07/07/27 18:18:20
ギギが魔法少女で中将の愛人?
137:通常の名無しさんの3倍
07/07/27 19:00:19
URLリンク(rainbow.sakuratan.com)
DVDに載ってたなのはの設定解説。
138:通常の名無しさんの3倍
07/07/27 21:19:44
>>134
需要有り有りですよ!
待ってますぜ!
139:通常の名無しさんの3倍
07/07/27 21:23:32
>>134
いやいや、全然需要ありますからw
見たいです。まってます。
140:通常の名無しさんの3倍
07/07/27 22:03:32
>>136
ギギの仕事は分かってるがそれだけは止めて・・・せめて三提督とかグレアムあたりで勘弁して
最後はクロノかゲンヤあたりと
141:通常の名無しさんの3倍
07/07/27 22:06:53
ハサウェイには今度こそ成功して欲しいお
142:通常の名無しさんの3倍
07/07/27 23:50:05
ケネスを管理局がスカウトしに来て
「きみ いいしごとしてたね かんりきょくに はいらないか?」
143:通常の名無しさんの3倍
07/07/28 13:56:14
>>142
それなんて昔のスパロボのゲッターチーム?w
144:リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w
07/07/30 18:35:59
「おーっ! ホンマにごっついビルやなーっ!」
天を衝くようにそびえ立つ巨大なビル。
夢者遊撃隊、最後のメンバーである鎧丸の消息を尋ね、
武ちゃ丸たち新生夢者遊撃隊はついにここ名古屋の地に辿り着いたのであった。
「鎧王グループ……この半年で突如急成長を遂げた新興の巨大総合複合企業、か……」
「斗機丸、ホンマにここに鎧丸がおるんか?」
「それはわからんが、さる情報筋からのタレコミではここの社長が何かを掴んでいるらしい。
しかし現在の社長は極端に人目に触れるのを避けていて、その素顔を知る人物はごく一握り。
残念ながら情報元の人物も社長の個人情報については何も分からないそうだ」
「フゥム、正体不明の謎の社長はんか……」
巻之拾弐「謎が謎呼ぶ社長のシャチョーやでっ!」
「武ちゃ丸、頼むから恥ずかしい真似はしないでくれよ?」
「わーっとる、わーっとる! シュシュムこそ気ぃつけや!
なのはやユーノを見てみぃ、ちっちゃいのにちゃんとお行儀よーしとるで」
「にゃはは、私はお行儀良いっていうか、友達付き合いで慣れてるっていうか……」
「あぁ、そういやなのはのガッコって坊ちゃん嬢ちゃんの通う名門校って言ってたな」
「あ、うん。今はこの間のジュエルシードが起こした騒ぎで短期休校中だけど……」
シンヤの話題でその一件を思い出したなのはの顔は暗くなる。
あの日の事件で自分の生まれ育った海鳴の街は決して軽くない被害を被ったのだ。
未だにライフラインの復旧していない地域も多いという。
「あの四人組が樹海造りよった事件やな? 今度会うたら百倍返しにしたり!」
「そうだよ、それにもう二度とあんな事が起こらないよう、
僕達もしっかりジュエルシードを集めないと!」
「武ちゃ丸君、ユーノ君……うん!」
145:リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w
07/07/30 18:37:05
武ちゃ丸やユーノの励ましになのはが決意を新たにした時、
一同の元に数人の社員がやってきて、その中心にいた長身の女性が代表して彼らに話しかけてきた。
「新生夢者遊撃隊の皆様ですね? わたくし、社長秘書のナンシー阿久津と申します。
社長が上でお待ちです。只今よりご案内いたしますのでこちらへどうぞ」
「おっ、ついにご対面っちゅうわけやな!」
「お願いします。……さて、どう出るかな?」
「トッキーさん、いざと言う時は……」
「あぁ、君の結界魔法、頼りにさせてもらう。皆を守ってくれ」
噂の社長と遂に面会がかなう事になり、様々な思惑を胸に緊張して秘書のナンシーについて
警戒を崩さぬままエレベーターへと乗り込む一同。
そんな彼らの様子をモニターで確認し、警備員達は一息ついていた。
「社長のお客様、無事にエレベーターまで乗り込まれました。どうぞ?」
『キャピタル了解。それでは通常の業務に戻ってください』
「了解。ふぅ、少しは肩の荷が下りたか」
「あぁ。しかしどういう客なんだろう、武者頑駄無に子供の組み合わせって……なぁ?」
「そんな事俺達警備員が気にしたってしょうがないだろ? ともかくモニターから目を離すなよ」
「おう……うん?」
「どうした?」
「いや、今地下の金庫室付近のカメラになんか動くものが……」
「それは確かか? ちょっと確認してきてくれ」
「俺がか?」
「この間ドーナツ奢ってやっただろ? 頼むわ」
「へいへい……じゃあ現場を確認して来ます、と」
そう警備員の一人は言い残し、警防とライトを手に警備室を後にする。
残された一人がそのモニターを注視しても、そこにはもう誰の姿も映ってはいなかった。
しかしカメラはあの時確かに不審者の影を捉えていた。
巨大な死神の鎌を携えた不気味な黒い影を……
146:リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w
07/07/30 18:38:07
「シャチョー、お連れいたしました」
「うむ、入るだぎゃー!」
最上階まで何事もなくたどり着いた一行はとうとう社長の待つという社長室の前に立っていた。
ナンシーはその重そうな扉を何の苦もなく開き始める。
「いよいよやな!」
「鬼が出るか、蛇が出るか……!」
「し、失礼しまーす!」
ススムが丁寧に挨拶をし、ナンシーの後に付いて入る一同。
ついつい身構える武ちゃ丸とトッキー。ユーノも自然となのは達三人の前に立つ。
しかし、彼らを待っていたのは拍子抜けするような明るい声と意外な人物であった。
「よう、武者丸、斗機丸! 是断の門では世話になったな」
「ニャッハッハッ! よく来てくれただぎゃー! 待ってたぎゃー!」
「紅零斗丸!? それとあの武者は!?」
紅い鎧にその身を包んだ武者、紅零斗丸と見たことのない小柄な武者が一同を出迎える。
皆の顔を見渡したその武者は自信満々に笑顔を浮かべ、彼らの疑問に答えた。
「ニャ~ッハッハッハッハッ! 驚いたきゃー?
ボクちゃんがこの天下の鎧王グループの社長なんだがや!!」
一同はその言葉を聞いて一瞬フリーズした後、大きな驚きの叫びをあげる。
「ボク達の住むアパートを経営している鎧王不動産を……」
「しつこくワイらの店とお客さん取り合うたタコヤ王チェーンを展開しとる鎧王フーズを……」
「そして鎧王エンターテイメントを傘下に収めるこの鎧王グループの経営者が……」
「武者頑駄無だったのかー!?」
異世界人であるユーノを除いた新生夢者遊撃隊の面々はあまりの事に衝撃を隠せない。
その様子を見てシャチョーは満足そうにニヤリと微笑み、懐に持っていた扇子を広げた。
147:リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w
07/07/30 18:39:16
「ニャハハハ! 豊臣秀吉の天下取りをヒントに経営ノウハウを構築しただけだぎゃー!
あ、ナンシー、君は席を外してくれてもいいぎゃー」
それに相槌を打つ形で紅零斗丸も会話を補足する。
「俺の歌手デビューをバックアップしてくれているのもシャチョーでな。
今日は……そう、ビジネス面での打ち合わせに来ているんだ」
「……しかし、これで必要以上に俺達の事を知っていた理由がわかった。
そりゃあ社長本人が武者頑駄無なら知っていても何の不思議もないな」
「チミ達にはいらん心配かけさせてスマンかったぎゃー!
けど、これで納得してくれたきゃー?」
「あ、あぁ。まぁ……そんな事より、俺達は大事な用事があってここまで来たんだ。
アンタ、鎧丸という武者の事を何か知っていないか?」
「あっ、そやそや! 鎧丸の事知っとるやろ? どこにおるんや!?」
トッキーと武ちゃ丸が鎧丸の名を出すと、見るからに挙動不審となって慌てだすその社長。
「え……えええ……確かヤツは全戦争行為への武力介入を開始するとかで半年は戻ってこない…
あっ、違う! コロニー開発のために宇宙に行って戻って来ない……
それよりもっとオイシイものが食べられてカワイイ女の子と一緒にいるほうがいいだぎゃー!
って、これはボクちゃんのことで……あわあわ……」
あからさまに怪しいを通り越して不審者丸出しの回答でお茶を濁す社長。
その姿を見て遊撃隊年少組はその身を寄せ合いひそひそと相談しだす。
「……オイ、ありゃどう見ても……」
「怪しい……よね」
「あ、でもでも! トッキー君がいるからきっと真実を解き明かしてくれるよ!」
「そ、そうだね! トッキーさんならきっと……」
トッキーに過大な期待を寄せる年少組。しかしこの後信じられない展開が!
「何で一言俺達に言ってくれなかったんだ!?」
「びえーん! もう三人で一緒に戦うことはできひんのかー!?」
どんがらがっしゃんと激しい音を立てて豪快にずっこける年少組一同。
今日この瞬間、武ちゃ丸はともかくトッキーの評価は彼らの中で底値を割った。
148:リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w
07/07/30 18:40:16
「……ま、まぁとにかく、鎧丸はボクちゃんにこう言い残して行ったぎゃー!
『鎧王グループ社長のシャチョーの下で堕悪闇軍団と戦ってチョーよ』と!」
「おぉ! 鎧王グループがバックにいるなら心強い!」
「何かごっつい武器造ってくれへん?」
「お、おう! 任せるだぎゃー!」
盛り上がる彼らと対照的に年少組はため息をつきながらぼそぼそと呟いた。
「ねぇ、シンヤ……」
「ちょっといろいろ、その……アレじゃない?」
「放っておいていいの?」
「言うな。何だか俺、情けなくなってきた」
そんな武ちゃ丸たちの様子を見て、紅零斗丸は真剣な顔つきで悩みを抱えていた。
(……シャチョーは商売で大成功をおさめてから戦いを避けるようになってしまった……
約半年……戦いが始まるには長すぎたのか?
この世界にやってきた頃の俺達は仕事に戦いに互いにがんばることを誓い合った。
だがシャチョーは金儲けの魔力に取りつかれて以来それに夢中になり
すっかり武者魂を失ってしまった……このままでいいはずはないだろう?
シャチョー……いや……!)
しかし、紅零斗丸の心の叫びに応えるものは誰もいない。
ただ焦る気持ちと、かつて間近で感じた不吉な予感ばかりが彼の胸を締め付けていた。
「……ありゃ、誰もいないな。見間違いだったのか?」
同じ頃、地下の金庫室周辺では先ほどの警備員が黒い影を追って周囲の警戒を行っていたが、
見回してもネズミ一匹見当たらない。もう一度確認して帰ろうと思ったその時であった。
「ファファファ……貴様は運がいい。
この世界ではじめて俺様の戦を目の当たりにすることができるのだからな」
「!? だ、誰だ!?」
不気味な声に慌てて周囲を見回すがやはりそこには誰もいない。
「どこを見ている……俺はここだぞ、人間よ」
後ろを振り向くと、自分の影から浮き上がってくる禍々しい黒い鎧に身を包む存在。
その姿を確認するいとまもなく、その警備員の意識はブラックアウトしていった。
149:リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w
07/07/30 18:41:20
<<Master, Caution>>
「えっ?」
レイジングハートがなのは達に何らかの非常事態が起こったことを告げる。
しかし、ほかの人間にも分かる異変はそれからあまりに早く訪れた。
突如として巨大な地震が起こったかのような震動が鎧王グループ本社ビルを襲ったのである。
「わっ!」
「な、何や!?」
「警備室! いったい何が起こったんだぎゃー!?」
『こ、こちらは警備室……金庫室付近に侵入者確認!
調査に向かった警備員一人の音信が途絶しました!』
「何ー!?」
シャチョーの顔は青ざめ、事態を信じられない様子だ。
「とにかく行こう! 人が行方不明になったいるというならなおさらだ!」
「わかった! ほな行くでシャチョーはん!」
「あっあっ、ちょっと待つだぎゃ! ボクちゃんは……」
「……いや、どうやらお客さんらしい」
紅零斗丸が背中の刀に手をかけ、油断なく周囲に気を配る。
その視線を見透かしたかのように床から幾体もの謎の武者が文字通り湧いて出てきた。
「な、何やこいつらは!?」
「下忍悪魅(あーみー)……魔界の者が自らの手下として使う闇の魔力から作り出された雑兵だ。
こいつらとは何度もやりあったからな。そしてこいつらの親玉とも!
そいつがおそらく地下の事故を起こした元凶だ! 急げ! この場は俺が引き受ける!!」
「おう!」
「スマン!」
「だ、だからボクちゃんはぁ~!!」
「ま、待ってよ武ちゃ丸!」
「俺も行くぜ、トッキー!」
囮になった紅零斗丸を残し、武ちゃ丸、トッキー、シャチョー、
それにススムとシンヤは非常階段を駆け降りる。
しかし、なのはとユーノはその場に残ることを選択した。
150:リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w
07/07/30 18:43:56
「下がるんだ君たち! こいつらは俺が……」
「いいえ! たった一人で戦うなんて危険です! 私達もお手伝いします!」
「お手伝いって何を……?」
なのはがそう宣言した後、彼女は即座にレイジングハートを起動し、戦闘準備に入る。
「リリカル、マジカル……まとめて動きを止めちゃえ! レストリクト、ローック!!」
「僕も行くよ、なのは! チェーンバインド!」
二人の拘束魔法が部屋を埋め尽くしていた下忍悪魅の大半を縛り上げ、その自由を奪う。
「き、君達は……一体……?」
動きを封じられた敵を斬り捨てながらも驚いた表情でなのはとユーノを見つめる紅零斗丸。
その紅零斗丸の問いに二人はポーズを作り笑顔でこう答えた。
「新米魔法少女と……」
「その相棒です!」
あっけにとられた表情で紅零斗丸は問い返す。
「ま、まほー……何だって? 巫女と、妖怪か式神のようなものか?」
「……いいかげんもう慣れたけど僕またそういう扱い!?」
「ユ、ユーノ君、ガンバ! それより、武ちゃ丸君達追わなくていいんですか?」
またも妖怪扱いされるユーノを励ましつつ、なのはは紅零斗丸に問いかける。
「あ、あぁ、そうだな。 えーっと、君たちはどうする?」
「はい。もちろんついて行きたくはあるんですが……」
「そうか。じゃあ……しっかり掴まっていてくれ!」
「えっ? きゃあぁぁぁっ!?」
紅零斗丸が扉を乱暴に蹴り開けると、廊下には先程以上の数の下忍悪魅が待ち構えていた。
「な、何これー!?」
「待ち伏せだ! この用意周到さ……下にいるのは、間違いなく……!」
「け、けど一体こんなのどうすればいいんですか!?」
「だから掴まってろって言っただろう? そうら、行くぞ!」
151:リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w
07/07/30 18:45:08
そう言うと紅零斗丸は身の丈の倍ほどもある巨大な刀、烈龍刀を軽々と振り回し、
気合いを集中させてその刀を放り投げ、なのは達を抱えたままその刀の上に乗ってバランスをとる。
「これが俺の必殺技! 天動奥義! 巨刃大津波(びっぐぶれーどうぇーぶ)!!」
まるでサーフボードのように刀を自在に操り、衝撃波の波の上を滑るように滑空して
並みいる雑兵を次々蹴散らしていく紅零斗丸。
「す、すごい……!」
「シャチョー達が心配だ、このまま一気に下まで行くぞ!」
「えっ? このままって……ひょっとしてこの状態のまま!?」
「あれ、僕つい最近似たような目に遭ったような……って、降ろしてぇぇぇぇぇ」
なのはとユーノの切なる訴えは聞き入れられないまま、紅零斗丸は刀を滑らせ、下へと向って行く。
先行した武ちゃ丸やトッキー、そして謎の侵入者の待つ地下へと。
一方、当の武ちゃ丸達は……
「うわっ、こらまた派手に壊されとるなぁ!」
「シンヤとススムはあまり奥までは来ちゃいけない。いくらなんでもここは危険だ」
「う、うん……? 武ちゃ丸、トッキー! あそこに人が!」
ススムが指で示した先に、傷だらけで倒れている警備員の姿が見える。
「大丈夫きゃ? しっかりするだぎゃー!」
「うぅ……しゃ、社長……黒い、黒い死神が……鎌を……」
そこまで言うとその警備員は力尽き、気を失ってしまう。
「おいっ!?」
「大丈夫、気を失っているだけだ」
「黒、死神、鎌……まさかこないだの女の子か?」
「バカな。彼女は破壊工作を目的とした行動はとっていなかったはずだぞ?」
「そやなぁ……ほないったい何モンや?」
地下を荒らしに荒らした犯人について議論をぶつける武ちゃ丸とトッキー。
最後に武ちゃ丸がぽろりとこぼした一言に反応する形で奥からゆっくりと人影が迫ってきた。
「ファファファ……俺を呼んだか? 武者頑駄無どもよ……」
152:リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w
07/07/30 18:46:11
地獄の底から響くかのように低く、そして無意識に焦燥感を煽るその声。
武ちゃ丸達は確かにその声に聞きおぼえがあった。
「あっ、アイツは!?」
「まさか……堕悪魔刃頑駄無か!?」
「ホウ。誰かと思えばあの時是断の門に攻め入ってきたイキのいい連中か」
その男の名は堕悪魔刃頑駄無。強大な闇の魔力を持ち
すべての世界を支配せんと目論む堕悪闇軍団の首魁であった。
「答えろ、魔刃頑駄無! なぜキサマがここにいる!?」
「フン、この俺が鉄仮面の残したデータを元に作り上げたエネルギーの探知、吸収システム……
『堕悪馬吸夢(だーくばきゅーむ)』が、ここにジュエルシードがあると分析したのよ」
「何やて!?」
「それは本当なのか、シャチョー!」
「う、うむ……チミ達に後で渡すつもりだったんだぎゃー……
よりにもよってコイツに先回りされるとは……けど、ここでそうそう好きにはさせないぎゃー!」
そう威勢良く言ったかと思った瞬間、シャチョーは武ちゃ丸とトッキーの後ろに回り、
二人の影に隠れるようにしておっかなびっくりこう言い放った。
「その金庫には指一本触れさせにゃーだよ! この二人がおみゃーの相手するでよー!」
「……気が小さいんだなぁ~」
「ホントに武者なのか、コイツ?」
そんなシャチョーの情けない様子を見て、ススムとシンヤはそれぞれ苦笑いをしながらそう呟いた。
「ともかく、ここで会うたが百年目! 今度こそケリつけたるでーっ!」
「武ちゃ丸!?」
「ちゃう! 今のワイは……」
魔刃に勢いよく突っ込んでいく武ちゃ丸は額のハロの飾りを光らせつつ、ススムの呼びかけに答える。
「武者丸様だーっ!!」
刹那、魔刃に斬りかかる武ちゃ丸の姿は鎧を纏った彼の本来の姿、武者丸へと変貌していた。
153:リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w
07/07/30 18:47:22
「うぉぉぉぉっ! 魔刃! ここでテメーをぶっ倒して、全部終わらせてやるぜ!」
「何度打ち合ったとて同じ事。小僧、貴様では俺には勝てぬ!」
大上段から振り下ろされた真っ向両断を自慢の大鎌、ファントムハーケンで受け止めながら
魔刃は血気にはやる武者丸を余裕綽綽の表情で軽くあしらう。
「てっ、てめぇ……なめんじゃねぇーっ!!」
「フン!」
さらに熱くなり、魔刃頑駄無を滅多切りにする武者丸。しかしその全ての斬撃は見切られ、
むなしく宙を切るかファントムハーケンに打ち払われる。
そして渾身の一撃をかわされた際に発生した大きな隙を突かれ、ファントムハーケンの束で
激しくひび割れた柱へと叩きつけられ、武者丸は瓦礫に埋もれてしまう。
「単調!」
「武者丸!? このぉーっ!!」
今度は武装を完了した斗機丸がナギナタを手に超高速で魔刃をかく乱する。
しかし、魔刃は逆に微動だにせず、斬りかかってきた斗機丸の攻撃をあえて受け止める。
「何ッ、傷一つ付いていないだと!?」
「非力!」
「グハァッ!?」
白銀に輝く左掌、「ジーグ」によるプラズマを纏った掌底が斗機丸の急所をとらえ、
彼もまた一撃で吹き飛ばされてしまう。
「そ、そんな……まさか……」
「トッキーも、武ちゃ丸も……手も足も出ねえなんて……」
「わかったか、ヒヨッコども? ムダだということが!」
今まで無敵を誇った武者丸と斗機丸が二人がかりでも歯が立たない敵に戦慄するススムとシンヤ。
しかし、それでもなお武者丸は瓦礫を押しのけて立ち上がった。
154:リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w
07/07/30 19:18:32
「うるせえっ! まだ俺達はやられたわけじゃねぇ!!」
「まだ力の差を理解できんか、愚か者め!!」
刀を手に駆け寄る武者丸を迎え撃たんと魔刃もまたファントムハーケンを構え、走り出す。
そして互いの全力をぶつけあい、すれ違いざまに刃の一撃を加えあう二人。
その斬り合いに脇腹を切り裂かれ膝をついたのは、武者丸の方であった。
「ぐっあ!!」
「武ちゃ……武者丸!?」
「フン、他愛な……!?」
半死半生の武者丸を振り返ろうと魔刃頑駄無が一歩踏み出した時、バチッという大きな音とともに
兜の右側のしころの吹返しが外れ、落下した。武者丸の一撃が兜に命中していたのだ。
その地に落ちた吹返しを見て魔刃はあくまで冷静に事態を分析する。
「……成程。勢いも度を超せば見事な一撃になるというわけか……」
吹返しを踏みつぶし、倒れている武者丸にじりじりとにじり寄る魔刃頑駄無。
「その力、我が野望の妨げになるやもしれん! 勢いの増さぬうちに摘んでやろうぞ!!」
「!」
「武者丸、逃げろ、逃げるんだ! 武ちゃ丸ぅぅぅぅっ!!」
「バカトッキー、いつまで寝てんだ! 武ちゃ丸が危ねーんだよ! 起きろ、起きろよぉっ!!」
「あ、あわわわ……こんな展開、ボクちゃん聞いてないみゃー!」
敵首領、堕悪魔刃頑駄無の強大な力の前にに成す術なく倒れた武者丸と斗機丸!
果たしてなのはとユーノ、そして紅零斗丸は彼らの窮地を救うことができるのか!?
次回を待て!!
155:リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w
07/07/30 19:20:05
次回予告(ねくすとぷれびゅう)
「遂に私たちの前に姿を現した堕悪闇軍団のボス、堕悪魔刃頑駄無!」
「けど、ボクらの目の前で武ちゃ丸達はその魔刃頑駄無に倒されてしまった……」
「捨て身の覚悟で仇敵、魔刃頑駄無に挑む紅零斗丸さんの想いとは?」
「そしてとうとう出陣する最後の夢者遊撃隊、鎧丸の雄姿とその正体は!?」
「次回、SD頑駄無対魔法少女 リリカル武者○伝、巻之拾弐!!」
「『剛力無双! 轟くその名は鎧丸やでっ!』」
「リリカルマジカル、想いはきっと……」
登場武者符亜意留(ふぁいる)
武者紅零斗丸 [ムシャグレードマル]
出典:超SD戦国伝 刕覇大将軍編
モデル:RX-78ガンダム
天界武将戦刃丸、魂武者闘刃丸を兄に持つ武者三兄弟の末っ子。
熱くなりやすい性格の熱血漢だったが、鉄機武者軍団や魔界の軍勢との戦い、
師、豪剣頑駄無の教えにより一人前の武者として、そして指導者として成長した。
戦刃丸から受け継いだ不思議な力の宿る巨大刀、烈龍刀を武器に戦う。
辛く長い戦いの末、鉄機武者真星勢多(テッキムシャマスターゼータ)と心を合わせて
一時的に「刕覇大将軍」の姿を得、一度は魔刃頑駄無ら魔界の軍勢を打ち倒したのだが、
パワーアップして復活した堕悪魔刃頑駄無と、ここ天馬の国こと日本で再び相対する事に。
必殺技は烈龍刀をサーフボードのように扱い、津波のような強烈な衝撃波に乗って
体当たりを仕掛ける「天動奥義・巨刃大津波(ビッグブレードウェーブ)」。
日本では秋田のさくらんぼ農園で働く傍ら、演歌界の超大型新人、
「紅 零斗丸」(くれない れいどまる)として歌手デビューも果たしている。
ちなみに名前の由来はガンプラ・マスターグレードクラスの「グレード」から。
先述の真星勢多の「マスター」と合わせて対になるようネーミングされている。
156:通常の名無しさんの3倍
07/07/30 20:28:04
紅零斗丸と魔刃頑駄無キターー
職人さん、ごっつGJ!
157:通常の名無しさんの3倍
07/07/30 22:46:55
ダークバキュームって確かペガサスの国沈没エネルギーをすいとるやつじゃなかったけ?
がどちらにしてもGJ!
158:通常の名無しさんの3倍
07/07/31 00:06:16
死神対決をこっそりと期待
159:通常の名無しさんの3倍
07/07/31 13:08:40
いかん!wktkが止まんねぇw
160:通常の名無しさんの3倍
07/07/31 17:56:44
GJ!
次回に大期待だな
161:通常の名無しさんの3倍
07/07/31 22:28:23
プラモはしょんぼりだったんだよな、○になってから……
162:通常の名無しさんの3倍
07/08/02 00:57:13
それ以前の武者プラモも良かったとは言い難い。
163:通常の名無しさんの3倍
07/08/02 01:14:43 O1qwKEiz
星屑と08が出て来るなら……
ノリスとガトーは魔法使い相手でも活躍できますか?
164:通常の名無しさんの3倍
07/08/02 01:21:39
ヤツらは古代ベルカを普通に使いそうな気がします
165:通常の名無しさんの3倍
07/08/02 01:26:38
まぁ、魔導師ってよりは騎士だよね、二人とも
166:通常の名無しさんの3倍
07/08/02 01:36:02
騎士ってよりは武士のほうがしっくりくるけどね
167:通常の名無しさんの3倍
07/08/02 06:25:34
ノリスはともかく、ガトーはテロリストにしか見えない
168:通常の名無しさんの3倍
07/08/02 08:09:11
あ、すまん
ミッドかベルカかって意味の「騎士と魔導師」って意味だった
169:通常の名無しさんの3倍
07/08/02 08:15:20
なんのことはない。
ジオンをベルカに置き換えれば
テロリストで騎士なヤツが出来上がる。
ん?ベルカ公国?
170:通常の名無しさんの3倍
07/08/02 15:42:15
知ってるか?ヴォルケンリッターは三つに分けられる。
171:通常の名無しさんの3倍
07/08/02 18:09:32
戦況の読める犬
172:通常の名無しさんの3倍
07/08/02 18:19:59
戦いだけのバカ
173:通常の名無しさんの3倍
07/08/02 18:30:24
ブチ撒け緑のおばさん
174:通常の名無しさんの3倍
07/08/02 18:35:26
劣化の将
175:通常の名無しさんの3倍
07/08/02 19:17:36
オイ、4つになってんぞ
176:通常の名無しさんの3倍
07/08/02 19:36:01
台詞のない噛ませ犬
177:通常の名無しさんの3倍
07/08/02 19:37:43
分裂してるのまでいるー!?
178:名無し ◆141aDzFMbk
07/08/02 23:22:23
分裂と聞いて小ねた
なのはA「(リリちゃ箱の)高町なのは九歳!」
なのはB「(無印の)高町なのは六歳!」
なのはC「(Asの)高町なのは六歳その2!」
なのはD「(StSの)高町なのは十九歳!」
なのはA,B,C,D「無敵カルテット!魔法少女リリカルなのは’s見参!!」
がんだむ「いやああ~!まともな人が壊れた~!!」
F・T・H「(鼻から大量出血)」
マーク2「うおおい!誰か医者呼べ!医者!!」
179:通常の名無しさんの3倍
07/08/02 23:37:59
9歳ですよ!
180:リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w
07/08/02 23:40:02
「その力、我が野望の妨げになるやもしれん! 勢いの増さぬうちに摘んでやろうぞ!!」
「!」
巨大な死神の鎌、ファントムハーケンを振り上げ、倒れた武者丸にとどめを刺さんとする
堕悪闇軍団首領、堕悪魔刃頑駄無。
しかし、その無慈悲な一撃はファントムハーケン同様の巨大な一振りの刀によって遮られた。
「!! 俺とした事が……貴様の存在に気がつかなかったとは!」
「久し振りだな。やはりお前が来ていたか……魔刃頑駄無!!」
「この世界でも刃を交えることが俺と貴様の宿命だというのか! えぇっ、紅零斗丸よ!?」
はるかな時空を越えて、再び対峙する紅の剣士と黒き魔王。
二人はかつて天宮の未来をめぐり、激しい死闘を繰り広げた大敵同士であったのだ―
巻之拾参「剛力無双! 轟くその名は鎧丸やでっ!」
「お前がその邪悪な意思を撒き散らし続ける限り、例え何度蘇ろうと俺はお前を止めてみせる!」
「フン、できるかな……真星勢多を欠き、刕覇大将軍の力も持たぬ今の貴様に!」
不敵に微笑む魔刃頑駄無に対し、紅零斗丸はあくまで毅然とした態度で立ち向かう。
「魔界の力と切り離されているお前も条件は似たようなものだ!
付け焼刃の強化措置で水増ししようと、俺に打ち勝つことは決して叶わぬと知れ!」
「ほざくなぁーっ!」
互いに身の丈以上の巨大な武器を軽々と使いこなし、互角の戦いを繰り広げる紅零斗丸と魔刃頑駄無。
ススムとシンヤはただただその気迫に圧倒される他なかった。
「一気にケリをつけるぞ、魔刃頑駄無! 天動奥義、巨刃大津波!!」
「それはこちらの台詞だ! ファントムハーケン……狂鎌地獄葬(カオスインフェルノ)ォッ!!」
強烈な光と闇の力を秘めた刃がぶつかり合い、激しい火花を散らす。
辺りの崩壊した地下施設の様相もあいまって、
それはまさに最後の黙示録と呼ぶにふさわしい光景であった。
181:リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w
07/08/02 23:41:14
「も、もう始まってる……の……?」
「そう……みたい……だね……」
「うっわ、なのはにユーノか!? お前ら何でそんなにボロボロになってるんだ!?」
紅零斗丸にわずかに遅れて現場に辿り着いたなのはとユーノ。
しかし、ここに来るまで巨刃大津波でさんざん振り回されたためか早くも満身創痍の状態であった。
「こないだのウェイブライダーとか、かわいいもんだったよ、実際……」
「も、もうしばらく絶叫マシンは乗らなくてもいいかなー……なんて……」
「んな事言ってる場合かよ!? トッキーと武ちゃ丸が……」
シンヤは意識が朦朧としている二人に今現在自分たちが置かれている状況を必死で伝えようとする。
武者丸と斗機丸が倒されてしまい、直ちに治療が必要である事を。
「武者丸、しっかりして! 武者丸!」
「ス、ススム……か……このくらい、何とも……」
「武者丸……クッ!」
ふらふらの状態の武者丸を見て、ススムは何かを決意して階段で上の階に向かおうとする。
「オイ、ススム! こんな時にどこ行こうってんだよ!?」
「上に行って、タコ焼きを焼いてくる!」
それを聞いてシンヤは呆れ半分怒り半分でススムを問い詰める。
「タコ焼きだと!? お前、一体どういうつもりなんだよ!?」
「ボクが武ちゃ丸にしてあげられる事は、美味しいタコ焼きで元気付けてあげる事くらいだから!
だからボク、行ってくる!」
「あっ、待てよ! 本気で言ってんのかそれ、ススム!?」
「ススム君!?」
シンヤの制止を振り切り、ススムは震える足を押さえ込み階段を駆け上っていった。
182:リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w
07/08/02 23:42:20
そうしている間にも紅零斗丸と魔刃頑駄無が繰り広げる次元の違う戦いは続き、
技に勝る紅零斗丸と勢いで上回る魔刃の激突は膠着状態を迎えていた。
両者ともにかなりのダメージのためか息を切らせ、その戦いの凄まじさを思い知らせる。
「グゥ……さすがに貴様と正面からやり合うのはなかなか骨が折れるな……」
「お前の手の内などとうの昔に割れている! いかに強力な力といえど、直撃さえ避ければ!」
「このままでは互いに消耗戦を強いられるのみ……久々に血沸き肉踊る戦いだったが、
これを試してみるのもそれはそれで悪くない趣向だ!」
魔刃頑駄無はマントの影から長銃の形をした特殊装置、堕悪馬吸夢を取り出して
その照準を倒れている武者丸と斗機丸、その後ろであたふたしているシャチョーに定める。
「何をする気だ、魔刃!?」
「この堕悪馬吸夢は森羅万象ありとあらゆるエネルギーを吸収する装置……
それは武者魂とて例外ではない! これだけ武者頑駄無がいればさぞかし力になることであろう。
さぁ、我が野望の贄となるがいい!」
堕悪馬吸夢を作動させ、エネルギー吸引光線を照射する魔刃頑駄無。
これで勝ったと思ったのも束の間、その事態を黙ってみていらず、その矢面に立った者がいた。
「させるかぁーっ!!」
「なっ、紅零斗丸!?」
「くっ……しまった! こうなれば紅零斗丸、貴様だけでも武者魂を吸収してやる!」
紅零斗丸は全身にエネルギー吸引光線を浴び、少しずつその体組織が分解されていく。
文字通り体をバラバラにされるほどの苦痛に耐えながら、シャチョーに呼びかけた。
「ぐっ……今のうちだ! シャチョー! やつを仕留めるんだ!」
しかし、頼みのシャチョーは及び腰になって曲がり角の影にその身を隠してしまう。
「戦いはコワイだぎゃ、コワイのは……コワイのはイヤだぎゃ~!!
ボクちゃんはもう戦いに戻る気はないのみゃー! 武者丸、なんとかしてチョー!!」
183:リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w
07/08/02 23:43:49
その光景を見て一番絶望したのはなのはでも武者丸でもなく、後ろで見ていただけのシャチョーだった。
「もう駄目だぎゃー! もうボクちゃん達はおしまいだぎゃー!!」
「シャチョー……」
「!?」
慌てふためくシャチョーに今にも消え入りそうな声が届く。
シャチョーはその声のした方向、堕悪馬吸夢の光線の商社地点、すなわち紅零斗丸の方を見た。
「くっ……シャチョー、聞こえて……いるか……?」
「紅零斗丸!?」
「ホホウ、まだ息があるか。さすがは紅零斗丸、かなりの武者魂を持っているな」
紅零斗丸はほとんど実体を失いつつも、最後に残された力でシャチョーに語りかける。
「なぁ、シャチョー……今日俺を呼んだのは打ち合わせのためなんかじゃなかったんだろ?
本当はあの二人と一緒に戦うために今の自分をどう変えるか話したかったんだろう?」
ハッとした表情になり、ただじっとぼんやりとした紅零斗丸の輪郭を見つめるシャチョー。
「お前は戦おうとしている自分に気づいていないだけだ……お前の武者魂の火は消えていない!
俺はお前の武者魂を……信じている!」
そして照射されていた吸引光線がついに停止する。紅零斗丸が立っていたはずのそこには、
もう何も、そう、鎧の一かけらさえそこには残されていなかった。
この瞬間、武者紅零斗丸はこの世界からその姿を消したのであった。
「ファファファ! 紅零斗丸の力、確かにいただいた! 次は……武者丸! 貴様だ!!」
「クソ……!」
打てる手はすべて打った。しかし、それでも自分の刀も、斗機丸の刃も届かなかった。
なのはの全力の砲撃も通用せず、回復も間に合いそうにない。
そして何よりこの中では一番の実力を持っていた紅零斗丸ももういない。
ここが自分の散り場所か……武者丸がそう覚悟を決めた時、運命の歯車に最後の部品がはめ込まれた。
184:リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w
07/08/02 23:45:21
「ム? なんだ、このチビ武者は?」
「シャ……シャチョー?」
ゲームのコントローラーに鍵が付いたような不思議な道具を手に、
シャチョーは涙を流しつつ両者の間に仁王立ちしていた。
「紅零斗丸……ボクちゃんなんかのために! 許して……許してほしいのみゃー!!」
シャチョーはコントローラーを天にかざし、今までの彼からは考えられないほど力強く吼えた。
「ボクちゃんは紅零斗丸のために今この瞬間だけでも、武者に戻るんだぎゃー!!」
シャチョーは高らかにそう宣言し、コントローラーの中心のスタートボタンを押しこむ。
そして鎧王グループ本社ビルのさらに地下深く、極秘に建設された秘密指令基地では……
「スタートシグナル確認……シャチョー、いよいよご出陣ですね!」
シャチョーのコントローラーキーのスタートボタンが押されると、
秘書のナンシーの元にシグナルが届き、とあるファイナルロックが解除される。
ロックが解除されると施設内にはホラ貝の音が鳴り響き、職員が忙しそうに右往左往する。
「89ゲート、90ゲート、91ゲート、オープン」
「シャチョーの現在位置を確認。3番デッキが最も最適です」
「了解! カタパルトデッキ三番に"ユニットY"を移送!」
「"ユニットY"、デッキ固定。射出カウント開始します」
ここはウルトラ警備隊かネルフかと言わんばかりのメカニカルな施設で、
厳重に封印されていたある物がついに動き出す。
それはシャチョーの武者魂そのものと言っていい代物であった。
「最終安全チェック、オールグリーン! 行けます!」
「わかりました。それでは"ユニットY"、射出してください」
「了解! "ユニットY"、射出!!」
185:リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w
07/08/02 23:46:45
魔刃頑駄無の後方に凄まじい音を上げて床が開き、背の高い人ほどの高さの「何か」がそこに姿を現す。
さすがの魔刃も何事かと目を白黒させてそちらに目を奪われた。
「な、何!? 何だ、コレは!?」
「オミャーをやっつけるものだぎゃー!!」
その隙を突いて、シャチョーはその影の後方に回り込み、コントローラーキーの鍵の部分を
その背後にぽかりと開いている鍵穴に差し込み、展開した。
「鎧鋼力服(よろいすーつ)、オープン! 始動!!」
シャチョーはその中に入り込み、コントローラーをセットし、
その内部のモニターに次々表示される情報にざっと目を通して異常がないことを確認すると
コントローラーを強く握りしめ、冷静な口調で自分を鼓舞するかのように呟いた。
「ひっさしぶりに、行くだぎゃー!!」
その影から何かの駆動音とともに激しい蒸気が噴き出したかと思えば、その蒸気を突き破って
太く、力強い腕が魔刃頑駄無に対して左フックから顎に右アッパーの連撃を決める。
無造作に繰り出された技にも魔力にも依存しない純粋に物理的なその力は
完全に魔刃の虚を突き、思わぬ痛手を与えることに成功した。
「な、なんというパワー!? あのチビは一体どんな手品を使ったというのだ!?」
「あの腕は、まさか……?」
「武ちゃ丸君、知ってる人なの?」
漂う蒸気の中、両足に仕込まれたキャタピラを全力で回転させ、飛び出してくるその姿。
そう、それは武者丸にとって何よりも見慣れた姿だった。
右手にダブルライフルを携え、落ち着いた色調の緑色に染め上げられたそのボディ。
歩く要塞といっても過言ではない火力と重装甲、そして強力なパワーを兼ね備え、
後方支援と戦略面でその力を発揮した旧夢者遊撃隊の要であった存在。
そしてこの最初の旅の尋ね人で、彼らにとって欠かすことのできない存在。
そう、その名は……
「シャチョーが……シャチョーが鎧丸だったのか!?」
186:リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w
07/08/02 23:48:00
よろめく体を刀で支え、鎧丸に話しかける武者丸に鎧丸は毅然とした口調で対応する。
「武者丸、話はあとだ! 今はこの悪魔を叩き潰す!」
キッと鋭い眼差しを魔刃頑駄無に向け、戦闘態勢を整える鎧丸。
魔刃はふらつく頭を抑え込みつつ、あくまでシビアに戦況を分析する。
「くっ……今のは油断したが、そのような鈍重な装備でこの俺に対抗できるとでも……」
「鎧丸の鈍さは俺がカバーする。それが俺達の戦い方だ!」
そして鎧丸の隣に傷が回復し、目を覚ました斗機丸が並び立つ。
斗機丸の回復に魔力を費やしすぎ、すでにバテているユーノはその脇に抱えられていた。
「トッキー君、それにユーノ君!」
「ようやくお目覚めか斗機丸、こっちが一番しんどい時におねんねしやがって……」
「スマン、遅くなったな武者丸、なのは、それにシャチョー……いや、鎧丸。
紅零斗丸の分まで礼はたっぷりと返させてもらうぞ、魔刃!!」
「一番大事な時に間に合わなかった……ごめん、皆。役に立てなくて……」
「ううん、そんな事ない、そんな事ないよ! それよりユーノ君、大丈夫?」
斗機丸からユーノを受け取り、心配そうに抱きしめてその顔を覗き込むなのは。
何だかんだ言っても、ユーノは未だ本調子にはほど遠い状態なのだ。
「ぼ、僕なら平気だよ……それより早く武ちゃ丸の治療を……」
「バカ野郎、無理すんな! 俺の傷なんて大した事……クッ!」
ユーノの身を案じる武者丸だが、武者丸の傷も決して浅くはない。
そんなボロボロの武者丸のもとに暖かい声が届く。
「武ちゃ丸ーっ!!」
「ススム……?」
「ボクが魂込めて作ったタコ焼きだ! これで、元気を出してーっ!!」
「バカ! そんなんで何とかなったら苦労なんて……」
駆け付けたススムはタコ焼きを一個武者丸に向かって投げ、武者丸は反射的にそれを口で受け止める。
シンヤは若干の非難を込めてススムに詰め寄るが、
そのタコ焼きは武者丸にとって想像以上の効果を発揮していた。
187:リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w
07/08/02 23:49:12
「うおおーっ! ムッチャ力みなぎるぜーっ!!」
そのタコ焼きを口にした途端、武者丸は突然クリスタルのように光り輝き、
全身からかつてないほどのパワーをほとばしらせる。
それに従い先ほど負った傷も見る見るふさがっていく。
突然都合よく起こったこの奇跡に口をあんぐり開けてグウの音も出ないシンヤ。
なのははともかくユーノは今の僕には理解できないとばかりに固まってしまっている。
それはそうだろう。自分の全力を注ぎこんだ回復魔法が
たった一個のタコ焼きと等価扱いされてしまったのだ。さすがに同情を禁じ得ない。
だが意外にも、この事態を魔刃頑駄無は冷静に受け止めていた。
「堕悪馬吸夢が天馬の国沈没エネルギーを感知している……だがあれはどう見てもただの小僧……
それがあのヒヨッコにここまでの力を与えるとは……これは少々認識を変える必要があるな」
「何をごちゃごちゃ言ってるんだ、魔刃頑駄無さんよ? 本番はここからだぜ!」
「!」
魔刃頑駄無が顔をあげると、武者丸、斗機丸、鎧丸の三人は武者丸を中心に陣形を組んで
戦闘準備を整えていた。三人は互いに顔を見合わせ、力強く頷きあいそれぞれの闘志を確かめた。
「元祖夢者遊撃隊! 時空を越えて今、ここに集結!!」
武者丸達の時代の頑駄無軍団で最強部隊と呼ばれていた元祖夢者遊撃隊が
背後に謎の爆発を背負うかのような勢いで高らかに鬨の声を上げる。
「フン、夢者遊撃隊といえど一人一人は単なる若造に過ぎん! 力の差を思い知らせてやる!!」
「そいつはどうかな? 三人そろった俺達は……無敵だぜ!
斗機丸! 鎧丸! 久々にアレをやるぞ!!」
自信に満ち溢れた顔つきで武者丸は斗機丸と鎧丸にそう呼びかける。
「アレと言うと……『アレ』か?」
「よしっ、のったぜ!! ダブルライフル、ハイメガキャノン、チャージ開始!」
武者丸と斗機丸は鎧丸の前方に立ち、
鎧丸の三つの砲門が生み出すエネルギーフィールドにその身を委ねる。
188:リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w
07/08/02 23:50:25
「何をする気かは知らぬが、黙って見過ごしはせんぞ! 喰らえ、冥府真空刃!!」
魔刃頑駄無はファントムハーケンを振りかざして複数の魔力を纏った真空の刃を飛ばし、
夢者遊撃隊の合体攻撃を迎撃しようと試みる。
「そんな小細工は通用せん! 行け、武者丸! 斗機丸!!」
「おぉーっ!!」
鎧丸の掛け声で発射された高威力のビームはフィールドに包まれた武者丸と斗機丸を撃ち出し、
同時に放たれた幾筋ものビームの支援砲火とともに、
魔刃の放った技を消し飛ばしながらまさに弾丸のような勢いで突っ込んでいく。
「な、何!? この俺の技で……止められんだと!?」
「覚悟しやがれ魔刃頑駄無!!」
「この一撃でチェックメイトだ!!」
「もはや退路はない! 貴様の野望は今日この地で我らの友情の前に潰えるのだ!!」
三人は三者三様の決め台詞を魔刃に向かって言い放つ。
武者丸と斗機丸のエネルギーフィールドに挟まれ、身動きの取れなくなった魔刃頑駄無は
その勢いのまま地上に向かって突き進み、ついに空中にまで運ばれてしまう。
そこでついに武者丸と斗機丸は武器を構え、乾坤一擲の一撃を繰り出した。
「こ、この……ヒヨッコどもがぁぁぁぁーっ!!」
「必殺奥義、三位一体! 夢者遊撃断!!」
鎧丸のエネルギーフィールドが刀とナギナタの刃に集まり、十文字に魔刃頑駄無の体を斬り裂く。
……いや、斬り裂いたはずだった。
空中でろくに動けない魔刃頑駄無にこの連携をかわす術はない。
にもかかわらず、決め手の一撃は浅く鎧をかすめたにとどまった。
周囲にから立ち入る術はほとんどない閉鎖空間である地下とは違い、
ここ空中はいかなる乱入者も簡単に出入りできる開放空間である。
そう、空中は翼をもった者にとってはホームグラウンドにも等しい戦場なのだ。
「遅くなりました、堕悪魔刃頑駄無様」
「羽流鋭(ばるす)か……手間を取らせたな」
魔刃頑駄無を抱える堕悪武者、その名は堕悪闇軍団、空魔忍軍・軍団長の羽流鋭。
真っ赤な鎧に身を包み、ゴーグルのような目と巨大な翼を背負った正々堂々たる武人。
いつまでたっても帰還しない魔刃頑駄無の身を案じ、彼は機会を伺っていたのであった。
189:リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w
07/08/03 00:08:38
「堕悪魔刃頑駄無様、お一人での行動はお控えください。あなたは我々を束ねる長なのですから」
「フン……聞こえるか、ヒヨッコども……いや、夢者遊撃隊よ!
今回は不覚を取ったが次はこうはいかんぞ! いずれ我らの総力を以って貴様らを粉砕してくれる!
その日を楽しみに待っているのだな! フフフハハハハ……ファファファファファ!!」
地面に空いた穴から飛んでくるなのはと鎧丸の砲撃をかいくぐりながら、
羽流鋭に抱えられた魔刃頑駄無はあっという間に空の彼方に消えていってしまった。
「クソッ! 魔刃の野郎を取り逃がしちまうとは!!」
「あそこまで追いつめておいて……無念だ……!」
やり場のない想いを抑えきれない武者丸達。
武者丸は怒りと自らの不甲斐なさに震える拳に魔刃頑駄無打倒を誓っていた。
「ところで……」
戦いが終わって一段落し、武装を解いた武ちゃ丸とトッキーは
集まってきた一同を前に二人の息をぴったりと揃えてその口を開いた。
「俺を」
「ワイを」
「騙してたってワケかーっ!!」
とりあえず目先の怒りを鎧丸から降りてきたシャチョーにぶつける武ちゃ丸とトッキー。
「人聞きの悪いこと言って欲しくないにゃー……わからなかったおみゃーらも悪いんだぎゃ!」
天宮にいた頃はシャチョーは終始鎧丸から降りて来なかったため、
二人はその正体を知る由もなく、鎧丸をただの武者だと思い込んでいたのだった。
だが、そのあまりの不自然さに遊撃隊年少組は次々と突っ込みを入れる。
「まぁ、確かにず~っと一緒にいて気付かないのもねぇ」
「特にトッキー君は頭脳明晰なはずなのに……」
「本当に分からなかったのか?」
190:リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w
07/08/03 00:09:59
一切反論することができず、そのまま黙り込んでしまう武ちゃ丸とトッキー。
ちなみに一人突っ込みを入れなかったユーノは……
「大体おかしいよ、あんなの……炭水化物の塊たった一つであそこまで異常に回復するなんて……
生物、物理、魔法学的にも質量保存の法則的にもあんな事ありえないよ……」
タコ焼きショックから未だに現実に戻れず自分の世界をさまよっていた。
彼の辞書に天馬の国沈没エネルギーという文字が記載されるのはもう少し先の事である。
「……で、シャチョーはこれからどうするの?」
なのは以外の誰もそんなユーノに気づくことはなく、そのまま話を続けるススム。
そんな彼の問いかけに、シャチョーは背中に哀愁を漂わせながらこう答えた。
「今、ジュエルシードをめぐる状況や天馬の国の事情は理解しているつもりだぎゃー。
それより何より紅零斗丸の仇は討たにゃならなければ……」
「鎧丸! そしたら、またワイらと一緒に……」
「……いや、それはできないぎゃー」
「ふにゃ!? な、何でや!?」
てっきり一緒に来てくれるとばかり思っていた武ちゃ丸は驚き、問い返す。
「今、ボクちゃんは一人の武者以前に鎧王グループの総帥だぎゃー!
ここは天宮じゃない、天馬の国みゃー! 資金や物資を供給するラインはここにはない!
後方からみんなの後ろ盾になり、バックアップする存在が頑駄無軍団にはどうしても要求される。
ボクちゃんみたいに一人くらい裏方に回る役も必要ぎゃー!」
「鎧丸、いや、シャチョー……お前、そこまで考えて……」
その答えに思わず感動するトッキーだが、このシャチョーが一筋縄でいく人物なわけがなかった。
「ちゅーわけでそれ以外の戦いはおみゃーさんらにまかせるだぎゃー!
社長業はそんなにヒマじゃにゃーのよ!」
いやらしい笑みを浮かべて平然とそう答えるシャチョーに怒る武ちゃ丸。
「オンドレはーっ!!」
「一度覚えた金儲けの味はそう簡単に忘れられないみゃー!!」
「……アイツ、堕悪闇軍団より手強いかも……」
そんな破天荒なシャチョーに苦笑いするしかない新生夢者遊撃隊一同。
トッキーが最後にボソっとこぼした一言が皆の思っていたことすべてを代弁していた。
191:リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w
07/08/03 00:11:35
その頃、アジトに向かって飛び去る最中の魔刃と羽流鋭はようやく余裕ができたのか、
一言二言言葉を交わしていた。
「……堕悪魔刃頑駄無さま、お怪我の方は……」
「あぁ、おかげで大したことはない。しかしお前が来なければ俺は討たれていたであろうな」
「そのようなお戯れを……」
「俺は部下には真実しか告げん。あの紅零斗丸がその身を投げ出すだけの事はある……か。
それにあの魔導師の小娘だ。放っておけばかなりの傑物に育つぞ。
天馬の国沈没エネルギーの異常な数値も気になる。夢者遊撃隊……ゆめゆめ油断するでないぞ」
「御意に……して、その傷ついた兜はどうなさいます? いっその事新調なさいますか?」
羽流鋭は武者丸の一撃で破損した魔刃頑駄無の兜を見つめ、そう進言する。
「よい。修繕もいらぬ。これは俺自身への戒めだ。敵を侮ってかかった事に対する……な。
あの若造、武者丸といったか……その名、忘れん」
魔刃頑駄無は羽流鋭と話しながらもその眼は新たに立ちふさがる強敵との再戦に向けられていた。
握りしめた拳から滴る血はどす黒く、彼の業の深さを表しているかのようであった。
「……ったく、シャチョーにも困ったもんやで!」
「まぁそう言ってやるな。アイツの言ってる事、アレはアレで間違っちゃいないさ。
……とりあえず疲れはしたけどな」
「ハハハ……それで、用は済んだんでしょ、二人とも。これからどうするの?」
とりあえずの目的を果たしたので、当面の目標を失った新生夢者遊撃隊。
当然ジュエルシード捜索という最優先事項はあるものの、情報がなければ動くこともできない。
「あぁ、それはもう決めてある。俺自身今日の戦いで結構なダメージを負ったから、
一度爆流頑駄無に診てもらおうかと思っている。
なのは達も家に送り届けないといけないし……海鳴に戻ろう」
「家に戻るの? だったらみんな、家においでよ!
私の家って喫茶店をやってて、おかーさん手作りのすっごく美味しいシュークリームが自慢なの!
今までのお礼ってことで私にごちそうさせて!」
トッキーの意見に便乗する形でなのはは笑顔でそう提案する。
しかし、その笑顔はどこか陰のある、無理をしているかのような笑顔で、
彼女は彼女なりにこの旅で見つけた問題点と向き合っているかのようであった。
そしてここにもう一人、頭に浮かんだ記憶の欠片と格闘している少年がいた。
「……あれ、海鳴って確か……はやてちゃんが引っ越していった……?」
192:リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w
07/08/03 00:12:53
次回予告(ねくすとぷれびゅう)
「艱難辛苦を乗り越えて、戻ってきました海鳴市!
旅の疲れは甘いものでリフレーッシュ! と、いきたいところなんだけど……」
「……大体、アレ一個で回復するなら病院も何もいらないし……」
「ふぇ? ユ、ユーノ君どうしたの? ひょっとして、まだ悩んでる!?」
「……それに治療系の魔法概念が根底から覆されて……」
「……ユーノ君! ねえってば~!!」
「……ブツブツ……」
「……話を!」
<<Divine>>
「聞いてってばぁっ!!」
<<Buster>>
― しばらくお待ちください ―
「……ケホ。そこに突然現れた正体不明の少年武者。
彼はいきなり剣術の達人ななのはのお兄さん、恭也さんに弟子入りを志願する!」
「この子はいったい何者? そして復興途中の町に忍び寄る魔の手って!?」
「次回、SD頑駄無対魔法少女 リリカル武者○伝、巻之拾四!」
『夜空を舞う白い翼なの』! リリカルマジカル、頑張ります!」
登場武者符亜意留(ふぁいる)
羽流鋭 [バルス]
出典:新SD戦国伝 伝説の大将軍編
モデル:ベルガ・バルス
新生闇軍団の誇る四魔忍軍、空魔忍軍を統括する武者。
その名の通り空中戦を得意とする団員達の長で、自らも高い空戦能力を有する。
自分の力に絶対の自信を持っていて、正々堂々とした戦いを好む。
某天空の城の滅びの呪文との関係は無い。
193:リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w
07/08/03 00:15:29
ついでに感想でも
>>178
彼女は最高よwww
194:名無し ◆141aDzFMbk
07/08/03 00:17:10
間違えたorz
と言うわけで修正版
なのはA「(リリちゃ箱の)高町なのは十二歳!」
なのはB「(無印の)高町なのは九歳!」
なのはC「(Asの)高町なのは九歳その2!」
なのはD「(StSの)高町なのは十九歳!」
なのはA,B,C,D「無敵カルテット!魔法少女リリカルなのは’s見参!!」
後方でメイオ○攻撃並みの爆発
がんだむ「いやああ~!なのはが壊れた~!!」
F・T・H「(鼻から大量出血)」
Z「増えたなのはを見た瞬間、倒れながら鼻血を吹いていたな」
マーク2「冷静に状況説明してないで医者呼べ!医者!!」
それと、リリカル武者○伝の作者様GJです!
195:通常の名無しさんの3倍
07/08/03 00:38:36
>>194
リリ箱の大人版なのはさんは?
196:通常の名無しさんの3倍
07/08/03 03:05:20
武者の人GJ
>>194
OVA板とらハのなのちゃんは~?
○、ネタは熱いんだが納得いかないことが一つ
……北海道を一人でカバーするのは無理だろ
197:リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w
07/08/03 07:21:42
ごめんなさい一部落丁ありましたorz
>>182と>>183の間にこれを入れてください
涙まで流し、あくまで戦うことを拒むシャチョー。
それを見かねてか武者丸は瀕死の重傷をおしてなお立ち上がろうと試みる。
「た……立てよ、オレ! 夢者遊撃隊の誇りにかけて、命を燃やせ!!」
「む……夢者……遊撃隊……」
シャチョーは武者丸の言い放った夢者遊撃隊という言葉に反応する。
武者丸も力を振り絞るがどうしても立つことができない。
その武者丸をかばうように立ち塞がった小さな白い影。
なのはがレイジングハートをシューティングモードにセットし、チャージを始めていた。
「なのは、やめろ……お前の叶う相手じゃ……」
「……わかってるよ、私だってそれくらいは……正直、怖くて手が震えそう。けど!」
なのはは魔刃頑駄無から視線をそらさずに武者丸と言葉を交わす。
「今、ユーノ君がトッキー君に回復の魔法を使ってる。次は武ちゃ丸君の番。
だから、動ける私が二人が治るまでの時間を稼がないと。それに……」
「……それに?」
「忘れたの? 私も新生夢者遊撃隊だよ? 武ちゃ丸君の守りたい誇りは、私の誇りでもあるから!
ちょっと無茶するかもだけど、お願いね、レイジングハート!」
<<Yes, my master>>
武者丸は彼女の背中を見つめていた。まだまだ未熟で、この重荷を背負わすにはあまりにも小さい背中。
しかし、同時に未知の可能性を感じさせる頼りなくも後光が差すかのような背中。
だからこそ、自分が守り育てるべきその背中の後ろに甘んじていることが悔しくて仕方なかった。
<<Full charge>>
「ディバインバスター! フル! パワーッ!!」
反動で吹き飛ばされつつもなのははまさに全身全霊の一撃を動けない魔刃頑駄無に撃ち込む。
猛烈な爆風が巻き起こり、周囲の視界が完全に煙と塵に覆われてしまう。
その煙が晴れた時、一縷の希望を抱いたなのは達の目は再び驚愕に見開かれた。
全身かすり傷と煤まみれになりながらも、未だ魔刃頑駄無は直立不動のまま健在であった。
「そ、そんな……今のが効いてないなんて……」
「……小娘よ、なかなか肝を冷やしたが、見た目ほど大した事はなかったな。
パワー自体は見上げたものだが、実戦経験が不足しているとみた。
魔力の集束にまだまだムラが多い。だからよく見極めれば片手でもやりすごせる。
だが人間でここまでの魔力を秘めた者がいたとはな……これは退屈せずに済みそうだ」
198:通常の名無しさんの3倍
07/08/04 12:31:10
ちゃんと一撃加えてたのか
199:通常の名無しさんの3倍
07/08/04 18:02:08
熱いなGJ
天空の城の滅びの呪文に気付いてふいた
200:811 ◆7UgIeewWy6
07/08/06 20:43:25
>>197GJ。しかしW見直してるとどいつもコイツもアクが強い。
トーラスの設計チームやガンダム作った博士5人が居なければビルゴを完成させられなかったのに
いつの間にかモビルドールの戦果を全部自分の手柄にしてるツバロフ技師長はマジツンデレ
201:通常の名無しさんの3倍
07/08/07 21:32:40
ちょいサルベージ
続きまだー
202:通常の名無しさんの3倍
07/08/08 00:08:19
ナイトガンダムだとラクロア騎士団じゃないと無理かな…
円卓は人数がやばい
203:通常の名無しさんの3倍
07/08/08 10:47:20
そこで運命の三騎士を…
あーでもスーパーオーキスやらガンレックスは質量兵器扱いか。
204:通常の名無しさんの3倍
07/08/08 11:16:37
ガンレックス、スーパーオーキス、三種の神器とかはデバイスとかにすればいけるんじゃない?
205:通常の名無しさんの3倍
07/08/08 12:33:44
白金のハルバートなんかもろデバイスになりそうだ
206:通常の名無しさんの3倍
07/08/08 14:03:56
某スレの良い男専用ガンダムなんかは
質量兵器とかデバイス化とか以前に
下手に手を出せる代物では無いな・・・
207:通常の名無しさんの3倍
07/08/08 15:23:42
今週の回見ても未だにスカリエッティの犯行動機が分からん……
はやく判明してくれよ。ハサウェイ書きたいんだから……w
208:通常の名無しさんの3倍
07/08/08 15:51:50
>>206
ガンダム世界では稀少な非殺傷設定付きなんだが、それでもだめか?
209:通常の名無しさんの3倍
07/08/08 18:38:40
>>207
出てこないかも。とりあえず管理局の設定をまとめてみたぞ。
・別の世界へと渡る能力を得た世界は、現在最も魔法技術が安定して栄えている世界『ミッドチルダ』を
はじめとする いくつかの世界が共同で運営している『時空管理局』の適正な管理を受けることとなる。
・メインの仕事は警察+裁判所、他に税関、軍隊、災害救助、救急、消防、孤児院、自然保護、図書館、各世界の文化管理etc。
・約150年前に成立し、次元世界から質量兵器の根絶とロストロギアの規制を働きかけてきた組織。
・ミッドチルダを中心に、幾つかの世界の自治区の共同出資で運営している。
・管理局システムを作り、各次元世界の管理を始めたのが75年前。
・三提督は75年前の新暦前後の一番混乱してた時期に管理局を切り盛りしていた。
・宇宙ステーションの本局とミッドチルダ首都の地上本部がある。
・各世界の軍事バランスの危うさ、各世界での紛争や闘争がある。
・最高評議会は板3枚(変声機をかけ、顔も映らない)
・陸は規則に厳しい。
・陸と海、地上本部と本局は仲が悪い。
・本局が地上本部協力の申請をしても内政干渉や強制介入と言い換えられると諍いのタネになる。
・地上本部の武力と発言力の強さは問題視されている。
・カリムの予言に関して本局と伝説の三提督は信じているから対策をとってるけど、
レジアスは信じてないから地上本部は対策をとっていない。
・次元世界最大規模の宗教組織である聖王教会と協力関係にある。
・聖王教会所属の騎士カリムが管理局理事官を務めている。
・時空管理局本局遺失物管理部機動6課、首都航空隊第14部隊、陸士108部隊、陸士386部隊、特別捜査官、自然保護隊、
戦技教導隊、 陸士104部隊、 教育隊、救助隊、次元航行部隊、1039航空隊、1321航空隊、2038航空隊etcがある。
・本局の一般の武装隊は指揮官S~AAランク、隊長Aランク、隊員Bランクで最低でもBランク。
・管理局全体ではC~Dランクがもっとも多い。
・地上本部の武装隊員はバリジャケットだけでなくデバイスも所持していない者がいる。
・六課はロストギアがレリックかもしれないと言うだけで介入可能。
・アースラ所属or応援要請で派遣された武装局員は全員飛行魔法を使用できる。
・武装隊員は8人程度でSランク以下の攻撃なら侵入すら遮る強固な結界が張れる。
・階級は軍隊式(執務官など例外有り)。
210:通常の名無しさんの3倍
07/08/08 18:42:16
ストレートに悪の天才が時に野心を抱き世界征服をたくらんだとかで
211:通常の名無しさんの3倍
07/08/08 18:58:53
>>209
・管理局では家族とか子供とかを副官にしている人は多い。
・佐官以上のコネがあれば士官学校に入れる。
・執務官試験は合格率15%。
・上下の関係にあまり厳しくない。
・優秀な魔導士が多く集まっている。
・管理局の魔導師でAAAランク以上は5%.
・嘱託魔導師など民間の協力者も居る。
・性別、年齢、犯罪歴を問わず広い人材を採用している。
・犯罪者であっても有能なら、司法取引ををして管理局で働けばお咎めなしで出世もできる。
・ヴォルケンリッターが闇の書の騎士だったのを知る者は管理局内でもかなり少ない。
・管理外世界で魔法に目覚めたら魔法を捨てるか、ミッドチルダに移住するかの2択。
・逮捕時におとなしくしなかったら弁護の機会は与えられない。
・次元震起こしたら懲役100年。
・一期のフェイト(9歳)の罪に対してクロノとリンディが擁護に奔走しなければ数百年の封印刑を下していた。
・闇の書事件で犯罪者と見たのはやてだけで、ヴォルケンリッターは無視している。
・管理局は古代ベルカ文字をあまり解読できていない。
・スカリエッティの使っているような技術を法律で禁じてきた。
・戦技教導隊にはStSのなのは級かそれより上が100人以上いる。
・空を飛べる「空戦魔導師」は少ない。
・災害担当は陸士部隊の中で門戸が広い割に昇進機会が多い、仕事はとんでもないハードワーク。
・災害担当はバリアジャケットは通常時は使用しない。
・魔導師ランクは作戦遂行能力を表している。
・レジアス中将は対AMF戦対応の予算を2年連続で却下している。
・レジアス中将の出した地上防衛強化案も却下されている。
212:通常の名無しさんの3倍
07/08/08 19:39:51
・・・中国共産党よりはマシか?
213:通常の名無しさんの3倍
07/08/08 19:46:44
つくづくヴォルケンは備品扱いなのか人権あるのかよくわからんな
214:通常の名無しさんの3倍
07/08/08 20:00:48
>・管理局では家族とか子供とかを副官にしている人は多い。
・佐官以上のコネがあれば士官学校に入れる。
ちょww
これって韓非子や孟子がこれが公然と行われ、
かつ批判する人が居ないようになると
その組織はヤバイって言ってるパターンじゃねーか!
215:通常の名無しさんの3倍
07/08/08 20:09:00
公の組織としてやっちゃいけない事もやりまくってるような気が・・・
216:通常の名無しさんの3倍
07/08/08 20:55:26
>>215
何を今更。組織物として破綻しているのは承知の上で視聴してるぜ。
217:207
07/08/08 21:06:20
>>209 >>211
おお、これは助かりますサンクス。
―ところで、スレの流れ的にこのスレにはアンチスレの住民が多いのか?w
218:通常の名無しさんの3倍
07/08/08 21:11:52
>>217
それもあるけど今まで普通に見てたのに
改めて知ってしまってビックリしてる人も多いと思うよ。
後、ファンであってもつい突っ込みたくなるとか
219:通常の名無しさんの3倍
07/08/08 21:33:21
俺もアンチになったつもり無いなぁ。
でも見てて「これはねーよwww」って思う事はかなりある。主に三期だけど。
220:通常の名無しさんの3倍
07/08/08 21:33:28
>>217
でかい組織への反抗はガンダムの基本だぜ!
221:通常の名無しさんの3倍
07/08/08 21:40:49
>>214
だって機動六課の監査役はクロノなんだぞ?
222:通常の名無しさんの3倍
07/08/08 22:03:13
>>217
URLリンク(d.hatena.ne.jp)
ここにStS14話までに分かっていることで考察した管理局の構成図があるよ。
223:通常の名無しさんの3倍
07/08/08 22:40:44
聖王のゆりかごがサテライトキャノンだった件について。
これはガンダムXとのクロスを書けとの思し召しか?
224:通常の名無しさんの3倍
07/08/08 22:42:40
>>224
ぜひ書いてくれ。
225:通常の名無しさんの3倍
07/08/08 22:50:30
>>224
StS完結まで待ってくれ、第三期は漫画やCDドラマで重要な設定が出てくるし、
ただでさえ設定のすり合わせが厄介なんだ。
例えばスバルが戦闘機人ということをエリオとキャロ以外はみんなとっくに知っていたとか。
226:通常の名無しさんの3倍
07/08/09 00:58:32
あ、Xクロスの三期終了待ち、俺だけじゃなかったんだ
227:通常の名無しさんの3倍
07/08/09 01:22:51
ふと思ったんだが、時空管理局の装備(デバイスとか時元航行艦とか)やガジェットを、
ミノフスキー粒子が高濃度(最低でも戦闘濃度)散布されている戦闘領域まで誘導したら、
装備の機械的な部分がダメになって、軽くパニックに陥るんじゃないだろうか?
そして始まる超一方的な虐殺劇ががが
228:通常の名無しさんの3倍
07/08/09 05:47:47
>>227
ミノフスキー粒子は、誘導兵器やレーダーを無効化する粒子だから、
管理局員が目視で魔法を当てれば問題ないと思われ。
229:通常の名無しさんの3倍
07/08/09 08:16:48
>>228
生身で戦えばOKなのは同意だが
理由部分は勉強不足
230:通常の名無しさんの3倍
07/08/09 08:22:19
>>229
そうか…スマソ
231:通常の名無しさんの3倍
07/08/09 08:24:41
シールドしてない電子機器は根こそぎ狂うからな、ミノ粉
232:通常の名無しさんの3倍
07/08/09 08:26:06
たしか、デバイス無しでも魔法使えなかったっけ?
無印やASのユーノはデバ無しで魔法を使っていた気が
233:通常の名無しさんの3倍
07/08/09 08:31:19
使える。
デバイスがあると処理能力か跳ね上がるのが大きい。
バルディッシュ持つ前のフェイトのフォトンランサーは
同時展開3発が限界デシタ
234:通常の名無しさんの3倍
07/08/09 08:56:12
確か、デバイスが無いと魔法プログラムを一から組み立てて
完成した理論(魔法)を形にして打ち出すンだっけか?
で、デバイスはその魔法をZIP保存してて必要なときに解凍だっけか
235:通常の名無しさんの3倍
07/08/09 08:56:21
どちらにせよ、ミノ粉まかれたら殲滅戦になるのは必至か
236:通常の名無しさんの3倍
07/08/09 09:35:29
>>232
三期からはデバイスの強さに追いつけるのが魔導師の強さという設定になりました。
237:通常の名無しさんの3倍
07/08/09 10:48:43 X2G73GQa
正直8話なのはさんのクロスファイア2発目のSEは色々とマズイ気がする
あの時なのはさんは明らかに9歳の自分を超越している気がする
238:通常の名無しさんの3倍
07/08/09 12:04:49
>>236
三期からも何も…
デバイスの性能に追いつけないと
『デバイスに使われる魔導師』とか『デバイスに拒否される魔導師』とかになるのは
昔からの設定ですヨ
239:通常の名無しさんの3倍
07/08/09 12:38:51
>>238
どこで出てきたんだぜ?
でも、なのはは昔からメディア分割だからな、知らくてもおかしくないんだぜ。
まあ、どう見てもデバイスの性能が全てにしか見えないけど。
240:通常の名無しさんの3倍
07/08/09 12:42:51
>>238
初耳
241:通常の名無しさんの3倍
07/08/09 12:46:37
ホントにある設定なのか?
242:通常の名無しさんの3倍
07/08/09 13:48:26
デバイスというよりインテリジェントデバイスの設定のことだな
設定自体は前からあったよ
243:811 ◆7UgIeewWy6
07/08/09 20:34:37
魔法少女リリカルオペレーションメテオ-外伝-後編
セプテム大佐とドクターJが並んで座っている。折りたたみ式金属製ベンチの冷たい感触が尻を冷してゆく
エアコンこそ備え付けられているものの何の苦もなく軍用トラックを搬入できる広さだ。
「しかしこの基地は年寄りをいたわる気持ちはないのかのぉ」
「新本部にそんな物を期待する方がどうかしている。」
典型的なコネ軍人のセプテムとドクターJでは当然ながら話が噛み合わない。
そしてここは規格外れのエレベーターの中である。
アラスカの地球圏統一連合新本部はルクセンブルクの旧本部が核攻撃に対応できない理由
に加え警備部隊すら満足に配備できない手狭感に伴い深宇宙開発局のフォールド研究所の隣に建造されたが
広大な平野に放射線状の広がりを見せながら様々な施設が並んだため研究所はあえなく新本部の中に埋もれた。
基地の中央には地下6㌔の超巨大金属製落とし穴がパックリと口を開けその更に下に司令本部がある。
シャフトに設置されたレールに沿って地獄の釜の底へエレベーターは下っていく
「しかしこれがグランドキャノンの砲身とはのぉ」
「貴様!最高機密を何故知っている!」
「そんなもの、技術者の間では誰でも知っている当然の噂じゃぞ?」
グランドキャノン。来るべき外宇宙の敵のためにリーブラの主砲を拡大する形で開発された超大型ビーム砲台である。
当初は資金面と資材面と環境面を考慮し廃棄コロニー6基を改造する予定であったのだが地球に利益を落とさない事に
不満を抱いたロームフェラ財団の圧力で地球上に設置される事になってしまった
そのため予算超過が著しく連合新本部の試作一号砲と南極周辺に建造予定の二号砲を以って計画は凍結されている。
244:811 ◆7UgIeewWy6
07/08/09 20:35:39
どう見ても宇宙人か何かと疑っている警備兵に態度で脅されながら二人は査問室に入室する
「久しぶりだな、セプテム大佐」と素っ気なくセプテムの実の父親のクラレンス将軍が言った。
明らかに椅子とテーブルが軍法会議そのままに配置されセプテム大佐とドクターJは中央の被告人席に座らされた
「セプテム大佐、それにドクターJ、私は君達をもう少し常識人だと思い込んでいたのだが」
幹部の一人が呆れ顔で言った。
「だいいち敵に無敵のバリアを持つ船やリーオーと対等に戦えるアストロスーツがあるならば
何故ピースミリオンは帰還できたのかね?」
「ですからその理由は報告書をお読み頂ければ」セプテムが弁明する
「そんなバカバカしい話などありえん」
太陽系外で隕石群に遭遇してピースミリオンが損傷したと思い込んでいる幹部達は鼻で笑った。
ドクターJが身を乗り出し「証拠なら幾らでもあるぞい。」
「いいかげんにしたまえ」幹部の一人が静かに怒り出す
「だが艦と修理と兵員の補充及び資材補給は引き続き行う。」
ピースミリオンが隕石群と遭遇したと言う事で査問会が終了しかけていた時に
血相を変えた士官が息を切らしながら扉を開けて飛び込んでくる。
「たっ、大変です!ニューエドワーズ基地が消滅しました!」
被告人席から水の入ったコップをふんだくって一気飲みしてから更に報告を続ける
原因は月軌道上にフォールドアウトした未確認艦が地球に近接し連合の警戒衛星を破壊した事に端を発する。
迎撃手順に従い地上から対衛星ミサイルを発射、着弾したが目に見えた効果はなくそれから三分後
ミサイルを発射した深夜のニューエドワーズ基地はアルカンシェルの砲撃で閃光と轟音と共に蒸発した。
……………幹部一同はあまりの事態に絶句して口篭る
「これにて査問会を終了とする。セプテム大佐は処分が決定するまで新本部での待機を命ずる」
その後セプテムとドクターJは警備兵の歓迎付きで応接室に軟禁され連合首脳部は地下会議室
にひたすら篭もっていた。
"長い、長過ぎる”セプテム大佐は会議からハブられた事に苛立っていたが、
ドクターJは肝が据わり過ぎていて特にやる事もなかった為ソファーで寝ていた。
そこにセプテムの父親のクラレンス将軍が入室してくる。
「父上、いかがでしたか」
すがるように聞く
「うむ、ピースミリオンの解析データを検討した結果、開戦の方向に決定した。」
顔面蒼白になりながらセプテム大佐が反論する
「父上!連合の戦力では管理局には勝てません!」
軍人と言うよりも実の息子を諭す方向でクラレンス将軍が答えた
「息子よわかっておる。だが無条件降伏すれば地球圏統一連合の存在をも否定する事になる」
セプテム大佐は地球全滅の恐怖で眩暈を覚え、ふらふらしながら失意の顔を露にした
「アリが象に踏み殺されるようなもんじゃな。」いつの間にか起きていたドクターJが
技術者らしい的確な暴言を漏らして陰鬱な雰囲気が更に増してゆく
「セプテム、お前はピースミリオンに戻れ。」
「父上……」
245:811 ◆7UgIeewWy6
07/08/09 20:37:35
月ドックで今や半分骨組みと化したリーブラから推進器や動力炉や装甲を剥ぎ取ったおかげで
ピースミリオンの修理はほぼ完了していた。それに加えてコロニー配備の宇宙軍を全て撤収し
地上配備のリーオーすらも宇宙へのピストン輸送が行われMSの数だけは月の外に展開する
地球圏防衛艦隊には過剰なほど配備されていた。
だが宇宙軍所属でないパイロットは元戦車兵などが多かったため無重力に慌てふためき宇宙酔いでのたうっている。
そのため彼らは戦闘など期待されず地球各地から掻き集めた大陸間弾道ミサイルの核弾頭を改造した
吸着反応爆雷を以って敵艦に体当たりする手筈になっている。おそらくは辿り着いても離脱する事などまず不可能だろう
そんな中で時空管理局基幹艦隊は、突如、何の前触れもなく現れた。平行世界から侵攻してくるので当然である。
アラスカ連合軍本部のグランドキャノンが活動を始める。貯水池に偽装した防護シールドは排水され黒々とした巨大な砲口が展開されてゆく、
宇宙や地平線の外側から見るとチャージ中のグランドキャノンが既に空前絶後のサーチライトになっていた。
そして光は更に溢れていき直径3000㍍の超巨大ビームが発射され夜空はその影響で雲と言う雲が
吹き飛びオゾン層を貫通しながらアラスカは真っ赤な光に染まった。
「地球北極上空にエネルギー反応!!」
観測室からの報告を通信士官が伝える
「敵艦隊の一部が消滅していきます」
地上から扇状のビームが放射されている。
グランドキャノンがあまりにも高出力だったためビームを浴びた艦艇群は
ディストーションフィールドを貫通され溶けるように消えてゆく。
「アラスカ本部がやったんだ!」
意気消沈していた地球圏防衛艦隊の士気が上がり歓声が満ちていた。
ピースミリオンから紫色のリーオー隊が次々に発進しMS輸送艦からも砂漠迷彩のリーオーが
写真に砂を吹きかけた様に放出されていく。
セプテム大佐が極限まで切り詰めた演説を始める
―ピースミリオンならびにリーオー、輸送艦の全軍に告げる。
我々はこれよりグランドキャノンの空けた空域を通って侵攻する。
諸君らの健闘に期待する―
ピースミリオンが、敵の攻撃を逸らすためのMS輸送艦が、リーオーが動きの鈍った
時空管理局基幹艦隊の中へと突き進んでいく、
複数のリーオーが敵先頭艦に特攻を掛けて爆発したのを目撃した事でカルチャーショックを受け
ただでさえグランドキャノンの混乱で対空砲火が散漫になっていた基幹艦隊の動きが一時的に止まる
「攻撃の手を緩めるな!」セプテムが叫ぶ
ビームが乱れ飛び双方の艦やリーオーが爆発する
グランドキャノンと特攻で敵軍は確かに混乱した。
そのスキを突いて攻撃する、しかしなにしろ数が違う。
フネの数こそ上回ったが単機で魔術師に勝てるパイロットは殆ど居ない。
リーオーは魔術師相手に苦戦を強いられていた。機動性と武装と装甲において勝るデバイスには
ビームライフルやマシンガンは効かない、正確には当たらないのだ。
リーオーは敵一人に対して2,3機が一度に攻撃を加え接近戦に持ち込む事によって
かろうじて一方的な戦いになる事を回避している状況である。
敵、味方、何隻もの艦が被弾し四散した。リーオーが魔導師を巻き込み自爆する
246:811 ◆7UgIeewWy6
07/08/09 20:38:52
そんな中アラスカ連合軍本部には復讐に燃える時空管理局艦のアルカンシェルの猛砲撃が繰り返されていた。
最初の一撃で地上施設が消滅し着弾する度に大地が削られ地下司令部も風前のともし火である
最後の通信が艦隊旗艦のピースミリオンに送信され艦橋スクリーンにクラレンス将軍の顔が現れた。
「セプテム、まだ生きていたか」
「父上、早く避難を!」
「無駄だ。もう間に合わん……」
「結局……お前の言っていた事が正しかったのかもしれ」
言い終える前にクラレンス将軍と生き残っていた地球圏統一連合首脳部は炎と瓦礫に押し潰され戦死した。
「…………艦長、議論の時間はないようだ。トールギスの発進準備は完了していたな」
その発言を聞いた艦長は確信した。セプテムは自分だけ敵前逃亡するつもりだと
「大佐、貴方が無能なのは誰もが知っています、しかし義を説き範をたれるべき指揮官ならば残るべきです」
そして艦長はいつでも発砲できるように拳銃に手を掛ける
「それでいい、だが生き残るつもりなどない。後の指揮は一任する。」
ピースミリオンの格納庫は喧騒の中にあった。生き残ったリーオーは、
弾薬を使い果たすと着艦し補給を受け再び出撃していく。
宇宙服を着たセプテム大佐はそんなものは見向きもせずに格納庫の片隅に放置されているトールギスに向かっていく
ドクターJが自嘲気味に警告する。
「おまいさんがトールギスに乗れば必ず死ぬぞ。」
セプテムが何の脈絡もなくドクターJ以下五人に拳銃を向けた
「構わん、早くそこを退け」
ヤレヤレと言った表情で五人ともさじを投げていたが説明責任を感じたのかドクターJが注意点を説明する
「一つだけ警告しておくぞ、ゼロシステムに流されて見失ってはならん。」
セプテムの頭の中ではルクレシオンから回収したデバイスを組み込んだ事と比類なき強大なバーニア出力こそ
気にはしていたが父親の戦死に激昂していたためゼロシステムの事は完全に抜けていた。
そしてカタパルトからトールギスが格納庫を埋め尽くす無数のリーオーの合間を縫って発進する。
247:811 ◆7UgIeewWy6
07/08/09 20:43:08
その直後、通信を聞いていた1機のリーオーがトールギスに急接近してきた。
「セプテム大佐?前に出ては!」
離れろ。と言いかけた時に接近してきたリーオーが敵に撃ち抜かれ爆発する。
そしてセプテムが気がついた時には周囲に砂漠迷彩の地上仕様リーオーが20機ほど控えていた
母艦を失い核爆弾を全て手榴弾代わりに使ってしまったため目立つトールギスに集まってきたのである。
トールギスは猛スピードで迫ってくる魔導師に的確に照準を付け105㎜マシンガンで瞬く間に撃墜した。
艦砲射撃の合間を縫いバリアを貫通し魔力炉に飛びこんだデバイスによって魔法強化されたドーバーガンの砲弾が敵巡洋艦を轟沈する。
更に魔導師の攻撃を先読みして回避していく。エースパイロットでも困難な動きである。
それを無重力MS搭乗訓練を受けただけのセプテムが軽々とこなしていた。
周囲のリーオーもトールギスの後ろからひたすら突っ込んでいく
”見える。全てが見えるぞ!”
セプテムの目にはゼロシステムが見せる無数の死の選択肢が提示されてはいたが
並の人間なら死の恐怖が勝るのだが感情が先走り自殺願望に苛まれているセプテムには馬の耳に念仏である。
邪魔な選択肢を無視し、敵旗艦もろとも自爆する事のみに集中していた。
襲い来る魔導師を薙ぎ倒し、弾を使い切ったドーバーガンとマシンガンを投棄し
最初で最後のフルパワーでトールギスを加速させる。
すでに何者も追いつけない。その先には不自然に一隻だけ逃走を図る敵旗艦しかなかった。
「ゲホッ!ゴフッ!、うぉぉぉお!」
高Gによる大量の内出血で血を吐きながら言葉にならない絶叫とともにトールギスが敵艦にメリ込み自爆する。
その頃、設計当初から想定されていた移動要塞としての機能を存分に発揮していたピースミリオンは沈もうとしていた。
「一番、四番、3番エンジン大破、対空ビーム砲、カタパルト並びにエレベーター使用不能、甲板上のドラゴス隊、応答ありません。」
艦長が熟考するまでもなく決断する
「総員退艦だ、急げ」
言い終えた刹那、敵の砲撃で船体下部に取り付けられたブリッジが蒸発し船体にも着弾した。
その衝撃で動力炉の安全装置が破壊され炉心が暴走を始める。そして艦内に自動警報と機械音声が鳴り始めた
「自爆装置モシクハ動力炉ノボウソウニヨッテホンカンハ爆発シマス、ゼンノリクミインはテジュンドオリにタイヒシテクダサイ
900秒ゴニ全隔壁ヲヘイサシ緊急フォールドにイコウシマス。ナヲカイジョハ司令官ナラビニ艦長モシクハ士官ヨニンイジョウノ承認ガ必要デス」
自動放送が行われると言う事はブリッジが全滅した事を意味するため、それが更に二回繰り返された後、
動ける乗組員は全力で脱出ポッドに搭乗を始めた。重症で動けない者もドンドン押し込まれていく
格納庫の整備員も貨物艇に乗り切れない者は動けるリーオーが持つワイヤーに必死でしがみ付いて宇宙服で皆退避する
「ハワード、お前は逃げんのか?」
十人は引っ張れそうな長さの作業用ワイヤー付きの宇宙用バイクで
逃げる準備は万全のドクターJ以下五人が機関室に通信で話しかける
「ワシは行けん、やっておかねばならん事があるんでな」
「手動で動力炉を止めるつもりか?難しいぞ」
「生き残れたらまた会おう、達者でな」
通信を切り、ハワードと機関科の勇士は艦の内部を奥へ奥へと向かって行く。
数分後、ピースミリオンは閃光を放ちながら消息を絶った。
4時間後、無条件降伏を巡る意見の相違によって警備部隊同士での苛烈な戦闘が発生していたルクセンブルグ旧本部
の暴動がようやく沈静化し地球圏全域にアラスカで全滅した司令部が事前に用意していた降伏宣言が放送され
それにより地球圏統一連合は事実上も名目上も消滅した。
だが連合兵士の殆どは地球配備で戦闘に参加していなかったがために敗戦を認めず
部隊の殆どが脱走もしくはゲリラ化し弾薬を使い切るまでの数年に渡って抵抗運動を続ける事となる。
248:811 ◆7UgIeewWy6
07/08/09 20:44:18
あまり上手く書けないな俺orz
249:通常の名無しさんの3倍
07/08/10 00:31:50
>>811氏
乙&GJ!
無茶すんなセプテム大佐wwwww
それはともかく、ハワードの安否がやたらと気になる今日この頃w
250:通常の名無しさんの3倍
07/08/10 01:31:59
縦書きならこんなもんだけどここは横書きだし、
もうちょい文の長さを加減した方がよいかも
251:通常の名無しさんの3倍
07/08/10 13:26:10
ところで、おまいらの中で陸士部隊の規模が分かるヤツって居る?
252:リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w
07/08/10 17:58:23
うーむ……俺は何故こんな所で倒れているんだろう? 少し思い出してみるか……
俺は高町恭也、大学一年生。趣味は盆栽、特技は剣術。家族は両親二人に妹が二人、
それに新顔でペットのフェレットが一本……よし大丈夫、自分の事くらいは覚えている。
確か……そう、そうだ。町内会に頼まれた夜の見回りの途中、山道の辺りで、
二刀流の武者頑駄無が見たこともない怪物と戦っていて……それもかなり押されていて……
それで、加勢したはいいが手負いの怪物の思わぬ反撃から彼をかばって……
あぁ……それでこんなに血が流れているのか。
どう考えてもこれはまずいな。油断したわけではないが、当たり所が悪かった。
このままでは……死んでも……まぁ、おかしくはない。
意外と落ち着いていられるものだな、死ぬ時というのは。
「……そこのアンタ、聞こえるか……?」
ん? 誰だ……そうか、あの武者頑駄無か。
俺の最期を看取るのが同じ二刀の剣士だとは、なかなか皮肉なものだな。
「……アンタには申し訳ないことをした。せめてもの償いに俺の命をアンタに託そう」
ちょっと待て。命というものはそう簡単にやり取りできるものなのか?
いや、仮にできたとしてもそんな事をすれば死ぬのはそっちの方になってしまうだろう?
「大丈夫。傷が完治するまでの間、俺自身にかつて与えられた生命力を貸すだけだ。
アンタも俺も『一応』死ぬことはない。ただ、やってほしい事がある」
やってほしい事……何だ? まさかとは思うが変身ヒーローにでもなれと言うつもりか?
俺はどこかの光の巨人か。それとも電光超人なのか?
「フフフ……心配することはない」
笑ってごまかすな。せめて詳細を語れ……うっ、だんだん視界が……ぼやけて……
一体俺は、俺達は何がどうなるって言うんだ……?
253:リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w
07/08/10 17:59:51
巻之拾四「夜空に舞う白い翼なの」
「おとーさん! おかーさん! たっだいまーっ!」
大きな庭のある広い家の玄関を勢い良く開けて、元気よく声をあげ中へ走りこむなのは。
アパートやマンション暮らしのススムとシンヤは大きな家に圧倒されている様子だ。
そんな彼女を、同じくらい元気そうな笑顔で出迎える人物がいた。
「おかえり~、なのは! おかーさん達、すっごく心配だったのよ~!」
「そうだぞ? なのはの乗ってた新幹線が事故に遭ったって聞いて……
電話してくるまでみんな気が気じゃなかったからな。とにかく無事でよかった。
おおっと、睨むなよユーノ。もちろんお前だって心配だったさ」
天真爛漫で優しそうななのはの母、高町桃子と東京駅でも会った父、高町士郎。
家族と仲良くしている様を見るとなのはも年齢相応に見えるな……などと、
まだ付き合いの浅いススム以外はそんなかなり失礼な事を思っていた。
もっとも、ススムはススムで海鳴に行くと決まった時から
何か別の事に気を取られている様子だったが。
「シンヤ君……だったね。娘が世話になったみたいでありがとう。そっちの君は?」
「は、初めまして! ボクはこっちの武ちゃ丸の友達のススムと言います」
「ススム君も、シンヤ君にトッキー君、武ちゃ丸君とおんなじ大事なお友達だよ!
あっ、ところでおにーちゃんとおねーちゃんは?」
「美由希なら今図書館に行ってて……恭也なら昨日の見回りに疲れたのかまだ寝てるな」
「見回り? 何かあったの?」
「そう言う訳じゃないんだけど、ホラ、あんな騒ぎがあったばかりで色々と物騒でしょ?
それでね、今、町内会で分担して夜の見回りをやってるの」
あんな騒ぎ……言うまでもなく堕悪武者幻妖の襲撃や、
へっぽこ四人組の手によるジュエルシードの暴走事件である。
その傷跡は根深く、交通やライフラインへの被害のみならず人々に与えた心の傷も大きい。
自分達がもう少し気を付けていれば防げたかもしれない事件の事を思い、
また少し暗い表情になるなのはを心配する一同。
「ただいまー!」
と、そこに大きな丸眼鏡と黄色いリボンでまとめた三つ編みが目を引く少女が
元気よく人でいっぱいの玄関を開け、きょとんとした表情でその光景を見渡す。
254:リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w
07/08/10 18:01:48
「おねーちゃん!」
「あれ、なのは、帰ってたんだ! お帰り! それに……
とーさん、かーさん、大変だ! なのはがボーイフレンド連れてきちゃった!」
その一言に驚いて、互いに真っ赤になった顔を見合わせるススムとシンヤ。
バスケットの蓋を勢い良く開けて過剰反応したユーノも二人を威嚇するように見つめる。
すでにフェレットというよりイタチ、それも恐ろしい形相の某白イタチを思わせる気迫だ。
「コラ、美由希? いきなりそんな事言ったら失礼よー」
「てへへ……ゴメンね、驚かせちゃって。なのはに男の子の友達って珍しいからつい……
あ、私はなのはの姉で美由希って言うの。なのはと仲良くしてあげてね?」
やはり底抜けに明るい笑顔でススムやシンヤ達を興味しんしんといった感じで見つめ、
くしゃくしゃに頭をなでるなのはの姉だという美由希に困ったような表情を崩せない二人。
そこに奥の部屋から騒ぎを聞きつけたのか、最後のなのはの家族が顔を出した。
「何の騒ぎだ……ん、なのは、帰ってきたのか。おかえり」
「あ、おにーちゃん、ただいま!」
「おはよ、恭ちゃん! この子たちね、なのはのお友達の……」
「……そうか」
なのはの兄は妹二人には優しい笑顔を向けるが、
当の友達が男だと分かると微妙に機嫌を損ねてそっけない態度で接する。
その態度を見かねてか、父、士郎は目にもとまらぬ早業で関節技を決めにかかった。
「くぉら、バカ息子! 君はちょっと妹離れができていないんじゃあないのかな~!?」
「うがが……あぎぎ……ギ、ギブギブ! 悪かった!」
「さしもの恭ちゃんも、とーさんには形無しだー……」
「ご、ごめんねススム君、シンヤ君! おにーちゃん、いつもは優しいんだけど……」
「い、いや、俺達は……なぁ?」
「うん。全然気にしてないよ、なのはちゃん」
仲良く? じゃれあう親子をうらやましそうに眺めるススムとシンヤ。
事情はそれぞれだが、二人とも父親とは満足に交流を持てないでいるため、
親子のスキンシップというものにいくらかの憧憬を抱いていたのだ。
「もう、二人ともいい加減にしなさい! 皆、いつまでもこんな所で立ち話もなんだから
あがってあがって! 旅の話も聞きたいし、お茶にしましょう?」
そしてどこの家でもやはり母は強し。
鶴の一声であっという間に騒動を収め、慣れた手つきで一同を居間へと案内した。
255:リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w
07/08/10 18:03:04
「うわっ、このシュークリームめちゃくちゃウマ……じゃなかった、その、美味しいです」
「ホントー? だったらおばさんうれしーなー! おかわりあるからどんどん食べてね!」
九州土産にと武者鷲主から頂いた香りのいいローズティーと
うず高く積み上げられた手作りのシュークリームを前に、話も弾む。
当然魔法や戦いの事は話せず、辛かった事や悲しかった事もたくさんあるが、
それに勝るとも劣らない楽しかった思い出の数々も語り出せば尽きることはない。
「えっと、このシュークリームって喫茶店で出してるやつで、全部手作りなんですよね?
すごいなぁ……いっぱい修行したんだろうなぁ……」
「そうね。最初は料理教室とか近所のお店のバイトから初めて、
ヨーロッパで修行して、その後ホテルのレストランでパティシエをやって……」
「ホンマか? シュシュム、世の中やっぱり凄い人はごっつう努力しとるで!
ワイらももっともっと頑張らんと!」
「やだー、そんな大げさなものじゃないわよ。好きな事をやらせてもらっただけだもの。
……って、あなた達も何か食べ物の修行とかしてるの?」
「はい……大阪の……タコ焼きを……」
「あらホント!? 私も関西出身で……」
互いに料理好きの血が騒ぐのか、ススム&武ちゃ丸との話に花を咲かせる母桃子。
そんな光景を見ながらなのはの兄、恭也は感慨深げに呟いた。
「しかし……新鮮だ」
「? 私のお菓子の素材はいつも新鮮よー?」
「違う。この食卓の男女比だよ、かーさん。
男性比率が女性比率を上回ったのなんて、初めてな気がしてさ」
「あ……そう言われて見ればそうかも」
「確かに! 忍さんとすずかちゃん姉妹に私やなのはの友達もよく来るしね」
「おにーちゃん、そういう時いつもすこーし肩身狭そうにしてるもんね……」
「と、言うよりお前の男友達が少なすぎなだけなんじゃないのか、恭也?」
「い、痛いところを……うん?」
ふと、玄関のインターホンが鳴って団欒が少し断ち切られる。
「誰だろう……今日は千客万来だな。あぁ、いいよとーさん。俺が出る」
ローズティーの注がれたカップを置き、恭也は玄関の方へと進んでいく。
……かと思うと、即座に戻ってきて士郎と美由希、
そしてなぜか武ちゃ丸とトッキーを連れてまた玄関へとせわしなく戻って行った。
256:リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w
07/08/10 18:04:17
「お初にお目にかかります! おれ、羽丸って言います!
こちらに高町恭也と申される剣豪の先生はおられませんか!?」
「あぁ、高町恭也は俺だが……って、なんだ剣豪の先生って」
木刀と荷物を脇に礼儀正しく正座をし、威勢良く挨拶する幼い少年がそこにいた。
ただ、け普通の少年と著しく違う特徴を持った少年が。
「初めまして……って、恭也、この子はいったい……?」
「わからない。でも……」
白い……というより純白の肌に短い手足、緑色の大きな瞳、胸に輝く金色の宝玉。
その人間ではありえない数々の身体的特徴に少々面食らう高町家の面々。
「……君達の知り合いじゃないのか?」
武ちゃ丸とトッキーの方を見てそう言う恭也。
そう、彼はただの少年ではなく武者頑駄無の少年だった。
「いや、ワイは知らんけど……斗機丸、お前はどないや?」
「スマンが俺のデータベースにも該当する武者がいないな。羽丸君……だったか?
君は一体何者なんだ? 少なくとも、あの日是断の門に君のような子はいなかったはずだが……」
トッキーの問いかけに対し、これまた元気に答える羽丸。
「わからない!」
「わからないって……ひょっとして記憶喪失なのか?」
「う~ん……それもよくわかんない。だって、おれは名前も故郷もちゃんと覚えてるし……
わからないのはなんでおれがこんな所にいるのかって言う事だけなんだ」
「そりゃまた随分複雑な記憶喪失だね。いつ頃からそんななの?」
色々とややこしい事になっている羽丸の記憶に対し、率直な感想を述べる美由希。
「それもよくわからないけど、何故かやらなきゃいけない事だけはわかってるんだ。
誰かがおれに教えてくれたような、そうじゃないような……」
「やらなアカン事……一体何なんや? よかったら教えてくれへんか?」
257:リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w
07/08/10 18:05:32
武ちゃ丸の一言を待ってましたとばかりに羽丸は意気揚々と語り出す。
「一つはこの地に現れた堕悪闇軍団と戦う事。そしてもう一つは……
そのために高町恭也さん、あなたの下で剣の修行を積まなければいけないという事!
お願いします! どうかおれをあなたの弟子にしてください!!」
だんだん熱を帯びてくる羽丸の語りと対照的に恭也は疲れた顔で
その突拍子もない発言に突っ込みを入れる。
「……待ってくれ。そこでどうして俺なんだ? 優れた剣の使い手なら他にもっといるし、
実戦的な剣術ならそれこそ他の武者頑駄無に教わればいい話だろう」
「いえ! あなたじゃないとダメだって、おれの心の中で何かが叫ぶんです!」
「いや、しかしだな。いきなり押しかけてきてそんなアレな理由を言われても……
そもそも一体どこで俺の事を知ったんだ?」
当惑し、何が何だかわからなくなり始めている恭也に外野が追い打ちをかけた。
「これはまたずいぶんと惚れこまれてしまったもんだな、恭也」
「私は構わないと思うけど? 恭ちゃん、教え方結構上手だし、
私の方も弟弟子ができたら嬉しいなー……なんて」
「とーさん、美由希……人事だと思って気軽に言わないでくれ」
「で、どうするんだ? お前の問題だ。答えはお前が決めるといい。
ただし、あの子は本気だぞ。だからお前も真剣に答えなきゃいけない。わかったな?」
士郎は恭也の肩をポンと叩き、答える事を促す。
「……そうだな。どうしてもと言うなら、考えてやってもいい。
何日か様子を見て務まるかどうか判断してからだ。それならいいか?」
「は、はい! よろしくお願いします、先生!」
その答えに満面の笑みをたたえて全身で喜びを表現する羽丸。
「ただし!」
恭也の強い語気に押され、羽丸は一瞬ビクっとして姿勢を整える。
「無理だと判断したらその時は……わかってるな?」
真剣……というより静かに燃える炎のような、
あるいは凍てつく絶対零度の氷塊のような恭也の鋭い視線が羽丸を貫く。
士郎と美由希はそんな彼の様を見て、「鬼コーチモード突入だぁ」だの
「おとーさんはあんな子に育てた覚えは約20%くらいしかありません」だの囁き合っていた。
258:リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w
07/08/10 18:06:46
「……で、なのは。結局その羽丸って子、どうなの?」
夕暮れ時、なのはと新たな魔法の習得を行うべく訓練に熱を上げるユーノは
一段落ついたところで気になっていた羽丸の処遇について訊ねてみた。
「どうなのって……うーん、私は詳しい事はわからないけど……
何て言うか、こう……気ばかり焦って空回りしてる……みたいな?
見てたでしょ、いろいろお手伝いしようとしてお皿割ったり、
お米を研ぐときに台所洗剤入れちゃったり……
おにーちゃんもずいぶんむつかしー顔してたし……
それに本人も自分の事あんまり分かってないみたいだし、一体どういう子なんだろう?」
今日一日だけで羽丸が台所で巻き起こした騒動を思い返すなのは。
この勢いだとトレーニング中に何かをやらかしていたとしても不思議ではない。
「そっか……とりあえず彼の調査はトッキーさんに任せてあるし、
僕達は僕達にしかできないことをやろう」
「そうだね。ディバインバスターの射程、集束の強化……それが最優先かな?」
「それだけじゃない。威力はともかく取り回しの悪いバスターの他に
小回りの利く他の攻撃魔法も覚えなきゃだし、劣るスピードを補う方法、
前衛で戦う武ちゃ丸やトッキーさんの能力を強化したり、
敵を妨害する支援魔法も充実できたらそれに越したことはないね」
「はぁ……問題山積みだね……」
思わずため息をついてしまうなのはを励ますようにユーノは話を続ける。
「そうでもないよ。新生夢者遊撃隊と言うチームを編成できたおかげで、
やらなければならない事がハッキリしてるからね。なのは一人だったらもう大変だよ?」
「得意な魔法が魔法だから、たいして変わらない気もするんだけど……
じゃあ、ユーノ君の使命のため、私のレベルアップのために頑張りますか!」
「うん、じゃああの子が使ってたみたいな魔力弾を遠隔誘導操作する魔法から……」
<<All right>>
ユーノの指示に答え、レイジングハートは記録されている魔法のいくつかをなのはに伝える。
ただし、モノになるかどうかはなのはの努力次第。
結局、前回の旅では黒衣の魔導師と言い、魔刃頑駄無と言い自らの技量を上回る相手には
手も足も出なかった。ならば結局は自分のスキルを高めるしかない。
その為に二人は熱心に特訓を重ねた……それこそ時間を忘れるほどに。
259:リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w
07/08/10 18:08:28
「ふえぇ、すっかり遅くなっちゃったよ! もう真っ暗!」
<<Sorry, my master>>
「ごめん、つい張り切りすぎちゃって……また怒られちゃうかな?」
「いちいち言い訳しなきゃならないのが余計に心に痛いね……」
案の定特訓に集中しすぎてすっかり暗くなった街並みの中、家路を急ぐなのはとユーノ。
その途中、たばこ屋の角を曲がったところで
二人は出来たら顔を合わせたくなかった身内二人と顔を合わせてしまう。
ランニングの帰りと思われる恭也と美由希だった。
「……なのは。ユーノの散歩に一体何時間かかっているんだ?」
「ごめんなさい……」
「もう、そんなの後でいいじゃない! なのは、途中で羽丸君見なかった?」
「羽丸君? あれ、そういえばいないね。まさか……」
少し憮然とした表情の恭也と不安そうな態度の美由希。
そこから事態を推理してしまったなのはは口に手を当て、顔を青ざめさせる。
「そう、ロードワークの途中で私達についてこれなくなったのか見失っちゃったのよ!
みんなで探してるんだけど、さっぱり見当たらなくて……」
「本当に!? じゃあ私も……」
「駄目だ。なのはは帰ってかーさんと一緒に待ってるんだ」
「でも……」
「なのは」
「……はい」
自分も手伝おうと食い下がるなのはを言葉少なに説得し、再び夜の街に探しに戻る恭也。
その姿を見て、美由希は落ち込むなのはを諭すように語りかけた。
「恭ちゃんね、ああ見えても結構心配してるし、責任も感じてる。
後はとーさんに、なのはのお友達の武者頑駄無さん達も探してくれてるから、
きっとすぐに見つかるよ。だから、なのはは安心して待ってて。ね?」
「うん……」
そう言った美由希もまた羽丸を探しに戻り、そこにはまたなのはとユーノが残された。
「なのは……どうするの?」
「放っておけないよ! 私達の魔法で何とか探せないかな?」
「そりゃ、前にジュエルシードを探した時のやつを使えばできるけど……
今日はもう今までの特訓で魔力も体力も結構消耗してるよ?」
「いい!」
260:リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w
07/08/10 18:09:58
「やっと見つけた。みんな心配したんだよ、羽丸君?」
「あ、先生の下の妹さんの……」
「なのは。高町なのはだよ。さ、一緒に帰ろう?」
なのはは優しく微笑み、羽丸に手を差し伸べるがその手は振り払われてしまい、
羽丸も後ろを向いてしまう。
「……駄目だよ。おれ、今日も失敗ばっかりで……きっと先生、すごく怒ってる。
おれ、もう先生の弟子にはしてもらえないんだ……
弟子になれればひょっとしたら何かわかると思ってたのに……!」
「そんなことないよ。おにーちゃんは不器用さんだけど、ホントはすっごく優しい人。
たぶん私なんかよりずっと羽丸君の事を心配してる。
それに、あきらめるのはまだ早いよ。だってまだ一日目でしょ?
それじゃあ失敗とかいろいろやっちゃって当たり前だよー」
「けど!」
「私もね、この間結構失敗して、友達にたくさん迷惑かけちゃったんだ」
「……え?」
羽丸の隣に座り、同じ目的を持つ競争相手の少女に完膚なきまでに敗れたこと、
自分にできる最高の技術を駆使しても、足元にも及ばない人物と相対した時のこと。
念のため魔法や戦いに関わる真相を隠し、自らの失敗の体験を語り聞かせるなのは。
羽丸も真剣な顔つきでその話を聞いている。
「……だから、ホラ、んーと、何て言ったらいいのかよくわかんないけど……
私も頑張るから、羽丸君も頑張ろ? じゃないと、きっと後悔すると思うんだ。
何も分からないなら試しにできる事をやってみる事って、そんなに悪くないと思う。
おにーちゃんに怒られたら私も何か言ってあげるから、ね?」
「おれに……できる事……」
なのはが差し伸べていた手に羽丸が手を伸ばす。
しかし、その手は背後から忍び寄る影の放った飛苦無によって断ち切られてしまう。
「ウフフ……ジュエルシードを探しに来てみれば、こんな大物に巡り合えるなんて。
アナタ、堕悪羽流鋭様が仰っていた魔導師のお嬢ちゃんね?」
「私の事を知ってる……? あなたは一体誰なんですか!?」
羽丸をかばうようにして勇敢にその影を見据えるなのは。
それに答えるかのようにその影は実体を表した。
261:通常の名無しさんの3倍
07/08/10 18:40:55
意味無いかもしれんが一応支援
262:リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w
07/08/10 18:55:56
そしてまた落丁orz
>>259と>>260の間にこれ挟んどいてください。
そして支援㌧クス
即答するなのはにユーノは処置なしといった風情で首を振り、こう答えた。
「それなら、僕と同時に魔法を発動しよう。負担も半減できるはずだよ」
「ありがとう、ユーノ君! じゃあ広域探索魔法、いっくよー!」
<<Area search>>
そうして二人は疲れた体に鞭打って羽丸を探す。
発動自体はそれなりに力を使うものの、妨害などもないためすんなり羽丸は見つかった。
……場所が今までいた自然公園の近くという事実は割と二人をげんなりさせはしたが。
「……で、見つかったけどどうする? 恭也さん達に連絡した方が……」
「迎えに行こう、二人で」
「やれやれ、なのはの事だしそう言うと思ったよ。でも……」
「大丈夫! こう見えても私、結構丈夫なんだよ?」
先日トッキーに言われた事もあり、なのはの身を案じるユーノであったが、
同時に彼女の言い出したら聞かない性格も重々承知していたため、
その場は黙って従う事にした。
「あっ……いたよ、あの子じゃない?」
「シッ、なのは、少し静かに……何か言ってるよ?」
自然公園の広場、藤棚のベンチに一人座っている羽丸を見つけた二人。
羽丸が何か囁いているのを聞きつけた二人はそのまま様子を見る。
「綾乃……おれ、やっぱ駄目だよ……何が何だか訳がわからないし、
道に迷って先生達には置いて行かれるし、おふくろ様には迷惑かけっぱなしだし……
おれ、なんでこんな所なんかにいるんだよ……父ちゃん、母ちゃん、帰りたいよ……」
涙をぼろぼろと流しながら月を見上げ、遠い故郷の事を想う羽丸。
「……羽丸君、ホームシックにかかっちゃってるみたいだね……」
「無理もないよ……事情も分からず見たこともない世界に放り出されて、
しかもいきなり失敗ばかりじゃあ……って、ちょっと、なのは!?」
ユーノの制止を振り切り、悲しみに暮れる羽丸になのははそっと話しかけた。
263:リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w
07/08/10 18:57:54
では続き。
「ワタクシの名は堕悪翔妃(しょうひ)。堕悪闇軍団、空魔忍軍の紅一点。美しき蒼空よりの刺客ヨ」
「わかりました。なら翔妃さん、どうして私を襲うんですか!? 答えてください!」
なのははいつものように話し合いから入ろうとし、相手もそれに応じる。
「勇ましいですのね。そう言う娘、ワタクシ嫌いではありませんわよ?
堕悪魔刃頑駄無様はアナタの事を大層高く評価しておいでなの。
いつかは恐ろしい障害になるってね。見つけ次第、勧誘するか洗脳するかして
こちらに引き込むよう仰せなのヨ。けど、美しい者はあまり多くても困っちゃうわ……
ダ・カ・ラ♪ よろしかったら、ここで死んで下さいませんこと?」
あくまで明るく、丁寧な口調で恐ろしい事をさらっと言ってのけるこの刺客に
背筋が震える感覚を覚えながら、それでも立ち塞がることをやめないなのは。
「死……!? じょ、冗談はやめてください!」
「アラ、冗談なんて言ったつもりはなくってヨ。
人間なんて私達に例のエネルギーを供給してくれる存在でしかないもの。
だからあんまり目立った事してくれると邪魔なのよね……
伸びすぎた雑草はさっぱり刈らないと、ネ?」
「そ、そんな事……」
「そんな事、させるもんか!」
なのはが反論しようとした時、物陰から飛び出してきたユーノの声と
なのはの前に躍り出て、木刀を構えた羽丸の声がシンクロする。
「あら、かわいいボクちゃんとオコジョちゃんね。けど、邪魔するなら容赦はできませんわヨ?」
「ふざけるな、オバサン! おれだって武者頑駄無なんだ!
堕悪闇軍団の好き勝手にはさせないぞ!」
「オバ……サン……? ……今、オバサンとか抜かしやがったかこのクソガキィィィッ!?」
その「オバサン」という羽丸の不用意な発言は翔妃の逆鱗に触れた。
それまでの遊び好きの淑女然とした装いはなりを潜め、その残虐な本性をあらわに
翔妃は羽丸の襟元をつかみ上げ、ぎりぎりとその首を締めあげ始めた。
「このアタイの美しさを理解しねぇようなゴミ虫は、死んじまいなァッ!!」
「は、羽丸君っ!!」
264:リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w
07/08/10 19:00:26
翔妃は羽丸の体を空中に放り投げ、鋭い爪の一撃でその小さな体を切り裂く。
羽丸は中に弧を描きながら藪の方に向って弾き飛ばされていった。
「せん……せぇ……なのは……やっぱ、おれ、駄目なのかなぁ……
何にもできないまま、ふるさとにも帰れないまま死んじゃうのかなぁ……
悔しいなぁ……おれが、もっと強かったら……」
(羽丸……)
「あれ……誰の声だろ……どっかで聞いたような……」
(羽丸……右手を掲げろ……胸の玉に意識を集中させるんだ……)
「みぎ、て……たま……」
羽丸は薄れゆく意識の中、幻か現実かも定かではない不思議な声を聞き、それに従う。
すると、羽丸の意識は閃光のような激しい光に包まれ、ホワイトアウトしていった。
そして……
「羽丸……くん……?」
「さぁ小娘、次はアンタの番さね! 覚悟おし!!」
「なのはーっ! バリアジャケットと防御魔法を、急いで!」
突然の凶行に呆然とするなのは。ユーノの叫びも聞こえず立ち尽くす彼女に
血に濡れてぎらりと鈍く光る爪が振り上げられる。
―絶対絶命!?
ユーノがそう思い、自らの魔法で攻撃を遮ろうとしたまさしくその瞬間だった。
雷を纏った金色の剣閃が双曲線を描き、翔妃自慢の爪を見事に切り落とす。
意識を取り戻したなのはやユーノが天を見上げると、白い大きな翼をはためかせ、
悠然と藤棚の上に降り立つ二振りの刀を携えた武者頑駄無の姿がそこにはあった。
「ア、アタイの爪がぁぁぁっ!? そこの鳥男! 何てことしやがる!?」
「たとえ女であろうと、堕悪にかける情けは存在しない。
ましてや貴様のような外道になど!」
その武者は冷徹なまでの威圧感に満ちた声音でそう吐き捨てると、
翔妃はさらに頭に血を上らせ、ヒステリックに喚き散らす。
「アンタ、よっぽど死にたいみたいだねぇ……だったら望み通りにしてやるよ!
出てきな、紅陽炎(べにかげろう)ども!」
翔妃が合図をすると、何もない空間から突如としてどことなく昆虫を思わせるフォルムの
赤い鎧と翅をもつ雑兵、紅陽炎が姿を現した。
265:リリカル武者○伝 ◆IsYwsXav0w
07/08/10 19:01:42
「えっ、な、何!?」
「空間転送に似た術を使った!? これだけの数を一度に……まずい!」
「心配するな、なのは。あれ位、俺一人でも十分だ。そこで見ていろ!」
「えっ……な、なんで、私の名前を!?」
胸に輝く、どこかで見た記憶のある金色の宝玉を気にしながらその武者は構えをとり、
雲霞のごとく押し寄せる翔妃の呼び寄せた雑兵、紅陽炎を
まるで八艘飛びの様に刀を振った反動を用いて次々と斬り倒していく。
「しゃらくさいねぇ! だったらこれはどうだい? 堕悪乱撃鋭爪弾!!」
「……!」
闇の魔力で強化され、極端に圧力を高めた圧縮空気弾を乱れ撃つ翔妃。
さすがの白い翼の武者もよけきれずいくつかをその身に受けてしまう。
絶え間なく放たれる空気弾に身動きの取れない白い翼の武者の胸の宝玉は
いつの間にか光の明滅が始まっており、彼はしきりにその事を気にしている様子だ。
「ハハン……どうやらそれがアンタの命綱って所かい? じゃあ、フィナーレといこうかい!」
その様子を感じ取った翔妃はとどめをささんと一際大きな空気弾を作り出し、
その照準を動きの鈍くなった白い翼の武者に定める。
「ユーノ君……私、もう黙って見ていられない! アレ、使ってみる!」
「アレって……まさか!? 駄目だ! 今日覚えたばっかりでなのはだって消耗してるのに!」
「平気だよ。これくらい乗り越えられないと……私も失敗を越えて行けない!
行くよ、レイジングハート!!」
<<Yes, my master>>
なのははレイジングハートを起動し、純白のバリアジャケットを身に纏う。
すでに今まで相当の魔力を使っているのでこれだけでもかなりの負担になるはずだが、
それを押し殺し、目を閉じて新しく身につけたばかりの呪文を詠唱し始める。
「リリカル、マジカル……福音たる輝き、この手に宿れ。導きの下、鳴り響け!」
<<Divine Shooter>>
「ディバインシューター、シュートッ!!」