07/06/27 23:23:49
32-2(2/3)
ムウのイージスに一直線に向かっていったニムバスのイフリートは、両手のヒートサーベルで襲い掛かった。
「卑怯者めが! この私が裁いてやる!」
「なに……!」
何とか応戦するムウだったが、ニムバスの攻撃は一撃一撃が重い。
イフリートはグフよりも近接戦闘に特化した機体である。その特徴はイージスと同じなのだが、用兵思想は
根本から違った。イージスは状況に応じた最適な形態を選択することで、単体での高い攻撃力、汎用性を実現
している。しかし、実際はMA形態を有効に使うために宇宙戦を優先されており、陸戦は二の次。更に変形機構
が複雑過ぎる上に使い勝手が難しいときている。
一方のイフリートは陸専用にし、高い運動性と格闘能力を持つ。そのため装甲も厚く、マシンガン程度では
傷一つ作れない。さすがにビーム耐性は低いが、陸戦においては完成された機体だった。
「このスピードの前に敵なぞいないッ!!」
「……っ!!」
ニムバスの高笑いと共にイフリートが接近する。後方に下がるムウだが、ニムバスは更に懐に入り込む。
「ええい! 何なんだこの感じは!?」
防戦に徹していたムウが口にする。先程から頭の片隅に、妙な感覚が走るのだ。口では表現できない奇妙な
感覚―クルーゼと戦った時に感じるものに近かった。そしてそれは上空から感じる。
「身の程知らずが!」
そんな感覚の所為で、目の前の戦闘に集中できない。だがそれを言い訳にしてはならなかった。
「くっ! このままじゃ立つ瀬がないでしょ、俺は!」
振り上げられたヒートサーベルを受け止め、イージスの右腕をイフリートの右腕を斬り飛ばす。
「こしゃくな……!」
一旦距離を取るニムバス。
不意に、イージスが頻りに上を気にしていることに気づくと、興味本位からニムバスも空を見た。
「美しい……」
そこには華麗とも言えるMS操縦で、ストライクを翻弄するグフ・フライトタイプがあった。