07/06/29 23:09:06
32-3(2/2)
ノリスとレナの睨み合いは、今だ続いていた。
「さあ、どうする!? 連合のパイロット!!」
ノリスは叫びながら35mmガトリングをバスターダガーに放った。
レナはそれはかわしながら、思考を巡らせる。
「本っっっ当に、エドの奴使えないわね」
愚痴っても仕方がない。エドの機体は敵の手の中にあるのだから。
「……でも、このままじゃ埒が明かないわ」
本格的にエドを見捨てることを考え出す。このグフは間違いなくエースだ。ジオンの欧州方面軍一の技量を
持つと言っても納得できる。自分がサシで戦ったとしても、勝てるのは難しい。
敵機がエネルギーか弾切れを起こすまで耐える方法もある。しかし今アークエンジェルを護衛しているのは
サイとトールのみ。ドタイもアークエンジェルに狙いを絞っている。自分も支援に向かわなくてはならない。
「エドには悪いけど、これも戦争よ」
レナは決心をつけた。エドを見捨ててグフを撃つ。
このまま対峙しても事態は進展しない。それにこのエースパイロットを放置すれば、何人のMSパイロットが
犠牲になるか分からない。今ならエドだけで済む。
「悪く思わないでね」
そして収束火線ライフルをグフに向けた。しかし次の瞬間、グフはエド機を無視して飛び退いた。
ノリスは何が起きたのか理解できなかった。バスターダガーが銃口を向けたことは問題ではない。
一瞬。
そう一瞬だけモニターに光が映ったのだ。それが何か理解する前に、ノリスは機体を動かしていた。案の定、
さっきまで自分が立っていたところを徹甲弾が掠めた。コックピットを狙ったものだろう。
「狙撃ッ!?」
ノリスが状況を理解している間に、レナは次の行動に出ていた。
エド機を離れたグフにライフルを連射する。
「チィッ!!」
ノリスはドミニオンの影に身を隠す。
「……これ以上の戦闘は無理か」
ノリスの考えた作戦は、木馬を行動不能にすることが目的だった。
木馬は鉱山基地への奇襲、言い換えれば後方撹乱が目的だ。ノリスとしてはそれを阻止しなければならない。
だがそれは、木馬を撃沈させる事とは等しくない。つまり行動不能にするだけなら、従来のMSで対応できる。
「やはりドムは必要なかったな、マ・クベ中将」
ノリスはドム2個中隊を前線への救援に向かわせていた。彼らがいれば多くの将兵が救われる。
「味方の損害は多いが、木馬を1隻行動不能にした。作戦は成功と見なす」
言うとノリスは撤退の信号弾を上空へと放った。
363:51
07/06/29 23:13:36
一先ず戦闘終了
連合の損失は、
デュエルダガー2機
スカイグラスパー1機
105ダガー1機
ドミニオン中破
となっております。
報告
スパロボ週刊に入るので次の投下はいつになるか分かりません。
364:通常の名無しさんの3倍
07/06/30 00:09:51
GJ!
贅沢を言えばAAも中破位はさせておきたかったですな。
>スパロボ週刊に入るので次の投下はいつになるか分かりません。
無問題です。
私も同じですから。
365:通常の名無しさんの3倍
07/06/30 00:17:58
ノリスは流石に引き際も考えてるな・・・
それにしても、AA,ドミニオン足止めにドムも必要ないってやっぱ凄いわ
366:通常の名無しさんの3倍
07/06/30 11:45:01
51氏GJ!
これでAAが帰ってくれればノリスとすれば御の字なんでしょうけど、更に進んだらどうするんだろ。
足止めではなく両艦撃破ならドムが必要だったんだな。
マ・クベは撃破して鹵獲してこいってつもりだったのかも。
367:通常の名無しさんの3倍
07/06/30 16:26:25
連合ドリームチームはあっさり敗北か。ノリスたちとの技量差がこれ程とはなぁ・・・
オデッサ主力部隊の運命がもう第八艦隊にダブり始めましたよ
368:通常の名無しさんの3倍
07/06/30 22:19:29
515氏の小説を再度読み直してたんだが、サイド7に3機の、それも赤いリック・ドムに乗って、しかも目標の一つは連合の新開発MS、
どっかで見たような...と思って見てたが、Zガンダムの導入部をなぞらえていると考えれば、納得がいく展開
ZではMK-Ⅱを奪取することに成功するが、此方の場合、ザフトと連合どちらに狙いをつけるのか楽しみ
369:通常の名無しさんの3倍
07/06/30 22:22:47
やっぱりゼロが一人に完全に抑えられたのが痛いな
370:通常の名無しさんの3倍
07/07/01 01:07:39
そういえば、ゼロが戦果を上げられないと、強化人間プロジェクトそのものが解散するんじゃないか?
371:通常の名無しさんの3倍
07/07/02 12:55:08
つか狙撃したの誰よ?
372:通常の名無しさんの3倍
07/07/02 15:04:48
スマン
間違えて上げてた
373:通常の名無しさんの3倍
07/07/03 22:10:31
保守
374:51
07/07/04 20:33:10
32-4(1/2)
「引いていく……?」
グフを殿に撤退を始めたジオン軍を見てレナは安堵した。
「やれやれ。しかし、あの狙撃は一体誰が……」
方向から狙撃位置を割り出すと、そこには1体のライトニングダガーが砲を構え立ち尽くしていた。
肩に書かれた番号から、それがサイの機体であることが確認できた。
「アーガイル伍長……」
「た、大尉。大丈夫でありますか?」
通信からはサイの興奮した声が聞こえた。
あの時、援護に向かうジャンの機体が破壊されたことにより、サイが代わりに駆けつけたのである。サイの
能力は総合ではトールに劣るが、射撃だけは上回っていた。ジャンは新兵とは思えない射撃能力を持つサイに
支援を任せた。案の定、彼の狙撃によってレナはエドを見逃さずにすんだ。
「キャリー中尉に代わって援護に来たのですが、拙かったでしょうか……?」
「構わない。助かったわ……」
レナはねぎらいの言葉を掛け、通信を終えると不機嫌になった。あのままでいたら自分はエドを殺していた。
それを新兵のサイに助けらたという事実がレナのプライドに小さな傷をつけた。
「私としたことが……」
それでも助けられたことに代わりは無い。サイを侮蔑することはしなかった。
レナは何かを振り払うように横たわったソードダガーに向けて通信を送る。
「エド、生きてる?」
返事が無い。ソードダガーに損傷は無いから、電源自体が落ちていると考えられた。
「ヒートロッドにやられたか。グフと戦うときはあれ程注意しろと教えたのに……」
不機嫌なレナは更に不機嫌になった。
とりあえず動けないソードダガーを回収しながら、エドへの厳しい懲罰を考えるレナであった。
「サイ! トール! 無事で良かった」
アークエンジェルに帰還したキラは喜び勇んで2人に駆け寄った。
「そう簡単にやられるかって!」
「後ろで撃ってただけだからね……」
この戦闘でトールはMSを2機撃墜、サイは戦闘機および爆撃機を3機撃墜、MSを1機撃破していた。
キラが撃ちもらした特攻隊をそれぞれが撃ち落した結果である。MSの乗ったドタイは重量が増したことに
よって動きが遅くなっており、トールがMS、サイがドタイを分担することで、この戦果を上げれたのだ。
「それでも初陣でこの戦果はたいしたもんだ」
マードックがねぎらいの言葉をかける。2人はテレながら頭をかくが、キラは浮かない顔をした。
「でもこちらの被害も大きいですよね。セイラさんも……」
キラの言葉にうなだれる面々。
セイラは戦闘機2機を撃墜するも乗機は小破した。本人に怪我は無いが、1つ間違えれば命はなかっただろう。
他の損害はドミニオン中破。デュエルダガー2機大破、1機中破。105ダガー1機小破。スカイグラスパー1機大破、
1機小破といった内容だ。
キラ達はこれからが厳しい戦いに不安になり始めるのだった。
375:51
07/07/04 20:35:54
32-4(2/2)
ニムバスはミンスクに戻るなり、報告もせずグフ・フライトタイプに駆寄る。目的はグフのパイロットだ。
「間違いないNTだ!」
ストライクを華麗な操縦で翻弄したグフのパイロットを、ニムバスはNTと断言した。
「やっと見つけたぞ。騎士になるべき存在を……」
ニムバスは興奮気味にパイロットの所へ向かった。
彼は子供の頃から母親に“NTの騎士となれ”と教わっていた。彼女は亡命したコーディネイターでジオン・
ダイクンの思想を盲目的に信じていた。だからこそ息子にNTと繋がりを持たせようとしたのだ。
ニムバスも騎士になる夢を見ながら軍に入隊した―のだが軍に入ってもNTなどには会わなかった。
コーディネイターの友人は、ジオン国民こそNTだと息巻いていたが、ニムバスの目にはそうは映らなかった。
現に最初の上官は自分の保身しか考えない輩であったし、周囲の人間にも碌な奴がいなかった。
赤い彗星など、NTの噂はよく聞くが彼は会ったことがないので判断できない。そんなこんなのうちに、彼は
左遷され、現在に至っていた。
そのニムバスの前に現れたパイロットの操縦は、敵の動きを完璧なまでに読み、当たり前のごとく回避する
という、MSとはあそこまで動けるものだったのか、と感心させる程に美しかった。
初めて目にしたNTの存在に、ニムバスは周りが見えなくなっていた。
「おおっ!」
グフのコックピットから出てきた人物は、ニムバスが出撃前に出会った少女だった。
ニムバスは周囲の人垣を掻き分けると、少女の前にひざまずいた。
「名をお聞かせ願いたい!」
突然のニムバスの行動に、彼女は驚く。
「……マリオン、マリオン・ウェルチ」
ニムバスの剣幕に恐る恐ると口にした。
名を聞いたニムバスは、何と良い名前なのだろうと考えると、誰も予想し得ない言葉を言った。
「私がマリオンの騎士となろう」
聞いていて恥ずかしいセリフを口にする。
周りにいた整備兵やNT研究者達は呆気にとられ、口をポカンと開けている。
「私はハーフだが、ただの純潔種には負けん。だからこそ……」
「キモイ」
「なっ!!!」
マリオンはそれだけ言うと急ぎ足で逃げ出してしまう。ニムバスはその姿を唖然と眺めるしかなかった。
ちなみに、この日からニムバスはロリコンだとする噂が広まったのは言うまでもない。
376:51
07/07/04 20:37:18
人が居ないね……
これもSRWの関係か……
サイ:ガンファイトand援護攻撃持ち
ニムバス:やっぱりおかしな方向へ
な今日の投下でした。
377:通常の名無しさんの3倍
07/07/04 20:42:04
GJ!!
378:通常の名無しさんの3倍
07/07/04 20:49:25
三文字ワロタwwwww
379:通常の名無しさんの3倍
07/07/04 21:02:39
でもごく自然な反応だよなw
380:通常の名無しさんの3倍
07/07/04 21:20:45
51氏GJ!
ニムバスってある意味でマッチモニードと同レベルで危ない人だよなぁ。
マリオンの今後に幸あれ。
381:通常の名無しさんの3倍
07/07/04 21:24:23
きもいってw
俺も言われてみたい
382:通常の名無しさんの3倍
07/07/04 21:28:11
デブヲタニートの俺からで良ければ・・・・
>>381
きもい
383:通常の名無しさんの3倍
07/07/04 21:30:57
ロリコンのレッドショルダー・ニムバス
384:通常の名無しさんの3倍
07/07/04 22:27:02
だが、それがいいw
385:通常の名無しさんの3倍
07/07/04 23:18:47
EXAMに囚われてる正史より活き活きしてるなw
386:通常の名無しさんの3倍
07/07/04 23:59:18
投下乙!
サイは射撃スキル有か・・・
レナが言うとおり、サイの狙撃のおかげでノリスが引いてくれたのか
地味にサイ蝶GJだな
387:通常の名無しさんの3倍
07/07/05 09:03:36
>>386
でも(能力的に)生意気な新兵として、上官の心証は悪そうだw
初陣で地味に活躍したトールとサイ、生き延びることが出来るかGJ
388:通常の名無しさんの3倍
07/07/05 21:10:29
>>380
ニアーライト少佐「冗談じゃないわ!あんなのと一緒にされるなんて!!」
389:通常の名無しさんの3倍
07/07/05 23:22:06
GJでした。
相手が戦闘機でも3機落としたらエース認定もらえるのかな、この世界って。
もしそうならサイは初陣でエースになれるのだが。
390:通常の名無しさんの3倍
07/07/06 00:27:49
エース認定は5機、敵がヘタクソで撃墜数が多くなるドイツだと10機じゃなかったか?二次大戦の話だけど。
391:通常の名無しさんの3倍
07/07/06 02:00:54
>>390
大元は10機、アメリカが基準を5機にしてそれ以降エース=5機以上撃墜、らしい。
しかし現実世界で300機以上撃墜とか戦車300両以上とかのエースがいるドイツって一体なんなんだw
392:通常の名無しさんの3倍
07/07/06 02:22:51
たしか部隊の平均撃墜数が百を越えた連中もいなかったっけ?
393:通常の名無しさんの3倍
07/07/06 03:26:37
WWIIなら、アメリカにも結構無体なのがいたような。
日本は、数はともかくB-29に体当たりして生還とかあるな。
394:通常の名無しさんの3倍
07/07/06 04:53:04
敵機を主翼でぶった切って生還、という人もいなかったか?>日本
395:通常の名無しさんの3倍
07/07/06 05:33:10
>>391
そんだけ当時のソ連兵がへぼでなおかつキチガイじみた数いて
なおかつ味方は絶望的に少なかったということだよ。
後機体が頑丈でかつ下が陸だから撃墜されてもパイロットが生還できたことがある。
日本はしたが海で機体が柔、かつ救出をろくに考えてなかったから
一度撃墜されればそれでおしまいになるから数がどうしても少なくなる。
アメリカはもともと数が多いしちゃんとローテーション組んで戦闘、後方での
訓練教官、休暇とやるから出ずっぱりのドイツや日本と比較すると個人の戦闘時間が
短いから撃墜数が少なくなる。
396:通常の名無しさんの3倍
07/07/06 12:59:29
基本防御側の撃墜数があがるのは当然、なんてったって索敵が必要ない、相手から来てくれる
此処で一言
「こいつはいい!どっちを向いても敵ばかりだ! 狙いを付ける必要もないくらいだぞ! やってやれ、撃ちまくるんだ! 」
397:通常の名無しさんの3倍
07/07/06 17:02:30
ソ連の偉い人が言ってた
「向こうに百万発の銃弾があるならばこちらは二百万人で攻めればいい」
ユーラシア連邦もそれぐらいやれよ。
398:通常の名無しさんの3倍
07/07/06 18:47:30
「こちらの艦隊は3万隻、敵は2万隻、敵軍ことごとく葬って なお1万隻余るじゃないか」
なんか数というものはすごい物だ
399:通常の名無しさんの3倍
07/07/06 19:32:30
まあ、性能同じで正面から殴りあいって条件あるが、
ランチェスター方程式当てはまれば2万くらい生き残るんじゃないか?
基本的に戦争は数だよ、数
400:通常の名無しさんの3倍
07/07/06 19:33:45
>>395
それ以外にももちろんパイロットの技量もあったしなw
ルデルとかwwwwwww
401:通常の名無しさんの3倍
07/07/06 21:14:33
独裁国家以外ではできないだろ<向こうに百万発の銃弾があるならばこちらは二百万人で攻めればいい
やった後は財政破綻と政権崩壊しか残らんぞ。
オーブなら文句はでないかもしれないが、あそこは人口少ないからそもそも無理だし。
402:通常の名無しさんの3倍
07/07/06 22:07:05
>>401
WW1の頃だと、独裁国家のみならずどこでもこんなメンタリティ。
しかも寸土も取れないんだよね
403:通常の名無しさんの3倍
07/07/06 23:45:02
>>402
ウラー の掛け声があればこんなこと簡単w
404:通常の名無しさんの3倍
07/07/07 00:06:27
51氏の話だと、そろそろジオングができててもおかしくなさそうだが、
最初から足なし設計なのか、それともパーフェクトが前提なのか妙に気になる
405:通常の名無しさんの3倍
07/07/07 14:25:49 s4lInd1H
>>401-3 旧ソ連、中共、北朝鮮みたいに督戦隊作ればヨロシ
406:通常の名無しさんの3倍
07/07/07 18:25:09
んじゃ俺はリクームね
407:515
07/07/08 08:46:17
お久しぶりです。
しばらくゲーム三昧な日々でした。
では投下します。
408:515
07/07/08 08:47:28
Zion-Seed 第22話 PHASE-04『サイレントラン』
■ 彗星と蜉蝣とレムおじさん ■
「……以上がヘリオポリス崩壊の顛末です」
『おやおや、コレはまたひどい……』
『少佐、住民の避難状況は? なんなら輸送艦の手配もしなきゃならないよ』
「一応ほとんどの住民がシェルターへの避難を終えていたようです。救命艇回収用の輸送艦の手配お願いできますか?」
『お役所仕事は大佐に任すよ』
『OK、任されよう。ハッハッハッ、これでオーブへの外交カードが一枚増える♪』
「ありがとうございます」
『しっかし、アンタがしくじりをやらかすとは珍しいね』
『中佐、若いときの失敗などあって当たり前、要はいかに失敗から学ぶかだよ』
「では、これより我が隊は救命艇の回収をおこないます」
『フフッ、自分を騙せないような嘘はつくもんじゃないよ?』
『そうだね。後のことは我らに任せて少佐はなすべき事をするといい。宇宙でコロニーを破壊するという事が、どういう
事態を引き起こすか、愚か者によく思い知らせるように』
「……ご配慮、感謝します。これより我が部隊はザフトの追撃に移ります」
『叩きのめしてきな!』
『たか~い授業料を払わすように♪』
409:515
07/07/08 08:48:49
■ 変態仮面 ■
「このような事態になろうとは、いかがされます? 中立国のコロニーを破壊したとなれば、評議会も……」
「地球軍の新型兵器を製造したいたコロニーが、どこが中立だ」
「しかし……」
「住民の殆どは脱出している。さして問題はないさ、血のバレンタインの悲劇に比べれば、な」
こう言われるとアデスとしても返す言葉は無い。
それほどまでに血のバレンタイン事件はプラント住民のナチュラル憎悪の元であった。
「敵の新造戦艦の位置は、つかめるか?」
「……まだ、追うつもりですか?」
オペレーターの芳しくない返事を聞きながら、アデスは隊長のクルーゼがまだ地球軍の新造艦を追うつもりである事に
驚いていた。
こちらにはもうMSが無いと告げると、自信満々で奪取機体を用いると返答される。
再び声に詰まるアデス。
データを取れればもうかまわんさ、と軽く言うクルーゼだが、その場合このヴェサリウスがプラント本国に帰還できな
ければ意味がない。
「帰還すべきです。地球軍相手であれば奪取機体を用いての戦闘も可能でしょうが、ジオンも相手となればこの情報を
本国に持ち帰るのを優先すべきです」
「……」
クルーゼは怯むことなく奪取機体を用いてのAA追撃を行おうとしていたが、ジオンの介入により事態はそれどころでは
ない。
しぶるクルーゼであったが、アデスにこれ以上隊のザフト・レッドを失うと評議会の査問ではすみませんよ? と言われ
ると、流石にこれ以上は無理か……と溜息をついた。
「この宙域より離脱する。ガモフにも通信を送れ、撤退だ」
410:515
07/07/08 08:50:22
■ ■
ヴェサリウスへと帰還したアスランは通路の窓から外を見やり、崩壊したヘリオポリスの残骸を眺める。
脳裏に浮かぶのは連合のMSに乗る幼馴染の姿。
「バカヤロウ……なんで利用されているだけってのがわからないんだ」
そう呟き、歩を進める。
ロックを解除し部屋へと入る。いつもアスランと会話を交わしていたラスティはもういない。
私物がまとめられ、ベッドの上に置かれているだけだ。
それを確認し、力なくベッドに倒れこむアスラン。
脳裏に浮かぶのはラスティに、先の戦いで失った3人のパイロット達。
「ラスティ……ミゲル……」
「ん? 呼んだか?」
「……うぇおぁーーーーーー!?」
その声に驚いてベッドから飛び上がる。すると頭と腕に包帯を巻いたミゲルが、扉に寄りかかるようにしているではないか。
「ミ、ミゲル……生きて?」
「おう、足はついてるぜ……って、勝手に殺すなよ」
そう言ってミゲルはにやりと笑う。
どうやら赤い彗星に機体を真っ二つにされたとき、咄嗟に機体をひねってコクピットへの直撃を避けたらしい。
器用なものである。
「ま、セーフティーシャッター様様ってワケさ」
411:515
07/07/08 08:52:03
■ またまたまた超人類(笑) ■
宇宙空間に放り出され、ヘリオポリスが崩壊していくさまをリアルで見せられたキラは恐慌状態に陥っていた。
「こんな、こんな……」
『X-105ストライク、応答せよ! X-105ストライク、聞こえているか? 応答せよ! X-105ストライク……』
「ヘリオポリスが……壊れて……どうして……」
『X-105ストライク、X-105ストライク、キラ・ヤマト! 聞こえていたら、無事なら応答しろ!』
通信から流れるナタルのかなり必死な呼びかけにも、しばらく反応できなかったキラであったがようやく正気に返り、AAへと
返信する。
その返事に胸をなでおろすナタル、一息で気を取り直しキラに帰還するように指示を出した。
ナタルの指示を聞いたキラは、崩壊したヘリオポリスを見て両親の無事を祈る。
そして機体を動かそうとした時に救難信号をキャッチする。
「あれ、ヘリオポリスの救命ポット!?」
■ ■
「ただいま帰還しました」
「おう、お疲れさん。やっぱ、赤い彗星は怖いねえ、生きた心地がしなかったぜ」
一足先にメビウス・ゼロはAAへと帰還していた。
現在、AAには佐官が不在で4人の尉官しかいない。また下士官含めて十数名でこの巨艦を動かすのは、無謀としか言い様が
なかったが、それでもやらねば生き延びれなかった。
「大尉、本艦はまだ戦闘中です!」
「お、悪い悪い。ザフトとジオンの動きはつかめそうか?」
いつものように部下を出迎えに艦長席を離れたムウをマリューが叱責する。
悪い悪いと頭をかきながらムウはザフト及びジオンの動きを尋ねるが、返答は芳しいものではなかった。
412:515
07/07/08 08:57:16
「どうしますか? 大尉……」
「また攻撃受けたらどうしようもねえもんな~、最大戦速で振り切るってのは? かなりの高速艦なんだろ?」
「ですが、隊t……艦長代行、ザフトにはナスカ級がいますし、ジオンも赤い彗星の母艦はザンジバル級です。振り切るのは
きびいしいのでは?」
AAの艦橋ではCICにつめるナタル以外の士官3人が無い知恵を絞って、今後の方針を協議していた。
所謂ハルバートン派のマリューは一刻も早く地上への降下を考えていたが、ムウは降伏もありなんじゃない? と苦笑しながら
ジオンへの投降も一つの道だと提示する。
だが、AAにG兵器は地球軍、中でも大西洋連邦がその技術を結集してのものである。
初期から開発に関ってきたマリューには投降は受け入れられるものではなかった。
中尉としても降伏は好ましいものではなかったが、では代案は? と聞かれれば良い案は全くなかった。
「なんだと!? ちょっと待て、誰がそんな事許可した!」
三人の話し合いはナタルの声により中断される事となった。
マリューの問いかけに、ナタルはX-105ストライクが帰還したことを告げる。
そして、その際に救命ポットを保持しているという事を。
■ ■
『認められない!?』
漂流していた救命ポットを運んできたキラは、ナタルの返答に憤る。
推進部が破損し、漂流していた救命ポットを放り出せと言うのか!? キラの地球軍に対する不信は絶賛上昇中であった。
「すぐに救援艦が来る! AAは今戦闘中だぞ、避難民の受け入れなどできるわk……」
「いいわ、許可します! よろしいですね、艦長代行?」
「お、おう。許可するぜ~」
「ラミアス大尉、艦長代行?」
「今こんな事でもめて、時間をとりたくないの」
「収容、急げよ~」
X-105ストライクの収容作業がおこなわれる中、今度はナタルも交えてAAの今後の方針を協議する事となった。
413:515
07/07/08 08:59:24
マリューが再びAAとX-105の重要性を説き、大西洋連邦司令部までの搬送を行わなければならないと力説する。
その言葉に2人のパイロットの内1人は頷き、今は艦長代行を務める方もしゃあねえかー、と同意する。
三人の上官の意見が一致したところで、ナタルがアルテミスへの入港を具申する。
現在、地球連合の宇宙で唯一の軍事拠点であるアルテミスは、ジオンから地球を挟んで反対側のL3に存在するだけに
ザフトからはうざったく思われながらも、距離的な問題で攻略対象となる事はなく、地球連合宇宙軍再建の拠点として
存在していた。
AAの現状として、物資の積み込みも途中であり、ここから地上への降下など現実には不可能である。
マリューは艦に識別コードがないことから少し難色を示すものの、他に手段がない以上どうしようもない。
「傘のアルテミスか~、行くっきゃないかね」
「はい、事態はユーラシア連邦にも理解してもらえると思われます」
「いや、そりゃ何とかなると思うよ。たしか今、あそこにゃサザーラントのおっさんがいたはずだ」
「サザーラント大佐がですか? 相変わらず神出鬼没ですね、あの人」
「……あの血のバレンタインの?」
「そ、色々と悪名高いブルーコスモス盟主の懐刀だ。俺が心配してんのはアルテミスまで行けるか? ってこと」
「識別コードさえあればジオンの攻撃はないんですけどね」
「しかし、今はそれを言っても……」
いや、それは分かっている。と、ムウはナタルの言葉をさえぎる。
「それでも、俺個人としてはジオンとは二度と戦いたくなかった、てことさ」
414:515
07/07/08 09:01:08
■ ■
救命艇を艦内へと運んだキラはX-105をハンガーに固定すると、コクピットから出て救命艇から引き上げられる人々の
様子を伺っていた。
すると中から出てくる見知った顔発見、研究室でトールにからかわれる原因となった件のフレイ・アルスターではないか。
唖然としているキラを横目に、懐から這い出した謎の航空力学を駆使して飛行するペットロボ・トリィが、アスルター嬢
目掛けて突っ込んでゆく。
キラは慌ててトリィを追いかける。
「まてっ(くそ、何でこんなに言う事聞かないんだコイツ!)」
製作者のアスランの拘りなのか、このペットロボやたらと行動が奔放でキラも振り回される事が多い。
しかも大概、ろくな結果にならない事が多いのだ。
「? あっ、あなたサイの友達の!」
トリィの声に気付いたアルスター嬢がキラの方を振り向くと、地獄に仏を見たような顔でキラへと抱きついてきた。
フ、フレイ!? と慌てた声を出すキラ、だが内心では密かに憧れていた少女に抱きつかれ、ヨッシャ役得!とガッツ
ポーズである。
そいえば彼女の服ってピンクじゃん、占いのラッキーカラーってこのことかな~、などとちょっと浮かれていた。
友人とはぐれ、かなりテンパっているアルスター嬢を宥めながら、サイやミリアリアが乗艦していることを彼女に
告げるキラであった。
415:515
07/07/08 09:03:43
■ ■
「んじゃ、ラミアス大尉後は頼む。俺のゼロの修理もある程度済んだみたいだし、調整しておきたいからな」
「了解しました。艦長代行代理、謹んでお受けします」
艦長代行代理って変な話ですね、と苦笑するマリューに、まったく、と肩を竦めるムウ。
アルテミスへの進路を決定したAA、最悪の事態に備えムウは一旦艦長職をマリューに譲り自機の調整に向かう。
彼の部下は最後までマリューが艦長になるのを渋っていたが、ナタルが固辞したため仕方なしに承認していた。
「しっかし、なんでお前、ラミアス大尉が艦長になるのにあんなに反対なの? 俺もゼロに専念した方が生還率上がり
そうだが」
「……技術士官に指揮を執らせるなんて正気ですか、隊長?」
「もちろん正気だぜ。それに、大尉がこの艦の事に一番詳しいんだ、妥当じゃないか?」
「まともな軍事教育を受けていない人間に命を預けたくはありません。それにスペック厨に戦闘はできませんよ」
そんなもんかねぇ? と呟くムウ。
この手のことを深く考えないのがストレスのない生き方なのだろうか? 中尉はムウの隣を歩きながらそんな風に
考えていた。
「アルテミスまでのサイレントラン……およそ2時間ってところか、後は運だな……」
416:515
07/07/08 09:05:50
以上、前半部分投下です。
後半は午後6時ごろに。
417:通常の名無しさんの3倍
07/07/08 09:09:34
とりあえず前半にGJ!
>それにスペック厨に戦闘はできませんよ
あんたはエライ!
もうおまいさんが指揮を取ってくれ、頼む!
さて、補給作業に戻るとするか。
終るのは昼だな。
418:通常の名無しさんの3倍
07/07/08 13:09:23
同じくGJ
ジオン、組織改編のせいなのか風通しよくなってるな。
連合にとってジオンは同盟軍にちかいから、別に降伏って訳でもないような
419:通常の名無しさんの3倍
07/07/08 13:36:37
GJ
レムおじさん ずいぶんと軽いのな
420:通常の名無しさんの3倍
07/07/08 15:09:20
515氏お疲れさまです
G初代仮面に追われる種初代仮面か・・・変態仮面に一言『君は生き残れるのか?(永井ボイス)』(笑)
しかし、同じ技術士官でも魔乳とエリオットのおやっさんでは人望等が雲泥の差だな
ヘリオポリスにシーマの姐さんとエリオットのおやっさんが残るならアストレイ組にも影響がでるな
ロウはエリオットのおやっさんと意気投合して、代わりに劾がブルーフレームをもらい損ねたりして(苦笑)
421:515
07/07/08 18:13:52
ジオンは旧キシリア派以外はかなり自由にやっています。
レムおじさんは指揮値はあまり高くありませんが、外交値が半端ないです。
現場を知る開発者だけに、パイロットからの評判も上々です。性格は軽いですけど。
連合は主要構成3国が、ジオンに対してそれぞれ別のスタンスを取っています。
大西洋連邦は、ジオンを完全に仮想敵国に設定し再戦の機会をうかがっています。
ユーラシア連邦は、戦後秩序でジオンと手を組んで地上で覇を唱えんとしています。
東アジア共和国は、ジオンとは距離を置き相変わらず漁夫の利を狙っています。
では後半部分投下、開始します。
422:515
07/07/08 18:15:23
■ 赤い彗星 ■
「ドレン、どうだ? 追いつけるか?」
「ナスカ級のみですと厳しかったかもしれませんが、あちらにはローラシア級もいます。あと1時間ほどで追いつけますな」
艦橋で航路図を見ながら部隊長のシャアと艦長のドレンが作戦を練っていた。
現在、“赤い”ザンジバルは全速でクルーゼ隊を追撃中である。
艦橋にはシャアとドレンのほかにはブリッジクルーのみで、他のパイロットは乗機の整備中である。
いや、マリオン・ウェルチ少尉はいまだに公国軍最高司令官令嬢の話し相手を努めているが……。
「しかし、素直に引くとは思わなかったな。連合の新型艦を追うと踏んでいたのだが……」
「ええ、一石二鳥が狙えると思ったのですが……スン少尉の進言がなければ空振りに終わるところでしたな」
「まったく、ララァはかしこい」
当初、シャアはクルーゼが連合の新造艦への追撃を行うと予測し、アルテミスへの進路をとろうとしたのだが、その直前で
ララァ・スン少尉がザフトが撤退すると進言したのだ。
普通であれば一回の少尉の言う事など気にも留めないのであろうが、彼女は幾多の戦果をたたき出している公国軍最高峰の
ニュータイプである。彼女の言に全面的な信頼を置いているシャアとドレンは進路をプラント本国へと修正する。
その結果、ヘリオポリスの残骸でできたデフリ帯を抜けた時点で、ザフトのNジャマー反応を捕らえる事に成功していた。
「では第一種戦闘配備知らせ!」
「了解! 総員第一種戦闘配備!!」
「今回は私が単機で先行する。あの2人はエルメス2機の護衛だ。アウトレンジでけりをつけるぞ!」
「了解、ご武運を」
423:515
07/07/08 18:17:01
■ ■
避難してきたヘリオポリスの住民が続々とAA居住区に腰を落ち着けていく。
そんな中で一足先にここの住人となったキラたちは、ある程度事情を知るだけにこの先の動向に不安を感じていた。
戦闘の言葉にアルスター嬢が慌てふためき、ミリアリアに窘められる。
それにしてもかなり究極の選択であろう、戦闘行動中の戦艦に乗艦するのと、壊れた救命艇に乗ると言うものは。
一旦自分達が落ち着くと、今度は肉親の行方が気になってくるものである。
親ば無事だろうか? と心配するトールたちに、サイが年長者らしく状況を踏まえながら無事だろうと告げる。
希望的観測ではあったが、ないよりはましであろう。
「キラ・ヤマト」
そこに空気の読めない男が参上である。
呼ばれて返事をするキラに、整備班のマードック軍曹が怒っているぞ~と言うムウ。
自分の機体と言われて困るキラ、成り行きで乗っただけなのに整備しろとはあまりに理不尽すぎる。
しかもまるで自分が軍属扱いではないか、そう言って反論するキラに、
「いずれまた戦闘が始まったとき、今度は乗らずに、そう言いながら死んでくか?」
それまでの軽薄さが嘘のように、まじめな口調でムウが尋ねる。
「子供にそんな事まで押し付けるほどに人がいなくて?」
そこに後ろから声が掛かる。
ようやく負傷者の治療の手伝いから開放されたセイラさんである。
「仰るとおり、今この艦を護れるのは俺ともう1人のパイロット、そしてこの少年だけなんですな、残念な事に」
セイラさんのきつい視線に晒されながらも軽口を叩けるあたり、エンディミオンの鷹の名は伊達ではないと言う事
だろう。
あっさりと手の内を晒すムウに呆れたセイラさんであったが、すぐに気を取り直すとムウと向かい合う。
424:515
07/07/08 18:18:58
「正直ですのね。……では、私に何かお手伝いできる事はないかしら? 人手が足りないのはパイロットだけでは
ないのでしょう?」
「……そりゃ、手伝ってくれるのであれば歓迎しますがね。よろしいんですか?」
「ええ、オーブの理念は嫌いではないけれど、なにもせずに死ぬのは好みではないわ。生きる努力は常にすべきで
しょう?」
「ご立派ですな。いや、皮肉でなく本心ですよ。歓迎しますよ、それが美人なら尚更だ」
そういってにやりと笑うムウ、怒涛の展開に呆気に執られるキラに、できる力があるならやるべきだろ? と言い
残し、セイラさんを案内するために立ち去る。
「キラくん、でよかったかしら?」
「あ、はいっ!」
「あの人はああ言っていたけれど、あなたが戦わなければならない理由はないわ。どう生きるかはあなた自身が決める
ことですもの。しっかり考えて、決して後悔だけはしないようにね」
でも時間はあまりないわよ、と告げてムウの後をついてセイラさんは去っていった。
「僕は、僕は……」
ムウの言葉に、セイラさんの決意を見せられキラは大いに悩む、だが戦いたくはない、相手は幼馴染のアスランかも
しれないのだ。
思考は乱れとてもまとまらない、キラはこの場から逃げ出すように走り出した。
425:515
07/07/08 18:20:35
■ 変態仮面 ■
「追いつかれたか……」
「ガモフの足にあわせた以上、仕方ありますまい」
後方でミノフスキー反応が増大した事でクルーゼはジオンに追いつかれたかと舌打ちする。
ナスカ級のみであれば逃げ切れたかもしれないが、その場合ガモフを見捨てる事になる。
少々、査問会がやばいかもしれんと思っているクルーゼに、これ以上の失点を追加するつもりはなかった。
「奪取機体での戦闘、相手はかの赤い彗星……少々分が悪いやも知れんな」
「ザンジバル級ですとジオンのMSは最大で12機、ヘリオポリスで確認した3機以外にどれだけいるかが問題です」
「連合の新型の機体性能に頼るのは癪だが、フェイズシフト装甲はジオンのMSに対し絶大な防御力を誇る。上手く敵艦に
ダメージを与えられれば……」
「状況を見てアスランらを二手に分けますか」
流石のクルーゼも、1会戦でザフトの1部隊を丸ごと撃破するだけの腕を持った『赤い彗星』相手では少しばかり
弱気であった。
(繰り返し言いますが、ソロモンでのシャアの撃破とされているものの5分の3はジョニーのものです)
■ ■
アスランは自室でミゲルと衝撃の再会をかわした後、ヘリオポリスで散った同胞の思い出話を交わしていた。
ただ、それはいつの間にかナチュラルに利用されるボケボケな幼馴染の愚痴に変わっていたが。
「ん? アスラン、どうもクルーゼ隊長がお呼びだぞ?」
なんかやったのか~? とニヤニヤ笑うミゲルを横手に、色々思い当たる事が多すぎて顔を青くするアスランであった。
幸い、クルーゼにアスランを処罰する気はなく、ヘリオポリスでのアスランの行動を疑問に思ってのことだった。
ここでまた幼馴染への愚痴をこぼすアスランにクルーゼは同情気味に声をかけるものの、はじめて見たときから臭いと
思っていたが本当にガチだったかと確信するのであった。
426:515
07/07/08 18:23:50
■ ■
キラが去った後、カズイの発言を経てサイがアルスター嬢にキラがコーディネイターであることを説明すると、彼らの
脳裏でムウの言葉とセイラさんの行動が思い出される。
キラという友人に頼りっぱなしの現状は、彼らとしてもあまり心地よいものではない。
「できるだけの力を持っているなら、できることをやれ、か」
ミリアリアのキラに頼ってばかりと言う嘆きにトールが先ほどのムウの言葉を口にする。
そして覚悟を決めた顔で、対面のサイとカズイを見た。2人も同様に頷く。
キラは未だ決断ができずに艦内をうろついていた。
「キラ!」
「トール、みんな!」
すると正面からトールら友人4名がチャンドラ伍長につれられてやってきた。
地球軍の軍服を着用しており、その格好に驚くキラに、
「ぼくたちもあの人を見習って艦の仕事を手伝おうかと思ってね、人手不足なんだろ?」
「ブリッジに入るなら軍服着ろってさ」
そう答えるサイとカズイ。
トールが軍服はザフトのほうがカッコいいよな、と軽口を叩く。
「お前ばっかに戦わせて、護ってもらってばっかじゃな」
「こういう状況なんだもの、私達だって、できることをしたいもの」
友人らの心遣いにちょっと感動するキラ。
じゃ、後でな、と4人は艦橋への道を急いでいった。
4人の後を追いかけながら、チャンドラがキラに次も出撃するならパイロットスーツを着ろよ、と声をかけた。
「あの!」
友人らの行動に、キラもついに覚悟を決めるのであった。
427:515
07/07/08 18:25:42
■ 暴走少女 ■
「では、ハマーン様。マリオン・ウェルチ少尉、これより出撃します」
「ええ、マリオンも気をつけて」
「はい。戻ったらまたお話しましょう」
「そうですね」
微笑むハマーン。マリオンも同じように笑みを浮かべた後、戦場に向かうため気を引き締めてドアに手をかける。
その瞬間であった。
ガスッ!
背後からの強烈な一撃をくらい、マリオンは声を上げる間も無く昏倒した。
「フフフ、シャア少佐、待っていてくださいね。この私があの女から開放して差し上げますわ!」
マリオンを一撃でのしたハマーンは彼女からパイロットスーツを剥ぎ取ると、いそいそとスーツに着替える。
ジオンのヘルメットは色々な宇宙線対策の為バイザーが青色であり、良く見ないと顔の確認がけっこう困難である。
しかもマリオンも小柄なのでパイロットスーツを着てしまうと、なかなか見分けがつかなかった。
「私だって、ニュータイプの素質は負けていません! 私の方がシャア少佐の隣に立つのに相応しいですわ!!
オホホホ!!!」
それにしても、このハマーン様ノリノリである。
428:515
07/07/08 18:27:18
■ ■
「何だ!? このプレッシャーのようなものは?」
その頃、ララァにパイロットスーツを着るよう注意されたシャアは、スーツに着替えて機体に乗り込もうとしたところで
凄まじい悪寒に襲われていた。
■ 蜉蝣とレムおじさん ■
「さーて、あたしらも動くかね」
『おや、中佐もかい?』
「まあね、あたしは連合の新造艦とやらにちょっかいかけてくるよ」
『ま、いいんじゃないかい。外交問題にならない程度に頼むよ?』
「まかしときな。さてと、あの赤いのを退けた連合の新造艦、楽しみじゃないか」
429:515
07/07/08 18:30:28
以上、投下完了です。
かなり各キャラが変ですが、C.E.世界対応ということでお願いします。
430:通常の名無しさんの3倍
07/07/08 18:51:32
GJ!!
ハニャーン様自重www
431:通常の名無しさんの3倍
07/07/08 19:17:41
GJ
このハニャーン様、なんだかフレイと気が合いそう。
で、シャアが前線でエルメスの遠距離攻撃サポートって、ザフトが生き残るにはハニャーン様の行動次第ってところか。
432:通常の名無しさんの3倍
07/07/08 19:23:02
515氏 GJ!
変態仮面は撤退、シャアはそちらを追撃中、って事はAAはフリーなんだ。
AAはその事に気付いてないけど。
はにゃーん様がクエスっぽい。まぁ死にはしないだろうけど戦場の恐ろしさは実感するかな?
にしてもマリオンは無事なんだろうか。。。
433:通常の名無しさんの3倍
07/07/08 20:09:30
ハニャ~ン様…
マリオンをいじめると
怖くてキモイ騎士なあの人が来るぞ…
434:通常の名無しさんの3倍
07/07/08 20:24:53
はにゃーん様の凶行で凸のガチ発覚が薄れたなw
435:通常の名無しさんの3倍
07/07/08 21:26:19
>>432さん、AAはシーマ様が追撃するようですぞ。・・・AA沈むかな?
436:通常の名無しさんの3倍
07/07/08 21:43:24
シーマ様の海賊軍団はいやらしい戦闘するんだろうな。
場合によっては接舷強襲とか。
437:通常の名無しさんの3倍
07/07/08 22:13:04
接舷強襲されたら、AAクルーじゃ全滅間違いなしじゃね。
いや、銃使いのマリューが居るかw
438:通常の名無しさんの3倍
07/07/08 22:26:13
おっぱいの加護VSジオンエースか
439:通常の名無しさんの3倍
07/07/08 22:47:04
魔乳さんはどう考えても進むべき道間違ったよな。
440:通常の名無しさんの3倍
07/07/09 05:34:59
いやいやいや、シーマ様にもおっぱいの加護は充分に。
441:通常の名無しさんの3倍
07/07/09 17:56:07
魔乳さんvsシーマ様か
そりゃ、どう考えても若さで(ry
442:通常の名無しさんの3倍
07/07/09 19:12:29
年齢はマリューが26で、シーマ様が30か31だわな。
443:通常の名無しさんの3倍
07/07/09 19:15:12
URLリンク(www.alpha-net.ne.jp)
麗しのシーマ様。
444:通常の名無しさんの3倍
07/07/09 19:15:58
きっと魔乳さんは某の〇太君のように百発百中の銃撃戦でジオン兵を圧倒するでしょう
しかも、相手は海賊行為にも慣れている海兵隊であっても
445:通常の名無しさんの3倍
07/07/09 19:18:31
もうおっぱい対決でいいと思う
446:通常の名無しさんの3倍
07/07/09 19:31:38
魔乳さんは技術屋としても艦長としても無能だが海兵隊員としては
大変有能な人だろうな。
447:通常の名無しさんの3倍
07/07/09 20:24:26
>>446
ぶっちゃけ、「無能な頑張りやさん」なので、軍人そのものに全く向いてません。
海兵隊員にしても、下手に行動して、仲間の足引っ張ります。
銃の腕が有れば他は何も要らないって職業、何かあったかねぇ。
ああ、観光地の射撃場の銃のインストラクターとかならマリューにピッタリかも。
おっぱいでかいから、人気出るだろう。
448:通常の名無しさんの3倍
07/07/09 21:15:18
>>443
シーマ様……なんと御美しい。
きれいなジャイアンとはまた違った感じだな。
449:通常の名無しさんの3倍
07/07/09 21:29:45
やっぱあの巨乳好きのムウが引き取るのが一番だな。
450:通常の名無しさんの3倍
07/07/09 21:33:31
こらこら、この世界のシーマ様はまだ裏の仕事をしてないから高ビーだけど荒んではいないぞ?
それに、みんなの萌える心を一つにしたらもしかしたらシーマ様が二十代のツンデレ・シーマさんになるかもしれないぞ!
なんせ、このスレには萌えがわかる職人さんがいるし!
ついでにシーマ様支援
つ【URLリンク(www.netlaputa.ne.jp)】
451:通常の名無しさんの3倍
07/07/09 22:52:06
誰が高ピーだって?!シーマ様は姉御肌なだけさ。
452:450
07/07/09 23:33:22
すまん、いま読み返したら確かにシーマ様は姉御肌だよ・・・orz
ちょっくら、ヅダで敵陣に突っ込んできます・・・
453:通常の名無しさんの3倍
07/07/10 01:25:06
>>450
そのシーマ様、なんかやだ。
454:通常の名無しさんの3倍
07/07/10 13:18:12
シーマ様お綺麗だよね!
某ヤ○ンスレの黒髪美女技術主任(逝去済だがMS内蔵コンピュータとなってフカーツ)の、
俺的脳内イメージはシーマ様なんだぁ。うっとり。
455:通常の名無しさんの3倍
07/07/10 16:10:27
>>447
つまり、銃殺に処さなければいかん訳か
「有能な怠け者は将軍に、有能な働き者は参謀に、無能な働き者は連絡役にすればおk
無能な働き者? そんなもん銃殺に処せ」
by.フォン・ゼークト
456:通常の名無しさんの3倍
07/07/10 16:11:55
誤
>無能な働き者は連絡役
正
>無能な怠け者は連絡役
457:通常の名無しさんの3倍
07/07/12 07:32:29 NNgsGRm5
職人さんマダー?
458:51
07/07/12 20:35:02
お久しぶりです。今もゲーム三昧な日々を過ごしております。
今週中の投下を考えてますが、人大杉でなくなってからの方がいいのでしょうかね?
それと聞きたいのですがシーマ様って20代でOK?
私的には1st時代は二十……うわ、なにをするやめrくぁwせdrftgyふじこlp;@:
459:通常の名無しさんの3倍
07/07/12 22:40:12
83時点で35だという話だが
460:通常の名無しさんの3倍
07/07/13 01:41:49
原作基準が絶対ではないですから若いシーマ様もありかと
461:通常の名無しさんの3倍
07/07/13 05:43:44
俺的には若々しい30代もありかと。
462:通常の名無しさんの3倍
07/07/13 08:52:30
個人的には若いシーマ様大歓迎です。
人大杉は気にしなくて良いのでは。新シャア板見てる人は専ブラ使ってるだろうし。
463:livedoorID持ち@携帯 ◆yb1J9t3X3g
07/07/13 19:28:42
専ブラ持ってない俺、参上!
……という訳で、誰かVISTAで使える専ブラ知ってる方いますか?
464:通常の名無しさんの3倍
07/07/13 20:05:21
>>463
つFirefox & bbs2chreader
今これで書き込んでる。
465:通常の名無しさんの3倍
07/07/13 20:06:43
>>463
ヴィスタ対応はともかく、比較表ドゾー
URLリンク(browser2ch.web.fc2.com)
自分のはJane Doe Styleですが、一応対応してはいるといった程度ですね。
466:通常の名無しさんの3倍
07/07/13 22:56:48
>462
「専ブラ」と聞いて、マリューもシーマもおっぱいでかいから専用ブラジャー使ってるだろうなと思った奴ノシ
467:通常の名無しさんの3倍
07/07/14 01:06:15
シーマ様専用ブラ……なんと聞こえのいい言葉か―
468:通常の名無しさんの3倍
07/07/14 11:25:41
やっぱパープル基本で、紐やレースの部分がカーキか?
469:通常の名無しさんの3倍
07/07/14 13:24:46
スレ違い
470:51
07/07/14 16:55:15
33-1(1/5)
「ハルバートン提督、意外に善戦していますね」
アズラエルに言われ、サザーランド大佐は些か不機嫌な顔になった。
「……そうですな」
「ビラード将軍も作戦通りに事を進めていますし、オデッサ攻略は決定的のようだ」
目の前のモニターには1時間前の戦場が映し出されている。欧州の地図と各軍を簡略化して並べたものだ。
2年前ならリアルタイムで戦場を見れたが、今はミノフスキー粒子とNジャマーの所為で不可能であった。
そんな配置図を見て、2人は各軍勢の同行を伺っていた。
――第33話
「しかし、よろしいのですか?」
「何がです」
「作戦が成功すればハルバートンの発言力は増します。我々としては今後の戦略に変更が生じるかと」
反ブルーコスモスの急先鋒であるハルバートンは、サザーランドにとって厄介な相手だった。彼の発言力が
増せば、連合は対ジオンに傾くだろう。ザフトを始末したい自分達は不利になってしまう。しかし、それにも
拘らずアズラエルは余裕の笑みを浮かべていた。
「大佐。いけませんよ、曲がりなりにも彼は大西洋の人間ですからね。勝つに越したことは―」
「新しい情報が来ました!」
モニターに映る青い光点―連合軍が更に侵攻を進めた。赤い光点―ジオン軍は前線を突破されて後退し
始めている。第2軍が遅れてはいるが、連合が圧倒的優位なのは素人目にも分かった。
「これは……」
「第1軍は順調ですが、第2軍が遅れてますな。と言っても進路を変えただけでは影響は少ないでしょうが」
サザーランドの言葉を聴きながらも、アズラエルは浮かない顔をしている。
「どうされました?」
「大佐。貴方が敵軍の司令官ならこの状況どう打開します?」
「撤退するしか道は無いでしょう。如何にジオンのMSが強力でも、数には勝つことはできません」
「そうですか。では、こうするとどうでしょう」
アズラエルはモニターを操作して光点を動かした。
「む―」
アズラエルの指摘に、サザーランドは呻き声を上げる。
「こ、これは……まさか!」
「素人の考えですから、こう旨くいくとは思いませんが、相手は策士と呼ばれるマ・クベ中将です。私が思い
付くプランに気づかない訳が無い……嬉しそうですね大佐。顔が笑ってますよ」
「し、失礼……しかし盟主の推測が当れば、今後のシナリオが書き易くなります」
参謀本部に属するサザーランドなら、ハルバートンを更迭にできる。そうなれば軍内部勢力はこちらに傾く。
さらに査問会で嫌味を言い放題なのだ。日頃の鬱憤を晴らすのに丁度よかった。
「何はともあれ、手を打っておく必要がありますね」
471:51
07/07/14 16:56:32
33-1(2/5)
艦橋ではナタルとムウ、そしてイアンが今後について検討していた。
「ダメです。スカンジナビア王国からの応答無し」
「そうか……」
「既に見限られたと見て間違いないな」
まずはじめに出た案が撤退である。今来た航路を逆に辿ればいいが、それにはスカンジナビア王国の領海内
であるバルト海を通過しなければならない。中立を貫くこの国はユーラシアからの嘆願で一度だけの領海侵犯
を許していた。しかし二度は許せないのか、先程から通信を送っても反応が無い。
「リー少佐、ドミニオンの方は?」
「動かすことはできる。動かすだけなら、な」
ドミニオンは右舷エンジンを損傷して航行不能になっている。アークエンジェルの整備班も総出となり修理
に当たっているので航行は可能になったが、巡航速度がやっとである。最高速度が出せれば、強引にバルト海
を通過できるが、巡航速度ではスカンジナビア海軍を振り切ることができない。
「ドミニオンが速度を出せないとなると、バルト海側からの脱出は困難だ」
「やれやれ俺達は完全に孤立したってことか」
「……」
「どうする? 救助を待つか? それとも玉砕覚悟でミンスクに突撃するか?」
「ドミニオンを捨ててアークエンジェルだけ脱出、という手もある」
「もちろん投降も視野に入れるべきだよな」
「ま、待ってください!」
消極的な意見ばかりが出る中でナタルが口を挟む。
「何か打開策があるはずです!」
「どんな?」
イアンが険しい顔でナタルを睨んだ。
「そ、それは」
「この状況下でどんな手がある?」
「もう少し考えれば、何か……」
「悠長に考えている時間は無いぞ。敵の第2陣があるかもしれん」
イアンの嫌味に俯き加減で艦橋を出るナタル。
彼女が居なくなるのを確認すると、イアンは帽子を脱ぎ、息を漏らした。
「少し言い過ぎたか?」
「彼女にはアレ位でいいでしょ」
ムウが頭をかきながらにこやかに言う。
「最初は驚いたよ。フラガ少佐からこんなことを頼まれるとはな……。しかし彼女に方針を決めさせるなど、
些か厳しいのではないか」
「分かっている。しかし、指揮官に迷いが有っては全体の士気に影響しちまう。彼女の状況対処能力が低い
のは親譲りみたいだから、乗り越えてもらわんと今後に支障が出る」
「確かに彼女は想定外の事態に固まることが多い」
「任されちまったからな。これを機に指揮官としての覚悟を持ってもらわんと」
ムウはパオロから頼まれた時のことを思い出した。
472:51
07/07/14 16:58:09
33-1(3/5)
その頃パイロット達は、戦闘の分析結果をマリューから説明されていた。
「ハレルソン少尉とイメリア大尉が抗戦した相手はノリス・パッカード大佐と思われます」
「欧州一のエースだな。厄介な相手だぞ、奴は共和国時代からの古株だ。技術も戦術も備えたトップクラスの
パイロットだ。こと地上戦に限っては“青い巨星”以上とも言われている」
「何より厄介なのは、彼の部隊は練度が高いことね。教官だった時期もあるみたいで、部下達は直々に訓練を
受けているそうよ」
強敵の存在に頭を抱える大人達。
キラも話半分で聞いている。わからない単語が出てきたが、相手が只ならぬパイロットなのは理解できた。
「あの飛行MSは何なんだ?」
「グフ・フライトタイプです」
そのままじゃん―と心の中でツッコミを入れるパイロット達をよそに、マリューの説明は続く。
「グフを媒体とした飛行MSでしょう。形状を見る限り一から作り上げた改良型ね。頭部にしかグフの名残が
なかったのが裏付けになるわ。飛行そのものはディンのシステムを応用している。機動速度から逆算すれば、
本体重量は若干軽くなってるけど、ディン程ではないからグフ特有の格闘戦もこなせる。だけどヒートロッド
は装備してないから組しやすいかも。ガトリング砲は要注意ね。威力があるからPS装甲でも長くは持たない。
全体的には中近距離仕様で小回りの利く……」
「ラミアス大尉。それくらいにせんと、トールの頭から火が吹いちまうぜ」
モーガンの指摘に見ると、トールがウトウトとしている。
「……コホン……兎に角、総合性能では105ダガーの方が上回っていると結論できるわね」
マリューの言葉に皆が静かになった。
この言葉が意味することが解ったからだ。敵兵の練度は此方の予想をはるかに上回っていることを、
「ふざけるなッ!!」
しかしそんな事実を認めたがらない男が一人いた。
「そんなはずは無い! 何かの間違いだ!」
「ムラサメ少尉。これは事実です」
「もう一度調べろ! 僕が、僕があんな奴に劣っているなど認められない!!」
ゼロは終始グフに翻弄されており、1機も撃墜することができなかった。それを気にしていたゼロは納得の
いかないマリューの分析に鬼気迫る勢いで詰め寄った。
「貴方があのグフに負けたのは純粋な腕の差よ」
「ぐぅああぁぁぁっっ!!!」
目が血走り、もの凄い形相で叫ぶゼロ。モーガンとジェーンが慌てて押さえつける。
尋常でないことが起きている。それはキラにもよく分かった。自信満々で自分に絡んできたゼロとは思え
ないほどの取り乱し容である。キラも2人に加勢してゼロを押さえる。
「真のNTであるこの僕が負けるなどありえないんだぁぁぁっ!!」
しかしゼロは3人を振り払い逃げ出した。
473:51
07/07/14 16:59:25
33-1(4/5)
「どうしたってんだアイツ」
「“ニュータイプ”とか言ってたよな。それって……」
「NTは、ジオン共和国の建国者ジオン・ズム・ダイクンが提唱した思想よ。人類は過酷な宇宙環境に進出・
適応する事で、生物学的にも社会的にもより進化した存在=ニュータイプになれるという考え方で、全人類が
宇宙に移民する事で人類に革新が起こり、戦争や地球環境の汚染などを克服した一段高いレベルの文明……」
「だからラミアス大尉、それくらいで……」
説明を止められ、不満なマリューを放置して、ジェーンが語り始めた。
「そのNTだと、アイツは思い込んでるのよ」
「思い……込んでる?」
「ええ。きっかけはジオン軍人の強さの秘密にはNTではと考える派閥よ。小さな派閥で誰も相手にしていな
かったけど、ジオン公国からの亡命者の中にNT研究者だと言い張る奴が出てきた」
「NT研究……ですか」
「ええ、フラナガン機関とか言うものなんだけど、詳しいことは分からない。その研究者がフラナガン機関の
資料を持っていたらしいの」
「その派閥は研究者を迎え入れた。そして“そして人工的なNT”という論文をまとめ、ある人物に渡した」
引き継ぐようにモーガンが話す。そして次に出た人物の名は、キラを戦慄させた。
「ブルーコスモスの盟主、ムルタ・アズラエルだ」
ブルーコスモス―言わずと知れた反プラント、コーディネイター思想とその主義者の総称である。
しかも組織のトップであるアズラエルの名は、コーディネイターであるキラに恐怖を感じさせた。
「彼自身はNTに対する見解を出していないけど、コーディネイターに対抗できる研究に興味を示したのね。
NT研究への投資を行っているわ。薬物や暗示による能力強化を中心にして……」
「奴はその“人工的なNT”の試作品。コードネームは“プロト・ゼロ”だ」
「なるほど。彼はMSの性能差で負けたと思い、精神の均衡を保っていたけど、私の分析結果を聞いたことに
よって自己矛盾が生じた。だからあんな行動に出たのね」
「そのゼロをあしらったあのグフのパイロット……本当のNTかもしれない」
「そうなると厄介だな」
大人達が冷静に議論する中で、顔を真っ赤にしたトールが立ち上がった。
「おかしいですよ“試作品”だなんてっ!! まるで兵器みたいじゃないですか!!」
「トール……」
トールは最初にゼロに会った時、彼のことが気に食わなかった。面と向かって侮蔑されれば誰も好きにはな
れないだろう。だが、それでも彼の自信たっぷりな振る舞いは、一緒に戦う人間として頼もしく見えたのだ。
「貴方達はそんな目でムラサメ少尉を見ていたんですか!?」
「そんなことはないぞ少年。俺は奴を頼もしい仲間だと思ってる」
「えっ?」
「実際、奴より腕の立つパイロットはこの場にはいない。対等に戦えるのはムウとレナぐらいだ」
「信頼はできるのよ。でも、ブルコスが関わってることがね……」
474:51
07/07/14 17:00:43
33-1(5/5)
ナタルは一人艦長室で落ち込んでいた。
具体案が全然出てこないのだ。ムウとイアンは様々な案を示しているのに、自分は何一つ出てこない。
「特務大尉が聞いて呆れるな……」
自分はこんな弱い人間だっただろうか。士官学校を主席で卒業した自分が右往左往している。
思えばヘリオポリスで初めて指揮を執り、今日までやってきたが、これだけ大規模な軍事作戦に関わるのは
初めてである。しかも作戦は敵に察知されているらしく負け戦は決定的だ。
このような状況下で自分はどう動くべきなのか。ナタルは悩む。アークエンジェルが単独で動いていた時は
まだ耐えられた。しかし今度は、自分達の行動が連合軍全体に関わってくる。ハルバートン提督は後方撹乱を
アークエンジェルに任せることにより、安心して進軍しているのだ。もし自分達が失敗すれば作戦そのものに
影響が出る。それがどれほどの重圧か、ナタルは身をもって知った。
「これならラミアス大尉が艦長の方が良かったかもしれない」
技術士官ではあるが、だからこそ艦の特徴を理解している。もしかしたら自分よりうまくやるのではないか。
「“砂漠の虎”を倒して舞い上がっていた自分が恥ずかしい」
頭を抱えるナタル。そこに扉をノックする音が聞こえる。
「は、入れっ!」
妙に気張りながら返事をした。入ってきたのはセイラである。
「失礼します艦長。先の戦闘による損害をまとめました」
「そこに置いてくれ」
言われるままに書類を置く。途中、セイラの視線はずっとナタルに向けられていた。
「どうなさったの?」
不意に出た言葉にナタルは身を震わせた。セイラが敬語を使わなかったことにも気づかない。
「何故そんなことを聞く」
「貴女がいつも以上に気張っているから……」
自分ではいつも通り話しているつもりだが、セイラには自分の苛立ちを隠せなかったのか?
いや、隠さなかったのかもしれない。
「カウンセラーとまではいかないけど、話してくれます?」
それが決定的だった。ナタルは今まで溜め込んでいたものをセイラに語った。責任という重圧に耐え切れな
くなっていること、そして艦長の任を降りようと考えたこと……。自分でも驚く程に弁が立った。セイラは
彼女の独白を頷きながら聞いていた。
全てを話し終えると、セイラはゆっくり口を開く。
「今逃げ出すのは卑怯ではなくて? 今は悩むより、艦長として最適な行動を執るべきではない?」
厳しい言葉をぶつけられる。しかし次の言葉にナタルの心臓を大きく打った。
「ヘリオポリスから少ない人員で頑張ってこれたのは貴女がいたからでしょう?」
ハルバートンにも似たようなことを言われたが何も感じることはなかった。
身近に居る人間の純粋な感謝の言葉―それがナタルの心に響いたのである。
「ありがとうございます。目の前のモヤが晴れた―」
ここでナタルは初めて重要なことに気が付いた。
「―何故私はマス伍長に敬語を使っているんだ!?」
慌てるナタルの姿に笑みを浮かべるセイラであった。
475:51
07/07/14 17:03:38
投下終了
マリューは技術士官……なんだけど、どこかで見たことのあるキャラになってしまった。
476:通常の名無しさんの3倍
07/07/14 20:25:47
GJ
477:通常の名無しさんの3倍
07/07/14 20:39:44
>>475
ナデシコのイネスさんですか?
あとGJ。続きを楽しみにして待ちます。
478:通常の名無しさんの3倍
07/07/14 22:23:11
そのうち「なぜなにアークエンジェル」とかやりだしそうな
マリューさんですね。あとGJ!
479:通常の名無しさんの3倍
07/07/15 07:53:32
最近、クリスが空気になってる気がする……
でもGJ!
480:通常の名無しさんの3倍
07/07/15 10:47:33
>>478
そうなるとウサギユリカとルリお姉さんポジションにはいったい誰が?
481:通常の名無しさんの3倍
07/07/15 11:03:29
えーっと・・・まず艦長だからウサギユリカはナタルで。
ユリお姉さんは・・・セイラさんかな?
482:通常の名無しさんの3倍
07/07/15 11:06:19
失礼しましたユリって誰だよ・・・ルリだよorz
483:通常の名無しさんの3倍
07/07/15 12:01:52
>>481
ウサギはウサギでも首刈兎になりそうだな。
484:通常の名無しさんの3倍
07/07/15 12:55:17
クリスはパイロット専任だったか?
元はエンジニア兼任だったから「なぜなに」も出来るだろうけど。
485:通常の名無しさんの3倍
07/07/15 13:11:16
>>481
さり気に声優ネタですね。
486:通常の名無しさんの3倍
07/07/15 17:27:10
できれば「なぜなにアークエンジェル」で種世界の
謎の一つ戦艦の動力源について説明し・・・
うわなにをするやめ(ry
487:通常の名無しさんの3倍
07/07/15 23:41:15
GJでした。
ナタルを鍛えるのは良いんだが、イアンは答えが出ない場合のことも考えてるのかね。イアンが最上位者なんだが。
マリューはなんだか見事なスペック厨な感じに。しかし、ゼロがなんだかシン・アスカに見えてきたw
488:通常の名無しさんの3倍
07/07/16 21:03:29
GJ!
確かナタルはジェネシスの前でぼーぜんとしてたな…
イアンの指摘はもっともだ。
今後のAAだが撤退するなら海路でなくても良いのでは?
489:通常の名無しさんの3倍
07/07/16 22:46:37
ナタルとキラでガンダムシードさんって手もあるぞ
490:通常の名無しさんの3倍
07/07/18 21:46:31
保守
491:通常の名無しさんの3倍
07/07/19 10:16:56
さびしいけど、これって職人待ちなのよね
492:通常の名無しさんの3倍
07/07/19 10:56:57
多分…
493:通常の名無しさんの3倍
07/07/20 09:36:06 G6JjCEMP
職人さんが来るまでage続けるぞ!!
494:通常の名無しさんの3倍
07/07/20 12:20:57
>>493
ageなくても書き込みがあればdat落ちしないのでsageた方がいいと思うぞ。
495:通常の名無しさんの3倍
07/07/20 22:42:45
お前等CEとUCのビーム音どっちが好きだよ?
俺は後者、断然後者
496:通常の名無しさんの3倍
07/07/20 23:04:13
俺もUC。
497:通常の名無しさんの3倍
07/07/21 00:36:46
悪いがCEだな・・・
UCの音はあまりすきになれん
498:通常の名無しさんの3倍
07/07/21 04:08:59
保守
499:通常の名無しさんの3倍
07/07/21 08:11:58
絶対UC
500:通常の名無しさんの3倍
07/07/21 14:57:14
500
501:通常の名無しさんの3倍
07/07/21 15:10:55
UCのビーム音って統一されてたっけ?
502:通常の名無しさんの3倍
07/07/21 15:58:58
機体によって違った気もする
503:51
07/07/21 17:21:40
33話の後半を投下いたします・・・
504:51
07/07/21 17:25:10
33-2(1/5)
「デュクロ大尉」
白い煙を吐きながら地図を見ていたデュクロに背後から声が掛かる。
「我が大隊の損害は如何ほどかね」
「戦車2両が中破。負傷者は14名、全員軽症です」
「他の大隊はMSを失っている所もある。それと比べると上出来だな」
進路をソフィアに向けた第2軍は、大した損害も出さず進軍していた。途中、いくつかの襲撃はあったが、
そのことごとくをこの2人の部隊が食い止めていた。コーネル少佐指揮下のMS大隊である。
コーネルは大戦初期からMSを指揮した経験があり、沈着冷静な指揮官だ。そして副官のデュクロ大尉は、
鬼車長とまで言われた戦車乗りで、経験に裏付けられた確かな実力を持っていた。
この2人の指揮するMS隊と戦車隊は、絶妙ともいえる連携でジオン軍を迎撃していた。
「しかし、MSと言うのは凄まじいですな。ユーラシアも早期に開発していればジブラルタル位は取り戻して
いたのですが……」
「フフフッ、そう褒められるものでもないぞ。私が昔、指揮していた部隊は、もっと腕の立つ奴がいたからな」
「煌く凶星ですか?」
コーネルは拍子抜けした顔をする。
「なんだ。知っていたのかね」
「ええ、一部では有名ですからね」
辺りを見回しながら、コーネルが溜め息を付いた。
「驚かそうと思ったが、残念だな」
他愛の無い会話が続く。このとき、コーネルはもちろんのこと、デュクロにも油断があった。
2人が敵の存在に気づいたのは、レイエス伍長の叫び声を聞いてからだった。
「て、敵襲だーっ!!」
前方のリニアガンタンクが爆発する。
周囲が慌てふためく中、コーネルとデュクロは瞬時に頭を切り替えた。
「慌てるな! 弾道は!?」
「左方、10時方向、発砲炎!」
「何!?」
デュクロが手にした双眼鏡を向ける前に、後方のリニアガンタンクが爆発する。
「全車、散開、止まるな! 敵はマゼラアタックだ!」
デュクロは咄嗟に全車に指令する。陣形を整えてあった戦車隊が広がった。
「恐ろしく腕の立つ戦車乗りです」
「どうやら本命のようだな……」
コーネルは冷静に分析する。今までの敵とは明らかに違うのを悟ったのだ。
「少佐、伏兵のMSがいる可能性が高いです」
「うむ、私もそう考えていた。MS隊は周囲の警戒に当たれ! デュクロ大尉、マゼラアタックは任せた」
「ハッ!」
指揮車を飛び出ると、手近に停めてあった戦車に飛び乗る。モニターで敵を確認すると、デュクロの目に
映ったのは連合のブラックリストに載っている、狼のマークを付けたザクの部隊だった。
505:51
07/07/21 17:27:27
33-2(2/5)
「何が起こっているのだ!?」
ボナパルトの艦橋は騒然となっていた。第2軍の前線部隊がいずれも奇襲攻撃を受けたのだ。特にMS隊へ
の攻撃を第一目標としていたらしく、充電中のMSは迎撃もできぬままやられてしまう。
「どうやら本格的な攻撃のようですな」
「そんなことは言われんでもわかっとるよ」
エルランの発言にイラ付きながら応える。それもそのはず、ビラードは先程まで優越感に浸っていたからだ。
このまま進撃し、ハルバートンよりも先にオデッサを奪還しようとしていた。それなのになんだこれは!?
「敵MSが前線を突破しました!」
「止めろッ! 何としてでも止めろッ!!」
「護衛の MSはどうした?!」
ビラードを始めとする幕僚達が、ヒステリックに指示を出しまくる。今まで順調すぎた所為で、楽勝気分が
蔓延していたのか、冷静に行動できる者が司令部に誰一人としていなかった。エルランを除いては……。
506:51
07/07/21 17:29:04
33-2(3/5)
「クルツ軍曹! 護衛機はこちらで引き付ける。戦艦はお前がやれ!」
「了解」
トーマス・クルツ軍曹の乗ったグフが一直線にボナパルトに迫る。護衛のデュエルダガーがそうはさせじと
前に出るが、ジャニス・マコンネル少尉のMS小隊が後方より援護している。ボナパルトは目の前のMS群に
向けて砲火を集中させるが、G-27部隊として最前線を駆け巡り、戦いの度に生還を果たしてきたクルツの
悪運の前では敵うはずもない。
「司令官はビラード将軍か……」
クルツは嘗て連合に所属していた。しかし開戦初戦のグリマルディ戦線で連合が敗北が決まると、クルツは
プトレマイオス基地に置き去りにされたのである。この時、クルツを置いて逃げ出した司令がビラードだった。
彼はザクを奪って逃げ出そうとしたが、ロイ・グリンウッドに説得されてジオンに亡命していた。
「俺を月に置き去りにした借りを返させてもらうぞ」
クルツはボナパルトをヒートソードで斬りつけた。ボナパルトの巨大な無限軌道は切り裂かれ、その巨体は
動きを止める。これで砲撃が止み、クルツにとっては千載一遇の好機だ。
だが、不思議なことにクルツは追撃を加えず、対空砲火を潰しながら後退していく。ジャニス小隊も護衛機
を仕留めると、そのまま後退した。
「よくやった軍曹。さすがだな」
「アレでよかったのですか隊長」
クルツが不満をこぼす。ジャニスもそれに同意するような仕草をするが、口にすることはなかった。
彼らの目的は敵司令部を足止めをすることだった。外人部隊を指揮するローデンは、初めから第2軍を押し
返す気がなかったのである。唯でさえ3倍の兵力差であるのだからできることは限られていた。
「兎に角戻るぞ。グリンウッド中佐の陽動も長くは持たない」
「……了解」
507:51
07/07/21 17:30:59
33-2(4/5)
「中々やるではないか……尤も、力押ししかしておらぬが」
オデッサ基地司令部では、マ・クベが全戦域の様子を確認していた。
現在、ダグラスの遊撃部隊が少ない戦力で善戦していた。さらにはロイ・ジューコフ大佐のマゼラアタック
1個大隊が援軍として向かっている。連合の第2軍を釘付けにすることには成功するだろう。そしてケラーネ
の欧州方面軍も第三防衛ラインまで順調に後退していた。
「ですがマ・クベ司令。計画的に後退はしていますが、犠牲は少なくありません」
「ケラーネ少将も援軍を求めております。ドムを向かわせるべきでは?」
「無用だ」
参謀の助言を平然と払いのけるマ・クベ。ドムはノリスに譲渡したのだから無理もない。そしてドズル派の
ケラーネを助ける気もなかったのである。ガルマから派閥抗争はやめよとの訓示は受けてはいるが、あの熊の
様な男に手を差し伸べるには抵抗があったのだ。
「しかし、ケラーネ軍の戦力低下は見過ごすわけにはいきません」
それでも参謀は食い下がらない。実はこの参謀、ガルマとは同期の人間で、派閥の争いを監視するように
ガルマから勅命を受けていたのだ。マ・クベもその事は知っており、さすがに折れるしかなかった。
「致し方ないな……。少し早いが第三防衛ラインを放棄して、最終防衛ラインにまで下がる。オデッサ基地に
残っている爆撃機は?」
「第24、27爆撃隊の二個中隊のみです」
「ガウは?」
「ガウ攻撃空母は2機残っていますが、これはいざという時の脱出用で……」
「構わん、2機とも出せ。連合を最終防衛ラインで釘付けにするぞ」
参謀はドムではないことに首をかしげながらも、直に命令を実行した。
「ウラガン、ガウの代わりはザンジバルを使う。もしもの時に用意はしておけ」
「ハッ!」
「力押ししかできん者に、負けるわけにはいかぬ」
マ・クベは保険を掛けたが、内心ではその様なことは起きないと確信していた。
508:51
07/07/21 17:32:55
33-2(5/5)
ハルバートンは戦果を聞くと、ジオン軍はオデッサを放棄すると判断した。
「勝ったな」
ジオンの欧州方面軍は既に軍としての機能を失っている。ケラーネのいる部隊はまだ陣形が整っているが、
他の部隊は陣形も何もなく、ただ散り散りに逃げていくだけだ。
「掃討戦は後回しにする。一気にオデッサへ向かうぞ」
オデッサ放棄後、ジオンはロシアおよび極東方面軍と合流するか、アフリカ方面へ向かうと予想できる。
確率としてはガルマ・ザビがいるアフリカ方面軍との合流が高くなるだろう。だが、仮に他の軍勢と合流して
も負けることは無い。連合もジオンやザフトと同じMSを戦力に加えたのだ。大西洋本土では今もストライク
ダガーを中心に量産体勢に入った。後1ヵ月もすれば戦局は大きく変わる。
勝ちを確信したハルバートンは今後のことに思いをはせた。だが、直後の報告でそれは中断される。
「第3大隊が攻撃を受けている?」
「はい。詳しいことは解りませんが“高速で動くMS”との通信が……」
第3大隊はMSを1個中隊を配備し、第1軍の左翼に置いていた部隊だ。先行しているアークエンジェル隊
と合流するため、第13独立部隊が同行している。
気になったハルバートンは直ちに偵察機を向かわせると、送られてくる映像にハルバートンは絶句した。
「馬鹿な! 第13独立部隊が壊滅だと?!」
「生き残っているのはミラー大尉の105ダガーと数機のデュエルダガーだけです」
「何なのだ、あのMSは!?」
重好感漂う装甲で覆われ、かなりずんぐりとしたMSが地面を滑るように高速移動している。
デュエルダガーはその高速に対応できず、虎の子と呼んだ105ダガーもエールパック装備を除く機体は何も
できずに撃墜されていた。
「ジオンの新型MSか!!」
「移動速度が……なんということだ! 提督、あのMSはバクゥより速く動いています!」
「ぐっ……ぬう……」
第3大隊を壊滅していくドムの姿に歯軋りする。ハルバートンは知らなかったが、このMS隊はノリスに
与えられていたドム2個中隊だった。ノリスの独断で前線へ向かった部隊が救援に来たのである。
「提督! 左翼部隊が敵の猛攻を受けてます!」
「中央も……後方にもジオンのMSがッ!!」
しかも不幸なことに、ドム部隊が駆けつけたことを知ったケラーネが一斉に攻勢へと転じた。第1軍の前後
左右にジオンの部隊が展開していたのだ。ハルバートンはジオンが散り散りになるのを見て、統制が取れなく
なったと考えたが、そうではなかったのである。
如何に数で増しているからといっても、四方から挟撃を受ければ溜まったものではない。
「提督……」
「今度は何だ!?」
また悪い報告か?
いや、これだけ悪いことが重なっているのだ。ひとつぐらい良い話があってもおかしくはない。
「ジブラルタルが……」
「なんだと!?」
気の抜けた報告をしたコープマンに怒鳴り返す。よく見るとコープマンの表情は呆然としたものだった。
「ジブラルタルが落ちたそうです」
ハルバートンはコープマンが何を言っているのか理解できなかった。
ジブラルタルはカーペンタリアと並ぶザフトの地上基地のひとつ。それが陥落したと言う。もちろん連合が
ジブラルタルを攻める話などハルバートンは聞いていない。つまりジブラルタルを落としたのは……。
「ガルマ・ザビのアフリカ軍がジブラルタルを占領したのです、提督!!」
他の幕僚が騒ぎ始める。それでもハルバートンは理解することができなかった。
509:51
07/07/21 17:35:15
デュクロはスターゲイザー、コーネルはアストレイ、
そしてクルツはパイロット列伝を参考にしております。(ジャニスは列伝のキャラ)
510:通常の名無しさんの3倍
07/07/21 17:42:28
ジブラルタルと聞くと、どうしてもたけし城のあの音楽が…
涙目のおハルさんがどうするのか気になるぜGJ
511:通常の名無しさんの3倍
07/07/21 18:02:53
狼のエンブレムって事は闇夜のフェンリル隊ですか!?
いやGJ!
512:通常の名無しさんの3倍
07/07/21 20:36:43
GJ!
敵部隊の撃破ではなく足を止める事を目的とした戦術はいいですね。
マさんも友軍が優勢なのでマトモな部隊配置してるし。
しかしパイロット列伝とは渋いチョイスだ。
513:通常の名無しさんの3倍
07/07/21 23:32:19
GJでした。
充電中のMSがって、どんな充電方法取ってんだ連合は。
見えないところでやれよ、そういうことは。
それとジブラルタルのザフト壊滅ですか。確かアスランたちが増援に行ったんじゃなかったっけ?
514:通常の名無しさんの3倍
07/07/21 23:54:58 sLHwNiRv
核兵器搭載MSはまだ~ その奪取も~
515:通常の名無しさんの3倍
07/07/22 12:26:11
かそすぎ
516:193
07/07/22 17:11:34
実は515氏の小説をベースに短編外伝を書いてみようと思っているんだが、
ユーラシアの存在により開発に影響を受けた感じのエピソードと、その後...みたいな感じで、
普段見てるだけでまったく書いたことは無いので、ブーイングでまくりだろうが...
出す兵器はヒルドルブ、ザクタンク、ヅダ、他(あと、ちょっとハイペリオン)
やっぱり515氏の小説に迷惑にかけることになるから、まったくの別の世界という設定にした方がいいんだろうか?
可能なら許可もらえると御の字だが、
(ネタばれするとカナード搭乗→ヅダ ハイペリも開発 なんで)
あと設定資料がほとんどwikiばかりなんだが、SEEDやUCの兵器の設定とかのサイトがあったら、教えてもらえると助かります。
(中には中国語サイトなんだが、設定者→大河原となってるサイトもあったが正しいんだろうか?)
・・・もしかしたら未完に終わるかもしれんが
517:通常の名無しさんの3倍
07/07/22 19:17:12
>>516
三次創作ってだけで袋叩き要素満点。
その上、そんだけ不安要素があるなら、止めておけ。
518:通常の名無しさんの3倍
07/07/22 22:23:07
515氏GJです。
闇夜のフィンリル隊ですか。奴らは原作の方で、1機の損害も出さずにジャブロー地下に侵攻したという恐ろしい部隊だからな~。
連邦軍オワタ\(^O^)/
519:通常の名無しさんの3倍
07/07/22 22:29:31
515氏GJ!
闇夜のフェンリル隊ってことは、あのドムの手刀一閃に期待してます。
...挿絵ではザクだったけどw
520:通常の名無しさんの3倍
07/07/22 22:35:08
>>518-519
俺の勘違いかもしれんが……
GJする相手が違うのでは?
521:519
07/07/22 23:12:52
>>520
今気付いたorz
51氏でしたorz
522:通常の名無しさんの3倍
07/07/22 23:22:02
51氏お疲れさまです
しかし、トーマス・クルツはよく、設定が変わりますね・・・
1:サイド3の家族の為に開戦後にジオンに亡命(MSV)
2:捕虜になった後ジオン軍人に(漫画版)
3:声優さんのキャラの影響か、亡命理由がだんだん家族から戦闘に・・・(GCB等)
まあ、トーマスは仕方ないとして、ジョニー・ライデンは間違っても長谷川版は採用しないように!
そうしないと『修羅の双星』のMS-06R2使用ができなくなります(汗)
523:通常の名無しさんの3倍
07/07/22 23:51:09
51氏投下乙!
しっかし何気にガルマ凄いな・・・
マさんが派閥抗争にこだわってることを知って手を打っといたり、ジブラルタル占拠て・・・
524:通常の名無しさんの3倍
07/07/23 00:48:59
51氏GJっすー
なんつーか……どこまで行ってもジオン1人勝ち以外の未来が見えてきませんな
525:通常の名無しさんの3倍
07/07/23 07:44:00
ジオンスキーだからジオンが勝ってくれてるのは非常に嬉しい
GJ!
526:通常の名無しさんの3倍
07/07/23 09:51:35
小説版よりゲームの一人一小隊のが好きだったり…
527:通常の名無しさんの3倍
07/07/23 21:34:15
このままだと地球連合の最後の希望は盟主王のようだなぁ・・・
528:通常の名無しさんの3倍
07/07/23 22:19:05
地球連邦もゴップだのといったゴミどもはいたけどまともな人間はいたからな。
地球連合はゴップエルランクラスのごみすらおらん。
529:通常の名無しさんの3倍
07/07/23 22:27:31
ゴップとか政治的にはそれなりに優秀って設定じゃなかったっけ?
530:通常の名無しさんの3倍
07/07/23 23:09:25
ゴップが無能とかどんだけ……
531:通常の名無しさんの3倍
07/07/23 23:19:25
ゴップは結構有能なのに…。
532:通常の名無しさんの3倍
07/07/23 23:44:25
作戦指揮をしない=無能ってわけじゃない
のに・・・
533:通常の名無しさんの3倍
07/07/24 00:01:00
ゴップが無能扱いされるような軍は、せいぜい最盛期のローエングラム王朝の銀河帝国軍ぐらいじゃね?
双璧やら芸術家やら鉄壁やらで、あの陣営ならゴップもかすむかと。
534:通常の名無しさんの3倍
07/07/24 00:07:26
ゴップほどの軍政家がいなけりゃ、下手すりゃ連邦負けてたよなぁ……
535:通常の名無しさんの3倍
07/07/24 00:34:51
でもコップが優秀だっていうソースってあったっけ?
立場的に優秀であるはずだっていう推測じゃないか?
536:通常の名無しさんの3倍
07/07/24 01:10:33
ゴップの場合は、無能という描写は無いし、ホワイトベースを囮として使ったり、
オリジンではMS開発をテム・レイに任せたり、施設を建設中のサイド7に秘密裏に斡旋してるから
無能とはいえない。ただゲームの能力は最低だけど・・・
537:通常の名無しさんの3倍
07/07/24 01:16:58
ゴップは見た目で損してるよなぁ
538:通常の名無しさんの3倍
07/07/24 07:24:47
ギレン、系譜では戦場での能力のみが数値化されていて軍政関連は無視されてるからね。
毒腺では結構提案してくれるけど毒腺自体がダメダメなんで評価されてない。。。
539:通常の名無しさんの3倍
07/07/24 08:13:10
系譜は別にして
実際ザビ家の能力ってどんだけなんだ?
政治家よりも軍人として
キシリアなんか?なんだが
540:通常の名無しさんの3倍
07/07/24 13:29:10
比較対象が種の高級将校じゃあ……
541:通常の名無しさんの3倍
07/07/24 16:37:40
「平時の人材」が「有事の人材」に劣る訳ではないて、ばっちゃんが言っていた。
作品で書かれるのは主に有事な訳だから平時の有能者がピックアップされるのは難しいわけで
だからきっと、ユウナにしろアズラエルにしろ平時は物凄く有能なんだよ
542:通常の名無しさんの3倍
07/07/24 19:20:29
ユウナは有能だろう。
ただ、それを斜め上にいくバカ双子とヒステリック桃色電波が全部おじゃんにしただけで。
543:通常の名無しさんの3倍
07/07/24 21:39:15
ユウナはともかく、親父のウナトは間違いなく有能だ罠。
戦時中に主要部が廃墟と化したオーブを切り盛りしたんだから
544:通常の名無しさんの3倍
07/07/24 21:55:11
ザビ家で軍人として優れているのはドズルくらいじゃん
政治家ギレン、先端技術監督キシリア、ミーアポジションガルマ。
545:通常の名無しさんの3倍
07/07/25 19:58:30
しかし、ドズル閣下はあまりにも武人であり過ぎた。
だから数がそろえられずソロモンで、負けちまったんだよぉorz
ま、そんな人だから大好きなんだけどな!
546:通常の名無しさんの3倍
07/07/25 20:11:11
あれはソーラーシステムなんて想定外のものでソロモン焼き払われたんだから
数がどうこうじゃないと思うぜ。ソーラーシステムを予期しろなんて無理だし。
547:通常の名無しさんの3倍
07/07/25 20:28:59
いや、軍には諜報部なんてものがあってだな
548:通常の名無しさんの3倍
07/07/25 20:37:07
史上最大の戦艦の主砲だってかなり後の方になるまで6cmも偽装されてたんだぜ?
549:通常の名無しさんの3倍
07/07/25 20:43:43
世界最強の魚雷の性能も秘匿され続けたしな。意外と諜報ってアテにならない、MI6で有名な英軍なんて間違いしまくってるぞ。
550:通常の名無しさんの3倍
07/07/25 21:16:19
敵の諜報部だって偽の情報流すしな。諜報は万能じゃないってことだ
551:通常の名無しさんの3倍
07/07/25 21:17:54
ジオンがソーラ・システムを察知できるほどなら、レビルがソーラ・レイでジュッ、てなこともないだろうよ。
552:通常の名無しさんの3倍
07/07/25 22:25:28
正統派の武人ってやつでも一軍を預かる身なら戦力を有効に動かすために情報を集めるだろうし、
その戦力に指示を出すために情報発信にも気をつけるだろう。
むろん戦闘前に100%の情報が集まるわけはないから、その差は指揮官の経験とか知力・武力で埋める。
武力で差を埋めるどころかあふれ出すのはスパルタの300人
553:通常の名無しさんの3倍
07/07/25 22:35:44
でも艦隊戦は交戦直前まで会敵どころか居場所見つけるのすら難しいから、埋めるにも限界があるからな。
特に秘密兵器なんて代物はそれこそ諜報でなければ手に入らないだろうし
554:通常の名無しさんの3倍
07/07/25 22:38:10
さらにミノ粉があるからなー
555:通常の名無しさんの3倍
07/07/25 23:02:17
>>552
ドズルもちょっとあふれ出し気味のような気がするが。あとブライトさんも。
556:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 00:12:31
>>547はスパイ映画の見すぎだなw
よしんば入手した情報が正しかったとしても、それを分析する段階で先入観等から誤った結論を出すことも多い。
557:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 00:57:48
それでも今なお諜報機関なるものが存続しているということは
やっぱり有用だからじゃないのか?
558:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 01:01:42
有用だよ、ただし限界はあるというだけ。 なんでもできるわけじゃない。
559:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 01:08:45
たとば新兵器の詳細がわからなくても
ソロモン攻略の為に新兵器を携行している。
って情報があるだけで対応はできるのでは?
自分のところでも似たようなの開発してれば余計仮定の中に
いれるのではないでしょうか?
560:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 01:14:47
>>559
コロニーレーザーとソーラシステムはまったく違うものだよ
561:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 01:16:49
ちなみに原爆投下もOSS、後のCIAのミスリードが大きいという説もある。
562:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 01:18:01
>>559
ソーラシステムとソーラレイは全くの別物だから。
それを似たようなのと言っちゃいかんだろう。
563:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 01:20:07
>>559
それだけで対応できるわけないよ、福田や嫁に毒されてないか?
564:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 01:35:10
運用方法としては同じ系統では?
対要塞用の新兵器となればある程度の推測はできるんじゃないかな?
んで、少なからず対策は採るのでは?
例えば武人のプライド捨ててキシリアの突撃機動軍に援軍を
頼んで、その戦力を遊軍にしてティアンム艦隊の背後に回らせるとか。
565:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 01:39:55
では?
かな?
では?
こんなの語る価値もない、もう一度やり直し。
566:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 01:44:22
>>564
ソーラシステムとソーラレイの運用方法は全く違う。
ソーラシステムは戦術兵器で、戦場に持っていって展開し、使用する物。
ソーラレイは戦略兵器で、移動させる事は考慮されて無く、自国領土から敵国領土を直接攻撃する類の物。
だいたい、仕組みも原理もまるで違う。似てるところを探す方が難しい。
567:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 01:46:13
対要塞用とはいえ普通は「兵器」の範疇で考えるはず。
自軍が準備しているソーラ・レイやマスドライバーを利用した質量爆弾、はたまたイグルーで出ていたような巨大対艦砲。
ソーラ・システムはその威力を太陽に依存しているんで普通に兵器を製造する過程で必要なものが違いすぎる。
例えば普通に諜報活動をしているならMS用熱核反応炉がどれだけ製造されたか、とか装甲板の生産量がどんだけだから予測される艦艇建造数はこれだけ、とかの推定が出来る。
そういった「通常ならば軍事と直接結び付かない」ものを前兆と考えるのはまず不可能。
私的にはソーラ・システムで使用されたミラーはコロニー用ミラーの製造ラインをそのまま流用するとかして、「決戦兵器を作っている」と悟られないようにしてたんじゃないかと思うんだが…。
568:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 02:01:07
>>566
そうなのか・・・。
いや、俺はてっきり「超火力で広範囲の敵を殲滅する」という
同じコンセプトの兵器だとばかりorz
569:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 02:08:32
>>567
丁寧な解説に感謝です・・・m(_ _)m
自分の知識の無さが不甲斐無い・・・
570:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 03:14:22
ソーラーシステムって、巨大な鏡の焦点に目標がなきゃまったく効果ないもの。
固定された目標か、事前予測通りの動きしかしない目標(「星の屑」の時ね)以外には無意味だよ。
なんか一部誤解されるような映像表現があるけど。
571:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 03:49:48
細かいミラーの集合体だから、焦点はある程度ずらせる。
572:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 04:53:49
まぁ、なんというかそろそろ軍事板に
行ったほうが良さそうな空気になったので
俺はそっちにいくは…。
573:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 19:05:40
>>571
ただその焦点を合わせるのに時間がかかるんだよね。
時間稼ぎがなければ所詮、ミラーでしかないからあっという間に潰される
574:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 19:40:04
投下…ないね…
575:51
07/07/26 20:51:42
>>574
最後まで書くと、試験の関係で来週、遅くて再来週になる。
途中までなら明日のこの時間に投下できるが?
576:通常の名無しさんの3倍
07/07/26 23:32:56
待っております!
577:515
07/07/27 09:36:08
どうも3週間ぶりです。
最近欝気味で死にそうでした。
どうにか持ち直したので23話前半部分投下します。
578:515
07/07/27 09:38:22
Zion-Seed 第23話 PHASE-05『フェイズシフトダウン』或いは『ジオンの脅威』
■ ■
シャアの“赤い”ザンジバルに発見されたクルーゼ隊のヴェサリウスとガモフでは、慌しく4機の鹵獲機体の
発進準備がおこなわれていた。
現在クルーゼ隊の保有MSは4機のGに、小破したシグーが2機に中破したジンが4機のみである。
中破したジンの修理は艦の機材では完全には無理で戦力として数えるのは不可能、クルーゼとミゲルのシグーは
応急処理さえすればなんとか戦闘は可能だが、かの『赤い彗星』相手となれば少々きびしかった。
結局、鹵獲機体に頼らなければならないというザフトからしてみれば噴飯ものの事態であった。
アスランはX-303イージスのコクピットに座りながら先ほどのクルーゼとの会話を思い出していた。
「だが、そういう事情であればこの後あの連合艦と戦う事があれば君ははずそう。友人と戦わせるなどと言った
事は私もさせたくはない」
「!! いえ、出撃させてください! 私がキラを、あいつを説得してみせます。同じコーディネイターなんだ
話せばきっと分かってくれるはずです!」
「そうか……だが、もし、その彼が聞き入れなければ? 我らと敵対する道を選んだら? 君はどうするのかね?」
「っ!! ……そのときは、私がキラを討ちます!!」
「……つらい事を言わせてしまったな。だが、君の覚悟が聞きたかったのだ。あの連合艦と当たる事があれば君に
も出てもらうとしよう。とは言っても、まずはこの危機を脱せねばならんのだがな」
「ハッ! 赤い彗星、でありますか?」
「そうだ。君たち4人が作戦の肝となる。ぬかるなよ?」
「了解しました!!」
そのときのやり取りを思い返していると、どうやらこの機体の出撃準備が整ったようで整備班が機体から離れて
いく。
アスランは、クルーゼもいっていた通りまずはジオンの追撃を切り抜けてからだな、と思考を切り替える。
「(キラを説得するのはその後だ)アスラン・ザラ、イージス出る!!」
ヴェサリウスからX-303イージスが先行して出撃する。
579:515
07/07/27 09:39:44
「遅れるなよ! アスランはもう敵に接触しているぞ!!」
「分かってるよ、赤い彗星を倒せばネビュラ勲章ものだもんなぁ」
「わかっています。アスランだけに無理はさせられません」
それに遅れる事1分弱、ガモフからX-102デュエル、X-103バスター、X-207ブリッツ、3機のGが出撃した。
■ ■
悪寒を感じながらも、シャアは愛機の赤い塗装が施されたリックドムを駆り、ザフト艦へと近づいていた。
「さて、ジオンの大儀云々を言うつもりはないが……コロニーを崩壊に追い込んだ事、許すわけにはいかんな」
そう呟き、笑みを浮かべるものの仮面越しにも分かるその視線は絶対零度の冷気を持ってザフトを見据える。
かのジオン・ダイクンの遺児は、静かに深く怒っていた。
「連合の新型の性能、そして新人類を名乗るプラントの民の実力、見せてもらおうか!!」
そう言って、シャアはナスカ級から出撃した赤い機体に向かって突貫した。
580:515
07/07/27 09:41:05
■ 赤い彗星vs赤服 ■
出撃するとほぼ同時に、アスランは敵機からの強襲を受けていた。
「うわっ!!」
突っ込んできたリックドムのバズーカの直撃をいきなり受けてしまう。
PS装甲のおかげで機体に大したダメージはないものの、いかなPS装甲でも衝撃までは殺せない。
ナチュラルでは脳震盪になりかねない振動がコクピットを襲う。
「っ、こんなものでぇ!!」
だが、流石はザフトレッド。
衝撃から機体をすぐさま立て直すとアスランは敵機に向けてビームライフルを連射する。
しかし、どういうカラクリか、ほとんど背後から撃ったにも拘らず、尽くが回避されてしまう。
「当たらない!? どうして!」
「これが、フェイズシフト装甲か。流石に硬いな、だが!」
これならばどうだ? ヒートサーベルを抜き放つと、シャアはイージスの射撃を掻い潜り再び接近する。
「くそぉ!!」
一撃も当たらない敵機に焦りながらも、アスランもビームサーベルを抜き、斬撃を放つ。
「甘い!」
しかし、その攻撃はシャアがサーベルの柄でイージスの手首を払い、無効化されてしまう。
そしてシャアの放った斬撃がイージスを直撃する。
「うわぁああああああ!!」
「なんと、これも効かんか!?」
581:515
07/07/27 09:42:36
リックドムのヒートサーベルはイージスのPS装甲とぶつかり合い、凄まじい火花を散らせるが装甲にその
刃を食い込ませる事はなかった。
「アスラン、避けろよー!」
「え!?」
「!!」
通信機から流れるその声にアスランが機体を動かすよりも速く、シャアはイージスを蹴りつけて距離をとった。
その直後に高出力のビームが先ほどまで2機のいた場所を通り抜ける。
「おおおおおおおお!!」
続いてイーザクの駆るX-102デュエルがビームライフルを連射しながら突貫してきた。
「ほう、奪取機体を全て出すか。いい思い切りだ」
「あれをかわすかぁ? ニコル、アスランに着け、俺はイザークを援護する」
「わかりました」
遅れて到着した3機のGの参戦により、シャアは4対1の戦闘を強いられる事になる。
だが、圧倒的に不利な状況に追い込まれながらも、シャアの口元には笑みが浮かんでいた。
「さて、そろそろ頃合だな」
582:515
07/07/27 09:44:42
■ ニュータイプ兵器 ■
“宇宙に進出した人々はその環境に適応した『ニュータイプ』へと進化を遂げ、やがて人類を『人の革新』へと
導く”。
かつてジオン・ダイクンは、その思想の根幹部分にこのような概念を導入した。ジオン独立戦争に先立つ宇宙移民
独立運動の高揚、またギレン・ザビによる民衆の扇動も、このニュータイプ史観がなければありえなかっただろう。
そして独立戦争以後、一般に空間認識能力者と呼ばれる人間の中でも特に優れた認識能力、洞察力を持つ人間を
発見し、これをニュータイプと呼んだ。
(無論、これはジオン公国内でのことである。プラントではニュータイプ史観自体が否定されているし、連合内でも
宇宙在住者であるコーディネイターが、ニュータイプとなりうる可能性を秘めている以上認めがたいものがあった)
彼らの能力は軍事技術と結びつく事で“新兵器”となり、空間認識能力者と同じく『ニュータイプ=兵器』という
認識がもたれるようになる。
公国軍で最初にニュータイプの軍事利用を考えたのはキシリア・ザビ少将(当時。現在は予備役)である。
彼女はジオン独立戦争において、通常の空間認識能力者以上の戦果を上げたパイロット達を徹底調査した結果、
ニュータイプの存在を確信するにいたり、フラナガン機関を設立する。
無論、軍事利用を念頭に置いた機関であり、当時既に公国軍再編に向けた動きが水面下であったため公国軍全体と
いうよりも彼女の私兵強化の目的が強かったと思われる。
(事実、クーデター時の私兵部隊には機関より選出された人員が少数であるが参加している)
しかしながら、機関の長フラナガン博士はクーデター失敗におけるキシリア派失墜においても機関を維持することに
成功する。
これは博士がクーデターの失敗を予期していたわけではなく、未だ開発段階であったサイコ・コミュニーケーターの
実験に必要なララァ・スンらの嫌ったからである。
結果的にそれがクーデターを鎮圧したギレンへの手土産となり、機関の存続に繋がったのである。
583:通常の名無しさんの3倍
07/07/27 11:41:18
もっと早く気付いてていれば、515氏が規制に魂を引かれることは無かったものを!
584:通常の名無しさんの3倍
07/07/27 11:46:03
>サイコ・コミュニーケーターの実験に必要なララァ・スンらの嫌ったからである。
→ララァ・スンらがクーデターに関わることを嫌ったからである。
てな具合に抜けているのではないかと。支援出来なかったので、せめて指摘を…
585:通常の名無しさんの3倍
07/07/27 12:35:52
GJ!
よく考えたら赤いザンジバルって気持ち悪いなw
586:515
07/07/27 14:00:37
ギレン・ザビは妹キシリアほどにニュータイプの軍事利用に興味は抱いてはいなかったが、ニュータイプと呼ばれる
人間が戦場において確認されたと言う事実には注目していた。
なんといっても、すべての人類のニュータイプへの覚醒がジオン公国の最終到達点である。
その為フラナガン機関は予算は据え置きどころか増加(この予算の中には量子通信技術の開発予算も含まれている)
され、公国軍再編における混乱の余波もどこ吹く風でニュータイプ兵器の開発に邁進していく。
それはソロモン攻防戦において有線式サイコミュを搭載したMAN-03の活躍によって表明された。
この戦果でニュータイプ兵器の有効性を確立したフラナガン機関は、続いて無線式サイコミュの開発に勤しむ事になる。
そうして開発されたのがMAN-08エルメスである。
無線式サイコミュ、ビットを12基搭載したこの機体は、リックドムⅡ一個中隊の攻撃力に匹敵すると言われ、現在
ニュータイプ・パイロットと判明している4名のパイロットが乗機としている。
1号機:ララァ・スン少尉 :シャア・アズナブル隊所属
2号機:マリオン・ウェルチ少尉 :シャア・アズナブル隊所属
3号機:シャリア・ブル少佐 :シャリア・ブル隊隊長、旗艦はザンジバル級機動巡洋艦『レガシー』
4号機:クスコ・アル少尉 :シャリア・ブル隊所属
■ ■
シャアが4機のGと交戦を開始した頃、“赤い”ザンジバルでは2機のエルメスが出撃しようとしていた。
「ウェルチ少尉はまだか? 流石の少佐とはいえ4対1は厳しいぞ」
『どうします、ドレン大尉? ララァ少尉を先行させときますか?』
だが、何故かエルメス2号機のパイロット、マリオン・ウェルチがなかなか現れないのである。
さすがにハマーン・カーンにノックアウトされているとは誰も想像できまい。
587:515
07/07/27 14:02:07
「仕方あるまい。これ以上出撃を遅らすわけにはいかん。アンディ中尉はスン少尉と出撃しろ、リカルド中尉は
保安部とウェルチ少尉を探してくれ」
『了解であります』
すでに先行したシャアはザフトMS隊(といってもすべて連合からの奪取機体ではあるが)と交戦中である。
これ以上、支援攻撃を遅らせるわけにはいかないと、ドレンはエルメス1号機を先行して出撃させる事に決めた。
『……と言うわけだ。これ以上時間を浪費するわけにはいかん、先行して出撃してもらう』
「了解しました」
艦長のドレンの通信が終わるとほぼ同時に後方のハッチが開く。
ララァは管制の指示通りにエルメスを操り、ザンジバルから出撃する。
宇宙空間に出たことで、サイコミュによって増幅されたララァの感覚は一気に膨れ上がる。
(この感覚はいつも慣れない……まるで素肌で宇宙に出るかのよう……)
膨張したララァの感覚は前方でおこなわれている戦闘の様相が見て取れた。
5者5様の思念が流れ込んでくる。
(冷徹に燃える青白い炎が少佐、憤怒、焦燥、驚愕、恐怖が彼ら、コーディネイターと言えどもその精神は人と
変わらないというのに……)
『……ァ少尉、ララァ少尉? どうかしたのか?』
「っ、いえ、なんでもありません」
思考に没頭していたせいで続いて出撃したアンディの通信に気がつかなかったララァは、恥ずかしさで顔を
真っ赤に染める。幸いにしてそれはヘルメットのバイザーに阻まれ、誰にも気付かれる事はなかったが。
「……攻撃目標、ザフト軍MS4機、及びローラシア級1隻、ナスカ級1隻。攻撃を開始します」
ララァの言葉が終わるとともに、エルメスから12基のビットが射出される。
昨年のソロモン撤退戦においてザフトを恐怖させたオールレンジ攻撃、姿が見えぬゆえ『亡霊』と呼ばれたそれが
クルーゼ隊に襲い掛かった。
588:515
07/07/27 14:05:15
■ 蜉蝣と三連星 ■
一方、AAを追うシーマ中佐の『リリー・マルレーン』はアルテミスへと向かう進路をとっていた。
地球連合の宇宙拠点がアルテミスだけである以上、AAが逃げ込めるのはそこだけしかないからだ。
このことから当然、シーマたちはAAが連合艦であることは承知していた。
その上で攻撃を仕掛けようとしていた、もちろん建前上はヘリオポリス崩壊にかかわった所属不明艦への攻撃である。
「さーて、そろそろお目当てのと接触するころだね」
「中佐、俺達は出なくてよかったのか?」
シーマはアルテミス周辺のデフリ帯に差し掛かったところで、本人と三連星を除くMS隊を索敵に出していた。
「あんたらにはお目当てのが見つかってから出てもらうよ」
「心得た」
「まかしときな」
「おうよ」
基本的にエース専用機は次世代型量産機より性能が優れたりするが、反面、整備性は劣悪で推進剤をバカ食いするなど、
いい面ばかりではない。
シーマも三連星もそれを良く理解しているので、これは確認の為の会話であった。
「クルト機より通信、“ワレ敵艦ヲ確認セリ”!」
「よし、捕らえた! 他の連中に援護に向かうように伝えな、あたしらも出るよ!」
副官のコッセルに指示を出し振り向くと、すでに三連星はブリッジから消えている。
彼らはオペレーターがクルトからの通信を受けた時点で格納庫へと向かっていた。
「流石に行動が早いね。さてと、連合のガキどもに海兵隊の恐ろしさを叩き込んでやろうじゃないか。いくよ、野郎ども!」
「「「「了解、姐さん!!」」」」
589:515
07/07/27 14:19:44
以上、投下完了。
>>584氏のご指摘どおり、
>実験に必要なララァ・スンらの嫌ったからである。
→実験に必要なララァ・スンら優秀な被験者の放出を嫌ったからである。
ですね、申し訳ありません。
後編はいつになるか分かりませんがなるべく早く仕上げるつもりです。
>>516氏へ
短編外伝ですが、予定ではアストレイのストーリーも組み込むつもりでしたが、
現状では無理っぽいのでカナード絡みであれば特に問題ないと思います。
正直、欝気味でいつ投げ出してもおかしくないぐらい、今テンション低いです。
なんとか種終了までは書き上げたいですけど……。
590:通常の名無しさんの3倍
07/07/27 14:26:40
鬱なときはシャニティアを見たらいいよ。
591:通常の名無しさんの3倍
07/07/27 14:38:16
シーマ様海兵隊カコイイ!!
592:通常の名無しさんの3倍
07/07/27 15:32:25
GJ!のエールを送るぜ!
593:51
07/07/27 19:41:24
515氏GJです! クルーゼ隊がフルボッコですね!
さて私も21時くらいに投下します。
594:通常の名無しさんの3倍
07/07/27 20:29:38
wktk
595:51
07/07/27 21:02:24
34-1(1/5)
ジブラルタル基地。
この基地はザフト地上軍にとって大西洋連邦とユーラシア連邦の橋頭堡となる重要基地である。その規模は
連合に近いという理由からかなりのもので、MSだけでも400機を優に超える戦力を保持していた。大西洋に
面した湾岸部には無数の砲台群が配置。更には布陣している潜水艦隊の存在がジブラルタル基地を難攻不落の
永久要塞としていたのである。
ジオンよりも早く地上へ展開していたザフトは、水中用MSという観点において一日の長があった。早期に
水中用MSを実験することができた為に、グーンやゾノといった高性能MSを開発できた。ジオンはゴックや
アッガイを地中海に投入したが、付け焼刃のMSでは対抗できなかった。
そんな無敵を誇るジブラルタルにザフトは増援部隊を集結させた。
――第34話
砂漠の虎の敗北によって地上へ送られた増援部隊。その中にアスラン・ザラもいた。本来ならプラント本国
にいる筈だったが、親友であるキラ・ヤマトに会うという理由で地上に降りたのだ。
そんな彼は、カーペンタリア基地に所属するマルコ・モラシムの部隊に身を寄せていた。
「少しは慣れたかな? 地球の重力に?」
「はい。始めは戸惑いましたが、今は」
「そうか。だが、人間慣れ始める頃が一番危険なのだ」
「……肝に免じます」
地球の重力に慣れていない兵は赤服・緑服とわず厳しい訓練を施される。当初はパトリックの息子であると
同時に英雄であるアスランにその様な訓練は不要との声も上がったが、モラシムを始めとした現場指揮官から
異議が唱えられ、現在に至っている。アスランとしてはそれを厄介に思うことはなく、むしろ特別扱いになら
ないことが嬉しかった。
(地上に降りたのは正解だった。しかし、キラ……お前は今何処にいるんだ)
アークエンジェルがユーラシア連邦に向かったのは確認できた。だがその後の行方が解らない。再びキラに
会いたいアスランとしては、一刻も早くその行方を調べたいのだが、ジオンがバナディーヤを占拠した報せに
よって、ザフト地上軍は緊張状態になっており、調べる暇が無かった。
596:51
07/07/27 21:03:46
34-1(2/5)
このような情勢下でカーペンタリアを出港したモラシム隊は、ジブラルタルへの輸送船団を護衛する任務に
就いていた。旗艦クストーを先頭に、3隻のボズゴロフ級潜水艦と10隻の輸送潜水艦が旧モロッコ沿岸を進む。
すると、後1時間もすればジブラルタルに着くところで、オペレーターがSOSを受信したと言う。
「ミノフスキー粒子の影響で断片的なモノしか分かりませんが、反応はレセップス級のものです」
「モラシム隊長、助けましょう」
「アスラン・ザラ、少し落ち着け。敵は連合か? それともジオンか?」
「MSのようですが、データに無い機体です」
現在確認されている水中用MSはゴックとアッガイのみ。違うとなると新型MSであるのは明白だ。
「新型となると、ことは慎重に動かねばなりません」
「待ってください。救援へ向かうべきです」
味方の窮地にアスランは救助を進言するが、モラシムの副官ハンスは慎重論を言う。
「救援はジブラルタルから出るだろう。我々の任務は輸送船団の護衛だ」
「そんな悠長なことは……」
「アスラン、宇宙ではどうだったか知らんが、地上では命令無視は許されない」
「だが、見過ごすわけにもいかんぞ」
2人のやり取りを見ていたモラシムは決断する。
「隊長!?」
「クストーだけ先行する。他の艦艇はこのままジブラルタルへ」
それだけ告げるとモラシムは艦橋を出た。
宛がわれたディンからレセップス級を見たアスランは、その姿に絶句した。
外から見ただけでも、十数におよぶ破損箇所が認められる。対空砲は全て潰され黒煙を出し、見るも無残な
姿に変貌していた。これがバルトフェルドの乗艦であったとは、言われなければ気づかないだろう。
そんなレセップスをこのような姿にした張本人が水しぶきを上げて現れた。
「ジオンのMSか?!」
機体構造そのものが今までにない形をしているが、モノアイである時点でそれがジオン製であると分かる。
MSは今まで見たことの無い巨大なアームを伸ばし、先端からビームを撃っていた。
「アスラン、オマエはレセップスをジブラルタルまで誘導しろ! MSは俺が相手をする」
モラシムはザフトにしては珍しく集団戦法を積極的に採用していた。大抵のザフト兵士は個人プレイに走る
のだが、地球の海を体験したモラシムにとって、それは自殺行為でしかないと考えていた。
「全機、私に続け!」
ハンスのグーン隊が後方から魚雷を発射する。しかしジオンのMSは軽々とかわしてしまった。見たところ
装甲は薄そうだが、機動性はゴックやアッガイを凌駕しているらしい。
4機の敵MSが散開し、魚雷を放つ。それに合わせる様に、モラシム隊も散開した。
戦闘に突入したモラシム達を他所に、アスランはレセップスを誘導すべく、ディンを飛ばした。