【ノーマル】ローゼンメイデンのSSスレ 7【一般】at ANICHARA
【ノーマル】ローゼンメイデンのSSスレ 7【一般】 - 暇つぶし2ch387:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/23 10:07:51 hLIgHHRm
長編SS乙です。
まだまだ先はありそうですな。
楽しみが持続した

ところで、>>365を読んでちょっと疑問。
アニメ版ではジュンは高校生だったのか?

388:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/23 10:26:08 1F/9UAlq
もう
わけ
わか
らん

389:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/23 12:50:55 BlX+C65T
まぁWEB向きじゃあないな。紙媒体なら楽に読めるが、PCのディスプレイで読むにはちと辛いものがある
誤字脱字もやたら多いし。絶対推敲してないよな。勢いだけで書いてるだろ。だからこんなに書けるんだろうけど
内容的には楽しんでるけどね。背景の解釈はスタンダードだが濃いし、ノリとか雰囲気のセンスがかなり好きだ

390:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/23 13:12:16 O2fA53Fm
>>384
乙乙乙
面白かったよ

391:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/23 14:34:09 YE0Z2Pzj
>>357-384
長編いつもお疲れ様です。これからも頑張って下さい。

>>385
金糸雀アンチ乙。また粘着始めたのか。本当にワンパターンだな
どうせ信者になりすまして訳も無くSS叩いた後はID変えて今度は金糸雀叩きすんだろ
もうお前一人が演じてるってことバレバレなんだよ
相変わらず低能なことやってんのな

392:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/23 19:39:07 9DZtFBQt
すごいな
内容も凄いが
ここまで書き続ける根気が凄い

393:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/23 20:09:14 kbgMHfSZ
まあキャラの好き嫌いがはっきりしてる人だとは思う

394:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/23 21:05:51 wyxmwuX2
乙うううう
めっちゃ楽しみにしてたよ

395:384
07/12/23 21:28:42 Kar7fNnI
アホ長い長編読んでくれている方々には感謝しています。感想・指摘もありがとうございます。
いつも無言な自分ですが、無視しているわけではありません。タイトルなどへの指摘も、読ませて戴きました。

自分でもいつ終わるのこれと必死だったのですがやっと終わりまでかけました。
ですが、ラスト部分の容量確かめてみたら、24kbあってぎりぎり500kbに収まりきりません。:E
最後の一部分だけにょきっと次スレにでても相当意味不明になってしまうと思うので、今の段階で次スレにいかせてもらっても、
よろしいでしょうか?というより、152のとこから無駄な部分を削った簡潔版作って、ラストまで一気にまとめて次スレで投稿したい
と思っているのです。

そういう流れでどうかお願いしたいと思っています。

396:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/24 00:00:28 uiySuxju
ここで誰かがAAで埋め立ててくれたりすると
助かったりするのか?

397:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/24 00:08:49 QXXYDMOg
>>395
>152のとこから無駄な部分を削った簡潔版作って

次スレにいくのはいいけどどうせなら削らないでそのまま投下してほしい



398:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/24 00:17:58 uiySuxju
埋めますか?
埋めませんか?

399:名無しさん@お腹いっぱい。
07/12/24 00:46:21 3P3L9If5
おやりなさい

400:384
07/12/24 00:56:00 UA3qEiXL
>>396
はい。ぶっちゃけww

401:384 没シーン 本編に関係なし
07/12/24 02:12:30 UA3qEiXL
44

ようやく見慣れた我が家の光景を目にしたとき、ジュンは急に体の芯から疲れを感じた。
続いて後から続々とドール達が物置の鏡より湧き出てきた。
雛苺、真紅、そして…水銀燈。まだ真紅と何かを言い合っているみたいだが、
疲れがたまったジュンの耳にはもうその内容は入ってこなかった。
「ジュン君!ジュン君~!」
部屋の先から聞こえてきた声はジュンの姉のりのものだった。
ジュンは慌てて手元に抱えているぼろぼろの翠星石を部屋の隅のスペースに置き、寝たままの翠星石に一声掛けた。
「ごめん。少し我慢しててくれ…」
のりは姉として稀とも言えるほどの弟想いな姉だ。両親が家にいない今、毎日のご飯はほとんどのりが作っている。
不登校のジュンをめげる様子も見せずに励まし続け、見守り続け、最終的にはジュンを学校へ通わせたいと心から願っている。
だがジュンにとって普段それは鬱陶しいものだった。
自立に憧れ始める年頃の一方で、いつまでも姉に世話をされていることに不登校で未来の無い現実をいつも思い知られた。
「ねえちゃん心配しちゃった~。家に帰ってきたら誰もいなくて…もしかしてジュン君が真紅ちゃん達を
連れて家を出て行ってしまったのかと思っちゃった~。みんなしてこの物置で何しているの?みんなずっとここにいたの?…あら?」
のりは物置を覗き込むや、見慣れないドールが一体いることに気付いた。
「あの紺のドレスを着た子はだれ?」
「…あいつは水銀燈」ジュンが答えた。「今晩だけウチでお茶のんでくんだって」
「そうなの~。お客さんってことね!」のりはにこっと笑った。「なんだかとっても真紅ちゃんと仲良さそう」
ジュンは何も言わずに物置を後にしながら、とりあえず今晩の食事が無事で済むことだけを祈った。
いや、無理だろうな。
防弾チョッキでも今すぐ通販で買い寄せるべきかもしれない。

「大体あなたのフィールドに置かれた人形のセンスは異常なのよ。いつあんな悪趣味を覚えたの?」
「全てはあなたからの譲り物よ?もう一度言うけど、私はあなたへの憎しみをただの一度だって失ったことは無いわぁ!」
「まったく。前々から思っていたけど、あなたの執着ぶりは、はっきりいって異常だわ」
「当たり前よ!あなたが私に何をしたのか覚えてる?そして私はアリスとなってお父様に - 」
「アリスになるのもいいけど」
真紅は素早く水銀燈の口元に手をあてて遮った。
「たまには戦いを忘れて姉妹で一緒に紅茶でも飲むのは悪くない。でしょ?」
真紅は水銀燈の口元から手を放し、一瞥してから物置部屋の出口へと歩き出した。
「"おねえさま"?」
とどめの一言に水銀燈は口はおろか体の動きまで完全に封じられ、ただ出口へと向かう真紅を見届けることしか出来なかった。
雛苺も何か楽しげに歌いながら真紅の後についていき、物置部屋には水銀燈が一人取り残された。
「あの女ー!高飛車なところは全く変わってないじゃなぁい!むかつくわぁ!」
その独り言は真紅達の耳に届いたかは分からない。

402:384 没シーン 本編に関係なし
07/12/24 02:15:00 UA3qEiXL
ああ、書き忘れた 没になったシーンでも使って埋めちまいます


「今日の晩飯は何かある?ねえちゃん」
「そうねえ~お客さんがきてるって話だから花マルハンバーグを作ってあげたいところなんだけどお、材料が足りないわねー。
ねえちゃん今から買って来ようかな」
「別にそこまでしなくてもいいよ」ジュンは言いながら冷蔵庫を開けた。「何か繋ぎだけでもいいから」
冷蔵庫の中はあっけらかんとしていた。飲み物のペットボトル数本と、ヨーグルト、納豆、冷凍食品。
「うーん。確かにこれは寂しいものがあるかもな」

ふと、後から女の人の悲鳴が聞こえた。その直後、より甲高い少女のような声も。
「みっちゃん、大丈夫かしら!?まさかフィールドの出口に逆さの状態のまま入ってしまったなんて、迂闊だったのかしら~!」
「あー、あいつらか」ジュンは物置部屋へと走り出した。「本当に大変な夕飯になりそうだなあ」
リビングから出た時、水銀燈が一人全く見当違いな方向へと廊下を歩いているのが目に入った。
「おーい、水銀燈」少し緊張しながらジュンは彼女に声を掛けた。「そっちはトイレだぞ」
水銀燈はピクっと体を振るわせた。そしてぎょろっと目をぎらつかせながら振り向いた。
「ひっ…」ジュンは身の危険を感じ、思わず上半身を後に退いた。
「…真紅に言ったら命はないと思いなさい」
そう言って水銀燈はジュンの横を通り過ぎ、別の扉の取っ手に背伸びして手をかけようとした。
「えっと…そっちは洗面所」
水銀燈は手を止め、声を荒げて言った。「一体どこよ!?」
「そそそ、その隣の、扉だよ!」
ジュンはリビングへの扉を指差した。
「そっちにみんないるから!僕は金糸雀たちを迎えにいってくる!」
言い残して、ジュンは逃げるように廊下を走った。
「はぁ、恐ろしいったらありゃしない。奴の羽が心臓を一刺しだよ」
物置部屋に再び入ったとき、ジュンは奇声を上げながら飛び上がった。
「何じゃこりゃあ!?」
「あ、真紅のミーディアム!ちょっと手を貸してなのかしら!」
頭を地面に打ち付けて倒れているみつと、それを必死に起こそうとする金糸雀。
そして、部屋中に人形用のものと思われる衣装が散りばめられている。
驚くほどフリルのついたゴスロリの衣装から、真っ白で綺麗なドレスまで。
そして慌てふためいた様子であちこちを飛び回る、ホーリエとピチカート。
「うーいたたたたた…」みつが頭を撫でながらようやく意識を取り戻した様子で起き上がった。
「あら…ジュン君、今晩は。nのフィールドって、とても怖い所なのね。めがね、私の眼鏡はどこいったの?」
「はぁ…こんばんわ、草笛さん…」ジュンはため息をついて首を落とした。「とりあえずその衣装みたいなのは何ですか…」

403:384 没シーン 本編に関係なし
07/12/24 02:17:23 UA3qEiXL
45

「まず翠星石を僕の部屋のベッドに寝かすべきなのかな…」
ジュンは再び翠星石を抱えた。すでに体から水銀燈の羽は全て抜かれていたが、
それでも服がぼろぼろに破けた翠星石の姿を見ると心が痛んだ。
大丈夫だ。今日はもう水銀燈は他のドールを傷つけたりしない。これからもそうあってほしいと、ジュンは心から思った。
ひとしきり衣装を袋に詰めなおしたみつにジュンは声をかけた。「リビングでみんな待ってます。こっちです」
翠星石を抱えながら廊下を歩いていると、いきなりのりがリビングから出てきて、
ジュンは驚いてすぐ体の向きを逆にした。
「ジュン君、私やっぱり花マルハンバーグの材料買ってくるね。20分で済むから、あら?今晩は。どなたです?」
「金糸雀のマスターで草笛さんと言うんだ」
ジュンはのりに背を向けたまま答えた。
「あ、そうなんですか!ジュンの姉です。よろしくお願いします」
のりは頭を下げながら、何時の間に家に人がいたとを不思議に思った。
「あ、いえいえ。勝手にお邪魔して本当にすいません!」
ジュンが抱えている翠星石の姿に取り乱しつつも、みつはなんとか答えた。
「ジュン君の友達なら、誰でも歓迎ですよ!」のりは笑った。「ジュン君、じゃあ私いってくるね」
「もう外暗いから気をつけろよ」
ようやくのりが家の外に出たとき、ジュンはみつと金糸雀に言った。
「お姉ちゃんに、こんな翠星石の姿を見て欲しくないんだ。家族のように思っているから。今はみんなと楽しくやりたいから。
お姉ちゃんがこんな翠星石を見たら、すごく心配するんだろうな。ましてこんな風にしたのが今家にいた水銀燈だなんていえないよ」
翠星石のことを今話題に出せないのは、みんなの暗黙の了解だった。
今それを話すことは、水銀燈の目前でアリスゲームの話題を持ち出すことを意味する。
折角、またとない和解の機会なのに。
「翠星石を二階の僕の部屋に寝かせてくるよ」
ジュンがそういうと、みつと金糸雀の二人は無言で頷く。
階段をニ、三段登ったところで、ジュンは再び足を止めた。
「アリスゲームのこともいつかは姉ちゃんに話さなければならないと分かっている。けど、今じゃない」

「こんばんわ!真紅ちゃん、雛苺ちゃん、水銀ちゃん!今日はみんな本当にありがとうね!」
みつは満面の笑顔で勢い良くリビングの扉を開けた。
真紅、雛苺、水銀燈の三人は既にテーブルの席についている。
「きてやったのかしらー!」
その後から同じく勢い良くして金糸雀も入ってきた。。
「こんばんわなのー!」両手に箸をそれぞれ一本ずつ握り、それをゆらゆらと楽しそうに揺らしながら雛苺は二人を迎えた。
「いらっしゃい」頭の帽子を取りながら真紅も言った。
「この私をちゃん付けして呼ぶなんてどういうつもり?人間」
一方水銀燈は椅子の上で足と腕どちらとも組んだ体勢で不機嫌そうに言った。
「それから、水銀"燈"よ」
「あはは…ごめんね」みつは苦笑した。「席についてもいいかな?」
「ええ。どうぞ」
真紅は言った。それから水銀燈に意味ありげな視線を送った。「まったく…この場に及んでも相変わらず口の減らない子ね。水銀ちゃん」
「なん…!」
二人は同時にテーブルから立ち上がった。
「あなたって何の本も読んでなさそうだけど、燈の漢字を自分で書けるの?」真紅が先に言葉を発した。
「漢字ぃ?そんなの要らないわぁ。いいこと?すいぎんとうはこの国での私の呼び名でしかないの。
世界の反対側じゃ私の名前は"Mercury Lamp"となるのよ」
「そう?じゃあギリシャでは?"hydrargyrum"?聞くに堪えない醜悪な名前ね」
「黙りなさい!…ねぇ、真紅ちゃん?スペインへ行ってみなさい。あなたの名前は"rojo"よ"rojo"!うっふふふふ!」
「捏造よ!私に授けられた美しい名前がそんな風になる訳ないでしょう!?エル・ピューロ…」
「お前ら、やめろったら!」
二人が声のした方向へ顔を向けると、ジュンが入り口に立っていた。
ふん、と二人は鼻を鳴らして席に着いた。
やはり無理だ。ジュンは確信した。自分ひとりでは無理だ。今夜この家の治安は到底守り切れない。援護が必要だ。援護が…

404:384 没シーン 本編に関係なし
07/12/24 02:18:29 UA3qEiXL
「わーいわーい、ねぇねぇ、ヒナはすぺいんではなんていうの?」
雛苺が楽しげに聞いた。
「ラ・バーカ・ペクナ」水銀燈は笑いが込上げてくるのを必死に堪えて言った。「小さなおバカさん」
「うー、」
雛苺は頬を膨らませ、両手の箸をぶんぶん振り回し始めた。
「ウソ、そんなのウソ!バカといったやつがバカなのお!」
「ええ、それは嘘よ。」真紅は横目で雛苺を見据えた。「正しくは、ラ・バーヤ・ジミニウタ…地味に歌う子」
「う、うにゅ…真紅まで…」雛苺はショックを受け今にも泣き始めそうな顔をした。「ヒナ地味なんかじゃないもん…」
そんな雛苺を尻目に、真紅と水銀燈はいきなり二人して笑い出した。
「あっははははは! "small"を"tiny"にして言葉を直したってわけ?」
そう言って水銀燈はテーブルに両手を置いて顔を近づけ、真紅を嫌らしげな目つきで見上げた。
「真紅の割にはやるじゃなぁい」
「フフフ、簡単なことよ」真紅も水銀燈に倣って体を乗り出した。「本当は"寝ぼすけ苺"にしたかったのだけれど」
金糸雀は信じられくらい意気投合した真紅と水銀燈を見ていた。いまだに不思議な光景だ。けれど、なんとも微笑ましい光景でもある。
勇気を振り絞り、金糸雀は二人の間に割って入った。
「じゃあじゃあ、カナはなんていうのかしらぁ!?」
水銀燈が始めに金糸雀の方を向いた。そのダークピンクの瞳にはいまだに慣れないが、
今回は何処となくいつもの冷酷さが欠けているような気がした。
「あなた…」水銀燈は言った。「名前は何といったかしら?」
「カナエルよ」真紅が答えた。「だからスペイン語では…」
「カナリアかしらぁ!!!」


405:384 没シーン 本編に関係なし
07/12/24 02:19:20 UA3qEiXL
46

「本来この紅茶は夜に飲むものではないのだけれど」
真紅は言いながらポットを机の中央に置いた。
「今日はまあとにかく楽しく飲みましょ」
紅茶は口論を恐れたジュンがあらかじめ既に入れておいたものだ。
ジュンはそそくさと席につき、今一度口論を避けるため、ポットを持ってみんなのカップに注ごうとした。
真紅は首を少し動かしてテーブルを見渡した後、深々とため息をついた。
「ジュン…」真紅は絶望したかのように悲しげな表情だ。「あなたって本当に使えない家来…」
「な、なんだよ…」ジュンはポットを持つ手を止めた。今日はいつもより数段積極的なのに。
「私のカップを持ってきなさい。今すぐに」
「…。そういうことか」ジュンはポットをテーブルに置いた。「少しは自分で持ってこようと思わないのか?」
「つべこべ言わずに。早く」
「分かったよったく!お前の鞄の中だな!?」
リビングの扉を開けて二階へ向かう最中、後ろからもう一声聞こえた気がした。
「私の鞄のくんくんグッズには絶対触らないことも忘れずに」
ジュンは自分の中の怒りパラメーターを必死に沈めようと努力した。

誰の金で払ってると思ってる!通販のくんくんグッズ!

部屋のドアを開けて電気をつけようとしたとき、ジュンは翠星石が自分のベッドでまだ眠っていることを思い出し手を止めた。
暗闇の中で真紅のカップを見つけなければならない。
三個並べられた鞄の中から音を立てないように一つ取り出し、ジュンは鞄を開けた。
鞄をあけると、裏側上部にクレヨンで落書きされた絵が闇の中おぼろげに目に入り、これは雛苺の鞄だと確信した。
探し物はこの中にはない。鞄を縦にして元に戻し、その隣の鞄を開けた。
その途端、くんくんの顔が目に入った。大事そうに底に敷き詰められたくんくんの本。真紅はこれと一緒に寝ているのか。
隅に置かれた黄色の真紅のカップを手に取ったとき、思いがけず後ろから声がした。
「人間…」
ジュンは飛び上がるようにして向き直った。その時、カップを持った手が真紅の鞄の蓋にあたり、
その勢いで真紅の鞄がひっくり返った。くんくんの本が打ち上げられ、鞄の外へと散りばめられた。
「…ま、まずいな」
「人間…ここはどこです?」翠星石はかすれる様な声で言った。「人間…いないのですか?」
ジュンは真紅のカップを置き、本を元通りに戻すのを後にして翠星石の元へ走り寄った。
「ここは僕の部屋だよ」
「ジュンの部屋?」翠星石は状況が飲め込めていないようだ。「みんなは?真紅達は?水銀燈は?」
「真紅達ならそこで寝てるよ。みんな無事で帰ってきたんだ。心配しないで、僕のベッドで寝ていていいよ。僕は下で寝るから」
「そうですか…。なんだか頭がくらくらして私よく分からんです…。もうちょっと寝ます…悪いです人間…」
「おやすみ。全然構わないよ」
そういいながら、ジュンは翠星石を一人仲間はずれにしているような罪悪感に襲われた。
けど、今翠星石を下に連れて水銀燈と会わせたりすれば、死ぬ気で双子の蒼星石を倒されたことへの復讐に出る可能性がある。
そんなことは絶対に避けたい。
翠星石の目が完全に閉じられたのを確認し、ジュンは静かに真紅の鞄の元へと戻った。
ゆっくりと鞄を立て直し、慎重にくんくん関連の本を鞄にしまい始めた。

"四月号 - 世界の通信を傍受・盗聴する政府の秘密施設で起きた密室の殺人事件"

"五月号 - 今蘇る伝説の秘密結社、天使と悪魔の彫像に隠されたダイイング・メッセージ"

"六月号 - 世界警察組織を根底より覆す、驚愕の事件! 人質は2000年の歴史"

ジュンは苦笑した。相変わらず、いや、前にも増して子供向けの人形劇とは思えないタイトルだ。
もはや犬が立ち入っていいレベルの事件の規模ではなくなっている気がする。
最後の一冊を手に取ったとき、ジュンは手を止めた。これだけ一つ異彩を放っていたからだった。

"くりーぷず☆ - くんくんと過ごす一日"

そのタイトルを見た途端、ジュンはぞっとするような寒気を覚えた。
嫌な予感がする。
ジュンはもう一度振り返って翠星石が眠っていることを確認し、視線をその本の元へ戻した。
そしてゆっくりと開いてみた。

406:384 没シーン 本編に関係なし
07/12/24 02:20:29 UA3qEiXL
やはりそうだ。最悪だ。
内容は漫画仕様になっており、暗くて台詞までは読めないが、くんくんの絵は普通とはちょっと違った感じに描かれている。
ジュンはこういう本と特に何と言うか知っていた。パソコンでネットしていれば嫌でも知ることになってしまう世界だ。
特に最近はその浸透率は高い。本職にしてしまう者すらいるとか。

真紅がネット通販をしているなんてことはすぐにでも止めるべきだった!
だが時既に遅しだ。真紅はその世界を知ってしまった。
ジュンは手に持ったくんくん探偵の同人誌を真紅の鞄の底に戻し、鞄も元の位置に戻した。
真紅のカップを手に持ち、重い足取りで暗闇の部屋を後にした。

407:384 没シーン 本編に関係なし
07/12/24 02:23:13 UA3qEiXL
47

「みんなー、花丸ハンバーグの材料買って来たよー!」
ジュンの姉のりが右手に大きなビニール袋を抱えて家に帰ってきた。
「おかえりなさいなのー!」雛苺が飛ぶように玄関へと走っていった。「のりー!」
「ただいま!雛ちゃん。これからはなまるハンバーグ作るからね!」
「わーい!はなまるさんなのー!」

「遅いわね、何をもたもたしているのかしら。あの使えない家来。紅茶が冷めてしまうわ」
真紅は苛立ちを覚えながら独り言を口走った。
まさかあの一冊を探り当てたわけでもあるまい。あれは六月号の袋とじに挟みこんである。
ある程度以上深く探りを入れない限り見つけられまい。そしてそこまで探りを入れることをこの私は見逃さない。
鞄ごとひっくり返るなんてことでもおきない限り見つけることは不可能だ。
あのくんくんの絵本…真紅はその内容を思い出しただけで顔が赤らむのを感じた。くんくんが私の手を取って…いやぁっ。
「なに一人で顔赤くしてるの?気味悪い」水銀燈の声で真紅は我に戻った。
はっ。なんということ。よりにもよってこの子の目の前であの本のことを思い出してしまうなんて。
「…別に。」
水銀燈はしばし真紅を見据え続けた。「…変な子」

「おーい、真紅、持って来たぞ」
「遅いわね!紅茶が冷めてしまうでしょ?カップを持ってくるくらいのことで一体何をてこずったというの!?」
ジュンは階段を下りる最中に考え付いた嘘を言った。
「ああ、パソコンが朝から付けっぱなしだったからさ、データを一通り保存して、電源を落としてたんだよ。悪かったな」
パソコンという単語が出たとき、雛苺が一人身を凍らせていたことにジュンは気付かなかった。
「そ、そう」真紅はぎこちなくいった。「まったく、困った家来だわ。と、とにかく、早く注いで頂戴。」
「わかったよ!」
ジュンはまず真紅のカップに紅茶を注いだ。
それから雛苺の分。草笛さんの分。注ぐときありがとうといってくれた。次に金糸雀の分。
そして水銀燈の前に置かれたカップに注ごうとしたとき、水銀燈は手でジュンを制した。「待って」
「?」ジュンは手を止めて水銀燈の次の言葉を待った。
「それは真紅のマイカップって訳?」水銀燈は真紅のカップを指差した。
真紅は得意げに笑みを浮かべた。「ええ、そうよ。19世紀の時にも見たでしょ?」
水銀燈はしばらく黙したのち、突然イスから飛び降りた。そして部屋を見渡すや、のりが調理中の台所へと歩き出した。
「人間の女。それを私に渡してくれる?」
「えっこれ?」のりは水銀燈が指差したカップを手に持った。「でももうあなたのもとにあるじゃ」
「いいから私の言う通りにしなさい」
「は、はいっ」のりはあたふたとした動作で水銀燈にカップを手渡した。
ジュンは無言で席に戻ってくる水銀燈を見つめていた。
(…真紅のマイカップに対抗心燃やしてるのか…?)
「人間。こっちに入れて頂戴」水銀燈はそういって持ってきたカップをテーブルに置いた。
「ほとんど一緒じゃないか」
「私はこっちのカップの方が好みなの。分かる?人間」
「分かったよ!それと、僕の名前はジュンだからな」
ジュンはそういって水銀燈のカップに紅茶を注いだあと、必要なくなったもう一つのカップを持って台所に片付けに行った。
「ねえ、ジュン君」
カップを片付けている時、のりが焼き上がったハンバーグをフライパンから皿へと移しながら小声で言った。
「ああいうのを最近流行の"ツンデレ"っていうの?」
その言葉が耳に入ったとき、ジュンは心臓が止まるかと思った。
「な、ななな、何を言い出すんだよ!」
のりは小さく笑った。「だって、凄く態度がトゲトゲしいじゃない。けどなんかそこが可愛い、くす」
「あのなぁ…」


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