♂倒錯シンジきゅんハァハァスレ♀ 13at EVA
♂倒錯シンジきゅんハァハァスレ♀ 13 - 暇つぶし2ch300:163:Migraine:06 ◆rK3tDGGMK2
07/10/27 04:15:07
あの時は流し読みしかせずにいたので、覚えのない内容が多い。
……えーと、特別報酬が一千万円とか聞こえたような気がしたんですが。
しかも事後報酬?もう振り込まれている?

……いつの間にか結構な資産持ちになっていたらしい。
後何回か出撃したら老後の心配なんて要らなくなるんじゃないだろうか。

現実味のない現実に思考をめぐらしつつ、説明を聞く。
この後、各施設を実際に回って案内した後、午前中は基本事項の座学となるらしい。
あわせて、専用の携帯端末が支給された。今後の連絡はこれに届くという。
更に午後からはシンクロテストなるものが行われる。
初号機との接続訓練、らしい。
パイロットとして初めてのまともな訓練といえそうだった。

案内のために移動を始めて、気がついた。
―なんでミサトさんも一緒に来ているんだろう?

そう、考えてみれば朝からずっとミサトさんは一緒に行動している。
付き添いなのかとも思っていたのだが……。

「……リツコに、いかされた……」

……いまだに不案内な作戦部長殿に業を煮やして、一緒に覚えて来いと命令されたらしい。
座学まで含めて。
子供と一緒に案内を受けなおすというのは確かにばつが悪いだろう。

「リツコー、おぼえてなさいよー!」

自分の責任は棚に上げて吼えているミサトさんを横目に。
もしかしなくても狙ってやっているのかも、と思い、苦笑した。

***

301:163:Migraine:06 ◆rK3tDGGMK2
07/10/27 04:16:10
午後のシンクロテスト。
開始前の控え室で、僕は硬直していた。

全身タイツのようなパイロットスーツ。
プラグスーツというらしいそれを着て、スイッチを入れると、体にぴっちりと密着した。
華奢な体のラインが見事に浮き出ているその姿は、男の子の意識をフリーズさせるのに十分な威力だったらしい。

この格好で職員の皆様の前に出ていかなければならないと思うと、更なる恥ずかしさがこみ上げて。完全に身動きが取れなくなった。

と、なかなか出てこない僕に痺れを切らしたか、スピーカーから赤木さんの声がした。

<<なにをしているの。早く出てきなさい>>

こちらの窮状をわかっていないであろうその声に泣きたくなる。

「あの、その、ええと……ものすごく、恥ずかしいんですけど、この格好」

声のするほうに向かって、何とか訴えてみる。
要所要所にプロテクターらしきものがあるとはいえ、布地の部分は体のラインをこれ以上ないというほど完璧に反映しているわけで。
いっそ裸のほうが精神衛生上ましなくらいのその格好で人前に出て行く勇気は、男の子の意識を差し引いても持ち合わせていなかった。

少しくらいはわかってくれたのだろうか、しばしの沈黙の後。

<<……わかったわ。次回はコートか何かを用意するから、とにかく今回は早く出てきてちょうだい>>
<<あなたがいないとテスト自体がはじめられないわ、わかって>>

……つまりは、死刑宣告。
次回は何とかなるとしても、困窮しているのは今このときである。
そういわれたからといってすぐに出て行けるものでもなかった。

どうにも気持ちの整理がつかず、扉の前でもじもじとしていた、その時。

302:163:Migraine:06 ◆rK3tDGGMK2
07/10/27 04:17:12
扉が勝手に開き、小柄な女性職員が入ってきた。

―見られた。思いっきり。

顔が一気に紅く染まるが、事態は当然其処で終わるわけもなく。

<<マヤ、連れてきなさい>>

赤木さんの怒気混じりの高圧的な一言が、追い討ちをかけた。

「シンジちゃん、御免ね」

かわいらしくそういった女性が固まっていた僕をあっさりとホールドする。
そのまま引っ張り出された。

「いやああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

残響音を残しながら引きずられ、僕はテストプラグに放り込まれた。

***

テストプラグ内。
いまだ興奮冷めやらぬ僕に、赤木さんが話しかけてくる。

『心拍が高いわよ、落ち着きなさい』

無理です。
そう言いたくなるのを堪え、深呼吸。
LCLの中でやる意味があるのかは不明だが。

『このテストはエヴァとのシンクロ率の測定と向上を目的としています』
『とりあえずエヴァとひとつになることをイメージして』

303:163:Migraine:06 ◆rK3tDGGMK2
07/10/27 04:18:14
ひとつになる、といわれても、具体的なイメージがわかない。

―そういえば、前はどうだっただろう。

前回の戦闘。あの時は何もわからないまま乗っていた。
あの時、自分はどんな感じだったか?

確か、そう、あれは。

―エヴァが、自分のようだった。

エヴァから見える視界、エヴァの感じる空気、足から伝わる感触。
エヴァの中にいる自分を感じる自分。
あれが、そうか。あの一体感。

「……やってみます」

イメージが固まり、精神を集中する。
テストが開始された。

***

「……落ち着いたようね、マヤ、始めてちょうだい」
「了解。シミュレーション開始。A10神経接続開始します」

第一回シンクロテスト。
エヴァとパイロットのシンクロ率を測定するためのテストだ。
一回目は、特に初期値のサンプルとしても重要なものとなる。
このテストを重ねてエヴァとの同調を高めることで、エヴァを動かせるようになる。
通常ならば、だ。

だが、この子はまったくの経験なしに、初戦で120%を超える値を出している。

304:163:Migraine:06 ◆rK3tDGGMK2
07/10/27 04:19:22
初めて出会ったエヴァを完全に理解する。有得ない。有得ないはずだった。

「シンクロ率、141.4%」

物事にはそのように在るための原因が存在する。
因果性と呼ばれるそれ。
彼女がサードチルドレンである理由。碇ユイの娘。
それは確かにひとつの要因ではあったが、それだけでは説明がつかない数字だ。

直前の怪我。記憶喪失。心理的要因。
パイロットに想定されうる原因をどう組み合わせても、100%を上回る状況は発生しえなかった。
いや、正確には100%を超えて”存在できる”原因は存在しなかった。

99.999999999%と100%。0.000000001%の間には巨大な溝が存在する。
それを踏み越えることはつまり、自我の喪失を意味するはずだった。
自分とエヴァの境界が消え、エヴァと同化し、存在はこの世にとどまれない。
エヴァという存在の巨大さの前に、押しつぶされてしまう。

その世界に足を踏み入れてなお自我を失わずにいる彼女。
それが可能となる状況は。想定できないわけではない。
だが、どれも馬鹿げた妄想のようなものでしかない。

警報が鳴る。
シンクロ率の異常な上昇。

「シンクロ率200%突破、更に上昇!」
「そんな、シミュレータが接続停止を拒否しています!」
「阻害因子を確認して」
「確認します。これは……初号機とのモニタ回線から介入を確認しました!」

背筋に冷たいものが流れた。

305:163:Migraine:06 ◆rK3tDGGMK2
07/10/27 04:20:25
シミュレーションのための初号機との回線。
誤差を補正するための一方方向のラインのはずだった。
そこからの介入。
これではシミュレータを使用している意味がないではないか。

「シンクロ率300%突破!このままでは自我境界が!」
「回線を物理切断。シミュレータを強制停止して!」

炸薬音が響き、プラグブロックごと電源供給が停止する。
万が一のための緊急停止装置が役に立った。

―万が一?たかだか0.01%?

その言葉に自嘲する。
本来それどころでない低確率の事象が易々と発生しているのだ。

テストプラグの緊急脱出ハッチが開き、LCLがこぼれ出る。
最終シンクロ率、356.9%を記録。
その世界からすら、彼女は帰還した。

***

誰かが手を伸ばしている。
だから僕はその手をつかんだ。

誰かが心を求めた。
だから僕は心を与えた。

与えた心。
与えられた体。

306:163:Migraine:06 ◆rK3tDGGMK2
07/10/27 04:21:47
この心は僕。
この体は僕。

その心は誰?
その体は誰?

これが僕なら、君は誰なの?

その問いかけに答えようとする僕の答えは、しかし聞かれず。

世界は闇に落ち、僕は僕に戻った。

***

テストプラグのハッチが開き、僕は正気に戻った。
外は暗闇に包まれていた。
しかし恐怖を感じる間もなく電源が復帰する。

プラグからではなく、なぜか外部スピーカーから赤木さんの声がした。

<<大丈夫?異常はない?>>

「ええと、少し頭痛はしますけど、大丈夫です」

あの偏頭痛の残滓を感じた。

「なにかあったんですか?」
<<……ちょっとした実験のミスよ、ごめんなさい>>

ブロックの電源が落ちていたようだから、ブレーカーでも落ちたのだろうか。
まあ何事もなかったようだ、と安心する。

307:163:Migraine:06 ◆rK3tDGGMK2
07/10/27 04:22:49
「この後はどうすればいいんでしょうか?」

<<すぐに救助班が行くから、そこで待っていて>>
<<この状態じゃ実験はしばらく無理だから、検査だけ受けて、今日は帰っていいわ>>

それはつまり、かなり大規模な事故が起こったということだろうか。
また少し心配になって訊ねる。

<<心配しなくていいわ、設備の点検をしなくちゃならないから>>

そういうものなのか、と納得する。
追求したところで自分に何かできるわけでもない。
実際何が起きたのか気にならないわけでもないのだが。

そんな問答をしているうちにホバーが横付けされ、回収された。
だが彼らの切迫した表情が、また僕を不安にした。

……ホバーから降りたとき、自分がどういう格好でいるのか気がついたり、救助班が全員男性だったりしたのは無かったことにしておこう。

***

―ちょっとしたミス、か。ひどい嘘ね。

一歩間違っていればあの子はこの世に存在していなかったかもしれないのだ。
心配させずにテストを中断するための言い訳。
シンクロテスト自体は別ブロックを使えば行えないわけではない。
だが、この状況を知っている人間ならばもう一度やろうとは思わないはずだ。

異常なシンクロ率が記録されることを考えなかったわけではない。
だがこれほどとは。
しかも初号機が自ら積極的に介入してきた。

308:163:Migraine:06 ◆rK3tDGGMK2
07/10/27 04:24:18
―あの子がお気に入りというわけ?

科学的とはいえないその考えも、否定しきれない。
確かに人はエヴァンゲリオンを作った。
だがその力も、能力も、いまだ正確に判明してはいない。
よくわかってもいないものを、強引に動かしているに過ぎないのだ。

しかし、それを使わなければ使徒は倒せない。
生き残るためならば、人はどんなものだろうと使うだろう。
それが、天使だろうと。悪魔だろうと。

―とりあえず、この子の場合……
―シンクロ率の”引き下げ”が急務ね……

これまで四苦八苦してきたことを思うとなんとも皮肉な話ではあるが。

先ほどのテストは最も浅いプラグ深度から、動かしてすらいない。
通常ならエヴァとの接触もぎりぎりの深度でああなった。
パイロットへの悪影響無くシンクロ率を下げるプロテクトの開発。
ただでさえ逼迫している技術部のリソースを考えると頭が痛いが、やらねばならない。
エヴァを起動可能な貴重なパイロットを失うわけには行かなかった。

また、確実に泊り込みになるだろう。慣れてはいるが、それが普通になってしまっているのはなんとも悲しいことだった。
お気に入りの猫型の重しをちょんっと弾く。

「……せめてペットくらい養える時間がほしいわね……」

ふと、親友の作戦部長を思い出しながら、そんなことを考えた。

***

309:163:Migraine:06 ◆rK3tDGGMK2
07/10/27 04:25:35
サードチルドレンの検査に私自身も立ち会うことにした。
時間はまったく足りていないが、彼女自身から得られるものもあるだろう。
そう考えて、最後に面接時間を設けた。

「シンクロテスト中、何か感じたことはあった?」

初号機からの積極的な介入が、パイロットにどんな影響を与えているのか。
やはり他人に任せるより、自分で直接聞き出したかった。

「いまいちどう答えていいのかわからないんですけど」
「そうね、たとえば、何かが見えたとか、聞こえたとか」

自分で例を出しつつも、その曖昧さに苦笑する。
ひどいとは思うが、他に体験をしている人間はいないのだ。
どうしても抽象的にならざるをえない。

「……誰かが、いたような気がします」
「誰か?」
「なんとなく、ですけど……うーん、なんていうか」
「握手、したのかな?」

握手?
侵食されていると考えた場合、ずいぶんと軽いイメージだ。
ならば侵食以外の何かか?

「その後、僕はその人になってた」

それはつまり。
初号機そのものと接触していたということか!
可能性としては、碇ユイ。

310:163:Migraine:06 ◆rK3tDGGMK2
07/10/27 04:26:41
「その人はどんな感じだった?そう、たとえば、お母さんとか」
「お母さん?……すいません、そういうイメージはわからなくて」
「あ、ごめんなさい、記憶喪失だったわね」
「いえ、実感がないので。……でも、何か違います」
「え?」

違う?

「もっと、無邪気な好奇心みたいな、そう、子供みたいでした」

予想外の答え。
あの中に宿っているのは碇ユイのはず。
それ以外の存在が、初号機にあるというのか。
後日、詳しく調べたほうがいい。

話の中で気になったもうひとつの疑問。

「そういえば、なぜそういうことがわかったの?あなたはその人になってたんでしょう?」

自分自身を客観的に評価し、他者としての自分を認識していた。
そう考えられる。それがどんな状態なのか。

「えと、すごく言いづらいんですけれども」
「感覚的なものでいいわ」
「……体は二つあって、心も二つあって」
「なのにどちらも僕で」
「考えたことはどちらの体にも伝わって」
「動いたことも二人ともわかっていて」
「同じなんだけど、同じじゃないんです」

感覚的でいいとは言ったが、まさしく感覚的な答え。

311:163:Migraine:06 ◆rK3tDGGMK2
07/10/27 04:27:48
いまいち要領を得ないのは本人もそれを整理し切れていないか、語るための言葉が存在しないのか。
この件についても分析が必要のようだ。
今回の実験データとあわせてみれば、何かわかるかもしれない。

面接に取れた時間は多くは無かった。
そろそろ切り上げないと後のスケジュールに支障をきたしかねなかった。

「じゃあ、今日のところはこれでおしまい、帰っていいわよ」

私も帰りたいけれど、などとはさすがに言わない。
だが表情にでも出たのか、申し訳なさそうにしている。

―鋭いのか。それとも常に顔色を窺っているのか。

あまり迂闊な顔はできない、と考えてしまう。

「あ、そういえば、学校のこと、ミサトから聞いてる?」
「え、学校ですか?」

……気がついてよかったというべきか。
それとも気がつけてしまうことを嘆くべきか。
どちらにせよ、ミサトへの書類攻めの刑は確定した。

「ええ、明日から行ってもらう事になるわ」

彼女は本来中学生であり、学業は優先されるべきことだ。
しかしそれだけでなく、彼女の場合その心理面からも中学に通わせる必要があると考えている。
人との絆を渇望する心。対人関係を築くにあたって学校はうってつけだ。

だが、良好な関係を築くためには障害となる項目を、彼女はいくつも持っている。
その点も確認しておかなければならない。
……当然本来は保護者であるミサトの役割のはずだったのだが。

312:163:Migraine:06 ◆rK3tDGGMK2
07/10/27 04:28:52
「わかるとは思うけれど、いくつか確認しておくわ」
「なんですか?」
「まず、あなたが記憶喪失であることはどう処理しようかしら?」
「隠すならこちらでそれなりに準備はするわよ」
「……」

即答など期待してはいない。
だから本来はミサトがもっと早くに……考えるだけ疲れる、もうやめよう。

しかし、案外早く答えが返ってきた。

「……あまり、隠し事はしたくありません」
「いいのね?サポートはしないわよ?」
「自分から言い出す気はありませんけど……そういうの、苦手ですから」

苦手、か。
実際のところは、自分を偽る余裕すらないというところか。

「それじゃもうひとつ。その右目、コンタクトでも用意しようかしら?」
「どういうことです?視力はかなり回復してますけれど」」
「そうじゃなくて、片目だけ紅いだなんて、目立つでしょう?」
「カラーコンタクトくらいは用意できるわ」

異質な外見はそれだけで集団から受け入れを拒まれる。
本音と建前を使い分け切れない子供ならばなおさら。

「……やっぱり、隠してるみたいで、そういうのはいらないです」
「本当にいいの?いじめの心配もあるわよ?」
「なんとかやってみます。それに」
「この瞳は、綾波さんとの絆ですから」

313:163:Migraine:06 ◆rK3tDGGMK2
07/10/27 04:29:56
あの綾波レイと同一の色彩であるという、そのことを優先するというのか。
病院での二人の間にはほとんど会話記録は無い。
ただ病室に居座っていたというだけだ。
……いや、それだけの関係だとしても、あれだけの期間があれば絆となるのだろうか。

危険性を承知して、それでも隠さないと決めた彼女。
ならばひとつくらいは、気が楽になるようなことを。
口先だけのサービスだけれど。

「その綾波レイと、同じクラスになるわ。よかったわね」
「え、本当ですか?」

実際のところ、当然のことなのだ。
だが、その理由まで教える必要もないし、教えられることでもない。

だが、そうであっても。

嬉しそうに微笑むその姿に、心が緩んだ。


end.06

314:163:Migraine:06 ◆rK3tDGGMK2
07/10/27 04:32:27
投下終了。
流れに揺らぎを与えるために用意した設定のおかげで書く羽目になった部分が多々あり。

だが。やはりプラグスーツははずs(ry

315:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/27 05:30:16
おお。斬新な設定がイイ!

316:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/28 00:16:51
もしかして男シンジが出てくんの?

317:163 ◆rK3tDGGMK2
07/10/28 18:26:42
アンカーミスしたりタイトル消し忘れたりと眠い中投下するとやはりミスが多いなあ。

ともかく、七話、八話が書きあがったよ。
内容的には続き物。七話の校正は終わったのでまずはそちらから。

では投下です。

318:163:Migraine:07 ◆rK3tDGGMK2
07/10/28 18:27:58
begin.07

登校初日。
ミサトさんの「今日は送っていくから」の一言に逆らえず、本日も朝から恐怖のアルピーヌ・ルノーに揺られている。
第3新東京市立第壱中学校。たどり着いた校門には、そう書かれていた。
車を降りると、ミサトさんも一緒に降りてきた。
なにやら手続きがあるらしく、それで送ってきたのだと納得する。

通常の登校時間より少し早いためか、まだ生徒の数はまばらだ。
来客用の下駄箱を使い、職員室へ向かう……と、通り過ぎた。
そのまま先にある校長室でとまる。

ミサトさんが扉にノックする。

「ネルフ作戦部長の葛城ミサトです、失礼します」

―あれ?

なぜ、ここでネルフの肩書きが出てくるのだろうか。
もしかしたら、この学校もネルフの福利施設なのだろうか。
それにしては市立と言うのは変だけれど。

まあ町全体が要塞のようなものだ、不思議は無いか。

ある意味で当を得た、そんなことを考えつつ、ミサトさんに続いて部屋に入る。

そこにはデスクの向こうに座る、校長らしき初老の人物と、その前に立つ、定年間近のような老教師がいた。

「今回の転校処理の書類です、ご確認を」

そういいながらミサトさんが校長らしき人に書類を渡している。
彼はしばらく書類を確認した後、頷き、こちらを見た。

319:163:Migraine:07 ◆rK3tDGGMK2
07/10/28 18:29:01
「碇シンジさんですね」
「はい」

落ち着いた物腰の声が僕の名前を呼ぶ。

「今日からあなたはこの第3新東京市立第壱中学の生徒です」
「ぜひとも学業に励み、学校生活を楽しんでください」
「それでは、よろしくお願いしますね」

儀礼的だけれど柔らかな態度でそう言われた。
わかりました、と答えると、もう一言追加される。

「ネルフでの仕事に関係した休学、遅刻、早退等は優先的に配慮されますので、安心してください」

つまり、先ほどのネルフとの繋がりという考えは、間違っていないのだろう。
まあ、パイロット業のせいで留年しました、のような心配はあまりしなくてよさそうだ。

「君のクラスは私が担任をする2-Aになります」

そう言うのは静かに立っていた老教師。
どうやら担任の先生だったようだ。
ふと視線があい、久々に大き目の頭痛が頭の奥で疼く。

一緒にわきあがってきた感情は……。え?眠気?

いや確かにいかにも退屈そうな人ではあったのだが。
初対面でそれは無いだろう。
脈絡の無い感情に思わず突っ込みを入れる。

その時、丁度チャイムがなった。

「それでは、このまま2-Aに向かいますから、ついてきてください」

320:163:Migraine:07 ◆rK3tDGGMK2
07/10/28 18:30:03
そういって出て行く彼の後に続く。

「それじゃミサトさん、また」
「はーい、がんばってねえ」

何をがんばるのかはわからないが、まあがんばろう。

***

階段を上り、教室へ。
2-A。そう書かれたプレートのある、扉の前。

「少ししたら呼びますから、そしたら出てきてください」

一緒に入ってもよさそうなものだが、ひとつのパターンなのだろう。

『えー、皆さん、お静かに』

がやがやと騒がしかった室内が、ほんの少しだけ音量を下げる。

『今日は転校生を紹介します。入ってきてください』

その一言で静まり返る教室。

僕は、期待と、ほんの少しのためらいを感じながら、扉を開ける。
台上で手招きしている老教師に従い、中央へと進んだ。

少し高くなったそこから、教室の中央へ振り向く。

初めて会う他人を値踏みする、クラスメイトの奇異の視線が僕に突き刺さる。
その感覚は少なからず僕を怯えさせ、緊張させる。
でも、まずは自己紹介。勇気を振り絞り、声を絞り出す。

321:163:Migraine:07 ◆rK3tDGGMK2
07/10/28 18:31:06
「碇、シンジです。よろしくお願いします」

***

相田ケンスケは混乱していた。
転校生が来ることで動揺していたわけではない。
彼は独自の情報網により、すでに転校生が来ることは知っていた。

いや、だからこそ、他の人間よりもはるかに動揺したのかもしれない。

彼の親のPCを盗み見たときになぜか出てきた、転校生の情報。
その碇シンジという名前から、彼は大いなる勘違いの元、少々落胆していたのだ。

彼の趣味のひとつは写真撮影である。
だが転校生といってもわざわざ男を被写体にすることは無い。

つまりは彼も、転校生は美少女、を夢見る一男子学生だった。

事前情報により諦めの境地にいた彼の。
その目に飛び込んできたのは、あまりにも予想外な容姿。

壱中の女子制服を身に着けた、華奢な体。
その体と同じように線の細いつくりの顔は平均点を十分に上回っていた。
だがその中にある大きな違和感。
ショートカットにした頭には包帯が一巻きされており。
右の瞳だけが紅く輝き、黒い左目と合わさって異様なアンバランスさを醸し出している。

その表情は、視線は、かすかに怯えを含み、宙を彷徨う。
しかし意を決したように引き締まると、一言、名前を言ってお辞儀した。


322:163:Migraine:07 ◆rK3tDGGMK2
07/10/28 18:32:14
深々としたお辞儀のあと、顔を上げ。
戸惑いを含みつつもにっこりと微笑んだその表情に。

一瞬、時が静止し。

次の瞬間、教室内は歓声と質問の渦で満たされた。


その中で、はじめから時間に取り残されていた彼が、ようやく気がつく。

「……あ、撮り忘れた……」

相田ケンスケ、一生の不覚であった。

***

一種異様な熱気の中、僕は早くも窮地に立たされていた。

「どこから来たの?」
「何で引っ越してきたの?」
「ご趣味は何ですか?」

転校生に対する当然の質問から、

「付き合ってる人とかいたりするの?」
「スリーサイズ教えてください!」
「ぜひ僕を彼氏に!」

ちょっと困った質問に、

323:163:Migraine:07 ◆rK3tDGGMK2
07/10/28 18:33:17
「その頭、大丈夫?」
「何で右目だけ紅いの?コンタクト?」
「左手にも包帯してるよね、何かあったの?」

怪我や右目についての質問も。

いっせいに押し寄せた質問で、僕の頭は一瞬でパンクしてしまった。

「あの、その、ええと……」

あまりの状況に、ほとんど何も答えられずおろおろとしていると。
先生から助け舟が出された。

「はいはい、皆さん。気持ちはわかりますがもう授業が始まります」
「続きは休み時間にお願いできますか」

そういって質問の嵐を打ち切ってくれた。

「それでは、碇さんは2列目の後ろから2番目の席に座ってもらえますか」

そういわれ、促された先。
その窓側の隣の席に、見知った人物を発見した。
綾波レイ。
いたるところに包帯を巻いているが、最後に病院であったときよりは幾分かましな姿で、彼女は座っていた。
何か言う様子も無い彼女の視線は、しかし、常に私に向けられている。

僕に気をかけてくれている。

そう思えて、少し嬉しくなった。

324:163:Migraine:07 ◆rK3tDGGMK2
07/10/28 18:34:21
自分の席まで行き、座る前に彼女に挨拶する。

「おはよう、綾波さん」
「おはよう、碇さん」

病院のときと変わらない答えが返ってくる。
それに満足し、席についた。のだが。

また、教室の雰囲気が変わった。
ざわつき方の方向が変わったのだ。

なぜだろう?と考えるが、理由は思いつかない。
だが、その鍵となりそうなことは、すぐに起こった。

授業用の端末を開いてすぐに来た質問。

『碇さんて、綾波さんと知り合いなの?』

複数の人から同様の質問が飛んできていた。
こんなことがなぜ今までのほかの質問を押しのけて、真っ先に聞かれるのか。
大いに疑問ではあったが素直に答える。

『うん、病院で知り合ったの』

答えはしたが、疑問は残る。
思い切ってこちらから訊ねようと思った時には。
恐るべき勢いで質問のログが流れる。
ただいま2.4kbpsでオートクロール中、といった風情で、大昔のパソコン通信のごとくログが流れていく。
その文字列をリアルタイムで生み出している熱気は驚嘆に値するものだった。
当然その速度に一人の人間が太刀打ちできるはずも無く。
さっさとすべてに回答するのは諦めた。

325:163:Migraine:07 ◆rK3tDGGMK2
07/10/28 18:35:30
質問をパターンに整理し分類。
質問をパターンに整理し分類。
質問をパターンに……。

大量の質問といっても、各個人から同じような質問が繰り返されるからそうなるだけだ。
質問をひとつにまとめて、数が多く無難なものからオープンチャットで回答していく。

『Q.どこに住んでいたのか』
『A.第2新東京市』
『Q.なぜ引っ越してきたのか』
『A.親の都合で』
『Q.スリーサイズは』
『A.ノーコメント』

………

『Q.頭の怪我はどうしたのか』
『A.3週間前に事故で』
『Q.右目だけなぜ紅いのか』
『A.事故でこうなった。コンタクトじゃありません』

………

『Q.付き合っている人はいるのか』
『A.いません』

なぜか歓声が上がったので。

『A.募集もしていません』

即座に追加。落胆の声が聞こえた気がする。

326:163:Migraine:07 ◆rK3tDGGMK2
07/10/28 18:36:31
『Q.趣味は何か』
『A.特にありません』

この質問は答えようが無かった。
まだ本当に趣味といえるものなど見つけていないのだから。

『Q.友達になってくれますか?』

……

『A.喜んで。こちらこそ、よろしくお願いします』

これもオープンチャットで返す。
教室の騒がしさが増し、また、ログが高速で流れる。
今度は大量の自己紹介。
その数、21件。
思わず教室を見回し、人数を数える。
クラスメイトは22人、つまり、一人以外は全員が自己紹介を送ってくれたことになる。
なんとなく見当がつくその一人。

……やはり、綾波さんの名前は無かった。

そういえば、見回して気がついたが、かなり空席が目立つ。
35組ある机。クラスの人数は23人。
気になって、今度こそこちらから質問してみた。

『みんな疎開していったの、例の騒ぎのせいで』

使途と呼ばれるあの化け物。あれが来た後、みな逃げていったのだ。
建物など石ころか何かと同じように無視して、紙くずのように破壊していく。
あれで、逃げるなというほうが無理だろう。

327:163:Migraine:07 ◆rK3tDGGMK2
07/10/28 18:37:33
だが、知り合いが、友達がいなくなったのも事実。

つまり皆、寂しかったのだ。
幸か不幸か、そこに転校してきたからこそ、こうしてすぐに受け入れられたのかもしれない。などと考えた。

ふと、顔を上げる。
そういえば授業中なのだ。
だが、担任の先生は数学の授業を中断して何かを語っている。
セカンドインパクトのときの話だろうか。

なんというか、生徒も授業をそっちのけならば先生も授業そっちのけ。
こんなのでいいのかなあ?
などと考えて、ある疑問に気がついた。

―あれ?

『ねえ』

『あの先生、なんて名前なの?』

……回答結果総合。

知らない……11
根府川?……4
セカンドインパクトの人……3

………
……


なんとも微妙な空気の中、根府川?先生の授業はチャイムとともに終了した。

328:163:Migraine:07 ◆rK3tDGGMK2
07/10/28 18:38:45
***

授業の合間の休み時間。

チャットでの質問は粗方答えたとはいえ、やはり人間。
皆、直接話そうとやってくる。
気がつけば僕の机の周りには巨大な人だかりができていた。

このクラスは女子が多いのか、周りにいるのは皆女の子だ。
男子生徒はそれを遠巻きに見ているようだが、さすがにクラスの女子の大半が集まっている中に割って入ってくる勇気はないようだった。

「でも本当に不思議な瞳ねえ」
「やっぱり、変かな?」

面と向かって話すと、やはりこの話が真っ先に出てくる。

「ううん、そんなことない。すごくきれいだよ」
「ん、ありがとう」
「でも事故でなったって書いてたけど、何でそうなっちゃったの?」
「うーん、僕も詳しいことは覚えて無くて……」

同じ年の子達とこうやって話をするのはとても楽しかった。
こんなに集まるのは今だけだとは思うけれど、それでもみんなと仲良くなれたようで、嬉しかった。

そんな中で、教室の扉が開く音がした。
遅刻してきたのだろうか。なぜかジャージを着込んだ男子生徒が入ってきた。

向こうでカメラを構えていた男の子となにやら話しているようだったが、回りのお喋りのせいか会話の内容は聞こえてこない。

僕の見ている先に気がついたのだろうか。
女子生徒の一人が彼のことを教えてくれた。

329:163:Migraine:07 ◆rK3tDGGMK2
07/10/28 18:39:59
「あのジャージのは鈴原トウジ。んでとなりのが相田ケンスケよ」

何か余り友好的でないのは気のせいだろうか。

「変人盗撮魔とガサツ朴念仁の大馬鹿コンビ。なーにかんがえてるんだか」

別方向から横槍が。
……なんとなく女子には嫌われそうな人たちだとはわかった。

気がつくと向こうの二人もこちらを見ている。
だが、その視線は好意的といえるものではなかった。
特に鈴原君からは睨みつけられている。
ずくりと、頭の奥に痛みが走った。

チャイムが鳴り、先生が入ってきた。

しぶしぶといった感じで周りにいた子達が自分の席へ戻っていく。
すると鈴原君がこちらへ向かってくる。
視線は僕を睨みつけたまま。
なにか、彼の気に触ることがあったのか。
が、彼は何も言わずそのまま僕の後ろの机へ向かう。
そこが彼の席だったらしい。

―僕の勘違い?単にああいう目つきなのか?

違う。
彼が怒気を含み僕を睨みつけているのがひしひしと感じられる。
その感覚は、僕の心を激しくかき乱す。

結局、彼の視線から開放されたのは、昼休み。
二人に強引に連れ出されるまで続いていた。

330:163:Migraine:07 ◆rK3tDGGMK2
07/10/28 18:41:48
***

「おい、ちょいと顔かしてくれへんか」

他の人が集まる前に、そういって教室から連れ出された。
その後ろから相田君がついてきていた。

連れてこられたのは、体育館の横。
建物に挟まれた空間だった。

なんというか、いじめの定番スポットという感じの場所に連れてこられて、僕は相当あせっていた。
途中逃げようにも、相田君もいるし、がっちり掴まれた腕は振りほどけそうに無く、引かれるままにここまで来てしまった。

「おい、転校生、われがあのロボットのパイロットちゅうんはほんまか?」
「え、なんでそれを?」

誰にも話してはいないはず。質問された覚えも無い。

「俺の親父、ネルフに勤めててさ、それでちょっと、ね」

つまり、相田君が教えたということか。

「こういうんは趣味や無いけどな」

鈴原君がぼそりといった。その直後。
僕は殴り飛ばされた。

転倒し、背中と頭をしたたかに打ちつける。
それが頭の傷に響く。それに顔をしかめると、殴られた頬からの激しい痛み。
口の中に血の味が広がっていた。


331:163:Migraine:07 ◆rK3tDGGMK2
07/10/28 18:42:51
「は、うっ、ひっ……」

思考がまとまらない。視界がぼやける。

「お、おい!トウジ!なにやってるんだ!」
「うるさい!こうせえへんと、わしの気がおさまらんのや!」

二人が何か言い争っている。

「こいつの、こいつのせいでうちの妹は!瓦礫の下敷きになったんやで!」

……え?

「何とか命は助かったけどな、ずっと病院や!」
「歩かれへんねん、動かれへんねん、もしかしたら一生、ずっとや!」

……僕は、みんなを。

「だからっておまえ、相手は女の子だぞ!」
「関係あらへん!こいつがもっとうまくやっとれば、助かったんや!」

……守れたんじゃ、無かったの?

「ふん、これに懲りたら、次はせいぜい壊さんように戦うんやな」

……僕が、壊したの?

「おい、待てよ、トウジ……。ったく。しょうがないな……」
「碇さん、大丈夫……なわけないか。今起こすから」


332:163:Migraine:07 ◆rK3tDGGMK2
07/10/28 18:43:55
相田君が助け起こしてくれたが、今の僕には立ち上がるだけの気力も無くて。
すとんと、座り込んでしまう。

鈴原君の放った言葉は、彼の放った拳よりも、何倍も重くて、痛くて、苦しくて。

「……ぼ、くは、まもれな、かった、の?」

心を映した言葉が、漏れる。

「おい?碇さん?おい!ちょっとしっかり!」

頭の奥が疼く。押さえつけるようにして、うずくまる。

意識が、闇に飲み込まれる。
絶望という闇。
そのすべてが黒く染まりそうになった、その時。

鋭い電子音。携帯端末からの緊急招集。
それが、僕の意識をつなぎとめた。

「……いかなきゃ」
「え?」
「使徒が、来てる。いかなきゃ、守れない」

そうだ、たとえ守りきれないとしても。
ここにいたら、初めから、何も守れない。
だから、いかなきゃ。

333:163:Migraine:07 ◆rK3tDGGMK2
07/10/28 18:45:00
「碇さん、それって」
「みんなに避難するように言って。僕は、ネルフに行くから」
「大丈夫、みんなは、僕が守るから」

血の味のする唾液を吐き捨て、駆け出す。
体の痛みも、心の痛みも押さえ込み、走る。

もう何も失いたくなんて無い。
まだ一日だけど、僕の中にできたたくさんの絆。
それを、消させなんて、絶対にさせない。

そのための力を、エヴァンゲリオンを求めて。
僕は、ネルフ本部へ、向かう。


end.07

334:163 ◆rK3tDGGMK2
07/10/28 18:48:33
ということで第七話終了。
そういえば使徒の番号も名前も、一度も書いていない気がする。
初めての人にやさしくないFFです、ってそんな人いないと思うのだけど。

第八話のほうも校正が終わったら投下します。

335:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/28 19:16:33
トウジ…何というDQN

336:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/28 19:21:45
トウジって女殴るやつだったかな。ちょっと疑問

337:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/28 19:41:20
最初からストーリーをなぞる形で投下すると
最後まで投下できるかどうかが物凄く心配…

338:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/28 19:43:12
じゃあ書かなくていいよ

339:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/28 19:45:14
>>334
もう投下しなくていいから。トウジは女の子を殴るような最低な男じゃないから

340:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/28 19:58:35
>>334
>ふん、これに懲りたら、次はせいぜい壊さんように戦うんやな

えっと…大変すまないが超嫌になるかもしれない酷評。
一生懸命頑張ったのにかなりムカつくだろうが、我慢して聞いてくれ。

まずトウジの父はネルフの職員。
アニメではネルフの杜撰なシステムに腹を立てている感も強く
総集編の作文でもネルフそのものに怒りをぶつけている。

そして諜報部やミサトに逆にヤキを入れられるかもしれないリスクを背負い
シンジにも「すまんな転校生」と断りを入れる。
トウジは女を殴るダメ人間じゃないんで…念のため。

それ以外の独自の設定は面白いけど、
脳内で必要以上に推敲を続けすぎて思いつめてる感あり。
駆け出しであるなら小ネタ投下から始めたらどうだろう?

341:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/28 20:08:15
面倒なことになりそうだな…まじめには書いてるけど。
いっそEOEや後ろの方から書いてみたらどうだろ?
後、ここは女丸出しのですます調の書き込みは確実に嵐の餌になる板なので
周囲から敬遠され易く、支援できなくなるので気をつけて。

342:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/28 20:08:47
トウジが殴ったぐらいでそんな反応すんなよw
投下しなくていいまで言わなくてもいいだろ。

まぁ、まだ読んでないんだけどな。

343:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/28 20:13:35
>>342
かもしんないな。ただ上のほうの心理テストとか見ると
書いてる職人が疲労で壊れないか心配でさ…。
余計なお世話だったら逝ってくる

344:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/28 20:28:42
確かに大変だよなぁ
本編再現は


自分の描きたいエピソードだけ描くってのもアリだよな

345:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/28 20:29:52
SSのシンジが書いてる人そのものの分身に見える。
>>325の対応とか荒らしと厨のいがみ合いを捌いてる削除人を連想した

>◆rK3tDGGMK2

つ旦

無理はしないようにな

346:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/28 20:45:48
今読んだけど、別にいいんじゃね?


347:163 ◆rK3tDGGMK2
07/10/28 21:01:55
うぬ、なんか激しいことになってるな。
とりあえず>>167>>162にアンカー打ってるとおり、
継続面の心配は自分でもしているが、JAやらマトリエルやらの
ストーリー的に削っても何とかなりそうなあたりは飛ばすなりして何とか続けていこうかなとか。
ただラミエル位まではあまり飛ばせる場所がなかったり。

トウジのDQNぷりについては本編で発生したイベントをそのまま起こしたらこうなった感じ。
展開上一発だったりケンスケがフォローに回ってたりはしますがまあ、殴らないよりは殴ったほうが波が出来るかな、という辺りでした。

中の人は娯楽作品として作ってるつもりです。
シリアス展開で楽しんでもらえれば、というのが基本スタンス。
FFでは自己投影が良く指摘されているので出来るだけそういう面は排除して、という意識はありますが。

続けるかに関しては続けます。てか、せっかくはじめたものを止めるのもあれですし。
書いてる時間がなくなった場合はともかく。

正直なところ、トウジやらミサトさんやらリツコさんはともかく、
シンジ自身であるはずのシンジちゃんのオリキャラっぷりのほうが困っている。
いやまあ記憶なくなっちゃってるし仕方ないのかもしれないですが。

そんなこんなで第八話投下です。

348:163:Migraine:08 ◆rK3tDGGMK2
07/10/28 21:05:22
begin.08

第壱中学の指定シェルター。
あの転校生を殴り飛ばしてから程なく、避難命令が出た。
有事の際の避難場所は、経路まで含めて徹底されている。
自分とケンスケも、それにしたがってここに避難していた。

「あー、だめだ」
「何や、また文字だけかいな」

隣で膨れるケンスケに合いの手を入れる。
報道管制。地上の出来事は一般人には伝わらない。
前回もそうだった。

彼は写真マニアなだけでなく、ミリタリーマニアでもある。
それもかなり重度の。
おそらく今地上で繰り広げられているであろう戦闘は、彼にとっては垂涎物なのだろう。

しかし自分は戦闘に興味など無かった。
妹はそれに巻き込まれ、重傷を負ったのだ。
また、同じように巻き込まれる人間がいるのかと思うと、嫌な気分にしかならない。
ふと、右手に視線を移す。

―あいつが、戦うのだろうか。

理不尽なのはわかっていた。
それでも殴らねば、気がすまなかった。
殴れば、少しは気が晴れると思っていた。

だが、残ったのは嫌な感触と、罪悪感のみ。
気分は晴れるどころか最悪だった。

349:163:Migraine:08 ◆rK3tDGGMK2
07/10/28 21:06:24
「なあ、ちょっと話があるんだけどさ」

唐突に、ケンスケから話しかけられる。
少々むっとしつつ、返事を返す。

「なんやい」
「ちょっと、ここじゃ、な?」

何か、悪巧みでもしているのだろう。
一応これでも親友といえる間柄だ。そのぐらいはわかる。
だが、こんなところで溜め込んでいるよりはいい。
それこそ、少しは気が晴れるかもしれない。

「しゃあない……おおい、いいんちょ」
「なによ?」
「わしら二人、便所や」

先に済ませときなさいよ、などというのを聞きながら、トイレへと連れ立つ。
実際、出したい状態だったのもあり、用を足しつつ、話の続きをはじめた。

「そんで何や、話って」

彼の口から出たのは、予定通りの、だが予想外の、悪巧み。

「なあ……外、出てみないか?」

***

350:163:Migraine:08 ◆rK3tDGGMK2
07/10/28 21:07:48
『シンジちゃん、出撃、いける?』
「はい、大丈夫です」

初号機、エントリープラグ内。
LCLに包まれて、僕は出撃を待っていた。

『ごめんね、結局、ほとんど訓練もできずに実戦になるわ』

パイロットとして正式契約してから、まだ三日。
訓練といえるようなものは何もできていない。

―だけど、前回とは違う。

あの時は、朦朧として何もわからないまま、気がつくと病院にいた。
どうやって使徒を倒したのかすら、覚えていなかった。

今度は違う。
僕は僕の意思を持っている。意識もはっきりしている。
だから、今度こそ。

―うまく、やれるはず。

それに、初号機も前回とは違う。

『パレットガン使用時のインダクションモードの使い方、覚えた?』
「はい、とりあえず、射撃はできそうです」

そう、前回はまだ配備されていなかった、射撃武器。
別系統の操作なのがややこしいが、赤木さんが出撃待機の間簡易シミュレータを動かしてくれたおかげで、とりあえず撃ち方だけは覚えた。

『目標はATフィールドを展開していて、現在通常火器は一切効果が認められないわ』
『必ず、相手のATフィールドを中和してから攻撃して』

351:163:Migraine:08 ◆rK3tDGGMK2
07/10/28 21:08:50
ATフィールド。何物をも通さない見えない壁。
エヴァだけがこれを中和し、無効化できる。そのためのエヴァ。

そうはいってもこれもぶっつけ本番だ。
しかし前回のときは中和できていたという。
なら今回もやれるはず。

『本当はもっと準備したかったところだけれど、時間が無いの』
『可能な限りサポートするから、臨機応変に対応して』

まず、打って出る。後は状況次第。作戦とはいえない。
だけど一人で戦うわけじゃない。
ミサトさんが、赤木さんが、ネルフの人々が、僕を支えてくれる。

『エヴァ初号機、発進!』

ミサトさんの号令とともに、強烈な加速度。
僕はあっという間に、地上へとたどり着いた。

***

目標まで1kmほど。
それなりの距離のようでその実、初号機の大きさからすればほんのすぐそこという感じだ。
ロックボルトが外れる、開放感。
この感覚は覚えていた。

『目標は警戒態勢に移行してるわ。まだ気づかれてはいないみたいだけれど』

エヴァは丁度カタパルトに身を隠すようにして、使徒と対峙していた。
いまのうちに、ATフィールドの展開を行ってみる。

352:163:Migraine:08 ◆rK3tDGGMK2
07/10/28 21:09:52
『大丈夫、展開は成功しているわ』
『目標のATフィールドを中和、建物の陰から出てパレットガンで一斉射』
『状況の如何によらず、その後いったん退避。これを1行動として攻撃。いいわね』
「はい」

相手のATフィールドを確認する。
人には知覚できないそれも、初号機の感覚は捉え、視覚化する。
同時に自分のATフィールドを相手の領域に重ね、中和。
同化といってもいいかもしれないその行為で、目標もこちらに気がつく。

先手必勝。
カタパルトから飛び出し、使徒を視界に捉える。
僕の視界の中で照準が移動し、目標を中央にロックしたその瞬間、引き金を引く。
パレットガンを保持する右腕が僕の意思から離れ、対象を狙い。
大質量の弾丸が一気に吐き出される。

一瞬、空のほうへずれた火線。しかしすぐに補正され相手の中心に正確に叩き込まれる。
劣化ウランでできた弾丸の嵐が使徒にぶつかり、盛大にはじけ飛ぶ。
ほんの4秒ほどの間の狂乱。
即座にまたカタパルトの裏に隠れる。

『目標、健在。効果確認できません』
『粉塵により視界悪化、注意してください』

中和し切れていないのか、それとも異様に外殻が硬いのか。
大した損害は与えられていないらしい。

『シンジちゃん、もう一度』
「でも、効いてないんじゃあ」
『次は兵装ビルからの複数種攻撃を同時に加えるわ、やれるだけ、やってみないと』
「わかりました、いきます……っ?」

353:163:Migraine:08 ◆rK3tDGGMK2
07/10/28 21:10:58
初号機の感覚が、危険を伝えていた。
とっさに飛びのく。
隠れていた空間ごと、カタパルトが袈裟懸けに切り落とされた。

崩れ落ちた向こう側に見える、光る鞭のようなもの。
肩のように左右に張り出した部分から、それぞれにそれが形成されていた。

ATフィールドは中和したまま。相手のATフィールドを中和している間は、自分のATフィールドも中和されている。
離れてATフィールドを展開すれば防御はできるかもしれない。
だが、それではこちらの攻撃も不可能だった。

―中和を、やめるわけにはいかない。

『兵装ビル起動、目標の背面を狙って、援護急いで!』

砲撃と誘導弾の飛翔音が響き、爆音が周辺を包む。
背面方向の起動可能な兵装ビルすべてによる一斉攻撃。
だが通常兵器による最大火力を集中した、その攻撃すら、目標の姿勢を崩すことしかできなかった。

―なんて装甲!

バランスを崩した目標にパレットガンを叩き込む。
だがやはり何の効果も無く、銃弾はむなしく弾け飛ぶ。

爆炎の続く中、目標が姿勢を立て直す。
と、その軟体生物を思わせる体が伸び上がり。
光の鞭が左右に、波打ちながら伸びる。

次の瞬間、その周囲の建物は、粉々に粉砕されていた。
使徒の周囲にできた、半径700mの瓦礫。
鞭をのたうち回しながら、バレエダンサー宜しく旋回したのだ。

354:163:Migraine:08 ◆rK3tDGGMK2
07/10/28 21:12:01
「っ!そんな、街が!」

一瞬で作られた円形の廃墟。
その光景が、僕の心を揺さぶった。

―せいぜい壊さんように戦うんやな

鈴原トウジの言葉が、蘇る。

―こいつのせいでうちの妹は!瓦礫の下敷きに!

また、僕はうまくやれなかったのか?
また、彼の妹と同じような人が、でてしまったのか?
焦りと恐怖が、心を支配する。

その動揺が、初号機を立ち尽くさせた。

『シンジちゃん、避けて!』
「……え?」

その声に我に返ったときには、既に左足を絡めとられていた。
一瞬の焼けるような痛み。
だがそれは続かず。

代わりに僕は、空中へと投げ飛ばされた。

***

355:163:Migraine:08 ◆rK3tDGGMK2
07/10/28 21:13:09
「いけない!」

発令所に、叫び声が響く。
ディスプレイには跳ね上げられ、山腹へ叩きつけられた初号機の姿があった。

「アンビリカルケーブル断線、内蔵電源に切り替わります」
「初号機、活動限界まで後4分53秒」
「パイロット、意識レベル正常」
「心理グラフに乱れ。操縦には問題ありません」

状況を伝える報告が次々と入る。
戦闘継続は可能。だが、活動可能な時間は短い。

「シンジちゃん、起き上がって。体勢を立て直すわよ」

そう指示するが、返ってきたのは返事ではなった。

『あれは、相田君、鈴原君!?』

誰かいる?
初号機からの映像データ、左手の下に映る二人の人影。
即座にMAGIがデータを照合、パーソナルデータを添えた。

「……シンジちゃんのクラスメイト!?なんでこんなところに」

警告音。
体勢を立て直す前に、使徒が初号機の目前に迫っていた。

両腕の鞭が振りぬかれる。
甲高い干渉音が聞こえた。
とっさに張ったのであろうATフィールドをも引き裂き、鞭が初号機を打ち据える。

356:163:Migraine:08 ◆rK3tDGGMK2
07/10/28 21:14:12
『くう、ああ!』

碇シンジから漏れる苦痛に満ちた声。
モニタには170%という驚異的なシンクロ率が見えている。
その高さが、彼女に現実と同じ痛みを与えている。

それでも彼女は動かない、いや、動けないのか。
おそらくは地上にいるクラスメイトのせいで。

―どうする?

次に打つべき手を捜し、逡巡する。
と、状況に変化が生まれた。

初号機が相手の鞭を両の手で捕まえたのだ。
振り回そうとする使徒を相手に、鞭の動きを抑え込む。
一時の膠着状態。

今しかなかった。

「シンジちゃん、地上の二人をエントリープラグに回収して」
「葛城一尉!?許可の無い一般人を乗せるわけには行かないわ」

リツコからの抗議。

「私が許可します」

実際にはその権限は私には無い。
だが指揮官は私だ、強引に押し通せばいい。

「それでは越権行為よ。……許可は私が出します」
「リツコ?」

357:163:Migraine:08 ◆rK3tDGGMK2
07/10/28 21:15:14
予想外の答え。
確かに彼女は左官クラスであり、それが可能な人物ではある。
だが、猛反対されると踏んでいただけに、思わず間抜けな声が出る。

「あなたのためではないわ。彼女の心理状態を加味した上での判断よ」
「今後を考えれば、ここで彼女の精神を破壊する行為はできません」

……以前彼女の深層心理を忠告してくれたのはリツコだった。
そのリツコがそう分析したというなら、許可の理由としても使える、というわけか。

「副司令、よろしいですね?」
「ああ、かまわんよ、好きにやりたまえ」

丁度出張で不在の司令に代えて、副司令が受け答えする。

「リツコ、挙動制御を」
「ええ、初号機を現行モードでホールド、その後エントリープラグを一時排出」

現状を維持しつつ二人を回収するための制御をリツコに任せ、次の手を考える。
内蔵電源は3分を切っている。
鞭を掴んだ両手も装甲は既に融解し、焼け始めていた。

「二人の回収を確認」
「ハーモニクスに誤差、神経系統に異常発生」
「シンクロ率、101%まで低下」

本来存在しないものを二つ放り込んだ対価。
シンクロ率がそれでも100%を超えているのは驚異だが、ハーモニクスにも誤差が生じている。

―現状のまま戦闘継続は無理か。

画面では初号機が目標を投げ飛ばしていた。

358:163:Migraine:08 ◆rK3tDGGMK2
07/10/28 21:17:21
間合いもできた。丁度いい。

「シンジちゃん、一旦退却するわ。34番の回収ルートに向かって」
『だめだ!』

―え?

『今倒さないと、もっと、壊されてしまう!』

明らかに切羽詰った様子の声。

「シンジちゃん?止まって、退却よ!命令を聞きなさい!」

必死に制止命令を送るが、それを完全に無視している。

焼けた手にプログレッシブナイフを握り締め。
初号機が、使徒に向かって突進した。

***

―ああ、神様仏様。もう悪さはしませんからお助けください!

不気味な液体に包まれたそこで、祈るように命乞いした。
悪友の口車に乗せられたことを激しく後悔する。

そもそもケンスケが戦闘を見ようなどと言い出したからこんなことになったのだ。
あの時のそこの阿呆の口上を思い出す。

「おまえ、あの後見てないだろ、あいつ、ひどい状態だったんだぜ?」
「それでもあいつ、俺たちのこと守るっていったんだ」
「あんなことを言ってぶん殴ったからには、お前には戦いを見届ける責任があるんじゃないか?」


359:163:Migraine:08 ◆rK3tDGGMK2
07/10/28 21:18:41
考えれば理由にもなっていないすり替えだが、自分はそれに納得してしまった。
殴ってしまったが、なんとも後味が悪くて。
その場にいられなくなって、捨て台詞を吐いて立ち去ってしまった。

だから、思わず釣られてしまい、二人してシェルターを抜け出してきた。
これはその報いだとでも言うのか?

イカの化け物が、人型の化け物と対峙していて。
普段とはまるで様子の異なる第3新東京市のビルが火を吹き、なぎ倒され。
気がついたときには、紫色の巨大な塊が降ってきたのだ。

あれで生きていられたのも信じられないが、今自分達はその紫の化け物の中にいる。
現実感などというものはとうにどこかへいってしまった。

自分たちの前にもう一人、乗っている人間がいた。
パイロットスーツらしきものを着た、華奢な女の子。
碇シンジ。あの転校生だった。

「くっ!」

短く漏れた声とともに、相手の化け物が投げ飛ばされた。
スピーカーから、退却するように指示が飛んでいる。

―はあ、これで助かる……

涙腺を緩ませながら弛緩した体は、次の叫び声により一気に硬直する。

「だめだ!」

転校生が、叫んでいた。


360:163:Migraine:08 ◆rK3tDGGMK2
07/10/28 21:19:43
「今、倒さないと!」
「もっと、壊されてしまう!」

―彼女の叫びは、自分の捨て台詞を写していた。

「お、おい、転校生、退却や、ろ……?」

そういっても、彼女は聞いていないのか、何かを取る動作をして。

「はあああああああああ!」

掛け声とともに機体が加速し、化け物に急接近した。

「うわああああああああああああ!」

こちらは掛け声ではなく、二人分の悲鳴。
相手から何か光る鞭のようなものがこちらに向かって伸びてくる。

ボゴンと、鈍い音とともに衝撃が走る。
どこかが破壊されたのだろうか。

「ぐふっ!」

転校生が呻いた。
前方の液体が、吐き出されるたびに赤く染まっていく。
液体から感じる血のにおいが、濃くなっていく。
明らかな異常事態。

「転校生?大丈夫なんか!?」


361:163:Migraine:08 ◆rK3tDGGMK2
07/10/28 21:20:46
その問いかけにも反応せず、突き刺すような動作をする彼女。
見ると、外では化け物の玉のような部分に、ナイフが突き刺さっていた。
そのナイフに伸びる腕が、彼女の腕と同じ動きをする。

「あああぁああああああああああぁあぁあああ!」

彼女が叫び声とも、悲鳴ともつかぬ、すべてを吐き出すような声を上げ続けている。
ケンスケが隣でパニックになりもがいている。

なんだ、これは。
こんなのが、現実だというのか。
血のにおい。
液体の中。
化け物の中。

あまりにも非現実的な世界。

画面に映る化け物の玉がパキンと割れる。
同時にモニターが消え、室内が薄暗くなる。
彼女の声が、止まった。

一時の静寂。その支配を破ったのも、彼女。
転校生がシートに倒れこみ、こちらを振り向いた。

「大丈夫、だった?」

そういって、微笑んだその笑顔はあまりにも壮絶。

ごぽりと血の色の液体を吐き出し、そのまま彼女は気を失った。

***

362:163:Migraine:08 ◆rK3tDGGMK2
07/10/28 21:21:53
「もう、十日か」
「俺らがこってりと絞られてからか?」
「……わかっとるやろが、ボケんなや」

あの転校生と会って、シェルターを抜け出し、ロボットに放り込まれ、それはもう完膚なきまでに叱られて。
あれから十日が過ぎた。
彼女はまだ戻ってこない。

「一日だけの、幻の転校生か」
「おい、不吉なことゆうんやないで」

あの日以来戻ってこない彼女。当然何かあったと考えるクラスメイトの噂話も、既にあまり聞かれなくなった。
今は昼休み。
大食いだったはずの自分が、あの日以来食が進んでいない。
いままでなら真っ先に購買へと駆け出したであろうこの時間も、なんとなく気だるい。
ケンスケの机に突っ伏して、ぼけっとしていた。

ガラガラッと教室の扉が開く。
何気なくそちらを見て、目を見開いた。

碇シンジがいた。

既に頭の包帯はしていない。
代わりに両手に白い手袋をしていた。

軽く左足をかばうようにして、自分の席まで歩いていく。
同じく包帯の減った綾波に挨拶してから、席についた。

クラスに残っていた女子生徒がいっせいに彼女の周りに集まる。
何事があったのかと話をしているようだったが、既に頭の中はその会話を理解するだけの処理能力を持っていなかった。


363:163:Migraine:08 ◆rK3tDGGMK2
07/10/28 21:24:15
ふらりと立ち上がり、気がつくと他の生徒を押しのけ、彼女の横に来ていた。

「お、い、ちょいと顔かしてくれへん、か」
「うん?いいよ?」

彼女の返事。
周りがなにやら不平不満を漏らしているが、それもまともに聞こえてはいない。
立ち上がった彼女の手を取り、ゆっくりと教室を出る。

後ろから、苦笑しながらケンスケがついてきていた。

***

また、鈴原君に連れ出された。
時間も同じ、お昼休み。
後ろから相田君がついてきている。これも同じ。

だけど僕を引くその手の握りは優しくて。
僕の歩みにあわせてゆっくりと移動してくれていた。
こちらを見てくれないので表情はわからないけれど。

そうして連れてこられたのは、やっぱり体育館の脇の空間。

と、彼は壁際に置かれていたものの中から何かを取り出し、設置した。
いわゆるディレクターチェアと呼ばれる折りたたみ式の椅子。

「おう、まあ座れや」

何でそんなものがここにあるのかと思いながらも、お言葉に甘え座る。

「な、なあ?」
「何?」

364:163:Migraine:08 ◆rK3tDGGMK2
07/10/28 21:25:17
聞き返すが、返事が返ってこない。

「何なの?」
「あ、ああ、ええと……」

「そや、怪我、大丈夫なんか?血、吐いとったやないけ」

そう聞かれた。
実際のところ、大丈夫とはいえない。だが無理を言って出てきてしまった。
それでも無理が通ったのだから、一応は大丈夫ともいえるのだろうけど。

「ん、大丈夫。肺に傷はあったらしいけど、ほんの小さい穴だったって」

これは嘘ではない。
あの時は確かに、大穴が開いていた。
だがそれは初号機とつながった精神が作り出した、虚像の傷。
比較的低かったシンクロ率のおかげで傷自体はそれほど大きくなかった。

「んじゃあ、その手袋は?」

横から相田君が指摘してきた。

「ん、こっちはちょっとね、色が」

そういって、片方をはずしてみせる。
火傷により移植されたそこの皮膚は、明らかに異質だった。

「まあ、せっかくみんなと知り合ったのに、ずっと会えないのも寂しかったからさ」
「さっさと退院してきちゃった」
「さ、さよか……」

あはは、とごまかし笑いをした。

365:163:Migraine:08 ◆rK3tDGGMK2
07/10/28 21:26:23
だが、そこから会話が進まない。
何もしゃべらない二人。
なんとなく居心地が悪くなって。

「じゃ、じゃあ、先に教室に戻るから」

そんなことを口走った。
立ち上がり、教室へ向かおうとした、その直後、鈴原君から呼び止められた。

「ま、まってくれ」
「ん?」

振り向くと、彼は真剣な表情でこちらを見ていた。
そして。

「殴ってすまんかった、このとおりや」

そういって、思い切り頭を下げる。
謝られる、という事態を想定していなかった僕は、思い切り狼狽する。

「え、いや、その」

キッと頭を上げた彼は、更にとんでもないことを言い出した。

「転校生。わいを殴れ!」
「……はい?」

その言葉が、混乱に拍車をかける。
既に彼は、後ろ手を組み、仁王立ちしていた。

「ちょっと、そんなこと、できないよ」
「いや、これはわいなりのけじめや!」

366:163:Migraine:08 ◆rK3tDGGMK2
07/10/28 21:27:26
「そういわれても……僕は殴りたくなんかないし」

そう、別に殴られたことを責めるつもりなど無かった。
それよりここで彼を殴る罪悪感のほうがはるかに大きい。

そんなやり取りに横槍が入る。

「その手、大丈夫なんだよな?」
「え、あ、うん」
「なら悪いけど、殴ってやってくれよ。どうにも堅物な奴でさ」

いや本当に冗談じゃないです。

「相田君まで……」
「ああなると聞かないぜ?あいつ」
「それで気が済むってなら、殴ってやってくれよ。気にする必要ないさ」
「……はぁ」

思わずため息が漏れる。
確かに何を言っても聞きそうに無い。
そう信じたら、どこまでも行動する、そういう人のようだった。

「……わかった、じゃあ一発だけ」
「おう、こい!」

拳を作って、顔面をめがけ。

「……手加減はなしやで!」

加減するつもりだった拳が空中を泳いだ。
こちらを見つめる真剣な眼差し。


367:163:Migraine:08 ◆rK3tDGGMK2
07/10/28 21:28:28
覚悟を決めた。

「本当に、加減なしでいくよ」

右手を大きく振りかぶって、踏み込み、渾身の一撃。
ペチンと見事に顔面にヒットする。
だが彼はその場から動かない。
拳を当てた右肘が曲がる。
体重を乗せたためにバランスを崩し、僕は彼のほうにもたれかかってしまった。
それでも彼は動かなかった。

「……今のが本気やな?」
「え、うん」
「そうか……」

彼が、拳の当たった辺りをさすっている。

「痛いわ。ごっつう痛いわ……」
「ご、ごめん」
「あやまるなや!……そんな必要あらへん」
「あやまらなあかんのは、わしのほうやろが」

そういうと、彼は。
僕を抱きしめてきた。

「え、ちょ、ちょっと」

突然のことに身動きができなかった。

368:163:Migraine:08 ◆rK3tDGGMK2
07/10/28 21:29:32
「……なんで、こんな……」
「ほそっこくて、かるうて、ちいさくて」
「やわいパンチしか打てん様な奴が……」
「必死に、ワイらを守って、戦っとるんや……?」

気がつくと、彼の声は上ずっていた。
その様子に、やっぱり動けなくて。

「……守ったる。おまえはわいが守ったる」
「誰にもお前にちょっかい出させへん。わるういわせへん」
「そんな連中、わいがしばき倒したる」
「だから、安心せい」
「お前は好きにやればええ。怖がらんでええ」
「ええんや……」

「……うん、ありがとう」

その気持ちが嬉しくて、暖かくて。
思わず僕は、彼を抱きしめ返していた。

***

「あー、コホン」

どれくらい経っただろうか、横からわざとらしい咳が聞こえた。
ふとみると、相田君がこちらを困ったように見ている。

……それで、今どういう状態なのか気がついた。

369:163:Migraine:08 ◆rK3tDGGMK2
07/10/28 21:31:17
あわてて彼から離れる。

「あ、あの、ごめんなさい」
「い、いや、あやまらんでええ、悪いのはわいや」

二人して赤くなっていた。

「うーん、青春してるねえ」
「うっさいわ、ボケ」

彼の年寄りめいた感想が、二人の赤さを加速させる。

「おかげでこっちはタイミングがなくなっちゃったじゃないか」

そういいつつこっちを見た彼は、深々と頭を下げた。

「悪かったな。俺がこいつに話さなきゃ、こんなことにはならなかっただろうし」
「え、あの」
「そや、元はといえばお前のせいやんけ、シェルターでたんも!」
「でも結局殴ったのはトウジだし、協力したのもトウジだぜ?共犯だよ」
「ぐっ」

あやまられたはいいが、そんなやり取りを続ける彼らの会話に割り込めない。
少し困っておろおろしていると、また、相田君が話しかけてきた。

「まあ、ひどい目にあわせちゃって言うのもなんだけどさ」
「友達に、なってくれないか?碇さん」

そういって、彼は右手を差し出してきた。
迷わず、その手を握り返す。


370:163:Migraine:08 ◆rK3tDGGMK2
07/10/28 21:32:32
「うん、喜んで」

そういってにっこりと微笑む。
ちょっと相田君が赤くなっている、照れたのだろうか。

「ちょ、ちょっとまてや、わいも、わいも友達や。な?」

そういって握手の上から両手をかぶせてくる彼が可笑しくて。
思わずくすくすと笑いながら、こう返す。

「うん、そうだね」


こうして、新たな絆が、僕の中にできた。
友情という絆が、確かに僕の心を、支えなおした。


end.08

371:163:Migraine:08 ◆rK3tDGGMK2
07/10/28 21:33:46
ということで投下終了、今までで最長になったらしい。

トウジへの評価があれだったので土下座させようかとも思ったけど、まあいいや。

372:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/28 21:38:12
すげー創作意欲だな、職人。乙カレー
>>340がリアルトウジに見えるぜw

373:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/28 21:41:37
GJ!オモシロカッターヨw

374:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/28 22:52:09
おもしろかったー


375:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/28 23:28:06
  |
  |⌒⌒ヾ 
  |ハ从wノ
  | ゚ ‐ノ そ~~…
  | ノ
  |
"""""""""""""""""""""""""""""""


  |
  | ⌒ヽ
  |v从wノ
  l゚ -゚ノ ネタが豊富なのと創作意欲旺盛なのって凄い。
  ⊂[ノ  面白かったよ。
  |
"""""""""""""""""""""""""""""""


376:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/28 23:30:33
  |                           (   (
  |                         ( (   (. )
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  |   夜分乙彼様。           .´,.::::;;:... . . _  `.
  |                         i ヾ<:;_   _,.ン |
  | ⌒ヽ   良かったら飲んで。    l      ̄...:;:彡|
  |v从wノ                    l      ...:;:彡|
  |゚ -゚ノ                    }  . . ...::::;:;;;;;彡{
  | ノ]つ                     i    . ...:::;;;;;彡|
  l                       !,    . .:.::;:;;;彡:.......
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  |                      l      ̄...:;:彡|
  |   ピャッ!                   }  . . ...::::;:;;;;;彡{
  |  ミ                     i   . . ...:::;;;;;彡|
  |                      }   . .....:::;::;:;;;;彡
  |                      !,    . .:.::;:;;;彡:.......
  |                       ト ,  . ..,:;:;:;=:彳::::::::::::::::::::::::..
                         ヽ、.. ....::::::;;;ジ.::::::::::::::::::::::


377:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/29 00:38:22
一気に読ませてもらったけど、すごく面白かったよ
作者GJ!

378:163 ◆rK3tDGGMK2
07/10/29 18:14:06
>>317で7,8が続き物だと一応言ってはいるけど、何かマッチポンプした気分でちょっとあれな作者です。
ある意味バラエティのやらせ演出に近いものになってしまった。

現在は次の話の詳細プロットの詰め中。

ラミエル以降、レリエルまでの半コメディパートについては大まかな流れはあるけど実は細かいところは決まっていない。
JA飛ばしは決まっている&エピソードの早送りや飛ばしが発生すると思うのだが。

それでもこれだけは、って場面があれば言ってもらえると考慮できるかも。
ある程度はなぞると思うので、できれば重箱の隅をつつく感じで。

ここからチラシの裏:
あれだ、何かストーリー上の変化をもたせる場合、本編との基本的な相違点は
・シンジの存在自体
・異常シンクロ設定

の2点になっていて、
・世界的な流れ・行動は本編準拠
・他キャラクタは本編と同程度の能力・行動基準
・使徒戦はシンクロ設定のプラスとマイナスで打ち消し

として動かしてるので、何か変化を入れた場合
特に戦闘面ではどうしてもシンジちゃんに皺寄せが来てしまう。
毎回入院はきついわ。

379:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/29 18:35:09
ゼーレの陰鬱さや一般人を高みから見下してる倣岸な態度とかが
徐々に鮮明になってけば面白い希ガス

380:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/29 21:02:07
人の造りしものはミサトとシンジの交流と3馬鹿が仲良しなのが好きなんだが

381:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/29 21:16:27
へー

382:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/29 22:09:36
でもアレ本筋に関係ないし、大変だから飛ばしたほうがいいと思う。
代わりにオリジナルエピソードでちょいちょい補完するとかもアリ。

本筋関係ないやつはバンバン飛ばしたらいいと思うなぁマジで。

383:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/29 22:13:33
下半身が吹っ飛んだ零号機に、ゲッター線をちょいと浴びせると
キャタピラ付きの下半身がにょいんにょいんと…

384:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/29 23:02:41
補完計画の真相を掴んだ為あっさりゼーレに処刑されちゃう時田
ダイイングメッセージで「君達チルドレンはは人体実験の素材に過ぎない!」
みたいなものをミサトかシンジ辺りに託して絶命、とか

385:163 ◆rK3tDGGMK2
07/10/30 00:11:32
屍を超えて!ゆけ!ちぇーんじじぇっとああーろーん!って、それもう別アニメ。

基本的に本編を連続するイベントとみなして
各人物・状況の設定とこれまでの行動経緯を考慮して
んでもってちょいと趣味も加味しておいて
各イベントに移行するように行動補正して
それを文章に起こす、というパターンで書いているんだ

なので”考慮する”、とは、
・一つのイベントとしてどっかに出てくる可能性
・あるイベントにいたる過程として出てくる可能性
のことだったりする。

当然作者が失念していたり一話分ばっさり切られたりするとイベントそのものがなかったことになるので、
再度シリアスパート&改変しないとハッピーに出来ない世界に入る前に聞いてみた。

今のシンジがサンダルフォンでバックアップに回されることはありえないというか溶岩ダイブしたら死ぬんじゃね?
でも温泉は捨てがたいなとか、苦悩があるのですよええ。

386:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/30 00:14:07
間違いなくこのシンジなら死ぬなw
もしも生き残っても、全身ケロイドになって見れない容姿になる。スーツと皮膚が癒着なんてこともありえる。

・・・って、嫌だななんか。

387:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/30 00:38:42
単純に考えれば上層部も同じこと考えて、零号機がバックアップ、シンちゃんは
留守番なんだろうな。問題は温泉か。

388:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/30 00:54:14
温泉はオイシイよなぁ
ネルフ慰安日帰り旅行しかないな

389:163 ◆rK3tDGGMK2
07/10/30 23:47:55
歌はいいねえ、リr(ry

・・・なにか脳内が染まってしまって今日は断念。
無駄にハッピーすぎてシリアスかけねえ。

次の話は書きあがってますが例によってその次との調整が必要そうなのでもうしばらくお待ちを。

390:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/30 23:51:12
>>389
バカネタでもまき散らしつつのんびり待ちます、特にシンちゃんを温泉に連れて行く法でも…

391:163 ◆rK3tDGGMK2
07/10/31 22:59:29
ちょ、シンジ待て。
変なスイッチを踏んで暴発した上にレイが暴走かましております。
な、流れが、プロットが……書き直そうかしらorz

392:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/31 23:06:00
うん? よく分からないが、エヴァに暴走はつきものじゃないか?

393:163:Migraine:09 ◆rK3tDGGMK2
07/11/01 00:20:50
begin.09

退院してから一週間。
ようやく普通の生活というものに慣れてきた。
朝起きて、学校に通って、ネルフの訓練に行き、家に帰る。
ちょっと普通の人とは違うかもしれないが、これが僕の今の生活。

「おはよう、碇さん」
「あ、おはよう」

そう声をかけてくれたのは洞木さんだった。
皆からは委員長と呼ばれている彼女は、とてもまじめな人だ。

「おはよう、碇さん、後委員長も」
「何、私はついで?」

横から声がかかる。相田君だ。
洞木さんの一言に笑いながら、僕も答えた。

「ははは、おはよう、相田君、鈴原君」
「おう、おはようさん」

鈴原君が最後に挨拶してくる。
僕はそのまま自分の席に荷物を置いて、お隣に。

「おはよう、綾波さん」
「おはよう、碇さん」

朝の挨拶、いつもの繰り返し。

学校ではようやく人だかりができることは無くなった。
転校生としての目新しさがなくなってきたということだろうか。

394:163:Migraine:09 ◆rK3tDGGMK2
07/11/01 00:21:52
それは少し寂しいけれど、クラスの仲間として認められたと思うと、嬉しかった。

ただ、この間の戦いのあと、また何人かが疎開していった。
クラスは更に空席が目立つようになってしまっている。
入院している間にいなくなった子もいた。
自己紹介だけに終わってしまったことは、残念だった。

だけど……
疎開したなら、危ない目にあうことは無いはずだ。
ここでの戦いには巻き込まれない。
本当なら、他の皆だって逃げたほうがいい。

そう考えて気がつく。自分の心。
皆と一緒にいたいと思う、絆を求める心。
これは傲慢なのか。
守るべき人々を危険にさらして、それでも絆を求め、それゆえ守る。

―結局、自分のために戦ってるに過ぎないのか。

朝からそんな暗い気持ちになっていると、予鈴がなる。
そこで、思い出す。

今日は水泳の授業があることに。

***


395:163:Migraine:09 ◆rK3tDGGMK2
07/11/01 00:22:55
朝の時間の暗い思考はどこへやら。
すでに僕の脳細胞はそんなことに割く処理能力は有していない。

そう、水泳。
先週までは怪我と体力の問題で見学だった。
だが、この間の検診で泳いでもよいとお墨付きが出た。
無理をせずに、という条件付ではあるが。

セカンドインパクトの影響で常夏となってしまった日本。
いまでは体育といえば水泳、というほどに水泳の授業は定番だった。

他の女の子たちが気持ちよさそうに泳いでいるのを、着替えもせずプールサイドで見ている、というのは、日陰に退避していようと炎天下では肉体的にも精神的にも暑苦しく、いっそ水に飛び込んだほうが体にいいのではないかと思ったこともある。

ついでに言えばそうやって水着姿の女の子たちを見ているとなぜか恥ずかしくなってしまうことがあり、少々目のやり場に困っていた。

うん、あれは少々困っていた。だけど今は大いに困っていた。

自分が泳ぐということは、自分も水着になるということで。
それは自分が着替えるということで。
そうなると更衣室に入るわけで。

つまり今僕は。お着替え中の女の子達。その中の一人だった。

まあもちろん皆素っ裸になって着替えているわけではなく、器用にタオルを巻いて隠しながら脱いでいるのだけども。
あまりそういうことに頓着せずに着替える子もいるわけで。
他の子のかわいらしい下着が見えたりするわけで。
というか綾波さんあなた一気に全部脱いで着替えるってそりゃ効率的かもしれないけれどそれは女の子としてあんまりじゃないのかしら頼むから早く着ちゃってください。
後そこの形がどうとか大きさがどうとか言っている子達もお願いしますきちんと着替えてください。

396:163:Migraine:09 ◆rK3tDGGMK2
07/11/01 00:23:57
哀れ女の花園に放り込まれ、しかし自分も女の子。
誰にとがめられるわけでもなく、しかし自分は後ろめたく、生殺しの生き地獄か。
当然この場で更に着替え始める勇気など、これっぽっちもありはしなかった。

ここは着替えるための場所であるからして、待っていれば皆いなくなるはず。
授業に遅れる可能性は意識から排除し、更衣室の隅でひたすら耐える。
傍から見れば恥ずかしがり屋の女子生徒、その忍耐が功を奏したか、はたまた授業時間が迫ってきたか、ついに周りは自分一人。
一人は嫌と叫ぶいつもの心も今このときばかりは安堵感に覆い潰されていた。

するとそこに開始のチャイム。
遅刻確定のその音に、急げ急げと心が焦る。

とにかくあわてて着替えていると、ガチャリと扉が開かれて。

「碇さん、何してるのよ、早く出てきて……」

思わず振り向き……そこにいたのは洞木さんだ。
急いで着替えようと効率よく動いていたその状態は、図らずも綾波さんと同じ方法論。

見事に素っ裸で彼女と対面した僕の顔は、ポンッと音がしそうな勢いで真っ赤に染まる。
叫び声を上げそうな口を理性が強引に押さえ込む。
超高速でなり続ける心音は空気を求めて一層強く。

更衣室から出るとき、一瞬お花畑が見えたのは、幻視だったと思いたい。

***

そういう訳で授業の前に体力を使い果たした感のある状態で、僕はプールサイドにへたり込んでいた。
ずいぶん適当というか、準備運動の後は皆思い思いに泳いでいる。
年がら年中やっている授業で、基本的にもう適当なのだ。

397:163:Migraine:09 ◆rK3tDGGMK2
07/11/01 00:24:59
目の前を綾波さんが音もなく、流れるように泳いでいく。

―きれいだ。

白い肌に蒼い髪の彼女が泳ぐその様は、水の妖精といった風情で実に美しかった。
そのゆったりと見えて意外な速さで進む姿は、なんとも気持ちよさそう。

プールサイドの照り返しはかなり酷い物だ。
せっかくあんな思いをして着替えたのだから泳がなければもったいない。
そう考え、つられるようにプールに入る。

冷たい水の感覚が、足先から徐々に体へと進んでいく。
日差しで熱を持った肌が急速に冷やされる。

―んー、気持ちいい……

暑い最中のこの冷たさは、心地よかった。
いろいろと面倒なのに水泳の授業が多いのもわかる気がする。

そんなことを考えているうちに、プールの底に足がつく。
そのまま動こうとして。

足を滑らせた。

―え?

水深1.2M。
プールは中央に向かって深くなっており、そちらへ緩やかな下り坂となっていた。
その深さはひっくり返った僕が全身を水没させるのに十分で。
滑った弾みに少し中央へと寄ってしまう。
焦って水底を蹴って水面へ出ようとするが、何とか出たのは鼻の頭まで。
気がつけば水深1.5M。かなり中央によってしまったそこは、既に僕の身長を超えていた。

398:163:Migraine:09 ◆rK3tDGGMK2
07/11/01 00:26:01
手足を必死にばたつかせ、水面に上がろうとして、事ようやく事態に気がつく。
泳ぎ方がわからない。体がまともに動かない。どうすればいいのか何も知らない。

自分はカナヅチだったらしい。

解ると同時に体を恐怖が支配する。
筋肉が強張り、動かすことすらできなくなる。

―怖い怖い怖いおちつけおちつけおちつけ

そう、そうだ、エヴァの中だって水の中。
落ち着けばきっと大丈夫。

だが世界はそう甘くは無い。
LCLを飲み込むときのごとく、ごぽりと肺から空気が流れ出ると。
僕の意識は闇に包まれた。

***

胸が、苦しい。
頭が痛い。

気がついて、目を開けたそこは、知らない天井。
僕はベッドに寝かされていた。
保健室のようだった。

身動ぎして、辺りを見回す。
白いカーテン。
蒼い髪、赤い瞳。

綾波さんがいた。

399:163:Migraine:09 ◆rK3tDGGMK2
07/11/01 00:27:03
「僕、どうしてここに?」
「あなた、溺れたのよ。覚えていないの?」

そう答える彼女。
そうだ、僕はプールで溺れて。
綾波さんが助けてくれたのだろうか。

「ありがとう、助けてくれたの?」
「最後に引き上げたのは先生よ。私は頼まれたから」
「何を?誰に?」
「洞木さんに。付き添いを」

最後に、先生が助けた。
じゃあ最初に助けたのは、やっぱり彼女なのだろうか。
わざわざ頼まれているのだし、そうなのだろう。
そうでなければ……と、考えて、唐突に思い出した。

彼女は誰とも話さず、何時も一人でいる。
そういえば、初めは彼女に挨拶しただけで妙な空気になった。

「ねえ、綾波さん」
「何?」
「どうしていつも、一人でいるの?」

いつか聞こうと思って、だけどいつもうやむやになってしまっていたこと。
周りには誰もおらず、二人きり。
思いもかけない絶好のタイミングだった。

「必要ないから」

だが彼女の言葉は、僕の心を抉った。

400:163:Migraine:09 ◆rK3tDGGMK2
07/11/01 00:28:08
「何が必要ないの?おしゃべりが?一緒にいることが?それとも、絆がいらないの?」

思わず声を上げ、まくし立てる。
彼女から返ってきたのは冷静な声。

「私はエヴァに乗るために生まれてきたわ。そのために、それは必要じゃないわ」
「なんで、そんなことをいうの?」
「何故?解らない」
「関係ないじゃない。あなたがエヴァに乗る理由と、皆と仲良くすることに、何の関係があるの?」
「関係が無いなら、私には必要ないわ」
「っ!」

その言葉はやはり衝撃だった。
いや、うすうす分かってはいたのだ。
彼女にとっては、エヴァに乗ること、それ以外は意味を持っていなかった。
だけど、こうやって直接確認すると、やはりそれは酷く悲しかった。

「そんなの、そんなの寂しすぎるよ」
「そうなの?わからないわ」

わからない。寂しいのが、分からない。
彼女はもしかして、知らないのではないか。
記憶が無い自分より、もっと知らないのではないか。

何も言うべき言葉が見つからなくて。
玉響ほどの静寂に、彼女が席を立つ。

「もう大丈夫なら、行くわ」
「え、あ……」


401:163:Migraine:09 ◆rK3tDGGMK2
07/11/01 00:29:14
保健室を出て行こうとする彼女を、あわてて追いかけようとベッドを降りる。
呼び止めようとした僕に、彼女の声がかかった。

「服、着たら?」
「え?」

そういわれて気がつく。
シーツの下にあった体は、裸だった。

「濡れてたから。着替えは置いてあるわ。それじゃ」
「え?え?」

そう言って去る彼女を、僕は呼び止めることはできず。
少しして、赤くなりながら着替えなおしたのだった。

***

その日の夕食。
久々に早引けできたという赤木さんが、家に一緒に食べに来ていた。

ここ最近の訓練は、直接初号機に乗り込んでのシンクロテスト。
いろいろとシステムの改良をしたということで、実験を兼ねているらしい。
だけどその割には以前ほど初号機がしっくりと来ない。
シンクロ率も上がっていないようだった。
なのになぜか少し上機嫌のように見えた赤木さん。

綾波さんとは保健室の後、なかなか話す機会が無かった。
訓練のときもタイミングがばらばらで、彼女と直接会うことは無かった。
かろうじて初号機のモニタから見えた彼女。
珍しくお父さん、碇司令と話していたその顔は、楽しそうで。

402:163:Migraine:09 ◆rK3tDGGMK2
07/11/01 00:30:22
―やっぱり、ああいう顔もできるんだ。

などと、少し嬉しく、少し寂しく、思った。

がたんと、机の上に鍋が置かれた。
今日の夕食の当番は、ミサトさんだ。
といっても、ずっと僕は病院だったり、ミサトさんの帰りが遅かったりで、実は彼女の手料理を食べるのは初めてである。
自信満々といった風に持ってこられたそれを、それぞれの皿に盛りかける。

……なぜかミサトさんはカップ麺に注ぐ様に指示してきた。

「元々カレー味のじゃこの味は出ないのよねー」

そんなことを言っているが、おいしいのだろうか?
ネギチャーシューと書いてある気がするのだけれど。

ともかくも、ミサトさん特製カレーもよそい終り、いよいよお食事タイム。
まあ特製といってはいるけれど、レトルトカレーを買っていたのは見ている。
あまり味に期待はしないでおこう。

そんなことを思いつつも一口すくって口に入れた。
それが口の中に落ちたその瞬間、していなかったはずの期待は恐ろしい方向に裏切られた。

なんと表現すべきだろう。この味は。
そう、苦いも辛いも甘いも通り越した、これは。

―……つらい味?

何とかその、ものすごい味の物体を飲み込んで。
だが体中から発生した危険物への警鐘に、僕はトイレへと飛び込んでいた。

403:163:Migraine:09 ◆rK3tDGGMK2
07/11/01 00:31:25
追伸。トイレに入るときに近くで何かが卒倒する音が聞こえたけど、何だっただろうか。

追伸2。当番表の食事欄は破り取りました。

***

そんなこんなで危うく大惨事になりそうなお食事会も何とか終わった。
見ると赤木さんは何の手も加えられていなさそうなものだけを器用により分けて食べている。
その上で何かの薬を飲んでいる用意周到っぷり。
すばらしきかな長年の付き合いというところだが、だったら教えておいてほしかった。
後でお薬もらっておこう。

その恐怖の毒物を調合した張本人は我々より更に危険度を上げたようなミサト特製カレーチャーシューラーメンをぐいぐいと旨そうに飲みきっていた。
有得ない。あれをあのように食切るとは。
彼女の胃袋はおそらく使徒のそれより強力に違いない。

僕自身はというとあれ以来何も受け付けなくなってしまい、もう食べるのは諦めた。
食べられる気分になったら自分で何か作ろう。そう考える。

「シンジちゃん、やっぱり考え直したら?がさつな同居人に人生を台無しにされる前に」

冗談とも本気ともつかぬ赤木さんの口調。まあ顔は笑っているのだけど。

「でも、他に誰かいるんですか?」
「私はほとんど帰れないから無理だけど、なんだったら私の部下の……そうね、マヤ辺りに頼んでもいいわよ?」
「うーん、それは魅力的ですねえ」
「ちょ、ちょっとなにいってんのよ」

そんな僕達にあわててミサトさんが口を挟んでくる。
まあはじめからそんなつもりは……少しは、いやそれなりには有る様な……。


404:163:Migraine:09 ◆rK3tDGGMK2
07/11/01 00:33:14
「でもまあ、感謝してますし、それにもう慣れましたから」
「ほらほら、人間の環境適応能力をなめてはいけないわあ。あ、もう一本お願い」
「……不憫ね」

ビールをせがむミサトさんをみて、本気で哀れに思われた。

「それにいまさら手続き面倒よ。シンちゃん、ホンチャンのセキュリティカードもらったばかりだし」

その声に応えたのは、あっ、という思わず漏れたような声。
珍しく赤木さんが罰の悪そうな顔をしている。

「忘れるところだったわ、シンジちゃん、頼みがあるんだけど」
「なんですか?」
「綾波レイの更新カード。渡しそびれたままになっちゃってて」
「本部へ行く前に彼女のところへ届けてもらえないかしら?」

綾波さん。
今日の出来事を思い、彼女の写真を見つめる。

「どうしたのお?レイの写真をジーっとみちゃったりしてえ」
「え?」

何だろう、このニヤニヤ笑いは。

「あ、まさか、レイのことを愛しちゃったとか?」
「え?ええ!?」
「だ、だめよ、あなた達女同士なのよ!」
「いや、だから」
「それに中学生でそんな趣味に走るなんて……」
「ミ、ミサトさん、やめてくださいっ!」

405:163:Migraine:09 ◆rK3tDGGMK2
07/11/01 00:34:20
なぜか顔を赤くしながら必死になって彼女を制止する。
だけど彼女のニヤニヤ笑いはもう大笑いに変わり。

「あははは、からかい甲斐があるわねえ。赤くなっちゃってまあ」
「ミサトと同じね」
「ぐふっ」

赤木さんの一言につんのめりながらも笑っている。
そんな様子は楽しかったけど、でも。
綾波レイ、彼女のことを考えると、笑顔が途切れた。

「……僕はただ、彼女のこと、まだ理解できてなくて」

そう、保健室で交わしたあの会話。
彼女の考え方は、僕には分からなかった。
理解したとしても、受け入れたくは無かった。

「いい子よ、とても」

ふと、赤木さんがそんなことを言った。

「あなたのお父さんに似て、とても不器用だけど」

不器用。
綾波さんが。
僕のお父さんも。

―何が?

「生きることが、かしらね」

彼女のその一言は、僕の心に重く響いた。

406:163 ◆rK3tDGGMK2
07/11/01 00:36:41
end.09

ってことで第九話です。
シンジがあほの子になってしまった。
実は最も気合を入れて考えたのが味の表現だったりするのがなんとも。

そして第十話、十一話は腹くくりました。こーなったらシャッフルシャッフル。

407:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/01 00:38:24


ひとつ気になるのは、シンジがシンジに見えないことかな
考え方とか、ポジティブさとか。
何か理由があるんかね

408:163 ◆rK3tDGGMK2
07/11/01 00:46:54
書いている本人も非常に困っているシンジのオリキャラっぷり。
まあ腹くくったので次回わかりやすく暗示されますが、
原因は初期設定の欲張りさというかなんというか。いろいろくっつけすぎた。

特定の強迫観念のみを残して記憶を失ったことによる必死さが、表面的に明るさとして出てきてるだけなんですよ。
ただ本来のシンジに近づくよう補正しようにも、現状の構想だと後半シリアスパートに入るまではあまり手出しできないので……。

409:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/01 01:11:03
おk
期待してるよ

410:163 ◆rK3tDGGMK2
07/11/02 22:43:59
ライブでハッピーなスイッチがなかなか切れませぬ。
暗めの曲ループで流しながら書いてますが中々もどらん。
10話分は一応書きあがっていますが11話と続き物なので書き終えるまでは出せないなあ。

某トウジやらアス男のところが元気で良いけど、ここが静かなのは寂しいという思いもあるのだが。
まあ休日中に何とか仕上げます。

411:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/02 23:26:02
感想がなくてもロムっ子が多いんだと思えよ

412:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/02 23:34:24
俺のことか

413:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/03 06:08:43
>>410
ごめん、エピソードが多くて長すぎたので面食らってしまい、
どう感想を入れていいのか分からなかった。

「読解力の無いヴァカでも、興味の無い赤の他人でも読める」

…コレが漫画の本質だと思う。
できれば個々のエピソードを欲張らず、読みやすくしてくれると有り難い。
決してつまらないわけじゃないし拒絶してるわけではないので、年の為。

414:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/03 06:13:36
×年の為
〇念の為
…とまあ、ロムってる俺なんかはこんなレベルっすからwwwサーセンwwwwwwwwwwwww

415:163 ◆rK3tDGGMK2
07/11/03 11:30:10
あー、すまん、感想がほしいというより、総合系のここで他に何の話題も無いのが寂しいのですよ。やはり既に枯れた分野なのか。

素の書き込みはびっくりするほど変換ミスが多い163でした。

416:163 ◆rK3tDGGMK2
07/11/03 14:43:10
何かあちらさんがすごいことになっているのは気にしないことにして。

毎回分割で書き込むのが面倒なのと、ばらけて読みにくいので
手元にあったスペース使ってデータをあげてみた。
ただし本文はtxt形式のベタファイルなのでDLするなりソース見るなりして他ソフトで読んだほうが良いかも。

URLリンク(www.ne.jp)

こんな感じでいいのだろうか。即席手打ち万歳。

417:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/03 15:37:33
うを、かっけー!頑張ってくれとしか言えないがかっけーわ。

いや、かなりあっちの状況は気になっとるよ、
各自が他人を叩かずに助け合うようになればいいんだけど…

418:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/03 15:58:26
>やはり既に枯れた分野なのか。
実はそんな気がする。ショタの作家なんかでは
エヴァは「トラウマになる」って敬遠してる人多いんで、
あれ?とか思ったりすることがしばしば。
ここでのFFに以前の職人さんがエロを混ぜてた人が多かったのは
実はそれが無いと他人の気を引く要素が無かったりするからなのでは。

後ここに来る人達は俺も含めて
「自分の存在」を認めてもらいたいから来るのであって、
自分より優秀な存在や気合の入った存在を見せられると
どう対応していいか分からないのが多いと思う。

他人のネタを見れても自分がネタを出せない、
これこそがネラーにとっての苦痛かもね

419:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/03 20:41:44
何気にさらっとひでえ事言うなwww
めげずに頑張ってな、職人

420:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/03 21:30:29
ん~、そんなに難しい事でもないんじゃね?
俺はいつもROMってるから書き込みも控えめだけど、職人さんの作品をいつも読んでるよ

職人さん頑張ってくれぃ(`・ω・´)

421:163 ◆rK3tDGGMK2
07/11/03 22:07:54
書き終わるまで出せないとか言ってた割にpre versionとか言って通し10話目が公開されていたりします。

URLリンク(www.ne.jp)

台詞回しの微妙さやら校正がアレな状態ですが。

11話目は550行超えてますがまだ終わりません。
設定改変とキャスティングのシャッフルと戦闘をかっこよく、とか思ってたら速度があがらねえorz

422:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/03 22:21:06
急かさないのでじっくり取り組んでくれ。
即興に強い奴もいるしこつこつ積み重ねるタイプもいる。
悲観して卑下する事もないし賞賛を求める事もないさ

423:163 ◆rK3tDGGMK2
07/11/04 16:15:47
やあ、ようやっと12話分が完成したよ。
今回は中々の難産だったと言うか今でもこれでいいのかと自問自答中ですが。

第11話の体裁、誤字修正も行って正式版として公開。

URLリンク(www.ne.jp)

第四話の02
第四話の03
の二つが更新分です。

424:163 ◆rK3tDGGMK2
07/11/04 17:31:43
ん、なんか通し番号変えたら自分でこんがらがったorz

10=04-02
11=04-03ですな。

425:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/05 01:18:03
読んだよー
レイが代わりだったかwそりゃ、シンジ死ぬよ!って思った思った。


426:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/05 06:23:00
職人たん乙
ここはまったりしてていいね

427:163 ◆rK3tDGGMK2
07/11/05 18:41:38
アスカとの関係をどう描くか、とりあえず3号機のお話辺りまで解析しないとなあ。

第四話は一回目の搭乗者入れ替え。二回目の状況入れ替え。全体としての役回り入れ替えと3発シャッフル。
設定面では何とか納得できるように、戦闘面では格好良く、且つありきたりに嵌らず、お約束を入れる。
そんなことを考えて書きましたが、うまくいったかどうか。

こっそりアクセスカウンタつけてみた。標準提供のやつだがお馬鹿なので簡単にカウンタが回ります。
まあ話半分とみたほうがいいだろうけど、意外といるというべきなのか。
最大値だとしても、意外とみんなアクティブなんだなあとか思ったり。

428:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/06 18:49:39
とりあえず後天的な何らかで女になってしまったシンジが学校等で性的いじめや暴行を受け
誰にも言えず繰り返される日常のなか意を決して相談したはずの信頼していた人物や
一部のNERV職員からも犯されてしまい追い詰められたシンジきゅんは自殺endな小説とか無いのかね

ポン貴のえヴぁ同人誌に正にそんなのがあって激しく萌えたんだが

429:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/06 19:00:49
欝萌えかぁ

ありがちな話ではあるんで捜せばぢっかにあるかもな

430:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/06 19:23:19
様々なジャンルのエロ同人うpしてあるサイトが幾らかあるけど
ああいうところに女シンジエロ同人はうpしてある?
昔「女シンジ」で一ジャンル築けるくらいの人気があったというのが本当ならばありそうなんだが…

431:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/06 19:52:44
そういうサイトで萌えを探すなよ

432:163 ◆rK3tDGGMK2
07/11/06 19:54:50
男性向けのその手のところでその手のを見た覚えは無いようnくぁwせdrftgyふじこlp;

さっとぐぐって見た感じだと女シンジといっても
カオル×シンジを正しい?カップルとして成立させるためのネタとして使ってるのが大多数の空気が。
女シンジの存在そのものにハァハァしているのは少なそうだ。

433:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/06 20:37:42
カヲシン好きな腐女子はそんな感じだな。常にカヲルとセットで
でも、カヲル関係なしにハァハァしてるのもあるよ

434:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/06 20:42:37
冬コミで某動画の碇シンコたん萌え同人を期待してもいいですか?

435:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/06 20:55:29
シンジストサイトなら期待してもいいのかも知れんが、
女装シンジはいてもなかなか女シンジ好きまではいないんだな

436:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/06 20:55:58
どうせカヲシン(笑)ばっかだろ

437:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/06 21:06:40
くまのところもカヲシンだしな
男の運営するサイトで女シンジ見たことねーし

438:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/06 21:11:43
こないだの夏コミで流星ひかるがエヴァ本出してた

439:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/06 21:19:45
>>429
カナ入力同志ww
まぁ私の探し方が甘いのか女シンジ欝モノと呼べるものにほとんど当たった事が無い。あったら教えてほしい。

レイの力で逆行した際に女になったシンジが贖罪の為に汚される事を自ら願い堕ちていくM女シンジの様を描いた
Arcadiaにあったふぁいず氏の長編小説「闇と罪と本の旅人」がそれに近かったが
個人的にもっと鬼畜(だが萌えな)描写いけるんじゃないのというか、
恐らく自分で書くしかなんだろうなこれは。という事で久しぶりに書いてる。一般受けはしなさそうだが。
んで自殺云々はBADENDの一例であって別にしなくても全然いいんだけど
それに準ずる欝内容かもしくは死よりつらい展開で完結だろうってのが方針というか私の中では一つの決定事項で
マンネリにならない程度の変態虐めネタや想定してる展開はかなりあるんだが、上手くまとめられるか難しいというか
単なるセックス描写なんてのはむしろ無く、だがそれでも悲惨さエロさ萌えが滲み出てくるような、
シンジきゅんの性質や良さを利用したいし表現したい。ねちっこい変態長編小説にしたいのである

>>430
そういうサイトの膨大な数のEVAカテゴリしらみつぶしてけば2・3冊くらいはあたるかもしれんが、
予めTSシンジ書いてる作者調査して同人タイトルめもってP2P狙い撃ちのが集まるかと。
以下謎の暗号

Maniac Juice 女シンジ再録集 '96-'99 O_30820.rar P:逆毛

>>434
アレで新規にこのジャンルに目覚めた人も居そうだから書いてほしいね

440:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/06 21:24:26
シンジストで女シンジも女装シンジも好物だが、カヲシンは別に好きじゃないので
サイトとか見て回れない

441:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/06 21:37:18
なんかカヲシンってワンパターンばっかだしシンジもこれ誰?って感じのが多いイメージだ

442:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/06 21:39:14
絵や漫画の二次創作で女シンジを扱っているのは確かに女性ばかりかもしれないな。
でも小説の二次創作で女シンジを扱っているのは男が圧倒的に多い気がする。

443:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/06 21:54:19
幸せ探してもがき続けるのもシンジきゅんらしいと思うのさ
それが欝シンジきゅん萌え
儚さ増し増しなおにゃのこシンジきゅんならなおさらのこと

444:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/06 21:55:39
くまの巣はもう終了したの?

445:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/06 21:58:25
産休だ

446:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/06 22:39:57
>>439
その女シンジ同人誌が俺の唯一持っている女シンジ同人誌だったりする
他のも見たいんだが得ろ同人うpサイトから探すのには膨大な時間を要するな

447:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/06 23:31:01
その女シンジ描いてた人も結局カヲルシンジのホモやってたから萎えたわ
いつだかのKATZEかなんかに女シンジがいたような気もする

448:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/06 23:51:31
>>446
再録に入ってないのでPONだとURLリンク(www12.axfc.net)とか
ぎゃろっぷノート②と④とかHGHのBLACK AND WHITEとか黒木健のオトコのコ オンナのコ2とか
以下の流星ひかるモノはカヲルが一緒についてくるが一応女シンジではあるのか・・

碇シンジ育成計画
URLリンク(page18.auctions.yahoo.co.jp)
FRESH STRAWBERRY
URLリンク(page2.auctions.yahoo.co.jp)
いたいけな瞳
URLリンク(page7.auctions.yahoo.co.jp)
使徒の王子様
URLリンク(page8.auctions.yahoo.co.jp)

私はあんま知らんけど角煮のEVAスレで聞けば知ってる奴が教えてくれるんでないかい


449:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/07 15:36:06
好みは人それぞれなんだし偏見で叩きをするのはどうかと思うぞ
女シンジ自体特殊なカテゴリーなんだし

450:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/07 19:33:44
しかしカヲシンばっかでうんざりするのは事実

451:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/07 19:49:14
カヲシン好きじゃない女シンジ描く女なんてそうそういないだろ

452:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/07 19:57:53
もえさんは良かったな…閉鎖してしまったけど

453:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/07 21:00:15
カヲシンがこうまで人気あるのがわからない
いくらホモ臭くても1話だけだし、カヲルのキャラわかんないし
想像が膨らまないから同人として話も作れない
カヲシンサイト見れるようになったら、新しい女シンジを発見できるかもしれないが
どうも触手が動かない

454:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/07 23:15:37
もえさん閉鎖って!!!マジかよ…orz

455:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/07 23:36:11
触手…!

456:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/07 23:48:13
>>453
カヲルは一話限りのキャラとよく言われるけどEOEにもしっかり出てるよなwま、どうでもいいけど。

EOEの一番の功績は女シンジを映像化したことだ。それ以外は糞な映画。

457:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/08 00:40:52
コミケ行くと今だにシンジ受け同人(といってもカヲシンサークルが殆どだが)を買ってく男はいるから需要は無くは無いと思うんだがね

458:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/08 01:26:56
好きな人は好き
苦手な人は苦手


自分は苦手なので見ない
ただ多いので目に入る

459:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/08 07:09:29
カヲル嫌いじゃないけれど、苦手っつー人の価値観見てると成る程…とは思う
シンジの華奢で健気な魅力や気の弱さにつけ込んでるイメージがあるのかな

460:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/08 09:58:06
24話とEOEだけしか出てないので、その本編のカヲルが全てなんだ
だから同人でシンジとラブラブしてる二人を見ると何か違う…と思う
あの状況であったからあの関係を表現できたのであって
下手に本編改編ものや、ましてや学園ものなパラレルでやられると変だ
要するにキャラを妄想して作ってる同人のカヲシンが嫌い

461:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/08 10:33:10
つまりカヲルはいらないということだね
個人の主観をありがとう
でも結構同意だ
同人なんて妄想と性格改変は半端じゃないけどな、ほとんど
メインのキャラでさえ…

462:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/08 10:37:00
カヲル関係以外の他カプ同人は本編で何話もかけてキャラ描写されてるのに
作者の都合の良いようにキャラねじ曲げてるもんばっかだぞw
エロだの逆行だのスパシンだの断罪だの目もあてられない
別にカヲシンを擁護するつもりは無いけどな。つーかそろそろスレ違い

463:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/08 13:55:32
みんなカヲシン好きなんだな
キャラ改変と言えばシンジハーレムものはもはやシンジじゃねえな
育成みたいな奴

464:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/08 14:49:51
カヲシンなんかお互い好き同士なんだからいいほうだろ

465:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/08 16:46:24
だから好き嫌いなんて個人の趣向なんだからここで言うことじゃないだろってこと
このスレだって妄想だよ
LRSが嫌いとかトウシンが嫌いとか好きに吐き出すところじゃないし
いちいちそんなことしだしたらきりがないんだが

466:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/08 17:51:33
このスレはカプ話をすると本当に収集がつかなくなりますね

467:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/08 17:56:14
カプやらシチュごとに専用スレを建てろって言うのかね
共倒れになりそうだし、普段のこのスレの過疎っぷりを思えば、全てのネタに対して寛容になるべきだと思うんだが

468:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/08 18:17:23
投下してから言えよ

469:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/08 18:20:42
ネタもねーし

470:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/08 18:35:59
最近女シンジばっかなのでそろそろ女装シンジが見たいな

471:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/08 18:46:23
女装シンジか…その手があったな
破に赤プラグスーツシンジが出てくれればとても嬉しい

472:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/08 19:23:13
でも弐号機空から投下されてる…
シンジきゅんはガギエル戦出ないかもしれない
あああああ


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