アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ13at ANICHARA
アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ13 - 暇つぶし2ch399:刻無―キズナ― 零 ◇wYjszMXgAo(代理投下)
08/03/03 11:02:54 26kDYzYl
◇ ◇ ◇


……唐突に、ここを移動すると言われたの。
シロウやラッドが出かけているよ、って聞いたら、
シロウなら途中でラッドが拾ってくれるから、あっちで合流できるよってネネネは言った。
……でも、多分それはウソ。

だって、ネネネは泣きそうな顔だったんだもん。
それでもムリして笑って、大丈夫だから、って言ってくれた。
ネネネも大切な人を亡くして辛いのに。
……きっと、さっきのお返しのつもりなのかな。
ネネネの優しさが身に染みる。
だから、私は気付かない振りをした。
急いで刑務所に行ってシロウを待つことに文句を言うけど、結局折れて一緒に行く。
そんな事を演じてみせて、今はアケチ達の後ろを歩いている。
顔を見られたくないから。

こんな事になるんじゃないかって心のどこかで思ってた。
だって、シロウはあんな性格だもん。
再会出来た事だって大きな奇跡だったのかもしれない。

『……マスター』

マッハキャリバーが呼んでくれる。
……でも、私はうまく答えられない。

「……ごめんね、マッハキャリバー。
 少しだけ、少しだけでいいから……放っておいて」

ぽろぽろ、ぽろぽろ。
涙が止まらない。
皆にシロウのご飯を食べて欲しかった。
一緒に座って、わいわい楽しく食事を囲んで。
私はシロウの手伝いをして、シロウに頭を撫でてもらったり。
そうして私は皆の前で魔法を披露してみせる。
頑張って身につけたんだよ、私も皆を手伝えるんだって。
……そうして、すごいぞイリヤ、ってシロウに誉めて欲しかった。

でも、そんな夢はもう終わり。
アケチもネネネも、すごく優しくて。
……だから、シロウに何が起こったかなんて、簡単に分かっちゃった。




400:刻無―キズナ― 零 ◇wYjszMXgAo(代理投下)
08/03/03 11:04:11 26kDYzYl
シロウ、見ていてくれてる?
私ね、決めたんだ。
絶対に螺旋王を倒してやるって。シロウの命を弄んだヤツを許さないって。
アイツの思うとおりになんか、動いてやるもんか。
そして皆と一緒に絶対に帰るんだ。
もちろん誰一人殺させなんてしない。
……シロウのユメは正義の味方だもん。
だから――、

弟のユメは、お姉ちゃんが叶えてあげる。
そもそも、キリツグからユメを受け継ぐのは私でも良かったんだから。
だから、シロウ。
まかせておいて、シロウの夢は――



――ああ、安心した。



……そんな声が、聞こえた気がした。




401:刻無―キズナ― 零 ◇wYjszMXgAo(代理投下)
08/03/03 11:05:02 26kDYzYl
◇ ◇ ◇

明智は、自分の予測が最悪の形で的中した事を思い知らされた。
東方不敗は衛宮士郎の首輪と同行している。それも、映画館へ向かって。
明智健吾の名の側に、キャロ・ル・ルシエの名前があるように。

……衛宮士郎は、倒した相手の首輪を奪う様な真似はしない。
ありえる事象はその逆の場合だけだ。
傍らにいるねねねも血が出るほどに唇を噛み締めている。
まず、衛宮士郎の首をもいで首輪だけ取り出したと見ていいだろう。
しかも衛宮士郎は自分の命を蔑ろにする傾向があるのだ。
生き延びている可能性など、間抜けにも生け捕りにされた場合くらいのものである。
そんな希望的観測にすがって全滅するなどは、絶対に犯してはいけない過ちだ。

だが、明智もねねねもその思いを必死に押し殺す。
後ろを振り向いたときに、そんな顔は見せられないからだ。
絶対に後ろにいるイリヤに気付かれてはならない。

衛宮士郎の死を教えれば、彼女はパニックに陥るだろう。
それは避けねばならない。
自分達の行動に支障が出るし、何より残酷すぎる。
……せめて、放送の時までは。
どれだけ彼女が暴れても、多少は落ち着いて対応できる刑務所までは知らせる訳にはいかないのだ。

携帯電話を見る。
……ラッドは、実はすぐに近くにいる。だが合流する訳には行かない。
『士郎はラッドと行動している』という嘘を移動の間だけでも貫き通す為に、急いで刑務所に行かねばならないだろう。
Dボゥイと舞衣という二人と接触していたようだが、そこで何があったのかも今ひとつ判然としない。
どちらも動いていることから、死者は出ていないようではあるが。

可能な限り早足で病院を目指す。
正確には、病院から映画館へ向かう“彼ら”の元を。


……そして、邂逅が訪れる。
壊滅した町のその端で。
二つの希望が、巡り会う。


「――高峰清麿君と、小早川ゆたか君ですね?
 お待ちしていました。
 ……そして、早速ですが――」




402:刻無―キズナ― 零 ◇wYjszMXgAo(代理投下)
08/03/03 11:06:55 26kDYzYl
【C-6南西端/路上/1日目/夜中~真夜中】

【高嶺清麿@金色のガッシュベル!!】
[状態]:右耳欠損(ガーゼで処置済)、疲労(中)、精神疲労(中)、苦悩
[装備]:イングラムM10(9mmパラベラム弾22/32)
[道具]:支給品一式(水ボトルの1/2消費、おにぎり4つ消費)、殺し合いについての考察をまとめたメモ、
    イングラムの予備マガジン(9mmパラベラム弾32/32)×5、魔鏡の欠片@金色のガッシュベル!!、
    無限エネルギー装置@サイボーグクロちゃん、清麿の右耳
    首輪(エド)、首輪(エリオ/解体済み)、首輪(アニタ)、清麿のネームシール、
    各種治療薬、各種治療器具、各種毒物、各種毒ガス原料、各種爆発物原料、使い捨て手術用メス×14
[思考]
基本方針:螺旋王を打倒して、ゲームから脱出する
0:これからが勝負どころだな……。
1:ゆたかを保護しながら明智たちに同行、刑務所を目指す。
2:脱出方法の研究をする(螺旋力、首輪、螺旋王、空間そのものについてなど包括的に)
3:周辺で起こっている殺し合いには、極力、関わらない(有用な情報が得られそうな場合は例外)
4:研究に必要な情報収集。とくに螺旋力について知りたい。
5:螺旋王に挑むための仲間(ガッシュ等)を集める。その過程で出る犠牲者は極力減らしたい。
[備考]
※首輪のネジを隠していたネームシールが剥がされ、またほんの少しだけネジが回っています。
※ラッドの言った『人間』というキーワードに何か引っかかるものがあるようです。

[清麿の考察]
※監視について
監視されていることは確実。方法は監視カメラのような原始的なものではなく、螺旋王の能力かオーバーテクノロジーによるもの。
参加者が監視に気づくかどうかは螺旋王にとって大事ではない。むしろそれを含め試されている可能性アリ。
※螺旋王の真の目的について
螺旋王の目的は、道楽ではない。趣旨は殺し合いではなく実験、もしくは別のなにか(各種仮説を参考)。
ゆえに、参加者の無為な死を望みはしない。首輪による爆破や、反抗分子への粛清も、よほどのことがない限りありえない。
【仮説①】【仮説②】【仮説③】をメモにまとめています。
※首輪について
螺旋状に編まれたケーブルは導火線。三つの謎の黒球は、どれか一つが爆弾。また、清麿の理解が追いつく機械ではなくオーバーテクノロジーによるもの。
ネジを回すと、螺旋王のメッセージ付きで電流が流れる。しかし、死に至るレベルではない。
上記のことから、螺旋王にとって首輪は単なる拘束器具ではなく、参加者を試す道具の一つであると推測。
螺旋王からの遠隔爆破の危険性は(たとえこちらが大々的に反逆を企てたとしても)限りなく低い。
※螺旋力について
………………………アルェー?


【小早川ゆたか@らき☆すた】
[状態]:疲労(中)、心労(大)、やや茫然、後悔
[装備]:COLT M16A1/M203@現実(20/20)(0/1)、コアドリル@天元突破グレンラガン
[道具]:デイバック、支給品一式、糸色望の旅立ちセット@さよなら絶望先生[遺書用の封筒が欠損]
    鴇羽舞衣のマフラー@舞-HiME、M16アサルトライフル用予備弾x20(5.56mm NATO弾)
    M203グレネードランチャー用予備弾(榴弾x6、WP発煙弾x2、照明弾x2、催涙弾x2)
[思考]
基本:元の日常へと戻れるようがんばってみる。
0:……シンヤさん、ありがとうございました……。
1:Dボゥイと合流する。
2:シンヤを弔う為に、どうにかして病院に戻りたい。
3:ちゃんと弔ったら清麿たちに同行する。
4:シンヤを殺したラッドにどう対応すればいいのか分からない。
5:Dボゥイの為にクリスタルを回収する。
[備考]
※コアドリルがただのアクセサリーではないということに気がつきました。
※清麿に対して負の感情は持っていません。
※イリヤに親近感を抱いています。

※螺旋力覚醒


403:刻無―キズナ― 零 ◇wYjszMXgAo(代理投下)
08/03/03 11:07:37 26kDYzYl
【チーム:戦術交渉部隊】(明智、ねねね、イリヤ)
 [共通思考]
 1:各種リスト、便利アイテムを利用した豊富な情報量による仲間の選別及び勧誘。
 2:基本的には交渉で慎重に。しかし、実力行使も場合によっては行う。
 3:首輪の解析・解除が可能な者を探す。
 4:最終目的は主催者の打倒、ゲームからの脱出。
 5:携帯電話の現在位置探査を利用して他の参加者との接触を避けつつ刑務所へ向かう。
 6:映画館内部にジンやラッド、その他協力できそうな人物が到達したら携帯電話で映画館に連絡を入れる。
 7:刑務所に到着次第、ガジェットドローンを経由してルルーシュ一行、スカー、シータと接触する。順番は未定。
 8:人員が揃い次第、各所施設に調査班を派遣する。
 9:高峰清麿と情報交換、考察を行う。
 10:万一刑務所が安全でないと判断できた場合、警察署へ向かう。
[備考]
 ※明智とねねねの考察メモの内容は同じです。

 
【明智健吾@金田一少年の事件簿】
[状態]:右肩に裂傷(応急手当済み)、上着喪失、怒り、決意
[装備]:レミントンM700(弾数3)、フィーロのナイフ@BACCANO バッカーノ!
[道具]:支給品一式×2(一食分消費)、携帯電話、ジャン・ハボックの煙草(残り16本)@鋼の錬金術師、閃光弾×1
     予備カートリッジ8、ガジェットドローン@魔法少女リリカルなのはStrikerS、参加者詳細名簿、
     ダイヤグラムのコピー、首輪(キャロ)、考察メモ
[思考]:
 基本:螺旋王より早く『螺旋力』を手に入れ、それを材料に実験を終わらせる
 0:……仇は討ちます、衛宮君。
 1:清麿たちと共に刑務所に向かう。
 2:菫川ねねねに情報を提供し、螺旋王を出し抜く『本』(方策)を書いてもらう。
 3:螺旋力が具体的に何を指すのか? それを考察する。
 5:首輪に関しては、無理をしない程度に考察。
 6:ラッド・ルッソの動向には注意する。
 7:2日目の正午以降。博物館の閉じられた扉の先を検証する。
 8:東方不敗を最優先で警戒。
 9:衛宮士郎の冥福を祈る。
[備考]
 ※リリカルなのはの世界の魔法の原理について把握しました。
 ※ガジェットドローンは映写室に繋いだ時点でいったん命令がキャンセルされています。
 ※ラッドがシンヤを殺害したと推測しています。
 ※豪華客船にいた人々はガッシュ以外全滅したと推測しています。
 ※ルルーシュ一行、またはジン一行の誰かがマタタビを殺害したと推測しています。
 ※衛宮士郎が生存している可能性は絶望的と見積もっています。


404:刻無―キズナ― 零 ◇wYjszMXgAo(代理投下)
08/03/03 11:08:26 26kDYzYl
【菫川ねねね@R.O.D(シリーズ)】
[状態]:健康、悲しみ、決意
[装備]:なし
[道具]:支給品一式(一食分消費)、ボン太君のぬいぐるみ@らき☆すた、 詳細名簿+@アニロワオリジナル、手書きの警戒者リスト
     『フルメタル・パニック!』全巻セット@らき☆すた(『戦うボーイ・ミーツ・ガール』はフォルゴレのサイン付き)、考察メモ
[思考]:
 基本:螺旋王のシナリオ(実験)を破壊し、ハッピーエンドを迎えさせる。
 0:衛宮……。
 1:本を書くにはまず資料! 明智と一緒に考察をする。
 2:ある程度考察が進んだら、ハッピーエンドを迎える『本』(方策)を書く。
 3:ラッド・ルッソの動向には警戒する。
 4:柊かがみに出会ったら、「ポン太くんのぬいぐるみ」と「フルメタル・パニック全巻セット」を返却する。
 5:センセーに会いに行きたい……けど、我慢する。
 6:東方不敗を最優先で警戒。
 7:衛宮士郎の冥福を祈る。
[備考]
 ※詳細名簿+はアニタと読子のページだけ破り取られています。
 ※詳細名簿+の情報から、参加者それぞれに先入観を抱いている可能性があります。
 ※殺人鬼であるラッドに軽度の不信感を抱いています。
 ※思考7、パラレルワールド説について。
 富士見書房という自分が知り得ない日本の出版社の存在から、単純な異世界だけではなく、パラレルワールドの概念を考慮しています。
 例えば、柊かがみは同じ日本人だとしても、ねねねの世界には存在しない富士見書房の存在する日本に住んでいるようなので、
 ねねねの住む日本とは別の日本、即ちパラレルワールドの住人である可能性が高い、と考えています。
 この理論の延長で、会場内にいる読子やアニタも、ひょっとしたらねねねとは面識のないパラレルワールドの住人ではないかと考えています。
 ※イリヤと士郎の再会により、自分の知る人物がやはり同じ世界の住人ではないかと疑い始めました。
 ※衛宮士郎が生存している可能性は絶望的と見積もっています。

 ※螺旋力覚醒


【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/stay night】
[状態]:健康、深い悲しみ、螺旋王とゲームに乗った人間への激しい怒り、強い決意
[装備]:マッハキャリバー@魔法少女リリカルなのはStrikerS、バリアジャケット
[道具]:支給品一式(一食分消費)、ヴァルセーレの剣@金色のガッシュベル、魔鏡の欠片@金色のガッシュベル、支給品リスト@アニロワオリジナル
[思考]:
 基本:シロウのユメを代わりに叶え、正義の味方として行動する。ゲームから脱出する。
 0:シロウ……ッ!
 1:明智たちと一緒に刑務所に向かう。
 2:マッハキャリバーからベルカ式魔法について教わる。
 3:アケチ、ネネネの言うことを聞いてがんばる。
 4:聖杯については考えない。
 5:ゆたかとは仲良くなれそう。彼女を守り、一心地ついたら病院まで連れて行く。
[備考]:
 ※フォルゴレの歌(イリヤばーじょん)を教えてもらいました(イリヤ向けに簡単にしてあります)。
 ※チチをもげ!(バックコーラスばーじょん)を教えてもらいました(その時にチチをもげ!を完璧に覚えてしまいました)。
 ※バリアジャケットが展開できるようになりました(体操着とブルマ)。
 ※聖杯にランサーの魂が取り込まれました。
 ※マッハキャリバーより、「プロテクション」「シェルバリア」「リアクティブパージ」を習得しました。
  現在は攻撃魔法を習得中です。詳細は不明です。
  【プロテクション】:魔法障壁を張り、攻撃をガードします。
  【シェルバリア】:半球状の結界を張り、外部からの干渉を遮断します。一定時間持ちますが、それなりの魔力を消費します。
  【リアクティブパージ】:バリアジャケットを自ら爆破し、その威力で攻撃を防ぐテクニックです。
 ※明智たちの様子から、士郎が誰かに殺害されたと推測しました。


405:刻無―キズナ― 零 ◇wYjszMXgAo(代理投下)
08/03/03 11:09:19 26kDYzYl
※保有するアイテムの詳細は、以下の通り。
 【参加者詳細名簿】
  全参加者の簡単なプロフィールと、その人物に関するあだ名や悪評、悪口などが書かれた名簿です。

 【参加者詳細名簿+】
  全参加者の個人情報と、その人物に関する客観的な経歴が記されています。情状など主観になる事は書かれていません。
  ※読子・リードマンとアニタ・キングのページはねねねが破いて捨ててしまいました。

 【警戒者リスト】
  ねねねがメモに書いた、要注意人物のリスト。自分、または仲間が遭遇した危険人物の名前が書き連ねてあります。
  「高遠遙一」「ロイ・マスタング」「ビシャス」「相羽シンヤ」「東方不敗」「鴇羽舞衣」「ニコラス・D・ウルフウッド」
  また、仲間がゲーム参加以前で敵対していた人物や、詳細名簿のプロフィールから要警戒と判断した人物を要注意人物として記載しています。
  「ギルガメッシュ」「言峰綺礼」 「ラッド・ルッソ」他。

 【全支給品リスト】
  螺旋王が支給した全アイテムが記されたカタログ。正式名称と写真。使い方、本来の持ち主の名が記載されています。

 【携帯電話】
  通常の携帯電話としての機能の他に、参加者の画像閲覧と、参加者の位置検索ができる機能があります。
  また、いくつかの電話番号がメモリに入っています。(※判明しているのは映画館の電話番号、他は不明)
  [位置検索]
  参加者を選び、パスを入力することで現在位置を特定できる。(※パスは支給された支給品名。全て解除済み)
  現在位置は首輪からの信号を元に検出される。

 【ダイヤグラムのコピー】
  明智健吾がD-4にある駅でコピーしてきた、モノレールのダイヤグラム。

 【首輪】
  明智健吾が死体から回収した、キャロ・ル・ルシエの首輪。

 【考察メモ】
  雑多に書き留められた大量のメモ。明智、ねねねの考察や、特定時間の参加者の位置などが書き残されている。




406:刻無―キズナ― 零 完全版 ◇wYjszMXgAo(代理投下)
08/03/03 11:11:23 26kDYzYl
◇ ◇ ◇

“彼”はそのやりとりを暗がりから観察していた。
雄雌の一組と、一匹の雄のやりとりだ。
病院の中庭とエントランス。
壁を挟み、言葉の応酬が交わされる最中。

――“彼”の視界の一部には、一つの無防備な肢体が映し出されていた。
自分の元の宿主や、ラダムの裏切り者が執着していた個体だ。

エントランスにいる雄は、雌雄との駆け引きに気を取られてこちらに意識が向いている様子はない。
寄生するには好機と言えるだろう。

……だが、あの個体に寄生すべきか、否か。
元の宿主と共に行動していた時に、あの個体は人間の中でも特に脆弱な個体であることが判明している。
殺し合いという状況下で役に立つかどうかは疑問符をつけねばならないだろう。

“彼”は思考する。
手っ取り早くあの個体に寄生するか、更なる優秀な個体が現れるのを期待すべきかを。
あの個体よりも優秀な個体という点なら、中庭にいる二匹でも構わないのだ。

――そして、“彼”は決断した。
自分が、これからどうすべきかを。


“彼”は動き出す。
それが身を隠すためか、誰彼に寄生するためかは――依然、誰も知ることはない。










※ラダムが小早川ゆたかに寄生したか否かは不明です。
 ただし、寄生された場合でも今のところ本人に自覚や症状はありません。




407:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/03 14:43:53 axXnPqoQ
>>206-406

必死にトリップ変えてやってるようだけど同じ人間が書いてるのバレバレ

408:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/03 14:50:57 pUZ91ZZe
新しくやり直すとして




















作品何で出すのよ

409:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/03 22:19:07 uRavrTCU
板の企画であるんだからアニメキャラは原則全員出すべき


410:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/04 01:10:04 ioOHoy45
>>407
それ、逆に、凄い

411:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/04 19:13:27 YxH8QJxP
宣伝。
現在アニロワ3rdの企画が
URLリンク(jbbs.livedoor.jp)
にて進行中です。
奮ってのご参加をお願いします。

412:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/04 19:16:13 YxH8QJxP
>>411に追記。

投票の結果作品は
バンブーブレード    
瀬戸の花嫁       
新世紀エヴァンゲリオン 
おおきく振りかぶって  
スクライド       
ゼロの使い魔      
solty rei        
ひぐらしのなく頃に   
フルメタルパニック   
スケッチブック     
ARIA          
破天荒遊戯       
無限のリヴァイアス   
CLANNAD     
school days
魔法少女リリカルなのはStrikerS 
Fate/stay night     
狼と香辛料       
ハヤテのごとく!    
灼眼のシャナ      
今日からマ王!     
ヘルシング       
少女革命ウテナ
の以上23作品に絞られています。
上限6下限2のキャラ投票で最終的に92人に絞り込む予定です。
既出制限などは特に設けていませんので、自由に投票が出来ると思います。

413:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/04 22:42:25 LOze9lsL
ごくろうさん

414:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/05 10:02:05 vAmVAKhd
3rdの話するなら別のスレ立てりゃいいじゃない

415:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/05 20:29:48 uNhDO1mQ
>>414
サロンの本スレがGかただの荒らしか不明だけど、それに占拠されつつあるので一時的な非難。
初代の雑談スレでセカンドの告知もやってたし、サードの告知もセカンド通じた方がいいと思って。
キャラ投票が終わって正式に参加キャラが出揃えば、サード用の新スレを立てるつもり。

416:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/05 22:11:34 j9BaT/WK
いや、2ndはやり直しだから3ndを名のるなら勝手にやればって感じ

417:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/07 17:51:08 kAP5vsHd
一応確認。
地図氏がいたら>>411で行う新ロワでセカンドと同一のマップを使う可能性があるので、
事前に報告します。

ちなみにキャラ投票は、土曜日の0時から丸一日掛けて行う予定です。
よろしければご参加お願いします。


418:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/07 19:26:28 kAP5vsHd
貼り忘れましたが、
URLリンク(jbbs.livedoor.jp)
がキャラ投票用のスレです。
土曜日の0時ですので、一人でも多くのご参加を願います。

419:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/07 21:56:02 cGytZz5q
宣伝したいなら毒吐き別館とかでやれよ

420:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/07 23:18:30 MpybHm3o
べつにここで勝手にすればいいよ
むこうなんて関係ないし

421:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/07 23:51:45 kAP5vsHd
投票10分までの期待age

422:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/07 23:55:37 cGytZz5q
自スレにお帰り下さい

423:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:36:50 6mSgxtuK


424:王女の宅急便 ◆1sC7CjNPu2
08/03/08 00:37:30 2Pc91cy6
 くすくすくすくす。
 私、リュシータ・トエル・ウル・ラピュタは殺し合いに乗ることに決めました。
 この会場の最後の一人になって、螺旋王のおじさまに私の願いを叶えてもらうためです。
 なぜなら、私はパスーにもう一度会いたいから。
 ドーラさんにも会いたいし、エドとももう一度お話したい、私が殺してしまった女の子にも謝りたいからです。
 でもこわい人には会いたくありません。殺します、ずっと死んでて下さい。

 さて、そのために私は強い人にかくまってもらおうと思っているのですが―強い人はどこにいるのでしょうか?
 それにもし強い人を見つけても、それが殺し合いに乗ったこわい人だったら?
 ……困りました、私はどうやって強い人を見つけたらいいんでしょうか。
 ああそういえば、こわい人のマオさんがこう言っていました。

『街は確かに人が多い、けど同時に殺人者もまた多く潜んでる可能性が高いんだよ!』

 ……強い人を探す手がかりにはなりませんけど、こわい人を避けることはできそうです。
 ひょっとしたら人が多い街にこそ強い人がいるのかもしれないけど、こわい人に会ってしまったら大変です。
 だから私はこの会場の中心を避けて、ぐるぐる回ることに決めました。
 運よく強い人がいることを、神様に祈っておこうと思います。


 ■


「でぇ、どんなルートで図書館まで行くつもりなのだルルーシュよ」
「……」
「ブルァァァァァァァァァッ!ルルーシュよ、この華麗なるビクトリーム様がせっかく貴様の意見を聞いてやろうというのにその態度はなんだブルアァァァァ!
さてはこの見るからにもやしっ子め、ここまで歩いてくるまでに既に喋れないほど疲れたというのか!いくらなんでもヘナチョコ過ぎやしないかぁヲォイ!」
「……大丈夫だ、何の問題もない」
「本当に大丈夫ですか、ルルーシュさん」
「ああ、本当に大丈夫だよ。歩いていればそのうち治るさ」


425:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:38:15 6mSgxtuK


426:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:38:16 A2V3cjui
 

427:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:38:19 WlHfPh+2
 

428:王女の宅急便 ◆1sC7CjNPu2
08/03/08 00:38:25 2Pc91cy6
 本当のところはビクトリームに名前を呼ばれるだけで幼少の頃のトラウマを抉られているルルーシュであったが、どうにか笑顔で誤魔化す。
 心配そうにニアが見つめてくるが、理由が理由だけにルルーシュは真相を話す気にはなれなかった。
 ―言ったところで、このV字が聞き入れるとは思えないしな。
 それどころか、絶対に騒ぎ立てるだろうというのはルルーシュでなくとも想像できることだろう。
 
「てめぇらこのビクトリーム様を置いてきぼりにしていい雰囲気作ってるんじゃねぇぇぇ!ぶっちゃけ寂しいだろうがぁぁぁぁぁぁ!」
「分かったから叫ぶな、目立つだろうに」
「何を言うか!このビクトリーム様の華麗なVは目だって当然!てか違ぁぁぁぁぁぁぁう!
 つい先ほど言ったばかりだがルルーシュよ、貴様本当にどんなルートで図書館まで向かう気なのだ!
 我輩、てっきり右回りに各施設を巡って人間共を集めて図書館に行くものかと思っていたが、このまま行けば消防署を普通に通り過ぎるぞヲォイ!」

 ビクトリームの絶叫の内容に、ルルーシュは軽く驚いた。
 ―ああ、こいつ少しは考えられるんだ。と

「ブルワァァァ!貴様その顔思いっきり我輩を馬鹿にしておるな小僧ォォォォォォォォ!」

 現在、ルルーシュたちはC-7エリアの中心からちょうど東の位置にいる。
 ビクトリームの言った通り、仲間を集めるつもりなら施設を巡った方が他の参加者たちと出会う確立は高いだろう。
 ―これ以上騒がれる前に、説明しておいた方がいいか。

「すまないな、どうもタイミングが掴めなくて話すのが遅れた。歩きながら聞いてくれ」
「む、むぅその謙虚な態度に免じて大人しく聞いてやろうではないか」
「あ、はい」

 嫌味にならないようにマタタビの件の事で気をつかったことをアピールしつつ、ルルーシュは説明を始めた。


429:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:38:38 GMA38PMF


430:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:38:47 A2V3cjui
 

431:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:38:49 VnJPeMBn
誤:パスー→正:パズー

432:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:38:50 WlHfPh+2
 

433:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:39:13 LfIv5WC0
 

434:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:39:16 J9TfGV6r



435:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:39:28 6mSgxtuK


436:王女の宅急便 ◆1sC7CjNPu2
08/03/08 00:39:28 2Pc91cy6
「まずビクトリームが言っていた仲間集めだが、俺はジンたちに全面的にまかせようと思っている」
「何ぃぃぃ!ルルーシュ、貴様正気か!」
「落ち着け。もし施設にいるのが殺し合いに乗った人間だった場合、どうする?」

 ルルーシュの問いにビクトリームはむぅ、と声を漏らす。
 ビクトリームの脳裏には、トンネルで見かけた変態トリオの脅威が蘇っていた。
 あまりのインパクトのため、ビクトリームの脳内では殺し合いに乗った人間とはデフォルトで彼らのような人物と認定されている。
 畳み掛けるように、ルルーシュは続ける。

「今の俺たちに、そういった脅威に対する決定的な力はない。ジンたちだってそれは分かっているさ。
 彼らが俺たちに期待しているのは、安全に図書館まで到着して欲しいってことだけだ」

 期待しているのくだりは推測だが、そう間違ってはいないだろうとルルーシュは思っている。
 逆に間違っていた場合、ルルーシュはジンやスパイクに対する評価を下げざる終えないだろう。

「ぬぅ……しかし」
「分かっている、俺だって何の手土産もなしにで図書館に行くつもりはなさ。
 だから、途中でショッピングモールに寄っていこうと思っている」

 そこまでルルーシュが喋った所で、ニアが小さく手を上げた。

「あの、ショッピングモールって何ですか?」
「……そうだな、ニアはデパートなら知ってるね。そことだいたい同じさ、構造が少し違うだけだよ」
「そうなんですか。え~と、それじゃあ何でショッピングモールに寄るんですか」
「それは……ショッピングモールに、何があるかを確認するためだよ」

 ニアはルルーシュの返答の意味が分からず、う~っと首を斜めに傾ける。
 ビクトリームは即座に考えることを放棄し、率直にルルーシュに答えを求めた。


437:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:39:29 GMA38PMF


438:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:39:50 A2V3cjui
 

439:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:40:07 WlHfPh+2
 

440:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:40:07 VnJPeMBn
 

441:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:40:37 KLUf/urV


442:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:40:40 6mSgxtuK


443:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:40:49 DakZ+PY5


444:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:40:52 J9TfGV6r



445:王女の宅急便 ◆1sC7CjNPu2
08/03/08 00:40:54 2Pc91cy6
「ブルワァァァァ!回りくどいぞルルーシュ!我輩にも分かるように、こうズバッと説明しろ!」
「……少しは考えろ、まあ時間が惜しいから説明するが。
まずは食料、いつまでも味気のない物を食べていなくなんてないだろう。ニアの手料理も、残念なことに食べ損ねたしな。
次に医薬品などの確保。出来ればジンたちには無傷で図書館に到着して欲しいが、備えておいて損はないだろうしな。
後は……何か役に立ちそうなものを適当にといった所か」

 ルルーシュの説明に、ニアとビクトリームはおおーと感心したような声を上げる。
 そのまま拍手でも送ってきそうな雰囲気に、思わずルルーシュは頬を引きつらせた。
 まったく疑いもせずルルーシュの言うことを信じる二人に、少し不安を覚えたからだ。

 実際のところ、ルルーシュが二人に説明したことはほとんど跡付けで考えた理由だった。

 ルルーシュの真の目的は、脱出派の筆頭となるためのカードを作ることにあった。
 いくらジンやニアたちから信頼を得たといっても、『結果』を出さなければ信頼以上のものになることはない。
 そして、出遅れたルルーシュが脱出派を指導する立場になるためには強力なカードが必要なのだ。

 期待を込め、ルルーシュはノートパソコンの入っているデイパックを軽く押さえる。
 支給品ということで何か仕掛けがあるかもしれないが、もしも何の滞りもなく使えたとしたら―

「小僧!ブルァァァァァァァァァァァ!」

 ルルーシュの思考は、ビクトリームに押し倒されたことで強引に中断されることになった。
 文句は、ない。
 ビクトリームに倒されるまでルルーシュが立っていた位置を、何かが恐ろしい速さで通り過ぎたからだ。
 即座に、ルルーシュは叫んだ。

「敵襲だ!森へ逃げ込め!」


446:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:41:38 A2V3cjui
 

447:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:41:39 VnJPeMBn
 

448:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:41:41 6mSgxtuK


449:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:41:43 DakZ+PY5


450:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:41:46 GMA38PMF


451:王女の宅急便 ◆1sC7CjNPu2
08/03/08 00:41:48 2Pc91cy6
 ■


 ……失敗です、失敗しました。とっても沢山のことを失敗しました。
 私がぐるぐると周辺を探っていたら、すぐに一緒に行動している三人組を見つけることが出来ました。
 幸先のいいスタートに、私の心は浮かれました。
 でも、その私の心はすぐに落胆に変わりました。
 だって、その三人はどう見ても強そうには見えなかったんです。

 一人目、黒い服の男の人です。
 とっても線が細く、華奢な印象を受けました。
 二人目、白い服の女の子です。
 とっても綺麗。同じ女の子の私から見ても綺麗なので、男の人から見たらきっともっと綺麗に見えるかもしれません。
 いいな。、あれだけ綺麗なら、きっと簡単に男の人を篭絡できるでしょう。
 最後に、V字のロボットです。
 ひょっとしたら、ラピュタのロボット兵みたいなものかもしれません。
 でも……とても変ですけど、強そうに見えません。

 ―ここで、私は一つ目の失敗をしました。
 きっとこの人たちは、簡単に殺せる。
 見た目だけで、そう判断してしまったんです。
 もう少し様子を見れば、もっと上手に奇襲出来たと思います。
 ―ええ、そうです。私は奇襲に失敗してしまったんです。

 二つ目の失敗は、まさにその奇襲でした。
 ストラーダのジェットの音と、光。そして私の白い衣裳が、どうしても目立ってしかたがなかったのです。
 私はすぐにどうにかならないかと、ストラーダにお願いしました。
 その結果、音と光は無理でしたけど、私の着ていた衣裳は魔女が着るような真っ黒いローブに変えることが出来ました。
 頭に大きな赤いリボンもついてきましたが、これぐらいなら大丈夫だろうと思いました。
 そして私は気を取り直し、改めて三人組に奇襲をかけることにしたんです。


452:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:42:00 WlHfPh+2
 

453:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:42:13 A2V3cjui
 

454:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:42:27 DakZ+PY5


455:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:42:44 VnJPeMBn
 

456:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:42:46 6mSgxtuK


457:王女の宅急便 ◆1sC7CjNPu2
08/03/08 00:42:47 2Pc91cy6
 はい、三つ目の失敗です。
 その時は慌てていて思いつかなかったんですけど、同じ奇襲を二度三度とやっても意味ないですよね。
 簡単に避けられてしまいました。
 一番ヘロヘロになっている男の人を狙ったんですけど、女の子とV字のロボットが頑張ってフォローしていたので殺せませんでした。
 そして、三人組はとうとう私を振り切って森の中まで逃げ込んでしまったのです。

 困りました、逃げられてしまいました。
 顔は、見られていないとは思います。
 もし私の特徴を言いふらされても、ストラーダを腕時計にして、衣裳もまた変えてもらえば問題ありません。
 もしもどこかで顔を合わせた時、きっと大丈夫だとは思います。

 ―でも、もし顔が見られていたら?ストラーダのことを知っていたら?
 ……ああ、四つ目の失敗です。
 私は不安です、どうしても、あの三人組を殺さなくてはいけません。

 でも大丈夫。今回のことで私は学びました。
 少なくとも、今回のやり方は間違っていました。
 次は、ちゃんとうまくやってみようと思います。

 くすくすくすくすくすくすくす。


 ■


「……どうにか、逃げ切れたな」
「はい……これで、諦めて、くれるでしょうか」

 木の幹に背中を預けながら、ルルーシュとニアはゆっくりと息を整えていた。
 ビクトリームは地面に身を投げ出して、ゼエハァと必死に呼吸を整えている。。
 ―禁止エリアになるまでに余裕もあるし、小休止してから移動すべきだな。
 そう判断し、ルルーシュは世間話代わりにニアの質問に答えることにした。


458:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:43:08 DakZ+PY5


459:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:43:24 J9TfGV6r



460:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:43:29 6mSgxtuK


461:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:43:33 A2V3cjui
 

462:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:43:34 DakZ+PY5


463:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:45:18 J9TfGV6r



464:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:45:39 xFhxxrZB



465:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:45:52 e2lCwfs1



466:王女の宅急便 ◆1sC7CjNPu2
08/03/08 00:45:53 2Pc91cy6
「襲撃者が取ってきた戦術は、急降下と急上昇の繰り返しによる一撃離脱戦法だ。
あれはまず前提として、上空からターゲットを定めなければならない。森の中にさえ逃げ込んでしまえば、攻撃はできないさ」
「ブルワァァァァァァ!ルルーシュよ、てかそれってもし襲撃者が我輩たちの位置を特定できた場合どうしてくれんだコンチクショウ!」

 復活したらしいビクトリームが、ルルーシュに疑問をぶつける。
 これは思ったより早く移動できるかもしれないとルルーシュは思いつつ、一つの事実に背筋を凍らせた。
 ―ああ、マズイ。名前で呼ばれることに段々と慣れてきた。

「ちょっと上を見上げてみろ、ビクトリーム」
「ん?」
「この樹海の中を直進してきたら、枝に引っかかってとても痛いと思わないか?」

 想像してしまったのか、ビクトリームはガクガクと恐怖に震え始めた。
 いったい何を想像したのかは気になったが、止めた。股間を押さえやがったからだ。

「……どうやら、みんな動けるようになったみたいだな」
「オォイもやしっ子、逃げるときに我輩と小娘に引きずられてて一番楽してやがった奴のセリフじゃねぇだろと我輩は思うのだが」
「大丈夫そうだな」

ルルーシュがニアの方を見ると、彼女は元気強くガッツポーズで答えた。

「よし、それじゃあ移動を開始しよ「キャッ!」―」

 パキパキという枝が折れる音と共に、ルルーシュたちの目の前に少女が落ちてきた。
 見覚えのない顔だったが、見覚えのある槍と服装から、ルルーシュたちは彼女が何者なのかを即座に理解した。

「馬鹿な、なぜ場所が分かった」

 思わず漏らしたルルーシュの疑問をよそに、少女は頭に引っかかった葉っぱを払う。
 そしてルルーシュたちの存在に気づくと、とても嬉しそうな表情を浮かべた。

「初めまして、私はリュシータ・トエル・ウル・ラピュタ。シータと呼んで下さい」

467:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:46:05 WlHfPh+2
 

468:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:46:30 VnJPeMBn
 

469:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:46:32 A2V3cjui
 

470:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:46:43 6mSgxtuK


471:王女の宅急便 ◆1sC7CjNPu2
08/03/08 00:46:46 2Pc91cy6
 ■


 シータがルルーシュたちを発見できたのは、本当に偶然だった。
 ストラーダに跨って上空から森を見張っていたところ、木々の隙間から白い何かをシータは発見したのだ。
 他に手がかりとなりそうなものもなかったため、シータはすぐにその白い何かがあった場所へストラーダを走らせ―

「そういう理由で、また会うことが出来ました」

 にっこりと笑い、シータはルルーシュが思わず呟いた言葉への返答を済ませた。
 呆れた夜目だと、ルルーシュは苦々しくシータを見つめる。

「ブルワァァァァァ!小娘Mk-Ⅱ!貴様いきなりこの華麗なるビクトリーム様とその下僕たちに襲い掛かってきて、何をノォン気にしてやがる!
 とりあえず土下座して泣いて謝れば許してやらんこともないかなぁと我輩は思わなくもないぞブルワァァァァァァ!」
「……そうですね、すいません。初めからちゃんとお願いしておくべきでした」
「む、むぅ、貴様妙に物分りがいいな。まあ分かればいい、分かれば」

 啖呵を切ったビクトリームだったが、シータがしおらしい態度を取ったため気勢を制されることになった。
 どうでもいいことだが、小娘Mk-Ⅱとはやはりシータのことなのだろう。
 ルルーシュはこの時点でなんとなく不穏なものを感じ、腰元にあるベレッタM92に手を伸ばしていた。

「ええとすいません、みなさんには一度死んでもらいたいんです」


472:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:47:21 VnJPeMBn
  

473:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:47:31 GMA38PMF


474:王女の宅急便 ◆1sC7CjNPu2
08/03/08 00:47:33 2Pc91cy6
 言い終えた瞬間に、シータが消えた。
 ……すくなくとも、ルルーシュたちにはそう見えた。
 ルルーシュたちが風が通ったかのような錯覚の後―ビクトリームの胴体が、二つに分かれた。

「ビ、ビクトリームさん!」
「くそっ!」

 自らの対応の遅さを悔やみながら、ルルーシュはベレッタM92を抜いてシータを探す。
 シータは、すぐに見つかった。
 消えた地点からルルーシュたちを挟んでちょうど反対の位置―つまり、シータがいた地点とルルーシュたちがいる地点を結んだ直線状にいた。
 その事実に、ルルーシュは寒気を覚えた。
 簡単なことだ。シータはルルーシュたちの横を通り抜け、その行きがけにビクトリームを真っ二つにしていったということだ。
 ただ、そのスピードが段違いに速いという一点を除いて。

「どういう心算だ、俺たちを最初に襲った時、それだけのスピードがあれば簡単に殺せたはずだ」

 ルルーシュの言葉に、シータは困ったように答える。

「……ごめんなさい、そこまで深く考えてなかったんです」

 シータはただ、素人なれではの奇襲を思いついたまま実行したに過ぎない。
 ルルーシュたちを初め襲ったときにそれは役に立たないことを知り、今度は以前行った方法を取っただけのことだ。
 狂人め、とルルーシュは吐き捨ててベレッタM92の引き金を引く。
 銃声をあげ、鉛弾がシータの体を目指す。
 しかし、銃弾はその途中で唐突に出現した光の幕により弾かれることになった。

「……枝に引っかからなかったのも、そいつのせいか」
「はい、ストラーダが私のことを守ってくれるんです」

 ベレッタM92を構えたまま、ルルーシュは忌々しそうに舌打ちする。
 状況は、絶望的だ。
 銃が通用しないということは、既にルルーシュの打つ手は―ギアスしかない。


475:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:47:37 KLUf/urV


476:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:47:44 A2V3cjui
 

477:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:48:15 VnJPeMBn
  

478:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:48:20 WlHfPh+2
 

479:王女の宅急便 ◆1sC7CjNPu2
08/03/08 00:48:39 2Pc91cy6
 ―ギアスを使わざる終えない。
 ―しかし、ニアに気づかれないように、さらに見えないほどの速さで動く標的と目を合わせなければいけない……
 
 ルルーシュが瞬時に数パターンの作戦を考え、緊張を高めたとき―ニアが、あまりにも無造作にルルーシュの前へと出た。
 即座に下がれと言おうとしたルルーシュだが、それをニアは手を上げることで制した。
 黙々と、ニアはシータのすぐ近くまで歩き始める。
 シータは、困った。無防備に近づくニアが、何かの罠にも見えるし、本当に何も考えていないように見えたからだ。
 結局どうしようか悩んでいるうちに、ニアとシータはお互いに手を伸ばせば触れられる位置まで近づいていた。

「私の名前は、ニアといいます。シータさん、私はあなたに聞きたいことがあります」
「……はい、なんでしょう」
「先ほど『一度』死んで欲しいと言っていましたけど、それはどういう意味ですか」

 真っ直ぐ、鋭く問うニアにシータは少し気圧された。
 ―大丈夫、ストラーダが守ってくれる。同じ女の子ならエドを殺した黒服みたいなことはない。

「言ったとおり意味です。安心して下さい、ちゃんと私が螺旋王のおじさまにみなさんを生き返らせてもらえるようにお願いしますから」

 パァンと、小気味いい音が森に響いた。
 ニアが、シータを平手打ちにしようとしたのだ。
 バリアジャケットの性能のため、ニアの掌はシータの皮一枚挟んだところで止まっている。
 だが、ニアはそんなもの関係ないとばかりに叫んだ。


 「あなたは、ムカつきます!」


 もう一度、ニアは平手打ちを行った。先ほどと同様に、パァンという音とともに手が止まる。

「ドーラおばさまからあなたのことを、パズーさんのことも聞きました!
 あなたがパズーさんや、ドーラおばさまが死んでしまって悲しいことは分かります!
 でも、だからと言って人を殺して大切な人を生き返らせるなんて、間違っています!」

 また、パァンとの小気味いい音が森に響いた。


「それは、あなたの価値観の問題です」


 今度は、シータがニアの頬を叩いたのだ。


480:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:49:11 oguPDutO
 

481:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:49:12 WlHfPh+2
 

482:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:49:13 6mSgxtuK


483:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:49:15 A2V3cjui
 

484:王女の宅急便 ◆1sC7CjNPu2
08/03/08 00:49:32 2Pc91cy6
「私も、それは間違っていると思っていた時があります。
 けど、言峰神父が言ってくれました。
 全ては、人の価値観しだいなのだと。
 ……人を殺して、大切な人を生き返らせることのどこが間違っていることなんですか?
 それに殺してしまった人も生き返らせれば、殺したことなんて『なかったこと』になりませんか?
 私の願いは、どこが間違っているのですか?」

 シータは今まで見せた笑みと違う、ぞっとするほど妖艶な笑みを浮かべた。
 ルルーシュはひとまず言峰神父という人物を脳内の警戒リストに書き加え、思考する。
 ―こいつは、ひょっとして言いくるめば篭絡できるか。

「もし、螺旋王が嘘をついていたらどうする。君は殺人者で、大切な人も戻ってこない。得るものも返ってくるものも何もないぞ!」
「それなら、大丈夫です。私、死んだはずなのに生き返っていた人と出会ったことがありますから。
 螺旋王が人を生き返らせてくれるのは、間違いないはずです」
「……なんだと」
「たぶん、本当です。私はシモンの兄貴さんは死んだと、シモンから聞いていました。
 けど、ビクトリームさんはこの会場でシモンの兄貴さんと出会ったと言っていました」

 ニアがシータの言葉を肯定したが、ルルーシュはそれでも信じきることはできなかった。
 ―いや、信じたくなかったのかもしれない。
 ―もしもそれが本当だとしたら、俺は、スザクを……
 ルルーシュに起きた危険な考えをよそに、頬を押さえ黙っていたニアが再び口を開いた。

「それで、あなたは生き返った人に、なんて言うんですか」
「……え」
「褒めてくれると思っているんですか、頑張ったねって言ってくれると本当に思っているんですか!」

 パァンと、また平手打ちの音が炸裂した。
 シータがニアを叩いたのだが、当のシータは驚いた顔でニアの顔を見つめていた。
 ニアの言葉を聞いて、まったく無意識に手が動いていたからだ。


485:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:49:46 W04PVBrF
まだ生きてたんだここの書き手w

死んだかと思ってた

486:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:49:48 VnJPeMBn
  

487:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:49:50 DakZ+PY5


488:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:49:57 6mSgxtuK


489:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:50:17 A2V3cjui
 

490:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:50:27 VnJPeMBn
 

491:王女の宅急便 ◆1sC7CjNPu2
08/03/08 00:50:31 2Pc91cy6
「い、いいって言ってくれます!だって生き返ったんだから、よくやったって、頑張ったってパズーも言ってくれます!」
「言ってくれるわけありません!」

 パァンと、何度目かの平手打ちの音が響く。
 今度はニアがシータを叩き、今回も皮一枚のところで手が止まった。
 しかし、シータにあった余裕は一気に無くなってきていた。

「あなたがやっているのは、悪いことです!恐ろしいことです!絶対に、褒められないことです!」

 シータにとって、それは古い価値観だ。
 何の感慨も沸かない、捨て去ったもの。
 それでも、シータは間違いなくニアに追い詰められていた。

「あ、あなただって大切な人に生き返って欲しいでしょうに!」

 起死回生を図るため、シータは絶対に反論できないはずと考える言葉をぶつける。 
 しかし、シータ自身が言ったように―そんなもの、所詮人の価値観の問題なのだ。

「いりません!私の大切な人は!シモンは!ヨーコさんは!ドーラさんは!マタタビさんだって!みんなこの胸に、一つになって生きています!」

 目に涙を浮かべ、はっきりとニアはシータの言葉を拒絶した。
 ニアは、これまで以上に大きく手を振りかぶる。


 「これは、私の胸にある、シモンの!」


 なぜか、シータにはその手がこれまでの平手打ちと違うって怖いものに見えた。
 逃げようとしたが、足が竦んで動けなかった。


 「天を、突く、ドリルです!」


 雄たけびと共に、ニアの腕が振り下ろされた。
 パリンと何かが割れる音がして、瞬時にパァンと音が重なる。
 頬に強い痛みを感じながら、シータは足元から崩れ落ちた。


 ■



492:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:50:40 6mSgxtuK


493:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:50:50 DakZ+PY5


494:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:50:54 A2V3cjui
 

495:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:51:11 VnJPeMBn



496:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:51:15 oguPDutO
 

497:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:51:22 KLUf/urV


498:王女の宅急便 ◆1sC7CjNPu2
08/03/08 00:51:35 2Pc91cy6
「……そうだよな、スザクがそんなこと望む訳がないか」

 死者蘇生の話が現実味を帯びたところでルルーシュは一瞬我を失いかけ、ニアの言葉で目を覚ました。
 死者が、本当に蘇生を望むのか。
 ニアが突きつけた問いに、シータは答えきることが出来なかった。
 ルルーシュは想像することしか出来ないが、ニアとシータが知る人物はそんなことを望む人間ではなかったのだろう。

 ―スザクの場合、こんなの間違っているとか言って自分の首を跳ねかねないな。

 頑固な親友を思い出し、ルルーシュは密かに笑った。
 気を取り直し、今のうちにシータの持つ槍を奪っておこうとしてルルーシュはビクトリームのデイパックが光っていることに気がついた。
 ―連鎖的に、あることに気がつく。

「ビクトリーム、お前まさか―」
「……くすくす」

 ポツリと、崩れ落ちたシータの口から楽しげな声が漏れた。
 ルルーシュに、再び緊張が走る。

「シータ、さん?」
「ニア!槍を奪うんだ!早く!」
「え、あ、はい」

 ルルーシュに言われて、ニアがストラーダへと手を伸ばす。
 しかしシータは癇癪を起こしたかのようにストラーダを振り回し、ニアを追い払う。

「くすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくす」
「きゃ、わ、きゃあ!」

 シータはくすくすと笑いながら、ストラーダを振り回す。
 槍という物理的な恐怖と、シータのくすくすと笑うことへの精神的な恐怖に負けて、思わずニアはルルーシュの元まで退却する。
 ニアが逃げたことを確認すると、シータはやっとストラーダを振り回すのを止めた。

「くすくすくすくすくす。ねえ、ニアさん。私あなたのおかげで分かったんです。
 よかったぁ……このままだと、本当に全部失敗してしまうところでした」
「……どうせ、碌なことじゃないんだろう」
「それは、人の価値観が決めることですよ」

くすくすくすくす、と。シータはニアに叩かれた頬を撫で、より一層に壊れた笑みを浮かべていた。


499:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:51:38 J9TfGV6r



500:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:52:12 A2V3cjui
 

501:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:52:14 J9TfGV6r



502:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:52:28 DakZ+PY5


503:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:52:29 KLUf/urV


504:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:52:32 6mSgxtuK


505:王女の宅急便 ◆1sC7CjNPu2
08/03/08 00:52:36 2Pc91cy6
「私、螺旋王のおじさまにみんなを生き返らせてもらうときに、こうお願いしようと思うんです」
『みんな、私と同じ価値観にして生き返らせて下さい』って」
「ッ……シータさん!あなたは!」

 ニアが、信じられないといった顔でシータを非難する。
 ルルーシュもまさかここまで悪化するとは思っておらず、深くため息をつく。
 ここにきて、ルルーシュは確信した。
 ―シータは、間違いなく手遅れなのだと。

「ブルワァァァァァァ!小娘よ!てめぇふざけるのもいい加減にしろよ!」

 唐突に鳴り響いた怒声に、思わずシータは硬直する。
 この声の主は、確かにシータが真っ二つにしたはずだからだ。

「ベリィィィィィィシィット!さっきから聞いてればワガママ放題しやがってぇ!
 この華麗ならビクトリーム様が直々にその性根を叩き折ってくれるわぁぁぁぁ!
 ちなみに言っておくと我輩は死んだ振りをしていた訳ではないぞ!ちょっと休んでいただけだ!」
「……なんなんですか、それ」

 思わず呟いたシータの言葉に、ルルーシュは思わず同意したくなった。
 なぜなら声の主―ビクトリームは、V字の頭部だけになって浮かんでいたからだ。
 ルルーシュとて、二つに分かれた滑らかな断面を見ていなければ信じられなかっただろう。

「小娘Mk-Ⅰ!我輩のデイパックから魔本を取り出してみろ!」
「え、あ、はい!」
「さ、させません!」

 動揺から抜け出せないシータだったが、それでも何か自分にとって不利なことが起きそうだというのは感じ取ることが出来た。
 慌ててストラーダを構え、宙に浮くV字の頭を貫こうと集中し―後方からの投石によってその集中は乱されることになった。
 慌てて、シータは石が飛んできた方向を振り返る。
 ビクトリームは元より、ルルーシュとニアもシータの前方にいるため、後方には誰もいないと考えていたのだ。
 そして、シータは目の前のVの非常識の断片を見ることになった。


506:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:52:39 VnJPeMBn
 

507:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:53:02 WlHfPh+2
 

508:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:53:08 VnJPeMBn



509:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:53:21 A2V3cjui
 

510:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:53:34 6mSgxtuK


511:王女の宅急便 ◆1sC7CjNPu2
08/03/08 00:53:34 2Pc91cy6
「……どうたい?」
「クククククククッその通り!我が胴体が独立して動かないとは誰が言った!
 こんなこともあろうかと、予め貴様の背後に回りこませていたのだ!ハァーハッハッハ!」

 ビクトリーム(頭部)が笑っている間にも、シータの後方にいたビクトリーム(胴体)は投石を続ける。
 石を拾っては投げるという動作を繰り返す首なしの物体は、とってもシュールで怖いものがあった。
 そしてシータが見事にビクトリームのペースに巻き込まれているうちに、ニアは空色に輝く魔本を手にしていた。

「ビクトリームさん!」
「小娘Mk-Ⅰ!我輩としては貴様のような天然ボケ娘などパートナーとして願い下げだが、今回ばかりは強力してやろう!
 ブルワァァァァァァァァァァァァ!ブルワァァァァァァァ!ブルワァァァァッァァァァァァァァァァァ!」

 掛け声と共に、ビクトーム(頭部)は空高く舞い上がり、乱回転を始める。
 ……なんとなく、ルルーシュは危険な予感がした。

「小娘よ!読み上げろ!我輩の華麗なるVの軌跡を残す呪文を」
「はい!え~と……マガルガ?すいません、マガルガって何ですか?」
「ブルワァァァァァァァァ!二回も唱えるとはトリッキーだな小娘ェェェェ!」

 乱回転するビクトリーム(頭部)から、V字をかたどった光線が二度発射された。
 それはシータのすぐ近くと、ビクトリーム(胴体)の近くに着弾し、見事なV字を大地に残した。

「ブルワァァァァァァ!我が胴体にダメージ10!損傷は軽微なり!小娘Mk-Ⅰよ唱え続けよ!」
「あ、はいマガルガ!マガルガ!マガルガ!マガルガ!マガルガ!」
「ロボットの光線!」


512:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:53:42 DakZ+PY5


513:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:53:44 VnJPeMBn



514:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:53:48 J9TfGV6r



515:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:53:56 A2V3cjui
 

516:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:54:14 VnJPeMBn
  

517:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:54:14 6mSgxtuK


518:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:54:21 J9TfGV6r



519:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:54:26 DakZ+PY5


520:王女の宅急便 ◆1sC7CjNPu2
08/03/08 00:54:31 2Pc91cy6
 ビクトームに促されて、ニアはマガルガを連呼する。
 シータはこの会場にくる以前のロボット兵の光線を思い出し、軽いパニックに陥いっていた。
 なんとなく予想していたルルーシュはマガルガを連呼するニアを引きずり、巻き添えを食らわないように木の陰まで避難した。

「マガルガ!マガルガ!マガルガ!マガルガ!マガルガ!」
「ブワァァァァァァァ!ブルワァァァァァァァァ!ブルワァッァァァァァァァ!」

 乱回転するビクトームの放つ完全にランダムな砲撃を前にシータは攻勢に移れず、遮蔽物に身を隠すことにした。
 膠着状態となり、、現在のこの場は完全にビクトリームの独壇場と化した。
 ルルーシュはその隙に、作戦を練る。

「……ニア、魔法を唱えながらでいいから話を聞いてほしい」
「マガルガ!マガルガ!マガルガ!マガルガ!マガルガ!」
「ブワァァァァァァァ!ブルワァァァァァァァァ!ブルワァッァァァァァァァ!」

 呪文を唱えながら、ニアはコクンコクンと顔を上下に揺する。
 ニアとビクトリームの絶叫が煩かったが、どうにか意思疎通ができることにルルーシュはホッとした。

「この状況がいつまでも続けば、そのうちここは禁止エリアになって俺たちはお仕舞いだ。
 だから、罠を張って彼女を撃退しようと思う」
「マガルガ!マガルガ!マガルガ!マガルガ!マガルガ!」
「ブワァァァァァァァ!ブルワァァァァァァァァ!ブルワァッァァァァァァァ!」

 魔法を唱えながら、ニアが悩ましげな顔をする。
 これまでのニアとシータのやり取りで、ルルーシュはなんとなくニアが言いたいことを察した。
 できれば、ニアはシータを説得したいのだろう。。
 しかし、ルルーシュとしてはあそこまで不安定な人物を仲間に入れる気にはなれない。
 だから、詭弁を用いる。


521:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:54:47 WlHfPh+2
 

522:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:54:53 DakZ+PY5


523:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:55:06 A2V3cjui
 

524:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:55:19 DakZ+PY5


525:王女の宅急便 ◆1sC7CjNPu2
08/03/08 00:55:25 2Pc91cy6
「……分かっているだろ、ニア。彼女はもう手遅れだ。
 君の声……ドリルが届かなかった以上、ここで楽にしてあげるのがきっと彼女にとって一番なはずだ」
「マガルガ!マガルガ!マガルガ!マガルガ!マガルガ!」
「ブワァァァァァァァ!ブルワァァァァァァァァ!ブルワァッァァァァァァァ!」

 そんなはずありません、とニアは顔を左右に振る。
 もちろん、ルルーシュが予想していた通りの反応だ。
 できるだけ悲痛そうな顔を作り、同情を誘う。

「分かってくれニア。彼女を助けようとして、ニアやビクトリームが死んでしまっては元も子もないんだ」
「マガルガ!マガルガ!マガルガ!マガルガ!マガルガ!分かりました!マガルガ!」
「ブワァァァァァァァ!ブルワァァァァァァァァ!ブルワァッァァァァァァァ!」

 ニアは悲しそうな顔で、呪文に混じって肯定の言葉を言った。
 説得がうまくいったことに安心し、ルルーシュはおもむろに学生服の上着を脱ぐ。
 そして、ニアに少し恥ずかしそうにしながら告げた。

「それで……すまないが、服を脱いでくれないか」


 ■


 ビクトリームが乱回転しながらマガルガを連発しているせいで、森の中にはビクトリームを中心としてミステリーサークルが出現していた。

「ブルワァァァァァ!おい小娘Mk-Ⅱ!貴様なんかかなりベリィィィィィィシットなこと言ってなかったかぁ!」


526:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:55:25 6mSgxtuK


527:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:55:27 KLUf/urV


528:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:55:53 A2V3cjui
 

529:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:56:04 6mSgxtuK


530:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:56:09 J9TfGV6r



531:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:56:12 DakZ+PY5


532:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:56:23 VnJPeMBn
 

533:王女の宅急便 ◆1sC7CjNPu2
08/03/08 00:56:24 2Pc91cy6
 乱回転しながら、ビクトリームはシータに対して話しかけていた。
 シータからの返答は、ない。
 返事を返すつもりなど元からないし、そもそもビクトリームの砲撃のおかげで返事を返す余裕などないからだ。

「てーかよー!なんだかよく分からんが、貴様の話を聞いてるとなんだが腹の虫がベリィィィィィにムカついてくるんだよ!」

 一方的に、ビクトリームは語り聞かせるように話し続ける。
 そもそも、ビクトリーム自身何が言いたいのか分かっていないのだが、元々深く考えるタイプではないので話し続ける。
 シータは絶対に嫌がらせだと確信していたが。

「死んだ人間を生き返らせる?ブルワァァァァァァァ!確かにそれは名案だな、みんな何事もなくハッピー間違いなし!」

 ビクトリームは死んだ振りをしている間、ルルーシュたちの会話を盗み聞きしていた。
 そしてシータが死んだ人間を生き返らせると言った時から、ビクトリームは理解不明な苛立ちを感じていた。
 シータが生き返らせるときに『価値観を同じにする』と言ったときにブチ切れた。
 理由は、まったくといっていいほど分からない。

「OKハッピーけどなぁ、じゃああの時のグラサン・ジャックの涙はなんだったんだ!無駄じゃねぇかコンチクショウ!さらに我輩は殴られ損だおい!
ブルワァァァァアァ!マジ分かんねぇぇぇえぇぇ!我輩なんでこんなにイラついてんだ!なんだか切ないぞブルワァァァァァァ!」

 ビクトリームは苛立ちに任せて、乱回転の速度を上げる。
 さらにマガルガのランダム性が上がって、シータへのプレッシャーが増加した。

「無視か無視なんだな!この華麗なるビクトリーム様がなんだが分からんがイラついているというのに、て、ヲイなんだかマガルガ止まってませんかぁ!」


534:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:56:56 A2V3cjui
 

535:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:56:59 oguPDutO
 

536:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:57:09 6mSgxtuK


537:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:57:13 KLUf/urV


538:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:57:14 VnJPeMBn
 

539:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:57:17 WlHfPh+2
 

540:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:57:20 J9TfGV6r



541:王女の宅急便 ◆1sC7CjNPu2
08/03/08 00:57:20 2Pc91cy6
 ビクトリームの言葉に、シータは隠れていた物陰から顔を覗かせる。
 中空に浮かんだV字の頭が、心の力がどうとか騒いでいる。
 よく分からないが、確かにあの厄介極まりない光線は止まったようだった。

 ―なら、今のうちに。

 シータはストラーダを構え、今度こそV字の頭を貫こうとする。
 先ほど邪魔をしてくれた胴体は、今のところ見当たらない。
 物陰から飛び出そうとしたところで―声が聞こえた。

「弾切れだ。ニア、俺が援護するから君は先に逃げろ!」
「は、はい」

 同時に、木々の向こうから白い何かが飛び出てくる。
 会話からそれがニアだと判断したシータは、ほとんど反射的に標的をその白いものに変更していた。
 Sonic Move―高速移動魔法を発動させ、次の瞬間には目標を刺し貫いていた。

「……え?」
「シィィィィィィィィッットォォォォォォォ!この臭いはまさかベリィィィィィメロン!」

 シータはあまりの手ごたえの軽さに驚き、次の瞬間には刺し貫いた目標を見てさらに驚いた。
 ストラーダが貫いたのは、白い布で包まれた(ビクトリームの言葉を信じるなら)メロンだった。

 ―しまった、とシータは思い
 ―かかった、とルルーシュは思った

 ルルーシュの立てた作戦は、シータにマガルガを直撃させるためのものだ。
 シータの素人臭さを利用しておびき寄せ、メロンを利用してビクトリームの射角を調整する。
 囮となる物を作るためにニアに服を脱いでもらわねばならなかったが、勝つためには手段を選んではいられない。
 完璧とは言いがたい綱渡りの作戦だったが、シータが戦闘に慣れてないこともあってルルーシュの思った通りに事は運んでいた。

「ニア!やれ!」

 後はニアがマガルガと唱えれば、全てはルルーシュの考えどおりに進んでいただろう。
 しかし、世の中は全てが考えた通りに進むことなどまずないのであった。


542:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:57:52 J9TfGV6r



543:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:57:57 oguPDutO
 

544:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:58:11 6mSgxtuK


545:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:58:13 VnJPeMBn



546:王女の宅急便 ◆1sC7CjNPu2
08/03/08 00:58:14 2Pc91cy6
「ルルーシュさん、ごめんなさい!」
「な、に」

 ニアは一言だけルルーシュに謝ると、魔本を投げ捨ててシータへ向かって走り出した。
 瞬時に、ルルーシュはニアの目的を悟る。
 ―くそっ!納得したんじゃなかったのか!
 ルルーシュはベレッタM92の引き金に指をかけ、構える。せめてもの牽制のためだ。

「ニア!戻れ!」
「ブルワァァァァァァ!何をやっとるんじゃこの馬鹿どもぉぉぉぉ!」

 シータは、戸惑った。。
 自分は罠に嵌められたと思い、この状況だ。混乱しないほうが無理だとシータは思う。
 ―けど、向こうから来てくれるなら。
 未だに切っ先にメロンが刺さったままのストラーダを、走り寄ってくるニアに向ける。
 なぜかニアが下着姿で黒い上着を羽織っていて、ルルーシュが上半身裸なのが気になったがあえて無視した。
 再び、Sonic Moveを発動させて今度こそニアの心臓を目掛けて加速する。


 トンッという音と共に―ストラーダは、空を切っていた。


「嘘!」
「本当です!」

 ニアの声は、シータの背後から聞こえた。
 ハッとなって振り向くと、ニアはシータを羽交い絞めにしようとするところだった。
 何が起こったか分からず混乱しつつも、シータはニアの拘束から逃げようとする。


547:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:58:17 A2V3cjui
 

548:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:58:59 6mSgxtuK


549:王女の宅急便 ◆1sC7CjNPu2
08/03/08 00:59:01 2Pc91cy6
「ストラーダ!お願い!」
「逃がしません」

 シータがストラーダに跨って上空に逃げようとしたため、ニアはシータに掴まって阻止しようとした。
 結果、ニアはシータと共に上空に飛び上がることになった。

「は、離して!」
「嫌です、離しません!」

 ニアのあまりのしつこさに、シータは舌を巻く。
 ならばこのまま振り落としてしまおうと、シータはストラーダのスピードを上げた。
 もちろんニアも振り落とされまいとより一層、シータを掴む手に力を込める。

「この、落ちて!」
「絶対に嫌です!」

 時にもみ合いになりながら、少女たちは空中でちょっとした決闘を繰り広げていた。
 ……彼女たちが、いつの間にか海の上にいることを認識するのはしばらく後のことだった。


550:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:59:16 VnJPeMBn
 

551:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:59:18 A2V3cjui
 

552:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:59:21 WlHfPh+2
 

553:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:59:24 6mSgxtuK


554:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 00:59:26 DakZ+PY5


555:王女の宅急便 ◆1sC7CjNPu2
08/03/08 00:59:40 2Pc91cy6
【C-1/海上/一日目/夜中】
【ニア@天元突破グレンラガン】
[状態]:精神的疲労(大)、ギアス 、右頬にモミジ、下着姿にルルーシュの学生服の上着
[装備]:釘バット
[道具]:支給品一式
[思考]:
1:シータをなんとしても止める。
2:ルルーシュとビクトリームと一緒に脱出に向けて動く。
3:ビクトリームに頼んでグラサン・ジャックさんに会わせてもらう。
4:シータを探す
5:お父様(ロージェノム)を止める
6:マタタビを殺してしまった事に対する強烈な自己嫌悪

※テッペリン攻略前から呼ばれています。髪はショート。ダイグレンの調理主任の時期です。
※カミナに関して、だいぶ曲解した知識を与えられています。
※ギアス『毒についての記憶を全て忘れろ』のせいで、ありとあらゆる毒物に対する知識・概念が欠損しています。有効期間は未定。
※ルルーシュは完全に信頼。スパイク、ジンにもそこそこ。カレンには若干苦手な感情。
※ビクトリームの魔本を読めましたが、シータへの苛立ちが共通した思いとなったためです。
 今後も読めるかは不明です。


556:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 01:00:08 A2V3cjui
 

557:王女の宅急便 ◆1sC7CjNPu2
08/03/08 01:00:23 2Pc91cy6
【シータ@天空の城ラピュタ】
[状態]:疲労(大)、倫理観及び道徳観念の崩壊、右肩に痺れる様な痛み(動かす分には問題無し)、令呪(使用中・残り持続時間約2~3時間) 、
     おさげ喪失、右頬にモミジ
[装備]:ストラーダ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
[道具]:支給品一式 (食糧:食パン六枚切り三斤、ミネラルウォーター500ml 2本)、びしょ濡れのかがみの制服
     ヴァッシュ・ザ・スタンピードの銃(残弾0/6)@トライガン、暗視スコープ、音楽CD(自殺交響曲「楽園」@R.O.Dシリーズ)
     士郎となつきと千里の支給品一式
[思考]
基本:自分の外見を利用して、邪魔者は手段を念入りに選んだ上で始末する。優勝して自分の大切な人たちを、自分の価値観に合わせて生き返らせる。
0:ニアをなんとしてでも振りほどく。
1:自分の手でアシがつかずに殺せる人間は殺す。
2:自分の手に負えないものは他人に殺させる。
3:気に入った人間はとりあえず生かす。ゲームの最後に殺した上で、生き返らせる。
4:恩人の言峰は一番最後に殺してあげる。
5:使えそうな人間は抱きこむ。その際には口でも体でも何でも用いて篭絡する。
[備考]
※マオがつかさを埋葬したものだと、多少疑いつつも信じています。
※マオをラピュタの王族かもしれないと思っています。
※令呪は、膨大な魔力の塊です。単体で行使できる術はパスを繋いだサーヴァントに対する命令のみですが、
  本人が術を編むか礼装を用いることで、魔術を扱うにおいて強力な補助となります。 ただし使えるのは一度限り。
  扱い切れなければ反動でダメージを負う可能性があります。人体移植された魔力量が桁違いのカートリッジと認識してください。
  効果の高さは命令実行に要する時間に反比例します。
※令呪への命令は『ストラーダを運用するための魔力を供給せよ』です。
  ストラーダ以外の魔力を要求するアイテムには魔力は供給されません。
  持続時間は今後の魔法の使用頻度次第で減少する可能性があります。
※バリアジャケットのモデルはカリオスト○の城のク○リスの白いドレスです。
  夜間迷彩モードを作成しました。モデルは魔○の宅○便のキ○の服です。
※言峰から言伝でストラーダの性能の説明を受けています。ストラーダ使用による体への負担は少しはあるようですが、今のところは大丈夫のようです。
※エドがパソコンで何をやっていたのかは正確には把握してません。
※第三回放送を聞き逃しました。
※価値観が崩壊しましたが、判断力は失っていません。
※かがみを殺したと思っていますが、当人の顔は確認していません。
※言峰との麻婆豆腐の約束はすっかり忘れ去っています。
※ストラーダは元々飛行用の装備ではないため、ある程度直進的に飛行しています。
  ただしスピードの出しすぎ、危険運転、二人乗りなどの危険行為をしているためどこに行くか分かったものではありません。
  つまり自由です。

558:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 01:00:57 A2V3cjui
 

559:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 01:00:59 oguPDutO
 

560:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 01:01:17 VnJPeMBn
 

561:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 01:01:21 J9TfGV6r



562:王女の宅急便 ◆1sC7CjNPu2
08/03/08 01:01:31 2Pc91cy6
 ■


 シータが駆け寄ってくるニアに槍を向けた時、ルルーシュは最悪の事態を覚悟していた。
 しかし槍がニアを貫くと思った瞬間、ニアはまるで読んでいたかのようにその身を空中に躍らせていたのだ。
 ニアは空中で身体を捻らせてシータの後方に着地し―もみ合いの末、シータと共に空に消えた。

「……なんだと!」

 ニアたちが飛んでいった方向を目で追っていたルルーシュは、何度目かになる混乱に陥いることになった。

「ブルワァァァァ!ルルーシュよ!我輩はベリィィィィィィィメロンが大好きだ!どれくらい大好きかと言うと世界中のメロンは我輩のものと言ってもいいほど大好きなのだ!
 よって我輩が小娘どもを追いかけるのはベリィィィィィメェロンのためであって断じて小娘どもが心配だからなどではなぁい!ブルワァァァァァァァァァァァァ!」

 待て、とルルーシュが口を挟む間もなくビクトリームはニアたちが消えた方向へ向かって飛び出した。
 胴体も、置いていかれぬようにと魔本を回収して走り出す。
 そしてニアたちと同様にビクトリームは消失し―ここで、やっとルルーシュは消失する地点がマップの端だと気がついた。

「まさか、な」

 ある可能性に気づき、ルルーシュはニアたちやビクトリームが消失した地点へ近づく。
 ある程度近づいたところで片手を前に出し、ゆっくりと歩く。
 二、三歩あるいたところで、ルルーシュの片手は淡い光に包まれて消失した。

「……感覚は、ある」

 確認して、ルルーシュは片手を消失した地点から引き抜く。
 当然のように、ルルーシュの片手は元に戻る。
 今度は、頭から消失した地点に突っ込み―風景が、一転した。


563:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 01:02:09 VnJPeMBn
 

564:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 01:02:16 A2V3cjui
 

565:王女の宅急便 ◆1sC7CjNPu2
08/03/08 01:02:22 2Pc91cy6
「なるほど、そういう仕組みか」

 目の前に広がる海に対し、ルルーシュは忌々しく呟く。
 少し先にドーム球場が見えることから、間違いなくC-7エリアとは反対に位置するC-1エリアだろう。
 念のためにと顔を引き抜いてもう一度突っ込んでみたが、風景は変わらない。

 ―ループしているのは、間違いないか。

 常識外の連続のため、ルルーシュはこの事実をあっさりと認めた。
 そして、悩む。
 ニアたちに追いつくのは、おそらく不可能に近いだろう。
 せっかく信頼を得た相手だが、こうなっては無事を祈るしかない。

「まいった」

 最終的には図書館に集まるの予定だ。
 臨機応変にルートを変更すると決めていた以上、地図の西側から図書館を回るのもありだろう。
 ルルーシュには今二つの道がある。
 ショッピングモールへ行く道と―ループを利用して、モノレールを調べる道だ。
 ショッピングモールもモノレールも、どちらも脱出のための鍵となりえる。
 決断の時は、迫っていた。


566:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 01:02:51 6mSgxtuK


567:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 01:02:53 A2V3cjui
 

568:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 01:02:53 VnJPeMBn
 

569:王女の宅急便 ◆1sC7CjNPu2
08/03/08 01:03:24 2Pc91cy6
【C-8/森のはずれ/一日目/夜中】
【ルルーシュ・ランペルージ@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:肉体的疲労(大)、中度の頭痛 、上半身裸
[装備]:ベレッタM92(残弾13/15)@カウボーイビバップ
[道具]:デイパック、支給品一式(-メモ)、メロン×10個 、ノートパソコン(バッテリー残り三時間)@現実、ゼロの仮面とマント@コードギアス 反逆のルルーシュ 、
     予備マガジン(9mmパラベラム弾)x1、毒入りカプセル×1@金田一少年の事件簿
[思考]
基本:何を代償にしても生き残る。
1:ショッピングモールへ行くか、モノレールを調べに行くか決断する。
2:清麿との接触を含む、脱出に向けた行動を取る。
3:適当な相手に対してギアスの実験を試みる。
4:以下の実行。
  「情報を収集し、掌握」「戦力の拡充」「敵戦力の削減、削除」「参加者自体の間引き」
5:余裕があればモノレールを調べる。

[備考]
※首輪は電波を遮断すれば機能しないと考えています。
※ギアスを使った影響は若干収まってきましたが、いまだ頭痛があります。
※清麿メモの内容を把握しました。
※会場のループについて把握しました。

570:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 01:03:41 A2V3cjui
 

571:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 01:03:59 VnJPeMBn
 

572:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 01:03:59 suwRCb5M
 

573:王女の宅急便 ◆1sC7CjNPu2
08/03/08 01:04:15 2Pc91cy6
「ブルワァァァァァ!我が胴体よ!泳げ、泳ぐのだぁぁぁぁぁぁ!」

 ビクトリームは現在、漂流していた。
 正確には、胴体が準備運動もなしに海に飛び込んだせいで足をつったのだ。

「ノォォォォォォ痛い、痛いぞ我が胴体ぃぃぃぃぃ!しかも小娘どもを見失ってしまうとは我輩としたことがぁぁぁぁぁ!」

 頭部は空に飛ぶことでどうにかなっているが、胴体はなんとか浮かんでいて波に流されるがままの状態だ。

「ブルワァァァァァァァ!イッテェェェェェェェ!」

 流石に胴体を放っておくことは出来ず、ビクトリームは波間を揺られ続けることになった。

【D-1/海中/一日目/夜中】
【ビクトリーム@金色のガッシュベル!!】
[状態]:静留による大ダメージ、鼻を骨折、歯二本欠損、股間の紳士がボロボロ
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、CDラジカセ(『チチをもげ』のCD入り)、ランダム不明支給品x1、魔本
[思考・状況] 
1:なんか我輩漂流してないか!
2:小娘どもを追うのはメロンが欲しいからで、別に心配なぞしておらんぞ!?
3:パートナーの気持ち? 相手を思いやる?
4:吠え面書いてるであろう藤乃くぅんを笑いにデパートに行くのもまぁアリか…心配な訳じゃ無いぞ!?
5:カミナに対し、無意識の罪悪感。
6:シータに対し、意味の分からないイライラ
7:F-1海岸線のメロン6個に未練。

[備考]
※参戦時期は、少なくとも石版から復活し、モヒカン・エースと出会った後。ガッシュ&清麿を知ってるようです。
※会場内での魔本の仕組み(耐火加工も)に気づいておらず、半ば本気でカミナの名前が原因だと思っています。
※モヒカン・エースはあきらめかけており、カミナに希望を見出しはじめています。
※静留と話し合ったせいか、さすがに名簿確認、支給品確認、地図確認は済ませた模様。お互いの世界の情報は少なくとも交換したようです。
※分離中の『頭』は、禁止エリアに入っても大丈夫のようです。 ただし、身体の扱い(禁止エリアでどうなるのか?など)は、次回以降の書き手さんにお任せします。
※変態トリオ(クレア、はやて、マタタビ)を危険人物と認識しました。また、六課の制服を着た人間も同じく危険人物と認識しています。
※ニアとジンにはマタタビの危険性について話していません。
※持っていたベリーなメロンはジンを待っている間に完食しました。
※ニアが魔本を読めた理由はかけらも気にしていません。

574:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 12:33:16 JjXFBPtW
さて、したらばなんてほっといて話を再開するか

















で、参加者の決め方をどうするかだけどさ、
どうする?

575:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 23:04:34 XKb3Cdhj
どうしましょうか

576:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/08 23:46:13 yxTlinHg
どこ行ったって今のご時勢どんなパロロワであろうがしたらばのお世話になる

577:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/09 05:49:32 wmz3MjHz
としたらばのボケ管理人が申しております

578:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/09 12:29:34 NztKRZvT
無限ループって怖くね?

579:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/09 14:26:47 fN3u3ctr
3rdはもうしたらば立ってるじゃん

580:Rising Moon the Samurai & the Gunman ◆wYjszMXgAo
08/03/09 22:17:31 wPssus8c
脂の焦げる匂いがする。
じゅうじゅうと肉汁が炭に滴る音がする。
並べた端から肉が消えていく光景がある。

焼肉、それは日本人なら誰もが知っている韓国料理。
一晩以上コクのあるタレに漬けておき、あっさりとした付けダレでいただくのが乙というものだが贅沢は言っていられない。
二重の意味でここはまさしく戦場だ、今の状態でさえ贅沢というものである。
一心不乱で焼き、ひっくり返し、タレに付け、食らう。
ばくばくムシャムシャと、食い続ける。

「……こんな贅沢覚えちまって。明日から肉抜きチンジャオロースなんざ食えるのかね、俺」
「あ、スパイク・スピーゲル! それは私の肉よ、勝手に持っていかないで」
「確かにこれもファイトではある、か……。ジン、次は何だ?
 何であろうと俺は挑戦を受け付けよう!」
「お待ちどう。今度の獲物は白銀の蜜(あぶら)の詰まった桃(モモ)肉さ。
 まだまだ他の肉もある、戦闘(ディナーコース)は始まったばかりだしね、気楽に行こう」

焼く。
骨の付いたままのカルビを焼く。
ぼたぼた、ぼたぼたと大量の脂が網の下に落ちていく。
それは備長炭にまんべんなくまぶされることで、赤と白に染まった炭を芯とした蝋燭に早変わりするのだ。
蝋の成分は脂そのもの。
従って、そこから出てくる煙の中身には焦げた脂の香ばしさが詰まっている事になる。
煙は上に立ち上る。再度肉の在り処に辿り着き、燻す事で肉に香りを付けるのである。

下半分が白く染まった所で、ひっくり返す。
そこに覗くのは熱される事で肉表面に生じたいくつもの沸き立つ脂と、
こんがりといい具合に色をつけた焦げの混ざり合う光景だ。
数回それを繰り返すだけで十分食べられるようになるのに、一回ひっくり返しただけですぐ口に運びたくなるのは人間という種に定められた業なのか。
口の中に広がる肉の甘みとタレのコクを想像しながらそれに耐えつつ、程よい加減の所でようやく自身に口に運ぶ事を許す。

そろそろ網を変えなければならない事を意識の隅において、肉を掠め取ろうとする他の連中の手を払いのけながらハシを伸ばす。
網に張り付いてしまったそれを、間違えてちぎってしまわない様に気をつけながら丁寧に、手早く剥がしとって手元に運び、素手に持ち替える。
骨の部分を掴んで、熱いのにも汚れるのにも構わずタレにつけるのだ。

あまりつけすぎればクドくなって肉の味が分からないし、タレの温度で肉が冷める。
つけるのは一部分だけ。
サンチやコチュジャンが欲しい所だがあいにくと見つからなかったので我慢する。
肉の塊を一気に放り込めば、口の中はもう幸福の極地だ。
美味い。旨い。甘(うま)い。
……ウマい。
トロける脂。滲み出る赤身本来の味。香ばしい焦げ。コクのあるタレ。
骨の周りの肉は、アミノ酸が多い。
よく使う部分だからこそ、鍛えられて味の成分も溜まるのだ。
それを丁寧に丁寧に、餓鬼のようにこそげとる。
一片たりとも残しては天に顔向けなど出来はしない。


581:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/09 22:18:39 36GQ/cCj
 

582:Rising Moon the Samurai & the Gunman ◆wYjszMXgAo
08/03/09 22:19:11 wPssus8c
噛む。何度も何度も咀嚼する。
その度に口内の味の密度は濃くなっていく。
噛み応えそのものもまさしく上々。
適度な弾力がありながら、しかしスジが引っかかる事は決してないのだ。
確実に噛み切れる。だから、不快感はない。
何度も何度も噛み締めたくなる。

……そして、口の中に残るのは肉の味だけ。
これ以上何を食べても味気ないだろう、そんな風に思ったその時にビールを一息!
ゴクゴク、ゴクゴク。
程よい炭酸の喉越しが、全てを綺麗サッパリ洗い流す。
もちろん原料は麦芽ホップ100%。いわゆるプレミアムビール。
広がるのは苦味だけではない、大麦の味も嫌味のない程度に、しかし鮮やかに舌の上で自身を表現する。
グラスを離して思うのは、ガキどもは可哀相だということだ。
こんな幸せを味わえるのは大人だけ。
そんな優越感を味わいながら、同時になんとなく罪悪感を抱いてしまうのは何故だろう。

しかしそんな感傷も肉の匂いを嗅げば即座に消える。
見れば、タンもロースも既にない。
カルビは残りわずか、次に投入されるはハラミとホルモン。
逃す訳にはいかない。
既に舌はリセットされている。肉を味わう態勢は十分だ。

かくして、スパイク・スピーゲルは新たな肉に手を伸ばす。
戦いを生き延びる為に、目先の戦いを制する事を目的として。


◇ ◇ ◇


「……ジン、何か見つかったか?」
「首尾は上々、収穫祭は盛大に。見積もりましてはひと財産ってところだね。
 そっちはどうだい?」
「ああ……。見てもらいたいものがある、ちょっくらこっちに来てくれ」

就寝中のカレンを消防車に残し、スパイクとジンは、崩壊したデパートの探索を行っていた。
何らかのアクシデントに対応できるよう約十分おきに顔を合わせることにして、二手に分かれて最初の集合。
それだけわずかな時間だけの探索で、スパイクとジンは奇妙な事に気づいた。
デパートが丸々消滅していたにもかかわらず、瓦礫ひとつひとつの大きさは実に小さいものだったのだ。
つまり、この場で起きた現象は、爆発などではないということである。
まるで満遍なく分解されたような異様さには空恐ろしいものを感じたが、しかし現状それ以上分かる事はない。
とりあえずは保留にして、まずはジンの見つけたものを見繕ってみる事にする。

「俺の眼からしても天恵ものだね、これは。
 工芸品としては一級品、ぶつけ合うならそれ以上。蒐集家垂涎のお宝さ」

そうしてジンの突き出した最初のものは、スパイクには一見何か分からなかった。
……だが。

「……剣、か? どうにも妙な形だが」


583:Rising Moon the Samurai & the Gunman ◆wYjszMXgAo
08/03/09 22:20:00 wPssus8c
じっと見つめているうちに、それが何か一応は把握することができた。
螺旋の形状をした奇妙な剣。
それは異常な妖しさを湛えながら、息の詰まるほどの存在感を醸し出していた。

「ご名答。コイツ以外にもいろいろ暴れ馬が揃っていてね。
 とりあえず、しかるべき持ち主さえいるなら間千金の大サーカスを見せてくれるものばかりさ」

 次いで突き出されたのは黄金の剣と紅い槍の2つと、そして短剣。
 最後の短剣は大したものではないが、その前の3つは別格だとスパイクにも分かる。
 滲み出るオーラといえばいいのか、威圧感が尋常ではない。
 武器としてどうなのかはよく分からないが、美術品として売りさばくなら相当な値になるだろう。 
「……まあ、それはお前さんに任せる。で、俺の方だが」

スパイクは手にぶら下げていたデイパックを掲げながら告げる。

「……仏さんの握ってたモンだ。原形殆ど留めちゃいなかったがな。
 とりあえず、冥福を祈ってから使わせて貰う事にした」

デイパックの持ち主と思われる人間。その遺体は、殆どの部分が消失していた。
部分部分が点在するしか残っていなかったといった方が正しいかもしれない。
瓦礫の中に埋もれるようにデイパックが綺麗に残っていたのは奇跡とすら言えるだろう。
わずかな服の切れ端などから察するに、彼ないし彼女はおそらくは古代の中国人のような服を着ていたと思われる。
おそらくデパートの消失に深く関わっていた人間だったのだろうが、物言わぬ骸となっては何があったのかを聞きだす事はできはしない。
まだ中を検めてはいないが、おそらく何かしら使えるものはあるだろう。

「……成程ね。パーティの彩りにまたしても真っ赤なワインの栓が開けられたのか。
 やっぱり主催者サマには早いところご退場願いたいね」

相変わらずのジンの口調ではあるが、その表情に茶化した色はない。
顎に手を当てた後、ジンは親指で背後を指差してスパイクに向き直る。

「それでスパイク。収穫祭はまだ終わっていなくてね。 
 こっちはちょっとばかり手間がかかりそうだし、少しばかり自分の目で確かめて欲しいかな」

ジンの指差す方には瓦礫の山しか見えないが、どうやらそちらの方になにか持ち運びできない何らかがあるらしいというのは分かる。
別に反対する理由もなく、くるりと優雅に半回転したジンの背中をとりあえず追う事にしてスパイクも歩き出す。
足場に気をつけながら追いすがり、肩を並べて進む。

スパイクは考える。
……今、自分はジンと二人きりだ。
カレンは消防車の中であり、そこから出た様子は全くない。
この場でジンと何を話そうと、彼女には何も伝わらないだろう。
では、どうすべきか。

もちろん、ルルーシュとマタタビ殺害に関する自説についてである。
カレンの目の前では話せないことを伝えるのには今はまさしく絶好の機会だろう。
そこで問題となるのがジンがそれを話して信用するか、否か。
そしてまた、それだけ信頼するに足るか、だ。
……前者に関しては限りなく否の方だろう。
あるのは状況証拠だけ。
それも、ゼロの素性など、当事者でない彼に話すべきか分からないような事象まで存在するのだ。
そもそも自身すら信用しきれない仮説などはまずまともに受け取ってはもらえまい。


584:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/09 22:20:17 f99qmTdV
  

585:Rising Moon the Samurai & the Gunman ◆wYjszMXgAo
08/03/09 22:20:52 wPssus8c
だが。
後者という点に関してならば、ジンは十分条件を満たす相手だとスパイクは判断した。
ここでジンに自説を開陳しても、彼ならば信じまではせずとも頭ごなしの否定もしないだろう。
不用意に口を開く事もしないはずだ。  
まともに受け取ってもらえないのなら、それを逆手に取ればいい。
戯言である事を前提に情報を渡しておけば、多少なりともそれを意識してくれるはずである。
後はこれからの事実でそれを肯定する何某かの証拠を得られれば御の字といった所だろう。

「……ジン。今からの俺の『独り言』は全部妄言だ。聞き流してくれて構わん。
 ああ、絶対に『他言はするな』よ。こんな馬鹿げた事を考えていたと知られたら一生の恥だからな」
「……オーケイ、とりあえずは頭の検問をスルーさせることにするよ。
 俺の口を動かすには結構体力が必要でね、アタマの中だけで収まる程度の事ならいくらなんでもパワー不足さ」

つまり、それは誰にも話さないということだろう。
『頭の中で収まらない事態』が発生するまでは、だ。
その返答に満足し、スパイクは語り始める。

温泉での出来事。ルルーシュの言葉を受けて妙な行動をした3人。
そこから導き出された読子・リードマンの仮説。
催眠術のような技能をルルーシュが持つ可能性。
自身の催眠術に関する体験談。
マタタビ殺害の経緯にそれが使用された疑い。
催眠術の弱点。マタタビを消す事でそれが漏れるのを防いだという動機。

それらの『妄言』を、万一カレンが追ってきた時に聞こえないよう念を入れて注意しながら事細かに伝えていく。
……そして。

「これだけは、誰にも明かすな。万一が起こった時でも俺が呟いたと悟られないようにしろ」

言葉を切り、ジンを見る。
目線の先の彼はこれまで話を聞いても軽口を一切叩かず、聞き役に徹していた。
そして、表情を一切変えずにジンは頷く。
その様子を確認したスパイクは、とうとう告げる。
これからのルルーシュ・ランペルージの動向を知る鍵に十分なり得る、その事実を。


「……ルルーシュ・ランペルージは『ゼロ』だ。
 それを知っているヤツは俺とカレンだけしかいない。
 この意味は分かるな?」

「カレンおねーさんが消しに来る可能性、か。
 それをスパイクは待ち受けているという訳だね」

ゼロ、という名詞の意味しているものが何か。
それを知らずとも、スパイクの口調は今後起こり得る可能性を示唆するのに十分だった。
ジンの飲み込みに安堵しながら、彼の知る限りのゼロの意味する事項、カレンのゼロへの執着を語っていく。

そして、全てを語り終え、スパイクはようやく一息ついた。

「……すまんな。しょせん状況証拠しかないもんだ、疑心暗鬼を振り撒いたのと同じだな。
 そもそもこんなトンデモ理論が信頼に足りるかどうかすら……」

煙草を探す動作をするスパイクだが、今は持っていない事をすぐに思い出し、頭をかく。
だが、それを見たジンは、スパイクに対する不信は微塵もないという表情で返答した。


586:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/09 22:21:14 f99qmTdV
 

587:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/09 22:21:34 36GQ/cCj
 

588:Rising Moon the Samurai & the Gunman ◆wYjszMXgAo
08/03/09 22:22:11 wPssus8c
「いやいや、なかなか有意義だったよ。
 ダークヒーローは素性を隠すもの。ルルーシュがあんな雰囲気を湛えていたのも納得だね。
 そして選定の剣は王を選んだ後に力を授けるもの。どんなチカラを彼が持っていても別段不思議ではないんじゃないかな」

表情を崩したジンの手にあるのはカリバーン。
スパイクは知る由もないが、それはまさしくアーサー王伝説に出てくる王を選ぶ為の岩に刺さった剣である。 
どうやら、ジンはスパイクの仮説を少なくとも可能性のレベルでは認めたようにスパイクには思えた。
だとするならば非常にありがたい。
議論する相手がいるならば、自分だけでは見えない視点からの考察もできるのだ。

そうしてスパイクが、ジンの今の仮説についての意見を聞こうとした瞬間、その男は現れた。


「――俺はネオジャパン所属のドモン・カッシュ!!
 お前達にファイトを申し込む! いざ、正々堂々と――」


現在考察中という空気を全く読まずに拳を振りかざす、実に暑苦しいハチマキ男が。


◇ ◇ ◇


「ふう、満腹満腹。一切れのパンは時として100万の宝石よりもなお尊いね。
 それが血湧き肉踊る謝肉祭(カーニバル)とあればなおさらさ」

先刻までの焼肉。
とりあえずそれに満足しながらも、ジンには一つ引っかかる事があった。
殺し合いという状況下にそぐわない御馳走を調達する事を可能とした、この場の状態だ。
現在自分たちがいる場所は、日の光や星の瞬きを望む事のできない場所である。
即ち、地下。
現代日本の住人ならば、『デパ地下』という言葉で大体思い浮かべるであろう空間の中を進んでいるのである。
その中の一角の精肉店からグラム1,000円を越えるようなお肉ばかりをドロボウとして頂戴した後、やはり地下のレストラン街にあった鉄板焼きの店で美味しく頂いたという次第だ。
ジンがスパイクに見せようとしていたものとは、まさしくこの地下空間の存在だった。
デパートの地上部は丸々消滅していたが、しかし地下の部分には全く影響はみられない。
何らかの現象が、地上からデパートの建築物部分に向かって発生したのだとすれば筋は通る。

だが、それにしても。

「……さすがに影響がなさすぎるね、これは」

――そう。あまりに綺麗すぎるのだ。
まるで何か不可思議な力がここを守っているかのように。

……普通、デパートを見てそこに何があるかを調べようとした時、まず意識するのは高々とそびえる建造物の方だろう。
逆に言えば。

589:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/09 22:22:20 36GQ/cCj
  

590:Rising Moon the Samurai & the Gunman ◆wYjszMXgAo
08/03/09 22:23:00 wPssus8c
(……本命は地下に。大きな建物は立派な孔雀の尾羽ってところかな。ドロボウを相手するには基本だね)

現在自分たちがいるのは地下一階。
その下に何階層あるのかは分からないが、そこに何かが隠されている可能性は十分あるだろう。
それこそ『地上では目立ちすぎる巨大な何か』や『どこかに抜ける通路やゲート』があっても、地下に隠されている限りは空間的な不都合さを気にする必要はないのだから。

「……とはいえ、今は調べている暇はなさそうだ」

一人呟きながら、ジンは先方を行く3つの人影をそれぞれ順繰りに見渡す。

まず目に留めたのは左端にいるスパイク・スピーゲル。
ルルーシュに関する興味深い仮説を自分だけに告げた男だ。
仮説そのものはどこまで信用できるかは分からないが、彼という男本人は信頼に足るとジンは判断した。
森の中や山小屋での立ち振る舞いを考えれば、彼がゲームに乗っていないのは明白だ。
疑心暗鬼を振り撒くような行動もしていない以上、影で暗躍しているとも思いがたい。
とりあえず、温泉で起こった事象や、ルルーシュにはマタタビを殺す動機があったという点は留意しておくべきだろう。


そして、真ん中にいるのが現状最優先でどう扱うか考える必要のある男――ドモン・カッシュ。
いきなり殴りかかってきたのは人としてどうかと思ったが、食事に誘ったらホイホイついてきたので当面害はないだろう。
ここがハッテン場でなかったことに彼は感謝すべきだ。
彼がそういう趣味の持ち主だとしたら全く問題がないことではあるが。
とりあえずは彼の今までの経緯を聞いてみて、いくつか考慮すべき事が判明した。

まず、カミナという男を捜す必要がある。それが現状の彼の行動指針らしい。
18:30に駅で合流する予定だったとの事だが、彼がそこに着いた時には既にその姿はなかった。
そこで、とりあえずカミナの向かいそうな所としてドモンが絞った候補は二つ。
炎上する何らかの施設と、暗闇がぽっかりと空いた空白地帯――つまりこの場所だ。
あいにくとカミナはここにおらず、おそらくは行き違いになったか、炎上した施設――地図から確認するに豪華客船の方向に向かったかのいずれかだろう。
人員を集める事が目的の自分達としては、カミナを探すのに異論はない。
だが、豪華客船の方向に向かえば清麿のいる病院からはどんどん離れていく事になってしまう。
そこで今後の方針をどうすべきかが問題となる。
デパートの地下を調べる暇がないというのは、彼が急いでカミナを探しに行きたがっているからだ。
だったら焼肉食ってる場合じゃないだろというツッコミは、しかし彼自身が空腹だった為却下された。

何にせよ、他にも参加者に関する有力な情報を幾つも手に入れることができたのは僥倖だ。
会場のループの情報も非常に有用だろう。
彼はケダモノのように誰彼構わず襲い掛かっていたらしい。
その事に対し言いたい事はあるものの、そのおかげで自分達の知りえない人員についての情報を得られたのだからとりあえず保留にしておく事にする。

東方不敗という彼の師匠の事。
ゲームに乗った上に強大な戦闘力を有する彼は最も警戒すべき人物だ。
ドモンはどうにか彼を説得したいようだが、状況次第ではそんな悠長な事を言っていられないだろう。

額に傷のある男の事。
説得の余地はあるが、それには入念な注意をする必要がある。
とにかく意識しておくに越したことはない。

言峰という神父の事。
ゲームに乗ったわけではないようだが、掴みどころのない人物だ。
彼に関しては協力できるに越したことはないか。

双剣使いの少年と銃使いの少女たち。
話を聞くに、彼らがゲームに乗るとは思えない。
探し出して合流したい所ではある。

591:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/09 22:23:28 sIr/T4HU


592:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/09 22:23:40 36GQ/cCj
  

593:Rising Moon the Samurai & the Gunman ◆wYjszMXgAo
08/03/09 22:24:02 wPssus8c
こうした情報を得て、ドモンに下す評価は一つだ。
信用できる男である。
彼自身の戦闘能力はおそらく相当高い。
自分たちの味方になってもらえるなら心強いだろう。
彼もそれを快く了承してくれた。
ドモンに出会えただけでもパーティを二分した甲斐は十分あったと言える。

そこでジンは、全員が落ち着いて揃っているというタイミングの良さもあり、ルルーシュにしか明かさなかった清麿から預かった考察メモを開示することにした。
有用な意見こそ出てこなかったものの、とりあえずは清麿は信頼できるということと、考察内容の把握はできたはずだ。
これからどうなるとしても後々役に立つこともあるかもしれない。


最後にジンが目を留めたのは、右端にいるカレンだ。
ドモンがネオジャパン、日本出身だと聞いた為か、初対面からかなりの信頼を置いているようである。
スパイクからの視線への楯にするように、間にドモンを挟んで黙々と歩き続けている。
それだけ彼女が不安定だということでもあり、好ましい傾向だとは言いがたい。
スパイクの言によれば、彼女が彼を消しに来る可能性もあるのだ。
それだけに注意をしておくに越したことはない。
彼女がこんな事を言った後なら尚更だ。

「――ジン。あなたがドモンを消防車に乗せて、豪華客船の方をまわって来るというのはどう?
 私とスパイク・スピーゲルは病院に寄って、清麿という人を回収。
 もちろんカミナって人と会ったら連れて行く。
 その後で映画館か卸売り市場で全員合流すれば問題はないんじゃない?」

カレンがそう発言したのは、食事の直後の事だ。
食事中不意に考え込むような仕草を見せていたのは、おそらくその事について考えていたからだろう。
確かに消防車を運転できるのは自分だけであり、豪華客船側に向かうルートは遠回りであるため、
カミナと合流するには理に叶ってはいる。

しかし、嫌っているスパイクと同行するという時点で何かおかしいと勘繰るのは果たして考えすぎなのだろうか?
仮にカレンがスパイクを消そうとしているのなら、二人きりにしたとすればそれこそ殺してくださいと言っているようなものだ。
……だが、スパイク自身はこちらを向いて軽く頷いたきり、特に肯定も否定もしなかった。
つまり、それはカレンを止めるという意思の現われだ。
現状他に有効な手を思いつかない以上、彼に任せる他はないだろう。

気が付けばもう階段だ。
これを昇れば、そこに見えるのは満天の星空。
一時の別れは近い。
とりあえず、合流地点を映画館に指定して二手に分かれることにする。
何らかの理由で映画館が危険と判断したなら卸売り市場に集合と決め、ジンとドモンは消防車に乗り込む。

「それじゃ、スパイクとカレンおねーさん、良い旅を。
 次会うときにはもっとフレンドリーに笑いあえてるなら嬉しいね」
「スパイク! カレン! カミナと会ったら頼んだぞ!
 ……それと、師匠に会ったら伝えてくれ、人間も自然の一部なのだ、と……!」

窓からそれだけを告げて、消防車は闇の中へ消えていく。
もう一度スパイクとカレンに会えるかどうかも分からないまま。
その先の出会いに希望があると信じながら。


594:Rising Moon the Samurai & the Gunman ◆wYjszMXgAo
08/03/09 22:25:02 wPssus8c
◇ ◇ ◇

――月の綺麗な夜だった。

瓦礫の中、邪魔な建物が消失して一気に広がった黒い空にぽっかりと浮かぶ円月。
それがやけに印象的だった。
空気は肌寒く、視界は遠くからの電光頼りにぼんやりとしか得られない。
だからこそ、空の綺麗さがくっきりと映し出されたのかもしれない。
街中のはずなのに、天の星々が良く見えた。

いい夜だ。
とても静かで心地いいと、彼女は思う。
なんで静かなのか。
それは人気がないからだということに思いを馳せ、月を仰ぐ。

いい夜だ。
人間がどれだけ夜毎に騒音を奏でているのか、どれだけ人工の光が明るいのかが良く分かる。
すぐ近くの海からは、潮騒の音さえ響いてくる。
夜の海はどれだけ綺麗なのだろう。
ちょっとだけ見てみたいと思うも、そうするには少し手間をかけねばならない。

今ここにいる人間は数少ない。
自分ともう一人の男。彼女はそれを強く意識する。
実に都合がいい。
というよりも、その為に慣れない口八丁でこの状況を作り出したのだ。
もちろんロマンチックな理由などではない。
そんなのは願い下げだ。
では、何の為にこんな状況を作り出したのか。

いい夜だ。
昔から語り継がれる常套句がある。


こんな月の綺麗な晩には、何が起こってもおかしくない。


通り魔が出るにしても怪物が出るにしてもうってつけ。
まさしく人が死んでもおかしくないとばかりの出来過ぎたシチュエーション。
月には魔力がある。
人を惑わせ、有り得ない出来事を導く魔力が。

ゼロは言った。
あの男を排除せよ、と。
何という好機だろう。
今の彼女には、夜の月さえ自分の味方をしていると思える状況だ。
前の男は先刻、気楽そうな顔で病院に向かう旨を告げ、さっさとこちらを振り向きもせずに歩き始めた。
無防備な背中を曝しながら。


595:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/09 22:25:47 36GQ/cCj
   

596:Rising Moon the Samurai & the Gunman ◆wYjszMXgAo
08/03/09 22:26:03 wPssus8c
いい夜だ。
何かと癇に障ることばかり言う男だった。
あの男の背中に鉛のお守りを真心込めてプレゼントしてあげる。
そうすれば、いい夜はきっと更にいい夜になるだろう。
自身の気の持ち様次第でしかないと分かっていても、それだけで十分価値はある。

紅月カレンは。
カレン・シュタットフェルトは懐のワルサーを握り締め、ゆっくりと、ゆうらりと腕を突き出し狙いを定める。
冴えない男だ、と彼女は思う。
自身が指にかけた引き金をほんの少し動かすだけで死ぬというのに。
あまりにも彼は、自然体でいつもと変わらなかったのだから。

そしてその時は訪れる。
彼女は指先に力を込めながら、思う。

――ああ、本当にいい夜だ。




そして、銃声と共に夜空の月は紅く染まる。
真っ赤な真っ赤な花を咲かせながら、

紅の月は、輝きを増す。




「え、…………あ、れ?」




――ただし。
その銃声はワルサーとは似ても似つかないものだったのだが。


ほんの少しだけ違和感を感じたので、下を見る。
ごっそりと、お腹の殆どががらんどうになっていた。

そこから辺り一面に血がブチ撒けられる。
地面にも、手に持つワルサーにも、彼女の顔にも飛び散った。
ずるずると、下の支えのなくなった臓器も重力に引きずられて定位置から外れ落っこちてくる。

ゆっくりと顔を上げる。
冴えないと思った男の顔は、それまでの所作から信じられないほどの驚愕と、憤怒に満ち満ちていた。
どうやら彼の仕業ではないらしい。
その視線の先は彼女を通り越して背後まで向かっている。


597:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/09 22:26:28 36GQ/cCj
 

598:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/09 22:26:50 36GQ/cCj
   

599:Rising Moon the Samurai & the Gunman ◆wYjszMXgAo
08/03/09 22:27:04 wPssus8c
良かった、と彼女は思う。
あんな怒りを自分に向けられたら、怖くてみっともない姿を見せてしまいそうだ。

そんな、自身の状態に全く無頓着なことを思いながら、ゆっくりとカレンは崩れ落ちた。
うつ伏せに倒れつつ、ぴくぴくと体を震わせながら。
流れ出る血はいつの間にか池と化し。
血溜りに映り込む星空には、紅い月が輝きを放っていた。

煌々と。煌々と。


いい夜だ。

こんな月の綺麗な晩には、何が起こってもおかしくない。




◇ ◇ ◇


いい夜だ。

そこにたどり着いた時には、消防車が闇の彼方へ消え去る所だった。
追っても人間の足では追いつけないだろう。追う価値はない。
それに、なによりも自身の追い求めた宿敵がすぐ側にいる。
あの男に出会えるならば、どんな曇天でもいい夜に違いない。

だが、仕掛けるタイミングが重要だ。
ロケットランチャーを撃ち込んでやるような形で葬っても、自身がそれを許さない。
故に、少し観察をすることにした。
背後から幽鬼の様にゆっくりと追いながら。

あの男は、背後の小娘に随分警戒しているようだった。
下らない話だ。
邪魔になるならば早々に排除してしまえばいいものだろうに。
更に愚かなことに、小娘はそれにさえ気付かない。
消防車が消え去ってからしばらくして、宿敵に対して銃口を向けた。
気付かれていないなどと思い込みながら、あの男を殺そうとして。

だからこそ、だ。
目障りだから、片付ける。
機を窺うまでもない。
あそこまで愚かならば、先刻まで持っていたレーダーに頼るまでもない。
宿敵との戦いを幕開けるための、始まりのベルになってもらうまでだ。


600:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/09 22:27:40 36GQ/cCj
  

601:名無しさん@お腹いっぱい。
08/03/09 22:28:01 36GQ/cCj


602:Rising Moon the Samurai & the Gunman ◆wYjszMXgAo
08/03/09 22:28:06 wPssus8c
十字架を構え、重機関銃の銃口を小娘に向ける。
この武装は便利だが、あの男との戦いで悠長に振り回すには重過ぎる。
邪魔な塵芥を排除することにしか使えないだろう。
頼りにするのは、やはり愛着ある自身の武装だ。


いい夜だ。
因縁を清算するには、これ以上ない程に――いい夜だ。



◇ ◇ ◇


「ビシャァァアアァァァアァァーーーーースッ!!」


――カレン・シュタットフェルトだったモノが血と臓物を撒き散らして転がった。
どう見ても致命傷だ。駆け寄って声をかける必要すらもないくらいに。
上半身と下半身が皮一枚で繋がっているだけなのだから。
中に詰まっていた臓器やら脊椎やらは血煙となってカレンだったモノの上に漂っている。

上半身から覗くのはアバラや黄色い脂肪、それに紫色の臓物だ。
腹側のアバラの周りの脂肪分が多い部位がカルビ。
反対に、背中の方の赤い血を流し続けている辺りがロース。
どろどろと零れ落ちてくる横隔膜の周辺が文字通りのハラミだ。
そうした筋肉の間からちらちらと、レバーやハツ、つまり心臓が精一杯まだ生きていることを示そうとしているのが見える。
勿体ないことに、ミノやギアラと呼ばれる胃の部分は完全に木端微塵になってしまったようである。
下半身の方もだいぶ内臓系のは吹っ飛ばされてしまったらしい。
しかし、半分くらい残ったホルモン、いわゆる大腸が弾ける寸前のソーセージの様に蠢きながら自己主張をしている。
焼肉にはあまり使われない小腸も一緒に、臓物が後から後から押し出されてくる。

その、モノの横を見向きもせずに通り過ぎ、血煙の奥から湧き上がるように歩み出てきた影が一つ。
誰、などという疑問は顔が見える前から吹っ飛んでいる。
その手にある獲物は、紛う事なき日本刀。
……その男の名は、ビシャス。
自身のかつての相棒であり、最大の宿敵でもある野心家だった。


◇ ◇ ◇



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