07/08/11 17:00:22
一方的な戦況を見詰めるバルドフェルドは、如何にも「面白い物」を見せてもらっていると言う表情を浮かべていた。
バルドフェルド自身、別にレジスタンスを一方的に倒して行く展開が楽しい訳では無い。その「面白い」と思う対象は共同戦線を組んでいる地球軍の事だった。
いや、地球軍の特に狙撃による支援を行っている、νガンダムのパイロット、アムロ・レイが面白いと言えば言いのかもしれない。
先日の戦闘で途轍もないの能力を見せ付けたアムロが、今はレジスタンスを直接狙うのでは無く、明くまでも足止めに徹している様にバルドフェルドには見えた。
しかし今の所は確証は無く、感と言う奴がそれを告げてるのだ。
だが、それだけで停戦協定を不意にする訳にも行かず戦闘を見守っていると、レセップスのブリッジにアムロの声が響いた。
『アンドリュー・バルドフェルド、そちらの機体が突出して来ている。正面への砲撃を中止して、代わりにこちらはストライクを前面に押し出す!』
「……了解した。正面はこちらに任せてもらおう。ストライクは援護と言う事で頼む」
バルドフェルドは一度、肩を竦めて腰に手を当て苦笑いを浮かべて答えた。
この戦闘自体、始まって五分程も経っていないが、数度の砲撃のうち少なくとも一度は、ザフト軍側から打ち出されたミサイルの約半数を撃ち落としている。そして、二度目はミサイルの四分の一だけと言う絶妙に難しい事をやっているのだ。
バルドフェルドは苦笑いが止まらない様子でぼそりと呟く。
「……参ったな。もしかしたら、これは欺かれたのかもしれんなぁ」
「アムロ・レイは面白い事するわね」
「ああ、打ち消したミサイルを全弾を撃ち落とした言う訳でも無いからな、判断に苦しむ。恐らくあそこで戦ってるパイロット達は、連携が合って無い程度としか思って無いだろう」
「しかもこのタイミングで、ストライクの彼を前線に送り込むんですものね」
「三度目があったら見過ごす事が出来なかったが、それを上手い具合に逸らされた感じだ」
アイシャが目を細めて笑みを見せると、バルドフェルドはアムロの技量と判断に感心した様子でモニターへと目を向けた。
モニターには、逃げ回りながらも必死に反撃を試みるレジスタンス達が映し出され、人はどこまで無謀になれるのかと、バルドフェルドはレジスタンス達の行動に改めて呆れ返った。
戦闘の成り行きを見続けるバルドフェルドの顔をアイシャが猫の様に見上げながら覗き込む。
「ねえ、攻撃目標を切り替える?」
「……いいや。あれだけでは、ただの偶然と言われても可笑しく無いからね。それに実際、向こうがレジスタンスに攻撃しているのは事実だ。下手に言い掛かりを付ける訳にも行かないだろう」
「フフフッ、そうね」
バルドフェルドは笑みを浮かべて問いに答えると、アイシャは寄り添うかの様に少しだけ体を近付けると、笑みを湛え窓の外に目を向けた。
「さて、乱戦になって来た以上、僕達は僕達でやらせてもらうとしよう。―残りのレジスタンスの掃討に掛かれ!」
モニターへ目を向けていたバルドフェルドは、アイシャの腰に片手を回すと軽くウインクをしてから、部下達に向かって声を張り上げた。