00:11:46 DBciDspB
戦乙女の皆さんって回復、白兵戦、錬金、ジェムで各種魔法と殆ど無敵な能力だな
炙られても、石像に殴られても余裕だし
あの「不遇な黒い長女」は出るのかな?

314:ゼロの戦乙女 ◆5ZSwcPATsg
08/03/21 00:14:59 7ZBt7v+F
「へ、平民……? そんな」

 呆然とした表情でルイズが呟く。
 無理もない。他の生徒たちはあっさりと召喚に成功し、中にはドラゴンやサラマン
ダーといった強力な幻獣を召喚させている生徒だっているのに、
自分は十三回も失敗した挙句、幻獣でも動物でもなく、よりにもよって前代未聞の、
何の役にも立たなさそうな平民を召喚してしまったのだ。その
落胆は筆舌に尽くし難い。

「嘘でしょ……? こんなに、こんなに頑張ったのに、どうして平民なのよ……」

 ゼロと揶揄されながら、ヴァリエール家の三女として誇れる結果を出せるように、
誰よりも真剣に準備して召喚に望んだのに、小動物すら召喚で
きなかった。
 ルイズは泣きそうになりながら己が召喚した平民を見つめる。
 青色を基調にした上衣と、裾に装飾が施された長スカートは結構上質な生地ででき
ているようだ。整った顔立ちは貴族のルイズが見ても美しいと思えるものだったが、
杖を持っている様子がない以上ただの平民に過ぎない。召喚されたのがメイジだった
らメイジだったで色々と問題だったが、少なくともここまでコンプレックスを刺激
されずとも済んだだろう。
 追い討ちをかけるように、群衆から野次が飛ぶ。

「ルイズが平民を召喚したぞ!」
「さすがはゼロのルイズね!」
「……おめでとう」

 かなり凹んだ。特に拍手までした三人目の言葉に凹んだ。
 本人は純粋に労っているつもりなのかもしれないが、ルイズにしてみれば無表情
で、しかも本を読みながらおざなりにやられても嫌味にしか聞こえない。
 一縷の望みをかけて、ルイズは儀式の監督をしていた教師に頼み込む。

「ミスタ・コルベール! やり直させてください! 平民を使い魔にする
なんて、聞いたことがありません!」

 ローブを着た、禿げ上がった頭の中年男性は一瞬同情的な目でルイズを
見つめるが、真剣な表情で首を横に振る。


315:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/21 00:15:44 l16voRsK
今日は投下ラッシュでオレパッピー。
しかし、さざなみの人のキュルケとチキの人のタバサは自重しろwww

あれ?ヴァルプロの人書きながら投下してんの?さる食らった?

316:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/21 00:17:12 9MmmchWh
>>315
投下しながら調節かと支援

317:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/21 00:17:13 ZeapzxdL
新作の主役がまたしてもレナスでアーリィ様カワイソス支援。

318:ゼロの戦乙女 ◆5ZSwcPATsg
08/03/21 00:20:20 7ZBt7v+F
「それは許可できない。春の使い魔召喚の儀式が伝統のある神聖な儀式だということ
は、勤勉な君ならよく知っているだろう。自分の意に添わない使い魔が出たからって
例外は認められないんだ」

「た、確かにそれはそうですけど……」

 言い返す言葉が見つからずに、ルイズは唇を噛み締めた。
 コルベールの言葉は一々もっともで、言われるまでも無くルイズはそのことをよく
理解していた。
 それでもやり直したかった。立派な使い魔を召喚して、自分をゼロと馬鹿にする人
間を見返してやりたかった。そして何よりも、大切な家名にこれ以上泥を塗りたくな
かった。
 落ち込むルイズを見かねたか、コルベールが励ましの言葉をかける。

「安心しなさい。慰めにもならないかもしれないが、一応召喚はできたんだ。君がゼ
ロでないことは証明されたじゃないか」

 指摘されて、ルイズは初めてその事実に気が付く。
 どういうわけかどんなに簡単な魔法でもルイズが唱えると全て爆発になってしまい
、ルイズは一度も魔法を成功させたことがない。それ故『ゼロ』という不名誉な二つ
名がつけられていたのだが、確かにもうゼロじゃない。『イチ』だ。イチのルイズだ。

(……全然嬉しくないわよ!)

 思わずへなへなとその場に崩れ落ちるように膝をつく。その拍子に自分が呼び出し
た平民と眼が合い、フツフツと怒りが湧き上がる。

(全部コイツのせいだわ。何で出てくんのよ)

 八つ当たり気味に理不尽な怒りをルイズが抱いているとも知らず、武装していなか
ったためにただの平民と思われているレナスは、真夜中の鈴蘭の草原から、燦々と太
陽が眩しい見知らぬ中庭らしき場所に飛ばされたことに困惑していた。
 自分があの不思議な鏡を潜り抜けたことは理解している。だが、何故夜だったのが
昼に変わっているのか、レナスにはさっぱり分からない。今いる場所が何処なのかさ
え分からない。

「……アンタ、誰」

 気が付けば目の前にへたり込んでいる、桃色の髪を持った少女が口をへの字にして
レナスを睨みつけていた。
 しかしレナスにはルイズの心情など分かるはずもない。状況を理解するために、中
腰になり目線を合わせ、目の前のルイズにコンタクトを試みる。

「人間よ。ここはどこだ?」

 レナスの口から漏れた意味不明の言葉の羅列に、ルイズは思わず目を丸くする。

「何言ってるの? 分からないわ」

319:ゼロの戦乙女 ◆5ZSwcPATsg
08/03/21 00:20:57 7ZBt7v+F
「ふむ……お前たちの言葉は分かるのだが……こちらの言葉が通じていないのか?」

 ルイズはレナスの言葉が分からないことに動揺していた。
 サモンサーヴァントで召喚された使い魔は、その時点である程度精神的な改造を施
されている。そのため、どんなに遠くから召喚された使い魔でも、喋れるのなら言葉
が通じないということはないはずなのだ。

「ミス・ヴァリエール。一応サモンサーヴァントは成功したのだから、早くコントラ
クトサーヴァントを行いなさい。そうすれば言葉が通じるようになるはずです」

 困惑する二人にこれでは埒があかないと思ったのか、コルベールがルイズに告げる。
コルベールもルイズと同じ疑問を感じたのか、やや表情が硬い。

「はっ、はい! ─我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァ
リエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ……」

 レナスの頬に手を添え、ルイズは唇を窄めて顔を寄せる。
 そのような行為をされる理由が分からず、レナスは眉を顰めた。
 何か葛藤があるのかフルフルと睫毛を震わせるルイズを見て、ようやくレナスはあ
る程度の合点がいく。

(接吻することで、私と何かの契約をしようとしているのか? ホムンクルスと融合
して完全ではなくなったとはいえ、神に対して、同意も得ずに契約だと?)

 憤った瞬間、レナスの脳裏にある種のトラウマが過ぎる。
 嘗てレザード・ヴァレスの塔で、レナスとそっくりのホムンクルスたちを見たが、
その光景は今もなおレナスの記憶に悪い意味で焼きついている。そして、今レナスが
抱いている感情は、間違いなくその時と同じ『怒り』だ。
 しかし、レナスがルイズを振り払うことはなかった。
 ルイズの右耳に、見覚えのあるイヤリングが揺れているのを見つけたのだ。レナス
はそのイヤリングが何なのかよく知っている。何故なら、同じ物が今もレナスの左耳
を飾っているのだから。

(あれは、ルシオがくれたイヤリングの片割れ。転生したルシオに託した想いの証。
何故この人間が付けているの?)

 イヤリングを見たためにプラチナの思考が強く出たレナスは、一瞬我を忘れてルイ
ズの顔を見つめた。
 呆然とするレナスに唇に、僅かに頬を染めたルイズの唇がそっと合わされる。

「うぅっ……!?」

 ルイズが離れた途端、左手の甲に走る激痛にレナスはうめく。
 平民を使い魔にしたと勘違いしているルイズは、素っ気無い態度でレナスの頭を叩
く。

「使い魔のルーンを刻んでいるだけよ。我慢しなさい」


320:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/21 00:23:49 5676Rqb/
相変わらず導入部のルイズとコッパゲは糞だな

321:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/21 00:24:33 DBciDspB
そろそろアーリィ様もぐれるよなここまで来ると軽いいじめだなw

322:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/21 00:25:42 mYyoDai9
新作発表されたのかと驚きつつも支援。

323:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/21 00:27:04 rcjj6yKl
神族通り越して神なのにね、罰当たりだね。支援

324:ゼロの戦乙女 ◆5ZSwcPATsg
08/03/21 00:27:33 7ZBt7v+F
 痛みを堪えながら、レナスは気安げに頭を叩かれたことにきょとんとし、呆気に取
られた顔をしてルイズを見つめる。もしフレイが今のレナスを見れば、その情けなさ
に頭を抱えるに違いない。

「ふむ。珍しいルーンですね……」

 横では禿げ上がった頭の中年教師が興味深げな様子で、手に持った羊皮紙に何かを
スケッチしている。
 レナスが己の左手に目を落とすと、見慣れぬ文字が刻まれていた。

「これは……ルーン文字?」

 幸いルーン文字ならば、失われたルーンでなければ大体は知識として持っている。
レナスは刻まれているルーンを読み取り、首を傾げる。

(……ガンダールヴ?)

 その言葉が何を意味するのかは分からないが、何かの契約の証であることは間違い
ない。面倒事になるのを予感してため息を付いたレナスは、ちらりとルイズを盗み見る。

(それに、ルシオとこの人間についての関係も調べないと。どうしてイヤリングを持
っているのか。……あのイヤリングは転生したルシオのもとにあるはずなのに)

 プラチナとしての感情を掻き乱されたレナスは、少々混乱しながらも今後の考えを
纏めた。
 とりあえず、ここがどこなのか、そして結ばれた契約が何なのか早急に把握する必
要がある。右も左も分からない以上、レナスにとっては業腹だが、何らかの契約者で
あろうルイズに従うしかないだろう。

「それじゃあ、ミス・ヴァリエールの儀式も無事済んだことだし、今日の授業は終了
だ。これにて解散!」

325:ゼロの戦乙女 ◆5ZSwcPATsg
08/03/21 00:28:21 7ZBt7v+F
言い出したコルベールを始めとして、見物していた生徒たちが次々に『フライ』の
魔法を唱え、使い魔を従え思い思いに飛んでいく。
 中には飛び去り際に「お前は歩いて行けよ、ゼロのルイズ!」と暴言を投げかける
者もいた。

「……私たちも行くわよ。ついてきなさい、事情を説明してあげるから」

 向こうから説明してくれるというのなら是非はない。暴言を投げかける生徒に律儀
に怒鳴り返しながら歩いていくルイズを追いかけて、レナスも見慣れぬ地を歩き出した。


            □ □ □


 使い魔となったレナスを従えて部屋に戻ったルイズは、ベッドに腰掛けると己の使
い魔を見つめた。

「とりあえず最初に自己紹介しとくわね。私はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・
ド・ラ・ヴァリエール。で、アンタの名前は?」

「……レナスだ」

 レナスは無表情を崩さずに簡潔に名乗る。

「さっそくだが、ここが何処なのか聞かせて欲しい。正直今の状況が掴めない」

 平民らしき使い魔を召喚したのを認めたくないのか、ルイズはまだ不満そうな顔を
している。
 しかし、質問をされて腹を括ったようで、足を組んでレナスの質問に答えた。
「ここはトリステイン魔法学院にある女子寮よ。あなたはサモンサーヴァントってい
う使い魔召喚の儀式で召喚されて、私の使い魔になったの。左手に刻まれたルーンが
その証」
「私を使い魔として召喚しただと?」

 レナスは信じられぬ思いでまじまじとルイズを見つめた。仮にも新たな世界の創造
主である自分を使い魔として召喚するなど、聞いたことも無い。それに、人間に使役
されるなど、神々にとっては屈辱も同然だ。
「ええ、そうよ。本当は幻獣がよかったんだけど、この際アンタでも文句は言わない
わ。召喚できただけでも御の字だもの」

「私よりも幻獣を召喚したかったか?」

 暗に幻獣よりも格下に見なされていることに気付き、レナスはムッとする。幻獣の
中でもトップクラスの実力を持つであろうブラッドヴェインやフェンリルをエインフ
ェリアと共に屠ってきたレナスは、少なからず矜持を傷付けられ、苛立つ。
 そんなレナスの思いにも気付かず、ルイズはきょとんとした顔をした。

326:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/21 00:28:50 DQPLAtpr
神だけどレナスの普段着は質素だから支援

327:ゼロの戦乙女 ◆5ZSwcPATsg
08/03/21 00:29:06 7ZBt7v+F
「当たり前じゃない。誰も好き好んで平民を召喚したりなんかしないわよ。私だって
できるなら、ドラゴンやマンティコアを召喚したかったわ」

 本気で残念そうなルイズを見て、レナスはようやく理解した。

(この少女は、私が神だということに気付いていないのか)

 レナスは何だか馬鹿らしくなって、自分から神だと言い出すことを止めた。
 そもそも今のルイズの様子では、言っても信じてもらえないだろう。ならば無用な
行為に時間を割くべきではない。
 さらに言うなら、レナスはトリステイン魔法学院などという施設の存在を今まで全
く聞いたことがなかったため、事態を把握するまでは正体をばらすことで余計な騒動
を起こしたくなかった。

「とにかく話に戻るわよ。で、使い魔に求められる役割なんだけど」

 気を取り直してルイズが解説を再会する。

「一つは感覚の共有よ。私たちメイジは使い魔と契約すると、その使い魔の視界を借
りることができるようになるわ」

「今も見えるのか?」

 何気なくレナスが尋ねると、ルイズは暗い顔をする。

「……できないみたい。私は『ゼロ』だもの」

 『ゼロ』の意味を尋ねようとしたレナスは、召喚当時ルイズが『ゼロ』と呼ばれる
と顔を真っ赤にさせていたのを思い出し、口を噤む。大方蔑称なのだろう。触らぬ神
に祟りなし、藪を突付いて蛇を出す必要はない。
 咳払いを一つして、気を取り直したルイズは説明を続ける。


328:ゼロの戦乙女 ◆5ZSwcPATsg
08/03/21 00:31:55 7ZBt7v+F
「もう一つは、秘薬や薬草、鉱石などの調達。そして最も重要なのが、主人となった
メイジの身を守ることなんだけど」

 言葉を止め、ルイズはじろじろとレナスの服装を眺める。何処からどう見ても、ル
イズにはレナスが平民、それも荒事専門の傭兵などではなく、少々見目のいい村娘に
しか見えない。

「……まあ、アンタにはどれも無理だと思うから、とりあえずは身の回りの世話をし
てくれればそれでいいわ」

 言っているうちに自分で情けなくなってきたのか、ルイズの眉がハの字に下がった。

「よくよく考えてみると本当に役に立たないわね。メイドの真似事しかさせられない
なんて、使い魔の意味ないじゃない」

 レナスは言い返したかったが敢えて黙っていた。
 ルイズの誤解を解くつもりはない。不本意にも、同意なしに契約を結ばれ、無理矢
理使い魔にさせられたのだ。これくらいの意趣返しをしても罰は当たらないだろう。

「それで、今日はどうすればいい?」

 厳かにレナスが尋ねると、ルイズは疲れたのか足を崩して思案する。

「そうね、今は特に頼みたい用はないから、夕食の時間までは好きにしてていいわよ。
学院を探検するのもいいし、ここにいても構わない。好きにしなさい」

 自由時間を与えられたということで、レナスは学院の地理を把握しておくことにした。
 今はとにかく少しでも情報が必要だ。

「なら……少し辺りを散策してこよう」

「私は明日の授業の予習してるから。日が沈んだら戻ってきなさいよ」

 そう言ってルイズは机に向かう。勤勉そうなその様子に少しだけ感心しながら、レ
ナスは何気なさを装ってルイズに問い掛ける。

「一つ聞いてもいいか? その右耳のイヤリングは誰から貰った?」

 振り返ったルイズはきょとんとすると、自分の耳のイヤリングを触れる。

「これのこと? もとから私のよ。物心つく前にはもうつけてたもの。今じゃ外して
ると逆に不安になるのよね。それがどうかした?」

「いや、少し気になっただけだ」

「そう? じゃあ、迷子にならないようにね」

 ルイズが机に向き直るのを見て、レナスは部屋を出た。
 余計な人間に声をかけられないように、自分にアストラライズをかけて霊体化する。
 アストラライズとは、対象物のマテリアルをアストラルに変換し、霊体化する技術
である。人間は本来マテリアル(物質)、アストラル(幽体)、メンタル(精神)の三つで
構成されているが、神は魂と同等の存在なのでマテリアルが無く、アストラルとメン
タルの二つで構成されている。そのため、マテリアライズやアストラライズを行うこ
とで、自由に実体化したり霊体化したりできるのだ。ぶっちゃけ幽霊と大して変わり
が無い。
 霊体化したレナスは目の前のドアをすり抜け、散策がてら適当に生徒たちの観察を
始めるのだった。

329:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/21 00:32:00 ESq6serg
シェーン!カム(ry

330:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/21 00:32:33 DBciDspB
触るもなにもお前が神だろ
と突っ込んでみる。
新作はDSので主人公が妙に老けてるのだっけ?買わないけど

331:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/21 00:33:58 rcjj6yKl
タバサ失神フラグ支援

332:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/21 00:34:27 pBBCWgeI
大丈夫、戦乙女ヴァルキリー2ならメインヒロインはアーリィっぽいのだ
……ワルキューレっぽいのに人気とられなきゃいいが


タバサ失禁フラグ支援

333:ゼロの戦乙女 ◆5ZSwcPATsg
08/03/21 00:34:34 7ZBt7v+F
以上、プロローグと第一話投下終了です。
まごついてしまって申し訳なかったです。
文字数ばかり気にしてたら60行128文字の規定に引っかかりましたorz
支援ありがとうございました。

334:ゼロの戦乙女 ◆5ZSwcPATsg
08/03/21 00:36:55 7ZBt7v+F
追記として、一部二重投稿になってしまいました。
重ね重ねすまんです。

335:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/21 00:37:04 pcFaYIqj
霊体化…………タバサ逃げてーッ支援

336:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/21 00:39:02 rcjj6yKl
>>334
乙!

これから先、楽しみにしてます。

337:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/21 00:39:35 l16voRsK
調整しつつ投下されてたのね。
乙乙~。

338:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/21 00:40:54 JwyKR3c/
本気の神召喚って今まであったっけ?
なにはともあれ乙
ニーベルンヴァレスティで浄化されるのかギーシュ・・・
剣はグランスリヴァイバーか咎人の剣辺りでオーバーキルか

339:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/21 00:41:12 K6CcJyHo
投下乙です
神召喚のTUeeee系と見せかけてのこの展開は素敵だ

340:⑨な使い魔
08/03/21 00:42:27 ObgiKrVQ
夜分遅くに失礼します。小ネタ投下したいのですがよろしいでしょうか?
予約等なければ、10分後に投下したいと思います。
作品は東方Project、キャラは氷精チルノです。

341:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/21 00:42:55 t70rB2yF
つ アマ公(大神)
つ大十字九郎(デモンベイン)
つクトゥグア(クトゥルフ神話)
つ魔王マーラ(真・女神転生Ⅱ?)
ぱっと出せるのはこれぐらい?

342:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/21 00:43:10 F8okml3/

タバサはやくにげて~!

343:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/21 00:43:45 9MmmchWh
.>>340
ついに、ついに⑨が・・・

344:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/21 00:44:50 4z5Yx4Pc
あたいってあ最強ね! と見せかけてナインブレイカー支援

345:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/21 00:45:08 DBciDspB
乙、PS2でマンドラゴラ殺してフリーズしたこともあるので期待です
レナスが居るところには時をかけてでも現れる至上最強の変態で錬金術も嗜む魔術師にも期待

346:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/21 00:45:43 OC/3krqo
乙ー
「私ぁ、カミサマだぁよ」と分かった後のルイズの行動が楽しみだ

>>340投下支援


347:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/21 00:49:00 DBciDspB
>>340やっぱりあたいってば最強ねが来るのか

348:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/21 00:48:59 K6CcJyHo
うろ覚えなんですがガンダルーブってオーディン系に関係してた気が・・・ヴァルハラの戦士だっけか?

349:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/21 00:50:04 bv3kg+4V
>>340
チルノか…一応スペックは高い方なんだよな
二次の印象強くて⑨な面ばかり強調されてるけど
「花映塚2(?)」みたいなのが出たらケロ神様を氷漬けにして~

350:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/21 00:52:34 7ZBt7v+F
虚無の使い魔の名前は北欧神話の精霊からですねー
たぶん(ぁ

351:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/21 00:52:48 qg/Cjrj6
>>338
大日如来

そして支援

352:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/21 00:53:20 pBBCWgeI
よく考えたらレナスが「私は神だ!」とか言い出したら
世界違うんだから邪神扱いされたあげく
下手すりゃルイズが魔女狩りくらって
散々輪姦されたあげく見せしめに火あぶりとかなりませんかね

なんつーかこの世界の貴族は腐った奴が多いからなあ……


頭がパーフェクパーフェクフリーズ支援

353:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/21 00:53:35 DBciDspB
>>349 ゆうこ2花映塚?

354:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/21 00:53:56 NsXByg0V
氷支援

355:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/21 00:55:48 Q4s8jHnw
関係ないけど奥様は魔女だと男は魔法使いで女は魔女。

356:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/21 00:56:06 mPKzXrXM
>>338
小ネタでグローランサの疫病神マリア様

氷精といえば雪女を召喚させたいのう、ぬらりひょんの孫の
そして支援

357:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/21 00:58:22 bv3kg+4V
>>345
来るのは確実ですよ、それとも「既に来ている」のかも(ジョゼフに召喚されて)
でも変態メガネが来たら…ルイズはかなりヤバイな
「愛しのヴァルキリー」にあんな事やこんな事やらせる訳だから「死ぬよりも酷い目」は確実
不死者化されて各種拷問用生物で……寒気がするぜ

358:⑨な使い魔
08/03/21 00:58:23 ObgiKrVQ
自分で10分後と言っておきながら投下遅れましたorz
投下開始します。

359:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/21 00:59:56 N5JZ2H6d
ちょwww⑨ってwwwwまさかwww
支援

360:⑨な使い魔
08/03/21 01:00:45 ObgiKrVQ
「宇宙の(ry」

もうもうと立ち込める白煙の中から現れたのは、妖精でした。

「あたいは氷精チルノ!」

氷精?氷の精かしら?背中に生えてる羽みたいなものが氷みたいだから、きっとそうね。
苦節十数年、このルイズついにアタリを引きました。
今までゼロゼロと蔑んできた連中は地べたに這いつくばってごめんなさいと言うがいいわ。


チルノ?⑨だろ?
⑨!⑨!
⑨を召喚するとは流石ゼロのルイズ!
チルノっ、チルノっ、チルノちゃーん!


外野の反応は様々だ。おい、今ゼロとか言った奴後で校舎裏に来い。



361:⑨な使い魔
08/03/21 01:02:36 ObgiKrVQ
先生たちが何か騒いでいるけど、何かあったのかしら?
あの方向はさっき私をバカにした奴を失敗魔法で吹っ飛ばしてみた方向だけど…
後ろから仕掛けたから、気付かれないわよね。

そんなことはどうでもいいとして、安心したらお腹が空いたわ。今日のお昼は何かしら?

そういえば妖精って何食べるんだろ?
さすがに他の使い魔に与えるようなものという訳にはいかないだろうし…
普通のご飯でいいのかしら。後でメイドに頼んでみましょう。


授業が終わって部屋に戻る時、通りすがりのメイドが畏まってお礼を言ってきた。
なんでも、チルノのおかげで食品の日持ちがよくなって、経費が減ったとか。
後でコック長が正式にお礼を言いに来るとか言ってたけど、面倒だし断ったわ。
別に私がやった訳じゃないしね。

他にも果物のシャーベットを作ったりしてるみたいだから、平民には受けがいいみたいね。
べっ、別に今日出たデザートのシャーベットが美味しかったから言ってる訳じゃないんだからねっ!


362:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/21 01:05:06 JwyKR3c/
コック長がパット長に見えた
支援

363:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/21 01:08:31 DBciDspB
>>362
一瞬PADが目に写ったのは種のない手品ですね
ちょっと来客らしい、こんな真夜中に誰だろう見てきますね

364:⑨な使い魔
08/03/21 01:08:51 ObgiKrVQ
その後もチルノは使い魔として本当によく働いたわ。
ちょっと頭が足りないところもあるけど、ギーシュのゴーレムを弾幕?とかいうので蹴散らしたり、
色々あって実は裏切り者だと判明したワルド様を風の偏在含めてはたき落としたり。
そうそう、アルビオンで私が虚無の担い手だということもわかったんだっけ。
…何かちょっとはしょりすぎたような気もするけど、別にいいわよね。誰が困る訳でもなし。
今の私たちは、祖国を救った英雄として「ゆにっと」というものを組んで各地を回っている。
チルノ曰く、「みんなのアイドルになれる仕事」らしい。そういうものなんだ。

一番のヒット曲は「おてんば☆ラヴガール」。
雑務を任せているシエスタによると、毎日飛ぶように売れて売り上げも上々らしい。
私たちの名声はトリステインのみならずゲルマニア、果てはガリアやロマリアにも広まっている。
エルフにまで広まってるとか聞いたけど、本当かしら?

順風満帆、すべて世は事もなし。

さぁ、今日もステージが私たちを待っているわ!行くわよ、チルノ!



「「あたい(私)ってば最強ね!」」

365:⑨な使い魔
08/03/21 01:14:09 ObgiKrVQ
以上で投下終了です。支援ありがとうございました。

ちなみにチルノの脳内には、幻想郷に帰るという選択肢はハナからありません。
だって⑨ですもの。

それでは名無しさんの次回作をお楽しみにー。
そんな訳で失礼します。

366:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/21 01:26:36 W/v322ox
乙!&GJ

367:ゼロの戦乙女 ◆5ZSwcPATsg
08/03/21 01:37:02 7ZBt7v+F
夜遅くで申し訳ないのですが、五分後に第二話、第三話を投下します。
今回はきっちり調整を済ませたのでスムーズに行くかと思います。


368:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/21 01:38:11 l16voRsK
⑨の人乙。
ヴァルプロの人、かかってこいやーっ!

369:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/21 01:41:12 QuBrISVO
ACのナインボールが来るのかと思った…

370:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/21 01:41:16 ObgiKrVQ
ヴァルプロの方、投下ペース速いですね。
自分も見習いたいですが、なかなかまとめるということができなくて。
支援支援

371:ゼロの戦乙女 ◆5ZSwcPATsg
08/03/21 01:43:03 7ZBt7v+F
ゼロの戦乙女
第二話


 廊下を挟んでルイズの向かい側に自室があるキュルケは、己が召喚
したサラマンダーにとても満足していた。
 火竜山脈に住むサラマンダーの中でも一際大きく立派で、尻尾など
は見たことがない珍しい形状をしている。売るつもりなど無いが、好
事家に売ればおそらく値段はつけられないだろう。

「フレイム~」

 ベッドに寝転がりながら機嫌のいい明るい声で使い魔を呼ぶと、オ
レンジ色の大きなトカゲに似た幻獣がベッドの傍に近寄ってくる。

「……格好いい」

 キュルケに呼ばれて使い魔を見にきていた青い短髪の少女─タバ
サが、ベッドの上に腰掛けて本を読みながら、片目でちらりとフレイ
ムを見て無表情に感想を漏らす。

「でしょ? タバサの風竜には及ばないけど、あたしの属性にぴった
りの使い魔だと思わない?」

「……思う」

 傍から見ればお前ら本当に友達かと突っ込みたくなるようなやり取
りだが、これが彼女たちの普通だった。
 お互いの生活に過度に干渉しない程度の気遣いは持っているし、話
を聞く態度で一々文句をつけるほど子どもでもないから、結構これで
上手くやっていけている。
 レナスが扉をすり抜けてきたのはそんな時だった。
 ベッドの前で控えている使い魔に興味深そうな視線を送る。ベッド
にはキュルケとタバサがいるが、霊体化しているレナスは二人を気に
せずに堂々とフレイムを観察する。

『炎の幻獣? 見ない種類だな。新種か?』

 霊体化していれば声も聞こえなくなるので、レナスは遠慮なく声を
出す。
 突然の侵入者に、フレイムが慌てて振り向いた。

「フレイム?」

「……どうしたの?」

 人間であるキュルケとタバサには霊体化しているレナスの姿は見え
ない。
 フレイムをレナスは珍しそうにしげしげと眺める。

『霊体化した私が見えるのか? お前にしか見えないのか、使い魔な
らば誰でも見ることができるのか、実に興味深いな』

「フレイム? 何を見てるの?」

 使い魔の尋常ならない雰囲気を察したか、キュルケが真剣な表情に
なる。


372:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/21 01:43:08 LQ3fhj4N
⑨の人乙

戦乙女支援


373:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/21 01:43:36 ABIdRU04
作成段階からカウント系の機能がしっかりしてるフリーのテキストエディタ使っとけ
行・文字数の制約にはそれが一番手っ取り早い

374:ゼロの戦乙女 ◆5ZSwcPATsg
08/03/21 01:43:48 7ZBt7v+F
「……使い魔が何もいないところを見るのは何かがいる証拠」

 本を読んでいたタバサは、本に栞を挟むと立て掛けていた身体に不
釣合いな大きな杖を取り、気配を探り始めた。
 心なしか顔色が青い。

「もしかして、幽霊かしら?」

 何もない空間に威嚇しているフレイムを見て、キュルケがピンとき
たように言うと、目に見えてタバサの目が泳ぎ出し、挙動不審になった。

(あっちゃー、そういえばこの子、お化けが苦手なんだっけ)

 キュルケは杖を抜き放ちながら、普段の落ち着きが嘘のように動揺
しているタバサを己の後ろに追いやる。

『驚かせてしまったか。だが人間には見えていないようだな。……な
らば気にするほどのことでもない』

 そう一人で合点したレナスはすぐに出ていこうとしたのだが、少し
茶目っ気を起こしてタバサの背後に回る。
 動きに合わせてフレイムが頭を巡らし、タバサに向き直った。

「……移動した? こっち?」

 動揺したタバサはフレイムの視線から逃れるため、ベッドの上を這
いずって壁際に移動する。
 レナスはアイテム生成で『ウサギの足』を創り出し、移動している
途中のタバサの肩の上に実体化させ、マイペースに壁をすり抜けてい
った。
 不意に肩に重みを感じたタバサが、四つん這いのまま肩に置かれた
ウサギの足をきょとんとした表情で見る。

「タバサ……それ、何?」

 続いて、慄いて乾いた声で問い掛けるキュルケにぽかんとしたまま
顔を向ける。
 ようやく事態を把握したタバサは、杖も本も放り投げてウサギの足
を振り払い、声無き絶叫を上げてベッドから転げ落ちた。

「ちょっ、大丈夫!?」

 慌てて声をかけるキュルケに、タバサは腰が抜けたのか四つん這い
のまま反対側の部屋の隅に高速で這いずっていく。

「ああ、もう、何なのよ」

 キュルケはベッドの上に落ちたウサギの足を拾うと、まじまじと見
た。

「何よ……よく見たらただの作り物のアクセサリーじゃない」

 呆れたように息を吐くキュルケの傍に、レナスがいなくなって緊張
を緩めたフレイムが、のそのそと寄ってくる。

「タバサ、幽霊じゃなくて、ただの悪戯みたいよ?」

 鼻先を摺り寄せてくる己の使い魔を撫でながら、キュルケがタバサ
に声をかける。


375:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/21 01:44:27 NyYSY+f4
我と共に生きるは冷厳なる勇者、支援!

376:ゼロの戦乙女 ◆5ZSwcPATsg
08/03/21 01:44:56 7ZBt7v+F
 部屋の隅でキュルケの様子を震えながら窺っていたタバサは、キュ
ルケの言葉を聞くや否や、自分の杖とベッドに投げ出した本を持って
足早に部屋から出ようとした。

「何よ、もう帰るの?」

 不満そうに言うキュルケに、タバサはドアに手をかけたまま振り返
り、何やらおどろおどろしい雰囲気で言った。

「……犯人、探して仕返しする」

 キュルケとタバサの間の空気が凍り、二人の間に気まずい沈黙が流
れる。

「そ、そう……。気を付けてね」

 無表情でもやる気満々なのが窺えて、キュルケは苦笑いした。
 数刻後、犯人を見つけられずに肩を落として戻ってきたタバサを、
キュルケがあの手この手で慰める破目になったのは言うまでもない。


377:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/21 01:46:09 qpRNwlcY
市宴

378:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/21 01:47:11 W/v322ox
支援

379:ゼロの戦乙女第二話2/3 ◆5ZSwcPATsg
08/03/21 01:47:37 7ZBt7v+F
 日が沈んだので実体化して部屋に戻ると、レナスはルイズによって
そのまま食堂に連れていかれた。
 通称「アルヴィーズの食堂」と呼ばれるトリステイン魔法学院の食
堂は、ヴァルハラの豪華絢爛な建物に見慣れているレナスの目を持っ
てしても、遜色ないと思えるものだった。
 テーブルには灯りとしてなのか、いくつもの蝋燭が均等に並べられ、
揺らめいた光が幻想的な光景を作り出している。また、所々に花が飾
られ、見る者を目を楽しませている。
 そして何よりも、晩餐に相応しい豪勢な料理の数々がテーブルに並
べられていた。

「見事なものね」

「でしょ? トリステインの貴族は、この魔法学院で魔法だけでなく
貴族に相応しい教養も身につけるの。この食堂もそのためのものなの
よ」

 得意げなルイズの説明を聞いて、レナスは素直に感嘆した。
 神々は本来食事を必要としないが、嗜好品としての需要は存在して
おり、現にヴァルハラでも祝勝会などが開かれた時には、酒や料理が
振舞われ、神々にとって数少ない娯楽の一つになっていた。
 それはレナスにとっても例外ではなく、プラチナの記憶を取り戻し
た分、他の神々よりも食に対する欲求は強く、期待は否応無しに高ま
っていく。
 そんなレナスを他所に、テーブルの合間を縫って、どこか得意げに
ルイズは歩いていき、空いている椅子の前で立ち止まってレナスを見
る。
 椅子を引いて欲しいのだと理解したレナスが渋々椅子を引いてやる
と、ルイズは満足そうに優雅な動作で椅子に腰掛けた。
 続いてレナスが隣に座ろうとするのを、素早くルイズが押し留める。

「この椅子に座っていいのは貴族だけなの。アンタはこっち」

 指し示された指に合わせて視線を下げると、床の上に申し訳程度に
豆が浮いた塩スープと、古くなってかちかちに硬くなったパンが置い
てあった。
 まるでプラチナとして生きた時代を再現したかのような献立に、レ
ナスの表情が曇る。
 困った顔で己の食事とルイズの食事を交互に見るレナスを見て、ル
イズがこっそり拳を握った。

(召喚したての使い魔にはしつけが肝心。まずは食生活で主従関係を
きっちり思い知らせるのよ)

「……この扱いの差は何だ?」

 感情を押さえて尋ねるレナスに、ルイズは当然のような顔を取り繕
って答える。

「そりゃ、私が貴族なのに対して、アンタが平民で使い魔だからよ。
本来なら使い魔はここに入れないんだから、入れてあげただけ感謝し
なさいよね」

 尊大な態度で言うルイズは、レナスがきちんと主従関係を認めれば、
きちんそれなりのことはしてやるつもりだった。

(ほら、ご主人さまにすがりなさい! そうしたら恵んであげないで
もないんだからね!)

 レナスは微妙に期待の篭ったルイズの視線を敢えて無視した。

380:ゼロの戦乙女第二話2/3 ◆5ZSwcPATsg
08/03/21 01:48:58 7ZBt7v+F
「……そういえば、今の私の立場は平民の使い魔だったな。食べられ
るものが出るだけマシということか」

 ルイズを他所にレナスはため息をつくと、スープとパンの皿を持っ
て立ち上がる。
 当てが外れたルイズは、きょとんとしてレナスを見上げた。

「食べないの?」

「ここでは食べにくい。外で食べてくるから、何かあったら呼べ」

「えっ!? ちょっと、待ちなさいよ─!」

 何やら憤慨して騒ぐルイズを尻目に、レナスはルイズを置いて外に
出る。
 外では夜空に星が煌き、それなりに落ち着いて食事ができそうだっ
た。
 食堂の傍に座り込み、夜空を見上げながら硬いパンを齧る。

「そういえば、ここまで貧相な食事をするのは、プラチナだった頃以
来か……」

 懐かしい記憶が甦り、レナスは感慨に耽った。
 プラチナだった頃は家が貧乏で、ろくに食事をさせてもらえなかっ
た。
同じコリアンドル村に住んでいたルシオの家も同様で、ある日ルシオ
の妹が人買いに売られていったのを、レナスはおぼろげな記憶で覚え
ていた。
 十四歳で神界に招致されてしまったので、ここまで貧しい食事はそ
れから取ったことがない。
 戦乙女である今は無理に食事をする必要などないのだが、レナスは
何故かそうする気にはなれず、黙々と食事を続ける。献立は貧相でも、
彼女なりに懐かしい味を楽しんでいたのかもしれない。
 そう考えると、具が豆しかない塩スープも何故か美味しく感じられ
た。

「……悪くはないわ」

 レナスの表情が緩む。
 量が少ないので、久しぶりの食事は呆気なく終わった。
 暇を持て余して夜空を眺めていると、横合いから声をかけられる。

「あの、こんな所で何してるんですか?」

 振り向くと、メイド服を着た短い黒髪の少女が、不思議そうな顔で
レナスを見下ろしていた。
 おそらく平民だろう。まだ少女のようだが、貴族並みに恵まれた愛
らしい容姿とメイド服の上からでも分かる胸の膨らみが、将来への期
待を感じさせる。
 レナスが口を開く前に、少女はレナスの横に置かれた空の食器に気
付いた。

「ああ、お食事をなさっていたんですね」

 何か言う前に納得されたために会話が終わってしまったが、少女は
立ち去る様子がなく、興味深そうにレナスを見つめている。


381:ゼロの戦乙女第二話3/3 ◆5ZSwcPATsg
08/03/21 01:49:58 7ZBt7v+F
「私はこの魔法学院でご奉公させていただいているシエスタといいま
す。もしかして、ミス・ヴァリエールが召喚した平民の使い魔って、
あなたですか?」

 おずおずと問い掛けてくる少女に、レナスは目を向けた。
 どうやら、ルイズが平民の使い魔を召喚したという噂は、もうメイ
ドの耳にも入るほど広まっているらしい。

「……本当は平民ではないのだけれど」

 プラチナの感情を引きずったまま、苦々しい顔で暗に肯定したレナ
スを、シエスタは興味深そうに見る。

「そうなんですか? じゃあ、使い魔さんはどんな人なんですか?」

 ここでレナスは戯れを起こした。
 この純朴そうな少女に、自分の正体を明かしてみたらどうなるだろ
うと、悪戯心を起こしたのだ。

「神よ」

 シエスタは一瞬きょとんとしたあと、わあ、と喚声を上げる。

「神様なんですか!? 凄い!」

 あっさりと信じたシエスタが意外で、かえってレナスの方が面食ら
ってしまった。
 普通は自分のことを神だと豪語する人間は、その殆どが気違いだと
相場が決まっているものだ。実際に神であるレナスがそんなことを考
えるのは間違いかもしれないが、実際にプラチナだった頃はそう考え
ていたことを覚えている。

「信じるの?」

 目を瞬いて思わず零した言葉に、シエスタは少し考え込むとにっこ
りと笑う。

「だって、召喚されたのが平民であるよりかは神様だった方がミス・
ヴァリエールだって嬉しいと思いますから」

 レナスは驚いてまじまじと目の前の少女を見詰めた。
 どうやらこのシエスタという少女は、純朴そうな外見だけでなく、
珍しいくらい思いやりに溢れた心の持ち主らしい。
 戦乙女ヴァルキリーとして多くの人間の魂に接し、今もなおそのう
ちに個性的な二人のエインフェリアを抱えているレナスは、目の前の
少女に好感を抱いた。

「ありがとう。信じてくれたあなたに、何か礼をしたいわ」

 淡い笑みを浮かべるレナスに、シエスタは慌てて胸の前で両手を振
る。

「いえ、私は何もしていませんし、お気遣いなく」

 素朴で純真、さらには無欲な態度に、レナスのシエスタに対する好
感度が鰻上りに上昇した。
 さらに笑みを深め、シエスタの手を握る。

「そんなこと言わずに、ぜひ受け取って。そうね、これなんてどう?」


382:ゼロの戦乙女第二話3/3 ◆5ZSwcPATsg
08/03/21 01:51:27 7ZBt7v+F
 手持ちのアーティファクトから『黄金の鶏』を選び、マテリアライ
ズをかける。
 その際にレナスの背中に現れた光の翼に、シエスタは息を飲んだ。

「綺麗……」

 陶然とするシエスタに、マテリアライズを終えたレナスは光の翼を
消し、黄金の鶏を手渡す。
 生命を感じさせる重みに、シエスタは慌てて黄金の鶏を抱えた。

「きゃっ……金色の……鶏?」

 黄金の鶏はシエスタに抱きかかえられても鳴きもせず、暴れもせず
に大人しく腕の中に収まっている。

「それは黄金の鶏という生きたアーティファクトよ。しっかり世話を
すれば毎日『金の卵』を産んでくれる」

「こ、こんな貴重そうなものいただけません!」

 なおも辞退しようとするシエスタに、レナスをゆっくりと首を横に
振る。

「あなたに貰って欲しいのよ」

 シエスタは困りきった顔でレナスと己が抱える黄金の鶏を代わる代
わる見比べ、恐る恐る言った。

「い、いいんですか? 本当にこんなの貰っちゃって」

 動揺のあまり恐縮するシエスタに、レナスは穏やかな気持ちで微笑
んだ。

「ええ。可愛がってやって」

 シエスタは頬を真っ赤に紅潮させて叫ぶ。

「ありがとうございます、使い魔さん! 大切にしますね! ……あ
の、お名前を窺ってもよろしいですか!?」

 自分を召喚したルイズとは違う、素直で奥ゆかしいシエスタの態度
に、レナスは好意的に己の本名を告げた。

「レナス・ヴァルキュリアよ」

「ではヴァルキュリアさまとお呼びしますね! 本当にありがとうご
ざいました!」

 シエスタは尊敬の眼差しでレナスを見つめてお辞儀すると、黄金の
鶏を抱え、興奮冷め遣らぬ面持ちで食堂脇の厨房へ小走りに駆けてい
った。
 その後ろ姿が完全に見えなくなってから、レナスもそろそろルイズ
がいる食堂に戻ろうかと思い、食器を持って立ち上がる。

「たまにはこういうのも、悪くはないかもしれない」

 呟いたその声は、どこか楽しげだった。

383:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/21 01:52:56 qpRNwlcY
レナス太っ腹 支援

384:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/21 01:54:07 ESq6serg
シエスタにいきなり金持ちフラグが

385:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/21 01:54:58 4z5Yx4Pc
太っ腹すぎるwww

386:ゼロの戦乙女第二話3/3 ◆5ZSwcPATsg
08/03/21 01:55:28 7ZBt7v+F
第二話終了、最初タイトルに「第二話1/3」をつけ忘れましたorz
あと、一回目の2/3の最初は場が転換してます。「□ □ □」を入れて
区別するのをおくのを忘れてました。
第三話に続きます。

387:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/21 01:56:17 RV5BLcje BE:413424645-2BP(30)
>>386
乙!
そしてすかさず3話支援!

388:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/21 01:56:57 LQ3fhj4N
猫って偶に何もないトコ見てるよね!

支援

389:ゼロの戦乙女第三話1/4 ◆5ZSwcPATsg
08/03/21 01:56:59 7ZBt7v+F
ゼロの戦乙女
第三話


 夕食が終わり、ルイズが寝静まったのを見計らって、レナスは学院
を飛び出した。
 学院全体を遥かに見下ろせる高みにまで飛翔すると、全く見覚えの
ない地形が見渡せる。
 そしてレナスの頭上には、大きな赤と小さな青の二つの月が輝いて
いた。

「聞き慣れぬ地名……二つの月……やはり、この世界はミッドガルド
ではないのか?」

 彼女の呟きを聞くものは誰もいない。
 少なくとも人間では。

「─そうみたいねぇ。ラグナロクが終わったのに、今度は異世界だ
なんて。退屈しなくて済みそうだけど」

「俺としては、戦えればそれでいいんだけどよ」

「アリューゼ……メルティーナ?」

 何時の間にか、目を見開くレナスの目の前には二人の人間がいた。
 いや、人間というには語弊があるだろう。何故なら、彼ら死んだ人
間の魂なのだから。

「やっぱ転生を拒否しといて正解だったわね。異世界の魔法かー、私
も覚えられるかしら?」

 杖を持った女性の霊体─メルティーナが、興味深げに見慣れない
二つの月を眺める。
 メルティーナは太股にまで届こうかという長さの、ダークブロンド
の髪が美しい女性だ。勝気そうな瞳は猫のように好奇心で輝き、シル
クの襟がついた袖のない単衣と民族衣装風のミニスカートという、か
なり肌が露わになった服装をしている。その代わりにシルクの長手袋と、太股までのタイツをつけているのだが、それでも太股や二の腕が
剥き出しになっているため、もし某魔法学院の学院長が彼女を見たら、
必ずセクハラしたくなるような魅力を醸し出している。

「もっとも、ヴァルキリーがあの嬢ちゃんの使い魔じゃあ、当分戦え
そうにないけどな」

 つまらなさそうに鼻を鳴らすアリューゼは、華奢なメルティーナと
は対照的に、鍛え上げられた肉体を持つ大男だった。
 青色のアーマーとガントレットで武装し、背中に背丈ほどもある巨
大な剣を背負っている。精悍な厳つい顔と、左目にかするようについ
た古傷が歴戦の凄みを感じさせる男だ。
 彼の剣の腕は生前から凄腕の傭兵としてミッドガルド中に鳴り響い
ており、その剣腕は死してエインフェリアとなった今も全く衰えてい
ない。
 彼らはレナスが最も信頼し、ラグナロクが終わった今も、転生させ
ずにエインフェリアとして残している人間たちだった。
 レナスの内から見たルイズのことを思い出したか、メルティーナが
可笑しそうにニヤニヤする。

「それにしてもあのルイズって子、ヴァルキリーのことを本気でただ
の平民だと思ってたわねぇ。傍から見てて笑っちゃいそうだったわよ」

390:ゼロの戦乙女第三話1/4 ◆5ZSwcPATsg
08/03/21 01:57:55 7ZBt7v+F
 使い魔にされた屈辱を思い出したか、レナスは驚いていた表情を消
してむっつり顔になる。
 プラチナとしての記憶が解放されてから、妙に感情豊かになったレ
ナスにクスクスと笑いながらも、メルティーナは表情を真剣なものに
戻す。

「……で、どうなの? 使い魔契約は破棄できそう?」

 メルティーナはどこか心配そうな顔でレナスの左手を見つめるが、
レナスは首を横に振る。

「どうだろうな。できるだろうが、今すぐには無理だろう。まずはこ
のルーンを調べてみなければどうとも言えん」

 つまらなさそうにしていたアリューゼも、レナスの左手に視線を飛
ばしてため息をついた。

「破棄できなきゃこっちが困るぜ。異世界に来たのは別に構わねぇが、
俺がエインフェリアになったのは戦うためなんだからよ」

 子どものお守りなんてごめんだぜ、と肩を竦めるアリューゼに、メ
ルティーナは呆れたような顔をした。

「ラグナロクが終わって随分経つのに、相変わらずの戦闘狂ねぇ、あ
んた」

「知識狂のお前が人のこと言えるかよ。ラグナロクから二十年間、飽
きもせずに魔術の研究ばっかしやがって」

 負けじと言い返すアリューゼに、メルティーナは鼻で笑う。

391:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/21 01:58:48 W/v322ox
支援

392:ゼロの戦乙女第三話2/4 ◆5ZSwcPATsg
08/03/21 01:58:57 7ZBt7v+F
「当たり前よ。レザードに遅れを取ったままで済ませやしないわ」

 結局、戦いと研究の違いはあれど、一つの事柄に狂っている点で二
人は似たもの同士だった。
 二人のやり取りを、レナスは穏やかな表情で見守る。
 嘗てアーリィに破れ、アストラルボディから精神のみが弾き飛ばさ
れた時、自分が助けを求めたのはこの二人だった。
 それから続く三人の絆は、異世界に移動した今でも変わらない。
 レナスは少しでも恩を返せたらいいと思い、これからを二人の意思
に委ねることにした。

「メルティーナ、アリューゼ。お前達はこの世界でしたいことはあるか?」

 突然の質問に二人は面食らいながらも、思い思いに答える。

「私はやっぱり研究がしたいわ。まずはこの世界の魔法を調べて、で
きるなら使ってみたいわね。うまくやれば既存の魔法と組み合わせて
新しい魔法を編み出せるかもしれないし。ここは魔法学院らしいから、
私にはうってつけね」

「さっきも言ったが、俺は戦いだな。戦場に立てるなら言うことはね
えが、チャンスが来るまでは腕が鈍らないよう適当にやるさ。その代
わり、何かあったら必ず俺を使えよ、ヴァルキリー」

 二人の意見を聞いたレナスは重々しく頷く。

「……そうか。では当面はそのようにしよう。その間、私はこの世界
を脱出する術を考えておく。ビフレストのように世界を繋ぐ場所がこ
の世界にもあればいいのだが」

 深刻そうに呟くレナスに、メルティーナもまた腕を組んで考え込む。

「そうねぇ。永遠にここに留まっているわけにもいかないし、いつま
でもヴァルハラを放っておくわけにもいかないものね」

 アリューゼがこきこきと首を鳴らしながらしかめっ面になった。

「ヴァルハラ側に見つけてもらうのを待つのが一番手っ取り早そうだ
がな」

 同じく渋面になったレナスが困りきった様子で空を仰ぐ。

「だが、向こうに任せきりにしておくわけにもいかない。幸い、マス
ターとなった人間の証言で、私がこの世界の魔法によって召喚された
ことは分かっている。他の方法も探してはみるが、今はメルティーナ
の研究に頼るのがもっとも近道だろう。すまんな、メルティーナ。迷
惑をかけそうだ」

 神妙な様子でメルティーナに小さく頭を下げるレナスに、メルティ
ーナは気の強そうな外見とは裏腹に、レナスを慈しむような微笑みを
浮かべる。

「私の趣味とも一致してるんだから、気にしないで。それよりも、明
日からは私たちも外に出ていい? 霊体でもいいから歩き回ってみた
いのよ」

 断る理由のないレナスは快諾する。


393:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/21 01:59:17 2hhteJpw
戦乙女支援

394:ゼロの戦乙女第三話2/4 ◆5ZSwcPATsg
08/03/21 02:00:36 7ZBt7v+F
「構わない。だが、この世界の使い魔は霊体が見えるようだ。それに
だけ気をつけてくれ」

 メルティーナは再び好奇心に目を輝かせた。

「使い魔か~。私もそのうちこの世界の生き物で使い魔を作ってみよ
うかしら?」

 女二人が姦しい話をしていると、蚊帳の外に置かれていたアリュー
ゼがレナスに提案する。

「おい、この世界にも不死者はいるんだろ? なら腕試しに討伐に行
ってみねぇか?」

 アリューゼらしい提案に、メルティーナも頷く。

「そうね、私もこの世界で魔法がどこまで通用するのか知りたいし。
私はアリューゼの意見に賛成よ、ヴァルキリー」

 やる気になった二人の頼もしいエインフェリアに、レナスは微笑み
を浮かべた。

「そうだな。では、精神集中をして狩り出すとしようか」

「そうこなくっちゃ!」

「へっ、腕が鳴るぜ」

 メルティーナとアリューゼの魂を内に戻し、レナスは目を瞑って精
神集中を開始した。
 その夜、不死者ではないが、王都から遠く離れた村に被害を与えて
いたオーク鬼の群れが、謎の三人組に討伐されたという。


            □ □ □

395:ゼロの戦乙女第三話3/4 ◆5ZSwcPATsg
08/03/21 02:01:40 7ZBt7v+F
 朝起きると、見慣れない平民が部屋の床で毛布に包まって寝ていた。

「……ああ、昨日使い魔を召喚したんだっけ」

 寝ぼけ眼を擦りながらベッドから上体を起こし、伸びをする。
 使い魔は長い銀髪を中ほどから三つ編みにした状態のまま、着替え
もしないで寝たようだった。
 事実は全く違うのだが、勿論ルイズはそんなことは知らない。
 レナスの寝顔を見ていたルイズは、彼女が平民にしてはかなりの器
量好しであることに気付いた。
 滑らかな光沢を放つ銀髪はとても長いのに櫛を通す必要なんてなさ
そうなくらい真っ直ぐだし、普段は無表情なので分かり辛いが、顔立
ちも女神像のように清楚で神秘的な造形だ。
 身長もすらりと高く、それでいて高すぎるというほどでもない。体
型だってキュルケほどの凹凸はないが、出るところは出ていて、引っ
込むべきところはきちんと引っ込んでいる。
 全体的に見るとバランスがとても良く、欠点がどこにも見つからな
かった。

「……さっさと置きなさいよ!」

 見ているうちに嫉妬混じりの理不尽な怒りが込み上げてきたルイズ
は、八つ当たり気味にレナスから毛布を剥ぎ取る。
 レナスは何事もなかったかのように目を開け、ルイズに視線を向け
た。

「どうした、ルイズ」

「へ?」

 てっきり吃驚して慌てふためくか、眠りを妨げられたことに憤慨し
て突っ掛かってくるかと思い、それにかこつけてお仕置きする気満々
だったルイズはきょとんとした。

「何よ、起きてたの?」

 不満そうに自分を睨みつけるルイズに、レナスは上体を起こして身
体を解しながら答える。

「寝ていたに決まっているだろう。お前の性格は昨日の時点で大体把
握した。今更叩き起こされたくらいではいちいち驚かん」

 無理矢理起こされても怒りもせず、不機嫌にもならずに冷静さを崩
さないレナスだが、寝起きで虫の居所が悪いルイズはかえって腹が立
ったらしく、ジト目でレナスを睨む。

「むー……昨日もそうだけど、その口調どうにかならないの? 仮に
もご主人さまに向かって『お前』とか何様よ。敬語を使いなさい、敬
語を」

「断る」

 にべもなかった。
 拒否されるにしても、ここまであっさりばっさり切られると思って
いなかったルイズは反射的に声を荒げる。

「何でよ! アンタ私の使い魔でしょ!?」


396:ゼロの戦乙女第三話3/4 ◆5ZSwcPATsg
08/03/21 02:02:53 7ZBt7v+F
「一方的に契約しただけで、私の同意を得ていないだろう。逃げ出さ
ないだけありがたく思え」

 レナスは素っ気無く言って、立ち上がり、窓に歩み寄ってカーテン
を開ける。
 朝日が窓から差し込み、少しだけ部屋が明るく、暖かくなった。
 しかし、それでも活火山の溶岩並みに顔を赤黒くしたルイズの心を
宥めることはできなかった。

「アンタ、今日は朝ご飯抜き!」

 かくてお仕置きを言い渡されるが、昨日のような不意打ちでなけれ
ばレナスの心にはダメージを与えられない。
 案の定「そうか」とあっさり返される。

「……まあ、アンタの躾は後にするわ。服、着替えさせて。下着も含
めて着替えはそこにあるから」

 疲れたような顔のルイズが指差す先に視線を向けると、確かにミッ
ドガルドでもよくあるようなクローゼットや衣装棚があった。
 それを確認して、ルイズに視線を戻す。

「私が着替えさせるのか?」

 さすがに呆れて問い掛けるレナスに、ルイズが怒鳴る。

「貴族は使用人がいる場合は自分で着替えないの! つべこべ言わず
にさっさとする!」

 レナスはため息をつき、幼い子どもにするようにルイズの頭を一撫
でした。

「やれやれ、手がかかる子だ」

 子ども扱いされたことになおも騒ぐルイズを無視し、レナスは昨日
のルイズの格好を思い出して、クローゼットからマントとプリーツス
カートを、衣装棚から白いプリーツスカートと下着を取り出す。

「脱がせるぞ」

 一応断りを入れてから、ルイズのネグリジェを脱がせ、下着を取り
替える。未だに膨れっ面のルイズから細かい指示を聞きながら制服を
着せ、最後にマントを着せて金具で固定する。
 ルイズは部屋の姿見で制服が着崩れていないか、マントに皺が寄っ
ていないか確認すると、満足そうに笑った。

「初めてにしては中々じゃない。褒めてあげるわ」

 こんなことでルイズに褒められても全く嬉しくないレナスは、心中
を押し隠して無表情で佇む。

「じゃあ、朝食に行くわ」

 ルイズは杖を腰に差すと、レナスを連れ立って部屋を出る。

「あら、ルイズじゃない」

「げっ、ツェルプストー」

397:ゼロの戦乙女第三話4/4 ◆5ZSwcPATsg
08/03/21 02:04:09 7ZBt7v+F
 自分達と同じように、向かい側の部屋から出てきたキュルケがルイ
ズを見つけて不敵な笑みを浮かべる。
 対するルイズは顔を顰め、「朝から嫌な奴に出会っちゃったわ……」
などと小さく呟く。
 キュルケはルイズの横に佇んで二人のやり取りを眺めていたレナス
に目を向け、ルイズに一度ちらりと意味ありげな視線を向けると気安
げに話しかけた。

「こんにちは使い魔さん。お名前はなんていうのかしら?」

 教えようか教えまいか僅かに逡巡するレナスを見て、ルイズの眦が
釣り上がる。

「レナス、ツェルプストーなんかに答える必要はないわよ!」

 猫のように毛を逆立ててキュルケを威嚇するルイズは、キュルケを
意識するあまり思い切り墓穴を掘った。

「ああ、レナスっていうのね。ルイズ、教えたくないなら名前で読ん
じゃ駄目じゃない!」

 「あっはっはっは!」と腹に手を当てて大笑いするキュルケに、ル
イズは恥ずかしさからか顔を真っ赤にして反論する。

「ちちちち違うわよ! あああんたがちゃんと気付くか試しただけな
んだから!」

 誰がどうみても無理のある取り繕い方をするルイズに、キュルケは
生暖かい眼差しを送った。

「はいはい、そういうことにしといてあげるわ。でもね、ルイズ。ど
うせ使い魔にするんなら、こういうのの方がいいわよ? フレイム!」

 キュルケの呼びかけに、彼女の部屋からのっそりした歩みで使い魔
が出てくる。

「サラマンダー?」

 思わず声を上げたルイズの目に、露骨に羨望の眼差しが浮かんでい
るのを見つけてしまったレナスは、殊勝にも見なかったふりをした。
 レナスと同じようにルイズの目に浮かぶ感情を敏感に察したキュル
ケは、にんまり笑ってフレイムの尻尾を指し示す。

「そうよ? ほら見てこの尻尾。ここまで鮮やかで大きな炎の尻尾は、
間違いなく火竜山脈のサラマンダーよ? その中でも群れを束ねるボ
スだったに違いないわ。しかも、私の属性ともピッタリよ!」

 ふぬぬ、と悔しげに歯を噛み締めるルイズを他所に、レナスはゆっ
くりとフレイムに歩み寄った。
 ルイズが間にいたのでレナスの姿が分からなかったフレイムは、見
覚えのある姿に硬直する。
 予想外の事態に固まるフレイムの背を、レナスは優しい手付きで撫
でた。
 レナスに敵意がないことが伝わったのか、フレイムはしばらくする
と安心し、身体の力を抜いて撫でられるに任せ始める。

「立派な幻獣だな。サラマンダーというのか」

 己の使い魔を撫でるレナスに、キュルケはにっこり笑う。


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