アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ10at ANICHARA
アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ10 - 暇つぶし2ch29:読子さん、バトルロイヤルですよ!  ◆tXzDpHv2x2
07/12/15 16:22:19 Grg+Jqrv
「まず要点から言いましょう。これから彼方たちには、最後の一人になるまで殺しあってもらいます」

ジョーカーはそう言った。だが全員がその言葉を飲み込み、理解する前に別の男の声が室内に響き渡った。

「そんなことは聞いていない!」

部屋の中央にいるジョーカーに向かって、ひょろ長いという形容詞がぴったりと当てはまる男がづかづかと歩いていく。

「ア、アメリカ大統領さん!?」

眼鏡の女が叫ぶ。
ミッドチルダに移住しているはやてには、現在の大統領が彼なのかは分からなかったが、
あまりに接する機会のない人物が出てきたことにより僅かに混乱した。
そして、それはジョー・カーペンターのことを知っている3人の女性も同じことであり、故に黙ったままでいるという選択肢を取らせた。
これから何が起こるのかも知らずに。

「いったい、これはどういうことだジョーカー!」
「おやおや、これはプレジデント。お久しぶりです」
                                                     
怒りに顔を染めた大統領の剣幕にもジョーカーは動じずに、落ち着き払った声で答える。
                                                     
「よく私の前に出れたものだな!」
「ええ、あの時は醜態を晒さしてしまって申し訳ありません。今日はおしめをはいてきましたか?」

そうジョーカーが言ったとたん、大統領の顔が赤一色に染まった。
゛おしめ″という単語は彼にとって怒りを覚える事象のことを指すのだ。
                                                     
「殺れSP!」
「ハッ、閣下!」
                                                     
大統領の命を受け、側に控えていたサングラスに黒服の男たちがジョーカーに銃を向け、引金を引く。
そして、数発の弾丸ジョーカーの体を射抜く。

30:読子さん、バトルロイヤルですよ!  ◆tXzDpHv2x2
07/12/15 16:23:14 Grg+Jqrv
筈だった。
数人のSP達の放った弾丸はジョーカーの元にたどり着く前に、見えない壁に当ったかのように弾かれた。
                                                         
「強化ガラスですよ、プレジデント」
                                                         
にやりと笑いながらジョーカーが種明かしをする。
だがその行動は大統領にとっては歯止めにはならず、逆に怒りを助長させる。
                                                         
「もう1度、もう1度撃ち殺せい!」
                                                         
大統領の叫びに戸惑いつつもSP達はジョーカーにもう1度銃口を向けた。
その瞬間SP達の首が弾けとんだ。
                                                         
五人のSP達の死にこの場にいる全員が凍りつく。いったいなぜ首がはじけ飛んだのか。
ジョーカーは辺りを見回し、この場にいる全員が驚愕しているのを確認すると、全員の疑問に答えるために口を開く。

「さて、既にお気づきの方もいるとは思いますが、あなた達の首には爆弾型の首輪が付いております」                                                         
はやてはジョーカーの言葉を聞き首を押さえると、金属質な手触りの異物が首に巻かれているのが分かった。
辺りを見回すと、他の人間にも金色の光を放つ首輪が嵌っていた。
                                                         
「この首輪は我々の任意により、爆発させることが可能なのです」
                                                         
そう言いながら、ジョーカーは右手でSP達を指し示し、
                                                         
「このようにね」
                                                         
参加者達に無残な彼らの姿を再確認させた。

「さて、プレジデント」

ジョーカーはゆっくりと視線を大統領の方へと向ける。
そこには一国の主とは思えないほどに、怯え、腰を抜かした哀れな男がいた。
                                                         
「な、な、な、な、な、なんだジョーカー!」
「あなたの命を聞いた彼らが死んだというのに、あなただけが生き残っているのは不公平だと思いませんか?」
                                                         
その言葉は大統領に対する死刑宣告だ。
大統領の顔がさらに青ざめ、白ですら通り過ぎる。さらには、
                                                         
「おやおや」
「クッ……」
                                                         
ジョーカーが呆れた口調で呟く。その視線の先には失禁した大統領がいた。

「や、やめてくれ! やめてくださいジョーカー! 金なら幾らでも出します、
 なんなら私の椅子をくれてやってもいい……上げますから! だから命だけは!」
「そうです! 止めて上げてください、ジョーカーさん!」

大統領と眼鏡を掛けた女がジョーカーに懇願する。
そして、二人に続くように幾人の人間もジョーカーに非難の声を上げた。
首輪を恐れるものがいたためその数は少なかったが、それでもジョーカーに反発する意思はすべて失われてはいなかった。
ジョーカーは自分に向けられる視線を感じ、周りを見渡し観念したかのように肩をすくめた。

「分かりました。止めましょう」

ジョーカーがそう言うと大統領と眼鏡を掛けた女と、大統領が安堵し、両者ともほっと胸を撫で下ろした。

31:読子さん、バトルロイヤルですよ!  ◆tXzDpHv2x2
07/12/15 16:24:17 Grg+Jqrv
その瞬間、アメリカ大統領の首輪が爆発した。



「な!?」

首が失われた大統領の体は力が抜け、地面に崩れ落ちた。
全員が驚愕の表情となり、多数の視線がジョーカーに集中する。

「嘘です」

まるで、いたずらの成功した子供のような表情で、男はいけしゃしゃあと答えた。

「……ジョー…カー…さん、そんな……なんで?」
「部下に責任を押し付けておいて逃げる上司は、私のポリシーに反するもので」

ジョーカーは一拍おき、

「そう思いますよね、機動六課部隊長殿?」

八神はやてに向かってそう言った。
いきなり話を振られたはやては僅かに混乱した。いったいこの男は何を言いたいのだろうか?
そんなはやての困惑など関係ないとばかりにジョーカーは持っていた杖から白い布を取り外した。
そして、現れたのはカラフルな杖だった。真っ白な棒に赤い宝石と金色の装飾が先端に付いていた杖である。
だが、かつては見るものに感嘆の意を覚えさせるほど美しかったであろうその杖は、今は全体に無数のひびが入り、
少し衝撃を与えただけで割れそうなことが見て取れた。

「……なんで?」

それは八神はやてがよく知るものであった。なぜあれがあの男の手にあるのか?
はやては周りを見渡した。だが、捜し求める人物はここにはいなかった。
レイジングハートと呼ばれるインテリジェントデバイスのマスターである、高町なのはの姿は。
                                                        
「あ、あんた! なのはちゃんをどうしたん!?」
                                                        
だからはやては聞いた。親友の行方を知っているであろう男に。
そんなはやての問いにジョーカーはうさんくさい微笑を浮かべながら答える。
                                                        
「いやぁ、内のスタッフが手違いをしてしまいましてねぇ」
                                                        
ジョーカーは白髪の頭を撫で付けながら、
                                                        

「処分しました」

そう続け、
                                                       
「こんなふうに」
                                                        
ジョーカーはレイジングハートを床に落とした。
それを見たはやては手を伸ばそうとした。
だがそれは無駄としかいえない行動であった。物理的に距離が離れすぎている。
当然のごとく、全身がひび割れていたレイジングハートは地に落ち、音を立てて粉々になった。
はやての心に怒りが灯る。

32:読子さん、バトルロイヤルですよ!  ◆tXzDpHv2x2
07/12/15 16:24:52 Grg+Jqrv
「この人殺し! なのはちゃんを返せ!」

故に激昂した。だが、怒りを覚えたのははやてだけではなかった。

「なのはさんに何をしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

高町なのはの弟子であるスバル・ナカジマも激昂していた。いや、既に彼女の怒りの限界点など突破していた。
彼女の怒りは力となり、体から青い魔力が放出され瞳が金色へと染まる。そして、誰かが止める間もなくジョーカーに駆け出した。

「止めなさい! スバル!」

スバルの隣にいたツーテールの少女が叫ぶ、だがスバルはそれにも関わらずジョーカーの顔面目掛けて拳を振り下ろした。
激しい音ともに、車が激突したかのような音が辺りに響き渡る。
だが、スバルの拳はジョーカーには突き刺さってはいなかった。先ほど銃弾を止めた壁へと突き刺さっていたからだ。

「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

しかし、スバルにとってこの程度の障壁を砕くことなど問題ない。
彼女にはIS振動破砕という物質を壊すことに適した能力があるからだ。
コンマ数秒で強化ガラスにひびが入り、蜘蛛の巣が広がっていく。
例えスバルの首輪が爆発しようともこのままならば確実に、人体を破壊するのには充分な一撃がジョーカーに加えられることだろう。


リィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン


その時だった。会場に奇妙な音が響き渡ったのは。
その奇妙な音は壁に反射し、全参加者の耳介に拾い集められ鼓膜が振動し神経パルスに変換され
蝸牛神経を通し大脳の聴覚中枢へと送られた。
それは戦闘機人という人ならざるスバル・ナカジマも同様であり、その音はスバルの頭脳を激しく揺らす。

「ガッ、ア、ア、ア、ア、アアアアアアアア!!」

スバルは叫び声を立てると、とたんに倒れた。なんだこれは、頭が激しく痛い。
だが倒れたのはスバルだけではなかった。なりゆきを見守っていた女子高生、スバルに助太刀しようとしていた男、
ジョーカーと対峙していた眼鏡の女など、会場にいるほとんどの人間が耳を抑え脳を揺らす苦痛に耐えていた。
なぜ、耳と頭が痛む?
会場にいるのほとんどの人間はそれを考えた。

33:読子さん、バトルロイヤルですよ!  ◆tXzDpHv2x2
07/12/15 16:25:43 Grg+Jqrv
「音ですよ」

ほとんどの参加者の疑問を特定の音波だけを遮断する耳栓を付けたジョーカーが答える。まるで手品の種明かしをするように。

「人間が音として感じれるのは20KHzから30KHz。
 ですがその枠外の不協和音をぶつけられれば、人間の脳は否が応でも影響を与えられてしまいます。
 こんなふうに、ね」

音が強くなったのか、さらに頭痛が激しくなり、会場内のあちこちから苦痛に苦しむ呻き声が上がる。
だが、こんなことではスバルの怒りは消せなかった。後一押しすれば、ひびが入り崩壊寸前のガラスを割りいけ好かない男に一撃を与えることができるのだ。
爆弾首輪が嵌っていようが関係ない、自分の首が吹き飛ぼうが一撃を加えれば相手は肉塊になる。
だがそんなスバルの思考と行動を咎める者がいた。

「止めなさいスバル! このままだと二人が死んじゃうわよ!」

スバルの相棒であるティアナが叫ぶ。スバルはそちらの方に振り向いた。
そこにいるのはティアナに介抱されている、顔を苦悶に歪め倒れている見知った少年少女、エリオとキャロであった。
二人とも他の人間と同じように、いや、それ以上に苦しんでいた。喋れないほどに。
スバルにはせいぜい体力な問題で二人が他の人間と比べ苦しんでいるんだろう、としか検討がつかなかった。
だが、これ以上苦しみが続けば間違いなく命に関わる。

「どうしました? あの子達を犠牲に出来れば、私を亡き者にするのは簡単なことですが?」

ジョーカーがスバルにそう問いかける。だが、スバルにもう反抗する意思はなかった。ガックリと力なく項垂れ、その場に座り込む。

「……お願いだからやめて、もう逆らったりしないから」
仲間の命を守るためにスバルは降伏した。耳に響く音はなんらかの能力ではなく、装置であることは検討が付いていた。
装置である以上は例えジョーカーを倒せたとしても、止めることが出来なければ体力のない者から死んでいってしまう。
「聞き分けがいいのは助かります」
ジョーカーがそう言い、右手を上げると全員を苦しめていた音がぴたりとやんだ。
「ですが、鋼鉄ですら砕く力を持っていたとしても、そのような軟弱な意思では何もできませんよ」
スバルはジョーカーの言葉に悔しさを覚え歯噛みするが何とか堪える。
ジョーカーはそんなスバルの姿を満足そうに眺め、はやての方へと視線を向けた。
「さて、あなたの部下が粗相をした責任は取ってくれますよね、機動六課部隊長殿?」
ジョーカーがそう言うと、はやての頭上から一枚の紙が降ってきた。
はやてがその紙を見ると、ルール一覧と書かれていることが確認できた。

「私は足を悪くしていまして、杖無しではあまり長時間立っていられないのですよ。
 これから貴方達がしなければならないことを説明しようと思っていましたが、地に座ったままで格好がつきません。
 お願いできますよね?」

はやては、ただただ男の言葉に頷くことしか出来なかった。
拒否することはできない。もし止めれば部下たちのみならず他の人間にも魔の手が迫ってしまうかもしれない。

「ジョーカーさん! こんな、こんな酷いこともう止めて下さい! 今ならまだ間に合います! お願いですから!」
眼鏡の女が泣きながらジョーカーに懇願する。
「酷いこと? 私の足をこうした貴女が言っていい台詞ですか? それに、真に酷いことはこれから始まるのですよ、The Paper!」
ジョーカーがそう言うと、その姿は出てきた時と同じように地中へと消えていった。
ザ・ペーパーと呼ばれた女は慌てて追ったが、ジョーカーが消えていった穴にたどり着く前に穴は塞がってしまい、
ただ立ち尽くすことしか出来なかった。
その光景を見ていたはやては地面に落ちた紙を拾い上げ、それを読む。
決して読むのはやめられない。さらに言えば一言一句間違えて言うことも。
あの男は、きっとどこかで自分たちのことを見ているのだから。
はやては覚悟を決めると、ルールを声に出して読み上げる。
ただそれだけのことのはずなのに、泣きたくなった。周りの視線が痛いほどに、自分に集まっているのが見ないでも分かったから。
それでもまだ終わっていない。生きてさえいれば、まだ巻き返すチャンスはあるはずだ。
そう信じはやては怒りと屈辱に耐えつつ、声を震わせながら紙に書かれたルールを読み上げ続けた。
十数分後、そこに誰もいなかった。砕けたレイジングハートと6人の首無し死体だけが残されていた。
そのときには既に、地獄の舞台へと82名の参加者達が転送させられていたのだから。

34:読子さん、バトルロイヤルですよ!  ◆tXzDpHv2x2
07/12/15 16:26:24 Grg+Jqrv
【アメリカ大統領@R.O.D 死亡】
【SP1@R.O.D 死亡】
【SP2@R.O.D 死亡】
【SP3@R.O.D 死亡】
【SP4@R.O.D 死亡】
【SP5@R.O.D 死亡】

>>21
御苦労さまです


35:死ぬよりも忌むべきもの ◆it6ZZg7l4s
07/12/15 17:27:31 TXvh9j7m
辺りを捜索中だったチェスは奇妙な音を聞いた、それは少年ならば見逃してしまうかもしれない。けれど不死者として世界を回った彼には聞き覚えがある音だった。
「これは…」人間がいる、しかしこの様な音を立てているということは…恐らくはこのゲームに乗っている人間。
もしくは警戒の足りない一般人、それもこのようなものを使うのは大人数。
力と知識が無くとも数がいれば使い方はある、前者だとしても遠くから見てまずそうなら逃げればいい。
そう考えたチェスはそちらに行ってみることにした。


ドドドドドドドドドド
「ひゃっはぁ!!いいね!いいね!いいね!!こんなものまで入れてるったぁ…最高だぜ、この大会は!!開いたやつは!殺すけどな!」
「…」
バシャ!
「こういうの一回乗ってみたくてさぁ、なんていうの?大船じゃない不安定感が堪らないってうやつ
 ん?どうしたんだブラザー、方針は派手にいくんじゃねえの?ちがうのか、俺の勘違いか?」
「…勘違いだ。」
顔に当たる川の水が気持ち悪い…清麿は頭を抑えてうめいた、まさか「コレ」を見たラッドがあんなに興奮するとは思わなかった。
―なにこれ??ってマジ、マジで?マジでジェットボ-ト!?何で入るのコレ。
―おい、何で川の方に行くんだ。くっ、ボート引っ張ってるのになんて早さだ。

まあ、デイバックはラッドに押えられていたため、阻止するのは不可能だったが…
ボートに乗ることで危険性は高まるが、それでラッドの機嫌を損ねたらたまらない。頭を切り替え今後の予定を考えてみる。
たとえば人に遭遇したら…
1・いきなり撃たれる
2・相手は見た瞬間逃げる、もしくは隠れる
3・やってきて交渉を持ちかける
4・それ以外
1は論外、警告も無しの攻撃は恐らくこのゲームに乗った者だろう。
 錯乱してるとしても同行には危険すぎる、逃げるもしくは反撃だ。
2なら説得の余地がある、もし複数いればゲームに乗ったものの可能性も低い。とりあえず交渉から入ろう。
3と4は要注意だ、こちらの武装を見て声を掛けれるのは相当の自信か覚悟がいる。
 悪人という保証はないが、相応の技能保有者―最初の犠牲者の様な―である可能性が高い。注意するに越したことはないだろう。
……ラッドもいるしな。

考えを纏めて顔を上げると、川が分かれていることが解った。
方角は今までどうりの西と、南。
「んじゃあ、あそこらへんに止めるか。」
「降りるのか?」
その案には賛成だった清麿は、船を縛るロープを結んでくれるようたのんだ。
「さあ、捜索と行くぜぇ。まってろよ俺のかわいい子猫ちゃんたち。」

36:死ぬよりも忌むべきもの ◆it6ZZg7l4s
07/12/15 17:28:12 TXvh9j7m
チェスは上陸する様子を高台から見ていた。
--2人組みか、この時点でゲームに乗っているとは考えにくいな。交渉役の男と戦闘員…いや保護者と被保護者の2人連れか。
もし考えているとおりの人間達なら、保護することを断ることはないだろう。
ジェットボートなどという目立つことこの上ない物を移動手段としている以上、先ほどの女同様何も考えていない(チェスはそう判断している)人間かもしれないが。
--逆に多少の襲撃者ぐらい問題に入らないぐらいの力があるとも取れるからな。
手早く思考を纏め、行動に入る。
彼らは2手に分かれたようだ。先ずは…


「しけてるな、誰もみつかんねぇ、この溜まったテンションをどうするよ。」
「あんま物騒なこというなよ…、2手に分かれて探してみたらどうだ?効率よく見つけれるかもしれない。」
「いいね、のった!集合時間はテキトー、各自やって殺ったぜともったら此処に戻ってくるでOK?」
殺らねえよ…、そういうまもなくラッドは飛び出していった。
「どうせ返答聞かないなら、疑問系つけるなよ…」
--さて、今のうちに行動しないとな。
清麿がいざという時のラッドからの援護も、ラッドの制御も放棄して別行動を提案したのには訳があった。
上陸のときに見えた影、恐らく人間…それも子供だろう。ラッドの基準は常人と大きく異なる、見つけたとたん襲わない保障は無かった。
--さっきの子供はこの辺か?
歩きながら茂みに入っていく。すると後ろから声が響いた

「お兄ちゃん…誰?怖いよ、何で銃持ってるの。」
現れたのはやはり少年、恐らくは小学生ぐらいだろう。持ち物はバッグの中か、手ぶらであることからしてもゲームに乗っている可能性は今のところは低い。
「大丈夫だゲームには乗っていない、俺は清麿。君は?」
「ドモン…僕ドモン・カッシュっていいます。」
唇の動きを見た瞬間、背筋に寒気が走った。極力顔色を変えないように質問する。
「変な事を聞くが君はアメリカの生まれなのかい?それと昔親戚の誰かが外国から来たとか聞いたことあるかい?」
「はい僕はアメリカの生まれです、親戚とかは聞いたことはありませんけど。どうしてです?」
「いや言葉が意味が通じるように翻訳されてるみたいなんだが、唇の動きが昔かじった古典英語に近くてな。」
--やはりアメリカの出身…じゃあ、なんで「土門」なんだ?
清麿はひそかに警戒を強めていく、よく考えればこれは先ほどの想定ケース3…要注意に当たる人物だ。


「ねえお兄ちゃん、さっきは2人いたけど何で分かれちゃったの?」
「ああ…別行動を取った方が良いと思ってな。所でデイバック見せてもらえるか?何かこの島からの脱出に役立つものがあるかもしれない」
ラッドについてはお茶を濁され、別の質問をぶつけられた。
「え!でも…」
怯えたような声を出しながら、チェスは思案する。
--まさか感づかれたのか?先ほどの奇妙な質問はそのために…。
チェスという錬金術師をして考えつかなかった「翻訳」という発想。
そして口の動きで「翻訳」元の言語が判る、一般人ではありえない知識。
迂闊なことを言った…この切れすぎる頭は少しまずい。

チェスは荷物を見せることにした。
これからのことを考えるといつまでも一人よりは同行者がいるほうが良い。
たとえゲームに乗った者と出くわしても、殺されない自信は有るが。壁はあって困るのもではない。
「今までどうしてたんだ?他の参加者には出会わなかったのか?」
「いえ、一人ちょっと年上の女の子と出会ったんですけど先にいっちゃって。」
適当に声をかけながら相手の銃に狙いを定める。
--壁はあって困るものではない、その壁がこちらに害を及ぼさない範囲においては。
だが私の障害になるのなら…こいつを殺して、もう一人に庇護を頼めばいい。
走っていった方角から捜索すると此処にくるまでに後15分はかかる。せいぜい取り込む演技の準備でもしよう。
「そういえば、お姉ちゃんは同じぐらいのお兄ちゃんを追っていっちゃいました。そのお兄ちゃんはゲームに乗ってる様じゃなかったんですけど。」
「ふむ…好戦的なのか?いや…」
考え込んだその背中に向けて、手を伸ばす。
--甘いよ、その情報はあの世でゆっくり考えればいい。

37:死ぬよりも忌むべきもの ◆it6ZZg7l4s
07/12/15 17:29:19 TXvh9j7m
パン
銃声がなる「超伝導ライフル」の
「あ、、、、、、」
チェスは片膝を付いて前のめりに倒れこんだ。
「な、何がおこった!?」
清麿は銃を構えて前を向く、その正面をかすって次のライフルが打ち込まれた。
「おーーーい、ブラザー。反応が鈍すぎるぜ、俺が早すぎる?いやいやジャック・ジョンソンとかに比べれば全然下だから、知ってるかボクシング?」
--アレは!?
そこには、朝焼けを背後に真っ白な服を着たラッドが立っていた。
銃口から硝煙は出てはいないがあれで撃ったのは明白だ、同時にもしや自分が狙われていたのではという考えにいたる。
しかしそれでも…
「おい!!いきなり何をしてるんだ、普通の子供だったかもしれないんだぞ?!」
「んな事関係ねーよ、そいつは俺が大好きな眼をしてたんだ。理由なんざそれで十分だろ?」
それ以外に何かあるのか?本気でラッドはそう考えている
怒りに任せラッドに掴みかかろうとした清麿は、地面に起きた変化に驚きの声を上げた。

--血が戻って……
そしてその血はチェスの体に吸い込まれた。
あっけに取られる清麿を無視して、チェスはムクリと起き上がり不気味な笑いをあげる。
その口調も気配も先ほどとはまったく異なるものだった。
「くくく、ずいぶん乱暴なことをしてくれる。まさか連れが殺人鬼とは、おまけに行動力もあるなぁ。あなたが来るのは十分後だったんですがね。
 まあいい、私の仲間になりませんか?この島の人間を皆殺しにしてくれるだけでいい、報酬としてこの体と同じ体を与えよう。
 老いることも無い不滅の体を、どうだ?悪い取引じゃあないはずだ。」
逆光になって、ラッドの表情は見えない。静かにライフルを上げる。
緊張が一気に上昇する--まずい、ラッドなら乗りかねない。ガッシュと会う前に死ぬわけには

パン
一度目と同じライフルの音、倒れたのは…やはりチェスだった。
ラッドは黙々と騙りだす
「そんなもんになっちまったら…オイ、自分が一番の殺害対象になるじゃねえか。
 何やっても死なねえんだぜ!?そんな奴は殺すしかねぇ…だけど死なねえ。関係ねえ殺す
 でも死なないでも殺すでも死なないでも殺すでも死なないでも殺す殺す殺す殺す……………………殺す!」
チェスはおろか自分でさえ理解できない内容であったが、どうやら救われたようだ
「狂ってるな、使えない奴ばかりだ…本当に運が悪い。」
チェスはそうつぶやいて逃走する。
「まてよ、こんなに美味しいそうな獲物を逃すわけねぇだろ!」
まて…そう言う間もなくラッドは歓喜の雄たけびを上げ追跡を開始した。


はあ、はあ
息を切らしながらチェスは逃走する、不死人でも疲労はするがそれでも常人よりはるかにタフだ。
痛みを無視すれば、筋肉が裂けて物理的に限界が来るまで走ることすら出来る。
--しかしなんだこの違和感は?
そう、チェスは先ほどから違和感を感じていた。なにやら胸の辺りが苦しい、息苦しいのではない「くるしい」のだ。
気のせい、そう考えるには奇妙な感覚。とは言え今は逃走中だ、じっくり確認とは行くまい。
--とりあえず逃げてからの話だな…見えた、川だ!
目的の場所を見つけてニヤリとするチェスの体がふらりと揺れる。
「ぐぁ!」
見れば足にナイフが突き刺さっている。
--こ、これは!?
考えるまでも無い、追いつかれたのだ。障害物の向こうから音がする、ラッドはその感覚だけでナイフを命中させていた。

そして死刑執行人が現れる
「よ~う、びびったか~い?俺もびっくりだ!まさか当たるなんてな、神様に感謝しなくちゃいけない。
 ちょっと待ってな、今10秒ほど祈りをささげる。」そしておもむろにしゃがみ込むと、チェスの手を取った。
「いーち」そして指に手を添え……小指をへし折った。
「ぐあぁあ!?」「にーい、さーん」「やっやめ」
絶叫が上がってもラッドの行動は止まらない。「ごー、ろーく」
ゆっくり、ゆっくり、一秒に一本。

38:死ぬよりも忌むべきもの ◆it6ZZg7l4s
07/12/15 17:30:08 TXvh9j7m
「じゅーいち」
「…!!」
再生した小指をもう一度へし折られた。
「なんつーかな、あんまり変わんねーな不死者ってよ。最高にスカッとするけどふんぞり返ってる成金ぐらいか?
 とりあえず、一辺死んどけ。」
ドン、すざまじい打撃がチェスの胸に叩き込まれた。…そしてチェスの心臓は停止した。
「んで、さっきみたいに生き返るんだよな、な?起きろよ千本ノック行くぜぇ!…って死んでんのか?
 なんだよ、適当言うなっーの死なねえんじゃねえかよ。冷めちまったぜ…戻るか。」

ラッドが去ろうとする中、チェスは暗闇の中にいた
--なんだ此処は、私は不死者ではなかったのか!?
叫びは無常に消える…、チェスの心を冷たい絶望がながれた。
--私は死ぬのか…
それも良いかも知れない、この体が停止する以上元の状態に戻そうとする『不死の酒』の効果は消え失せるだろう。
そうなれば、最低でも死ぬより忌むべきあの事は永遠に葬られる。
--それでいい
本当に?優しかった錬金術の仲間にはもう出会えない、ナイル、田九朗、そしてマイザー。
--ばかな!全員食らうはずの対象に過ぎない、あんな奴らの事など!
本当に?
もちろんだ、それに死ぬよりも忌むべき「あのこと」を消し去るチャンスじゃないか。喜べ、死ぬだけでそれは叶う!!
『本当に?』
気がついたら涙を流していた。
--い、いやだ…私は…僕は死にたくない。
『死にたくない!!』


体が動く、呼吸が出来る。
--逃げないと、あそこまで行って逃げないと。
「ひゃっは!すげえ!!本当に生き返ったぜ!!」
物音は怪物を引き寄せる。
目的地はもう直ぐだ、逃げろ逃げろ、さあ付いた!!


ラッドは歓喜の中にあった、死んだと思った獲物が生きていたのだ。
すばらしい、本当に素晴らしい。無限回殺してもいなくならない、何度でも、何度でも、何度でも、何度でも!!
「さあ、みつけたぁ!!」
その獲物はボートでラッドを待っていてくれていた、結んでいたロープを解いたようだがもう遅い。
ボートが出てもラッドは追いつき、それに乗り込めるだろう
--溺れさすのもいいな!一体どうなるんだ、水を吐き出すのか?残った水でまた溺れるのか?
ラッドは満面の笑みを浮かべてボートに乗り込もうとする。
絶体絶命のその状況、少年の口から出た言葉は悲鳴ではなく、一つの意味を持っていた。
それは聖杯に選ばれた騎兵の力。
「騎兵の手綱(ベルレフォーン)!!」
その言葉はボートを加速する、その言葉はボートに翼を与える、その言葉はラッドの手を振り払う!
「うぉぉおぉおっぉぉっぉお!」
ラッドの叫びさえ飲み込んでボートは消え去った。

「ふっざけんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇっぇぇぇぇぇぇ!!」
遅れてきた清麿が見たものは、叫ぶラッド、そして破壊された川辺だった。

39:死ぬよりも忌むべきもの ◆it6ZZg7l4s
07/12/15 17:32:41 TXvh9j7m
ラッドが去ろうとする中、チェスは暗闇の中にいた
--なんだ此処は、私は不死者ではなかったのか!?叫びは無常に消える…、チェスの心を冷たい絶望がながれた。--私は死ぬのか…
それも良いかも知れない、この体が停止する以上元の状態に戻そうとする『不死の酒』の効果は消え失せるだろう。そうなれば、最低でも死ぬより忌むべきあの事は永遠に葬られる。
--それでいい 本当に?優しかった錬金術の仲間にはもう出会えない、ナイル、田九朗、そしてマイザー。--ばかな!全員食らうはずの対象に過ぎない、あんな奴らの事など!
本当に?もちろんだ、それに死ぬよりも忌むべき「あのこと」を消し去るチャンスじゃないか。喜べ、死ぬだけでそれは叶う!!
『本当に?』
気がついたら涙を流していた。
--い、いやだ…私は…僕は死にたくない。
『死にたくない!!』
体が動く、呼吸が出来る。--逃げないと、あそこまで行って逃げないと。
「ひゃっは!すげえ!!本当に生き返ったぜ!!」物音は怪物を引き寄せる。
目的地はもう直ぐだ、逃げろ逃げろ、さあ付いた!!


ラッドは歓喜の中にあった、死んだと思った獲物が生きていたのだ。
すばらしい、本当に素晴らしい。無限回殺してもいなくならない、何度でも、何度でも、何度でも、何度でも!!
「さあ、みつけたぁ!!」
その獲物はボートでラッドを待っていてくれていた、結んでいたロープを解いたようだがもう遅い。
ボートが出てもラッドは追いつき、それに乗り込めるだろう
--溺れさすのもいいな!一体どうなるんだ、水を吐き出すのか?残った水でまた溺れるのか?
ラッドは満面の笑みを浮かべてボートに乗り込もうとする。
絶体絶命のその状況、少年の口から出た言葉は悲鳴ではなく、一つの意味を持っていた。
それは聖杯に選ばれた騎兵の力。
「騎兵の手綱(ベルレフォーン)!!」
その言葉はボートを加速する、その言葉はボートに翼を与える、その言葉はラッドの手を振り払う!
「うぉぉおぉおっぉぉっぉお!」
ラッドの叫びさえ飲み込んでボートは消え去った。

「ふっざけんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇっぇぇぇぇぇぇ!!」
遅れてきた清麿が見たものは、叫ぶラッド、そして破壊された川辺だった。



【ラッド・ルッソ@BACCANO バッカーノ!】
【状態:追跡の軽い疲労】
【装備:無し】
【所持品:超電導ライフル@天元突破グレンラガン(超電導ライフル専用弾23/25)】
【思考・行動】
基本方針:自分は死なないと思っている人間を殺して殺して殺しまくる(螺旋王含む)
1:基本方針に当てはまらない人間も状況によって殺す
2:ひとまずは仲間である清麿に同行
3:不死者(チェス)を殺す、死ななくても殺す
※チェスの名前を知りません
※不使者の制限に気がついていません
※騎兵の手綱が自分が巻いたロープだと気づいていません
※チェスの名前をドモンだと思っています
※石版編終了後のどこかから呼ばれてす
効果が切れる、その瞬間衝撃が走りチェスは地面に投げ出された。
--あの紙本当だったんだ…
ボートが縛られていたロープ、ラッドがデイバックから無造作に取り出したそれには説明書が付属されていた。「騎兵の手綱」これはそう呼ばれる宝具らしい。
バチ バチ ボートが燃える、じきに騎兵の手綱も灰に帰るだろう。
--そして僕も…
全身の血管が破裂している、両手の筋肉は断絶し、胸は大きく裂けている、説明書に書いてあった魔力と言う奴が足りなかった代償だろう。
致命傷だ、不死の力をもってしてもほおって置けば長くは無い。それが制限されていることは先ほど証明済みだ。
「死にたくないよ、マイザー…」
そうしてチェスの意識は途切れた。

※騎兵の手綱およびボートは燃え尽きました
※チェスが何処にいるのかは次の書き手さんにお任せします

40: ◆nZppKxGxio
07/12/15 17:36:41 vaEO01XT
投下します

41: ◆nZppKxGxio
07/12/15 17:38:22 vaEO01XT


夜闇の中、月明かりを受け煌く金色が揺れていた。
十字架だ。それを首から提げているのは、西洋の黒い僧服を纏った長身の影。
言峰綺礼、聖杯戦争というバトルロワイアルの監督役であった神父――しかし、今は参加させられる側。
その表情は常と変わらない。癖のある前髪の下から覗く黒瞳は、僅かに細められている。

西へと歩き出したあと、彼は幾つかの情報、推測を得ていた。
まず一つ。それは、原因の分からない魔術回路の不調だ。
本来、聖堂教会の人間にとって、魔術というのは最大の禁忌だ。だが、彼は遠坂時臣に師事し、数多くの魔術を修めていた。
――自らの心に空いた虚、それを埋める術を魔道の鍛錬に見出せるかという試みは、全くの見当外れであったが。
ともあれ、言峰綺礼はれっきとした魔術師でもある。魔術回路に不自然な負荷が掛かっていればそうと知れる。
結論を示すなら、彼の身体に刻まれた魔術刻印――言峰の家系が伝える、過去の聖杯戦争で使い残された令呪――を消費しなければ、常の効果には届くまい。
一流の域にある治癒魔術とて、致命傷を癒すには及ばないだろう。

だが、それだけなら大きな問題ではない。言峰綺礼は、元より魔術を以って戦場に臨む者ではないからだ。
聖言、秘蹟、祝福された武装――そして何より、鍛え上げられた肉体を以って魔を撃滅する神罰の担い手。
言峰綺礼が直に戦いに臨むのは、必ず聖堂教会の代行者としてだ。
やろうと思えば、足場の悪い森林の中を時速五十キロメートルで疾走できる。細剣の投擲によって生木を貫通させられる。防弾装備さえあれば、機銃弾の嵐を真っ向から突っ切ることもできる。
――無論、何の魔術の助けも借りず。
しかしそれ故に、二つ目の問題が重い。即ち、身体能力の低下。
秘門まで極めた八極拳士であれば――と言うより、武術の類の鍛錬を積んだ者ならば、座り、立ち上がるだけでも体内の不調は把握できる。僅かな違和感を感じた彼は、その場で幾つかの套路を試したのだ。
その結果分かったのは、単に筋肉が衰えているのとは違い、発揮できる最大の筋力が落ちているということ。通常の行動では何ら問題ないが、戦闘での無茶はできまい。
少なくとも、一瞬で十メートルを跳躍するような超人芸は不可能だろう。

原因は全くの不明だが、二つの――制限とでも呼ぶべきものが存在することを裏付ける情報。
そしてそれこそが、最大の解を示す。
優秀な螺旋遺伝詞を持つ個体を選び出す為の生き残りゲーム――螺旋王ロージェノムとやらは、確かにそう言った。
ならば何故、参加者が本来持っている能力を制限するような真似をする?
『優秀な螺旋遺伝詞を持つ個体』が指すのは、単純な能力値の高さではない――そう考えると、逆に個体差を中途半端に残した理由が分からない。
圧倒的な能力値が選定の邪魔になるというのなら、あの男――モロトフとやらのような存在は、最初から排除しておくべきだろう。
完全に制限するか、極端な話、能力に差のない人形にでも精神を移し変え、そして争わせればいい。

そして、今はデイパックの中に納まっている槍。
考えれば、それぞれに異なる武器が支給されるのもまた不自然。わざわざ殺し合いなどさせるのだから、機械的検査では『優秀さ』を測定できぬのだろう。
では、運だけで生き残る弱者が出てきてしまえば? 当然、あちらの目的は果たせない。否、失敗と分からぬままに失敗するという、最悪の状況に陥ることとなる。それさえ考えていないほど愚鈍ではあるまい。

能力をある程度平均化へと近付けながら、しかしトップとボトムの差は莫大、弱者が運に頼って勝ち残ることも充分にあり得る――
この不自然を、容易く解決する仮定がある。
優秀な個体が云々というのは建前で、実際の目的は別――そう考えるのが自然ではないか。
言峰綺礼、彼がその考えに至ったのは、聖杯戦争が同様の構造を持っていたからだ。
共通するのは、参加者に伝えられた殺し合いの目的と、その実情が全くの別ということ。

42: ◆nZppKxGxio
07/12/15 17:40:36 vaEO01XT
制限と幸運から生まれるのは、弱者であっても強者に勝てるのではないか、あるいはゲームそのものを打破できるのではないかという希望。
だが、誰かが希望を抱くということは、誰かが絶望するということだ。弱者の希望が潰えた時に生まれるものか、強者が制限と不運によって敗北した時に生まれるものかは分からないが。

つまり、ロージェノムの目的は――憎悪と苦痛、悲嘆と憤怒、歓喜と快楽、あらゆる感情が互いを喰らい合う、この状況それ自体ではないのか。

何にしろ、言峰綺礼の行動は変わらない。
あの正義の味方が他人の幸福に至福を感じるように、彼は他人の不幸に至福を感じる。それをより多く観られるよう、場を動かしていくだけだ。
故に、自身を正と信じる者こそが、彼にとっては望ましいのだ。

例えば、衛宮士郎のような。
例えば、パズーのような。
――例えば、八神はやてのような。



「むう……」

H-2と3の境界線上、木々の一つに背を預け座り込む人影があった。影は小柄で、肩の細さから女性と知れる。
グレーを基調とした服を着た彼女は、あぐらをかいた上に一枚の地図を広げていた。

「……拙いなあ、チャンスではあるんやろうけど……」

彼女、八神はやてが夜闇の先に見たのは、学校へと入っていく人影だ。
それはいい。元より学校を通過する際は、人を探す心算だった。
だが、その人影が二つだったのがまずい。やたらと金色に光っていた鎧姿と、影のように付き従うもうひとつ。
たとえ出会った人物がゲームに乗っていたとしても、単独であれば対処することは決して不可能ではない。だが、二人が相手であればその難易度は急激に上昇する。
ましてや武装の差すら測れないのであれば、乗り込むのは自殺行為に等しいだろう。
はやての武器はトリモチ銃と――『レイン・ミカムラさん愛用のネオドイツマスク』は使えまい。そこらで拾える石くれの方がまだマシだ。
対して相手の武器は、少なくとも防具が一つ。あの黄金の鎧だ。そして、はやてに鎧を素手で破れるような腕力はない。

彼女は地図を見下ろし、思案を続ける。
「選択肢、というか取れるルートは、と……」
一つは、予定通りに学校を経由してモノレールの駅に向かうというもの。
メリットは、あの二人との情報交換や、あるいは強力な仲間を作れる可能性があるということ。
デメリットはその逆。つまり、あの二人を敵に回してしまう可能性――そうなれば、無傷で逃げられることは期待出来ない。
二つ目は、このまま森沿いを進み、H-1の中心辺りから一気にモノレールの駅まで全速で進むというもの。
距離およそ七百メートル、全力疾走ならば、足場の悪さを考慮しても精々五分。近場で狙撃が可能な高所は、学校とモノレールの駅ぐらいだ。
あるいは彼女の親友のように、キロメートルオーダーでの遠距離砲撃が可能な者もいるかも知れないが、広範囲を恒常的に探知できる手段を併せ持っているとは考え辛い。何故なら、それならばとうの昔に吹き飛ばされている。
そこで、八神はやては気付いてしまった。幸運にも、気付けた。

43: ◆nZppKxGxio
07/12/15 17:42:33 9hDzPUUx
「あたしは、石田幸恵いいます」

その言葉を聴いた瞬間、言峰綺礼は右脚で地を蹴った。
自分の名前を知っているのは、衛宮士郎、ランサー、ギルガメッシュ、イリヤスフィール、そしてパズーと名乗った少年のみ。この女はその誰でもない。
そして何より、石田などという名前は名簿の中には存在しなかった。彼の名を知る、偽名を使い銃を構えた女――あの少年に出会い情報を引き出した『ゲームに乗っている』人間ではないのか。
彼とて殺されてやる気はさらさら無い。先制攻撃で抵抗力を奪おうと考えたのなら、一辺の躊躇も無く行動に移す。
六メートルの距離を一息で殺しつつ長身を回し震脚、左半身にて靠法一打。女の身体を軽々と吹き飛ばし、傍の樹に叩きつけた。
呻きを聞き流し、鋼じみた硬さに握り込まれた拳の一撃。締めていた脇を開き、遠心力を乗せる。

コンパクトな円弧を描いた左拳が着弾し、粘着質の音が響いた。

――八神はやてにとって致命的だったのは、男が神父だという先入観。その戦闘力を、さして高いものではないと考えてしまったこと。

神父は眉一つ動かさず、粘性の液に塗れた拳を見つめる。
そして、口を開いた。

「……殺意のある反撃ではない。敵意は無かった、ということか?」

トリモチによって樹に接着された拳を見つめ、神父はそう言った。
およそ二歩。それだけ離れた距離で立ち上がった彼女に向けて。

「……本当の名前を、聞かせてもらおうか」



――言峰綺礼にとって誤算だったのは、八神はやての対応能力。制限下とはいえ、一般人ならば初手で即死しかねない拳技を生き延び反撃さえしてのけたのは、実戦に身を置き続けた経験ゆえだ。

打撃による骨折はデイパックで緩衝することによって防ぎ、背を樹に打ち付けたときは受身を取った。
身を捻って離脱し、右手に持っていたトリモチ銃を撃ち放つ。下半身不随だった頃ならいざ知らず、今の八神はやてに不可能なことではなかった。
彼女は、腰の土を払いつつ立ち上がった。神父に対する敵意のないことを示すため、銃とデイパックをゆっくりと地面に置く。
偽名に気付く判断力と、先ほど見せたあの動き。体格に見合わぬ速度は、確固たる技術に基づいたものだ。
知りえる筈の無い名前を出したことと、偽名を使ったことが迂闊だったとようやく気付いた。

「八神はやて、です。あなたの名前は、パズー君から聞きました」
「あの少年からか……紫色の短剣を持っていただろう。私に支給された品だ。
 シータという少女を、このゲームに参加させられた者達を絶対に救うと息巻いていた……誰かを殺すという覚悟も無く」

神父は、暗い息を吐く。その声は絶望でも諦観でもなく、ただ――

「あの少年は、殺さぬ限り傷つけることは厭うまい。なまじ殺さぬという覚悟を持つが故に、な。
 そして自らが悪と定めた者に刃を突き立て、殺してしまえばそれまでだ。二人を殺し三人を殺し、五人目を殺す頃には、殺すべき相手を悪と考えるように歪んでいることだろう」
「そんな、こと……」
「ない、とは言い切れまい? 何かを愛する……譲れぬものがあるのなら、それを侵すものを悪と断ずるのはヒトとして当然の反応だ。
 それに良心の呵責を覚え苦悶するか、受け入れてしまうかは分からんがな」

――三日月のように歪んだ口元だけが、その心中を語っていた。
頭の隅で、何かが警鐘を鳴らす。

44:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/15 18:27:59 SwbolYFA
>>2-43
どうでもいいけど速やかに出てけおまえら
邪魔だ


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