種・種死の世界にWキャラがやってきたら MISSION-07at SHAR
種・種死の世界にWキャラがやってきたら MISSION-07 - 暇つぶし2ch350:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/04 22:40:52
「皆さん、今度の事件を私は良い機会だと思っております」
 総会はいよいよ終盤を迎えていた。ジョゼフは最後の締めとして、熱弁を振るう。
「これからは地球もプラントも武器を捨て、対話による解決を目指す。それこそが平和へ
の大いなる一歩だと、私は確信しております!」
 議場から盛大な拍手が巻き起こる。あのジブリールでさえ拍手をしている。
 ジョゼフは満足しきっていた。時代は変わる、自分の理想、平和への道へと。時間は掛
かるかも知れない、しかし、それがなんだというのだ。時間をかけてえられる平和ほどあ
りがたい物はないではないか。
「皆さん、私は賛同してくださる皆さんを心から―」
 この時、ジョゼフはたった一つだけ、考え違いをしていた。
 確かに時代を変えることは可能だ。長い目で見て平和を作っていくことも、不可能では
ない。だが、世界を動かすにはもっと単純で、変革させるにはとても有効な手段があった。
それは、武力によるクーデターという物だった。

「……来たか!」
 宇宙より降下し、真っ直ぐとこちら向かってくる戦艦を確認したネオは、それが見知っ
た戦艦であることを知り苦笑した。
「つくづく縁があるらしいな……奴らとは」
「大佐、すぐに警報を出しますか?」
「いや、ギリギリまで待て……奴らに先に仕掛けされるんだ」
 その上で警報を流す。総会出席者は面食らって肝を冷やすだろう。
「ここまでは計画通り……後は時代が俺達を受け入れるかということだけだ」
 C.E73年10月末日。歴史は今、新たな時代を迎えようとしている。

                               つづく

351:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/04 22:42:09
第4話。
予定では今回で戦闘シーンまで持って行くつもりだったのですが、
予想以上に長くなったと感じたので、とりあえずはここまで。
この先の展開、このスレにいる皆さんはもう判っちゃったと思います。、
どうだったでしょうか?
今のところ全然活躍していないロッシェや、どこに行ったのかも定かではない
オデルですが、そのうち活躍予定なのでもうしばらくお待ち下さい。

352:通常の名無しさんの3倍
07/03/04 22:43:12
こ、これは流血へのシナリオ!?
GJ!

353:通常の名無しさんの3倍
07/03/04 22:57:25
GJ

コープランド大統領閣下の死亡フラグが強烈過ぎるw
彼がノベンタ元帥なわけだな

ジブリがトレーズでネオがレディ。

ミネルバ隊がテロリストのガンダムパイロット役と。

と言う事はシンが心ならずとも戦争への引き金を引いてしまう
ヒイロ役なわけですね!
続きが気になります

354:通常の名無しさんの3倍
07/03/04 23:30:34
GJ!
シンに特大のトラウマが出来そうな予感…
ガクブルしながら続きをまってます。

355:通常の名無しさんの3倍
07/03/05 01:14:15
あぁ~、これはなぁ~
ヒイロは自爆とか被害者家族のとこ行ったりしてたけど
シンは軍人だからそんなことできないしな……

356:通常の名無しさんの3倍
07/03/05 03:00:09
若者よ、早まるな...

357:通常の名無しさんの3倍
07/03/05 06:52:20
GJ!
しかしこの死亡フラグっぷりは・・・
大統領逃げて!超逃げて!
あぁでも、逃亡者は抹殺か・・・

358:通常の名無しさんの3倍
07/03/05 07:37:38
ハッ、早まるな、若者よ!
いやぁ、上手い上手い。これは実に上手い。GJです、

359:通常の名無しさんの3倍
07/03/05 10:20:13
しかしあくまで一テロリストに過ぎないW主人公ズはともかくとして、
国家の諜報機関だというのに騙され過ぎな無能っぷりと
シンですら想定出来ることを想像も出来ん最高評議会の無能っぷりがたまらんw
デスティニープランを全否定するわけじゃないが遺伝子で選別したの、
やっぱ拙かったんじゃない?と思っちゃうなww

360:通常の名無しさんの3倍
07/03/05 10:29:59
>>357
大統領には無限コンテナを持つパワードスーツがあるさ。

361:通常の名無しさんの3倍
07/03/05 12:44:02
テロに襲われる大統領といえばエアフォースワン
映画エアフォースワンみたいな大活躍してくれたら惚れる

362:通常の名無しさんの3倍
07/03/05 12:58:53
GJ!!
>>359
激しく同意!
デュランダルはDP云々以前に、こんなアホしか選別しないコンピュータを疑えよ。

363:通常の名無しさんの3倍
07/03/05 13:43:47
もしかしたら議長はこれをきっかけにDPの構想をボツにして新しいプランを考えたりして

364:通常の名無しさんの3倍
07/03/05 14:17:40
最高評議会の連中って、基本的にナチュ蔑視をいまだに強く持ってる典型的な高慢なエリートコーディだと思うんだよな
だから基本ナチュラルを舐めてるし、物事を自分達の都合良く運ぶもんだと考えてる節が見受けられる
シンはコーディの中でも唯一と言っていいほど、ナチュラルに対する偏見を全く持たない奴だから、かえって本質をとらえられたのかも

365:通常の名無しさんの3倍
07/03/05 17:03:17
>>364
シンが生まれながらのエリートじゃないのもあるけど、そこら辺はオーブで育ったお陰なんだろうな。
もう少し外交面に気を使えば、ナチュとコーディが共存している稀有な国として、
世界の目指すべき指標の一つにもなれただろうに、
自爆ショーなんてテロリストぐらいしか選択しちゃいけない選択を国家レベルでしちゃったからなぁ。
シンも絶望しちゃう筈だよ、ほんと。

366:通常の名無しさんの3倍
07/03/05 17:59:02
評議会の連中は仮に今回の事で戦争が起こっても『卑劣なナチュラル』に責任押し付けて終了な気がする。

367:通常の名無しさんの3倍
07/03/05 18:23:17
>>366
知識はあっても知恵が足りないのがプラント政界ということだ罠

368:通常の名無しさんの3倍
07/03/05 19:58:08
>>367
彼らは生粋の政治家じゃないからな、本業の片手間にやってるみたいなもんだ。

369:通常の名無しさんの3倍
07/03/05 20:20:14
>>368
そうだよな。プラント政界は遺伝子適性で選ばれるんだから
彼等が本業を持っているのは自然だよな。


考えて見たんだがプラントの諜報部は遺伝子適性関係あるのか?
ガチでオトリ情報に簡単に釣られる無能なんじゃね?

370:通常の名無しさんの3倍
07/03/05 20:25:45
>>365
そう言えば、ひとつ疑問に思ったんだけどさあ
シンってオーブの前は何処に住んでいたんだ?
総集編のPASTで「オーブに移り住んだ」って言ってるんだよね、シン
マユとの回想見るに、紅葉がある国で、しかも二人の年格好からすると、
戦争が起きるよりも然程離れてない時までそこに住んでたみたいなんだが

371:通常の名無しさんの3倍
07/03/05 20:54:56
にっぽーんじゃねーの?

372:通常の名無しさんの3倍
07/03/05 20:56:36
>>359
トレーズならともかくジブにしてやられるとはな…
Wにしたって五飛の情報元は偽の情報だと気づけたのに。

373:通常の名無しさんの3倍
07/03/05 22:32:39
GJ!!
まあまあ皆さん。
物語には踊らされる人たちも必要という事ですよ。
どっちにしろ、ピエロは踊り狂って舞台から落ち、必要な役者だけ残ります。

374:通常の名無しさんの3倍
07/03/05 22:38:46
トロワはきっと三回転半ひねりで戻ってきます。

375:W-SEED
07/03/06 00:37:47
キラがストライクのコックピットで調整を行っていると、通信が入った。
「よ~う、キラ。まだ怒ってんのか?」

「…デュオ。何の用?僕、今忙しいんだけど」

「いや、特に用はないけどよ、ま、落とされない様に気を付けろよ」
「僕が落とされる訳ないだろ?デュオこそ油断してやられたりしないでよね」

「…ちぇっ、ハイハイ!!じゃあまたなぁ」

デュオは要らぬ心配したと思って、通信を切った
「ま、確かにアイツなら落とされる事はなさそうだな」

キラがコックピットで調整を続けていると、また通信が入った

「よう、ボウズ!調子はどうだ?」

「ムゥさん、ハイ!調子は最高っす!ムゥさんは調子どうすか?」
「お、頼もしいねぇ!俺も調子は良いぜ。
…俺よぉ、好きな女が故郷にいんだ」

「はぁ、そうなんすか…」

「あぁ、だからさっさとこんな戦争終わらして帰りてえよな!
俺は死なねえ、…お前も死ぬなよ」

「ちょwムゥさん、めちゃくちゃフラグ立ってますってばww」

そして、けたたましく鳴るサイレン
ミリアリアから通信が入る
「キラ!発進よ!」

「わかった!キラ.ヤマト!ストライク発進します!」

まずはキラのストライクが発進した


376:W-SEED
07/03/06 00:41:26

「よっしゃあ!行くぜ相棒!」

続いてデュオが発進

「ムゥ.ラ.フラガ!ゼロ!行くぜ!…なっ!?」

ゼロが発進した瞬間、なんとストライクによってゼロはキャッチされた!

「な、何すんだ!?キラ!!」

「悪いけど、ムゥさんは今回は出ないで下さい!絶対墜とされる気がします!」

「何言ってんだ!!俺は大丈夫だ!いいから離せ!!」

「…しょうがないな。て一いっ!!!」

「ぬぅあ!!?」

なんとストライクがゼロのバーニアにパンチしたのだ!それによりバーニアは壊れ、ムゥは戦場に出れなくなった
「ちくしょう!このアホッたれ!」

「すいません!今度エロ本あげます!とりあえず今回は艦で待機してて下さい!」

「…ちっ、約束だぞ!」
ゼロはストライクによってアークエンジェルに運ばれて行った

「おいおい!無理するな~、お前!」

デュオがキラに通信をいれた

「死なれるよりは良いでしょ?」

「まぁ確かにそうだけどよ、
あぁ~あ!やっぱりお前なんかについて来るんじゃなかったなぁ!アイツ以上に無茶やるぜ!」

「デュオ、無駄口叩いてないでよね!来たよ」

「敵さんのおでましか、へへっ!
オラオラぁ!死神と疫病神のお通りだぁ!」



…to be contineud

377:W-SEED
07/03/06 02:00:29
アークエンジェルに向かう、アスラン、ニコル、ディアッか、イザーク、ヒイロ達
アスランが沈痛な顔で皆に通信を入れた

「…皆、聞いておいて欲しい事があるんだ」
「…めんどくせえな、何だよ、アスラン?」
ニコルがガムをくっちゃくっちゃしながら聞き返す
「ストライクのパイロットいるだろ?…あれコーディネーターだから」
「え…何でコーディネーターが連合にいるの?」
「一応、知り合いなんだ…。だから、」

「…墜として欲しくないという事か?だが、コーディネーターといえども敵なら、墜とさない訳にはいかないと自分思うぞ」

「ディアッかに賛成」
「いや、そうじゃないんだ」

「…え、と、じゃあどういう事?」

「危険なヤツなんだ、…だから見掛けたら 絶 対 に墜とそう。
墜とされる前に」

「何をそんなに恐れているのか知らんが、了解した」

「…居たぞ」

ニコルが言うと同時に各機は散開
バスター、ブリッツはアークエンジェルへ
イージス、デュエルはストライクへ
そして…
「ウイングゼロ!?
おいおい!!とゆう事は、おい!お前ヒイロか!?」


378:W-SEED
07/03/06 02:04:25

「…デスサイズ!?
デュオか?…お前もこの世界に飛ばされて来たのか」

「お前も来てやがったのか!そして、ザフトの傭兵か。へへっ!立場は違うけど考える事は同じだな!」

「カトルやトロワは来ていないのか?」

「さぁな、でも俺達が来てるって事はアイツらも来てる可能性高いと思うぜ?」

「お前は連合を調べろ。俺はザフトを調べる。アイツらが来てるなら、そのどちらかにはいるだろう」

「了ー解!じゃあ俺達は適当にやってるか」
「…元々は関係ない世界だ。あまり派手に暴れるな」

デュオとヒイロが話をしている間にストライクはすでにイージス、デュエルと交戦していた。
「キ イ ィ ラ ア ァ ァ!!!墜 ち ろぉぉ!!!!」

イージスがキモイ形に変わってスキュラを発射した
ストライクはそれを軽々かわすが、避けた所にデュエルがビームライフルを撃ち込んでくる
「墜ちて下さい!」

「ちぃっ!」
それをシールドで防ぎ、ビームライフルをデュエルに撃ち返すが、避けられた。そして今度はイージスがキモイ形を解除してビームサーベルで斬りかかってきた。
キラもビームサーベルで応戦する

「くそっ!くそっ!くそっ!ここでやらなきゃ、ここでやらなきゃ!」

「ふふふ、やぁ、アスラン」

「!?(バレてる!?)」
「急に転校するなんて酷いじゃないか。僕達 親 友 だったじゃない?」

「や、やぁ!キラか!うわーすごい偶然だねこんな所で会うなんて!げ、元気してた?」


379:W-SEED
07/03/06 02:11:43
「まぁ、とりあえず武器おろそうよ。それから話そう」

「あ、あぁ、そうだな」
イージスがビームサーベルを納める

「スキあり!!」

それを見逃すキラではなかった!イージスがビームサーベルを納めた瞬間、イージスの四肢を一瞬で斬りさいた!流石キラだぜ!グゥレイトォ!




…to be contineud

380:通常の名無しさんの3倍
07/03/06 02:13:32
GJ
いじめっ子キラと、イジメられっ子アスランに噴いたwww

381:通常の名無しさんの3倍
07/03/06 02:26:51
戦力低下によって自分の身の危険が増すのも省みず、死亡フラグ立てた兄貴を
守ろうとするだなんて、キラってばホントに優しいなーwww

ところでヒイロさんがナチュラルにごひを忘れている件

382:通常の名無しさんの3倍
07/03/06 02:44:11
キラかっこいいwww
超GJ!!

383:通常の名無しさんの3倍
07/03/06 11:28:34
こんな外道なキラ見たことない……GJ!!!!!

384:通常の名無しさんの3倍
07/03/06 14:41:04
ぶっちゃけ「君は君だ!彼じゃない!」→「今だ!!」と対して変わらんけどなw

385:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/06 16:26:51
投下します~

386:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/06 16:30:14
「艦長、地上表面、目標の基地が見えてきました!」
 降下を続けるミネルバの艦橋で、オペレーターのメイリン・ホークが報告をする。
「いよいよか……」
 タリアの副官であるアーサー・トラインが、来るべき戦いに眼を細め、シートから艦長
へ向き直った。
「艦長、予定通り有効射程に入り次第トリスタンの斉射、その後、地上用ミサイルパルジ
ファルで基地を牽制します」
「えぇ、よろしく頼むわ。初撃さえ成功すれば、流れはこちらが掴める。モビルスーツ隊
のほうも良いわね?」
 タリアは、既にモビルスーツに搭乗して待機中のパイロットたちに声をかける。
『えぇ、こちらは準備満タンですよ』
『最善を尽くします』
『…………』
 シンだけジッと黙っており、何も喋らない。タリアは何か言おうかとも思って、止めた。
どうも自分とシンはそりが合わない。軍人としても、部下としても、少々熱くなるところ
を除けば彼は優秀であり申し分はないのに、だ。シンがオーブからの移民者だからか? 
そうではないだろう、恐らく自分は彼の考え方が―
「艦長、間もなく有効射手に入ります!」
 アーサーの言葉に、タリアは自身の考えを取り払った。今は任務に集中すればいい、全
てはプラントの、議長のために。
「これよりミネルバは、地球連合軍基地の制圧作戦に入る。全砲門開放、トリスタン照準
…………撃てぇぇぇっ!!!」

 少し時間を戻して、場所はプラント。
 ロッシェが、自分にあてがわれた高級士官用官舎の一室で、着慣れぬ制服を整えていた。
「軍服を着るというのも久しぶりだが、赤とは……派手だな」
「そう? 結構、似合ってるわよ?」
 こちらは当然のように部屋のソファに腰掛けくつろいでいるミーア。
「なんたって元が良いもの。確かに白い方がもっと似合うと思うけど、あれは将官ようの
制服らしいから無理ね」
「まあ、緑よりはマシだと思っておこう……どうもあの色の制服は貧相だ」
「あら、緑服の人に失礼よ? 事実だけど」
 この時、どこぞで部下にお手製炒飯を振る舞っていた男がクシャミをした。
「でも、貴方が特務隊員になるなんて……議長も思いきったことをするのね」
「自分の目の届く範囲に私を置いて起きたいのだろう。妥当な判断だ」
「議長は、特務隊の解散も一時は考えていたそうよ? 平和な時代に、そんな不透明な直
属部隊は必要ないだろうって」
 ロッシェがデュランダルから行動の自由と引き替えに受けた条件は、特務隊フェイスへ
入ることだった。ある意味議長直属の部隊なので、ある程度自分の勝手と都合が効く、と
いうのが議長の言い分であったが、ロッシェはそれがかえって見え透いてるように思えた。
「しかし、議長は遅いな。約束の時間を既に30分以上も過ぎている」
「きっと、お忙しいのよ。それよりもこっちで一緒に紅茶でも飲みましょう」
 応接室での面会から数日、ロッシェはミーアに敬語を使うのを止めていた。それは、ミ
ーアが望んだことであり、ロッシェは女性の希望には添う男だった。

387:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/06 16:32:35
「それにしても、不思議なものだ……異世界とやらに来たかと思えば、いつの間にかこん
な制服を着るようになって」
「人生なんて、何が起こるかわからないものよ……私がそうだもの」
 言って、ミーアは少し寂しげな表情になった。気付けば自分も、いつの間にかラクス・
クラインになっていた。周りに流されたとは思っていないし、決断したのは自分だが、今
の生活は彼女にとって不思議であり不可解でもあった。
「時々、鏡を見るとね、思うことがあるのよ。『貴女は誰?』って」
 私は誰、ではない。
「人なんて、変われば変わるものよ。昨日までのあたしが、今日のあたしと同じとは限ら
ない。ロッシェだって、きっとそうよ」
「……確かに、その通りかも知れないな」
 まだミーアには話していないが、ロッシェも過去色々な経験をしてきた男だ。振り返れ
ば、彼の人生もなかなか波乱に満ちているように思えた。
「ねぇ、ロッシェ、あたし、あなたの過去が知りたいわ。あなたは一体どんな人生を歩ん
できたのかしら?」
「それなりに色々あったさ……して面白い話でもないが聞きたいなら今度ゆっくり話そう」
 それから暫くして、デュランダルがロッシェの部屋を尋ねてきた。その顔には疲れの色
がありありと浮かんでおり、まるでこの部屋に逃げ込んできた感じですらあった。
「まったく、冗談じゃない。アーモリーワンへの襲撃、ユニウス・セブンのテロ、異世界
からの客人ときて、今度はプラントへの攻撃だ。何も私が議長のときにここまで連続して
事件が起こらなくても良いじゃないかっ」
 デュランダルを知る者が聞けば、彼でもこんな情けない声を出すのかと目を丸くしただ
ろうが、幸いロッシェはデュランダルとそれほど付き合いが長いわけではなかった。
「色々大変だったようですね……なにがあったのです?」
「あぁ、それは……いや、その……」
 あくまで好奇心から尋ねたロッシェに、デュランダルは事件の説明をしかけるが、途中
で口をつぐんだ。国家の最重要機密を彼に漏らして良いのだろうかと。
「議長、彼はもうフェイスですわよ? 議長直属、腹心にお話しできませんの?」
 議長が来た途端、ミーアは彼女がいうとことの「ラクス様口調」になった。
「……それもそうだな。君の意見も聞きたいし、わかった、話そう」
 それから議長は、今回の核攻撃騒ぎについて、自分の進退問題が掛かっているという部
分を省き、ロッシェに説明した。ロッシェは途中相づちを打ちながら、ミーアは実感の沸
かない政治の話に退屈しながら聞いていた。
「馬鹿な、それで軍を派遣したというのですか?」
「あぁ、議会で可決されたからね……」
 声に苛立ちを含んでいるロッシェの反応に、デュランダルは困惑気味に答える。ロッシ
ェは呆れたように首を振ると、
「すぐに命令を撤回するか、連れ戻すかしたほうが良い。これは罠だ」
「なんだって!?」
「私は、よく知っているんですよ……これによく似た作戦をね」



             第5話「歴史への台頭」




388:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/06 16:34:38
 地球連合総会に対し、ザフト軍艦ミネルバが襲撃をしかけたのは、総会の議長役である
大西洋連邦大統領ジョゼフ・コープランドの演説が終わり、総会出席者が総立ちで拍手を
送る、まさにその時であった。
「な、なにごとだっ!?」
 衝撃に揺れる議場の中、ジョゼフは冷静さを失わずに状況確認を行った。そして、それ
はジョゼフが予想だにしない答えでもあった。
「ザフトが、ザフトがこの基地に襲撃をかけてきましたっ!」
「なんだと? 馬鹿な、何かの間違いではないのか!」
 しかし、議場のスクリーンに映し出された光景、ザフトの新造艦と最新のモビルスーツ
が基地に僅かに配備された防衛部隊と戦う姿を目の当たりにすると、さすがのジョゼフも
息を呑んで立ちつくすしかなかった。
「大統領閣下、ひとまず脱出なされたほうがいいのではありませんか?」
「ジブリール!」
 いつの間にか壇上まで着ていたジブリールは、つまらなそうにジョゼフに意見する。
「こんな状況でも、まだコーディネイターどもと和平などと言われるのであれば、尚更
死ぬわけには行きますまい」
「皮肉はいい……しかし、もっともな意見でもある」
「シャトルを用意してあります。どうぞお早く」
 これが運命の分かれ道であることを、ジョゼフはまだ知らない。

 基地との外では、ミネルバのモビルスーツ部隊が、基地防衛部隊と死闘を繰り広げて
いた。基地に配備されているのは旧式のダガーや、よくてダガーLであり、これは和平
に向けて議論する会議に、モビルスーツは極力排除したいというジョゼフの意向の現れ
でもあったが、それを知る由もないミネルバは、
「情報通り、大した兵力ではないわね」
 という感想であったという。
 モビルスーツ部隊のほうも、似たような感じで、
「ブルーコスモスといっても最新鋭機を持ってる訳じゃないのか……」
 そんなことを考えながら戦闘を行っていた。
『シン、敵の一機は重武装タイプだ。ミネルバを狙われるな』
「わかってる、すぐに墜とす」
 シンは、インパルスを敵の一団に突っ込ませ、接近戦によるドッグファイトをしかけ
た。インパルスはビームサーベルを抜き放つと、旧式のダガーを次々に斬り倒す。運動
性が違いすぎた。

389:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/06 16:36:33
「弱いな……そんなんじゃ俺は殺せないぞ」
 強襲型装備のダガーLがMk39低反動砲で砲撃をしかけてくる。それがどうした? こ
っちはVPS装甲だ。シンは正確な砲撃をしかけてくる敵に、構わず機体を突っ込ませた。
一見すると機体性能だけに頼った乱暴な戦い方に見えるが、攻撃を受けても向かってく
るというのは相対する敵にとってはかなり驚異的に映る。現にダガーLに乗っているパ
イロットは砲撃を物ともせず突っ込んでくるインパルスに恐れを成し、後退しようと機
体を動かしてしまった。
「遅いんだよ!」
 シンは敵の動揺を見て取り、機体を急加速させると一機にビームサーベルで貫いた。
至近距離での爆発が起こる、だが、インパルスは揺るがない。
「チッ、これならこの前のテロリストどものほうがまだ……」
 シンは戦いに高揚しすぎる。これは親友であるレイがことある事に言っていること
だが、戦い以外の場所では割と冷静な癖に、いざ戦いになると熱さで我を忘れるのが
シンだった。日頃ため込んでいる物も多いのだろう、彼の戦い方は苛烈だった。
「ん? あれは……シャトルか!」
 そして、その時は訪れた。インパルスのセンサーが今まさに基地から脱出するため、
飛び立とうとしているシャトルを発見した。レイとルナは他のモビルスーツを相手に
している。ならば自分が行くしかない!
「逃がすかぁぁぁぁぁっ!」
 シンは機体をシャトルに向けて突っ込ませる。それに乗っているのが、ブルーコス
モスのメンバーたちであることを信じて。

 飛び立つシャトルの中で総会出席者たちが一様に青い顔をしていた。事態が飲み込
めていない者がほとんどで、ジョゼフとて、それは例外ではなかった。
「私は諦めない……こんなことで和平への道が閉ざされたは思わん」
 確かに和平への道は閉ざされはしないだろう、閉ざされるのは別のものだ。そして
ジョゼフは閉ざされるその時まで、地球とプラントの平和について、考えていた。
「う、うわぁぁぁっ!」
 シャトルに乗っている誰かが叫んだ。ザフトのモビルスーツが一機、ビームサーベ
ル片手に飛び込んでくる。
「早まるなザフト、早まるな若者よ……私は君たちと―」
 ジョゼフ・コープランドの言葉は、最後まで発せられることは、永遠になかった。


390:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/06 16:38:40
 シンは、僅かなためらいもなく、軍人として任務を遂行した。『逃亡』するブルーコス
モスのシャトルをビームサーベルで両断し、爆散させたのだ。
「ミネルバ、こちらインパルス、シン・アスカ。逃亡寸前のシャトルを破壊した」
『こちらミネルバ、了解した。レイとルナマリアも敵部隊を殲滅しつつある、シンもそち
らの援護に回ってくれ』
「シン・アスカ了解。すぐに援護に……なんだ? 上空からモビルスーツ? 増援か!」
 シンは、飛来するモビルスーツに向けてビームライフルの標準を固定するが、それは敵
ではなかった。真っ直ぐこちらに向かってくるその機体は、VPS装甲最硬のレッド。シンも
よく知るインパルスの兄弟機……
「ZGMF-X23S……セイバーだって!? 完成してたのか」
 その紛れもないザフトの機体は、ミネルバの前に浮遊し、
『ミネルバ及び所属のパイロットに次ぐ、ただちに戦闘を止めろ! 俺はザフト軍ハイネ・
ヴェステンフルス。議長からの特命を受けてやってきた。いいか、今すぐ戦闘をやめろ!』
 そう声高に叫んだ。
「戦闘を止めろですって? どういうこと?」
 タリアが怪訝そうな表情で問い返すが、ハイネはかなり興奮しているのか、怒鳴り散ら
すように、
『敵の情報は偽りだったんだ! いいか、俺らザフトも、そしてお前らも敵の作戦に踊ら
されて、連合の和平論者たちを一掃しちまったんだよ!』
「なんですって!? そ、そんな馬鹿な話が!」
『嘘だと思うなら、一般回線を開いてみろ!』
 そのやりとりを聞いてたシンは慌ててインパルスの一般回線を開いた。映像では悲壮感
漂う面持ちで演説をするジブリールの姿があった。
『今日我々は、大西洋連邦大統領ジョゼフ・コープランド氏の主導もと、プラント、しい
てはコーディネイターとの和平に向けての総会を行っていました。しかし、卑劣なるザフ
ト軍は、何の前触れもなくこれを襲撃し、ジョゼフ・コープランド氏を始めとする平和を
願う人々は殺されたのです!』
 シャトルを両断するインパルスの映像が映る。シンは自分の身体から血の気が引いてゆ
くのを実感した。
『我々はザフトを、プラントを、コーディネイターを許さない! 我らが平和の使徒ジョ
ゼフ・コープランドを奪ったその報い、その身で受けるがいい! 青き清浄なる世界のた
めにっ!』
 演説はそこで終わった。
 誰が見ても、どう見ても、ザフトに比があると思うだろう。
「そんな馬鹿な……こんな、こんなことが」
 シンはコクピット内で頭を抱えた。猛烈な嘔吐感が全身を駆けめぐる。殺した、殺して
しまった。平和を、平和を願っていた、なんの罪もない民間人を、
 自分が殺してしまった!!!!
「う、う、うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!!」
 シンは、発狂した。


391:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/06 16:39:41
「シン……! ねぇ、レイ、あたしたち……」
 発狂するシンの声が聞こえたのか、ルナマリアはレイに回線を繋いだ。
『一杯食わされた……で済む問題じゃないな。軍の命令とはいえ、俺達は民間人を虐殺し
たことになる』
「そんなのって!」
『どう弁解したところで、もうどうにもならん……しかし目下のところ、その話は後だ。
敵が来るぞ』
「えっ!?」
 レイに言われて、ルナマリアも気付いた。上空に物凄い数のモビルスーツ反応がある。
「これって……」
『どうやら敵は始めからこのつもりだったらしいな。この数を相手に切り抜けるのは難
しいぞ』
 言いながら、レイは考える。センサーの反応だけでも数十機のモビルスーツ部隊がこ
ちらに向かってきている。恐らく今度は先ほどまでの敵とは比べものにならないほどの
部隊が来る。
(さっきの演説をしていたのはブルーコスモスの盟主ロード・ジブリール……来るのは
ファントムペインか!)


392:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/06 16:41:27
 地球連合軍パナマ宇宙港。
 ここは今、戦場になっていた。
「反乱だと? 一体どこの部隊だ!」
「判りません、ですが基地守備部隊は全滅させられました!」
「馬鹿な、このパナマには常時三十機以上のモビルスーツが警戒に当たっているんだぞ!」
 基地指令は悲鳴に近い声を上げ、状況確認を急いだ。司令室の大型スクリーンに基地全
体の様子を映し出す。
「こ、これは……!」
 画面には三機の特徴的なモビルスーツが、パナマ基地守備部隊を蹴散らしていた。
「この機体……奴ら、ファントムペインか!」
 画面上の三機、カオス、アビス、ガイアは三位一体のフォーメーションを取りながら、
前進し、向かい来るモビルスーツ部隊を蹴散らしていた。隊長代理を務めるスティング
は、モビルスーツを撃破しながらも、正確な指令を各個に飛ばす。
「ウィンダム隊は、空中からミサイル攻撃をしかけろ。間違ってもマスドライバーを傷
つけるなよ?」
『了解!』
「良い返事だ……そぉら、いけぇっ!」
 スティングの指示と共に、ジェットストライカー装備のウィンダム部隊が次々と基地
にミサイル攻撃をしかけてゆく。基地も対空砲で応戦するのだが、ジェットストライカ
ーのスピードについて行けてないのだ。
「アウル、ステラ、今のうちにモビルスーツ隊を全滅させるぞ!」
『ハイハイ』
『わかった』
 三位一体で進むスティングたちは、カオスが空中から敵モビルスーツ隊を威嚇、アビ
スの一斉射でこれを破壊し、残った敵をガイアが接近し、叩く。この三連撃の前に、パ
ナマを守備するモビルスーツたちは為す術無く敗れていった。
「己、ファントムペインがぁ!」
 守備部隊の隊長機がガイアに向かって斬りかかってゆく。部下を失い、既に自分一機
となった彼は、せめて一人でも多くの敵を倒したかった。
「……そんなんじゃダメ。全然ダメ」
 しかし、ガイアに乗るステラ・ルーシェは無情だった。隊長機の命をかけた一撃も、
あっさり防ぐと、MA形態になり、グリフォンブレードで機体を切り裂いた。
「弱い、ステラと戦うには、弱すぎる」


393:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/06 16:42:44
 地球軍ビクトリア宇宙港。
 ここもまたファントムペインによる襲撃を受けていた。
「クーデターだと! ファントムペインめ、遂に化けの皮が剥がれたか!」
 自らモビルスーツに乗り込み応戦に出た基地司令官は、モビルスーツ部隊を指揮し、果
敢にもファントムペインに戦いを挑んだ。
『違うな……』
「!?」
 だが、それは無謀なる行為だったのだろう。彼はファントムペインを常々警戒してはい
たが、その実力までは理解していなかったのである。
『皮が剥がれたのではない、自ら脱ぎ捨てたんだ』
「き、貴様は!」
『時代は変わる、時代は俺達ファントムペインのものになるそうだ』
 まるで他人事のような呟き、そしてその呟きこそビクトリア基地司令官の聞いた、最後
の声だった。彼の乗るモビルスーツは、二本の対艦刀に両断された。
「こちら、スウェン・カル・バヤン。敵隊長機を破壊した」


394:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/06 16:43:43
 地球軍アルザッヘル月基地。
 基地は、『突然現れた戦艦』の攻撃を受け、早くも窮地に陥っていた。
「ミラージュコロイド……ダイダロスのガーティールーか!」
 ガーティールーを始めとしたダイダロス所属の戦艦が、容赦ない砲撃をアルザッヘル基
地へとしかけてくる。集中的に艦艇の発射口を潰され、アルザッヘルはモビルスーツのみ
での対応に迫られた。
「スローターダガー隊、アルザッヘルのモビルスーツ部隊を蹴散らせ」
 部隊を指揮するガーティールー艦長イアン・リーは、冷静に指示を出し、艦をアルザッ
ヘル司令部へと向かわせる。
「偽の演習計画にあっさり騙されるとは……アルザッヘルの危機管理能力は低いな」
 過日、ザフト軍諜報部が確認したダイダロス基地での動きというのは、アルザッヘルに
向けての進行準備だったのだ。無論アルザッヘルに対しては演習という嘘の情報を伝えた
のだが、それを信じ切ったためにこうして奇襲を受けてしまった。
「敵がザフトだけだと思っているから、こうなるのだ」
「艦長、敵の抵抗が沈黙しつつあります」
「よし、六連装ゴットーフリート標準。目標敵基地司令部……撃てっ!」
 強力なガーティールーの主砲連射を前に、アルザッヘル基地司令部は一溜まりもな
く壊滅した。


395:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/06 16:45:27
「パナマ、ビクトリア、アルザッヘル、それぞれ陥落しました」
 総会出席者のシャトルを囮に、優々と脱出したジブリールは、次々と制圧されてゆく連
合軍基地の名前を聞きながら、卑しくほくそ笑んでいた。
「後は、ガルンナハンとスエズ、ヘンブンズベースは今暫く掛かるかな?」
 その時、丁度スエズ基地陥落の報も入った。最早ジブリールは笑いが止まらなかった。
「なんだ、歯ごたえのない。ここまで順調に事が進むと、かえって怖いぐらいだ」
 実に簡単な作戦であった。
 まず、ザフトに対して虚偽の情報を流す。虚偽といっても、極めて真実味が高く、
秘匿性の高い情報を、如何にも「気付かぬうちに漏らしてしまった」という風に、
向こうに気付かせる。そして、これ見よがしにダイダロスの艦隊で陽動をかけ、ザ
フトを焦ら、それと同時に、こちらは地球連合軍の主要基地への襲撃計画を進める。
 ザフトが偽の情報に踊らされ、総会出席を始末すれば後は仕上げだ。全世界中継
にてザフトを断罪し、同じくして基地制圧指令を出す。混乱に常時、ファントムペ
インが連合軍の全体を制圧することが出来る……まったく、上手すぎる作戦だった。
「アズラエル……悔しかろう。お前に出来なかったことを、私はやってのけたのだ」
 今は亡き旧敵に、ジブリールはフッと笑いかける。それは勝利の笑みであった。


396:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/06 16:47:46
「くっ、なんて数なの!」
 ルナマリアは、ザクの長距離砲を発射しながら苛立ち叫んだ。今彼女は途方もない数の
モビルスーツ部隊に襲われていた。
『無駄口を叩いている暇があるか!』
 レイの叱咤が飛ぶ。レイのほうはもっと大変だった。彼は『戦えなくなった』親友を守
りながら戦っているのだ。インパルスは、シン・アスカは戦意を完全に喪失していた。
「まずい、このままでは……ミネルバ、ミネルバ、撤退を要請する。これ以上は無理だ!」
 レイはビーム突撃銃を乱射しながら、ミネルバに回線を繋いだ。一方のミネルバも、次々
に飛来するモビルスーツ部隊に苦戦を強いられていた。
「撤退ですって?」
 タリアはレイの進言に驚いたが、クルーたちはこの絶望的状況にいくらかの希望を見出
した。そうだ、何もこのまま戦い続けることはない、撤退という選択もあるではないか。
「冗談じゃないわ! 言い様に敵に乗せられ、踊らされ、このままおめおめ逃げ帰れって
いうの?」
 だが、タリアには意地があった。彼女のプライドは今やズタズタで、このまま敵に一矢
報いることも出来ず逃げるなど、到底不可能だった。そんな艦長の心理を読んだのか、副
官のアーサーが冷静な意見を出す。
「しかし、艦長。依然として敵は増え続けています。このままではモビルスーツ隊は全滅
し、ミネルバも……」
「だったら何か策を考えなさい! 貴方は副官でしょう!」
 タリアは怒鳴り散らすと、ギリッと歯ぎしりをした。負けるわけにはいかない。女だて
ら艦長をやっているのだ、ここで負けなどすれば……
『艦長、俺も撤退に賛成しますよ』
 その時、それまでモビルスーツ撃破に勤しんでいたハイネが通信回線を開いてきた。
『あんたが面子やプライドに拘るのは勝手だが、あんたは軍人で、しかも艦長だ。自己威
信に部下を巻き込むな』
「他の部隊の人間が偉そうに!」
『艦長席に座ってるからって自分を偉いと勘違いしている人よりはマシだ』
 ダンッと、タリアは椅子を叩いた。誰がどう見ても、ハイネの言い分が正しかった。
「……タンホイザー起動」
「艦長!?」
「勘違いしないで、陽電子砲を敵の中心部に放ち、その隙にモビルスーツ隊を回収。全速
力でこの場を離脱します。ハイネ、悪いけど援護を頼むわ」
『任されましょう!』
 もうどうにもならなかった。ミネルバはただ、逃げるしかない。逃げて、逃げて、逃げ
切るしかないのだ。何故なら彼らは、民間人殺しの大罪人なのだから。

                               つづく


397:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/06 16:49:49
第5話です。
私の作品は、「種死世界で、Wの出来事が置き換えられないか?」
という思いつきから構想し始めたものです。
偶然にも、ファントムペインはOZに、ロゴスはロームフェラ財団に
似た性質を持っていると感じて、試行錯誤の上、置き換えてみまし
た。私の作品はWのキャラこそ出てきますが、どちらかと言えば、
「種死世界で、Wをやってみよう」という感じなのかも知れません。
クロススレですし、Wキャラの活躍がもっと見たい人にはあまり面
白くないかも知れませんが、こういう作品もある、という目で見て
いただけると幸いです。


398:通常の名無しさんの3倍
07/03/06 17:04:36
面白い試みだとは思う
ただ、話に無理が出そうな気がするのが不安材料

399:通常の名無しさんの3倍
07/03/06 17:06:29
GJ!

400:通常の名無しさんの3倍
07/03/06 17:12:59
おお、スウェンが登場している!

401:通常の名無しさんの3倍
07/03/06 17:30:01
スウェンが出るという事は、ジェスとかアグニスとかも出てくるのかな?

402:通常の名無しさんの3倍
07/03/06 18:53:44
作者にはあまり出てきて欲しくないな

とりあえずGJ!

403:通常の名無しさんの3倍
07/03/06 19:02:32 EO8a0YfM
GJ!!
ZAFTも評議会の連中も、『頭のいい馬鹿』らしく見事に踊ってくれましたが、
やはり、ジブリールの脚本と演出が光る一幕でした

「秘匿性の高い=真実」という思考に、技術はあっても経験や知恵に欠ける
コーディ特有の『素人臭さ』―ゴルゴ13で、欺瞞にかかって全滅したIRAの
ハッカーどもに通じる滑稽さ―が在って、実に愉しませて頂きました

<勝手に予告>
賢者達は奈落に落ち、愚かな女神と折れし勇者は罪に惑う
悲劇で喜劇な前座は終わり、騎士と歌姫の舞踏が始まる
『運命の歌姫』―舞い降りる騎士―

*あくまで、これは嘘予告であり、職人氏に対する要求はなんらありません

404:通常の名無しさんの3倍
07/03/06 19:37:49
GJ!
種自体、嫁が自分のお気に入りの品からパクッた継接ぎの物ですから、似ているのは当たり前と言うべきでしょうか…
ただ種には、パクリ元みたいに一本骨が通ってないから、かなり難しいですね。
頑張ってください!!

デュランダルはさらに時代の波に揉まれていく事でしょう。
まあ、幸運が無いわけでもないでしょうから、何とかなるとは思いますが。
今回の攻撃にも反対してますから、先見の明があることを他に示せた訳ですし。
とりあえず、心休まる暇無いであろう彼に幸あれ……

タリア君…無能だなぁ。
>「勘違いしないで、陽電子砲を敵の中心部に放ち、その隙にモビルスーツ隊を回収。全速
>力でこの場を離脱します。ハイネ、悪いけど援護を頼むわ」
いくらなんでもコレは拙いだろう。
既に悪役に認定されているからって、これはちょっと。
……アーサーが何気に有能っぽいから、彼に任せた方がいい気がする。

さて、地球を手に入れた(に近い)ジブリールはトレーズ様になれるでしょうか……

405:通常の名無しさんの3倍
07/03/06 19:46:00
GJ!!
ミネルバ隊、ザフト上層部が失態を隠すためのスケープゴートにされるかも……(独断でやったとか)
それが無かったとしても、ザフト内部じゃ憎まれるだろうなぁ。

406:通常の名無しさんの3倍
07/03/06 20:03:29
なんとなく桜多吾作のグレートマジンガーを思い出してきたよ…
クロスでここまで社会的苦境に追い込まれるミネルバ隊というのも珍しいな。
例えばX運命のオーブクーデターの場合、立場が苦しくても読み手が感情移入できる
道義的正当性がまだあったわけだが今回はそれすらも厳しい。
またW本編ならそれぞれ個々の才覚で道を切り開いていったがなまじ軍部隊単位だと
かえって身動きも取りにくいだろうしどうなる?


407:通常の名無しさんの3倍
07/03/06 22:32:06
GJ!
>「……タンホイザー起動」
この件で議長の頭痛の種がさらに増えそうな悪寒。
地上で陽電子砲は拙いでしょう。
ミネルバ隊はあらゆる意味で追い込まれそうだ。

408:通常の名無しさんの3倍
07/03/06 23:42:07
endless destiny氏2ch撤退のお知らせ。
詳しくは語るスレをどうぞ。

409:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 00:36:14
ちょっと連合内部の対立情勢がよく分からんな
このクーデターはブルコス主義とは関係ないのか?
原作では、大西洋連邦と対立する親プラント派のユーラシアを
黙らせようとベルリン襲撃を行った図式があったけど
こっちの場合、アルザッヘルやパナマのブルコス主義者も
まとめて一掃しちゃったんじゃね?
アニメ以上に内部に敵作りすぎだろ・・・常識的に考えて・・・



410:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 01:57:24
>>407
デス種ではきれいな陽電子砲になったんです。

411:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 01:57:42
まぁリアルでもナチスが似たような事やったし。

412:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 02:07:47
>>409
SSではこの時期のアルザッヘルやパナマがブルコスじゃないって設定なんだろ。
原作だって最初からブルコスが支配してたわけじゃないかもしれないし。

413:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 02:15:52
ロッソとネロの登場マダー?

414:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 04:20:18
>>408
語るスレってどこよ?

415:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 07:33:17
新シャアのSSを語ろう その5
スレリンク(shar板)


416:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 07:58:29
そうか……おやめになるのか。
まあ、荒れたからなぁ……

417:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 09:39:38
マリューは無能だったけど、自分が無能なのを自覚してるし周囲の連中が優秀だったので、それに応えるべく頑張ってた
タリアは無能だが、周囲がそれ以上の無能ばかりなので、自分が優秀だと勘違いしてる

418:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 11:45:11
つうかヒイロでさえあれだったんだ、シンでは再起不能間違いなしだな。

419:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 11:59:51
>>409
その辺はWと同じなんじゃね?
OZの後ろにロームフェラがいて、彼らが自分達で直接時代を動かしたいがためにOZを蜂起させたように
ファントムペインやジブリールはロゴスの意向を受けてやったって感じじゃないか?
対立は確かに起こるだろうけど、多分連合軍とだけなんじゃないかな。
最初の宣伝段階で、民衆の意識操作は終ってるし、必要な所にはロゴスが根回ししてあるだろうし。
敵を作りすぎだ、ってのは賛成だがなw
Wと違う点は、ジブリールが何となく全て自分の力って思ってるぽい所か……

420:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 12:17:07
>>409
明確にブルコス主義者だったのはダイダロスだろう。

421:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 14:42:23
>>419
この職人さんは「種死世界で、Wをやってみよう」
でストーリーを作っているようなので、このままシン再起不能放置はないでしょ
ただ、復活までにはW-DESTINY以上に時間がかかるだろうが・・・

422:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 14:44:04
ゼクス役は誰?
ネオでは役者不足

423:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 14:58:31
中の人は一緒だけどな!

424:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 15:15:38
まぁ中の人は某宗教団体の某アニメ映画で1人12役やったほどの剛の者だしな。

425:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 16:46:52
国防委員長は退陣かなあ?

426:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 16:59:14
そもそも、テロならともかくれっきとした国軍(建前上は軍じゃないそうだが)が、
自国と同等以上の規模の他国の軍事基地を、平時にいきなり強襲って、
どう考えても有り得ないと思うんだが・・・
仮にこれが情報通りロゴスのメンバーの会議だったとしても大問題だ。

427:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 17:23:12
攻撃に賛成した者は責任を取って退陣、ってな感じが一番簡単だが、権力にしがみついてる奴がいるとするなら、そう簡単には事は運ばんだろうな。
つーか、彼ら疑問に思わなかったのかな?
自分達のやり口がブルーコスモスにそっくりだって事を。

428:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 17:39:50
>>426
それどころか実際は、プラント正規軍が無断侵入して
和平派の大西洋連邦大統領及び地球各国の主要メンバーを皆殺しだからなあ。

429:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 17:54:24
>>421
シンが復活までにとりそうな行動は
1、精神不安定なりながらも戦端が開いてしまったので戦う
2、自分のやったことが許せなく、プラントを捨てW原作のヒイロのように謝罪しに行く
3、重度の精神障害で病院逝き(何
ぐらいかな?

430:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 18:24:32
シンはヒイロほど精神強そうじゃない上に
軍人の自分が平和主義の民間人虐殺ってもろに家族が死んだ時のトラウマに抵触した状態だからきついわな

431:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 18:27:38
自殺未遂はするかも知れんな

432:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 18:34:10
今の状況を一行で説明すると……ザフトは宣戦布告もせずに他国の基地に攻撃を仕掛けた、でいいのか?

433:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 19:48:39
>>429
2は身軽に動けるヒイロと違って、敵対国の職業軍人で単独行動能力に乏しいシンでは無理だな。

434:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 20:03:30
デュランダルがミリアルド、ジブリールがトレーズとすると、
リリーナがラクス、サンクキングダムがオーブになるのか?

435:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 20:07:07
ミーアとロッシェの立ち位置が気になる

436:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 20:18:02
イゼルローン要塞奪取で調子に乗って帝国領侵攻作戦などという愚行を
強行したものの、アムリッツァ会戦で完膚なきまでに叩き潰されて
退陣に追い込まれた同盟のサンフォード政権を髣髴とさせるな。
その際本来主戦派ながら作戦の無謀さを見越してわざと反対票を投じていた
トリューニヒトがまんまと権力を握ったように、今回のギルも政治生命を
拾った事になるわけだが、将兵も国民も手駒にしか考えないトリュ公と違って
ミネルバ隊に思惑や思い入れもあるだけに素直に喜べないか…どうすんのかね。

437:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 20:19:37
なんせ和平会議に殴りこんで地球最強国家の国家元首殺したからなあ。

438:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 20:58:22
最初から出番のあるミーアの方がリリーナ化しそうだと思うがな。ラクス?ドロシーじゃねえ。

439:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 21:03:03
作者氏GJ!!!でした。

>>437
しかも言い訳のしようが無い形でな。
仮に「ブルーコスモスに嵌められた証拠」なんかを出したとしても「でも実際に殺したのはオメーらだろ」で終っちゃうし。

今回の件はプラントの「情報」に関する考え方の甘さが露呈した形になったな。
これを何とかしないとまた嵌められる事になる。(一朝一夕でどうにかできる事じゃないけどね)

440:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 21:09:21
>>438
ラクスの場合ドロシーのような皮肉や嫌味とは違い
天然電波だからミーアとの対比が気になるな。

441:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 21:21:56
て事はキラはカトルか
アヒャってストフリで暴れるわけだな



・・・いいかもしれない

442:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 21:23:57
>>441
キラはアヒャってなくても大暴れな件について。

443:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 21:27:08
カトル父=カガリ
で死亡すればピッタリだな
資金もMSの開発能力もありそうだし

444:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 21:30:10
>>442
いや偽善者キラじゃなく、アヒャって見境なくぶち殺しまくるキラが見たい
無印種で地球降下直後のキラがそのままアヒャったようなのを

445:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 21:40:21
とりあえずシンをはじめとしたミネルバ隊をプラントがどう扱うかが問題だよなあ。

446:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 21:40:26
>>444
それをやる理由が奴には無い。
特殊学級部隊襲撃を理由にして見るのが頭に浮かんだが、無差別破壊をやる理由としては弱すぎるような気がする。
キラにとってフレイと同位置な存在が現れて、その子をカトルの親父みたいな理由で殺されたりしたら、納得できるような出来ないような……

まあ、俺らが決める事じゃないな。
妄想だけにしとこうぜ。

447:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 21:43:30
このシンはさすが綺麗ごとはアスハのお家芸~って言いそうにないな
もう自分もアスハの同類だって落ち込みそう

448:446
07/03/07 21:46:34
ごめんなさい。
上げてしまったOTZ

449:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 21:46:42
おまいら運命の歌姫氏が描くエレガントなジブリタンに期待汁

ジブリにスポットが当たるSSはレアだからなぁ

450:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 21:52:28
亡国のサンクキングダム⇒亡国のオーブ

理想をひたすら訴える点では、リリーナとカガリは立ち位置が似ているな。

むしろキラこそがゼクスっぽい

本編の比較をしてしまうとryだがそこの描写も期待

451:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 21:52:30
>>446
ストフリにPXシステム搭載。

452:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 22:06:13
>>451 ゼロシステムじゃないのか?

453:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 22:41:32
シンは査問会ものか?でも正式な命令だしなあ。

454:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 22:42:55
>>450
立ち位置だけだなw
片方は口だけ、もう片方は理想を現実に近づけるための行動・努力をしてる。

キラがゼクスってのはちょっと……
元々ゼクスがOZに入ったのって、復讐が目的だったわけでして。(元ネタがシャアだしね)
キラは今現在、復讐するような相手はいないぞ?
戦いや兵器を否定してるから、カトル的な位置にいるって言った方が、ある意味合ってると思うよ。

まあ、似ているっていてもキャラに関しては殆ど立ち位置だけだから。
職人氏がそれを元に新しい、そしてwktkするストーリーを組み上げてくれるさ。

455:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 22:46:49
>>451
ガンダムユニットにPXシステムなんてのがあったと思う。
いまいち仕組みがよくわからんけど。
ただ、使いこなせない人が使うとわりと悲劇。
漫画の中では「寒い、寒いよ」なんて言って死んでいったパイロットがいたような記憶がちらりと。

456:455
07/03/07 22:48:17
失礼。
>>451じゃなくて>>452だった。

457:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 23:04:43
PXシステムは強制種割れみたいなもんだと思われ
システムに対応してないバーネット兄弟以外が使用したから
精神崩壊した感じだったような

458:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 23:05:38
制限時間ぶっちぎっちゃったんじゃなかったっけ。

459:通常の名無しさんの3倍
07/03/08 09:25:01
このバトルアサルトってので詳しい事知ってる人いない?
URLリンク(www.youtube.com)
URLリンク(www.youtube.com)

460:通常の名無しさんの3倍
07/03/08 10:56:43
>>459

たぶん海外だけの発売だと思う

461:通常の名無しさんの3倍
07/03/08 11:00:44
>>459

URLリンク(en.wikipedia.org)

462:運命の歌姫 ◆9nFmr8.w9I
07/03/08 12:25:12
さて、9話目も書き上がったし、こっそり昼間に投下するか。

463:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/08 12:27:09
やば、トリップ打ち間違えた。

464:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/08 12:30:47
 ……最終的な事件名を『ザフトによる地球連合和平総会襲撃事件』と平凡な呼称にする
こととした一連の事件は、ザフトによる総会襲撃の隙をついたファントムペインのクーデ
ターが全面成功したという結果に終わった。連合軍は、パナマ、ビクトリアを始めとした
宇宙港と、スエズ、ガルナハン、アルザッヘル等、重要な戦略基地をファントムペインに
奪われ、今や最高司令部を持つヘブンズベースを残すのみとなった。ヘブンズベースは現
在も抵抗を続けているが、陥落は時間の問題であろう。
 一方でプラントは、偽の情報に踊らされたとはいえ、大西洋連邦大統領ジョゼフ・コー
プランドを始めとした地球連合各国の平和論者を殺害してしまった。外交当局は総会出席
者のリストを全てチェックして青くなったという。出席者は誰も彼もが政治家や軍関係の
大物であり、ほとんどが親プラント派だったのである。
 取り返しの付かない失態を犯してしまったプラント最高評議会と軍部には、地球の各国
を始めとし、プラント市民からも激烈な非難と批判を浴びせられた。敵の偽情報を鵜呑み
にした国防委員会や、作戦を承認した最高評議会議員は、その怒りの矛先を一身に受け、
叩きのめされた。
「しかし、我々は敵にいいように利用されただけなのだ。現に地球ではファントムペイン
なる部隊の反乱が起きているし、一概に我々が悪いとは言えないのではないか」
 国防委員会には、委員長を始めとし、このように自己弁護をするものも居たが、
「利用されたのは事実だが、なんの罪もない人々を殺してしまい、自分たちが悪くないと
はどの口が言うのか。数十名に登る平和を目指す識者たちを皆殺しにし、残された遺族た
ちのことも考えず、利用されたのだから仕方ないと、お前らは本当に言い切るのか!」
 このように詰め寄られ、沈黙するしかなかった。ナチュラルの命など何とも思わない一
部の差別主義者以外は、なんの罪もない人々を殺してしまったという事実に、心が折れた
のである。
 プラント最高評議会メンバーは全員、辞表を提出した。しかし、この難局に政府のトッ
プを一度に全て辞めさせるわけにも行かないので、今回の作戦に反対票を投じた極少数の
議員は、その見識を認められ、最高評議会議長であるギルバート・デュランダルはこれま
で通りその役職に就くこととなった。
 デュランダルは自分の首が繋がった結果に対し喜び、不謹慎ながらも祝杯を挙げていた。
これで夢に一歩近づいた。暫定的な各委員長代理の人事を自ら行えば、最高評議会は自分
の意のままに動かしてゆくことが出来るであろう。
 ザフトでは、総司令官と他3名が辞任し、また、虚偽の情報を鵜呑みにした諜報部にも処
罰が下った。
 議長の命令で作戦中止を伝えにミネルバへ赴いたハイネは、カーペンタリア基地からプ
ラントに帰還し、正式に『ZGMF-X23S セイバー』のパイロットになった。元々、大気圏降
下が可能な高速機がセイバーしかなかったためにセイバーで現場に向かったのだが、ハイ
ネとしては良い意味で拾い物を得たと思っている。
 ミネルバの処遇についてはすぐに決定しなかった。
 実際に作戦を実行したのは彼らであるが、彼らは軍人として、上層部の命令を聞いただ
けに過ぎない。軍人である以上、上の命令は絶対であり、そのことで彼らを非難すること
は出来ない。情報の真意を見定めるのも、命令を下すのも、彼らではないのだから。
 デュランダルは、ミネルバに対し、「彼らは命令に忠実であり、それは軍人としてはあ
るべき姿だ。そのことで彼らを処罰するのは余りにも酷ではないか」と発言し、現場に駆
けつけたハイネも「あいつ等は軍人としての責務を全うしただけだ」と擁護した。
 いっぽうで、やはり実働部隊という事実もあり、非難や批判があることも無視できない。
しかし、裁かれるべきが彼らに命令を下した政治家や、軍上層部だというのならば、既に
処分は決定しており、これ以上の咎は必要ないようにも思えた。



465:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/08 12:32:32
 処遇が定まらない間、ミネルバはカーペンタリア基地での謹慎ということになった。基
地内の移動であれば自由であったが、クルーやパイロットたちはなるべく艦内にいた。今
回の事件に対してのジャーナリズムの反応もそうであったが、彼らは味方であるザフト兵
からも『民間人殺しのミネルバ』と、白眼視されていたのだ。
 中にはミネルバを激昂し、時に慰める者も居たが、ザフトとプラント、しいてはコーディ
ネイター全体に泥を塗ったという言葉は、ミネルバクルーたちの気持ちを挫かせた。
 特に実際、総会出席者のシャトルを手にかけてしまったシン・アスカは酷く落ち込んで
おり、同室のレイが、彼をしばらく一人にしておいたほうが良いと部屋を一時移ったぐら
いである。もちろん、早まった行動を起こさせないように監視は付けていたが。
 そうしたレイの気遣いに、多少の落ち着きを取り戻したのか、シンは三日三晩部屋に籠
もった後、やっと外に出たのだが、ミネルバオペレーター、メイリン・ホークが久方ぶり
に外に出たシンと最初に遭遇した際に、その酷い有様に声もかけられなかったという。
 そうした状況が続く中、ミネルバの件は決定なきまま有耶無耶になって行く。
 何故ならば、ヘブンズベース攻略戦を展開していたファントムペインが、大胆な作戦で
遂に同基地を陥落させ、プラントに対しての宣戦布告を進めていたからである。



           第6話「ヘブンズベースを攻略せよ」




466:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/08 12:35:13
 ヘブンズベースは、大西洋北部アイスランド島にある、地球連合軍最高司令部である。
前大戦で、統合最高司令部JOSH-Aを失った連合軍の新たな本拠地であり、そこに配備さ
れている兵力は他の基地とは比較にならないほど多い。その為、この基地を制圧するこ
とは一筋縄ではいかず、攻略には苦戦を強いられていた。
 これに対しファントムペインは、スペングラー級モビルスーツ搭載型強襲揚陸艦J.P.
ジョーンズを旗艦とした大部隊を編成。アイルランド島周辺をダニロフ級イージス艦で
囲み、これまでの基地と同じく、ジェットストライカー装備のウィンダム隊を主力とし
たモビルスーツ部隊による空からの攻撃でこれを制圧する作戦を立てた。連合軍のモビ
ルスーツは、未だに地上用ダガーが主力であり、空からの攻撃は極めて有効なものと思
われていた。
 既に他の基地の制圧を完了させた部隊も合流しており、実戦指揮はネオ・ロアノーク
大佐に一任された。

「さすがはヘブンズベース……見事な防衛網を張っている」
 旗艦J.P.ジョーンズで戦略図を見ながら、ネオは僅かに感嘆の声を上げた。ヘブンズ
ベースは付けいる隙のないモビルスーツ及び機甲部隊の布陣を敷いており、基地司令官
が決して無能ではないことを示していた。
「無能だったら嬉しかったんだがな……」
 ネオは作戦立案中にそんなことを呟いたという。そんな彼の呟きに、
「どうして? 戦うのが楽だから?」
 と、久しぶりに再会した彼に、これでもかというぐらいベッタリくっついてたステラ・
ルーシェが尋ねたが、彼は苦笑しながらこう答えたという。
「だって考えても見ろよ? 敵が無能なら、こちらが有能な分だけどちらも犠牲が少な
くて済むんだぞ? 無闇に血が流れるよりは、ずっと良い」
 そんなネオの、ある意味で軍人のあり方を否定するような発言は、ステラには難しく
て良く分からず、とりあえず「ネオは優しいことを言った」とだけ解釈した。ネオが実
際に優しい心根であるかどうか別として、彼が今回のクーデターで双方の流血を好んで
いなかったのは事実であったし、時代遅れの連合には潔く舞台から退場して貰いたいと
いう思いもあった。

467:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/08 12:37:37
「地上にある施設は基地司令部と見せかけているだけのフェイクだ。本当の司令部はこの
辺り」
 ネオは、コンソールを操作し、アイルランド島にある山の一角を拡大する。
「この山の地下に司令部はある。山は要塞化されて対空砲台も数多く存在するが、ウィン
ダムの機動力ならば十分突破できるだろう」
 J.P.ジョーンズのブリーフィングルームには、ロアノーク隊とホアキン隊の主要メンバ
ーが集まっている。さすがにこの時だけはステラもスティングたちと共に、普通に椅子に
腰掛けていた。
「ウィンダム隊は、もっとも高い機動力を持っているカオスを隊長機とする。スティング、
お前が指揮を執れ」
「わーったよ!」
「ウィンダム隊による第一波攻撃の後、アビス率いる水中モビルスーツ部隊が敵水中モビ
ルスーツ部隊を蹴散らす。出来るな、アウル?」
「当然!」
 パナマでの大勝が嬉しかったのか、二人の戦意は著しく高まっていた。ステラは戦いや
勝利に高揚するという感情を知らないのでいつもと変わりはなかったが、スティングとア
ウルが嬉しそうだという事実に、自身も嬉しがっていた。
「敵水中モビルスーツ撃破後は、モビルスーツ搭載の強制揚陸艦を基地沿岸に叩き付け、
一気に制圧する。地上戦での主力部隊は、スウェンのストライクと、ミューディーのブル
デュエル、そしてステラのガイアだ。シャムスのヴェルデ・バスターはバスターダガー隊
と共に長距離からの支援攻撃に専念しろ」
 出来ればネオ自身も専用のウィンダムで出撃したかったが、精鋭たる彼らの足を引っ張
っては困る。今回は旗艦にてホアキンと共に静観するつもりであった。
「作戦内容は以上だが、何か質問は?」
 士官の一人が手を挙げた。
「作戦とはあまり関係ないのですが、技術部が今回の作戦に試作モビルアーマーのテスト
を兼ねた実戦導入の許可を求めています」
 近年、ファントムペインは積極的にモビルアーマーの開発を行っていた。これは謂わば
性能テストのようなもので、ストライカーパックにより各戦場に対応した装備を選択でき
るモビルスーツと、最初からあらゆる戦場を想定して作られモビルアーマーでは、どちら
がより有効なのか? というものである。もっとも、既存のモビルスーツを開発して作ら
れたウィンダムとは違い、一から作らねばならなかったモビルアーマーは開発が遅れ、こ
んなギリギリに完成したという経緯があった。
「ザムザザー、と言ったな、確か」
 ネオは呼び慣れぬモビルアーマーの名前を口にする。
「ダメだ、今回の作戦はファントムペインの今後を左右するものだ。それに試作モビルア
ーマーのテストなど加えられん」
 ネオはそう決定したが、内心でそのモビルアーマーに興味を持っていた。作戦が終わっ
た後にでも見に行ってみるかと、その時は気楽に、そう考えていた。
「ではこれより二時間後に作戦を決行する。各自、出撃準備に取りかかれ!」
 しかし、二時間後、出撃したファントムペインは完膚無きまでに敗北することとなる。


468:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/08 12:39:10
 このヘブンズベース攻略戦の第一波が『失敗』した理由はいくつかある。それまでの勝
ち戦続きが将兵たちにの心に小さくはない油断を作っていたこと、パイロットたちにヘブ
ンズベースほどの大規模な要塞基地に対しての攻略経験が浅かったこと、それに対して連
合軍が死にものぐるいで絶対死守を敢行したこと、そしてヘブンズベースにファントムペ
インが持っていた情報にはない装備があったこと、などだ。
 ファントムペインのスティング・オークレーは、作戦通りにウィンダム隊を指揮し、敵
の対空砲火をかいくぐって敵基地司令部まで接近していた。ここまでは確かに作戦通りで
あり、後は基地司令部のある山に攻撃をすれば良いだけ、そのはずだった。
「なんだ? 山が……開閉している!? こんなもの、情報にはないぞ!」
 突然の事態にカオスに乗るスティングは少なからず動揺した。
 連合軍は、対空砲火では敵モビルスーツ部隊に対しての応戦は難しいと考え、極秘裏に
開発されていた要塞主砲による攻撃を試みたのだ。その名を対空掃討砲ニーベルングと言
った。
「フフン、ファントムペインの奴らめ、このヘブンズベースを墜とせるなどと本気で思っ
ているのか?」
 ヘブンズベース基地司令官は、司令部に近づきつつある敵モビルスーツ部隊の存在にも
まるで動揺せず、対空掃討砲の使用をいち早く決断した。
「蚊とんぼどもめ、思い知るがいい……ニーベルング発射!!!」
 ニーベルングは、その圧倒的な破壊力を持って発射された。元々はザフト軍の降下部隊
を殲滅するために作られたこの要塞主砲は、今まさにファントムペインの空中モビルスー
ツ部隊を、ほぼ全滅に近い形で粉砕した。
「くそっ、全機離脱だ!」
 スティングは発射されたニーベルングの莫大なエネルギー量に恐れ戦きながら、必死で
機体を反転、急速離脱させる。後ろでは次々とウィンダムが爆破、塵一つ残らず消滅して
ゆく。
(間に合うか!?)
 スティングは、久しぶりに死への恐怖を感じていた。



469:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/08 12:40:24
「これは……」
 ネオはその悪夢に近い光景を旗艦から見ていた。すぐ隣ではホアキンが状況を確認しろ
と部下に怒鳴っている。
「カオスは……スティングは無事なのか!?」
 ネオはそう叫ぶと、部下にすぐにカオスの信号を確認させた。数秒後、カオスの信号を
無事確認することが出来た。
「カオスより入電、ウィンダム隊はほぼ全滅に近い状態にあるとのことです!」
「ぜ、全滅だと」
 ホアキンは血の気が引いたような声しか出せなかった。
「カオスよりさらに入電、我が機体の損傷も著しく、帰還を許可されたし、とのことです」
「帰還を許可する。水中部隊も一旦後退させろ、この状況でヘブンズベースを攻めるのは
無理だ……」
 ネオは苦々しげに呟くと、それ以上の作戦続行を断念した。これを機に敵が打って出て
くるかとも思ったが、敵はあくまで籠城策を取るつもりなのか、出撃の気配はなかった。
何はともあれ、ファントムペインは一連のクーデーター中に、初めての敗北を喫したので
ある。


470:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/08 12:43:52
 帰還したカオスは、ニーベルングの直撃こそ回避できたが、砲撃の余波に機体を著しく
損傷させており、再出撃には相当の時間が掛かると思われた。ちなみにパイロットも軽傷
を負っており、医務室行きとなった。ネオとホアキンはこの事態に作戦の練り直しを要求
された。
「一筋縄ではいかないと思っていたがまさかここまでとは……」
そうホアキンが呟きながら、その日の作戦会議を終えた。ネオも同感であったが、素直に
賛同する気にはなれなかった。何故ならば、そんな事実が現れようとも、ファントムペイ
ンはヘブンズベースを攻略せねばならないのだ。その現実に溜息をつき、私室に戻ろうと
したネオに、技術士官が声をかけてきた。例のモビルアーマーの実戦テストをどうしても
行いたいというのだ。
「こんな状況下に何を……いや、まて」
 ネオは『モビルアーマー乗り』としての直感が、これは使えるのではないかと告げてい
ることに気付いた。
「そのモビルアーマー、私に見せて貰おうか?」
 彼の中にとても危険なひらめきが生まれていた。

「このザムザザーは、総重量526.45tと既存のモビルスーツを遙かに上回る重さですが、
各部に設置されたバーニアから大推力を得ることによって、高い飛行能力と機動性を有
しています」
 技術士官は、ザムザザーを遠隔操作し、その最大の武装、陽電子リフレクターを作動
させる。
「これが陽電子リフレクターか?」
 ネオは、発生する高出力フィールドに目を押さえながら尋ねる。
「はい、この陽電子リフレクターのリフレクション能力は、その名の通りです。例え陽
電子砲であっても完全に防ぐことが出来ます」
 技術士官は自信に満ちた声で熱弁を振るいつつ、リフレクターをリセットする。
「搭乗員は三名で、それぞれ行動指揮を執る機長、砲撃を担当する砲撃手、操縦及び格
闘を担当する操縦士になっています」
 蟹のような甲殻類を思わせるザムザザーのフォルムに、ネオは新たな可能性を感じて
いた。この機体ならば……!
「一つ聞くが、この機体は一人でも動かせるのか?」
「は? 一応、操縦は一人でも出来ますが、それだと砲撃等の攻撃オプションが使えま
せん。最低でも二人は必要ですが……」
「そうか、わかった。この機体の実戦導入を許可しよう」
「は、はい、ありがとうございますっ!」
 しかし、この技術士官の喜びは一瞬で消えることとなる。
「では、早速出撃準備に掛かろう。俺も仕度を済ませる」
「えっ?」
「聞こえなかったか? この機体で出撃するのだ、俺がな」
 仮面に隠れたネオの表情は、いつになく不敵なものだった。



471:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/08 12:46:15
「ロアノーク大佐! これはどういうことですか!?」
 二十分後、既に発進体勢にあるザムザザーに回線を繋いだホアキンは、上官の真意を問い
ただした。彼としてはなんの相談もなかったことよりも、司令官自ら出撃するという事態へ
の驚きがあった。
「ホアキン、俺はこれよりこのザムザザーでヘブンズベースに特攻をかける!」
「特攻ですと!? 死ぬ気ですか!」
「死ぬ気でやらねばヘブンズベースは墜とせん! 俺が敵要塞主砲を破壊する。それを見計
らってモビルスーツ隊を出撃させろ!」
「大佐!!!」
 ホアキンは制止の声を上げるがそれを最後まで聞くネオではなかった。ザムザザーを発進
させ、対空掃討砲ニーベルングを破壊するため彼は出撃する。発進と同時に起こる加速によ
る凄まじい衝撃が彼を襲う。
「この感じ……やはり、モビルアーマーは良い……」
 かつての異名がそうさせるのか、ザムザザーの操縦席に座るネオの気持ちは高ぶっていた。
ネオは、自分がネオ・ロアノークと名乗るようになってから、自己の存在意義を戦場でしか
実感できない男だ。悲しきかな、口では戦いを嫌がりつつも、彼は戦場にいるときこそ、も
っとも活き活きとしている。
「基地の防衛システムがもう作動したか。夜襲備えをしていたな……しかし!」
 ザムザザーは向かい来る対空砲火の雨を巧みに避けると、敵基地司令部を一直線に目指し
た。
「な、なんだあの機体は!」
 ヘブンズーベース総司令部は、突然夜襲をかけてきた謎の機体に驚愕し、司令部に詰めて
いた指揮官たちは動揺しきっていた。夜襲の可能性は勿論あった。故にこのように備えもし
ておいた。だが、あの機体はなんだ。
「モビルアーマー……ファントムペインは、新型のモビルアーマーを開発していたのか!」
「敵モビルアーマー、尚も接近!」
「砲火を集中しろ! 敵を近づかせるな!」
 総司令部のある要塞化された山に露出するビーム砲台から、ザムザザーへと一斉砲撃が行
われる。とても全てを避けるなど無理だった。
「ここで試してみるか……陽電子リフレクター展開!」
 ネオは、ザムザザーのリフレクターを作動させる。ザムザザーはある意味で隙だらけなリ
フレクション姿勢へと移行する。
「前面のみの防御姿勢……盾としては正しい形だが、果たしてこれで―」
 ザムザザーのリフレクターに怒濤の勢いでビームが炸裂する。数十に及ぶビームの光りは、
突如空中で『制止』した、ザムザザーを確実に捕らえていたが、陽電子リフレクターはその
こと如くを弾き返した。
「ほぅ、なかなか使えるものだな!」
 その絶対防御の力にネオは歓喜の声を上げるが、防がれた方は堪ったものではなかった。

472:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/08 12:48:20
「て、敵、モビルアーマー無傷! 再び、こちらに向かって前進を始めました!」
「要塞主砲を、ニーベルングを使え!」
「し、しかし、対空掃討砲ニーベルングは降下してくる敵には有効ですが、正面から向か
ってくる敵には……」
「構わん! ニーベルングをどうにかせぬ限り、その真下にあるこの司令部を制圧出来ぬ
事は奴らも知っているはずだ。山に取り付こうとした瞬間、あの蟹のデカブツを吹き飛ば
してくれる!」
 だが、要塞主砲を無力化することこそが、ネオの狙いであることを基地指令は理解して
いなかった。先ほどの一線で、敵のモビルスーツ部隊を一掃したこともあってか、ニーベ
ルングを使えば敵が怯み、撤退する可能性もあると考えていたのだ。
「いいか、ギリギリまで引きつけるのだ。ニーベルングならば、例え余波であっても敵の
破壊が可能だ! このヘブンズベースは我ら連合の最後の砦……何があっても陥落させる
わけにはいかんのだ!」
 山が割れ、対空掃討砲ニーベルングが露出する。もし、ザムザザーが正規の通り、パイ
ロット三人体制で出撃していれば、砲撃・射撃による目標破壊という方法が採れたはずだ
った。しかし、今このザムザザーを操縦しているのは、ネオ一人だ。
「後はこの機体と、陽電子リフレクターの性能を信じるのみ!」

「対空掃討砲ニーベルング、発射せよ!!!」
 そして、遂にニーベルングが発射された。要塞まで距離数十メートルに迫っていたザム
ザザーを破壊するため、驚異の一発が放たれたのだ。
「リフレクション姿勢で固定……いや」
 衝撃に揺れる機体を安定させながら、ネオはポツリと呟いた。
「この姿勢のまま、敵要塞内部に突っ込ませて貰う!」
 恐らく、ザムザザーに絶対の自信を持っていた技術士官であっても、このような選択は
しなかっただろうし、考えることすらなかっただろう。そもそも、陽電子リフレクターは
防御のためのシステムだ。それを展開したまま敵に突っ込む、『攻撃』を想定されて作ら
れてはいない。
「俺は死を恐れない……何故なら、一度死んでいるのだからな!」
 ニーベルングが巻き起こす破壊の力を機体に受けながら、ネオは叫ぶ。コクピットにも
伝わるその衝撃は、ネオの身体にもかなりの負担をかける。
 ピシリ、っと仮面に亀裂が入った。
「さぁ……この死に損ないを殺してみろ!!!!」
 ネオは、出撃前ホアキンに言ったとおり、ザムザザーでの特攻を敢行した。


473:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/08 12:49:36
「敵モビルアーマーロスト……」
 たった一機を破壊するために発射されたニーベルングは、ザムザザーを完全に消滅させ
たかに見えた。
「連中の切り札があのモビルアーマーだと言うのなら、ファントムペインも恐れるに足ら
ず。今度は我らが打って出て……」
 その時、基地に衝撃が走った。
「!? 何事だ!!!」
「わ、わかりません! ニーベルングに異変が!」
 まさか、と基地司令官は叫んだ。そして、それと同時にある可能性に思い当たる。
「て、敵モビルアーマー、生きています! 生きて、ニーベルングに攻撃を!」
「な、何とかしろ!」
「無理です、ニーベルングに取り付かれては対処の仕様がありません!」
 ザムザザーは、ニーベルングを受けきっていた。無論、砲撃を一身に受けたわけではな
いのだが、並のモビルスーツならば一溜まりもない一撃でも破壊されず、超振動クローで
の接近攻撃を敢行していた。
「あれがエネルギー集中用の砲身か!」
 ネオは、ザムザザーの超振動クローでニーベルングの砲身を掴むと、力の限りこれを叩
き折った。エネルギーの残滓が散り、ザムザザーの機体を蝕む。ニーベルングは爆発寸前
であった。
「機体が、持たない。だが、これで……!」



474:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/08 12:51:21
 ホアキンは要塞主砲の付近で爆発が起きたのを確認すると、モビルスーツ部隊に指示を
出し、ヘブンズベースに攻撃を開始した。ニーベルング破壊による衝撃はヘブンズベース
を守る兵士たちに少なからず動揺を与え、アウルの指揮する水中モビルスーツ部隊は瞬く
間に敵の水中モビルスーツ部隊を駆逐していった。
「さて、後はステラたちに頑張って貰うか!」
 陸上では、ファントムペインの強襲揚陸艦が沿岸に叩き付けられ、中から続々とモビル
スーツが現れる。この時、いの一番に先陣を切ったのがステラのガイアであり、
「ネオ、ネオ、ネオ! ネオを助ける!」
 少しでも早くネオを助けたいという想いからか、ステラは怒濤の勢いで敵モビルスーツ
を撃破し、それは普段、感情を表に出さないことで有名なストライクのパイロット、スウ
ェン・カル・バヤンが、
「凄いな……」
 と、思わず呟くほどだったという。
 しかし、ヘブンズベースを守備するモビルスーツ部隊も、ただやられていたわけではな
い。最終防衛戦であるヘブンズーベースの絶対死守を敢行する彼らは、死ぬもの狂いとも
言える抵抗をし、それは通常の兵士とは異なる教育をされてきたファントムペインの兵士
たちでも驚くものだった。
「悪足掻きを……するなぁっ!」
 ブルデュエルを駆るミューディーなどは、そうした敵であっても一撃の下に打ち倒す実
力を持っていたが、地上戦は次第に乱戦の兆しを見せていた。
「チッ、お前らいい加減時代遅れなんだよ!」
 シャムスのヴェルデ・バスターを始めとした、バスター・ダガー隊による集中砲火が浴
びせられる。ラミネート装甲を廃し、量産性に特化したダガーLには一溜まりもない一撃で
あったが、守備部隊の隊長は冷静に指示を出し、
「損傷の少ない機体でシールド防御をし、その隙間からビームライフルで応戦しろ!」
 こうして、バスターの攻撃をやり過ごした。ビームライフルによるピンポイント攻撃を
受けたバスター・ダガー隊は徐々にであるが後退して行く。
「まずいな……乱戦になれば、各個撃破の可能性も出てくる」
 スウェンは、こうした戦況に危機を憶えていた。敵の士気は高く、統率力も高い。そし
て何より、連係が良く取れている。
「ならば……敵の指揮系統を崩す」
 スウェンは、敵隊長機に的を絞り、対艦刀を引き抜き襲いかかった。



475:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/08 12:53:41
「対空掃討砲ニーベルング、完全に沈黙……」
 一方で、ヘブンズベース基地司令部は酷い有様になっていた。真上にあるニーベルング
が破壊されたため、その衝撃で基地内部は通常電源から非常電源に切り替わり、壁には亀
裂が走るなど、いつ崩壊してもおかしくない状態であった。
「我が方のモビルスーツ隊は!?」
 基地指令は僅かな望みをかけて叫ぶが、
「だ、だめです、奮戦を続けていますが隊長機を墜とされ、散り散りに……」
 指揮系統さえ崩されてしまえば、一騎当千の実力を誇るファントムペインの敵ではなか
った。基地指令は敗北を悟った、悟ってはいた、しかし……
「何故だ、何故我々が、我々が負ける!」
 理解は出来ても、納得できないことはある。連合軍なのだ。この地球の大部分を統治す
る、地球連合軍なのだ。それが負けるなど、あって良いはずが……
「いい加減、お認め頂きたいものですな」
「な、何!?」
「歴史は今、革命の直中にある。役者は交代する、ということです」
 総司令部の出入り口に、ネオが立っていた。その手には、黒光りする拳銃が握られてい
る。
「ネオ・ロアノーク大佐……ファントムペインの人形部隊が何を偉そうに!」
「強すぎる人形は、使い方次第では牙も剥くと言うことですよ。ファントムペインがあな
た方連合の都合の良い戦闘集団だった時代は終わったのです」
「ぐっ……連合に取って代わるなど、認められるか!」
 基地指令は懐の銃を引き抜くが、ネオはすぐさまそれを撃ち落とした。
「自分たちの時代が終わったことぐらい、自分で察しろ!」
 その時、司令官の後ろに控えていた部下がネオに射撃した。ネオはこれを驚異的な反射
神経で避け、弾は彼の仮面を掠めた。
 ピシリ、っと仮面の亀裂が広がり、割れた。
「そ、その顔……貴様、まさか!」
 動揺が走った。割れた仮面、晒された素顔、それは彼らの良く知るものだった。
「エンデュミオンの……」
「捨てた名だ」
 ネオは間髪入れず、その場にいた全員を射殺した。
「作られた英雄など、もうどこにも居ない。居るのはどうしようもない、血塗られた戦士
だけだ……そうでしょう、王?」

 ヘブンズベースは陥落した。地球連合軍はこれにより、地球圏全ての軍事拠点を失い、
ファントムペインがそれに取って代わることとなった。そして、ファントムペインを操る
ブルーコスモスの盟主ロード・ジブリールはこの勢いに乗り、プラントに宣戦布告し、世
界は再び大戦へと突入してゆくこととなる。

                                 つづく


476:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/08 12:55:08
色々とパロっ気溢れる第6話。
何かもう、随分書いた気がするのに、まだ6話なんですね。
今回の話の元ネタは……様々。
ここから先は割と、種死の世界の出来事に添う形になると
思います。
前回説明足らずでしたが、何も種死の世界でW全49話を
再現するというわけではありません。どう説明したらいい
のか、種死世界の出来事にW的なアレンジを加えてゆくと
いうか……まんま、W的な内容(?)をしているのはこの
序盤と……まあ、後々判ります。

それにしても、>>436は凄いと思った。

477:通常の名無しさんの3倍
07/03/08 12:59:56
GJ
ネオがゼクスしているなwww

478:通常の名無しさんの3倍
07/03/08 13:07:18
このネオは記憶あるわけか
AA組が出てきた時の反応が楽しみだ

479:通常の名無しさんの3倍
07/03/08 13:11:47
蟹カッコイイヨ蟹!
ミネルバ組がどうなるかも期待。GJでした!

480:通常の名無しさんの3倍
07/03/08 13:30:58
GJ
ミネルバ隊ガンガレ
超ガンガレ

481:通常の名無しさんの3倍
07/03/08 14:12:47
GJ!
読んでいてわくわくしました。

482:通常の名無しさんの3倍
07/03/08 14:36:19
GJ!!!
ザムザザー、カッコイイ!!
見せ方が違うだけでこうも違うのかYO!
モビルアーマーをトールギスの様に使うなんて……ネオ、恐ろしい子!

ニーベルング=ノヴェンタ砲ですな。
確かあれも対空砲だったような?

>デュランダルは自分の首が繋がった結果に対し喜び、不謹慎ながらも祝杯を挙げていた。
議長は良くも悪くも普通の人なのかな?
祝杯を挙げるよりやるべき事が有るだろうに……

483:通常の名無しさんの3倍
07/03/08 14:47:51
>>482
まあDプランをプラントだけか地球規模でやる気かにもよるな。

484:通常の名無しさんの3倍
07/03/08 14:57:32
GJ


485:通常の名無しさんの3倍
07/03/08 16:55:30
GJ
『ザフトによる地球連合和平総会襲撃事件』ってどう政治的解決がおこなわれるのだろう?
奇襲による強襲作戦。宣戦布告もしてないし……
さすがに議員の辞職程度ではどうにもならないレベルだよね。
なによりコープランドが死んだのが致命的。

一番の問題は蟹カッコよすぎだよw

486:通常の名無しさんの3倍
07/03/08 17:04:21
ネオがゼクスポジションなら、意外なところでマリューがリリーナポジションというのも有り得る気がしてきた

487:通常の名無しさんの3倍
07/03/08 17:08:38
>>486
さすがにマリュー=リリーナは・・・
ピースミリオン時のノインとかじゃね?

488:通常の名無しさんの3倍
07/03/08 17:12:11
>>486
>>476






ミネルバ隊が荒らしてしまったこの種世界の現状から
物語がどういう展開をして行くのかが気になる。

ミネルバ隊がカーペンタリアにいるから
原作通りにガルナハン解放へ遠征するのかな?

489:通常の名無しさんの3倍
07/03/08 17:18:17
>>488
>原作通りにガルナハン解放へ遠征するのかな?
無理じゃね?
今回の件でこの隊のイメージが最悪になっちゃたし。(対外的なイメージね)

490:通常の名無しさんの3倍
07/03/08 17:25:00
>>489
ではミネルバ隊は遊兵化するのか。

大和ホテルじゃあるマイに


シンガンガレ超ガンガレ

491:通常の名無しさんの3倍
07/03/08 18:18:13
>>490
原作みたいな解放者としての使い方はもう不可能だな。

492:通常の名無しさんの3倍
07/03/08 18:49:28 lIpeb073
GJ!!
ネオが格好良い!
記憶を失っていないということは、『覚悟』をもって修羅の道を行って
いるわけですね
これなら、ゼクスと同位置を務められますね

議長は、祝杯挙げてるけど、そんな場合じゃない事わかってるんでしょうか?
ここまで追い込まれたプラントを背負い込む羽目になったということですよ

ミネルバは、もう捨て駒として激戦地をたらい回しにする他ないかも

493:通常の名無しさんの3倍
07/03/08 19:37:27
どう考えても各国のミネルバへの市民感情は最悪だよな。

494:通常の名無しさんの3倍
07/03/08 19:49:11
シンの状態は正に、針の筵だな。
だが、この逆境をはね除けて復活するのがいまから楽しみだぜ。

495:通常の名無しさんの3倍
07/03/08 20:49:10
GJ!
ネオ、スウェンを始め、ファントムペインが
ここまで格好良くなるとは思わなかった。
アウルがきちんと指揮できるわミューディーが強いわで
もうゾクゾクしてくる・・・

496:通常の名無しさんの3倍
07/03/08 20:49:25
>暫定的な各委員長代理の人事を自ら行えば、最高評議会は自分
>の意のままに動かしてゆくことが出来るであろう。

議長!さっそく自分のプランを否定するようなことをしてどうするんですか!?

497:通常の名無しさんの3倍
07/03/08 20:57:44
>>496
自分の周りにはイエスマンしかいない……
滅び逝く国家そのものじゃねwww

498:通常の名無しさんの3倍
07/03/08 21:20:59
待て!このスレの議長には何か秘策が…あるかなぁ?w

499:通常の名無しさんの3倍
07/03/08 21:23:01
まずは議長は選出に使ったコンピューターを疑うべきだろ。

500:通常の名無しさんの3倍
07/03/08 21:47:42
>>499
天才現る!

501:通常の名無しさんの3倍
07/03/08 21:52:41
きっとそのコンピューターはかつて「おカバさま(星新一)」問題を
解決したのと同じコンピューターなんだよ。

502:通常の名無しさんの3倍
07/03/08 22:00:53
>>501
星新一とはなかなか……

503:通常の名無しさんの3倍
07/03/08 22:38:01
データ出力はパンチコードのテープ式に違いないw

504:通常の名無しさんの3倍
07/03/08 22:48:28
このプラントからはどうしようもないダメぽ感を感じる…!

505:通常の名無しさんの3倍
07/03/08 23:25:31
>>499
確かにw
コンピュータにより選出された議員の過半数がアホって事が、今回の件で証明された訳だしな。

議長はこの件から自分のプランにも疑問を持ってもいいはずなんだが……

506:通常の名無しさんの3倍
07/03/08 23:58:25
しかし議長は気づきません
なぜなら議長もまた同じコンピュータに選ばれた存在だからです

507:通常の名無しさんの3倍
07/03/09 00:01:56
逆に考えるんだ
コンピュータで選出した最高の頭脳を持ってしても
まともな判断力をもった議員が半分以下しか集まらなかったと考えるんだ

508:通常の名無しさんの3倍
07/03/09 00:31:04
>501
プラントに住む住民は常に幸福であるべきであると考える
コンピュータ様だよ。

509:通常の名無しさんの3倍
07/03/09 02:18:05
或いは外見は超巨大仰々しいスパコンだが、中身は単なるコイントスだけとか…

510:通常の名無しさんの3倍
07/03/09 03:12:41
>>508
偏執狂なコンピュータか……アレはブラックジョークだからこそ良いんだけどな。

511:通常の名無しさんの3倍
07/03/09 08:10:47
>>505
罠の可能性に気づきもしない時点で評議会議員全員がアホです。

512:通常の名無しさんの3倍
07/03/09 11:36:14
流石にそれはねーだろと言いたいんだが、
種だとなんとなく納得しちまうんだよな。

……コーディって本当の激バカだし

513:通常の名無しさんの3倍
07/03/09 16:51:07
 馬鹿だとは思うけど、プラントに潜入してのMS奪取とか、元ザフトのテロリストがコロニー落とそうとしたりしてたときに、
ブルコス陣営がプラントに核攻撃しようとしてると情報がきたらアヒョるのも仕方ないような気も……
 もし冷静に状況を静観してたら、ここの有能ジブリならプラントを焚きつけるためにホントに核打ち込みそうだしw
 核ミサイルの準備しとけば、ダミー情報に真実味が出るし、プラントが動かなければ撃てば良いしト

514:通常の名無しさんの3倍
07/03/09 20:50:54
この議長はジブ以上の小物っぽさを感じるな。
原作と違っていい勝負になるかもしれん。

515:通常の名無しさんの3倍
07/03/09 22:45:23
議長がロゴス暴露演説なんかしたって受け入れてもらえなさそうだな。

516:通常の名無しさんの3倍
07/03/09 23:00:41
まあまあ。
確かにこの議長は小者っぽいが、根は善人みたいだから、あんまり無茶な事はしないだろう。
プランを実行するにしても、まず足元からやっていくさ。

俺としては、コーディネイターのコンピュータよりもウルカヌスの行方の方が気になるな。
あれは、結構やばいぞ。

517:通常の名無しさんの3倍
07/03/09 23:02:06
レオスごときであの反応だしなあ。

518:通常の名無しさんの3倍
07/03/10 00:17:53
誰が手に入れたとしても
「ちょwwwwww俺様最強wwwwwwwwww」
と己が新世界の神になったかの如く錯覚する姿が想像できる

519:通常の名無しさんの3倍
07/03/10 10:49:18
>>518
…一応キラは改心しているけど
ラクシズが回収しそうなフラグが立ってしまったってことか…?
あの連中だったら有り得そうで怖いし、連中の活動開始理由も出来てしまったからな

520:通常の名無しさんの3倍
07/03/10 11:25:46 Kq3m6utj
GJ!!
やはり仮面キャラは仮面が割れるシーンがたまらん

サリィ・ポゥ並の働きを見せるコニールが傷心のシンを助けるなんて事も有り得るかな

521:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/10 11:38:31
今日はこれから出掛けるので早めに投下しておこう。
私も投下日とか決めた方が良いのかな……

522:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/10 11:40:50
 ファントムペインという実働部隊で連合軍を壊滅させている間、ブルーコスモスの盟主
ロード・ジブリールはそれをただ黙ってみているわけではなかった。彼は大西洋連邦内部
の掌握に乗りだし、市民に訴え、煽り、その反戦意識を低下させ、主戦派を台頭させるこ
とに成功していた。今や議会の過半数は、ブルーコスモスの、それもジブリール寄りの信
者で埋まっている。
 政治体制が変われば、世論もまた考え方を変えてくる。世界各地ではファントムペイン
によるクーデーターが成功しつつあるというのに、市民レベルではそんなことは気にも止
めないのだ。支配体制がどう変わったところで、支配されることに慣れすぎた人々は、そ
れに異を唱えると言うことを忘れてしまっていた。ただでさえ、戦争の後である。過度の
重税や、徴兵、あらゆる物で疲弊しきっていた市民に、気にする余裕などなかったのかも
しれない。
 議会を掌握し、ブルーコスモスの主義者を大統領代行にすることに成功したジブリール
は、早急にプラントへの開戦準備に乗り出した。プラントが未だ先の事件で混乱している
ところを突いて、これを一気に倒すというのが狙いだったが、ジブリールの目論見は全て
成功したわけではなかった。まず第一に、ジブリールは旧連合の月基地アルザッヘルを橋
頭堡にプラントへ進行する計画を提示したのだが、アルザッヘルは「迅速にクーデターを
成功させる」という命令に忠実だったファントムペインのイアン・リー少佐によって、艦
艇発射口など重要な部分に酷い損傷を負っており、応急的な処置だけでもすくなからずの
時間を要した。この間にザフトは、テロリスト捜索の任務に当たっていたジュール隊を前
線に呼び戻すなど戦力の増加に努めていたが、その指揮系統は未だ混乱の一途を辿ってお
り、両軍は準備も備えも仕切れていない状態で開戦に突入しようとしていた。
 そんな時である。オーブ所属の宇宙ステーションアメノミシハラを管理する、オーブ影
の軍神ロンド・ミナ・サハクが、全世界に向けて声明を発信した。

        それは、『天空の宣言』と呼ばれるものだった。

 この天空の宣言は、「人類は他者の理想を妨げない限り己の信念に従うべきだ」という、
ロンドの考えを訴えたものであり、いかなる組織・国家であろうとも他者に主義・主張を
押し付けてはならないと説いた。また、ロンドは声明で、この天空の宣言に従うことを強
制することはなく、賛同したものにのみ無償の援助をすることを表明したのだ。
 これにに対し、旧連合に属していなかった南アメリカ合衆国や、ユーラシア西側地域な
どは高い関心を示していたが、大西洋連邦・プラントはこれを完全に無視し、オーブ本国
及び中立国は黙認の構えを取った。


523:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/10 11:44:40
 この宣言が発信された際、二人の人物が、異なる見解でありながらも否定的な意見を
述べていた。
 一人は、ミーア・キャンベルとその声明を聞いていたロッシェ・ナトゥーノ。彼は、ロ
ンドを好奇の目で見ていたが、必ずしもその主張を正しいとは思っていなかった。ミーアは、
『他の女を興味深げに見ている彼』に対して、思うところがあったのか、「彼女に興味が
あるの?」と尋ねたが、ロッシェは険しい顔でこう答えたという。
「これではダメだな。確かに悪くない主張ではあるが、これではただこのロンドとか言う
女が独裁者になるだけだ」
「独裁者? どうしてそう言うことになるの?」
「弱者救済を否定する気はない。しかし、これが拡大すれば弱者は挙って彼女を頼り、強
者は彼女を恐れる。人はいつも、英雄や聖人の存在望む。そのほうが楽なのだ。自分たち
で努力せず、彼らに課された苦労を全て背負い込んでくれるのだから。特に無償で援助す
る、などと言われれば尚更だ」
「……なんか、よくわかんない」
「フフ、まあしかし、これだけは憶えておくといい。独裁者は何もその人が望んだから誕
生するわけじゃない。それを支持する人々によって、生まれ出る場合もある。そういった
意味では彼女を支持する人間たちの質が問われるわけだが……」
 と、ロッシェはここで言葉を切った。彼の言うことを必死で理解しようと頭を悩ませる
ミーアに、少し考える時間を上げようと思ったからである。
 そしてもう一人、地球のオーブでも、天空の宣言に否定的な見解を示す人物がいた。
そう、本当のラクス・クラインである。
「私は、この方の言うことに共感は出来ません」
「どうして?」
 厄介になっているマルキオ邸の居間で声明を聞いていたラクスとキラだったが、興味な
さげに聞いていたキラと違い、ラクスは真剣に聞いていた。
「組織や国家が、主義や主張を押しつけてはいけないというのは、まあオーブに厄介にな
っている私が言うのもアレですけど、概ね賛成できます。組織にしろ国家にしろ、人がい
てこそ成り立つもの、主体的な意思を持つものが集まり、国家を形成するのであれば尚更
です」
「うん、それで?」
 今のこの二人を良く知るものであれば、この二人が会話をしていることに若干の驚きを
憶えるかも知れない。しかし、この二人とて既に一年以上一つ屋根の下で暮らしており、
そもそも『片方が恋愛感情持たないだけで仲は悪くない』から、このように普通に会話を
することは可能なのだ。
「キラ、私は必ずしも人の持つ信念が正しいとは思えないのです」
「えっ? どうしてさ?」
「例えば金銭を受け取り人を殺すのと、信念の赴くままに人を殺すのなら、私はまだ金銭
で人を殺す方がマシだと思います」
「…………」
「金銭は、万人に共通の価値があります。服が買えます、食事が取れます、様々なことが
出来ます。でも、信念というものは、それを持つ当人しか通用しない価値しか持っていな
いのです。だから、私は信念のみで行動することを否定します」
 ラクスの言い分もまた、もっともではあった。キラはそれを聞いて心の底から惜しいと
感じていた。彼女の居るべき場所は、自分の側などではないのだ。魂の抜け殻の側ではな
く、彼女の見識や才幹は、もっと広い場所で示されるべきなのだと。


524:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/10 11:47:16



              第7話「L5宙域会戦」


 地球からプラントへの宣戦布告が発せられた。C.E73年11月2日を持って、大西洋連邦
はユニウス条約を破棄し、プラントへ進軍することを表明したのだ。ある程度予想して
いたとはいえ、プラントの反応は様々であった。最高評議会議長ギルバート・デュラン
ダルは、突然の開戦宣言に対し、
「ブルーコスモスやファントムペインといった連中は、戦争が外交の一手段であること
を判っていない。まあ、この前の事件を起こした我々の言えたことでもないか……」
 攻めてくる以上は相応の対策を練らねばいけないわけだが、先の事件の影響で、最高
評議会は議長以外の委員長クラスの人材に不足を来しており、ザフトもまた首脳部が入
れ替わるなど、混乱期にあった。そんな中で、デュランダルは一人リーダーシップを見
せつけ、かつてパトリック・ザラがそうしたようにザフト軍の最高司令官顧問も兼任し、
最高評議会議員、ザフト軍人を叱咤、先導し、ある程度まで指揮系統を回復させること
に成功してた。
「やれやれ……私は一応反戦派なのに、気付けば戦争の準備をしている」
「心中察しますよ」
「私はロード・ジブリールを過小評価していたよ。まさか彼にこんな陰謀を企てて、実
行できるだけの才覚があるとは思ってもいなかった……」
 アプリリウスにある、最高評議会の議長室に詰めるデュランダルは、ロッシェの訪問
を受けていた。
「さて、そんなわけで一応は多忙の身なんだが……用件は?」
「何、単純なことです。私にも出撃許可を頂きたい」
「なんだって?」
 ロッシェの説明するところにはこうだった。確かに、議長の手腕によってザフト軍と
やらはある程度の統率性を取り戻しつつあるようだが、戦場という過度の緊迫感、緊張
感が支配する空間においてはそれも崩れる可能性が大いにある。幸い自分は戦場慣れし
てるし、この世界に機体相手に後れを取るとは思えない、ということだった。
「しかし、その機体が問題だと私は思う。私は技術者じゃないから不快には思わないが、
君の機体は強すぎる。それこそ、この世界最強といっていいほどにね。これでは両軍の
パワーバランスが崩れてしまうと思わんかね?」
「相手に気を使う必要がどこにあるのですか? まったく、変なところで律儀ですね……
まあ、いいでしょう」
 ならばと、ロッシェは次の案を提示した。こちらの判断で、プラントに危険が迫って
いると感じた場合のみ、出撃を許可して欲しいというものだった。
「……いいだろう。こちらとしても、今回の防衛に対し絶対の自信はない。もしもの時
は、君に任せよう」
 使わないに越したことはない、しかし、ロッシェの強さを見てみたいという好奇心も
デュランダルにはあった。元々が学者の出であるため、新しい物には目がないのだ。


525:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/10 11:49:28
 一方、急遽応急処置を終えたアルザッヘルからは、ファントムペインのイアン・リー少
佐を指揮官とするプラント攻撃艦隊が出撃していた。急ごしらえに近い艦隊だったため、
その絶対数は必ずしも多いものではなかったが、イアンの軍人としての手腕が早期出撃を
成功させたのだ。
「プラントへはこの航路を通ってゆく。恐らく、ザフトとはL5宙域でぶつかることとなる
だろう」
 L5宙域はプラント本国にもっとも近い宙域である。前大戦の折に、ボアズ、ヤキンとい
った要塞を失っていたザフトにとって、L5宙域が最終防衛ラインであり、そこに軍を展開
するしかなかったのである。
 それを見越して、イアンは敢えて正面から堂々と艦隊を進める方針をとった。人は誰し
も敵にこそ策や奇策があると思いがちである。特にザフトは、自分たちの力に自信を持っ
ているが為に、「なんの策もなく正面から攻め込んでくるわけがない」と思い込んでしま
うだろう。そうした敵の心理を利用した、戦略や戦術とは違った心理戦だった。


526:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/10 11:51:03
 かくして月基地を出撃したイアン・リー艦隊は、予定通りの航路を通り、プラントへの
進行を始めた。これを迎え撃たんとするザフトは、宇宙空母ゴンドワナを旗艦とし、イア
ンの予想通り、L5宙域に艦隊を布陣した。しかし、その布陣はお世辞にも綺麗とは言い難
く、また非戦略的であった。それでも、一応の部隊配置はされており、最前線たる位置に
はセイバーを駆るハイネ・ヴェステンフルスを隊長としたハイネ隊、その右翼にイザーク
・ジュールを隊長としたジュール隊、とにかく敵の進撃を阻めと言う大雑把な命令はハイ
ネやイザークを笑わしたが、笑ってばかりもいられない。
「前方には士気が高く勇猛な敵、後方は慌てふためく使えない上官……これで戦えってい
うんだから、命令するほうは楽で良いぜ」
 ハイネは出撃前にそんなことを呟いていたという。ハイネに言わせれば、今回の開戦ま
でに起こった一連の流れは、プラント、しいてはザフトという組織の体質にあると思う。
どいつもこいつも頭でっかちな奴ばかりで、自分を優秀だと思い込んでいるが為に、他人
に命令されるのを嫌う。その結果がこの体たらく、曖昧な指揮系統は組織を複雑化させ、
現場レベルでの混乱、暴走を来す。
「今の状態で勝つための戦いは不可能に近い。しかし、負けない戦いなら出来るはずだ。
俺以外の奴もこれを理解してるなら、そう難しい戦闘にはならないと思うが……」
 無理だろうな、とハイネは心の中で呟く。相手はナチュラルであり、こちらはコーディ
ネイターなのだ。自分たちのほうが優秀であり、向こうは下等な種族だと、本気で思って
いるのがザフトの大半なのである。
「精々負けないように、みっともなく頑張ってみるか!」
 ハイネはこの戦いにおける自分の重要性を改めて理解し、気を引き締めた。


527:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/10 11:53:11
 L5宙域会戦の開始は、双方のモビルスーツ同士の激突という形で始まった。
 ザフト軍は、理路整然とした艦隊運動とモビルスーツ配備をしてきた敵に対し、我先に
と突出し、その陣形は大きく乱れた。攻撃指令もないままに攻撃し、敵の先陣に突っ込ん
だのである。
 ビームライフルやミサイル、バズーカ砲などで無茶苦茶に攻撃をするモビルスーツたち
のある意味での猛攻は、ファントムペインのモビルスーツ部隊を押す勢いになっていた。
「ダメだ、あんな攻撃の仕方じゃすぐに息が切れちまう!」
 しかし、それを見ていたハイネはこの猛攻が長く続かないことを早々に悟っていた。何
とかして突出した連中を連れ戻さなければ……
「なにっ!?」
 その時、奇妙な出来事が起きた。突出していたモビルスーツ部隊の猛攻に耐えきれなく
なったのか、攻撃を受け流そうとしていた敵の先方部隊に亀裂が入ったのである。亀裂は
徐々にであるが広がりつつあり、敵先陣を分断しつつあった。
「ほぅ……秩序ない攻撃というのも時には威力を発揮するものだな」
 ガーティールーのブリッジで、イアンは感慨深げに呟いた。最初は敵の無秩序振りに失
笑したが、こうなってくると笑ってもいられない。こちらの被害が増す前に対応をしなけ
ればならない。
「よし、敵の突出した部隊を艦隊の内部に引き込み、後方と遮断しろ」
「ですが、それでは我が方にも危険が」
「敵には統率性がない、艦砲射撃の有効範囲まで引き込んで、各個撃破するのだ」
 この作戦は成功した。敵の先方部隊を『撃破』したと思いこみ、さらに内部へと突出し
ていったザフトのモビルスーツ部隊は、いいように敵モビルスーツ部隊に振り回され、戦
艦の艦砲にそのことごとくを吹き飛ばされてしまった。
「お前らいい加減に戻れ! 全滅したいのか!」
 そうした戦場をセイバーで駆け抜けるハイネの怒声は、ザフト軍に幾分かの落ち着きを
取り戻させた。ハイネは突出した部隊を下がらせ、戦力の再編を考えたが、
「いまだ、後退する敵に猛攻をかけろ!」
 ファントムペインのモビルスーツ部隊は、待っていたと言わんばかりに攻撃を開始し、
後退するザフト軍の突出部隊を粉砕した。放たれたビームライフルの光りは、ザクやジン
を貫き、爆散させる。
「おいおい、敵の指揮官少し有能すぎるだろ!」
 あまりに見事な攻勢にハイネは舌を巻きながらも、予め用意しておいたガナー装備のザ
ク隊に敵の攻勢に対する防戦を指示した。長距離砲オルトロスは、その威力を十分に発揮
し、敵の勢いを一時的にではあるが殺いだ。
「いいか、俺達の任務はプラントの防衛だ! 敵に勝つことよりも、プラントを守ること
を第一に考えろ!」
 ハイネは、それからもモビルスーツ隊、時には艦隊にも指示をだし、常に最前線で奮戦
した。結果、敵モビルスーツを数十機、戦艦数隻を墜とす多大な戦果を上げた彼は、ザフ
ト軍、及びFAITH内部での名声を高めることとなった。


528:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/10 11:55:05
 戦闘開始から5時間が過ぎようとしていた。ハイネの活躍によって五分五分の戦いが出
来るほど盛り返してきたザフト軍に、イアンは僅かな焦りを憶えていた。
「まずい……このまま戦闘が長期化すれば、補給の問題でこちらが不利だ」
 すぐ後ろにプラント本国が控えているザフト軍とは違い、ファントムペインは月基地か
らの補給部隊が命綱なのだが、今回急な出兵だったために、満足な物資を揃えることが出
来なかったのだ。
「故に混乱期にある敵を突いたのだが……戦場がかえって彼らに落ち着きを取り戻させる
結果になってしまったか」
 このまま行けば撤退もありえる。長期戦ではこちらが不利だ。かといって、これを打開
する有効な策は……
「艦長、盟主ロード・ジブリールより暗号通信が!」
「なに? スクリーンに映せ!」
 映し出された暗号文を見て、イアンは驚愕を覚えた。
「ダイダロスから、プラントへ向けて核攻撃隊を発進……初戦から核を使うというのか!」
 常識外の作戦と命令であった。イアンの艦隊にはこのまま『囮』として、ザフト軍を主
戦場に釘付けにしろと言うのだ。
「盟主……貴方という人はどこまで―」

「旧連合は、こんな単純且つ簡単なことも出来なかったのだ」
 地球の私邸にて戦況を『観戦』するジブリールは得意気であった。
「何も正攻法の戦いなどする必要はない。核ミサイルを一発撃つだけでいい。それだけの
ことを、躊躇う方がどうかしている」
 使えるものを使わないなど宝の持ち腐れであり、何よりユニウス条約は既に破棄されて
いる。迷う必要などどこにもない。そうジブリールは考えていた。
 本来であればこのような強引な作戦は、ネオ辺りが止めるべきなのであるが、彼は現在
艦隊を率いてザフト軍地上拠点の一つジブラルタル基地攻略へと出撃していたため留守で
あり、この作戦を知る由がなかった。ちなみに、ホアキンも艦隊を率いてザフト軍のカー
ペンタリア基地へと遠征していたが、彼は極端なナチュラル原理主義者であるため、この
作戦には反対しなかったであろう。
「さぁ、砂時計よ、華麗な花火を見せるが良い!」


529:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/10 11:56:29
 その頃ロッシェは、ミーアと共に戦況を見つめていた。
「そろそろ頃合いか……」
 ロッシェがそう呟いたのは、奇しくもイアンの元にジブリールからの暗号通信が届いた
ときと同じだった。
「ロッシェ?」
 呟きと共に立ちあがった彼を不思議そうにミーアは見るが、ロッシェは軽く笑うと、
「ミーア、そろそろ私も出撃するときが来たようだ」
「えぇっ!? ロッシェも戦いに行くの?」
「あぁ、既に議長に許可は貰っている。問題はないさ」
「そういう問題じゃ……」
 ない、と言おうとしてミーアは口をつぐんだ。ロッシェが右の人差し指で、彼女の唇を
塞いだからだ。
「大丈夫だ。私は負けはしない。勝って、またここに戻ってくる」
 その自信に満ちあふれたロッシェの顔に、ミーアは言葉に出来ない安心感を憶えた。
「じゃあ……気をつけてね」
「当然だ」
 ロッシェは、レオスがある格納庫に向かうと、久方ぶりにそのコクピットへ入り、シー
トへと腰掛けた。
「私の読みが正しければ、敵は奇襲を仕掛けてくる……膠着しつつある戦況を大きく動か
すにはそれしかない」
 レオスを起動させ、各部をチェックする。どこにも異常はない、極めて正常だった。ロッ
シェはハッチを開けさせると、広がる宇宙空間と、遠くに映る戦場に眼を細めた。
「ロッシェ・ナトゥーノ、参る!」



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