アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ9at ANICHARA
アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ9 - 暇つぶし2ch311:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/01 21:40:43 VzUj3XoU
【基本ルール】
 全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が優勝者となる。
 優勝者のみ元の世界に帰ることができる。
 また、優勝の特典として「巨万の富」「不老不死」「死者の蘇生」などのありとあらゆる願いを叶えられるという話だが……?
 ゲームに参加するプレイヤー間でのやりとりに反則はない。
 ゲーム開始時、プレイヤーはスタート地点からテレポートさせられMAP上にバラバラに配置される。
 プレイヤー全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者なし)となる。

       ■          ■           ■

正直こういうようなパターンも飽きてきた

312:突っ走る女たち ◆jbLV1y5LEw
07/12/01 21:40:48 a4dkH3fm
スバル・ナカジマは走っていた。
人命を救うべく、ただ前だけを見つめ、全速力で。

(速さ! 速さが足りない!)

今、彼女がすべきは一刻も早くはやてと合流し、さらにシャマルを見つけ出し、瀕死のロイ・マスタングを救うこと。
そのために必要なのは速さだ。
川を回りこんで北上してくるであろうはやてが全速力で駆けるスバルよりも早くE-7のT字路に到達する可能性は低い。
だが、万一、はやてが高速で移動する支給品を持っていたら、この仮定が覆るかもしれない。
マッハキャリバー、でなければローラーブーツでもあればと思うが、あいにく彼女の支給品はいずれも移動に使えるものではない。
残った一つは『アンチ・シズマ管』とだけ説明書に書かれた、用途不明のガラス官である。
だから彼女はできる限りの速さで駆ける。
急いだ甲斐もあり、彼女は驚異的な速さでT字路にたどり着いた。

「これ、なら、大丈夫、だよね……」

焦るあまり無茶なペース配分をしたため、さすがに息が切れていた。
あとはここではやてが来るのを待つだけである。
呼吸を整えて一息つきながら、やってくるかもしれない殺し合いに
乗った者に備えてT字路を見張れる位置にある民家に隠れ、周囲を警戒する。
いっそのこと、自分からはやての来るであろう南へ迎えに行きたくなるが、すれ違いの危険を考え、彼女はじっと待機していた。



313:突っ走る女たち ◆jbLV1y5LEw
07/12/01 21:41:49 a4dkH3fm
「八神部隊長! ……じゃない」

その人影は髪の長い女性だった。
走り方からローラーブーツを履いているのかとも思ったが、どうも似て非なる物のようだった。
その形相は鬼気迫る物があり、スバルは心の中で身構え、彼女の到着を待った。




藤乃静留は走っていた。
愛する女性を救うべく、ただ前だけを見つめ、全速力で。
目指すは燃え盛るデパート。
そこに彼女の想い人がいるかもしれないのだ。

もちろん、聡明な彼女はこの不安に何の根拠もないことを理解している。
だが、もしも万一、そこになつきがいたら?
すでに同行者であったジャグジーが殺され、放送で9人もの名前が呼ばれている。
殺し合いは始まっているのだ。
あのデパートで彼女が死に瀕していることだってありうる。
その確率一割にも満たないその可能性が、彼女を走らせる。
その道中、もう少しでデパートというところで、彼女は前方に一人の女の子を見つけた。
その容貌は明らかになつきではないが、彼女は少し迷った。
彼女がなつきの安否を知っているかもしれない。
訊いてみるか?
それとも、やはりデパートへ急行すべきか?
考えている間にもみるみる彼女の姿が近づいてくる。
静留は決断した。



314:突っ走る女たち ◆jbLV1y5LEw
07/12/01 21:42:50 a4dkH3fm
その女性、すなわち藤乃静留は、スバルの前で急停止すると、スバルの警戒など意に介さない様子で尋ねた。

「あんた、なつきを見とらんどすか!?」
「え?」

突然の質問と剣幕、そして聞きなれないイントネーションに、スバルは即座に対応できない。
思わず聞き返してしまった。

「だから! あんた、なつきを見とらんどすか!?」

再度聞かれたところで、スバルは気づく。
その慌てぶりは先ほどまでの自分を思い出させるものであり、
彼女もまた、誰かの危機を救おうと全力を尽くしているのだと。
だから剣幕に押されつつも、スバルは誠実に答える。

「な、なつきさん、ですか? いえ、見ていません」
「おおきに!」

言うなり、静留は再び駆け出そうとする。
その瞬間、はっとしてスバルはその手を取り、静留を引き止めた。

「なんどすか!?」
「あの! 南から来たんですよね? 八神部隊長に会いませんでしたか!?」
「知りませんえ!」

まるでバスケットボールのように勢い良く反応が返ってくる。

「もうええどすか!? うちは急いでるんどす! 行かせてもらいますえ!!」

静留は突き放すようにいい、また猛スピードで燃え盛るデパートへと向かっていく。
あそこに「なつき」がいれば助けるのだろう。

呆気に取られてそれを見送ったスバルだったが、彼女の行動を見て、決心がついた。
デパートへと向かい、救助すべき人がいれば救助するのだ。
いずれここをはやてが通るとしても、火災の起きているデパートを放置していくとは思えない。
それはシャマル他、機動六課の仲間たちも同様だろう。
彼女たちが駆けつけるまでにあれが事故ならば救助を済ませ、罠ならば粉砕する。
その後で仲間と合流し、次いでロイの救助に向かう。
やはりここでも必要なのは速さだ。
スバルは既に遠くなり始めた長髪の女性を追い、再び全速力でデパートへと駆け出した。

しかし、彼女は知らない。
既にこの時点で彼女を待つヒューズたちが、他でもないロイ・マスタングによって殺害されていることを。
眼前の火災は事故でも罠でもなく、自分と同じ、脱出を目指す者によって引き起こされたものであることを。
自分の前を行く女性が捜し求める人物は既に死んでおり、それを知った彼女が何をするか分からないことを。

間もなく、運命を分かつ放送が始まる。

315:突っ走る女たち ◆jbLV1y5LEw
07/12/01 21:43:50 a4dkH3fm
【E-6/道路/1日目/昼(放送直前)】
【藤乃静留@舞-HiME】
[状態]:健康 、衣服が半乾き
[装備]:雷泥のローラースケート@トライガン、サングラス@カウボーイビバップ
[道具]:支給品一式、マオのヘッドホン@コードギアス 反逆のルルーシュ、 巨大ハサミを分解した片方の刃@王ドロボウJING、
    ジャグジーの首輪、包丁、不死の酒(不完全版)@BACCANO バッカーノ!
[思考]:
基本思考:なつきを守る。襲ってくる相手には容赦はしない。
1:全速力でE-6のデパートに向かう。
2:デパートになつきがいたら全力で助ける(いなかったら、なつき、なつきの事を知っている人間を探す)。
3:万が一の時は不死の酒に望みをかける?
4:F-5の駅、ビクトリーム、温泉に向かった集団、豪華客船にゲームに乗っていない人間を集めるのは後回し。
5:首輪を詳しく調べられる技術者を探す。
6:あまり多人数で行動するつもりはない。

【備考】
※「堪忍な~」の直後辺りから参戦。
※なつきがデパートの火災に巻き込まれているのではと考えています。
※ビクトリームとおおまかに話し合った模様。少なくともお互いの世界についての情報は交換したようです。
※マオのヘッドホンから流れてくる声は風花真白、もしくは姫野二三の声であると認識。
(どちらもC.C.の声優と同じ CV:ゆかな)
※不死の酒(不完全版)には海水で濡れた説明書が貼りついています。字は滲んでて本文がよく読めない模様。


【スバル・ナカジマ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
[状態]:バリアジャケット、疲労(小)
[装備]:リボルバー・ナックル(左手)(カートリッジ:6/6)@魔法少女リリカルなのはStrikerS
[道具]:デイバック、支給品一式(食料-[大量のじゃがいも、2/3][水])、ジャガイモカレー(特大)
    アンチ・シズマ管、予備カートリッジ(×12発)
[思考]
 基本:仲間を集めて事態の解決を目指す
 1:火災現場へ急行。要救助者がいれば助け、殺し合いに乗った者がいれば確保する
 2:1の際、長髪の女性(静留)が協力してくれるようなら協力する
 3:火災現場に来るであろう八神部隊長他、六課の仲間と合流
 4:八神部隊長と合流できたら、協力して他の仲間を捜索する
 5:シャマルと合流できたら、彼女を連れてヒューズの元へと戻る(F-5/商店街・布団屋の中)
 6:その後は、八神部隊長やヒューズの指示を仰いで行動する
 7:キャロや他のみんなもまだ生きていると信じたい

316:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/01 23:15:47 aNoMnFVt
>>311-315

削除依頼ね

317:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/01 23:45:29 nUrIrpPa
>>316
なんで?

318:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/02 01:28:41 6ASACNS/
既にアニサロ移転が決まってますからね
当然でしょう

319:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/02 01:40:13 nzaGjab1
>>318
ざっとしたらば見たけどそれらしい記述みつかんないんだけどいつ決まったの?

320:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/02 01:40:18 s8q7YhSt
したらばのずうずうしさにはあきれ果てる

321:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/02 01:50:30 nzaGjab1
最近ここ知ったんで良く分からないんだが
したらば何かやっちゃったのか

322:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/02 10:41:33 0lSVs2mw
何もやっとらんよ
自称2ch派さんがぐちぐち文句垂れ流してるだけ

323:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/02 14:52:21 /7v/e0yU
としたらばさんがほざいてます

324:読子達がみてる  ◆UCRiZtpozI
07/12/02 17:02:48 lsYZ3mKS



「だからその紙を置け、紙を」

スパイク・スピーゲルは温泉に入りながら微妙に命の危機を感じていた。
目の前には紙を構えた読子・リードマンがおり、その紙がなぜかは不明であるが鋭利な刃物となることを知っていたからである。
混浴だからと言って一緒に入ったのが問題であったらしい。
とはいえ、リードマンの裸などに興味はない。

「水着着てるんだから、見られて困るようなモンはないだろ」

それにリードマンは混浴だということを事前に知っていたため何処かから調達した水着を着ていたのだ。
これでは裸を見られるも何もあったものではない。それを知っていたが故に自分は混浴の温泉に入っているのだ。
流石に、裸婦のいる浴場に突入して紙手裏剣や風呂桶が飛んでこないことを予測できないわけがない。

「……むぅ」

読子は膨れっ面で紙や本を入れている風呂桶を持って湯から上がり、

「俺も上がるか」

スパイクも重い腰を上げ後に続く。
H2Oという空間からスパイクの裸体が介抱され、周囲に晒される。
手ぬぐいという邪魔なものなど一切身に着けてはいない。
正真正銘の丸裸である。
その体は180を超える長身を誇り、日々欠かさなかった普段の鍛錬で引き締まった筋肉は女性を魅了するに相応しい。
引き締まった筋肉、幾つにも割れた腹筋、無駄な贅肉が付かない肉体。
どれを取っても男が憧れるのも無理はないと言うべき姿である。
だがこの場に唯一存在する女性にはまったく魅了の効果を発揮せず、
逆に背中を向きスパイクの方を見もせずに顔を背けさせる効果しか持たなかった。

「スパイクさんには恥じらいが足りません」
「わりぃ、貧乏なんだ」

スパイクの方に振り向こうともしない読子の非難に、彼は至極あっさりとした冗談を返した。




325:読子達がみてる  ◆UCRiZtpozI
07/12/02 17:04:30 lsYZ3mKS


「なあ、機嫌直そうぜ」

体を拭き服を着たスパイクと読子は廊下を歩いていた。
だが読子の機嫌は斜め右下に進んでいた。
30というおばさん呼ばわりされても不思議ではない年齢の彼女とて、スパイクの無神経ぶりには御立腹なのであった。

「俺が悪かったからさぁ」

図太い神経を持つスパイクでも流石に調子に乗りすぎたと考え、
なんとか機嫌を直してもらおうと浴場を出てから何度か謝罪の言葉を紡ぐがいっこうに効果は上がらない。
読子がスパイクの先を歩いているため彼に彼女の表情など窺えないが、背中越しからでも考えていることが理解できる。
ああ、流石のこいつでも怒るんだ。と。
数時間ほどの付き合いで流石も何もあったものでは無いが、
これまでの行動からスパイクはリードマンのことをあまり怒らない人種の人間だと判断していた。

「もういいッ!! 全員黙れッッ!!!!」

そんな二人が廊下を当ても無く歩いているときだった。玄関先から聞こえた若い青年の声が耳朶を振るわせたのは。
スパイクと読子はお互い顔を見合わせ疑問符を浮かべる。
いったい何が起こっているのか?
二人は無言で小走りに廊下を歩き、曲がれば何かが起こっているであろう場所の手前で立ち止まり壁に隠れながら玄関の様子を窺う。

「突然だが、ここはゼロを筆頭とする、反螺旋王組織『黒の騎士団』の指揮下に置かれる!
 以降は、そこに居られるゼロが全ての指揮を取る! 異論は認められない!!」

玄関では複数の人間と猫達がいた。
先ほどまで共に行動していたはやて達である。
他にも見知らぬ学生達にどこぞのヒーロのコスプレにメカメカしい猫、と奇人変人のオンパレードである。
いったい何をしているのか?
スパイクは読子と共に様子を窺うことにした。自分でも知らず知らずの内に銃を握り締めながら。
だがスパイクが予想していたような血なまぐさい展開は起こってはいなかった。
ただ青年が声を張り上げ演説をし、全員の注目を集めているだけであった。

326:読子達がみてる  ◆UCRiZtpozI
07/12/02 17:05:55 lsYZ3mKS
ただ青年が声を張り上げ演説をし、全員の注目を集めているだけであった。
しかも内容は非常におざなりなものと言わざるえない。目的だけ駆け足で言っているだけだ。
あれならば、まだビシャスの方が口が達者だ。案の定、八神達からは非難の声が聞こえる。
だがたった一声で、非難の声が突然止まる。こちらに背を向け全員の注目を集めている青年の一言で。

「やって欲しいことはこれだけだ。 エリア中心部に行き、他の参加者に接触し、使えそうならば我々の仲間に誘う。
 我々に害を為すようなら排除する。それだけだ。頼む。協力してくれ」

青年がそう言い放った瞬間、その場にいたほぼ半数の者達が同意する。
そのまま八神達は屋外へと出て行ってしまった。なぜか倒れた青年を無視して。

「……なんだぁ?」

スパイクには何が起こっているのか理解できない。声を掛けるという発想すら思いつけないほどに奇妙な状況であった。
そんな彼の側でただじっと目の前の光景を見つめる人物がいた。読子・リードマンである。
彼女はただ黙ってことの成り行きを考えながら、一人思案に暮れていた。
いったい何が起こっているのか?
読子はそう思わざるおえなかった。青年が八神達に一方的に早口で正論を捲し立て、八神達があっさりと要求を受け入れた。
言葉にすれば至極単純なその光景を普段は流されやすい読子ですら違和感を感じずにはいられない。
なぜならば八神達はルルーシュの言葉に対して、かなり否定的な言葉と困惑や呆れたといった感情を投げかけており
とても笑顔で承知するとは全くと言っていいほど予想できなかったからだ。
元々八神は北に行くらしいということを聞いてはいたがそれにしても不自然だ。
パンツも穿かずにどこに行こうというのか?
そう、パンツである。読子は八神はやてと再会した際に、彼女がパンツを穿いていなかったことを見抜いていたのだ。
読子はどういった事情かは不明ではあったが、初対面の時には存在していなかった気恥ずかしさを八神から感じ
座る際や立ち上がる際に下半身を気にするしぐさから、何を気にしているかを考えすぐにパンツを穿いてないという答えに行き着いた。
30という人生経験を経た彼女にとっては辿り着くのが難しい問題ではなかったのだ。
温泉に入ったのも、流石に男性だらけの室内でパンツを取りに行くという行動すら気恥ずかしさを覚えるであろうことを察し、
スパイクが付いてきたのは予想外ではあったが入浴という建前を利用し脱衣所に潜入したからなのだ。
たかがパンツと言って馬鹿にしてはいけない。パンツを穿かなかった故に死んでしまった女性も世に存在していたと伝えられる事件があった。
そう、日本の都市災害史に残る大火災の一つであるかつて1932年12月16日に起こった
クリスマスイルミネーションを出火原因とする火災により14名の死者を出す日本初の高層建築物火災となった白木屋火事のことだ。
当時の女子従業員は和服で、下着をつけていなかったため、裾の乱れを気にしてロープによって救助されることを躊躇した者が多く、
犠牲者を増やしたといわれている。この説は井上章一により否定されてはいるが、神保町の青空の下でドラム缶風呂に入り茹で死に一歩手前まで追い詰められ
タオル1枚すら持たない状況で人目を気にしながらほぼ裸で脱出する破目になり、死ぬほど恥ずかしい思いをしたことがある読子としては、
白木屋火事に巻き込まれた女性店員は死と恥ずかしさの境で本当に生きるか死ぬかの瀬戸際だったのであろうと感じることができる。
そんな読子にとって女性としてパンツを穿きもせずに行動を始めることが信じられなかった。

327:読子達がみてる  ◆UCRiZtpozI
07/12/02 17:07:32 lsYZ3mKS
そして読子の見立てでは、八神はやてからは今だパンツ穿いてないオーラが漂っている。
何をするにもどこに行くにも、まずはパンツのはずだ。
数秒で簡単にこの施設でパンツを見つけることは可能であり、現に自分のコートのポケットには脱衣所から拝借した予備のパンツがある。
「ちょっとお花を摘んできます」などと言って出立する前に男性達から離れれば、この施設で見つけることができるのだ。
故に読子には八神はやてがパンツを探さないで外に行くとは考え難かった。
それにベースキャンプである温泉施設を別グループにあっさり譲り渡すのもおかしい。
先ほどの話の内容から、別グループは同じ反ロージェノムではあるらしいがお互いに面識はないようだ。
しかも、完成するまでは梃子でも動く気がないと言っていたマタタビと名乗る喋る猫までどこかに行ってしまった。
これでは蛻のからと言ってもいい。それに自分達を放っておくのも気に掛かる。
スーパーマンの敵役として出てきそうなあやしい仮装男達を、ロージェノム派の人間と自分達が勘違いしてしまう危険もあるのだ。
故に、はやて達三人が温泉をなんの準備も挨拶もなく早急に後にするということを読子はおかしいと考える。
自分から外に行く理由があったとしてもすぐに出て行くとは思えなかった。ならば、八神達はなぜ外に出て行ったのか?
少なくとも自分の意思で出て行ったようには見えず、まるで意識を操られたために温泉施設から退去させられたようにしかみえない。
それはどういったことを指すのか?
極めて簡単に答えを出すのならば催眠術である。催眠術により意識を操られたために八神達は外に追いやられたのだ。
催眠術、それは一般的には意識を操る術であるために特殊な力と思われがちであるが少し違う。
誰でも扱えるわけではないが、素人でも誰かに弱い催眠術を掛けることは結して不可能ではない。
例として歴史上で催眠術を使える偉人をあげるのならばアドルフ・ヒトラーが有名であろう。
彼は集団催眠を用いて民衆を煽り、軍に狂気の殺戮を行わせるに至ったのだ。
なにより、催眠術の証明としてマタタビの仲間と思しきドラえもんよろしくな猫型ロボットには効果があるようには思えない。
生物には掛かると思える催眠術がロボットに掛かる訳が無い。
しかもルルーシュという名の青年は、ヒトラーが演説を敢て遅らせ民衆の意識を自分に集めるという催眠術を掛ける側にとって
重要な行動をなぞるかのように全員を自身に注目させていた。
故にあの青年が催眠術をマスターしており、八神達を操ったとしても不思議ではない。
しかし、あの青年が催眠術を使えると仮定したからといって、幾つもの疑問がいまだ存在する。


一つ目は青年が、如何にして無手で催眠術を掛けたのか?
二つ目は催眠術を本当に掛けられる状況であったのか?
三つ目はなぜ自分やスパイクが掛かっていないのか?
四つ目は本当に催眠術なのか?


一つ目の疑問は、催眠術を掛けたと思われる青年がデイパッグを背負っていたものの、両腕を体の横にしてきつく握り締めていた状態では
催眠術を掛けるための動作をとれないことだ。通常、催眠術を掛ける際にはライターの火やライトの灯を使うことで
相手を誘導しトランス状態に陥れなければいけない。だが読子の見立てでは、青年はトランス状態に移行したと思われる間や
相手をトランス状態に落す前振りすら無く催眠術を成功させたことになる。
二つ目の疑問は、あの場が八神達を催眠術に掛ける場であったかということだ。
突然の青年の主張により、それなりに騒がしい状況であったあの場ではトランス状態に移行する間がなく失敗する可能性の方が高い。
三つ目の疑問は催眠術が音声や臭いで掛けるものである場合は自分達も掛かっていなければならないことだ。
たいした距離が離れているわけでもない以上は自分達も掛かっていなければおかしいが、
読子がスパイクを観察してみても彼が外にいく前兆すら見つけられない。
四つ目の疑問はは以上の理由や別の理由により、催眠術が八神達に掛かっておらずに自分の意思で出ていったということだ。
多少の不自然さも現実に起こっていることならば納得するしかない。普通の人間ならばそう考える。
だが読子・リードマンは普通の人間とは違う。彼女は異能力を持ち、なおかつ殺人舞台における参加者一の読書量を誇るエージェントなのだ。

328:読子達がみてる  ◆UCRiZtpozI
07/12/02 17:08:48 lsYZ3mKS
その彼女の知識と経験が彼女自身に囁く。
あの少年は催眠術を特殊能力にまで昇華した力を持つのだと。その力を持って八神はやて達を操っているのだと。
おそらく何かを見せられたために洗脳の異能が発動してしまったのだ。
なぜかゼロや少女には効かないかは読子にとっては不明ではあったが、彼女の考えでは問題ない。
特殊能力を使用するのに、それぞれ条件やデメリットというべきものが存在することが事実であることを知っていたからだ。
例としては、紙使いは紙が無ければ能力を使用できず、透過能力者は水中では無力であることなどだ。
故に少女と仮面の男に青年の力が通用しないのは、何らかの条件を満たしているためと予想が付く。
逆に青年が意図的に外したことも考えられるが、その場合は仮面の男と少女が青年とグルということでしかない。
仮面の男は表情が隠れているため何を考えているかは不明であるが、少女の方は青年が能力を使った際に全く動じていなかった。
それは少女が青年の力を理解していたが故のことだ。青年の能力を知らな素振りを見せてはいたが、
唯一効果が発揮されなかった機械猫がいたために知らぬ振りをしているだけだ。
知らないならば、簡単に物事が進んだことに疑いを持つはずなのだ。
故に仮面の男を始めとした三人は、青年の力を始めから使用するつもりで八神はやて達に接触したと読子は判断する。
そう始めからだ。八神はやてがあの場で放送を行っため彼らは彼女の存在を知り、迷いながらも立ち上がろうとした彼女を利用するつもりで近づいたのだ。
おそらくあの放送を聞き彼らはこう思ったはずだ、あの女と仲間達は対ロージェノムの弾除けがわりになると、
面倒なことや危険なことは彼女達に任せてしまえばいい、と。
なんと卑劣なのか。人を操り、弾除け代わりにするなど許せない。まるで以前戦った冷徹な策士一休だ。


読子はかつての戦いを思い出す。


偉人軍団の策士一休宗純。人類殲滅という策の為なら仲間や恋人ですら切り捨てる男だ。
彼によって死んでいった者達は数知れず、策が終わり用済みだからといってシャレコウベの付いた杖を三蔵法師の首に突き刺し、
彼の恋人であったやさしいナンシー・幕張をまるでゴミでも捨てるかのようにあっさり裏切ったのだ。
あの頃の憤りが自身の心の中に灯る。絶対に阻止しなければ。
読子はそう心に決め、手を握り締め黒の騎士団への怒りに燃える。
だが実際のところは、たまたま糸色望達が温泉に来ただけであり、カレンは既にギアス使用済みによる制限で
糸色望はゼロの仮面という透過率の悪い物で視界を遮ることによってルルーシュのギアスを防ぎ、
糸色望とカレンはルルーシュの暴走に巻き込まれただけであるが、怒りに駆られる読子にはそのことに気づけない。
許せずにエージェントとしての思考をさらに推し進め、どう物事を進めていくかを読子は考える。
本来ならば説得から始めたいところであるが、八神達のことも気に掛かり洗脳という能力を相手が持つ以上は
最初から力づくの対応をした方がいいだろう。
洗脳する能力者は背後からみたために今一能力の発動条件を特定し難いが八神達の視線から判断するに、胸より上を見なければおそらく大丈夫だ。
奇襲を仕掛け速攻で相手の体を紙で包み込んでしまえばいい。
読子はそう判断し、スパイクと共に一時的にこの場を離れることにした。

329:読子達がみてる  ◆UCRiZtpozI
07/12/02 17:10:05 lsYZ3mKS

「スパイクさん、ちょっとこちらへ」

読子は彼の腕を掴み、以外な力を発揮してその場から移動する。

「おい、痛いって……」
「静かにお願いします」
「どこに連れて……」
「黙っていて下さい」

スパイクは言葉を紡ごうとは思ったが、読子から発せられる何かに押しとどめられ黙ってしまう。
リードマンからは先ほどまで発せられていた朗らかな空気は消え去っており、
逆に自分のようなカウボーイたちが発する硝煙の臭いに似た何かに取って代わっていた。
リードマンは真剣な表情でそんな気配を纏いながら、自分を手近な部屋へと連れて行く。

「スパイクさん、たぶん非常に厄介なことになっていると思います」

部屋の扉を閉めると、開口一番に何を言おうとしているのか分からないことを言い放つ。
何が厄介なのか、この女の一言ではまったく分からない。

「いや、いきなり厄介なことになったと言われても……」
「あの男の子は特殊能力を持っているんですよ」
「ハァ?」
「だから、相手の行動を操る類の能力を持っているんですよ。一般には催眠術と呼ばれるようなものを」

リードマンの答えは予想を遥かに超えた珍解答であった。
とりあえず黄色い救急車を呼んで、病院に連れて行くのが一番だろう。

「いいかリードマン。温泉に入ったからといって脳までふやけるのは人間としてどうかしているぞ」
「ふざけないで下さいスパイクさん」
「ふざけているのはお前だろうが」
「スパイクさんも見たはずです、いきなり八神さん達の行動が変化したのを。あれは彼の仕業です」
「……たまには人間変わったことをしたくなるもんさ」
「それでもおかしすぎます。温泉に入っていた私達を放っておいてどこかに行くものでしょうか?」
 あんなに不満そうな声を上げていましたし」
「そりゃあ……」

そこで言いよどむ。たしかにリードマンの言うとおり、あっさり自分達を放って一言もなしにどこかに行くのは妙である。

330:読子達がみてる  ◆UCRiZtpozI
07/12/02 17:11:23 lsYZ3mKS
猫と男の方は我が強く人の言うことを簡単に聞くとは思えず、はやての方も何か一声ぐらいは掛けそうな性格だ。
それに、八神はやてはたしか自分が風呂に入る前にリードマンに鞄を返したいなどと言っており、
その時にはリードマンが風呂に入っていたために、上がってから返すつもりだったはずだ。
あの少年が青臭い正論を吐いたからと言って、彼の言葉を第一目標にするのはおかしい。
そうするにしても、相談の一つぐらいあっても良さそうなものなのだ。
しかし、人を操る超能力をあの少年が持っているなどと言われ簡単に信じるのは馬鹿がやることだ。

「いや、エスパーじゃあるまいし。そんな馬鹿な……」

そこまで言って、言葉が詰まる。
目の前の女も同じ特殊能力を持った人間のはずなのだ。紙を操る能力がなんらかの嘘やトリックならばこの女も紛い物なのだろう。
だがそうとは感じれず、以前に不死身であった少年と遭遇し、先ほども喋る猫などに遭遇した身では異能という力を嘘とは思えなかった。

「私だって紙使いなんですよ。あの少年が異能を持っていたからといって不思議じゃありません」
「つうてもなぁ。俺やお前、それにコスプレと嬢ちゃんは別に操られてるとは思えないんだが?」
「おそらく何らかの条件があるんでしょう」
「条件?」
「目下の所検討中です。でもおそらくは何かを見せることで操るんだと思います」
「いや、条件が違うだろう。コスプレその他一も小僧の視界に入っていたはずだ」
「仲間に掛からないように意識的に外したか、掛からないための別の手段を用いたと考えられます」

スパイクの疑問に読子はあっさりと答える。

「条件のことですが、いくつかは思い浮かびますが全て推測の段階までで確かなことは言えません。
 何か知っているはずの彼らに聞くのが一番早いのではないんでしょうか?」
「そりゃあまあ、たしかに」

ここまで会話しスパイクは嫌な予感がした。会話をしている間にリードマンが上目遣いに自分の瞳を覗き込んでいる。
なんとなくではあるが、この女が妙なことを自分に頼もうとする気がしてならない。

「スパイクさんに頼みごとがあります」

ほら当った。
スパイクはそう胸中で漏らす。おそらくはリードマンは自分になんとかしてもらうように頼むつもりだ。
誰が聞くものか。ただ働きは嫌いなのだ。

「八神さん達のサポートをお願いしたいんです」

だが読子の言葉はスパイクの想像を少し外れたものだった。
言われたスパイクは一瞬呆気に取られる。

「……へ?」

サポートってなんですか、リードマンさん?
スパイクは読子の言葉の意味が分からずに僅かに困惑する。
だが読子はそんなことに気付けずに先を続ける。

「八神さん達の行動がおかしくなった時に、ルルーシュさんは真中に行って仲間を集めるように、でも邪魔したら排除しろって言いました。
 これでは八神さん達やこれから接触する人たちが危険に陥る可能性が高いと思うんです」
「……それで俺にどうしろと?」
「スパイクさんは八神さん達に付いていって、接触する人たちに事情を説明してもらうんです。
 八神さん達と会話してもらっても構いません。邪魔だと思われなければ何をしてもらっても。
 そうやって効果が途切れるまで適当にやってほしいんです」

適当に邪魔と思われないようにはやてたちの邪魔をしろ。
そう言われても正直困る。ただ働きの限度を超えている。
催眠術師を抑えるのがよっぽど楽だ。

331:読子達がみてる  ◆UCRiZtpozI
07/12/02 17:12:05 lsYZ3mKS

「……で、お前はどうするんだよ?」

自分に厄介なことを押し付けた女はいったい如何するのか?
楽なことをするようならば怒鳴りつけてやろう。

「ルルーシュさん達を説得してあの能力を使わせるのを止めて貰います」

が、読子の提案はスパイクの考えたものと真逆であった。
スパイクは呆れる。いくら何でも無茶がすぎる。人を操る能力を持つ人間を相手に目の前の女では如何こうされるのがオチだ。

「説得って、無理だろう。話している間に操られて終わりだろうが」

スパイクは止める。だが読子の意思は固い。

「……じゃあ、やっぱり力ずくで」
「まてまてまて、余計に駄目だろうが。自殺しろって言われて終わりだろ」
「大丈夫です。私の考えが正しければ、上半身から上を見なければなんとかなります」
「目でも瞑るのか? それ以前の問題としてフルボコだろうが。銃もあるしよぉ」

当然の如く、スパイクは突っ込みを入れる。
赤い髪の女学生が持っていたのは、相棒の使っている物と同じ銃だ。リードマンが銃相手に如何こうできる姿を想像できない。
紙如きを操れるだけでは、数の不利も、銃の脅威も退けられるはずがない。
スパイクの認識ではそうでしかなかった。だが読子としてはそうではなかった。

「大丈夫ですスパイクさん。私、こう見えてもちょっと強いんですよ」
「……………………」

スパイクは無言で愚かな言をほざく読子の頭に右手を翳す。

「はい?」

そのままスパイクの右手は呆ける読子の頭にチョップを打った。

「いひゃい?」

奇妙な鳴き声を上げ読子は崩れ落ちる。

「よわ」
「いきなり何をするんですか、スパイクさん!?」

崩れ落ちた彼女は、すぐさま起き上がりスパイクの呟きに非難を浴びせる。

「あのなぁ、そんなんで力技も何もあったもんじゃないんだろうが」
「……私、本番じゃないと実力が発揮できないんですぅ……」

スパイクは読子の戯言を聞き流しつつ、彼女の眼鏡を見つめ、溜息をついた。
厄介ごともただ働きもは嫌いではあるが、どうやら自分がなんとかしなければいけないらしい。
せめて、はやて達に恩を売って不良債権の回収ぐらいはしたいが、ロージェノムの圧政がある状況では無理だろう。たぶん。
このまま状況に流されたとしても、悪い方向に転がるだけだ。

332:読子達がみてる  ◆UCRiZtpozI
07/12/02 17:13:44 lsYZ3mKS

「もういい、俺が何とかするから付いて来い」

部屋を出て廊下に立ち、辺りを見回す。

「はい?」
「だから俺が何とかする。タカ派の黒の騎士団をボコって、催眠術みたいな強行路線を取らせないようにしてから八神達に合流。
 八神達に掛けられた催眠術が解けるまで尻拭いをして、解けたらロージェノムの圧政を民衆が打ち倒すのを黙って見守る。
 これでいいだろ、たぶん」

半場口から出任せであるが、背中越しにリードマンにこれからの一様の行動方針を伝える。
もちろん全部達成するつもりもない。悪魔で適当な行動方針だ。
正直に言えば超能力大戦などから抜け出し、とっととビバップ号のベッドで惰眠を貪りたい。
そう思いつつ適当な道へと足を運ぶ。

「あっはい。そうです、とりあえずそれでいいです」

慌ててリードマンが付いてくる足音が聞える。
背後に女の気配を感じながら考える。さて、あの三人をどう探そうか?
見つからなければ、放っておいてはやて達の方に行こうか?

「絶望した! あまりの本人置いてけぼりっぷりに絶望した!!」

廊下の向こうからゼロと名乗った男の声が聞えてくる。
どうやら探すまでもないらしい。





「絶望した! あまりの本人置いてけぼりっぷりに絶望した!!」
「どうしたんですかゼロ? いきなり大声を上げたりして」

カレン・シュタットフェルトとゼロの扮装をしている糸色望は、
突如意識を失ったルルーシュ・ランペルージを温泉施設の一室である和室へと運び込み、枕を敷きその上へと寝かせていた。
運ぶ際に、邪魔となったルルーシュのザックをゼロが持っているのは些細なことだ。

「どうしたもこうしたもありませんよ!! はやてさん達がどっかに行ったと思えばいきなりルルーシュさんが倒れて、
 しかも運ぶ手伝いまでさせられて。ええ、状況に流されるにしても程がありますよ!!」
「す、すいませんゼロ! あなたの御手を煩わしてしまって」

カレンはゼロに頭を垂れる。
人手がないとはいえ大事なリーダーの手を煩わせるなど、黒の騎士団失格だ。
本来ならば、ルルーシュを放ってでもでも有効な手段を取らなければいけないのだ。
それを自分の我侭でゼロの計画を無視することになるとは。猛省しなければ。

「え、え~と……いや、別にカレンさんが悪いわけじゃありませんよ。悪いのはルルーシュさんですよ」

しかし、カレンの落ち込む理由を今一理解できていないゼロこと糸色望は慌てて取り繕う。

333:読子達がみてる  ◆UCRiZtpozI
07/12/02 17:15:00 lsYZ3mKS

「私を無視して、勝手に話を進めるルルーシュさんがいけないんですから」
「本当に申し訳ありません」

なんのフォローにもなっていないゼロの発言にカレンは再び深々と頭を垂れる。

「でも、ルルーシュのことを攻めないでください。あなたの負担を減らそうと思って代わりにやったことなんです。
 もう勝手なことをしないように、私が言い聞かせますから」

カレンの言葉に糸色望は何かを言おうとして、止めた。
これ以上迂闊な発言をしてゼロがカレンの前から失われる結果は、今はゼロを名乗る彼にとって望むものではない。

「……まあ、いいでしょう。私のすべきことを代わりに実行した功績に免じて不問にいたします」

そう言いながら右手の掌を突き出し、今だ何かを言おうとするカレンを押しとどめる。
糸色望は適当な所で話を終わらすことにしたのだ。

「ありがとうございます」

カレンはルルーシュに何の御咎めがないことにほっと安堵しつつ、今だ意識を失っている彼の顔を見つめる。
これ以上勝手な振る舞いをされると、本気で処罰されかれない。
黒の騎士団は弱者の味方であるが、自分勝手に行動する彼に対しゼロの堪忍袋は何時まで持つか分からないのだから。
カレンはルルーシュが目覚めれば文句を言ってやろうと思い、何気なく視線を彷徨わせる。
そして、その瞳がある室内のある一点で止まる。カレンの見つめる物は、鳥の巣箱を模した木製の古い時計であった。
その時計は放送まで数分しか無い事を指し示していた。ぼうっとして下手をすれば放送による情報を聞き逃してしまう。

「もうこんな時間。早く用意をしないと」
「え、用意って?」
「放送の用意です」

この放送は聞き逃すのは不味い。北が禁止エリア南は行き止まりの現状では東か西が設定されただけで移動方向が限られる。
その上でこの場所が禁止エリアにでもなれば、ルルーシュを担いで移動しなければいけない。最悪逃げられなくなる。
拠点にすると言ったこの場所が禁止エリアにならない保障はないのだ。次の放送は自分たちにとって死活問題となる。
せめて放送までに出立した彼らに残って貰えたのならば悩む必要はないのだが、ルルーシュの発言によって出て行ってしまった。
このことが対螺旋同盟にひびを入れることにならなければいいのだが。

「まったく、これだからブリタニア人は」

ついつい愚痴が出てしまう。だがこれ以上は考えない。
せっかくゼロの許しが出たのだ、目覚めてから後でたっぷりと言い聞かせればいい。

「何か言いましたカレンさん」
「いえ、何でもありませんゼロ」

そのやり取りの後にカレンとゼロは鞄の中から、それぞれ名簿と地図と筆記用具を畳の上に取り出し、放送に備える。
できる限り状況が好転することを信じながら、二人は時が訪れるのを待つ。


334:読子達がみてる  ◆UCRiZtpozI
07/12/02 17:16:39 lsYZ3mKS




【H-6/温泉施設/一日目/昼・放送数分前】

【スパイク・スピーゲル@カウボーイビバップ】
[状態]:健康
[装備]:デザートイーグル(残弾8/8、予備マガジン×2)
[道具]:支給品一式
[思考]
1:状況の把握。
2:はやて達が問題を起こさないようにサポートしに行く。
3:はやてに真相を問い質す。
4:読子と一緒に行動してやる。

【読子・リードマン@R.O.D(シリーズ)】
[状態]:健康
[装備]:○極○彦の小説、飛行石@天空の城ラピュタ
[道具]:パンツ
[思考]
1:状況の把握。
2:はやて達が問題を起こさないようにサポートしに行く。
3:はやてに協力したい。
4:適当なところで帰る。
5:はやてにパンツを届けたい。
※はやてがやろうとしていることを誤解しています。

335:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/02 20:56:43 86A9/OjN
ほい削除依頼ヨロ

336:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/02 21:25:46 zAvfk0l/
んだ

337:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/03 00:14:39 cclPutuu


338:ランチタイムの時間だよ 1/11  ◆AZWNjKqIBQ
07/12/03 00:15:11 IOnR+U/A
「見てみろよ、ミリア! ここはお宝の山だぞっ!」
「夢の島だねっ! ドリームアイランドだねっ!」

雲ひとつない澄み渡った真っ青な空と、その頂上から燦々と降り注ぐ眩しい太陽。
その遥か足元。雑多で膨大なゴミが堆く積みあがったデコボコな地面の上を、一組のカップルが走り回っていた。
空に輝く太陽にも負けないような陽気を振りまいて、楽しそうに、とても楽しそうに―……。

「アイザックー……。こんなにもたくさん勝手に持ち出していいのかなー?」
「おいおいミリア~、ここをどこだか忘れたのか? ここにあるのは全部捨てられた物なんだぜ」
「捨てられたなんて可哀相っ! もうここにある物は誰の物でもないんだね、アイザック!」
「……そうさ、ミリア。だから俺たちがこれからこいつらの面倒を見てやろうってんじゃないか」
「やさしいアイザック! これからはもうこの子たちも寂しくないんだねっ!」
「ああ。これからは俺が父となり、ミリアが母となり、この子たちは新しい人生を歩んでいくのさ」
「リサイクルだね~、循環社会だね~!」

ゴミ処分場という施設の中。分別することを諦められたゴミがただただ積まれているだけの場所でも、
アイザックとミリアはいつもの調子であった。
もう日も昇ったというのにアイザックは半裸のままで、ミリアの方は入り口を潜ったところで拾った安全メットを被り
アレンビーから借りたスコップ片手にした姿で、そのゴミ山の上を走り回り、時には何かを掘り出している。
螺旋王を探すという目的も半分忘れ、二人揃っていつもの通りに、子供の様に今という時間を謳歌していた。


そんな二人を遠目に、同行者の一人であるアレンビーは溜息をひとつついた。
彼女は彼らより少し離れた場所。バランスよく積みあげられた古タイヤの塔の頂上に腰掛けている。
ここに入ってきてすぐの頃は彼女も螺旋王の隠れ家を探していたのだが……。

「そんな顔をすると、この青空を写し取ったかの様な君の髪の色も曇ってしまうよアレンビー」

憂鬱に顔を曇らせるアレンビーの頭上を一羽の烏―キールが浮ついた台詞を吐きながら旋回する。

「……やっぱり、おかしいんじゃないかなって思うんだけど」
「おかしいのはこの世界の方さアレンビー。そんな些事に心を囚われて、君の顔から美貌が失われることの―……」

ふう―と大きく溜息をついてアレンビーは烏の戯言を聞き流す。
どうやらこの喋る鳥は物事を真剣には捉えていないぞ、ということをこの1時間ほどでアレンビーは理解した。
そして、ゴミ山の上を駆け回る二人。彼らについても、真剣ではあっても根本的にな部分でおかしい所があると彼女は感じている。
嘘をついて騙しているとは思わないし、アイザックの復活劇も実際に目の当たりにしている。それでも……、

怒涛の勢いで問答無用に理性を押し流す運命の逆流―ポロロッカ(大騒ぎ)。
そこから僅かに取り残されたアレンビーの理性が、彼女にこのままじゃいけないと小さな警告を送り続けていた。

……と、頭上の烏よりアレンビーにとって意味のある言葉が投げかけられた。
「お客さんだよ、アレンビー。しかも二人……」
「その言い方だと、来たのは男の人かしら?」
皮肉っぽくかけられた言葉に烏は空中で器用に首肯する。
「あたり。アレンビーと相互理解が深まって嬉しいよ。来たのは両方とも男。おっさんと小僧さ」

古タイヤの塔の頂上で立ち上がり入り口の方へと振り返ったアレンビー。
その視線の先には、一組の壮年の男性と背の低い少年の姿があった。

339:ランチタイムの時間だよ 2/11  ◆AZWNjKqIBQ
07/12/03 00:16:23 IOnR+U/A
 ◆ ◆ ◆


「ゴミ処分場だと……何があるんだろう?」
出会ってより数時間が経ち、そろそろ口数も少しずつ増えてきた同行者の質問にジェットは頭を捻る。
「そうだな。……映画館では映画に、博物館では展示室に何かがあったんだ。
 ということはゴミ処分場だとやっぱり集められたゴミ……、もしくはそれを処理する施設あたりが怪しいな」
その返答にチェスはこくりと頷き、納得したことをジェットに知らせる。
そして視線を上げて、眼前に大きく広がるゴミ処理場をその小さな両目で見渡した。

ゴミ処分場に入ってすぐに見えるのは、廃車となり積み上げられた車の残骸や古タイヤの塔。
真っ赤に錆びた金属製の何かだった物で組上げられた奇怪なオブジェ。同じ様に錆びの浮いた、古びたコンテナの数々。
その間の所々に見えるのは、それもゴミかと見間違うほど汚れたゴミを動かすための重機達。
それらから目を移せば、次に見えてくるのは無愛想な灰色の建物の群れだ。
特徴的なのは、空へと長く伸びる紅白の縞模様に塗られた煙突だけだが、そこから吐き出されるべきである煙は少しも見えない。
そして、更に視線を奥へと進めればそこに見えるのは灰一色に見える巨大な山。
よく観察してみると、一見灰一色なそれは雑多な色が重なりあった結果そういう印象を受けるのだということが解る。
物の死骸を集める場所だけあって、まるで墓場の様にそこは静寂で、
聞こえてくるのは海風に揺られたゴミの群れが奏でる、細波の様な静かなノイズだけだった。

―と、一瞬何かが二人の頭上に降りかかる陽光を遮った。そして、それは軽い音を立てて彼らの目の前にへと着地する。

「はじめまして! 私はアレンビー・ビアズリー。オジサンと少年は?」

それは、この場には似つかわしくない透き通った青い髪の少女―アレンビー・ビアズリーだった。


 ◆ ◆ ◆


「あ……と、驚かせたみたいだね……」

突然に現れて今、目の前で両の手の平を顔の前で振り、照れ笑いする少女にチェスは大きく驚いていた。
視界の中のどこから飛んできたのだとしても、それが尋常な距離ではないと推測できる跳躍力。
そして、目の前のジェットが銃を向けていても、なお平然としていることから窺い知れる実力。
あの螺旋王に集められていた場所でのことを除けば、目の前で見る超人との初めての遭遇であった。

「俺はジェット・ブラック。この子はドモン・カッシュだ」

銃を下ろさずまだ警戒を解かないままに、ジェットはチェスのことを聞かされたとおりにドモンと紹介する。
その瞬間、アレンビーの顔に怪訝な表情が浮かぶのをチェスは見逃さなかった。

「ドモン・カッシュです。こんにちはおねーさん」

あどけない声を使って嘘の自己紹介をすませた裏で、チェスはこの状況を推定していた。それは―、
”目の前の女はドモン・カッシュという人物を知っている。だが、決して不死者ではない”
ならば、問題は想定範囲内だった。前もって考えていた通りにことを推移させればよい……。

「どうしたのおねーさん? なんだか怖い顔をしてるよ」

自分は子供だ。と、最早そう思わなくても自然に出るようになっているその使い古した仮面をチェスは被る。

340:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/03 00:16:33 cclPutuu


341:ランチタイムの時間だよ 3/11  ◆AZWNjKqIBQ
07/12/03 00:17:34 IOnR+U/A
「アタシの知っているドモン・カッシュとは違うみたいだけど、同姓同名って訳じゃあないよね……」

相手は警戒を強めている。だが、それもチェスの手の内だった。
ある程度緊張を高めた所で拍子抜けするような回答を提示すれば、相手を容易にそちらへと誘導することができる。
水と同じで低きところへと流れるのは人の心でも変わらない。それは300年を生きた彼が信じる世界の法則だ。

「ううん。僕は”チェスワフ・メ……”……―!」

一瞬、ドクンと心臓が脈打ちチェスの仮面に皹が入った。
(馬鹿な。今、私はドモン・カッシュと名乗ろうとしたはずなのに……何故!?)
偽名が名乗れない。それが何故なのかは解りきっている―不死者が近くにいるのだ。見えないどこかに。
そいつが目の前の女と会話をしているうちにひっそりと近づいてきている。

「ご、ご、ごめんなさい。本当……は、チェスワフ・メイエル……です」

それに気付いたことに気付かれてはまずいと、チェスは必死に子供として動揺するという自分を取り繕う。
目の前にいる二人に対しても、そしてどこか近くに潜んでいる不死者に対しても、自分は無害で臆病な子供だと見せかけなければならない。
途端に複雑化した状況と条件に、チェスの頭脳はその回答を導き出すべくめまぐるしく回転を始める。
予め用意していたプランに、このような特殊な条件を設定したものはない。だからこの一瞬で……―、

「おー! チェス君じゃあないか」「無事だったんだねー!」

と、仮面の下で苦悩するチェスの元へ聞き覚えがある声と共に助け舟が降りて来た。
1931年のフライングプッシー号に乗り合わせた、自分の身元を保証してくれる風変わりな男女のカップル。
彼らによってこの苦境から自分は救われるだろうとチェスは確信した。だが、チェスにはその男の笑い顔が―、

―その嘘偽りの全く無い真っ白な笑顔が、死神のそれにしか見ることができなかった。


 ◆ ◆ ◆


結局の所、アレンビーがチェスに抱きかけていた誤解はあっさりと解かれた。
すでに同行していたアイザックとミリアが間に入ったことで、それは単なる臆病な子供がその場の思いつきでついた嘘だったと
チェスの想定していた通りに決着がついた。
興味なさげにその場を離れていたキールも、チェスの同行者であったジェットも最終的にはそれに納得した。

かくして、互いが安全な相手だと確信した彼らはそれまでに得ていた情報を交換し合うのだが……。


 ◆ ◆ ◆


「俺にはどうしてもお前さんがたの言っていることが正気とは思えんのだが……」
「……否定はしないわ」

合流した後、再びゴミ処理場内の探索へと二手に別れたその片方。
ジェットとアレンビー。そして、その頭上のキールの二人と一羽はゴミ処分場内にある焼却施設の中を探索していた。

先程行われたばかりの情報交換の中で、新しく合流したジェットとチェスの二人に語られた
アイザックが螺旋王の息子だという話と、そこから続く荒唐無稽なストーリーをジェットは……、

342:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/03 00:18:15 cclPutuu


343:ランチタイムの時間だよ 4/11  ◆AZWNjKqIBQ
07/12/03 00:18:44 IOnR+U/A
「意味が解らん。そんな訳ないだろう」

……と、常識という観念で一蹴した。
勿論、それを目の前で物語を熱心に紡ぐ、頭の上にお花を咲かせた二人に直接ぶつけたりはせず、
ていよく別れた所で、比較的常識が通用しそうなアレンビーへとぶつけて探りを入れてみた。
ジェットの見込み通り彼女もあの話には懐疑的な部分があったようだが……、

「でも、彼が不死身だってことはこの目で確認したし、彼は今までもそうだったって……」

そこが問題だった。
彼はこの実験が始まってより繰り返し殺され続けてきた―そういうありえない事実があるからこそ、
またそこから続く信じがたい話もアレンビーは一蹴できないでいるのだ。

「……とりあえず、話に出てきたカフカって娘と会ってみないと解らんな。
 それに、やつが”殺された”という相手にも確認を取りたいところだが……」

そこでジェットも首を捻った。行方知れずのカフカという少女を探すのも骨が折れる話だが、名前も知らない相手を探すのはそれ以上だ。
しかも、アイザックを”殺した”ということは、つまりはその殺意をこちらにも向けてくる危険人物であろうことが容易に想像できる。

床の上を歩く二人は頭を悩ませ、逆に空を羽で叩いて飛ぶ一羽は何も考えずに、ゆっくりと施設の奥へと入り込んでいった。


 ◆ ◆ ◆


片方の組が薄暗い室内で、これまた暗い考えに心囚われている頃。
もう片方の組の方は明るい日差しが降り注ぐ中、あいも変わらず陽気に宝探しを楽しんでいた。

「いやー、チェス君が無事でよかった」「よかったネ!」
「あのおじさんにも何かお礼をしないとな~」「恩返しだね! 玉手箱だね!」
「よし、と言うわけで玉手箱を掘り当てよう!」「ここ掘れワンワンだね! 大判小判ザックザクだね~!」

目の前にいる二人は馬鹿だ―クルクル回ってはスコップを振り回す二人にチェスはそう評価を下した。
だが、その二人を目の前に彼の心臓は落ち着かず、身体は足場の悪さを考えてもなおフラフラと揺れていた。

”アイザック・ディアンは不死者である”

それはチェスにとっては最早間違いのないことであった。
先刻の突如として偽名を名乗れなくなった事。そして、その後彼らから聞かされた「手品」の話……。
1931年のフライングプッシーフット号。その食堂車の中にいたチェス以外の不死者。それはアイザック・ディアンだった。

子供として目の前の二人に付き合いながらチェスは考える。
―アイザック・ディアンという男は一体何者なのか? 何を考えているのか?
底抜けの明るい態度。手品やポロロッカという荒唐無稽な話で皆に幸せをもたらせると考えている異常な思考。
チェスの頭の中に思い浮かんだのは、同じ錬金術師であり不死者の一人でもある”笑顔中毒者”のエルマーという男だった。
幸不幸の関係なしにただ”笑えればいい”―それだけが至上命題の、ある意味最も狂っていて、そして傍迷惑な男だ。
果たして、目の前の男はそんなモノなのだろうか? それとも全ては演技なのか? そして―、
―この男は私が不死者だと知っているのか? 私を喰おうとするのか?
それがチェスにとって最も重要な事だった。文字通り、それは死活問題だ。

344:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/03 00:19:24 cclPutuu


345:ランチタイムの時間だよ 5/11  ◆AZWNjKqIBQ
07/12/03 00:19:56 IOnR+U/A
目の前の男が何を考えているのか解らない。それがチェスにはどうしようもなく怖い。
もし自分を喰おうとしているのならどうすればよいのか? それだけはどうしてもいやだ。死んでもいい。だが喰われたくはない。
こんな汚いものを。こんなおぞましいものを、誰かの中に移し覗き見られるなんてとても耐えられない。それだけは……、

「(……私が、ヤツを喰えば……)」

そうだ。そうすればよい。そうすれば不安は何もなくなる。何も怖がる必要はなくなってしまう。
何よりも、ここはそういう場所なのだ。不死者は不死者でしか殺せない。ならば、どこに躊躇う必要があるのか。


心と水はよく似ている。どちらも低き低き方へと自然に流れてゆく。恐れを抱いたチェスの心も低き方へと―。


 ◆ ◆ ◆


「……で、キールはこれをどう思う訳?」

アレンビーはジェットとの会話が一段落すると、頭上で無関心を貫いていた喋る烏に声をかけた。

「あれ、もしかしてオイラに意見を求めたの?
 でもオイラ、男の声なんか全然頭の中に入ってこないからさ。アレンビーがその可愛い声でもう一度聞かせておくれよ」

はぁ……と、アレンビーは何度目になるかわからない溜息をつく。こんなにも面倒くさいのなら、いっそ無視すればと決め込みたいところだが、
今は鳥の足も借りたいところなので渋々ながら説明を繰り返した。

「ジェットさんが言っていた螺旋王の本当の目的って話。螺旋力ってのはあなたも聞いたでしょ」
「さぁてね。鳥頭って言葉があるぐらいだから、オイラ女の子の話以外は……」
「…………焼却炉に放り込んで焼き鳥にしちゃうわよ」
「おぉ、なんと大胆なアプローチか。不肖ながらこのキース、恋の炎にならば喜んでこの身を投げ込みましょう……」
「たまにはあんたも普通に喋りなさいよ!」


いつ終わるとも知れない一人と一羽のやり取りから離れた場所で、残りの一人であるジェットは大きく息を吐いた。
「(……焼き鳥、か)」
そういえば、ここに来てからろくに食事をしていない。
これから長丁場になりそうなことを考えると、スパイクではないがたんぱく質の補給を期待したいところだ。
だがジェットの記憶が確かならば、自身の鞄の中に肉は入ってなかったはずだ。……と。

「魚の肉も……たんぱく質だよな?」

ジェットの両眼が注視するところ、アレンビーの背中には青々とした巨大なブリが背負われていた……。

346:ランチタイムの時間だよ 6/11  ◆AZWNjKqIBQ
07/12/03 00:21:06 IOnR+U/A
 ◆ ◆ ◆


「そーだよ忘れてた!」

突然あがったの大声にチェスはびくりと身体を震わせ、ミリアも何事かとそちらを振り返った。
アイザックは二人が自分に注視していることを確認すると、今までに見せたことののないような真剣な口調でそれを口にした。

「……俺達、メシ喰ってねーじゃん」

その発言に、ミリアはまるでこの世の終わりが目の前にやってきたかのような表情を浮かべ絶叫する。

「どうしようアイザック! このままじゃあ、チェス君も私達もみんな餓死しちゃうようっ!」

涙を浮かべひしと抱きつくミリアを受け止めると、アイザックはその涙を拭いながら次の台詞を吐く。

「安心しなミリア。俺達には心強い味方がいるんだぜ」
「……それは?」
「ブリだ!」
「……アイザック。あのアレンビーさんのお友達を食べちゃうんだね」
「ああ。そうだぜミリア。そして、彼は我々の血となり肉となりて我々に宿りその御魂は永延と受け継がれるんだ」
「リサイクルだね~、循環社会だね~!」

という訳で。と、ピタリと直立するアイザックとミリア。

「じゃあ、ミリアはアレンビーさん達とブリさんをここまで呼んできてくれ。
 俺はその間に、みんなで楽しく食事ができるよう見晴らしのイイ場所を探しとく。」
「OK。アイザック! みんなで野原にマットをひいて楽しいランチタイムだね♪」

言い終わるが早いか、ミリアはドレスの裾を翻し安全メットを小刻みに揺らしながらゴミ山の向こう側へと消えていってしまった。
後に残ったのは、ミリアが消えた先へ未だ爽やかな視線を送るアイザックと、呆然とし目が点になっているチェスの二人のみ。


 ◆ ◆ ◆


「じゃあさチェス君、一緒に見晴らしのいい場所を探そうか!」

そう言いながらザクザクとゴミ山を登るアイザックに、チェスは恐る恐るとついて行く。
目の前の無防備な男は一体何を考えているのか。これは罠なのではないか。そんな気持ちを心の中に渦巻かせながら。

347:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/03 00:21:46 cclPutuu


348:ランチタイムの時間だよ 7/11  ◆AZWNjKqIBQ
07/12/03 00:22:20 IOnR+U/A
「チェス君さー。アレンビーやあのおじさんに”偽名”を使ったんだって?」


先を行く男から何気なくかけられたその言葉に、チェスの身中にある小さな心臓がドクンと大きな音を立てた。
まるで、その音が外に漏れ聞こえてしまうのが心配だという風に、チェスはその手をそこに当てる。
見上げた先、振り向いた男の表情は日の光が逆光になっているため見ることはできない。

だが、チェスには男が自分を見下ろして薄笑いを浮かべているんじゃないかと思えた。

―よ~くわかるよ。怖いもんな、俺だって泥……ウ…………時ハ…………。

ドクンドクンとまるで自分の身体がひとつの心臓となったかと思うぐらいに、その音は響き、身体を揺らす。

―だ……ら、チェス君も………………………………だロ…………?

ドクンドクンと一つ音を打つたび、身体が恐怖に引き絞られる。まるで見えない蛇が音を打つたびに絡み付いてくる様に。

―で…………「安心」…………ヨ。…………で、……………………「喰ったら」………………って!

身体を縛り付けていたは恐怖という感情だったが、それを解放したのはそれよりも強い恐怖だった。


「うわああああああああああああああああああ――っ!」


ゴミ山の上に蕩う濁った空気を切り裂くような絶叫を上げ、まるで手負いの獣かと思えるような様でチェスは突進した。
足場も悪く、チェスは短躯なために速さはそれほどでもない。だが、眼前へと迫る彼の気迫にアイザックは動くことができなかった。
いつの間にかに抜き出されていた短剣を前に構え、弾丸となったチェスはそのままアイザックへとぶつかり―押し倒した。

グシャリと音を立ててゴミの中に埋まったアイザックの上を這い、チェスは彼の頭へと短い右手を伸ばす。
その手がそこに届いた次の瞬間、それは始まった―、

張り付いたチェスの右手から中身を吸い出されているかの様に、アイザックの身体が萎み始める。
最初は手や足の末端部分から、血が肉が骨が吸い取られ残された皮膚が乾いた紙の様にくしゃくしゃになる。
そして中身が吸われた後、残された皮膚も同じ様に右手の中へと吸い取られた。
髪の毛の一本、歯の一本、爪の一枚、何一つ残さずにアイザックという存在をその中へと吸い込んで「喰った」。

その場に残ったのは彼が身に纏っていた衣服と荷物。そして、彼の名前が刻まれた首輪が一つだけだった。
だが、アイザックがここにいたという証であるその首輪も、持ち主が居なくなると重力に従いゴミ山を転がり落ち、何処かへと姿を消した。

そして、残された人間は孤独な不死者であるチェスワフ・メイエルが一人。

彼は思っていた自身は最悪の存在であると。この世で最も汚い物の一つだと。だから、もうどの様な悪行を尽くしても変わらぬと。

だが、信じていた己の最悪よりもまだ邪悪で汚らわしい存在があるということを今此処で彼は知った。

「―――――――――――――!」

自身の魂を内側から切り裂くような無音の絶叫を上げ、チェスワフ・メイエルはただ独り……逃げた。

349:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/03 00:23:07 cclPutuu


350:ランチタイムの時間だよ 8/11  ◆AZWNjKqIBQ
07/12/03 00:23:32 IOnR+U/A
 ◆ ◆ ◆


「アイザックー! どこにいるのー?」

広大なゴミ山の片隅に、もうこの世には存在しない男を呼ぶ声が木霊していた。

「早く出てこないと、先に食べちゃうよー」

そんなことは今までで一度もなかった。出会ってからはいつもアイザックは彼女の傍に居続けたのだから。

「チェス君? アイザック? どこに隠れているのー?」

綺麗なストレートの金髪をなびかせる彼女の足元で、何かがキラリと陽光を反射していた……。



 【E-4/ゴミ処分場・ゴミ山の上/1日目-昼】


 【ミリア・ハーヴェント@BACCANO バッカーノ!】
 [状態]:健康
 [装備]:安全メット、スコップ、珠洲城遥の腕章@舞-HiME
 [道具]:デイバック、支給品一式、拡声器、ガラクタ(未識別)×1~3
 [思考]
  基本:アイザックと一緒♪
  1:アイザックとチェス君を探してみんなと一緒にランチを食べる
  2:ランチが終わったらゴミ山探索の続き、螺旋王を探す
  3:ジャグジー、剣持、明智、高遠、ドモン、清麿、ジンを探す
  4:パーティー楽しみだねアイザック! みんなでやればもっと楽しそう! あとでカフカたちと合流しようか?

 [備考]
  ※可符香とアイザックの話を全面的に信用しています
  ※殺し合いの意味を完全に勘違いしています(アイザックに課せられた試練で、終了条件は全員に手品で殺される事)
  ※アイザックはポロロッカ星の王子で、螺旋王は彼の父親。それを記憶喪失で忘れていたと思い込んでいます
  ※この世界は死ねば元の世界に帰還。生き残ればポロロッカへご招待されると勘違いしています
  ※少なくとも「悲恋湖伝説」「雪夜叉伝説」「瞬間消失の謎」については把握済み。(金田一の事件簿)
  ※可符香、金田一、アレンビー、キール、ジェットと情報交換をしました


 【ジェット・ブラック@カウボーイビバップ】
 [状態]:健康、空腹
 [装備]:コルトガバメント(残弾:6/7発)
 [道具]:デイバック、支給品一式(ランダムアイテム0~1つ 本人確認済み)
      テッカマンブレードのクリスタル@宇宙の騎士テッカマンブレード
      アンチ・シズマ管@ジャイアントロボ THE ANIMATION
 [思考]
  基本:情報を集め、この場から脱出する
  1:チェスとアイザックを探してブリを食べる
  2:情報を集めるために各施設を訪れる。(とりあえず今はゴミ処理場の探索)
  3:カフカという少女を探し出しポロロッカについて尋ねてみる
  4:出会えればティアナを保護
  5:謎の爆弾魔(ニコラス)を警戒
  6:仲間(スパイク、エド)が心配
  7:明日の正午以降に博物館に戻ってくる

351:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/03 00:24:15 cclPutuu


352:ランチタイムの時間だよ 9/11  ◆AZWNjKqIBQ
07/12/03 00:24:42 IOnR+U/A
 [備考]
  ※テッカマンのことをパワードスーツだと思い込んでいます
  ※ティアナについては、名前を聞き出したのみ。その他プロフィールについては知りません
  ※チェス、アレンビー、アイザック&ミリア、キールと情報交換をしました
  ※監視、盗聴されている可能性に気づきました
  しかし、それは何処にでもその可能性があると考えているだけで、首輪に盗聴器があるという考えには至っていません


 【アレンビー・ビアズリー@機動武闘伝Gガンダム】
 [状態]:健康
 [装備]:ブリ@金色のガッシュベル!!(鮮度:生きてる)
 [道具]:デイバック、支給品一式、爆弾生物ポルヴォーラ@王ドロボウJING、注射器と各種薬剤
 [思考]
  1:ミリアと一緒にアイザックとチェスを探し、その後みんなでブリを食べる
  2:ポロロッカのことについては、もう一度考え直したい
  3:豪華客船へとゲームに乗っていない人間を集める(高遠の伝言)
  4:悪いヤツは倒す! (悪くなくとも強い人ならばファイトもしてみたい……)

 [備考]
  ※キールロワイアルのアレンビーver.「ノーベルロワイアル」を習得
  ※参加者名簿はまだ確認していない
  ※シュバルツ、東方不敗はすでに亡くなっている人として認識している
  ※ガッシュ、キール、剣持、アイザック&ミリア、ジェットと情報交換をしました
  ※高遠を信用できそうな人物と認識しています


 【キール@王ドロボウJING】
 [状態]:健康
 [装備]:
 [道具]:デイバック、支給品一式、ジンの仕込みナイフ@王ドロボウJING
 [思考]
  基本:可愛い女の子についてゆく(現在はアレンビー)
  1:居なくなった男二人を適当に探し、アレンビーと優雅なランチを楽しむ
  2:他のことは……、まぁ、あんまりどうでもいい
  3:女性は口説く! 野郎? 別に興味ない

 [備考]
  ※参加者名簿はまだ確認していない
  ※ガッシュ、キール、剣持、アイザック&ミリア、ジェットと情報交換をしました
  ※高遠を信用できそうな人物と認識しています


 ※アイザックの遺品がゴミ山の中に放置されています
 デイバック、支給品一式、賢者の石@鋼の錬金術師
 カウボーイ風の服とハット、アイザックのパンツ、アイザックの首輪
 アイザックの掘り当てたガラクタ(未識別)×1~3

 ※アイザック&ミリアがゴミ山から掘り出したガラクタは多分ただのガラクタです


353:ランチタイムの時間だよ 10/11  ◆AZWNjKqIBQ
07/12/03 00:25:51 IOnR+U/A
 ◆ ◆ ◆


チェスはただ闇雲に走り続けていた。その小さな身体で。何かに追われる様に。何かから逃げる様に。
バクバクと心臓が激しい収縮を繰り返し、全身から汗が噴出し、身体中の筋肉が悲鳴を上げている。

彼は不死者である。歳は負わないし、身体が傷ついてもそれは瞬く間に元通りとなる。
だが、それはあくまでそうであるというだけのことであって、常時の肉体の働きは普通の人間と変わりはない。
疲労が限界を超え筋肉の断絶が起きた時になって、やっと悪魔の定めたルールに基づいて肉体は修復を開始する。

走りながら何度もそれを繰り返したチェスの身体が、糸の切れた操り人形の様にアスファルトへと叩きつけられた。
全身の修復箇所が身体を動かすのに必要な分を超えたからだ。それが修復されるまでの間、チェスは物の様にそこへ横たわる。

冷たい地面に触れて、乱れていたチェスの思考が少しずつ戻ってくる。狂ったままなら楽だったろうにと思っても、否応無しに……。

不死者が不死者を喰うということは、ただその片方に死を齎すという事だけではない。
喰った方が喰われた方の全てを得るということだ。脳の中の記憶だけでなく、身体の覚えた技術、体術までをもだ。
その人間の人生を受け継ぐといっても変わりはない。

そしてチェスは知った。アイザックが―愚かで、無自覚で、それでいて、とても善良な人間であることを。

彼は自身が不死者であることにすら気付いていなかった。それ故に記憶を探ってもどうして彼が不死者だったのかは解らない。
そう―だから、彼が自分を喰らおうとしているということなどは、全て卑小で愚かな自分の妄信だったのだ。
自身の記憶と同じ様に、近い記憶ほど鮮明に読み取れる。彼の最後の記憶は―「これも手品か」―だった。

その愚かさに、チェスの両目から涙が溢れた。とめどなく流れ、筋をつくり、地面にそれは溜まった。

最初に人を「喰った」のはフェルメートという男で、彼は同じ錬金術師であり、保護者であり、また自身を虐げる者であった。
「喰った」のは自衛のためであったが、直後にそうしたことを後悔した。
フェルメートの中にあったモノは己に向けられていた歪んだドス黒い欲望ばかりで、それは己の中に元よりあった
彼を恐れる気持ちと同居し、その身体を裏返しにして吐き出したくなる様な汚く重い膿を心の中に生み出した。
虐げる者と虐げられる者が同居するという、誰にも見られたくない汚らわしい自分。

それを誰にも見られたくないかった小さなチェスは、いつしか自分以外の全ての不死者を喰らおうとまでに思いつめていた。
そして、そんな自分が最悪のものであるという自覚はあったのに―。

穢れていないもの。真っ白なもの。無垢なもの。それらを踏み躙り、己の中に取り込んでしまうことのなんと悲しいことか。
真っ白なものが世界から失われ、自身の中で汚物に侵され黒ずんでいくことのなんと悲しいことか。

身体が再生を終え立てるようになっても、チェスはまだ横になったまま泣いていた。


―ただただ、アイザックがこの世からいなくなったことを嘆いて泣いていた。



 【アイザック・ディアン@BACCANO バッカーノ! 死亡】

354:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/03 00:26:43 cclPutuu


355:ランチタイムの時間だよ 11/11  ◆AZWNjKqIBQ
07/12/03 00:27:01 IOnR+U/A

 【D-3/市街地/1日目-昼(放送直前)】


 【チェスワフ・メイエル@BACCANO バッカーノ!】
 [状態]:健康
 [装備]:アゾット剣@Fate/stay night
 [道具]:デイバック、支給品一式、薬局で入手した薬品等数種類(風邪薬、睡眠薬、消毒薬、包帯等)
 [思考]
  基本:最後の一人になる。または、何らかの方法で脱出する
  0:ミリア達とは会いたくない
  1:…………………………

 [備考]
  ※アイザック・ディアンを「喰って」その知識や技能を得ました
  ※ミリアが不死者であることには気付いていません
  ※なつきにはドモン・カッシュと名乗っています
  ※不死者に対する制限(致命傷を負ったら絶命する)には気付いていません
  ※チェスが目撃したのはシモンの死に泣く舞衣のみ。ウルフウッドの姿は確認していません
  ※ジェット、アイザック&ミリア、アレンビー、キールと情報交換をしました
  ※監視、盗聴されている可能性を教えられました。
  ※無意識の内に急激に進化する文明の利器に惹かれつつあります。

356:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/03 00:28:31 BODwRXf/
フラグは大事にする事。キャラの持ち味を殺さないように。ベタすぎる展開は避けてください。
ライトノベルのような萌え要素などは両刃の剣。
位置は誰にでもわかるよう、明確に書きましょう。

書き手の心得3(一歩踏み込んでみる)

経過時間はできるだけ『多め』に見ておきましょう。
 自分では駆け足すれば間に合うと思っても、他の人が納得してくれるとは限りません。
 また、ギリギリ進行が何度も続くと、辻褄合わせが大変になってしまいます。

キャラクターの回復スピードを早めすぎないようにしましょう。
戦闘以外で、出番が多いキャラを何度も動かすのは、できるだけ控えましょう。
 あまり同じキャラばかり動き続けていると、読み手もお腹いっぱいな気分になってきます。
 それに出番の少ないキャラ達が、あなたの愛の手を待っています。

キャラの現在地や時間軸、凍結中のパートなど、雑談スレには色々な情報があります。
 本スレだけでなく雑談スレにも目を通してね。

『展開のための展開』はNG
 キャラクターはチェスの駒ではありません、各々の思考や移動経路などをしっかりと考えてあげてください。

書きあがったら、投下前に一度しっかり見直してみましょう。
 誤字脱字をぐっと減らせるし、話の問題点や矛盾点を見つけることができます。
 一時間以上(理想は半日以上)間を空けてから見返すと一層効果的。
 紙に印刷するなど、媒体を変えるのも有効。
 携帯からPCに変えるだけでも違います。

--------------------------------------------------------------------------

ここらへんもいらないですね

357:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/03 00:36:21 eGl9PTCN
>『展開のための展開』はNG
> キャラクターはチェスの駒ではありません、各々の思考や移動経路などをしっかりと考えてあげてください。


ここ、気になるな
こんなもん、チェスの駒だろ常考                                               
                                                               
                                                         
思考考えたってしょせん二次創作のクソ同人作家の妄想じゃね
価値なんて何も無いよ。
あると思ってるなら、それはただの原作者に対する傲慢だよ                                                       
考えたってどうせポイ捨てされるようなSSに対して
                                                       
何こいつらそんなに熱くなってんだ?

                                                       




358:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/03 00:43:05 pCMJRTvp
URLリンク(keiyasuda.ddo.jp)

2ちゃんねる板対抗バトルロワイアルの遊び方
        キタ━━━(゚∀゚)━━━ !!!!!

0)2ちゃんねる板対抗バトルロワイアルとは

板対抗潰し合いゲームです。  (*´д`*)ハァハァ
1)2ちゃんねる板対抗バトルロワイアルの目的

数ある2ちゃんねるの板を戦争でぶっ潰して頂点に立とうって言うゲームです(・∀・)
はっきり言ってよそのバトロワとはスクリプトは同じでも、やってる連中の脳みそは違うので
「バトロワとは(ry」とか言い出して厨房扱いされないように
2)2ちゃんねる板対抗バトルロワイアルの参加条件&禁止行為
2ちゃんねらーなら誰でも参加汁!
だけど荒らし君は勘弁な。
んで、初心者は必ず初心者の方へを読めよ
読まないで教えて君・クレクレ君・厨房扱いされたよヽ(`Д´)ノウワーンって言ってもおいらは知らないぞ

荒らされるスレッドはsage進行した方がいいけど、サブ板にある避難スレはガンガン上げていいよ。
んで、避難所じゃなくて本板にスレがあるけど、参加者を増やしてえよって言う場合は・・・
まああくまで軍の判断でよろしく。
スレを上げてなにかあってもおいらのせいにしちゃいやずら( ̄ー ̄)
それと参加する軍の板は必ず見ること。コレ大事、テストに出るよ。

スタキラ(スタータに攻撃はできない)は駄目。F5の連打や過剰なリロード禁止、負荷厨は自動的にアク禁。
多重登録、チート行為をすること聞くこと教えることは禁止。
行動記録荒らしもいやずら。
敵だろうが味方だろうが参加板のスレッドは荒らすな、正々堂々とゲームでヌッ殺しあえ!
裏切り行為= 自軍等のキャラに対して攻撃。
スパイ行為= 他軍で入り作戦内容等を自軍に報告。
その他、他人を不快にさせる行為に対しては厳しく取り締まります。
こういうことしたやつらははクビチョンパ→アク禁→接続業者に報告→友達のスーパーハカーに(ry
連続リロードによるアク禁解除はオフィシャルページから。

             ■                ■                 ■

そんなことよりこれ、どう思う?

359:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/03 00:50:21 pvQtBXfL
>はっきり言ってよそのバトロワとはスクリプトは同じでも、やってる連中の脳みそは違うので
>「バトロワとは(ry」とか言い出して厨房扱いされないように

>はっきり言ってよそのバトロワとはスクリプトは同じでも、やってる連中の脳みそは違うので
>「バトロワとは(ry」とか言い出して厨房扱いされないように

>はっきり言ってよそのバトロワとはスクリプトは同じでも、やってる連中の脳みそは違うので
>「バトロワとは(ry」とか言い出して厨房扱いされないように

>はっきり言ってよそのバトロワとはスクリプトは同じでも、やってる連中の脳みそは違うので
>「バトロワとは(ry」とか言い出して厨房扱いされないように




おいwwwwww

360:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/03 01:24:57 DTWLnPI7
したらば厨どもめ
外にとびだしやがったな

361:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/03 23:11:28 BnAwu2aW
そのバトロワ、面白そうだな

362:奪え、全て、その手で 1/10 ◇1sC7CjNPu2
07/12/04 05:35:21 f25l5XK/
 アルベルトは不死の少女を小脇に抱えながら、ある場所を目指して走っていた。

 ―放送まであと数十分といったところか。

 アルベルトは、軽い苛立ちを積もらせていた。
 伝言が思うように伝わらないことから、アルベルトは別の手立てを考える必要があった。
 しかし、これといったものが考え付かなかったのだ。
 十傑衆の一人としてどうかと思ったが、そもそも初めの段階で最良と考えたのが伝言なのだ。
 その伝言と比べると、どれもこれも最良とは言いがたいものばかりになってしまう。
 どうも手詰まりな感触に、アルベルトがさらに苛立つと―目的の建物が見えた。

 「ふん、あれか」
 「え?」
 「黙っていろ、舌を噛み千切るぞ」

 アルベルトは声に反応した少女に、素っ気なく注意しておく。
 そして―アルベルトは、その場に急停止した。

 「ぐがはっ!」

 アルベルトの抱えた少女が、いささか下品な悲鳴を上げる。
 少女はアルベルトの注意を聞かなかったのか―というより、理解できなかったのだろう。
 慣性の法則というものがある。移動しているものはずっと移動しており、静止しているものはずっと静止しているという法則だ。
 少女もバスが急停車する時になど、その法則を実感することがある。
 少女は慣性の法則通りに進行方向に引っ張られ―胴体はアルベルトの腕でがっちり固定されているため、体が引き千切られそうな痛みに襲われたのだ。
 車以上の速度で駆け、人を握りつぶすぐらい朝飯前の腕力である。
 アルベルトとて、相手が不死身でもなければまずやらない。……苛立ち混じりだったのはいささか大人気ないと言うしかないが。

 「……もう……ちょっと、女の子は……労わり、なさいよ」

 息も絶え絶えのかがみの文句を黙殺し、アルベルトは眼前の建物に目をやる。
 まるで城のような建物だ。中央に四角形の城塞じみた建物に、左右に中央の四角形よりゆうに二倍の大きさはある塔が繋がっている。
 塔の二倍の大きさというのは縦もそうだが、横にも二倍の大きさなのだ。二かける二で、四倍と言った所か。
 その大きさのせいで、中央の建物がとても小さく見える。
 窓は、どういうわけか一切見当たらない。唯一内部を覗けるのは中央の建物に設けられた自動ドアだけだ。
 さらに自動ドアの上には達筆で書かれた看板が掲げられており、それが唯一その建物の役割を表している。

 私立図書館『超螺旋図書城』

 「断じて図書館には見えん」
 「城ってなんだ、城って」
 二人は思わず突っ込んだ。

363:奪え、全て、その手で 2/10 ◇1sC7CjNPu2
07/12/04 05:36:33 f25l5XK/
 アルベルトがこの図書館を目指した理由は、割とシンプルなものだ。
 四方八方に散った参加者たちは、おそらく地図上の施設を目的地として行動するはず。
 戴宗もまた、人が集まりそうな場所を目的地として行動しているだろう。
 アルベルトは地図上にある施設をすべてか、あるいは幾つかを回ればいずれ戴宗に出会うだろうと考えたのだ。
 空振りであっても書置きなどの手段があるし、人がいた場合は伝言という手がある。
 ……ただやはりアルベルトは、どうも十傑衆としていささか考えが安直すぎる気がしてならないのだった。

 ■

 
 ガラス張りの自動ドアが開き、アルベルトたちを館内に迎え入れる。
 外観通りかなり大規模な―そして、奇妙な造りだった。
 正面玄関からすぐに貸し出しのためのカウンターがあり、そこから左右に塔へ続く通路がある。
 通路の先には、螺旋状の書架がところ狭しと並べられていた。
 螺旋状の書架はそれ自体が柱として機能しているのか、床から天井まで繋がっている。
 書架の前には螺旋階段が作られており、それを上がって本を取れということだろう。
 螺旋状の書架の隙間には、読書のためと思われる机と椅子が幾つかあった。

 ―変わっているどころか、文字通り捻くれた図書館だな。

 上にある資料を取るためには、馬鹿みたいに高い所まで螺旋階段を上らなくてはならない。
 利用者にとって、わざとらしいほどに不親切な作りとなっている。
 ……もっとも現在この舞台において利用者とは参加者に他ならず、不親切な作りになっているのも頷ける話であるが。

 「本を読んでる暇があったら、他の所に行けということか」
 「は?……痛っ!」
 「そこらで適当に待っておれ。逃げても無駄だとは分かっているだろう」

 少女を床に放り出し、アルベルトは単身で貸し出しカウンターの奥に進む。
 カウンターの奥には、おそらく従業員用の通路が続いていた。

 ■

 アルベルトは、館内に入った時から人の気配を探っていた。
 しかしこれといった反応はなく、後は人が潜んでいそうなのはこの通路しかなかった。
 何者かが―特に戴宗が身を潜めていることを期待していたアルベルトだが、残念なことに期待は外れることとなった。
 通路の奥には会議室や職員用の更衣室など様々な部屋があったが、人が潜んでいるということはなかった。
 階段があり、上がってみたがどこも同じようなものだった。

 ―戦闘が起きた時お荷物にならぬように不死の娘を置いてきたというのに、無駄足か。

 アルベルトの苛立ちはさらに積もる。
 念のため他の参加者たちの書置きなどがないか調べ、アルベルトは最後に『書庫』とプレートに書かれた扉を開いた。


364:奪え、全て、その手で 3/10 ◇1sC7CjNPu2
07/12/04 05:38:02 f25l5XK/
 書庫は、一般利用者の立ち入りが禁止される資料や文書を保管する倉庫だ。
 本の劣化や損傷を防ぐため、基本的に窓はなく温湿度はほぼ一定に保たれている。
 基本的に希少だったり貴重な資料や文書を保管しているものだが、所詮は螺旋王によって作られた舞台装置。
 そうたいした物はない―そう、アルベルトは思っていた。

 「……これは、ロボットの設計書か」

 『ガンメンの設計図まとめ』。アルベルトが何気なしに手に取った本のタイトルだ。
 特に期待もせず本を開いてみると、そこにあったのはBF団の所有するロボットと並ぶほどのロボットの設計図だったのだ。
 数枚ページをめくり、それから今度は書架にある本のタイトルを凝視していく。
 『獣人の製造法』、『トビダマの原理』、『カテドラル・テラの運用について』、『アンチ・スパイラルに対しての考察』。
 どれもこれも、アルベルトの知らない単語ばかりだ。

 ―惜しい。

 そう、アルベルトは思う。
 これだけの未知の資料だ。持ち帰れば、BF団に取ってどれだけの利益になりえるだろうか?!
 しかし、今はこれだけの資料や文書を持ち運ぶことはできない。この殺し合いの場で、余分な荷物を抱え込む余裕などないからだ。
 そして一刻も早く戴宗との再戦を望むアルベルトに、これだけの資料に目を通す時間はない。
 しかたなくアルベルトは手に持った本だけをデイパックに詰め、書庫を後にすることにした。
 何も焦る必要はない。後々にBF団の力を持って奪取すれがいいだけのことだ。

 ―しかし、これだけの資料を会場に放置しておくだと?
 ―螺旋王とやらはいったい何を考えている?

 ■

 不死者の少女―柊かがみは、ひたすら落ち込んでいた。
 思えば、この殺し合いに参加させられてからいきなり襲われたのは初めてのことだ。
 木津千里との時とは違う。完全に、人を殺すのを躊躇しない襲撃者。
 あっという間に千里とかがみは殺され―かがみだけが、こうして生き残った。

 「いいのよ、別にあんなやつ……」

 不思議と襲撃者の恐怖より、千里が死んだことの方がかがみには重苦しかった。
 かがみはできるだけ、千里の悪いところを思い出すことにした。
 あいつは最低の人間だ。死んでもよかった、数時間だけ一緒にいただけの人間だ。
 そう思わなければ、やっていられなかった。

 『あなたはこう言いたいのでしょう?自分の友達が心配だって』
 『つかささんだけいればなんて言っても、他のお友達のことが気になるのでしょう? 私にはそうとしか聞こえなかったけれど?』


365:奪え、全て、その手で 4/10 ◇1sC7CjNPu2
07/12/04 05:39:06 f25l5XK/
 「―っ!!」

 激しく頭を振って耳に残る、暖かな千里の言葉を忘れようとする。
 思い出してはいけない。意識してはいけない。でないと、柊かがみは勝ち残ることができない。
 そう思い込まなければ、やっていられなかった。


 つかさが死んだとき時のことを思えば、千里の死んだことなんてどうということはない。
 無理矢理に考えを締めくくり、かがみは今後のことについて考えを巡らせた。
 第一に考えたのは、自分を助け出したズタボロのスーツの男についてだ。

 ―あの男は、不死の能力者は貴重だと言ってたわよね。
 ―そして、貴様のためにやった訳ではないと言った。

 ツンデレ、ということではないだろう。かがみは、不死者である利用するために助けたのだと予想する。
 だけど、いったい何に利用するというのだろう?
 あれこれ考えたものの検討が着かず、かがみは頭を抱えた。
 ―まあ、いいわ。とにかく私を利用するつもりなのは間違いないだろうし……
 だとしたら、自分はどうすべきか。
 立ち向かった所で、不死者である以外は普通の女子高生であるかがみに勝ち目はない。
 逃げたところで、あの脚力だ。間違いなくに追いつかれるだろう。

 ―逆に、あいつを利用する?

 そう悪くない考えだと、かがみは思った。
 あの男が何を考えているかは分からない。けど、あの男は間違いなく強い。
 支給品かアニメのような特殊能力なのかは分からないが、赤と黒の衝撃波をかがみは確かに見ていた。
 あの男を上手く他の参加者たちにぶつければ、自分は楽に勝ち残ることができる。

 ―こなたや、ゆたかちゃんだって……あの男をぶつければ。

 そこまで考えて、かがみは自分に嫌悪を覚えた。

 ―最悪だ、私。

 とにかくその事だけを思考から追い出し、考えを再開させる。
 とりあえず、従順なふりをして男の気を惹いてみよう。話し合えば、あの男を操作する手段が思いつくかもしれない。
 そこまで考えて、かがみは自分があの男を篭絡しようとしているのだと気づいた。
 苦い顔をして、思う。

 ―こなたに知られたら、趣味が良いって言われそうね。

 あの親友なら趣味が悪いとは絶対に言わないと、かがみには確信できた。

 ■




366:奪え、全て、その手で 5/10 ◇1sC7CjNPu2
07/12/04 05:40:26 f25l5XK/
 とりあえず、待っている間にあの男に好印象を与える策を考えておくべきだ。
 そう思い、かがみはカウンターの辺りを調べることにした。
 何か役に立ちそうなものを見つけてあの男に渡せば、少しぐらい印象は良くなるだろうという考えだ。
 『アイテム渡して好感度UPってやつだね』
 ……なぜかこなたの声が聞こえた気がしたが、幻聴だ。かがみは、無視して調べを進める。

 「……流石にそう簡単に見つかるわけないか」

 特にそれらしい物はなかったため、かがみは男が入っていった通路を覗く。
 どうやら真っ直ぐ行くと裏口と繋がっているようで、それまでの道に幾つか十字路がある。
 ドアは幾つか見受けられ、男が点けていったのか照明の明かりがドアの隙間から漏れている。
 入ってきた時の大きさからして二階か三階ぐらいあるはずだが、ここからでは死角になっているのか階段もエレベーターも見当たらない。
 とりあえず、かがみはすぐ近くにある部屋に入ってみることにした。

 「……休憩所、てところかしら」

 ロッカーに、パイプ椅子と簡素な長机。長机の上には電気ポットと紙コップ、お茶葉にインスタントコーヒー、ティーバックが置かれている。
 それが図書館では一般的なものなのか、図書館について詳しいわけではないかがみには分からない。
 かがみとしては、そこにあるものを使わせてもらうだけだった。

 ■

 「べ、別にあんたのために作った訳じゃないからね!」

 貸し出しカウンターに戻ってきた男を、かがみはそう言って出迎えた。
 かがみは近くの読書スペースに座っており、机の上には自分用に入れた紅茶にと男用に入れたコーヒーが置いてある。
 好感度稼ぎの一つとして入れたのものだが、待っている間になんと声をかけようかと迷い、なんか恋する乙女っぽくないかと自身に邪推を抱き、自分に突っ込みを入れながら結果として出た言葉がそれであった。
 こなたが見たなら、ナイスツンデレと絶賛したことだろう。
 年頃の男たちから見てもおそらく十人中の十人は『可愛い』と称するだろうものだが―残念なことに相手が悪かった。

 「そうか」

 それだけ言い、かがみの対面に座りコーヒーを一口飲む。
 まずい、そう呟くのがかがみに聞こえた。
 て め ぇ。




367:奪え、全て、その手で 6/10 ◇1sC7CjNPu2
07/12/04 05:41:34 f25l5XK/
 「自己紹介がまだだったな。ワシの名はアルベルトだ」
 「……私の名前は、柊つかさ。……嘘よ、柊かがみ」

 つかさと名乗ったときに、男―アルベルトはかがみを強く睨みつけた。
 かがみは元々すぐに名乗るつもりだったので、あっさりと本名を告げる。
 アルベルトが不死者とは思えなかったが、念のためというやつだ。

 「まあいい、お前は戴宗という男を知っているか?」
 「……いいえ、知らないわ」

 小さく、アルベルトは舌打ちをした。
 かがみは少しビクっとしたが、出来るだけ平静を装う。
 ―戴宗、その人を探してるのかしら?
 幾つか疑問が浮かんだが、今は覚えるだけに留まる。

 「助けてもらった事もあるし、私から知ってることを話すわね」

 一口紅茶を含んで、かがみはこの会場に着てから判明したことを話す。
 会場の端と端が繋がっていることと―不死者についてだ。
 不死者について話すのにはもちろん、打算がある。
 何に利用されるにしろ、デメリットは把握してもらわなければならないからだ。
 偽名が使えないことは、その最もなことだろう。
 またこの会場に他に不死者がいるとすれば、対抗する手段としてかがみ自身が非常に有効なはず。
 そう考え、そのことをアピールするようにかがみは話す。
 そう話は長くなく、かがみは全て話し終える。そして、全てを聞いたアルベルトが少し時間を置いて口を開く。

 「この舞台には『不死の酒』なるものが支給されており、飲んだものは不老不死―不死者となる。
  不死者となったものは同じく不死者となったものに『食われる』他に死ぬ手段はなく、
  そして食った方の不死者は食われた方の不死者の知識と経験を我が物にできる。……そういうことだな?」

 確認するようなアルベルトの言葉に、かがみは頷く。
 ふと、かがみは疑問に思う。確認するにしては、アルベルトが言ったことは不死者のルールの一部だ。
 なぜ、その部分だけを確認するのか?
 かがみの疑問をよそに、アルベルトはゆっくりと口元を釣り上げて言う。

 「その不死の酒、まだ貴様は持っているか?」
 「……いいえ、持ってないわ」

 どこか、薄ら寒いものを感じながらかがみは答える。
 ひょっとしたら瓶に数滴分ぐらい残っているかもしれないが、あえて言うつもりはない。
 不死の酒を求めるということは、不老不死になりたいというのだろうか?
 ならば、そのことを餌に他の参加者たちを襲わせることは出来そうだが……。

 なにか違うと、かがみは思った。




368:奪え、全て、その手で 7/10 ◇1sC7CjNPu2
07/12/04 05:42:36 f25l5XK/
 アルベルトは、かがみを見ている。まるで物色しているような目だ。
 雄が雌を見るような厭らしさは感じない。ただ、使えるか使えないかを品定めされているような感じだ。
 知らず、かがみは冷や汗を流していた。

 「小娘、貴様はワシを利用しようとしているだろう?」
 「っ!……ええ、そうよ」

 ―見透かされてた!
 けど、まだ取り返しは利く。そう思い、かがみは不敵な笑みを浮かべる。
 ちゃんと考えた通りの表情になっているかは、自信がなかった。

 「なに、お前も気づいていただろう?ワシがお前を利用しようと考えていることに」
 「……ええ、とても分かりやすいセリフだったからね」

 やけに饒舌になったと、かがみは思った。
 喜んでいるのか、焦っているのか、何か考えがあってなのか。まったく分からない。
 とにかく、クールになることをかがみは心がける。

 「最初は、その不死の能力を目当てにお前を助けた。貴重な能力であり、死なぬことからメッセンジャーに仕立て上げようとした。
  しかし、お前の話を聞いてその利用方は随分と変わった」
 「……何?」
 「なに、お膳立てをしてやる。お前にも協力してもらうことになるがな」

 アルベルトは、さも愉快に笑う。
 かがみは、アルベルトから不気味なプレッシャーを感じていた。
 何か、恐ろしいことを要求される。なぜか、そう思った。
 そして、アルベルトは告げる。



 「お前に、螺旋王を食ってもらいたい」



 ■




369:奪え、全て、その手で 8/10 ◇1sC7CjNPu2
07/12/04 05:43:40 f25l5XK/
 「……螺旋王を食うって……そんな、どうやって!」
 「それはまだ検討がついとらん」
 「何よそれ!」

 かがみの悲鳴じみた言葉に、アルベルトは飄々と答える。

 「なに、まだ情報が足りないだけのことよ」
 「……情報?」
 「そうだ。螺旋王の目的に始まり、この忌々しい首輪に、この舞台のこと。
 それらの情報を集めれば、活路は見出せるかもしれん」
 「……可能性の話でしょう」
 「確かにそうだ。しかし、それを言うならば螺旋王が願いを叶えるというのも可能性の話ではないか?」
 「そ、そうだけど……そもそも、螺旋王が酒を飲んでる保障なんて」
 「飲んでいないなら、飲ませればいい。
 この舞台のどこかにまだ残っているかもしれんし、不老不死となる妙薬を、サンプル一つ残さず参加者に分けるとは考えられん。
 おそらく、螺旋王の根城にまだ残っているはずだ」
 「……」

 かがみの疑問は、アルベルトによってことごとく叩き伏せられる。
 アルベルトの言葉は、あくまで可能性の話だ。
 かがみはそれを理解している。
 しかし―かがみはその可能性に、希望を見出していた。

 かがみの目的は、つかさを生き返らせることだ。
 そのために殺し合いに乗り、螺旋王に願いを叶えてもらうつもりだった。
 しかしアルベルトの言う通り、螺旋王が願いを叶えるかは可能性の話だ。
 なら、どうやって願いを『必ず』叶えるか?

 ―私が、螺旋王を食えば。
 ―願いは、思いのままだ。
 ―つかさを、生き返らせることが出来る。
 ―木津千里だって、生き返らせることが出来るかもしれない。
 ―こなたや、ゆたかちゃんを殺す理由なんかなくなる。

 それに、優勝するためには目の前のアルベルトや千里を殺した襲撃者たちを相手にしなければいけない。
 そう考えると、かがみには螺旋王を食うという手段の方が願いを叶えやすそうな気がした。
 ならば、かがみには拒む理由なんてどこにもない。
 ハッキリとした声で、告げる。


 「利用されてあげるわ。螺旋王は、私が食う」


 ■




370:奪え、全て、その手で 9/10 ◇1sC7CjNPu2
07/12/04 05:45:03 f25l5XK/
 ―乗り気になったようだな。

 かがみの宣言を聞き、アルベルトは満足げに頷いた。
 どうやらかがみは自分に対するメリットのことで頭が一杯のようで、アルベルトに対するメリットにまで頭が回らないようだ。
 アルベルトに対するメリット―それは、かがみが螺旋王を食うこと。
 正確には、かがみが螺旋王の知識と経験を得ることだ。

 アルベルトは書庫にあった本や、かがみの語った舞台がループしているという話を聞いて確信したことがある。
 螺旋王の持つ技術はBF団と同等か―認めたくないことだが、BF団以上のものである。
 その技術を、BF団が手に入れるにはどうすればいいか?
 螺旋王を直接BF団に連行するという手もあるが、それは難しいと言わざる終えない。
 しかし螺旋王の知識を持った、ただの小娘ならば?
 不死の能力に加え、かがみは最上の土産になるはずだ。

 ―本人が望むのなら、BF団のエージェントにしてやってもいいかもしれんな。

 不死の能力と、螺旋王の知識があるならそれも可能かもしれん。アルベルトは冗談交じりにそう考えた。

 ■

 「さて、取らぬ狸の皮算用はここまでするか」
 「……そうね」

 アルベルトの言葉に、かがみは静かに同意する。
 かがみは若干興奮した心を落ち着けるために、紅茶を一口飲む。
 図書館内の掛けられた時計を見ると、もうじき放送が始まる時刻だった。

 「放送を聞いた後にこれからの方針を話し合う。いいな」
 「あ、それなんだけど。提案があるの」

 なんだ。とアルベルトが眉根を寄せる。
 かがみはそれに構わず、一度深呼吸をする。
 今まで、あえて忘れていたことを思い出したからだ。
 必要なことだから、かがみは思い出した。
 それが自分の心の傷を抉る行為だとは分かっていたが、今はその先に希望があるから。

 「私、同じエリアにいる人間の名前と位置が分かるレーダーと、首輪が落ちている場所を知ってるわ」

 つかさの、首のない死体が横たわっている場所。
 そこに、かがみの希望があった。
 アルベルトが何か口を開こうとした時―ちょうど、放送が始まった。




371:奪え、全て、その手で 10/10 ◇1sC7CjNPu2
07/12/04 05:46:17 f25l5XK/
【B-4/図書館/一日目/昼(放送直前)】

【衝撃のアルベルト@ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日-】
[状態]:疲労中、全身にダメージ、右足に刺し傷(それぞれ消毒液や軟膏・包帯で応急措置済み)、スーツがズダボロ
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、シガレットケースと葉巻(葉巻4本使用)、ボイスレコーダー、シュバルツのブーメラン@機動武闘伝Gガンダム、 赤絵の具@王ドロボウJING、
自殺用ロープ@さよなら絶望先生、ガンメンの設計図まとめ、不明支給品0~2(本人確認済み)
[思考]:
基本方針:納得の行く形で戴宗との決着をつける。
1:戴宗を再び失うことに対する恐れ。そうならないために戴宗を探し、情報を集める
2:複数の施設を回って人がいたら伝言を、いなかったら書置きを残す。メッセージの内容は決まっていません。
3:放送後、かがみの言ったことを確認する
4:かがみに螺旋王を食わせ、BF団に持ち帰る
5:脱出の情報を集める
6:いずれマスターアジアと決着をつける
7:他の参加者と馴れ合うつもりはない
8:脱出不可能の場合はゲームに乗る
[備考]:
※上海電磁ネットワイヤー作戦失敗後からの参加です
※ボイスレコーダーにはなつきによるドモン(と名乗ったチェス)への伝言が記録されていますが、 アルベルトはドモンについて名前しか聞いていません。
※会場のワープを認識


【柊かがみ@らき☆すた】
[状態]:不死者、私服に切り傷
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本方針:つかさのために、もう少し頑張ってみる
1:螺旋王を、食う
2:1の目的のため、レーダーと首輪と不死の酒の入っていた酒瓶を回収する(B-2の観覧車前へ)
3:アルベルトに利用され、利用する
[備考]:
※第一放送を聴きましたが、つかさの名前が呼ばれたということ以外は覚えていません(禁止エリアはB-1のみ認識)
※会場端のワープを認識


【『ガンメンの設計図まとめ』『獣人の製造法』、『トビダマの原理』『カテドラル・テラの運用について』『アンチ・スパイラルに対しての考察』】
 タイトルそのままの書籍の数々。
 その他多くの書籍あり。




372:第2回放送◇10fcvoEbko 代理投下
07/12/04 21:23:24 cuTpR5Br
真っ白に輝く太陽が、天の最も高みへと至ったのと同時に、どこからともなく大気を震わせる音が響いた。
殺戮と疑心、そして脆くはかない友愛の舞台に隈無く届く声の主はその主催者たる螺旋王。
鉄壁の威信を放つ四天王が脇を固めるなか、ロージェノムによる放送が始まった。





さて、二度目の放送を行う。
無事にこれを聞いていられる貴様達には、ひとまずおめでとうと言っておこうか。
どのような方法をとったにせよ、今現在生き残っていることは確かなのだからな。
くくっ、貴様達にしてみればいささか表現が陳腐過ぎると思うかも知れんな。
そう思われてしまうのも仕方のないことだ。
私は貴様達程個性に富んではいないのでな。
順調に殺し合いを進める者、善良を装い機を窺う者、いずれの方法にせよ私の説明に従い殺しあおうとする者がいるかと思えば、未だ平然と己が道を行きこの放送すら意に介さぬ者もいる。
実に、面白い。
そのような豪胆な振る舞いもまた良いだろう。それはそれで一つの力であると言うことも可能だからな。
だが、それができぬ者達はせいぜいあがき、戦い、知恵を振り絞るが良い。
それぞれの持つ力を精一杯生かし、殺し合いに励むことだ。
命と引き替えにだが、新たに螺旋の力を目覚めさせた者も現れた。
そのような者が現れてこそ、この実験を行う意味があるというものだ。
と、知恵を武器にする者達のためにも言っておこうか。
それでは、禁止エリアの発表を行う。数は前回と同じく三つだ。

13時よりD-2
15時よりF-8
17時よりG-4

以上。…あぁ、付け加えておくとモノレールの車両内に限り、禁止エリアからは除外される。
続いて、死亡者の発表だ。

アイザック・ディアン
アルフォンス・エルリック
泉こなた
エリオ・モンディアル
木津千里
玖我なつき
クロ
ジャグジー・スプロット
パズー
パルコ・フォルゴレ
風浦可符香
マース・ヒューズ
間桐慎二
ムスカ
ヨーコ
ロイド・アスプルンド

以上、十六名。
前回よりも大幅に数が増えたな。やっと要領を掴んできたと言ったところか。
今まさに闘争を始めようとする者達もいることだ。その邪魔をするような不粋な真似は、この辺りでやめておくとしようか。
次の放送も、同じように六時間後に行う。
それまでの間、思う存分に闘争を続けるが良い。





声は止み、その残滓は海に、大地に溶けて消える。
実験の箱庭の中で、様々な願望を希求する者達の抗いが、続いていた。

373:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/06 01:03:29 5ojcHnCw
なにが代理投下だwww

374:好奇心は猫をも殺す ◇jbLV1y5LEw 代理投下
07/12/06 01:12:54 zeto7K9z
無人の商店街を一人の少女が歩く。
スカリエッティの作り出した戦闘機人の開発ナンバー4、クアットロはご機嫌だった。
先ほどの放送によればまた一人、自分とドクターの敵である機動六課の人間が死んだのだ。

(うふふのふ~。全く、螺旋王には感謝したいものですわ。ドクターの敵を労せず片付けてくれるんですから)

偽善者ぶった連中のことだ。
螺旋王を逮捕しようと動き回っているのだろう。
そして勝手に殺し合いに巻き込まれ、次々に死んでいくに違いない。
その想像に、クアットロは思わず頬を緩ませた。
もちろん、彼女自身もその殺し合いに参加させられている。
だが、クアットロはいつだって他人を操る側だった。
無力な命を弄び、蹂躙し、もがく様を観察するのが彼女の定位置なのだ。
今回も他の参加者を操り、殺し合わせ、最後の一人になってみせる。
最初は少ししくじったが、何、肩の傷もあの男に埋め込んだDG細胞を使って治せば万事解決だ。

そんなことを考えながら、クアットロは重傷の男にDG細胞を埋め込んだ辺りにやってきた。
何やら遠くで火災が起きているようだったが、あからさまに危険そうな場所にわざわざ一人で出向く必要はない。
まずは苗の経過を見るつもりだったのだ。
だが、そこにいるはずの実験体は、どこに行ったのか、姿がなかった。
場所を間違えたかとも思ったが、残された血痕から見て、ここに間違いはない。

「あら、あらあら~? まさか、もう動けるようになったの?」

少々驚きながら周囲を探索していると、別の強い血の香りがクアットロの鼻をついた。
その臭いの元はどうやら一軒の店舗のようだった。

(これはもしや……)

クアットロはなるべく息を、足音を殺して店の中へと入っていく。
中に入って飛び込んできたのは予想通り血の赤。
辺り一面には赤黒く染まったタオルが散らばっていた。
予想とは違ったのは死体そのものの有無だ。
とはいえ、その残された血の跡からして、ここでおそらくは複数人が死亡したのは間違いない。

(殺害方法は近接武器による刺殺や斬殺……ってところでしょうか?)

弾痕や銃の薬莢などがなく、屋内であることから狙撃などによる銃殺も考えにくい。
特殊能力による殺害という線もあるが、辺りにそれらしき焦げ跡、破壊痕もない。
おそらくはここにあの男の身体を運び込んだ集団が仲間割れを起こしたか、侵入してきた第三者によって殺害されたのだろう。
いずれにせよ、争った形跡がほとんどないことから、不意をついての一瞬だったに違いない。

(一人で来たのは下策だったかもしれませんわね)

ゲームに乗った殺人者がこの辺りをうろついているとしたら、クアットロも危ない。
冷静に考えれば、早々にこの場を離れ、ヴァッシュの元に何食わぬ顔で戻るのが良策だろう。
だが、クアットロはどうしても気になることがあった。

(う~ん、それにしても……。なんで死体がないのかしら?)

あのDG細胞を植え付けた男もおそらくは死んだだろうが、その細胞の効果がいかほどであったか、確認したい。
それに、ここで死亡したであろう、他の参加者はどうなったのか?
さきほど、螺旋王は放送で言った。
命と引き換えに螺旋力に目覚めた者がいる、と。
ここで死亡した者がそうだとしたら?
螺旋力がいかなるエネルギーか、想像もつかないが、その死体には螺旋力の痕跡が残っているのではないか?
DG細胞と螺旋力、この二つの未知なる存在への好奇心がクアットロの冷静さと慎重さを削いだ。

375:好奇心は猫をも殺す ◇jbLV1y5LEw 代理投下
07/12/06 01:14:30 zeto7K9z
死体を運んだ時についたであろう血の跡をたどって店の裏側に回る。
そこには木簡が刺さった土饅頭四つあった。
墓のようだったが、名前を確認してクアットロは首をかしげた。

(無名の少女はおいておくとして……ロイ・マスタング?)

名前の確認できる他二名と違い、ロイ・マスタングの名前は先の放送で呼ばれていない。
殺した相手とともに、死んでもいない相手の墓を作る。
この行為に一体、何の意味があるのか?

(ま、改めれば分かることですわね)

そう思い直し、クアットロはまだ動く右手に支給品を握りしめ、スコップの代わりに土をほじくり返す。
『ロイ・マスタング』の墓には何もなかったが、次に掘り返した『マース・ヒューズ』の墓からは見知らぬ中年男の死体と、大量の支給品が出土した。

「あらあら。何を考えてるのかしら、もったいない。私が有効活用してあげましょう」

上機嫌でクアットロは支給品をデイバックの中に入れ、次いで後で調べるためにヒューズから細胞サンプル……つまり肉片を削ぎ取っておく。
この分だと、他二つにも死体の他に何か埋まっているかもしれない。
鼻歌を歌いそうな調子で次の墓に振り返ったクアットロは、その場で硬直した。
いつそこに来たのか、赤いコートと黒い鎧に身を包み、銀色の鱗と真っ赤な眼を持った異形の怪人がそこに立っていたからだ。
まさか、それが自らがDG細胞を植え付けた男のなれの果てとは、さすがのクアットロも想像すらできなかった。




今や悪魔の錬金術師、デビルマスタングとなったロイ・マスタングだった者は激怒していた。
周囲に他の参加者がいないか探索している途中、北東で火災が起きているのを発見し、
そちらへの通りがかりに墓を覗いてみれば、見知らぬ少女が親友の墓を暴いているのだから。
その憎しみがまたわずかに彼の体に潜むDG細胞と同調し、その侵食を許す。
だが、本人はそれに気づきはしない。
今はただ、この不埒な侵入者をどう処罰しようかということだけを考えていた。
その場から炎で焼くことも考えたが、万が一外して親友の遺骸や他の墓に当たっては元も子もない。
生まれ変わった身体の性能テストも兼ねて、音を殺し、なおかつ素早く近づいた。
そして刃の右腕を使って半殺しにしようとした瞬間、何の拍子か、少女が振り向き、目が合った。
突然現れたロイに、少女の瞳が驚きと恐怖に染まる。
その表情に心のどこかでわずかな愉悦を感じながら、彼は右腕を振り下ろした。
最後は殺すとはいえ、ロイの当座の目的は半殺しにした上での能力の吸収である。
そのため、右肩から背中にかけて引き裂くつもりだった。

「ひぃっ!?」

しかし、少女は意外に素早く、転がるように前に伏せる。
結果として狙いは外れ、わずかに背中の肉を抉るに留まった。
だが、DG細胞に侵されたロイの一撃はかすっただけで髪を縛っていた紐を両方同時に引き千切る。
縛めから解放された茶色い髪が宙を踊った。

「あ、ああ……!」

少女はうめきを上げながら、赤ん坊のように四つん這いになって逃げようとする。
その無様な姿に、ロイは思わず笑みを漏らした。
以前の彼ならば考えられない反応だが、体を蝕むDG細胞は彼の残虐性、嗜虐性を本人すら気付かぬうちに増幅していた。
外しようもない距離になったことを確認し、ロイは指を擦り合わせる。
金属音と同時に炎が発生し、逃げようとする少女の左腕が燃え上がる。
もちろん、殺しはしない。
イシュヴァール殲滅戦を経験したロイは、どの程度の炎が人間にどの程度のダメージを与えるかを知り尽くしていた。


376:好奇心は猫をも殺す ◇jbLV1y5LEw 代理投下
07/12/06 01:15:16 zeto7K9z
「っ!!!」

声にならない声をあげ、少女は涙を流しながら痛みに悶える。
その姿を見たロイはわずかに目を見張った。
焼き尽くしたはずの少女の炭化した左腕から、鈍い金属の輝きが覗いていた。
絶妙の火力によって生身が焼かれたことにより、戦闘機人の機械部分が露わになったのだ。

「ほウ……。お前モ、たダノ人間ではなイヨうダな……」

その姿に満足すると、ロイは右腕を振り上げた。

「こレデ……終わリだ」

あとはこの少女に刃の右腕を刺し、その能力ごと取り込むだけである。
だが、そのロイの目の前に、奇妙な光景が展開した。
少女の背後に数本の短剣が浮いているのである。
しかも、その短剣はあたかも水面から突き出ているように、周囲の空間に波紋を作っている。

「ナンだ……? コレハ……?」

警戒して一歩退いたロイの耳に、女のか細い声が届く。

「い、や……死に……たくない」

その声と共に、短剣がロイめがけ、弾丸のような速さで飛んできた。

「チぃっ!」

舌打ちと共にそれらをたたき落とすが、突然のことに反応がわずかに遅れ、一本、体に刺さる。
怒りと共に女へ眼を向けるが、左腕を焼いたはずの女は霞のように消え、奴が落としたらしい眼鏡だけがそこにあった。

「……逃ガしたカ……」

無造作に短剣を引き抜いて捨てると、短剣もまた霞のように消えて行く。
刺さった場所は鎧に覆われていたところだったため、大した傷ではない。
一撫でする間にDG細胞が体を再生していた。

「今のガ奴ノ能力カ……? マア、いィ……」

悪魔の錬金術師は落ちている眼鏡を踏み潰す。

「今度ハ確実に仕留メるマデだ……」

遊びすぎたことを反省しつつ、ロイは手早くヒューズの遺骸に土をかけ直す。
墓が荒らされないか少し気になるが、ロイには目的があるし、先の少女もあれほど脅せば同じことはすまい。
それに、今はどこへ逃げたかわからない獲物よりも、確実に獲物がいる場所へと急ぐべきだ。
人間をやめた男は煙を上げるデパートへと足を向けた。


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