06/11/12 01:12:49
その日アムロは朝から調子が悪かった。どうにも腰の痛みが取れないのだ。
思えばいつもそれほど褒められた姿勢でデスクに座っているわけではない。そ
して重たい機械の部品を持ち上げる仕事を急に始めたり、そんなふうに腰を酷使
しているためだと思っていた。
しかしキリキリとした痛みが腰の辺りから徐々に下がってきていることを自覚
してからは、どうやら腰を酷使したせいでの痛みではないことに気がついた。
そして気がついた時には手遅れだった。
「アムロ、それは腰の痛みではなくて内臓が原因なのではないのか?」
座っても横になっても痛みが和らがないアムロは、日付の変わった夜更けまで
ずっと立っていた。動物園のシロクマのように部屋の中をただひたすらウロウロ
する姿は、誰が見てもうっとうしいものだった。市販の痛み止め薬など効きはし
ない。
「ああ……俺もそう思う。あ痛……これは病院に……行かないと駄目だな……」
「仕方ない、時間外診療になるが私が連れて行こう。上に何か羽織ってくるがい
い」
「すまない……シャア……いたっ……」
シャアの運転で一番近くの総合病院に到着したアムロは、たっぷり一時間待た
されてから診察室に通された。
待合室には急な発熱を起こした子供とあたふたとする若い親、書類を書いてい
る救急隊員や、神妙な顔で交通事故の相手が診療室から出てくるのを待つ加害者
などで雑然とする中、アムロはただ脂汗を流しながらじっと耐えていた。ちなみ
にシャアは病院の外で缶コーヒーと煙草を楽しんでいる。
幸いその日はベテラン医師が当番に立っていたので、簡単な検査と診察を受け
ることができた。医師はエコーの画像を見ながら言った。
「ああ、これは石ですね」
「石、ですか」
「きちんと検査してみないとわからないけど、腎臓で作られた石が降りてきた
か、尿管内で作られたかのどちらかでしょう。痛み止めを出しておきますので、
早いうちにもう一度来院して検査を受けてください」
痛み止めの注射を打ってもらったアムロだったが、いわゆる尿管結石や尿道結
石の痛みはそんなもので和らぎはしない。少しマシになったものの、アムロは帰
りのヨタハチ車内でもうめき通しだった。