【ノーマル】ローゼンメイデンのSSスレ 8【一般】at ANICHARA
【ノーマル】ローゼンメイデンのSSスレ 8【一般】 - 暇つぶし2ch517:雪華綺晶はここにいる 33/38
08/07/02 03:13:18 Vu3UqG8N
「私も薔薇水晶と同じことを考えていたわ。
 昼間鏡の中に現れた白いドールは、薔薇乙女の第7ドールだと思うの」

「だ、第7……?」

「ヒナたちの妹…なの?」

「ほ、本当なのかしら…? 真紅…」

翠星石と雛苺と金糸雀が驚いて声を上げ、真紅を不安げな面持ちで見つめる。
真紅は今まで、この推測を彼女達に伝えなかった。事件の下手人を捕まえにいく時にも
言葉をにごし、容疑者は水銀燈もしくは"不審なドール"程度にしか説明しなかったのだ。
それは確信ももたず、いたずらに彼女達を怖がらせてはいけないという真紅の配慮だった。
第1ドールの水銀燈から第7ドールの全てが同時に目覚めているということは、アリスゲームが
本当に開始したということに他ならないからだ。姉妹と戦うことを厭う彼女達からすれば、
それは最も忌まわしい事態だろう。
困惑もあらわな翠星石と金糸雀、きょとんとしている雛苺の視線を受けて真紅は先を続ける。

「私ももしかしたらとは思っていたけれど、薔薇水晶の証言から
 確信したわ。今日起こった事件の首謀者は第7ドールよ」

「ど、どういうことです…!? 説明するです、真紅!」

「水銀燈も鏡に現れた姉妹の誰かを追ってnのフィールドへ来たと言っていた。
 私達と状況が同じだわ。
 私達は水銀燈と同じように、第7ドールにnのフィールドまで誘い込まれた」

「……つまり翠星石達も水銀燈も…踊らされたってことです…?」

「ふぇ…ダイナナはすごいのよー」

「そして私達3人と水銀燈が集まったところで金糸雀…貴女が現れた」

「うっ……そんなこと言われても、カナ、覚えてないのかしら…」

「ここからは私の推測よ。
 金糸雀。貴女は第7ドールに接触し、操られていた可能性が高い」

「カナが…!? 第7ドールに…!?」

「そうよ。私達4人を一箇所に集めていたのが第7ドールなら、
 その後の展開も第7ドールによる計画のうち、と考えるのが自然だわ。
 貴女は今日、ジュンの家を訪れた後に第7ドールに捕まって
 何かの方法で操り人形にされたのよ。
 そして私達と水銀燈を倒すための手駒にされた」

「そっ、そんなはずはないかしら! よりにもよって薔薇乙女一の
 策士のカナが敵の罠にはまるなんて…」

「金糸雀…。オマエ、少し黙れ。……ですぅ…」

「は、ハイ…かしら…」

名誉毀損とばかりに反論しわめき立てる金糸雀の頬を、翠星石が乱暴に掴む。
未だ縛られて身動きの取れない彼女は、怒りに暗く燃える翠星石の眼差しを至近距離から
突きつけられて気圧され、言われたとおりにするしかない。
真相がどうあれ金糸雀に痛めつけられたという事実に、翠星石はまだ怒っているのだ。

518:雪華綺晶はここにいる 34/38
08/07/02 03:17:55 Vu3UqG8N
「危ない戦いだったけれど、私達は何とか勝つことができた。
 もしも負けていたら、私達4人はもちろん用済みの金糸雀も
 第7ドールの手でローザミスティカを奪われていたはずよ。
 本当に危なかった。最悪の場合、今日中に薔薇乙女は
 第7ドール以外全滅していたはずだから」

そんな真紅の言葉に、翠星石と雛苺は背筋を凍らせる。
彼女達からすれば、ささいな事件を解決するために遊びで探偵ごっこを楽しんでいただけだが、
彼女達が関わった事件にはそんな破滅的で悪辣な罠が潜んでいたというのか。

「捕まえた金糸雀から第7ドールのことを探れないかと思ったけれど、
 金糸雀の記憶は消されている。
 第7ドールと薔薇水晶の姿は似ているから、彼女を見て何か思い出すかと
 期待したのだけれど…。
 でも金糸雀は薔薇水晶を見たときに、明らかに混乱していたわ。
 記憶の消去は完璧じゃない。金糸雀は確実に第7ドールに何かをされている」

「何か気味が悪いのかしら…。
 何かをされて、何も覚えていないなんてあんまりかしら…」

「なーにをのん気なことをほざいてるですオバカナ!
 オマエの頭の中に! 謎を解く鍵が入っているのです!
 さっさと思い出しやがれですぅ!」

「うぐぐっ…や、やめるのかしら翠星石…!
 し、真紅…! カナはもう暴れたりしないから
 自由にして欲しいのかしら…!」

「あら。そういえばそうだったわね。
 すっかり忘れていたわ」

真紅は雛苺に指示し、金糸雀を縛っていた苺わだちを解かせた。
真紅が金糸雀の身体を拘束させていたのは、まだ金糸雀が操られている可能性が
あったからだ。これまでの会話と金糸雀の様子から彼女が正常であることを確認した真紅は
金糸雀を解放することにした。
しかし場合によってはまだ第7ドールの支配下にあった方が良かったかも知れない。
金糸雀が気絶している間に、何かされた形跡はないか、何かの力の影響下にないかと
真紅は彼女を入念に調べた。
あわよくば金糸雀を操る糸をたどり、下手人まで至ることはできないかと期待したのだが、
結局金糸雀を操った犯人の手がかりは何も得られなかった。

「その第7ドール…自分からは姿を現さず、自分の正体に繋がる
 手がかりも残さず消していく。
 かなり周到で用心深いドールですね」

ゆるんだ空気を締め直そうという配慮からか、そんなことを淡々と話す薔薇水晶に、
真紅も真剣な面持ちを取り戻して頷いた。

「そうね。まるで実体が掴めないわ。
 姉妹の身体を乗っ取って戦わせて、その正体は誰にも分からない…。
 本当に幽霊のよう。のりは先見の明をもっていたようね」

「そんなもんアイツにあるわけないよ。ただの偶然だろ」

「何もしてねーくせに偉そうなこと言うなですチビ人間。
 第7を見つけたのりの方がオマエよりずっと役に立つのです」

519:雪華綺晶はここにいる 35/38
08/07/02 03:21:00 Vu3UqG8N
「なっ何だとー!? お前達の手当てをするのに、
 今日僕がどれだけ力を吸い取られたか…」

「そんなの媒介として当然の務めですぅ。
 むしろ翠星石に力を貢げて光栄に思えですぅ」

再びいがみ合い場の空気を乱す翠星石とジュンを軽くたしなめて、真紅は第7ドールに
対する総括を話し始めた。

「金糸雀を操って私達を襲わせたり、足取りや正体を掴ませないところから
 かなり狡猾で慎重な妹よ。罠の内容も悪質に過ぎるわ。
 正面から攻めてこないで姉妹を罠に陥れようとする分、
 好戦的な水銀燈よりもよっぽど危険でたちの悪い薔薇乙女だと考えていいわね。
 その正体も能力もほとんど不明だけれど、分かっている範囲では
 姉妹の身体を乗っ取る力をもっていて、外見が薔薇水晶に似ていること。
 それと鏡の中に現れるらしいから不用意に大鏡には近寄らないこと」

真紅の分析と留意点に、その場の薔薇乙女達は頷きを返す。
雛苺はその中でも特に幼稚で思慮に欠けるので、真紅は彼女には念を押して注意をした。
そんな折、ドアをノックする音が部屋に響く。

「ジュンくーん、それにみんな~。お夕飯ですよー」

ドアを開けて笑顔を覗かせるのりに、雛苺がはしゃいで両手を挙げる。雛苺の後に
金糸雀がそろそろと続き、翠星石に睨まれてばつが悪そうな表情を見せていた。

「わたしはそろそろ帰ります」

そう一人呟いて立ち上がる薔薇水晶に、真紅が微笑んで声を掛ける。

「たまには夕飯を一緒にどうかしら?
 のりの料理はなかなかのものよ。
 貴女にも事件の解決を手伝ってもらったのだから、
 せめてお礼くらいはさせて欲しいもの」

「…………」

薔薇水晶は逡巡していたのか、しばしの沈黙の後、こくりと頷いた。



「今日は薔薇水晶ちゃんも食べていってくれるのねぇ。お姉ちゃん嬉しいわぁ」

のりの爛漫とした笑顔を向けられて、薔薇水晶は無表情のままかすかにうつむく。
どうもそれが彼女の照れの仕草であるらしい。
テーブルの上には真紅、雛苺、翠星石、金糸雀、薔薇水晶、のりの分の料理を載せた
皿が並べられている。ジュンはこういった団らんの空気は苦手なので、テーブルから
離れたソファーに座ってテレビ番組を観賞していた。
メインの料理は定番の花丸ハンバーグで、ソースのかかったハンバーグの上に花を模した
形の目玉焼きが乗せられている。その端にはパセリとニンジンも添えられ色合いも豊かだ。

「みっちゃんにはかなわないけど、ノリノリのご飯もけっこういけるのかしら」

「…ケチつけてないで黙って食べるです」

翠星石の睨みにも耐性ができたようで、金糸雀は相変わらずの様子でハンバーグを
ほお張っている。

520:雪華綺晶はここにいる 36/38
08/07/02 04:03:03 Vu3UqG8N
香り立つ花丸ハンバーグを前にしても、翠星石の瞳にはかすかな憂いが灯っている。
今日、珍しく水銀燈に遭遇した彼女は、蒼星石のローザミスティカを彼女から取り返す
チャンスがあった。しかし金糸雀の妨害のせいで水銀燈には逃げられ、結局悲願を
果たすことはできなかったのだ。
今日の事件が第7ドールが仕組んだことだとしても、翠星石からすれば蒼星石の復活を
叶えられなかったことを悔やむ気持ちがいつまでも残る。
しかしものは考え方次第だ。水銀燈に出会う機会はいつかまた訪れるだろう。
その時こそローザミスティカを奪還し、蒼星石を元に戻せばいいのだ。

「(蒼星石…翠星石がいつか元通りにするですからね…!)」

胸の内で誓いを改めた翠星石は、蒼星石と一緒に食卓を囲む日が訪れることを夢見て
ハンバーグにナイフとフォークを添えた。

「お味はいかが? 薔薇水晶」

「おいしい」

真紅の問いかけに、薔薇水晶は黙々と口に運んでいたハンバーグをそう評した。
彼女は朴訥でお世辞が言えるほど器用ではない。本当に美味しいと思っているのだろう。

「あらあら。嬉しいわぁ薔薇水晶ちゃん。お姉ちゃん頑張った甲斐があるわ」

「のりの花丸ハンバーグはもうさいこうなんだから!」

朗らかな笑みを送るのりと雛苺に、薔薇水晶は無表情な顔を少しだけゆるめて、
そっと笑顔を浮かべた。
そんな食卓の光景を見て、真紅は想いに耽る。
第7ドールが現れたということはアリスゲームが本当に始まったということだ。
得体の知れない白い妹の悪辣な罠に嵌められて危険な目に遭ったが、結果としては今日も
こうして安らかな夕食を皆で迎えることが出来ている。
第7ドールが画策しようと、真紅が姉妹を守るのだ。真紅には優しい姉妹達がついていて
くれている。皆で結束すれば、何を恐れることがあるだろうか。
それに水銀燈。好戦的なのは相変わらずだが、真紅を絶体絶命の窮地から救ってくれた。
アリスゲームに対する姿勢の違いから相容れず、2人の間には深いみぞがあると真紅は
思っていた。しかしそのみぞが今日少しだけ埋まったように彼女は感じた。
いつの日か、水銀燈とも理解し合えるかもしれない。
そんな幸せな想像に、真紅は優しい笑みを浮かべた。

微笑む真紅をジッと見つめる瞳が一つある。
それは薔薇乙女たちが囲むテーブルの傍の、食器棚の中からの視線だった。逆さにされた
硝子のコップの一つに金色の瞳が悪趣味な模様のように浮き上がり、誰にも知られることなく
真紅と、姉妹達を静かに観察している。
その瞳には優しげな色が宿っているが、暗がりに浮かぶ炯々と光る金色の目は、
まるで闇の中から息を潜めて獲物を狙う、肉食獣のそれであるかのようにも映る。
慈愛に満ちた禍々しい眼差しは、誰にも見咎められる事無くいつまでも真紅達を捉えていた。




521:雪華綺晶はここにいる 37/38
08/07/02 04:06:04 Vu3UqG8N
その夜遅く。
消灯時間も過ぎた頃になり、病室は夜闇に暗く塗りつぶされている。
めぐはベッドに横にならず、上半身を起こしたまま窓ガラス越しに空を見上げていた。
淡い月光が窓から差し、部屋を仄かに明るくしている。
やおら月明かりを超える強さの光が洗面台の鏡からあふれ出した。
鏡が眩しく輝くと、そこから姿を現したのは水銀燈だった。

「おかえり。水銀燈。帰りが遅いから心配しちゃった。
 やられちゃったんじゃないかと思って」

「…馬鹿言わないで。
 私が他の姉妹に負けるなんてありえない」

水銀燈が今まで病室に戻らなかったのは、金糸雀との戦闘で半壊した右の翼を癒していた
からだ。メイメイとレンピカのそれぞれの総力を使わせて今まで治療していた翼は、
何とか見られる程度までは回復した。
元に戻ったのは外見だけで、芯の部分は未だに傷ついているが。
なぜそんな事に今まで時間を費やしていたのかは、水銀燈自身にもよく分からない。
単にめぐに負傷を見咎められるのが屈辱だからなのか、それとも別の理由が存在するのか。
ただあのままの姿で帰りたくないと水銀燈が思ったからそうしただけだ。

「それでどうだった?
 昨日の白い天使は殺したの?」

笑顔でそんな恐ろしげなことを問うめぐに水銀燈はやや呆れたが、刹那の逡巡の後に
不満げな顔で応えた。

「殺してないわ。
 でも痛めつけてあげた。
 もうここに来ることもないでしょ」

水銀燈は昨日病室に現れた雪華綺晶を金糸雀だと勘違いしたままだ。
殺さずとも真紅と共に裁きを下した金糸雀は、それに懲りて二度とやってこないと思っている。

「そっか……。
 水銀燈。貴女優しくなったわ。
 前の貴女なら、きっと躊躇わずに殺してる」

「馬鹿じゃない。単なる気まぐれよ。
 私は最凶の薔薇乙女なの。優しいはずなんかない」

水銀燈はさも呆れたと言わんばかりに肩をすくめて嘯いた。彼女自身、アリスゲームを貶めた
金糸雀を始末したかったのだが、状況がそれを許さずに誅戮は未遂に終わった。
そんな事実は彼女の沽券に関わるのだから言えるはずも無い。
それでもライバルの真紅を見捨てられずに助けてしまったのは、冷徹な水銀燈らしからぬ
行動だったのだが。

「ううん。貴女は変わってしまったわ。
 私のつまらない命も使ってくれないくらいに」

「!」

めぐの言葉は水銀燈を不安にさせる。秘め隠していた認めたくない部分を揺さぶられるようで、
水銀燈は不快な気持ちになり言葉に詰まった。
水銀燈は仏頂面のままめぐから目を逸らし、黙り込む。
そんな彼女を見て、めぐはやわらかく瞼を下ろし、唄うように呟いた。

522:雪華綺晶はここにいる 38/38
08/07/02 04:08:57 Vu3UqG8N
「私が関わったことで、貴女の大切な部分を歪めて
 壊してしまったのだとしたら…それはとても罪深いことね。
 私には本当に生きる価値がない。
 早く死んでしまえばいいのにね」

「…………」

めぐは目を閉じたまま、誰かに懺悔するかのようにうつむいていた。
水銀燈が本当に稀にしか見せない、痛ましいものを見るような眼差しにも
彼女は気づいていなかった。
2人は歩み寄れば寄るほどに、本質的な部分で遠ざかっていく。
めぐは死から、水銀燈は媒介の獲得から。
お互いが望むものから離れていく。
水銀燈は自分の気持ちと今の雰囲気が息苦しくなって、窓辺に寄り空を見上げた。
空には白く輝く月が浮いている。
水銀燈の銀色の髪も、紅い瞳も、物憂げな表情のかんばせも、等しく淡く照らしていた。


                                      
                                              fin

523:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/02 04:10:42 Vu3UqG8N
ローゼンメイデンのSS初挑戦です。
動く蒼星石も書きたかったなぁ…orz

524:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/02 18:30:16 Mw7LDZS3
続きが気になる
乙です

525:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/02 21:38:39 LF9HLXae
これは読ませる

526:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/03 14:50:40 KFIthV0f
乙です
文章・展開ともにうまい はらはらしたぜ

527:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/05 11:57:14 DJuccZ0K
乙です。
久々に読ませるSSが来た。
続きを是非!

528:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/05 13:26:23 4Zg+VWmk
なww

529:「週刊ローゼンメイデン(水銀燈)」
08/07/06 23:53:34 Su/gm5gQ
真っ赤になって動けなくなっちゃった水銀燈を抱いて入った倉庫の中。
そこは埃にガソリンやオイル。それに錆臭さが漂う馬鹿の城。
一般ピープルも“それ”に興味がある人も引くゴミ置き場。
“それら”を見た水銀燈は溜息を吐いて。
「確かにジャンクねぇ…どうするのよぉ…この壊れたバイク…」
バラバラ…。
そう、冗談抜きでバラバラになってる古いバイクを眺めながら言う。
「いや、壊れてない。修理中」
ジャンクじゃないやい!…と、ムキになった俺。
こっちはすぐエンジンかかる、これは磨くだけ…これも磨いて塗装すれば…。
必死にゴミじゃないと言い続ける。
「…修理中ねぇ…」
どーでもいいわよぉ、そんなのぉ…と、バイクと俺から興味が無くなりつつある水銀燈。
こっちもボロボロ、これは錆だらけ…あら?これはパンクねぇ…。
そんな事を言いつつウロウロ。挙句の果てに冷蔵庫を見つけてヤクルトを要求する始末。
…そーかい、そーかい…そんなに興味が無いのかい。
そう一人で拗ねていると水銀燈がヤクルトを2本、持って来た。
…1本くれるの?

530:「週刊ローゼンメイデン(水銀燈)」
08/07/06 23:53:54 Su/gm5gQ
埃の積もった椅子に腰掛けた水銀燈は楽しそうに2本目のヤクルトを飲み始めた。
ちょっと残念。
「…何よぉ、その目の意味する所はぁ…」
「一本くれるのかと思っただけ」
いじけてレンチを弄ってる俺を哀れに思ったのか、
彼女は飲むのを一時中断して溜息を吐いた後、にっこり微笑んだ。
「仕方ないからジャンクの名前聞いてあげるわ。感謝しなさいよぉ?」
この時俺は『砂漠で遭難中、オアシス見つけました!』とか『ココにいても良いんだ!』な顔をしていた。
冗談抜きでホンマにあんたは天使様やぁ!
「ふふっ…おだてても何も出ないわよぉ?」

531:「週刊ローゼンメイデン(水銀燈)」
08/07/06 23:54:18 Su/gm5gQ
調子に乗った俺、聞かれたのをいい事にバイクのことを喋り倒してました。
まずは1963年式ホンダCB72型レース仕様。
当然、ライト、ウィンカー、ストップランプなぞ付いてやしません。
色は昔のホンダレースバイクのお約束の赤。
「…で、色から付けた名前が“真紅”」
「しん…くゥ?」
右から左に聞き流してた水銀燈から再び立ち昇る、殺気。
これはヤバイ。
「でー、その白と銀色のが“水銀燈”」
“真紅”を壊されちゃならんと別のバイクを指差す俺。
「…これが…“水銀燈”?」
彼女はバイクを指差して聞き返してくる。
眉の間の皺が『勘弁してくれ、マジで』と言っている。
今度は機嫌を損ねたんかい、お前は…。

532:「週刊ローゼンメイデン(水銀燈)」
08/07/06 23:54:40 Su/gm5gQ
フレームと足回りをメッキしてタンクと外装をミッドナイトブルーに塗って…。
…それでホンダ翼マークを黒にして銀でMercury Lampeと書けば最凶のNSR250完成…。
てな事を20分ばかし語った結果水銀燈のご機嫌は回復。…ちょっと、疲れた。
ニコニコ顔の水銀燈、
「オレンジと青銀はぁ?」
と、他の名前を聞く余裕も生まれたみたい。
最も他のは名前決めてないんだけど。
「本当にお馬鹿さんねぇ…」
…今回は微笑み入った優しい“お馬鹿さん”ですなぁ…。

533:「週刊ローゼンメイデン(水銀燈)」
08/07/06 23:58:15 Su/gm5gQ
ンでもってバイク弄ってる所を見たいと水銀燈が言うのでそのままお楽しみ時間突入。
現在サービスマニュアル片手にシリンダーヘッドの組み立て中。
水銀燈はちょっと退屈そう。
…そうだよね…女の子こーゆーの嫌いだよね…オイル臭いし…。
「…で?…何で“水銀燈”より“真紅”を先に治すのぉ?」
…やっぱり飽きてたみたい。
今日はもう終わりにしよう。
その一言を言う前、
「ひょっとして浮気してるとかぁ?」
水銀燈は、言った。
お前は何を言ってるんだ?
振り向いてそう言おうとして、俺は驚いた。
…コイツ…立派な女の目をしていやがる!!
まあ、それはさて置き…。
「…お、置かないでよぉ…い、意識して…その…そ、そういう顔したんだからぁ…」
…演技かい…。

534:「週刊ローゼンメイデン(水銀燈)」
08/07/07 00:00:08 vHubGRKN
とにかく。
「前のオーナー…まあ、マスターみたいな人と約束したんだ。
 サーキットを走らせる…って」
馬鹿みたい。
自分でも、そう思う。
免許も無い上にピザデブなんだし。
けど水銀燈はちょっと夢見る表情に。
「…サーキットを走らせる…かぁ…素敵ねぇ…」
…夢見てからかちょいとロマンチスト入ってますな。
そして夢から覚めて。
「…けど…その体型でぇ?免許はぁ?」
「お願いそれ言わないで」
一気に現実に引き戻された。
…そーいや水銀燈に免許用の金、注込んじゃったよなぁー…。
一人落ち込む俺に水銀燈は何故か優しい笑顔を見せていた。

535:「週刊ローゼンメイデン(水銀燈)」
08/07/07 00:01:12 vHubGRKN
ンでもってその日の夜。
水銀燈が寝床に収まったのを確認して消灯。
近くに誰か居ると言うのは安心すると実感。
「…ねぇ…もう寝たぁ?」
瞼を閉じて10分ほどした頃、水銀燈が問いかけて来た。
「いんやー…まだ起きてる…」
とは言うものの半分寝ています。
水銀燈が何言ってるのか良くわかりません。
とりあえず、“水銀燈”を先に治せと言ってたのでやんわり断りました。
意識を手放す前に聞こえたのは…。
「お休みなさぁい…イビキの大きな…」
と言う水銀燈の呟きです。
続きが気にはなります。
なるんだけど…何だろう、この頭痛は…。

536:「週刊ローゼンメイデン(水銀燈)」
08/07/07 00:02:56 vHubGRKN
「今日もお仕事…お休みねぇ…」
外を眺めながら気だるそうに呟く水銀燈。
「それ言うなっての…」
体温39度で返事すら辛い俺。
取説に起動直後は体調不良になると書いてたから
覚悟はしてたもののココまでとは思ってもいなかった。
昨日頭痛を感じたときに風邪薬飲んで置きゃよかった。
そう思っても後の祭り。
水銀燈はそんな俺をチラッと見て翼を広げ。
「じゃあ私は少し散歩してくるわぁ」
…薄情者めぇー…。
そんな事を考えながら俺は目を閉じた。

537:「週刊ローゼンメイデン(契約)」
08/07/07 20:45:10 vHubGRKN
…で。
…何でこうなってるんだろう…。
俺は眠ったはずだ。
…なのに何で水銀燈に服を脱がされてるんだろう…。
そして、何で全裸の水銀燈に押し倒されてるんだろう。
全く理解できない。
「これは夢よぉ?だからぁ…私を楽しめばいいのよぉ?」
水銀燈が俺にキスをする。
酷く妖艶に微笑みながら。
「理性を解き放って獣になっちゃいなさぁい」
彼女の赤い瞳が暗く輝いた。
「…理性を…解き放つ?」
「そうよぉ?そしてぇ…この水銀燈を玩具にしなさぁい」
甘い声が頭に響く。
心のどこかで、糸が、切れた。

538:「週刊ローゼンメイデン(契約)」
08/07/07 20:46:00 vHubGRKN
「…なのに何でこうなっちゃってるのよぉ…」
困った顔の水銀燈(全裸)。
「うはwww水銀燈マジやーらけーwwwwww」
理性が解き放たれ獣になった俺(全裸)。
「押し倒してきたら吸いつくして殺してやるつもりだったのにぃ…」
「ほっぺフニフニwwwおっぱいもーみもみもみwwwwww」
「お馬鹿はさっきから芝大量生産してるしぃ…」
 …この芝ラプラスの口にでも詰め込んでやろうかしら…」
ぬふぅ!俺様以外の名を呼ぶとはぁああぁぁッ!!
かくなる上は最終奥義発動で俺様の虜にしてくれるッ!!!
「水銀燈モフり祭り開催!!1!!wwwwww」
「いい加減に落ち着けぇ!!」
水銀燈に剣でぶん殴られて奥義発動失敗。
変わりに発動したのは水銀燈のスーパー説教タイムだった。

539:「週刊ローゼンメイデン(契約)」
08/07/07 20:48:22 vHubGRKN
「だいたい貴方はお馬鹿さん過ぎるのよぉ!何が水銀燈モフり祭り開催よぉ!!
 どこの世界に理性を解き放ったら目の前にいる女の子を抱きしめて撫で回す奴がいるって言うのよぉ!!
 こんなに綺麗な女の子…いえ、ドールが目の前にいたらぁ…ほ、ほほほ他の事するのが常識でしょ!?
 貴方って本当に本当に本当ぅ~にお馬鹿さんねぇ!そんなだから友人も恋人も居ないのよぉ!!」
…姐さん、この子止まりそうにありません。
しかも何、微妙に赤面してやがりますか。
何が『ほ、ほほほ他の事するのが』ですか。
具体的に言いなさい。
…と、落ち着いた挙句、妙に冷静な俺(全裸で正座中)。
「お、おおおお馬鹿さぁーんっ!そんなの私の口から言えるわけ無いじゃないのよぉ!!
 察しなさいよぉ!愛し合ってる男と女が二人きりで…その…す、する事よぉ!!」
混乱して挙動不審でトマトみたいな顔色の水銀燈(全裸で不思議な踊り)。
…何このカオス…。

540:「週刊ローゼンメイデン(契約)」
08/07/07 20:52:06 vHubGRKN
不思議な踊りを踊り続ける水銀燈と正座したままそれを眺めるとも無く眺める俺。
二人の間に流れる珍妙不可思議な時間。
…何とかしないといかんよなぁ…やっぱし。
「いい加減にお前も落ち着け」
「もう!また抱きしめるぅ!、すぐそうやって撫で回す!放しなさいよぉ!!」
何この駄々っ子。もう苦笑止まりませんなぁ。
「…わ、笑わないでよぉ…」
「ほんにも~…めんこいめんこい」
「だ、だからぁ…な、撫でないでよぉ…笑わないでよぉ…」
だが、断る。
撫で撫で撫で撫で…。
優しく、それでいてねちっこく、気持ちを込めて撫でる。
「…も…、やぁ…」

541:「週刊ローゼンメイデン(契約)」
08/07/07 20:56:16 vHubGRKN
一通り撫でて満足したので…。
「…あ、あれのどこが一通りなのよぉ…満足するの遅すぎよぉ…」
…とにかく真っ赤っ赤になった子猫ちゃんを抱いて、
「ちょっ!?…な、何す…きゃっ!?」
横に、ゴロン。
さすが夢の世界。
思うだけで布団出てきましたぞ!?初夜の雰囲気ですぞ!?
「ちょ!?…し、しししし初夜って何よぉ!?
 そ、そりゃあ誘いはしたわよぉ!?でもその前にしなきゃならない事がぁ~…!!」
言ってみただけ、言ってみただけ。
少しは落ち着け。
「…ふ、布団の中で裸で抱き合って落着ける訳無いじゃないのよぉ!!」
はーい、はい。良いから落ち着きましょうねぇ~。
撫で撫で撫で撫で…。

542:「週刊ローゼンメイデン(契約)」
08/07/07 20:57:45 vHubGRKN
再び真っ赤になって沈黙する水銀燈。
言いたい事をもう一度言うのは今しかない。
「性処理に買ったんじゃない。一緒に居たいから、作った。
 俺にとってのアリスが水銀燈だったから、お前を選んだ。
 今はただ、そばにいて欲しい。ずっと抱きしめていたい。
 それが俺の望み。
 だからこうして抱きしめて撫でてるんだ」
「そ、それは前にも聞いたけどぉ…」
顔色が戻らない水銀燈を抱っこしつつ撫で撫で。
極楽ですな。
「…ちょっと待って」
「何?」
素に戻らないでよう。
…と、ちょっと落ち込んでる俺。
「今言ったの本気?」
…と、何故かやたら真剣な水銀燈。
どったの?何かミスった?…俺。

543:「週刊ローゼンメイデン(契約)」
08/07/07 21:02:05 vHubGRKN
「だから“自分にとってのアリスが水銀燈”ってのは本気なのかと聞いているの」
あ…そっちね?
…よかったよぅ…。
おいちゃん、何かとんでもないポカしたのかと思ったよぅ…。
「よーし、こっちに帰ってきなさぁい」
よしわかった水銀燈…?
「何でお前服着てるの?さっきまで全裸だったのに…」
「真面目な話だからよ」
かわされた。
さてはマジか!?
「そう、言ったわ」
「そうか」
「そうよ」
そう言う事に、なった。

544:「週刊ローゼンメイデン(契約)」
08/07/07 21:03:23 vHubGRKN

「確かにお前は俺のアリス…つまり理想の少女だけど…」
「ふざけないで。これは真剣な話よ」
凛…ッ。
とした声が、響く。
「そう…真剣な話なの。
 二人にとって…ね…」
そう言って微かに微笑む水銀燈はまさしく、アリスだった。
どんな花よりも気高くて、
どんな宝石よりも無垢で、
1点の穢れもない、
世界中のどんな少女でも敵わないほどの至高の美しさを持った少女。
それが、水銀燈だった。

545:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/08 16:22:47 Sc3Ph1pj
妄想系のSSは、「作者は俺か?」ってくらいに同調できないと
正直読み辛いのぅ。

546:「週刊ローゼンメイデン(書いてる人)」
08/07/09 02:23:24 ZS62iRhg
>>545
ごめんよぅ…
エンジュ、ばらすぃ、兎が出てくるの早くするよ。

547:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/10 19:40:33 LRMwjdAD
>>523
無駄のない文章の構成力と、話への引き込ませ方が凄いな。
所で再開された原作にも薔薇水晶って出てくるの?ここだけよく解らなかった。
オレも続き期待

548:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/11 20:27:52 yHUNEpCA
>>547
薔薇水晶はアニメだけのオリジナルドール
原作準拠で進めながら薔薇水晶を終盤で、しかも味方で登場させるなんて
この作者さん何か狙ってるぽいな
続きがあるとみたよ
期待します>>523

549:523
08/07/13 01:36:20 9p7EDpCP
拙作を読んでいただき、その上感想まで書いてくださった方々、
どうもありがとうございます。

>>547氏、>>548
薔薇水晶は>>513のメル欄に記してある通り単なるゲスト扱いで、
深い意味や何かの伏線といったつもりで書いた訳ではありませんでした。

投稿させていただいた拙作のテキストデータの容量が101KBあり、
続きを書くとすると確実に50KBをオーバーすると思われるので、
スレの残りの容量(現時点で454KBが使用済み)の関係から
今のスレへの投下は無理そうです。
何か書けそうであれば次スレに続きらしきもの、もしくは新規の話を
投稿させてもらいたいと思います。

550:「週刊ローゼンメイデン(契約)」
08/07/18 21:38:51 fsG1YByY
けど、ぶっちゃけ流れに付いて行けません。
俺、空気読解力0だし。
「で?何ゆえ水銀燈はそんな真剣に?」
「そうねぇ…私が貴方と契約したくなったから…でしょうねぇ…」
「契約?ミーディアムとかの?」
「そうよぉ?その、ミーディアムとかの契約」
水銀燈はそう言った後、くすっと小さく笑った。
確か契約って跪いて指の薔薇にキスするんだっけ。
よーし、土下座でも何でもするぞー。
そう喜んでいたら水銀燈は。
「さあ、お父様…手をお出しくださいませ」
優雅に跪いて、そう言った。
…って、それ違う!違うそれ!
逆逆逆逆逆逆!!

551:「週刊ローゼンメイデン(契約)」
08/07/18 21:39:55 fsG1YByY
「どこも、可笑しくないわぁ。
 私が貴方をお父様と認めたからよ…それがほんの気紛れだとしても…ね…。
 それより怪しい踊りを踊るのは止めなさぁい。これは神聖な儀式なんだから」
「いや、いきなりそんな事言われても何かその…恥ずかしいし…」
「ふふっ…貴方…いえ、私を作り上げたお父様に『可愛い』とか、
 『お前は俺の理想の少女だ』とか言われたりする方が何倍何倍も、恥ずかしかったわよぉ?
 おまけにお父様は生まれたての少女をぎゅっとずっと抱擁してくださって…。
 その上、優しく慈しむように私の全身を余す所無く愛撫してくださったんですものぉ…。
 私の髪の毛一本、ドレスの刺繍一針…私の全てはお父様のものよぉ?
 私の全てにお父様との絆が詰まっているのよぉ?」
水銀燈は挙動不審な俺に一気にそう言った後、クスリと笑って。
「さあ、お父様…手をお出しくださいませ」
もう一度、催促した。
…何この羞恥プレイ。
胃がチクチクツネツネと痛いんですが。

552:「週刊ローゼンメイデン(契約)」
08/07/18 21:40:40 fsG1YByY
何もない、ただ、広いだけの空間。
最初、そんな所で水銀燈に押し倒されてたのは、覚えている。
次にあったらいいなと思ったら布団が出てきたのも、覚えている。
…なのに何故、荘厳な雰囲気と薔薇の香り漂う優雅な庭園にいるんでしょうか。
「なぁ…水銀燈…」
「どうしたのぉ?」
返ってきた満面の笑みに溜息一つ吐いて質問。
「ここ、何も無い所じゃなかった?
 後、何でそんなに性格急変したの?」
「契約と言う神聖な儀式にあのフィールドは似つかわしくないわぁ。
 それからぁ…私は元々こぉ~んな性格よぉ?」
…いぢわるなのは“地”ですか…。
「それより…契約先に終わらせなぁい?
 話が進まないからぁ」
「…そだね…話…進まないよね…」

553:「週刊ローゼンメイデン(契約)」
08/07/18 21:41:45 fsG1YByY
俺の前に跪いた水銀燈。
そして彼女に促されるまま手を差し伸べた。
彼女は俺の手を取り…。
ほんの一時、視線が合う。
水銀燈は柔らかに微笑んだ後、俺の手の甲に顔を近付け――。

光が

溢れた。

554:久保竣公@匣の中の人形
08/07/19 19:33:54 twd7itnr
コソコソ
こっちに転載するよ・・・。
誤字はゆるしてちょ

狭い


暗い


怖い



今私は箱の中にゐる。
箱の中に独りでゐる。
もう数へるのも億劫なほど時間が過ぎた。
幾年が過ぎただらうか。
此処から出たい。


555:久保竣公@匣の中の人形
08/07/19 19:34:54 twd7itnr
ふと目が覚めた。
時計の針は6時を指してゐた。
なんだ未だそんな時間か。
私はまた眠る事にした。

最近妙な夢を見た。
私は暗闇にぽつんと一人で立つてゐた。
其の向かふには白い…いや銀色の髪を生やした少女がゐた。
私は救ひを求めて少女の元へもがくが体は一向に動かない。
少女は逆を向ひて去つてゐく。
私はもがくのを止める。
なにか空虚を感じた。

私は眠れ無かつた。

556:久保竣公@匣の中の人形
08/07/19 19:35:52 twd7itnr
早起きは三文の得と云ふ。
今日は早起きして朝食を作る。
一人で住むには廣すぎる家だ。
昨日の作り置きの味噌汁を温める。

私は温まる間に新聞に目を通ほした。大正12年8月12日と日付はなつてゐた。
さふいへば夏だつたな
と独り事が出た。
季節は夏だ。元来外に出ない質の私は季節感がずれて仕舞つてゐるやうだ。

朝食を済ませて居間に向かふ。
何時もの様に書き物をする為だ。最近ネタに困つてゐる。
ふと足元に感触がある。
見てみると見慣れない箱が在つた。
体は無意識に手をのばす。まるで取り付かれたやうに。
左の手はぎうと握り拳を作つてゐる。汗がしみ出た。


557:久保竣公@匣の中の人形
08/07/19 20:20:41 MSRuuyYU
中には人形がゐた。
見るからに西洋人の顔立ちだ。
私は異人を見た事はないが明らかに日本人ではない。第一髪の毛が銀色をしてゐる。
手を伸ばす。
抱き上げる。
良く出来てゐる。
曇り一つない肌
漆黒のドレス
頭にはカチウシアを着けてゐる。鞄をもう一度みる。
中には大層豪華に装飾された螺があつた。

558:久保竣公@匣の中の人形
08/07/19 20:25:33 MSRuuyYU
手にとるがずつしり重い。
何の螺だらうか。
昔見たことがある。薇式の人形用だらう。となるとこの人形は動くのか。
螺穴を探すが見つからない。
大抵は背中に在る筈…
あつた。
小さな孔があつた。
がちあ…
刺さつた。
きり…きり…きり…
薇の音が響く。
時計の薇を巻く様に。
時計の薇を巻けば時計は息を吹き替へす。
人形も又息を吹き替へした。
顔が此方を向く。良く出来てゐる。
「やあ お人形さん」


559:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/23 02:26:41 qUtgnEwO
突然だけど英語読める人には是非紹介したかったローゼンSS
URLリンク(www.fanfiction.net)
URLリンク(www.fanfiction.net)

水銀燈なSSでかなり面白い。バトルモノ。海外二次創作サイトfanfiction.netより。
現在120個ほどローゼンSSがある

ただちよっと癖のある使われた方をしてる英単語があるので列挙すると
own = 直訳なら"所有"だが、ここでは「オリキャラ」という意味で使われているらしい。
例) I do not own rozen maidens 「このSSにオリジナルのローゼンメイデンは登場しません」

WTF,WTH = What the fuck , what the hell の略で「何ですって!?」「何なの!?」
例)Megu... You really ... WTF!? 「めぐ…あなた…どんだけぇ!」

lol = lots of laugh の略「笑」「w」 みたいな感覚

時間があったら翻訳もしてみるかもしれない

560:久保竣公@匣の中の人形
08/07/23 07:16:26 hgLxv9cv
私は人形に喋り掛けた。
別段私は人形愛者では無い。

人形は此方を向いた。
カラクリだらう。
陶器の様な肌。
さらりとした髪の毛。
美の集大成だ。
「貴方が私を目覚めさせたのかしら」
体に雷が落ちた。
人形が話したのだ。
きつと カラクリだ
きつと 蓄音機だ
きつと…
私は様々な思惑を巡らせる。
しかし其の蓄音機は間髪入れずに私に電流を流す。
「汚い部屋ね。」
確かに話してゐる。
「お前、名は。」
名前を尋ねて来た。
私は名前を答へた。
全く…人形相手に…
「不本意だけど仕方ないわね。
早くこの薔薇の指輪に誓いなさい」
さう云ふとそれ(彼女と云ふべきか)は手をさしのべて来た。
白い細い指には大層な装飾が施された指輪が填められてゐた。
無意識に体が動く。

こうして私の非日常的な受難の日々が幕を開けた。

561:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/26 11:21:55 xEYCZJB1
注意:ウルトラファイトを知ってないと全然理解出来ないネタです


ローゼンファイト!! 「早すぎた葬送曲」

翠星石と蒼星石の二人が物陰に隠れて何かやっております。

「翠星石の言う通り、挟み撃ちで一網打尽にするですよ。」
「うん。分かったよ。」

そこで現れましたはローゼンメイデン第五ドール真紅。二人が待ち構えている事も
知らず、のん気に歩いております。

「それ! 今です!」

真紅へ一気に前後から襲い掛かる翠星石と蒼星石。袋叩きであります。
さしもの真紅も一溜まりも無く倒れる。

「やった。真紅を倒したですよ。」
「それじゃあ葬式をしよう。」

真紅の葬式を始めた翠星石と蒼星石。両手を合わせ、念仏を唱え始める蒼星石ですが、
そこで翠星石が突き飛ばした。

「翠星石はクリスチャンですから十字を切るです。」
「ダメだよ。念仏を唱えて。」
「蒼星石こそ十字を切るです。」

二人は双子とは言え、それぞれ宗教観が違う様であります。双方一向に引くつもりはありません。
そして、今度は二人の殴り合いが始まってしまいました。

「姉妹で争うなんて醜いわ。」

そこで真紅が立ち上がり、二人を一網打尽。真紅の勝利であります。

562:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/28 05:42:47 PI16leAd
書き手のレベルが高すぎるうぅぅ…
これじゃ俺のSSなんて投下できない……


563:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/28 18:36:41 E87G45ex
さあはやく勇気を出して投稿するんだ

564:久保竣公@匣の中の人形
08/07/28 22:07:48 8WN/M5rS
「ああん?餡掛炒飯?」
ラヂヲから人の声がする。
「最近だらしねエな。最近だらしねエつ「。:2008/08/16(土) 14:06:59 ID:5uHzk3Re
ローゼンメイデン ハリウッドで実写映画化

ワーナーブラザースは15日、『ローゼンメイデン』の実写映画化を正式に発表した。
同作品はPEACH-PIT原作の人気漫画及びアニメ作品で、一部のファンからは熱狂的な支持を得ている。
大ヒットとなった「マトリックス」シリーズを手掛けたウォシャフスキー兄弟が、今回は何とも意表をつく作品に手を出した。
日本のアニメの大ファンで知られる彼らだが、まさかこの作品を手掛けるとは意外に感じるファンも多いのではないだろうか。
『実は2年前からこの作品にハマってしまって、自分の手で実写映画にしてみたいと思っていたんだ』
堰を切ったように、アンディ・ウォシャフスキーは興奮気味に熱く語り出した
『オタク・アニメのカテゴリに分類されて、一般受けしなさそうだという意見もたくさんあったよ。でも僕はそうは思わないんだ。
 魂を持つドール達が、愛する父に会うために悲しい運命を辿っていく、これはもう誇るべきストーリーなんだ。
 実写にすればこの作品が本来持っている素晴らしさが存分に表現できると確信しているんだ。
 だからこそ今回、周囲の反対を押し切り踏み切ったのさ。期待は絶対に裏切らない。
 哀しくて儚い、でも美しいアリスゲーム(作中でドール達が戦う行為)をお見せできると思うよ。』
物語の“主役”ともいえる“ドール”は子役にCG加工を加え人形と人間の中間のような雰囲気を出す手法を取るという。
製作の中心となるのは日本製アニメの海外配給を多数手がけてきた米国のADV Filmsで、
製作費は6億ドル、公開は再来年夏になる見通し。

【ジュンが】ローゼンメイデン実写映画化 part6【ジョセフに】
スレリンク(comicnews板)l50

565:名無しさん@お腹いっぱい。
08/08/16 20:23:54 +D+i9Rx5
yippee ki yay , mother f*cker


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