ジャンプキャラ・バトルロワイヤル PART.13 at YMAG
ジャンプキャラ・バトルロワイヤル PART.13 - 暇つぶし2ch2:作者の都合により名無しです
06/11/12 01:44:53 6nQ3k5Ed0
2/4【こち亀】○両津勘吉 /○秋本麗子 /●中川圭一 /●大原大次郎
1/4【NARUTO】●うずまきナルト /○春野サクラ /●大蛇丸 /●奈良シカマル
2/4【DEATHNOTE】●夜神月 /○L(竜崎) /○弥海砂 /●火口卿介
1/4【BLEACH】●黒崎一護 /●藍染惣右介 /●更木剣八 /○朽木ルキア
1/4【ONE PIECE】○モンキー・D・ルフィ /●ニコ・ロビン /●ウソップ /●道化のバギー
1/4【銀魂】●坂田銀時 /●神楽 /●沖田総悟 /○志村新八
1/4【いちご100%】●真中淳平 /●西野つかさ /○東城綾 /●北大路さつき
1/4【テニスの王子様】○越前リョーマ /●竜崎桜乃 /●跡部景吾 /●乾貞治
1/4【アイシールド21】●小早川瀬那 /●蛭魔妖一 /○姉崎まもり /●進清十郎
0/4【HUNTER×HUNTER 】●ゴン・フリークス /●ヒソカ /●キルア・ゾルディック /●クロロ・ルシルフル
2/5【武装錬金】●武藤カズキ /○津村斗貴子 /●防人衛(C・ブラボー) /●ルナール・ニコラエフ /○蝶野攻爵(パピヨン)
1/5【SLAM DUNK】●桜木花道 /●流川楓 /●赤木晴子 /●三井寿 /○仙道彰
0/4【北斗の拳】●ケンシロウ /●ラオウ /●アミバ /●リン
0/4【キャプテン翼】●大空翼 /●日向小次郎 /●石崎了 /●若島津健
0/4【キン肉マン】●キン肉スグル /●ウォーズマン /●ラーメンマン /●バッファローマン
2/4【ジョジョの奇妙な冒険】○空条承太郎 /○ディオ・ブランドー /●エリザベス・ジョースター(リサリサ) /●ブローノ・ブチャラティ
2/4【幽遊白書】●浦飯幽助 /○飛影 /○桑原和馬 /●戸愚呂兄
0/4【遊戯王】●武藤遊戯 /●海馬瀬人 /●城之内克也 /●真崎杏子
1/4【CITY HUNTER】●冴羽リョウ /●伊集院隼人(海坊主) /○槇村香 /●野上冴子
3/4【ダイの大冒険】○ダイ /○ポップ /●マァム /○フレイザード
1/5【魁!!男塾】●剣桃太郎 /●伊達臣人 /●富樫源次 /●江田島平八 /○雷電
1/4【聖闘士星矢】○星矢 /●サガ /●一輝 /●デスマスク
0/4【るろうに剣心】●緋村剣心 /●志々雄真実 /●神谷薫 /●斎藤一
3/6【DRAGON BALL】○孫悟空 /●クリリン /●ブルマ /●桃白白 /○ピッコロ大魔王 /○ヤムチャ
0/4【封神演義】●太公望 /●蘇妲己 /●竜吉公主 /●趙公明
0/4【地獄先生ぬ~べ~】●鵺野鳴介 /●玉藻京介 /●ゆきめ /●稲葉郷子
0/4【BLACK CAT】●トレイン・ハートネット /●イヴ /●スヴェン・ボルフィード /●リンスレット・ウォーカー
1/4【BASTARD!! -暗黒の破壊神-】●ダーク・シュナイダー /○アビゲイル /●ガラ /●ティア・ノート・ヨーコ
0/5【ジャングルの王者ターちゃん】●ターちゃん /●ヂェーン /●アナベベ /●ペドロ・カズマイヤー /●エテ吉
2/4【とっても!ラッキーマン】○ラッキーマン(追手内洋一) /●勝利マン /○友情マン /●世直しマン
0/4【世紀末リーダー伝たけし!】●たけし /●ボンチュー /●ゴン蔵 /●マミー
30/130 (○生存/●死亡)

3:作者の都合により名無しです
06/11/12 01:45:28 6nQ3k5Ed0
2/4【こち亀】○両津勘吉 /○秋本麗子
1/4【NARUTO】○春野サクラ
2/4【DEATHNOTE】○L(竜崎) /○弥海砂
1/4【BLEACH】○朽木ルキア
1/4【ONE PIECE】○モンキー・D・ルフィ
1/4【銀魂】○志村新八
1/4【いちご100%】○東城綾
1/4【テニスの王子様】○越前リョーマ
1/4【アイシールド21】○姉崎まもり
2/5【武装錬金】○津村斗貴子 /○蝶野攻爵(パピヨン)
1/5【SLAM DUNK】○仙道彰
2/4【ジョジョの奇妙な冒険】○空条承太郎 /○ディオ・ブランドー
2/4【幽遊白書】○飛影 /○桑原和馬
1/4【CITY HUNTER】○槇村香
3/4【ダイの大冒険】○ダイ /○ポップ /○フレイザード
1/5【魁!!男塾】○雷電
1/4【聖闘士星矢】○星矢
3/6【DRAGON BALL】○孫悟空 /○ピッコロ大魔王 /○ヤムチャ
1/4【BASTARD!! -暗黒の破壊神-】○アビゲイル
2/4【とっても!ラッキーマン】○ラッキーマン(追手内洋一) /○友情マン
30/130 (○生存)

4:作者の都合により名無しです
06/11/12 01:48:03 6nQ3k5Ed0
基本ルール
URLリンク(aaaaaa2005.hp.infoseek.co.jp)
キャラ紹介
URLリンク(aaaaaa2005.hp.infoseek.co.jp)
支給品一覧
URLリンク(aaaaaa2005.hp.infoseek.co.jp)
制限のある専用武器
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まとめサイト(地図含む)
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まとめサイト(携帯版)
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旧まとめサイト
URLリンク(jumproyal.exblog.jp)
パロロワ事典wiki
URLリンク(www11.atwiki.jp)

ジャンプロワ雑談チャット2
URLリンク(chat.mimora.com)


5:作者の都合により名無しです
06/11/12 01:51:11 6nQ3k5Ed0
前スレ
ジャンプキャラ・バトルロワイヤル PART.12
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ジャンプキャラ・バトルロワイヤル PART.11
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ジャンプキャラ・バトルロワイアル PART.10
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ジャンプキャラ・バトルロワイアル PART.9
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ジャンプキャラ・バトルロワイアル PART.8
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ジャンプキャラ・バトルロワイアル PART.7
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ジャンプキャラ・バトルロワイアル PART.6
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ジャンプキャラ・バトルロワイアル PART.5
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ジャンプキャラ・バトルロワイアル PART.4
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ジャンプキャラ・バトルロワイアル PART.3
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ジャンプキャラ・バトルロワイアル PART.2
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ジャンプキャラ主人公&ヒロインバトルロワイアル
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ジャンプキャラ・バトルロワイアルSS投下専用スレ PART.1
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ジャンプキャラ・バトルロワイアル準備スレ PART.2
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ジャンプキャラバトルロワイアル準備スレ PART.3
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6:テンプレ
06/11/12 12:55:03 SHiFhiRs0
ヤムチャvsタカヤの激闘から数百年…
地球では、平穏な日々が続いていた。
ヤムチャの子孫は、今日も平和に暮らしており、超生物TAKAYAの血は、完全に途絶えていた。

しかし、また悪災は起ころうとしている。

ここは、地球の果ての不毛の地。
一人の科学者、ジョナサン・ジョーンズの手には一つのビーカーが握られていた。
それは、忌まわしき輪廻の血。

「ふはははははは…蘇るのだ!!!!
 タカヤの魂は、まだ死んではいないぃぃ!!!」

大地が、かすかに光った。
 


7:テンプレ
06/11/12 12:56:27 SHiFhiRs0
ここは、ニューヨークの繁華街。

そこに、一人の青年がいた。
彼の名は、ヤムチャ。
正確にいうとヤムチャ3世。
100年前、タカヤとの激闘で戦死した初代ヤムチャの子孫だ。

あの闘いの後、彼は一人の子を残した。
それは、ブルマのお腹に宿った隠し子だ。
産み落とされたヤムチャ2世は、悟飯とビーデルの子、パンと恋に落ちた。
そして、二人は一人の子を授かることとなる。

それが、この物語の主人公3代目ヤムチャなのだ。


代々、ヤムチャ一族には、首筋にアザを持っている。
それは、タカヤの闘いでできた、後遺症。
きれいに、狼の形を象っている。

「傷が疼くな…」

それは、新たなる闘いの予感か。




8:テンプレ
06/11/12 12:57:45 SHiFhiRs0
―サハラ砂漠エリアB24地点―

ピー ピー

「はい。例の化石、見つかりました。
 今すぐ、そちらに送ります」

発掘されたのは、人のような形をした化石。
というよりか、それは化石と一体化していた。

9:テンプレ
06/11/12 12:58:36 SHiFhiRs0
ここは、日本軍、東京基地。
何人かの兵士が、先ほど送られてきた化石を解剖していた。

「なにか、分かったことは?」
「はい、こいつの名はカイン。1000年ほど前に実在した人物です」
「で、例の刻印については?」

この化石の左肩下部から、妙な文字が刻まれていたのだ。

『KIYU』と。

そこへ、一人の男が入ってきた。
100年前に行なわれたバトルロワイアルの優勝者にして、
この日本に、自分の私兵軍を創った人物。
化石の捜索も、彼が命令してのだ。

男の名は、仙道彰。



10:テンプレ
06/11/12 12:59:47 SHiFhiRs0
あれは、100年前のことだった。

―バトルロワイアル―
仙道も参加者の一人だった。
当初は、脱出派に属しており、主催者の居場所も突き止め、いざ最終決戦という所だったのだが…
仙道の頭に一つの疑惑がよぎる。

「本当に、フリーザ達に勝てるのか?」

仙道の結論は、NO。
結果として、脱出派の仲間達を裏切り殺してしまった。
そして最期の一人になり、晴れてこのゲームの優勝者となった訳だ。

それから、俺は主催者達の元へ赴き、褒美ももらった。
余談だが、ある人物を生き返らせてもらった。

その後、おれは魔物に転生し、バーンの部下となった。
強くなりたかった、ただそれだけで。

100年の後、おれは『タカヤ』とう超生物がいたことを思い出した。
そいつが再び活動を始めようとすることも、予感で感じた。

そして、仙道は人間界に戻り、今に至る。


その頃、ヤムチャも仙道達の下へ向かっていた。
「タカヤの野郎…今度こそぶっ殺してやるぜ!!!」



11:テンプレ
06/11/12 20:13:17 YBwruKVs0
仙道の私兵軍は、目の前にある人間の形をした化石を丹念に調べる。
やはり、これは…

ピキ
突然、化石にわずかにひびが入る。

バキキキキキキキキ……
禍々しいオーラを射出しながら、それは、だんだん人間の姿を形成して行く。
『カイン』と名づけられた、その人間は激しく吼えた。

「UKIKIRYYYYYYYYYY!!!!!
 タカヤ様は、どこだぁぁぁぁぁーっ!!!」




12:テンプレ
06/11/12 20:14:51 YBwruKVs0
「やはり、タカヤの部下か!!
 行け!! ミヤギ! ハセガワ! ウオズミ!」
仙道の命令で、部下達が一斉にカインに襲い掛かる。

しかし…
カインの眼光が、部下達に焦点を合わせる、
ただそれだけで部下達は、みじん切りされたネギのように粉々になった。

そして次にカインが、仙道に照準を合わせようとした時だった。

バタン、とドアが開かれた。
その奥から、ヤムチャが姿を現した。

13:テンプレ
06/11/12 20:16:22 YBwruKVs0
突然現れたヤムチャは、カインの方へ向かっていく。
「久しぶりだなッ!!小僧ぅぅ!!毎度毎度、俺の研究を邪魔しおってぇぇ!!」
仙道は、面識があるのか、ヤムチャに向かって怒りを露にする」
ヤムチャはそんな仙道を無視し、カインの前に立ちふさがる。

「てめぇが、タカヤの部下って奴か。3秒で片付けてやる」

ビュン!!!

ヤムチャは、一瞬でカインを肉縛した。
カインも必死に抵抗する。
「ほう、やるじゃねぇか、俺の予告時間を全て使い切らせたのはお前が始めてだ」
ヤムチャは、少し間合いを取る。

「てめぇみたいな雑魚に、この能力を使うはめになるとはな」
ヤムチャの左肩のアザが、怪しく光る。

ジュドーン!!! ジュパッ!!!!
ヤムチャの片から、何かが具現化していく。

「閃け!!!! 狼嵐―ウルフハリケーン―」
それは、一瞬でカインを激しく食した。


その光景を見ていた仙道は、中指を真正面に突き立て驚愕する。
「あ、あれは ブ ラ ン ド ッ!!!ま、まさか…
 奴も使えるのかッ!!!?」


14:作者の都合により名無しです
06/11/12 22:53:52 2RXHnqO/0
DIO「ブランド-ですが何か」
仙道「仙道波紋疾走」


【ディオ・ブランドー@ジョジョの奇妙な冒険 死亡確認】
【残り29人】



15:四重奏(カルテット) ◆kOZX7S8gY.
06/11/12 23:58:49 C+KCt97N0
「ふははははは~! 我こそはピッコロ大魔王! 愚かで貧弱な人間共よ、貴様等全員この私が支配してくれるわッ!!」
「お~っと、そうはいかねーぜ! てめえの野望は、この正義超人バッファローマンが打ち砕く!」
「ふん、笑わせるな牛風情が―爆力魔破!」
「ウギャアアアア!! キン肉マーン!!!」
「馬鹿者め。下等生物の分際で大魔王に逆らうからこうなるのだ」
「よくもやってくれたなピッコロ! もう許しちゃおけねぇ、バッファローマンの仇は、このボンチュー様が取ってやるぜ!」
「誰が来ようと同じことよ! 大魔王の前では、百万の軍勢とて蟻の大群と変わりなしッ―爆力魔破!」
「ウギャアアアア!! ルキアーーー!!!」
「思い知ったか愚民共がッ! もう貴様等に抵抗する術は残っておらん! 世界は全て、このピッコロの手中よ!」
「待ちやがれピッコロ! まだオラが残ってるぞ!」
「ぬ!? 現れおったな孫悟空! だが今の私にかかれば、貴様もただの羽虫同然よ―前世の実ィィィ!!」
「なっ、ピッコロの身体が若返っちまった!?」
「これがピッコロ大魔王の真の姿よ! 喰らえ― 爆 力 魔 破 ! 」
「そ、そんな~ッ! チクショーッ!」
「クックック―ついに、ついに孫悟空をも倒したぞ! 今度こそ、大魔王の力が最強であることが証明された!
 唱えよ! この世の君臨者が誰か! 王の座に着く者が誰か!
 他でもない、このピッコロ大魔王様こそが頂点よッ!!」


 ・
 ・
 ・
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16:四重奏(カルテット) ◆kOZX7S8gY.
06/11/12 23:59:47 C+KCt97N0
 その男の前に、立ち塞がる障壁はなかった。
 その男の瞳に、喧嘩を売る存在はなかった。
 その男の姿に、恐怖で震えて死ぬ者がいた。

 圧倒的。その二つ名に偽りなしの、あまりに圧倒的な戦力。
 暴君、ピッコロ大魔王。
 彼が猛威を振るった道には、血の跡も残らず。
 あるのは、敗れ去った弱者共の無念のみ。

「―どうやら、やっと汽車が到着したようだ」

 数分前に聴いた第六放送の内容にも、別段興味は示さなかった。
 誰が死んだ?―関係ない。ピッコロが成すべきことは、虐殺。
 孫悟空に恨みを晴らすのは当然として、それ以外の者を皆殺しにするという目的にはなんら問題ない。
 ようは、残り何人か。あと何人殺せばいいのか。それさえ分かればあとはどうでもいい。
 ここ、秋田県に位置する駅で汽車を待ち続けたのも、新たな地に赴き参加者を減らすため。

「もたもたするなフレイザード。汽車に乗り込むぞ」
「……おお」

 傍らに、炎と氷を身に宿した魔人―フレイザードを従え、大魔王は威風堂々戦地へと赴く。
 これから起こり得るであろう激戦を思っても、恐怖はない。
 どんな未知の強敵に出会えるのだろうか、という期待感もない。
 臆病者でも戦闘狂でもなく、ただ事務的に殺しを働く。
 それこそが、大魔王の所業。歯向かう者、邪魔な存在を片っ端から殺していくという、完璧なる悪魔の所業だった。

17:四重奏(カルテット) ◆kOZX7S8gY.
06/11/13 00:00:47 wzaZezSk0
 ピッコロとフレイザード。二人の悪魔が、南へと向かう下り列車に乗り込む。 

「おいおい、こりゃあ……」
「気づいたか? フレイザード」

 異変を気づいたのは、すぐ、だった。

「微かだが、血の臭いが蔓延している。それに、車両の各所に斬撃の痕跡も見られるな。
 どうやら、この汽車内で何者かが戦闘を行ったようだ」

 床に落ちていたスナイパーライフルをひょいと摘み上げながら、ピッコロが車内の様子を分析する。
 乗り込んだ汽車内部は無人、不気味なほどの静けさに包まれていたが、戦の臭いに敏感な二人の強者はすぐに気づいた。
 残された血痕と臭い、不自然な破壊の跡と取り残された武器から、ここで繰り広げられたバトルの規模の大きさに。

「まだ何者かが潜んでいるとも限らん。フレイザード、お前は後部車両の方を偵察してこい。私は先頭車両の方を見てくる」

 ピッコロが仮初の相棒に指示を出し、了解を得る間もなくずかずかと先頭車両に向かっていく。
 フレイザードを同盟ではなく、手下か何かとしか見ていないような、唯我独尊の姿勢。
 さすがは自称大魔王というところか、反吐が出るほどの自己中心っぷりだった。

「…………ケッ」

 ピッコロの姿が見えなくなってから、フレイザードは不満の声を漏らす。
 現状の体力も考慮して、自身の力が今のピッコロに劣っているということは認める。
 しかし、このままデカイ面をされて大人しく従っているほど、フレイザードは出来た魔物ではない。
 いつかは出し抜く、いつかは殺す。この目的は、同盟結成後から全く変わらない。

18:四重奏(カルテット) ◆kOZX7S8gY.
06/11/13 00:01:35 wzaZezSk0
 ピッコロの命令通り、汽車の後部車両を練り歩くフレイザードは、そこで一際大きな血痕を見つけた。
 床と座席に飛び散ったそう古くはない鮮血の跡は、志々雄真実が青雲剣で放った渾身の片手平刺突―それを受けた、キン肉マンのものである。
 その事実を知らない、知る必要もないと思っていたフレイザードは、血痕には大した興味を示さず、片隅に落ちていた異物に目を留めた。

 僅かに残った血溜りに純白の姿を濡らし、赤く染まったそれは、キーホルダーのような留め金具によって固定された鳥の羽。
 一見してみれば装飾具としか取れない一品―これがフレイザードの住む世界の特産物でなければ、気にも留めなかったことだろう。

「これは……キメラの翼じゃねぇかァッ!」

 血溜まりから羽の装飾具をひょいと摘み上げ、歓喜するフレイザード。
 その喜びも、キメラの翼と呼ばれた物体の効力を知っての上である。

 キメラの翼。
 キメラという魔物から採取した羽に魔力を封じ込め、移動用のアイテムとしたもの。
 ひとたび放れば、使用者の記憶している(実際に行ったことのある)地に一瞬で移動できる。
 ルーラの使えない者でも簡単に長距離を移動できることから、人間の冒険者の間では割とポピュラーなアイテムとされていた。

 たかが移動用のアイテム、殺傷能力もなければ、身を守る盾にもならない。
 戦闘においてはまるで役に立たないアイテムだったが、絶対勝利を信条とするフレイザードにとって、この羽が持つ効力は十分に魅力的だった。
 何しろ、キメラの翼を使えば戦闘中であろうと瞬時に移動することが出来るのだ。
 例えば敵との戦闘で窮地に立たされた時。
 戦い自体ではなく勝利を好むフレイザードとしては、見え見えの負け戦などはしたくない。
 どうしても回避できない戦いに巻き込まれた時―キメラの翼を放れば、自分だけは容易に撤退できるわけだ。

 それどころか、今ここでこれを使えば、気づかれない内にピッコロとオサラバできる。
 万全ではない現状の身体を思えば、ピッコロは目の上のたんこぶでしかない。
 が、それ故利用価値もある。今すぐにキメラの翼を使うのは、あまりに浅はかか。

「いや待てよ……このゲームのルールを利用すれば、キメラの翼をもっと有効的に活用できるんじゃねーか? 例えば……」



19:四重奏(カルテット) ◆kOZX7S8gY.
06/11/13 00:04:02 wzaZezSk0
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「ピッコロさん! ピッコロさん!」
「なんだいフレイザードくん?」
「見てよこれ! 汽車の後ろの方でこんなものを見つけたよ!」
「ん? なんだいこれは、鳥の羽じゃないか。さてはフレイザードくん、サボって焼き鳥でも食べていたんじゃないだろうね?」
「違うよピッコロさん! これはキメラの翼といって、どこでも好きなところにワープできる、素敵アイテムなんだよ!」
「なんだって! それは本当なのかい!?」
「本当だよ! なんだったら試しに使ってみるといいよ」
「ふむ。でもワープといっても、いったいどこに行けばいいのかな?」
「ほら、この日本の一番北に、北海道っていう島があるだろう? あそこは雪景色が綺麗だから、試しにあそこに飛んでみるといいよ」
「ほう、それはいいことを聴いたぞ。では試しに使ってみようじゃないか。それッ!」

 ぱひゅーん

「おお、さっきまで汽車の中にいたのに、気がつけば辺り一面雪景色だ! 本当に北海道まで移動できたんだ!」

 ぴぴぴ

「ん、何だ? 変な音が聴こえる……」

 ぴぴぴぴぴぴ

「徐々に大きくなっている……こ、この音は首輪から―」

 ぼんっ

【ピッコロ@ドラゴンボール 死亡確認】

20:作者の都合により名無しです
06/11/13 00:04:20 /h7bnE18O
ちんこ

21:四重奏(カルテット) ◆kOZX7S8gY.
06/11/13 00:05:21 wzaZezSk0


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「……なんてのは無理、か」

 一瞬考え付いた素敵な妙案を頭で払いつつ、フレイザードはキメラの翼をデイパックにしまい込んだ。
 活用法については、これからじっくり考えていけばいい。
 ピッコロに使わせ、どうにか禁止エリアに飛ばさせるという手も悪くはないが……用心深いピッコロが、簡単に引っかかってくれるわけはないだろう。

「フレイザードよ、後ろの方はどうだった?」
「ああ、特に何もなかったぜ」

 汽車中央部で何気なく合流を済ませたフレイザードの腹の内では、ピッコロを出し抜くための作戦会議がめまぐるしく展開されている。
 この汽車が向かう南への道中、或いはピッコロに一泡吹かせるチャンスも廻ってくるかもしれない。
 その時を思い、炎と氷の魔物はひたすらに考えるのだ。
 勝利の栄光を、掴む術を。


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22:四重奏(カルテット) ◆kOZX7S8gY.
06/11/13 00:06:30 wzaZezSk0
「俺様の名前は、キャプテン・ウソップ! 世界の海をまたにかける、世が認めし大海賊だァァ!!」
「俺の名前はモンキー・D・ルフィ! ウソップ船長の一番の子分だァァ!!」
「こらこらルフィくん。ウソップ船長ではなく、キャプテン・ウソップだ。言ってごらん、キャプテェ~ン・ウソォ~ップ」
「キャプテ~ン・ウソォ~ップ」
「違う違う。『テ』のニュアンスはもうちょっと間延びした感じでだな……」
「キャプテェ~ン・ウソォ~ップ」
「そうそう。やれば出来るじゃないかルフィくん。さすがはこのキャプテン・ウソップの一番の子分……む? どうやら敵が来たようだ」
「よう。俺の名前は志々雄真実。お前が世に聞く大海賊、キャプテン・ウソップか。俺の国盗り成就のため、お前の命を頂くぜ」
「ふふん。また今日も、恐れ知らずな愚か者が散っていくか……だがこのキャプテン・ウソップを相手にするというのであれば、その前に我が一億人の子分達を……」
「そいつ等なら、もう始末しておいたぜ」
「ぬ、ぬわぁにぃ~~~っ!!? くっ、致し方ない! ならばこのキャプテン・ウソップが、直々に相手をしてや……」
「終の秘剣 火産霊神」
「ぐぎゃあああああッ!!?」
「きゃ、キャプテン・ウソップゥゥゥ!!?」
「ふん、恐れるに足らずだな、キャプテン・ウソップ」
「ぐっ……馬鹿な、このキャプテン・ウソップ様が、こんなところで死ぬとは……」
「キャプテン・ウソップ! 死んじゃ駄目だ!」
「泣くなルフィくん。君もこのキャプテン・ウソップの子分であるというのなら……立派に生きて、立派に死んでみろ」
「う、ウソップ……」
「キャプテン・ウソップだ。私が死んでも、ウソップ海賊団にはまだ君がいる……私も、安心して逝けるというものだ……」
「う、うう……分かったよキャプテン・ウソップ。俺はもう泣かねぇ。
 オレ、きっとキャプテンみたいな立派な船長になって……いつか、キャプテン・ルフィって呼ばれるくらいの海賊王になってやるよ!
 だから……もう泣かねぇッ!!!」


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23:四重奏(カルテット) ◆kOZX7S8gY.
06/11/13 00:07:04 wzaZezSk0
 時は遡り、放送直前。
 さいたま新都心駅にて悲運な遭遇をしてしまったルフィは、汽車内からウソップの死体を降ろし、近場に埋葬してやった。
 その間、傍観者であった飛刀からウソップの勇士その他諸々を聴き、ルフィは新たな決意を固めるようになったのだ。
 悲しんでいる暇はない、と。前を向こう、と。

 エテ吉、バッファローマン、世直しマン、スヴェン、イヴ、ロビン、そしてウソップ。
 死んでしまった仲間は数多く、その悲しみも計り知れない。
 だが、いつまでも悲しんではいられない。
 仲間の死を乗り越え、仲間の死を背負って生きていかなければならない―ルフィはまだ、生きているのだから。

―なあ、ルフィの旦那。これからいったいどうするつもりなんだい?

 ルフィを新たな主人と見定めた飛刀が尋ねる。

「ウソップの仲間だっていう、そのポップとかパピヨンってやつ等に会ってみてぇ。おまえはどうしたいんだ?」
―おれは、Lって奴にキン肉マンの戦いの結果を知らせてやりてぇ。どっちが勝ったのか、なんてまだ分かっちゃいねぇけどよ……

 ルフィの一時の乗車に反応がなかったことから見て、やはりあの時は既に、ウソップ以外の乗客はいなかったようだった。
 いつの間にか消えてしまったキン肉マンと志々雄。
 その決闘の行く末を最後まで見届けられなかったのは悔しいが、結果はもうすぐ、放送という形で知ることが出来る。

『―ご機嫌いかがですかな、皆さん。今回の放送は私、フリーザが担当します。』

 噂をすればなんとやら。
 訪れた六回目の放送に、ルフィは息を呑む。
 この放送は、参加者の脳に直接語りかける形で行われている。
 故に、参加者ではなく支給品として存在している飛刀は、この放送を実際に聴くことはできない。
 ルフィから、詳細を聴くしか術はないのだ。

24:四重奏(カルテット) ◆kOZX7S8gY.
06/11/13 00:07:49 wzaZezSk0
「……キン肉マンに志々雄って奴は、どっちも死んだってよ」
―そうか……。

 大体放送が終了した頃、ルフィは静かに、放送で告げられた死者の名を口にした。
 それを聞いた飛刀は、間接的だがついに決闘の結果を知ることになったのだ。
 キン肉マンVS志々雄真実―結果は、相打ちだったのだと。

「それに、ウォンチューとツバサとブチャラティも死んでた」

 キン肉マンと志々雄の死亡を告げた後、ルフィはさらに三人の名を口にした。
 飛刀にしてみれば、どれも聞いたことのない名前ばかりだったが、彼等とルフィがどのような関係にあったのかは、その様子から十分に察することができる。
 怒りを奥底に溜め、ギリッと奥歯を噛み締める仕草―耐えているのだ。
 ルフィは、悲しみを心中に閉じ込め怒りに変換することで、過酷な運命に必死に立ち向かおうとしている。

「でも、まだルギアは生きてる。……そういや、東京タワーってとこで合流するはずだったんだよな。早く行ってやらねぇと」

 助け合うべき仲間は、まだ残っている。
 もう失わないため、仲間と共に生き続けるため、ルフィは悲しみを封じ込めて前を向く。
 
 腰には飛刀、背には新しく仲間に加わるであろう、頼もしい男を連れて。


 ・
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25:ちんこ
06/11/13 00:08:43 /h7bnE18O
ちんこ

26:四重奏(カルテット) ◆kOZX7S8gY.
06/11/13 00:09:29 wzaZezSk0
「ふははははは~! 愚かな人間共よ! 貴様等全員、この宇宙最強種族であるカカロット様が殲滅してくれるわ!!」
「宇宙最強種族だと? ふん、笑わせるな。真の最強とは、この天才バスケットマン・桜木花道のことを言うのだ。見よ! この豪快なダンクシュートを……」
「か、め、は、め、波ァァァ――ッ!!」
「な、なに……この天才が―ぐあああああああっ!!?」
「このヤロウッ! よくも桜木をやってくれたな! テメーはこの日向小次郎様のタイガーショットで粉微塵に……」
「か、め、は、め、波ァァァ――ッ!!」
「な!? ぐがあああああああああああっ!!?」
「ふん、下等生物共が。地球人の分際で、高等なサイヤ人に歯向かうからこうなるのだ」
「おっと前座の出番は終わりだぜ。地球人が本当に下等かどうか、この男塾一号生・伊達臣人が見せてやる」
「ほう、貴様は雑魚二人とは違うようだ」
「当たり前だ―喰らえ、覇極流奥義千峰塵ッ!!」
「攻撃の速度がノロいわっ! か、め、は、め、波ァァァ――ッ!!」
「ご、ごばあああああああああああっ!!?」
「ふん、やはり貴様も他の地球人となんら変わりない、雑魚生物だったようだな」
(やめろおぉぉぉ! オラは、オラはそんなことしたくねぇ!!)
「―黙っていろ地球育ち。この身体は、俺の身体だ。貴様の出る幕はない」
「違う! その身体は、悟空の身体だ!」
(! ルフィ!)
「性懲りもなく、また地球人が威勢を張ってきたか。そんなにこの俺に殺されたいか?」
「うるせぇ! おめぇは邪魔なんだよ! さっさと悟空の身体から出て行きやがれッ!」
「誰が出て行くか! この身体は元々俺の身体なんだよォッ! か、め、は、め……」
「うおおおおおおおおおおお! ゴムゴムの――バズーカァァァァァァッ!!!」
「な……そんな―究極の戦闘民族であるサイヤ人が、こんな下等生物にィィィ!!?」
「目を覚ませ、ゴクウゥゥゥゥゥ!!!」


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27:四重奏(カルテット) ◆kOZX7S8gY.
06/11/13 00:11:46 wzaZezSk0

(クリ、リン……? 違う……この声は、ル、フィ……?)

 ルフィに背負われながら、己の精神を取り戻した孫悟空は、未だ眠りの中にいた。
 だが、覚醒の時はそう遠くない。
 彼が目覚めた時、隣には誰がいるのか。
 それは、志を同じくした仲間であって欲しい……。
 サイヤ人の血は、地球で築いた仲間達との絆によって清められた。
 地球人を殺すのではなく、地球人を守るため。
 目覚めた後も、孫悟空は戦い続けるのだろう。



【埼玉県/さいたま新都心駅周辺/日中】

【モンキー・D・ルフィ@ONE PIECE】
[状態]:両腕を初め、全身数箇所に火傷。疲労・ダメージ大。少し空腹。
   :ギア・2(セカンド)を習得
[装備]:飛刀@封神演義
[道具]:荷物一式×2 (片方は食料なし、もう片方は食料・水、残り3/4)
   :賢者のアクアマリン@ハンター×ハンター、いびつなパチンコ(特製チクチク星×5、石数個)、大量の輪ゴム
   :ボロいスカーフ×2、死者への往復葉書@ハンター×ハンター(カード化解除。残り八枚)、参號夷腕坊@るろうに剣心
[思考]1:ルキアと合流する為に東京タワーへ。
   2:ルキアと合流後、ポップ、パピヨン、Lと接触するため大阪に向かう。
   3:"仲間"を守る為に強くなる。
   4:"仲間"とともに生き残る。
   5:仲間を探す

28:四重奏(カルテット) ◆kOZX7S8gY.
06/11/13 00:13:08 wzaZezSk0
【孫悟空@ドラゴンボール】
[状態]:顎骨を負傷。出血多量。各部位裂傷
   :疲労・ダメージ大。空腹でまともに動けない
[装備]:サイヤ人用硬質ラバー製戦闘ジャケット@ドラゴンボール
[道具]:荷物一式(食料無し、水残り半分) 、ボールペン数本、禁鞭@封神演義
[思考]1:気絶中
   2:不明

【秋田県/汽車内/日中】

【フレイザード@ダイの大冒険】
[状態]:体力、負傷共に全快時の4割ほどまで回復、氷炎合成技術を実戦経験不足ながらも習得
   :核鉄による常時ヒーリング。
[装備]:霧露乾坤網@封神演義 :火竜ヒョウ@封神演義 :核鉄LXI@武装練金
   :パンツァーファウスト(100mm弾×1)@ドラゴンボール
[道具]:荷物一式、キメラの翼@ダイの大冒険
[思考]1:キメラの翼の活用法を考える。
   2:ピッコロを、ダイの元へけしかける。
   3:氷炎同時攻撃を完全に習得する。
   4:残り人数が10人以下になったら同盟解除(だが隙あらば・・・?)
   5:優勝してバーン様から勝利の栄光を。

【ピッコロ@ドラゴンボール】
[状態]ほぼ健康
[道具]:荷物一式 、前世の実@幽遊白書、スナイパーライフル(残弾15発)
[思考]1:機関車でミニ日本中央部へ向かう。
   2:悟空他、参加者皆殺し。
   3:フレイザードを利用。
   4:残り人数が10人以下になったら同盟解除(今の所、フレイザードを闇討ちするつもりはないようだ)
   5:主催者を殺す。

※ウソップの死体は埋葬しました。

29:作者の都合により名無しです
06/11/13 00:14:48 /h7bnE18O
【ピッコロ@ドラゴンボール 死亡確認】
残り29人

30:作者の都合により名無しです
06/11/16 18:53:44 faKdrM/LO
30GET

31:カーニバル  ◆xJowo/pURw
06/11/19 14:14:40 /5/JqJN/0
イライラする。
体中が血と汗でベトベトだ。
シャワーを浴びたい。でもどの蛇口を捻っても、水は一滴も出てこない。
雨で体を洗うにも、もうずいぶん小降りになってしまった。
さっきまで厭味なほど降っていたのに。
本当にイライラする。

何も考えないとイライラする。だから何かを考えようとする。

最初に思いつくのは、月のこと。
月はもう何時間も前に、主催者のジジイに「死んだ」と放送されてしまった。
でも、そんなの有り得ない。
セナ君は月が死んだなんて酷い嘘を私に言った。
そのセナ君もどうやら死んじゃったみたい。いい気味だ。
あの月が、キラが、私の神様がそんなに簡単に死んじゃうワケがない。
きっと何かの間違いに決まってる。
Lは、月が首輪を解除したって言っていた。
私もそうだと思う。だって月は天才だもの。
でも、それじゃあどうやって首輪を外したんだろう?


セーラー服の女の子が言っていた。
月は死んで、遺体は自分が埋めたって。
これもきっと何かの間違いだ。
あの女の人が何か勘違いをしているんだ。
月が死んで、もういないなんて、有り得ない。

でも、もしも……



32:カーニバル  ◆xJowo/pURw
06/11/19 14:15:54 /5/JqJN/0
主催者の怪人が言っていた。セーラー服の女の子も言っていた。
死んだ人を生き返らせることが出来るって。
なら、私が月を生き返らせればいいんだ。
月が無事で、死んでないなら意味無いけれど、
それで月が生きてるって確認できるなら十分だ。

でも……レムも、リュークも言っていた。
死んだ者は生き返らない。
死んだら、その後に残るのは、無。
天国も地獄も無いんだって。
それじゃあ、月は……?

嘘だ。
嘘だ嘘だ。みんな嘘をついているんだ。
主催者の化け物たちも、セーラー服の女の子も、Lも、セナ君も、レムも、リュークも、
みんなみんな嘘をついてるんだ。
月はまだ生きてる。きっとそうに決まってる。
でも……

何度も同じことが頭の中をぐるぐると回っている。
イライラする。何かを考えていてもイライラする。
だから、もう何も考えないで、歩く。ひたすら歩く。

そうだ、今から出会った人を、全部殺していけばいいんだ。
そうすれば月の敵も討てるし、最後の一人になれば月を生き返らせて貰えるかもしれない。
あ、いけない、間違った。月は生きてるんだった。

それより何より、こんなにイライラするんだから、誰かに八つ当たりでもしないとやってけない。
誰か殺してやりたい……



33:作者の都合により名無しです
06/11/19 14:16:25 6kSb7vHfO
生中継で支援

34:カーニバル  ◆xJowo/pURw
06/11/19 14:16:28 /5/JqJN/0
大阪駅に戻ってL達を殺そうか?
いや、やっぱりダメ。あいつら3人だし、今はなんとなくLに会いたくない。
難しいこと言って「貴方は間違っている!」とか言うに決まってるんだ。
今はLと話したくない。Lのいないところに行こう。

名古屋の方はあんまり知らないし、京都には怖い奴が居たし……
何度か行ったことのある、神戸の方に行ってみよう。
そこで、強そうな人にあったら逃げよう。
殺せそうな人にあったら殺そう。

そうしよう。


あぁ、月に会いたいなぁ。
月、月、ライト、ライト、らいと、らいと、Light、Light、
ライトぉ……



35:カーニバル  ◆xJowo/pURw
06/11/19 14:17:30 /5/JqJN/0
月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと 
Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト
 らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 
月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと 
Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト
 らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 
月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと 
Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト
 らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 
月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと 
Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト
 らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 
月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと 
Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト
 らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 
月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと 
Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト
 らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 
月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと 
Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト
 らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 
月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと 
Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト
 らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 
月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと 
Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト
 らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 
月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと 
Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト
 らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 月 ライト らいと Light 

36:カーニバル  ◆xJowo/pURw
06/11/19 14:21:35 /5/JqJN/0
【大阪府/日中】
【弥海砂@DEATHNOTE】
 [状態]:軽度の疲労、精神崩壊、衣服が血に塗れている
 [装備]:魔槍@ダイの大冒険
 [道具]:荷物一式×3(一食分消費)
 [思考]1:会った人を殺す。
    2:強い人に会ったら、逃げるか演技で取り入って、後で殺す。
    3:ドラゴンボールで月を生き返らせてもらう。
    4:自分が優勝し、主催者に月を生き返らせてもらう。
    5:友情マンを殺し、月の仇を取る。
    6:ピッコロを優勝させる。


37:ハイブリッド・レインボウ 1 ◆xJowo/pURw
06/11/19 22:30:22 /5/JqJN/0
俺達が駅の外に出たときには、雨はもう随分小降りになっていた。
これなら少しぐらい濡れたって気にならない。
寧ろ、腫れた顔にはちょうど良い塩梅だ。
殴られたところがひりひり痛む。口の中の傷口もやたらと沁みる。
―肉弾戦なんてガラじゃねえんだけどな、本当は。



あの後は、悲惨だった。
Lの連れの少年は、治療しようにも既に事切れていた。
パピヨンの方は案外しぶとかったものの、意識が回復しなかった。
Lのもう一人の連れの女の子は、何処を探しても見つからなかった。
だから仕方なく、パピヨンの応急処置をし、少年を近くの公園に埋葬した後で、
パピヨンを背負って駅にキン肉マンとウソップを迎えに行った。

2人は、列車に乗ってはいなかった。志々雄もいなかった。
「恐らくふたり彼らに、少なくともキン肉マンの身には何かがあったのでしょう」
Lは、冷静にそう言ってのけた。



38:ハイブリッド・レインボウ 2 ◆xJowo/pURw
06/11/19 22:30:56 /5/JqJN/0
「ところでポップさん、この後の予定が無いのでしたら、この電車に乗って少し移動しませんか? 行きたい場所があるんです」
Lには全くと言っていいほど動揺が見られない。俺と違って。
「ポップさん、我々は手負いの上に、接近戦に適した仲間を失いました。
 貴方の話からすると、貴方も彼―パピヨンも距離をとった戦法を得意とするようです。
 ですので、地の利のある場所に移動し、体勢を整えた上で次の行動に移るべきだと思います」
今しがた人が一人死んだっていうのに。
その上、さらにお互いの仲間に何かがあったってのに、コイツは無神経というか冷血というか……
「待てよ。筋肉マンたちが歩きでここに向かってるかも知れねえだろ?少しぐらい待ってやっても」
「それでしたら駅の掲示板に『暫くしたら戻る』と伝言を残して置きましたから大丈夫でしょう」
「……このタイミングでそんなに急いで移動したいのかよ?」
「ええ、まあ」
Lが俺の目を見る。真面目な目だ。意思の光が輝く。
「解ったよ」
どうやら、何か考えてやがる。
人間としては微妙な奴だが、Lの思考力には俺でも舌を巻いてしまう。それに、一応は悪い奴では無いようだ。
だだ、Lは自分の考えに絶対の自信を持っていて、周りの思案を超えたところで思考を奔らせている。
それに取り残された奴は、きっとLのことを良くは思わないだろう。
良くて嫉妬。悪ければ理解不能の変人扱いってところが関の山か。
Lなりに他の奴に歩み寄ってる所はあるんだろうけど、如何せん距離が遠すぎる。
要は、不器用な奴なんだ。
仕方ねえ。俺ぐらいは付き合ってやらねえとな。


気絶したままのパピヨンを背負い、列車に乗り込む。
するとそれを待っていたかのように列車の扉が閉まり、列車はゆっくりと動き出した。
Lは先に乗り込んでいて、座席の上でまたあの三角座りをしている。
俺は横の席にパピヨンを寝かせて、治療の続きを始めることにした。



39:ハイブリッド・レインボウ 3 ◆xJowo/pURw
06/11/19 22:31:28 /5/JqJN/0
しかし、どうも回復呪文の効きが悪い。
回復呪文は、対象の生命力を増幅、後押して、傷と体力の回復を飛躍的に早める魔法だ。
それは、人間をはじめとして全ての生き物―魔法生物や超魔生物にも効果が及ぶ。
それこそ、対象が死んでさえいなければ、十分な効果が得られるはずなのだ。
だが、Lの肩を治療したときにも感じたことだったが、この世界ではその効果が著しく減弱している。
そして、ことパピヨンに於いては、特に効果が薄くなるようだった。
……これも、パピヨンの『体質』のせいなのだろうか。
ホムンクルス。パピヨンは、『既存の生命体を超越した存在』とか言っていた。
つまり、生命体という範疇からはみ出した存在だ。そのイレギュラーな分だけ、回復呪文の効果が出ないのだろうか。
先ほどから何度もベホマを唱えている。だが、腹の穴がふさがるどころか、パピヨンの顔色も一向に良くならない。
俺の頬を嫌な汗が流れる。
無理なのか?
また仲間が死ぬのか?

自然と、今ここにいない仲間のことを考えてしまう。
消息を絶ったキン肉マンとウソップはどうなったのだろう。やはり2人とも志々雄の手にかかって……
ダイはまだ生きてるみたいだけれど、果たして無事なのだろうか。
そして、マァム……

ここまでの俺の判断は正しかったのか?
俺に出来たことがまだあったんじゃないのか?
俺のミスであいつらは死んでしまったんじゃないのか……?
それなのに俺はのうのうと生き残ってしまっている……

俺のせいないのか……?
俺があいつらを殺してしまったんじゃないのか?
俺は、もしかしたらとんでもない過ちを犯してしまったんじゃあ……




40:ハイブリッド・レインボウ 4 ◆xJowo/pURw
06/11/19 22:32:23 /5/JqJN/0
「ポップさん、ちょっとよろしいですか」
「えっ?」
いつの間にか、Lが俺の前に立っていた。
「……そうですね、ポップさんが好みそうな方法にしましょうか。そのまま、少し顔を前に出して貰えますか?」
「?……こうか?」
Lの真意が読めないが、とりあえず言われるとおりに顔を前に突き出す。
「あと数cm、ちょっぴり私の近くに」
「なんなんだよ……?」
「もう少し左に出て来て貰えるとベストですが……まあいいでしょう。今いち気に入りませんがギリギリです」
Lがそう言うや否や。

ボカッ

Lのパンチが俺の右頬に炸裂した。
「ッ痛てぇっ!?いきなり何しやがんだよ!!」
人の顔面をいきなり殴るなんてワケが解らない。やっぱりコイツは天才とは名ばかりの狂人だったのだろうか。
「ポップさん……今、何を考えてました?」
Lは、じっとりと俺を睨み付けている。
「酷い顔でしたよ。どうせ『仲間が死んだのは俺のせいだ』とか考えてたんでしょう。
 『何故俺だけ生き残っているんだ』とか、
 『俺が代わりに死ぬべきだったんだ』とか」



41:ハイブリッド・レインボウ 5 ◆xJowo/pURw
06/11/19 22:36:29 /5/JqJN/0
図星だった。
俺の心を見透かすように、Lの視線は俺の目を射抜いている。
「だから、今のは貴方が欲しがっていた『戒め』です。
 この痛みを胸に刻んで、もう二度と仲間を失わないと心に誓いましょう。そして―」

ボカッ
続けざまに、左頬も殴られた。
「これは、貴方に対する『叱咤』です。
 生き残った貴方がそんなふうにウジウジと悔していてどうするのですか。
そういう非生産的な後悔など全くのナンセンスです。
貴方は自分の信念に従って行動してきたのでしょう?
なのに、当の貴方が今更迷いだしたのでは、彼らが浮かばれませんよ。あと―」
 
ボカッ
今度は脳天を殴られた。
「そしてこれは『激励』です。
 ポップさんの悲しみも痛いほど解りますが、今は心を鬼にして前に進まなければなりません。
 ですので、今の痛みを前に進む推進力に変えて、一歩ずつ前に進んでいきましょう。あ、それと―」



42:ハイブリッド・レインボウ 6 ◆xJowo/pURw
06/11/19 22:37:13 /5/JqJN/0
「ふざけんな!」
ボカッ 「ぐえっ」
今度は逆に、俺の拳がLの顔面を捉える。
「人が黙って大人しくしてりゃあ人の頭をポカポカ殴りやがって、俺の頭は太鼓じゃねぇっつうの!」
「いい音はしましたが」
「うるせぇっ!俺だって辛いの我慢してんのに……ちょっとは察しろよ!」
「ですから、ポップさんのことを思えばこそ、心を痛めつつも……」
「てめぇがストレス発散してるだけじゃねぇのかよ!」
「心外ですね。私はポップさんの悲しみを少しでも分かち合おうと」
「なら痛みも分かち合え!」
そのままLの顔めがけて殴りかかった。
しかし、Lはするりとそれを躱し、
ゴンッ!
反対に俺の顔を蹴り上げた。
「ああ、言うのを忘れていましたが私も格闘技を少し齧っていましてね。
 自分で言うのもなんですが、それなりに強いですよ?」
「言ってろ!勇者パーティーの一員を嘗めんなよこんにゃろうっ!!」
そして、俺はLに飛び掛った。

後は本当に酷いものだった。
大の大人、それも知性派を自負する者どうしでみっともない殴り合い。
「てめぇ、喫茶店で俺に言い負かされたの根に持ってんじゃねぇのか?」
「失敬ですね。そもそも私は議論に負けた覚えなどありません」
「悔しそうに拗ねてたじゃねぇかよ!」
「本当に失礼な方だ。これはキッチリとお灸を据えてあげないといけませんね」
「言いたいことはそれだけか!?」
後は口汚く罵り合うばかり。
子供の喧嘩か、こりゃあ?
殴って、殴られて、蹴って、蹴られて。



43:ハイブリッド・レインボウ 7 ◆xJowo/pURw
06/11/19 22:38:14 /5/JqJN/0
「全く、何をじゃれ合っているんだ、お前らは? これでは落ち着いて昼寝も出来ん」

いつの間にか目を覚ましたパピヨンが、呆れ顔でこっちを見ていた。
でもそんなのはどうでもいい。とりあえず、あと一発コイツを殴らないと気が済まない。

ボカッ


 * * * * * * * * * * *

俺達は、コーベ駅で列車を降り、セト大橋を渡ってアワジ島という島にやってきた。
パピヨンは、Lから貰った核金を腹の穴に嵌め込んでからは調子が良さそうだ。
核金の治癒効果の賜物なのか、意外にも平然と歩いているので少し安心した。
Lは、俺に殴られた痕が痛々しいが、それ以外はいつも通り、といったところか。
何処で拾ったのか、ロープをぐるぐると振り回しながら、先頭に立って歩いている。やっぱり変な奴だ。

俺はと言うと……Lに殴られた頬は痛むが、心は落ち着きを取り戻している。
Lと殴りあったおかげで、モヤモヤしていたものはどこかに飛んでいってしまったようだ。
もしかすると、これもLの目論見どおりなのかもしれない。
Lなりに俺のことを案じて、Lなりに気を使ってくれたのかも……
って、まさかな。考えすぎか。

当の本人は、後ろをついて行く俺達を余所目に、ひたすら南へと歩いてゆく。
このままこの先のシコクに行くつもりなんだろうか。
でも確か、アワジと橋が架かっているのは既に禁止地区になったカガワの筈だが……。



44:ハイブリッド・レインボウ 8 ◆xJowo/pURw
06/11/19 22:38:46 /5/JqJN/0
などと考えながら歩いていると、いつの間にかアワジの南端に到着してしまった。狭い海峡に橋が架かっている。
「さて、俺達をここまで連れてきた訳をそろそろ喋ってもらおうか」
パピヨンが切り出す。
「そう……ですね。お話しましょう。とは言っても、大した事では無いのですが」
相変わらずロープを振り回しながらLが答える。
「今、我々は手負いの上、遠距離戦闘のエキスパートは居ても接近戦に長けた者が居ません。
 ですので、敵が接近してくるのが良く見渡せ、且つ遮蔽物が少ない地形と言うのが戦闘の上では望ましいと言えるでしょう」
ひゅん、とロープがしなる。先には重りが付いており、このロープは思いの外危険だ。
「つまり、瀬戸大橋、もしくは鳴門大橋に留まり、傷が癒えるのを待った上で、次の行動に移るべきかと思いまして。
 そろそろ放送の時間ですし、その情報も分析しないといけませんから」
「それならば、態々淡路の奥まで来ずとも瀬戸大橋に居れば十分だろう。何故こんなところまで来る必要がある?」
「それは、この淡路島に他の参加者が居ないことを確かめる為です。それと―」
ぶんっ、とLがロープを投げる。重りにかかる遠心力で、ロープは対岸の方まで飛んでゆく。
「散歩というか、休憩の意味もありますね。ゲームが始まって丸一日と半、少し骨休めが必要でしょう」
鳴門大橋の対岸側にロープの先に付いた重りが地面に落ち、カーン、という乾いた音が辺りに響く。
円形の重りが、コロコロとカガワの方へと転がってゆく。
そして、その金属製の重りに― 一匹の黒蝶が舞い降りた。

ドン!

パピヨンの武装錬金が、ロープを、重りごと爆砕した。砕けた破片が対岸に散らばる。
「巫山戯るのもいい加減にしろ。休憩?骨休め?そんなことに時間を浪費する暇が何処にあるというのだ。
 俺にはこの世界を脱出し、武藤カズキと決着を付けるという高尚な目的がある。
 そのためにすべきことが山積している今、一分一秒、セシウム原子が遷移する時間すら惜しい。
 その俺の貴重な時間を浪費させた罪、万死に値するぞ!」
そういうと同時に、パピヨンの右手が、フリスビーを投げる様に鋭くLの方に向かって翳される。
黒死の蝶が、爆ぜる。

ドォン!


45:ハイブリッド・レインボウ 9 ◆xJowo/pURw
06/11/19 22:41:15 /5/JqJN/0
「ヒィッ!」
Lの眼前で、小さな爆発が起こった。Lが尻餅をつく。
「此れまでに鑑みて、今回だけは大目に見てやろう。だが、二度目は無いぞ!」
ぴしゃりと言い放ったパピヨンは、そのままくるりと向きを変え、元来た道を戻り始めた。
「お、おい、待てよパピヨン!」
慌ててパピヨンを呼び止めるが、パピヨンはそのまま俺達を一瞥もせずに、歩き続ける。
仕方なく、俺もパピヨンの後を歩き出す。
Lも、地面の上で腹這になって踠いていたが、何とか立ち上がって俺達の後を付いてきた。


その後、俺達は瀬戸大橋手前の休憩所に着くまでの間、一言も言葉を交わさなかった。




だが、俺はしっかりと見ていた。
Lが投げたロープの先についていた、リング状の金属塊を。
パピヨンがLの眼前での爆発に先んじて投げ、空中で爆散した物体を。
そして、Lが立ち上がる前にさりげなく集めた、その欠片を。


実験はひとまず成功に終わった。これから解析作業に入るとしよう。

 * * * * * * * * * * *



46:ハイブリッド・レインボウ 10 ◆xJowo/pURw
06/11/19 22:44:40 /5/JqJN/0
瀬戸大橋手前の休憩所に向かう道中で、6回目の定時放送が聞こえてきた。今回、バーンは一言も喋らなかった。
彼らが読み上げた死者の中には、志々雄だけでなく、キン肉マンも、ウソップも含まれていた。
相打ちか、それとも新たな敵が乱入したのだろうか。
キン肉マン……あんたは満足できたのか?
ウソップ……すまねぇ。
俺の横のLは相変わらずの無表情だったが、俺にはそれが沈痛な表情なのだと分かった。
Lも仲間の死を悼んでいるのだろう。
―でも、俺達は立ち止まるわけには行かない。
死んだ仲間の分まで生きて、必ずあのいけ好かねぇ主催者どもに一泡吹かせてやる……!

目的の休憩所は、瀬戸大橋全景を見渡せる場所に立っていた。
これなら橋を渡る者が居ても、一目で分かるだろう。
眺めも中々良かったが、Lの話だと、元の世界ではこの何倍もスケールが大きいのだという。
このゲームを抜け出した後に機会があれば、オリジナルの景色も見てみたいものだ。


俺達は、休憩所の店内で橋が見渡せる一角に陣取った。
「フン、必要な情報は得た。俺は今から思案がてら少し休むが、命が惜しければ邪魔するなよ」
パピヨンは俺達と対照的に、死者の名には微塵も動じずにそう言うと、ごろりとベンチに横になった。
「それでは、私達は食事にしましょうか。腹が減っては戦は出来ぬ、と言いますからね」
Lは荷物の中から、食料と、そして筆記用具を取り出した。俺もそれに続く。

そして、会議は始まった。



47:ハイブリッド・レインボウ 11 ◆xJowo/pURw
06/11/19 22:45:58 /5/JqJN/0

           アベシ!>○  ヒデブ!>○     ○<ウワラバ! 
                 ☆       ☆     ☆
                +        +     +  
                ∧       ∧     ∧
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

(―なんてことにならなくて本当に良かったですねぇ)
Lが呑気そうにメモに落書きをする。
(いやいや、笑い事じゃねぇよ。実際あれは命がけだったぜ?お前らよくあんなマネを……)
(まぁ、ある程度の予測と経験則から、誘爆はしないだろうとは考えていましたが。
 それでも時間的な問題を考えれば、多少のリスクは負わないといけないでしょう)
(多少って……1個目の首輪を爆破したのはまだ良いとしても、2個目は俺達のすぐ傍だぞ!? アレが爆発してたら、今頃俺達は……)
(首輪が損壊しても爆発しないのは1個目の首輪を爆破した段階で分かっていたことだ。そのために爆発の大きさも加減したからな。
 なにより、アレぐらいしておかないと主催者の監視を十分に逃れられるとは思えん。どうもお前らの演技は臭くて敵わん)
(大根役者で悪かったな!)

先程までのギスギスした空気からは考えられないような和やかな筆談。
それもその筈、鳴門大橋での不和は、主催者に怪しまれないためのパフォーマンスに過ぎなかったのだから。
その実、俺達がしていたのは首輪の爆破条件究明のための実地実験だったのだ。
Lが鳴門大橋に俺達を連れて行ったのは、あそこが禁止エリアとの境界が明瞭な場所だったからだろう。
そして目的の場所に着いた後、俺達は特に言葉を交わすことも無くお互いの意思を理解し、実験を開始した。

まず、Lが首輪にロープを結びつけたものを禁止エリアに投げ込んだ。
俺はその首輪が主催者にばれるんじゃないかと道中冷や冷やしていたが、それは幸運にも杞憂で済んだ。
首輪は確かに、爆発することなく、禁止エリア内に落ちた。



48:ハイブリッド・レインボウ 12 ◆xJowo/pURw
06/11/19 22:46:28 /5/JqJN/0
そして次に、パピヨンが首輪を爆破した。
だが、この際首輪はバラバラにはなったものの、首輪自体にしかけられた爆弾は爆発しなかったようだ。
これで、パピヨンは十分な確信を得たのだろう。

最後に、パピヨンは通常エリア内、それも俺達の目の前で、首輪を爆破した。
俺達は無事だった。
そして、倒れたLは起き上がる際に、首輪の破片を回収したのだった。


(さて、今回の実験で色々と有益なことが分かりましたが、その前にまず、この首輪について、分かっていることを整理してみましょうか)
Lの鉛筆が踊る。そういえば何故俺はこの世界の文字を理解できるのだろうか。後で議題に挙げてみよう。

1.主催者の発言内容
・爆弾が仕掛けられている。
・首輪に大きな衝撃を与えると爆発する。
・禁止エリア内に留まると爆発する。
・24時間以内に誰も死ななければ爆発する。
・列車の中に居れば禁止エリア内でも爆発しない。
・首輪は精密機械で、雨に濡れれば故障するかもしれない。

(これらはしかし、全てが正しいとも限りません。
 これらの内、いくつかは嘘、というか誤りのようなのですが―それはまたおいおい述べていきましょう)



49:ハイブリッド・レインボウ 13 ◆xJowo/pURw
06/11/19 22:47:13 /5/JqJN/0
2.首輪の外観、機能(確定事項)
・つるつるしていて、継ぎ目が無い。ネジなども見られない。
・首輪内に一部比重の違う部分がある。そこに機械構造が入っている可能性がある。
・生者の首輪は何らかの機能が作動しており、死後はそれが停止するのが分かる。
・主催者が魔法で嵌めた。
・盗聴機能がある。
・最初に、スキンヘッドの男を爆死させた。

(これらは主に、生者での首輪の機能になります。
そして、今回の実験で分かったことを含め、死者の首輪について判っているのは以下の通りです)

3.首輪の機能(死後)
・首から外しても爆発しない。
・禁止エリアに投げ込んでも爆発しない。
・破損しても爆発しない。
・破損しても他の首輪は誘爆しない。



50:ハイブリッド・レインボウ 14 ◆xJowo/pURw
06/11/19 22:47:58 /5/JqJN/0
(そして―ですね、首輪の構造等についてなのですが……パピヨンさん、ご意見を頂けますか?)
いつの間にかパピヨンは首輪の破片を手に取り、各部分をいじっている。
(そうだな……まず、これを現代に存在する技術で作り上げるのは不可能だ。これは明らかにオーバーテクノロジーの産物だな)
勿論、俺の世界の技術力も遥かに超越しているのは一目で分かる。
(しかし、それぞれの機構がどのような装置なのかは見当がつくな。これは何らかの信号を発信する装置。これは受信器だな。これはGPSか……?
 カメラに相当するような装置は無さそうだな)
よくわからない単語は、逐一Lが適切な解説を加えてくれた。
要は、Lの世界でも一般的な装置が大半だということだ。驚異的に小型で軽量なのだそうだが。
(この装置はよくわからんが……おそらく、装備者の生死を判別する装置なのだろう。
 そしてこれが……爆弾の火薬部分と、その起爆装置だ)
ひょいっ
パピヨンが無造作にそれを投げてよこした。
「でっ!」思わず声が漏れる。
(あ、危ねえじゃねえかよ!落っことして爆発でもしたら……)
(それは有り得んな。爆破による過度の衝撃と瞬間的な高熱にも反応しなかったのだから。
 これには恐らく、起爆に特殊な仮定が必要なのだ。核兵器と同様―と言えば解りやすいか)
もちろん解りやすくもないのでLの解説を仰ぐ。パピヨンは気にせず続ける。
(そういった特殊な爆弾なら、このゲームのような苛酷な環境化でも誤爆の心配がない分扱いやすいと言えるだろう。
 しかし、長時間リモートで作動し続けるこの耐久性、誤作動を起こさない安定性など、
 どれをとっても驚異的といわざるを得んな。まぁ、世間一般における常識の範囲内での話だが)
(すると、首輪の機能はほぼ全て科学的な装置で構成されていると?
 先ほど貴方達が示唆していた、呪いや魔法の類は関与していないのですか?)
(それはそこの自称大魔法使いに聞いてくれ)
2人の視線が俺に集まる。



51:ハイブリッド・レインボウ 15 ◆xJowo/pURw
06/11/19 22:53:26 /5/JqJN/0
そこで、改めて首輪の断面を凝視する。
銅でも鉄でも鋼でもない、しかし硬くて軽い金属でできたボディの内部に、複雑な装置が組み込まれている。
その仕組みまでは解らないが―
(正直、俺は魔法を使う側の専門で、魔法のかかったアイテムに関しては専門外なんだが……でも、とりあえず解ることを言ってみるよ。
 まず、今、この壊れた首輪からは、何ら魔力を感じない。
 首輪の素材や仕組みの一部に魔法を介在させたってのも考えにくいだろう。それ用の依代が見当たらない)
(持ち主の死や破損時の衝撃で呪いが解けた可能性は?)
(う~ん、それは無いとは言い切れないが……
 確かに、持ち主の死や破壊されることをきっかけに効果を発するアイテムってのは有るんだよ。命の石や、メガンテの腕輪とかだ。
 でも、そういう魔力の籠ったアイテムってのは、壊れた後も魔力の『残り香』みたいなのが残るんだよ。
 例えば魔力の籠った杖の輝石を砕けば、その破片を利用して結界を張れる、ってな具合にな。
 だが、この首輪からは、そういった『残り香』が感じられねぇ。
 だから、この首輪には呪いがかかって無かったんじゃないかと俺は思うんだ。
 しかし一方で、呪いがとけりゃあ普通の武具、ってパターンも無いわけじゃねぇし……断言はできねぇなぁ)
(ですが、最初の大広間でバーンは一瞬で私達全員に首輪を嵌めましたよ?
 魔法で嵌められた首輪に魔法が関与していないのも不自然な気がしますが……)
(そういわれりゃぁそうなんだが……)
(魔法と言えば、このゲーム内では参加者の力が極端に抑えられているようなのだが、それが首輪の効力、という可能性は無いか?)
(そういう能力減衰なんかは、正に呪いの効果、って感じがするなぁ。しかし、この世界の空気自体が原因な気もするし……
 こればっかりは、実際に首輪を外してみないことには解らないな)
(なんだ、ほとんど何も解らないんじゃないか)
(面目ねぇ)
項垂れる俺を余所目に、Lとパピヨンが話を続ける。
(案外、取り付けるときに魔法を用いただけで、首輪には魔法の類は一切かかっていないのかも知れませんね)
(……どちらにせよ、魔法という概念の無い俺達には解り兼ねることだ。貴様が解らないのなら、俺達に解る筈も無い)
結局俺は首輪解析に役立つ知識はそれほど提供できなかったが、
珍しくパピヨンが俺を認めてくれたようで、すこし鼻がむずがゆかった。



52:ハイブリッド・レインボウ 16 ◆xJowo/pURw
06/11/19 22:54:15 /5/JqJN/0
(さて……首輪に関しては、それなりに情報が揃ってきたな。だが、まだ決定的な情報が不足している。
 それを得るためには―実際に、首輪を爆発させるしかあるまい。
 これには今までとは比較にならないリスクを伴うことになる。だが、首輪を解除するためには、この実験は避けては通れまい)
(一応、爆発に遭遇した者の話を聞くことでも代用は出来ますが、そのような人に出会える可能性は低いですね……
 生きた参加者を使った人体実験になってしまいますが、『生きた者の首に付いた首輪』が必要ですね。
 ……戦闘中にうまく敵を禁止区域に追い込めれば良いのですが)

(こんなことなら、あの糞チビを使って実験しておけば良かったな)
喫茶店で自身が殺した少年の事を言っているのか。態々癪に障るような言い方をして、底意地の悪い奴だ。
パピヨンが不穏な笑みを浮かべる。一方、Lは完全に無視を決め込んでいる。
一転、重い空気が流れる……

どうにも居た堪れない。次の議題を振ろう。
(なぁ、それより主催者達はどうやって俺達を監視してると思う?)
(首輪を用いた盗聴、位置把握は確実だな。他に視覚的な監視が有るか無いかが重要だが)
(それに関してですが、私から少しお話があります)
Lが身を乗り出す。
(私の意見を述べる前に、まず 藍染惣右介という男のことを話させてください。
 これは私の仲間から聞いた話なのですが、彼は強力な催眠術を使うことが出来たそうです。
 そして彼は、自分が視覚的に監視されている可能性を逆手に取り、主催者達に催眠術をかけとうと試みたそうです。)
(ほう、それは中々剛毅な男だな。だが、先ほどの放送で名前を呼ばれたと言うことは、しくじったのか)
(ええ。詳しい状況や催眠方法などは判らないのですが、狙った効果を得られなかったのは確かなようです)
(バーン達に催眠術が効かなかったってことか?)
(いえ、何でもその催眠術は絶対的で、それを見た生物に等しく効果が及ぶらしいのです。例え相手が人間でも、虫螻でも、大魔王でも)
(ということは、だ。視覚的監視が行われていなかった、とお前は言いたいのか?)
ええ、そうなのですが、と肯定しながらも、Lはここでは断定せずに話を続けた。
Lにしては珍しく煮え切らないな、と頭の隅で思っていた。


53:ハイブリッド・レインボウ 17 ◆xJowo/pURw
06/11/19 22:54:47 /5/JqJN/0
(もう一件判断材料があります。実は私も、主催者に働きかけていたんです。
 詳しい話は秘密ですが、彼らが直接出向いて対処しなければならないような内容の行動をとったのです)
(なんだその行動とは?秘密にする意味も解らん)
(秘密と言ったら秘密なのです。さらに続けますが、その内容は途中で頓挫してしまっていたのですが、つい先ほど条件が整いました。
 つまり、近いうちに主催者の手の者がこちらに出向く可能性が出てきた、と言うことになります)
(いきなり厄介な話をするな……しかし一体どうやって敵を誘い出そうとしたんだ?)
(詳細は秘密ですが、簡単に言えば、ブラフをかけたんです。『主催者の命を脅かす手段があるぞ』、と)
(えらく都合のいいブラフだな。大方ブラフだと見破られているんじゃないのか?)
(いえ、理論的には見破り様が無いブラフでした。
 ですが、その時共に居たムーンフェイスと筆談で意思疎通を図ったため、視覚的な監視があれば主催者達にもバレバレでしょうね)

そこでピンときた。
Lは恐らくデスノートに関して何らかのブラフをかけたのだ。
だから主催者の命に関わるし、パピヨンには秘密にしなければならない。
もともとがLの居た世界のアイテムなのだから、Lがその扱いに長けていたのも頷ける。
Lは話を続ける。
(なお、要件を整理すると次の様になります)

1.音声のみの監視ならば自分(L)の元に出向かなければならない。
2.視覚的な監視が十分行われていれば、ブラフは見抜かれる。



54:ハイブリッド・レインボウ 18 ◆xJowo/pURw
06/11/19 22:55:45 /5/JqJN/0
(つまり、これ以降主催者側のアプローチがあれば監視は音声のみ、無ければ視覚的な監視が行われている。
 ……しかし、藍染の例があることから、かなりの高確率で主催者側が我々にアプローチをかけてくる、と言うことになります)
Lは監視が盗聴のみだと言いたいのだろうか。だが、なにか引っかかる。本当にそうなのか?
(もし監視が盗聴だけであれば、ここまでの盗聴対策でほとんどの情報を隠蔽できていることになり、
 脱出や首輪の解除を実行する上でかなりの進歩になり得ますね)
(ここまで監視カメラ等の類は一切発見できなかった。上空から監視していたとしてもこの雨雲と家屋の下では監視の仕様が無い。
 もし思考を読み取るような特殊な装置を用いていたなら、俺の思考分を記録し貯めておくだけでも図書館が一軒立ってしまう。
 お前らもそれなりに考えていることを合わせれば、到底管理しきれる情報量では無くなるだろう。
 これらを踏まえれば、監視が盗聴だけと言うのもうなずけるが……)
(俺の居た世界じゃ、占い師が水晶玉に遠隔地の映像を映し出したりしてたけど、バーンもそれぐらいは出来るかもしれねえぜ?)
(しかしそれでは先ほどの藍染の催眠術が効かなかったことの説明が付かん。
 それに今までの首輪の解析もバレているなら、奴らも何らかの対応をするだろうが、一向にその気配が無い)
(やはり盗聴オンリーで確定でしょうかねぇ……)


違う。何かが間違っている。何か決定的な違和感を感じる。
この感覚は恐らく2人も感じているのだろう。先ほどから語尾から迷いが読み取れる。
大事なことを見落としているんだ。もっと根本的な、大事なことを……


(なぁ、ちょっといいか?)
(なんだ?話についていけなくなって脱落宣言か?)
(いや……ちょっと聞きたいんだけどよ、
 お前らが『祭り』に行ったとして、面白そうな催し物が何個もあったら、どうする?)



55:ハイブリッド・レインボウ 19 ◆xJowo/pURw
06/11/19 22:56:17 /5/JqJN/0
「はぁ!?」
パピヨンが間抜けな声を漏らす。Lも不思議そうに俺を見つめている。
(なんだ、極限状態で狂ったか?何なら俺が一思いに楽にしてやろうか?)
(いや、俺は正気だし、巫山戯てるワケでもない。大事なことなんだ。お前らならどうする?)
これで伝わるのだろうか?
いや、伝えないといけない。俺の考えは間違っていない筈だ。

(一番面白そうな出し物から順に見ていきますね。うっかり見逃したら勿体無いですから)
Lは素直に答えてくれた。それを見てパピヨンも渋々応える。
(同時に見られる範囲の物は一緒に見てしまえばいいだろう。出し物の規模にも寄るが)
(もし、その中の催し物の中に、特別面白い物があったら?)
(その一つだけに絞って他は捨てだな。二兎追うものは一兎も得ず、だ)

(じゃあ、その出し物が130個同時に行われていたら?)

(―!!)
2人の目つきが変わった。


56:ハイブリッド・レインボウ 20 ◆xJowo/pURw
06/11/19 22:57:52 /5/JqJN/0
(主催者達の話を聞いてて思ったんだが、どうも奴らは俺達が戦い合い、殺し合うのを愉しんでいるみたいだ。
 でも、そのお目当ての場面を、音声だけで我慢できるか? 普通自分の目でも見たいと思うだろ?
 しかもどうやら奴らにはその手段もある。じゃあ、見ないで聞くだけ、ってのは明らかにおかしい話だ。
 しかし、いくら奴らでも、参加者全員を視覚的には監視していないかもしれない。
 いや、お目当ての殺し合いを見るのを優先して、くだらない馴れ合いなんか、わざわざ見ようとはしないだろう)
(つまり、藍染やLの行動は視覚的には監視されていなかったが、他の参加者は視覚的に監視されている筈だと?)
(そうだ。恐らくあいつらは、普段は音声で俺達の行動を盗み聞きしているが、
 いざ面白そうな戦闘が起これば、その映像を見て楽しんでるんだろうよ)
(ふむ、あの藍染という男は相当な自信家のようでしたから、自分が「見るに値しない」と見捨てられていた等とは思いもしなかったでしょうね)
(だが、いくら主催者共が人外の化け物だからといって、130人もの会話を全て把握しきれるのか?
 ……いや待て、何もあの3人だけで監視せずとも、手下共に監視させておけば良い。
 では、視覚的な監視も手下に任せれば……だがそうすると藍染やLの場合と矛盾する……
 視覚的な監視には同時に出来る数に限界があるのか?それとも解像度に難があるのか……)
パピヨンは独りぶつぶつと呟きながら考え込んでしまったが、
最終的に反論が来なかったことから考えて、概ね俺の考えに同調してくれているのだろう。




57:ハイブリッド・レインボウ 21 ◆xJowo/pURw
06/11/19 22:58:57 /5/JqJN/0
そして、どうやら2人とも俺の考えに乗った様だ。こいつらの了解を得られたとなると心強い。
だが、問題はこれで全て解決、というわけでもない。
(しかし、ということは人数が減ったこれ以降、監視の『目』がこれまで以上に厳しくなるのは必然ですね)
(ああ、それにさっきLが言った刺客のこともある。パピヨンの言った通り、これ以降は愚図愚図している暇はねぇな)
(全くその通りだ。一刻も早く首輪の爆破条件と、主催者の居場所を明確にせねばならん。
 その為には……今まで以上に積極的に、こちらから他の参加者に接触して行かねばならんだろうな)
(しかし、現在生存している30余人は、ここまで死線を越えてきた強者、曲者揃いの筈です。
 他者への接触は賛成ですが、最大限、慎重に行動する必要があります。迂闊な行動が即、全滅に繋がりかねませんから)
(ああ、だがリスクを気にし過ぎてちゃあ何もできねぇ。今は多少の荒事をしてでも、主催者共に近づく糸口を広げねえと)
(フン、俺に刃向う者など踏み潰してやれば良いだけのこと。足元の蟻など気にせず前に進んで行けばいいのだ。
 主催者の刺客が来るのなら、それも纏めて灰燼に帰してやろう!)
(何だかパピヨンが頼もしく見えるな……何か変なもの食ったんだろうか、俺)
(無駄口叩いている暇があったら会敵に備えておけ。この先はゆっくり休める保障は無いぞ? 精々気を引き締めておけ)
(……そうですね。これからが正念場、と言ったところです)

首輪を外し、主催者を倒し、この世界を脱出する。
最初は雲を掴むような話だったが、それが次第に骨を持ち、肉を帯びてきている。
だが実際には首輪も外れていないし、主催者も何処に居るのかははっきりしない。
でも、こいつらと居ると、それすら些細な問題に思えてくるから不思議なものだ。
橋に目をやり、これから出会う者、戦う敵のことを考える。
一方で、その時はなんとなく、主催者の刺客など来ないのではないか、と俺は思っていた。


―そして、雨が、止んだ。
雲の隙間から陽光が射し、虹が架かる―



58:ハイブリッド・レインボウ 22 ◆xJowo/pURw
06/11/19 22:59:59 /5/JqJN/0
【兵庫県・淡路大島・瀬戸大橋付近の休憩所/二日目・午後】
【チーム:三賢者】
[共通思考]1:首輪を実際に起爆させる、若しくは起爆させた経験を持つ人物から情報を得る。
     2:主催者の居城を確定できる情報を得る。
     3:襲撃者に対する警戒、準備。
     4:首輪の本格解除。

【L@DEATHNOTE】
[状態]喧嘩傷、右肩銃創(回復済み)
[道具]:荷物一式×2(ナッパ、セナ)(片方には食料無し、食料一食分消費)
   :デスノートの切れ端@DEATHNOTE、GIスペルカード『同行(アカンパニー)』@HUNTER×HUNTER
   :雪走り@ONEPIECE、斬魄刀@BLEACH、ショットガン(残弾不明、恐らく無か極少数)、野営用具一式、
:首輪の知識@パピヨン+ポップ 、世界の知識@L+ポップ
[思考]1:パピヨン、ポップらと同行し、主催者を打倒する。
   2:沖縄の存在の確認。
   3:ゲームを出来るだけ早く中断。
   4:死んだ仲間のことは忘れない



59:ハイブリッド・レインボウ 23 ◆xJowo/pURw
06/11/19 23:00:25 /5/JqJN/0
【ポップ@ダイの大冒険】
[状態]:喧嘩傷(MP中程度消費)
[装備]:魔封環@幽遊白書 、アバンのしるし@ダイの大冒険
   :ウソップ作の仕込み杖(投げナイフを使用) 、死者への往復葉書@ハンター×ハンター(ウソップから譲って貰った)
   :ボロいスカーフ(ウソップの形見)、ゴールドフェザー 3本 シルバーフェザー 2本@ダイの大冒険
[道具]:荷物一式×3(食料・水、4食分消費)、首輪@跡部、首輪@玉藻、爆破された首輪の破片@一輝
   : 首輪の知識@パピヨン+ポップ、世界の知識@L+ポップ
[思考]1:L、パピヨンと同行。主催者を打倒。
   2:ダイ・ウソップの仲間(ルフィ)との合流
   3:夜になったら死者への往復葉書を使ってマァムに手紙を書く。
   4:フレイザードを早めに倒す
   5:死んだ仲間のことは忘れない。
   
【パピヨン@武装錬金】
 [状態]:腹に大穴、体力消耗中、核金で常時ヒーリング
 [装備]:核鉄LXX@武装錬金 (火薬少量消費)核鉄XLIV(44)@武装練金(腹の大穴内)
    :ボロいスカーフ(首輪から監視されていた場合への対策)
 [道具]:荷物一式×4(食糧3食分消費)、ベアクロー(片方)@キン肉マン、
    :首輪@ヒソカ、首輪@一輝、首輪の知識@パピヨン+ポップ、世界の知識@L+ポップ
 [思考]:1:蘇生は不可能。だが武藤カズキとの再戦は必ず果たす。そのための情報を集める。 
     2:L、ポップと同行し、首輪や主催者についての謎を究明する。
     3:ツリ目の少年の情報を得る。ツリ目の少年は見つけ次第殺す。
     4:ドラゴンボールは信用しない。
     5:他の参加者と必要以上に馴れ合う気はない。
    


60:ハイブリッド・レインボウ 24 ◆xJowo/pURw
06/11/19 23:00:55 /5/JqJN/0
*首輪@中川は、鳴門大橋香川県側で爆破されました。

<既知事項>
*首輪
・つるつるしていて、継ぎ目が無い。ネジなども見られない。特殊な金属で出来ている。
・首輪内に機械構造が入っている。
・生死判別機能、盗聴機能、GPS、起爆装置有り。
・破損しただけでは爆発しない。火薬は誘爆しない特殊なものを使用。
・禁止エリアに投げ込んでも爆発しない。
・破損しても他の首輪は誘爆しない。
・呪いがかかっているかどうかは未知数。

*監視
・盗聴だけでなく、視覚的な監視も行われている可能性が高い。その場合監視対象は少数で、その対象の決定も恣意的。
・筆談が読解されている可能性は非常に低い。
・上空からの監視の可能性は(あまり高くないが)有り。

*主催者の居城
・沖縄の可能性が現時点で最も高い。



61:ハイブリッド・レインボウ 修正 ◆xJowo/pURw
06/11/20 16:59:46 9mp09bXY0
修正
5レス目 10~12行目冒頭に余白挿入。
6レス目
俺達は、コーベ駅で列車を降り、セト大橋を渡ってアワジ島という島にやってきた。   :セト→ アカシ
でも確か、アワジと橋が架かっているのは既に禁止地区になったカガワの筈だが……。  :カガワ→トクシマ
8レス目 円形の重りが、コロコロとカガワの方へと転がってゆく。          :カガワ→トクシマ
24レス目 香川県→徳島県

他、瀬戸大橋を全て明石大橋に修正。
具体的には、
8レス目:10、12、行目
9レス目:11、行目
10レス目:1、11、行目
22レス目:状態表


62:彼女の功績はあまりに大きく、あまりに残酷 ◆B042tUwMgE
06/11/20 22:10:42 TUctyO2R0
 どっちが子供だよ、と言ってやりたい。
 大人の義務ってなんだよ、と言ってやりたい。
 子供に心配かけて、それで大人って言えるのかよ、と言ってやりたい。
 大人って、勝手だ。

「―待ってくれ麗子さん!」

 呼び止めた。
 みんな勝手なんだよ。
 ダイも両津さんもまもりさんも麗子さんも。
 絆はどうしたんだよ。
 別行動はとらないんじゃなかったのかよ。

「止めても無駄よ星矢ちゃん。早くまもりちゃんを追わないと」
「止めないよ。ただ、一人で勝手に突っ走るのはやめてくれ」


 ~~~~~



63:彼女の功績はあまりに大きく、あまりに残酷 ◆B042tUwMgE
06/11/20 22:11:56 TUctyO2R0
 放送前、麗子に追いついた星矢は、落ち着いた声で逸る彼女を呼び止める。
 その言葉は、「行くな」ではなく、「一人で行くな」という意味だった。

「止まっている暇なんてない。まもりちゃん、すごく辛そうな顔をしていた……早く追わないと、きっと大変なことになる」
「だからって、一人で行ってどうなるんだよ」

 星矢は駆け出そうとした麗子の肩を掴み、静かなる力でその場に押しとどめようとする。
 しかし麗子の意志は強く、今にもその場を飛び出さんくらいの危うさが感じられた。

「離してっ、星矢ちゃん」
「駄目だ。麗子さんは一人じゃ行かせない」

 ここで離したら、きっとまた、危険がやってくる。
 藍染惣右介に人質を取られ、成す術もないまま大事な人たちを危険に晒してしまった不甲斐ない自分。
 それが、許せなくて。

「確かに、麗子さんは俺なんかより全然大人だ。でも、大人だとか子供だとか、そんなの関係ない。
 麗子さんもまもりさんも、同じくらい弱い。俺に言わせりゃ、どっちも、守らなくちゃならない大事な人なんだよ」

 だから、一人じゃ行かせられない。
 聖闘士としての務め、ではない。
 仲間思いの一人間として、失いたくない。
 守るのは、そのためだ。

64:彼女の功績はあまりに大きく、あまりに残酷 ◆B042tUwMgE
06/11/20 22:12:39 TUctyO2R0
 サァ―と風が駆け抜けた。
 降り続けていた豪雨の雨脚が弱まり、時刻は昼へと近づく。
 放送は、間もなく。

「俺たち、仲間だろ?」

 そう、星矢が問いただした。

「そうよ。当たり前じゃない」

 麗子が、そう答えた。

「なら、行く道は一緒のはずじゃないか」

 星矢が、そう言い切った。

「焦る必要なんてない。仲間を信じて、一緒に進もう」

 星矢が、優しく微笑んだ。

「……ええ」

 力強く、麗子が頷いた。

「…………」

 誰かが、静かに傍観していた。


 ~~~~~



65:彼女の功績はあまりに大きく、あまりに残酷 ◆B042tUwMgE
06/11/20 22:14:48 TUctyO2R0
 兵庫県の市街地。ちょうど、星矢と藍染が戦いを繰り広げた草原の北に位置する街だ。
 そこで星矢と麗子は合流を果たし、そして一人、部外者を呼び込んだ。
 仲間ではない、仲間とも思えない黒影の小柄の姿。
 その少年の名が『飛影』だと知る者は、少ない。

「……星矢、ちゃん」
「ごめん、麗子さん……さっきの言葉、いきなり撤回するかもしれない」

 現れた影は、薄く開かれた眼を星矢ただ一人に向けていた。
 隣に居た麗子には興味を示さず、星矢の内に秘められた絶大な力を感じて、接触を図ったのだ。

「失せろ女。お前に用はない」

 短く冷たく、視線を合わせようともせず、飛影は麗子に言った。
 彼を支配する闘争本能に、弱者の住まう居場所は存在しない。
 飛び交う小蠅には目もくれず、狙うは敵の将ただ一人。
 手柄や功績のためなどではなく、ただ己の欲を満たさんがために。

 冷えた視線は、それだけで子供を射殺せるほどの殺傷能力を秘めていた。
 ガクガクと身を震わせながらもそこに立っていられたのは、隣に頼りがいのある仲間がいてくれたからか。

「麗子さんは、まもりさんを追ってくれ。俺は、ここでこいつを食い止める」
「そんな……それじゃあ星矢ちゃんが―」
「まもりさん、放って置けないんだろう? それに、何度も言わせないでくれ。俺は」
「……強い、もんね。私なんかと違って、星矢ちゃんは力を持っている……うん」

 己に言い聞かせるよう呟き、麗子は、前を向いた。
 別れの言葉もなく、脚を突き動かす。まもりが去っていった、東へ。


 ~~~~~

66:彼女の功績はあまりに大きく、あまりに残酷 ◆B042tUwMgE
06/11/20 22:15:33 TUctyO2R0


 それでいい。
 こういう厄介だけど扱い方が単純な手合いは、俺が全部引き受ける。
 麗子さんは、麗子さんにできることをやってくれ。
 俺も、俺にできることをやるから。
 それが、一番仲間のためになるから。

「追わないのか? 麗子さんのこと」

 俺に対して敵意むき出しチビに、問いかけた。

「あんな雑魚はどうでもいい。俺が用があるのは、俺と対等に戦える奴だけだ」
「戦闘狂……いや、単なる喧嘩好きか」

 ったく、この忙しい時に、面倒な奴と出くわしたもんだ。
 でも、ま、いいストレスの吐き出し口にはなるかもな。

「生憎だけどよ、俺、今あんまり機嫌がよくねーんだよ。だから、手加減できないぜ」
「望むところだ」

 こっちは小宇宙を全開にしてるってのに、尚もやる気マンマンかよ。
 藍染みたいな悪党ならともかく、相手がバトルマニアなだけってんなら……ま、なんとかなるか。
 答えは簡単。
 俺がこいつに勝てば、丸く収まる話だ。


 ~~~~~



67:彼女の功績はあまりに大きく、あまりに残酷 ◆B042tUwMgE
06/11/20 22:17:32 TUctyO2R0
 開戦の合図はなかった。
 仕掛けたのタイミングはどちらも等しく、公平。
 互いに詰め寄り、文句もなく放ち合ったのは、拳だった。

 星矢の右拳と、飛影の左拳が穿ち合う。
 両者共に肉弾戦を得意とするらしく、そこに姑息な駆け引きや罠は仕込まれていなかった。
 飛影は、緊迫しそうな力と力のぶつかり合いに士気を高めつつあった。
 アビゲイル戦の時はリンスレットという邪魔、排撃貝による小細工など苛立ちを感じる要素が多々あったが、今回は違う。
 拳と拳、力と力。互いの戦闘力を親身にぶつけ合う、至ってシンプルな喧嘩になりそうだ。

「―お前、別に優勝とか狙ってないだろ!? お前の小宇宙からは、藍染のヤローみたいな禍々しさが感じられない!」

 高速移動と拳による猛攻を繰り返しながら、星矢が言い放った。
 飛影は星矢の呼びかけに一切の反応を示す気配はなかったが、その沈黙には肯定の意があるように思えた。

「自分のことしか考えてない悪党なら、問答無用で俺たちを襲ったはずだ! そうしなかったのは、悪党じゃなくて単なる喧嘩好きだから―」

 喋りかけている最中に打ち放たれた飛影の膝蹴りを両腕をクロスさせて防ぎ、回避行動に合わせて更に言葉を紡ぐ。

「小宇宙を感じれば分かるんだよッ! お前みたいな奴、嫌いじゃないぜ!!」

 光と影。
 市街地を高速で駆け抜けながら、パンチとキック主体によるシンプルな攻防が繰り広げられる。

「よく喋る野郎だ」

 飛影は星矢に抱いた感想を短く呟き、一旦距離を取ってから攻撃の手を変えた。

68:彼女の功績はあまりに大きく、あまりに残酷 ◆B042tUwMgE
06/11/20 22:18:52 TUctyO2R0
 取り出したのは、先刻ミサから強奪した真空の斧。
 小柄の飛影が扱うには些か似合わぬ武器だったが、彼の力量を考えれば別段不自然な手ではなかった。

 飛影はビルの壁を蹴り、空へと飛びあがる。
 同じように星矢も向かいに位置するビルの壁を蹴上がり、飛影を迎え撃つ。
 神速のスピードで振り下ろされる飛影の斧による一撃。
 星矢は、その攻撃を横から素手で弾き、開いた隙間から回し蹴りを放つ。
 空中で交差した二人は同時のタイミングで地面に降り立ち、瞬間、反対の方向に着地した標的を狙う。

「―ッ!?」

 振り向き、飛び出したのは飛影一人。
 星矢はというと、着地した地点でドシッと腰を構え、向かってくる飛影を迎撃の体勢で待ち構えていた。

「ペガサス―」

 反射的に攻撃の手を緩め、回避にスイッチしようとした飛影だったが、突進力が強すぎたのか、すぐには行動に移れない。
 結果、飛影は星矢の射線上に飛び込んでいく形になり、

「―彗星けぇぇぇんッ!!!」

 一直線に伸びた、ビームのような星矢の正拳を―寸前で避けることになった。

 単にパンチが怒涛の勢いで迫ってきただけ、とは言い難い、星矢のペガサス彗星拳。
 回避が成功したのは、本当に幸運の賜物だった。
 瞬時に発動した真空の斧による突風……このほんの微かな風が、飛影を僅かに横へずらしたのだ。
 が、代償として真空の斧の刀身はモロに彗星拳の直撃を受け、飛影の手には折れた斧の柄だけが残った。

69:彼女の功績はあまりに大きく、あまりに残酷 ◆B042tUwMgE
06/11/20 22:20:17 TUctyO2R0
「邪王……」

 それでも、転んだらただでは起きない。
 飛影は、横飛びに振り出された身体を空中で制御し、握られた斧の柄に魔界の炎を宿した。

「……炎殺剣!!」

 先端に燃え上がった炎の刀身は槍のような形状を作り、勢いづいて星矢に放られる。
 その速度は彗星拳までとはいかずとも、十分な殺傷能力を秘めた、銃弾以上の脅威だった。

 星矢は慌てず、飛び込んできた炎の槍に対処する。
 この攻撃は、彗星拳を放った直後に仕掛けられたカウンターの一撃。回避は難しい。
 ならば対処は、必然的に防御に絞り込まれる。

「ペガサス流星拳ッ!!」

 だが星矢は、あえて攻撃を選択。
 たった壱秒の間に百を越える無数の拳打が打ち込まれ、防壁となって迫る炎殺剣を弾き返した。
 その間も、飛影は追撃の手を止めることはしないのだろう。
 それを見越しての、攻撃による防御。
 敵が攻撃の手を緩めるまで、こちらは絶対に反撃を止めない。
 小細工は必要ない。星矢の目的はただ、飛影を戦闘不能に追い込み、一刻も早く麗子と合流することなのだから。

70:彼女の功績はあまりに大きく、あまりに残酷 ◆B042tUwMgE
06/11/20 22:23:02 TUctyO2R0
 光の輝きが発生せんほどのラッシュは、影を残さぬほどのスピードで動き回る飛影の姿を胆振だす。
 小さな影は、既に星矢の背後に移動していた―

「狙い通りのポジションだぜッ! 喰らえェェ―!!」

 振り向き、渾身の拳打を叩き込んだ。
 ブンッ、と空気を切る音と、掻き消える飛影の姿を視覚と聴覚が捉え、次第に脳が違和感を覚えた―

「残像だ」

 ―時にはもう遅い。
 星矢の背後に迫っていたと思われた飛影の姿は幻のように消え去り、代わりに空から、小さな声を漏らす。

「邪王炎殺煉獄焦ッ!!」

 星矢の頭部目掛け、真上から炎を宿した拳の雨が降り注ぐ。
 さすがの星矢もこれを反撃で返すことは容易ではなく、不恰好な防御の体制を構えるだけに終わった。

 飛影の攻撃が、初めてクリティカルヒットを見せる。

「ぐはぉっ!?」

 痛みによる嗚咽を漏らしたのもまた、星矢が初だった。
 上空からの攻撃により地に叩きつけられ、減り込む直前で横に蹴り飛ばされた。
 拳による殴打、地面に叩きつけられたことによる痛打、そしてビルの外壁まで蹴り飛ばされ、それを破壊するほどの衝撃。
 三種の連続的なダメージが星矢を襲い、勝負の優劣を大きく揺るがした。

71:彼女の功績はあまりに大きく、あまりに残酷 ◆B042tUwMgE
06/11/20 22:23:34 TUctyO2R0
「がはっ、がっはっ!?」

 痛烈な衝撃に耐えながらも瞬時に身体を起こし、再び構えを取る星矢。
 周囲の光景は小高いビルの立ち並ぶ外界から、おそらくはホテルか何かなのだろう、広くも薄暗い絨毯敷きのロビーに移り、室内戦へ移行する。

「な、なんて奴だ……光速のスピードを持つ聖闘士相手に、速度でまったく引けを取っていない……!」

 藍染の『瞬歩』も目を見張るものがあったが、飛影は『瞬歩』以上のスピードを、常時発揮しているようにも思える。
 星矢の動きを光と例えるならば、飛影の動きはまるで影。
 光と影が表裏一体だとするならば、そのスピードも互角だというのだろうか。

「あ、藍染の時といい……ハーデスの野郎、まさか俺たち聖闘士にだけ、制限を重くしてるなんてことはない、だろうな……?」

 完全な息切れを起こしながらも、星矢は小宇宙を張り巡らせて飛影を索敵する。
 感じる。敵はまだ、外にいた。

「―タフな野郎だ。だが、それもこれまでか」

 堂々にも、破壊された自動ドアの入り口から姿を見せ、飛影は星矢に向き合った。
 その顔は、未だ涼しげ。体力の尽き掛けてきた星矢に比べ、余裕が感じられる。

 藍染惣右介との決闘、その時のダメージと疲労が、今になって星矢を苦しめている。
 鬼道の応酬は皮膚や血管などへの外傷として、重力の増加は内臓器官へ地味ながら強力な疲労を及ぼした。

 あの時だって、本来なら負け戦だった。
 藍染の圧倒的な重力と、黒棺なる技によって受けた致命傷により、星矢は死なば諸共の覚悟を決意したのだ。

 だが、仲間に救われた。

 ダイのライデインによるサポートが、仲間からのメッセージが、窮地に立たされていた星矢を再度奮い立たせてくれた。
 その後のマヌーサによる幻影も、仲間達の囁きがあったから振り払うことが出来た。

72:彼女の功績はあまりに大きく、あまりに残酷 ◆B042tUwMgE
06/11/20 22:25:49 TUctyO2R0
 支えられて、守られて。

(ああ……なんだ)

 守られて、支えられて。

(麗子さんには『守る』なんて偉そうなこと言ったけど……)

 どっちも。

(逆じゃんか……おれ)

 されっ放しだった。

(仲間がいなきゃ……俺は満足に戦うことも出来ないのか?)

 それでいいのか、聖闘士星矢。


「……いいわきゃない、よな」


 小さな呟きは、飛影に届くことはなかった。


「死ね」


 見た目、なんとか立っているだけの星矢に、飛影が最後になるであろう攻撃を仕掛ける。

73:彼女の功績はあまりに大きく、あまりに残酷 ◆B042tUwMgE
06/11/20 22:31:38 TUctyO2R0
「 邪 王 炎 殺 煉 獄 焦 ―」


「 ペ ガ サ ス 流 星 拳 ! 」


 黒の炎拳による高速のラッシュ―繰り出された飛影の攻撃を遮らんばかりに、星矢が光速の動きを見せた。
 飛影の全身を多い隠すほどの発光、その正体は、星矢の拳。
 拳と拳の打ち合い、などという次元では表せない、絶対的な力の差が、そこに生まれていた。

 飛影の煉獄焦をちっぽけな発熱電球と例えるなら、星矢の流星拳の規模は、それを容易く飲み込む太陽。
 それが正面から打ち合えば、どちらが勝るかは最早明確である。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお―!!!」

 拳を打ちながら、星矢は力いっぱい叫び続けた。
 気合だ。気合で相手を凌駕するんだ。
 小宇宙を爆発させれば、不可能なことなんて何もない。
 聖闘士は誰にも負けない、アテナに選ばれし最強の戦士なんだ。
 負けて、負けてたまるか―!


 麗子ためでも、仲間のためでもなく。
 一人の聖闘士、否、男として。
 負けたくなかった。勝利が欲しかった。

 その思いが齎した力が、このペガサス流星拳だ。


 ~~~~~



74:彼女の功績はあまりに大きく、あまりに残酷 ◆B042tUwMgE
06/11/20 22:38:31 TUctyO2R0
 正面からの打ち合いに競り負け、飛影は敗北を予感し始めていた。

(またか―また俺は、負ける、のか)

『また』―この二文字が、呪いの様に圧し掛かる。
 思えば、この世界で飛影が勝ち得たものは何一つなく、ちっぽけな勝利の栄光が一つだけ。
 アビゲイル戦などは、到底勝ち星には入れられない。
 氷女や邪魔者の女などは、論外だ。
 ピッコロに至っては、完全なる敗北を喫した。
 真に戦いで勝利したのは、剣桃太郎との一戦ただ一つのみ。
 しかしその戦いとて―満足のいく結果とは言えなかった。

(そういえばあの男―妙なことを口にしていたな)


 ~~~~~


 ゲーム開始から僅か数時間、飛影の初戦の相手である剣桃太郎は、最後までしぶとく食い下がってきた。

『ふう……俺の負けか。と、言いたいところだが。諦めないのが男塾精神でね、精々足掻かせてもらうぜ』

 何が男塾精神だ。黒龍波を喰らい、強大な妖気を身につけた飛影相手に、死に損ないがどう抵抗できるというのか。
 それからの戦闘はあまりにも無意味。赤子の手を捻るより簡単だった。
 纏った黒龍波の妖気は飛影の戦闘能力を何倍にも跳ね上げ、単なる拳打でも桃太郎を死に追いやった。

75:彼女の功績はあまりに大きく、あまりに残酷 ◆B042tUwMgE
06/11/20 22:39:28 TUctyO2R0
『……こ、こまで、か。俺も、ヤキが回った、かな』
『死に掛けのくせに、よく喋るな』
『まあ、ね。男塾ってところは……それはそれは喧しいところ、でな。俺も、一号生の筆頭を務めていたが、こんな形で奴等と別れるハメに、なるとは』
『女々しいな』
『そう、か? フフフ……いや、なに。お前を見ていたら、なんだか思い出しちまって、な』
『俺が、その男塾とかいうところの連中に似ているとでも?』
『ま、ツラは全然合わねーと、思うが……そっくりでは、あるな』
『どこがだ?』
『興味あるか? ……そうだな。喧嘩っ早くて、血に飢えていて……だが、それでいて、腐ったヤローは絶対に許さねー。ま、そんなとこ、ろだな』
『なんだそれは』
『フフ、フ……ま、理解しようと、しても、できるもん、じゃねぇだろう、な……ゲフッ』

 剣桃太郎の最後の戯言は、今でも詳細を記憶していない。
 意味がないと、そう思っていたから。
 弱者のつまらない虚勢だと、そう思っていた。


 ~~~~~


(―俺は、幽助にも勝つことができなかった。決着をつけることも叶わず……勝ち逃げされた)

(―アビゲイルとも、ピッコロとも、まだ)

(―勝たなければいけない相手が、まだいる)

(―なのに俺は、また負けるのか?)


 氷泪石、優勝、ピッコロ、生き残る、桑原の仲間、その他の雑魚、アビゲイル―

 今は、全て忘れよう。

76:彼女の功績はあまりに大きく、あまりに残酷 ◆B042tUwMgE
06/11/20 22:40:34 TUctyO2R0
 勝ちが欲しい。

 貪欲に。

 勝ちたい。

 星矢に。

 今は。

 ただそれだけを考えて。

 倒れるな。

 生きろ。

 死ぬな。

 放て。

 仕掛けろ。

 ―黒龍波を。


 ~~~~~ 



77:彼女の功績はあまりに大きく、あまりに残酷 ◆B042tUwMgE
06/11/20 22:41:35 TUctyO2R0
「邪王炎殺黒龍波アアァァァァァァァッ!!!」

 ペガサス流星拳が作り出した閃光の世界―数百発の拳の先に、黒く巨大な、闇が浮かび上がった。

「な―ッ!?」

 驚愕する星矢を飲み込むように、黒炎で形作られた巨龍が顕現する。
 ロビー全体を埋め尽くさんほどの炎の龍は、周囲のオブジェを跡形もなく燃やしつくし、天に昇る勢いでその建物を破壊した。
 黒龍が天駆けるその間、星矢は黒龍の牙に捕らえられたまま、一緒に宙を舞う。
 灼熱よりも熱い黒龍の喉元で、星矢は苦痛に耐えながら反撃の機会を窺おうとするが、

「はああああああああああああああああああああああああ――ッ!!!」

 勢いがいっこうに衰えない黒龍波の衝撃は、星矢に身動きを不可能にさせた。
 星矢を飲み込んだまま、黒龍は天へ、地へ、障害となる建物は片っ端から爆砕し、激進する。
 崩れるコンクリートと抉れる大地が不協和音を生み出し、戦いの舞台となった街を無残な廃墟へと変えていく。

 黒き龍が、街を破壊する。

 兵庫の街が、厄災に飲み込まれる。


 ―ご機嫌いかがですかな、皆さん。今回の放送は私、フリーザが担当します。
 放送も今回で六回目。さすがに悲しむことにも慣れてきましたかね?―


 放送が流れ出したのは、ちょうど黒龍波が姿を消したタイミングだった。


 ~~~~~



78:彼女の功績はあまりに大きく、あまりに残酷 ◆B042tUwMgE
06/11/20 22:43:11 TUctyO2R0
 黒龍波が消滅した後の光景といえば、それは正に、地獄絵図にも等しい惨状だった。
 その被害地の、ちょうど中心。
 黒龍波を正面から受け止め、街を破壊する衝撃と魔界の炎が生み出す豪熱に苦しめられながらも、星矢はまだ、生きていた。

「は、は……よく、頑張ってくれたな……」

 力ない横倒しの姿。仰向けになりながら、自信が装着しているペガサスの聖衣に語りかける。
 微かな焦げを帯び、若干輝きを弱めつつあるペガサスの聖衣。
 もしこれを身につけていなかったら、星矢は黒龍波の衝撃に耐え切れず、間違いなく絶命していただろう。

「―感謝するぜ。お前のおかげで、俺はまた少し、強くなった」

 身体を起こしきれない星矢を見下ろすように、崩れたコンクリートの残骸から、炎の黒衣を身に纏った飛影が顔を出した。
 これまでとは比べ物にならない規模の黒龍波で星矢を追い詰め、最終的にはその炎を全て自分で喰らい、妖気を増幅させる。
 これこそが、邪王炎殺黒龍波の完成形。今の飛影の戦闘力は、以前の比ではない。

「お前も……相当強いな。流星拳を喰らいながら、あんなもん撃ってくるなんて……たまげたぜ」
「……俺はもう、誰にも負けん。ただ、それだけだ」

 力なく失笑する星矢に、飛影は無表情で近づいていく。
 一歩、二歩、着実に、止めを刺すために。


 ―ラティ、志々雄真実、ボンチュー、マミー―以上の10名だ―


(放送……ハーデスの奴が、喋ってるのか? こいつ……本当に影薄いよな……大して喋んねーし……何考えてるか、全然……)

79:彼女の功績はあまりに大きく、あまりに残酷 ◆B042tUwMgE
06/11/20 22:56:46 TUctyO2R0
 薄れゆく意識の中で、放送を確認する。
 宿敵、ハーデスは相変わらず表に出てくるような存在ではなかった。
 他の二人の主催者とは、何かが違う。本当に存在しているのか分からなくなってくるような―不気味な存在感の無さを感じる。

(ハーデス……お前は、いったい……)

 力尽きる寸前、飛影が眼前まで迫る寸前、星矢は、聖闘士としての使命を忘れ去ろうとしていた。

 もう、限界だ。俺の力は、なんてちっぽけだったんだ。
 もう、限界だ。ハーデスたちはきっと、ダイがなんとかしてくれる。
 もう、限界だ。俺は所詮、青銅聖闘士。
 もう、限界だ。藍染を倒したところでもう、ガタがきてたんだ。
 もう、限界だ。一輝、サガ、デスマスク、すまん。
 もう、限界だ。アテナよ、無念です……。


「…………なんだ、もう抵抗する気はないのか?」

「…………」

 飛影が問いかける。
 星矢からの答えは、ない。

 死を受け入れようとしている、倒れた少年が一人。
 少年に死を与えようとしている、立った少年が一人。

 なんてことはない。
 この世界で幾度と無く繰り返されてきた、殺し合いの1ページ。
 それがまた、刻まれるだけだ。

80:彼女の功績はあまりに大きく、あまりに残酷 ◆B042tUwMgE
06/11/20 22:57:38 TUctyO2R0
「なら、次はあの女を殺しに行くとするか」

 ポソリ、と飛影が呟く。

「………………あ?」

 うわ言のように、星矢が聞き返す。

「東へ向かっていった女……お前が『麗子』と呼んでいた奴だ。お前を殺したら、次はあの女を殺しに行くとしよう」

 その、他愛もない、冗談みたいな、一言が。

「……なんだって?」

 フツフツと、その場に流れる小宇宙を再び燃え上がらせ、

「おい……勘違いするなよ? 俺は、ちょっとばかし前に藍染っていうそれなりに強いヤローと戦ったばっかなんだ」

 狙い通り、飛影の狙い通りに、

「それで少しばかり体力を消耗してだな……全快の俺だったら、お前みたいなチビ秒殺なんだよ……」

 諦めかけていた星矢の闘志を、震い立たせた。

81:彼女の功績はあまりに大きく、あまりに残酷 ◆B042tUwMgE
06/11/20 22:58:32 TUctyO2R0
「やるのか? チビ」
「チビはお前だぁぁぁ! 聖闘士の力を嘗めるなよ―ッ!!」

 気合一声、二つの脚で見事立ち上がって見せた星矢は、再度飛影に向き直った。
 もう、仲間を失わないため。
 一輝、サガ、デスマスク―
 石崎、富樫、太公望、キルア―
 誰かが死んで、誰かが悲しむ。
 こんな腐ったループは、絶対に止めなければいけない。


 ―俺が死んだら麗子さんやまもりさんが危険になるし、それに、

 ―俺が死んだら、みんなが悲しむだろ?


 だから、ここでは死ねないのだ。

「死ねェ――ッッッ!!」

 黒龍波の妖気による衣を纏い、飛影が突進を仕掛ける。
 星矢はその場にどっしりと構え、必殺のペガサス流星拳で迎撃しようとした。
 しかし、極限を越えた疲労は黙らせられないのか、無骨な動きを見せつつ振り被る腕は、重い。
 飛影はその刹那、自身の勝利を確信的なものにした。
 目の前に立つこの男に、最早満足な攻撃は無理なのだと。
 悟って、「つまらん」と思いつつも、拳を振るう。
 なんにせよ、これで『勝ち』だ。
 今度こそ、文句なしに、『勝った』。

82:彼女の功績はあまりに大きく、あまりに残酷 ◆B042tUwMgE
06/11/20 22:59:35 TUctyO2R0
「―」

 ―風を切る音は、実に気持ちのいいハーモニーを奏でてくれた。
 振り被った拳が対象を捉えられなかったのは、なんの間違いか。
 飛影の拳による攻撃は、当たらなかった。
 避けられたのだ。

 その一瞬―制限を凌駕し、光速のスピードを取り戻した星矢によって。

「残像だよバカ!」

 飛影が見せた残像、そして藍染が駆使していた『瞬歩』。
 その動きから学んだ、星矢オリジナルの光速瞬間移動術が、飛影の攻撃を完璧に回避した。

 星矢は、
 気づいたら、

(―背後に――ッ!?)

 回りこんで、
 飛影の身体を掴み、
 空へ、

(昇っていく―ッ!!?)

 そして、
 落ちていく。

 「 ペ ガ サ ス ロ ー リ ン グ ク ラ ッ シ ュ !!! 」


 ~~~~~

83:彼女の功績はあまりに大きく、あまりに残酷 ◆B042tUwMgE
06/11/20 23:00:28 TUctyO2R0


 ―それではまた六時間後。今度は、夜にお会いしましょう。


 放送が終わりを告げ、フリーザの言霊は空へ消えていく。
 その頃、兵庫県での激戦には終焉が訪れ、闘争者が二人、並ぶように横たわっていた。

「クソッ! あとちょっとってところで、しくじっちまった!」

 ピクリとしか動かせない身体をジタバタさせながら、星矢は悔しそうに叫んだ。
 飛影の突進に対し、最後の力を振り絞って仕掛けたペガサスローリングクラッシュのカウンター。
 限界を超えていたにも関わらず、あの技を出せたのは、正に奇跡の賜物といえよう。
 ……いや、ひょっとしたら、『また』仲間が力を貸してくれたのかもしれない。

「……何故、俺を殺さなかった」

 こちらも全てを出しつくし、黒龍波の妖気もほとんど消え失せてしまった飛影が、呟く。

「ああ? 言っただろ、しくじったって。俺が万全の状態だったら、お前今頃死んでたぞ」

 激突の寸前、ペガサスローリングクラッシュの体勢が崩れてしまったのは、その衝撃に星矢自身が耐え切れなかったからだ。
 藍染戦のダメージと疲労、そして煉獄焦や黒龍波を正面から受けた代償は、しっかりと体に残っていたのだ。
 決して、飛影に情けをかけたわけではない。

「あー、完璧に決まったと思ったんだけどなー。ここぞって時にミスしちまった。これじゃあ一輝達に笑われちまう」

 そう、決して。
 星矢は飛影という好敵手相手に、無礼のないよう全力を出し切ったのだ。
 その結果が、二人を生かしている。

84:彼女の功績はあまりに大きく、あまりに残酷 ◆B042tUwMgE
06/11/20 23:02:03 TUctyO2R0
「なぁ、お前。そういやさ、まだ名前聞いてなかったよな?」
「……飛影」

 横たわる二人、身体を起こそうともせず、戦意を消したまま語り合う。

「飛影、か。俺の名前は、星矢ってんだ。よろしく頼むぜ」
「フン。さっきまで殺し合いをしていたというのに、何がよろしくだ」
「ハッ、それもそうだな。でも、ま、もう終わったことじゃんか」

(何が終わったと言うんだ。俺はまだやれるぞ)
 黒龍波の反動による眠気と闘いながら、飛影は心の中で星矢に対し不服を漏らしていた。

「飛影……相談なんだけどよ、お前、俺たちの仲間にならないか?」
「…………なに?」
「お前がさっき撃った技、黒龍波だったか。あの炎から発せられた小宇宙はスゲー禍々しかったけどよ……でも、藍染みたいに腐っちゃいない。
 あいつの小宇宙をドブ川と例えるとだな、お前の小宇宙は洗えば綺麗になる下水道みたいなもんで……あれ? あんまりいい表現じゃないなこれ?」

(何を言っているんだコイツは。だいたいコスモだとかアイゼンだとか、いったい何のことを言ってるんだ)
 変な奴、と感じていた。
 同時に、幽助に似ている、とも。

「要するにだな、俺たちは脱出して、ハーデス達主催者を一網打尽にしてやろうって考えてるんだ。そのために、お前に力を貸して欲しいんだよ」
「バカか貴様は。俺はお前を殺そうとしていたんだぞ。今だって、余力が残っていれば瞬殺してやるところだ」
「その時は、俺も全力で抵抗させてもらうさ。……でもよ、お前の小宇宙は、俺みたいな奴に無差別にぶつけるもんじゃない。
 ハーデスみたいな強大な力にぶつけてこそ、真の力を発揮すると思うんだ。その方が、お前も楽しめるだろ?」

「…………フン」

 否定はしなかった。
 主催者達の力の強大さには気づいていたし、いけ好かないとも感じていた。
 奴等の手の平の上で踊るのは、真っ平ごめんだ。だが、強い奴と戦うという欲望は無視できない。


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