種・種死の世界にWキャラがやってきたら MISSION-07at SHAR
種・種死の世界にWキャラがやってきたら MISSION-07 - 暇つぶし2ch111:72
07/02/17 13:40:53
 何時までそうしていただろうか。ほんの一瞬が一分になり、やがて一時間、やがて一日と―
 ほとんど無意識のうちに膝をつかせてコックピットから飛び降り、素早く市街地に駆け込んだ。
 ちょうど、町の人々が集まっていた。辺りには人であったものや腕らしき物が四散していた。
 被爆現場にいた子供たちは泣き叫び、大人達はビームキャノンがえぐった場所を見つめて打ち震えていた。
「ヒイロ! 無事だったのか!」
 23,4の若者だ。ヒイロは彼にこの町についてまだ間もない頃世話になった。
「アイツがお前を見てないって言ってさ、お前の家に行こうとしてさ……あの光の巻き添えに……でも、お前が無事でよかったよ」
「な、に……?」
 ヒイロには最初どういう意味か分からなかった。
 だが、意味を理解した瞬間、ヒイロの中で何かが音を立てて崩れた気がした。
 彼の言うアイツとは、自分にこの世界がどういうものかを気づかせてくれた人物であり―彼の弟でもあった。
 いつも家の仲で遠目から眺めていた。街の子供たちと公園で駆けている姿を見ると、本当に二十歳を超えているのかどうか疑いたくなる兄に、面倒見がよく弟。
 そんな…馬鹿なことがあってたまるか。自分がもっと早く動いていれば―
「アイツ、本当にこの街が好きでさぁ、俺はここで永住だ! なんて言っててさ……それを……それを……あの黒いのは、悪魔かなんかなのかなぁ……」
 ようやく町の人々が正気に戻って、救助活動を始めていた。残骸に埋められた人々もいる。
「兄さんって呼んでくれてさ……畜生……」
 ヒイロはそっと離れた。自分がこの場にいてはいけない気がしたのだ。
 ゼロの下まで戻ると、機体を起動させて、ビルゴの残骸を抱えて機体を飛び立たせた。
 一刻も早くここ離れたかった。

 街から離れた海の上で、ゼロは佇んでいた。
 何時までそうしていたであろうか、ゼロは唐突に広大な海の上空から、ビルゴを手放すと同時に海へと降下していった。
 どうすればいいかわからなかった。あの声さえ聞こえなければ、このまま海に直面していたであろう。

 自分の名を呼ぶ声。少女の、呼ぶ声。

 ヒイロはとっさに瞑っていた目を見開き機体を急上昇させた。冷静になって、状況を分析する。
「ゼロを宇宙に上げたからといって、燃料の方の危険性もある……しかし、危険な賭けだが、やるしかない」
 ヒイロは機体をネオバード形態に変形させると、いまだ地球への落下コースを辿るユニウス・セブンに向けて発進させた。
 失敗する要因は多い。だが、今のヒイロにはそんなことどうでもよかった。
 地球への落下コースを辿るユニウス・セブンを消滅させることが出来るのならば。

 それを、離れたオーブ近海の島で見ていたキラは、思わず目を疑った。
 まるで鳥のような機体が宇宙(そら)に向かって飛んでいるように見えたのだ。
 しかし、それも一瞬。すぐに視界から消え失せてしまい、キラは疲れているのかな、と思った。
「どうかしましたか、キラ?」
 そんな様子を怪訝に思い、声を発した女性。
 キラは、我に返ったように、
「え? あ、ああ。気のせいかな、鳥が、宇宙(そら)に向かって飛んでいるように見えてさ……」
「まぁ、本当ですか?」
 女性は空を見上げ、必死に遠くを見ようとしている。
 キラは、苦笑しつつも、気のせいかと割り切って再び空を見上げた。


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