07/10/21 02:35:56
「ここは…本当に豊かなところですね」
傍らで君が呟いた。
長い睫毛は月の光でまっすぐ影を伸ばしているようで、俺はその頬に触れたくて触れたくて…だけど、言葉を遮ることはしたくなかったから。
さっきから、まるで夢を見ているような…信じられない光景。胸が不必要に騒ぐ。
俺の部屋に、君がいて…俺の目の前に君がいて…
「昔から…豊かだった…」
話を繋げる。胸のざわめきを抑制したいがため。
「…刹那、それは真実ですか?」
「…わからない…だけど」
故郷である場所よりも、ずっと…ずっと。
「遥か昔にここが戦火で燃えていた過去が…あったと聞きます」
「…」
「…だから、私たちの国も…」
「いつか、きっと…?」
泣きそうになった。目の前にいる人はこんなにも凜としているのに。
「私の…夢です」