【相互】種死リリカルなのはSS【乗り入れ】その12at SHAR
【相互】種死リリカルなのはSS【乗り入れ】その12 - 暇つぶし2ch374:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 21:42:01
最終学歴が中卒で自称魔法少女な教官ってどうなのよ

375:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 21:45:11
>>374
学歴よりも魔導師としての才能なんだろう、優先するのはさ


376:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 21:46:05
魔法学校とかあるだろ常識的に考えて
3期は軍隊モノじゃなくて魔法学園モノにすりゃあよかったんだ

377:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 21:46:41
>>376
普通校と魔法学校があるよ。

378:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 21:50:09
>>374
どうでもいいよ

379:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 21:51:52
なのはとかキラとかって嫌いな食べ物とかあるっけ?

380:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 21:57:01
>>379
あったと思うけど忘れた

381:lyrical Seed Destiny
07/07/26 22:08:59
~contact of Destiny~ 4話


1 


「よし、これで最後や」
 各関係部署への報告書をまとめ終え、はやては椅子に寄りかかる。
「今日はいつもにも増して多かったですー」
 机にへたり込むリィン。その姿に苦笑しつつも、静かに同意の意を示す。
 軽く休憩を入れていると、リィンが言う。
「あ、はやてちゃん。そろそろお客様が到着する時間ですよ」
 時計を見ると、到着時刻三十分前だ。相手に失礼がないよう、会議に参加するメンバー
に呼び出しをかける。
 五分ほどの時間が過ぎた後、スターズ、ライトニング分隊の隊長、副隊長たちはそろっ
たのだが、
「シンはどうしたん?」
 四人に尋ねるが、全員首をかしげる。CEからの援軍である彼は形式上六課に所属して
いるが、実際のところ自分たちと行動を共にするのは出撃の時や会議のときぐらいだ。
「出かけるって言う連絡はなかったから、隊舎のどこかにおるはずやな」
 端末を使い、スキャンをかけるとあっさり見つかる。訓練場にいるようだ。
「訓練場? シンの奴、まだそこにいるのかよ」
 あきれた様子でヴィータが言う。確かに朝食後、訓練場に行くといっていたが今は昼前
だ。もしかして朝食後からずっと訓練場にいたのだろうか。
 いったい何をやっているのかと思い、様子を伺う。一際大きいウィンドウが展開し、訓
練場の様子が移る。
 訓練場には大きな真紅の結界が見える。その中心にシンはいるが、何やら妙に疲弊して
いる。
『くそ……やっぱり”デスティニー”が完全じゃない状態だと、体への負担が大きすぎる
な―』
 自分の掌を見て、何やらぶつぶつと呟くシン。不思議に思いつつ、はやてはシンを呼ぶ。
「シン、何しとるの!」
             ・ ・ ・
「……ん? なんだ、はやてか」
 汗をぬぐっているシンは気だるそうにこちらを振り向き、ファーストネームで呼ぶ。
「…今は仕事中や」
「あー、はいはい。すみませんでした八神部隊長」
 反省の感じられない声でシンは言う。
「朝言っとったやろ、今日は昼前に会議をするって。お客さんも来るんやから、さっさと
部隊長室に来てや」
「……ああ、そういえばもうそんな時間か。わかった、シャワー浴びたら、すぐ行く」
「あと二十分弱でお客さんが来るんよ!?」
「待たせても平気だって。お客さんって言っても、どうせルナかアスランだろ」
 結界を消し、隊舎へのろのろと歩きながらシンは言う。怠惰なことこの上ない。
「─ふぅん。なんだかずいぶんと偉そうなことを言うのねぇ、シン」
 訓練場からもう一つの声が聞こえ、見るとシンのすぐ近くに赤のショートヘアの女性の
姿が。

382:lyrical Seed Destiny
07/07/26 22:10:09
「ル、ルナ……」
「訓練お疲れご苦労様。─なんだか私、久しぶりにシンと訓練したい気分になってきた
わ。疲れてるところ悪いけど付き合って」
 にっこりと笑うルナマリアと後ずさるシン。それを見て、はやては頭を抱えた。



 カーテンが閉め切られ、電灯が消され暗室となった会議室。
 円卓には六課の隊長、副隊長にシン。そしてルナマリアの姿がある。
 午前中の訓練の後にルナマリアの強制訓練でシンの体は疲労困憊だ。会議が終わったら
レイの見舞いに行く前にシャマル先生から薬をもらおうと決める。
 今回、彼女がいるのは六課が送っている報告書でCE側から何かの報告があるというら
しいのだ。
 テーブル円卓の中央部に映し出される立体映像には六課の面々が戦った者達が映ってい
る。
 ガジェット、ソキウスと切り替わり、次に映ったのは例の魔導士達だ。
「さて、前回の襲撃後シン・アスカが提出したレポートにありました”ゲシュマイディッ
ヒ・パンツァー”と言う魔法ですが、彼の推測通り、これはCEの魔法です」
 テーブル場に表示されたカーキ色のバリアジャケットを纏う魔導士の立体映像は、なの
はやフェイトの砲撃を逸らしている姿が映っている。 
「この魔法を使う魔導士は魔法自体の特殊性により限られており、そしてこの魔導士は実
はCEの大戦中の記録に残っていたのです」
「じゃあCE出身の魔導士なのか」
 シグナムの言葉に肯定の返事を返すルナマリア。さらに彼女は彼らがブーステッドマン
と言われる連合の特殊パイロットだと説明。
 その説明を聞き、シンは内心で叫びを上げる。
―投薬、特殊訓練、精神強化及び操作された兵士…! それじゃあこいつらはステラと
同じなのか!?
 シンの脳裏に蘇る、守れなかった無邪気な少女の影。海が好きで、天使のように純粋だ
ったステラ。どんなことをしても守りたかった存在―
「しかし彼は5年前―前々大戦のヤキン・ドゥーエ宙域戦において死亡が確認されてい
ます」
「は? なんだよそれ。じゃあ今ここに映ってるこいつは何なんだ?」
 当然の疑問をヴィータが上げる。ルナマリアは後で説明を、と言って話を続ける。
「彼だけではなく、他二人の魔導士も同時期に死亡していると情報があります。この情報
は彼らと交戦し、直接止めを刺した方からの情報なのでほぼ間違いないでしょう」
 そして、と彼女は言い、
「前々大戦、彼らのうち一人―青緑のバリアジャケットを纏う魔導士を倒したのが他な
らぬアスラン・ザラ中将なのです」
「アスランが!?」
「死亡したはずの人間が、どうして今もない生きているのか。それについてははっきりと
わかってはいません。しかし、ある程度の推測は立てられます。
 それは彼らが人造生命体―私達の世界の言葉に言い換えれば、クローンと言うことで
す」
 シンは息を呑む。思わず膝の上にある手が硬く握られる。
―クローンだって? こいつらが、レイと同じ?

383:lyrical Seed Destiny
07/07/26 22:11:27
「ソキウスや彼ら3人の魔導士達を見たザラ中将は当初、今回の事件を裏で操っているの
はCEの出身者であると思っていたそうです。ソキウスも彼らもCEの技術で作られたも
のですから。
 しかしCEのクローン技術はここまで優れていません。ですからこのように考えられま
す。
 一つは生体技術に優れた科学者が何らかの方法で彼らの細胞を手に入れて造り、私兵と
しているか。もう一つはその科学者とCEの元連合の人間が共謀しているかの二点だと。
 そしてその二点のどちらにも共通していることが―」
「CEのロストロギアや「レリック」を狙っとるちゅうことやな」
 はやての言葉に、重々しくルナマリアは頷く。
 シンは机の上に映る魔導士達を複雑な感情で見る。
―こいつらはステラと同じ、連合によって強制された生を与えられた人達……。奴らの
思惑通り戦って死んで、ようやく安らかに眠っていたはずなのに……!!
 総身を震わせるシン。激情を抑えるのが精一杯でルナマリアが何を言っているか分から
ない。
―どうしてこんな真似をする! どうしてこんな事が許される! 人の人生を、命をも
てあそぶような真似を!?
 脳裏に浮かぶステラの最後。そして続いて現れたのはレイが自身の出生を明かしたとき
の表情。
『俺は、クローンだからな』
 淡々と語る親友。かつてはそう見えたあの顔が今になっては怒り、憎み、嘆いて摩耗し
きった表情だったと気付く。
―誰がどんな理由でこんな事をしたのか知らないが絶対に許さない。必ずその罪、償わ
せてやる……!!
 心の中で怒りの種火を燃やし、シンは誓う。今は亡き少女と、苦しむ親友に。





『ねぇギル。ラウは?』
 無邪気に訪ねる幼い自分。だがギルは端正なその表情に悲しみをにじませている。
『ラウは…もう、いない』
 ラウがいない? ギルのたった一人の親友であるラウが? 自分にとってもギルと同じ
ぐらい、大切な彼が?
『だが、君もラウだ』
 唖然とする自分へギルは薬の入ったケースを差し出す。
『それが君の運命なんだよ……』
 そしてギルは語る。ラウと、自分の運命を。そして全てを語り終え、彼は自分に言う。
『いつか必ず……この間違った世界を正そう。もう一人の君が果たせなかったことを、私
達の手で』


「―……っ」
 目を開けると視界に入ったの病室の電灯だ。レイはベットからゆっくりと起き上がる。
「……夢、か」

384:lyrical Seed Destiny
07/07/26 22:12:36
 大きくため息をつき、呟く。眠っていたはずなのに体が鉛のように重い。全身に汗をか
き、入院着がへばりついている。
 幾度か呼吸をすると、疲れを見せていた表情は、いつもの無表情に変わる。そろそろシ
ンか六課の誰かが見舞いに来る時間だ。余計な心配をかけてはいけない。
 戸棚からタオルと下着、新しい入院着を取りだす。汗を拭いて着替え、側にあるコップ
に水を注ぎ、喉に流し込む。
 喉を通る水がいつも以上に体に染み渡る。素直に上手い、と感じ、コップを戸棚に置く。
 ようやく落ち着きを取り戻し、寝る前まで読んでいた魔導書に手を伸ばす。
 10ページほど読む終えると部屋のドアが開き、シン、フェイト、そしてルナマリアの
三名が入ってくる。
「やっほ、レイ。元気してる?」
「元気ならここにはいないな」
「……変わんないわね。その冷淡なリアクション」
 呆れの表情のまま、壁に掛けてあるパイプ椅子を組み立てて座るルナマリア。フェイト
もそれに倣い、何故かシンはぎこちない動きで続く。
「それにしてもルナマリア。今日はどうしたんだ」
「どうしたって、はには?」
「……」
 会話の最中、フェイトのむいた果物を頬張るルナマリア。飲み込むのを待ってから、
「お前がここに来たのは初めてだろう。何か理由があるのかと思ったんだが」
「ないわよそんなの。ただ単に元気にしてるか見に来ただけよ」
 あっけらかんと言う。それからしばしルナマリアがメインでの会話が展開する。好奇心
旺盛に彼女は自分とシンの3年間の出来事やフェイトへのプライベートなことや魔法に関
して、とにかく興味津々に話しかけてくる。答えが返るその都度、感心したり唸ったり、
笑い転げたり、何故か自分とシンを半目で見たりなど、リアクション豊かに反応する。
 3年の月日は外観だけは彼女を大人に変えたが、中身は殆ど変化がないようだ。
「―ってことがあったんですよ。レイはともかくシンの奴、妙にかっこつけるから」
「へ、へぇ。そうなんだ……」
「何捏造してるんだよルナ! そんなことなかったぞ! ってかフェイト、お前も何納得
してるんだ!」
 シンとフェイト。双方のやり取りは自分とのやり取りとそう変わらない。あの日以来、
どうやらシンは六課で上手くやっているようだ。
「ご、ごめん……」
「フェイトを虐めないの。大体捏造だなんて人聞きの悪い。全て掛け値無しの事実よ。ね
ぇレイ?」
 フェイトの頭を撫でながらルナマリアが言う。いつの間にか彼女も六課の面々と仲良く
なっているようだ。
「シン、気にするな。俺は気にしない」
「俺が気にするんだよ!」
 さらに話は続き、ルナマリアとフェイトが楽しげに話しては笑い、対照的にシンは怒っ
たり叫んだりしているが、本気でないそれを皆無する。
「…あ、私そろそろ行くわ」
「帰るのか」
「うん。このあとちょっと会議やら魔法の講義やら色々あるし。あんまり長居できないの
よね。じゃあねレイ。また来るわ」
 立ち上がったルナマリア。それにフェイトとシンが続く。
「あ、ルナマリアさん。下まで送ります」

385:lyrical Seed Destiny
07/07/26 22:13:45
「俺も。トイレのついでに見送るか」
「……シン、あんたそのデリカシーの無さ、何とかした方がいいわよ」
 出ていく三者。それを見送りレイは微笑。
 こういうとりとめのないやり取りが、今のレイにとっては何よりの清涼剤だ。特に今日
はルナマリアがいてくれたおかげで盛り上がった。
 ふと、レイの脳裏にアカデミー自体のやり取りが蘇る。あの時もこんな感じだったな―
―思い返して窓へ目を向けると、戸棚の隅に放置してあるモノを見て、視線が止まる。
 レイのデバイス”レジェンド”だ。数日前、見舞いに来たフェイトから渡されたのだ。
『デバイスの基礎構造は問題ないけど”ドラグーンシステム”を直すのには時間がかかる
って。準備ができるまで返しておくね』
「フェイト・T・ハラオウン……」
 この病院に入院してすでに1月弱、何もせずレイはただ読書に没頭しているわけではな
かった。
 アスラン達の動向、そして機動六課の面々についても独自の方法で調査していたのだ。
 そしてその途中、自分と同じ自然ではない生まれのものがいることをレイは知る。それ
がフェイトだ。
 だが彼女は自分と違い、生まれ以外は何ら普通の人と変わらない。自分のような短い時
間しか生きられない欠陥品とは違う。
 ここに入院し、シン以外で見舞いに来る回数が一番多いのが彼女だ。
―同情? それとも、憐れみか
 知ったときは気になったが、すぐにその問答は捨てた。そんなことを訊ねてしまえば相
手に不快な思いをさせるだろうし、何よりシンの立場を悪くしかねない。
 それにどちらであってもレイは気にしない。気にしないのだから―
 ベットから立ち上がり”レジェンド”を掴むと、戸棚の引き出しへ放り込む。
「もう、俺には必要ない……」
 ここに入院し、検査を受けて分かったことなのだが、クローンであるレイのテロメアが
短いのは元の人物のテロメアが短いと言うこともあるのだが、それ以外にもう一つの理由
が発覚した。
 それは魔力を行使することだ。医師の話によれば自分の場合、魔力の増幅や回復にもテ
ロメアが少なからず関係しており、その度にレイのテロメアは少なくなっていったという。
 ここ数年でさして発作が起きなかったのも、魔力を使用しなかったからだという。
 レイは率直に医師に尋ねた。魔力を使うのと、使わないのとでは、自分は後どれぐらい
生きられるのか、と。
 躊躇しつつも、医師は答えた。魔力を使用し続ければ数年の命、使用しなければ10年
弱だと。
 そうならないよう数日前より特殊な投薬でテロメアをのばそうとしているそうだが、今
のところ効果はないという。

「所詮は歪んだ命。真っ当に生きようなどと思うこと自体、間違いだったのかもしれない
……」
 3年前、あのメサイアでキラ・ヤマトが語った言葉に心を動かされ、自分は最も大切な
人の命を奪った。
 そして死ぬはずだった自分。―だが自分を呼ぶシンの声。それを聞きグラディス艦長
とギルは自分をシンの元へ送ってくれた。
 シンにも、今は亡き二人には感謝してもしきれない。―しかしこうして自身の運命を
知らされると彼らに対して申し訳ない気持ちになる。

386:lyrical Seed Destiny
07/07/26 22:15:05
 精一杯生きようとしてもこの体は常に自分に死が迫ることを教える。こんな体だからた
った一人の親友の力にもなれない不甲斐ない自分。
「俺は……このまま生きていていいのだろうか………」
 ここ数年、常に考えてきたことだ。CEを抜け、シンと共に暮らしても常に発作は起き、
働くシンに対し、自分は家事を手伝うことしかできない。
 そして今回シンが六課に協力することにしても、自分という足枷がなければアスランの
思惑通りに戦うこともなかっただろう。
「すまない……シン」
 友に謝罪したその時だ。体の奥深くが締め付けられる圧迫感を覚える。
「…っ! が、あっ……」
 いつにない強烈な痛み。ナースコールに手を伸ばそうとするが錆びついたブリキ人形の
ように鈍く、ぎこちない。視界はぐらつき、呼吸は速く、短い。
 苦しい、苦しい。感覚全てが苦痛を訴えている。これほどまでの苦しみは感じたことが
ない。胸部を押さえる手のひらが強く食い込み、血を流す。
「ぁ…。…っ……」
 十分か、一時間か。もはや時間の流れさえもはっきりしない時が過ぎ、ようやくナース
コールに手が届き、スイッチを押す。
 しばらくし自分の名前を呼ぶ誰かが慌ただしく病室に入ってくる。しかしレイはそれが
誰かを確認する前に、気を失った。





 黒の帳に覆われた病院。がらがらの駐車場にライトをつけた車が停車する。
 二人乗りのそれから出てきたのははやて、そしてフェイトだ。人気のなく、しかし電灯
のついている病院はどこか不気味な雰囲気を持つ。
 中に入りエレベータに乗る。3階に到着してすぐに右に曲がる。昼間なら大勢の人で賑
わっている憩いの場は電灯が落ち、外からさし込む月の光で僅かに内装が見えるだけだ。
 入り口付近のソファーに手を組み、腰を下ろしている人物を見つけ、はやては声をかけ
る。
「シン……」
 名前を呼ぶが、シンは反応しない。猫背のまま俯くばかりだ。
 別件で隊舎に戻ってきて、はやては昼間に起こった出来事を聞いた。シン、フェイト、
そしてルナマリアの3人がレイの見舞いに行ったところ、レイの容態が急に悪化したのだ
という。
「シン、レイの様子はどうなん?」
 シンは答えない。はやてはシンの肩を叩くと、シンはのろのろと顔を上げる。
「…はやて、か」
 部屋の影に覆われた彼の表情は幽鬼じみた雰囲気を漂わせている。
「シン、レイはどうなったの?」
「……わからない。あれからここでずっと待っているけど、何も連絡がないんだ」
 言って、再び頭を垂れてしまう。
「シン、今日はもう遅いから、帰ろう」
「いや、俺はここにいる」
「でももうこんな時間だし……休まないと今度はシンが倒れちゃうよ」
 すでに時刻は夜の0時時を回っている。後一、二時間でレイが倒れて半日が経過する

387:lyrical Seed Destiny
07/07/26 22:16:23
「シン、帰ろう。ね?」
 肩に手を置くフェイトを、シンは乱暴に手で押しのける。後ろに下がるフェイトをはや
ては慌てて受け止める。
「シン!」
 あまりの態度にはやては思わず声を荒げるが、顔を上げたシンを見て口を噤んでしまう。
 こちらを睨むシンの表情にはいつもの覇気はなく、触れれば砕けてしまいそうな脆さが
あった。
 先程はよく見えなかったが目元はくまができており、真紅の瞳は元の色以外の原因で赤
く染まっている。
「俺は……レイが大丈夫とわかるまで、ここにいる」
「はやて、シンの好きにさせてあげよう」
 立ち上がったフェイトがこちらを見て言う。
「フェイトちゃん!?」
「お願い」
 懇願の口調でフェイトが言う。はやては驚き、しかしすぐに気が付く。
 彼女は見ていたのだろう。苦しむレイと、それを見て取り乱すシンの姿を。
 そういえば―はやては思い出す。過去、なのはが任務中に負傷をして入院していたと
き、ヴィータやフェイトが暇なときがあれば、なのはの病室に泊まり込むことがあった。
 きっとその時の自分の姿をシンに重ね合わせているのだろう。
「……大丈夫とわかるまでやで」
 ため息をつき、はやては言う。フェイトだけではない。はやてとてシンの気持ちは十分
にわかる。
 自分は泊まりこそしなかったものの、暇さえあればなのはの病室を訪れていたのだから。
「さて、と。シン、夕食は……食べとらんよね」
「あ、売店……は、もう開いてないか。それじゃあ近くのマーケットに」
 フェイトが言いかけた先を病院内に響く音が遮る。視線を向ければ白衣を着た壮齢の男
性がいる。レイの主治医だ。
「八神さん、来ていらっしゃったのですか」
 疲れをにじませた声で彼は言う。はやてはレイの容態を尋ねようとするがいつの間に立
ち上がったのか、シンが駆け寄る。
「先生! レイはどうなんだ!?」
 駆け寄るや白衣の襟首を掴むシン。心配していたのは分かるが、やり過ぎだ。
「ちょっ…シン、落ち着き! そんなことしたら先生が話せんやろ!」
 はやては慌てて両者の間に割って入る。襟を正した主治医にはやては謝るが、彼は特に
気を悪くした様子を見せず、
「バレルさんの容態ですが、今のところは安定しています。
―ですか予断を許さない状態ではあります。今日起こった発作も今までにはなかったほ
ど状態が悪かったですし。
 今日の検査でも安定していただけに我々としても今日のような副作用は予想外―」
 淡々と語る彼にシンは掴みかかり「ふざけるなっ!」と罵声を浴びせる。再びはやては
引きはがそうとするが、今度はビクともしない。
 テロメアが短いため、発作に苦しみ、先短い命を持つレイ。解決策としてはテロメアを
長くできればいいのだが、それは非常に困難なことなのだ。
 テロメアに深く関わっているのがテロメラーゼと呼ばれる成分で、これを体内に導入す
ることでテロメアを延長させることが可能だという。しかしミッドの医療技術でもそれは
非常に困難で、成功率が極めて低いのだという。そして外部からテロメラーゼを導入する
ことにより副作用の可能性もある。―これはレイの治療を行う前に説明されていたことだ。

388:lyrical Seed Destiny
07/07/26 22:17:37
 フェイトと二人がかりでようやくシンを引き離す。敵のような目で主治医を見るシンに
彼は、
「申し訳ありません。今のは不適切でした。ただ、今日の発作はもしかしたら良い結果に
結びつくかも知れません」
「どういうことだよ!?」
「過去、テロメラーゼを導入した患者で発作の具合や状況は違いましたが同様の症状が現
れたという記録があるのです。
 そしてその後にテロメアの延長現象が現れたとも」
「じゃあ、レイは、レイのテロメアは―」
 ぱっと明るくなるシンだが、主治医は暗い表情のまま続ける。
「断言はできません。記録はほんの数件。その記録の数倍の量でテロメア延長に失敗した
という記録の方が多いくらいなのですから。
 でも私達はバレルさんの治療に最前の手は尽くします。それだけはお約束します」
 固い声で主治医は言った。





「―それで、保管場所は分かったのかしら」
 クラナガンのとあるバー。薄暗い店内の中には僅かな数の客がおり、店内にはレトロな
音楽が流れている。
 ナンバーズ、ウーノが目の前の男に問うと彼は愉悦の笑みを浮かべ、
「まぁな。特に苦労もしなかったな。次元世界の法の番人と称されているが所詮はどこの
組織とも変わらん。腐った部分はいくらでも見つかるし、見つけやすい」
「それで、いつ実行に移すの」
「まだ決めてはいない。奪うだけなら今すぐにできることだが、それだけでは俺の欲求は
満たせん」
 笑みを濃くし、彼は酒をあおる。
「どうせ奪うのなら管理局に予告して、大勢の局員が守っているところを襲う。警備が厳
しくなればなるほど俺様にとっては最高の楽しみだ」
「クライアントが焦れているわよ」
「知った事じゃあない。俺は何よりも俺の欲求を最優先とする。大体そのクライアントや
ら借りた奴らは役に立っていない。文句を言うのなら己の私兵をもっとマシなレベルにし
ろと伝えておけ」
「私も焦れているのよ。忘れたの? あなたの雇い主は、私ですよ」
 こちらの注意に全く堪えない無神経な男に、ウーノは多少声を強めて言う。
「だったら契約を解除するか? 俺は一向に構わんぞ? お前から解雇されても俺の欲求
を満たせる仕事は探せばいくらでもある」
 ウーノは黙り込む。彼の雇い主は確かに自分だが、雇うよう命令を下したのは己の主だ。
この男を雇うことは、彼にとって何かしらの意味があるのだろう。そう考えると自分の勝
手な判断で止めさせるわけにはいかない。
「……とにかく、早く実行に移しなさい。やり方はあなたの好きにして構わないから」
 言ってウーノは席を立つ。これ以上話していると不快な気持ちを抑えきれなくなる恐れ
があったからだ。
 答えも聞かず、彼女は店を出た。

389:lyrical Seed Destiny
07/07/26 22:18:48
 気が付けば、白一色の世界にレイはいた。四方どこを見ても白だけの世界は虚無感と恐
ろしい孤独を感じさせる。
「なんだ、ここは……」
 何もないその場所に、レイは言いしれぬ不安を覚え歩き出す。景色は違えど、ここはあ
の忌まわしい場所―自分が生まれた研究施設を連想させる。
 自分以外の、生きたものがいない世界―
 気が付けば息が弾むほどに歩いていた。そして目の前に人の影が見えてきたのを確認し
て安堵の息を漏らし、
「……!」
 愕然とその表情が凍りつく。近づいてきた自分に振り向いたその人物は二人。かつて、
いや今もなお自分の大切な人であり、そしてもう二度と会えないはずの人だったからだ。
「やぁレイ」
 黒髪の男、ギルが微笑む。
「君もこっちへ来たのか」
 金髪の男、ラウが同じように微笑む。
「こっち……?」
「後ろを見たまえ」
 言われてレイは振り返ると、いつの間にか自分の真後ろに一本の線と、そして向こう側
にはシンやルナマリア、フェイト達六課の面々がいる。
 ラウの言葉の意味を悟ったレイは、慌てて線を超えようと足を踏み出すが、何故か足に
力が入らず、滑ってしまう。
「な……!?」
 起きあがり、見ればなんと両足が細くなっている。枯れ木のような両足には無数の皺が
見え、それはまるで老人のような足だ。
「レイ、言っただろう? 運命からは、逃れられないと」
 耳元で囁かれるギルの声。かつては自分に安心をもたらしたはずの声が今は恐怖しか感
じさせない。
「そう。レイ、君は私だ。―だから君も私と同じ、道を辿るのだよ」
 囁かれるラウの声に、レイは反射的に叫び返す。
「違う! 俺はあなたじゃない! 俺は―」
「違わない」
 いつの間にか後ろに立っていた二人。重なった声がレイの叫びを冷酷に、無慈悲に、否
定する。
「君はラウだ」
「君は私だ」
 前に出るラウ。その姿を見て、レイは恐怖に凍りつく。
 その姿は最後に見たものとは似てもにつかない、誰とも知らない老人の姿だったからだ。
 いや、違う。この老人は―
「君は、私なんだよ。レイ」
 老人が言い、笑う。レイは背を向けて前に進む。足は動かなかったが、這ってでも彼は
前へ進む。
 恐ろしかった。今もなお心の中にいる二人がたまらなく怖かった。自分の安心と安らぎ
をもたらしてくれるはずの二人が―
「おやおや。レイ、いつから君はそんな聞き分けの悪い子になってしまったんだい?」

390:lyrical Seed Destiny
07/07/26 22:20:08
 小さく笑い、窘めるような口調でギルが言う。その言葉に反射的に何か返そうとするが、
レイは前に進む。
 二人は死んだ。でも俺は違う。生きている、俺はまだ生きている―!
 その思いを一念に前に進むレイ。そしてとうとう白線を越える。すると今まで動かなか
った足に力が入り、レイはシン達の元へ向かう。
「シン!」
 声をかけ、振り向くシン。しかしその表情にはいつもの笑みはなく、
「……誰?」
 見知らぬ誰かに呼ばれた戸惑いとよそよそしさしか感じられない。
 親友の予想もしない態度にレイが愕然としていると、背後からラウの嘲笑うような声が
響く。
「言っただろう? ―君は私だと」
 ふと、下へ視線を向ける。すると白の床には先程のラウの姿が映って―
―いや…違う。これは、これ、は……!
 ラウと寸分変わらぬ自分の姿にレイはへたり込む。周りには誰もいなくなり、体を抱え、
震えるレイの元へ、再びギルとラウの二人が側までやってきて、
「君はラウだ」
「君は、私だ」
 先程と同じ言葉を繰り返す。レイは喉が破けんばかりの絶叫を上げた。


「―っ!」
 目を覚まし、起き上がると周囲は薄暗い闇に覆われている。僅かでも周囲に色の違いが
見えることにレイは安堵する。
 浅く、荒い呼吸を繰り返し今のが夢だと自覚する。しかし体の震えや汗は止まらない。
「うっ…ぐぅ……」
 体を抉るような痛みを感じ、レイは体を縮める。浅く呼吸を繰り返し数分後、痛みが治
まる。
 テロメラーゼ導入による副作用が現れ始めてから連日、今のような悪夢をレイは見てい
た。己を死に誘うような忌まわしく、おぞましい悪夢を。
  内容こそ違えどどの悪夢にもギルとラウの二人が出てきては口にそろえて、言うのだ。
自分はラウだと、運命からは、逃れられないと――
「違う……。俺はレイ・ザ・バレル。ラウ・ル・クルーゼではない……」
 膝を抱え、レイは己の名を呟く。闇の中、悪夢を振り払うかのように、何度も。


5 


 ざわめく食堂。その一角に六課の面々は集まり、朝食を取っている。
 二つのテーブルを使っており、いつもは賑やかに談笑しつつ食べているのだが、片方の
テーブルは話し声は聞こえず、ただ食器がぶつかる音が響くばかりだ。
 沈黙の原因はフェイトの左横に座るシンだ。一週間前のレイの発作以降、発作の回数が
格段に上がりろくに見舞いに行けていない。主治医に詳しい病状を尋ねるも安堵するよう
な言葉が返ってきていないのだ。
 不安定なシンのことを思ってかはやてがレイの容態が分かるまでは任務から外れたらど
うかとも進言したが、シンはそれを拒否。いつも以上に任務に積極的に、精力的に取り組
んでいる。

391:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 22:21:12
なにこのSS?

夏厨の嫌がらせには迷惑させられるなぁ

392:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 22:22:41
死ねよ軍オタ!

393:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 22:26:39
支援

394:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 22:27:31
支援する

395:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 22:27:58
支援だ

396:タイフーン ◆TZ4rJYsZg.
07/07/26 22:29:51
このスレは只今より【軍板】学園島戦争 開始23年目【出張所】となります。

既存の住人は今すぐ退去してください。

397:タイフーン ◆TZ4rJYsZg.
07/07/26 22:31:48
魔法少女(白石学園)とWWⅡ独軍装備学園(稲葉学園)の戦いを描くSS創作及び考察スレです。
世界設定は>>2以降のリンク先にあります。
設定を無視したスレ違いのSS、レス、ニュースコピペの投下は止めてください

必読事項 ↓
1 sage進行でお願いします。
2 SSは要項抜粋の短編、小説型長編のどちらでも可。内容はシリアスでもギャグでも大歓迎です。
3 心無いレスは控えましょう。
  職人方々がやる気を無くし、スレの雰囲気が悪くなります。
4 作者叩きは、禁止。
  何か意見等があれば「○○の部分が、□□のようにおかしい」 「△△のような書き方は気をつけた方がいいと思う」 等、
  言いたいところをできるだけ丁寧に書いてレスして下さい。 より良い作品・スレ作りにご協力下さい。
  「面白い」という意見も、ただ「乙」など一言でも結構ですが、
  「××がよかった」「○に感動した」とか書き込むと、 職人方々にとっては何よりの応援になります。
  荒れそうな議論、突っ込みがあった場合は避難所の考察スレをご使用願います。

  避難所考察スレ
  URLリンク(jbbs.livedoor.jp)

5 荒らしに反応する人も荒らしです。徹底スルーでお願いします。
  反応すると被害が拡大するどころか、削除依頼等が通りにくくなるので注意しましょう。

398:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 22:31:55
何を支援してるのかは知らないが、作者様はGJです

まぁ夏は仕方ないと思って乗り越えてくださいね、皆さん

399:タイフーン ◆TZ4rJYsZg.
07/07/26 22:34:44
>>398
夏厨って嫌ですよねw

●まとめサイト1 (過去ログ倉庫)
URLリンク(typhoons.hp.infoseek.co.jp)
●まとめサイト2(SS及びイラストのまとめ等)
URLリンク(tekumakumayakon.blog49.fc2.com)
●学園島戦争まとめwiki(最新のものです)
URLリンク(www.wikihouse.com)
●避難所
URLリンク(jbbs.livedoor.jp)
●画像掲示板(1.5MBまで可)
URLリンク(8217.teacup.com)

●世界観についてはこちらをご覧下さい。
URLリンク(tekumakumayakon.blog49.fc2.com)
●年表1
URLリンク(tekumakumayakon.blog49.fc2.com)
●年表2
URLリンク(tekumakumayakon.blog49.fc2.com)

●SS執筆などでお困りの際はこちらへ
軍事板常見問題(FAQ こちらもご利用ください)
URLリンク(mltr.free100.tv)
WWⅡ欧州戦FAQ
URLリンク(mltr.e-city.tv)


400:タイフーン ◆TZ4rJYsZg.
07/07/26 22:35:43
FAQ

Q:学園島ってなんですか
A:タイフーン◆TZ4rJYsZg.氏が考案した架空の世界で、他の方も参加しシェアードワールドになっております。
 そこでは島全体が回帰圏となっており、稲葉学園と白石学園の間で戦争が起きています

Q:現実世界との関連はあるのですか
A:現実世界と似た発展をしたものの現実世界とは異なる世界です
 また発展の度合いも現実と異なっており、電子機器関係は現代並ながらその他はWW2レベルの科学水準となっています
 さらに、現実では存在しない「魔法」がこの世界では実在しています

Q:回帰圏ってなんですか
A:その範囲で死亡した人が生き返る魔法結界のことです。学園島はこの回帰圏に覆われているため、この島で死んだ人は必ず生き返ります
ただし、生き返るのに要する時間は一定していない上、長期間掛かることもあるようです

Q:なぜ学生たちは戦うの
A:稲葉・白石共に本土の東西国家がバックについており、回帰圏という特殊環境での限定代理戦争といった意味合いが強いです



401:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 22:37:06
しかし、夏だなぁ
虫の鳴き声がうるさいぜ

402:タイフーン ◆TZ4rJYsZg.
07/07/26 22:37:26
現在、警戒警報発令中
・現在、学園島スレ、自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた等の創作系スレは、age厨と呼称される荒らしによる攻撃を受けております。
・メル欄が【age】となっているのが特徴です(必ずしもそうであるわけではない) 。
・「軍板の総意」もしくは「自治スレの総意」という言葉を使う時もありますが、匿名掲示板の性質上、そんなもの存在しません。
・割れ鳥を使った騙りや、スレと関係ないニュースコピペといった荒らし行為を行う事もあります。
・タイフーン ◆sePHxJrzaM:というコテ はage厨本人であります。


403:タイフーン ◆TZ4rJYsZg.
07/07/26 22:39:13
以上、テンプレ貼り付け終了です。

文句のある方はこちらでどうぞ。
スレリンク(army板)l50

404:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 22:43:39
荒らしは死ねよ

405:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 22:44:20
>>398
投下終了なのかこれ?

406:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 22:45:42
>>401
確かに・・・
まぁ・・・スルーしながら職人様の降臨を待とうぜ。

407:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 22:46:41
ま、マジかよ…続きが気になる

408:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 22:50:18
この屑コテは学園島戦争のスレとここの住民を争わせようとしてるだけだから易い挑発に乗らずに絶対に特攻しないでくれよ
こいつを叩くための場所は最悪板にあるからむかついたらそっちに行け

409:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 22:51:36
既に透明あぼん設定なので何も見えません

410:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 22:54:12
lyrical Seed Destinyをwktkしながら待つことにするか

411:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 22:56:19
とりあえず軍板のスレに嫌がらせしてきたお。


128 名無し三等兵 sage 2007/07/26(木) 22:48:47 ID:???
痛い妄想で盛り上がっている奴らがいるなぁ
中学生までならいいけど
二十歳過ぎが混じっていたら黄色い救急車呼ばないといけないな

412:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 22:57:29
いちいち報告すんなよカス

413:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 22:59:30
>>412
>>411が既にスルーの対象だから気にするな

414:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 23:00:29
>>409
そういやレス番飛んでるな
来たのはどっちだ? 
まぁどっちでも良いがコテ外すなよ

415:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 23:01:24
>>411も自演だろ?このスレには特攻かますような屑はいねーよ

416:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 23:01:39
>>411
乙です。

軍事板の奴らは少し頭を冷やした方がいいですね。

417:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 23:02:01
暫定的に避難所作成
URLリンク(jbbs.livedoor.jp)

418:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 23:04:01
>>415
なのはさんが俺たちを守ってくれてるしな!

419:名無し三等兵
07/07/26 23:09:10
>>415
屑はお前だろ。

種厨の分際で軍事板に楯突くな。
生意気なんだよ!

420:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 23:11:09
lyrical Seed Destinyはもう投下終了なのか?
そうならそうと言ってくれるとありがたいんだが

421:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 23:14:16
>>420
少なくとも連投規制にはかかってると思う

422:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 23:14:21
>>420
よくわからんがそうらしい。

423:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 23:14:51
うへ、まだ解除されてないのかな……
くっそ、続き気になる

424:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 23:14:51
>>420

>>367みろ

425:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 23:15:53
なんというww
これが孔明の罠かww

426:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 23:17:05
>>420
もし続きがあったとしても
この雰囲気じゃ投下できないと思う。

427:lyrical Seed Destiny
07/07/26 23:18:03
 しかしフェイトはそんな姿に不安を覚える。無理をしているのが、見え見えだからだ。
「ごちそうさま」
 箸を置き、手を合わせシンは席を立つ。
「シン、午後はあいてるんだよね。だったら一緒に病院に行かない?」
「……ああ、そうだな」
 元気のない声で返事を返して、シンは食器を片付けに行く。
「元気ねーな。シンの奴」
「無理もないだろう。一週間も友と会っておらず、その容態も知れないのだ。
 シャマルは何か聞いていないのか」
「聞いてはいるけど…多分、シン君が聞いてることとおなじことよ」
「早く元気になってほしいです……」
「そうやね」
 隣のテーブルに座る八神家の皆も去っていくシンの姿を心配そうに見つめている。
 フェイトとしてはシンが心配なのは当然だが、レイの方も気がかりだ。ルナマリアを見
送って病室に戻ってきたときに見たレイの苦しみようは尋常ではなかった。
 アレがほぼ毎日起きていると言うのだ。レイは大丈夫なのだろうか……
 朝食後、いつものように雑務や訓練をすませると昼時に。シンを連れてフェイトは病院
へ向かう。
 面会の手続きを取り、まずは主治医の元へ向かう。レイの容態と現在面会謝絶となって
いるレイへの面会許可を取るためだ。
 主治医からレイの状態を訊いた―やはり昨日と変化はなかった―後、フェイトが面
会を頼む。
「面会ですか」
「はい。……今日も無理ですか」
 元気のないシンを見て、主治医は柔らかく微笑む。
「いえ、今日は容態も安定していますし問題はありません。ただ時間の方は短いですけれ
ど……」
「ありがとうございます!」
 立ち上がり、両手を握るシン。あまりの変わりように主治医は驚き、しかしすぐに微笑
を零すと、病室まで案内してくれる。
 シンの嬉しさ一杯の表情にフェイトも微笑み、またレイに会えることに安堵する。
「……シン。それにハラオウン隊長か」
 病室に入り、レイを見て、フェイトは絶句する。レイの無表情には強い焦燥の色が見え、
発した声にも以前にはなかった堅さと乾きが感じられる。
 そして何より、こちらを見る視線が鋭く、冷たい。まるで憎むべき相手を見るような―
 しかしシンはそんな彼の様子に気が付かないのか歓喜一杯の表情で駆け寄り、レイに話
しかけている。
「よかった、レイ。心配したんだぜ」
「そうか」
「ゴメン。俺、レイが苦しんでいるのに何の力にもなれなくて……」
「気にするな」
「顔色はちょっと悪いけど……でもまぁこれから回復していくさ」
「ああ」
 シンの言葉に淡々と応じる彼の姿を見て、フェイトはさらに不安を感じる。


428:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 23:18:59
今度こそ支援

429:lyrical Seed Destiny
07/07/26 23:19:12
 一見いつもと同じに見えるが、彼らをよく知る人物から見れば明らかに雰囲気が違う。
 レイの応答には情の欠片も感じられない。まるで機械が受け答えしているかのようだ。
「テロメラーゼがちゃんと定着するのには時間がかかるらしいけど、きっともうすぐち
ゃんと定着するさ」
 明るくシンがそう言い放ったときだ。レイの表情に変化が見られる。歪みと憤怒という
変化が。
「簡単に言ってくれるな」
 嘲笑を浮かべ、レイは言い放つ。シンの表情が凍りつく。
「仮にテロメラーゼが導入したとしても寿命が延びるとは限らない。むしろさらに短命に
なる恐れだってある」
「そ、それは……」
「それを知っていながらシン、よくもまぁそんな希望的な観測ばかりできるものだ。お前
のその短絡的思考が羨ましいな」
 親友からの、予想もしない言葉にシンの面が蒼白となる。
 シン同様レイの豹変に驚きつつも、いきなりの罵詈雑言にたまらずフェイトは前に出る
が、
「レイ! そんな言い方はないでしょう…! シンがどれだけあなたのことを」
「心配していたと? 心配されても俺の苦痛や苦しみはなくならない」
 突き刺すような眼光を放ち、レイはこちらを見る。
「気持ちだけで何とかなるのでしたら誰も苦労はしない。苦しみも悲しみもこの世に有り
はしない」
 強い憎悪の念が籠もった言葉にフェイトは言葉を失う。
 突然向けられた憎しみに、フェイトが戸惑っていると、
「お前にはわからないだろう。俺の恐怖や苦しみなど。―俺と違い完璧なクローンであ
るフェイト・T・ハラオウン、お前には……!」
 放たれた言葉にフェイトの思考は停止してしまう。何故、それを知っているの、と言う
疑問に脳裏が埋め尽くされる。
「完璧なクローン……? フェイト?」
 唖然としたシンの声にフェイトははっとなる。
 シンは説明を求めるような表情で自分を見ている。説明するべきかどうかを考えるが、
すぐにその考えを振り払う。
 今はそんなことをしている場合ではない。原因はよく分からないがレイの様子がおかし
い。一体何があったのか、訊かねば―
「…ぐぅっ!?」
 そう思ったとき、レイは胸元を押さえる。以前見たとき以上の苦痛の表情に、
「レイ、レイ! しっかりしろ、レイ!」
 シンは駆け寄り彼の背中をさすったり、呼びかける。そんなシンをレイは鬱陶しげに手
で払い、
「構うなっ…!」
 言って、さらなる苦痛の呻きを漏らし、身を縮める。
 数分後、ナースコールでフェイトが主治医と看護師達を呼び、処置を始める。
 二人は閉め出され、しばし廊下で立ち尽くす。
 一体何があったのだろう。あのようなことを言い出すなど、彼らしくない。フェイトの
知っているレイは無口で感情を表に出さないが、シン同様強い意志を持つ、友達思いの青
年だ。
 それが一体何故あんな心にもないことをシンにぶつけたのだろう―

430:lyrical Seed Destiny
07/07/26 23:19:47
また連投規制に引っかかりました、支援頼みます

431:lyrical Seed Destiny
07/07/26 23:20:17
 シンを見ると、彼は病室の扉に顔を向けたまま動かない。声をかけようとしたところで
彼は呟く。
「……最低だな、俺。レイがどんな気持ちかも考えず、自分勝手に喋って、怒らせて、傷
つけた」
「シン、それは」
「メサイア攻防戦の時―俺はレイを助けた。その時からレイがクローンであることも知
ってたし、先短い命だって事もレイから聞いてた。
 でも俺はレイを助けた。―死なせたくなかったから。寿命が短かろうが、何だろうが、
少しでも長く生きていてほしかったから」
 彼は左腕を押さえながら唐突に語り出す。話の内容から察するに、おそらくCEでの前
大戦のことなのだろう。
「でも俺は知っていたんだ。レイがあの時、議長と一緒に死にたいと思っていたことを。
 時折、レイはうなされてるんだ。そしていつも最後に議長に謝ってるんだ。『一緒にい
られなくて、ごめんなさい』って……」
 フェイトは絶句する。それはフェイトにも経験のあることだからだ。
 プレシア・テスタロッサ。目の前で母が虚数空間に消えゆくのを見た彼女はしばらくの
間、夢の中に母が出てきて、そしてその度にフェイトは母に謝っていた。
 そしてそれを側で訊いていたアルフが「フェイトは悪くない。謝る必要なんて無いんだ」
と慰めてくれていた。
「俺はレイを助けたい一念で助けたけど、もしかしたらそれはレイのためじゃなくて、俺
のためだったのかもしれない。……俺が一人になるのが怖くて。俺がレイを失いたくなく
て。俺の身勝手でレイと議長を引き離してしまった」
 シンの総身が震え出す。握りしめている両の拳からは血が垂れている。
「レイは俺のことを恨んでいるのかもしれないな。議長から引き離した俺を。
 レイのことを本当に考えているのなら、あの時俺は―」

「シン!」
 フェイトはシンの方をこちらに引き寄せる。泣き崩れかけている表情のシンを真っ直ぐ
に見つめ、言う。
「レイはあなたのこと恨んでなんかいないよ。あなたと同じで誰よりもシンのことを大切
な友達だと思っているし、生きたいと強く願ってる」
 そう、フェイトは知っている。レイが誰よりもシンを大切に思っているのかを。
 シンが六課に所属して数日経った頃のことだ。フェイトはレイを見舞った。シンと共に
アスランから預かっている身としては彼がどんな人か知る必要もあったからだ。
 病室を訪れた自分にレイは微塵も表情を動かさず淡々と話し、または返事を返す。初対
面の時に感じた、何を考えているのか分からない人物と言う人物像が定着し始めたときだ
った。
『俺の出生についてシンから聞いているのでしょう。難しいとは思いますが何らかの対処
法を見つけてくれることを、願っています』
 そう言う言葉からは紛れもない、強い生への執着と渇望が感じられた。初めてレイの、
感情の入った言葉を聞けたのがこの時だ。さらに彼は続けて、
『シンは六課で上手くやれていますか』
 その質問に、一瞬フェイトは答えに詰まった。しかしそれに気付かれぬようすぐ何とか
上手くやっていると答えたのだが、
『やはり上手くやれていないようですね』
 そう告げてレイはさらにこう言った。

432:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 23:20:22
支援!

433:lyrical Seed Destiny
07/07/26 23:21:37
『多少は問題のある奴ですが、あいつのことをよろしくお願いします』
 頭まで下げる彼にフェイトは慌てた。何故あっても間もない自分にそんなことを言うの
かと。
 レイは初めて笑って、
『アスランのふざけた命令にあなた達は従っている。それにシンが話すあなた方への印象
や俺に対しての態度を見れば、あなた達が正真正銘のお人好しということぐらい容易に想
像がつく』
 褒めているんだか、けなしているんだかわからない台詞をレイは言い、最後にこう付け
加える。
『ただし、何かしらあいつを傷つけたときは覚悟してもらう』
 声質は変わらなかったが、僅かに眉を潜めた怒りの表情をレイはしていた。それだけで
彼が本気だと言うことは十分に分かった。もしシンに自分達が何かあれば、彼は何の躊躇
もなく自分達に、その代償を払わせるだろうと―
 そこまで友を思えるレイにシンと同じようにフェイトは羨望と深い共感を感じ、そして
彼もまた自分達やシンと同様、他者のために頑張れる人なのだと、確信した。
「レイは自分の苦しみと闘っている。今は負けそうになっているのかもしれない。こんな
時にこそ、シンや私達が支えてあげなきゃ」
「……ああ。そうだな」
 シンは僅かに力を感じられる笑みを見せた。





 スクリーンに映っているのはエルセア市内のマップだ。その中央に表示されている公道
を進む赤い点―ロストロギアを搬送している車両―が見える。
「搬送車、今のところ異常ありません」
「公道及び建造物周辺200m以内にも異常ありません」
 108陸士部隊のオペレータからの報告を受けて、はやては「警戒を怠らないよう注意
して」と指示を放つ。
 今、はやてがいるここは108陸士部隊隊舎の第二作戦司令部だ。六課の作戦時にはこ
こを使用している。
 一定の時間が立ち、幾度か同様の報告が帰ってくる。それを聞き隣に発つシグナムが呟
く。
「今回は来ないのでしょうか」
「だと、ええんやけど……」
 今回のロストロギアの搬送の護衛の任に当たっているのはシンとフェイトだ。隊舎に帰
ってきたとき元気のないシンを見て、レイと面会できなかったのかと訊いてみたが面会は
したという。
 しかしシンは朝よりも元気がなく、またフェイトも少しばかり何か悩んでいるような素
振りを見せていた。とりあえず業務が終わった後話でもしてみようかと思っていたとき、
前回襲撃にあった保管庫の責任者からロストロギアを別の私設に搬送するので護衛を頼む
という依頼が舞い込んできた。

 はやては元気のない二人ではなく、シグナムとヴィータに行かせようとしたのだが話を
聞いたシンは何故か自分が行くと頑として言い張り、さらにフェイトもシンに付き合うと
言ってきたのだ。
 異様な迫力を放つシンにはやては折れ、搬送の護衛の任を任せたのだが―

434:lyrical Seed Destiny
07/07/26 23:22:44
「何が、あったんやろ」
 誰にも聞こえない声で、ぽつりと呟く。
 フェイトもシンも、何やら様子がおかしかった。シンは間違いなくレイ絡みだろうが、
フェイトの方は何が原因なのか、わからない。
―なのはちゃんがいれば、何か聞き出せたかもしれへんなぁ
 昨日からなのはは教導隊の方に呼ばれ、不在なのだ。
 シンやフェイト、なのはが早く帰ってこないだろうか、などと考えているはやてに、オ
ペレーターからの報告が飛び込んでくる。
 内容は先程と同じだが、二度呼ばれていたようだ。集中を欠いていた自分を叱咤する。
―二人のことは、今は後や。任務に集中せえへんと
 気合いを入れ直し、モニターを見る。赤い光点は先程と変わらず公道を進み、
「え?」
 突然、消えてしまった。そして次の瞬間、悲鳴じみた報告が聞こえてくる。
「車両、攻撃を受けましたっ!」


「く……」
 チカチカする視界とふらつく体。理由は分からないが危険を感じたシンは、”デスティ
ニー”を機動。トリコロールの騎士甲冑をまとい、自分の右頬を殴りつけて無理矢理意識
をはっきりさせる。
 つい先程まで輸送者の中にフェイトと二人でいたはずだ。しかし突然何かの衝撃が来た
かと思った次の瞬間、何故か自分は道路に投げ出されていた。 
「なんなんだ。今のは……フェイト?」
 周囲には大破したトラックと、かがり火のような小さな炎が公道を燃やしている。
 自分のすぐ近くにバリアジャケットを着たフェイトが倒れている。慌てて抱き起こし、
声をかける。
「おい、大丈夫か!?」
 声をかけると、フェイトは朦朧とした表情を見せる。まだ意識がはっきりしていないよ
うだ。
「…あ、シン。今のは、一体……?」
「……俺にもわからない。ただ……」
 フェイトに視線を向けつつ、シンは周囲に気配を向ける。
 すると感じられた気配は三つ。その内二つは転倒しているトラック内から感じられた。これはトラックの運転手たちだろう。
「攻撃を受けたことは、間違いない」
 そして残る一つ。それは自分達の真上から感じられる。巨大な魔力と、肌をざわつかせ
る殺気と共に。
 視界を上に向けると、そこには奇妙な文様を顔に刻んだ男がいる。
 一目見て、その男が普通でないということと、非常に危険であるとシンは悟った。
 藍紫の騎士甲冑を身にまとうその男は狂気そのものと言った表情で自分達を見下ろして
いる。何より彼が放つ威圧感、そしてまとわりつく空気からは濃厚な血と死の気配を感じ
させている。
 フェイトも男の異様な存在を感じたのか、”バルディッシュ”を構え、上を見上げる。
「ほう、今の一撃を受けてもう立ち上がるか」
 笑みを濃くして、男が言う。
「そうこなくては面白くない。あっさり殺せても、それはそれで面白みがないからな」
 男の視線が横に動く。その先には転倒したトラックがある。

435:lyrical Seed Destiny
07/07/26 23:24:00
 ぎょろっと男の目が動いたのを見て、反射的にシンとフェイトは動き、トラックの前へ。
その直後、男から放たれる射撃魔法を二人は防ぐ。
「…っ、何するんだ!」
「そいつらは前菜だ。お前達というメインディッシュをいただく前のな」
「前菜……メインディッシュだと?」
「そうだ。そこのムシケラ達の命はお前達に比べれば、それだけの価値しかないと言うこ
とだ。とてもではないが俺の腹を満たすことなど、できはしない。
 殺しという俺の飢えを、な」
 平然と殺人を語る男にシンは愕然し、激怒する。
「人の命に勝手に価値をつけるだと…! 何様だあんた!」
「あなたは人の命をなんだと思っているんですか!」
 シンと同様にフェイトも激しく激昂。鎌形態だったバルディッシュが薬莢を吐き出し、
”エクスカリバー”のような大剣へと姿を変える。
「ひ・と・の・い・の・ち・ぃ・~? 決まっているだろう。大切なものだ、尊ぶべきも
のだ」
 目を見開き、気味が悪いほどに口を歪ませて、男は叫ぶ。
「全ての命は、この俺に娯楽を与えるためにある! 殺しという娯楽をなっ!!」
 叫びと同時に両手を広げる男。その中心には浮かぶ魔法陣からは砲撃魔法が放たれる。
 咄嗟にシンは前に出て防御魔法を展開。全身に重圧がのしかかるような砲撃魔法を食い
止めながらシンは叫ぶ。
「フェイト、運転手さん達を安全な場所まで連れていけ! この男は俺が倒す!」
「…気をつけて! すぐに戻ってくるから!」
 フェイトが現場から離脱したのを察すると、砲撃魔法を反らし、シンは男に向かってい
く。
 ”ウァジュラサーベル”を男の胴へ薙ぐがあっさりとかわされ、宙で一回転した男の魔
力刃つきのかかと落としを返される。
 反射的に受け止めて、弾くと同時男から距離を置く。
「ほぅ、よく受けたな!」
 嬉々とした表情で男は四肢に魔力刃を精製させ、攻撃を繰り出してくる。一見出鱈目に
見えるその動きは非常に正確で、時折トリッキーに変化してシンに襲いかかる。
 負けじとシンも”ヴァジュラサーベル”で斬りかかり、またはインパルスシューターを
放ち、攻撃するも、男は高笑いしながら悠々とかわしては弾き、反撃を返してくる。
―こいつ……強い!
 攻撃、防御の動きの鋭さもさることながら、フォースモードであるシンの動きに余裕を
見せてついていっている。このまま戦っていても決定的ダメージを与えられる可能性は低
い。
 なら―
「ははっ! どうした、その程度かぁ!?」
 男が放つ砲撃魔法を回避して、シンは加速。迫る最中フォースモードからソードモード
へ変更。”エクスカリバー”を連結させて斬りかかるが、
「そんな大振りが当たるかぁ!!」
 斬撃は虚しく空を斬り、男の反撃を食らう。致命傷はないものの、体に傷を負いつつも
シンは男に向かっていき、そしてまた攻撃がかわされる。
 それらを繰り返すシンに次第に男の表情が変化していく。
「そろそろお前の相手は飽きた。…死ねっ!」
 ゴミを見るような目つきで男は叫び、砲撃を放つ。攻撃を受け続け、動きが鈍っていた
シンはかわせず、それを受け止め、後方へ吹っ飛ばされる。

436:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 23:24:58
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437:通常の名無しさんの3倍
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438:lyrical Seed Destiny
07/07/26 23:26:07
 止めを刺そうと追ってくる男。体に感じる激痛を無視してシンは左の”エクスカリバー
”をビームブーメランに変化させ、投げつける。
『フラッシュ・エッジ』
「下らん小細工を!!」
 投げつけたブーメランを男はあっさりと弾き、さらに迫る。さらにはインパルスシュー
ターを放つも、これらも同様にかわされ、弾かれる。
「これで終わりだぁ!」
 至近の、かわせない距離まで近づき男が砲撃を放とうとする。それを見てシンはまずシ
ューターに命令を下す。
<ターン!>
 弾かれたシューターはシンからの命令を受け、背後から男に遅いかかかる。それに気が
付き男はかわすが、その時シンはそれを見ず、空中を浮遊している”フラッシュ・エッジ
”にシューターと同じ命令を出すと同時、”エクスカリバー”に薬莢を吐き出させる。
 目の前の男は狂っているが、強い。現状では勝ち目は薄い相手だと言うことはすぐに分
かった。
 だが―勝ち目がないというわけではない。
 シンは騎士甲冑を赤、青、白に戻し、”エクスカリバー”を構えて男に迫る。”フラッ
シュ・エッジ”を再び弾いた男はこちらを向き、
「何ぃ!?」
 ”エクスカリバー”を振り上げたシンを見て、驚愕の叫びを上げる。この距離では防御
魔法も、回避も間に合わない。
『エクスカリバー』
 真紅の大剣が男を袈裟斬りに切り裂き、爆発。確かな手応えをシンは感じ、しかしさら
なる追い打ちを放つ。
 ”エクスカリバー”を消してシンの騎士甲冑が暗緑に変化。手に握ったジャベリンを腰
に構えて男へ突撃。
「貴様…!」
 血まみれながらも男は激怒の表情を見せる。突き出したシンのジャベリンを防御魔法で
受け止める。
 藍紫のシールドと真紅の穂先がぶつかり合い、火花を散らす。ぶつかり合う中、シンの
ジャベリンが藍紫のシールドを貫通する。
 しかしほんの僅か―親指程度しか貫通しない。そのことに男は愉悦と殺戮の混じった
笑みを見せて反撃の気配を見せるが、
『ケルベロス』
 ジャベリンが薬莢を吐き出すとシールドに突き入れた穂先の前に二つの真紅の魔法陣が
展開し、砲撃が放たれた。一瞬男の驚愕の表情が見え、しかしすぐ砲撃によって生まれた
爆発が隠す。
 砲撃の衝撃でシンは後退。男も打ち付けるような轟音と共に公道に激突する。
「ふぅ……」
 ため息をつき、シンはゆっくりと降下する。今頃になって体の各部が痛み出した上、疲
労が一気に体におぶさってくる。
 ”エクスカリバー”に”ケルベロス”。今のシンに使用できる魔法の中でも最大クラス
の魔法を連続で使用したのだ。無理もない。
 一瞬の気のゆるみをすぐに押さえ、シンは男が激突した公道に視線を向ける。
 公道はものの見事に陥没しており、男は公道の破壊によって生まれた瓦礫の下敷きにな
ったのか、姿は見えない。

439:lyrical Seed Destiny
07/07/26 23:27:33
 しかしシンは油断していない。あれほどの使い手がこの程度で死ぬとは思えない。だか
らこそあえて殺傷設定で攻撃したのだ。確実に身動きを取れなくするために。
 着地すると同時、一部の瓦礫が吹き飛び、男が姿を見せる。しかし騎士甲冑の所々は破
損しており、傷だらけ、血まみれだ。
「ここまでだな。大人しくしてもらうぜ」
 告げるシンに、男は狂った眼差しを向け―唐突に笑い出した。
「はははははははははははははははは! はははっ、はーっはっはっは!」
 奇っ怪な笑い声にシンはぎょっとなる。何かまた仕掛けてくるのかと思ったシンはバイ
ンドで拘束しようとするが、シンの手が止まる。
「……な、何…!?」
 傷だらけと血まみれで天を仰ぎながら、笑い続ける男。しかし驚いたのはその姿ではな
く、男の体から流れている血が止まり、傷がふさがり、騎士甲冑が復元していくその姿だ。
 瞬く間に完治した男。先程と同じ狂気の笑みを見せて、男は叫ぶ。
「なかなかいい攻撃だったが、その程度では俺は倒せん。このアッシュ・グレイ様と”リ
ジェネレイト”はなぁ!!」
 叫びと同時、砲撃魔法がシンに向かって放たれる。回避と同時、”ケルベロス”を放つ
もあっさり避けられ上空へ。
「なんなんだ、あいつは…!?」
 男―アッシュ・グレイはつい先程まで相当な怪我を負っていた。気の入れようで無視
できるレベルのものではない。
 完治した姿が一瞬幻覚類の魔法かとも思ったが、それを男の動きが否定する。殺戮の悦
びをその面に浮かべ、アッシュは先程のように攻撃を放ってくる。
 見間違いでも、幻覚でもなく、間違いなく男の傷は治っている―そう判断せざるを得
ない。
「はははははっ!」
 笑い声と共に射撃魔法が放たれる。シンのインパルスシューターと同じ大きさのそれは
速さの威力も明らかに上だ。シンはフォースモードにチェンジ。回避に徹し、今現状で分
かること、できることを踏まえ、策を考える。
 アッシュ・グレイは狂っているが、優秀な魔導士であることは間違いない。それは今ま
での戦闘が証明しているし、保有する魔力量もかなりのものだ。
―怪我が治った後、ごっそりと奴の魔力が減っている。どうやら無限に回復するわけじ
ゃない
 牽制のシューターを放ち、シンはエルセアの夜空を飛び回る。
―魔力を多量に消費し、しかも重傷と言える怪我を瞬時に治す魔法だ。おそらくはデバ
イス依存型の魔法…
 強力で、効果の高い魔法ほど、時間や複雑な術式、詠唱を必要とする。あれだけ高レベ
ルの回復術にそれが全くないとなるとデバイス依存型としか、考えられない。
 もっとも、シンは例外たる手段を知ってはいるのだが―彼がその手段を用いることこ
そ、まさしくあり得ない。あれが使えるのはシンが知る限りでは自分を含めてたったの四
人のはずだ。
「逃げてばかりかぁ! さっきの勢いはどうしたぁ!?」
―となると、デバイスを破壊すればいいだけだが……それも無理だ
 アッシュの速さは今のシンには捕えきれるものではない。”デスティニー”が完全に機
能を回復しているか、シンの魔力が満タンならば話は別だが。
「と言うことは…あいつの魔力を使い切らせるしか手は無いというわけか!」
 射撃魔法を回避して、シンは”エクスカリバー”を右手に出現させる。
 放たれる魔法を回避して、シンは斬り込む。間合いに捕え、斬撃を繰り出すもあっさり
上に回り込まれる。

440:lyrical Seed Destiny
07/07/26 23:28:44
 振り下ろされる攻撃を、シンは回避し、反撃の斬撃を返す。
「…っ、やるなぁ!」
 元々スピードや反射神経がシンはずば抜けている。アッシュの速さはシンを上回ってい
るがこう長時間戦い続けていればそのスピードにも慣れてくるというものだ。
 振り上げた斬撃を回避し、アッシュは離れると同時に砲撃を放つ。シンは回避、そして
すぐに接近し右手に”エクスカリバー”、左手には”ヴァジュラサーベル”を持って斬り
かかる。
 ぶつかり合う真紅と藍紫の光。さらにそこへ黄金の光が襲来する。
「シン!」
 運転手達を安全な場所まで避難させたのか、フェイトが帰ってくる。アッシュと間合い
を離し、念話で現状を伝える。
 彼女から近くの病院―なんと、レイの入院している病院に運転手達を運んだ―に連
れていったと伝えられ、シンは一瞬昼間の出来事を思い出すも、すぐに頭から振り払い、
<同時に斬りかかるぞ。俺は前から、フェイトは左右や背後から頼む!>
<わかった!>
 返事と同時に二人は飛び出す。フェイトが―アッシュから言えばメインディッシュ―
―が戻ってきたのが嬉しいのかアッシュは狂喜と狂気の笑いを上げて向かってくる。
 雷の魔力変換資質を持つフェイトは、まさしくその稲妻のような鋭く速い。フォースモ
ードの自分と同等か、それ以上にも見える。
 攻撃も腕力で押すシンとは対照的で速さや女性特有の柔らかい動きを最大限に生かした
さばきぶりだ。フェイトが加わったことにより押されっぱなしだった状況が互角以上の展
開へと傾いていく。
「ちぃっ…このクソどもがぁッ!」
 この苦戦を予想もしていなかったのか苛立ちの表情でアッシュは砲撃を放つ。だが二人
はあっさり回避し、シンはインパルスシューターを。遅れてフェイトがプラズマスマッシ
ャーを放つ。
 それらを回避し、アッシュは舌打ち。
「ふん……気に入らんがあの人形共を使わせてもらうか」
 何やら呟き、彼は右手の指を鳴らす。すると後方より何やら光が接近してくる。
 いや、違う。あれは―!
「砲撃魔法! でも……」
「俺たちを狙ったものじゃない!?」
 はるか後方より放たれた幾つもの光はなんとアッシュの背中に激突する。
 六課の誰かか、近隣の部隊の援護だろうか―そう思ったシンだが、アッシュを見て、
愕然と呟く。
「砲撃魔法を…受け止めている!?」
 砲撃魔法を受けたはずのアッシュは何故か微動だにせず、宙に佇んでいる。そして彼の
足下に浮かぶ藍紫の三角魔法陣。
『ライトクラフト・プロバルジョン』
 アッシュのデバイスが言葉を紡いだと同時、シンの横を何かが通り過ぎていった。
 慌ててそちらへ振り向けば何故かそこにいたはずのフェイトの姿が無い。―そして自
分に迫る藍紫の光。
 回避しなければ―そう思った瞬間、藍紫の光―アッシュの放つ蹴りが腹部に命中し、
シンを吹き飛ばした。

441:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 23:29:41
支援

442:lyrical Seed Destiny
07/07/26 23:29:58



 何かの振動を感じ、レイは目を覚ました。自分の体が倍以上の重力に覆われたかのよう
に、酷く重い。
 病院内のあちこちが騒がしくなる。いや、もうなっていたようだ。ただ今崎ほど感じた
衝撃にさらに喧噪が大きくなっているようだ。廊下からは医者や看護師達、患者の声が上
がっては消えているのが聞こえてくる。
 そんな騒ぎをレイは黙殺して薄暗い闇の中、現状を確認する。
「夜か……。ということは、あの後から俺はずっと眠っていたのか」
 眠る直前の光景を思い出し、レイは沈痛な表情となる。脳裏に浮かぶのは愕然としたフ
ェイトと、泣き出しそうなシンの顔―
「俺は……なんてことを…………」
 副作用が苦しかった。悪夢を見て怯えていた。自分の苦しみを知らず、無邪気に喜ぶ姿
を見て苛立った。などは理由にならない。自分の容態を心配してくれていた友人に対し、
最悪の対応をしてしまい、さらには恩人が抱え持つ秘密をばらしてしまった。
「俺は、こんなにも愚かだったのか……? 醜かったのか…?」
 己の行いを省みて、レイは強い悔恨の念を覚えると同時、思ってもみなかった己へ愚か
さ、醜さを知り、愕然とする。
 そもそも、自分にこんな一面が会ったこと自体、予想もしなかったことだ。思い、しか
しレイは気付く。CEにいたときにはそのような思いで常に行動していたことを。
 自分はシンに苛立ちをぶつけた後、心のどこかですっきりしていた。フェイトの秘密を
らし、愕然とした彼女の表情を見て内心で嗤っていた。
「俺は…………」
 許されない。呪われた生を受けた自分はどんな所業さえも罪深い。
 考えてみれば、今までの自分は大切な人達に対し、何をしてきたのだろう? 感謝され
るようなことは何一つしてこず、周りに害になるようなことばかり振りまいてきた。この
3年間も、戦争の時も。
 シンに対しても、そうだ。戦争時は彼の思いを利用して操り、ただ戦うための兵器とし
ようとした。そしてこの3年間も、自分の体のことで常に迷惑をかけていた。
 もはや生きる価値など、いや―最初からそんな価値などなかったのだ。だというのに
死を恐れて、必死に生にしがみつき己の命に価値を見出そうとするとは。無意味かつ、害
悪だ。
 レイはベットから起き上がり、戸棚から”レジェンド”を取り出す。
「この体でどこまでいけるかわからないが……」
 もはや今の自分にできることはこの呪われた生を誰もいない場所で終わらせることだけ
だ。誰にも迷惑を変えず、誰もいない所で、ひっそりと。
 自分が死ねば、シンはアスランの命令からも開放される。六課の新しい友人達とも仲良
くやっていけるだろう。自分という呪縛からシンは解き放たれて、自由になれる。
 友人のそんな姿を想像し、レイは一瞬幸せな気持ちに浸り、すぐに消す。そんなことを
夢想することさえも自分には資格がない―
 病院内は騒がしい。この状況では自分がいなくなっても気付くのは時間がかかるはずだ。
 レイは病室の窓を開ける。そして”レジェンド”を起動させようとしたとき、病室に向
かってくる足音が聞こえ、急いでベットに潜り込む。
 それと同時に乱暴に病室のドアが開かれる。入ってきたのは主治医と共に自分の治療に
当たっている若い看護師だ。レイは今の音で起きたような素振りを見せて、

443:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 23:30:53
支援age

444:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 23:34:24
支援!!

445:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 23:34:32
支援

446:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 23:36:50
支援

447:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 23:47:28
支援

448:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 23:54:11
ダントツに文章力高いな…脱帽だ

449:通常の名無しさんの3倍
07/07/27 00:02:08
30分たったな

450:通常の名無しさんの3倍
07/07/27 00:04:39
>>374
なのはさんたちの世界観では地球なんてただの田舎
そんなとこで高学歴でもミッドやほかの世界では無意味なんだろ

451:通常の名無しさんの3倍
07/07/27 00:12:23
>>448
そんな素晴らしい職人のいるスレを荒らすのは許せないよね。


報復してきました。

130 名無し三等兵 sage 2007/07/26(木) 23:58:58 ID:???
>>129
おおっ神降臨!!
お仕事はもう慣れましたか? 職場の人間関係は良好ですか?
そろそろ新しい靴など買って夏前にリフレッシュしましょう!


1月ごろに予告していたSSの進行状況はどうですか?
どんな内容か忘れてしまいましたが、新作待ってます。
なるべく早くお話ください。


452:通常の名無しさんの3倍
07/07/27 00:13:33
投下マダー?

453:lyrical Seed Destiny
07/07/27 00:28:52
「何の騒ぎだ」
「バレルさん……屋上に……」
 弾ませている呼吸を整えて、彼は続ける。
「屋上にフェイトさんが飛んできました!」
「……なんだと?」
 不可解な表情を自分は浮かべていたのか、若い看護師は屋上の給水塔にフェイトが飛ん
できて、激突したのだと伝える。
 先程の激突音を思い出す。だが何故フェイトが飛んできたのだ。
「ともかく彼女の元へ案内してくれ」
 言い、レイは彼と共にフェイトの所へ向かう。途中、どんな顔して彼女に会えばいいの
かと思い至ったが、引き返すわけにも行かず進む。
「レイ…!」
 診察室のベットに寝かされていた彼女はこちらを見て驚き、気まずげな表情になる。レ
イも一瞬、内心の心情が表に出そうになるがなんとかこらえ、いつものポーカーフェイス
で問う。
「どうした。何があった」
 寝かされている彼女は酷く汚れ、ボロボロだ。黒を基調としたバリアジャケットのあち
こちは破け、血によって赤黒く染まっている。
 彼女がここまでの傷を負うなど。相当の強敵と戦ったようだ。
 フェイトは治療魔法をかけられながら、現状を説明する。
「アッシュ・グレイだと……」
 その名前には、聞き覚えがあった。前大戦末期、ザフトに所属していた腕利きの魔導士
だ。
 ザフト特殊防衛軍所属。当時のプラント議長、パトリックに最新鋭のデバイスを与えら
れ、しかし大戦末期に行方不明となった男―
 そして彼の使用するデバイス”リジェネレイト”と同じ名を冠する魔法にも、レイは知
っている。
「奴がアッシュ・グレイだとすれば、今のあなた方では奴は倒せない」
 リジェネレイトはCEの回復系魔法の中でも最高位に位置する。致命傷クラスの傷です
らものの数秒で完治してしまうあの魔法の前には生半可な攻撃は通用しない。
 倒すならばデバイスとマスターを同時に攻撃して破壊するか、マスターの魔力を尽きさ
せて”リジェネレイト”を使用不可能にするか、”リジェネレイト”の回復よりも速く、
連続で攻撃を叩き込みマスターを倒す以外術はない。
 そして今の彼ら―リミッターがかかっているフェイトに、”デスティニー”が完全で
はないシンでは到底不可能―
「……いや」
 ある。一つだけ。現状でアッシュ・グレイを倒す方法が。
 シンに使用できない―いや、封印した”デスティニー”の魔法を使わせる方法が。
 そしてそれを実行できるのは、今この場には自分以外いない。
 だが―
「何か案があるの?」
 フェイトの問いに、レイは答えられない。方法はある。しかし今の自分はそれをできる
のか。それをしていいのか。
 欠陥だらけの己。自分をずっと助け続けてくれた友へ悪意をぶつけた己が―
「……何かあるんだね、方法が」
 逡巡する自分を見て、悟ったような表情を見せるフェイト。治療を続ける看護師の手を
払って彼女は立ち上がる。

454:lyrical Seed Destiny
07/07/27 00:30:05
「フェイトさん、どこへ…」
「シンの所へ戻ります。皆さんは患者さんを連れて避難を。あと近隣の陸士部隊へ連絡を
お願いします」
 きびきびと言うが、体に蓄積したダメージは抜けきれていない。頼りない足取りで彼女
は診察室をあとにする。
「無茶です! 怪我は治ってもまだまともに動けるほどには…!」
「今、シンは一人で戦っています。私がここで寝ておくわけにはいきません」
 食い下がる主治医を見ずフェイトは言い、自分の方を振り向く。
「レイ、教えて。どうすればアッシュ・グレイを倒せるの?」
「そ、それは…………」
 真っ直ぐに眼差しに、思わずレイは後ずさり、視線を逸らす。
「教えて」
 視線を逸らした自分へ、彼女は逃がすまいと顔を近づけてくる。
 美しい―ふと、そんなことを思う。今の状況や場所、何もかも忘れて。
 自分と同じ存在。しかし彼女は凛々しく、美しく、強い。クローン―造られた、本来
いるはずのない存在とは思えないほどに。
 何なのだ、この違い。一体何故、どうしてここまで、自分と違うのだ―
 圧倒されつつも、レイはその方法を告げる。己では不可能なそれを訊いてフェイトが愕
然となるが、すぐに表情を戻すと、自分を見て、
「レイ、あなたならそれができるんだよね。なら一緒に来て」
「……!」
「フェイトさん、無理です! 今の彼は戦闘など」
「問題ありません。彼は戦いませんから。―レイ」
 差し出される手。しかしレイはそれを掴むことをためらう。
「シンに会うのが、怖いの?」
 刃の如く、レイの内心を貫くフェイト。
「俺は…!」
 内情をぶちまけようとするレイをフェイトは笑顔を見せて、遮る。
「友達と喧嘩したんだもんね。その気持ち、分かるよ。―でも、もしレイが行かずその
結果、シンにもう会えなくなってもいいの?」
―シンにもう会えない……? それはつまり―!
 脳裏に浮かんだ悪夢の光景。それを連想させた目の前の女性の胸ぐらを怒りのままレイ
は掴む。
『サー、レヴァンティン、グラーフアイゼンのマイスターがデスティニーのマスターの元
に救援に来たようです』
 ”バルディッシュ”が無機質な声で告げる。その内容にレイは安堵する。
 よかった。これでシンが死ぬことは―
『しかしデスティニーのマスターは、危険な状態です。生命活動が著しく低下しています』
 だが続けて告げられた内容にレイは愕然とする。フェイトから手を離し、後ろへ下がる。
―シンが……死ぬ?
 今まで、そんなことは想像もしたこともなかった。シンは誰にも負けない。その確信が
あった。
 ギルが見出し、自分が育てた戦士。SEEDの因子を持つCEの申し子―
 運の巡り合わせか、何かシンの内面に問題があったのかメサイアではアスランに敗北を
喫したが、それでもなおシンが誰かに負ける―殺されるなど、あり得ない。例え、キラ
・ヤマトであろうとも。そう思っていた。
 そのシンが、負ける? 死んでしまうというのか? ……もう、会えなくなるというのか?

455:lyrical Seed Destiny
07/07/27 00:31:27
「シンと話してみたら、どうかな」
「……話す?」
 おののくレイにフェイトは言う。
「シンも気にしてたよ。あの後、酷く落ち込んでいた。自分が無理矢理レイを生かしてた
んじゃないかって」
「な……!? 馬鹿な、何故そんなこと」
 あの時、自分を救ってくれたシンにレイは感謝しても、しきれないほどに感謝している。
それが何故そんな風にシンは思ってしまうのだ!? 
「友達って間柄、難しいよね。お互いを知っているように見えて、でも実のところ、知ら
ないことばかりだらけ」
「……」
「だから時には喧嘩したりするんだよね。私もたまにやっちゃうんだ」
 小さく笑うフェイト。
「でも喧嘩した後はいつもちょっと後悔して、話し合うの。どこが悪かったのか、知らな
かったのか。お互いを理解するために、今まで以上に仲良くなるために」
「ハラオウン隊長……」
「先に行ってるね」
 まるで自分が来ることを確信しているような言い方をして、彼女は去っていく。
 立ち尽くす自分へ己の中にいるもう一人の自分が冷たい声で呼びかける。
『何を恐れている。あの女の言うことなど当てになるものではない。シンは強い。例え俺
がいなくても、負けることなどあり得ない。むしろ俺が側にいればあいつの足を引っ張る
だけだ』
 助ける必要はない―そう告げる無表情の自分とは別の、もう一人の自分が呼びかける。
『何を迷っているんだ。シンが危ないんだぞ。このままなにもしないつもりなのか。見殺
しにするのか』
 助けるべきだ―必死の表情で叫ぶもう一人の自分。相反する思いに挟まれ、レイは動
けない。
「きゃっ」
 どん、と何かの衝撃がした。視線を向ければ車椅子に座っている少女の体勢が崩れてい
る。このままでは床に転げ落ちる。
 避難していたところ、廊下に立っている自分にぶつかったのだろう。咄嗟にレイは腕を
差しだし、少女の体を受け止める。落ちると思っていたのか少女はしばらく目を閉じたま
まだったが、恐る恐ると言った感じで開き、自分とレイを見ると、
「ありがとう、おにいちゃん」
 はにかむような笑みを浮かべ、礼を言った。
「――」
 何気ないその笑みが、シンのものと重なり、レイは目を見開く。車椅子を引いていた看
護師が頭を下げ、少女を連れて行く。それを見送り、レイは動き出す。
―俺は一体、何を迷っていたんだ。なせ迷っていたんだ。
 病室に戻り”レジェンド”を手に取ると、その足で屋上に向かう。
―シンに会うことが怖かったからか。罵倒され、拒絶されることが。
 扉を開き、屋上に出る。破壊された給水塔を一瞥。
―そうだ。俺は怖かった。そして今でも、そうなることを恐れている。だが、
「”レジェンド”、シンの居場所は分かるか」
『”デスティニー”のマスターは四時の方向に400m程の距離にいる様子です。その周
辺には”バルディッシュ”、”レヴァンティン”、”グラーフアイゼン”のマスター達と、
アンノウン・ウィザードが一名、戦闘中です』

456:lyrical Seed Destiny
07/07/27 00:32:34
―憎まれるより、拒絶されることよりも、あいつを、シンを失うことの方が何よりも恐
ろしいし、怖い。―そんなことは絶対にさせない!
自分には力がある。友を救う力が。ならば今この状況でそれを使わずして、いつ使えと
いうのか。
「”レジェンド”、起動しろ!」
 主の宣誓に応じる”レジェンド”。灰色の騎士甲冑をまとい、レイは友のいる場所を見
据える。
―話してみたら、どうかな
 そうだ。今自分はシンと話したい。死ぬ、消える前に、せめて自分の思いを知ってもらいたい―
 その表情はいつもの無表情に見えるが、彼を知るものが見れば、違いに気が付くだろう。
その顔に灼熱の如き熱い”情”が宿っていることに。





「う……ぐっ」
 ボロボロの体を必死に動かし、シンはようやく立ち上がる。
 上空でアッシュと戦っているのは”ライトクラフト・プロバルジョン”を食らい、身動
きが取れず止めを刺されようとしたところ、はやての命令で援護に来たシグナムとヴィー
タ、そして先程戻ってきたフェイトだ。
 ライトクラフト・プロバルジョン。詳細については不明だが、どうやら砲撃などのエネ
ルギーを受け止め、それを推進剤代わりとして超加速の攻撃を仕掛ける魔法のようだ。
 彼女らが戦ってくれていたおかげで”ライトクラフト・プロバルジョン”を受けたダメ
ージが幾分か抜けていった。とはいえ完全には抜けきれていない。蹌踉めき、慌ててシン
は”エクスカリバー”を支えに立ち、空を見上げる。
―たったの一撃で、このザマかよ……
 同じように食らったフェイトは戦線に復帰しているというのに。おそらく彼女が攻撃を
食らう直前反応し、後ろに下がったのだろう。だから姿が消えたかのようにはるか後方へ
吹き飛んだのだ。
 三対一という圧倒的有利な状況。しかし戦況に変化はない。アッシュの動きは衰えもせ
ず、三者と互角に渡り合っている。
 シグナム達の攻撃を受けても”リジェネレイト”が瞬時に回復させてしまうのだ。しか
も数が増えたことによるためか”リジェネレイト”の使用回数が減っており、ここぞ、と
言うときにしか使用していない。
「このままじゃ……」
 アッシュと違い、フェイト達は攻撃を受ける度にダメージは蓄積され、動きは鈍る。リ
ミッターがかけられている彼女たちではアッシュを倒すことはできない。先日の戦いでリ
ミッター解除したはやてを除く隊長陣はリミッター許可の申請中だ。
 周辺には近隣の陸士部隊が集結しているがあの激闘の中に割って入れるような実力はお
らず、周りを囲むだけで精一杯のようだ。
「くそっ……」
 シンは歯噛みする。もしも”デスティニー”が完璧に直っていたら、いやせめて魔力だ
けでも完全回復できたのなら、自分が何とかできるのに―!
 悔しさと怒りでシンが空の戦いを見上げていると、ふと背後から何かが迫ってくる。

457:lyrical Seed Destiny
07/07/27 00:33:39
―これは……まさか!?
 疑惑のような確信を抱き振り向くと、後ろには灰色の騎士甲冑をまとった一人の青年。
「レイ……どうしてここに!?」
 驚きつつも彼に近づくシン。レイは自分を見て安堵の笑みを浮かべ、しかしすぐに重苦
しい表情となる。
「レイ……」
 親友の変化にシンは足を止め、昼間の出来事を思い出す。
「レ…」
「シン」
 重苦しい表情でレイが名を呼ぶ。シンは反応が遅れてしまう。
「あ、な、何だ」
「まだ戦えるか」
 問いに聞こえるそれは、確認だ。それを聞き、シンはレイが何を言いたいのか、どうし
てここに来たのかを悟り、当然こう答える。
「ああ」
「わかった。なら始めるぞ」
『ハイパーデュートリオン』
 ”レジェンド”の声と同時にレイの足下に浮かぶ灰色の三角の魔法陣。その魔法陣から
放たれる光がシンを包み込む。
 枯渇しかかっていた魔力が急激な勢いで満ちていく。さらにそれに応じるように”デス
ティニー”が告げる。
『”レジェンド”のマスターよりハイパーデュートリオンの受信を確認。”デスティニー
”に記録されている魔法、全て使用可能です』
 ハイパーデュトーリオン。本来この魔法は使用者の魔力の爆発的増大と、詠唱破棄の二
重効果を持つ。
 しかしシン、及びレイは大戦後この魔法に一つの効果を与えていた。それはデバイスに
記録されている魔法の封印という効果だ。
 ”デスティニー”、”レジェンド”のデバイスに記録されていた魔法をシンとレイの二
人はデバイスを起動させずとも使用できる。しかし今まで使用したことは一度もない。
 リスクが大きすぎるからだ。”デスティニー”、”レジェンド”の魔法は一つ一つが非常
に高レベルだ。デバイスを起動させずに使用すれば術者本人にも反動が返ってくるし、体
への負担も大きい。
 それ故にこの3年間、一度たりとも使用してはいなかったのだが― 
『ただし”デスティニー”の機能不全によりリミットは180秒』
 ”デスティニー”が告げると同時にシンは片刃の長剣”アロンダイト”を右手に出現。
同時に、
『ヴォワチュール・リュミエール』
 背部の翼より溢れ出る虹色の光の翼。加速向上と幻惑の複合魔法だ。
―時間もない。一気に片を付ける!
 早速アッシュの元へ向かおうとするシン。そこでレイから声がかかる。
 振り向けば、先程と同じ重苦しい面持ちを見せるレイ。
「シン、昼間はすまなかった」
「レイ……」
「もちろんこんな言葉で済むことじゃない。だからこの後、お前と話したい。
昼間のことや、今までお前に話さなかったこと。様々なことを」
 そう言うレイの表情はいつになく幼く、脆く見える。そんな表情をする親友にシンは驚
くも、笑みを見せる。

458:lyrical Seed Destiny
07/07/27 00:35:07
「……ああ。わかった。俺もレイに訊いておきたいことや話しておきたことがあるからな」
 言うとレイはいつもの表情に戻り、頷く。
「そうか。―あとは任せた」
「ああ。任せとけ!」
 光の翼をはためかせ、シンは飛ぶ。
 時間もない。力の出し惜しみはしない。
 ぶつかり合う四つの光はすぐ見えてきた。藍紫の光が赤と紫の光をはじき飛ばし、黄金
へ迫る。
<フェイト、下がれっ!>
 こちらの念話を聞き、”バルディッシュ”を振るおうとしたフェイトはその動きを急停
止、下がる。
「おおおおっ!」
 フェイトが下がったことによりできた間にシンは入り込むと、アッシュに向けて”アロ
ンダイト”を振るう。
 突然の乱入者に一瞬目を見開くも、アッシュは斬撃をかわし、左足の魔力刃を鞭のよう
に振るう。
 猛禽の爪牙のごとき鋭い一撃を、シンは悠々とかわして背後に回り込むと”アロンダイ
ト”を薙ぐ。
「なっ!?」
 アッシュが驚きの声を上げると同時に、斬撃がアッシュの背中を横に薙ぐ。確かな手応
えを感じるも、切り裂かれた部位は数秒後には何事もなかったかのようにふさがってしま
う。
「効くか! そんなチンケな攻撃がぁ!!」
 振り向き両腕を振るうアッシュだが、シンは身を屈めて回避し、彼の胸部に左の掌を押
し当てる。
『パルマ・フィオキーナ』
 落雷の如き轟音が耳朶を殴りつける。左手を焼けるような激痛が襲うが、シンは歯を食
いしばって必死に無視。
―この程度でっ…!
『残り120秒』
 よろめくアッシュへ、シンはさらに追撃する。右手に持っていた”アロンダイト”を左
手に持ち替え、今度は右の掌を左の掌を当てた場所へ叩きつけ、
『パルマ・フィオキーナ』
「ぐううぁあぁ…っ!」
 二度目の轟音と激痛。吹き飛ぶ両者。激痛に呻きながらもシンはボロボロの両手で”ア
ロンダイト”を握り、刺突の構えを取る。
『残り75秒』
―容赦はしない―!
『アロンダイト』
 背中の光の翼が爆発的に噴出し、長剣の片刃に真紅の魔力が宿る。鍔から薬莢が三つ、
四つと飛び出し空色の刀身が溶岩のように赤く濃い色に染まる。
「おおおおおっ!」
 ”アロンダイト”を突き出したシンは真紅の弾丸となってアッシュに激突する。刀身は
二発の”パルマ・フィオキーナ”が炸裂した部位に激突。藍紫の光は真紅の光に呑まれ、
さながら隕石の如く両者は公道へ向けて落ちる。
 公道を突き破り、地面に激突する。発生した衝撃波と石飛礫がシンを殴りつけ、吹き飛
ばすが、空中で一回転し、大上段に”アロンダイト”を構える。

459:通常の名無しさんの3倍
07/07/27 00:35:30
支援

460:lyrical Seed Destiny
07/07/27 00:36:26
『残り30秒』
―これが最後だ―!
『エクスカリバー』
 放たれた真紅の斬撃は強大な爪痕を大地に刻み、さらなる爆発を生む。さすがに至近で
の二重の衝撃波と爆発にシンは抗しきれず、吹き飛ばされる。
『残り7秒―』
 もはや体勢を立て直す力も残っていない。残った最後の魔力でシンは最後の魔法を発動。
『ソリドゥス・フルゴース』
 シンの周囲を真紅の球体が包み込み、公道を転がりつつける。
「ぐぅっ…っ」
 体勢を立て直したと同時に球体は消失。背中の翼も”アロンダイト”も音もなく消えて
しまう。どうやら時間切れのようだ。
 立ち上がろうとするが全身が酷く痛み、両腕は刃物で裂かれたようにズダズダだ。
 ハイパーデュートリオンによる”デスティニー”の魔法使用の反動は、予想を超えたも
のだった。小指を動かす力さえも、残っていない。
「シン!」
 降りてきたフェイトが駆け寄ってくるが、こちらの様子を見て絶句する。
「俺のことはいいから、アッシュの奴を、早く……」
 怒鳴ったつもりだったが、実際に聞こえたのは少女が呟くようなか細い声だ。しかしそ
れが聞こえたのかフェイトは崩落へ向かった。


 ボロボロのシンを置いておくのは気が引けたが、彼の言葉通りフェイトは崩落の現場へ
向かう。
 ここでアッシュを逃すわけにはいかない。シンのためにも、なんとしても捕らえないと
―!
 崩落を見下ろせばその中心部、土と瓦礫に埋もれたアッシュの姿がある。
 ピクリとも動かず、ボロボロの鎧や傷は再生の兆しも見せない。どうやら完全に沈黙し
ているようだ。
 彼を捕らえるべく、フェイトはバインドを仕掛けようとするがその時、
「!?」
 突然放たれてきた射撃魔法がそれを遮る。視線をそちらに向けると2体のソキウスが魔
導の杖を向けている。
 たたき落とそうとするが、その手をフェイトは止める。隙がないのも理由の一つだが、
目の前にいるこのソキウスは今まで戦った者達とは雰囲気が違う。
 生気を感じさせないその目から、僅かな意志を感じさせているのだ。
 彼らは射撃魔法を放つ。フェイトだけではなく自分と同じように崩落に近づいていたシ
グナム達へも忘れない。
―鋭いっ……!
 たまらずフェイトが下がったと同時にアッシュの周囲に転送の魔法陣が生まれる。
「っ! まずい…!」

 逃がすまいと前に出るフェイトだがそれを遮る射撃魔法の雨。邪魔をされ、反射的にフ
ェイトは彼らへハーケンセイバーを放つも、あっさりと彼らは回避してしまう。
 しかし射撃の雨はやみ、フェイトは崩落へ行き、見下ろすが、
「…!」
 遅かった。すでにアッシュの姿はなく瓦礫と土煙の姿だけだ。

461:lyrical Seed Destiny
07/07/27 00:36:32
投下の邪魔をされて腹が立ったので反撃してきました。


他にも住人のみなさんが連中を叩いているようですね。




133 名無し三等兵 sage 2007/07/27(金) 00:16:09 ID:???
寄生獣作者の岩明均のキャラは精神のバランス感覚がリアルで共感できる
タイフーンが妄想するような奇をてらっただけの下劣下品キャラはいつも見苦しいですな
いっつも頭悪い行動するからいらいらさせられるよ
名前見ただけで気分が悪くなる

462:lyrical Seed Destiny
07/07/27 00:37:37
ソキウス達も撤退していく。まんまとアッシュを逃がした二人を逃すまいとフェイトは
二人を追うとするが、
『フェイト隊長。もうええ。そこまでや』
「はやて!?」
 突然告げられた追撃停止命令にフェイトは憤りの声を上げる。
『フェイト隊長も、シグナム、ヴィータ両副隊長も、シンも傷ついとる。……帰還してや。
命令や』
 最後の語尾は震えていた。あえて命令と強調するあたり、いかにはやてがこの敗北を悔
しがっているのかが分かる。
 そう、敗北だ。ロストロギアは守れた。周囲への被害も最小限に抑えられた。
 だが―またしても敵を誰一人、捕らえることができなかった。その上たった一人の魔
導士を相手に六課の主力四名を総動員して倒すのが、やっとだったのだ。
 任務は成功。しかし……
「我々も、まだまだだな」
 シグナムの苦渋に満ちた言葉に、フェイトは無言で頷いた。





「失礼します」
 声をかけて中にはいると、いつものようにレイがベットの上で魔導書を読んでいる。
「こんにちはレイ」
「ようこそ、ハラオウン隊長」
 本を閉じ、自分を見るレイ。顔色はなかなかにいい。
「フェイトでいいってば」
 未だに生真面目な口調で言ってくる彼にフェイトは微笑。無表情なまま、しばしレイは
黙り込む。
「……。シンはどうしてましたか」
「早く退院したいって。まだ怪我が治りきってないのに」
 先日の戦いでシンは負傷―特に両腕が酷い―を負っており、回復するまでここの病
院に入院させられている。
 しかし見舞いに来るごとに退院したいと口にしているのだ。本人は怪我が治ったからと
言っているが、それはあくまで表面上の話だ。まだ戦闘に耐えうるほど完治していない。
それは本人とてわかっているはずなのだが。
「自分まで迷惑をかけていることに心苦しさを感じているのでしょう。気持ちは分からな
くもありませんが、しっかりと監視をお願いします」
「それは大丈夫だよ。今は、なのはが見てるから」
「それは安心です」
 話すレイの姿からは以前通りの、いや以前以上に生気に満ちている。
 先日の戦いの後からさらに数日経った頃、レイの体に変化が訪れたのだ。
 そう、テロメラーゼ導入による、テロメアの延長という変化が。
 延長したとテロメアはほんの僅かな長さだが、それでもシンが狂喜したことは言うまで
もない。
 そしてフェイトはもう一つ、彼の微妙な変化に気が付いていた。
 レイの表情が、柔らかくなったのだ。無表情がデフォルトなのは変わらないが、幾分か
喜怒哀楽の変化も見えてくるようになった。

463:lyrical Seed Destiny
07/07/27 00:39:39
 どうやらシンと何やら話し合ったらしい。その話の内容をレイからかいつまんだ程度に
訊いている。
『シンに怒られ、泣かれましたよ』
 話し終わった後、苦笑して彼は言った。フェイトはシンのように泣くのも、怒りもしな
かったが、もし現場にいたら同じような態度を取っていただろう。
 己の命を疎んでいること、レイ自身の存在意義、シンの側から消えようとしたこと、自
分に嫉妬していたこと―
 確かに自分もレイと似たような感情に陥ったことはある。しかしそれは自分を大切に思
ってくれている人への侮辱に他ならないということはフェイトは知っている。
 クローンだろうが何だろうが、その人はその人。その命はこの世にたった一つしかない、
かけがえのないもの。変わりなど無いのだから。
「ハラオウン隊長」
 変わらぬ呼び方にフェイトは内心で苦笑。名前で呼んでと前々から言っているのだが、
未だにファミリーネームや役職の方で彼は自分達を呼ぶ。言葉もどこか、丁寧で堅苦しい。
 まぁ、これは時間がかかるだろうとフェイトが思っていると、
「俺はあなたに興味が沸いた」
「……え?」
 突然そのようなことを言われ、フェイトは固まる。
―興味? 興味って……??
「あなたは俺と同じクローン。人の手によって生み出された命。
しかしあなたは普通の人と変わらない輝きや強さを持っている」
 混乱するこちらに構わず、レイは淡々と―しかしどこか熱い口調で語る。
「どうしてそこまで強く、堂々としていられるのか―。俺はあなたを知りたくなった」
「え、あ、う、うん」
 レイの言葉―どうやら自分を褒めているようだ―を聞き、たどたどしくフェイトは
頷く。 
「そう言うわけで、これからも色々よろしく頼む。―フェイト」
 そう言ったレイは、微笑を見せる。誰の目から見ても明らかな、柔らかい微笑みだ。そ
して名前と口調にも変化が。
 これは自分をシンと同じように、友達として認めてくれたのと判断して良い、というこ
となのだろう。おそらく、いや、きっと。
「……うん、よろしくね。レイ」
 フェイトは微笑み、新たな友へ握手を差し出す。レイは僅かに目を見開くも、すぐ微笑
を浮かべて、その手を握り替えした。
 
to be continued

464:通常の名無しさんの3倍
07/07/27 00:42:09
lyrical Seed Destiny氏の作品は妄想を書きなぐるまじかるしんと違って良作だな。

まじかるしんは見てて吐き気がするが、lyrical Seed Destinyは非常に面白い。

465:lyrical Seed Destiny
07/07/27 00:42:59
4話投下終了です。大勢の方々支援有り難うございます。
テロメアについてもちょこっとネットで検索しました。ただその辺の突っ込みは勘弁してください。
さて4話ですが、レイがレイらしくないと思った方もいるかも知れませんが本編より時間も
経っていますのでご勘弁を。
レイについては小説種死の5巻を参考にしています。他の巻は、レイの心理描写って殆どありませんしね…
敵キャラアッシュ・グレイについてはASTRAYからの出演です。滅茶苦茶な強さになっていますが、
実際彼はASTRAYでも結構良い待遇でしたので、こういう風にしました。(核搭載MSを二機も持っています)
今回の話でようやくシンとレイ、両名が六課と絡みました。とりあえず一安心。残り3話。上手くまとめるよう頑張ります。
5話は来週か、再来週の土曜日辺りに投下予定です。

………ちなみに461は偽物です。

466:通常の名無しさんの3倍
07/07/27 00:44:12
>>465
GJです
トリを付けらどうでしょう?

467:lyrical Seed Destiny ◆K08/tGd0Ac
07/07/27 00:45:53
>>466
わかりました。

これでいいですか?

468:通常の名無しさんの3倍
07/07/27 00:48:13
>>465
GJなんだぜ
大変おいしくいただきました。

469:通常の名無しさんの3倍
07/07/27 00:50:11
>>467
それで結構です

470:通常の名無しさんの3倍
07/07/27 01:10:37
>>467
軍事板への仕返しお疲れ様でした。

軍事板の連中はなのはさんに制裁されるべきですよね。

471:通常の名無しさんの3倍
07/07/27 01:11:27
最近の流れのせいで作品の過度な批判は皆荒らしに思えるから困る

472:通常の名無しさんの3倍
07/07/27 01:16:06
>>471
まじかるしん作者乙

473:通常の名無しさんの3倍
07/07/27 01:19:45
職人様GJ!!

474:通常の名無しさんの3倍
07/07/27 01:20:49
>>471
仕切り厨うざいよ仕切り厨


叩かれたくないならチラシの裏にでも書いとけ

475:通常の名無しさんの3倍
07/07/27 01:23:40
まずはGJ!
レイは自身の悪夢に勝てる日は来るのか、そしてレイとフェイトのこれからが楽しみですね

476:通常の名無しさんの3倍
07/07/27 01:27:12
>>474
死ね とにかく死ね

477:まじかるしん作者 ◆om9ygRXchQ
07/07/27 01:31:12
戻ってきても…いいんですか?

478:通常の名無しさんの3倍
07/07/27 01:33:39
もちろんだ

479:通常の名無しさんの3倍
07/07/27 01:35:56
俺も最初は書いてたらGJすら貰えなかったけど
今はGJしてくる人がいるからその人たちのために書いてる。

480:通常の名無しさんの3倍
07/07/27 01:42:01
>479
つまり何がいいたいっていうと、叩くやつはスルーって事でおk?

481:通常の名無しさんの3倍
07/07/27 01:44:00
当然ッ!!アズライガーを放置していなくなる事こそ重罪だぜッ!!
ジブの旦那のデバイスも気になるし。ゲルマン忍法かな?

482:通常の名無しさんの3倍
07/07/27 01:46:25
まじかるシンの人本物なら気にすんな
書き込んでんのなんてどうせ一人だから

483:???[sage]
07/07/27 01:53:37 bLujg3gU
アッシュが出てくるとはwww。GJです♪


気にせずにまじかるしん氏の書きたいSSを書いてくれ。
俺達はあなたのSSに楽しませてもらってるんだ。

484:通常の名無しさんの3倍
07/07/27 02:10:25
マジカルしん氏の書きたいように書けばいいと思うよ。

485:通常の名無しさんの3倍
07/07/27 02:45:13
叩きは気にするな

486:通常の名無しさんの3倍
07/07/27 03:10:10
俺達は楽しみに待ってるぜ。

487:高い天を行く者から勇敢な者へ
07/07/27 06:45:23
>>465
GJです!
アッシュ出てきましたね~。
私も登場させる予定なのですが、かなり先になりそう・・・・orz
続きを楽しみにしています。
>>477
私もマジカルしん氏の作品を楽しみにしているものの1人です。
是非とも頑張ってください。
私も土曜日には・・・・どうにか・・・・orz

488:通常の名無しさんの3倍
07/07/27 08:57:34
lyrical Seed Destinyだけでいいよ

489:通常の名無しさんの3倍
07/07/27 09:16:02
>488
じゃ、他はスルーしろ低能

490:通常の名無しさんの3倍
07/07/27 09:24:09
>>489
軍オタうぜぇ

また荒らしてほしいのかよ

491:まじかるしん
07/07/27 09:31:44
新シリーズ(?)みたいなの出来たけど投下していい?

492:通常の名無しさんの3倍
07/07/27 09:33:06
もちろんです。

493:まじかるしん
07/07/27 09:35:12
AM5:30
某場所
「ん……」
シン・アスカは目を覚ました。
昨日はいろいろとあってぐっすりと眠れたようだ。
だが、気分は晴れない。
(くそ……)
シンは先日の戦いを思い出す。
(あいつ、生きてたのかよ……)
シンはくそ、と悪態をつく。
せっかく倒したと思ったのに、何であいつが生きているんだよ。
あのときからそれが気になってしょうがなかった。
せっかくの目覚めもこれでは最悪というおのだ。
その機嫌の悪さに、シンが違和感を感じるのが遅れた。
とりあえず着替えようと思ったときだった。
(あれ……動かない?)
どれだけ体を動かそうとしても全然動かないのだ。
動こうとすれば何かがカタカタと鳴る音しか聞こえない。
金縛りにでもあったのだろうか……
それに、とシンは目の前を見る。
既に日は昇っていて、部屋がはっきりと見える。
おかしい、自分はミネルバにいたはずだ。
それが何でこんな女の子チックな部屋にいるのだろう。
同じ部隊のルナですらここまで行かないのに(戦艦だから当たり前であるが)
そこで、シンは目の前で鏡があることに気付く。
その鏡を見ても、自分がいないのだ。
おかしい、と思いながらシンは周囲を見ようとする。
そうするたびに、鏡にある金色の小物のようなものがカタカタと動く。
シンが動きをやめると小物もぴたっと止まる。
最後動こうとするとまたもやもカタカタ動く。
……よし、落ち着け自分。
まあ確かにフリーダムやアスランが生きていて、さらにわけのわからない言葉で精神的にやばいのは自分でもわかる。
だが、ここは何とか落ち着こう。
深呼吸深呼吸…すぅ…はぁ……よし。
何か深呼吸すると同時に小物がピカピカ光ったような気もするけどこの際ほうっておこう。
まずは状況の確認だ。
えーと、自分が動こうとすればあの小さな金色の小物が動く。
鏡に自分がいない。
と言う事は………
(俺があの変な三角の小物になっているのか……)
なるほど、それなら自分の動くたびにカタカタ動くのも納得がいく。
自分があんな小物になったのか………
『って……んなわけあるかああぁぁーーーーーーーー!!!!!』
「うわ!?」
シンは力の限り絶叫した。
それと同時に何か声がしたような気がする。

494:まじかるしん
07/07/27 09:37:48
『なんなんだよこれは!?ここはどこなんだよおい!!?それに俺はどうなってるんだ!!?』
先ほどの落ち着きっぷりがうそのような慌てっぷりである。
「え?…え?……」
その慌てっぷりに、横で寝ぼけながらきょろきょろしている少女の存在に気付かない。
「フェイト、どうしたんだい?」
少女、フェイトの悲鳴を聞いて一人の女性が入ってきた。
「何か人がいるように見えたけど、アルフは見なかった?」
フェイトにいわれて、アルフは周囲に気を配らせる。
確かに変な気を持っているのはいる。それも近くに。
さらに……
「変なのが二人いるよ?」
アルフの言葉でえ?とフェイトは周囲を見渡す。
もしもの事を考えてフェイトはバルディッシュを握ろうとする。
その時だった。こんこんとドアを鳴らす音が聞こえる。
「フェイト、起きているか?聞きたい事はあるんだが」
既に見知ったそのこえに、いいよ、とフェイトは言う。
ドアが開くと、そこには自分のデバイスを持つ義兄、クロノ・ハラオウンがいた。
「クロノ、どうしたの?」
デバイスなんかもって、まさか、アルフが感じたことに関係するのかもしれない。
フェイトの言葉にいや、とといってクロノはバルディッシュを見る。
「バルディッシュは問題ないのかって思って」
クロノの言葉に首をかしげる二人。
「デュランダルの調子がおかしいの?」
肯定の意味を示すように頷くクロノ。
「どうも調子がおかしいらしいんだ」
そういって待機状態のデュランダルを前に出す。
『ここはどこなんだ?』
確かに、思いっきり日本語でしゃべっている。
その時、後ろから声が聞こえた。
『おい、レイなのか?』
フェイトは声のほうを向くと、それは紛れもなくバルディッシュだった。
「バルディッシュ?」
しかし、そんなにとをほうっておいて、デバイス同士は話を続ける。
『シンか、ここはどこなのだ?』
『そんなのこっちが知りたいくらいだ。目が覚めたらこんなところにいるし、どうなってるんだ?』
『おれにもわからん…今回ばかりは気になるな』
などと話しているのをあっけにとられるしかないフェイトとクロノだった。

495:まじかるしん
07/07/27 09:39:23
同時刻、高町家
「レイジングハード、どうしたんだろう……」
高町なのはは朝からうーん、頭を悩ませている。
今日は学校が休みで本当によかった。
その悩みの種は自分の相棒でもあるレイジングハートにあった。
なのはあ朝起きると毎日のようにレイジングハートに挨拶をする。
だが、いつも返事をしてくるレイジングハードが、今日に限って返事をしないのだ。
不思議に思ったなのははおーい、とかレイジングハートー?とか尋ねるが、全然応答しない。
そして、ようやくレイジングハートはなのはに気付いた。
『だれだよお前、っていうか、何でそんなにでかいんだ?』
「……ふぇ?」
訪れる沈黙………
『って……ここ、どこだよ!?確か俺は宇宙にいたはずだぜ、なのになんでこんなところにいんだよ!?』
誰かは考えるが、なのははそんな事は聞こえなかった。
今まで苦楽をともにしてきた相棒にだれだよよばわりされて、かなりもショックをうけたのだ。

少し時間はたちAM6:00 八神家
ピピピ、と朝の目覚ましがなる。
八神はやてはうーん、と背伸びして目覚ましのスイッチを押す。
ふと横を見ると、そこにはヴィータはすやすやと眠っている。
はやてはそれを見て微笑むと、今度は一緒の枕で寝ているリィンフォースを見る。
リィンフォースも、元気にどばどばと胸元から血が流れている傷を中心にして、傷だらけのリィンフォースが「ぅぅ……」とうなだれながら寝ていた。
「……え?」
はやてはあまりの光景に呆然としていた。
それどころかしばらく思考能力が停止する。
うなだれているリィンフォースの声が男のものだなんて気付いてすらいない。
(え、なんで?何でリィンがこうなったん?……は、まさか寝取る間に頭で踏み潰して……)
と、いろいろ考えているはやての顔は、だんだんと涙目になっていった。
「シャマルーーーーー!!」
はやてはやさしくリィンを持つと、大急ぎでシャマルの部屋へと向かう。
そのころ、シャマルははやての朝食の準備をしようとゆっくりと起き上がろうとしていた。
「どうしたのはやてちゃん……」
シャマルはいきなり入ってきたはやてにどうしたのだろうと思いながら、傷まみれのリィンを見て言葉を失う。
「寝取る間に私がリィンを頭で踏んだみたいで……」
あせあせとはやては説明すると、わかりました、といってリィンは急いで自分デバイス、クラールヴィントを手に取ろうとした。
「え……」
シャマルはクラールヴィントを見て言葉を失う……
「クラールヴィントも壊れてるぅ~~~」
その言葉にははやても驚く。
「騒々しいぞ、どうしたんだ?」
そして、なにやら騒がしいと思ったシグナムが駆けつける。
「シグナム…実は……」
そしてシャマルから簡単な説明を受けると…

496:まじかるしん
07/07/27 09:40:44
「よし、じゃあシャマルは急いで救急用具でリィンに救急手当てをしてくれ」
シグナムの冷静な言葉にわかった、といって下に下りるシャマル。
「シグナムぅ……」
ひぐ、ひぐ、と泣きながらはやてはシグナムを見る。
「主も落ち着いてください。主はリィンに怪我などさせていません」
シグナムの言葉にえ?とはやてはシグナムを見る。
「大体頭で押さえただけであれほど傷来ませんし、もち血が出ても主の髪の毛に血がついているはずですが、見た限りではついていません」
シグナムにいわれて、はやては自分の頭を触る。
確かに血はついていない。
だが、それはそれで疑問に残る。
「ほな、何であんな怪我を……」
はやては考える。
普通はあそこまで怪我なんてなかなかしない。
それを一晩で何かあったのか。
「はやて~~~」
シャマルの部屋で考えていると、ヴィータは眠たそうに目をこすりながらやってきた。
「さっきから携帯がなってるんだけど」
そういってパパパパーンとどこかの狩りゲーのテーマソングが流れている携帯を差し出すヴィータ。
はやてはそれを受け取る。
中身はメールでフェイトからであった。
はやては内容を読み、シグナムとヴィータに尋ねる。
「二人とも、フェイトちゃんからデバイスの確認してって。
なんでもフェイトちゃんとクロノくん、さらになのはちゃんまでもがデバイスがおかしいっていっとるみたいなんよ」
はやての言葉に?と首をかしげながら、二人はそれぞれの部屋へと戻る。

まずはシグナム。
はやてに言われ、シグナムはレヴァンテインを手にする。
それと同時だった。
『な、なんだ貴様!!?やめろデカブツ!!』
レヴァンテインがあるまじき言葉を言ったので、シグナムは少々面食らう。
「レ、レヴァンテイン?」
一体どうなったと言うのだろうか……
『それにここはどこだ!?俺はボルテールにいたはずだぞ!それが何で地上にいるんだ!?おまけに身動き一つとれんとはどういうことだ!!ええ!!?』
ヒステリック気味にさわぐレヴァンテインに、シグナムは呆然とするしかない。
テスタロッサたちのデバイスもこういう感じなのだろうか………

次にヴィータ
ヴィータはグラーフアイゼンを手に取り、そしてすぐにおどろいた。
『君……誰?』
グラーフアイゼンはとても驚いたようにヴィータを見る。
と言うよりも半分ビビッているようにも見える。
「おい!誰ってどういう意味だ!忘れたのなら本気で怒るぞ」
グラーフアイゼンはこんな冗談は言わないはず。
なら彼は誰なのだろうか……
『えっと……ごめん。ほんとうにわかんないや』
やけに気弱なグラーフアイゼンに、ヴィータはただ黙り込むしかなかった……


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