アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ12at ANICHARA
アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ12 - 暇つぶし2ch264:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:43:44 ePxzxXvx


265:ナイトメア・チルドレン ◆tu4bghlMIw
08/02/22 01:43:56 v907MW6E
「お前ら……イチャつくのは結構だが、そろそろ森を抜けるぜ。用心しな」
「べ、別にイチャついてなんか―!」

カレンがスパイクの台詞に頬を赤らめ、またも怒鳴りつけようとする。
が、その時、


「―おねーさん、喧嘩は良くないんじゃないかなぁ」


三人の頭上から謳うようなボーイソプラノの声が響いた。

「ちッ―!?」
「下がって、ルルーシュ!」

すかさず反応するスパイクとカレン。
それぞれ獲物を取り出し声が聞こえた方向、すなわち上方へと向ける。

この森は背の高い広葉樹が多く生い茂る非常に大きな森だった。
光も刺し込まないような薄暗さながら、数本の枝木が葉を擦り合い立体的な空間を形成している。

(敵襲だと……! いや、ならば声を掛けて来る筈がないか。だが、こんな場所に他の参加者がいるとは……)

「―よっと」

まるで忍者のような身のこなしで一人の少年が姿を現した。
当然、現れる方向は上。軽業師も真っ青な動作で悠々と着地する。
ルルーシュ達は彼のその動きに唖然とならざるを得なかった。
軽く数メートルはある高さから飛び降りて無傷。その表情には余裕さえ見て取れる。


「男二人に女一人のぶらり旅? とはいえ仲はあまり宜しくない、と」
「……名前は?」
「俺? 人に名前を聞く時は先に自分が名乗るもの……そんな野暮なことは言いません。
 俺はジン。見ての通りイタイケで純情なただの―ドロボウです」


スパイクが銃を構えながら問い掛けた質問にペコリ、とお辞儀をしながら応える。
ブワッ、と一瞬で場の空気が変わったことをルルーシュは肌で感じた。

現れたのは袖にうずまきマークの付いた黄色いコートを羽織った少年。
ハリネズミのような黒々とした髪の毛を逆立て、不敵な笑みを浮かべている。

「……信用できねぇな」
「あれ、そう? どんなお宝だって盗むけど、人の命だけは盗むつもりはないんだけどな」
「……ガキならガキで年相応の態度ってものがある。お前は……異様だ」

それはスパイクの直感だった。
明らかに眼の前の少年、ジンの仕草は外見から想像出来る年齢(十代中盤から後半と言った所か)とは掛け離れている。
「ドロボウ」という肩書きを抜きにしても、彼が油断ならない人物であることは確かだろう。


「お褒めの言葉を預かって光栄だね。ただ異様とまで言われるのは少しだけ意外かな。
 参考までに、どうしてそう思うのか教えてくんない?」
「ペラペラとよく回る口だ。銃を向けられてその立ち振る舞い。普通、一朝一夕じゃ身につかねぇ。
 ドロボウなんてチンケな言葉は似合わん」
「そう、母ちゃんがくれた自慢の口だから。それに俺は王ドロボウ。主催者サマに辞任していくためには何だってやる訳さ。
 パーティ会場が血生臭くちゃ、ご来賓の皆様もしかめっ面だろ?」



266:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:44:09 lwXvKLCc


267:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:44:14 IoHMEHZh
 

268:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:44:15 YWpcEEbh
「「「「ええいエロスの鐘の十常時! このSS、支援してくれるわ!」」」」

269:ナイトメア・チルドレン ◆tu4bghlMIw
08/02/22 01:44:37 v907MW6E
対峙するジンとスパイク。
その少し後ろでルルーシュを守るように銃を構えるカレン。
この状況において、最も安全な場所に居るルルーシュはジン、と名乗った少年について必死に分析する。

「さて、どうすれば信用して貰えるかな? 今だって同行者の皆さんに無理言って一人で出て来てるんだよね。
 こう見えても最高に多忙だったりする訳さ。
 消えた身体の帰りを待っている頭(ブレーン)のためにも、あくせく働かなきゃいけないんでね」

ジンの特徴的な言い回しは続く。
しかしこの時、ルルーシュは彼の言動がある一つのシンボルを差していることに気付いた。
つまり、彼に有力な仲間がいる、と。

(信頼出来る仲間を持っている……ということか。そしておそらく頭脳派の人間……。
 どの程度まで考察を進めているのか不確実だが、接触してみる価値はあるな)


「―もっとも」
「ん?」
「『オジサン』達の脳味噌が疑惑でサラダボウルになってるってなら……軽くお遊戯に付き合うのもOKだよ。論より証拠、ってね?」


ニヤッ、と笑いながらジンが両腕を上げファイティングポーズを取る。

―戦って自分が殺し合いに乗っていないことを証明する。
一見矛盾しているようにも思えるやり方だが、ある意味筋が通っているとも言える。

なぜなら、戦いとは個人のありとあらゆる能力の複合結晶体であるからだ。
特に一対一、生身の戦いとなると各々の性格が如実に発揮される。
剣を振るうタイミング、身のこなし、間合いの詰め方、銃の照準、全体的な視野……。
久遠の時にも似たその邂逅は同時に理解の場所でもある。
打ち出される一発の正拳、斬撃、射撃。その一つ一つが磨き上げられた精神と意志から放たれるものだ。

優秀な戦士となるためには様々な能力を必要とし、幻想は一切存在しない。
戦いの空気を通じて、心が惹かれ合うことも決してフィクションではない。
武道家などが口にする「拳と拳で分かり合う」という言葉は根拠のない妄言ではない訳だ。


「ガキを甚振るのは趣味じゃない。が……一番性に合ってるやり方だ。泣いても知らんぞ」
「ソイツは奇遇。実は俺もすこーしだけ嫌なことがあった訳で……ね。遊び相手が欲しかったりして」


そして、変わる空気。
スパイクは手にしていたデザートイーグルをしまうと、脇を締め、軽くステップを踏み始める。
―ジークンドー。
彼が尊敬する格闘家であるブルース・リーが生み出した独自の拳法だ。
様々な中国拳法に空手や柔道、サバットなど国境を越えた武術を組み合わせて誕生した複合格闘の総称である。
元々チャイニーズ系であるスパイクにとって、近接格闘は銃撃戦と同様に得意とする分野なのだ。

「へぇ、独特な型だね。カンフーマスターに会うのは初めてだったり」
「減らず口もそこまでだ。言っておくが……俺は強いぞ」

スパイクの背後のルルーシュ達も彼らの放つその独特の雰囲気に圧され、若干呼吸をするのが苦しくなる。


270:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:44:41 ePxzxXvx


271:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:44:49 crTGSGnF
 

272:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:44:50 YWpcEEbh
「「「「ふっふっふ……隙あり!支援する!!」」」」

273:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:44:56 lwXvKLCc


274:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:45:02 IoHMEHZh
 

275:ナイトメア・チルドレン ◆tu4bghlMIw
08/02/22 01:45:06 v907MW6E
このままでは両者の激突は避けられない。
端的に見てもそう結論付けがなされようとしたその時、

「そこまでだ、二人とも」 
「ん?」

動いたのはこの場で唯一、戦闘力を持たない彼だった。

「ル、ルルーシュ!? 前に出たら危ないわ!」

狼狽するカレンを尻目にザッ、と砂利を蹴り飛ばし睨み合うスパイク達の元へと歩を進める。
これは一つの賭けだった。
劣悪な環境に置かれた自身を表舞台へと復帰させるためのギャンブルのようなものだ。

(わざわざ貴重な戦力を目減りさせる訳がないだろう。
 どちらも十分に利用価値がある……むざむざ疲労させる必要性など皆無だ)

―俺は他の参加者から遅れを取っている。

これが先程からずっと、ルルーシュの中で拭い切れなかった思考である。
まず、八十二名もの人間がこの殺し合いに参加している以上、螺旋王を打倒しようと考える人間は少なく見積もっても三分の二程度はいた筈だ。
その中にある程度『頭の切れる人間』が含まれていることは明らかだろう。
おそらく、早い段階で有力な参加者同士が合流したケースがあってもおかしくない。

その点、自分は確実に運がなかった。
カレンやあの妙な猫、偽ゼロと言ったおめでたい頭の連中と遊んでいたせいで、時間を大いに浪費したのだ。
最初からスパイクのような、ある程度良識を持った人間と出会えていたならば状況は一変していた可能性が高い。


既にゲームが始まってから十八時間が経過している。
参加者の数もついに半分を割り込み、殺し合いは中盤戦に突入したと言ってしまっていい。
つまりある程度、螺旋王に達するための手掛かりを掴んでいる人間がいても不思議ではない。

加えて、こちらの姿を一方的に捉えながらわざわざ声を掛けて来たこと。
あくまで自身のスタイルを崩さずにコンタクトを取って来たこと。
この両者からも、彼がある程度友好的な感情を自分達に抱いて行動していることが分かる。

(危険は、無いはずだ。最悪……ギアスを使えばいい。大丈夫だ、落ち着けルルーシュ)

更に一歩足を踏み出す。
尖った小石を踏み潰し、両脚に残る鈍痛を振り払う。
相手と一対一で向かい合う―最も大切なのは第一声だ。
揺るぎなく確固とした自我に裏づけされた言葉。それこそが他の人間を衝き動かすのだ。


「―ジン。君を、信用しよう」
「はぁっ!? おい、ランペルージ!」
「ちょ、ちょっと待ってよ、ルルーシュ!」
「いいから。ここは俺に任せてくれ。……スパイクさんもよろしいですね?」
「……チッ。分かった、ここは退いてやる。―油断だけはするなよ」

ルルーシュはカレンとスパイクを退けるようにして、二人の前に立った。
対峙。ジンと一対一で向き合う形となる。

「ルルーシュ・ランペルージだ」
「ご丁寧にどうも。しがないドロボウやらせて貰ってマス。
 でも、まさか君が出てくるとは思わなかったよ。てっきり後ろにいるモジャモジャ頭のオジサンがリーダーなのかな、と」
「……俺はまだ二十代だ」
「スパイク・スピーゲル。ルルーシュの邪魔よ、黙っていて」
「……ヘイヘイ」

276:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:45:13 dQeb3OGZ
 

277:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:45:20 YWpcEEbh
「「「「ぬわー!!!!」」」」

278:ナイトメア・チルドレン ◆tu4bghlMIw
08/02/22 01:45:33 v907MW6E
「オジサン」という言葉に反応したのか、スパイクが苦虫を噛み潰したような表情のまま唸り声を上げる。
そしてすかさずソレを咎めるカレン。スパイクは反論する気も失せたのか、気だるそうに頭を掻いた。
ちなみに彼の年齢は二十八歳。男としても最も油の乗っている時期である。

「ハハハ、女の子は怖いね。―彼女、ルルーシュの恋人?」
「違う。ただの……同じ学校の友人だ」
「へぇ、ソイツは珍しい。一つだけ忠告、同郷の仲間は大切にしておいた方がいいよ」
「……お前も誰か―」
「……さぁね。それにドロボウの過去は少しぐらいミステリアスな方が面白いと思わないかい?」

乾いた笑い。
サーカスのピエロか狂言回しのような言動を見せていた今までのジンからは、到底考えられないような真面目な表情。
一瞬だけ彼の顔が泣いているように見えたのは気のせいだったのだろうか。

「そうだな。ダークヒーローに隠された過去は欠かせない。
 それが重厚な鎖に縛られたものであればあるほど、彼らの行動は崇高な存在へと昇華される」
「イエス、ロマンは大事さ。永遠の灰色より一瞬でも輝く七色の方が美しい―ってね」

ルルーシュは己の中の《ゼロ》を見つめながら、小さく笑った。
そう、仮面を被るのは自らを象徴化させるためだけではない。
本来の素顔を隠し、偽りの自分を構築することが最大の目的と言える。

「それにしても、ルルーシュ。そんな英雄に知り合いでも? 良かったら紹介して欲しいね。武勇譚を拝聴しに参上したい所だよ」
「残念ながら、ご期待には沿えそうにも無いな。"何の力も無い"から、俺にはこうやって彼らの偉業を褒め称えることしか出来ない」
「『鳴かない猫は鼠捕る』とも言うね。そもそも、俺には君が爪も牙もなくした老猫にはとても見えないな」
「……どうだろうね」

少なくとも、先程スパイクと会話していた時と比べて大分マシな展開だった。
歳の近い二人の少年のやり取りは予想外なほど上等に進行した。

数分間に渡る対話で、最低限の情報の交換が行われた。
つまり、ジンに複数の仲間がいて彼らがこの先の山荘で"一人の参加者"を治療していること。
ルルーシュ達が褐色の肌をした大男に襲われたこと、などだ。

「あ、そうだ」
「どうしたジン?」
「今、俺の仲間が猫の看病をしてるんだよね。今はそれなりに回復した筈だけど。眼帯を付けた喋る猫……名前はマタタビだったかな」
「なッ―!」
「それって……あの時の猫かしら?」
「……あの妙に渋い猫か」

カレンとスパイクが小さく頷いた。
二人もクレア・スタンフィールド、八神はやて、マタタビの三名には接触している。
が、ただ一人。ルルーシュが覚えた感想は残りの二人とは明らかに違ったものだった。

(一人だけ生き残ったあの猫か……。いや、しかし妙だ。奴には確実にギアスを掛けたはず。ならば……)


「ジン、お前の仲間はここから"北"の山荘にいるんだったな。彼から何か聞いたか?」
「ん? いや、別に? 山荘があるのはD-8の古墳の近くかな。三人と出会ったのは隣のエリアだけど。
 でも彼のおかげで俺はルルーシュ達に会えたんだから、実は幸運をもたらす招き猫だったりして」
「そう……か」


ルルーシュは半ば確信した。
鼓動が凄まじい勢いで身体をノックする。
全身の疲れが一辺で吹っ飛び、背筋に冷たいものが走った。


279:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:45:36 crTGSGnF
 

280:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:45:51 ePxzxXvx


281:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:45:56 rPlS2XxO
 

282:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:46:09 IoHMEHZh
 

283:ナイトメア・チルドレン ◆tu4bghlMIw
08/02/22 01:46:10 v907MW6E
信じたくは、ない。
だがこの空間は明らかに異常だ。そして、自分達は悪魔の住む万魔殿のような空間に放り込まれたモルモットと酷似している。
様々な、そして不可解な制約が掛かる場所―そんなことは十分過ぎる程に理解している。


ルルーシュがマタタビ達に掛けたギアスの内容はこうだ。

『エリア中心部に行き、他の参加者に接触し、使えそうならば我々の仲間に誘う。我々に害を為すようなら排除する』

このギアスの内容が遵守されていれば、ある程度回復した身体を引き摺ってでもエリア中心部へ移動するだろう。
いや、そもそもD-8などというエリアの隅に未だ滞在していることが妙だ。
話によるとジンとそのマタタビを保護していた者達が遭遇したのが隣のD-7である。
明らかに、中心へと向かうコースからは外れている。

ならば既に他の参加者に接触し、仲間に誘った後である……という仮説はどうだろうか。
既にお役御免となったマタタビがフラフラとD-7にやって来たと考えるのは?

いや、これも在り得ない。
ギアスの効果時間は非常に長期に渡る。
少なくとも数ヶ月、この殺し合いが行われている間はほぼ切れることはない。そう思ってしまっても構わない筈だ。

命ある限り延々と命令を実行する筈。
加えて勧誘活動を一切行っていないことも明白だ。

これらの事象から推測出来る現状はただ一つ、つまり―


(ギアスが、切れている?)


 □



284:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:46:22 lwXvKLCc


285:ナイトメア・チルドレン ◆tu4bghlMIw
08/02/22 01:46:47 v907MW6E
「ニアです! よろしくお願いします!」
「ブルゥァァァァァァァァァァアア!! ジィィィイイイン、キサマ!! このような小汚い格好をした連中をどこから連れて来た!?」
「ちょっと散歩してたら空から降って来てね。ああ、三人とも、そこの椅子に掛けてくれる?」
「ぬぅぁぁぁにが『空から振って来てね……』だ! スカしてんじゃねぇぇぇぇ!! ボぅぉケがぁぁぁぁぁああ!!
 お前が居ない間に私がどれだけ苦労をしたと思っているのだ!?」
「まあまあ、そのおかげで脱出のための優秀なパートナー候補を見つけることが出来た訳だし。俺も『偵察役』を首にならないで済む」
「ジンさん、パートナーってなんですか?」
「パートナーってのはね、ニア。君のアニキさん―カミナと、ビクトリームみたいないつもハッピーでディープでステキな関係のことだね」
「ダ、ダレがあんな奴とパートナーだと!? べ、別にグラサンジャックなど、どうなろうが私の知った事ではないわっ!!」


ジン、ニア、そしてビクトリーム。
少年と少女、そして『V』字型の謎の動く喋る物体。
三者による他の人間を寄せ付けない独特の時空に、部屋へと足を踏み入れたルルーシュ達は唖然とするしかなかった。

(こ、これは……まさか……。また、なのか。頭に何かが沸いてるとしか思えない会話ッ……!! なんて……事だッ!!)

三人がジンに案内されたのはD-8エリア、古墳のすぐ近くにひっそりと佇むように建設された山荘であった。
山荘と言ってもそれほど大きな施設ではなくて、どちらかと言えば山小屋と称した方が適当かもしれない。
そこの玄関口のすぐ、応接間になっている場所の大きな机の上にルルーシュ達はやって来ていた。

「……私、夢でも見てるのかしら」
「心配するな。俺にもしっかりと『V』に見える」
「お前には聞いていない」
「……悪かったな。お節介が過ぎてよ」

ルルーシュは髪の毛を掻き毟り、頭を抱えて塞ぎ込みたくなる衝動を必死で押し殺す。
両隣ではカレンとスパイクが相変わらず言い争っているが、今はどうでもいいことだ。
ジンの言っていた仲間―それがまさか、こんな連中だとは夢にも思わなかった。

特にこの『V』の形をした物体が問題だった。
ジンからある程度、同行者の説明は受けていた。

一人、不思議な色の髪と瞳を持った厨房主任。
一人、喋るトラ猫。
そして最後の一人、あまりの華麗さに目を疑わざるを得ないとにかく凄い奴。

いや、というか「少しだけ驚くことになるだろう仲間がいる。いや、ちょっとしたサプライズさ」などと適当な説明をしただけだったのだ。
まさか、ソレが人でも、動物でもない謎の生物だとは思いもしなかったが。
今思えばこの時ジンは一言も『人』とは言っていなかったのだ。

(だが、それ以上に気に障るのは……『声』だ!)

ビクトリームの声、それはルルーシュの脳髄をガンガンと揺さぶる。
普遍的な視点から考察すれば、それは少しだけナイスミドルな妙に良い声―そのような評価で十分だった筈だ。
しかし、
ルルーシュ、いや神聖ブリタニア帝国第11皇子にして第17皇位継承者であるルルーシュ・ヴィ・ブリタニアにとって彼の声は毒でしかなかった。

(まさか、ここまで『奴』と似ている声の人間がいるとは……忌々しい)


286:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:46:51 YWpcEEbh
「「「「よくぞ耐えたぞ十常時!! 貴様のSSに今は亡き我らが師、tu4氏の影を見た!」」」」

287:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:46:55 rPlS2XxO
  

288:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:47:02 crTGSGnF
 

289:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:47:02 ePxzxXvx


290:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:47:08 IoHMEHZh
 

291:ナイトメア・チルドレン ◆tu4bghlMIw
08/02/22 01:47:22 v907MW6E
こんな偶然があっていいのだろうか。
世界には自分とそっくりの容姿をした人物が三人はいる、と言うが声に関しても当て嵌まるのだろうか。
彼の父親であるブリタニア皇帝―その声が眼の前で『ブルゥァァァァァアア!』などと吼える物体Xならぬ、物体Vと同じだろうとは。

(落ち着け、落ち着くんだルルーシュ。今何よりも優先すべきは情報の収集だ。奴との因縁はここから脱出してから考えるべき事象ッ……)

心を穏やかに。そして、冷静な頭を取り戻さなければならない。
ジンの口からは聞けなかった有力な情報を集めること。マタタビの状態について分析を重ねること。
必要なデータはあまりにも多い。


「一つ、いいかな。マタタビという猫はどこに……」
「マタタビさんでしたら、一度だけ意識を取り戻したんですが今は奥でお休みになっています」

ニアが快活な笑顔と共に応える。
キラキラと光る、まるで人工物のように色彩的なショートカットがサラリと揺れた。

「彼は、何か言っていましたか? 俺達の事なんかも……」
「何か……ですか? いえ、少なくともルルーシュさん達のことについて何も言ってなかったと思います。
 マタタビさんが喋られたのは……ご自分の名前と、あとは……『テッカマンエビル』ぐらいでした」
「……テッカマン……エビル?」
「はい、確かにそう呟いていました」

ニアがルルーシュの問い掛けに口ごもる。若干伏し目がちになりながら、視線が下がる。
ルルーシュには彼女の応答が少なくとも嘘は付いていないように思えた。
傍目にも分かる重傷を負っているのならば、本来ならば面会謝絶の状態に近いだろう。まともに会話が出来なくても不思議ではない。

(テッカマンエビルか……。テッカマン……あの妙な格好をした戦士達のことだろうか。
 テックセッターという変身ヒーローのような掛け声とも名称に関連性が見て取れる。
 同時にギアスを掛けたはずのクレア・スタンフィールドと八神はやては死亡した……つまり、コイツが奴らを殺したということか?)


「―あの、皆さん聞いて下さい」


考え込んでしまったルルーシュとの言葉の隙間を埋めるように、ニアが再度口を開いた。

「私には……ルルーシュさん達に話していないことがあるんです」

優しく隣のニアを宥めるジンの声に、ニアも小さく微笑んだ。
そして一瞬の間、実直な眼差しを携えその場の全ての人間に向けて彼女は語り掛ける。


「私がルルーシュさん達に黙っていたこと……それは螺旋王、いえ―私のお父様についてです」


 □



292:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:47:36 crTGSGnF
 

293:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:47:38 lwXvKLCc


294:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:47:41 YWpcEEbh
「「「「SSとはその出来にあらず!書き続けることこそに意義があるとな!!」」」」

295:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:47:42 ePxzxXvx


296:ナイトメア・チルドレン ◆tu4bghlMIw
08/02/22 01:47:50 v907MW6E
瞬間、ルルーシュ達の表情が一斉に驚きの色に染まった。
この殺し合いの主催者である螺旋王ロージェノム。彼を『お父様』と呼称する人間、それはすなわち―


「君が……奴の娘だってことかい?」
「はい。捨てられはしましたが、私のお父様であることに間違いはありません」
「……実の娘をこんな馬鹿げた殺し合いにぶち込むとはねぇ……王様の考えることは分からんな」
「アンタ、アイツの娘だったら何か知らないの? 何でこんな馬鹿げたことをやらせてるのか……とか」
「まぁ、少なくとも自分から進んで参加したい類のパーティではないかもね」


スパイクの指先がトントン、と忙しなく濃い木目のテーブルを叩く。
彼の苛立ちはそのまま、場の空気が一転して重苦しいものへと変わったことを明示していた。

(螺旋王の娘……だと!?)

彼女、ニアが螺旋王の実子であるという事実。
それは確かに参加者にとっては、脱出の鍵になるかもしれない情報だった。

いかに実の親から縁を切られた廃棄王女とはいえ、彼女が所持する螺旋王についての知識はおそらく参加者の中でも別格だろう。
今までこの空間でルルーシュが出会った者の中でも、明らかに特殊な人間。そして代用不可の超VIPと言える。
螺旋王の人となり、敵の戦力。しかし、


「すいません、私には……何も……分かりません」
「逆にさ。アンタがあの螺旋王の部下だ、ってことはないの? アイツの娘なんでしょ?
 例えば隙を見てこっちの状況をアイツらに報告している―とか」


当然、このような疑いが発生してしまうのも道理なのだ。
親子の情とは人の本能の中でも相当上位に位置する捨てきれない感情だ。
普通の生活を送って来た人間にとって、親が子供を庇護する関係は極めて常識的な枠組みの中に存在すると言っても過言ではない。
確かに、子供を子供と思わない親がいることを知ってはいても、共感を覚えるのは難しい。
この言葉を発したカレン自身も、長年に渡る母親との衝突の末、どれだけ彼女が自分のことを想ってくれていたのかを理解したばかりなのだ。

「そんなっ!! それだけは絶対にありえません!!」

ニアはカレンのこの言葉に絶句する。彼女の告白はつまり『親愛の証』であった。
これからどんな未来が訪れるのかは分からない。
それでも自分が螺旋王の娘であること。コレは重要なファクターに成り得ると判断したのだ。

『皆に隠しておく訳にはいかない』

そのような義務感から、ニアは自らの忌まわしき過去を口にしたのである。
彼女のおばあさまであるドーラは、ニアが自分は螺旋王の娘であると伝えてそのまま受け止めてくれた。
だが、誰もがドーラのような人間ではない。
それ所か、ニアに疑惑の眼を向けることが自然な反応でさえあるのだ。



297:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:48:17 lwXvKLCc


298:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:48:17 ePxzxXvx


299:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:48:19 rPlS2XxO
  

300:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:48:20 YWpcEEbh
「「「「我らが支援の道を作る!! 貴様はその先をゆけぃ!!」」」」

301:ナイトメア・チルドレン ◆tu4bghlMIw
08/02/22 01:48:36 v907MW6E
「むぅぅうううう!? そ、そうだったのかぁぁぁああああ!! 実は逐一余すところ無く報告していたのだなぁっ!? 小娘!?」
「……カレンおねーさん、中々厳しい所を付くね」


大げさなリアクション共に、表情を凄まじい勢いで変えるビクトリーム。
ちなみに彼は非常に単純であるため、カレンの言葉を聴いて今初めてニアが敵の手先であるかもしれない、と悟ったのである。

普段は含む笑いを絶やさないジンも、顔面に微妙な笑いを浮かべている。
ニアが螺旋の王女であることを知っていたジンでさえ、その可能性について密かに疑っていたのだろう。
彼の微妙に歪んだ口元がソレを物語っている。


「わ、私はっ……!」
「いきなり『私は螺旋王の娘です』なんて言っても、信用される訳がない。
 どんな考えがあったのかは知らないけど、こういう反応が起こることは十分に予測出来た筈よ」
「ベリィィィィィィシィィィィィット!! まさかこの華麗なるビクトリィィィム様がこぅぉおんな小娘に騙されるとはぁぁぁぁあ!!」


早口で捲くし立てるカレンと大きな瞳を不安げに瞬かせながら必死に弁明するニア。
とにかく騒がしいビクトリーム。
山小屋は今や疑惑と不信の坩堝へと成り代わる寸前だった。

(確かに、カレンの言葉にも一理ある。本当に螺旋王側のスパイだとしたら、自分の出自を公開するとは思えんがな。
 ……いや、逆にその秘密を握っている知り合いが参加している故の行動とも考えられるか。
 ただ、どちらにしろ―)

ルルーシュは笑った。
深々と口元に刻まれた皺は彼の愉悦を物語るように、一瞬で皮膚へと侵蝕する。
腹の底から湧きあがるような高揚感を隠すため、ルルーシュは口元へと手を当てる。

(現状、最も適切な一手はこれか、決定だな。後は《奴》を始末さえ出来れば……)

他にもいくつか案自体は浮かぶが、どれも決め手に欠ける。
だが少なくとも今自分が選ぶべき行動は一つだけである。つまりニアを保護すること、である。


「カレン、止めろ。ニアさんが脅えているじゃないか」
「…………止めないで、ルルーシュ。あなたにも分かる筈よ。彼女が信用出来る保証はどこにもない」
「それは俺達も同じことだ。何故彼女が疑われることを覚悟してまで、出会ったばかりの俺達にこのことを告白してくれたのか……。
 君だって分からない訳じゃないだろう」
 
 
ルルーシュは今にも食いかかりそう勢いでニアを詰問するカレンを制しながら、ニアの擁護を開始した。
ニアからの信頼を勝ち得ることはこれから先、必ず役に立つ筈だ。

面倒な手順など踏まず、直接ギアスを使って操り人形にしてしまう、という手段もあった。
だが、幾つかの不安な要因が浮き彫りになったのだ。

使用時における身体への強烈な負担もそうだが、最大の問題点はギアスの継続時間が極端に短くなっている点だ。
100%の確証はないが、おそらくこの予感に間違いはないだろう。
土壇場になった時、効果が切れてしまったらどうなる?
全て一からやり直しになってしまう。ギアスを掛けられている間の記憶は失われないのだ。
今、ギアスは万能の力ではない。出来るだけ使うポイントを限定しなければならない。


「それとこれとは話が別で―!!」



302:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:48:52 IoHMEHZh
 

303:ナイトメア・チルドレン ◆tu4bghlMIw
08/02/22 01:49:02 v907MW6E
カレンがそこまで言い掛けた時、ずっと黙り込んでいたスパイクが突然立ち上がった。
ガタッ、と音を立てながら椅子を引き、無言のままツカツカとニアのすぐ側まで歩いて行く。
ルルーシュを含め、誰もが彼の行動に拍子抜けになる。

「……めんどくせぇ」

ぼそり、と呟くように。
この状況とはあまりにも不釣合いな言葉、そして行動だ。
だがルルーシュは、スパイクのこの発言で張り詰めていた緊張感が一瞬で砕け散ったような印象さえ覚えた。
つまり、ニアを糾弾する負のオーラに満ちた空気が、だ。

場の人間全てがスパイクの行動に注目している。
彼の一挙一動を十の瞳が追っているのだ。
何故スパイクがこのような不可思議な行動を取るのか。
いや、少なくとも個々人が言いたい事をベラベラ喋っていた最悪な状況があっという間に解決したことは確かだ。


「お嬢ちゃん、ニアだっけ」
「はい」
「良い返事だ。ジンから聞いたんだが、アンタ料理が得意なんだって?」
「え……は、はい! ダイグレンの厨房で調理主任をやっていました!」
「そうかい。じゃあ一つ頼めるかな」


それだけを伝える、スパイクは小さく腹部の辺りを擦った。
そして笑いながら一言。


「腹、減っちまってよ」


 □



304:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:49:03 ePxzxXvx


305:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:49:05 crTGSGnF
 

306:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:49:06 lwXvKLCc


307:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:49:24 YWpcEEbh
「「「「必殺!!母乳噴出拳!!」」」」

308:ナイトメア・チルドレン ◆tu4bghlMIw
08/02/22 01:49:40 v907MW6E
「亀の甲より年の功って奴だね。ルルーシュもそう思わないかい?」
「……そうだな」

ジンとルルーシュは応接間でグダグダと喋りながらチェスに講じていた。
趨勢は明らかにルルーシュが有利。だがジンの腕前も中々なモノであり、油断はならない状況だった。
久々に骨のある相手との勝負に、ルルーシュは密かな楽しみを感じていた。


「おねーさんにドヤされちゃいそうだなぁ。俺自身も、ニアちゃんについてはちょっと気になることがあってね。
 そのせいで、中々カレンおねーさんにストッパーを咬ませることが出来なくてさ」
「それは俺にも言えることだ。もう少し……早く行動に移るべきだった」
「……ま、そんな俺達の優柔不断が高じて旨い飯にありつけるってこと。スパイクに感謝しないとね」


ジンのナイトがルルーシュのポーンを蹴散らす。
すかさず、ルルーシュはルークを動かして敵の動きを牽制。
無駄話をしていながらも、ジンの的確な判断に舌を巻く。

(だが……まだ甘い)

結局、スパイクの「腹減った」との申し出によって、応接間での討議会は閉幕となった。
ニアは今一人でいそいそと食事の準備中。
カレンは不機嫌なまま、山荘の周囲で警戒に当たっている。スパイクも彼女と一緒に見回りだ。

ビクトリームは当初ルルーシュ達を信用していなかったが、ルルーシュに支給されていた【メロン】を見ると態度を一変させた。
どうも彼が持っていたメロンは全て食べ終えた後で、そのためイライラしていたらしい。
今はラジカセをジャカジャカやりながら、部屋の隅で踊っている。

「チェックだ」
「……うん、無いね。負けたよ、ルルーシュ。チェスには自信があったんだけどなぁ」
「いや、ジンも相当なレベルだった。実は少し"違法"なゲームにも手を出しててね。
 普通の人間で俺とここまで張り合える相手と勝負したのは久しぶりだ」

それは素直な感想だった。
ルルーシュは友人のリヴァルと連れ立って、しばしば賭けチェスに精を出していた時期があったのだ。
同じく友人のシャーリーなどには、何度もその行為を咎められたりもしている。

(気楽な時間だ……まるで、殺し合いに参加させられていることなど忘れてしまいそうになる。だが―)

彼には羽根を休め、気を抜く暇などなかった。
彼は絶対に元の世界へと帰らなければならない。
最愛の妹のため、死んでいった親友のため、自分自身の野望のため。

ルルーシュはチェス盤の駒をケースに片付けると、スッと立ち上がる。
今のはウォーミングアップに過ぎない。これからが本当の勝負だ。


「ジ―」
「ルルーシュ。お姫様のアフターケアは任せるよ」


『クイーン』の駒を小さく振りながらジンが楽しそうに笑った。
口元の苦笑を押し潰しながら、ルルーシュも小さく手を振る。

満足げにジンが駒を放り投げる。
綺麗な放物線を描いてゆっくりと白の『クイーン』はルルーシュの掌へと吸い込まれた。


 □
 

309:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:49:53 ePxzxXvx


310:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:50:06 crTGSGnF
 

311:ナイトメア・チルドレン ◆tu4bghlMIw
08/02/22 01:50:18 v907MW6E
「さっきはありがとうございました」
「いえ、お礼を言われる程のことはありませんよ。スパイクさんに結局、最後は持って行かれてしまいましたし。
 カレンには後で俺からキツく言っておきます」

ニアが厨房に向かいながら小さく礼をした。
かわいいピンク色のレースが付いた純白のエプロンが眩しい。
真剣な表情で冷蔵庫に入っていた食材と向かい合っている。

「いいえ大丈夫です! カレンさんの言っていた事も、言われてみればその通りですし。
 おばさまも言っていました! 『少しは人を疑った方がいい』って!」

ニアが若干表情を鬱屈させながら、それでも元気よく応える。
その笑顔はルルーシュの眼には夏の高原に咲くヒマワリのように輝いて見えた。
そして同時に彼の中の魂が疼く。
なぜなら、今から自分はこの快活な少女を何とかして篭絡させなければならないのだから。


ルルーシュがニアの元を訪れたのは、勿論ジンの言う《アフターケア》の為などではない。
ニアとある程度の親交を結び、今後の展開をより円滑にするための工作活動である。

螺旋王の娘―それは他の参加者とは一線を画す重要なポジションである。
ロージェノムが放送の度に口にする《螺旋力》や、王の情報などニアにしか分からないことは数多くある筈だ。
彼女が知り得ていることは極わずかなのかもしれない。
少なくとも後々対螺旋王が現実味を帯びて来た時、必ず手駒の一人として欲しい人間ではある。


「しかし、まぁそれは、どうなんでしょうね。ニアさんは『今のままでいる』のが一番だと思いますよ」
「そうですか?」
「ええ。おそらく……その、『ドーラさん』も同じことを言ったと思います」
「ッ―! あ……」

ルルーシュの口から『ドーラ』という名前が飛び出した瞬間、ガチャン、と大きな音を立ててニアが手元の皿を落としてしまった。
直径5,6cm程度の小皿が台所の床に散らばる。割れなかったのが幸いである。

(……やはりか。ジンから話を聞いておいて正解だったな)

ルルーシュは予想通りに進んでいく展開を受けて、心の中で確信と共に浮き立つ思いを押さえ込む。
この山荘にやって来る前にルルーシュはジンから、とある情報を得ていた。
つまり、ドーラというニアとゲーム開始時からずっと同行していた女性が死亡したことについて。

放送後彼女の死を知り、泣き崩れそうになったニアを必死で慰めようと努力したが、結局確固たる手応えは得られなかったとジンは言っていた。
あのジンが「出会ってから数十分しか経っていない女の子を励ますには自分は役不足だった」と嘲笑交じりに語っていたくらいだ。
傷は相当に深いのだろう。

その後、怪我人のマタタビを治療するために山荘へ移動し、唯一戦えるジンが見回りへ。
二人の世話を不安ながらビクトリームに任せた、と。

(ニアはまだドーラの死を乗り越えていない。突き崩すならば、ここしか無いな)



312:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:50:30 ePxzxXvx


313:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:50:30 YWpcEEbh
「ふははは! これしきの支援、DAT落ちにしてくれるわ!!」

314:ナイトメア・チルドレン ◆tu4bghlMIw
08/02/22 01:50:59 v907MW6E
「すまない、妙な事を言って。手伝うよ」
「……いえ。私が悪いんです」

ルルーシュはコレ幸いとニアに近付き、小皿を拾い始める。
ニアも手に持っていた包丁を傍らに置いて、しゃがみ込む。

特に会話もなく、黙々と皿を拾う二人。
ドラマや映画などでは手と手が触れ合って、恋が始まる―そんな陳腐なストーリーが持て囃される。
とはいえ、現実の世界ではそんな馬鹿げたロマンスなど起こる筈もない。
淡々と木目の床から白いピースが消えていく。それだけだ。


「―分かってはいるんです」
「え?」


追撃の言葉を捜していたルルーシュにとって、明らかに予想外の言葉がニアから漏れた。

(これはッ……!?)

それは強固な意志の力。
渦巻くクローバーの緑が光となって溢れてくる幻覚が見えそうなくらいだ。
弱々しい少女の潤んだ瞳ではない。まっすぐと未来を見つめる力強い眼差しだった。


「もうドーラおばさまは帰ってこない。シモンも、ヨーコさんも……だから私が強くならなくちゃいけないって。
 慣れたりはしません。大切な人と会えなくなるのは、凄く……悲しいことですから。
 でも私を抱き締めて、慰めてくれる方はもういないんです。
 ドーラおばさまもこの胸の中で一つになって生き続けるんです。大丈夫です。私は……頑張れます」
「そう…………だね」


それは、上っ面だけの薄っぺらい同意だった。

ルルーシュは完全にニアという少女を見誤っていた。
彼のニアに対する人物像は『元気なだけが取り得の世間知らずな純粋培養されたお姫様』であった。
周りの人間が誰しも聖人であると思い込み、人を疑うことをまるで知らない人形のような。

(違う……彼女は、お飾りの王女などではないッ! 明確な個を持ち、希望を実現させるための覚悟も持ち合わせている。
 伊達に螺旋の王女ではないと言った所か……。しかしこれでは……)

ルルーシュは自信の計画に小さな綻びが生じた事実を認識する。
小娘の一人ぐらい、ギアスに頼らなくてもどうにでも出来る―そう思っていたのだ。

だが、それは明らかな過信だった。
彼女は容易く出会ったばかりの男に、心を委ねるほど軽い女ではない。そして無知でもない。
もしもC.Cがこの場面を目撃していたとしたら、確実に鼻で笑われていたことだろう。
「童貞の癖に女を舐めすぎだ」などと言う辛酸な台詞と共に。


「ルルーシュさん? 座ったままどうしたんですか? 大丈夫ですか?」
「え、あ……すまない。少し、調子が悪くてさ……」

座り込んだまま衝撃を受けていたルルーシュを小皿の回収を終えたニアが不思議そうな顔で見つめる。
慌てて適当な言い訳を見繕うが、明らかに自分が気落ちしていることを悟った。
このままでは本当に調子が悪くなってしまうかもしれない。しかし、


「大変じゃないですか! お薬があれば良かったんですけど……すいません。毒しかないんです」


315:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:51:01 ePxzxXvx


316:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:51:08 crTGSGnF
 

317:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:51:15 YWpcEEbh
「「「「もうすぐスレが静止する……これまでか!!」」」」

318:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:51:28 IoHMEHZh
 

319:ナイトメア・チルドレン ◆tu4bghlMIw
08/02/22 01:51:32 v907MW6E
このニアの何気ない一言がルルーシュの転機となる。

「毒……だって!? ニア、君は毒なんて物騒なものを持っているのかい?」
「え? はい、私の支給品ですけど……」
「ゴメン。ちょっとだけそれ、見せて貰ってもいいかな」
「あ、はい。コレ……です」

ニアがポケットから小さな袋を取り出して、ルルーシュに渡した。
すぐさまルルーシュはその中身を確認する。
袋の中には赤と白の典型的なカプセルが三つ。ご丁寧に『毒入り。飲むと死にます』という注意書きまで付いている。


「ニアがコレを持っていること、皆は知っているのかい?」
「……いえ? 多分ルルーシュさんしか知らないと思います」


(ああ、そうか……これが俺が選ぶべきやり方ってことか)

ルルーシュはもう一度、手元のカプセルを見つめる。
あと一歩、自身が踏み出すことで束の間の平穏は崩れ去るのだ。
小さな軋轢は幾つもあるが、今までの状況と比べれば天と地ほどの隔たりがある。

しかし、最善の一手である。
奴の存在は明らかに今後の展開に支障を来たすことになるだろう。
数々の実験を重ね導き出した絶対的な"ルール"はもはや、役立たずと言ってしまっても過言ではない。
今の自分に必要なことは『持っている力』を最大利用するための道を探すこと。

サンプルが必要だ。
そして、過去の事象は切り替えていかなければならない。
そうだ。一歩を、最後の一歩を踏み出そう。もう一度「王の力」を手に入れるために。







「なぁ、ニア―俺の眼を見てくれるか?」




 □
 


320:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:51:34 dQeb3OGZ
 

321:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:51:51 YWpcEEbh
「待てィ!!」
「むぅ……よくぞ生きておった!衝撃のネコミミスト!!」

322:ナイトメア・チルドレン ◆tu4bghlMIw
08/02/22 01:51:58 v907MW6E
夢、夢を見ていた。
拙者はグルグルと螺旋を描くマーブル色の海の中で躯を横たえていた。

俺は寝ている。そして夢を見ている。
つまり、これは明晰夢という奴なのだろう。

……いい機会だ。
ゆっくりと、自らの記憶のページを捲って行くこととする。



まずは分かり易い結論から行こう。
全ては、光の渦に飲み込まれてしまった。
奇妙な連帯感で結ばれた男と女は極光の奥に消えた。

二人は愛し合っていた。少なくともソレは間違いない。
妙な強迫観念が俺達を衝き動かしていたことは明白な事実だ。
だが、二人の間には確かな絆があり、愛情があり、そして互いを気遣う想いがあった。

猫である自分には人間の恋愛というモノは良く分からない。
かといって完全な獣でもないので、獣の恋愛について語れと言われても言葉を濁してしまう。
とりあえず傍目から見ても男―クレア・スタンフィールドと女―八神はやて、この両名はお似合いだった。


ぼんやりと、ゆっくりと黒く染まって行く黄昏にも似た意識の中。それでも拙者は一つだけ、思っていたことがある。
それはこの二人を祝福してやりたい、という気持ちだ。
拙者だって、別に悲観主義者って訳でもないんだから幸せそうな人間を見るのは好きだった。

そんな時、拙者達の前に現れたのはシンヤという男だった。
名簿の情報から判断するに本名は相羽シンヤ、と言うのだろう。今となってはどうでもいいことだが。

そう、拙者達にとって必要な情報は奴が―テッカマンエビルであるということだ。


奴は強い。もう在り得ないくらい強い。「ふざけんじゃねぇぇぇぇえええええ!!」と絶叫したくなるくらい強い。
拙者は公明正大な猫だから、事実は事実として認めようと思う。

何が強いって、少なくとも拙者より若干上の実力を持っていたかもしれないクレアの数倍は強い。
や、あくまで奴が「テックセッター」とか訳の分からん日本語を叫び、変身を遂げた後の姿に限定した話ではあるが。

前回は遅れを取ったが、もう一度生身で戦えば拙者が圧勝することは目に見えている。
キッドじゃこうは行かない。多分、何度戦っても負けちまうだろうな。


……ああ、キッドか。そういえば死んだんだっけな。……実際の所、本当なのかね。
正直疑わしい話だ。ただ、なんとなく嫌な感じはする。
機械と生身の身体で出来た俺自身の中で何がモヤモヤと疼いているんだ。
胸にぽっかりと空洞が出来ちまった……みたいな感覚さ。
何て言えばいいのかね、コイツは。とりあえず気持ち良くはねぇ。

……チッ。何か、物足りねぇ。暴れ足りねぇ。
って、おい! 本当に死んじまったのかよ、キッド!?
拙者との決着を付ける前に逝くたぁ、どういうことだっ!?

傷が疼く。胸が痛い。腕が痛い。頭が痛い。
ああ、クソッ!! 拙者はこんな所でグズグズしている訳にはいかねぇってのに!



――マタタビさん、起きてますか?

323:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:52:05 ePxzxXvx


324:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:52:28 crTGSGnF
 

325:ナイトメア・チルドレン ◆tu4bghlMIw
08/02/22 01:52:42 v907MW6E
っと……コレはあの時のお嬢ちゃんの声か?
ふわふわした髪の毛の……確かニアって言ったか。
そろそろ、夢も終わりってことかねぇ。
眠ってばかりじゃ拉致が明かねぇ。いい加減、起きるとするか。

あばよ、キッド。
夢から覚めた後、拙者はもう振り返らんぜ。
何しろクレアとはやての敵を討つためにテッカマンエビルをぶっ飛ばさないといけないんだからな。
奴は気に食わねぇ。絶対にボコボコにしてやる!

休んでなんていられねぇ。
拙者の知らない所で勝手に野たれ死んだ貴様に、もう興味はないのさ。
まぁ、亡骸を見つけたら線香の一つも上げてやるけどな。
じゃあな、俺のライバル。





「……眠っている、のでしょうか?」
「起き……てる」

そして、拙者は、覚醒した。
まどろみは、消えない。
ゆらゆらと峰深き瀬にたゆたんでいるような不思議な気分だ。
微妙な鈍痛となって拙者の脳髄に眠気が居座ったまま、大きな顔をしている。


「良かった! 実はいいものを持って来たんですよ!」
「いい……もの?」


そう言ってニアはポケットから小さなカプセルを取り出した。
赤と白。綺麗な色をしている。
ニアの笑顔が眩しい。
彼女の快活な笑顔を見ているとこちらまで力がみなぎって来そうだ。


「そ……れは?」
「私の支給品の『"薬"入りカプセル』です! ……でも、どうして今まで忘れていたんでしょうか?」


薬入りカプセル、か。妙な名前だ、そう思った。
だが意識は朦朧としており、未だ完全に現実の世界へと帰って来ていない。
元々拒む理由など存在しないが、当然拙者の身体はニアの成すがままだ。



326:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:52:43 YWpcEEbh
「どうする孔明、奴は真実を知らん! あいつは70kb支援するつもりだぞ!!」
「ぐぐぐ……」

327:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:53:02 ePxzxXvx


328:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:53:14 lwXvKLCc


329:ナイトメア・チルドレン ◆tu4bghlMIw
08/02/22 01:53:14 v907MW6E
「それじゃあ私が飲ませて差し上げますね!」
「た……の、む」


ニアのよく形の整った指先が拙者の口元へと近付いてくる。



ふと、拙者はニアの瞳を見つめた。
特に意味があった訳ではない。しかも寝ぼけていたせいで、視界はまばらだった。


……? 
妙、だな。
いや、拙者の思い違いだったのかもしれない。
だがこの少女はこんな……


―血塗れた色の瞳をしていたのだろうか。


「マタタビさん、お口を開けて頂けますか?」


ハッと我に返る。少女が不思議そうな目をしてこちらを見ていた。

赤と白。
硝子のコップ。注がれた透明の液体。



そして―



拙者は、

そのカプセルを、




言われるがままに嚥下した。


 □



330:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:53:20 IoHMEHZh
 

331:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:53:44 YWpcEEbh
「よいか十常時、私は母乳を出すつもりもないし、アッー!をするつもりもない。だがこれだけはわかっているぞ!!」

332:ナイトメア・チルドレン ◆tu4bghlMIw
08/02/22 01:53:48 v907MW6E
絶対遵守という概念を念頭に置き、人の精神に干渉をする場合、その精神に最も手を加えずに済む条件付けとは何だろうか。
……いや、質問を変えよう。

『最も優しい、イージーな精神干渉とはなんだろうか?』

例えば博愛主義者に殺人を命じるのはどうか。
これはその人物の意志、信念、存在全てを否定して掛かる指令だろう。
考えたくもない話だが、ギアスの効力が弱っている今、感情の爆発によって抗われても不思議ではない。

同時に今すぐに自殺しろ、と命じるのもハードルは高い。
人の生存本能という奴は意外なくらい厄介だ。
生命活動に支障を来たす命令は躯が、心が全力で否定しかかる筈だ。
……もっとも、俺が初めて使用したギアスは『複数の人間に自殺を命じる』ものだった訳だが。



「きゃぁぁあああああああああああっ!!!」



最高のタイミングで、奥の部屋からニアの凄まじい絶叫が響いた。


「……ッ…………ニアっ!?」
「お姫様の悲鳴、ナイトの出番ってことかな!」
「むぅぅぅぅうううっ!? こ、小娘!? どうした、何が起こったのだ!?」


応接間で休息していた俺を含む三人が、その声を聞いて一斉に走り出す。
ビクトリームなぞ、わざわざラジカセのスイッチを切る気の利かせようである。
……普段から、それくらい気を遣ってくれると嬉しいのだが。

当然、俺もわざとらしいくらいに『驚いた振り』をする。
ここまで全てが予想と同じ展開だとしても、だ。

脳内を揺さぶるような凄まじい痛みに耐えながら狭い通路を駆け抜ける。
だが、この程度ならば昏倒するレベルには達していない。
大丈夫だ……少なくともマトモに頭は回る。


「ベルゥィィィィィィシィィッット!! 小娘ぇぇぇぇぇっ!!」
「……ジン! どうなって……いるんだ!?」
「辛そうだね、ルルーシュ」
「……持病の偏頭痛がな」
「ソレはお気の毒に。とりあえず、ランチのお盆を引っ繰り返したって訳じゃないのは確かだね」


一気に奥の部屋へ。
マタタビが眠っていた部屋、いや今ニアが『薬』を持って行った部屋へと向かう。


さて。そろそろ、先ほどの質問の解答編へと進もうか。

確かに精神干渉にも色々なケースがあるだろう。
だが、少なくとも主義、主張、信念、本能などの人間の奥底に眠る問題に対しての接触はタブーだ。
これらは若干ハードルの高い課題である。追々実験していかなければならないことでもあるが。


333:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:54:09 lwXvKLCc


334:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:54:12 crTGSGnF
 

335:ナイトメア・チルドレン ◆tu4bghlMIw
08/02/22 01:54:27 v907MW6E
ならば記憶の操作か?
だがコレも感情に絡む場合が多い。
一人の人間に関する記憶を全て抹消する―などと命じた場合、
消し去った相手への感情如何によっては、ある種の抵抗などが生まれるかもしれない。


ならば最も簡単な命令とは『どうでもいいことを忘れさせる』ではないだろうか。

俺がニアに掛けたギアスは非常に単純なモノだ。
ほんの小さな記憶の転換。小さな綻び。
実際、ギアスを使わなくても「~ってなんですか?」としばしば尋ねる彼女ならば、言葉だけでも騙せたかもしれない。

ただ俺は彼女の瞳を見つめながら、囁いただけだ。


『毒についての記憶を全て忘れろ』と。


後は全てニアが『自主的』にやってくれる。
俺がやったのはカプセルの説明書きを握り潰し、新たに『薬入りカプセル。凄く良く効く薬』と書いた紙を忍ばせたこと。
そして「薬なんて面白い支給品を持っているね。怪我人が沢山出そうなこの状況じゃきっと役立つだろうね」と助言をしたこと。

たったのこれだけである。
優しい心とそして人を疑うことを知らないニアのことだ。
そのまま、マタタビに毒入りカプセルを飲ませたに違いない。いや『ほぼ確実に飲ませる』と思っていた。
そして奴が死んだ後で悲鳴を上げた、と。


当然、このような間接的なギアスを掛けたのには様々な理由がある。
その相手にニアを選んだことにも、だ。

まず少なくともこの先ギアスを《切り札》として使って行くためには、早い段階で誰かに実験台になって貰う必要があった。
使用者への強烈な負担、有効期間の減少などルールに反故が発生している。
幾つか情報を集めなければ、肝心な時に武器にならない訳だ。

『マタタビを殺せ』と命じることは簡単だ。だが、これには様々な問題が浮上する。
しかも、ギアスのルールの一つ『命令された人間は、ギアスがかけられる前後の記憶に対しての欠損が起こる』さえ消滅しているかもしれなかった。
故に攻撃的な命令は極力控えた方がいいと判断した。
が、どうやらこのルールに関しては元のままであったようだ。これは貴重な収穫だろう。


そして更に俺自身への負担の問題もある。

何故、あの時俺はギアスを掛けた後に気絶してしまったのだろうか。

掛けた内容?
掛けた人数?
それとも条件が複雑過ぎたのか?
奴らの中にギアスの内容と激しく信念を別にする人間がいたのだろうか?

疑問は尽きない。
故に今回は最も単純な条件に限定して実験を行った。

つまり『一人に』『ギアスの副作用の延長である最も単純な記憶の消去を』『イデオロギーの絡まない条項へと』使用した訳だ。
結果として俺は強烈な頭痛と疲労感に襲われこそはしたが、気絶はしなかった。
少なくとも単純な記憶消去ならば、十分に実用に値することが証明出来たのだ。


336:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:54:35 ePxzxXvx


337:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:54:45 IoHMEHZh
 

338:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:54:46 YWpcEEbh
「あのロワはヌルいキャラ付けで楽に生き残れるほど、甘くはないということをな!!」

339:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:55:01 lwXvKLCc


340:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:55:02 rPlS2XxO
  

341:ナイトメア・チルドレン ◆tu4bghlMIw
08/02/22 01:55:05 v907MW6E
そもそも、マタタビはゼロに関する情報を持った数少ない参加者の一人だ。
つまり追々死んで貰わなければならない。しかも重傷を負って動けない。
戦力的価値もなく、生きているに値しない。

最後に何故、ニアにギアスを使ったのかについて。
これは最も肝心な『仕上げ』に必要なことだから、の一言で済む。
絶対に必要な駒であるニアにマインドコントロールを目的としたギアスは使用出来ない。有効期間の問題があるからだ。
つまり《信頼》を勝ち取ることが何よりも大切なのである。


「ブルゥァァァァァァァアアアアッ!!! 小娘、無事かぁぁああああ!! ………………って……アレ?」
「……コイツは。本当に特大の爆弾だった、って訳かな」


先頭のビクトリームがドアを蹴破り、部屋へと突入する。
続いてジン。最後に頭を抑え、足を引き摺りながら俺は躯を滑り込ませる。

広がる光景は何もかもが、想像していたものと同じだった。
純白のベッドを口から吐き出した血液で染め絶命しているマタタビ。
その隣で呆然とした表情のまま、腰が抜けたようにへたり込むニア。
どんな言葉を掛ければいいのか、戸惑いの表情を隠せないジンとビクトリーム。


そして一人、誰にも気付かれずに笑いを噛み殺す俺。
そう、全ては―計画通りだ。


【マタタビ@サイボーグクロちゃん 死亡】


 □



342:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:55:08 YWpcEEbh
「違うか!違うか!違うかぁーーーーーーーーーーーー!!!」

343:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:55:28 ePxzxXvx


344:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:55:33 lwXvKLCc


345:ナイトメア・チルドレン ◆tu4bghlMIw
08/02/22 01:55:44 v907MW6E
「あの、ごめんなさい。毒って……なんですか?」


と、ニアが言い出した時の他の連中の表情は、怒りを通り越して呆れていたようにさえ思える。
それは、あまりにも罪深い一言だった。
『無知とは罪である』と語ったのは、どこの哲学者だっただろうか。
まさか、ここまでその言葉を体感出来ようとは思いもしなかった。

「ば、馬鹿にしてるのっ!!! アンタ、内容の分からない薬を飲ませたって言うのか!?」
「……ごめんなさい。確かに『凄い良く効く薬』だと書いてあったんです」
「御免で済む訳がないだろ! 死人が……出ているんだから」

凄まじい勢いで悲鳴を聞き付けて帰って来たカレンがニアに噛み付く。
今回は以前行われた『螺旋王と繋がっているのではないか』という種の詰問を越え、明らかな尋問へと変化している。
少なくとも今回、マタタビを殺害したのが毒薬であり、それを飲ませたのがニアであるという事実に変わりはないのだから。


「まぁまぁカレンおねーさん。ここは落ち着いて。あんまり怒ると可愛い顔に皺が寄るよ?」
「ジン! 何を言って……ふざける場面じゃないだろ!?」
「……ジンが言いたいのは、お前は頭に血が昇り過ぎってことだよ。質問する奴が顔真っ赤にしてどうする」


カレンはスパイクに言い返そうとするが、さすがに自らの態度が不味かったと悟ったのか握り締めた拳を降ろした。
キッと口唇を真一文字に結び、ニアを射殺さんばかりの視線で睨む。
カレンはジンがおそらく日本人である、と考えているのだろう。彼に向かって話す時は、若干言葉尻が軽くなっている。


「ここは俺が仕切らせて貰う。まず……簡単に纏めると、ニアお嬢ちゃんは支給品に良く効く薬があることを思い出した。
 そして、それをマタタビに飲ませた。が、その後にマタタビは血を吐いて死んじまった―これで合ってるかい?」
「……はい。間違いありません」
「OK。じゃあ、落ち着いて答えてくれ。飲ませたのは確かに薬だったんだな? まだ残ってるかい?」
「いいえ。袋は残っているんですが……薬はもう……」


ニアが項垂れたまま、スパイクの質問に答える。
そう、ニアはもう薬を持っていない。
これは『命令された人間は、ギアスがかけられる前後の記憶に対しての欠損が起こる』ことの実験だった。
ギアスを掛けた際にカプセルを一つだけ彼女に渡し、残りは俺が回収しておいた訳だ。
故にルール通り、記憶を失ったニアから手に入れた毒入りカプセルは厳重に梱包して俺が持っている。


「……そうか。じゃあ次の質問だ。単刀直入に聞こう、マタタビを殺すつもりはあったのかい?」
「そんなまさかっ!! マタタビさんを殺したいなんて私が思う訳がありません!!」
「ニア!! アンタまだそんなことっ!!」
「カレンおねーさん、ここは抑えて抑えて。ね?」


……じっとしていられないのか、コイツは。
とはいえ、カレンの日本人以外の人間に対する露骨な感情はどうしようもないのかもしれない。
特にニアはブリタニア人の見た目とそっくりだ。
チャイニーズ系らしいスパイクにすら、あれだけの態度で応じるカレンがニアに不快感を覚えるのも無理はないのか。

なにしろ、最愛の兄―紅月ナオトを殺されているからな。
カレンがレジスタンス運動をしているのも、全て兄への想いを継ぐためだ。

が、そろそろ俺も動かなければならないだろう。
ここまでは予想の範疇だ。そしてこの先が勝負の分かれ道でもある。



346:ナイトメア・チルドレン ◆tu4bghlMIw
08/02/22 01:56:21 v907MW6E
「皆―聞いて欲しいことがある。実は、マタタビが死んだのは……俺の責任でもあるんだ」
「え……ど、どういうことなのっ、ルルーシュ!?」
「落ち着いて、カレン。実はニアが『薬』を持っていることを俺も知っていたんだ」
「ル、ルルーシュさん! 悪いのは私ですっ! ルルーシュさんは何も……」


ニアがガバッと頭を上げ、必死で『俺は無実だ』と弁明してくれる。
思わず浮かび上がって来る愉悦に浸りそうになる。いや……まだ早い。
これこそが俺が望んでいた展開だ。そして、


「皆、すまない。皆の怒りはニアの代わりに俺が全て引き受ける。だから、ニアを……許してやってくれないか」


俺は深々と頭を下げた。
ニアが息を呑む声が聞こえた。カレンが何かを呟いているがボリュームが微量過ぎて聞こえない。
ジンが茶化すように小さく口笛を吹いた。スパイクは肩を大きく溜息を付いた。
ビクトリームはどうもニアがマタタビを殺した事実があまりにもショックだったらしい。
石になったように隅で固まっている。

くだらないプライドなどいくらでも捨てても構わない。
いっそ土下座ぐらいしてやっても良かったが、さすがにそこまでやると演技が過剰だろう。
必要なのは―このゲームを生き残るための力だ。


確信する。
今、この瞬間。
俺はギアスでは決して手に入れることの出来ない力―『信頼』を勝ち取ったということを。


 □
 


347:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:56:42 YWpcEEbh
(なぁ、ミーくん……)

348:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:56:55 ePxzxXvx


349:ナイトメア・チルドレン ◆tu4bghlMIw
08/02/22 01:56:59 v907MW6E
「ルルーシュ、本当に……あの子と行くの?」
「ああ。俺はともかく、カレン達は普段通りに付き合うのは難しいだろう。……ニアのこともあるしな。
 でも、心配することはないさ。短い別れだよ」 
「……うん」 
 
 
そう、俺とニア―そしてビクトリームはカレン達と別れて別ルートで行動することになった。
人が死んだ場所にいつまでも留まっているのは流石に気が引ける。
カレン達はマタタビを埋葬してから、移動を始めるようだった。

目的地はひとまずB-4の図書館に設定した。
俺たちが右回り、そしてジン達が左回り。
ルートはその時の状況を考えながら臨機応変に、とまで決定した。
清麿というジンの有力な仲間の情報も手に入れ、明確な脱出に向けたプランが出来上がりつつあると言えるだろう。
またビクトリームの支給品だったという銃も入手出来たため、ある程度の武力も入手した。

特にジンの能力は有望だ。
行動力があり、知識も豊富で、加えて場慣れしている。
頭が固くなく、柔軟な思考が出来る点も大きい。出来れば奴とは再会したい所だ。


さて―それでは、最後の詰めに入るとするか。


「カレン」
「……え?」 
「《ゼロ》として命じる―スパイクを殺せ」


完全に意気消沈していていたカレンの耳元で、俺は最後の目的を告げた。
ルルーシュ・ランペルージではなく、ゼロとして。


「マタタビを殺したのは奴だ」
「え……でも、私達は外に……!! それに毒だって……」
「おそらく隙を見て取り替えたのだろう。ニアは抜けている所があるから、十分に可能な筈だ」
「でも……」


我ながらなんとムチャクチャな理論だろうか。
そもそも、ニアは毒薬を肌身離さず持っていたのでどう考えても摩り替えるのは不可能。
そしてマタタビ殺害の実行犯はニア、黒幕は俺―これは揺るぎない事実だ。
とはいえ、 
 
 
「カレンッ!! 何故分からない!?」
「ルル―」
「奴は《ゼロ》の正体を知ってしまった。それだけで殺されるには十分だということを!」 
「―ッ!!!」
 

こう言ってやれば、カレンは"絶対"に断ることは出来ない。
奴は黒の騎士団の団員。ゼロの命令は絶対なのだから。
そして同時にカレンはこの瞬間、理解した筈だ。
俺が本当はゼロを捨てたのではなく、三代目ゼロとしての自覚を持っているという事実に。



350:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:57:22 IoHMEHZh
 

351:ナイトメア・チルドレン ◆tu4bghlMIw
08/02/22 01:57:41 v907MW6E
「―分かりました、ゼロ」
「ああ。死ぬなよ、カレン」
「ブリタニアから日本を解放するまでは死んでも死に切れません」
「…………ゼロも、いい部下を持ったものだ」


カレンがキッ、と眉を上げこちらを真剣な眼差しで見つめた。
俺もソレに応えるように小さく頷く。そして背中を向けた。


本当に、心の底からそう思うよ……カレン。
しかし、お前の力では奴を仕留めることはおそらく不可能だろう。
そんなことは十分過ぎる程分かっている。

でもさ……せめて深手を負わせる、くらいは期待してもいいだろう?
なにしろ《ゼロ》の正体を知ってしまったのはお前達二人なんだからさ。



「うぉぉぉいいいいいい!! ルルゥゥゥーシュゥウ!!! 早く来んかぁぁああ!」


山道の方角からビクトリームの野太い声が響いた。
ニアの姿も見える。未だ顔色が優れない。
無理もないか。凶器は毒だったとはいえ、人を一人殺したのだから。
彼女の悪夢が過ぎ去る夜はおそらく来ないだろう。そう、永遠にだ。

ビクトリームは何だかんだ言って、ニアのことが心配らしい。
表面的には「お前がメロンを持っているから」などと言っていたが。
とはいえ、彼女が進んで殺人など犯す筈がないと一番強く思っているのも彼だろう。
意外に仲間思いな奴なのかもしれないな。少なくとも俺以上なのは確実だ。


「ルルーシュ? どうしたんですか、とても……嬉しそうですよ?」
「え、あ……気付かなかったな」


俺は、気が付けば笑っていた。
それが手を振るニア達に向けたものだったのか、それとも別の理由だったのかは分からない。

だけど、
とにかく、
どうしようもない位に、


俺は愉快で愉快で堪らなかった。



【D-7/山道/一日目/夜中】


352:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:57:45 YWpcEEbh
ネコミミストは―風になった―

353:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:57:56 lwXvKLCc


354:ナイトメア・チルドレン ◆tu4bghlMIw
08/02/22 01:58:02 v907MW6E
【ルルーシュ・ランペルージ@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:肉体的疲労(大)、中度の頭痛
[装備]:ベレッタM92(残弾15/15)@カウボーイビバップ
[道具]:デイパック、支給品一式(-メモ)、メロン×11個 、ノートパソコン(バッテリー残り三時間)@現実、ゼロの仮面とマント@コードギアス 反逆のルルーシュ 、予備マガジン(9mmパラベラム弾)x1、毒入りカプセル×1@金田一少年の事件簿
[思考]
基本:何を代償にしても生き残る。
1:清麿との接触を含む、脱出に向けた行動を取る。
2:適当な相手に対してギアスの実験を試みる。
3:以下の実行。
  「情報を収集し、掌握」「戦力の拡充」「敵戦力の削減、削除」「参加者自体の間引き」
4:余裕があればモノレールを調べる。

[備考]
※首輪は電波を遮断すれば機能しないと考えています。
※ギアスを使った影響は若干収まってきましたが、いまだ頭痛があります。
※清麿メモの内容を把握しました。

【ニア@天元突破グレンラガン】
[状態]:精神的疲労(大)、ギアス
[装備]:釘バット
[道具]:支給品一式
[思考]:
1:ルルーシュとビクトリームと一緒に脱出に向けて動く。
2:ビクトリームに頼んでグラサン・ジャックさんに会わせてもらう。
3:シータを探す
4:お父様(ロージェノム)を止める
5:マタタビを殺してしまった事に対する強烈な自己嫌悪

※テッペリン攻略前から呼ばれています。髪はショート。ダイグレンの調理主任の時期です。
※カミナに関して、だいぶ曲解した知識を与えられています。
※ギアス『毒についての記憶を全て忘れろ』のせいで、ありとあらゆる毒物に対する知識・概念が欠損しています。有効期間は未定。
※ルルーシュは完全に信頼。スパイク、ジンにもそこそこ。カレンには若干苦手な感情。


【ビクトリーム@金色のガッシュベル!!】
[状態]:静留による大ダメージ、鼻を骨折、歯二本欠損、股間の紳士がボロボロ
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、CDラジカセ(『チチをもげ』のCD入り)、ランダム不明支給品x1、魔本
[思考・状況] 
1:……小娘が人殺し?どうなっておるのだ?
2:奴らには付いていくのはメロンが欲しいからで、別に心配なぞしておらんぞ!?
3:パートナーの気持ち? 相手を思いやる?
4:吠え面書いてるであろう藤乃くぅんを笑いにデパートに行くのもまぁアリか…心配な訳じゃ無いぞ!?
5:カミナに対し、無意識の罪悪感。
6:F-1海岸線のメロン6個に未練。

[備考]
※参戦時期は、少なくとも石版から復活し、モヒカン・エースと出会った後。ガッシュ&清麿を知ってるようです。
※会場内での魔本の仕組み(耐火加工も)に気づいておらず、半ば本気でカミナの名前が原因だと思っています。
※モヒカン・エースはあきらめかけており、カミナに希望を見出しはじめています。
※静留と話し合ったせいか、さすがに名簿確認、支給品確認、地図確認は済ませた模様。お互いの世界の情報は少なくとも交換したようです。
※分離中の『頭』は、禁止エリアに入っても大丈夫のようです。 ただし、身体の扱い(禁止エリアでどうなるのか?など)は、次回以降の書き手さんにお任せします。
※変態トリオ(クレア、はやて、マタタビ)を危険人物と認識しました。また、六課の制服を着た人間も同じく危険人物と認識しています。
※ニアとジンにはマタタビの危険性について話していません。
※持っていたベリーなメロンはジンを待っている間に完食しました。


【D-8/山荘/一日目/夜中】


355:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:58:17 ePxzxXvx


356:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:58:39 YWpcEEbh
そして十常時は投下を終えると―考えるのをやめた

357:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:59:09 IoHMEHZh
 

358:ナイトメア・チルドレン ◆tu4bghlMIw
08/02/22 01:59:17 v907MW6E
【カレン・シュタットフェルト@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:疲労(小)精神疲労(中)若干不安定
[装備]:ワルサーP99(残弾15/16)@カウボーイビバップ
[道具]:デイパック、支給品一式(-メモ)、高遠遙一の奇術道具一式@金田一少年の事件簿
[思考]:
基本:黒の騎士団の一員として行動。ゼロの命令を実行する。
0:マタタビを埋葬した後、仲間を集めつつ左回りで図書館を目指す。
1:スパイクを出来るだけ密かに始末する。
2:ゼロ(ルルーシュ)に指示を仰ぐ
3:先代ゼロ(糸色望)の仇を取る

[備考]
※マタタビを殺したのはニアだと思っています。
※ジンは日本人ではないかと思っています。


 □


(どうしたもんかね……。清麿、こっちは最高にグチャグチャな状況だよ? そっちはどうなっている?)

山荘に残されたジンは一人応接間で考え込んでいた。

マタタビを殺したのは本当にニアなのか。
それも彼女自身の意思によるものなのか。
支給されていた薬が実は毒だった……などという事実がありえるのだろうか。

(綺麗な色してるよ……これで人が死ぬなんて思えないくらいにさ)

ジンはポケットからカプセルを取り出した。
赤と白―ニアに支給された毒入りカプセルである。

ちなみにこれはルルーシュが厳重に梱包したつもりで、うっかり落としてしまったものである。
三人が去った後に、部屋の隅に落ちているのをジンが発見したのだ。


(ルルーシュは信用出来ると思うけど……お姫様は……難しいな)

あの状況でニアを庇うことが出来るなんて、ルルーシュは中々大した男だと思う。
さすがにあの時、自分さえ彼女を擁護しようという気持ちを持てなかったのに。

(キール……お前なら、あの子にも最高のエスコートをしてやれたのかね。女の子の扱いはお前の専門だった筈なのにな)

命を落とした―らしい、相棒の姿を思い浮かべる。
そして漏れる落胆の声。完全に忘れ去るのは中々に酷という奴だ。
スパイクも顔には出していなかったが、相当に堪えている筈だ。
確か読子とエドという知り合いが二人死んだらしい。

(ま。実際、問題は山積みだけどね)

夜は深く、少年の心は未だ晴れない。
芽生えた疑惑の種はゆらゆらと蔦を伸ばし、空を駆ける大ドロボウへと絡みつく。
悪夢の中で彼が何を思うのか。それはまた別のお話。



【D-8/山荘/一日目/夜中】


359:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 01:59:29 5yr7inf2
ここまでくると悪質な集団荒らしだな

360:ナイトメア・チルドレン ◆tu4bghlMIw
08/02/22 01:59:47 v907MW6E
【ジン@王ドロボウJING】
[状態]:全身にダメージ(包帯と湿布で処置)、左足と額を負傷(縫合済)
[装備]:夜刀神@王ドロボウJING×2(1個は刃先が少し磨り減っている)
[道具]:支給品一式(食料、水半日分消費)、支給品一式
    予告状のメモ、鈴木めぐみの消防車の運転マニュアル@サイボーグクロちゃん、清麿メモ 、毒入りカプセル×1@金田一少年の事件簿
[思考]
基本:螺旋王の居場所を消防車に乗って捜索し、バトル・ロワイアル自体を止めさせ、楽しいパーティに差し替える。
0:マタタビを埋葬した後、仲間を集めつつ左回りで図書館を目指す。
1:ラッド、ガッシュ、技術者を探し、清麿の研究に協力する。
2:ニアに疑心暗鬼。
3:ヨーコの死を無駄にしないためにも、殺し合いを止める。
4:この事件の真相について考える

※消防車は山荘の隣に止めてあります。
※清麿メモを通じて清麿の考察を知りました。


 □


(ったく……どうなってやがるんだ)

完全に後手に回った―そう言わざるを得ないだろう。
まさか自分が見回りに出ている間に、死者が出るなんて思いもしなかった展開だ。

読子とエドの死について、少しじっくり考えたかったのだがそうも行かないらしい。

(八神もリードマンもエドも皆死んだ……ってか。おいおい、マジかよ? これ)

マタタビを殺したのは……まぁおそらくニアだとは思う。
うっかり、という奴なのか。―実際、うっかりで人が死ぬのは困るのだが。
ルルーシュには迷惑を掛けるが、こうするしかなかったようにも思える。

(さてと……螺旋のお姫様の相手は終わって、次はも駄々っ子嬢ちゃんの相手か。……めんどくせぇ)

メンバーの中で唯一の大人である自分が、もう少ししっかりしなければならないのかもしれない。
ただでさえ、ガキやガキに近い精神状態の人間が多いのだから。

「それにしても……」

スパイクは辺りを見回しながら、何となく呟いた。


「お姫様の飯を食いそびれたのだけは、幸福だったのかもな」


凄まじい異臭を放つキッチンの奥の料理を見つめながら、スパイクは苦笑いを浮かべた。


【D-8/山荘/一日目/夜中】

【スパイク・スピーゲル@カウボーイビバップ】
[状態]:満腹、疲労(小)、全身打撲、胸部打撲、右手打撲(一応全て治療済みだが、右手は痛みと痺れが残ってる)
[装備]:デザートイーグル(残弾7/8、予備マガジン×2)
[道具]:デイバック、支給品一式(-メモ) ブタモグラの極上チャーシュー(残り500g程)
[思考]
0:マタタビを埋葬した後、仲間を集めつつ左回りで図書館を目指す。
1:とりあえずもう一度さっきの出来事について考えてみる
2:カレンをそれとなく守る。もちろん監視も
3:ジェットは大丈夫なのか?

361:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 02:00:04 ePxzxXvx


362:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 02:00:35 ePxzxXvx


363:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 02:00:49 ZHl2uVkR
いつ終るのかすらもよくわかんねー
どうすんだこれ?

364:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 02:02:19 dQeb3OGZ
 

365:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 02:02:42 Jxzb6ka9
250 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 01:40:38 ID:ePxzxXvx
255 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 01:41:58 ID:ePxzxXvx
259 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 01:42:46 ID:ePxzxXvx
264 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 01:43:44 ID:ePxzxXvx
270 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 01:44:41 ID:ePxzxXvx
280 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 01:45:51 ID:ePxzxXvx
289 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 01:47:02 ID:ePxzxXvx
295 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 01:47:42 ID:ePxzxXvx
298 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 01:48:17 ID:ePxzxXvx
304 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 01:49:03 ID:ePxzxXvx
309 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 01:49:53 ID:ePxzxXvx
312 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 01:50:30 ID:ePxzxXvx
315 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 01:51:01 ID:ePxzxXvx
323 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 01:52:05 ID:ePxzxXvx
327 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 01:53:02 ID:ePxzxXvx
336 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 01:54:35 ID:ePxzxXvx
343 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 01:55:28 ID:ePxzxXvx
348 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 01:56:55 ID:ePxzxXvx

355 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 01:58:17 ID:ePxzxXvx
361 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 02:00:04 ID:ePxzxXvx
362 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 02:00:35 ID:ePxzxXvx


とりあえずコイツは連投処理でいいんじゃないかな

366:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 02:03:53 QSaElEmB
十分すぎるレベルだと思う
それにキロバイト数多すぎだろ

これじゃ荒らしとなんもかわらん

367:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 02:08:26 IysMkvci
小説書いてるから個人で100連投とか
キチがってるだろこのクズ

368:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 02:09:47 /yP0V0OQ
文書が下手すぎるのかなんだかよくわからないけど
どこが終りなの?この文

369: ◆tu4bghlMIw
08/02/22 02:10:09 v907MW6E
すいません。>>322

>そんな時、拙者達の前に現れたのはシンヤという男だった。
>名簿の情報から判断するに本名は相羽シンヤ、と言うのだろう。今となってはどうでもいいことだが。

>そう、拙者達にとって必要な情報は奴が―テッカマンエビルであるということだ。


を、



そんな時、拙者達の前に現れたのはエビルという男だった。

そう、拙者達にとって最悪の厄災を運んで来た―テッカマンエビルだ。



に変更して下さい。マタタビはシンヤの名前を知らないんですよね。

370: ◆Ho9IsqiWO.
08/02/22 02:12:02 5yr7inf2
                ,. - ─ ─
            r'つ)∠──     \
           〆⌒  ̄ ̄ ̄ \__     ヽ
          ,.イ      ,イ    \ヽ,     }
         ヾイ    /{ { ヽ、ト、  \    ノ
         {  .ト{\ヽ',  メ __\  }  /   >>369
          ゝ  |"ひ)  \  イびゞ \ ヽ- 、   しらねーよ基地外帰れ
          ノ  ト、"´,.     ー ノ ///\
         /.  {   ゝ     /  レ//  }      (   (    ) (    )   )
         {   ヽ  ヽ⌒>  /    レ´TT        (  )   (   )  (   ノ
         V{   \ └ ´  / ,.イ/  /       ____...................____
       ,-、  f^ヽ   >ー┬|/  ! ,.イノ    ,, -ー" _,,..   _,,._  ,,.._  ,,.._  _,,.. ゙ ヽ、
      {  ヽ:::;ム  マミ、: : \    ム: : :∨   /   /,,r"i/ ,r"i/,,r"i/,,r"i/,,r"i  、 ヽ
       \  ヽ,ム  ∨ヘ : : \ /: /ヘ: : :ヘ / ./  /#; / /#.; / /#; / ,/#; / ,/#; / .,"  i  |
     ,.- 、   \ ヽ〉  ヽ  \: : :\://ヘ: : :| i  i. /#; / ,/#; ./ /#; / ,/#; / ,/#; / .,'   / /
     ヽ、 \ | 〉       \ lヽ./^)、 : : |: : ! ヘ.  |〃/ ,|〃/ ,|〃/ .,|〃/ , |〃/ .,"..;;/ /
      丶、`¨     /  ァ'´ /: : ヽr:| : ハ ヽ   ヽゝ' `ヽゝ~ ヽゝ' ~ヽゝ' ~ヽゝ'  " /
        `)      l     ,.イ、ヾニ二7イ |.ィ ゙ ー-- 、、... _ ____ ,,,,, .... --―"
      ⊂二´.. _      __/ /  ` ー-、_|/、__jニフ
           ヾー--='彡- '    /´:j:_}::::/一`
             `ーr'´      ,f-':j´:||`′
               /ヾ二トr‐_Tj-トイ : l:!┐

371:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 02:12:59 mdKRXx4V
もう何いってんだかさっぱり判らないんですが

372:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 02:14:14 0ssA02Va
まさか一気に100kb以上埋めてくるとはなwwwww

373:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 02:18:23 p7my3F0A
偉そうに作品内の身内だけでわかるようなネタぶりまかれても困るんだが

374:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 02:23:16 clIv7oga
この基地外の文書、70kb超えてるんだよね
狂ってるよなこれ
そういうの2chで流す無神経さ


375:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 02:26:45 /yP0V0OQ
集団荒らしなんじゃないのかね
ここまでくると

376:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 02:36:29 UQTgYx+m
         rt((し)ゝ)m
       __ (シイ(((イト、 ⌒)、
     (从Y  ̄    ミ;(  ⌒ヽ
     (y/         (ソ((jし))
     / __,   、__    乂リソそ)
    _i_/_ソ_  Tへ\、__  从(の))
    .T ,.ィrj lー|〃ぃヽ、T \(シ(r)))
   / 'ー ' /   'ー─'   j)ソル);)   原作見てても
   {   fc っ )       Yルしノ )  
   l   / _,_,__  ヽ       tl } ))     何がなんだか
   .l Y ィニニ ≧ 〉}     、ノソノ
    !    ̄    ノノ   y'シノ
    Y 'ー─        ハ⌒ヽ
   /  \-----     / |  )⌒)
 / |   ム____/  /  ノ   )\
   ,.イ ̄ ̄        /  ノ  )
 /           /  ノ  イ


377:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 02:37:47 MTrS1NSc
ダメだ読む気もおきないわ
寝る

378:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 02:47:51 N9tdd2P4
備考欄多杉

379:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 09:10:20 JrJYyzgE
ルルとジンのチェス対決はよかった。この調子で明智とも戦う展開になってほしいものだ。
ビバップのエドとも一戦やってほしかったが。

380:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 09:13:19 /yP0V0OQ
>>379
はいはい自演乙

381:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 13:49:28 s5prldTA
>>380
( ´,_ゝ`)プッ

382:マテリアル・パズル~神無~ ◆wYjszMXgAo
08/02/22 20:55:03 vxjxJGCp
ぎゅるりと正確無比に無慈悲な動きで蛇が飛ぶ。
実際に音がしたのではない。あくまでもそのような擬音が相応しいというだけだ。
蛇の獲物は人。スレンダーな体つきに局所的に丸みを帯びている理想的な体形だ。
その若い女性は無抵抗なまま。
否、抵抗する暇があったかどうかすらも怪しい。
たとえ銃撃さえ避けられるような、ヒトを超えた存在であろうとも反応は不可能であるからだ。
蛇はその脆い体に絡みつく。獲物を決して逃がさぬように。
ぎちり、ぎちりと締め付け、締め付け、締め付け――、
そしてついに、終末は訪れる。
蛇の締め付けに間接は耐え切れず、女性の四肢が胴体と泣き別れ、首は飛び爆ぜる。
後に残るは動くに動けない芋虫だけだ。

……だが。
首も四肢も失ったその体からは、血の一滴すら流れ出る気配はない。
当然だ。
その女性は人間などではなく――、ただのマネキンだったのだから。

「……なんと。これは……、佳いものだな。
 先ほどの鞘といい、胡散臭いモノでもたまには試してみる価値はある、か」

傷の男――スカーは己の右手に握ったものを見る。
己の手に入れたバッグに入っていた最後の品。……それは、鎖だった。
一見単なる鎖かと思って最初は軽視していたのだが、ショッピングモールに訪れるにいたってようやく中を

検めてみたのだ。
鎖の説明書きにはこうあった。

天の鎖(エルキドゥ)――と。
持ち主の意に従い、敵を捉え、拘束する聖なる鎖。
“神すら律する”その力は、常なる状態でも“英霊”でさえも抜け出せるものは一部しかおらず、
“神に連なる系譜のもの”を相手取った場合、神の血が濃いほど力を増すという代物だった。
まさしく、神殺しの力。人間ではとても対抗できまい。

(――破戒僧となった己れには相応しい装備だな)

皮肉げに口元を歪めるも、スカーは非常にこの鎖を気に入っていた。
この鎖を用いて相手を捕らえ、その上で右手の一撃を食らわせる。
――それに耐えられるものがいるとは思えない。

この鎖も魔力とやらが必要なようだったが、やはり問題なく発動できる。
魔力とはなんなのか、錬金術による“理解”の工程で鞘と鎖を調べた所、世界そのものや生命に満ちている

力らしい。
“気”に似たようなものといったところか。
だが、どうやら分解は出来ないようだ。
“神秘はより強い神秘に打ち消される”法則というのがあるらしく、自分の右手ではこれらの道具の“神秘

”を上回れないのである。


383:マテリアル・パズル~神無~ ◆wYjszMXgAo
08/02/22 20:56:07 vxjxJGCp
試してみた所、自分の力では射程距離は十数メートル程度のようだ。
遠距離攻撃が出来るのは非常に大きい。
物陰に隠れて接近し、相手が一人になった所でこの鎖を放ち、右手を叩き込む。
機先さえ取れれば、相手になるのは殆どいないだろう。

(……先ほどの神父。奴と相見える前に調べておけば佳かったものを。失態だな)

そう思い、つい先刻の戦場を思い出す。

「……己れの行いが、国家錬金術師の虐殺に値する、か……」

……どうなのだろうか。
いや、分かっている。
人殺しは人殺しでしかない。
国家錬金術師にも家族はいるだろう。
戦いの中で、誰かを守る為に錬金術の力を用いることを選んだものもいるだろう。

――だが。だが!
(それでも! ――それでも、己れは殺すと決めたのだ! 最早――戻れん!)

かつて決意した思い。
……それを上書きするように、別の男の今わの際が蘇る。

死んだら、どうする。

……自分が理不尽にこの場に呼ばれたように、あの男もそうだったのだろう。
修羅場に身を置くならまず出てこないような、甘い考え。
ならばあの男は戦いとは縁のない平和な所から呼び出されたのか。
かつて神に祈り静かな暮らしていた自分が、否応なく戦渦に巻き込まれたように。

……血迷ったのだろうか。
肝心なことを忘れていた。あくまで、自分の敵は国家錬金術師だということを。
ならば。そうでない者たちですら排除しようというのは。

「……神父。お前は、……正しかった」

……だが、今更だ。
既に何人も手にかけた。戻る道はない。
今の自分にはドモン・カッシュのように復讐を乗り越えることも出来ない。

……なにより。
「……鋼の錬金術師。焔の錬金術師。貴様らは……どんな思いで逝ったのだ?」
既に、この殺し合いの場にいる己の殺意の対象は全ていなくなった。
放送の確かさは、自分がよく知っている。
この手で何人も屠ってきたのだから。

なのに、いまだ自分はここにいる。
自分はこれから、何をすればいいのか。どうしていけばいいのか。
元の世界に帰れさえすればいくらでも殺すべき対象はいる。
だが、戻る手段も分からないのだ。
螺旋王とやらの言動など信用できない。
ここには国家錬金術師がいるからこそ、連中を殺すために邪魔になる人間を排除していたのである。
既にエドワード・エルリックもロイ・マスタングも消えた以上、自分がここで殺戮を続ければまさしく国家錬金術師と同じことではないのか。
……だが、今更引き返すことも出来ないのだ。


384:マテリアル・パズル~神無~ ◆wYjszMXgAo
08/02/22 20:56:56 vxjxJGCp
スカーは苦悩する。
殺意の対象が死に、目標を見失ったその時。
言峰綺礼の蒔いた呪縛は思考と現実の矛盾を糧に一気に芽吹いたのだ。

戦いの最中ならばそんな余裕はなかったろう。
だが、傷はまだ治るまで遠く、誰かと交戦するにはあまりに無謀すぎる。

そんな、魂をすり減らしていくそのタイミングだった。
どことなく抜けたような印象を与える音が、ショッピングモールに響き渡ったのは。

『~ピンポンパンポン~♪』

「……何だ、これは?」
楽器の様でいて、しかし妙に音に個性がない。その上音量が大きすぎて、あちこちで反響しているようだ。
何らかの錬金術だろうか。
だが、音だけを増幅する錬金術など聞いた事がない。
そう思った矢先、今度は人の声がスカーの耳に届く。
人間では到底出せない音量で。

『エドです。地図の載っている施設を全部、良く調べてみてください。
 すごいお宝を発見ができるかもしれません。
 詳しい情報は追って連絡しますが、ラセンリョクという物を用意してください。それが絶対必要なんだ  そうです!
 もしも見つけてしまったらぁ~一切、粉砕、喝采ぃ~八百屋町に火がともる~!』

それだけを告げると、謎の音源は再度ピンポンパンポンと鳴り、それきり黙りこんでしまった。

「……む」

子供の声だった。
誰か、この施設にいるのだろうか。
錬金術かと思ったが、しかし、自分の手には胡散臭い道具が2つもあるのだ。
なら、この殺し合いの参加者に声を増幅させる道具があってもおかしくはないだろう。
拡声器、という名称辺りだろうか。

……罠かもしれない。
だが。

「……己れは、国家錬金術師などとは違う……!」
たとえ敵であっても、国家錬金術師でない限り子供を殺したりはしない。
……探して、保護しなければ。
どうやら何かを探しているらしい。
ついでにそれも見つけてやれば喜ぶだろう。

「……宝探し、か。兄さんとはよくやったものだ」

自然に口元が歪む。
一瞬、懐かしい景色を思い出したのだ。
……だが、感傷に浸っていてもしょうがない。
特にやることもないし、付き合ってみてもいいだろう。
じっとしていると、あまりに余計なことを考えすぎる。
当面の目的を見失った彼は、とりあえずの目的に縋るようにショッピングモールを歩き始めた。


385:マテリアル・パズル~神無~ ◆wYjszMXgAo
08/02/22 20:57:44 vxjxJGCp
◇ ◇ ◇


結論から言うと、子供は見当たらなかった。
もしかしたら螺旋王の放送のように、別の場所から告げたのかもしれない。
地図に載っている施設と言っていたのだし、他の場所にも流れた可能性も高いだろう。
……だが。
言葉通りのものは、存在した。

「これは……。これが、……宝の箱、か?」

ショッピングモール内を歩き回り、最後に辿り着いたのが資材搬入倉庫。
そこの一角に、妙なコンテナが配置されていたのだ。
他のコンテナより明らかに大きく、配色も異なっている。
緑色に輝き、表面には二重螺旋の書き込まれたそれを調べてみれば、そこには
『螺旋力と螺旋にゆかりのあるアイテムが揃って鍵となります』
と扉の表面に刻まれている。

「……成程。先ほどの子供も言っていたな」

螺旋力。生憎とそんな物には心当たりないが、しかし問題はない。
自分には破壊の力……否、分解の力があるのだ。
たとえどんな錠であっても、錬金術の特性である
『理解、分解、再構築』
のうち、
『理解、分解』
の工程をもってすれば開けられないはずがない。
物理的な強度とは関係なく、存在そのものを解体しているのだから。

ごきり、とスカーは手を鳴らす。
大地の力を取り込み、錬金術を発動。
そのまま右手をコンテナに押し付けた、その時。



スカーの世界は一瞬で切り替わった。




386:The Incarnation of Devil(後編)代理投下
08/02/22 20:57:46 gF/QkHbU
  

387:マテリアル・パズル~神無~ ◆wYjszMXgAo
08/02/22 20:58:32 vxjxJGCp
◇ ◇ ◇

しろいせかい、くろいせかい。
どこまでもどこまでもそのふたつがにじゅうらせんになってじぶんをとりまく。
しろとくろはみどりいろに。


螺旋。二重螺旋。時計回り。螺旋力。スパイラル。
人間。文明。科学。知性。神は死んだ。螺旋。螺旋。形而上学。
ロージェノム。螺旋力を使用したバリアー。コンテナ。子供。鎖。鞘。
お前のドリルは天を突き破るドリルなんだよ。顔面。コアドリル。
次の段階。発展の究極。人間の行き着く先。螺旋。
根源。断続平行進化。螺旋。トリプレットコドン。絶滅。
コモンアンセスター。螺旋。RNAワールド。螺旋。化学進化。


(……何だ。何なんだ、これは……!)

錬金術の特性、“理解”。
扉を破壊しようと、まずその工程を発動させた瞬間――スカーの意識は飛んだ。
否、情報、そして何かの概念の濁流に飲み込まれる。
扉を守るのに使われていた何らかの力に干渉することで。

(――やめろ! 己れは……! 己れは……ッ!!)

世界。銀河。存在。生命の神秘。螺旋。力。個性。パラダイムシフト。
惑星。螺旋。デオキシリボ核酸。ダーウィン理論。創造。想像。
魔術。科学。魔法。ギアス。不死。ラピュタ。錬金術。プラント。魔本。
エレメント。チャイルド。紙使い。螺旋力。
力。力。力。力。力。力。力。力。螺旋。神の見えざる手。
いくつものいくつもの世界。不完全性定理。絶対の否定。到達点。
公理系。生命。ロジック。螺旋。食事。搾取。複雑系。命の連鎖。
ヒルベルトプログラム。生と死。観念。命の価値。螺旋。天地乖離す開闢の星。

(……これは……錬金術なのか? 扉を開く……。)

人間。人間。哺乳類。鳥。螺旋。恐竜。パンゲア。プルームテクトニクス。
螺旋。6500万年前。超好熱性細菌。イスア。全球凍結。迷子石。コノドント。
アウストラロピテクス・アファレンシス。五大絶滅。生きている化石。
KT境界。螺旋。イリジウム。カンブリア大爆発。ピカイア。ラマルク。螺旋。
レッドリスト。ドードー。種の終わり。ジャイアントインパクト。
無酸素水塊。ノーチラス。アンモナイト。海進と海退。層序学。螺旋。

(――違う! 錬金術も、魔術も、紙使いも、全てはこの力であり……!!)

不死者。悪魔。全能性。不死の酒とホムンクルス。連環。ループ。螺旋。ウロボロス。スパイラル。
復活。存在変換。錬金術。螺旋力。吸血鬼。死者の蘇生。因果逆転の槍。
今そこで人が死のうとしてる。螺旋。僕にはその方が重い。
倫理観。禁忌。プレシア・テスタロッサ。ジュエルシード。魔法。
死んだらどうする。友情。親愛。家族愛。螺旋。殺人狂。地獄の傀儡師。
神。神。紙。読まずに死ねるか。異能。復活。三日後。進化。心。螺旋。錬成陣。螺旋。

(命、……その、生き死にさえも、向かう先さえも総べる力、それが……!!)


388:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 20:58:47 gF/QkHbU
 

389:マテリアル・パズル~神無~ ◆wYjszMXgAo
08/02/22 20:59:24 vxjxJGCp
――われわれはどこから来たのか われわれは何者か われわれはどこへ行くのか……?

不意にいくつものいくつもの光景が目の前に展開する。

黒目のない男が、少年に向かって指を鳴らす。
しかしそれは阻まれる。死なない男が庇っているからだ。

砂漠の星で、協会で一人永遠の眠りに就こうとする男がいる。
彼は、もっと生きたがっていた。

自分の良く知る世界がある。
とある軍人が、家族に化けたホムンクルスを撃てず、命を散らした。

テロリストに乗っ取られた豪華列車。
泣かない少年が、火炎を放つ男を屋根の上から突き落とす。

どこかの屋外。
髪を二つに結った少女が、頭を冷やせと言われて光線に撃ち抜かれていた。

禍々しい瘴気に満ちた空間で。
見覚えのある神父が、少年に向かっていくつもの汚泥を飛ばしていく。

二人の男が睨みあっている。
銃と日本刀が交差し、まるで踊るように離れていく。

ここ会場の舞台に良く似た世界。
少女達は、どうと言うことのない平和な日常を幸福に浪費していく。

やはり会場に良く似た世界。
奇術師と学生の推理勝負は、いまだ決着がつく気配はない。

世界を駆け巡る二つの異形。
弟は、最期の最期に兄を超えた。

他にも、他にも、他にも。
師を失い、泣いて亡骸を抱きしめる格闘家がいる。
戦いの最中、仮面を失った少年がいる。
喋る機械の猫がいる。
絶望したがりの先生がいる。
独特な台詞回しの少年がいる。
獣を操る少女がいる。
空の城に向かう子供達がいる。
赤い本を手に戦いに臨む少年がいる。

――そして。

(あれは――、)

螺旋王。獣人。人間。機械。そして、生命と、進化と、螺旋と――

(……そうか、螺旋力とは、そして、己れは――)



390:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 21:00:09 gF/QkHbU
  

391:マテリアル・パズル~神無~ ◆wYjszMXgAo
08/02/22 21:00:16 vxjxJGCp
◇ ◇ ◇


……どれくらいの時間、彼はそこに立ち尽くしていたのだろうか。
既に傷は完治し、腹も随分と空いているようだ。
左手の添え木が邪魔すら感じられる。
時間が一気に飛んだようだと思う。

前を向いてみれば、コンテナはびくともしていない。
当然だ。完全に理解することなどできなかったのだから。
螺旋に類するアイテム。それがなければ、どうしようもないのだろう。
今のスカーにはそれがはっきりと分かる。

彼は自分の右手を見る。
兄から譲られた、その力を。
見つめ、強く強く握り締めた。

螺旋力。今の自分にも、この世界の誰であってもそれは備わっている。
まだその力の一端に触れただけでしかない。だが、それがあるならば。
誰彼の生き死にさえ左右できるのならば。

「……兄さん。また、会うことが出来るのか?」

返事はない。当然だ、ここには誰もいないのだから。
……だが。
傷の男に気落ちした様子はない。

贖罪のつもりはない。仇を許すつもりもない。
それでも彼は、一つの選択をした。

「兄さん……。己れは……、誰かを、守ろうと思う」

勿論偽善のためではない。全て自身のためだ。
国家錬金術師どもは殺す。それを変えるつもりはない。
だが、それに加えて螺旋力を用いて兄を、イシュヴァールで失われたモノを取り戻す。
それだけではない。ここで、自らが失わせてきたモノたちに対してもだ。
……全てを、元の形に。
たとえそれが、摂理に反する行為でも。

「……神父、お前は言ったな。己れは虐殺者だと。……その通りだ」

その為に、だからこそ。

「……己れは、故に手を汚す。躊躇いはない。螺旋の力あるものたちを、手に収める為に」

足りない。“全て”を戻すには、自分自身だけでは全く足りないのだ。
この会場にいる、ありとあらゆる存在。
生きとし生けるもの達は皆、螺旋の力を手に入れ得る。
だからこそ。……だからこそ、自分が守らねばならない。
それを脅かすものを全て排除することで。
螺旋の力に目覚めていたとしても、他の人間に危害を加えるのなら同様だ。
たとえそれが、自分の力の及ばない存在であろうとも。


392:マテリアル・パズル~神無~ ◆wYjszMXgAo
08/02/22 21:01:15 vxjxJGCp
――懸念するのは螺旋王の事だ。
あの男がどう動くのかは分からない。あの男の螺旋力の程度も分からない。
だが、どうすべきかは簡単だ。
仮に、この会場の螺旋力保有者全てを超えるほどの螺旋力をあの男が持ち、約束を守るというのなら。
……それまでに保護したもの全てを自分の手で消せばいいだけだ。
どうせ、自分は虐殺者なのだから。

傷の男は身を翻す。
その瞳に、緑の螺旋を浮かばせて。


【スカー(傷の男)@鋼の錬金術師 螺旋力覚醒】



【A-7・ショッピングモール資材搬入倉庫/一日目/夜中】

【スカー(傷の男)@鋼の錬金術師】
[状態]:健康、覚悟、螺旋力覚醒
[装備]:天の鎖(エルキドゥ)@Fate/stay night
[道具]:デイバック、支給品一式@読子(メモは無い)、アヴァロン@Fate/stay night
[思考]
基本:螺旋力保有者の保護、自身及び螺旋力保有者の敵の抹殺、元の世界に戻って国家錬金術師の殲滅
1:螺旋力保有者に接触し、保護する。
2:螺旋に関係するアイテムを収集し、ショッピングモールのコンテナを開ける。
3:邪魔をしたり、危険と判断したりした場合、螺旋力保有者でも抹殺する。
4:螺旋力保有者の敵がいなくなったら螺旋王を見極める。螺旋王の螺旋力の大きさ次第でそれまでの保護対象を抹殺し、優勝する。
5:……腹が減ったな。
[備考]:
※会場端のワープを認識しました。
※言峰の言葉を受け入れた分、かえって覚悟が強まっています。
※スカーの右腕は地脈の力を取り入れているため、魔力があるものとして扱われます。
※螺旋力について何らかの知識を得たようです。

※螺旋力覚醒


【天の鎖(エルキドゥ)@Fate/stay night】
かつてウルクを七年間飢饉に陥れた“天の牡牛”を捕縛した鎖。
ギルガメッシュがエア以上に信頼する宝具。
使用者の意思に応じてホーミングし相手を拘束する。
能力は“神を律する”もの。
捕縛した対象の神性が高いほど硬度を増す特性を持つ、数少ない対神兵装。
ただし、神性の無い者にとっては頑丈な鎖に過ぎない。

※ショッピングモールには螺旋力と螺旋に関するアイテムで開くコンテナがあります。中身は不明です。

393:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 21:01:40 gF/QkHbU
 

394:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 22:50:18 8yP96FJ1
削除依頼完了どす

395:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/22 23:50:16 xfFAh932
とりあえず地図からでしょ

396:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/23 00:21:08 gdGQZ06s
 

397: ◆UcWYhusQhw
08/02/23 00:22:07 Y+UT/LYg
「スバルはん……」

あの爆発で生きてられるとはおもわへんかったけどやっぱり。
スバルはんに思う事は無いわけではあらへんけど死んだら終わりや。
もし生きとるんやったら手駒にと考えたやけどそれまで。
うちはそこでスバルはんについて考える事を止めた。

今はそんな事より流れた放送の中身や。
禁止エリアについては今はそこまで関係あらへん。
気になるというなら……下部に固まってきたという事ぐらい。
下部に人でも固まっていたのだろうか。

まあそれよりも今気にすべきは死んだ人数や。
17人。
また随分と減った。
順調に進行してるって事や。
これは喜ぶ事なんやろうか。
いや、少なくとも今は違う。
人数が少なくなるという事は手駒になる奴も減るって事や。
そして強者が残る。
私が勝てないような強者が。
その為には協力者が必要なんや。
そうかなりの強者の。
弱者はいらへん、足手まといなだけや。
そんな足手まといは殺しとく、邪魔やし。
必要なただ一人、なつきだけや。
後はただの駒。
なつきの為に利用する駒でしかあらへん。
ゲームをする時には強い駒が多い方が楽にきまっとるさかいね。


398:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/23 00:22:24 5fkfVRKC
 

399:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/23 00:22:35 gdGQZ06s
 

400:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/23 00:22:39 dLfIpDrp
 

401:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/23 00:22:43 3WVVa2pC


402:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/23 00:23:04 LtE7nPgn
支援

403: ◆UcWYhusQhw
08/02/23 00:23:13 Y+UT/LYg
そして目の前にいる男、ヴァッシュはん。
見た限りではかなりの強者。
あの卓越した銃器の扱いは見事の一言や。
それに奇抜な戦い方、あの槍使いを翻弄させるとは。
おちゃらけてるくせになかなかやりおる。
詰めが甘いがまあ、そこは妥協点であろう。
戦闘能力だけで見るとかなりの上物や。

ただ「戦闘能力」だけでいうとや。
彼の思考、理念は邪魔でしかあらへん。
何が誰も殺させないだって。
血迷い事だ。
現に2人も死んでおるやないか、うちのせいせやけど。

うちが行動する事によって彼の理念は常に邪魔しはるやろ。
足手まといを始末にするにしても絶対に否定しはる。
そして殺し合いに乗ってるものでさえ止める。
何がそこまで彼をはしらせるんやろ。
少し気になった。

まあそんな事は後でいい。
取り敢えず考えるべきはヴァッシュはんをどうするべきかや。
手駒として使うか、切り捨てるかや。
戦闘能力は別格。
しかしその考えは邪魔。

どないしましょ。
どっちもいい考えや。
慎重に決めんと……



そして
うん、決めた。


404:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/23 00:23:15 5fkfVRKC
 

405:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/23 00:23:20 qIxmU4ti
 

406:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/23 00:23:31 gdGQZ06s
 

407:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/23 00:23:47 MDtXrN/7


408:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/23 00:24:13 LtE7nPgn
 

409:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/23 00:24:26 kk39Mlan
「「「「我らその名を書風連! 呼ばれなくとも支援する!!」」」」

410: ◆UcWYhusQhw
08/02/23 00:24:41 Y+UT/LYg
うちはその考えの下にヴァッシュはんに近づく。
そう、うちが決めた答えは

「ヴァッシュはん……」
「なんだい……」

ヴァッシュはんはどこか沈んだようすで座っていた。
大事な人でも呼ばれたんかいな。
まあそんなのうちには関係あらへん。
だからうちは用件を告げる。

「手をくまあらへん? うちとヴァッシュはんでこの殺し合いをぶちこわすんや……もう、うち殺し合い、やになったんどすのん」
「……え?」

そううちが選んだのはヴァッシュはんを手駒としてつかう事。
ここで別れてヴァッシュはん以上の強い手駒が手に入るとは考えられへん。
むしろ、協力する人間すら少ないやろ。
その中でこんなお人好しはある意味で貴重や。
その理念が邪魔やけど、うちが間違って殺したと言う事でもいいし、影で始末してもいい。
ようは自分の手を染めればいいのや。
そう考えれば絶好の手駒。
まさに最良の駒。
使い方を間違わなければこれ以上の無い手駒やさかい。
だからうちは彼を使う事に決めた。

「君とかい……」
「なんや……不満なの? うちはもう乗ってないのや。組む事に問題なんてあらへん」

そう、今のうちは乗ってない。
なつきの為、自分の力でやってみせるんや。
その為にあんたを手駒にした方がやりやすいさかいね。
なんか気乗りしないみたいけど味方につけてやるさかい。

「もう、人を殺したりはしないのかい?」
「そや……もうしない。絶対や……殺したんのは悪いと思ってる……なんか空しゅうて……せやから力を貸してほしいんや」


411:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/23 00:24:49 gdGQZ06s
 

412:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/23 00:24:53 v6B+ImMQ
  

413:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/23 00:24:56 3WVVa2pC


414:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/23 00:25:06 MDtXrN/7


415:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/23 00:25:13 5fkfVRKC
 

416:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/23 00:25:24 egZ+Nsxa


417:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/23 00:25:36 LtE7nPgn


418:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/23 00:25:43 qIxmU4ti
 

419:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/23 00:25:55 v6B+ImMQ
  

420: ◆UcWYhusQhw
08/02/23 00:26:04 Y+UT/LYg
あたり前やけど嘘だ。
別にどないとも思ってへん。
ただ力、運が無かったから死んだだけや。
だってなつきの為やもん。
多少の犠牲なんて仕方ないやろ。
そしてこれからもかわらへん。
足手まといは始末するし邪魔する者も殺す。
他人の死なんかどないでもいい。
ただなつきがもう一度、うちのまえにあらわれるだけでいいのや。
だから罪の意識なんてある訳がない。
ヴァッシュはんには悪いけど。
その信念は一生わからへんわ。

せやけど今はヴァッシュはんの力を利用しなければならへん。
その戦闘能力を手に入れる為に。
その甘ったれた信念には反吐がでるけど今はのもう。
だからうちは簡単にも嘘を吐ける。

「そう……ヴァッシュはん言うとったやん……ラブ&ピースって! うち、それに感動しましてなあ……放送を聞いた後に死者が多くて……辛くなった時その言葉に感銘受けましたんよ」
「……本当かい?」

そんな訳あらへん。
血反吐がでるくらい堪忍や。
ラブ&ピースってなにいってるんだか。
気持ち悪いわ。
大の男がそんな言葉をいうなんて。
あーもう堪忍して欲しいわ。
でも仕方あらへん。
これもなつきの為。
気持ち悪い単語を言い続ける。

「そうや……ラブ&ピースや! ラブ&ピース! ヴァッシュはん」

うちは笑顔を作ってVサインを作ってヴァッシュはんの真似をする。
アホらし。
でも我慢や、我慢。


421:名無しさん@お腹いっぱい。
08/02/23 00:26:40 kk39Mlan
「「「「ええい!残り200kb、すべて支援で埋め尽くしてくれる!!」」」」


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