【ノーマル】ローゼンメイデンのSSスレ 8【一般】at ANICHARA
【ノーマル】ローゼンメイデンのSSスレ 8【一般】 - 暇つぶし2ch400:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/31 02:59:04 m6mf+STV
………めぐも………
・ベットを起こして窓を見ながら歌を歌っているめぐ
・看護士がめぐに郵便袋を渡す
看護士「めぐちゃんに宅配便よ」
めぐ「ありがとう」

・看護士が立ち去り
・水銀燈が姿を表す
・宅配袋から2冊の本を取り出すめぐ
水銀燈「珍しい。外の世界に興味をもったの」
めぐ「ううん。新装版ローゼンメイデンがでるって聞いたから、お父様に頼んだの」

水銀燈「新装版、ローゼン、メイデン?」
めぐ「ええ、だって私は水銀燈のミーディアムだもの」
水銀燈「全く、私は貴方をミーディアムだなんて認めたわけじゃ…」
めぐ「見て!一巻は天使さんが表紙よ」
水銀燈「えっ、どれどれ?やだぁ、二巻は金糸雀じゃないのよぉ」

・二人とも読み続ける
めぐ「私も少し載ってるわ!水銀燈のミーディアムですものね!」
水銀燈「だから、私は認めてないんだから」
めぐ「額装イラスト、欲しいなぁ(ボソッ)」

・その場を何も言わず立ち去る水銀燈

水銀燈の心情「めぐのためなら」

401:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/31 03:01:23 m6mf+STV
そんなこんなで新装版ローゼンメイデンを買った人を次々に襲っては、本を奪って行く水銀燈。
こんなんでアリスゲームが開始されます☆

皆さんに比べて、とても稚拙で単純なストーリーだと思います。
私自身、トピが独占化されてるようで不快に思ってました。
けれども、トピ主さんが独りなのが可哀相に感じたので悩んだ末、
勇気だして、稚拙な文章を書かせて頂きました。
皆さんも、この趣旨に沿った小説やコメント、
批評、賛否や苦情を書かれては如何でしょうか?
ストーリーでなくても趣旨にあってれば良いと思うので。
もっと皆さんが意見交換出来れば良いと、私個人は思います。

402:名無しさん@お腹いっぱい。
08/05/31 08:33:21 us++uNGt
色んな意味で話が見えない

403:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/02 11:59:01 8SV2V7xN
ローゼンとクロス物でオススメは?

404:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/04 18:27:22 FMG8pm4k
水銀燈と衛宮士郎の組み合わせってのがあったなぁ<クロス

405:オリ設定で投下。NGワード 「週刊ローゼンメイデン(水銀燈)」
08/06/09 22:23:21 2ti3jiZF
「週刊ローゼンメイデン(水銀燈)」
毎号3,480円 創刊号は特別価格1万円。
うん、あれだ。
創刊号が馬鹿高いけどディアゴスティーニとかそんな感じの週刊誌?だ。
毎週パーツ付の本が発売され、それを全巻コンプリートすると鞄付の水銀燈が完成するという代物。
当然俺は買い始めたが、後少しで全て揃うという時になって休刊しやがった。
多分何かの…いや、かなりの確立で金糸雀の仕業だ。
残りが鞄だけという所でぱったり休刊になる所から考えても、ヘッポコ策士の仕業に違いあるまい。

まあ、

そ ん な 事 は

ど う で も い い。

だって鞄以外は全部揃ってるんだもん。
では、早速組み立てましょうかね…。

406:「週刊ローゼンメイデン(水銀燈)」
08/06/09 22:23:49 2ti3jiZF
…えーと、記念すべき創刊号は…と…。
ふんふん…ドールの紹介を書いたうっすいテキストとローザミスティカだけ、か…。
これで1万円はお買い得なのだろうか、うーむ…。
とりあえず散財して7冊買ったが…いきなりローザミスティカ揃ったらどーなるんだ??
やる事無いのでローザミスティカを真空パックから出してみる。
と、同時に光り輝き始めるそれ。
…キラキラしててお世辞抜きに綺麗だな、これは…。
2号のゼンマイネジと組み合わせてペンダントとしてもお勧め…か…。
商売上手だな。2号は1冊しか買ってないけど。

407:「週刊ローゼンメイデン(水銀燈)」
08/06/09 22:24:12 2ti3jiZF
さて、3号は服…の、一部。
そこから30号の辺りまでずーっと、服。
いや、訂正。
たまに髪の毛(一部)とか目(右目だけ)とかも入ってるな。
しかし、7号の針と糸だけってのは、切ない物が、ある。
ンでもってその針と糸でドレスとかをチクチク縫っていくのは更に切ない物があった。
そして切ない上に当然疲れる。
ので、カボパン完成した時点で今日はお休みなさい。

408:「週刊ローゼンメイデン(水銀燈)」
08/06/09 22:24:37 2ti3jiZF
「Zzzzzzz…」
『………ココハ………』
「…ムニャ…助けて銀様…」
『…………………フフッ…オヤスミナサァイ』
「Zzzzzzz…」
『…デモ…イビキウルサイワァ…』

409:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/10 00:01:24 k0uWbU38
投下していいですか?

410:どうやら水銀燈の髪が黒くなったようです
08/06/10 00:07:23 G1+8RS2T

ねぇ、メグ

歌ってくれない?

ねぇ、メグ

髪をとかして頂戴

ねぇ

メグ・・・・・・

411:どうやら水銀燈の髪が黒くなったようです
08/06/10 00:11:31 G1+8RS2T


深夜

寝静まった病院の一室

窓を開けて歌う
一人の少女、メグ

『今日は来てくれないのかな、』

メグは歌うのをやめて呟いた

『あらぁ、歌やめちゃったの?』

気がつくと窓の外には
漆黒の翼を持った天使
水銀燈がいた

『水銀燈、今日は来てくれないかと思った』

嬉しそうにメグは言った

『そろそろ貴女が寂しがる頃だと思って来てあげたのよ』

病室の窓に腰掛けて
水銀燈は答えた


412:どうやら水銀燈の髪が黒くなったようです
08/06/10 00:13:45 G1+8RS2T

『ねぇ、髪をとかせてくれない?』

メグは窓の外を見ている
水銀燈に言った

『いいわよ、別に』

最初の方は嫌がっていたりもしたが
最近ではメグがとかしたいと言えば素直に応じるようになった


『ねぇ水銀燈』

髪をとかしながら水銀燈に話し掛ける

『どうしたの、メグ?』

『貴女の髪、とっても綺麗ね、まるでお月様の光をそのまま髪にしたみたい』

うっとりしたように
水銀燈の髪をとかすメグ

『貴女の長い黒髪も綺麗よ、きっと私が似合うような髪は自分の髪以外は、貴女の髪だけよ、』

水銀燈の細い指が
そっと、メグの髪を撫でる

『貴女に誉められるなんて、明日は雪でも降るかもしれないわね、』

メグがそう答えると

『フフフ、最近は言うようになったじゃなぁい』

と感心する水銀燈




夜が明ける

『また来るわぁ』

そう言い残し、水銀燈は
飛び去っていった

413:どうやら水銀燈の髪が黒くなったようです
08/06/10 00:16:31 G1+8RS2T

その日の夜


『こんばんわぁ、メグ』

水銀燈が病室に入ると
メグはいなかった



次の日も


その次の日も


しばらくたったある日
いつもの様に
夜、病室に行くと静かに
眠っているメグが居た

そっと、隣に腰を掛ける

そして言葉を失った


414:どうやら水銀燈の髪が黒くなったようです
08/06/10 00:19:46 G1+8RS2T

メグの病気はもう、
メグの生命を食い荒らし終わり
メグの体は最後の時を迎えようとしていた。

『ねぇ、メグ・・・』

聞こえるか聞こえないか
解らないくらいの小さな声


『貴女は私が来るといつも歌ってくれたわよねぇ』

震えた声は
徐々に大きくなる

『ねぇ、歌って頂戴、せっかく来たのに、寝たままなんてひどいんじゃない?』

水銀燈の瞳から一滴

大粒の涙が零れた

415:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/10 01:44:10 ulsfsmZ9
泣いた

416:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/10 01:53:08 zRUER3ap
>>405
糞キム死ね

417:どうやら水銀燈の髪が黒くなったようです
08/06/10 06:34:42 G1+8RS2T

夜の病室に水銀燈の
声だけが響く


水銀燈の声に気付いたのか
目を覚ますメグ

『どうしたの、水銀燈?そんなに悲しい顔しないで』

『メグ・・・』

水銀燈普段と変わらない態度のメグを見て
胸が締め付けられるようだった


418:どうやら水銀燈の髪が黒くなったようです
08/06/10 06:37:21 G1+8RS2T

『メグ、ダイジョブなの?』

水銀燈は冷静さを
保とうと必死だった

少しでも気を緩めたら
溢れだしそうだったから


『ねぇメグ、せっかく私が来てあげたのに髪もとかしてくれないの?』

普通を装うが、
それも限界に近かった

『ごめんなさい、水銀燈
少し体調が悪くって、』

メグは体を起こし、
弱々しく微笑んだ


『貴女が体調悪いのなんていつもの事じゃない、それより髪をとかしてくれない?何だか今日は貴女の傍にいたい気分なのよ』

そう言って水銀燈はメグの体に寄り添った


419:どうやら水銀燈の髪が黒くなったようです
08/06/10 06:41:24 G1+8RS2T

髪をとかしながらメグは言った

『ねぇ水銀燈、覚えてる?この前貴女、私の髪の事誉めてくれたわよね、すっごく嬉しかったわ』

本当に嬉しそうにメグは言った

『覚えてるわぁ、だってそれぐらい貴女の髪も綺麗だから・・・』

普通の会話をしてるだけでももう駄目だった、
大粒の涙が水銀燈の頬をつたって零れ落ち、
ベッドのシーツに涙の跡が何個もつくる


『そんなことより、ねぇ、歌ってくれない?貴女の歌
私けっこう好きなのよ?』

髪をとかされている間
水銀燈はメグの歌に聞き入っていた。


420:どうやら水銀燈の髪が黒くなったようです
08/06/10 06:56:10 G1+8RS2T


夜が明ける頃、メグは水銀燈にある話をした

『力を使いすぎると指輪に取り込まれちゃうって本当?』

メグの質問に水銀燈は
ぶっきらぼうに答える

『えぇそうよ、指輪に取り込まれ、最後にはドールと一つになる、』

メグの質問の先にある言葉に想像がつき胸が締め付けるような感覚になった


『じゃあ、私がもし死んじゃいそうになったら、水銀燈、貴女に力を使いきってほしいなぁ、そしたらずっと貴女と居れるでしょう?』

『何言ってるの?まるで今すぐ死んじゃうみたいな言い方しないでよ、縁起悪いわぁ、それに貴女を取り込んだりしたら私まで病弱になりそうだもの、』

水銀燈が冗談として流そうとすると

『お願い、たぶん・・・最後の、』

あまりにも真剣なメグの態度に思わず

『わかったわよぉ、でも、もし死にそうになったらよ?貴女はまだまだ死なないわぁ』

それは、メグに言ってるというより
自分に言い聞かせるための言葉だった


『なら嬉しいわ、最近は水銀燈が来てくれるから生きてるって楽しいって久しぶりに思えたから・・・』







翌日

メグの容体はやはり急変した

421:どうやら水銀燈の髪が黒くなったようです
08/06/10 07:45:00 G1+8RS2T



『メグ!!』

水銀燈が病室に入ると
メグはにっこり笑った

『じゃあ、よろしくね』

メグはそれだけ言って目を閉じた


もう助からない、
水銀燈ははっきりと感じた

『メグ、』

一言呟いたあと、
水銀燈は大きく翼を広げた


水銀燈は外に出て
がむしゃらに力を使った


まわりの景色が涙で歪んでいく
それと対照的に
メグと過ごした日々は
鮮明に思い出される


徐々に指輪から
送られてくる力が弱まってくるのを感じ、
水銀燈は思わずメグの名前を何度も呟いた

『メグ、』
最初は聞こえるかどうか
わからないような
小さな呟き

『メグ』
だんだん名前を呼ぶ声は大きくなる


『メグッッ!!』
最後には悲鳴の様な
悲痛な叫び声に変わっていった

涙で何も見えなくなり
水銀燈は泣き崩れた

意識が薄れていくなか

『ありがとう、水銀燈』

メグの声が確かに聞こえた気がした。


422:どうやら水銀燈の髪が黒くなったようです 終
08/06/10 07:47:36 G1+8RS2T



次の日


『しってる?○○○号室の患者さん失踪したらしいわよ』


『知ってるわ、前からちょっと変な子だとは思ってたけどまさか失踪するとはねぇ、』







確かに貴女は、私と一緒になったのかもしれない



貴女は、本当にこれで良かったのかも知れない

でも私は・・・

でも、貴女の歌声は、
私はもう聞けない


貴女に髪をとかしてもらうことも

胸(ここ)に居るなら答えてくれてもいいんじゃなぁい

ねぇ、


メグ





水銀燈は
病院の屋上で呟いた


寂しげな秋の風が
水銀燈のいぜんより少し長くなった

綺麗な黒い髪を揺らした





423:どうやら水銀燈の髪が黒くなったようですww
08/06/10 07:50:05 G1+8RS2T
悲劇っぽく真面目に書いた
反動で書いちまったwww
悲劇の良い話で終わりたいなら
読まない事をオヌヌメする











~舞台裏~

銀『髪染めたり今回は大変だったわぁ』

『お疲れさま水銀燈、』


銀『いや~貴女死んじゃったわねぇwww』

メグ『確かにアニメでも原作でも弱ってたけど殺すことないわよね』


銀『乳酸菌とれば一発で生き返ったのにねぇ』

メグ『ならそのヤクルト頂戴、』

銀『それとこれとは話が別よぉ、』


メグ『ちょーだいちょーだいちょーだいちょーだい!』

銀『わかったから駄々こねるのやめなさい!』

メグ『やった~』



ちょきん


ぱたん


すとん




『悲劇だけじゃ悲しいものねぇ』



おしまい

424:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/10 12:32:13 G1+8RS2T
保守

425:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/10 13:24:51 ulsfsmZ9
舞台裏ひでぇw

426:「週刊ローゼンメイデン(水銀燈)」
08/06/10 19:00:49 d4hJkCFt
鞄以外は揃った「週刊ローゼンメイデン(水銀燈)」
重要パーツ(ローザミスティカ等)は当然複数購入して万一にも備えている
一週間、仕事で疲れた体に鞭打って裁縫した結果、何とか服は出来た。
31号はお腹のパーツ…だけ。
…念のために3個買った:けど…これだけでどーしろと言うのだろうか…。
やる事も無いので理解に苦しみつつ32号の胸へと進む。
うむ、やはり胸は“ぽんよぽんよ”と柔らかい。
一時ほど弾力を楽しんだ後、33号のお尻へ。
これまた柔らかい。
仮組みと称して重ねてみる。
うむ、ナイスバデー。

427:「週刊ローゼンメイデン(水銀燈)」
08/06/10 19:01:29 d4hJkCFt
その後、腕や足の身体パーツに混じって人工精霊の申し込み用紙が…。
申し込み用紙が…入ってました…有効期限が2ヶ月前に切れてる申し込み用紙が…。
…ごめんよ、水銀燈…そしてメイメイ…。
今日はもう寝ます。
失意のまま、寝ます。
水銀燈の現状は…。
胴体手足=パーツ揃うもガランドウ。
服   =一応完成。ハンガーに掛けてる。
それ以外=ほぼ手付かず。
人工精霊=俺のポカミスのお陰で無し。
…馬鹿馬鹿、俺の馬鹿…。
枕元に輝くローザミスティカを見つつ失意のまま今日はもう寝る。

428:「週刊ローゼンメイデン(水銀燈)」
08/06/10 19:01:54 d4hJkCFt
「うーん…銀様…鞭はダメェ…ムニャムニャ…」
『…ヤク…早く…リナサイョォ、コノ…』
「ムニャ…銀様ゴメンナサイ…グー…」
『…ドンナ…ゲンガマス…ナルノカ…』
「Zzzzzzz…」
『…キョウモイビキウルサイワァ』

429:「週刊ローゼンメイデン(水銀燈)」
08/06/11 11:00:13 IgInv+10
鞄と人工精霊以外は揃った「週刊ローゼンメイデン(水銀燈)」
重要パーツ(ローザミスティカやお腹等)は当然複数購入して万一にも備えた。
いや、正確に言うなら2体は確実に作れる。
俺の体持たないと思うから作りはしないけど。
一週間の摺り合わせの結果、何とか本体は説明書通りに出来た。
次は中身(生命の糸含む)だ。
3,480円払って歯車一個とかマジ勘弁して。
まあ、綺麗な彫刻に…金メッキか?
とにかくそれ単体でも溜息出るほど綺麗だけどさ…。

430:「週刊ローゼンメイデン(水銀燈)」
08/06/11 11:01:00 IgInv+10
何とかギアボックス1を完成させ、胸部分にはめ込む
生命の糸を滑車などを介して肩からダラン。
次はギアボックス2。
これまたネジ一個とかマジ殺す。
やっとの思いで完成させてお腹に(ry
その次はやっぱりギアボックス3。
デアゴ商法にいらいらしつつお尻に(ry
生命の糸は太ももの球体間接が収まる所からダラン。
時計みたいに小さい部品ばっかりが連続で続いたので疲労と怒りがピーク
今日は胴体完成したところでお休みなさい。

431:「週刊ローゼンメイデン(水銀燈)」
08/06/11 11:01:34 IgInv+10
「ムニャ…うーん…ネジはイヤァァァ…ムニャムニャ…」
『…順調に…進んでるのかしら…』
「ムニャ…銀様歯車のメイメイマジ止めて…」
『…ふふっ…かなり、楽しみねぇ…』
「Zzzzzzz…」
『…このイビキにもだいぶ慣れたわぁ』

432:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/11 19:28:50 J4mgTRuM
ここって桃種の漫画版Rozen Maidenの
二次創作SSを投下してもいいんでしょうか?
アニメ版のストーリーに即したSSじゃないとダメですか?

433:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/11 19:34:34 J4mgTRuM
ここって桃種の漫画版Rozen Maidenの
二次創作SSを投下してもいいんでしょうか?
アニメ版のストーリーに即したSSじゃないとダメですか?

434:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/11 22:49:54 J4mgTRuM
二重投稿してすみません…orz

435:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/11 23:11:19 H/2kdCWJ
別にいいと思うぞ
確か過疎だったから統合したんじゃなかったっけ
よく覚えてないが

436:「週刊ローゼンメイデン(水銀燈)」
08/06/13 19:39:03 AS6Hk+vP
鞄と人工精霊以外は揃った「週刊ローゼンメイデン(水銀燈)」
いよいよ今回で完成だ。
お約束のように複数冊を組み合わせて植毛し、目を入れてヘッド完成。
胸、お腹、お尻を組み合わせ、生命の糸を繋げる。
繋がった生命の糸を更に手や足へ繋げる。
そして余った生命の糸を翼取り付け部分から出し、
目立たないように切って…。

「よし!マイ水銀燈完成!!」

437:「週刊ローゼンメイデン(水銀燈)」
08/06/13 19:39:27 AS6Hk+vP
いや、完成ではない。
正確には完成と言うべきではない。
だってローザミスティカ、まだ水銀燈の体外にあるもん。
それに服着せてないし。
しかし、時刻は午前1時。
お仕事今日の午前7時30分から。
更に付け加えると明日は日曜でお仕事お休み。
ちょっと勿体無いけど起動は日曜にして、お休みなさい。

438:「週刊ローゼンメイデン(水銀燈)」
08/06/13 19:39:53 AS6Hk+vP
「ムニャ…銀様銀様…ムニャムニャ…」
『やっと、完成ねぇ…』
「ムニャ…銀様と…アハーン♪」
『…マエストロとまでは行かないけど中々だったわよぉ?』
「Zzzzzzz…」
『…よろしくねぇ、イビキの大きなマスターさぁん』

439:432
08/06/14 13:58:52 ohTRqW2J
>>435
どうもです。
書きあがったら投下させてもらいます。

440:「週刊ローゼンメイデン(水銀燈)」
08/06/14 19:41:43 Ift/qAUQ
鞄と人工精霊以外は揃った「週刊ローゼンメイデン(水銀燈)」
いよいよ飾りっぱなしだったローザミスティカその1を水銀燈に入れる。
…をを、吸い込まれるよーに入って行く。
次にペンダントの役目から開放されたネジを背中のネジ穴に突っ込んで…。

キリキリキリ…。

をを、説明書のように巻かなくても巻かれて行く。

…キリキリキリ。

緩慢に起きる水銀燈はしかし、俺をじっと見て、言った。

「…ドレス、先に着せなさいよぉ…」

441:「週刊ローゼンメイデン(水銀燈)」
08/06/14 19:42:21 Ift/qAUQ
俺はその願いを無視し、水銀燈を後ろから抱きしめた!
「ち、ちょっといきなり何するのよお馬鹿さぁん!」
ぢたばた暴れる水銀燈を無視してモフモフ。
ひんやりしたボディがゆっくりと温まっていくのを堪能する。
「銀ちゃんマジ暖ったけーwww翼もフワフワ、マジたまんねーwwwwww」
「…い、いいから放しなさいよぉ!」
嬉しさのあまり芝を生やす俺。
動き始めたローザミスティカに戸惑っているのか真っ赤っかな水銀燈。
むふー…耳の先から足の小指までほんのりピンク色なのは何かこう…。

そ そ り ま す な 。

「…い、いいから…そ、そろそろ放しなさいよぉ…」

や だ 。

442:「週刊ローゼンメイデン(水銀燈)」
08/06/14 19:42:45 Ift/qAUQ
結局30分位モフり続けた結果、水銀燈はゼンマイが切れたのか、真っ赤になってダウン。
俺はこの隙にとドレスを着せる事にした。
ではまずカボパンからなんだけど…何この背徳感…。
とてつもなく悪い事しているようでドキドキしますぞ!?
越えてはいけない一線を越えてしまいそうでワクワクしますぞ!?

『…そのために…私を買ったんじゃないのぉ?』

…ぬ?
何?この声。
この声、何?
頭に…っつーか心に響くこの声何?

『いい加減気付きなさいよぉ…このお馬鹿さぁん…』

443:「週刊ローゼンメイデン(水銀燈)」
08/06/15 21:34:10 4aZ80sLu
「あー、やっぱりお前かー…」
ドレスを着せている手を止め、動かない水銀燈を見つつ言う俺。
『…やっぱりって何よぉ…』
動かないはずなんだけどちょっと機嫌が悪くなったように見える水銀燈の声が頭に響く。
よーし、そんなに可愛いんだから拗ねるな拗ねるな。
『拗ねてなんか無いわよぉ…』
あらまあ…何か照れて困って赤面してませんか?水銀燈さんや…。
『…そ、それはぁ…あ、貴方がお馬鹿さん過ぎるからよぉ!?』
まあとにかく服をちゃんと着せましょうかね。
下着だけってのは刺激強過ぎるし。

444:「週刊ローゼンメイデン(水銀燈)」
08/06/15 21:35:03 4aZ80sLu
ドレスを着せ終えた水銀燈を見る。
まずはとっても綺麗な顔。
ほんのりピンク色。
うむ、キスしたい。
ペロペロ頬を舐めまわしたい。
『…お、お馬鹿さぁん…』
次はボディ+ドレス。
流石は薔薇乙女。
どこに出しても恥ずかしくないボディラインにゴシック調ドレスが良く映える。
さっきはこのボディを抱きしめてたんだよなぁ…。
まだ足りん!もっと抱きしめさせろ!!
『…は、恥ずかしいじゃないのよぉ!』

445:「週刊ローゼンメイデン(水銀燈)」
08/06/15 21:35:35 4aZ80sLu
翼+手足。
そんなに大きくない翼は飛べそうに無いけどとってもラブリー。
細っこい手足もとってもキュート。
差し出されたら手と言わず足と言わず全身にキスしたい。
そしてそのまま抱きしめたい。
…今回は言わないの?
『…お、お馬鹿さぁん!貴方が恥ずかしい事ばっかり思うから混乱しちゃったのよぉ!!』
そして心!
間違う事無き純真無垢な乙女!!
気高き騎士の如き精神と純情可憐な少女が同居するはこの世の至宝!!
ビバ、マイラブスイート水銀燈!!
『…い、幾ら何でもそれは褒め過ぎよぉ…』

446:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/15 22:09:52 d0qOH5ua
妄想爆発ワロタ

447:「週刊ローゼンメイデン(水銀燈)」
08/06/16 22:33:00 ApDHDmLr
まあ、それはさて置きドレス着せ終わったし再起動しましょうかねぇ…。
さて、…と…ネジどこへやったっけ?
『…い、今は巻かないでよぉ?』
何故?
『…あ、貴方が恥ずかしい事ばっかり言うから…。
 あ、貴方の事まともに見れなくなっちゃってるのよぉ…』
そんなもん当然、無視します。
『馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿!このお馬鹿ぁあああぁぁぁーっ!!』

448:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/16 22:33:23 ApDHDmLr
何やら喚き声が頭の中に響くがそれを無視して水銀燈を抱き上げ背中の穴にネジをインサート。
キリキリ…と自動巻きされるはずだけど何故か動かない。
さては組むの失敗してジャンクになっちゃった!?
『誰がジャンクよこのお馬鹿ぁ!恥ずかしいから動きたくないのよぉ!!』
何この我侭。
俺は貴方をそんな風に育てた覚えは無い。
育てられた覚えも無いだろうけどやっぱりそんなの関係無い。
巻き巻き…巻き巻き…。
…そう言えば俺の事見れないって言ってたよな?
見なくて済むよう後ろから抱きかかえて巻き巻き…巻き巻き…。
うっはwww水銀燈の胸マジやーらけーwwwwww
興奮して芝を生やしつつ巻き巻き巻き巻き…。

449:「週刊ローゼンメイデン(水銀燈)」
08/06/16 22:33:45 ApDHDmLr
『…貴方って本当にお馬鹿さんよねぇ…感心しちゃうわ…』
巻き終わってるんだから喋れ。横着するな。
『だからぁ…その…恥ずかしい…っての…理解できる?』
勿論。
だったら…とか響きだす声を無視して思う。

そんなお前も大好きだ。

…?
おや?
…何か…変ですぞ?
反応が無くなりましたぞ!?
緊急事態発生ですぞ!!

450:「週刊ローゼンメイデン(水銀燈)」
08/06/16 22:34:50 ApDHDmLr
>>446
Youも妄想炸裂しちゃいなYo!!

451:「週刊ローゼンメイデン(水銀燈)」
08/06/17 19:04:36 366vH3Ry
姉さん!緊急事態です!!
「…は、恥ずかしすぎてどうしていいか分からなくなっただけよぉ!」
おお、再起動成功!
「まったく、このお馬鹿さんは本当に…」
よしよし、膨れるな。綺麗な顔が台無し台無し。
そう思いつつ頭を撫でてるとしばらく固まった後、膝の上に座りましたぞ?
「本当に、貴方ってばお馬鹿さんねぇ…良い意味、悪い意味両方で…」
溜息を吐きながら俺に体を委ねる水銀燈。
俺はそんな彼女の頭を再び撫で撫で。
「ねえ…」
ん?

452:「週刊ローゼンメイデン(水銀燈)」
08/06/17 19:05:16 366vH3Ry
「…どうして私を…買ったの?」
それは当然聞かれると思ってた。
だから用意していた事を言う。
「まあ、いろいろあるけど綺麗なお人形…ってのが一番目。
 二番目はその人形が自分の意志で喋って動くから」
「綺麗なのは当然としてぇ…本当にそれだけで買ったの?
 他に隠してる事あるんでしょ?人には言えないコトしたいとかぁ…」
即聞き返してくる水銀燈。
しかし悲しいかな、彼女の期待に沿うような事は全くこれっぽっちも考えてない。マジで。
でも、そう言っても水銀燈の目にはますます疑惑の色が膨らむわけで。
人には言えないコト=エッチなコト=ぶっちゃけ性交渉したい…と言って欲しそうな顔してるわけで。

453:「週刊ローゼンメイデン(水銀燈)」
08/06/17 19:06:02 366vH3Ry
「お、おおおおお馬鹿さぁんッ!誰もそんな事思っちゃいないわよぉッ!!」
切れられたので逆に聞く。
じゃあ、どう答えて欲しかったの?
そしたら水銀燈、真っ赤になって再び無反応。
…乙女心は複雑だね…。

454:「週刊ローゼンメイデン(水銀燈)」
08/06/17 19:07:48 366vH3Ry
再び固まった水銀燈を後ろから抱きしめて椅子に座る。
外を見る。
馬鹿みたいに良い天気。
よっぽどの馬鹿以外はお外ではしゃぎたくなるほどの良い天気だ。
ひとしきり田圃なぞを眺め終えたので膝の上に座りこちらを見ている水銀燈を一撫で。
「…俺が水銀燈を買った本当の理由は人を信じる事が出来ないからなんだ」
「…人を信じる事が出来ない?…何それ…馬鹿みたぁい…」
人を信じる事すら出来ないのに、人形を信じれるのか?
そう言いたげな水銀燈に苦笑する。
「…俺…小学校の時にさ…スケープゴートで晒し者にされたんだ…。
 スカート捲りを流行らせた真犯人として…俺は全く係無いのに…さ…」

455:「週刊ローゼンメイデン(水銀燈)」
08/06/17 19:09:42 366vH3Ry
「はぁ!?何それ!?貴方って本当のお馬鹿さんね!違うなら違うって言えばいいじゃないのよ!
 黙って嘘の罪を受け入れるのが格好良いとでも思ってるのぉ!?貴方って本当に最低の馬鹿ね!!」
…と、何故か激怒して剣を振り回してる水銀燈に苦笑い。
彼女は俺が苦笑いしたのに怒って更にヒートアップ。
…本当に純真だねぇ、この子ってば…。
「何ヘラヘラ笑ってるのよぉ!?真面目に答えなさいよぉ!!」
「いや、違うって言っても俺、その先生に嫌われてたし…。
 それに、小学生が夜遅くまで職員室に一人立たされて…。
 挙句の果てにぶん殴られてまで抵抗できる訳無いじゃないか」
「それでも違うなら違うって言いなさいよぉ!」
「じゃあ、逆に聞くけどさっき俺が抱きしめた時…何で本気で抵抗しなかったの?」
気楽に聞いた。
そして俺は後悔した。
この時の水銀燈の表情の変化を記録する術を持ってなかった事に。

456:「週刊ローゼンメイデン(水銀燈)」
08/06/17 19:10:12 366vH3Ry
「だ、だってほらぁ…あれよぉ?…マスター…ううん…あの、そのぉ…。
 …み、みみみミーディアムになるかもしれない人間、傷付ける訳には行かないじゃなぁい…」
ほんにもーこん子はめんこいのぅ…。
再び抱きしめて頭撫で撫で。
「な、何するのよぉ…話はまだ終わってないわよぉ…」
「小学生にとっちゃ先生ってミーディアム…いや、親みたいなもんなんだ。
 だからそいつがどんな奴でも黒と言ったら黒。白と言ったら白」
「貴方ってば本当にお馬鹿さんねぇ…」
ため息を吐いて苦笑する水銀燈に微笑み、言う。
「そんな事が繰り返しあったんで人を信じる事が出来なくなりました。
 でも、それでは寂しいのでずっと信じる事が出来る何かを探していました」

457:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/17 19:10:48 366vH3Ry
言い終わった俺を水銀燈は真剣な目で見、口を開く。
「だから、この水銀燈をずっと信じたい…貴方はそれを本気で言っているのね?」
「もちろん」
肯く俺に水銀燈は溜息を吐いた後、最高の笑顔を見せてくれた。
「私は週刊ローゼンメイデンシリーズの第1ドール、水銀燈。これからよろしくねぇ「」」
「こちらこそ。よろしく、水銀燈」
俺は水銀燈が差し出した手を優しく握った。

458:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/18 01:08:40 piOYwCvN
>>450
俺には出来ねーぜ!Yeah!
そしてちょっと予想外の展開にビビったZe!

459:「週刊ローゼンメイデン(水銀燈)」
08/06/22 17:45:58 VwHpu/3z
「まあ、それはそれでさて置き…」
握った手を離した瞬間、水銀燈から笑顔が消えた。
あれ?俺達良い雰囲気じゃなかった?
「…メイメイが居ないのは知ってるけどぉ…鞄は…どこぉ?」
「無い」
即答する俺に水銀燈は目をパチクリさせた。
「…え、えっとぉ…銀ちゃんよく聞こえなかったわぁ…」
「もう一度言うけど、無い。鞄が…」
始まる時に休刊になった。
それを言う事は出来なかった。
水銀燈が先ほど振り回してた剣の切っ先を俺の首に押し付けたからだ。

460:「週刊ローゼンメイデン(水銀燈)」
08/06/22 17:46:23 VwHpu/3z
「あ、貴方って本当にお馬鹿さぁんッ!
 いったい私にどこで寝ろって言うのよぉッ!!」
言われて考えてみる。
布団。
水銀燈に手を付ける前日、寂しいからと飼い犬(黒レト)を抱いて寝たので毛だらけ。
ここに寝かせようものならドレスが酷い事になるのは目に見えてるので却下。
椅子。
一応埃等は積もってないけどこれで寝るのは無理。
水銀燈がこれに腰掛けて居眠りしているのは絵になると思う。
思うんだけど、水銀燈が凄い目で睨んでるから没。
それ以外は…と…。

461:「週刊ローゼンメイデン(水銀燈)」
08/06/22 17:47:16 VwHpu/3z
「…私に情熱を注ぐのはいいんだけどぉ…後の事…考えてるぅ?」
疲れた溜息を吐かれたので、俺は微笑んで言った。
「考えてるわけ無いじゃないか、このお馬鹿さんめ」
「か、す…す、すす少しは考えなさいよこのお馬鹿ぁああぁぁーッ!!」
思いっきり剣でビンタされました、はい。
ミーディアムになるかもしれない人間、傷付ける訳には行かない。
そう言ったのどこの誰だよ?
そんな事を考えながら俺は意識を失った。
これってアレだね。
殴られると同時に水銀燈にドレインかけられたね、間違いなく。

462:「週刊ローゼンメイデン(水銀燈)」
08/06/22 17:47:52 VwHpu/3z
こりゃ、仕事首かもしれんね。
何とか電話機まで這って行って明日仕事休むと伝え、ぶっ倒れた俺の正直な感想。
こんな時まで仕事の事を考えるオレサマ、マジでワーカホリック!
そして突き刺さる水銀燈の冷たい視線!!
「この水銀燈を無視して何するかと思えば…そんなくだらない事したかったのねぇ?」
何だとメガトロン!
「許さなぁい…そう言ったのよぉ?お馬鹿さぁん…」

463:「週刊ローゼンメイデン(水銀燈)」
08/06/22 17:48:17 VwHpu/3z
「怒っちゃ駄目だぞ?血圧上がっちまうから」
今度はこちらが溜息を吐く番だ。
ただ、水銀燈が俺の喉に剣の切っ先を押し付けるのは予想外だったが。
「それでぇ?」
良いから続きを言え。
でも、変な事言ったらこのままサクッと逝く。
そんな顔の水銀燈。
それに答えたのは。
「…乳酸菌…採ってる?」
間の抜けた俺の声だった。

464:「週刊ローゼンメイデン(水銀燈)」
08/06/22 17:49:15 VwHpu/3z
「言われてみれば…乳酸菌…採って、無いわねぇ…」
「ははッ、すぐ用意いたしますです、はい」
すぐ用意しろと視線で命令する水銀燈に、慌てて返事するけどへたり込んだままの俺様、マジ情けない。
それより情けないのは…水銀燈、お前だあっ!
雨の日に捨てられた泥だらけの子犬のような視線勘弁してくれませんか?
「…ち、ちょっとぉ…何で動かないのよぉ…」
「水銀燈に叩かれ吸われて力が出ない…マジで」
「…私の乳酸菌はぁ?」
「力が出るまで待って」
指をくわえ、心底寂しそうに聞く水銀燈に答える。
お前ってばそんなに乳酸菌食品が好きなのか?
いや、知ってたけどさ…。

465:「週刊ローゼンメイデン(水銀燈)」
08/06/22 17:50:01 VwHpu/3z
「まあ、鞄は次の休みにどーにかするとして…。
 とりあえずの寝床…適当な空き箱にタオル詰めたので良い?」
ヨーグルトにミックスフルーツを混ぜつつ聞く俺。
「もう、それでいいわぁ…」
これ、水銀燈さんや。近づき過ぎです離れなさい。
素っ気なく答えても目が輝いてる状態では雰囲気ぶち壊しですよ?
こーら、つまみ食いしようとするなって…いいから皿に盛るまで待てってばよ。
「いいじゃなぁい…生まれて初めての乳酸菌なんだからぁ…」

466:「週刊ローゼンメイデン(水銀燈)」
08/06/22 17:50:26 VwHpu/3z
ヨーグルトを美味そうに。
本当に美味そうに食う水銀燈と、それを眺める俺。
「美味い?」
「ふふっ…食べてみるぅ?」
「それは水銀燈のだからだ~め」
「このお茶目さんめぇ~」
言って俺のおでこを突付く水銀燈。
これだよ、これこれこれぇええぇぇっ!
この伝説の黄色い救急車がすっ飛んで来そうな甘ったるい空気ッ!
これを堪能したいがためにドール買ったんだよッ!!
「…本当に、お馬鹿さんねぇ…」
いや、そこで素に戻って呆れないで。

467:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/22 18:01:26 VwHpu/3z
      そんな>>458に手紙が届きますた・・・
          _____
         / ヽ____//
         /   /   /
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       / YOU巻いちゃいなYO /ヽ__//
     /               /  /   /
     /  人工精霊一同    /  /   /
    /   ____     /  /   /
   /             /  /   /
 /             /    /   /
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/   /   /

468:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/23 03:01:15 MtKn6r29
www

469:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/24 02:16:35 2oOEBHJF
なんか俺、勧誘されてるW

470:貼り付け
08/06/26 23:16:53 /x7kghUq
クラスメイト「あれー柏葉さん、いい指輪してるね。ちょっと見せてよ」

     巴「さわらないでぇ~(発狂)」

    教室 ざわざわ 「今のなにー」「指輪くらいでね~」
       「桜田から貰ったんじゃねw」「あ~図書館で仲良しだもんね~w」

    梅岡「柏葉、規則はちゃんと守ろうな。先生が授業終わるまで
       預かっとくよ」

     巴「いえ、これは大切なものなんではずしませんから」

    梅岡「桜田と仲良しだもんな。大切な友達から貰ったものは、
       思いがこもっていて、とても大切だと先生も思うけどここ
       は学校だからな。今は外そうな」

    教室「やっぱりね~」「あいつら付き合ってんじゃねえの?」

     巴「あの先生、何か勘違いされてませんか?」

    梅岡「何かな柏葉、言いたいことは何でも先生に言いなさい」

     巴「では。先生、わたしは桜田君みたいなオタひっきーじゃなくて、
       店長一筋です」


471:貼り付け
08/06/26 23:18:24 /x7kghUq
梅岡「・・・店長ってまさか、あの駅前の雇われのことか、柏葉?」

 巴「はい、そうです」(きっぱりと宣言)

梅岡「・・・あいつは高校の時、先生の同級生だったんだ。あいつほど不真面目な
   奴はいない。先生は不真面目な奴は大っきらいだ。柏葉、あいつとは別れなさい」

 巴「何で先生にそんなこと言われなきゃならないんですか?私たちは本気で愛し合っています」

梅岡「柏葉、先生はあいつがどれだけ多くの女をたぶらかしてきたか知っているから言ってるんだよ。
   先生は生徒が不幸な目に逢うのに耐えられないんだ。分かってくれるか、柏葉」

 巴「先生は店長のこと嫌いだから、そんなこと言うんです。いい加減なこと言って、証拠でもあるんですか?!」

梅岡「あるさっ!先生はあいつに彼女を3回も取られたんだ!そしてあいつは欲望を発散したらすぐに次の女に
   手を出した。先生は許さない、、、今度は柏葉まで俺から奪い取ろうというのか、、、」


472:貼り付け
08/06/26 23:19:33 /x7kghUq
生徒「おいおいマジかよ」「柏葉さんって」「先生なんか燃えてねえか?」

梅岡「とにかく柏葉、もうすぐ授業だから放課後に職員室に来なさい。いいね」

 巴「構いませんが、先生が何を言おうと私の気持ちは変わりませんよ?」

梅岡「先生は信じているよ柏葉。柏葉がいい子だってことは、先生が一番知ってるからね」

  ラプラス「おやおや梅岡先生、柄にもなく取り乱してどうしちゃったんでしょう。
       それに、俺から奪い取るって、フフフ。それに先生が一番知ってるって、、、」

  くんくん「くん、くん、くん、先生の背後から事件のニオイを感じるの。これはきっと何かあるの!」

  ラプラス「流石は私のくんくん、鋭いね、フフ。これはもしかすると、、、おっと、もうこんな時間。
       この先の筋書きを兎風情に語る術など、一体どこにありましょう。」

  くんくん「ラプラスは何か知っているのっ!」

  ラプラス「フフフ、くんくん。君だけには続きを教えてあげるよ、私たちの愛の語らいの後で。
       如かして、次の扉を見つければ、開けたくなるのが人のサガ。この扉の向こうには何があるのやら、、、」

  くんくん「扉の向こうで梅岡先生と巴ちゃんが体育倉庫にいるニオイがするの、くんくん」

  ラプラス「相変わらず鋭いね、私のくんくん。・・・もう時間がない、私たちも先に行こうとしましょう。
       それでは皆さん、ごきげんよう」

  くんくん「次回も、よろし~くんくん」


473:貼り付け
08/06/26 23:22:04 /x7kghUq
ちなみにBAD END は

クラスメイト「あれー柏葉さん、いい指輪してるね。ちょっと見せてよ」

     巴「さわらないでぇ~(発狂)」

    教室 ざわざわ 「今のなにー」「指輪くらいでね~」
       「桜田から貰ったんじゃねw」「あ~図書館で仲良しだもんね~w」

    梅岡「柏葉、規則はちゃんと守ろうな。先生が授業終わるまで
       預かっとくよ」

     巴「いえ、これは大切なものなんではずしませんから」

    梅岡「桜田と仲良しだもんな。大切な友達から貰ったものは、
       思いがこもっていて、とても大切だと先生も思うけどここ
       は学校だからな。今は外そうな」

    教室「やっぱりね~」「あいつら付き合ってんじゃねえの?」
       ははは くすくす ひそひそ ははは くすくす ひそひそ・・・・・・・・・・・・・・

     巴「ぅえろうぇろうぇろ~おえ~」

    教室「うわ~吐いた~」「きたね~」

こうして、巴も不登校になりますた。めでたしめでたしww


474:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/29 19:18:26 rxQ7G7uF
保守

475:「週刊ローゼンメイデン(水銀燈)」
08/06/30 00:08:52 EMgLy17U
「お腹も膨れたし今日の寝床も安心ねぇ…」
空になった食器を見ながら幸せそうに言う水銀燈。
目まで細めちゃってまぁ…。
これで『にゃー』と鳴いたら猫ですよ?
しかし水銀燈は『にゃー』と鳴く代わりにちろりと唇を舐め、
「これでぇ…この家の案内してくれたら言う事無しよぉ~?」
そう言って更に目を細めた。
妖艶である。
だけど…ああ、だけどっ!
ほっぺにヨーグルトが付いてたりするので雰囲気ぶち壊しである。
「よしわかったお姫様。早速案内致しましょう」
水銀燈をお姫様抱っこしつつ、ほっぺのヨーグルトを味見。
うむ、旨い。
そして、トマトみたいに真っ赤になった水銀燈。
とても、可愛い。
「…お、お馬鹿さぁん…」

476:「週刊ローゼンメイデン(水銀燈)」
08/06/30 00:09:20 EMgLy17U
黄色い救急車を呼びたそうにしている母者を横目に案内開始。
まずは、台所。
「…今、居る所じゃないのよぉ…何がしたいのぉ?」
「カアサマに水銀燈の紹介を…」
言われて母者を見る水銀燈。
一度俺を見、もう一度母者を見て。
「私は週刊ローゼンメイデンシリーズの第1ドール、水銀燈。
 この人間に作られたお人形よ。よろしくねぇ」
うむ、ナイス猫かぶり!
「黙りなさい!」

477:「週刊ローゼンメイデン(水銀燈)」
08/06/30 00:09:41 EMgLy17U
まあ、お約束の洋物ダッチネタはさて置き次は店場に移動。
「…服屋…なのねぇ…。
 …でも…年を召したご婦人方向けばーっかりよぉ?」
私のは無いのか?と、少々呆れ気味の水銀燈。
あるにはあるがと陳列棚の一角を指差す俺。
視線を辿った水銀燈は…真っ赤になって、切れた。
「…ば、ばばばば馬鹿じゃない!?貴方本当に本当に馬鹿じゃない!?
 どこをどうしたらこの水銀燈に幼稚園の服やブルマを着せたりなんて事を考え付くのよぉ!
 …何ニヤニヤしてるのよぉ!?何、頭の中で着せてるのよぉ!!」
いや、似合うと思うんだけど…。
「この、お馬鹿ーッ!!」

478:「週刊ローゼンメイデン(水銀燈)」
08/06/30 00:11:07 EMgLy17U
「…貴方の母親に幼稚園の服を押付けられた時は眩暈がしたわよ、本当に…。
 …で?…次はどこを案内してくれるのよ?」
…庭…と、呼べないような、庭ですな。
雑草は伸びてないから良いんだけど…。
「…言えてるわねぇ…庭園…って、雰囲気は微塵も無いしぃ…」
元々芋畑にする予定で耕したからなぁ…。
ほら、よく見れば植わっている所が畝上に…。
「…芋…ねぇ…庭師でも雇えばぁ?」
暗に双子も買えと言う水銀燈。商売熱心な奴め。
しかし、そんな金なぞ欠片も無い。全部水銀燈につぎ込んだしな。
「お馬鹿さんねぇ…」
「…何なら水銀燈がしてみる?庭師」
「…黒薔薇だらけの手入れされていない庭がお望みならして良いわよぉ?」
よしわかった勘弁してくれ。
「…ちょっと…それ、どーゆー意味よぉ…」

479:「週刊ローゼンメイデン(水銀燈)」
08/06/30 00:11:46 EMgLy17U
さて、一通り案内は終わったわけだが何故かお姫様はご機嫌斜め。
「犬小屋の案内とか良いわよぉ…見たらわかるしぃ…。
 それよりも…何であの建物は案内しないのよぉ…」
小石蹴飛ばしてたりする水銀燈の指差す先に佇むのはちょっと大き目の倉庫。
俺は溜息を吐いて、言った。
「ジャンクで中がいっぱいだから」
「…ジャ!?」
目を大きく見開いた水銀燈は血相を変えて倉庫の入り口へ走っ…。
…走って行こうとして、こけた。盛大に。顔面から。
「…ったぁ…い…」
「よーしよし。ジャンクッつっても今がそんなだけだ。
 お前含めて捨てたりしないから落ち着け」
真っ赤になってる水銀燈を抱き上げ…何故真っ赤なの?
「…あ、貴方が“お前”なんて言うからよぉ…」
涙を溜めたままこっちを見上げる水銀燈。
…さっきの殺気が消えた可愛いお嬢ちゃんですな、まるで。

480:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 21:27:36 2JFmZtBs
突然ですが、人形板や漫画板のスレの話題にインスパイアされて作ったSSを投下します。

「草笛みつの遭遇」
-今日も仕事を終えて帰宅する人形愛好家の草笛みつであったが・・・-

みつ「ただいまー!仕事終了~って、そういえば今日もカナはジュンジュンの家でお泊りか・・・
    ジュンジュンの家で大事な用があって今日も帰れないらしいけど・・・。
    あれ・・・部屋の鏡が・・・」

URLリンク(rozen.no-ip.org)

雪華「ギチギチギギチギチギ・・・・ミツケタミツケタ、金糸雀のマスター・・・」
みつ「あぁ・・・・なに・・・これ・・・」
雪華「こんばんは。私はローゼンメイデン第7ドール......雪華綺晶。」
みつ「・・・・・」
雪華「あなたのことを鏡の中から見ていました・・・。
    どうやら人形愛好家のようですね・・・。金糸雀のマスター・・・。
    可愛らしい趣味.....ですね・・・。」

481:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/01 22:38:03 X+t0C07K
>>480
やべえ…この雪華綺晶マジでやべえよ…(((( ;゚Д゚))))

482:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/02 00:43:36 Vu3UqG8N
PEACH-PITの漫画原作のSSです。

483:雪華綺晶はここにいる 1/38
08/07/02 00:46:12 Vu3UqG8N
病室に備えられたベッドの上で、柿崎めぐと水銀燈は身を寄せ合って眠りに就いていた。
時刻は午前2時を過ぎ、部屋は夜の闇に満たされている。
静かに寝息をたてるめぐが唐突に目を覚ましたのは、何かに呼ばれたからだ。
鼓膜を震わせる人の声ではなく、心に直接語りかけるような不思議な声がめぐを呼んでいる。
めぐは上半身を起こし周囲を見やったが、声の主はどこにも見当たらない。
奇怪な現象に不安を覚えためぐは隣の水銀燈を一瞥したが、彼女はこの異変に何ら
反応することなく、それまで通り眠ったままだった。
めぐがどうするべきか迷っていると、不意に呼び声は止み、代わりに新しい変化が訪れる。
部屋に設えられた洗面台の鏡が、仄かに光り始めたのだ。
めぐはそっとベッドから降りるとスリッパを履き、鏡の前へと向かう。
まるで水面のようにいくつもの波紋が鏡面に広がり、鏡自体が光を放っている。
めぐは鏡の前に立っていたが、鏡に映るのはめぐの姿ではなく、白い少女の姿だった。
右の眼窩から咲く白い薔薇。金色の瞳をそなえた左の目。淡い桃色を帯びた白髪に純白のドレス。
雪華綺晶は微笑を浮かべ、穏やかな眼差しをめぐに向けている。
あまりに幻想的な姿の少女に、めぐは息を呑んで見つめ返す以外にない。

「死に魅入られた飛べない小鳥。黒薔薇のお姉さまのお友達」

鏡から声は響かない。代わりに、鏡の中の雪華綺晶が口を動かすと、彼女の声がめぐの心に
流れ込んでくる。とても清らかで澄んでいて、乾いた心にすっと深く浸み込むような声だった。

「あなたは……誰? 私を迎えに来てくれた天使なの…?」

半ば反射的に胸の前で右手と左手を組み合わせるめぐに応える事無く、雪華綺晶は
笑みを浮かべたまま瞼をやわらかく下ろす。

「貴女は可哀想な小鳥。
 大空を舞うことも、死ぬことも許されない籠の中の鳥。
 私はそんな貴女を救いたい」

瞼を上げ、金色の瞳がめぐを捉える。その眼差しは慈愛に満ちているが、大切な何かが
致命的に欠け落ちている。眼前のめぐを見ているようで、実は誰も見ていないかのような
どこか空虚で奇妙な視線。

「救う……? 私のことを救ってくれるの? 白い天使さん」

「夢を見せてあげる。
 生の痛みも、死の苦しみもない楽園へ連れていってあげる。
 幸せな夢に抱かれて安らかにお休みなさい」

そんな雪華綺晶の囁きに、めぐは目をしばたたかせる。
心臓に障害を抱えて生を享けためぐは、世界に絶望しきっていた。家族は彼女の前から去り、
将来も夢も希望もなく、外を歩くだけのささやかな自由さえも許されない病床のとりこだ。
非情なこの世を見限っていためぐは、自分自身の存在を消去する"死"に一縷の希望を見出し、
もはや自分に残された救いはそれ以外にないとまで考えていた。
しかし目の前に突然現れた白い天使は、それまで思いもよらなかった別の救済をめぐに
もたらそうとしている。
彼女の言うような理想的な世界へと導いてくれるというのなら、めぐとしては是非もなかった。

「そう…。素敵なお誘いね」

陶然と微笑むめぐをいとおしげに見つめた雪華綺晶は、未だにベッドの上で眠り続ける水銀燈に
視線を移した。つられてめぐも水銀燈を見やる。

「お姉さまと指輪の契約を」

「水銀燈と…?」

484:雪華綺晶はここにいる 2/38
08/07/02 00:48:26 Vu3UqG8N
問いかけるめぐに雪華綺晶は鷹揚に頷き、目を閉じたまま自身の左手に優しく右手を添える。

「黒薔薇のお姉さまの指輪を、貴女の左手の薬指に。
 それが叶ったときに、迎えに上がります」

そう言い残して、雪華綺晶はめぐの制止の願いも聞かず、鏡の奥深くへと消えてしまった。
鏡は輝きを失い、部屋は元通りの暗闇と静寂に包まれている。
現実味を欠いた出来事に、めぐはしばらくの間鏡の前から動くことができなかった。



翌日。
窓から陽光が射す病室のベッドで、めぐはさも幸せそうに微笑みを浮かべていた。
水銀燈は壁に背を預け、そんな様子のめぐを冷ややかな面持ちで見つめている。
水銀燈の表情はいつも通り不愛想もあらわだったが、その実内心ではめぐの状態を
いぶかしんでいた。めぐが夢見がちであるのは今に始まったことではないが、
今日の彼女はいつも以上に楽しげで想像の中に浸っているように水銀燈は思った。
めぐも水銀燈が自身の変化に気づいたことを知り、悪戯めいた笑みを送る。

「ねえ水銀燈。知りたい? どうして私が笑っているのか」

「別に。興味ないもの」

心を見透かされたことが屈辱で、水銀燈は反射的にそっぽを向くが、
それでもやはり好奇心には抗えず、ちらちらとめぐへの視線を送ってしまう。
そんな妙に子どもじみた様子の水銀燈にめぐは苦笑すると、満を持したように
極上の笑顔で昨晩の顛末を説明し始めた。

「夜にね、天使がやってきたの。二人目の天使」

「……天使…? 二人目…?」

思ってもみなかっためぐの言葉に、水銀燈は眉を顰めた。
めぐは昨夜の出来事を、必要以上に叙情的に話す。
自分を呼ぶ声が心に響いたこと。鏡が光り、その中に白い天使が立っていたこと。
彼女がめぐを夢の世界へ導いてくれること。
そのためには水銀燈と指輪の契約を交わすことが必要であること。
歓喜もあらわに話を続けるめぐとは対照的に、水銀燈の紅い瞳は怒りに満たされていった。
めぐの話の内容から考えるに、ローゼンメイデンシリーズの誰かがめぐと話したことは明らかだ。
水銀燈を激怒させるのは、ベッドで人間と共に眠る彼女を覗き見て、あまつさえ自身を
無視し、めぐと話を続けていたという点である。
人間など薔薇乙女が動くために必要なエネルギー源に過ぎないと公言している
水銀燈にとって、成り行きからとはいえ人間と同居し、同じベッドで眠るという馴れ合い。
それを目撃されたことは水銀燈の孤高と沽券を貶める恥辱以外の何物でもない。
その上その妹は、昏々と眠る水銀燈をまるで取るに足らないを言わんばかりに捨て置いたのだ。
やすやすと寝首を掻けるはずの水銀燈を、その姉妹は無視した。
薔薇乙女は互いの気配を概ね察知できるため、たとえ眠っていようと水銀燈が
姉妹の接近に気づかないはずはないのだが、事実として不覚にも彼女は敵の陣地侵入を
まんまと許してしまった。
その姉妹に水銀燈への敵意があったのならば、水銀燈は痛恨の不意打ちを喰らって
アリスゲームを脱落していてもおかしくはなかったのだ。
水銀燈が今もこうして動いていられるのは、謎の薔薇乙女に見逃してもらったからと
考えても差し障りは無い。
それに加えてそんな危機を露知らず、安穏と眠りに耽っていた自分自身の迂闊さにも
腹が立つ。
姉妹の中でも一際高い自尊心をもつ水銀燈を三重の屈辱が責めさいなみ、
真紅の双眸に激昂の情を滲ませていた。

485:雪華綺晶はここにいる 3/38
08/07/02 00:50:55 Vu3UqG8N
「天使の貴女が私の命を使ってくれないから、二人目の天使が見かねて
 来てくれたのね、きっと。私を天国まで運んでくれるのよ。素敵よね」

「バカじゃない。つまり殺されるってことじゃないの」

怒りを面に晒しては品位に欠ける。それを良しとしない水銀燈は、胸に渦巻く激情を
秘め隠したまま冷えた眼差しをめぐに向けた。
めぐと語ったという姉妹の意図は、今のところ全く不明だった。
苦痛のない理想郷へ導くなどという子供騙しの甘言でめぐを釣ろうとしている思惑は
理解できなくもないが、たとえめぐと水銀燈が契約を交わしたとしても、その姉妹が
利することなど何も無い。それどころかかえって状況が悪化するだけだ。
なぜなら媒介を得た薔薇乙女の戦闘能力は増大し、結果的には水銀燈と敵対する
その姉妹の首を自ら絞めることにしかならないからだ。
そんなことも分からないほどその姉妹は愚鈍なのか、はたまた水銀燈とめぐの
2人を冷やかしに来ただけなのか。

「ねえ水銀燈…指輪の契約、交わしてよ。
 黒い天使の水銀燈と、白い天使のあの子の2人で
 私をこの世界から解放して欲しいの」

「……まんまと騙されて踊らされて。どうしようもないバカね、貴女って」

そう嘯きつつも、水銀燈の胸に去来するのは得体の知れない焦燥感だった。
目の前の死に取り憑かれた少女は水銀燈の心をかき乱す。
めぐが死を、自身の存在の消滅を願うたびに、水銀燈はなぜかいたたまれない気持ちになる。
得体の知れない薔薇乙女に誘惑されて、めぐが一層強く死にたがるという今の状況は、
水銀燈自身が下手人に愚弄された事実と等しいまでに不快であった。
水銀燈は猫なで声で契約をねだるめぐを軽くあしらうと、宙を飛んで病室の鏡の前で
静止した。

「どこに行くの? 水銀燈」

「そのふざけた妹を潰しにいくの。この水銀燈をからかった罪は死に値するわ」

めぐを一瞥する水銀燈の目には、まぎれも無い怒りと憎悪に満ち溢れている。
そんな恐ろしげな様子の水銀燈にひるむ事もなく、めぐは残念そうにため息をつくと
なぜか嬉しげな笑顔を浮かべた。

「そっか。殺しちゃうんだ、あの子。
 さすが水銀燈。黒い天使だから死神って訳ね。
 私の命も、そうやって刈り取ってくれればいいのに」

「……天使だの死神だの…私はローゼンメイデン第1ドールの水銀燈。
 想像をめぐらせるのは貴女の勝手だけど、現実と妄想の区別が
 つかない子はイカレてるようにしか思えないわ」

「またまた。すぐにそうやってはぐらかすんだから」

めぐはけらけらと笑い、水銀燈は不満げな面持ちの程をより一層強くする。
めぐが自分の命を使い切ってくれるように水銀燈に頼む度に、彼女はこうして
話を逸らしたり何らかの言い訳を見繕って願いをはねのける。
今ではこのやり取りも、お互い馴れたものだった。

「気をつけてね。負けちゃ嫌よ」

「…………」

めぐの声援に応える事無く、水銀燈は鏡を入り口としてnのフィールドへと進んでいった。

486:雪華綺晶はここにいる 4/38
08/07/02 00:53:25 Vu3UqG8N
同刻、薔薇屋敷にて。
瀟洒なテーブルを挟んで、翠星石と屋敷の主人である結菱一葉が椅子に座っている。
テーブルには両者の前に薫り高い紅茶を湛えたティーカップが置かれ、中央には瑞々しい
薔薇の花を生けた器が備えられていた。

「ジュンはチビ苺に甘すぎるのです。そんなことだからチビ苺がつけあがって暴走するです。
 真紅も真紅ですよ。雛苺の主なら家来のしつけはしっかりするべきです!」

「子どもは元気なのが一番だ。無理に押さえつけてはいけないと私は思う」

微笑んでささやかな助言を送る一葉に、翠星石はつんとそっぽを向いて容赦の無い
ののしりを浴びせかける。壁一面をガラス張りにあつらえさせたその部屋は
清潔な日光を余すところなく透過し、翠星石と一葉を温かく包み込んでいる。
ガラス越しに望む一面の薔薇園は、見ているだけで心が洗われるような明媚な眺めだ。
愚痴をこぼしながらもこうして茶飲みの相手を律儀に務めてくれる翠星石を前に、
一葉は心地よい時間を過ごしていた。



翠星石は帰り際にいつも、鞄の中で眠り続ける蒼星石の顔を見るようにしている。
鞄の中で身体を丸めたまま動かない蒼星石は、本当にただ眠っているだけのように見える。
魂を込められた生きた少女人形であるローゼンメイデンシリーズ。その一人の蒼星石は、
こうして動かない本来の人形になっていてもなお瑞々しい。
繊細な焦げ茶色の髪。薄桃色の唇。男装の麗人を思わせる凛々しいかんばせ。
不意に瞼を上げ、その澄んだ紅と翠のオッドアイを覗かせながら長寝を恥じ入って
そっと頬を赤らめる。そんな光景を翠星石は幻想して止まない。
壊れ物を扱うかのように、翠星石は蒼星石の頬に優しく手を添える。
翠星石の面持ちは穏やかで、微笑さえ浮かんでいる。しかし雨水を限界まで
溜め込んだ曇り空のように、危うい色が常にその面持ちに見え隠れしていた。
そんな翠星石の姿を後ろで見守っていた一葉は、いくらかの逡巡の後に、
かすれた声で尋ねた。

「蒼星石は…元に戻るのだろうか」

翠星石は後ろを振り向くと、申し訳なさそうにうつむく一葉を鋭く睨みつける。
愛らしい少女の顔には不似合いな、憎悪に満たされた眼差しだった。
しかしそんな目つきから、一瞬後には憎しみが霧散し、代わりに悲哀の色が
彼女の双眸を彩っていた。
蒼星石が魂の抜け殻になってしまった原因の大本は一葉にある。
一葉はその罪を悔い、せめてもの贖罪として蒼星石を紅茶を嗜む際に同席させ、
まるで植物状態の患者の意識を取り戻させるかのように彼女に声を掛け続けてきた。
一葉とて、蒼星石が復活することは翠星石と同様に悲願であるのだ。
それを知った翠星石は彼の意を酌んで茶会に同席し、一葉に対する憤りを
少しずつ赦しへと塗り替えてきた。

「―戻るです……戻るですよ。おじじ」

一葉とて、いたずらに翠星石を怒らせるために先のような質問を投げかけたのではない。
彼も真実を知り、希望をもちたいのだ。蒼星石の心が還ってくるという望みを。
それを悟った翠星石は、悲しみを紛らわせるように胸を張って普段の強気な口調を取り戻す。

「蒼星石のローザミスティカは水銀燈のアンチクショウがもっていきやがりましたが、
 翠星石達が必ず水銀燈から取り返すです。翠星石の意識も、nのフィールドのどこかを
 さまよっているはずなのです。絶対に連れ戻すですよ!」

堂々とそう言ってのける翠星石を前にして、一葉はしばし無言で彼女を見つめた後、
目礼でもするかのように目を瞑り、「よろしく頼む。翠星石」と力強く応えた。

487:雪華綺晶はここにいる 5/38
08/07/02 00:55:27 Vu3UqG8N
その頃、桜田宅。

「ふんふんふ~ん♪ お掃除しましょ~ぴかぴかに~♪」

桜田のりが鼻歌を口ずさみながら床に掃除機をかけていた。
掃除機の大きな駆動音にまぎれて、のりの歌声はほとんどかき消されている。
普段通りの上機嫌を保ったまま、のりが物置部屋の前まで掃除機を滑らせていくと、
彼女はある異変に気づいた。物置部屋のドアが開かれたままになっていたのだ。

「あらぁ~? 変ねぇ。いつもちゃんと閉めてるはずなのに…」

何気なく部屋の中を覗くと、入り口の正面奥にはいやおうなしに目に付く大鏡が
据えられている。
しかしその鏡面に映るのはのりの姿だけではない。不可解な存在も一緒に映っていた。
薄桃色の白い長髪に白い服。美しい容姿を具えているにも関わらず、その眼差しは
白痴のように虚空の一点を凝視したまま動かない。雪華綺晶だった。
全く予想していなかった異常事態に、のりの思考は空白と化し、身体は金縛りにでも
あったかのように動かない。
すぐ傍で硬直する人間の存在に気づき、雪華綺晶が首をかしげてのりの顔を見つめる。
彼女は悠然と笑って白い歯を晒した。金色の左目に狂気の入り混じった親しみの情が灯る。

「ウ キ ャ ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ァ ァ ァ ~~~~! ?」

掃除機の騒音を遥かに上回るのりの絶叫が桜田家に轟き渡った。

「な、何だ!?」

ジュンが自室から飛び出し、階段を駆け下りて声の出所へ走る。
ジュンの部屋にいた真紅と雛苺も人間用の階段をそろそろと降りて、のりの元へと向かった。
のりは腰でも抜かしたかのように床にへたり込み、悲鳴の残滓を喉から搾り出している。
ジュンは耳障りな音を上げる掃除機の電源をオフにすると、事の次第を訪ねた。
遅れて真紅と雛苺の2人も到着する。

「か、かか鏡の中に…お化けがいたのぉ…!
 ゆ、幽霊がお姉ちゃんをじっと見てたわぁ……!」

震えながら自らの肩を掻き抱いて、のりは懸命にそう訴えた。
今にも泣き出しそうなその顔は、恐怖の程を言葉よりもなお雄弁に物語っている。
「幽霊ですって…?」と小さく声を上げ、意外に臆病な真紅の顔がわずかに引きつる。

「お化け? ゆうれい?」

特に臆した様子も見せずに雛苺が大鏡の前まで歩き、鏡を検めるがおかしなものは
何も映っていない。

「なにもいないわ、のり」

「そ、そんなぁ~~! お姉ちゃん、確かにこの目でぇ~」

座ったままそう訴えるのりの背中を雛苺がよじ登ると、雛苺は満面の笑みを浮かべて
小さな手でのりの頭を撫でる。

「のりってば怖がりなのねー。ヒナはゆうれいなんか怖くないわ!」

「大方掃除機かけながら夢でも見てたんだろ。姉ちゃんはいつもボケっとしてるからな」

488:雪華綺晶はここにいる 6/38
08/07/02 00:56:37 Vu3UqG8N
つまらない下らないとばかりに鼻を鳴らすと、ジュンはさっさと自室へ戻っていってしまった。
「信じて~ジュンく~ん」というのりのすがる声にも、ジュンはまるで取り合わない。
相変わらず怯えているのりに雛苺はまとわりついて思う存分にはしゃぎ、その一方で真紅は
左手を軽くあごに添えて黙考している。

「3人そろって何してやがるですか?」

背後からの不意の掛け声にのりがびくんと大きく震え、のりの肩に乗っていた雛苺がころんと
床に落ちて「きゃっ!」と可愛らしい悲鳴を上げる。
声の主は今しがた薔薇屋敷から戻ってきた翠星石だった。
妙な雰囲気の3人を見かねて声を掛けたのだ。せめて翠星石だけにでも信じてもらおうと、
のりは鏡の中に潜む亡霊を目撃した顛末を彼女に説明した。
話が進むにしたがって翠星石の表情は次第に明るくなっていき、話を聞き終えた後は
満面に喜色を浮かべ、興奮した様子でこう断言した。

「蒼星石です! きっとその子は蒼星石ですよ! 蒼星石が帰ってきたです!」

翠星石はのりが見た幽霊の正体を、nのフィールドでさまよっている蒼星石の意識だと
考えているのだ。身体に戻れずに困っているので、翠星石達が集まる桜田家を訪れ、
助けを求めに来たのだと翠星石はそう判断した。
蒼星石の復活を切望している翠星石の希望的観測の色は強いが、確かに可能性の
一つとしては考えられる。
真紅としても、鏡からのりを見つめ返したという幽霊の正体は、ローゼンメイデンの誰かでは
ないかという確信に近い思いがあった。
鏡の中の幽霊うんぬんというのりの言葉には不覚にも慄然としてしまったが、よくよく考えれば
鏡をnのフィールドの出入り口にしているのは幽霊などといういかがわしいモノではなく、
自分達薔薇乙女ではないか。

「のり。鏡の中にいた幽霊の姿形を、できるだけ詳しく教えて頂戴」

真紅の凛とした声に、のりはようやく冷静に物を考えられる程度の落ち着きを取り戻した。

「うう~~んと…。ほんの一瞬だけしか見られなかったからよく覚えていないんだけどねぇ。
 白っぽい色の髪をしてて、髪は長めだったと思うの。お姉ちゃんを見て、ニタッて
 笑ったのよぅ。怖かったぁ~…もう失禁ギリギリよぅ」

「う……。そ、蒼星石と似ても似つかんですぅ…」

傍から見ても気の毒になるほどに翠星石は肩を落とし、よく状況が飲み込めない雛苺は
「蒼星石が来たのね!」と翠星石の前言内容を鵜呑みにし、はしゃいでいる。

「何という不謹慎なのです! このおバカ苺! やっぱりオマエの頭は金糸雀以下なのです!」

唐突に怒り出した翠星石に追いかけられて逃げ回る雛苺には構わずに、真紅は思考を続ける。
のりの証言内容から考えるに、その薔薇乙女と思しき誰かは水銀燈か、ジュンの心の領海で
以前に見かけた謎のドールであると考えられる。どちらも白い長髪であるからだ。
水銀燈は前に物置小屋の大鏡を入り口として桜田家に攻め込んできたことがあるし、
他人を小馬鹿にするかのような彼女の不敵な態度は、のりに向かってニヤリと笑ったという
下手人の行為と一致する。犯人が水銀燈である可能性はかなり高い。
真紅達を陥れるための策略の一つとして鏡の中から桜田家を覗いていたと考えるのなら、
その計画の内容をつきとめて阻止しなくてはならない。蒼星石に続くアリスゲームの犠牲者は、
もう一人も出してはならないのだ。
もう一人の容疑者である謎のドールが犯人であったと仮定するなら、事態は水銀燈が
関わっている場合よりも一層由々しいものと考えざるを得ない。
件のドールは、その能力や思想や気性などの一切が不明だ。
謎のドールの正体はローゼンメイデンの第7ドールではないかと密かに疑っている真紅としては、
その実体を早急に掴んでおく必要がある。

489:雪華綺晶はここにいる 7/38
08/07/02 00:58:11 Vu3UqG8N
水銀燈と謎のドールのどちらが犯人であろうと、鏡の中に現れた理由と目的を知ることは
真紅にとって重要な急務だった。

「翠星石。雛苺」

未だに追いかけっこを続けている2人を呼び止めると、真紅は手短に自分の推理内容を
披露し、犯人をつきとめて桜田家を訪れた理由を問い質す必要性を説いた。
彼女達の不安を煽ってはいけないので、謎のドールに関しては極力言葉をにごし、
不審人物程度に説明を留めておいた。

「真紅すごいのよ~。くんくんみたいなの~」

雛苺のそんな反応に真紅はピクンと片眉を上げた。照れは隠しているようだが普段の
澄ました顔はいくらかほころんで、隠しようのない嬉しさがにじみ出ている。

「くんくんには及ばないにしても、私がその気になればこのくらいは造作もないことよ」

「おのれ水銀燈~! 蒼星石だけでは飽き足らず、今度は翠星石達のタマまで
 とりに来やがりましたか~!」

翠星石は、犯人の正体を蒼星石のローザミスティカを奪った怨敵・水銀燈だと思っている。

「さあ。ぐずぐずしていたら犯人に逃げられてしまうのだわ。さっそくnのフィールドへ
 向かうわよ」

蒼星石のローザミスティカをもつ水銀燈を懲らしめ、ローザミスティカを彼女から取り返すべく
意気込む翠星石以上に、雛苺はいつにも増してはしゃいでいる。全身を使って喜びを表現し、
その童顔には満面の笑みが輝いていた。
不思議に思った真紅がその理由を尋ねると雛苺曰く、
謎の犯人を捕まえてこれ以上の犯罪行為を食い止め、目的を自白させるというこれからの
行動はくんくん探偵のそれそのものである、と。
そんな雛苺の子どもじみた発言に真紅はハッとすると、彼女はやわらかい笑みを浮かべ、
労をねぎらうかのように雛苺の左肩に右手を乗せた。

「雛苺。この真紅の家来としての役割がようやく板についてきたようね。
 中々の仕事を働いたわ」

意図が不明な真紅の言葉に雛苺は困惑するが、真紅はそれに構わず恍惚とした表情で
二階のジュンの部屋へと向かっていった。
後に残された翠星石と雛苺はお互いに顔を見合わせるしかない。
しばらく後に真紅が2人の前に戻ると、彼女は探偵帽をかぶり、胸元を飾る紅いケープの
上に探偵ケープを重ねて羽織っていた。
桜田家に住む真紅達薔薇乙女が揃って熱を上げる人形劇の「くんくん探偵」。
その番組プレゼントに真紅が応募し、見事射止めたくんくん変身セットだった。
ジュンの部屋の本棚に大事に納められていたその宝物を持ち出し、彼女はくんくんを
想いながら廊下でそれを身に纏ったのだ。真紅の肩には小綺麗なポシェットが
下げられ、その中には彼女が集めた探偵必携アイテムがしまわれている。

「し、真紅…。その格好は…」

「犯人は私達が必ず捕まえるわ。そして見事事件を解決するのよ。
 私達、薔薇乙女探偵団が!」

拳を握り締める真紅に、「ヒナも探偵やりたいのよ~」と嬉しそうに飛び跳ねる雛苺。
そんな2人の様子を、やや引いて見つめる翠星石。

「良い点に気づいた雛苺には、探偵助手という名誉ある役目を与えてあげるわ」

490:雪華綺晶はここにいる 8/38
08/07/02 00:58:57 Vu3UqG8N
「うーいっ、ヒナジョシュやるのよーっ!」

真紅が差し出すポシェットを雛苺は嬉々として受け取り、大切な宝物であるかのように
胸の前で抱きしめた。探偵助手などという名前の役割を振られて彼女ははしゃいでいるが、
その仕事内容の実際は、真紅にとって都合の良い荷物持ちでしかない。
盛り上がる真紅達をよそに、動き回れる程度まで恐慌から回復したのりは困惑していた。

「ううぅ~……。お掃除は大体終わったけど、今度はお買い物に行かなくちゃならないわ…。
 お姉ちゃん、お化けが怖くて外なんか歩けないわぁ。
 ジュンくーん! お買い物に行くんだけど、お姉ちゃん怖いから付き合ってよ~う」

「一人で行けよバカ!」

階段下からののりの呼び掛けに、ジュンは部屋から一歩も出る事無くそんな返事をした。

「うう……。つれないのねぇ、ジュンく~ん…」

くすんと鼻を鳴らして、のりが買い物の支度のために物置部屋の前から立ち去っていく。

「さあ。事件解決のために! 薔薇乙女探偵団、出動よ!」

真紅の号令のもと、3人は意気揚々と大鏡からnのフィールドへと進んでいった。


隔たったフィールドとフィールドを繋ぐ暗黒の亜空間を3人は飛びながら先へと進んでいる。
真紅はくんくん探偵になりきってやる気に満ち溢れ、雛苺は真紅から預かったポシェットを
肩に掛けたまま楽しげに後に続いている。翠星石はやや2人の空気に乗り切れていないものの、
蒼星石のかたきである水銀燈を倒すべくその瞳に強い意志の光を宿している。

「籠目 籠目」

暗闇をわずかに震わせる澄んだ歌声が響き、見渡す限りの闇の海に呑まれて儚く消える。

「籠の中の鳥は 何時 何時 出会う?」

そんな声の主の問いかけにも、高速で空間を飛翔している真紅達は全く気づかない。

「夜明けの晩に 鶴と亀が 滑った」

千年生きるといわれる鶴と、万年生きるといわれる亀。
ともに長寿の象徴とされる縁起の良い動物だ。その2つが滑って死ぬという不吉な歌詞。
わらべ歌にあるまじき不気味で奇妙な凶兆を意味した歌だった。

「後ろの正面 だぁれ?」

誰にも気づかれることなく闇の中から真紅達の背中をじっと見つめる、炯々と光る金色の
瞳が一つ。
白い髪と白い服のその姿は、夜闇を漂う白い人魂のようにも映る。
実体をもたない精神体である雪華綺晶は、現実の中では存在できない幻の少女人形だ。
そのため、そこに在りながら気配を誰にも認識されることがない。
真昼の太陽の下を浮遊する透明な幽霊のような薔薇乙女である。
その眼差しに愛情と親しみとやわらかな殺意を孕ませて、雪華綺晶は遠ざかる3人の姿を
いつまでも静かに見つめていた。




491:雪華綺晶はここにいる 9/38
08/07/02 00:59:41 Vu3UqG8N
真紅達がnのフィールドへ出かけた少し後。
パソコンに向かってインターネットショッピングにいそしむジュンは、部屋の窓ガラスを叩く
ノックの音に気がついた。
音の出所を見やれば、日傘を片手に掲げて宙に静止する金糸雀がそこにいる。
彼女の意図を酌んだジュンは窓を開け、部屋の中へと入れてやった。
常に真紅達薔薇乙女がたむろしているはずのジュンの部屋が、今日はとても静かだった。
部屋の主のジュン以外には誰もいないからだ。

「ジュンジュン。真紅達はどこにいるのかしら」

「知らないよ。犯人を見つけ出す、とか妙なことを言ってたけど…」

部屋の本棚に納めてあったくんくん変身セットを真紅が持ち出す際、何に使うのかと
ジュンは何気なく尋ねてみたが、彼女は詳細を語らず、ただ犯人を見つけて事件を
解決する、としか言わなかったのだ。

「真紅達…またカナを仲間はずれにしてどこかへ遊びに行ったのかしら!
 この策士金糸雀を怒らせると後になって怖いのかしら!」

頬を膨らませてぷりぷりと怒る金糸雀を無視して、ジュンはネットサーフィンを再開する。
そんな様子のジュンに金糸雀は一層不機嫌になり、苛立たしげに腕を組む。

「ジュンジュン! お茶とお菓子を用意して欲しいかしら。この金糸雀がわざわざ
 足を運んできてあげたのに、それを無視する真紅達なんてもう知らないのかしら。
 平和のための話し合いをかねたお茶会も、カナ一人で始めちゃうのかしら」

「煩いな。下にティーセットとお菓子が置いてあるから、勝手に食べてればいいだろ」

「なっ、なんて冷たいのかしら!? もういいのかしら! カナ一人でできるんだから!」

そう言い捨てて、金糸雀はその顔に不満を露にしてジュンの部屋を出て行った。
階段を乱暴に降りる金糸雀の両目には、うっすらと涙が滲んでいる。

「皆でカナをバカにして…! やっぱりカナを分かってくれるのはみっちゃんだけかしら。
 ここまでコケにされて、黙って引き下がるほどカナはお人よしでも甘くもないのかしら。
 こうなったらこの家のお菓子を全部食べ尽くしてやるのかしら! 兵糧攻めかしら!」

『金糸雀……』

突然の声に、金糸雀は周囲をきょろきょろと見回すが、傍には誰もいない。
ただの思い違いか空耳だろうと考えて金糸雀がまた歩き出すと、再び奇妙な声が
金糸雀の胸に届く。
人や他の姉妹の声とは違う、心に直接響くような不思議な声だった。

「な、何かしら…? …………。分かったかしら! 真紅達かしら! どこかから
 カナをからかっているのね! そう簡単にはこの金糸雀は騙されないのかしら!」

金糸雀は近くの部屋を片っ端から覗き込み、天井も見上げるが、どこにも誰もいない。

『金糸雀…。来て。こっちよ』

正体不明の声に、金糸雀はだんだん恐怖を覚え始める。
姿は見えないのに声だけは聞こえるのだ。
これは前にみっちゃんの家のテレビで見た、人をたぶらかし冥府へと引きずり込もうとする
怨霊とかいう恐ろしい存在ではなかろうか。

「か、カナはもう負けを認めてあげるのかしら…。いい加減姿を見せるのかしら…。
 真紅。雛苺。翠星石…」

492:雪華綺晶はここにいる 10/38
08/07/02 01:00:42 Vu3UqG8N
声に誘われるまま金糸雀は恐る恐る歩を進め、声の出所であると思われる部屋まで
たどり着く。着々と募っていく恐怖と危機感が命じるままに、一目散にこの家から
逃げ出した方が賢明だっただろう。しかし謎の呼び声にはそれを許さない、不可思議な
魅力があった。まるで好奇心を直接揺さぶりかけるようでいて、心理を巧みに操る術を
熟知しているかのようである。
部屋のドアは背の低い金糸雀でも入れるように半開きになっていた。
まるで金糸雀が部屋に入ってくるのを見越していたかのように。
ドアを引いて中に入ると、そこにはぬいぐるみや玩具、額縁に入った絵画や何に使うのか
分からない奇怪なオブジェが山と積まれ、混沌の様相を呈して余りある。
そんな中で一際目を引きつける大鏡。その偉容に魅了されるかのように、金糸雀は
鏡の前まで歩いていく。
今の彼女の行動は、甘い匂いに釣られて食虫植物の口へと自ら足を運ぶ、
小虫のそれと大差がない。
その事実に金糸雀が気づかないのは、彼女が愚かしいからなのか、それとも声の主の
魔力によって思考の一部に霧がかかっているからなのか。
鏡の前に立った金糸雀の姿が、鏡面に映し出されている。
緑がかった灰色のロールヘアに赤い薔薇をあしらったハート型の愛らしい髪止め。
翠緑の瞳に桃色の頬。日の光を思わせる黄色の上着に、オレンジ色のドロワーズ。
そんな鏡の中の絵が揺らぎ、一瞬後には雪華綺晶のそれに切り替わる。
予想だにしない異変に金糸雀は声を失い、雪華綺晶はゆったりとした笑みを浮かべて
右手を開いて前にかざす。雪華綺晶の右手から伸びる白い茨は鏡面を通り越して
白蛇のように金糸雀の首に巻き付き、先ずはその悲鳴と助けを呼ぶ声を封じた。
苦悶の表情もあらわな金糸雀の全身を次々と茨が縛り上げ、彼女は何が起こったのか
理解する暇もなく、鏡の中の世界へと引きずり込まれていった。



蜘蛛が巣にかかった獲物を糸でがんじがらめにするように、金糸雀の全身は白の茨で
縛り上げられている。金糸雀は首を始めとした身体の拘束の痛みに耐え切れずに、
とっくの以前に気を失っていた。そんな金糸雀をいたわる慈悲など一片も見せず、
雪華綺晶は茨で束縛した彼女をずるずると引きずりながら暗黒の中を進んでいる。
雪華綺晶の顔には何の表情も浮かんでおらず、ただ爛々と光る金色の瞳が前を
見据えているだけだ。
現在の状況は雪華綺晶にとっては僥倖だった。ローゼンメイデンシリーズの大半が
集う桜田家を監視するべく、物置部屋の大鏡を覗き窓としていた彼女が、うかつにも
家の住民に見つかってしまったのは用心深く狡猾な彼女にしてはらしくない失敗だった。
しかしそんな損得勘定を度外視したある種の狂気が、雪華綺晶には備わっている。
一秒でも早く身を隠すべき局面でもなお相手に微笑む程度の異常性は。
しかし事態は雪華綺晶の思ってもみない方向へと進んでいく。何を思ったのか、
真紅、雛苺、翠星石の3人が揃ってnのフィールドへと入ってきたのだ。遥か彼方の
領域には水銀燈の気配まで感じる。昨夜、彼女の媒介候補に契約の誘いを
かけたことが水銀燈の心情に何らかの影響を及ぼしたらしい。
さらに好都合なことに、残りの金糸雀まで桜田家にやってきていた。
渡りに船とはまさにこのことだ。
彼女を利用してある計画を実行するべく、雪華綺晶は動くことにした。
実体をもたないアストラルより成る雪華綺晶は、nのフィールドの中では十全に
活動できても、現実世界の中では存在することが許されず、現実に及ぼすことができる
影響力も姉妹の中では格段に弱い。鏡の中から話掛けて相手の心を揺さぶったり、
現実と虚構の境界面である鏡の近くのドアを開いたりするだけで精一杯だ。
雪華綺晶は巧みに金糸雀を蟲惑し、彼女が内側に潜む大鏡の前まで招き寄せた。
四肢は物質化できないものの、霊体という身体の制約には関係ない具現化した
茨ならば現実側にいる金糸雀を絡め取って捕まえることが可能だ。
まんまと金糸雀の虚を衝いた雪華綺晶は、素早く金糸雀の手足を縛り上げ、こうして
nのフィールド側へと引きずり込むことに成功した。まずは上々の成果を収めた
雪華綺晶は、次の段階へと手を進めるべく金糸雀を闇の奥深くまで引きずっていった。




493:雪華綺晶はここにいる 11/38
08/07/02 01:03:20 Vu3UqG8N
「お姉さま。お姉さま」

少女の甘い囁き声が届き、金糸雀は目を覚ました。
まず気づいたのは辺りの暗闇だ。
気を失う寸前まで居た桜田家の物置部屋も薄暗かったが、今居る場所はそこの比ではない。
星一つない夜よりもなお暗い濃密な黒闇が、空間の全てを支配している。
ついで気づいたのは身体の節々をうずかせる鈍い痛みだった。
白い茨によって幾重にもきつく縛り上げられた金糸雀の身体には、その苦痛の痕跡を
感覚の上ではっきりと残している。
最後に気づいたのは闇の中に在ってもなお白くまばゆい少女の姿だ。
うっすらと笑みを浮かべ、左目には温情が満ちている。
その瞳の奥におぞ気立つような冷酷な色が潜んでいようと、彼女の本性を知らない
者にとってはかすかな違和感を感じ取る以外にその狂気を見破る術はない。

「あ、貴女は一体誰なのかしら…?」

おずおずと尋ねる金糸雀の質問に何の反応も見せず、雪華綺晶はただにやにやと
微笑むだけだ。
同性でさえも虜にしてしまいそうな美しく甘い笑顔。甘すぎて吐き気を催すほどの。
黙ったまま何も喋ろうとしない得体の知れない少女に、えもいわれぬ不安が金糸雀の胸で
増大していく。何とか自分のペースで話を進めようと、彼女は空元気を振り絞って
雪華綺晶を威嚇するかのように胸を張る。

「ひ、人に名を尋ねる前に自分から名乗るのが礼儀というものね!
 このカナとしたことがうっかりしていたかしら。
 ローゼンメイデン筆頭の策士金糸雀よ!
 貴女も一度くらいはこの名を耳にしたことがあるはずかしら」

「………誰?」

きょとんとした様子で首をかしげる雪華綺晶に、金糸雀は見事に出端を折られて
意気消沈する。彼女の名前が相手に覚えられていないということは、もうこれで
何度目だろうか。そんなにも金糸雀という薔薇乙女は姉妹の中で影の薄い存在
なのかと、快活な彼女をして落ち込ませるほどだ。
そんな彼女が見えていないかのように、雪華綺晶は自身を指差してうわごとのように
つぶやく。

「私はだぁれ?」

「え…? う…ええっと…。ば、バラバラの姉妹か何か…かしら…?」

そんな噛み合わない問答を経て、金糸雀は無性に帰りたくなった。奇妙な呼びかけで
彼女を誘い出し、ここまで引っ張り込んだのは状況から考えて目の前の少女だという
ことは明らかだ。そんな不気味なことをする下手人と暗闇の中で2人きりというこの状況。
それでもなお安穏としていられるほど、金糸雀の肝は太くもなければ馬鹿でもない。
それに何より、この少女はどこか怖いのだ。乱暴な言葉で威嚇するわけでも武力を
突きつけるでもないが、正気を疑いたくなる奇矯な態度と、左目の瞳を覆う慈愛の
ヴェールの先に時折垣間見える、尋常でない何かが金糸雀の背筋を凍えさせる。
帰りたくなっても、nのフィールドの出口の場所はおろか自分が今どこにいるのかさえ
分からないことに、今更ながら金糸雀は気がついた。

「お姉さまは可哀想」

「えっ…? お姉さまって…カナのことかしら? 可哀想って突然何を言ってるのかしら?」

「認めてもらいたくても認めてもらえない可哀想なお姉さま。誰にも愛でられず、
 小さな籠の中の世界で、届かない唄をさえずり続けるか弱いカナリア」

494:雪華綺晶はここにいる 12/38
08/07/02 01:06:12 Vu3UqG8N
雪華綺晶の紡ぐ言葉は抽象的で、金糸雀には彼女が何を言っているのか
半分以上理解できなかったが、それでも「認められない」と「か弱い」という2つの
フレーズは金糸雀の頭に強く響いた。
そしてそれらの発言は自尊心が高い金糸雀を怒らせるのに十分なものであった。

「なっ、何を言うのかしら!
 カナにはみっちゃんがついてるし、雛苺だって友達かしら!
 カナのパワーだって、ローゼンメイデンの中で一番かしら!」

肩を怒らせる金糸雀を見て、雪華綺晶はやわらかく微笑む。
雪華綺晶の発言は当てずっぽうではない。実体をもたない幻影の人形という点で
他のドールズとは一線を画す彼女には、相手の心理状態が実際に目に見えるのだ。
金糸雀はああ嘯いていても、雪華綺晶にははっきりと見えている。
彼女が他の姉妹達から軽んじられ、その力を認められていないこと。
そして自分の実力に不安があるから、策略などという力に頼らない手段に訴えていること。
彼女の心の奥底に秘め隠された僅かな劣等感を、雪華綺晶は的確に見抜いていた。
金糸雀が憤怒するのは、図星を指されたことを無意識のうちに否定したいがためだった。

「私は貴女を救いたい。貴女の力となりたい。お姉さま」

やわらかく瞼をおろした雪華綺晶は、穏やかな笑みを浮かべて優しくそう伝えた。
目上の者に敬意を表するかのように、彼女の開かれた左手は自身に胸元に
そっと添えられている。
そんな雪華綺晶の言動に、金糸雀はやや心を許してしまう。
金糸雀の目の前の白い少女は、確かにその行動と雰囲気に不審な点も多いが
こうして彼女を仰ぐ態度を示し、「お姉さま」などと呼んで敬っている。
「力となりたい」という言葉からも、彼女が金糸雀に助力しようとする意思をもっている
ことは確かだろう。先の失礼な発言も、彼女の性格によるのかもしれない。
姉妹の中でも目下に見られがちな金糸雀が下手に出られるというのはかなりの珍事であり、
同時に彼女の自尊心をくすぐる喜ばしいことでもあった。

「……まあカナも戦略の手札が増えるのは嬉しいし、貴女がカナの仲間になりたい
 ならやぶさかでないのかしら。カナを尊敬して協力を惜しまないというのなら
 カナの妹分にしてあげてもいいのかしら」

腕を組んで得意気に話す金糸雀を見て、雪華綺晶は悠然と笑う。
その艶然とした笑顔の裏には、周到に騙した相手を頭から丸飲みにする大蛇の如き
禍々しさが巧妙に隠されていた。

「はい。お慕いしています。黄薔薇のお姉さま」

陶然とそう呟いた雪華綺晶は、金糸雀のあごに手を添えると、刹那のうちに唇を
重ね合わせていた。唇をふさぐ唇の感触に覚える違和感よりもなお金糸雀の
心を捉えて放さないのは、彼女の右目に映る雪華綺晶の澄んだ金色の瞳だ。
その虹彩の奥に潜む曰く言いがたいおぞましい感情を、金糸雀は文字通り
至近距離から覗き込むことになった。
恐怖に凍える金糸雀の手先は震え、その膝は無様に笑い、唇を押し付けられたまま
彼女は動くことができない。
雪華綺晶の左目には恋する乙女のような、恍惚とした色が浮かんでいる。
その理由は金糸雀とのキスをただ愉しんでいるのか、それとも震え上がって動くこともできない
彼女の姿に歪んだ愉悦を見出しているのか。
雪華綺晶が唇を離して解放すると、金糸雀はその場にへたり込んで自分を見下ろす
白い少女の顔を見つめ返す。
その笑顔に大切な何かが決定的に欠け落ちているのに気づき、金糸雀はようやく悟った。
彼女が金糸雀に敬服しているどころか、猫が捕まえた獲物を死ぬまでなぶり続けるように
ただ金糸雀を手のひらの上でもてあそんでいたということを。
遅ればせながら自分の誤解と白い少女の内面に巣食う狂気に気づいた金糸雀は
その場から逃げ出そうとするが、なぜか手足が痺れてまるで動けないことを知った。

495:雪華綺晶はここにいる 13/38
08/07/02 01:08:35 Vu3UqG8N
「あ…あれれ…? どうしてかしら…? カナ、全然動けないのかしら…」

座った姿勢のまま困惑した面持ちで呟く金糸雀を、雪華綺晶は正面から優しく抱きしめる。
目を閉じて微笑むその顔は掛け値なしの慈愛の色で彩られていた。
白い少女のやわらかな抱擁に、金糸雀の胸でわだかまっていた不審や恐怖といった
負の感情が霧散していき、後に残ったのは心地良い安心感だけだった。
金糸雀の視界を覆う薄桃色の白髪と純白のドレスはまるで深い霧の中をさまよう
かのようなイメージを彼女に与え、その思考を白濁させ全てを白く塗りつぶしていった。

「お姉さまたちに伝えにいきましょう。貴女の想いを。貴女の力を。
 私が助けてあげる。私がついていてあげるから。
 優しい夢に抱かれて踊り続けなさい。それはきっと、とても楽しいから」

そんな甘い無垢な囁きに、金糸雀は安心して瞼を下ろし、雪華綺晶の見せる
幸せな夢の中に沈み込んでいった。



nのフィールドの中の一つの世界を水銀燈は当てもなく飛翔していた。
彼女の眼下には洋風の建築物が無数に近いほど建ち並び、そこに住むはずの人間は
一人もいない。
めぐの病室に昨夜現れたという姉妹を倒すべく、こうしてnのフィールドへとやってきたはいいが、
肝心の下手人の姿がどこにも見当たらない。
ヒステリックなところがある水銀燈の紅い双眸は、怒りと苛立ちで赤く燃えたぎっている。
薔薇乙女は互いの気配を大まかに察知できるため、病室の鏡を出発点として移動の
痕跡をたどり、咎人の気配を追っていけば制裁は簡単に達成できると水銀燈は思っていた。
しかし実際には罪人の足跡はおろかその気配さえもまるで掴めない。
水銀燈が無能だからではない。本当に痕跡も気配も全く無いのだ。ありえないことだった。
下手人は病室の鏡に突然湧いて出て、そして煙のように存在ごと消え去ったというのか?
それではまるで幽霊か何かではないか。物理的にも論理的にも考えられない、非現実的で
不可思議な事件だった。

「何だっていうの…? まったく…!」

犯人の行方は杳として知れず、解決のめどもまるで立たない。迷宮入りしてしまった事件を
前にして、水銀燈は悔しさと腹立たしさに歯噛みし、我知らずそんな言葉を漏らす。
このまま無限に続く平行世界を当てもなく探索していても埒が明かない。
一度病室に戻り、態勢を整えなおそうかと水銀燈は考え始める。
その時だった。

「……!?」

今いる場所からそう遠くないフィールドで、薔薇乙女の強い力の奔流を水銀燈は感じ取る。
昨日の今日で、フィールド内で大きな動きを見せている姉妹の誰か。
これは状況から見て水銀燈が捜し求める下手人以外にはありえない。
待ちに待った犯人のしっぽを遂に掴んだ水銀燈は、その端整なかんばせに獰猛な笑みを
浮かべて舌なめずりをする。

「そこを動くんじゃないわよ…今すぐジャンクにしてあげる!」

方向転換をした水銀燈は、めぐを誘惑し自分を愚弄した度し難い愚か者を誅戮するべく、
全速力で標的の居場所へと飛んでいった。




496:雪華綺晶はここにいる 14/38
08/07/02 01:11:05 Vu3UqG8N
nのフィールドへと犯人探しに乗り出した真紅、雛苺、翠星石の3人だったが、意気込みこそ
したものの成果らしい成果は何も上がっていない。
なぜならば犯人の足取りが全く掴めないからだ。
同じローゼンメイデンの誰かの仕業だと考えていた真紅だが、下手人と思しき姉妹の
気配はまるで感じられない。報われない探索に疲れ果てた3人は、テーブルやベッド、
衣装棚やソファーといったありとあらゆる家具が並べられたこのフィールドで休憩をとっている
最中だった。

「真紅…。水銀燈の奴は一体どこにいるのです…?」

「静かになさい。今考えているのだから」

疲労もあらわな翠星石の声などどこ吹く風とばかりに、真紅は澄ました顔のまま、椅子に
腰を落ち着けている。真紅の小さな口にはパイプの吸い先が銜えられ、まるで優雅に煙草の
味と香りを愉しんでいるかのようだ。ただしそのパイプには煙草の葉も入っていなければ
紫煙もくゆっていない。それもそのはずで、彼女が手にしているパイプは本物を模したただの
玩具なのだ。それは真紅が蒐集した探偵必携アイテムの一つで、こうしてパイプを銜えて
みることで真紅は偉大なくんくん探偵を追想し、彼の推理力を肖ろうとしているのだ。

「真紅ーっ。もうヒナ疲れたよー。もう手が動かないのよー」

真紅の隣では、雛苺が彼女に向かって懸命に扇子をあおいでいる。この扇子も、真紅が
集めた必携アイテムのうちの一つだった。人間用に設計された扇子は軽量であっても、
それを使うのが幼児のように小さな薔薇乙女とあっては、扇子の重量とあおぐための運動は
いささか過酷であったかもしれない。姉妹の中でも特に非力な雛苺が担い手とあっては
なおさらだ。

「弱音を吐いていてはこの真紅の探偵助手は務まらないわ。雛苺。
 しっかりと仕事を果たしなさい」

「うう~~…。ジョシュのしごとは大変なのよ…」

「ま~ったく…。とんだ名探偵がいたもんですぅ…」

探偵助手という役職名に踊らされてまんまとこき使われる雛苺と、椅子に座ったまま
名探偵を気取る似非探偵の真紅を一瞥し、翠星石は深々と嘆息をする。
ぶつぶつと毒づく翠星石には耳を貸さず、真紅は思考の中に没入する。
薔薇乙女は互いにその位置と気配を大まかに知ることができても、限界というものはある。
お互いに離れすぎていると気配が分からなくなってしまうのだ。
真紅達が知る由もないが、今この瞬間にも水銀燈はnのフィールドの中を飛翔している。
しかし互いの空間的距離が隔たりすぎているために、真紅達も水銀燈も互いにその存在を
感知することは不可能だった。
真紅がくんくん変身セットを持ち出して身に纏うために多少はもたついたといっても、
のりが犯人を目撃してからほとんど間を置かずに犯人の探索と追跡を開始したのだ。
そのわずかな隙に下手人は位置を感じ取れないほど遠くへ逃げてしまったというのか?
そうだとしたら犯人は大した逃げ足の持ち主であると推測される。
もしくは探偵を謀り煙に巻いて翻弄する怪盗さながらに、気配を遮断し隠れ場所を
全く悟らせない未知の能力でももっているというのか? そんなことがありえるのだろうか?
そんな突拍子もない仮定が真紅の頭に閃きかけた時、彼女はある異変を察知した。
遥か彼方の領域に感じる、薔薇乙女の力の発露を。

「雛苺! 翠星石! 犯人の手がかりをついに見つけたわ!」

勢いよく椅子から立ち上がった真紅を見て、翠星石がげっそりとした表情を浮かべる。

「ま~た真紅の妄想が始まったですぅ……」

497:雪華綺晶はここにいる 15/38
08/07/02 01:13:35 Vu3UqG8N
捜査を開始して真紅が見つけたと騒いだ「手がかり」は10個以上。そのうち、事件解決に
役立ったものは一つとしてない。全て真紅の思い違いと勘違いによるものだ。それに度々
付き合わされた翠星石としては当然の感想であった。

「捜査に必要なのはッ! どんな小さなことも見落とさないッ! 観! 察! 力!」

拳を力強く握り締め、心酔するくんくんの口癖を昂然と叫ぶ真紅。
その大声に、体力を消耗して手近なベッドにうつ伏せになったままの雛苺が
のっそりと顔を上げた。

「真紅。犯人たいほ…なの?」

「そうよ雛苺ッ! さあ貴女達! しっかり頭を働かせて姉妹の気配をさぐって
 御覧なさい! ここから離れたフィールドに薔薇乙女の力を感じるはずよ!」

尋常でない様子の真紅に圧倒されて、2人が彼女の言われたとおりにしてみると、確かに
かなり遠い位置の世界に薔薇乙女の力が存在している事を感じ取ることができた。

「本当なの! 真紅すごいのよ!」

決定的な手がかりを掴んだことで、滞っていた調査が一気に進展したことに喜ぶ雛苺は
たまっていた疲労も消し飛んだらしい。はしゃいで回る雛苺の様子に、真紅はより一層
気を良くする。そんな2人とは対照的に、翠星石は頭に沸々と湧く不審な点と違和感を
反芻した後、おずおずと口を開いた。

「少し待つです、真紅。翠星石もさっきからちょくちょくローゼンメイデンの気配を
 さぐっていましたが、全然見つからなかったのです。
 何で今いきなり気配が現れるです?何かおかしくねーですか…?」

翠星石の言い分はもっともだった。姉妹の存在を確認できる限界距離の内側に犯人が
潜んでいたのなら、今まで見つけられなかったはずがない。実際に気配は感じなかったの
だから、犯人は限界距離の外側まで逃げてしまったと考えるのが妥当だ。
しかし今になって、かなり離れた位置に姉妹の存在を翠星石達は感じている。
下手人のいる場所はここからかなり遠い。
この距離は、存在を感じ取れる限界距離を大幅にオーバーしているのではないか?
まるで目視できる距離を遥かに超えた先にある山が噴火し、大地を揺らす圧倒的な
威力の振動によってその噴火を感じ取るかのようだ。
その違和感を論理的に説明できるほど翠星石は賢くなかったし、たとえできたとしても
冷静さを欠いている今の真紅はまともに聞き入れはしなかっただろう。
雛苺はそもそも彼女に高度な論理的思考など期待する方が馬鹿げている。

「そんなことはどうでもいいの! 犯人が動き始めたからに決まっているでしょう!
 さあ! 犯人がまた雲隠れしてしまう前に、さっそく現場へ向かうのよ!
 私達薔薇乙女探偵団の初陣を、見事勝利で輝かせるために!」

「う…初陣って…こんなアホらしーことまた繰り返すつもりですか…?」

事件の解決と犯人確保という探偵冥利に尽きる至福の瞬間。それを目の前にして
常に真紅に漂う淑やかな雰囲気は微塵も残さず消し飛び、今や躁狂の程を呈して有り余る。
興奮もあらわな真紅の先導に、雛苺は満面の笑みを浮かべて続く。
翠星石はそんな興奮状態の真紅に呆れつつも、憎き水銀燈から蒼星石のローザミスティカを
取り返すべく、決意も新たにして真紅の隣を飛翔する。
翠星石は自分の感じた違和感の正体を熟考し、真紅は翠星石の発言内容を冷静に
吟味するべきであった。姉妹の存在を感じ取る限界距離の遥か外側から薔薇乙女の
力を感じ取るという矛盾。その真相はつまり、真紅達が目指す場所に構える者が
広大な空間距離をも越えて伝播させるほどの巨大な力をもっているということに他ならない。
真正面からぶつかるにはあまりに危険な敵の存在。それに思い至る者は3人の中に
一人もいなかった。

498:雪華綺晶はここにいる 16/38
08/07/02 01:16:31 Vu3UqG8N



下手人と推定される薔薇乙女が潜むフィールドは、緑の木々に覆われ、清澄な空気に
満たされた森の世界だった。
真紅達は長い飛翔移動の果てにたどり着いたフィールドの地を踏みしめて、ここのどこかに
いる姉妹の気配を追って森の中を歩いていく。
真紅達に先んじてこの世界へ到着していた水銀燈も、自身を愚弄した妹に制裁を下すべく
薔薇乙女の力の出所へ向かって進んでいた。
目指す場所が同じなだけに、真紅達と水銀燈が出遭うのは必然であった。
目の前に現れた3人の薔薇乙女の姿に水銀燈は瞠目し、一方で真紅は事件の
第一容疑者である水銀燈を発見し、真紅がジュンの心の領海で見た第二の容疑者である
謎の白いドールをどこにも見つけられないことから、水銀燈が事件を起こした張本人であると
確信した。

「そう…。そういうことだったの」

先に口を開いたのは水銀燈だった。その静かな声はかすれ、彼女の真紅の瞳には何の色も
浮かんでいない。怒りと失望が渾然となった激情はその顔に浮かばず、ただ握り締めた拳を
わななかせるだけだ。
めぐの見た白い少女の姿と眼前の3人のそれが一致しないのは、大方水銀燈をかく乱する
ために仮装か何かでもしていたのだろう。
随分手が込んでいる事だ。
挑発に挑発を重ね、怒りに駆られた水銀燈をこうしてnのフィールドまで誘い込み、まんまと
罠にかかった獲物を3人で袋叩きにする。そんな卑劣な策を練っていたのが、よりにもよって
真紅だったとは。
実力では薔薇乙女の中で自分と唯一対等の妹だと認めて警戒し、同時に一目置いていた
真紅が、こんな汚い罠にはめようと画策する卑怯で悪辣な存在だったとは。
彼女が事あるごとに掲げるアリスゲームの平和的終局が聞いて呆れるというものだ。
言葉巧みに翠星石と雛苺を抱きこんで協力し、水銀燈を倒して彼女のローザミスティカを
首尾よく奪った後は…幼稚で間抜けな雛苺でも闇討ちする腹だろうか。
真紅に対する幻滅と失望は、乾いた笑いとなって水銀燈の喉から搾り出される。
邪悪な手段でアリスに至ろうとする眼前の紅い佇まいの少女への哀れみと軽蔑の情に押され、
一度は胸の奥に沈んだ憤怒が、再び煮えたぎる溶岩のように吹き上がり、水銀燈の
総身を狂おしいまでの怒りで焼き尽くす。
確かに真紅の謀略にはめられて1対3という不利な状況へと追い込まれた。
戦いが厳しいのは明らかだ。しかしそれが何だというのか。
思考を沸騰させる獰猛な怒りは、そんな状況の不利でさえ瑣末であると切って捨てる。
澄ました顔をして姉妹を奸計に陥れる眼前の妹は、神聖なアリスゲームを真の意味で
穢す度し難い存在だ。もはや一秒たりとも生かしてはおけない。
今すぐに水銀燈自身の手で誅殺し、あの俗物をゲームの盤上から排除する必要がある。
水銀燈の怒りの程が臨界を迎え、今まさに戦闘態勢に入ろうとした時に、真紅は彼女を
右手で指差し、高らかに言い放った。

「水銀燈! 貴女が事件の犯人ね!」

「………………………え?」

全く考えもしなかった真紅の発言に水銀燈は呆然とし、自分の耳と相手の正気を同時に疑った。
真紅の顔は自信に満ち溢れ、自分の言葉に酔いしれているかのような雰囲気さえ窺わせる。

「水銀燈! この翠星石の根城にのこのこ現れるとはいい度胸してるですね!
 のりを脅かしたことを認めて謝罪するです!
 それと蒼星石のローザミスティカ返しやがれですぅ!」

「もうしょうこはあがっているのよ水銀燈! ねんぐのおさめどきなのよ!」

499:雪華綺晶はここにいる 17/38
08/07/02 01:20:03 Vu3UqG8N
真紅に続き、翠星石と雛苺にまで指を差されて好き勝手に言われる水銀燈。
彼女からすれば全く身に覚えのない、理解不能な仕打ちだった。

「……何を訳の分からないことを言っているの?
 貴女達が私を騙してここに誘い込んだんでしょう…!?
 この水銀燈の恐ろしさはまだ分からないバカな子は…」

「往生際が悪いわね。水銀燈。見苦しくてよ」

怒気みなぎる水銀燈の言葉を遮って、真紅は悠然とかぶりを振った。彼女の凛然とした
眼差しには、確信と同時に水銀燈に対しての哀れみの色が込められている。

「いくらとぼけてもこの真紅には通用しないわ。証拠は揃っているのよ。
 貴女がジュンの家の鏡から覗き見をしていたことは、この私の推理と
 のりの証言から明らかなの。無駄な抵抗はおやめなさい」

「ジュン…? 鏡…? 覗き見…? 何おかしなこといってるの?」

「まだ知らん振りするかですぅ! とっとと白状するです!」

「水銀燈があんなことするなんて、ヒナは思っていなかったのよ。
 まじめでやさしい人だったのに…ヒナ悲しいのよー」

口々にそんな事を言われて、水銀燈は混乱の極みにあった。水銀燈を謀ったのは
真紅達のはずなのに、なぜ彼女達から自分が犯人扱いされているのか、全く分からない。

「水銀燈…。探偵に犯罪の証拠を突きつけられた犯人は皆、自分の負けを
 認めて動機を告白するものだわ。素直に敗北を受け入れてごらんなさい。
 きっと気持ちがすっきりするはずよ。
 さあ。なぜあんなことをしたのか理由を話してみなさい。黙って聞いていてあげるから」

自分自身に陶酔するかのように大げさな身振り手振りで話を続ける真紅には、普段の
彼女らしい淑やかな雰囲気が皆無だ。余りにも痛々しい狂態を余すところなく晒している。
水銀燈からすれば支離滅裂なことをまくし立てる真紅達は、常軌を逸しているようにしか
思えない。
よく見てみれば、真紅は妙な帽子とケープを身に着けている。
薔薇乙女を生み出したローゼンは神にも等しい存在だ。ローゼンの創った身体と
ドレスの上に余計なものを身に付けるということは、彼の意匠と造形を否定するにも等しい
最大の侮辱と冒涜である。そんな涜神じみたことを平気で行い、真紅らしからぬ卑劣な
策略に打って出るという変わり果てた今の彼女を見て、水銀燈はようやく今の状況を把握し、
そして納得した。
今の不可解な状況を明快に説明する解答を、水銀燈はようやく得たのだ。

「真紅。貴女、可哀想ね」

水銀燈の身を焦がしていた激怒も今では消え去り、後に残ったのは憐憫の情だけだ。
彼女の紅い瞳に宿るのは怒りでも憎しみでもない。哀れみの色だった。

「前々から変な子だとは思っていたけれど…とうとう頭がおかしくなっちゃったのね。
 そんなヘンな格好をして、訳の分からないことを話し続けて、取り乱して」

見る影もないほど豹変してしまったかつてのライバルを見て、水銀燈の胸を空しさと
哀しみが吹き抜ける。自分を支えていた柱の一つが壊れて崩れてしまったかのような、
張り合いを失ったかのような喪失感を彼女は覚えていた。

「……ヘン…ですって…? 訳が分からない……ですって…?」

500:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/02 01:20:22 dk7hfGDI
ほんと糞キムって役立たずで嫌われ者のクズだな

501:雪華綺晶はここにいる 18/38
08/07/02 01:22:36 Vu3UqG8N
真紅の声色が決定的に変化したことに気づき、彼女の後ろに控える雛苺と翠星石が
びくんと身体を震わせて、その顔を青ざめさせていく。
それは真紅がくんくんに入れ込む情熱の程を知る者だけに許された反応だった。
静かに怒りにわななく真紅の様子には気づかずに、水銀燈は視線を雛苺と翠星石に移す。
思慮に欠ける幼児に等しい雛苺は仕方ないにしても、翠星石まで真紅の狂気に
侵食されているというのは同じ薔薇乙女の姉妹として、水銀燈には嘆かわしく思われた。

「手荒な真似はしたくなかったのだけれど…犯行を認めないなら仕方ないわね。
 水銀燈。
 あらかじめ言っておくけれど、私は暴力でアリスゲームを制するつもりはないわ」

「よく言うわね。雛苺と翠星石を連れてきておいて。
 三人がかりで私を仕留めるつもりでしょう」

水銀燈の言葉にも、真紅はまるで聞こえていないかのように反応しない。
実際に怒りに駆られて聞こえていなかったのかもしれない。
真紅の青く澄んだ瞳は今や烈火の怒りに赤く染まっている。

「だからこれはアリスゲームには関係ない、薔薇乙女探偵団による犯人逮捕よ。
 聞き分けのない犯人は、力ずくで確保されても文句は言えないのよ」

意味不明な口上を並べて、結局は自分を袋叩きにするつもりの真紅を、水銀燈は
哀れむ以外にない。
今の真紅は痛々しくて見るに耐えなかった。ここまで錯乱して逸脱してしまった真紅など、
水銀燈は見たくなかった。いっそこの場で潰してやった方が情けというものだ。

「真紅…。本当に壊れちゃったのね。
 惨めだわ。
 もう貴女はこの水銀燈にここで倒されなさい。
 そのまま無様に堕落するよりも、その方が幸せというものよ」

「雛苺。翠星石。水銀燈を捕まえるわよ。探偵の領分を越えているけれど、
 事件解決のためには仕方ないわ。彼女をジュンの家まで連行して自白させるわ」

「うぃ!」

「わかったです! 覚悟するですよ水銀燈! オマエにカツ丼地獄を味わわせて
 やるですぅ!」

臨戦態勢に入った真紅達3人を冷然と見据えて水銀燈もまた翼を展開し、眼前の
卑劣な妹達を殲滅するべく行動を開始しようとする。
その時だった。

「この金糸雀をさしおいて、一体何を盛り上がっているのかしら?」

木々の間から4人の薔薇乙女の前に現れたのは、開いた日傘のはじきを肩に乗せた
金糸雀だった。全く予期しなかった薔薇乙女の出現に、他の4人は呆気に取られて
悠然と笑う彼女を見つめる。

「何よ。あのちびっこいのは」

冷えた眼差しを金糸雀に向けながら、水銀燈は誰に問うともなく呟く。
他の姉妹同様、水銀燈も金糸雀の顔を覚えていないらしい。

「金糸雀……? どうして貴女が今、ここにいるの?」

「翠星石たちに構ってもらいたくて追ってきた…です…?」

502:名無しさん@お腹いっぱい。
08/07/02 01:24:23 dk7hfGDI
糞キム出てくんなクズが
死ね

503:雪華綺晶はここにいる 19/38
08/07/02 01:25:44 Vu3UqG8N
「金糸雀も真紅のジョシュになりたい…なの?」

各々の質問には答える事無く、金糸雀は沈黙を保ったままだった。その緑色の瞳には
暗い影が差していたが、そんな微妙な変化にはこの時点では誰も気づかない。

「誰なのか知らないけれど、この私に自分から姿を見せるなんて…マヌケな子ね。
 貴女もついでにジャンクにしてあげるわ」

不敵に笑う水銀燈へ目を遣った金糸雀は、展開していた日傘を閉じて胸の前で掲げ持つ。

「ピチカート!」

主の命に応じて現れた人工精霊は、日傘の周りを螺旋状に周回飛行し、瞬く間に日傘を
ヴァイオリンへと変化させた。
左肩にヴァイオリン本体を乗せて右手に弓を掲げた金糸雀は全く躊躇する様子を見せずに、
本体に設えられた弦に弓の毛を添えて演奏を開始する。

「!?」

あざやかな音色は強烈な突風と化し、油断していた水銀燈を空まで吹き飛ばす。
彼女の油断も無理からぬ。水銀燈が軽く挑発したとはいえ、何のためらいも通告も示さず
即攻撃に移るような姉妹の存在など、彼女は想像だにしなかったからだ。

「金糸雀…!? 貴女…一体何を…!?
 水銀燈を捕まえるにしても、やり方が乱暴すぎるわ!」

ありえない事態に狼狽の声を上げる真紅に顔を向けた金糸雀には、普段のドジで明朗な
彼女らしい雰囲気が微塵もない。刃のように鋭く冷たい視線は水銀燈のそれにも匹敵する。

「金糸雀…何かこわい感じなの…」

「なに先走ってやがるのですオバカナ!
 何にもしてねーくせに美味しいとこだけもっていこうとするなです!」

うろたえる真紅に怯える雛苺、怒る翠星石を冷たく見据える金糸雀は勝気な笑みを浮かべ、
満を持したように口を開く。

「カナは、貴女達を倒しに来たかしら。計画なんかに頼らなくても、
 実力で貴女達を倒せることを証明してあげるかしら」

ヴァイオリンから紡がれる旋律は烈風に変換され、真紅達をまとめて軽々と吹き飛ばす。
その威力は普段の彼女のそれと比較にならないほど強力だ。
初撃を食らって弾き飛ばされた水銀燈の傍に落下した真紅は、ダメージにうめきながら呟く。

「どういうことなの…? 何故金糸雀が私達を…。まさか真犯人は…金糸雀…!?」

「…………」

地に倒れ伏したままそう独り言つ真紅を見下ろして、水銀燈もまた考えを巡らせた。
真紅が水銀燈を指差し犯人だ何だのとわめいていたのは、頭がおかしくなってしまった
彼女の狂言か妄言だと水銀燈は思っていたのだが、突然現れた金糸雀によってその認識を
改める必要に迫られた。
水銀燈のみならず、真紅、雛苺および翠星石の4人をまとめて倒そうとしている金糸雀は、
水銀燈を誘い出した事件に大きく関わっていると考えるしかない。金糸雀が偶然この場に
現れたにしてはタイミングが良すぎるからだ。4人揃うのを狙っていたとしか考えられない。
金糸雀が真紅達も同時に攻撃していることから、互いが手を組んでいないことは明らかだ。
それどころか、真紅達は金糸雀の出現を予期すらしていなかったような発言をしている。

504:雪華綺晶はここにいる 20/38
08/07/02 02:01:16 Vu3UqG8N
ここから導き出されるある仮定―実は真紅達も水銀燈と同様に何者かを追ってここまで
誘導されたのではないか?
常軌を逸した発言や格好をしている真紅が実は正気であり、何らかの事件を解決する
ために犯人を追ってここまでやってきて、犯人を水銀燈と勘違いしていたと仮に考えるのなら、
全てつじつまが合うのではないか?
にわかに信憑性をおびてきた真紅の言葉と今の状況を検めた水銀燈は、低く抑えた声で
真紅に問う。

「昨日の夜に鏡の中に現れた妹を探して、私はここに来たの。
 真紅、もしかして貴女も―」

そんな水銀燈の発言に、真紅は驚いた顔を彼女に向けた。

「家来の家の鏡に現れた姉妹を追って、私達はここまで来たわ。
 水銀燈…貴女ではなかったの…?」

「ふざけないで。そっちに行ってなんかいないわよ。
 どうやら私も貴女も嵌められたようね。
 あの金糸雀とかいう妹に」

真紅の双眸に怒りを滾らせて金糸雀を睨む水銀燈。それに気づき、真紅が慌てて止めに入る。

「待ちなさい水銀燈! 金糸雀は元々アリスゲームに消極的な子よ。
 どこか様子がおかしいわ。鏡に現れたのが貴女じゃないのなら、
 白いドールが関わっているのかも…」

「煩い! こうして仕掛けてきてるのだから、あの子が犯人に決まっているでしょう!
 小賢しい罠でアリスゲームを穢す子は、この水銀燈が容赦しない!」

真紅の制止の声も聞かずに突貫する水銀燈を見取って、金糸雀は次の攻撃態勢に移った。



そんな戦いを高みから見下ろす金色の瞳が一つ。雪華綺晶だった。
気配を薔薇乙女に認識されない彼女は、大胆にも戦いの場からいくらも離れていない木の枝に
ゆったりと腰を落ち着けて彼女らの動向を見守っている。
能面のようなその顔は、本当に熾烈な戦いの光景が目に映っているのかどうかも疑わしい。
金糸雀を利用して、雪華綺晶以外の薔薇乙女を全滅させること。
これが雪華綺晶が実行した計画の全容だった。
雪華綺晶は他の姉妹と違い、アリスに至るために7つのローザミスティカを1つに束ねるという
手段を採らない。彼女は薔薇乙女の媒介の心を奪うことでアリスになろうとしているドールだ。
そのため、狙うのは薔薇乙女の体内に封入されたローザミスティカではなく、媒介の方だ。
しかし媒介を狙う上で、薔薇乙女の存在がどうしても邪魔になる。
なぜなら薔薇乙女の媒介は彼女達が活動し戦うためのエネルギー源であり、死守するべき
存在だからである。雪華綺晶が媒介を狙おうとするなら、そうはさせまいと自身の媒介を守るために
必ず薔薇乙女達は反撃にでるだろう。
ならばどうすればいいのか? 答えは至極簡単で、先んじて邪魔な薔薇乙女達を排除すれば
いいのである。無論、薔薇乙女達の行動を監視し、彼女らの隙を狙って媒介を手中に収めるという
手段も隠密を特技とする雪華綺晶としてはやってやれないことはないが、手間と時間が掛かりすぎる
煩雑な方法の上に、どこかで失敗した場合薔薇乙女との直接対決を強いられることになる。
他の姉妹と比較して際立った戦闘手段をもたない雪華綺晶としては、なるべく避けたい事態だ。
そんな面倒でリスキーな手を採らなくても、雪華綺晶の行動を妨害する薔薇乙女達を先にまとめて
消しておけば、媒介は自分の身を守る手段を失うことになる。そうなれば後は無防備の媒介を
悠々といただくだけだ。赤子の手をひねるよりも簡単である。
金糸雀は今、雪華綺晶に魅入られて敵愾心を全開の状態にされている。
金糸雀の心に潜む、他の姉妹に認めてもらいたいという承認の欲求を増幅させられたのだ。
相手の心理の弱点につけ込むことが得意な、雪華綺晶ならではの方法だった。


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