07/10/17 04:04:47
キラは自機のフェイズシフトダウンの事も忘れて、次の獲物はお前かとばかりにもう一隻の戦艦の方に目をやる。
しかしそこにあったのは、こちらに向けて砲を構える戦艦の姿ではなく全速で撤退していく戦艦だった。
距離にして3~400m程離れているが狙えないという距離ではない。
キラは尚もイーゲルシュテルンで相手の機関部を狙おうとしたが、その時に通信機からアークエンジェルの艦橋にいるマリューから通信が入る。
「キラ君、戻って !! 敵は撤退し始めているわ ! 深追いする必要は無いのよ !!
それに、フェイズシフトがダウンして、イーゲルシュテルンしか使えない今の状況じゃどうにもしようが出来ないわ ! 」
その声が聞こえてからキラははっとした。
どこか遠くへ追いやっていた意識が急激に自分の方に向かって引き戻されたかのような感覚だった。
周囲に散らばったMSの残骸、自分の今目の前で原形を残しながらも黒煙と真っ赤な炎をあげて燃え盛る戦艦。
これを自分がやったというのだろうか ?
息はやけに荒っぽくなって視界も一瞬ぐゎら二重三重にぶれる。
体のあちこちからも汗が吹き出し、いやにパイロットスーツがじっとりとした感触を持ってもいた。
「損害は大きかったけどアークエンジェルは何とか持ち堪えたわ。お疲れ様。他の皆は回収したから貴方も早く帰投してちょうだい。」
マリューのその声がやけに心地よくキラの耳に入ってくる。
そしてその先は……何も聞こえなかった。
651:Exceed4000 ◆mGmRyCfjPw
07/10/17 04:12:29
投下終了します。戦闘、ムウ兄さんやカリスの描写が上手くなかったかなあと思っていたり。
次回はメイン:艦内点景、サブ:虎とレジスタンス、そしてあるキャラの登場っぽいものをやろうかと思っています。
それではまた後程。
652:通常の名無しさんの3倍
07/10/17 17:20:21
乙でした
キラの方が活躍してるけど、どうしてもガロードを応援してしまうw
あるキャラに期待
653:通常の名無しさんの3倍
07/10/19 22:35:14
サントラにガロードとティファのキャラソンが収録されてた・・・
654:通常の名無しさんの3倍
07/10/19 23:26:57
あれOPやEDがフルバージョンで入ってるんでお買い得感があるんだよなぁ
655:Exceed4000 ◆mGmRyCfjPw
07/10/22 17:42:33
保守ついでに投下します。
機動新世紀ガンダムXSEED 第三十一話「戦います。」
キラが次に目を覚ましたのは医務室のベッドの上だった。
目を動かすと、室内には今のところ一応アークエンジェル専属の医師となったテクス以外他に誰も見当たらない。
目覚めると同時にキラの脳裏に様々な事が去来してくる。
ガロードやムウさん、艦の皆は無事なのだろうか、アークエンジェルはどれほど損傷を負っているのだろうか、そしてザフト側から来たと言うあの少年は…… ?
不意に、キラの目覚めに気づいたのか、テクスは書き物の手を止める事無く話しかけてきた。
「目は覚めたかい ? 」
「はい……」
あれ、おかしいじゃないか。
自分はストライクに乗っていた訳で……ラミアス艦長が帰投を命じたからアークエンジェルへと向かおうかとしていた訳で……
じゃあ何故自分はこんな所で横になってるんだ ?
その答えはテクスの方から告げられる。
「君はラミアス艦長が帰投命令を出した直後にその場に倒れた。助けに行ったのは機体の応急処置を済ませたガロードでね。」
そうだったんですか、とキラは小さく呟き視線を天井へと戻す。
後でガロードにあったらお礼を言わなくちゃと思った時、体の節々に疼痛がやって来る。
機体を素早く効率的に操る為に、体も恐らく相当な無理をしていたのだろう。
衣擦れの音と小さな呻き声を聞いたテクスは、特に口調を変えるでも無く淡々と続ける。
「ガロードの方はあれでしぶとい所もあるし、君に比べると体もそんなに悲鳴をあげる様な状態じゃなかったが君の方はまだ動かない方が良い。
今日一日は安静にして動くのはそれからにしても遅くはないはずだ。」
それから彼はやれやれといった感じで上に向かって大きく背伸びをし、首を二、三回横に振る。
無理もない。戦闘で多くの重軽傷者が出た為に、テクス自身にも目の回る様な忙しさに振り回される思いがあったからだ。
そんな彼から目線を少しずらしキラは訥々と語りだす。
「先生。僕……この戦闘でやっと決心がつきました。……戦います。」
やや間が有ってからテクスは書き物の腕を止め、キラの方に体を向ける。
「……何と戦うんだね ? 」
「僕の友達を、いえ、僕にとって身近な人達を死なせようとする敵からです。」
「その敵という一つの括りの中に君の昔の友人が含まれているが、それに関して君自身はどう捉えている ? 」
その言葉を聞いて半瞬体が硬直してしまうが構わずに続けた。
「その事はもう諦めました。前にも言いましたけど、アスランが捕虜になっていた時に物凄い剣幕で色々言われましたから……もう何か考えたりして後れは取りません。
そんな事をしていたら自分は勿論皆まで死んでしまう事になります。もう誰も死なせはしません。」
言い終えてからキラの心に何かすっとする物があった。
そうだ……自分は遂に言いきった。後は言葉の通りの事を実行すればいい。
そんなキラの心境を見透かしたかのようにテクスは短くこう告げる。
「すっとしているところで水を差すようだが、言葉には常に何らかの責任という物が付いてまわるものだ。
ここには艦長も君の友人もいないが君がそう言った以上そういう風に行動しなければならない。常にね。……綸言汗の如しとはよく言ったものだな。」
「あのう……綸言汗の如しって何ですか ? 」
「一度口から出てしまった事は取り消したり無かった事にしたりする事が出来ないという事さ。
……ま、良い言葉かなと思ったら心の片隅にでもピンで留めておいて損は無いと思うがな。さ、気分が落ち着いたらもう一眠りした方が良い。」
言われてキラは視線を再び天井へと戻す。
目を閉じる前に言われた事を自分の頭の中で繰り返してみる。
言葉には常に何らかの責任という物が付いてまわるもの……
自分の選び取った道が如何に茨の道となるかを自覚しながらキラは眠った。
656:Exceed4000 ◆mGmRyCfjPw
07/10/22 17:43:44
「それで……君もガロード君達と同じ世界から来たのですね ? 」
「はい。」
事情聴取が行われている士官室には重苦しい空気が満ちていた。
臨席しているのは当事者のカリス、尋問する側に艦長のマリュー、副艦長のナタル、戦闘に立ち会ったムウ、そして一種のオブザーバーとしてガロード、ティファ、テクス。
内容は勿論、カリスについての処遇をどうするかである
彼はガロード達と同じ世界の住人であり、更に彼等は旧知の仲とも言える間柄にある。
しかし生きていく為に些か仕方が無かった判断とはいえザフトの軍人になった事、そして仮にもジブラルタル基地の元副司令官であった事が余計に事態解決への道に暗い影を落としていた。
本部に知らせれば絶対に黙ってはいないだろう。
最悪の場合、離反してこちらの陣営に有利になる働きを山とする、あるいはアラスカに着くまでにするであろうという事を考慮に入れたとしても、待っている物は銃殺刑ぐらいだろう。
だがこれまでにも戦闘で尽力を尽くしてくれたガロードの友人という事もあったので、
彼の感情を酌まなかったり、簡単に反故にして処断を決めてしまえば、これからのお互いの関係に歪が生じてしまう。
そんな風にマリューが判断に困りかねていると、横からナタルが一つの提案をしてきた。
「艦長。ノーティラス氏の処遇についてはガロード・ラン、ティファ・アディール両名と同じ位置にし、その引き換えとして氏の知り得る情報……
つまりはザフトがこれから計画している戦略、ジブラルタル基地の詳細等を詳細に供述するという判断は如何でしょうか ? 」
それはつまり一種の取引だ。
必要最低限の行動の自由と生活水準を約束する代わりに情報を洗いざらい話してこちら側に提供せよという物。
それを聞いたマリューは少し眉を顰めてしまう。
確かにこれは看過する事の出来ない非常に重要な戦術の過程におけるワンシーンとも思えてくる。
軍と言う組織に所属する以上そういう処断の方法の一つが出てしまうのは致し方無いものだ。
しかしどちらかと言えば‘手を上げないで済む問題’なら、なるべく仁徳的な方法であらゆる事態の解決を図ろうとするマリューにとってあまり気持ちの良いものではなかったのだ。
彼女はナタル自身から自分は軍人の家系に生まれたと数日前に聞かされた。
その為、こういった状況においても実に四角四面な回答しか出来ないというのは些かしょうがないものだと内心匙を投げかけていた。
思えばその違いはあの苛烈な戦闘の直後から顕著になっていたのかもしれない……
657:Exceed4000 ◆mGmRyCfjPw
07/10/22 17:44:46
戦闘の後、例によってガロードは整備スタッフから多くの拍手と激励、そして祝いの声を受けたが彼自身そんな事に気を使っている余裕は粉微塵も無かった。
先ず、アークエンジェルの具合は一体どういうものになっているのか、出撃直前に部屋のベッドで寝かせたティファは無事なのだろうか。
そして、ザフトから来たカリスの処遇は一体どうなるのか。
ブリッツがストライクを引き摺る様な形で帰還して間も無くスカイグラスパーが帰還し、ベルティゴが到着する。
その途端、ガロード達が初めてアークエンジェルに来た時の様に銃を持った兵がその場に集まり始める。
「止せ ! あいつは俺達の味方だ ! 俺の仲間なんだよ ! そりゃザフトから来たから警戒するのも無理ねえけど銃くらい下ろしてくれないか ? 」
諭す様にガロードは言ってみるが兵士は同じ姿勢のまま返答する。
「いや、こちらに与した行動を取ったとはいえ、相手はまだザフトの制服に腕を通している。第一、一回の戦闘でそう判断するわけにはいかん !! 」
少しムッとする言い様にガロードは口ごたえをしてしまいそうになるものの、それは外部スピーカーから聞こえてくるカリスの声で止められる。
「ガロード、落ち着いて下さい。いいんですよ。ザフトから来た僕にはこれが正当な出迎えだと思いますから……」
それから直ぐにコクピットハッチが開き、両手を上げたカリスが姿を現した。
先程聞こえた声の口調はいつもの様に丁寧その物だったが表情は硬く、自分に向けられている銃に対しても眉一つ動かす事はない。
そして兵の一人が銃を構えたまま、ベルティゴから降ろされた乗降用ワイヤーに乗りカリスの元へと行く。
兵は無表情のまま簡単な身体検査をし、次いでカリスの両腕を手錠で後ろ手に拘束する。
ガロードにとってはその行動の一つ一つが此処は連合の戦艦なのだという事を頭に入れていても気に喰わない物だった。
そして兵とカリスはベルティゴから降り、多くの視線を集める中、艦の居住区へと向かって行った。
二人が見えなくなった辺りでガロードは隣にいた兵の脇腹を肘で軽く小突き質問する。
「おい、こういう風に対処するように言ったのって、まさか副艦長さんか ? 」
「ん ? ああ。念の為という事でな。」
やっぱり……あの真面目が服着て歩いているような人ならと、つい思ってしまう
内心少し苦々しい思いもしたが、空気も読めないのかとしばしの間呆れてしまった。
658:Exceed4000 ◆mGmRyCfjPw
07/10/22 17:47:05
そんな事があっただけに、ガロードとマリュー達の間には士官室に入る前から非常に気まずい空気があった。
マリューは自分もそんな目で見られているのだろうかと軽く頭を抱え小さく溜め息を吐いてしまう。
しかしそんな空気を打破するようにカリスがナタルの質問についての回答を出す。
「そこに関しては悩む所ですし、また非常に複雑でデリケートな問題だと言う事も重々承知してはいますが……
いいでしょう。取引に応じます。但し ! そちらもこの場で一度取り決めた事は厳守して下さい。後から理不尽な理由や補填的な説明を基にして取引自体を反故するような事はしないと約束して下さい。」
「心配するなって。連合軍側の人間とはいっても一応軍人なんだからさ。それに……お前さんの心意気はさっきの戦闘の前にしっかりと受け取ったからな。」
回答に対してやはり飄々とした態度で受け応えるムウ。
ナタルは「少佐、少しは真面目に応対して下さい……」と小声で窘める様に言うが、当の本人はやれやれと言わんばかりに肩を竦める。
そのやり取りを見てカリスはほんの僅かばかり口元を綻ばせる。
それを見たマリューはほっとして手元にある小冊子を閉じ、努めて明るい声を出して聴取の終了を告げる。
「ともかく事情聴取はこれで終了よ。カリス君。これから色々と大変な事があるとは思いますが……頑張って下さい。」
「はい。御期待に沿えるよう尽力します。」
それから直ぐに部屋の片隅にいた兵の一人がカリスの両腕にかかっていた手錠の鍵を外した。
それと同時にガロードが左手の親指をピッと立てる。
それを見てカリスは少しきょとんとするが、直ぐにその意味を理解して同じ動作をする。
それ以上言葉も動作もいらない、青年同士のある意味爽やかささえ感じられる間柄。
見ていて微笑ましい所があるものだとマリューは思う。
「あの……もう行っても宜しいでしょうか ? 」
「え ? ええ、良いわよ。但しその服は着替えた方が良いわね。生活班に変わりになりそうな物を直ぐに用意させるわ。」
「何から何まで本当に有り難う御座います。では失礼します。」
カリスはそう言って立ち上がり深々とお辞儀をした後、ガロード達と共に士官室から出て行った。
ナタルも自分が詰めているCICの様子が気になるらしく部屋を出て行った。
部屋に残ったのはムウとマリューの二人きりになる。
「やれやれ、またまた前途多難な事が山と転がり込んできたねえ、艦長さん ? 一度しっかり休んだ方が良いんじゃないの ? 」
「そういうわけにもいきませんわ、少佐。こういう時は今自分がするべき事から手を付けていってこなしていかなければ部下に示しがつきませんもの。」
ムウの提案をマリューは制帽を脱ぎながら軽く受け流す。
しかしムウは少し困った顔をして続ける。
「こういう時だからこそさ。艦長さんがそんなボロボロのクッタクタで仕事に当たってたんじゃ示しも何も無いのと同じだぜ ? それに、こなした仕事の質も落ちちまうぜ。」
「……そうね。」
その言葉にマリューは何も言い返せなくなり、机に突っ伏して目を瞑ってしまう。
悔しいがこの場はムウの勝ちだ。
山積している問題を逐一解決するにはこの体力ではいつか限界が来てしまうだろう。
しかもその山積している内容も内容である。
あの戦闘でアークエンジェルの火器は殆ど使用不能になり、機関部も少なからずやられた為に数日はここ、ザフト制圧下で足止めを喰らうという事になった。
おまけにその修理に必要な資材自体や減りつつある弾薬、燃料、食料も何処から調達すれば良いものか。
更に今後の航路も未だに決まっていない。
そんな事をあれやこれやと考えている内についまどろんでしまう。
ムウはそんなマリューを見やりながら出来るだけ静かに部屋を後にした。
659:Exceed4000 ◆mGmRyCfjPw
07/10/22 17:49:15
「『噂の大天使』……ねぇ。教義を説く場所を間違えたとみえるな。」
「は…… ? 」
資料に目を通す上官が発した比喩的な意味を持つ言葉に彼の部下、マーチン・ダコスタは少々間の抜けた返事をしてしまう。
「まあ、我々の制圧下の地に単艦で降りてくるなんざ、ちいとどうかしたんじゃないのかっていう行為にも等しいって事さ。」
「はあ……」
ここはアークエンジェルの降りた地より南東に約2270kmの地点。
ザフトの大型陸上戦艦レセップスの中で一人の男が白磁のカップ片手に部下が持ってきた資料を見ていた。
男の名はアンドリュー・バルトフェルド―通称『砂漠の虎』とも呼ばれる、ザフト軍地上部隊における屈指の名将にして名パイロットである……
のだが彼のその肩書きを吹けば飛ぶような存在にしている物がたった一つあった。
手に持っていたカップを口に運んで直ぐ、バルトフェルドは「んっ ?! 」と表情を変える。
「なにか ?! 」
資料の中に注目すべき点でもあったのかとダコスタは身構えるが、そんな彼を茶化す様に相手は楽しげな表情を浮かべて応対する。
「いや、今回はジャワとトラジャを7対3の割合で混ぜてみたんだがね。やはりオールドビーンズよりカレントクロップの方が良かったかもしれんな……」
それを聞いてダコスタはがっくりと拍子抜けしてしまった。
カップの中身は彼がやっているコーヒーの自己流ブレンド。
彼はその結果を子供の様に嬉々として述べただけだ。
コーヒーは黒くて苦い飲み物としか考えていないダコスタにとって、上官のこのあまりの入れ込み様には少々呆れてしまう。
正直な事を言えばこれさえなけりゃと何回か思ったものだが。
「このブレンドはいけると思ったんだがなぁ。8対2でやってみたところでやたら苦味だけが残るものだからそれは避けたんだが……」
しかしそんな部下の思いは何処吹く風といったようにバルトフェルドはコーヒーの感想を述べながらアークエンジェルのデータに目を通していく。
もう何度目か分からない小さな溜め息をダコスタが吐いたその時だった。
660:Exceed4000 ◆mGmRyCfjPw
07/10/22 17:50:27
「失礼します !! 」
一人の兵士が隊長の前だということも忘れたように大慌てで入ってきて、一つのメモリースティックをデスクの上に置いた。
「先程、ジブラルタル基地よりカリス・ノーティラス副司令官が我が軍より離反し逃亡したとの報せが入りました !! 」
「何だと ?! 」
突然の報にダコスタも上官の前だという事を忘れて驚いてしまう。
その兵士はその後に起こった事の報告を続けた。
「また我々の制圧下に降下した敵新造艦が、先日陥落したビクトリア基地を査察に出発したジブラルタル基地総司令官の乗った艦と交戦したとの事です !! 」
「それで……被害の程は ? 総司令官殿は ? 」
バルトフェルドが神妙な面持ちで出したその質問に、兵士は涙を堪える様に絞り出した声で答える。
「ジブラルタル基地よりも応援が出ましたが、奮戦空しくMS隊、戦闘機部隊は全滅……総司令官殿は……戦死されました…… !!! こちらのメモリーは……撤退した兵が捉えた戦闘の一部始終との事です ! 」
ダコスタは驚きのあまり声も出ないようだった。
無理もない。ジブラルタル基地はたった数時間で総司令と副指令、二人の大きな立場にいる責任者がいなくなったのだから。
一方バルトフェルドは自分の元にもたらされた情報を頭の中で必死に統合していた。
それを踏まえた上で自分達の力と彼等の力を改めて秤にかけてみる。
その結果はじき出された答えは……しばしの間事態を静観していた方が良いというものだった。
何せ何十機というMS部隊と戦闘機部隊を撃墜しておきながら、未だにそれが存在しているのである。
戦闘でかなりの損傷を負っていると見積もっても下手に手出しをしない方が良い。
尤も、手を出そうにも2000km以上離れているここからではそうそう簡単には出せそうにもないが。
「分かった。取り敢えず報告どうも。」
「はっ !! 」
バルトフェルドは軽く労いの言葉をかけて兵を持ち場に戻す。
それを視線だけで見送ったダコスタは重々しく口を開いた。
「隊長……これからどう動きますか ? 」
「それをこれからじっくりと考えるんじゃないか、ダコスタ君。幸い、敵も直ぐにはアクションを取る事が出来ない様だからな。」
かなり深刻な事態といえるにも拘らず、バルトフェルドはどこと無く『面白くなってきた』という雰囲気の口調で答える。
やれやれといった雰囲気でダコスタはあさっての方向を見るが、上官が次に発した言葉で居住まいを正した。
「どちらにせよ、久し振りに手応えのある相手がやって来たという事だ……」
661:Exceed4000 ◆mGmRyCfjPw
07/10/22 17:52:43
エーゲ海は北方の山脈。
人の気配が感じられない内陸部にそれは確かに存在していた。
それは連合が所有する一種の研究施設であり、近隣住民からは何をしているか分からないという事で気味悪がられていた。
まあ、本当の事を知ったら余計に気味悪がられ追い出されそうな雰囲気にもなりそうだが。
その研究施設の一室で一人の男性研究員が一心不乱にパソコン画面と格闘していた。
今日中に各部署から集められた膨大な量の実験データを纏め上げなければならないのだから無理も無い。
その部屋に一人の女性研究員が気配を悟られないようにあらゆる音を殺して入室する。
彼の方はまだ気がつく気配はない。
我慢出来なくなった彼女は、彼の背中をそっと人差し指で上から下へとなぞっていく。
その瞬間彼は弾かれた様に椅子から軽く飛び上がり後ろを振り向く。
「な、なんだ、君か。お早う。」
「お早う、エディ。……今日、またここに缶詰なの ? 」
「済まないけど所長の命令でねぇ。どうしても今日中にこいつを片付けなきゃいかんのさ。」
エディと呼ばれた彼は自分の両脇に、さながら摩天楼の様に聳えている書類とファイルの山をパンっと叩く。
彼女はそれを見て微笑みながらも不服そうに文句を言う。
「今日はあなたも私も非番だから、気分転換も兼ねて近場の海まで行こうって言ったじゃない、先週。」
それを言われてエディの手は気まずさのあまりぴたりと止まる。
しかし直ぐに何も無かったかのように指はキーボードの上を滑る様に動き始めた。
「あー、無理だよ。見てくれよ、この量。これだけでも大変なのに、今度発表しなきゃいけない例の計画の概要もやらなきゃいけないんだ。」
口調は残念であるという事をアピールしているが行動がそれに伴っていない。
女性は試しに彼の顔を横から目を逸らす事も、瞬きする事も無く見つめてみた。
始めは軽く無視を決め込んでいた彼だったが、やがてその愛くるしい視線と表情に耐え切れ無くなり彼女の方を向いて気弱そうに笑いながら話し始める。
「この計画が採用されれば生体CPUの常識はもう通用しなくなるんだよ ! 最小限の機材と費用で素晴らしい戦士を……」
「ええ、知ってるわ。あなたと知り合った頃から何度となく聞かされてきた事だから。
恐怖やストレスといった戦闘におけるあらゆるマイナス要因を、メンテナンス効果を持つ専用ベッドを使って調整する、通称『幻肢痛計画』。
投薬量や精神操作期間をこれまでの半分以下にし、尚且つ本人達の性格の原形を殆ど留めたままに出来るから、完成すれば直接プラントに侵入させて破壊活動を行う事も可能になる……でしょ ? 」
「ああ……」
自分の頭の中で思い描いている構想をそらですらすらと言ってのけた彼女を、エディは驚嘆の眼差しで見つめる。
と、同時に毎日吹聴していて悪くはなかったなとも思った。
少なくともこの共通の話題で関係は深まり、お互いの事をよく知ろうと思うきっかけになったのだから。
だがその後がいけなかった。
エディは再び何事も無かったかのようにパソコン画面に向き直り仕事を再開したからである。
彼女は頭を軽く抱えつつも、彼の耳元で優しい吐息混じりに囁く。
「私とその仕事とどっちが大事なの ? 」
その言葉にエディは目の前が真っ暗になった様に感じる。
悲しいかな男という生物は疑問形で提示された話題について、ついつい一方的に論理的思考で相手に畳みかけ、感情抜きにさっさと問題解決の為の具体案を出して話を終わらせようとするもの。
他愛もない話も大事だと感じ、感情込みで自分への同情を求める女性にとってはこれ程不愉快な話し方も無いものなのだが。
故にこの質問はどっちに答えても女性の術中に嵌るというある意味酷な質問だ。
それを知っていたエディは悩みに悩みぬいて……パソコンの電源をシャットアウトする。
662:Exceed4000 ◆mGmRyCfjPw
07/10/22 17:54:43
「僕の負けだ。今日はとことん付き合うよ。」
「寝台の中まで ? 」
「なっ !! それは無いだろ……」
意地の悪い質問に思わず顔を赤らめてしまうエディ。
その時女性研究員は彼の元に来たもう一つの理由を思い出し、俯いてしまった彼に向かって再び話しかける。
「あ、そうそう。あなたの開発セクターから一人配属が決定した子がいるそうよ。」
「うちのセクターから ? まさか。確かにうちのところはかなりの猛者揃いさ。でも皆ステージ4以降の連中だから使い物になるかどうか怪しいんだが……で、誰なんだい ? その子ってのは ? 」
「……ステファン・ヒルパート」
その名前を聞いた瞬間、エディの顔から血の気が一気に引く。
彼はその人物を知っていた。
ここでは一つのセクターで何人かの研究者が数人に分けた生体CPUを、交代で面倒を見るといったシステムを採っている為に、彼もその人物を担当した事があったのだ。
しかし正直言えばその感想は恐怖その物だった。
強化インプラントステージ5にまで差し掛かっていたその人物は、模擬戦に於いて常に刃物を利用して対戦相手の首を切りつけるという戦法を取っていた為に、
関係者からは「3H(スリーアッシュ:Head Hunter Hilpert)」という仇名さえ貰っていたからだ。
おまけに日常生活においても精神状態が常に不安定極まりなく、特定の薬数錠を数時間おきに服用しなければならない上に、
異常なまでに敵味方の区別無い排除行動に移ろうとする為、正直施設も匙を投げかけていた代物なのだ。
そんな人物、いや生体CPUを本気で採用しようというのだろうか ?
エディはその内容に暫くの間呆気に取られていたが、気を取り直して会話に戻る。
「そうか……あの子か。……やっと貰い手が見つかったんだな。」
「満足そうね。その様子じゃ手塩にかけた子だったっぽいけど。」
「人の事言えないんじゃないのか ? 君だってこの間ここから試験採用された子に母さんと呼ばせていたそうじゃないか。お互い思い入れは深くは出来ないな……」
エディは小さく溜め息を吐く。
この行為自体が非人道的だというのは十分に理解している。
この部屋を出て数ブロック先に行けば、これから生体CPUになるであろう子供達の阿鼻叫喚が聞こえてくるのだから。
だが戦闘に勝利する為には手段等選んでいる場合ではない。
相手も同じ様な化け物なのだからそれに比する力を持つ何かをぶつけなくてはいけないからだ。
全ての感情を押し殺して接しなければとても精神が持たない。
「もうっ ! しんみりしている場合じゃないでしょ ! さ、外に出て羽でも伸ばすわよ。」
「お、おい、そんなに腕を引っ張るなって……」
こんな場所でこんなシーンは呆れるほど不釣合いだ。
エディは頭の片隅でそう思う。
本当なら今話題にあがったヒルパートもこういう他人との心のふれ合いを楽しんでも良い年頃だ。
だがそれが許される事はない。
消耗品の一つでしかない生体CPUの彼女にそれを楽しむ時間も余裕も無いのだ。
つくづく自分の陣営が行っている事の業の深さを思いつつ、エディは彼女と共にその部屋を後にした。
663:Exceed4000 ◆mGmRyCfjPw
07/10/22 18:05:59
投下終了します。アークエンジェル降下地点と虎との位置、その間の距離把握にはgoogle earthが一役かってくれました。
最後の部分に関して:エディはオリジナルですが、女性研究員とアークエンジェルに配属が決まった強化人間は
種・種死本編で一応出ています(ホントにチョイ役でですが)。
気になる方は探してみては如何でしょう(コアなファンなら一瞬で分かるでしょうけど(汗))?
それではまた後程。
以前あるサイトにて書かれていた言葉
「男から見た男同士の友情と、女から見た男同士の友情は根本的な所から全て違う物だ。」
肝に銘じながら男キャラの友人との接し方を描いています。蛇足ですみません。
664:通常の名無しさんの3倍
07/10/22 21:59:17
女のほうは分かった、強化人間は微妙(名前を気にしなければ多分想像道理かな
ただエディの名前はいらなかったかな、その女の夫にでもすれば辻褄は合うと思うし
まあ投下乙、細かいところはちゃんと見直してくれ
665:通常の名無しさんの3倍
07/10/23 15:19:10
遅ればせながら乙!
666:通常の名無しさんの3倍
07/10/23 20:04:17
え、どこ?
ヒントキボンヌ
667:通常の名無しさんの3倍
07/10/23 20:48:59
ヒントもなにも答えかいてあるじゃん。
668:通常の名無しさんの3倍
07/10/23 22:45:02
580 :通常の名無しさんの3倍 [sage] :2007/09/19(水) 22:32:51 ID:???
まとめのX-seed◆mGmRyCfjPw氏の第3話をクリックしたら16話に繋がるんだがどうすれば良い?
581 :通常の名無しさんの3倍 [sage] :2007/09/20(木) 01:50:16 ID:???
>>580
修正すれば良い。
631 : ◆L1QckJlrlM [sage] :2007/10/13(土) 05:02:16 ID:???
皆様お久しぶりです
新たなる道の作者です。
前回投稿の次の日にサブを含めパソコンがクラッシュ、
ネットに繋ぐのに2ヶ月ほど掛かりました
現在内容を思い出してやっているのですが、
まとめサイトのほうが途中で切れていているのですが…
誰かあの切れている部分を持っている方はいないでしょうか?
あ、今ようやくトラとガロの2対2を書いています
投稿は…最悪でも今月中には…
それではよろしくお願いします
誰か過去ログ持ってるはいないんか?あとIDもちとか
669: ◆n/pJcmlREs
07/10/23 23:20:40
支援UPローダーに上げてみました。
おそらく不足分はこれでいいはず。
670: ◆L1QckJlrlM
07/10/24 01:59:22
出来ましたので順次投稿します
671:ガンダムXSEED 新たなる道 (作 ◆L1QckJlrlM
07/10/24 02:02:16
「キラ~、出来たか~!?」
ガロードとティファは帰って来た後一番にストライクの元へ向った。
「ずいぶん遅かったわね」
「心配したんだぞ?」
「わりぃわりぃ、ちょっとテロに巻き込まれて狐の所にお邪魔してたんだ」
ガロードがそう言うとフラガは一度首をかしげ、
狐と言うのがキラ達の間でバルドフェルドの事を指す事を思い出した。
「大丈夫…だったんだよな、傷はなさそうだし」
「まあな…」
「お帰りガロード、ティファ…今やっと試射が終わった所だよ」
「よし、これでまともに銃が撃てるな!」
ガロードはそう言うとガッツポーズをとり、
その格好をヘリオポリス残留組+フラガが見て笑った。
「なあ、私にもあれのシミュレーションさせてくれないか?」
その笑声の中にカガリが入ってきた。
672:ガンダムXSEED 新たなる道 (作 ◆L1QckJlrlM
07/10/24 02:06:22
「ううう…」
「む~…」
「はぁ~」
「ま、最初はそんなもんだ」
カガリだけではなくついでにとトールとミリアリアもジンの操縦シミュレーションを行ったが、
全員結果はグダグダに終わった。
フラガはそういって励ますが最初に行ったフラガもあまり変わらない成績だった事を追記する。
「な、ならこいつは!?」
カガリは諦めきれないと言ったふうにスカイグラスパーの方を指差すが、
そのカガリの襟首を屈強な男が掴み、ずるずるとその場を立ち去った。
「ちょ、こら! まだ話は…」
「いい加減にしろカガリ、お前は………」
なにやら言い争っているがどうやってもカガリは勝てないだろう。
まさしく大人と子供の構図である。
「…行っちゃったね」
「…うん」
その様子をガロード達はぽかんと見送った。
673:ガンダムXSEED 新たなる道 (作 ◆L1QckJlrlM
07/10/24 02:11:36
「腹ごしらえ腹ごしらえ♪」
「ん~…やっぱ、現地調達のもんな旨いねぇ」
ガロードとフラガは戦う前の腹ごしらえと言う風にケバブにかぶりついていた。
「すごい…」
「俺達はこれから戦いに行くんだぜ? 食っとかなきゃ、力でないでしょ」
「同感、戦闘中に腹減った~なんて行ってティファ一緒に落とされちゃたまらないからな!」
「けどこのケバブのソースはヨーグルトのが旨いぞぉ」
「オレはこっちのチリソースの方が好みだな」
「むむ…お嬢ちゃんはあんまり食べてないな?」
「ティファは基本的に小食だからな…食べ過ぎて動けなくなるのもまずいでしょ?」
「確かに、違いないな」
フラガはそう言うと笑った。
その次の瞬間少し遠くの方から爆音が聞こえてきた。
「うわ! 何だ? 爆発!?」
「砲撃…にしては爆発が大きいような」
そう言うと新しく入ってきたブリッジクルーの一人が走りながら来て状況を説明した。
674:ガンダムXSEED 新たなる道 (作 ◆L1QckJlrlM
07/10/24 02:14:31
「レジスタンスの罠は最初から解ってたらしいな」
「ま、あったらいいな、レベルだったし、逆に最初に潰してくれてラッキーじゃない?」
「そりゃそうだ」
そういってガロードとフラガは笑いあいながら格納庫へティファと共に向った。
「それで坊主! パックはどうするんだ!?」
「今回は地上の相手中心だから…ソードで! 後マシンガンと予備の弾も」
「解った!」
「それじゃおれは、1号機にランチャー、2号機にエールだ!
なんでって…換装するより、俺が乗り換えた方が早いからさ!」
「空の敵と臨時の補給は任せるぜ?」
「補給の方はともかく空の方は任せなさいって」
二人はそう言うと笑いあい、それぞれの相棒の中へ入っていった。
勿論ストライクの中にはティファがもう入っていて、
ガロードのサポートができるよう予備のキーボードとディスプレイを見て何度も手順を確認していた。
ティファは一度目を離しガロードに微笑むと、急に暗い顔になった。
「ティファ、どうしたんだ?」
「………駄目です」
ティファはそう言うと急いでブリッジへ通信を入れた。
675:ガンダムXSEED 新たなる道 (作 ◆L1QckJlrlM
07/10/24 02:17:46
「回り込まれているだと!?」
「はい…私達の背中を狙う殺意を感じます」
「背中…?」
「…レーダー、どうか!」
「撹乱が酷くてはっきりとは解りません!」
「辛うじて前方に大型熱量2……敵空母、及び駆逐艦と思われるものしか…」
「信じてくれよ! ティファはこういうのを事前に察知できるんだ!」
「しかし…」
マリューがそういい悩む中、ナタルが決断した。
「………解った、しかし今の現状ではまず前方の敵に集中しなければならん。
各員は常に後方からの奇襲に注意…今の現状ではこれが精一杯だ」
「いいのか!?」
「ナタル?」
「現状ではこちらの手が足りません。
この場合敵の策に乗ったと見せかけてこちらが動揺しなければ、
相手は戦力を無駄に分散させたと言うまでの事。
まずは目の前の敵を相手が奇襲する前に叩くのが上策かと」
「…解ったわ、
各員は常に後方から奇襲が来る事を警戒しつつ前方の敵の一秒でも早い排除を心がけよ」
「「「「「了解!!」」」」」
マリューがそう言うとそのことが艦内放送で流れた。
今のアークエンジェルはヘリオポリスからの避難民を乗せた船ではなく、
ヘリオポリスで傭兵を調達し、途中で兵を足した船である。
多少の不安は感じてもこの放送でパニックになる事はない。
676:ガンダムXSEED 新たなる道 (作 ◆L1QckJlrlM
07/10/24 02:20:40
「フラガ少佐機、発進位置へ。進路クリアー、フラガ少佐、どうぞ!」
「あいよ、取りあえず後ろの敵は見つかるまで無視って事だな!?」
「まずは目の前の敵を!」
「りょ~かい、ムー・ラ・フラガ、スカイグラスパー出るぞ!」
フラガはそう言うとアークエンジェルを飛び出していった。
「APU起動カタパルト、接続。
ストライカーパックはソード。
ソードストライカー、スタンバイ」
「行こう、ティファ」
「はい」
「システム、オールグリーン…続いてストライク、どうぞ!」
「「ソードストライク、行くぜ(行きます)!!」」
二人はそう言うと相手からの砲弾が降る中アークエンジェルから発進した。
677:ガンダムXSEED 新たなる道 (作 ◆L1QckJlrlM
07/10/24 02:24:15
「バクゥは?」
「…5機います」
ガロードがヘリをマシンガンとブーメランで撃ち落としながらティファに聞くと、
ティファはレーダーを見てそう応えた。
バクゥ隊は前に2機、後ろに3機のフォーメイションをとっていた。
そのうちの前衛2機のバクゥが前まではなかったビームサーベルを口に咥えて突っ込んできた。
それに対し右手に持つマシンガンで牽制し、
ガロードは左手のブーメランを戻して対艦刀「シュベルトゲーベル」を引き抜いた。
「ティファ、いくよ!」
「はい!」
ガロードはそう掛け声をかけるとマシンガンを腰に戻し対艦刀を両手に持った。
マシンガンを使う事により温存していたバルカンを牽制に使いつつ、
ガロードはバクゥ隊の中へ突っ込んでいった。
そのガロードへ後ろの方にいるバクゥ3機がこちらも牽制にミサイルを撃つが、
そのミサイルとバルカンが接触、爆発し視界が一時塞がった。
バクゥ達の前衛はその中へ突っ込んでいったがミサイルを装備するバクゥはその様子を見ていた。
しかしそれが仇となり煙から対艦刀を構えたストライクがそのバクゥへ文字道理飛んできた。
あまりの事にバクゥは反応できず、結果胴を対艦刀で両断され爆発した。
これに浮き足立った後ろ2機のうちに右のバクゥにストライクは左腕のアンカーを打ち込んだ。
打ち込まれたそれはバクゥの頭を掴み、振り回され反対側のバクゥにぶつけられた。
それだけで爆発はしないものの両者の衝撃はすさまじく、
動けない所へバルカンが撃たれ背中のミサイルコンテナに直撃、結果2機とも爆発した。
そこでようやく煙は晴れ、前にいたバクゥ二機はストライクへ再度襲い掛かった。
678:ガンダムXSEED 新たなる道 (作 ◆L1QckJlrlM
07/10/24 02:27:20
「戦況は?」
「ストライクがバクゥ隊と交戦、フラガ少佐がヘリを掃討後現在も駆逐艦へ砲撃をしています!」
「後ろにいるはずの敵は?」
「今だ発見…いえ、いました! 6時の方向に熱源! これは…駆逐艦クラスのものです!」
「ゴットフリート1番砲塔を後ろ駆逐艦へ限界まで回して!
アークエンジェルを1番砲塔が撃てる角度まで方向転換、2番砲塔は目の前の船に固定、
フラガ少佐に正確な位置のデータを送ってもらって! 狙いが出来た物から順に発射して!」
「りょ、了解!」
「艦長! それではローエングリン、バリアントが使えません!」
「ローエングリンは地表への汚染被害が大きすぎるわ!
今もなおレジスタンスがいる事を忘れないで。
それに後ろを突れるよりもまだ横からの方がましでしょ!?
今エンジン部をやられたらそれこそ的になるだけよ!」
「く…了解しました」
ナタルがそう言った次の瞬間後ろの駆逐艦が発砲したが、
マリューの狙い道理エンジン部への被弾は避けられた。
「く…被害状況は?」
「右側のバリアント破損! しかし艦の運航に影響はありません!!」
「ゴットフリートは双方とも砲撃中…あ、10時方向の敵駆逐艦沈黙しました!」
「ストライクがバクゥ隊を撃破! 現在アンノウンと戦闘を開始しています」
「アンノウン?」
「バクゥタイプのカスタム機です!」
「!? 3時方向の艦よりジンタイプ3機がこちらに向っています!」
「く…右側のスレッジハマーで対応して! フラガ少佐に救援を要請!」
「了解!」
679:ガンダムXSEED 新たなる道 (作 ◆L1QckJlrlM
07/10/24 02:29:49
「うわ!」
「坊主、大丈夫か!?」
ここは格納庫の中、被弾の振動でよろめいたキラをコジローが支えた。
「はい」
「離せ! 機体を遊ばせていられる状況か!こいつで出る!」
「待て! 死にに行くようなものだ!」
ちょうどその時、アークエンジェルに入っていたカガリがスカイグラスパーに乗ろうとしている。
それを整備員+カガリ付の大男+トール、ミリアリアが止めていた。
「大丈夫、今は皆を信じよう?」
キラも止めるのに加わるが、
「どこが大丈夫だ! 今アークエンジェルは囲まれているんだぞ!
ガロードも虎の相手でこっちまで手は回らないみたいだし、ここは私が…」
「虎?」
カガリの虎発言にキラは首をかしげるとトールが、
「ザフトの親玉の事だよ」
と教えるとキラはぽんと手を打った。
「それにこっち…うわ!」
格納庫がもう一度揺れ、カガリは体制を崩してスカイグラスパーから落ちた。
その時格納庫の扉が開いた。
680:ガンダムXSEED 新たなる道 (作 ◆L1QckJlrlM
07/10/24 02:32:25
「ブリッジ! 第一格納庫の扉が…え? フラガ少佐が来る!? 解った、すぐに準備する!」
マードックがブリッジに聞くとどうやらフラガが火力よりも足の速さを求め、
エールパックの付いたスカイグラスパーに乗り換えるのだそうだ。
マードックはすぐに整備員やトール達に再発進の準備の指示を出した。
それに応え整備員達は準備を始め終わる間際になってフラガが着艦した。
「おっさん準備は?」
「もうすぐ出来るよ!」
マードックはそう言うと格納庫内が一時騒然とした。
発射口前方に砂漠型のジン、ジンオーガが取り付いてきたからだ。
「くそ! こんな時に」
そのジンオーガはヘルダートの弾幕を抜けて来たせいで武器は落としているが、
その巨体を生かして道を塞ぎ例えそこで爆発させてもすぐに機体を発進させることはできなかった。
「くそ、どうすれば…」
「あ!」
その時キラはこの船にあるもう一つの存在に気がついた。
ジンオーガがゆっくりと格納庫の中に進入し始めると、コジロー達の後ろから駆動音がした。
「今度は何だ!?」
「あ、あれは…」
「そうか、でかしたぞ坊主!」
そこには実剣を構えたジンいた。
「うおおおおおお!!!」
そうキラが言いながらジンをジンオーガへ向けて突進させた。
素人そのものの動きは本来は簡単にかわせるそれである。
しかしそこは格納庫前の発射口、左右を壁に囲まれ満足にかわす事は出来なかった。
それでもジンオーガはかわそうとしたが、
ジンに捕まれ、ジンオーガは格納庫の外へジンもろとも出て行った。
681:ガンダムXSEED 新たなる道 (作 ◆L1QckJlrlM
07/10/24 02:34:59
「でかした坊主!」
「スカイグラスパー出るぞ!」
その隙にフラガは発進すると、まずはキラの援護とばかりに、
キラを囲むように動いていたジンオーガを上から狙い撃った。
熱対流の影響もキラが作ったソフトで修正されたその一撃は正確にジンオーガを貫通した。
「キラ! お前は速くアークエンジェルへ戻れ!」
「だ、だけど」
「こいつらは俺が…ってそうも言ってられないか!」
フラガは駆逐艦を見ながらそう言った。
艦前方の駆逐艦の撃墜はフラガが正確な敵艦の位置をアークエンジェルに送ったから出来たものである。
今も後方駆逐艦へゴットフリートを撃っているが至近弾だけで命中はない。
当れば悪くても中破にはなる一撃だが、熱対流の干渉だけでなく、
熱により光が屈折し、標準自体がずれているのだ。
なのでどうしても駆逐艦の近くによる必要がある。
「くそ…任せてもいいか?」
「はい…シミュレーターでは被弾は無しでしたから」
「…死ぬなよ」
「はい!」
フラガはそう言うと後方駆逐艦へ飛んでいった。
キラは己の腕が震えている事を自覚しつつも自分を奮い立たせた。
「ここは僕が…護る!」
682:ガンダムXSEED 新たなる道 (作 ◆L1QckJlrlM
07/10/24 03:19:19
「ティファ! 残弾は?」
「マシンガンは後マガジン1セット分、バルカンは残り30発…
エネルギーの消費は残り30%…そろそろイエローゾーンです」
ガロードとバルトフェルドの戦いはほぼ五分といって良い有様だった。
ストライクは左肩のブーメランを撃ち抜かれ、ラゴゥは右主翼を斬られている。
ガロードはせめて相手の射撃を潰そうとラゴゥの背中に攻撃するも、
マシンガンの弾は僅かにかするだけでその射撃機能は衰えない。
「くそ、このままじゃ…何か手は」
ガロードはそういいながら辺りを見渡し…そして思いついた。
「これなら…」
ガロードはそう言いラゴゥと睨み合いながらチャンスを待った。
そしてそれは意外にもすぐに訪れた。
レセップス方向からリニアレールガンが発射されたのだ。
位置はガロードがアークエンジェルを背に、ラゴゥがレセップスを背にしている。
つまりラゴゥにとってはその弾は完全に不意打ちだった。
当りはしないものの後ろからの至近弾はラゴゥの隙を作った。
「今だ!」
ガロードはそう言うとアンカーを発射、
ラゴゥは隙をつれて態勢を崩すもののそれでもそのアンカーを避ける。
ガロードは体制の崩れたラゴゥに最後の1セット分のマシンガンを撃ちつくした。
直撃こそ免れたまののマシンガンの弾は背中のビームキャノンを食らい尽し破壊する。
683:ガンダムXSEED 新たなる道 (作 ◆L1QckJlrlM
07/10/24 03:22:40
「まだまだ、これから!」
ガロードはそう言うとアンカーとその先についている残骸を一緒に引き戻した。
それはバクゥの残骸のようで、大きさはストライクの胴と同じくらいあり、
ガロードはそれをぶんぶんと振り回した。
実はガロードは面白半分でキットが開発したハンマーを練習していた時期がある。
結局実戦では使われなかったが、扱いはいまだに自分の体に染み付いている。
弾の無くなったマシンガンを捨て、ガロードはワイヤーを右手に持った。
ラゴゥはその姿に一時唖然としたが、気を取り直して自身が持つ最後の武器、
ビームサーベルを展開した。
光学兵器対質量兵器、ぶつけ合うと勿論光学兵器が勝つが、今この場では互角だった。
最初に動いたのはストライクのほうで、即席ハンマーをラゴゥヘ横殴りに飛ばした。
ラゴゥはそれを後退する事で避けるが、ハンマーが通り過ぎると同時に右足に衝撃が走った。
ガロードはハンマーを投げると同時に左手にナイフを装備していたのだ。
そのナイフはラゴゥの右足の間接部に食い込み、機能を停止させた。
さらに追い討ちをかけるように今度は真っ直ぐラゴゥへそのハンマーが放たれた。
「まさかこんな攻撃をするとはな、少年…しかし!」
それでもなおラゴゥは動き、そのハンマーをジャンプして飛び越え、
ビームサーベルでワイヤーを焼き切った。
ガロードは残ったワイヤーを巻き戻し、背中の対艦刀を引き抜いた。
両者は少しの間にらみ合うとまるで示し合わせたかのように同時に前へと突き進んだ。
684:ガンダムXSEED 新たなる道 (作 ◆L1QckJlrlM
07/10/24 03:26:01
「へへ、俺達の勝ちだな」
「そのようだね」
互いに突進をしたがそれは決して互角ではない。
ビームサーベルだけのラゴゥと対艦刀の他にバルカンさらにナイフが一つあるストライクでは、
突進の仕方も変わってくる。
ラゴゥは最後の一撃と突進したが、ストライクはバルカンを牽制に使いつつ突進した。
それに当りはしないものの、ラゴゥはそれで出遅れて結果頭を首から切断。
返す刃で右後ろ足をも切られ、崩れ落ちた。
「さあ、止めを刺したまえ」
「死にたいの?」
「それはごめんね」
直接通信で離すとどうやらラゴゥにはバルトフェルドの他にアイシャも乗っていたようだ。
「え?」
「アイシャ…さん?」
「おや?」
「あら?」
それに驚いて二人が声を出すと今度は反対にバルトフェルド達が驚いた。
てっきり乗っているのはガロードだけかと思っていたからである。
「おやおや、どうやら1対2じゃなくて2対2だったようだね」
「さながら恋人対決ね」
バルトフェルド達に言われ、顔を赤くしその場で黙るガロードとティファだった。
人生経験による先輩はやはり口がうまい例だろう。
結局この場は白けた為これ以上戦闘はせずに解散、
ガロードは結局止めを刺さずにアークエンジェルへ帰艦、
バルドフェルドはザフト残党と共にこの砂漠の地を脱出した。
685: ◆L1QckJlrlM
07/10/24 03:30:47
ここまで、途中規制もありましたが…
まだ原作通りなとこが何とも情けないですね。
オリジナルの展開はオーブの後になると思います。
取りあえず見放されぬよう頑張るので応援していただければ幸いです
686:通常の名無しさんの3倍
07/10/24 10:49:59
クロスオーバー倉庫がまた荒らされてる
トップから各作品へのリンクがウィルス入りページに飛ばされるように……
687:通常の名無しさんの3倍
07/10/24 13:22:49
>>686
荒らしてるのは手前だろ?
688:通常の名無しさんの3倍
07/10/24 15:48:59
>>686
ああ、確認した。デマだな。ウソだな。この卑怯者めが
689:通常の名無しさんの3倍
07/10/24 17:07:03
>>686
履歴には残ってても今はナントモナイ
よって>>686は荒らし決定
そもそも荒らしを報告した時点で荒らし
690:通常の名無しさんの3倍
07/10/24 21:02:46
ジンオーガって・・・ジンオーカーの事だよね?
えらく強そうなんだけど
691:641改め添削人B
07/10/24 21:13:33
>>669-670
まずはお二方にGJ、久しぶりという気がする
まずクロスアストレイ氏、貴方のSSの続きは気長に待ってる
シリアスなシーンの高さはGX氏よりピカイチだと思う、頑張ってほしい
まあGX氏のSSは種キャラが生長していく過程がX世界の流れと同時進行しているのが長所だろう
長く連載を続けていながら内容の質が落ちてないのが凄い、X運命氏が感激するのは当たり前かと今更ながらに思う
それで新たなる道氏へ、今回の投下は誤字が多すぎると感じた
フラガの名前は「ムウ」、砂漠戦のジンは「オーカー」という具合に
SSを全体的に見ると細かい描写が荒くて大雑把な感が否めない
しかし基本的な描写に深みがでれば良質のSSに化けると思っている、更なる飛躍に期待している
後俺のレスが気に入らない人はNGワードであぼーんしてくれ
俺は添削の人と違って配慮も遠慮もしないしできないから
692:通常の名無しさんの3倍
07/10/24 21:26:45
なんで他の職人氏と比較したがるの?
693:添削人B
07/10/24 22:02:32
>>692
別に比較している訳じゃない、説明が下手だから比較に見えてしまうだけだ
もっとまともな批評ができればとも思うが…
俺はどの職人諸氏のSSも好きだぞ?優劣を付けるつもりもない
誤解をさせるレスをして申し訳ないがね
694:通常の名無しさんの3倍
07/10/24 22:04:36
そうすることで自分が何かを成し遂げたかのような錯覚を得るのです。
695:添削人B
07/10/24 22:13:59
だからさ、添削の人も前に言ったけど結局自己満足でしかないから
気に入らなければスルーしてくれって言ったはずだけど?
696:通常の名無しさんの3倍
07/10/24 22:25:42
SSが投下されてるのにお前らはGJもいえないのか
俺はSSが読めれば添削なんてどうでもいいんだよ
お前ら落ち着けって
697:通常の名無しさんの3倍
07/10/24 22:29:50
久しぶりの投下にGJ!しかし最後のやつはニヤニヤしてたわw
698:通常の名無しさんの3倍
07/10/24 22:34:00
自己満足したいならチラシの裏にでも書いて即シュレッダーにでも突っ込んでろ
699:通常の名無しさんの3倍
07/10/24 22:34:40
それを何で兄弟スレで言わなかったんだ?
700:通常の名無しさんの3倍
07/10/24 22:37:12
>>699
ヒント:こっちにだけ生息している
701:通常の名無しさんの3倍
07/10/24 22:52:32
ということはGX氏のSSも読んでなかったって事だな
いや過去ログすら読んでないのか
とりあえずXスレの歴史
初代スレはただのネタスレ→コーヒー2杯目からGX氏が投下開始→三杯目の末期にX運命氏が連載スタート
四杯目の末期に五杯目がたったがGX氏は新スレを立ててX運命氏に花を持たせる→これが兄弟スレ
そして保守作品スタート→月の公転2週目へ→合流提案が出されて荒れかけたが保守氏がやんわりと抑える
*ちなみにこのころのスレは風景画9枚目
→GX氏が合流しないと発言し三週目へ突入するが00ショックからかスレが落ちる
でこのスレの>596からの流れになるわけだ
てかX運命見たことない人っているのかな、この中に
702:通常の名無しさんの3倍
07/10/24 23:14:27
最近の、それもこっちのしか読んでない人には関係ない話だからな。
そもそも公転スレの添削氏にこっちのも添削してもらうかどうか、って話が出たときに
荒れるからやめとけという声があってこっちのは添削しなかったはず。
その程度の配慮も遠慮もしないと公言するヤツが気に入らないならあぼーんしろとか
荒らしの開き直り以外何物でもない。
703:通常の名無しさんの3倍
07/10/24 23:17:43
とりあえず添削自重しろで言いじゃん
SSの余韻が台無しだ
704:通常の名無しさんの3倍
07/10/24 23:21:38
X本スレとかGX氏のSSをまとめてるサイトの人はこのスレをまとめに置いてくれるのかな?
どうなのまとめさん?みてますか~?
705:通常の名無しさんの3倍
07/10/24 23:23:53
いつからかGX-Pには保管されないようになってるよ。
なんか有った気がするが覚えてない。
あとX運命系は独立してしまってるのでこっちにもない。
706:通常の名無しさんの3倍
07/10/24 23:26:00
確か、鯖とあぼんの関係でX運命全盛期からこっちは保管されなくなった
じゃなかったっけ?
707: ◆L1QckJlrlM
07/10/24 23:43:08
あれ? てことはここはまとめサイトからも見放されてる?
708:通常の名無しさんの3倍
07/10/24 23:46:00
種クロスオーバー保管庫には作品のみ保管されてるけどな(手動で)。
709:通常の名無しさんの3倍
07/10/24 23:51:13
あうあう・・・
それに種クロスの方も私の奴切れてるし・・・
保存したの失ったから切れてるのが一話位はあるんだけど・・・
710:通常の名無しさんの3倍
07/10/24 23:55:49
>>707
GX-Pの管理人さんはX運命の外部掲示板の管理人してたのをご存じない?
あそこの管理でかなり磨り減ったから荒れやすい種世界ベース系のクロスを
収録しないでX世界系ベースのクロスに絞ってるのだよ、多分。
まあご本人の答えが全てだけどね。
711:通常の名無しさんの3倍
07/10/25 07:26:06
GX氏がここに投下したSSはGX-Pにおいてあるが
>GX-Pの管理人さんはX運命の外部掲示板の管理人してたのをご存じない?
これはしらなかった
712:通常の名無しさんの3倍
07/10/25 11:07:05
前の添削の人も当初はウザがられてたけど、比較的腰が低く
余計な事も極力言わないようにしてたからいつしか黙認されていったが
今度のはダメだろ、上から目線の長広舌や開き直りが臭い過ぎる。
総スルーされるかもという自覚があるんならそれこそチラ裏に書いてろ。
713:通常の名無しさんの3倍
07/10/25 18:54:06
おいおい、取りあえずGJを入れないか?
見てると作品ほっぽり出しているように見えるのは俺だけか?
取りあえず>>685GJ!!
後俺もそうだがネタを見てもスルーされるのって
下手な罵声よりも最もこたえるんだぞ?
そこを評価すれば職人ももっと増えると思うのはもしかして俺だけ?
取りあえずキラがなんか素人っぽいのに最初違和感があったがよく考えたら納得
こいつ実戦は幾つかやっても大抵コクピットに一緒にだれかいたもんな
操縦桿を持つ手が震えるのも解るな。
っと、長文失礼
714: ◆AWGx990A9U
07/10/25 21:37:13
SSのまとめについては>710さんの推測でほぼビンゴ
ログ自体は保存してあるのでうpしてきましたが
種ベースのSSは現時点では整理してうpする予定はないです
(ヒント:鯖容量)
715:通常の名無しさんの3倍
07/10/25 21:40:27
>まとめさん
このスレの過去ログはまとめに置いてくれるんですか?
716:通常の名無しさんの3倍
07/10/26 20:38:11
緊急浮上
717: ◆AWGx990A9U
07/10/26 20:51:05
>>715
風景画スレもうpしてある件
718: ◆L1QckJlrlM
07/10/27 00:48:18
ちょっと皆さんに質問です
原作ではエンジンに被弾したアークエンジェルですが
エンジンの修理にどれくらい掛かったんでしょう?
いや、私の所だと航行に支障がない副砲が一個大破だから
そのまま海に突っ込む事も出来ますし…
その事における時間的なラグも書けるしどうかなと思ったのですが…
ご意見あればよろしくお願いします
719:XSEED4000 ◆mGmRyCfjPw
07/10/27 11:28:08
携帯から失礼します。
32話以降の執筆が嫁並みに遅くなって申し訳御座いません。
続きは鋭意製作中ですので、もう少し待って下さい。
720:GX1/144 ◆nru729E2n2
07/10/27 23:19:58
>>719
OK、その間は私がネタ投下します…
3週間も間が空いてすいません。
なんせリアルで交通事故に遭いまして…(まぁこっちも相手も物損で済んだのですが)
721:GX1/144 ◆nru729E2n2
07/10/27 23:24:03
第七十一話『俺は俺のやり方でやり遂げる!!』(前編)
サクラは空を舞う2機のMSの戦う光景から目を離す事ができずにいた。MS同士の戦闘をテレビで見たことは何度もあるが、
実際に見るのは初めてである。
その光景は、彼女の現実とはかけ離れたとても幻想的で、それでいて激しいものであった。
「シン! お前は一体何を考えている!? なぜギルの考えがわからない!!?」
「議長のやり方で、本当に皆が笑えるのか!? それで本当に"誰もが幸せで、幸福に生きられる世界"が創れるって言うのか!」
2機のMSは空中を高速で移動しながら戦っていた。相手がライフルのトリガーを引けば回避行動を行い、すぐに反撃をする。
お互い相手の隙をうかがい、戦況はどちらに傾くことなく膠着していた。
「創れるさ! ディスティニープランの中で人は己を知り、自らのすすむべき道を知る! そして、満ち足りた最高の人生を歩くことになる!!」
レイの乗るレジェンドはディスティニーの動く先を予測しビームを放つ。
高速で移動しているディスティニーはそれを避ける事ができず、左肩に直撃を受ける。コックピット内を激しい揺れが襲う中、
シンは歯を食いしばってそれに耐えた。
「人間がなぜ戦争をやめられないか? それはすべての人間が己を知らず、道を知らず、自身の最大の"武器"を認識できていないからだ!!」
身体能力の高い者にはそれを有意義に使うことのできる役目を与え、計算や分析、発想や考え方など頭脳を使うことに
長けた者にはそれに適した仕事を与える。自らが得意とする物の中で同じような仲間と一緒に切磋琢磨し、それを磨く。
そして限界まで磨かれたそれは、本人にとって最大の武器となるのだ。
「獅子のような強い動物は滅多に牙をむかん! 最大の武器であるその牙が絶対に相手に通じると言う"自信"があるからな!!」
レジェンドの攻撃は次第に激しさを増していく。ディスティニーはそれを紙一重でかわしつつ、かわしきれない物は
ソリュドス・ブルゴールを展開して防いでいく。
徐々に激しくなる攻撃にシンはひたすら回避行動を続けた。
「どうしたシン! なぜ攻撃しない!? それとも、先日のフロスト大佐たちとの戦いで恐怖心でも芽生えたか!?」
「…ああ、怖いさ!」
シンの返答に、レイは自らの耳を疑った。彼の口から出てきたその言葉が、あまりに予想外だったのだ。
「…本気で、言っているのか?」
「ああ、本気だ。俺は怖い、そして弱い!」
ゾンダーエプタでの戦闘で機体はほぼ大破、どうにか修復できたものの、昨日のフロスト兄弟との戦いで自分の中にある
"戦いに対する恐怖"という物を改めて認識させられた。
「弱いからこそ、強くなりたいんだ!!」
そう言って、シンは回避から攻撃へ転じた
シンはレイの癖を考慮し、攻撃のスタイルを少し変化させる。ただ撃ち続けたところで攻撃は命中しない。
"相手の移動方向を予測して攻撃する"、もしくは"よけられない状況を作る"か。シンは後者を選んだ。
「うおおぉぉぉっ!!」
左手でフラッシュエッジ2をビームソードモードで構え、レジェンドに向かって切り込む。瞬間的な加速力ならば背面に
大きなドラグーンシステムを装備しているレジェンドに比べて翼状の推進システムを持つディスティニーが勝る。
しかしレイはそれを機体一つ分左へよけることで回避した。
722:GX1/144 ◆nru729E2n2
07/10/27 23:29:10
第七十一話『俺は俺のやり方でやり遂げる!!』(中編)
「なるほど、機体の瞬間的な加速力は上がっているな。だが、そんな使い方では俺には当たらん!」
横を通り抜けたディスティニーが体勢を立て直す前にレイはさらにビームを放つ。ディスティニーはそれを強引に進行方向を
変えることで回避する。再び距離の開いた2機は互いに牽制しながら空中を舞った。
「レイの選別眼はまったく鈍ってない…! だったら!」
シンは左手にフラッシュエッジ2を持たせたまま、再度機体をレジェンドめがけて加速させる。
正面から猪の様に突撃を試みるディスティニーにレイは先ほどと同じように機体一つ分左へ移動する。
その瞬間、シンはニヤリと笑った。
「もらった!!」
ディスティニーはレジェンドの正面を通過する寸前に進行方向に対して直角にスラスターを向けた。それまでのスピードと
別の方向から新たに加わった力により機体はきれいな半円の軌跡を描き、レジェンドの無防備な後ろを取た。
「な!?」
ディスティニーの予想外の動きにレイの反応は遅れる。
回避行動の成功を確信したあとに、このような形で裏切られるとは彼も予想していなかった。
しかもディスティニーがレジェンドに向けているのは右手に持っているビームライフル。
トリガーを引いてビームが発射されるのが先か、レジェンドが回避するのが先か。答えは明かだ。
機体はディスティニーからの攻撃の衝撃で大きく揺れる。損傷箇所は右ビームスパイクの接続部分。ドラグーンシステム全体に
ダメージを受けたわけではないが、接合部分を破壊された右のビームスパイクは機体から力なく離れ、下の湖へと落下した。
「チィッ!!」
唇を噛みつつレイは操縦桿を操り機体を安定させる。レイは間髪いれず追撃が来ると予想したが、予想に反して
ディスティニーは距離を置いて動きを止めていた。
「…なぜ今の攻撃で落とさなかった? 確実に仕留められたはずだ。」
「俺はお前を殺したくない。それだけだ。」
「偽善だな。戦士として互いに向かい合っていると言うのに、お前は敵に情けをかけると言うのか?」
「偽善でも何でも、俺は仲間のお前を殺したくないんだよ!」
「…やはりお前は弱くなったな! この世界に着てから!!」
パイロットの苛立ちをあらわすかのようにレジェンドは自らの僕をすべて解き放つ。
"灰狼の長"と呼ばれる所以、それは群れを成して狩をする狼と同じように、レジェンド自らをリーダーとした
"群れ"を持っているためである。
「今のお前にギルを守りきるだけの力は無い! そして、そんなお前はもう俺の仲間などではない!!」
8基のドラグーンと1基のビームスパイクがディスティニーに攻撃を開始する。前後左右、
さらに上と下からのオールレンジ攻撃をよけるためにディスティニーは空中を舞う。
「以前のお前は敵に容赦なくトリガーを引けていた。だがそれができなくなった今、お前はもう戦士としては使い物にならない!!」
「敵に銃を向けれる事がそんなにえらいことか!?」
回避行動で全方向に目を配りながらシンは叫んだ。
自ら望んだこととはいえ、人に銃を発射することは今でも恐ろしい。MS戦においてはそんな風に感じなかったが、
機体を大破させられたことで初めて"死ぬかもしれない"状況を体験した。自分が敵をあんな状態に追い込んでいる。
最後の一線を越えさせていることを思うと、"銃を持って敵を撃つ"と言う行為がどれほど重たく、
心を苦しめる行為かを改めて考えさせられた。
「ギルがそう判断したのなら、たとえ神が相手でも俺は銃を向ける!!」
「…そうかよ! 俺はお前ほど強くはなれない、けどな!!」
シンの中で、"何か"が弾けた。
「できないことは、できないってはっきり言うことはできる!!」
SEEDによって静かになった彼に呼応し、ディスティニーが右手のライフルを構え狙いを定める。銃口はまっすぐ上空を向いていた。
「そして、俺は俺のやり方でやり遂げる!!」
右手がトリガーを引く。ライフルから発射されたビームはまっすぐに上空に向かい、上から彼を狙っていたドラグーンに命中した。
723:GX1/144 ◆nru729E2n2
07/10/27 23:32:24
第七十一話『俺は俺のやり方でやり遂げる!!』(後編)
「やっぱり、起きたか…。」
ダイキは湖の方から響く轟音に顔をゆがめた。MSはその存在だけで争いを呼ぶ。乗っているものがどんなよい人間であっても、
"力"を持つということはそれだけで周りの不安をあおり、人々の心に影を落とすものだ。
2機のMSは上空を飛び回りながら激しい攻防を繰り広げている。ダイキから見て状況は五分と五分。赤い翼を持つ方の機体は
おそらく昼間出会った少年なのだろうが、期待の損傷などを考えると見事な戦いぶりだろう。
「とっととサクラを連れ戻した方がいいな。良い森だったんだが…。」
戦闘のおかげで森の中で火事が発生しているらしく、あたりに焦げ臭い匂いが充満している。
この森をでてどうしようか考えをめぐらせながらダイキは湖への道を走り出した。
サクラは空を飛びながら戦う2機のMSをじっと見つめていた。
外部スピーカーから聞こえる2人の話の内容は彼女の知っているものではない。
彼らの住んでいた地域で一体に何が行われていたのかはわからないが、シンが離反者であることは理解する事ができた。
「"誰もが幸福で幸せに生きることのできる世界"? "ディスティニー・プラン"? 一体、何があったって言うの…?」
彼女の中で次々と疑問符が浮かぶ中、2機の戦闘は続いていた。
『お前だけでできることなど、たかが知れているということをなぜわからない!?』
『数字で書かれた苦しんでいる100万人よりも、目の前で苦しんでいる1人を助けることほうがよっぽど現実的だよ!』
空中を飛んでいた金属製の板状のものがまた1基破壊される。これで4つ目、24回の射撃でようやくここまで減らす事ができた。
『世界の調和のために1人を殺すことなんてできない! そいつを殺すことでたとえ100億の人間が救えたとしても、
その1人がつらい思いをするなんて間違ってる!!』
シンの言葉にサクラの脳裏にある映像がよみがえった。いつの頃なのかよく覚えていない。
靄のかかったその映像の中には笑顔の裏に不安を隠した男の顔がある。
私は100億人の命よりこの子の命をとった…。
本当によかったのだろうか……?
男の口は、確かにそう動いていた。
724:通常の名無しさんの3倍
07/10/28 02:28:05
GX氏更新乙
725:通常の名無しさんの3倍
07/10/28 10:21:23
GX氏GJ!
しかし>>723の100万人は100億人の間違いでは?
というか交通事故・・・真面目に気を付けてください
726:通常の名無しさんの3倍
07/10/28 22:57:37
GX氏GJ
727:通常の名無しさんの3倍
07/10/28 23:53:20
おお! シンも秘技・ビット(ドラグーン)落としをマスターしたのか。
やったぜシン、これでおまえはキラはもちろんクルーゼすらもこえたぜw
728:通常の名無しさんの3倍
07/10/31 15:05:38
ドラグーンはベルティゴのビットより大きいから
まだガロードのが上じゃね?
そしてシンよ!さらなる上を目指すのだ!!
729:通常の名無しさんの3倍
07/10/31 23:51:38
ぶっちゃけ動かすだけなら誰でもできるドラグーンよりも
NTしか動かせんビットのほうが運動性に優れているだろうしな。
もっともベルディゴ以外でビットを装備しているMSが劇中存在しないので
シンもビット落としができるかどうかはもうわからんが。
730:CrossASTRAY ◆n/pJcmlREs
07/11/02 01:15:43
【第6話:些細な変化】
「似合ってるじゃないか」
からかい半分に笑いながら誰かが言う。
周りにいる人達もまた笑いをこらえられない人がいるらしく、笑い声がする。
「まだ伸びるんだからな!…多分、いや絶対だ!」
ずいぶんとあまる袖を振り回し、すねたようにガロードは言った。
多分をつけるあたり自分でも身長が伸びるのか心配らしい。
「まあ、そういうことにしておくさ」
「しておくってなんだよ。伸びるったら伸びるんだからな!」
近くにいたクルー達がガロードをからかい、
それを見ていたティファも楽しそうに微笑む。和気藹々とした雰囲気が周囲を包んでいた。
「困ったわ。いくらなんでもサイズが合わなすぎるわね。でも予備にはこのサイズしかないし」
しばらくの談笑の後、頬に片手を当てながら少し困ったような顔をしてメリオルがつぶやく。
今ガロードが来ている服はオルテュギア内にあった男性用の軍服の予備だ。
一般的な成人男性に合わせて作られたその服は、まだ少年であるガロードにとって大きいものであった。
拠点へと向かう以上部外者だと簡単に悟られないように偽装はしなくてはならない。
いくら上司が節穴とて偽装IDカードがあったとしても私服のままでは騙されはしないだろう。
だから、このだいぶあまる袖はあまり好ましくはなかった。
ほかのクルーたちも考えだす。自分たちの保身のためである以上の何かを胸に。
結局、制服を邪魔にならないように捲り上げ整備班のクルーに紛れ込み、
できるだけ基地の人間と出会わないように行動し、もしもの時はクルーたちがフォローする、という形を取ることとなった。
正直なところあまり安全と言える策ではなかったが、これ以上の案は出ることはなく到着してしまった。
余談だがティファも女性用の予備の制服を着用している。
こちらは成人女性用のサイズ自体がもともと男性用と比べて小さいため、それほど支障はなかった。
普段のゆったりとした服装とは違い、キッチリと着込こんだ彼女の姿はガロードにとってとても新鮮で、
いつもより短いスカートに思わず彼はうろたえてしまう。それは周りを湧かせるに一役買ったのであった。
731:CrossASTRAY ◆n/pJcmlREs
07/11/02 01:17:35
地球連合軍ユーラシア連邦所属の宇宙要塞アルテミス。
アルテミスの傘、あるいは傘と呼ばれる光波防御帯を基地の周囲に360度展開させることによって高い防御力を誇る要塞だ。
ハイペリオンに搭載されているアルミューレ・リュミエールはこれをMS用に改良したものである。
しかし、その防御力の高さが慢心を誘いザフト軍に襲撃され陥落し、傘は大破。
おまけに海賊の襲撃に対抗するため傭兵を雇うも、司令官ガルシアの失策―簡単に説明すれば、
雇った傭兵を敵に回してしまった事-により海賊に占拠されてしまう。今の傘はそのとき修理されたものだ。
その後連合の依頼により、アルテミスは傭兵サーペントテールの手で奪回される。
皮肉にも、彼らはガルシアが海賊の襲撃に対抗するために雇った傭兵たちであった。
そんな数奇な運命をたどるアルテミスの司令室において、司令官ジェラード・ガルシア少将は椅子を、
カナード・パルス特務兵は壁を背にピリピリとひどく張り詰めた空気をお互い作り出していた。
「で、キラ・ヤマトは見つかったのか?」
先に口を開いたのはスキンヘッドの中年。ガルシアだった。
「…いや」
呼び戻した理由がそのことを聞くためだけかと思うと、カナードは両腕を組みながら、ずいぶんと不機嫌な返事をしてしまっていた。
「役立たずが!」
司令室の机に叩きつけられたこぶしが大きな音を立て、
ガルシアはなかなか成果の上げられない―最もキラ・ヤマト関連に限定すればの話しだ―カナードを罵倒する。
もし呼び戻されなければ、キラ・ヤマトの情報を聞くことができたかもしれないというのに!
そうカナードは、表情を憎憎しげに歪める。無論、それを悟られさらに罵倒されるのを防ぐために若干うつむいて。
これは彼が学んだ少しでも自分を守るための数少ない方法のひとつ。
こんなときこの長い髪は、表情を少しでも隠しやすくしてくれるのだった。
「お前はユーラシア連邦によって拾われた身だぞ。働いて見せてこそお前の存在価値があるのだ」
恩着せがましいにもほどがある。カナードはそう思わずにはいられない。
ユーラシア連邦の対応は人間を"拾った"などという表現するのは正しいとは思えない。
表現するとすれば八つ当たりにするのにも丁度良い実験動物を"捕らえた"だ。
そう考えはじめてしまうと、理性ではわかっていても連鎖的に拭えない過去の苦しみが思考を満たし、
深く激しい憎悪の炎が燃えていく。油を注いだ火のように激しく容赦なく、全てを焼きつくすといわんばかりに燃え盛る。
この感情を爆発させることがなんの得にもならないことを思い出せなければ、
おそらく10分もしないうちに、この部屋に絞殺体、あるいは無残な撲殺体が転がっていたことだろう
732:CrossASTRAY ◆n/pJcmlREs
07/11/02 01:19:10
「わかっている!!」
憎悪に歪んだ鬼のような表情をしながら、彼はいつの間にか近寄っていたガルシアの机に拳を強く打ち付ける。
その表情は鬼と呼ぶにふさわしいものだった。小心者にとってこれ以上恐ろしいものはないかもしれない。
「お前に言われなくても奴は俺の手で仕留めて見せる」
「そ、そうしてくれ、オレもアイツには恨みがある」
ガルシアの声に強い動揺と怯えが混じる。かつて何度もカナードが自分に対して反抗的な態度をとったことはあった。
だがいつもとは違う、狂気的な憎悪が強く目に宿っていた。
だがガルシアがその理由を知ることは無い。
カナードがジャンク屋との遭遇を口にしない限り、己の出した命令のタイミングが非常に悪かったことを気づくことはできない。
カナードはその一件を口に出すつもりは欠片も無いのだ。
そして彼は己の失言にも気づくこともなかった。
「では次の作戦行動についてだが、我々ユーラシアの情報部が……」
机から取り出した資料を手に取り、ガルシアは命令を下そうとするが、
「なっ!何をする!!」
カナードはそれを奪い取ってしまった。冷たい視線を置き土産にして。
「情報だけよこせばいい。どう動けばいいかは俺が自分で決める」
すぐに冷たい視線をガルシアからはずし、カナードは資料に目を通す。
戦闘跡に出向いて新技術が施されたと思わしき残骸が有るので回収してこい、といったようなものだ。
正直たいして苦労するような内容ではない。
「貴様……上官に向かって……」
さすがにここまで自分勝手に振舞われたとなればガルシアのプライドが許さないらしく、怒りを面する。
しかし彼は怒りに任せた言葉をすんでで飲み込み、
「好きにしろ。だがあくまでも隠密行動だ。わきまえろよ!!」
カナードの振る舞いに目をつぶった。
それがガルシアにとって、カナード・パルスという人間を、上手く動かす現時点での最善の方法なのである。
本音としては、もっと言ってやらなくては怒りが収まらなかったが、
続ければおそらく数十分後、あるいは数分後に自分は死体として転がっているかもしれない。
怒りとともにありながら、頭はそんな身の危険を理解していた。
733:CrossASTRAY ◆n/pJcmlREs
07/11/02 01:21:11
「まったくコーディネイターというやつは…」
カナードが去り扉が閉まった音を聞き届け、飲み込んだ怒りを吐き出す。
一度飲み込んでしまったおかげか、吐き出しかけた言葉は呆れが混じっていた。
「最高のコーディネイターだかなんだか知らんが、本物を殺したからといって出来損ないは出来損ないだ」
その呆れ交じりの言葉からは、さらに酷く冷たいものが漏れ出す。
「人間というものは生まれ持ったモノを変えることなどできないのだからな」
そう、たとえ失敗作が成功体を殺したところで別々の人間なのだ。
成り代わることなど不可能なことだった。
そして、失敗作というレッテルを剥がそうにも、他人の嫉妬や劣等感により張られたこのレッテルは、
より歪んだ方向に強固なものとなってしまっていて、まず変わる事は無いだろう。
「まあいい…。利用価値があるうちは自由にさせておいてやるさ」
「お前、見ない顔だな」
要塞内部の格納庫の奥、整備点検中のハイペリオンの背中側。
そこで作業中強く肩をつかまれ振り返ったガロードに、一人の男が問いかける。
「え?あ、えーと…」
やはり大人の中に子供がいるという光景は要塞として、特に格納庫にいるというのは、非常に違和感があるものだ。
だからこそなるべく事情を知らない大人達が通る場所に出て行かないように手伝いをしていたのだが。
運悪く彼の目に留まってしまったらしい。
もしもちょうどいいサイズの制服さえあれば、彼は特に気にすることもなくこの場から去っていたかもしれない。
なぜなら仕事の邪魔だから袖をまくっていると言うよりは、子供が大人の服を背伸びして着ているという感じだったのだから。
だが、想定していなかった事態ではない。落ち着いて対処すれば深く探られることもなくこの場をやり過ごせたはずだったのだ。
しかし、いきなり後ろから話かけられると人間というものは焦りを隠せなくなってしまうようだ。
現にガロードの心臓はバクバクと言っているのを感じている。
結局考えていた返事も真っ白になり、変わりの返事もすぐに浮かばずしどろもどろになってしまった。
「IDを見せて貰おうか」
それで怪しいと判断されてしまったのか、ガロードはID提示を求められる、
威圧的なのも子供だと思ってのことだろう。もしこの男がIDを照合する機器やらなにやらを持っていたとすればアウトだ。
むしろそれ以上に、こんな状態ではこの要塞の責任者の前まで連れて行かれかねない。
734:CrossASTRAY ◆n/pJcmlREs
07/11/02 01:23:55
「おー、こんなトコにいたのか。探したぞ」
助け舟が出た。近くで作業していたアルコフだ。
近づいてきた彼はガロードの肩に腕を回すと、口の端を吊り上げてニィっと笑いながら言う。
「こいつ、俺の息子でね、この間戻ってきた時部隊に入ったんだ。こんな子供でも腕は確かなんだぜ。はは、親バカなんていうなよ?」
彼はガロードの頭をその大きな手でワシャワシャと撫でながらフォローという名の息子自慢をしていた。
あるいは、彼がやりたかったことなのかも知れない。
「何だ、あなたの息子だったんですか」
少し無理があるんじゃないかとガロードは思ったのだが、男は案外あっさりと納得してくれた。
アルコフが築いてきた信用の賜物だろう。
元の世界の仲間のジャミルもガンダムに乗って戦争に参加した歳が、
今の自分と同じくらいだったということを思えば、そこまでおかしいことじゃなかったのかもしれない。
ガロードは、結局自分のせいか、と思うと少し情けなくて悔しい気持ちになった。
「まあ、確かに最近少年兵が増えてきたとは聞きますけれども」
エイプリルフール・クライシス以来、年少者の軍人志願者が増えていて、最近になり少しずつある程度形になった少年兵が戦場へと出てきているらしい。
「そういうことさ。こいつも国のために戦いたいんだってよ。あんまりにうるせぇからな」
そんなことしたいなんて言ってない、一瞬で頭に血が上り、判断力の鈍ったガロードがそう声を張り上げようとしたとたん、
大きな手で頭の上から押さえつけられ、グリグリとかき乱される。嘘も方便だ、我慢しろといわんばかりに。
そのおかげですぐに判断力が戻り、事態をややこしくする事なく進む。
「でもですねえ、それだけ自慢されれば、親バカともいいたくなりますって。自分の子供を甘やかしすぎて損害を出さないでくださいよ?」
いつの間にか男は息子自慢に付き合ってアルコフと談笑していた。やれやれ、といったように肩をすくめて笑ったりしている。
そんな彼の表情を見ると先ほどまでの威圧的な態度が嘘のようだった。
「…信用されてんだな」
男の去る姿を見届けてからガロードはつぶやいた。
「伊達に長年軍にはいねぇってことさ」
亀の甲より年の功。もっともその言葉で表現するほど歳をとっているわけではないのだが。
年月を重ね彼が勝ち得た信用は、非常に強力な切り札となりガロードを救った。
ガロードもまた彼がオルテュギア内でも非常に信頼されていることは知っていたのだが、
改めて目の当たりにするとやはり本当に凄いことなのだと思わずにはいられない。
しかし今彼は基地の人間を、仲間を欺いたのだ。
それがばれてしまえば彼の信用は底の底まで落ちてしまうというのにガロードを助けるために嘘をついた。
信用とは、勝ち得ることは非常に難しく、失うことはあまりに簡単なものなのだ。
ガロードは罪悪感を感じずにはいられなかった。
「どうだ、どうせなら本格的に俺たちの仕事に混じってみねぇか?」
そんな罪悪感に駆られるガロードに突然アルコフは声をかけた。
今まで片付け程度の手伝いではなく、本格的に自分達の仕事をやらないか、と。
「ほ、本当にいいのか!?だったらやる!やらせてくれ!」
思わぬ申し出に、先ほどまでの罪悪感などどこかへと飛んでいってしまって、やや興奮気味にガロードは即答した。
「おいおい、少し静かにしろよ。俺たち以外の奴らに聞かれちゃまずいだろ?」
この大声を聞かれ、また別の者に怪しまれてはたまらない、と口の前で人差し指を立てガロードを制止する。
何故急にガロードが興奮気味になったのかはわからない。
よっぽどうれしかったのだろうとアルコフは解釈した。それだけで十分であった。
735:CrossASTRAY ◆n/pJcmlREs
07/11/02 01:25:59
「ゴ、ゴメン。でも何で」
あわてて謝り、理由を聞き出そうとする。
軍の機密事項であり、中でも優秀な人材たちを集めに集めた中だ。
彼らと出会ってまだ数日しか立っていない自分が、
本格的にそこにまじることを誘われるなど常識的には考えられないことだったからだ。
ガロードにとって実父と同じエンジニアになるという、戦災孤児になり生きるがためにあきらめかけていた夢が、
夢の入り口が、手を伸ばせば届く場所にある。だから彼は興奮せずにはいられない。
しかし、唐突に目の前に転がってきたこのチャンスは、
あまりに常識から逸脱していて飛びついて本当にいいのかどうか、彼は判断しかねていた。
―ダメな親の罪滅ぼしさ。
そう言いそうになりアルコフは、無理矢理咳払いをして止めた。直前に言い表せない罪悪感が頭の中を一瞬にして支配したからだ。
ガロードに対して父親のように振舞ったところで、実の息子が帰ってくるわけではないのだ、罪滅ぼしになどなりはしない。この罪は滅ぼせない。
そして何より、自分の息子と重ねることはガロード・ランという個人の蹂躙に過ぎないのではないかと頭によぎったからだ。
それでも彼は重ねずにはいられない。罪の意識がそうさせていた。
「いやなに、お前さんは教えがいがありそうだからな。ただの気まぐれ、深い意味はないさ」
もっともらしい理由など無いのだ。親として子に自分の仕事を継がせたい、そんな欲からの申し出なのだから。
ノーマルスーツを着用したカナードが戻ってきたのはそれから数十分後のことであった。
メリオルと彼の会話の内容によれば、準備さえ完了すればすぐにでも次の任務へと向かう事になったらしい。
さして他のクルーと話もせず、仏頂面のままカナードはハイペリオンのコックピットへ乗り込む。
その表情から察するに、司令が何か失言したのだろうと、クルーたちも話しかけることは無い。
触らぬ神に祟りなし、といったところだ。
ただ一人、ティファだけが彼の表情に中に隠れた怒りと苦しみ、そして小さな悲しみがぐちゃぐちゃに交じり合った心に気づき、悲しい表情を向けていた。
目を閉じればまぶたの裏に過去が映る。楽しい思い出などひとつも無い記憶が。
走馬灯のようによみがえるのは、後もう少しでこの苦しみを終わらせられる、という期待からなのだろうか?
ハイペリオンという刃を手にしたカナードは、その答えを出ださない。答えの先に自覚してはいけない何かがあったからだ。
「カナード特務兵。準備完了です、いつでも出られます」
声をかけられ目を開ければ、コックピットの外、そのすぐ横にメリオルがいた。
「わかった」
長い髪の毛を布で器用に纏め上げ、彼はヘルメットをかぶる。
「私たちも追って出ます。無茶はしないでください」
一瞬、メリオルの言葉の後半の意味が理解できなかった。
すぐに意味自体は理解はできたが、何故彼女が自分に対してそんなことを言うのかはわからなかった。
まだ彼にとって大人というものは大部分が憎たらしい存在であり、
かつ大人側もまた自分を道具として扱っているのだという感覚が強かったからだ。
勿論、オルテュギアのクルーのほぼ全員はすでに彼を道具として見てなどいない。
カナードの大人への強い不信感が生み出した被害妄想のひとつ。
それから数分のち、会話も思考もそこそこに終わらせ、出撃の準備は全て完了する。
「カナード・パルス。ハイペリオン出す!」
アルテミスから射出されたハイペリオンは、勢いよくバーニアで宇宙に光の線を描いた。
736:CrossASTRAY ◆n/pJcmlREs
07/11/02 01:28:49
投下終了です。
737:通常の名無しさんの3倍
07/11/02 07:25:40
>>736
久し振りの投下、GJ!!
オルテュギアのクルーってCE軍人じゃ珍しくいい人ばかりだな~。
なんかものすごく和む。
今後の展開が気になって仕方がないです。
あと連合の制服を着たガロード&ティファ、ちょっと見てみたいかも。
738:通常の名無しさんの3倍
07/11/02 08:51:47
アルコフとガロードの無くした親と子のやり取りがなんか哀しい
GJっした
739:通常の名無しさんの3倍
07/11/02 22:19:27
GJ!です
740:通常の名無しさんの3倍
07/11/03 12:11:46
GJ! このスレもまだまだいけるぜ!
741:通常の名無しさんの3倍
07/11/03 21:47:21
GJ!
742:通常の名無しさんの3倍
07/11/05 12:05:34
保守
743:通常の名無しさんの3倍
07/11/05 12:10:19
そういえばオルテュギアのクルーってXASTRAY終了後に軍を抜けて、そのまま傭兵部隊Xになったんだっけ?
744:通常の名無しさんの3倍
07/11/08 00:24:00
保守
745:通常の名無しさんの3倍
07/11/09 18:28:21
保守
746:通常の名無しさんの3倍
07/11/09 21:13:04
そうだよ>743
747:通常の名無しさんの3倍
07/11/10 21:40:03
URLリンク(www.youtube.com)
748:通常の名無しさんの3倍
07/11/10 21:49:30
また微妙な二番煎じを・・・
749:通常の名無しさんの3倍
07/11/10 22:32:01
ってかタイミング合わせとかしろよと