種・種死の世界にWキャラがやってきたら MISSION-07at SHAR
種・種死の世界にWキャラがやってきたら MISSION-07 - 暇つぶし2ch300:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/02 16:13:10
 その頃、ユニウス・セブンでの破砕作業を終えて帰還したミネルバとジュール隊にそれ
ぞれ国防委員会からの次の指令が待っていた。ミネルバに対しては、当初の予定通り月軌
道への配備。進水式に関しては、予算の都合上改めてやるつもりはないようだった。
 そしてジュール隊への指令は先の事件を起こしたテロリストの捜索という物だった。
「捜索、でありますか?」
 その言い慣れぬ単語を、イザークは少々不快そうに口にする。
「君たちはあのテロリストどもと遭遇し、戦闘も行っている部隊だ。捜索任務というのは
確かに地味な仕事ではあるが、君も軍人である以上は拒否権はない」
 国防委員長は、端的に事実だけを述べる。
「しかし、この発見次第抹殺も許可するというのは……」
「行動は迅速かつ的確に。生死問わず、テロリストどもを始末できれば今回の一件は終わ
る。上はそう判断したのさ」
 イザークとて僅かな期間ではあるものの政治の世界にいたことがある人間だ。テロ行為
に対して国というのは、どんな方法でも早期解決を目指さなければ行けないと言うことぐ
らい知っている。しかし、イザークはなるたけテロリストは逮捕し、大々的に裁判にでも
かけたほうが良いのではないかとも思う。内々に処理しては帰って疑惑を生む。
(それとも、生きていられると困る事情でもあるのか?)
 イザークはこの可能性が決して低くはないと思った。いくらザフトの脱走兵とはいえ、
独自にカスタマイズされたモビルスーツを持ち、安価とはいえ大型フレアモーターを持ち
出してテロ行為走るなど、彼らだけで出来るとは思えない。故にバックに政治家や企業が
付いていたとしても、不思議ではない。
(だから裁判を恐れる。ボロを出させないために、か)
 しかし、イザークはそれ以上何も言うつもりはなかった。軍人に戻った以上、彼には政
治に対して発言をする権利などないのだ。
「ジュール隊、任務了解。直ちに出動します」


301:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/02 16:14:56
 ロッシェは自分の事情を説明するに当たって、なるべくウルカヌスの件について触れな
いように心がけた。デュランダルがどう言った種類の人間であるか、まだ明確に見定めら
れない以上、あの存在を軽はずみに話すのは憚られた。
(この世界の技術力がどの程度かは知らんが、カスタムタイプのレオスに驚愕しているよ
うでは、アレの中身はもっと危険だ)
 例えデュランダルが善人であったとしても、欲や野心というのは人を変えてしまう。
そして、ロッシェはそれを身内からの裏切り行為という形で、よく知っていた。
「つまりこの世界に、君の他にも異世界から来たであろう人間がいると?」
 デュランダルはロッシェの話に愕然としていた。ロッシェのような人間がこの世界に複
数人来ているという事実は、彼にとっては無視できない事実だったのである。
「少なくとも私と行動を共にしていた男は来ている可能性が高い。そして私とそいつが行
方を追っていた男もまた……」
「その人も、ロッシェみたいな感じの人なの?」
 当然のようにその場に残っていたミーアが、そうロッシェに尋ねる。
「みたいな感じ、というと?」
「ロッシェみたいに、なんていうのか……そう、貴族的って言うか」
「貴族的も何も、私は貴族ですよ、ミーア嬢」
「えっ! そうなの?」
 デュランダルは頭を抱えたくなった。何が貴族だ馬鹿馬鹿しい。
が、そう思いつつも既に自分は、目の前の青年が異世界の皇帝陛下だと言われても納得し
てしまいそうなほど圧倒されまくっていた。
「まあ、財団が崩壊して以来飾りのような物ですが、爵位も持ってましたよ」
「じゃあ、その一緒にいたお友達も?」
 友達、自分にとってオデルは友達なのだろうか? ミーアの言葉に、そんなことを考え
たロッシェだったが、フッと笑うと、
「アイツは民間の技術屋です。今頃でどこで何をしているのか……」
 しかし、ロッシェはそんなに心配はしていなかった。時としてオデルの行動力は自分な
どの予想以上のものだからだ。……仮面にマントを羽織っていたときは、密かにそのセン
スを疑ったが。
「議長、行動の自由をいただけるのであれば、私は仲間を捜したい」
「むぅ……それは、しかし……」
 ロッシェの頼みに、デュランダルは眉を顰める。害意のある人間ではない、そんなこと
はこの会話の中から容易にわかることだ。しかし、行動の自由を与えるにしても、ある程
度の監視下に置いておく必要はある。こんな企画外れの容姿を持つナチュラルを、野放し
にしておくのは余りにも危険だ。
「こちらの条件を呑むのならば、ある程度自由は保障しよう」
「ほぅ……その条件とは?」
 ロッシェの瞳が探るように、ミーアの瞳が覗くように、デュランダルを見る。
「それは……」


302:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/02 16:16:39
 ネオ・ロアノークは常に仮面を被っている男だ。人が仮面を被る理由は、顔を隠すため
であり、顔を隠す理由は様々だ。傷や火傷、跡の残る外的損傷を人に見せないため、醜い
容姿を隠すため、そして、他人に顔を知られてはいけないため。しかし、この時ネオの仮
面はいつもとは違った効果を発揮していた。もっともそれは、嫌いな上司からの嫌な命令
に対して、表情を隠す、というものだったが。
「お話の内容は分かりました……しかし、この作戦、本気で行うのですか?」
 ネオは、ジブリールから渡された、ある作戦の計画書に一通りの目を通すと、率直な感
想を漏らした。作戦自体は見事な物だと思う。とてもこの盟主が一人で考えたのだとは思
えないが、確かにこれならば成功率は高い。しかし……
「この作戦、成功した場合、また戦争が起こるのでは?」
「それがどうした? 我々は戦争をしたいのだ。コーディネイターどもと和平などとあり
得ん妄想を抱き続ける偽善者どもを排除し、宇宙にある砂時計を全て消滅させるためにな」
 それはある意味、ユニウス・セブンのテロリストと同じ発想と意見なのだが、ジブリール
はそんなことを知る由もない。
「なるほど、如何にもブルーコスモスとロゴスの考えそうなことです」
 タップリと皮肉を込めていってやったつもりだが、ジブリールは堪えた様子もなく不敵に
笑っている。ネオに元より拒否権がないことを知っているのだ。
「ファントムペインを総動員するとして、間に合うか?」
 ジブリールの問いに、ネオは嫌々ながらも計画書を捲り、
「ギリギリ、といったところですかね。まあ、宇宙はダイダロスにいるイアンに任せるとし
て……」
「地上の実働兵力は貴様とホアキンに任せる。必要な資材があればなんでもいえ」
「必要なのは資材ではなく人材ですよ、盟主」
 ネオは、苦々しげにそう言うと、すぐに細部の調整にはいるためジブリールとの協議を始
めた。所詮自分はこんな風にしか生きられないのだ。拾われた死に損ないは、拾ってくれた
飼い主に忠誠を尽くす。例えそいつがどんなに嫌な奴であっても、だ。


303:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/02 16:18:25
 翌日、ジブリールは改めて大西洋連邦ジョゼフ・コープランドと通信による会話を交わ
し、和平会議へ正式に出席することを述べた。ジョゼフはこの心変わりを不審に思ったが、
自分から呼んでおいて怪しいから来るな、ともいえず、とりあえず形式的な感謝をし、通
信を終わらせた。
 通信後、ジブリールは笑いを堪えるのに必死だったという。彼はこの先起こるであろう
出来事と、始まる新たな時代に対して驚喜の笑い声を上げたくて、堪らなかった。
「いよいよだ。いよいよ、我らファントムペインが歴史の表舞台に立つときが来た」
 そして、憎らしきコーディネイターを、ザフトを、プラントを、今度こそ完全消滅させ
ることが出来る。
「アズラエル、私は貴様のような甘さは持たんぞ。貴様が怯え、震え、実行できなかった
作戦だろうと、勇気と冷酷さ持って実行してやる」
 この時、未だ世界は平和を維持することが出来ていた。それは大西洋連邦大統領ジョゼ
フコープランドを始めとした、地球連合内に広がりつつある反戦と和平を望む穏健派たち
の存在、オーブ代表カガリ・ユラ・アスハを始めとした中立国群の存在、そして今のとこ
ろは反戦派であるプラント最高評議会議長ギルバート・デュランダルの存在が、その平和
の均衡を保つため、存在の大きさを見せていたからだ。

 それから数日後、プラント国防委員会諜報部が、驚くべき機密情報の入手に成功した。
それはあのブルーコスモスが、今回のテロ行為に対する『報復』を目的とした極秘総会を
開き、プラントに対してすぐにでも核攻撃を行うという内容であった。


304:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/02 16:19:43
以上、第3話。
ある意味で、この作品は次から大きく動いてゆく、
といった感じでしょうか?
現在第6話まで書き上がっていますが、書きためつつ、
小出し小出しで投下していこうかと思います。
次回は少々長くなるかも知れません。

305:通常の名無しさんの3倍
07/03/02 16:23:30
う、生まれてはじめてのリアルタイムだ。
ディ・モールトGJッ!!
長くなっても全然かまいません。楽しみにしてます。
ロッシェとミーアいいなぁ・・・・・・(*´ω`*)


306:通常の名無しさんの3倍
07/03/02 16:25:30
GJ!
議長はロッシェ相手に圧倒されっぱなしか。

307:通常の名無しさんの3倍
07/03/02 16:56:58
乙!
そしてブルムさーん!

308:通常の名無しさんの3倍
07/03/02 17:08:53
>>293
工作員乙

309:通常の名無しさんの3倍
07/03/02 17:19:49
この議長がヴァルダーに会ったら飲み込まれるな。

310:通常の名無しさんの3倍
07/03/02 20:51:14
「暗黒の破壊将軍」ってニックネームを聞くだけでも卒倒しそうだ。

311:通常の名無しさんの3倍
07/03/03 06:41:12
GJ

ギルを手玉に取るロッシェがカッコヨス

312:通常の名無しさんの3倍
07/03/03 08:00:08
コープランドとジブリのやり取りを見ると
彼も伊達に選挙の洗礼を受けていないねw

313:通常の名無しさんの3倍
07/03/03 09:30:50
ただジブリールはファントムペインじゃないけどな

314:通常の名無しさんの3倍
07/03/03 09:56:22
つーかジブリはPPの親玉だから、
盟主王がドミニオンを好き勝手に使っていたのと同義。

私兵です罠

315:通常の名無しさんの3倍
07/03/03 10:01:15
>>310
マジンガーに出てきそうな名前だな……あちらは暗黒大将軍だが。

316:通常の名無しさんの3倍
07/03/03 10:10:09
バスタードとか

317:通常の名無しさんの3倍
07/03/03 10:13:00
星屑の騎士団(スターダストナイツ)もなw

318:通常の名無しさんの3倍
07/03/03 10:14:52
歌姫の騎士団といい勝負じゃん

319:通常の名無しさんの3倍
07/03/03 10:28:29
歌ハゲの氣志團

320:通常の名無しさんの3倍
07/03/03 10:31:56
ここはやはり新生星屑の騎士団の結成を…

321:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/03 11:27:16
私の認識ではジブリールって、
ブルーコスモスの親玉で、ロゴス内で強い発言力があり、
私兵ファントムペインを意のままに操れる男って感じな
んだけど……違うの?(汗)


322:通常の名無しさんの3倍
07/03/03 11:28:57
>>321
そんなもんでいいと思う。他に分かってんのは金融関係の人だというだけだし。

323:通常の名無しさんの3倍
07/03/03 11:43:07
>「いよいよだ。いよいよ、我らファントムペインが歴史の表舞台に立つときが来た」
ここがおかしいと思ったんじゃない

324:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/03 12:09:32
>>323
あー、その台詞か……
んーっと……私の作品のコンセプトが関わってくるんだけど、
それ話しちゃおうとネタバレにもなるからなぁ……
一応、次の第4話で私の作品が何をやりたいのかは明確になる
んですけど、書き上がってるとはいえ昨日投下したばっかだ
しなぁ。

325:通常の名無しさんの3倍
07/03/03 12:15:26
まあいいじゃないか
キラの設定も多少変わってるんだし、本編と違う部分があってもそれはそれこれはこれって事で

326:通常の名無しさんの3倍
07/03/03 16:25:33
うんうん、おkおk

327:通常の名無しさんの3倍
07/03/03 18:08:53
URLリンク(zip.2chan.net)
ウイングゼロすげー!!

328:通常の名無しさんの3倍
07/03/03 19:25:21
太陽系wwwwwwwwwwww
∀並にスゲーwwwwwwwwww

329:通常の名無しさんの3倍
07/03/04 01:02:07
wikiに登録されている作者さん以外で誰が書いてるか一覧が欲しいのだけど頼めるかな?

330:通常の名無しさんの3倍
07/03/04 01:04:59
連投失礼。今現在、現スレの>>237まで登録済み。
現スレの26氏はwikiに登録されている26氏とは別人でいいのかな?
このスレの26氏=運命の歌姫 ◆1gwURfmbQUさん?

331:通常の名無しさんの3倍
07/03/04 01:37:30
太陽系オワタ\(^o^)/
こりゃC.E.聖剣伝説も目じゃねぇぜ

332:通常の名無しさんの3倍
07/03/04 03:31:25
セルじゃないんだからw

333:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/04 04:41:26
>>330
私はwikiの登録の仕方知らなかったので違います。
もう保管してくださった方がいるんですね。
でも、ちょっと、直したい誤字脱字があるんですが、
wikiに登録って、どうやるのでしょうか?

334:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/04 04:45:13
と思ったら、保管はされてないのか(勘違い)
まあ、1,2,3話ともお恥ずかしいことに、
誤字脱字がちょっとあるので、私の方でも編集
出来れば……と思ってます。

335:通常の名無しさんの3倍
07/03/04 04:58:16
ライブドアID取って該当ページ上部の編集タブ押せばいいだけ。
編集終了したらそのページ下部の「保存する」ボタン押せば反映する。

個人情報出すの嫌がってID取りたがらない人とかは
ぶっちゃけ偽名使えばいいじゃないと時々思う

336:通常の名無しさんの3倍
07/03/04 06:21:56
>>335

今はID取らなくても登録作業に協力する事できるよ。
詳しくはwikiのTOPページにある編集方法の項目を見てちょ

337:通常の名無しさんの3倍
07/03/04 10:20:54
今は荒しがあった為にID取得しないと編集できないようになっています。
別の方法としてはtxtでもhtmlでもいいので修正した内容をUPロダ(トップページからいけます)に上げ、掲示板(これまたトップページから)で上書きするよう言って頂ければ編集しておきます。
っちなみに運命の歌姫さんの作品は夕方5時頃登録予定です。

338:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/04 14:58:48
>>337
了解しました。
とりあえず、今日はこれから出掛けるので、
帰ってきてから、編集等については考えます。

後、第4話は、今日の夜にでも投下します。

339:通常の名無しさんの3倍
07/03/04 15:02:20
>>327
この設定でクロスさせたらエライことになるなwww

340:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/04 22:15:11
帰宅。
投下します~

341:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/04 22:18:41
 プラント最高評議会は12名の評議員によって構成されている。議長、副議長、国防委
員長等の役職に就いている彼らは、プラント12の市から各一人ずつ互選制によって選ば
れたメンバーだ。最新のコンピューター技術の発達により個々の能力や実績から「政治
家としての適正」を判断された彼らは、時として本人の意思とは関係なくこの道にくる
べき事がもある。しかし、少なくとも最高評議会議長ギルバート・デュランダルは、自
身がくるべくしてこの道に入ったと思っている。
 彼は、自分が将来的に成立目指すある計画と、このプラント最高評議会の評議員選出
方法は似ていると思っていた。コンピューターによってその適正を判断され、その職に
就くというのは彼には願ってもないことだ。
「いずれ、政治家だけでなく他の職種もこのような形になってゆくだろうさ。最高評議
会、国のトップでさえこのような選出方法なのだから」
 これはデュランダルが、今のところもっとも信頼している被保護者である少年に語っ
たという言葉だが、確かにこのまま彼が最高評議会議長の座に居座り、計画を推し進め
ることが出来れば、それは可能だったであろう。故に彼は、他の議員たち以上に、自分
の地位と権力を愛していた。だからこそであろうか? 彼は自分の進退にも影響を及ぼ
すような重大な議題が議会に上がると、途端に慎重になった。
 世間ではそんなデュランダルの態度を、「常に沈着冷静で、軽はずみな決断と決定を
しない」と評価することもあれば「難局に対しての行動力に欠ける」と非難することも
あった。どちらもそれなりに理のある表現ではあったが、歴代の議長が必ずしも優れて
いたわけではないことを考えれば、デュランダルの評判はそれほど悪い物ではなかった。

 薄暗く窓一つ無い会議室は、ドーナツ上となっており、中央の円卓に最高評議会の委
員長クラスの議員たちがそれぞれ腰掛けている。
 この日の議題は、国防委員会より提出された、『ブルーコスモスによるプラントへの
核攻撃の可能性』についての対策についてであった。これは昨日、国防委員会の諜報部
が入手することに成功したブルーコスモスの最重要機密であり、近々行われるらしいブ
ルーコスモス全体総会の承認待ちという案件だった。
「では、ブルーコスモスは今すぐにでも我らプラントに対し核攻撃を行う、国防委員長
はそう仰るのか?」
 まず口火を切ったのは、デュランダルであった。形式上、議長がまず意見なり質問な
りをして会議を推し進めるのは最高評議会の通例であり、デュランダルが特別論戦派と
いうわけではない。
「少なくとも、彼らは我々に対する口実を欲しています。戦争か、攻撃か、そこに格好
の名目を手に入れた」
 国防委員長は、資料を広げながら溜息をついた。彼は昨日から今日の会議にかけてま
での時間を諜報部がもたらした情報の真実性、つまり裏付けを取ることに費やしており、
そしてその結果、「92%以上の確立で真実である」というものに頭を悩ませ続けていた。
「口実と言っても、ユニウス・セブンにおける一連のテロ騒動は防いだではないか!」
 女性議員の一人が、言いがかりだと言わんばかりな剣幕で発言するが、国防委員長は諦めたように首を振る。

342:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/04 22:21:39
「彼らは政治家でもなければ軍人でもない、ただの主義者です。人の持つ常識とか良識に
は無縁の立ち位置にいるのですよ。まあ、少なからず残っていた見識が今まで彼らの行動
を抑えていたのでしょうが、今回我々がテロという弱みを見せてしまったが為に、そこに
つけ込もうと必死なのでしょう」
「それでブルーコスモスの連中が納得しても、地球の各国は? 一方的な攻撃を許すとい
うのか?」
「許しはしないでしょう。だからこそ彼らは極秘に事を進めている……そう、いつかの血
のバレンタインのように」
 国防委員長の、本人としては何気なく言ったつもりの一言が、議員たちをしんと静まり
返した。そうだ、ブルーコスモスはあの血のバレンタインを起こした連中だ。何をするか
などをわかったものではない。
「しかし、国防委員長、事態が急を要することはわかるが、君の対応策は少々強引ではな
いか? 衛星軌道上からブルーコスモスの総会が行われる連合軍基地に制圧部隊を送り、
これを逮捕または抹殺する、と言うのは」
 デュランダルは国防委員会が提出した作戦書を見ながら険しい表情で言う。しかし、国
防委員長はそれを制止、
「確かな情報を持ちながら、後手に回るというのですか? 議長、今また核を撃たれれば、
プラント市民の反戦意識は著しく低下しますぞ? ただでさえ、ユニウス条約への不満が
残っているのが現状です」
「プラント市民が、民意レベルで戦争を望むと? 我々はそこまで愚かでは……」
「だが、血のバレンタインの時は違った。市民は地球へ、ナチュラルへの報復を叫び、デ
モや集会を繰り返した。結果、当時の最高評議会は開戦を決意した、違いますか?」
 デュランダルはその反論に口をつぐんだ。それは事実であり、当時のプラントが民意に
よって動かされた結果でもあった。
「国防委員会としては、我々コーディネイター最大の驚異であるブルーコスモスを、これ
を機に一網打尽にしたいと思っております。テロ行為を名目に、プラントに対し核攻撃を
行おうとしている彼らこそテロリストではないか!」
 国防委員長の一際高い声に、会議室の議員たちは自己の決断を迫られ始めた。
 そして、国防委員会諜報部より新たな情報が来たのはこの時だった。連合軍の月基地ダ
イダロスに異変アリ。出撃準備をしている傾向にあるというのだ。
「……では、早急に議題を可決しましょうか?」
 それ見たことか、と言わんばかりの国防委員長の声に議員たちは早期議決することを決
定し、投票用のボタンにそれぞれ指を伸ばした。
 結果、過半数の議員が賛成を押した。評決の結果ザフトによるブルーコスモス総会への
制圧作戦が可決された。デュランダルはこの時、反対の票を入れていた。



              第4話「時代の変革」




343:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/04 22:24:19
 月軌道に配備予定だったミネルバに、ブルーコスモス総会制圧の命が下ったのは最高評
議会の作戦決定から僅か14時間後のことだった。ただ降下部隊を降ろすよりも戦艦による
奇襲攻撃をかけ、敵の抵抗力を一気に殺ぐ、というのが国防委員会と軍部の狙いであっり、
ミネルバは大気圏突入が可能な最新鋭艦だ。
「グラディス艦長、君の艦のクルーは新進気鋭の若者たちが多いが、だからといって失敗
が許される任務ではない。心して作戦を実行してくれたまえ」
「わかっております。クルー一同、最善を尽くします」
 国防委員長から直接指令を受けたとき、タリアは彼が自分に余りよくない印象を持って
いるということに気付いた。面白くないのであろう、国防委員会と軍部が威信をかけて作
り上げた最新鋭艦の艦長を、女の自分に取られたのだから。取られた、と言うのは正確な
言い方ではないが、タリアが艦長になった裏には、ギルバート・デュランダル最高評議会
議長の後押しと推薦があったと言われ、事情を知る一部の者、国防委員長クラスともなれ
ば、余りいい気はしないのだ。
 しかし、迅速さが求められる今回の作戦に、足自慢でもある快速戦艦のミネルバは絶対
に必要であり、また能力も決して低いわけではないので、渋々の決断、といったころか。
「というわけで、ミネルバはこれより地球に向けて出発。衛星軌道上から艦を降下させ、
連合軍基地制圧の任務に当たります。何か質問は?」
 艦に戻ったタリアは、ブリーフィングルームにクルーを集め、今回の作戦内容を説明した。
「よろしいですか、艦長?」
「なに? レイ」
 モビルスーツパイロット、レイ・ザ・バレルが質疑の挙手をあげた。
「この度の作戦の重要性は理解できました。しかし、何故ミネルバだけなのですか?」
 レイの隣に座るシンは、もっともな質問だと思った。自分たちの力が足りないとは思わ
ないがこの作戦は絶対に失敗が許されないものだ。それをミネルバ一隻で、というのはい
ささか心細いのではないか?
「基地を制圧するにしても、もっと大部隊を投入すれば、より早く、確実に済むと思うの
ですが?」
「えぇ、確かにそうね。でもね、今回のブルーコスモスの総会はかなり極秘裏に進められ
ている物なの。それに対して大部隊を動かせば、向こうに察知される可能性がある、少な
くとも上はそう考えたようよ」
 隠密にことを進めろ、つまりはそう言いたいのだろう。
「ですが、艦長」
 同じくモビルスーツパイロット、ルナマリア・ホークが挙手と共に発言する。
「ミネルバは先の戦いで、その、モビルスーツパイロットを二人、失いました。補充員も
ないままでは、戦艦一隻にモビルスーツ3機で基地制圧をすることになります」
 レイの言いぐさではないが、戦いは数だとルナマリアは思っている。エースなどと呼ば
れてはいるが、自分たちは未だ実戦経験の少ない青二才の集団に過ぎない。

344:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/04 22:27:05
「基地の規模がどれほどかはわかりませんが、基地である以上それなりの兵力を有してい
るはずでは?」
 プラントの命運が掛かった作戦である以上、多少のリスクを背負ってでも兵力を増強す
るべきだとルナマリアは言いたいのだ。
「それについては心配いらないわ」
 タリアはクルーの不安を取り払うべく、国防委員長より渡された制圧目標である基地の
資料を提示する。
「さすがに連中も極秘にことをすすめているだけあって、この通り基地は小さな物だし、
配備されているモビルスーツは微々たるものよ。我が隊だけでも十分に攻略できるわ」
 国防委員会も軍部も、実現不可能な作戦など立案しない。勝算があるからこそミネルバ
による単艦制圧にしているのだ。
「……上層部の認識はわかりました。しかし、この作戦項目に書かれている『ブルーコス
モスメンバー逃亡時の措置』については?」
 ルナマリアは、一応の納得をすると質問を変えた。この項目は、資料を読んでいた際に
シンと共に驚いた、驚愕とも言って良い内容だ。
「本項目には『ブルーコスモスのメンバーの逮捕に失敗し、逃亡の可能性が出た場合これ
の抹殺も許可する』とありますが?」
「えぇ、確かにそう書いてあるわね」
「しかし、ブルーコスモスは軍属も含めてはいますが基本的には民間団体です。裁判にも
かけず他国の軍隊である我々が、これを処刑する、と言うのは?」
 テロリストである以上、それも止むえないのかも知れないが、ルナマリアにはこの項目
が乱暴にも思えた。
「それに……」
 それまで機を見計らっていたシンが、ここで口を開いた。
「かえってこの事が、奴らに戦争の口実を与えるんじゃ?」
 シンの意外と当をえている意見に、クルーたちは静まりかえった。シンがまともな発言
をしたからではない。戦争という、嫌な響きに反応したのだ。
「奴らが口実を探して、今回のテロ騒動を利用してるって言うのなら、不用意に攻撃何か
したらそれこそ……」
「シン」
 言いかけのシンを、タリアが遮った。それ以上は無用な議論になるとわかっていたからだ。
「残念だけどこの作戦は、最高評議会で可決され、国防委員会から軍上層部へ直接下され
たものよ。今更撤回はあり得ないし、我々にその権利もない。事は政治の問題よ、何か意
見を言いたいのであれば、政治家でも目指す事ね」
「…………」
 シンは何も言わず、そのまま押し黙った。その後、作戦の事細かな詳細に移り、具体的
な実働作戦は衛星軌道上から降下したミネルバが、まず基地に一撃を与え、それをモビル
スーツ部隊で制圧するという、妥当な物になった。


345:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/04 22:29:54
「ほらっ、シン」
「……ありがと」
 ブリーフィング終了後、休憩スペースでつまらなそうに座っているシンを見つけたルナ
マリアは、彼にドリンク渡し、隣に腰掛けた。
「珍しいじゃない。アンタがあそこまで積極的に艦長に意見するなんて」
 少々意地悪そうに彼の顔をのぞき込むルナマリア。その小悪魔的表情は、普通の男性で
あれば魅了されてしまうほどのものだったが、生憎とシンはその手のことに興味がなかった。
「別に。ただ思ったことをいっただけだよ……」
「ふーん」
「軍人なんて所詮は人殺しの職業、判ってはいるんだけど、どうもな」
 今回は、あの悪名高きブルーコスモスが相手ではあるが、彼らは一応は民間人だ。それ
を軍人である自分が攻撃し、場合によっては抹殺するというのは、気分の良い物ではない。
「でも、ブルーコスモスって言ったら、その……シンの」
「あぁ、仇の一つだ。前の戦争で地球連合がオーブに進行した際、その指揮を執っていた
のはブルーコスモスの前盟主だからな」
 ムルタ・アズラエル。シンがその存在を知ったのは彼が死んだ戦後だった。彼は地球連
合への強力を拒み続けるオーブに対し、幾度となく交渉を持ちかけたが、オーブの前代表
であるウズミ・ナラ・アスハは彼と語る舌を持ち合わせはしないとして、これを断固拒否。
遂に痺れを切らしたアズラエルは連合軍を動かし、オーブに進行した。これが前大戦のオ
ーブ解放作戦の真相である。そしてシンは、その作戦時にオーブにおり、両親と愛する妹
を失っていた。
「だけど、個人としての私怨を理由にして戦ったら、奴らと同レベルじゃないか」
「シン……」
「俺は軍人だ。軍人になった以上、個人的感情じゃなくて組織のために動く」
 シンが軍人の道に入ったのは、何も彼が戦災孤児で食うにも困る身分だったからではな
い。戦中も戦後も、シンの心は常に憎悪と復讐心が支配していた。妹を奪った戦争、オー
ブに攻めてきた連合、無謀な戦いをしたオーブ、妹と家族を撃ったモビルスーツ、彼の精
神はそれらに対する思いに蝕まれていた。このままではいけないと思った。このまま自制
心が崩壊すれば、自分は連合やオーブに対するテロリストか、よくてレジスタンスになっ
てしまうだろう。こんな自分に歯止めをかける方法はないか……あった。
 それがザフトへの志願という道だった。規律の厳しい軍隊に身を置くことで、自己の精
神を縛り、自己の意見や主張よりも、組織について常に考える。シンにとって、手っ取り
早く憎悪や復讐心を忘れるにはそれしかなかったのである。
 故にシンのアカデミー時代はとにかく凄かった。自分が戦闘向き、軍人向きのコーディ
ネイターでないことをシンはよく理解していたから、人の三倍は常に努力したし、三倍で
ダメなら五倍、五倍でもダメなら十倍努力するようにした。結果、彼はアカデミーを次席
卒業、文句なしでザフトレッド、赤服を着ることが出来るようになった。
「確かに俺は今回の作戦に不満を持ってる。それもルナが心配してたような作戦の成功と
かそういった類の物じゃない」
 相手が妹の仇であったとしても、民間人を手にかけるというのは、彼の理念に反した。

346:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/04 22:33:06
しかし、これもまた軍隊という組織に身を置いた物の運命なのだろう。軍人は命令に従う
義務があるのだ。そして、その命令に意味を考えるのは、必ずしも軍人ではない。
「ねぇ、シン。この任務が終わったらさ……」
 深刻な顔で考え込むシンを見て、ルナマリアはニヤリと笑いかける。
「デートしない? 二人で、どっか遊びに行こうよ」
「デート!? ル、ルナ、い、いきなりなにを……」
 突然の、しかも『妹以外』の女の子から始めて誘われたデートの申し込みに、シンは面
食らったように赤面する。
「作戦が成功すれば休暇ぐらい出るでしょ?」
「そりゃ、出るだろうけど……」
「パーッとさ、嫌なこととか忘れて、遊べばいいのよ。シンはさ、少し物事を考え込む癖
があるわよ。それが悪い癖だとまでは言わないけど、それじゃ人生楽しくないって」
 ルナマリアの言っていることは正しかった。シンは、常に物事を一歩引いた立ち位置で、
客観的に見ようとしている。それはプラントのことだけではなく、地球やオーブといった、
仰々しくいえば宇宙全体についてとも思えた。彼の祖国はプラントではない。でも、今や
オーブでもない。そんなこともあってか、彼は親プラントとか、そう言った一部に偏った
思考とは無縁だった。そして、そんなシンの考え方を、ルナマリアは嫌いでなかった。
「それに何か目標があったほうが作戦もはかどるわよ? アタシみたいな可愛い娘とデー
トできるなんて、凄い励みにならない?」
「自分で可愛いとか言うなよ……」
「そう? 結構自信あるんだけど」
 そりゃ、アカデミー時代はそれなりに人気あったけど……とシンは思う。
 ルナマリアは、席次こそ首席のレイや次席のシンに劣るものの、ザフトレットになるだ
けの優秀さを持っており、学生時代はその容姿と共にかなりの人気であったことをシンは
記憶している。レイが女子人気を一手に集めていたのならば、ルナは本人の意思とは無関
係に男子人気を掌握していた。それがなんだって自分なんかと仲良くし、連むようになっ
たのかをシンは思い出せないが、ルナは彼にとって大切な友人だった。
「まあ、考えといてよ。勿論、返事は良いのを期待するけど」
「……あぁ、考えておくよ」
「アタシね、行ってみたいとこがあるんだぁー」
 楽しそうに笑うルナマリアを見て、シンも微笑んだ。こうやって、自分と一緒に笑える
友人を、俺は守っていかなきゃいけないんだ、と。

 その日、地球連合軍の基地で行われていたのは、大西洋連邦ジョゼフ・コープランドを
議長とするプラントとの和平について協議する、平和に向けての総会だった。出席者は主
に連合加盟国を中心とした反戦を唱える穏健派の政治家たちと軍人たちであり、ブルーコ
スモスの盟主など、もっともこの場に似つかわしくないと誰もが思っていた。
 しかし、いざ会議が始まってみると、ジョゼフ・コープランドは今まで暗黙の了解とし
てきた部分にズバズバと斬り込んでいくではないか。
「―このことからも、私は連合規模での軍備を見直し、それを最小限に縮小していきた
いと思っております。その為にはまず、連合軍をもっと透明性のある軍隊にする必要があ
り、かのファントムペインなる部隊も例外ではありません」

347:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/04 22:35:22
 ファントムペイン。その名を聞いた政治家たちは一様に顔をしかめ、軍人たちは目を背
けようとした。近年、連合軍内部に台頭してきたこの部隊は、あのブルーコスモスの息が
掛かっており、ブルーコスモスのバックにいるといわれる軍需産業複合体ロゴスの資金力
を背景に、独自の指揮系統を持つ大規模な独立部隊になっていた。
「しかし、ジョゼフ大統領は軍備縮小を声高に唱えられるが、その為にはプラントにもザ
フトの規模縮小を求める必要があるのでは?」
 出席者の一人が当然のことである質問をする。
「無論私は、プラントにも同様の考えを提示するつもりだ。だからこそ我々がまず手本と
なり、軍備の縮小及び解体を進めねばならんのだ」
 そしてやがては兵力や兵器といったものを全廃できれば……と、ジョゼフは思っている。
私が生きているうちは無理でも、私の跡を継ぐ者が、私の志を継いでさえくれれば、公約
に掲げた『プラントも含めた地球圏統一政府の樹立』は可能になるはずだ。
 その為にも、ここ踏ん張りどころなのだ。今日を乗り切れば、世界はとりあえず連合だ
けでも軍備縮小、和平への道に加速するはずだ。
「しかしですなぁ、大統領閣下」
 ここで今まで黙って静観を決め込んでいたかに見える、ブルーコスモス盟主ロード・ジ
ブリールが口を開いた。その顔は、ジョゼフに対して幾分かの侮蔑と失笑を含んでいる。
「未だ我々はコーディネイターどもと手を取り合えるわけではないはずですよ。失敗に終
わったとはいえ、過日もコーディネイターによる地球に対するテロ行為があったではあり
ませんか。あのユニウス・セブンが落下していた場合の被害規模を計算したのですがね、
まったく途方ない結果でしたよ」
 ジブリールはコーディネイターという部分を強調しながら、コンソールを操作し、スク
リーンに予測計算された被害状況を提示して見せた。確かにそれは酷いものであり、仮に
欠片一つ落ちていたとしても、無視できない被害であった。
 総会出席者は息を呑むものもいれば、目を疑うものもいたが、壇上に上るジョゼフは冷
静だった。
「過ぎ去った事件に対して悲観的な過程を見せられても困るなジブリール。今現在地球に
ユニウス・セブンは欠片一つ落ちていない、これは紛れもない事実だ。ザフトが責任を持
ってテロリストを撃退してくれたというな」
「ですが、現実にコーディネイターどもに未だ我らに牙を剥く連中がいるのも事実。未だ
逮捕されていないのでそう? コーディネイターのテロリストどもは」
 確かにプラントは未だにテロリストの逮捕には至っていなかった。ザフトが派遣したジ
ュール隊は寝る間も惜しんで日夜捜索を続けているのだが、一向に成果が得られてはいないらしい。

348:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/04 22:38:11
「プラントの市民や、ザフトの中に我々に不満を持つものがいるのは当然だろう」
 突然、ジョゼフはそう切り出した。
「いきなり何を言われるのです? まさかまた血のバレンタインを引き合いに出すのでは
ないでしょうな? あの一件はこちらもエイプリルフールクライシスで相応の……」
 反論するジブリールをジョゼフは手で制した。その顔には決意の色があった。
「これは一昨日、プラント側が極秘裏に公開したプラントの軍事工廠アーモリーワンで起
きたある事件に付いての映像だ」
 映像では、ザフトの最新鋭機がアーモリーワンを破壊して回る映像があった。
「この後、ザフトは機体を奪って逃走したテロリストに追っ手をだし、これと戦闘を行っ
たそうだ。これがその時の映像だ」
 議場に動揺が走った。ザフトのモビルスーツが戦っていたのは、紛れもない連合製モビ
ルスーツ、ダガーだったからである。
「つまり、この事件は連合軍が起こした物である可能性が非常に高い。しかも、その部隊
は一般の指揮系統には左右されず、戦艦とモビルスーツを持ち出すことが出来る、とても
優遇された存在だ」
 ジョゼフの目がいっそう鋭くなり、ジブリールを睨み付けた。
「フン、プラントの自作自演ということもあり得る」
「ほぅ、連合のダガーLをザフトが? それこそあり得ない話だろう」
 如何にも苦し紛れといった感じで毒づくジブリールと、冷静に彼を圧倒していくジョゼ
フ。議場にいる人間は、ジブリールの敗北と、ジョゼフの勝利を悟った。

 一方、基地の外ではファントムペインのネオ・ロアノーク大佐による作戦の最終チェッ
クが行われていた。
「シャトルの配置は全て完了しているな? あぁ、そうだ、その配置で良い」
 ネオはきびきびと指示を出しながら、今回の作戦に気乗りしない自分の心を紛らわせて
いる。
「ロアノーク大佐、パナマ派遣部隊から通信が入っております」
「スティングから? よし、繋いでくれ」
 恐らく作戦開始前の挨拶であろうが、もしかすれば部隊で何か問題が起こったのかも知
れない。決して仲の悪い三人ではないが、自分が居ないとまとまりを欠くこともある。
『よぅ、ネオ! そっちはどうだよ?』
 しかし、そんな心配は無用だったようで、通信機越しのスティングの声は至って気楽な
物だった。

349:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/04 22:39:47
「こっちは滞りなく進んでいるよ。そっちはどうだ? 俺が居ないからって喧嘩でもして
るんじゃないだろうな?」
『ばーか、俺達だってもうガキじゃねぇんだ。そんなことしねぇよ。……まあでも強いて
言えば』
「何かあったのか?」
 ネオの仮面に隠れた表情が一瞬険しい物になるが、スティングは軽く笑って、
『ステラがお前に会えなくて寂しがってるぜ。ネオー、ネオー、ってな。帰ったらタップ
リ構ってやれよ?』
「フフ、ハハハッ! なんだ、そんなことか。判ってるよ、帰ってきたらステラをタップ
リ可愛がってやる。お前とアウルにもメシでも奢って」
『いっとくが、ステラにイヤらしいことはすんなよ、おっさん』
「おっさんじゃない! お前、なんてこといいやがる!」
『構ってやれっといったのに、可愛がってやると返すところが、おっさん臭いんだよ。し
かもエロ親父の部類だな』
「お、お前なぁ!」
 そんなやりとりが少し続いたが、決してこの二人の仲は悪くない。むしろ、ファントム
ペインの中でも良好な部類に入り、スティングたちはネオを慕っている。
『まあ、そういうわけでこっちは俺に任せろ。おっさんも、そっちで頑張れよ?』
「だから、おっさんじゃないと何度言えば―」
『じゃーなー、アウルが呼んでるわ』
 一方的にスティングに通信を切られ、ネオは少しの間憮然とした表情をしていた。まっ
たく自分は仮面を付けていたよかった。おっさんと連呼されて、結構傷ついているという
事実を、周りに悟られないのだから。
「さて……後は、ザフトの皆さんの到着を待つばかりだ。上手く餌は流したんだ、精々派
手に食らいついてくれないと困るぜ?」


350:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/04 22:40:52
「皆さん、今度の事件を私は良い機会だと思っております」
 総会はいよいよ終盤を迎えていた。ジョゼフは最後の締めとして、熱弁を振るう。
「これからは地球もプラントも武器を捨て、対話による解決を目指す。それこそが平和へ
の大いなる一歩だと、私は確信しております!」
 議場から盛大な拍手が巻き起こる。あのジブリールでさえ拍手をしている。
 ジョゼフは満足しきっていた。時代は変わる、自分の理想、平和への道へと。時間は掛
かるかも知れない、しかし、それがなんだというのだ。時間をかけてえられる平和ほどあ
りがたい物はないではないか。
「皆さん、私は賛同してくださる皆さんを心から―」
 この時、ジョゼフはたった一つだけ、考え違いをしていた。
 確かに時代を変えることは可能だ。長い目で見て平和を作っていくことも、不可能では
ない。だが、世界を動かすにはもっと単純で、変革させるにはとても有効な手段があった。
それは、武力によるクーデターという物だった。

「……来たか!」
 宇宙より降下し、真っ直ぐとこちら向かってくる戦艦を確認したネオは、それが見知っ
た戦艦であることを知り苦笑した。
「つくづく縁があるらしいな……奴らとは」
「大佐、すぐに警報を出しますか?」
「いや、ギリギリまで待て……奴らに先に仕掛けされるんだ」
 その上で警報を流す。総会出席者は面食らって肝を冷やすだろう。
「ここまでは計画通り……後は時代が俺達を受け入れるかということだけだ」
 C.E73年10月末日。歴史は今、新たな時代を迎えようとしている。

                               つづく

351:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/04 22:42:09
第4話。
予定では今回で戦闘シーンまで持って行くつもりだったのですが、
予想以上に長くなったと感じたので、とりあえずはここまで。
この先の展開、このスレにいる皆さんはもう判っちゃったと思います。、
どうだったでしょうか?
今のところ全然活躍していないロッシェや、どこに行ったのかも定かではない
オデルですが、そのうち活躍予定なのでもうしばらくお待ち下さい。

352:通常の名無しさんの3倍
07/03/04 22:43:12
こ、これは流血へのシナリオ!?
GJ!

353:通常の名無しさんの3倍
07/03/04 22:57:25
GJ

コープランド大統領閣下の死亡フラグが強烈過ぎるw
彼がノベンタ元帥なわけだな

ジブリがトレーズでネオがレディ。

ミネルバ隊がテロリストのガンダムパイロット役と。

と言う事はシンが心ならずとも戦争への引き金を引いてしまう
ヒイロ役なわけですね!
続きが気になります

354:通常の名無しさんの3倍
07/03/04 23:30:34
GJ!
シンに特大のトラウマが出来そうな予感…
ガクブルしながら続きをまってます。

355:通常の名無しさんの3倍
07/03/05 01:14:15
あぁ~、これはなぁ~
ヒイロは自爆とか被害者家族のとこ行ったりしてたけど
シンは軍人だからそんなことできないしな……

356:通常の名無しさんの3倍
07/03/05 03:00:09
若者よ、早まるな...

357:通常の名無しさんの3倍
07/03/05 06:52:20
GJ!
しかしこの死亡フラグっぷりは・・・
大統領逃げて!超逃げて!
あぁでも、逃亡者は抹殺か・・・

358:通常の名無しさんの3倍
07/03/05 07:37:38
ハッ、早まるな、若者よ!
いやぁ、上手い上手い。これは実に上手い。GJです、

359:通常の名無しさんの3倍
07/03/05 10:20:13
しかしあくまで一テロリストに過ぎないW主人公ズはともかくとして、
国家の諜報機関だというのに騙され過ぎな無能っぷりと
シンですら想定出来ることを想像も出来ん最高評議会の無能っぷりがたまらんw
デスティニープランを全否定するわけじゃないが遺伝子で選別したの、
やっぱ拙かったんじゃない?と思っちゃうなww

360:通常の名無しさんの3倍
07/03/05 10:29:59
>>357
大統領には無限コンテナを持つパワードスーツがあるさ。

361:通常の名無しさんの3倍
07/03/05 12:44:02
テロに襲われる大統領といえばエアフォースワン
映画エアフォースワンみたいな大活躍してくれたら惚れる

362:通常の名無しさんの3倍
07/03/05 12:58:53
GJ!!
>>359
激しく同意!
デュランダルはDP云々以前に、こんなアホしか選別しないコンピュータを疑えよ。

363:通常の名無しさんの3倍
07/03/05 13:43:47
もしかしたら議長はこれをきっかけにDPの構想をボツにして新しいプランを考えたりして

364:通常の名無しさんの3倍
07/03/05 14:17:40
最高評議会の連中って、基本的にナチュ蔑視をいまだに強く持ってる典型的な高慢なエリートコーディだと思うんだよな
だから基本ナチュラルを舐めてるし、物事を自分達の都合良く運ぶもんだと考えてる節が見受けられる
シンはコーディの中でも唯一と言っていいほど、ナチュラルに対する偏見を全く持たない奴だから、かえって本質をとらえられたのかも

365:通常の名無しさんの3倍
07/03/05 17:03:17
>>364
シンが生まれながらのエリートじゃないのもあるけど、そこら辺はオーブで育ったお陰なんだろうな。
もう少し外交面に気を使えば、ナチュとコーディが共存している稀有な国として、
世界の目指すべき指標の一つにもなれただろうに、
自爆ショーなんてテロリストぐらいしか選択しちゃいけない選択を国家レベルでしちゃったからなぁ。
シンも絶望しちゃう筈だよ、ほんと。

366:通常の名無しさんの3倍
07/03/05 17:59:02
評議会の連中は仮に今回の事で戦争が起こっても『卑劣なナチュラル』に責任押し付けて終了な気がする。

367:通常の名無しさんの3倍
07/03/05 18:23:17
>>366
知識はあっても知恵が足りないのがプラント政界ということだ罠

368:通常の名無しさんの3倍
07/03/05 19:58:08
>>367
彼らは生粋の政治家じゃないからな、本業の片手間にやってるみたいなもんだ。

369:通常の名無しさんの3倍
07/03/05 20:20:14
>>368
そうだよな。プラント政界は遺伝子適性で選ばれるんだから
彼等が本業を持っているのは自然だよな。


考えて見たんだがプラントの諜報部は遺伝子適性関係あるのか?
ガチでオトリ情報に簡単に釣られる無能なんじゃね?

370:通常の名無しさんの3倍
07/03/05 20:25:45
>>365
そう言えば、ひとつ疑問に思ったんだけどさあ
シンってオーブの前は何処に住んでいたんだ?
総集編のPASTで「オーブに移り住んだ」って言ってるんだよね、シン
マユとの回想見るに、紅葉がある国で、しかも二人の年格好からすると、
戦争が起きるよりも然程離れてない時までそこに住んでたみたいなんだが

371:通常の名無しさんの3倍
07/03/05 20:54:56
にっぽーんじゃねーの?

372:通常の名無しさんの3倍
07/03/05 20:56:36
>>359
トレーズならともかくジブにしてやられるとはな…
Wにしたって五飛の情報元は偽の情報だと気づけたのに。

373:通常の名無しさんの3倍
07/03/05 22:32:39
GJ!!
まあまあ皆さん。
物語には踊らされる人たちも必要という事ですよ。
どっちにしろ、ピエロは踊り狂って舞台から落ち、必要な役者だけ残ります。

374:通常の名無しさんの3倍
07/03/05 22:38:46
トロワはきっと三回転半ひねりで戻ってきます。

375:W-SEED
07/03/06 00:37:47
キラがストライクのコックピットで調整を行っていると、通信が入った。
「よ~う、キラ。まだ怒ってんのか?」

「…デュオ。何の用?僕、今忙しいんだけど」

「いや、特に用はないけどよ、ま、落とされない様に気を付けろよ」
「僕が落とされる訳ないだろ?デュオこそ油断してやられたりしないでよね」

「…ちぇっ、ハイハイ!!じゃあまたなぁ」

デュオは要らぬ心配したと思って、通信を切った
「ま、確かにアイツなら落とされる事はなさそうだな」

キラがコックピットで調整を続けていると、また通信が入った

「よう、ボウズ!調子はどうだ?」

「ムゥさん、ハイ!調子は最高っす!ムゥさんは調子どうすか?」
「お、頼もしいねぇ!俺も調子は良いぜ。
…俺よぉ、好きな女が故郷にいんだ」

「はぁ、そうなんすか…」

「あぁ、だからさっさとこんな戦争終わらして帰りてえよな!
俺は死なねえ、…お前も死ぬなよ」

「ちょwムゥさん、めちゃくちゃフラグ立ってますってばww」

そして、けたたましく鳴るサイレン
ミリアリアから通信が入る
「キラ!発進よ!」

「わかった!キラ.ヤマト!ストライク発進します!」

まずはキラのストライクが発進した


376:W-SEED
07/03/06 00:41:26

「よっしゃあ!行くぜ相棒!」

続いてデュオが発進

「ムゥ.ラ.フラガ!ゼロ!行くぜ!…なっ!?」

ゼロが発進した瞬間、なんとストライクによってゼロはキャッチされた!

「な、何すんだ!?キラ!!」

「悪いけど、ムゥさんは今回は出ないで下さい!絶対墜とされる気がします!」

「何言ってんだ!!俺は大丈夫だ!いいから離せ!!」

「…しょうがないな。て一いっ!!!」

「ぬぅあ!!?」

なんとストライクがゼロのバーニアにパンチしたのだ!それによりバーニアは壊れ、ムゥは戦場に出れなくなった
「ちくしょう!このアホッたれ!」

「すいません!今度エロ本あげます!とりあえず今回は艦で待機してて下さい!」

「…ちっ、約束だぞ!」
ゼロはストライクによってアークエンジェルに運ばれて行った

「おいおい!無理するな~、お前!」

デュオがキラに通信をいれた

「死なれるよりは良いでしょ?」

「まぁ確かにそうだけどよ、
あぁ~あ!やっぱりお前なんかについて来るんじゃなかったなぁ!アイツ以上に無茶やるぜ!」

「デュオ、無駄口叩いてないでよね!来たよ」

「敵さんのおでましか、へへっ!
オラオラぁ!死神と疫病神のお通りだぁ!」



…to be contineud

377:W-SEED
07/03/06 02:00:29
アークエンジェルに向かう、アスラン、ニコル、ディアッか、イザーク、ヒイロ達
アスランが沈痛な顔で皆に通信を入れた

「…皆、聞いておいて欲しい事があるんだ」
「…めんどくせえな、何だよ、アスラン?」
ニコルがガムをくっちゃくっちゃしながら聞き返す
「ストライクのパイロットいるだろ?…あれコーディネーターだから」
「え…何でコーディネーターが連合にいるの?」
「一応、知り合いなんだ…。だから、」

「…墜として欲しくないという事か?だが、コーディネーターといえども敵なら、墜とさない訳にはいかないと自分思うぞ」

「ディアッかに賛成」
「いや、そうじゃないんだ」

「…え、と、じゃあどういう事?」

「危険なヤツなんだ、…だから見掛けたら 絶 対 に墜とそう。
墜とされる前に」

「何をそんなに恐れているのか知らんが、了解した」

「…居たぞ」

ニコルが言うと同時に各機は散開
バスター、ブリッツはアークエンジェルへ
イージス、デュエルはストライクへ
そして…
「ウイングゼロ!?
おいおい!!とゆう事は、おい!お前ヒイロか!?」


378:W-SEED
07/03/06 02:04:25

「…デスサイズ!?
デュオか?…お前もこの世界に飛ばされて来たのか」

「お前も来てやがったのか!そして、ザフトの傭兵か。へへっ!立場は違うけど考える事は同じだな!」

「カトルやトロワは来ていないのか?」

「さぁな、でも俺達が来てるって事はアイツらも来てる可能性高いと思うぜ?」

「お前は連合を調べろ。俺はザフトを調べる。アイツらが来てるなら、そのどちらかにはいるだろう」

「了ー解!じゃあ俺達は適当にやってるか」
「…元々は関係ない世界だ。あまり派手に暴れるな」

デュオとヒイロが話をしている間にストライクはすでにイージス、デュエルと交戦していた。
「キ イ ィ ラ ア ァ ァ!!!墜 ち ろぉぉ!!!!」

イージスがキモイ形に変わってスキュラを発射した
ストライクはそれを軽々かわすが、避けた所にデュエルがビームライフルを撃ち込んでくる
「墜ちて下さい!」

「ちぃっ!」
それをシールドで防ぎ、ビームライフルをデュエルに撃ち返すが、避けられた。そして今度はイージスがキモイ形を解除してビームサーベルで斬りかかってきた。
キラもビームサーベルで応戦する

「くそっ!くそっ!くそっ!ここでやらなきゃ、ここでやらなきゃ!」

「ふふふ、やぁ、アスラン」

「!?(バレてる!?)」
「急に転校するなんて酷いじゃないか。僕達 親 友 だったじゃない?」

「や、やぁ!キラか!うわーすごい偶然だねこんな所で会うなんて!げ、元気してた?」


379:W-SEED
07/03/06 02:11:43
「まぁ、とりあえず武器おろそうよ。それから話そう」

「あ、あぁ、そうだな」
イージスがビームサーベルを納める

「スキあり!!」

それを見逃すキラではなかった!イージスがビームサーベルを納めた瞬間、イージスの四肢を一瞬で斬りさいた!流石キラだぜ!グゥレイトォ!




…to be contineud

380:通常の名無しさんの3倍
07/03/06 02:13:32
GJ
いじめっ子キラと、イジメられっ子アスランに噴いたwww

381:通常の名無しさんの3倍
07/03/06 02:26:51
戦力低下によって自分の身の危険が増すのも省みず、死亡フラグ立てた兄貴を
守ろうとするだなんて、キラってばホントに優しいなーwww

ところでヒイロさんがナチュラルにごひを忘れている件

382:通常の名無しさんの3倍
07/03/06 02:44:11
キラかっこいいwww
超GJ!!

383:通常の名無しさんの3倍
07/03/06 11:28:34
こんな外道なキラ見たことない……GJ!!!!!

384:通常の名無しさんの3倍
07/03/06 14:41:04
ぶっちゃけ「君は君だ!彼じゃない!」→「今だ!!」と対して変わらんけどなw

385:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/06 16:26:51
投下します~

386:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/06 16:30:14
「艦長、地上表面、目標の基地が見えてきました!」
 降下を続けるミネルバの艦橋で、オペレーターのメイリン・ホークが報告をする。
「いよいよか……」
 タリアの副官であるアーサー・トラインが、来るべき戦いに眼を細め、シートから艦長
へ向き直った。
「艦長、予定通り有効射程に入り次第トリスタンの斉射、その後、地上用ミサイルパルジ
ファルで基地を牽制します」
「えぇ、よろしく頼むわ。初撃さえ成功すれば、流れはこちらが掴める。モビルスーツ隊
のほうも良いわね?」
 タリアは、既にモビルスーツに搭乗して待機中のパイロットたちに声をかける。
『えぇ、こちらは準備満タンですよ』
『最善を尽くします』
『…………』
 シンだけジッと黙っており、何も喋らない。タリアは何か言おうかとも思って、止めた。
どうも自分とシンはそりが合わない。軍人としても、部下としても、少々熱くなるところ
を除けば彼は優秀であり申し分はないのに、だ。シンがオーブからの移民者だからか? 
そうではないだろう、恐らく自分は彼の考え方が―
「艦長、間もなく有効射手に入ります!」
 アーサーの言葉に、タリアは自身の考えを取り払った。今は任務に集中すればいい、全
てはプラントの、議長のために。
「これよりミネルバは、地球連合軍基地の制圧作戦に入る。全砲門開放、トリスタン照準
…………撃てぇぇぇっ!!!」

 少し時間を戻して、場所はプラント。
 ロッシェが、自分にあてがわれた高級士官用官舎の一室で、着慣れぬ制服を整えていた。
「軍服を着るというのも久しぶりだが、赤とは……派手だな」
「そう? 結構、似合ってるわよ?」
 こちらは当然のように部屋のソファに腰掛けくつろいでいるミーア。
「なんたって元が良いもの。確かに白い方がもっと似合うと思うけど、あれは将官ようの
制服らしいから無理ね」
「まあ、緑よりはマシだと思っておこう……どうもあの色の制服は貧相だ」
「あら、緑服の人に失礼よ? 事実だけど」
 この時、どこぞで部下にお手製炒飯を振る舞っていた男がクシャミをした。
「でも、貴方が特務隊員になるなんて……議長も思いきったことをするのね」
「自分の目の届く範囲に私を置いて起きたいのだろう。妥当な判断だ」
「議長は、特務隊の解散も一時は考えていたそうよ? 平和な時代に、そんな不透明な直
属部隊は必要ないだろうって」
 ロッシェがデュランダルから行動の自由と引き替えに受けた条件は、特務隊フェイスへ
入ることだった。ある意味議長直属の部隊なので、ある程度自分の勝手と都合が効く、と
いうのが議長の言い分であったが、ロッシェはそれがかえって見え透いてるように思えた。
「しかし、議長は遅いな。約束の時間を既に30分以上も過ぎている」
「きっと、お忙しいのよ。それよりもこっちで一緒に紅茶でも飲みましょう」
 応接室での面会から数日、ロッシェはミーアに敬語を使うのを止めていた。それは、ミ
ーアが望んだことであり、ロッシェは女性の希望には添う男だった。

387:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/06 16:32:35
「それにしても、不思議なものだ……異世界とやらに来たかと思えば、いつの間にかこん
な制服を着るようになって」
「人生なんて、何が起こるかわからないものよ……私がそうだもの」
 言って、ミーアは少し寂しげな表情になった。気付けば自分も、いつの間にかラクス・
クラインになっていた。周りに流されたとは思っていないし、決断したのは自分だが、今
の生活は彼女にとって不思議であり不可解でもあった。
「時々、鏡を見るとね、思うことがあるのよ。『貴女は誰?』って」
 私は誰、ではない。
「人なんて、変われば変わるものよ。昨日までのあたしが、今日のあたしと同じとは限ら
ない。ロッシェだって、きっとそうよ」
「……確かに、その通りかも知れないな」
 まだミーアには話していないが、ロッシェも過去色々な経験をしてきた男だ。振り返れ
ば、彼の人生もなかなか波乱に満ちているように思えた。
「ねぇ、ロッシェ、あたし、あなたの過去が知りたいわ。あなたは一体どんな人生を歩ん
できたのかしら?」
「それなりに色々あったさ……して面白い話でもないが聞きたいなら今度ゆっくり話そう」
 それから暫くして、デュランダルがロッシェの部屋を尋ねてきた。その顔には疲れの色
がありありと浮かんでおり、まるでこの部屋に逃げ込んできた感じですらあった。
「まったく、冗談じゃない。アーモリーワンへの襲撃、ユニウス・セブンのテロ、異世界
からの客人ときて、今度はプラントへの攻撃だ。何も私が議長のときにここまで連続して
事件が起こらなくても良いじゃないかっ」
 デュランダルを知る者が聞けば、彼でもこんな情けない声を出すのかと目を丸くしただ
ろうが、幸いロッシェはデュランダルとそれほど付き合いが長いわけではなかった。
「色々大変だったようですね……なにがあったのです?」
「あぁ、それは……いや、その……」
 あくまで好奇心から尋ねたロッシェに、デュランダルは事件の説明をしかけるが、途中
で口をつぐんだ。国家の最重要機密を彼に漏らして良いのだろうかと。
「議長、彼はもうフェイスですわよ? 議長直属、腹心にお話しできませんの?」
 議長が来た途端、ミーアは彼女がいうとことの「ラクス様口調」になった。
「……それもそうだな。君の意見も聞きたいし、わかった、話そう」
 それから議長は、今回の核攻撃騒ぎについて、自分の進退問題が掛かっているという部
分を省き、ロッシェに説明した。ロッシェは途中相づちを打ちながら、ミーアは実感の沸
かない政治の話に退屈しながら聞いていた。
「馬鹿な、それで軍を派遣したというのですか?」
「あぁ、議会で可決されたからね……」
 声に苛立ちを含んでいるロッシェの反応に、デュランダルは困惑気味に答える。ロッシ
ェは呆れたように首を振ると、
「すぐに命令を撤回するか、連れ戻すかしたほうが良い。これは罠だ」
「なんだって!?」
「私は、よく知っているんですよ……これによく似た作戦をね」



             第5話「歴史への台頭」




388:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/06 16:34:38
 地球連合総会に対し、ザフト軍艦ミネルバが襲撃をしかけたのは、総会の議長役である
大西洋連邦大統領ジョゼフ・コープランドの演説が終わり、総会出席者が総立ちで拍手を
送る、まさにその時であった。
「な、なにごとだっ!?」
 衝撃に揺れる議場の中、ジョゼフは冷静さを失わずに状況確認を行った。そして、それ
はジョゼフが予想だにしない答えでもあった。
「ザフトが、ザフトがこの基地に襲撃をかけてきましたっ!」
「なんだと? 馬鹿な、何かの間違いではないのか!」
 しかし、議場のスクリーンに映し出された光景、ザフトの新造艦と最新のモビルスーツ
が基地に僅かに配備された防衛部隊と戦う姿を目の当たりにすると、さすがのジョゼフも
息を呑んで立ちつくすしかなかった。
「大統領閣下、ひとまず脱出なされたほうがいいのではありませんか?」
「ジブリール!」
 いつの間にか壇上まで着ていたジブリールは、つまらなそうにジョゼフに意見する。
「こんな状況でも、まだコーディネイターどもと和平などと言われるのであれば、尚更
死ぬわけには行きますまい」
「皮肉はいい……しかし、もっともな意見でもある」
「シャトルを用意してあります。どうぞお早く」
 これが運命の分かれ道であることを、ジョゼフはまだ知らない。

 基地との外では、ミネルバのモビルスーツ部隊が、基地防衛部隊と死闘を繰り広げて
いた。基地に配備されているのは旧式のダガーや、よくてダガーLであり、これは和平
に向けて議論する会議に、モビルスーツは極力排除したいというジョゼフの意向の現れ
でもあったが、それを知る由もないミネルバは、
「情報通り、大した兵力ではないわね」
 という感想であったという。
 モビルスーツ部隊のほうも、似たような感じで、
「ブルーコスモスといっても最新鋭機を持ってる訳じゃないのか……」
 そんなことを考えながら戦闘を行っていた。
『シン、敵の一機は重武装タイプだ。ミネルバを狙われるな』
「わかってる、すぐに墜とす」
 シンは、インパルスを敵の一団に突っ込ませ、接近戦によるドッグファイトをしかけ
た。インパルスはビームサーベルを抜き放つと、旧式のダガーを次々に斬り倒す。運動
性が違いすぎた。

389:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/06 16:36:33
「弱いな……そんなんじゃ俺は殺せないぞ」
 強襲型装備のダガーLがMk39低反動砲で砲撃をしかけてくる。それがどうした? こ
っちはVPS装甲だ。シンは正確な砲撃をしかけてくる敵に、構わず機体を突っ込ませた。
一見すると機体性能だけに頼った乱暴な戦い方に見えるが、攻撃を受けても向かってく
るというのは相対する敵にとってはかなり驚異的に映る。現にダガーLに乗っているパ
イロットは砲撃を物ともせず突っ込んでくるインパルスに恐れを成し、後退しようと機
体を動かしてしまった。
「遅いんだよ!」
 シンは敵の動揺を見て取り、機体を急加速させると一機にビームサーベルで貫いた。
至近距離での爆発が起こる、だが、インパルスは揺るがない。
「チッ、これならこの前のテロリストどものほうがまだ……」
 シンは戦いに高揚しすぎる。これは親友であるレイがことある事に言っていること
だが、戦い以外の場所では割と冷静な癖に、いざ戦いになると熱さで我を忘れるのが
シンだった。日頃ため込んでいる物も多いのだろう、彼の戦い方は苛烈だった。
「ん? あれは……シャトルか!」
 そして、その時は訪れた。インパルスのセンサーが今まさに基地から脱出するため、
飛び立とうとしているシャトルを発見した。レイとルナは他のモビルスーツを相手に
している。ならば自分が行くしかない!
「逃がすかぁぁぁぁぁっ!」
 シンは機体をシャトルに向けて突っ込ませる。それに乗っているのが、ブルーコス
モスのメンバーたちであることを信じて。

 飛び立つシャトルの中で総会出席者たちが一様に青い顔をしていた。事態が飲み込
めていない者がほとんどで、ジョゼフとて、それは例外ではなかった。
「私は諦めない……こんなことで和平への道が閉ざされたは思わん」
 確かに和平への道は閉ざされはしないだろう、閉ざされるのは別のものだ。そして
ジョゼフは閉ざされるその時まで、地球とプラントの平和について、考えていた。
「う、うわぁぁぁっ!」
 シャトルに乗っている誰かが叫んだ。ザフトのモビルスーツが一機、ビームサーベ
ル片手に飛び込んでくる。
「早まるなザフト、早まるな若者よ……私は君たちと―」
 ジョゼフ・コープランドの言葉は、最後まで発せられることは、永遠になかった。


390:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/06 16:38:40
 シンは、僅かなためらいもなく、軍人として任務を遂行した。『逃亡』するブルーコス
モスのシャトルをビームサーベルで両断し、爆散させたのだ。
「ミネルバ、こちらインパルス、シン・アスカ。逃亡寸前のシャトルを破壊した」
『こちらミネルバ、了解した。レイとルナマリアも敵部隊を殲滅しつつある、シンもそち
らの援護に回ってくれ』
「シン・アスカ了解。すぐに援護に……なんだ? 上空からモビルスーツ? 増援か!」
 シンは、飛来するモビルスーツに向けてビームライフルの標準を固定するが、それは敵
ではなかった。真っ直ぐこちらに向かってくるその機体は、VPS装甲最硬のレッド。シンも
よく知るインパルスの兄弟機……
「ZGMF-X23S……セイバーだって!? 完成してたのか」
 その紛れもないザフトの機体は、ミネルバの前に浮遊し、
『ミネルバ及び所属のパイロットに次ぐ、ただちに戦闘を止めろ! 俺はザフト軍ハイネ・
ヴェステンフルス。議長からの特命を受けてやってきた。いいか、今すぐ戦闘をやめろ!』
 そう声高に叫んだ。
「戦闘を止めろですって? どういうこと?」
 タリアが怪訝そうな表情で問い返すが、ハイネはかなり興奮しているのか、怒鳴り散ら
すように、
『敵の情報は偽りだったんだ! いいか、俺らザフトも、そしてお前らも敵の作戦に踊ら
されて、連合の和平論者たちを一掃しちまったんだよ!』
「なんですって!? そ、そんな馬鹿な話が!」
『嘘だと思うなら、一般回線を開いてみろ!』
 そのやりとりを聞いてたシンは慌ててインパルスの一般回線を開いた。映像では悲壮感
漂う面持ちで演説をするジブリールの姿があった。
『今日我々は、大西洋連邦大統領ジョゼフ・コープランド氏の主導もと、プラント、しい
てはコーディネイターとの和平に向けての総会を行っていました。しかし、卑劣なるザフ
ト軍は、何の前触れもなくこれを襲撃し、ジョゼフ・コープランド氏を始めとする平和を
願う人々は殺されたのです!』
 シャトルを両断するインパルスの映像が映る。シンは自分の身体から血の気が引いてゆ
くのを実感した。
『我々はザフトを、プラントを、コーディネイターを許さない! 我らが平和の使徒ジョ
ゼフ・コープランドを奪ったその報い、その身で受けるがいい! 青き清浄なる世界のた
めにっ!』
 演説はそこで終わった。
 誰が見ても、どう見ても、ザフトに比があると思うだろう。
「そんな馬鹿な……こんな、こんなことが」
 シンはコクピット内で頭を抱えた。猛烈な嘔吐感が全身を駆けめぐる。殺した、殺して
しまった。平和を、平和を願っていた、なんの罪もない民間人を、
 自分が殺してしまった!!!!
「う、う、うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!!」
 シンは、発狂した。


391:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/06 16:39:41
「シン……! ねぇ、レイ、あたしたち……」
 発狂するシンの声が聞こえたのか、ルナマリアはレイに回線を繋いだ。
『一杯食わされた……で済む問題じゃないな。軍の命令とはいえ、俺達は民間人を虐殺し
たことになる』
「そんなのって!」
『どう弁解したところで、もうどうにもならん……しかし目下のところ、その話は後だ。
敵が来るぞ』
「えっ!?」
 レイに言われて、ルナマリアも気付いた。上空に物凄い数のモビルスーツ反応がある。
「これって……」
『どうやら敵は始めからこのつもりだったらしいな。この数を相手に切り抜けるのは難
しいぞ』
 言いながら、レイは考える。センサーの反応だけでも数十機のモビルスーツ部隊がこ
ちらに向かってきている。恐らく今度は先ほどまでの敵とは比べものにならないほどの
部隊が来る。
(さっきの演説をしていたのはブルーコスモスの盟主ロード・ジブリール……来るのは
ファントムペインか!)


392:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/06 16:41:27
 地球連合軍パナマ宇宙港。
 ここは今、戦場になっていた。
「反乱だと? 一体どこの部隊だ!」
「判りません、ですが基地守備部隊は全滅させられました!」
「馬鹿な、このパナマには常時三十機以上のモビルスーツが警戒に当たっているんだぞ!」
 基地指令は悲鳴に近い声を上げ、状況確認を急いだ。司令室の大型スクリーンに基地全
体の様子を映し出す。
「こ、これは……!」
 画面には三機の特徴的なモビルスーツが、パナマ基地守備部隊を蹴散らしていた。
「この機体……奴ら、ファントムペインか!」
 画面上の三機、カオス、アビス、ガイアは三位一体のフォーメーションを取りながら、
前進し、向かい来るモビルスーツ部隊を蹴散らしていた。隊長代理を務めるスティング
は、モビルスーツを撃破しながらも、正確な指令を各個に飛ばす。
「ウィンダム隊は、空中からミサイル攻撃をしかけろ。間違ってもマスドライバーを傷
つけるなよ?」
『了解!』
「良い返事だ……そぉら、いけぇっ!」
 スティングの指示と共に、ジェットストライカー装備のウィンダム部隊が次々と基地
にミサイル攻撃をしかけてゆく。基地も対空砲で応戦するのだが、ジェットストライカ
ーのスピードについて行けてないのだ。
「アウル、ステラ、今のうちにモビルスーツ隊を全滅させるぞ!」
『ハイハイ』
『わかった』
 三位一体で進むスティングたちは、カオスが空中から敵モビルスーツ隊を威嚇、アビ
スの一斉射でこれを破壊し、残った敵をガイアが接近し、叩く。この三連撃の前に、パ
ナマを守備するモビルスーツたちは為す術無く敗れていった。
「己、ファントムペインがぁ!」
 守備部隊の隊長機がガイアに向かって斬りかかってゆく。部下を失い、既に自分一機
となった彼は、せめて一人でも多くの敵を倒したかった。
「……そんなんじゃダメ。全然ダメ」
 しかし、ガイアに乗るステラ・ルーシェは無情だった。隊長機の命をかけた一撃も、
あっさり防ぐと、MA形態になり、グリフォンブレードで機体を切り裂いた。
「弱い、ステラと戦うには、弱すぎる」


393:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/06 16:42:44
 地球軍ビクトリア宇宙港。
 ここもまたファントムペインによる襲撃を受けていた。
「クーデターだと! ファントムペインめ、遂に化けの皮が剥がれたか!」
 自らモビルスーツに乗り込み応戦に出た基地司令官は、モビルスーツ部隊を指揮し、果
敢にもファントムペインに戦いを挑んだ。
『違うな……』
「!?」
 だが、それは無謀なる行為だったのだろう。彼はファントムペインを常々警戒してはい
たが、その実力までは理解していなかったのである。
『皮が剥がれたのではない、自ら脱ぎ捨てたんだ』
「き、貴様は!」
『時代は変わる、時代は俺達ファントムペインのものになるそうだ』
 まるで他人事のような呟き、そしてその呟きこそビクトリア基地司令官の聞いた、最後
の声だった。彼の乗るモビルスーツは、二本の対艦刀に両断された。
「こちら、スウェン・カル・バヤン。敵隊長機を破壊した」


394:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/06 16:43:43
 地球軍アルザッヘル月基地。
 基地は、『突然現れた戦艦』の攻撃を受け、早くも窮地に陥っていた。
「ミラージュコロイド……ダイダロスのガーティールーか!」
 ガーティールーを始めとしたダイダロス所属の戦艦が、容赦ない砲撃をアルザッヘル基
地へとしかけてくる。集中的に艦艇の発射口を潰され、アルザッヘルはモビルスーツのみ
での対応に迫られた。
「スローターダガー隊、アルザッヘルのモビルスーツ部隊を蹴散らせ」
 部隊を指揮するガーティールー艦長イアン・リーは、冷静に指示を出し、艦をアルザッ
ヘル司令部へと向かわせる。
「偽の演習計画にあっさり騙されるとは……アルザッヘルの危機管理能力は低いな」
 過日、ザフト軍諜報部が確認したダイダロス基地での動きというのは、アルザッヘルに
向けての進行準備だったのだ。無論アルザッヘルに対しては演習という嘘の情報を伝えた
のだが、それを信じ切ったためにこうして奇襲を受けてしまった。
「敵がザフトだけだと思っているから、こうなるのだ」
「艦長、敵の抵抗が沈黙しつつあります」
「よし、六連装ゴットーフリート標準。目標敵基地司令部……撃てっ!」
 強力なガーティールーの主砲連射を前に、アルザッヘル基地司令部は一溜まりもな
く壊滅した。


395:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/06 16:45:27
「パナマ、ビクトリア、アルザッヘル、それぞれ陥落しました」
 総会出席者のシャトルを囮に、優々と脱出したジブリールは、次々と制圧されてゆく連
合軍基地の名前を聞きながら、卑しくほくそ笑んでいた。
「後は、ガルンナハンとスエズ、ヘンブンズベースは今暫く掛かるかな?」
 その時、丁度スエズ基地陥落の報も入った。最早ジブリールは笑いが止まらなかった。
「なんだ、歯ごたえのない。ここまで順調に事が進むと、かえって怖いぐらいだ」
 実に簡単な作戦であった。
 まず、ザフトに対して虚偽の情報を流す。虚偽といっても、極めて真実味が高く、
秘匿性の高い情報を、如何にも「気付かぬうちに漏らしてしまった」という風に、
向こうに気付かせる。そして、これ見よがしにダイダロスの艦隊で陽動をかけ、ザ
フトを焦ら、それと同時に、こちらは地球連合軍の主要基地への襲撃計画を進める。
 ザフトが偽の情報に踊らされ、総会出席を始末すれば後は仕上げだ。全世界中継
にてザフトを断罪し、同じくして基地制圧指令を出す。混乱に常時、ファントムペ
インが連合軍の全体を制圧することが出来る……まったく、上手すぎる作戦だった。
「アズラエル……悔しかろう。お前に出来なかったことを、私はやってのけたのだ」
 今は亡き旧敵に、ジブリールはフッと笑いかける。それは勝利の笑みであった。


396:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/06 16:47:46
「くっ、なんて数なの!」
 ルナマリアは、ザクの長距離砲を発射しながら苛立ち叫んだ。今彼女は途方もない数の
モビルスーツ部隊に襲われていた。
『無駄口を叩いている暇があるか!』
 レイの叱咤が飛ぶ。レイのほうはもっと大変だった。彼は『戦えなくなった』親友を守
りながら戦っているのだ。インパルスは、シン・アスカは戦意を完全に喪失していた。
「まずい、このままでは……ミネルバ、ミネルバ、撤退を要請する。これ以上は無理だ!」
 レイはビーム突撃銃を乱射しながら、ミネルバに回線を繋いだ。一方のミネルバも、次々
に飛来するモビルスーツ部隊に苦戦を強いられていた。
「撤退ですって?」
 タリアはレイの進言に驚いたが、クルーたちはこの絶望的状況にいくらかの希望を見出
した。そうだ、何もこのまま戦い続けることはない、撤退という選択もあるではないか。
「冗談じゃないわ! 言い様に敵に乗せられ、踊らされ、このままおめおめ逃げ帰れって
いうの?」
 だが、タリアには意地があった。彼女のプライドは今やズタズタで、このまま敵に一矢
報いることも出来ず逃げるなど、到底不可能だった。そんな艦長の心理を読んだのか、副
官のアーサーが冷静な意見を出す。
「しかし、艦長。依然として敵は増え続けています。このままではモビルスーツ隊は全滅
し、ミネルバも……」
「だったら何か策を考えなさい! 貴方は副官でしょう!」
 タリアは怒鳴り散らすと、ギリッと歯ぎしりをした。負けるわけにはいかない。女だて
ら艦長をやっているのだ、ここで負けなどすれば……
『艦長、俺も撤退に賛成しますよ』
 その時、それまでモビルスーツ撃破に勤しんでいたハイネが通信回線を開いてきた。
『あんたが面子やプライドに拘るのは勝手だが、あんたは軍人で、しかも艦長だ。自己威
信に部下を巻き込むな』
「他の部隊の人間が偉そうに!」
『艦長席に座ってるからって自分を偉いと勘違いしている人よりはマシだ』
 ダンッと、タリアは椅子を叩いた。誰がどう見ても、ハイネの言い分が正しかった。
「……タンホイザー起動」
「艦長!?」
「勘違いしないで、陽電子砲を敵の中心部に放ち、その隙にモビルスーツ隊を回収。全速
力でこの場を離脱します。ハイネ、悪いけど援護を頼むわ」
『任されましょう!』
 もうどうにもならなかった。ミネルバはただ、逃げるしかない。逃げて、逃げて、逃げ
切るしかないのだ。何故なら彼らは、民間人殺しの大罪人なのだから。

                               つづく


397:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/06 16:49:49
第5話です。
私の作品は、「種死世界で、Wの出来事が置き換えられないか?」
という思いつきから構想し始めたものです。
偶然にも、ファントムペインはOZに、ロゴスはロームフェラ財団に
似た性質を持っていると感じて、試行錯誤の上、置き換えてみまし
た。私の作品はWのキャラこそ出てきますが、どちらかと言えば、
「種死世界で、Wをやってみよう」という感じなのかも知れません。
クロススレですし、Wキャラの活躍がもっと見たい人にはあまり面
白くないかも知れませんが、こういう作品もある、という目で見て
いただけると幸いです。


398:通常の名無しさんの3倍
07/03/06 17:04:36
面白い試みだとは思う
ただ、話に無理が出そうな気がするのが不安材料

399:通常の名無しさんの3倍
07/03/06 17:06:29
GJ!

400:通常の名無しさんの3倍
07/03/06 17:12:59
おお、スウェンが登場している!

401:通常の名無しさんの3倍
07/03/06 17:30:01
スウェンが出るという事は、ジェスとかアグニスとかも出てくるのかな?

402:通常の名無しさんの3倍
07/03/06 18:53:44
作者にはあまり出てきて欲しくないな

とりあえずGJ!

403:通常の名無しさんの3倍
07/03/06 19:02:32 EO8a0YfM
GJ!!
ZAFTも評議会の連中も、『頭のいい馬鹿』らしく見事に踊ってくれましたが、
やはり、ジブリールの脚本と演出が光る一幕でした

「秘匿性の高い=真実」という思考に、技術はあっても経験や知恵に欠ける
コーディ特有の『素人臭さ』―ゴルゴ13で、欺瞞にかかって全滅したIRAの
ハッカーどもに通じる滑稽さ―が在って、実に愉しませて頂きました

<勝手に予告>
賢者達は奈落に落ち、愚かな女神と折れし勇者は罪に惑う
悲劇で喜劇な前座は終わり、騎士と歌姫の舞踏が始まる
『運命の歌姫』―舞い降りる騎士―

*あくまで、これは嘘予告であり、職人氏に対する要求はなんらありません

404:通常の名無しさんの3倍
07/03/06 19:37:49
GJ!
種自体、嫁が自分のお気に入りの品からパクッた継接ぎの物ですから、似ているのは当たり前と言うべきでしょうか…
ただ種には、パクリ元みたいに一本骨が通ってないから、かなり難しいですね。
頑張ってください!!

デュランダルはさらに時代の波に揉まれていく事でしょう。
まあ、幸運が無いわけでもないでしょうから、何とかなるとは思いますが。
今回の攻撃にも反対してますから、先見の明があることを他に示せた訳ですし。
とりあえず、心休まる暇無いであろう彼に幸あれ……

タリア君…無能だなぁ。
>「勘違いしないで、陽電子砲を敵の中心部に放ち、その隙にモビルスーツ隊を回収。全速
>力でこの場を離脱します。ハイネ、悪いけど援護を頼むわ」
いくらなんでもコレは拙いだろう。
既に悪役に認定されているからって、これはちょっと。
……アーサーが何気に有能っぽいから、彼に任せた方がいい気がする。

さて、地球を手に入れた(に近い)ジブリールはトレーズ様になれるでしょうか……

405:通常の名無しさんの3倍
07/03/06 19:46:00
GJ!!
ミネルバ隊、ザフト上層部が失態を隠すためのスケープゴートにされるかも……(独断でやったとか)
それが無かったとしても、ザフト内部じゃ憎まれるだろうなぁ。

406:通常の名無しさんの3倍
07/03/06 20:03:29
なんとなく桜多吾作のグレートマジンガーを思い出してきたよ…
クロスでここまで社会的苦境に追い込まれるミネルバ隊というのも珍しいな。
例えばX運命のオーブクーデターの場合、立場が苦しくても読み手が感情移入できる
道義的正当性がまだあったわけだが今回はそれすらも厳しい。
またW本編ならそれぞれ個々の才覚で道を切り開いていったがなまじ軍部隊単位だと
かえって身動きも取りにくいだろうしどうなる?


407:通常の名無しさんの3倍
07/03/06 22:32:06
GJ!
>「……タンホイザー起動」
この件で議長の頭痛の種がさらに増えそうな悪寒。
地上で陽電子砲は拙いでしょう。
ミネルバ隊はあらゆる意味で追い込まれそうだ。

408:通常の名無しさんの3倍
07/03/06 23:42:07
endless destiny氏2ch撤退のお知らせ。
詳しくは語るスレをどうぞ。

409:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 00:36:14
ちょっと連合内部の対立情勢がよく分からんな
このクーデターはブルコス主義とは関係ないのか?
原作では、大西洋連邦と対立する親プラント派のユーラシアを
黙らせようとベルリン襲撃を行った図式があったけど
こっちの場合、アルザッヘルやパナマのブルコス主義者も
まとめて一掃しちゃったんじゃね?
アニメ以上に内部に敵作りすぎだろ・・・常識的に考えて・・・



410:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 01:57:24
>>407
デス種ではきれいな陽電子砲になったんです。

411:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 01:57:42
まぁリアルでもナチスが似たような事やったし。

412:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 02:07:47
>>409
SSではこの時期のアルザッヘルやパナマがブルコスじゃないって設定なんだろ。
原作だって最初からブルコスが支配してたわけじゃないかもしれないし。

413:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 02:15:52
ロッソとネロの登場マダー?

414:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 04:20:18
>>408
語るスレってどこよ?

415:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 07:33:17
新シャアのSSを語ろう その5
スレリンク(shar板)


416:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 07:58:29
そうか……おやめになるのか。
まあ、荒れたからなぁ……

417:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 09:39:38
マリューは無能だったけど、自分が無能なのを自覚してるし周囲の連中が優秀だったので、それに応えるべく頑張ってた
タリアは無能だが、周囲がそれ以上の無能ばかりなので、自分が優秀だと勘違いしてる

418:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 11:45:11
つうかヒイロでさえあれだったんだ、シンでは再起不能間違いなしだな。

419:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 11:59:51
>>409
その辺はWと同じなんじゃね?
OZの後ろにロームフェラがいて、彼らが自分達で直接時代を動かしたいがためにOZを蜂起させたように
ファントムペインやジブリールはロゴスの意向を受けてやったって感じじゃないか?
対立は確かに起こるだろうけど、多分連合軍とだけなんじゃないかな。
最初の宣伝段階で、民衆の意識操作は終ってるし、必要な所にはロゴスが根回ししてあるだろうし。
敵を作りすぎだ、ってのは賛成だがなw
Wと違う点は、ジブリールが何となく全て自分の力って思ってるぽい所か……

420:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 12:17:07
>>409
明確にブルコス主義者だったのはダイダロスだろう。

421:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 14:42:23
>>419
この職人さんは「種死世界で、Wをやってみよう」
でストーリーを作っているようなので、このままシン再起不能放置はないでしょ
ただ、復活までにはW-DESTINY以上に時間がかかるだろうが・・・

422:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 14:44:04
ゼクス役は誰?
ネオでは役者不足

423:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 14:58:31
中の人は一緒だけどな!

424:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 15:15:38
まぁ中の人は某宗教団体の某アニメ映画で1人12役やったほどの剛の者だしな。

425:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 16:46:52
国防委員長は退陣かなあ?

426:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 16:59:14
そもそも、テロならともかくれっきとした国軍(建前上は軍じゃないそうだが)が、
自国と同等以上の規模の他国の軍事基地を、平時にいきなり強襲って、
どう考えても有り得ないと思うんだが・・・
仮にこれが情報通りロゴスのメンバーの会議だったとしても大問題だ。

427:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 17:23:12
攻撃に賛成した者は責任を取って退陣、ってな感じが一番簡単だが、権力にしがみついてる奴がいるとするなら、そう簡単には事は運ばんだろうな。
つーか、彼ら疑問に思わなかったのかな?
自分達のやり口がブルーコスモスにそっくりだって事を。

428:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 17:39:50
>>426
それどころか実際は、プラント正規軍が無断侵入して
和平派の大西洋連邦大統領及び地球各国の主要メンバーを皆殺しだからなあ。

429:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 17:54:24
>>421
シンが復活までにとりそうな行動は
1、精神不安定なりながらも戦端が開いてしまったので戦う
2、自分のやったことが許せなく、プラントを捨てW原作のヒイロのように謝罪しに行く
3、重度の精神障害で病院逝き(何
ぐらいかな?

430:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 18:24:32
シンはヒイロほど精神強そうじゃない上に
軍人の自分が平和主義の民間人虐殺ってもろに家族が死んだ時のトラウマに抵触した状態だからきついわな

431:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 18:27:38
自殺未遂はするかも知れんな

432:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 18:34:10
今の状況を一行で説明すると……ザフトは宣戦布告もせずに他国の基地に攻撃を仕掛けた、でいいのか?

433:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 19:48:39
>>429
2は身軽に動けるヒイロと違って、敵対国の職業軍人で単独行動能力に乏しいシンでは無理だな。

434:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 20:03:30
デュランダルがミリアルド、ジブリールがトレーズとすると、
リリーナがラクス、サンクキングダムがオーブになるのか?

435:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 20:07:07
ミーアとロッシェの立ち位置が気になる

436:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 20:18:02
イゼルローン要塞奪取で調子に乗って帝国領侵攻作戦などという愚行を
強行したものの、アムリッツァ会戦で完膚なきまでに叩き潰されて
退陣に追い込まれた同盟のサンフォード政権を髣髴とさせるな。
その際本来主戦派ながら作戦の無謀さを見越してわざと反対票を投じていた
トリューニヒトがまんまと権力を握ったように、今回のギルも政治生命を
拾った事になるわけだが、将兵も国民も手駒にしか考えないトリュ公と違って
ミネルバ隊に思惑や思い入れもあるだけに素直に喜べないか…どうすんのかね。

437:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 20:19:37
なんせ和平会議に殴りこんで地球最強国家の国家元首殺したからなあ。

438:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 20:58:22
最初から出番のあるミーアの方がリリーナ化しそうだと思うがな。ラクス?ドロシーじゃねえ。

439:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 21:03:03
作者氏GJ!!!でした。

>>437
しかも言い訳のしようが無い形でな。
仮に「ブルーコスモスに嵌められた証拠」なんかを出したとしても「でも実際に殺したのはオメーらだろ」で終っちゃうし。

今回の件はプラントの「情報」に関する考え方の甘さが露呈した形になったな。
これを何とかしないとまた嵌められる事になる。(一朝一夕でどうにかできる事じゃないけどね)

440:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 21:09:21
>>438
ラクスの場合ドロシーのような皮肉や嫌味とは違い
天然電波だからミーアとの対比が気になるな。

441:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 21:21:56
て事はキラはカトルか
アヒャってストフリで暴れるわけだな



・・・いいかもしれない

442:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 21:23:57
>>441
キラはアヒャってなくても大暴れな件について。

443:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 21:27:08
カトル父=カガリ
で死亡すればピッタリだな
資金もMSの開発能力もありそうだし

444:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 21:30:10
>>442
いや偽善者キラじゃなく、アヒャって見境なくぶち殺しまくるキラが見たい
無印種で地球降下直後のキラがそのままアヒャったようなのを

445:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 21:40:21
とりあえずシンをはじめとしたミネルバ隊をプラントがどう扱うかが問題だよなあ。

446:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 21:40:26
>>444
それをやる理由が奴には無い。
特殊学級部隊襲撃を理由にして見るのが頭に浮かんだが、無差別破壊をやる理由としては弱すぎるような気がする。
キラにとってフレイと同位置な存在が現れて、その子をカトルの親父みたいな理由で殺されたりしたら、納得できるような出来ないような……

まあ、俺らが決める事じゃないな。
妄想だけにしとこうぜ。

447:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 21:43:30
このシンはさすが綺麗ごとはアスハのお家芸~って言いそうにないな
もう自分もアスハの同類だって落ち込みそう

448:446
07/03/07 21:46:34
ごめんなさい。
上げてしまったOTZ

449:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 21:46:42
おまいら運命の歌姫氏が描くエレガントなジブリタンに期待汁

ジブリにスポットが当たるSSはレアだからなぁ

450:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 21:52:28
亡国のサンクキングダム⇒亡国のオーブ

理想をひたすら訴える点では、リリーナとカガリは立ち位置が似ているな。

むしろキラこそがゼクスっぽい

本編の比較をしてしまうとryだがそこの描写も期待

451:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 21:52:30
>>446
ストフリにPXシステム搭載。

452:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 22:06:13
>>451 ゼロシステムじゃないのか?

453:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 22:41:32
シンは査問会ものか?でも正式な命令だしなあ。

454:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 22:42:55
>>450
立ち位置だけだなw
片方は口だけ、もう片方は理想を現実に近づけるための行動・努力をしてる。

キラがゼクスってのはちょっと……
元々ゼクスがOZに入ったのって、復讐が目的だったわけでして。(元ネタがシャアだしね)
キラは今現在、復讐するような相手はいないぞ?
戦いや兵器を否定してるから、カトル的な位置にいるって言った方が、ある意味合ってると思うよ。

まあ、似ているっていてもキャラに関しては殆ど立ち位置だけだから。
職人氏がそれを元に新しい、そしてwktkするストーリーを組み上げてくれるさ。

455:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 22:46:49
>>451
ガンダムユニットにPXシステムなんてのがあったと思う。
いまいち仕組みがよくわからんけど。
ただ、使いこなせない人が使うとわりと悲劇。
漫画の中では「寒い、寒いよ」なんて言って死んでいったパイロットがいたような記憶がちらりと。

456:455
07/03/07 22:48:17
失礼。
>>451じゃなくて>>452だった。

457:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 23:04:43
PXシステムは強制種割れみたいなもんだと思われ
システムに対応してないバーネット兄弟以外が使用したから
精神崩壊した感じだったような

458:通常の名無しさんの3倍
07/03/07 23:05:38
制限時間ぶっちぎっちゃったんじゃなかったっけ。

459:通常の名無しさんの3倍
07/03/08 09:25:01
このバトルアサルトってので詳しい事知ってる人いない?
URLリンク(www.youtube.com)
URLリンク(www.youtube.com)

460:通常の名無しさんの3倍
07/03/08 10:56:43
>>459

たぶん海外だけの発売だと思う

461:通常の名無しさんの3倍
07/03/08 11:00:44
>>459

URLリンク(en.wikipedia.org)

462:運命の歌姫 ◆9nFmr8.w9I
07/03/08 12:25:12
さて、9話目も書き上がったし、こっそり昼間に投下するか。

463:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/08 12:27:09
やば、トリップ打ち間違えた。

464:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/08 12:30:47
 ……最終的な事件名を『ザフトによる地球連合和平総会襲撃事件』と平凡な呼称にする
こととした一連の事件は、ザフトによる総会襲撃の隙をついたファントムペインのクーデ
ターが全面成功したという結果に終わった。連合軍は、パナマ、ビクトリアを始めとした
宇宙港と、スエズ、ガルナハン、アルザッヘル等、重要な戦略基地をファントムペインに
奪われ、今や最高司令部を持つヘブンズベースを残すのみとなった。ヘブンズベースは現
在も抵抗を続けているが、陥落は時間の問題であろう。
 一方でプラントは、偽の情報に踊らされたとはいえ、大西洋連邦大統領ジョゼフ・コー
プランドを始めとした地球連合各国の平和論者を殺害してしまった。外交当局は総会出席
者のリストを全てチェックして青くなったという。出席者は誰も彼もが政治家や軍関係の
大物であり、ほとんどが親プラント派だったのである。
 取り返しの付かない失態を犯してしまったプラント最高評議会と軍部には、地球の各国
を始めとし、プラント市民からも激烈な非難と批判を浴びせられた。敵の偽情報を鵜呑み
にした国防委員会や、作戦を承認した最高評議会議員は、その怒りの矛先を一身に受け、
叩きのめされた。
「しかし、我々は敵にいいように利用されただけなのだ。現に地球ではファントムペイン
なる部隊の反乱が起きているし、一概に我々が悪いとは言えないのではないか」
 国防委員会には、委員長を始めとし、このように自己弁護をするものも居たが、
「利用されたのは事実だが、なんの罪もない人々を殺してしまい、自分たちが悪くないと
はどの口が言うのか。数十名に登る平和を目指す識者たちを皆殺しにし、残された遺族た
ちのことも考えず、利用されたのだから仕方ないと、お前らは本当に言い切るのか!」
 このように詰め寄られ、沈黙するしかなかった。ナチュラルの命など何とも思わない一
部の差別主義者以外は、なんの罪もない人々を殺してしまったという事実に、心が折れた
のである。
 プラント最高評議会メンバーは全員、辞表を提出した。しかし、この難局に政府のトッ
プを一度に全て辞めさせるわけにも行かないので、今回の作戦に反対票を投じた極少数の
議員は、その見識を認められ、最高評議会議長であるギルバート・デュランダルはこれま
で通りその役職に就くこととなった。
 デュランダルは自分の首が繋がった結果に対し喜び、不謹慎ながらも祝杯を挙げていた。
これで夢に一歩近づいた。暫定的な各委員長代理の人事を自ら行えば、最高評議会は自分
の意のままに動かしてゆくことが出来るであろう。
 ザフトでは、総司令官と他3名が辞任し、また、虚偽の情報を鵜呑みにした諜報部にも処
罰が下った。
 議長の命令で作戦中止を伝えにミネルバへ赴いたハイネは、カーペンタリア基地からプ
ラントに帰還し、正式に『ZGMF-X23S セイバー』のパイロットになった。元々、大気圏降
下が可能な高速機がセイバーしかなかったためにセイバーで現場に向かったのだが、ハイ
ネとしては良い意味で拾い物を得たと思っている。
 ミネルバの処遇についてはすぐに決定しなかった。
 実際に作戦を実行したのは彼らであるが、彼らは軍人として、上層部の命令を聞いただ
けに過ぎない。軍人である以上、上の命令は絶対であり、そのことで彼らを非難すること
は出来ない。情報の真意を見定めるのも、命令を下すのも、彼らではないのだから。
 デュランダルは、ミネルバに対し、「彼らは命令に忠実であり、それは軍人としてはあ
るべき姿だ。そのことで彼らを処罰するのは余りにも酷ではないか」と発言し、現場に駆
けつけたハイネも「あいつ等は軍人としての責務を全うしただけだ」と擁護した。
 いっぽうで、やはり実働部隊という事実もあり、非難や批判があることも無視できない。
しかし、裁かれるべきが彼らに命令を下した政治家や、軍上層部だというのならば、既に
処分は決定しており、これ以上の咎は必要ないようにも思えた。



465:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/08 12:32:32
 処遇が定まらない間、ミネルバはカーペンタリア基地での謹慎ということになった。基
地内の移動であれば自由であったが、クルーやパイロットたちはなるべく艦内にいた。今
回の事件に対してのジャーナリズムの反応もそうであったが、彼らは味方であるザフト兵
からも『民間人殺しのミネルバ』と、白眼視されていたのだ。
 中にはミネルバを激昂し、時に慰める者も居たが、ザフトとプラント、しいてはコーディ
ネイター全体に泥を塗ったという言葉は、ミネルバクルーたちの気持ちを挫かせた。
 特に実際、総会出席者のシャトルを手にかけてしまったシン・アスカは酷く落ち込んで
おり、同室のレイが、彼をしばらく一人にしておいたほうが良いと部屋を一時移ったぐら
いである。もちろん、早まった行動を起こさせないように監視は付けていたが。
 そうしたレイの気遣いに、多少の落ち着きを取り戻したのか、シンは三日三晩部屋に籠
もった後、やっと外に出たのだが、ミネルバオペレーター、メイリン・ホークが久方ぶり
に外に出たシンと最初に遭遇した際に、その酷い有様に声もかけられなかったという。
 そうした状況が続く中、ミネルバの件は決定なきまま有耶無耶になって行く。
 何故ならば、ヘブンズベース攻略戦を展開していたファントムペインが、大胆な作戦で
遂に同基地を陥落させ、プラントに対しての宣戦布告を進めていたからである。



           第6話「ヘブンズベースを攻略せよ」




466:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/08 12:35:13
 ヘブンズベースは、大西洋北部アイスランド島にある、地球連合軍最高司令部である。
前大戦で、統合最高司令部JOSH-Aを失った連合軍の新たな本拠地であり、そこに配備さ
れている兵力は他の基地とは比較にならないほど多い。その為、この基地を制圧するこ
とは一筋縄ではいかず、攻略には苦戦を強いられていた。
 これに対しファントムペインは、スペングラー級モビルスーツ搭載型強襲揚陸艦J.P.
ジョーンズを旗艦とした大部隊を編成。アイルランド島周辺をダニロフ級イージス艦で
囲み、これまでの基地と同じく、ジェットストライカー装備のウィンダム隊を主力とし
たモビルスーツ部隊による空からの攻撃でこれを制圧する作戦を立てた。連合軍のモビ
ルスーツは、未だに地上用ダガーが主力であり、空からの攻撃は極めて有効なものと思
われていた。
 既に他の基地の制圧を完了させた部隊も合流しており、実戦指揮はネオ・ロアノーク
大佐に一任された。

「さすがはヘブンズベース……見事な防衛網を張っている」
 旗艦J.P.ジョーンズで戦略図を見ながら、ネオは僅かに感嘆の声を上げた。ヘブンズ
ベースは付けいる隙のないモビルスーツ及び機甲部隊の布陣を敷いており、基地司令官
が決して無能ではないことを示していた。
「無能だったら嬉しかったんだがな……」
 ネオは作戦立案中にそんなことを呟いたという。そんな彼の呟きに、
「どうして? 戦うのが楽だから?」
 と、久しぶりに再会した彼に、これでもかというぐらいベッタリくっついてたステラ・
ルーシェが尋ねたが、彼は苦笑しながらこう答えたという。
「だって考えても見ろよ? 敵が無能なら、こちらが有能な分だけどちらも犠牲が少な
くて済むんだぞ? 無闇に血が流れるよりは、ずっと良い」
 そんなネオの、ある意味で軍人のあり方を否定するような発言は、ステラには難しく
て良く分からず、とりあえず「ネオは優しいことを言った」とだけ解釈した。ネオが実
際に優しい心根であるかどうか別として、彼が今回のクーデターで双方の流血を好んで
いなかったのは事実であったし、時代遅れの連合には潔く舞台から退場して貰いたいと
いう思いもあった。

467:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/08 12:37:37
「地上にある施設は基地司令部と見せかけているだけのフェイクだ。本当の司令部はこの
辺り」
 ネオは、コンソールを操作し、アイルランド島にある山の一角を拡大する。
「この山の地下に司令部はある。山は要塞化されて対空砲台も数多く存在するが、ウィン
ダムの機動力ならば十分突破できるだろう」
 J.P.ジョーンズのブリーフィングルームには、ロアノーク隊とホアキン隊の主要メンバ
ーが集まっている。さすがにこの時だけはステラもスティングたちと共に、普通に椅子に
腰掛けていた。
「ウィンダム隊は、もっとも高い機動力を持っているカオスを隊長機とする。スティング、
お前が指揮を執れ」
「わーったよ!」
「ウィンダム隊による第一波攻撃の後、アビス率いる水中モビルスーツ部隊が敵水中モビ
ルスーツ部隊を蹴散らす。出来るな、アウル?」
「当然!」
 パナマでの大勝が嬉しかったのか、二人の戦意は著しく高まっていた。ステラは戦いや
勝利に高揚するという感情を知らないのでいつもと変わりはなかったが、スティングとア
ウルが嬉しそうだという事実に、自身も嬉しがっていた。
「敵水中モビルスーツ撃破後は、モビルスーツ搭載の強制揚陸艦を基地沿岸に叩き付け、
一気に制圧する。地上戦での主力部隊は、スウェンのストライクと、ミューディーのブル
デュエル、そしてステラのガイアだ。シャムスのヴェルデ・バスターはバスターダガー隊
と共に長距離からの支援攻撃に専念しろ」
 出来ればネオ自身も専用のウィンダムで出撃したかったが、精鋭たる彼らの足を引っ張
っては困る。今回は旗艦にてホアキンと共に静観するつもりであった。
「作戦内容は以上だが、何か質問は?」
 士官の一人が手を挙げた。
「作戦とはあまり関係ないのですが、技術部が今回の作戦に試作モビルアーマーのテスト
を兼ねた実戦導入の許可を求めています」
 近年、ファントムペインは積極的にモビルアーマーの開発を行っていた。これは謂わば
性能テストのようなもので、ストライカーパックにより各戦場に対応した装備を選択でき
るモビルスーツと、最初からあらゆる戦場を想定して作られモビルアーマーでは、どちら
がより有効なのか? というものである。もっとも、既存のモビルスーツを開発して作ら
れたウィンダムとは違い、一から作らねばならなかったモビルアーマーは開発が遅れ、こ
んなギリギリに完成したという経緯があった。
「ザムザザー、と言ったな、確か」
 ネオは呼び慣れぬモビルアーマーの名前を口にする。
「ダメだ、今回の作戦はファントムペインの今後を左右するものだ。それに試作モビルア
ーマーのテストなど加えられん」
 ネオはそう決定したが、内心でそのモビルアーマーに興味を持っていた。作戦が終わっ
た後にでも見に行ってみるかと、その時は気楽に、そう考えていた。
「ではこれより二時間後に作戦を決行する。各自、出撃準備に取りかかれ!」
 しかし、二時間後、出撃したファントムペインは完膚無きまでに敗北することとなる。


468:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/08 12:39:10
 このヘブンズベース攻略戦の第一波が『失敗』した理由はいくつかある。それまでの勝
ち戦続きが将兵たちにの心に小さくはない油断を作っていたこと、パイロットたちにヘブ
ンズベースほどの大規模な要塞基地に対しての攻略経験が浅かったこと、それに対して連
合軍が死にものぐるいで絶対死守を敢行したこと、そしてヘブンズベースにファントムペ
インが持っていた情報にはない装備があったこと、などだ。
 ファントムペインのスティング・オークレーは、作戦通りにウィンダム隊を指揮し、敵
の対空砲火をかいくぐって敵基地司令部まで接近していた。ここまでは確かに作戦通りで
あり、後は基地司令部のある山に攻撃をすれば良いだけ、そのはずだった。
「なんだ? 山が……開閉している!? こんなもの、情報にはないぞ!」
 突然の事態にカオスに乗るスティングは少なからず動揺した。
 連合軍は、対空砲火では敵モビルスーツ部隊に対しての応戦は難しいと考え、極秘裏に
開発されていた要塞主砲による攻撃を試みたのだ。その名を対空掃討砲ニーベルングと言
った。
「フフン、ファントムペインの奴らめ、このヘブンズベースを墜とせるなどと本気で思っ
ているのか?」
 ヘブンズベース基地司令官は、司令部に近づきつつある敵モビルスーツ部隊の存在にも
まるで動揺せず、対空掃討砲の使用をいち早く決断した。
「蚊とんぼどもめ、思い知るがいい……ニーベルング発射!!!」
 ニーベルングは、その圧倒的な破壊力を持って発射された。元々はザフト軍の降下部隊
を殲滅するために作られたこの要塞主砲は、今まさにファントムペインの空中モビルスー
ツ部隊を、ほぼ全滅に近い形で粉砕した。
「くそっ、全機離脱だ!」
 スティングは発射されたニーベルングの莫大なエネルギー量に恐れ戦きながら、必死で
機体を反転、急速離脱させる。後ろでは次々とウィンダムが爆破、塵一つ残らず消滅して
ゆく。
(間に合うか!?)
 スティングは、久しぶりに死への恐怖を感じていた。



469:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/08 12:40:24
「これは……」
 ネオはその悪夢に近い光景を旗艦から見ていた。すぐ隣ではホアキンが状況を確認しろ
と部下に怒鳴っている。
「カオスは……スティングは無事なのか!?」
 ネオはそう叫ぶと、部下にすぐにカオスの信号を確認させた。数秒後、カオスの信号を
無事確認することが出来た。
「カオスより入電、ウィンダム隊はほぼ全滅に近い状態にあるとのことです!」
「ぜ、全滅だと」
 ホアキンは血の気が引いたような声しか出せなかった。
「カオスよりさらに入電、我が機体の損傷も著しく、帰還を許可されたし、とのことです」
「帰還を許可する。水中部隊も一旦後退させろ、この状況でヘブンズベースを攻めるのは
無理だ……」
 ネオは苦々しげに呟くと、それ以上の作戦続行を断念した。これを機に敵が打って出て
くるかとも思ったが、敵はあくまで籠城策を取るつもりなのか、出撃の気配はなかった。
何はともあれ、ファントムペインは一連のクーデーター中に、初めての敗北を喫したので
ある。


470:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
07/03/08 12:43:52
 帰還したカオスは、ニーベルングの直撃こそ回避できたが、砲撃の余波に機体を著しく
損傷させており、再出撃には相当の時間が掛かると思われた。ちなみにパイロットも軽傷
を負っており、医務室行きとなった。ネオとホアキンはこの事態に作戦の練り直しを要求
された。
「一筋縄ではいかないと思っていたがまさかここまでとは……」
そうホアキンが呟きながら、その日の作戦会議を終えた。ネオも同感であったが、素直に
賛同する気にはなれなかった。何故ならば、そんな事実が現れようとも、ファントムペイ
ンはヘブンズベースを攻略せねばならないのだ。その現実に溜息をつき、私室に戻ろうと
したネオに、技術士官が声をかけてきた。例のモビルアーマーの実戦テストをどうしても
行いたいというのだ。
「こんな状況下に何を……いや、まて」
 ネオは『モビルアーマー乗り』としての直感が、これは使えるのではないかと告げてい
ることに気付いた。
「そのモビルアーマー、私に見せて貰おうか?」
 彼の中にとても危険なひらめきが生まれていた。

「このザムザザーは、総重量526.45tと既存のモビルスーツを遙かに上回る重さですが、
各部に設置されたバーニアから大推力を得ることによって、高い飛行能力と機動性を有
しています」
 技術士官は、ザムザザーを遠隔操作し、その最大の武装、陽電子リフレクターを作動
させる。
「これが陽電子リフレクターか?」
 ネオは、発生する高出力フィールドに目を押さえながら尋ねる。
「はい、この陽電子リフレクターのリフレクション能力は、その名の通りです。例え陽
電子砲であっても完全に防ぐことが出来ます」
 技術士官は自信に満ちた声で熱弁を振るいつつ、リフレクターをリセットする。
「搭乗員は三名で、それぞれ行動指揮を執る機長、砲撃を担当する砲撃手、操縦及び格
闘を担当する操縦士になっています」
 蟹のような甲殻類を思わせるザムザザーのフォルムに、ネオは新たな可能性を感じて
いた。この機体ならば……!
「一つ聞くが、この機体は一人でも動かせるのか?」
「は? 一応、操縦は一人でも出来ますが、それだと砲撃等の攻撃オプションが使えま
せん。最低でも二人は必要ですが……」
「そうか、わかった。この機体の実戦導入を許可しよう」
「は、はい、ありがとうございますっ!」
 しかし、この技術士官の喜びは一瞬で消えることとなる。
「では、早速出撃準備に掛かろう。俺も仕度を済ませる」
「えっ?」
「聞こえなかったか? この機体で出撃するのだ、俺がな」
 仮面に隠れたネオの表情は、いつになく不敵なものだった。




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