【ノーマル】ローゼンメイデンのSSスレ 8【一般】at ANICHARA
【ノーマル】ローゼンメイデンのSSスレ 8【一般】 - 暇つぶし2ch174:名無しさん@お腹いっぱい。
08/01/19 03:10:02 G0FMlmAv
水銀灯が目覚めてから、男の日々は今までになく充実していった。

親とも連絡を取る事も無く、友人らしい友人もいなかった男にとって、
水銀灯と言う命を持った少女人形が、掛け替えの無い存在になったのは言うまでも無く、
水銀灯の方も、自分を目覚めさせてくれた男を父親だと感じて大層慕っている日々だった。
また、男の手ほどきで料理なども覚え、
小さな身体で甲斐甲斐しく嬉しそうに料理を作っては、男に振舞うまでになっていった。
男もどうにか警備の仕事にありつき、以前より安定はしないものの、何とか暮らしは成り立っていた。

朝。男はいつもの様に目覚め、上半身を起こして軽くベッドで伸びをする。
中々爽快な目覚めだと男が思うと同時に、すぐその鼻にご飯の焚ける甘い匂いと、
味噌汁の香ばしい香りがもぐりこんで来る。水銀灯が作ってくれている朝ごはんだ。
流しの方に目をやると、小さな椅子を台にして炊事をしてくれている水銀灯の姿と、
美味しそうな匂いを醸し出している味噌汁の鍋が見える。


( おはようございます お父様 起きられましたか )


男が起きた事を感じ、にっこりと振り向く水銀灯。
その美しいドレスには不恰好としか言いようが無い、小さな白い割烹着のような服を上から着込んでいる。
水銀灯のドレスを汚さないようにと、どうにかこうにか男がこしらえた物らしい。
美しい銀が揺らめく長い白髪も、綺麗に纏め上げられている。
まるで昭和の時代に見られた、食事を作る地方家庭の母親の様な水銀灯の姿に、
男は毎朝えもいわれぬ嬉しさと懐かしさと温かさを感じていた。

「ああ。おはよう水銀灯・・・悪いな、いつもいつも・・・」
( それは 言わない約束ですよ )

「ははは 毎朝この会話から始まるな」
( でも わたし楽しいです こういう朝のごあいさつ )

男は苦笑しながら顔を洗ってくると水銀灯に言い、洗面所に向かう。
水銀灯は( はい )と笑顔で答えながら、小さな折り畳みテーブルに
よいしょよいしょと朝食を運んで行く。
男はその姿をチラチラ見ながら、この上ない幸せを感じつつ顔を洗った。

「それじゃあ、いただきます」
( はい いただきます )

熱々のじゃがいもと玉ねぎの味噌汁に、かりっと焼けた たこさんウィンナーと市販の漬物。
そしてふっくらと炊き上がった山盛りのご飯。男と水銀灯は手を合わせて朝食を口に運ぶ。
ふかふかのご飯の甘さと、絶妙な味加減の味噌汁が、男の胃と脳を一気に活性させていく。

「ズズッ・・・っ くあー・・・美味い、美味いなぁ!ほんとに美味い!」
( うふふ お父様 毎朝ちいさな男の子みたいですよ )

「そうは言ってもなぁ、本当に美味いんだから。でも、よく短期間でこんな味が出せるようになったなぁ」
( お父様のお教えが お役に立ってますから )

嬉しそうに微笑みながらそう言う水銀灯に、一人の時には絶対に感じ得なかった
安堵や幸せ、大事な者を庇護したいと言った感情と愛情が、男に湧き上がってくる。
この感情はあの日からずっと耐える事無く、男に生きる源のようなものを与え続けていた。


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