エヴァの主人公が真ゲッターの竜馬だったら~参号機at EVA
エヴァの主人公が真ゲッターの竜馬だったら~参号機 - 暇つぶし2ch150:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/16 00:08:53
・・・


「碇君……ありゃあ、一体なんだね!? 我々国連の力がシトに及ばないのはよく解った…
…が、あれも君の新兵器ではあるまい。見たかあの威力を。今回はシトを撃滅してくれた。
しかしだ。もしあれが我々人類の敵になるとすれば、それこそ世界は終わりだぞ!」

 ネルフ本部。
 その薄暗い地下で、国連軍の制服に身を包んだ老人ががむしゃらにわめき立てている。
 というのも先ほど現れた赤いロボットが原因だった。

 さて。ここから、怪物をその正式な名称であるシトと呼称する。
 シトはのもつA.Tフィールドは、タクティカル型ミサイルの直撃を受けても無傷で、悪
あがきで使うつもりでいたN2地雷(核兵器並の威力を有する爆弾、とされる)をもってし
ても、シミュレーションでは足止め程度の効果しか期待できないことが予測されていた。

 それを、ほとんど数分の内に屠殺するかのような勢いで葬ってしまった赤いロボットは
彼らの目には救世主というよりも、悪鬼羅刹のように映った。
 その、鬼をほうふつとさせる外見もイメージの形成に手伝ったであろう。
 老人のわめきを背にする碇ゲンドウは、それでもなお無言で立ちつくしていた。
 やがて、ゆっくりと眼鏡のズレを直しに手を顔にやる。

 碇ゲンドウ。
 生年月日、一九六七年四月二九日生。齢四八。
 この物語における世界を一変させた大異変・セカンドインパクト以前における彼の動向
は謎に包まれているが、なにかしら目的をもって研究等に打ち込んでいたとされている。
 このときの旧姓は六分儀であり、その後、碇ユイという女性と出会い結ばれ、碇性とな
った。この二人の間に生まれたのがシンジである。
 後に彼女とは死別している。

151:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/16 00:09:59
 彼は、このユイという女性には半ば偏執的なまでの愛情を示しており、それを失う事で
巨大な衝撃をうけたのは想像に難くない。
 彼女を失ったあとの彼の生き様は、あたかもこのユイを探し求めるかのようであったと
いう。

 現在はネルフの総司令役として動いており、その目的は表はシトの撃退、裏は後に語る
人類補完計画の遂行、とされている。
 だが、その本質はエヴァンゲリオンという存在に碇ユイの魂が組み込まれているところ
からも、実際は、極めて私的な感情による行動であるとも考えられよう。
 要するに彼の目的は、碇ユイの復活そして邂逅、であった。
 だが、そのことを知っている者は居らず、感づいていたとしてもごくわずかである。

 それというのも、

「ご心配なく……そういう事のためにも存在するのが、ネルフです」

 と、不敵にいうこの男は、その心の本質な弱さを隠そうとするためか、必要以上に冷徹
に振る舞うくせがあった。
 息子同様、物事を天から洞察して動かす能力があり、熟慮もし、同時に英断も辞さない
と英雄の要素はあったが、言葉に遠慮がなく切れすぎるのだ。

 カミソリのような彼の言葉は、正確無比であるが対する人間のこころを容易に切り裂い
てしまい、そのため無用の憎悪を抱かせてしまう。

 我々の世界での例になるが、碇ゲンドウの真逆に位置する歴史的人物を探せば、日本な
ら幕末時代の西郷隆盛が挙げられるだろう。
 彼は、その政治的能力は他の一流の志士たちに対して劣るところがあったものの、人の
こころを捉える、という点においては無類の凄みをみせた。

152:ここまで
07/10/16 00:11:24
 彼の信念の底に通っていたものは種々であるが、大きいものを取り上げるならば、巨大
なまでの「愛」であり、それを自他共に許容する「こころ」であった。
 このため、多くの志士が彼の言葉・動きに胸を打たれることになる。

「西郷どんのためならば命も要らぬ」

 と。
 そしていよいよ最後は熱狂的な信徒たちの手によって、西南戦争が引き起こされること
になったのは、よく知られていることだろう。
 それが、西郷が賊将とされてなお英雄の名を轟かせた要因の一部である。

 話がそれたが、ともかく、ゲンドウの弱点は人のこころ、というものの扱いが極めて苦
手なことであった。
 その苦手さたるや、息子のシンジよりも酷かった。
 それを補おうと必要以上に冷たく振る舞う彼に、根から付き従う人間は、だれもいなく
なってしまう。
 自分の能力ひとつを武器に世の中と渡り合うしかない。不器用なのである。
 能力はあるのに、英雄にはなりきれない。

 ユイはその彼のヴェールを見抜き、奥底の心に気づいたからこそ彼と婚姻を結ぶまでに
至ったのであるが、ほとんどの人間にそこまでの感や洞察力を求めるのは、わがままが過
ぎるというものであろう。
 もっともゲンドウ自身、あえて語りたくないところを語ってまで、自分を表現したくは
なかったのかもしれないが。
 彼は孤独だった。


・・・

153:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/16 01:25:41


154:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/16 01:59:13
エヴァと司馬は語感が似てるが合わないことがわかった乙。

155:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/16 05:14:41
乙そしてwktk

156:つづき
07/10/16 15:43:30
「ミサトさん……」
「なに」
「父さん、いえ父は、なんのために僕を呼んだんですか。もう、忘れられていると思って
たのに」
「それは―直接会って、聞いたほうがいいわね」

 ターンテーブルエレベーターに乗り、トンネルをぬけて直接地下へ向かう車の中で、二
人はそんなやりとりを交わしていた。
 びゅん、と過ぎ去っていく天井を見つめながらシンジは「これから父のところへ行くの
か」という問うた。
 ミサトは「そうだ」と、いうと、あとにこんな一言をつけくわえた。

「苦手なのね、お父さんのこと」

 その言葉に、シンジはしばらく反応を見せなかったが、やがてゆっくりと目をつむると
つぶやくようにいった。

「会ったって……ぎくしゃくするだけなのが、わかっていますから」

 その瞬間、エレベーターはトンネルを抜ける。
 突如として封鎖された空間から、ただっ広い大空間が目の前にぶわりと広がる。
 まるで、この世とはもうひとつの別の世界がそこにあるかのようであった。
 その別世界に迷い込んだような感覚に、一時的な開放感を得たシンジはつい先とはうっ
てかわって明るめの声をあげる。

「すごい。本物のジオフロントだ」
「そう。ぶっちゃけ、ネルフ警備隊秘密基地ってところね。ここは人類存亡の砦となる場所」

 車を乗せたエレベーターはどんどん進み、終点へと向かっていく。

157:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/16 15:44:34
 だが、その途中で空間に響き渡るような大音響で、警報が鳴りはじめた。
 地上で一度、すでに避難警報は出され、それも解除されている。
 すれば、この日二度目の警報は何を意味するのか。

 ところは、ネルフ作戦司令室に移る。

「正体不明機、ジオフロント地表に接近!!」

 広大な司令室の、ひときわ巨大なメインモニターに、さきほどシトを葬った赤いロボッ
トが再び街に現れて、しかもネルフ本部に急接近している姿をはっきりと映していた。
 司令室全体に不安の色が広がっていく。
 たとえシトを倒してくれた、という行動があったにせよ、まったくネルフ側があずかり
知らぬ存在である。

 あのロボットが、今度はその標的を自分たちに変えないとは誰にも断定できなかった。
 国連の人間たちはすでに用済みとなり、退散している。
 あとは自分たちでなんとかするしかないのだ。
 そんな中、碇ゲンドウは相変わらず椅子に座って机に突っ伏しながら、考え事をしてい
るようだった。
 その姿が悠長にみえたのか、後ろから補佐の冬月コウゾウが近づいて是非を問う。

「どうするんだ、碇」
「初号機を、起動させる」
「迎撃する気か? まだ敵と決まったわけではないぞ」
「あれは、我々のシナリオには無い存在だ……ゲストに用はない。ご退場願う」

 ゲンドウの指令が飛び、瞬く間にエヴァンゲリオン初号機(以下、初号機)が発進用意
に入る。
 地下のジオフロントから超高速エレベーターによってエヴァ初号機が、地上に吐き出さ
れた。
 目標は正体不明の赤いロボットの撃滅だ。

158:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/16 15:52:46
 エヴァ初号機のパイロットは蒼い髪の少女、綾波レイである。彼女に関する詳細は後述
するが、今、彼女はその全身に大きなダメージを抱えていた。
 本来ならば、戦闘に出られる状態ではない。
 だが、ゲンドウは躊躇しない。
 今この場での目的はネルフの任務遂行上、邪魔になる者の排除だった。

 初号機が地上に出た時、すでに赤いロボットはその真上にまで達していた。
 すかさず初号機が手にもったパレット・ライフル―巨大劣化ウラン弾を使用する超・
重機関砲―を空へ向けると、一気に弾をばらまいていく。
 銃撃と廃莢の二つの轟音が街に響いた。

 銃撃を受けたロボットは回避をすると思われたが、その予想を裏切って背中から生えて
いるマントをボディの全身をくるむようにしてまとい頭だけ露出した形になると、そのま
ま初号機につっこんできた。
 マントがバリアの役目を果たしているのか。
 劣化ウラン弾は命中しても弾かれるだけで、しかも爆煙があがるせいでカムフラージュ
の手助けをしてしまう。

 その爆煙を突き抜けて、ロボットが叫んだ。赤色の光線が、マントにくるまれた体中から
発射されると初号機におそいかかる。
 命中した光線が、A.Tフィールドを一時的に無効化する。
 A.Tフィールドを破ったのではない。消えてしまったのだ。

「俺の邪魔をするんじゃねぇ!!」

 そのまま巨大な弾丸となった赤いロボットが、初号機にぶち当たる。
 A.Tフィールドを

 ぐわん、と凄まじい衝撃が走り吹っ飛ばされた初号機は、背後にあったビルの一群を爆
散させながら大地にはり倒されたところで、やっと止まった。

159:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/16 15:53:49
「ぐ、ぐぅぅ……!!」

 コクピット内のレイが激痛のあまりに呻く。
 エヴァンゲリオンは、操縦に直接人間の神経を用いるために機体がうけたダメージの衝
撃の感覚だけが、そのまま人体に加わってしまう欠点があった。
 くわえて、この大けがである。レイに次の行動をエヴァに取らせる余裕は、もうなかった。
 初号機を吹っ飛ばしたロボットは地上に降り立つと、マントを引っ込めて腕を組み、仁
王立ちの構えをとった。

「小娘はすっこんでやがれっ。おい、地下にこもってる人間トカゲ共、聞こえるか!?」

 ロボットが、エヴァとネルフ地下、ジオフロントの存在を既知していてそれを指摘して
きた。
 作戦司令室に動揺がはしる。
 ロボットは続けた。

「俺は敵じゃねえ!! だが、また攻撃しやがったら今度は全員まとめてぶっ殺す!!」

 ロボットは、仁王立ちして怒気をはらんだ声で、本当にジオフロントまで届くだけの大
音響で上記の言葉を絶叫していた。
 あまりの音圧に、周囲の接近した構造物の表面がビリビリと震え、すでに亀裂に走って
いたものはわずかに割れるほどだった。
 もし人間が側にいたら間違いなく鼓膜が破られていたであろう。

「碇……」

 作戦司令室。
 ゲンドウの側に立った冬月が、脂汗をにじませて呻くようにいった。
 あまり刺激するな、ということであろう。
 その威力はさきほど見せつけられたばかりである。

160:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/16 15:54:55
「仕方があるまい……我々の事をそこまで知っているとは、気に掛かる。話ぐらいは、聞
こう。回線を開け。あの大声を止めさせるんだ」

 と、ゲンドウの指令が飛ぶとすぐにロボットにコンタクトが取られた。
 幸いにしてロボット側も、こちら側と同等の通信機器を内蔵しているようでメインモニ
ターにぱっ、と人の顔が映るのだった。
 ロボットはどうやら人間が操縦する機械であって、シトのように自立した存在ではなか
ったようだ。
 それを見て、ネルフ職員にふっと安穏の吐息が漏れる。
 こうも、人というのは外見でモノを判別してしまうものなのだろうか。
 ただ……その中において、ひとりだけ異なる反応を示す者がいた。

「い、ひぃッ……」

 と、悲鳴をあげたのはオペレーターのひとり、伊吹マヤだ。
 物静かだが、病的な潔癖のある女で、とかくグロテスクなもの、暴力的なものを極度に
嫌った。
 モニターに映ったのは、そんな彼女が苦手とする、般若面のように恐ろしい表情をした
男だったのだ。
 じっさいは鼻筋は通って線もするどく、醜いどころか美形の類に入るのだったが、とに
かく目つきが凶悪すぎた。
 その男が、低い声色でふたたび語りはじめる。

「俺は流竜馬ってモンだ。おめえらには、ちっと用があってここまで来た。要求がある…
…今、おめえらのトコにさっきの白い服着たガキがいるはずだ。そいつに会わせな」

 ロボットは腕を組んだまま、なおも仁王立ちしていた。

「司令……あんなこといってますが、どうします」
「要求をのまなければ、ここら一体をチリと化するといわんばかりだな。いいだろう……
言葉が通じんシトよりはマシだ。初号機を回収させろ」

161:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/16 15:56:02
・・・


 その後、赤いロボットを降りた男、流竜馬はネルフの案内に従ってジオフロントに降り
立った。

「ここが―テメエらの秘密基地か。で、ガキはどこに居んだ」
「そう急がないでほしいものね。これだけ広いのよ」

 竜馬を道案内するのは、ネルフの頭脳ともいえる技術開発部技術庁の赤木リツコだ。
 生年月日、一九八五年一一月二一日、三〇歳。
 女ながらに背は高く、また美人である。白衣を着ていたが、その下に身につけている服
装は身体のラインにぴたりと沿ったもので、そのグラマラスな体型ともあいまって匂うよ
うな色気を感じさせた。

 が、それよりも重要なのはわずか三〇歳という若さで、彼女がネルフの技術部の長をつ
とめているということだ。
 国連軍でさえも扱えないようなエヴァンゲリオンをはじめとする、特殊技術のかたまり
の数々を容易に扱うことからも、彼女がいわば天才的な感覚をもっていることがわかる。

 しかしそれでいて不思議なのは、これほど人員の揃っているネルフという組織において
彼女が何でも屋的な役割をこなすことだった。
 プライドも決して低くない彼女が、その役割に不満を漏らさずにいるのは謎であったが
ともかく、彼女はそういった経緯で竜馬の案内役となっていた。

 いや……ひとつ、危険な役を買って出た理由があった。

「ねえ、流さん、だったわね。ちょっと聞いていいかしら」
「なんだ」

162:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/16 15:57:04
「あの、赤いロボットのことだけど……」
「ゲッターロボなら、テメエらにどうこう出来る代物じゃねえぜ。間違っても破壊しよう
なんざ思わねえこった」

「そんな事は聞いてないの。あれは……あれはゲッターロボっていうのね!? 
 あんな無茶苦茶なメカを、私は今まで見たことがない!! 凄い!
 触ってみたい。動かしてみたいバラしてみたいッ!!
 いいわ、あなたの用件が終わってからでいいから。ちょっと詳しくゲッターロボについ
て聞かせて頂戴!!」
「な、てめえっ!? うお、敷島のジジィみてえな顔してくっつくんじゃねえっ」

 彼女、赤木リツコには多少なりともマッドサイエンティストの血があった。
 本来はもっとクールな振る舞いをする女なのだが、今は未知の技術を目の当たりにした
ことでその血を抑えきれないようだった。
 やがて、いくつかの通路の抜けた後にやっと作戦司令室にたどり着いた。

「碇司令、流氏をお連れしました」
「……ずいぶんと遅かったな」
「なにせ危険だと思いましたので、注意しながら」

 ふとゲンドウがリツコの隣の竜馬を見やると、なぜか疲労したような顔でこちらを睨ん
でいた。
 ゲンドウはそれを見て、まばたきをひとつするのだった。

「まあ、いい。わかった……」
「おう……おめえがここのボスだな。さっさとガキに会わせてもらおうかい」
「そうだ。私がネルフ総司令、碇ゲンドウだ……君の目的の人物は、今にくる」

 ゲンドウがそういうと、ちょうどのタイミングでまた司令室の扉が開かれた。

163:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/16 15:58:22
 薄暗い部屋に通路の明かりがわずかに差し込むと、その逆光の中からミサトに連れられ
たシンジが現れる。
 二人とも、肩で息をしていた。
 ゲッターロボと初号機が激突した振動が地下まで響いたのを感じて、ここまで走ってき
たのであろうが、それにしても息の上がり方が尋常でない。
 まるで、フルマラソンのあとのランナーのようだった。
 道に迷ったのであろう。ミサト自身も、まだネルフの施設になれてはいなかった。

「い……碇司令っ。外で、また、戦闘があった、みたいですが、これは、どういう―!?」

 切れ切れの言葉で状況を把握しようとしたミサトだったが、最後まで言い切る前に部屋
の人間の中に、見慣れない顔がある事に気づく。
 ものすごい太い眉毛と、三角の目が天を突かんばかりにつり上がった、凶悪な人相をし
た男が、目の前にいる。

「あ、あなた……誰?」
「葛城一尉、しばらく君は黙っていろ。場が落ち着いたら説明する」

 状況を飲み込めず、目を白黒させるミサトにゲンドウがしかめっ面をすると、苦い声で
いった。
 明らかに不機嫌でいるのがわかる。
 およそ特殊な事態でもない限り、感情を表に出さないゲンドウが怒っているのを見て、
ミサトは覇気を無くしてしまった。
 それほどまでに珍しいことだった。ゲンドウが感情を露わにするというのは。

「は、はっ……」

 ミサトが従って下がった。
 それに頷くと、今度はミサトの隣で息も絶え絶えになっているシンジに顔をむけた。

164:ここまで
07/10/16 16:07:26
 シンジは動くのも辛そうだったが、久々の父親との再会に複雑な表情をつくる。
 しばし沈黙の時が流れたが、やがてゲンドウは口を開いた。

「久しぶりだな、シンジ」
「父さん。今更、僕に何のようがあって……」
「本来ならそれを今から説明する予定だったが……事情が変わった。おまえの知り合いが
来ている」
「知り合いって、まさか……」

 わざと、目をあわせないようにしていたシンジだったが、そうまで言われてはもはや知
らんフリはしていられない。
 ゆっくりとなるべく、時間をかけるようにして首を回していく。
 その先には、

「おうガキぃ。生きてたか、手間ぁかけさせやがって」
「あなたは、さっきの……」
「そうだ。俺は流竜馬だ。ガキ、いや、碇シンジ。てめえに用があって来た!」
「な、なんで僕の名前を」
「んな事どうでもいいだろう。それよりも―」

 竜馬はそこまで言いかけたが、突然、オペレーターの青葉シゲルが監視していたレーダ
ーに異変を察知したらしく会話を中断させるように大きな声を出した。

「取り込み中すみません!! レーダーに反応が! パターン青、シトですっ。
 またシトが出現しました! 位置、駿河湾海上……こちら急接近しています!!」


どうでもいいわけねーだろといわれる前にツッコんでおく。
あと、次回からアップローダを使うので本来の雑談に優しい仕様に大変化。

165:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/16 19:01:11
GJ
やはりゲッターは濃い……エヴァが薄いというわけじゃないが、塗りつぶしていくタイプの濃さだ。
それにゲッター側が知られてなくて竜馬がネルフを知ってるってのも新鮮な展開。
竜馬の目的は果たして一体?早乙女やゲッターチームは?

166:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/16 19:09:37
乙です!
でも続きが上がるたびにまたその続きが気になってどうしようもないw
大変とは思いますが毎回めちゃめちゃ楽しみにしてますぜ!

それにしても竜馬を疲れさすリツコさんすげえ
最強だw

167:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/16 23:31:19
乙!
でもこのスレ元々小説書く人を待ってるスレだったんで、
そのままここに直接投下でもいい気がするがw

168:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/17 01:10:28
乙!
直接投下の方が携帯厨の俺としては助かるんだぜ(´・ω・)

169:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/17 03:18:57
雑談も小説の合間にやってたしね。こっちでもいいと思うぜ

170:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/17 13:44:05
使徒が連続で現れるとは…

171:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/17 20:38:02
ゲッター線は人類以外を否定する傾向にあるんだよな
で、黒き月リリスの末裔の人間と白き月アダムの末裔の使徒は発祥が違うから・・・使徒も本気出さないとやばい。本気出してもやばい
最悪、第1始祖民族はエンペラーに滅ぼされていそうだ

172:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/17 20:46:37
>>171
第3次スーパーロボット大戦αですな。滅亡に傾くイデ=第一始祖民族
人類の味方になることを選ぶゲッター線、そして判断に迷うビムラー…

173:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/17 21:37:47
この流れなら言える




イデオン放送の頃、ハルル様を女王様とお呼びしていた


174:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/17 23:17:57
>ちょっとゲッターの技を捏造したけど
真ゲッターで真ドラゴン相手に似たようなことやってるし捏造って程ではないかと。
確か、その時言った言葉は「トマホークランサー」だったと思うが。

175:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/18 00:16:16
>>173
そんな事を力説されても、その…困る

176:つづき
07/10/19 01:16:45
携帯の人のことを完全に考えてなかった。すまんです。


「なんだと!?」

 もっともはじめに反応して叫んだのは、いままで黙ってゲンドウの後ろについていた冬
月だった。
 細いその目を大きく見開かせて「ばかな、こんなシナリオはあり得ん」と、ひとり言を
ぶつぶつとやっている。

「ちっ! 邪魔が入ったか、しつけえ野郎だぜ!!」

 すれば竜馬はざわめく部屋をきびすを返し、真っ先に飛びだそうとする。
 言葉は上のとおりだが、心なしかその表情には愉悦の感情が浮かび上がっていた。
 戦うのが楽しくて仕方がない、といった風情だった。

 だが、それを快く思わないゲンドウが竜馬の行動を咎める。 
 当たり前のことだ。機密が満載のネルフ内部を、素性もわからぬ人間に動き回られたら
なにが起こるかわかったものではない。
 スパイの可能性もあるのだから。

「流竜馬。勝手に動くな」

 ゲンドウは低くいった。
 だが、竜馬はそれよりも低い声で応じる。

「あぁ? 俺に命令するんじゃねえ」
「動くなといっている」

177:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/19 01:17:45
 言葉ではなんともならぬと思ったのか、ゲンドウは懐から拳銃を取り出す。セーフティ
は解除され、いつでも発射できる用意であった。
 作戦司令室に一瞬で静寂がもどった。
 緊張した空気が流れる。

 だが、竜馬はそれをみて恐れるどころか、嬉しそうに口の両端を、その目と同じように
にんまりと天へつり上げていった。

「……ヘッ。やってみろよオッサン」
「二度はいわんぞ」
「上等だ!!」

 その叫びと共に、ドワッと銃口が火を噴いた。
 誰もが、竜馬が撃たれた、と思った瞬間だった。
 ほんの数メートルの距離で拳銃の弾丸を避けられる人間など、存在するはずがない。
 だが。

「なに!?」

 ゲンドウが目を見開く。竜馬が、いまその瞬間までいた場所にいない。
 次の瞬間で、ザッと

「遅えってんだよッ」

 竜馬がゲンドウの後ろに天井から落ちてきた。
 ゲンドウの居る場所は、作戦司令室の中でも最も高い位置になっているところだった。
 目測でも成人の数人分はありそうな高さである。
 竜馬は、一瞬でさらにその上の天井まで移動してしまったことになる。
 人間業ではない。

178:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/19 01:18:58
「ぐあっ!」

 竜馬はすぐさまゲンドウの腕を、最初のシトにやったのと同じように掴んでねじりあげ
ると、銃を強奪する。
 そしてそのまま下へ投げ飛ばしてしまった。
 ゲンドウはシンジのいた方向に落とされ、彼に抱きとめられる形で崩れ落ちる。

「と、父さん……」
「ぐ……貴様、た、ただではすまんぞ」

 その言葉と同時に、入り口からSPと思われる黒服に身を包んだ男たちが数人乱入してきた。
 彼らは迷いなく竜馬へ銃を向けると、一斉に発射しはじめる。
 職員たちの悲鳴が上がる。
 伏せる者、かばう者、逃げまどう者、様々だった。
 職員たちには戦闘訓練の施されていないことがよくわかる。

 だが、竜馬は―

「雑魚どもはすっこんでろ!!」

 激高して手にもった銃をブンとSPの一人に投げつける。まるで、ゲッタートマホークを
投げたようだった。
 その速度が凄まじく投げつけられたSPが避けきれない。鉄の塊を頭に直撃されて、
その場にどう、と倒れ伏した。
 その衝撃で暴発した弾丸が運悪くそのSPの頭部を撃ち抜いてしまう。

「ぎゃっ」

 血液と共に脳髄がわずかに飛び出る。
 即死であった。

179:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/19 01:20:00
 その隙をついて、竜馬は残ったSPの元へ走り、一人の顔面に正拳突きを喰らわせると飛
び上がってもう一人には鋭い蹴りを放つ。
 血しぶきが飛び散った。
 そして、

「おらァ!!」
「ぎゃあッ」

 と、最後の一人に強烈な頭突きをかまして昏倒させてしまう。
 竜馬は瞬く間にSPを全て倒してしまったのだ。
 職員全員が、その漫画のような光景にシトの事もしばし忘れて唖然としていた。

 その中を竜馬は走り、父を抱きとめるシンジの腕をつかむ。
 ゲンドウが支えを失ってずり落ちた。
 シンジがああっ、というが相手にならず、

「いくぜシンジ、出撃だ!!」
「く……しゅ、出撃って、な、なんなんだよ!」

 言葉が荒くなる。さすがに、シンジも目の前で肉親に暴力を働かれて感情が高ぶりを隠
すことができなかったのだ。
 まだ、彼が心の奥底から父親を憎み切れてはいない証拠だろう。
 だが竜馬はそんなことを気遣うような男ではない。

「敵が来たなら、ぶっ潰すに決まってんだろ。てめえもゲッターに乗るんだよ!!」
「ゲッターって、あ、あのロボット? あんた一人でやれよ、なんで僕が……」
「うるせぇ!! どっちみちてめえはエヴァとかってのに乗らなきゃなんねーんだ。だが、
 あれにはいつでも乗れる。今は、おめえを記憶させなきゃならねえ。ゲッターに!!」
「なに訳の分かんないこと……」
「いいから来いッ」
「うわあっ! 放せ、放せよぉ!!」

180:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/19 01:21:41
 シンジは人さらいに抵抗するかのごとくもがいたが、竜馬の怪力の前には赤子も同然……
いや、それ以下だった。
 糸でも扱われるかのように、シンジはずるずると引きずられながら作戦司令室を退出し
ていく。
 後に残された人間は、唖然とするしかなかった。
 やがて、真っ先に気を取り戻したのはレーダーの光にシトの接近を警告された青葉シゲルである。

「し……シト、なおも接近!! すでに第三新東京市内に侵入していますッ」

 その言葉に部屋にいた人間すべてが現在の状況を跳ね起きるように思い出し、
ぱっと散って個々の持ち場に戻っていく。
 そして冬月とリツコに支えられて、立ちあがったゲンドウがうめきながらも指令を
飛ばしはじめた。
 だが、

「肝心のパイロットが、さらわれてはな……」

 冬月が苦しげにつぶやいた。
 その通りである。あくまでシトに対抗できるのはエヴァであり、そのほかの兵装などは
エヴァをサポートする存在に過ぎない。
 それだけでシトと戦闘をするなどというのは、紙の上に描いた餅のような事だった。

 ゲンドウも苦々しげにつぶやいた。

「レイはもはや戦闘には耐えん。このうえは……」
「あのゲッターとかいうのに頼るしか、なさそうですね」

 次の言葉をいいよどんだゲンドウの言葉を継いだのはミサトだった。
 どうやら、事態をしばらく観察していることで起きた事をある程度察知してしまったらしい。

181:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/19 01:22:55
「全職員に通達だ。流竜馬の進路を開けさせろ。……葛城一尉。君はものわかりが良くて
助かる。私は、さきほどの暴力で声を出すのが苦しい。この場の全指揮を任せる」
「解りました。しかし、なぜあの男はシンジ君を……」
「……」

 ゲンドウはその質問には答えず、冬月とリツコの腕を離れると、よろよろと高台の席
へと戻るのだった。


・・・


「おっしゃァッ。おめぇはジャガー号に乗れっ」
「じゃ、ジャガー号ってなんですか」
「胴体の白い部分だ。そこのハッチを開きゃあ、レバーがある。引けば中に入れる」
「無理ですよあんな高いところ!!」

 と、押し問答をするのは作戦司令室から台風のような勢いで去っていった竜馬とシンジ
の二人だった。
 さきほどは怒りで普段みないような言葉づかいをしていたシンジだったが、すでに竜馬
に引きずり回されて、地上へ這い出る頃にはそれも消え失せていた。
 竜馬はジオフロント入り口の近くにそびえたつゲッターロボを指さし、そのちょうど腹
に当たる部分によじ登れ、とシンジにいう。

 無理である。

 ゲッターロボの全長は、四〇メートル弱ほどはあるように見えた。エヴァとほぼ同程度
の大きさである。
 足をかける場所さえまともにない、そんな巨大なものによじ登るなどは、たとえとび職
の人間をもってしても至難の業であっただろう。

182:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/19 01:23:59
 が、竜馬はとにかくそういったことを意に介さない。
 シンジが絶対に無理だとわめきたてると、やっと、

「ちっ、しょうがねぇな」

 と一言いったのちに、小脇にシンジを抱えて持った。

「うおッ!」

 竜馬は叫び、ぐっ、と膝に力を込めると伸ばし、ぶわりと跳躍する。
 ちょうどゲッターロボの膝のあたりまで跳んで突起になっている部分に捕まると、あと
は片腕でもってぐいぐいと腹の部分までよじ登っていく。
 そしてちょうどレバーのあるところまでたどり着くと、レバーの格納されているハッチ
を開いてそれを力任せに引いた。

 すればブシュ、とエアーが噴出される音と共にジャガー号のコクピットハッチが開け放
たれる。
 その内部は案外に簡素で、シートに数本のレバーとモニタがあるだけのものだった。
 そこへシンジを放り込む。

「ぷわっ」
「そこのメットをかぶってベルトをつけろ。ゲッターの操縦法を脳に送って勝手に腕を動
かしてくれる……おめぇはレバーを握ってるだけでいい」
「わ、わかりましたよ……やればいいんでしょ、やれば」

 といって、シンジはレバーに手を伸ばす。
 大人が座るように設計されているためか、少し彼には遠いようだった。

183:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/19 01:25:17
「上等」

 一応の覚悟ができたシンジを見て、竜馬はニヤリと笑うとすぐにコクピットハッチを閉
めようとする。
 それに一人にされると思ったシンジがあわてた。

「ま、待ってください。まさか僕だけにやらせるつもりですか!?」
「んなワケねえだろ。俺はイーグル号に乗るんだよ!」
「い、イーグル号……?」

 シンジが問い返す間もなく、コクピットハッチは閉じられてしまった。
 すぐに竜馬はさらにその上まで上ると、肩のあたりでゲッターをいじって中に入り込ん
でいった。
 そう、ゲッターの操縦席は三つあるのだ。
 その意味を、シンジはこれから知ることになる。

「いくぞ!! ゲッターウイングッ!!」

 再びゲッターロボの背中にマントが生えると、ふわりと空中に浮かび上がった。
 そんな中、通信が入る。

「ゲッターロボ。聞こえる!?」

 モニタにミサトの姿がうつる。
 竜馬はそれを認めると、面倒くさそうな顔になって通信に応じた。

「あぁ? これからいいトコなんだよ、邪魔すんな」
「いいから聞いて。シンジ君がそこに乗っているのね!?」
「そうだ」
「なら、お願い、彼の命だけは守ると誓って! 彼は大切な―」
「いわれるまでもねぇ! 俺は、そのために来たんだ!!」

184:ここまで
07/10/19 01:28:34
 そこで通信を強制的に遮断すると、竜馬はゲッターロボをシトの居る方角へと向かって
直進させていく。
 あとに残されたネルフ作戦司令室のモニタが、ノイズだけを映し出していた。

「シンジ君を……守るために、きた? 一体、彼は……」

 何も映さなくなったモニタを見入るミサトが、ひとりつぶやいた。


ここまで。
…エヴァが全然活躍しない件について。

185:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/19 06:20:42
続き来てたー
乙!
竜馬が来たのはシンジを守る為…?
シンジをゲッターに憶えさせる…?
思いもよらない展開にドキドキ
しかもまさかシンジがゲッターに乗ることになろうとは!
ますますこれからの展開から目が離せない!

しかしゲンドウに対してここまで自由にふるまえるキャラって
他にいないよね
さすが竜馬だw

186:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/19 06:50:29
GJ!
だが、誰か竜馬を止めて!シンジがシンジが死んぢゃう!


187:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/19 07:40:10
GJであります
今後も期待しております

シンジにはこの先、残酷な未来が待っているのかな?

188:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/19 09:04:01
やっぱりマヤちょむは血を見て吐いたのだろうかとか、全然関係ないところが気になる。
隼人よりよっぽど楽に乗せられるシンジ。
何で乗らなきゃならないんだとかはともかく、オレの力だは流石にないだろうなー。
GJ


189:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/19 13:09:46 DJRrP/kM
すげえ事になってる、GJ!
もうめちゃめちゃですねいい意味でwww

190:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/19 13:18:53 eyA8N+Qe
前に夕方のニュースでバックミュージックで甘き死よ、来たれが流れてた!相撲をしている小学生のお母さんのインタビューのときに流れてたぞ!そんなに補完されたいか!?

191:サンバカトリオ
07/10/19 13:22:41 eyA8N+Qe
前の夕方のニュースのバックミュージックで甘き死よ、来たれが流れてた!相撲少年の母親のインタビューの時に流れてたぞ!
すげぇ!

192:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/19 16:53:22
ゲッターに記憶というとアークの武蔵がいるわけだが・・・まさかこの竜馬は艦隊の・・・?

193:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/19 23:15:09
>>192
らめぇえええええええええっ!!!

194:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/20 00:04:13
GJ
毎日楽しく読んでるよ感謝
竜馬がシト相手に暴れまわってる間にシンジ死にそうw

195:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/20 00:26:52
>>194
いや、うん、冗談抜きでやばいよね
訓練受けてないどころか貧弱な部類に入る14歳がいきなりゲッターは無理だろ
しかも操縦するのがかなりイっちゃってる時点の竜馬とか

196:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/20 01:18:32
ゲッターなんか乗ったら、シンちゃんが死んじゃう…

197:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/20 01:20:05
結果としてはやられてるんだが竜馬に立ち向かうことが出来た
ゲンドウ&SPは相当な肝っ玉だと思う

普通の人間なら竜馬の前に立ったら逆らおうとする思考すら出来ないだろう。

198:つづき
07/10/20 01:43:34
 ゲッターロボは、第三新東京市の空を凄まじい速度で飛んでいく。
 戦闘機の最大速度以上で移動しているようだった。
 この速度になると、移動物体の先端から空気が円すい状の衝撃波となって発生する。
 衝撃波の威力、というかエネルギーは凄まじい。
 速度が上がれば上がるほど、あらゆる物体を破壊する魔の気流と化するのだ。

 また、その円すいの角度は速度ともに狭まっていく。
 そのため移動物体は速度に応じた流線形を取らなければならなかったが、ゲッターロボ
はそんな航空力学などは全く無視しているデザインである。

 にも関わらず、衝撃波や摩擦熱による破壊をうけずに済んでいる。
 その理由も不明である。まったくもって人知のおよばない存在であるというしかない。
 まあ、しかし、人が造った物であるのだが。
 だが……

「あ……が、ぎ、ぐ、げ、ご……り、りょうま、ざん……」
「どうしたァ」
「そく、速度を、速度をおとしてっ……ぐだざ……うげっ」

 当然のことながらそんな速度で飛べば、内部の人間には強烈な重力の負荷がかかる。
 竜馬は先にも見せた通りの人間レベルを超越した肉体のおかげで、それに耐えることが
可能だったが、シンジは違う。
 彼は、普通の人間である。
 それどころか、パイロットスーツさえも無しに乗っているのだ。
 その小ぶりな鼻から血を吹きだして、今にも息絶えてしまいそうだった。

「ちっ、ヤワな奴だ」

 と、竜馬は自分を基準にした感覚でものをいうと、急減速する。
 それがまたシンジには負担となった。
 まるで、体が剥がされてしまうのではないかと思うような感覚で前へ引っ張られる。

199:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/20 01:45:33
「げは……っ!」

 耐えきれず、少量の血を吐いてしてシンジはコクピットでうずくまった。
 もっとも、大量に吐しゃするようなことがあれば、もはや彼は生きていないだろうが。

「大丈夫か。仕方のねえ野郎だ」
「はぁ……はぁっ……だ、だから一人でいけば、よかった……じゃない……ですか」
「そういうワケにはいかねーんだよ」
「どうして」
「どうしてもだ!! ……見えたぞ!」

 ゲッターの先に、まるでウツボカズラを赤くして巨大にしたような、妙なシトが横に
なって空に浮いていた。
 それがゲッターを確認すると、ゆっくりと竿立ちになって、頭のヘタになっている部分
をぐわん、と九〇度倒してこちらへ向けた。

 見れば眼のような模様が、そのヘタの部分に二つあり、こちらを見つめていた。
 あるいは、本当に目玉なのかもしれない。
 その細長い胴体から生えている、短い腕の様な先端から触手を出すと、それが紅色の光
を帯びる。
 威嚇のつもりなのか、それをびゅんと振るうと近くにあったビルを真っ二つにして崩し
た。
 それを見た竜馬、

「趣味の悪ぃ野郎だ」

 吐き捨てるようにいった。彼はつづける。

「―聞けシンジ。今のおまえじゃ、ゲッターの戦闘には体がもたん。一気にケリをつける必要がある」
「……」

200:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/20 01:46:51
 シンジが息をのむ。

「だが、こいつらのバリアは強力だ。ゲッター1の武器で壊そうとすりゃあ、どうしても
でけえ反動が来る」
「げ、ゲッター1? じゃあ、2や3があるってことですか」
「おおよ。ゲッターは三形態に変形できる。2がスピード型、3がパワー型だ……こいつ
を一気にぶちのめすなら、2で一撃離脱するしかねえ。チェンジするぞ」
「チェンジって……まさか」

 と、シンジの脳裏に最初のゲッターとシトとの戦闘が脳裏によぎった。

(そういえば、ゲッターは戦闘機に分離してた)

「分離して、再合体するってことですか……あ、操縦席が複数あるのは」
「そうだ。いいカンしてるじゃねえか。今、おまえの座ってんのがゲッター2のメインコクピットよ。
 心配すんな、操作はコンピュータがやる……おめえはレバーを通じて感覚を覚えろ!!
 気絶なんかしやがったら、ぶん殴るッ」
「そんな」
「ぐだぐだいうんじゃあねえ、もう敵が来る。いくぞ、オープン・ゲェット!!」
「ま、待っ……!!」

 竜馬がいうと同時に、シトの触手がゲッターに襲いかかる。
 すんでのところで分離して回避すると、そのままシトの手がとどかない上空まで垂直に
駆け上ったのち、シンジの乗ったジャガー号を先頭に、自動操縦のベアー号、竜馬のイー
グル号という順で一列になると、そのまま衝突するような形でひとつになる。

 まず、ベアー号がジャガー号につっこんだ。
 コンピュータゆえの正確無比な連結は、パイロットへの負担を最低限に抑える。だが、
竜馬のイーグル号はそうはいかなかった。

201:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/20 01:48:15
「チェーンジゲッタァァーーッ、ツゥッ!!」

 ぐわーんっ、と最後尾から全体に巨大な振動を走らせてイーグル号が連結する。速度こ
そはコンピュータよりも速いが、パイロットの負担は最低限しか考えられていない。
 全身がしびれるような感覚をうけたシンジが悲鳴をあげる。
 直後に変形が始まった。
 まるで粘土アニメのような動きで、三機の戦闘機がぐにゃぐにゃと形を変えながら人型
を形作っていき、数コンマ秒後には細身で全体が鋭角的な、左腕に巨大なドリルを装着し
たゲッター2に変形が完了する。

 そのまま自由落下しながら、メインコクピットであるジャガー号にもっとも高い視界が
開けた。
 シトから数十キロ離れた場所に着地した。目標が豆のようだった。
 ゲッター2はその方向に向くと、姿勢をかがめはじめる。すれば、そのようにシンジの
視界も移動した。
 レバーが、シンジの手を導くように動いている……脳波ヘルメットによる操縦ではない
。どうやら、竜馬がイーグル号から動かしているようだった。

「シンジ、起きてるだろうな」
「……は、はい」
「よし。んじゃいくぜぇ、眼ん玉ひんむいてよぉく見てやがれ!!」

 ゲッター2はさらに姿勢を深くして、クラウチング・スタートの姿勢に臨む。シトがそ
れに気づいて触手を一気に伸ばしてきたが、距離が離れているためにまだ到達しない。
 そして、

「いけぇぇッ!!」

202:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/20 01:49:24
 竜馬が、レバーを力一杯に押し倒す。それと同時にゲッター2はつんのめるように前に
出たかと思うと、一瞬の間のあと、坂を子供が駆け下りるかのような勢いでシトに向かっ
て突進しはじめた。
 凄まじい勢いだ。

 さきほどの、ゲッター1の飛行速度よりも明らかに走行速度が上回っていた。
 ソニックブームが巻き起こり、ゲッター2は周囲の物体のすべてを破壊しながら突撃し
ていく。
 シトの触手すらも、まきつくことすら敵わずにゲッター2が進むごとに吹き飛ばされて
いく。
 豆のように見えていたシトの喉元へ、一気に迫っていく。
 だが、その最中でシンジがおかしな呻きをあげ、その視界が紅く彩られていく。
 常軌を逸した世界に、もはや彼の肉体は限界を迎えはじめていた。

「ぐぎ、ぎぎぎ……げぇぇ」
「もうちょっとだ我慢してろォ!!」

 我慢、することでどうにかなるレベルの問題ではなかったが、ここで止まったら、シト
を一撃で破壊することはできない。
 ゲッター2は火力においては他の形態よりも劣るため、速度を殺す事はすなわち死活問
題へと繋がってしまうのだ。
 もし失敗すれば、これ以上はシンジの肉体が持たないであろう。
 竜馬はコクピットで雄叫びをあげると、ゲッター2のドリルをシトに向けた。

「うおぉぉぉぉッ!!」

 接触する直前に、A.Tフィールドが展開されるが速度の乗ったドリルの一点集中的な衝
突に破られると、そのままコアに向かって突き刺さる。
 激しい衝撃を伴ってゲッター2はシトに組み付く形で停止した。

「ハ……ッ」

203:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/20 01:50:37
 やっとのことで極限状態から解放されたシンジが、息を短く吸った。
 だが、腕を動かすのがやっとだ。体の節々が悲鳴をあげている。
 目を見開くと、その前にシトの不気味な姿が現れる。コアをゲッタードリルによって削
られて震えていたが、

「ま、まだ……生きてる……」

 A.Tフィールドによって速度が殺されたゆえに、一瞬でシトを沈黙させるまでには至ら
なかったのだ。
 竜馬の予想よりも、シトのA.Tフィールドが強固だった。
 先のシトの戦績を学習したのか、はたまたこのシトが、たまたまそういう個体だったの
かは解らないが、ともかく。

 シトは苦しげな呻きをあげながらも、反撃に移る。
 停止したゲッター2めがけて触手を突き刺してきた。それはちょうど脚の付け根辺り、
イーグル号のコクピット位置であった。
 竜馬のコクピットに激しい衝撃が襲いかかり、それと同時に灼熱の触手が彼の頭上を通
り過ぎた。
 竜馬の全身が、燃え上がるように加熱していく。

「ぐっ……ぐおおお……このっ、しぶてえ野郎がッ……!!」
「りょ、竜馬さんッ」

 その光景が、ジャガー号からもモニタを通じて見ることができた。
 竜馬は火だるまとなって、なおもレバーを渾身の力をこめて押している。まるで鬼神の
ような迫力だった。
 だが、その勢いは長くは続かないだろう。
 このままいけば、竜馬は燃え尽きて死ぬ―。
 シンジに戦慄が走った。

204:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/20 01:51:48
 そのとき、ふとシンジが自分の手元のレバーをみると、竜馬の手の震えが伝わってくる
ように、ジャガー号のレバーも動いていた。
 はっ、とした。
 脳波ヘルメットのおかげで、あるていどは操作の概要がつかめていたシンジはこれを両
手で握りしめると、

「う、うわああぁぁあああぁッッ……」

 絶叫しながら体中の気合いを呼び起こすように、渾身の力をこめて、レバーを押し込んでいく。
 すれば、その気合いに呼応したかのごとく、ゲッター2のドリルはいよいよ回転の勢い
を増して深く深く、シトのコアに突き刺さり破壊的な勢いでえぐっていった。
 次の瞬間、盛大に火花が散ってコアが砕け散る。

 一瞬の間。

 ふっ、とシトの触手から紅色の光が消えた。それと同じくして、ジャガー号のモニタに
映るイーグル号のコクピットからも光が失せていく。
 レバーにしがみついていた竜馬が、どさっとシートにもたれ掛かったのが見えた。

「……竜馬さん、竜馬さん! 竜馬さんっ!!」

 シンジはその姿に竜馬の危機を感じると、必死に呼びかけ始める。
 すでに彼自身も操縦の負荷でボロボロになっていたが、こみ上げる感情に、シンジは突
き動かさざるを得なかった。
 ありったけの声を絞り出して呼びかけた。
 すると、ジャガー号のモニタから一瞬竜馬が消えたあとに、画面一杯にその目が映る。
 ぎらりと睨みつけてきた。

「わぁっ!?」
「うるせえッ。キィキィわめくんじゃねえ!!」
「あ。よ、よかった……」

205:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/20 01:52:58
 竜馬がモニタから引く。
 みれば服が燃え尽きて半裸になったうえ、その肌も黒こげになっていた。
 彼でなければとっくに燃え尽きて死んでいただろう。
 その恐るべき生命力に、シンジはあらためて息をのんだ。

「あれしきで俺がくたばるか。が……シンジよ。よく動かしたじゃねえか」
「えっ」

 竜馬はニヤリと笑う。

「ゲッターロボはな、乗る人間の意思が一つになるとパワーも増大するように出来てんだ。
 おまえの闘志は手に取るようにわかったぜ。よくやった」
「あ……は、はい、ありがとう……ございます」

 シンジは自身が連行してこられたのも忘れて、赤くなるとうつむいてしまった。
 今まで、誰からも褒められなかった……いや、シンジ自身が他人から認められなかった
と感じていた人生の中で、はじめて賞賛を受けた気分になったのだ。
 そう簡単には人を褒めそうもない竜馬が相手なので、なおさらそうだった。

 その時、ネルフからまた通信が入る。
 竜馬は面倒くさそうに受け取った。

「ネルフよりゲッターロボ、応答……って、キャァァァッ!!」

 やはり出たのはミサトだったが、焼死体のようになった竜馬を見て悲鳴をあげる。

「うるせえってんだろ!! ったく、この世界の連中は金切り声あげんのが仕事なのか!?」
「あっ! い、生きていたのね。ああびっくりした」
「約束通り、シンジのガキはきっちり守ってやったぜ。文句はねえだろうな」

206:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/20 01:56:31
「きっちりじゃ……」

 シンジが顎についた血もそのままに横やりをいれる。拭う余力もない。
 が、

「おめえは黙ってろ!!」
「ひゃっ、ひゃいっ」

 竜馬におどされ、かき消されてしまった。
 もっともそのやりとりを聞くまでもなく、竜馬があれほどの満身創痍なのだからシンジ
が無傷でいるはずがないということの程度は、ミサトにも容易に想像がつく。
 彼女は「命があっただけでもめっけもん……かな」と、思うことにした。

「え、ええ……シト撃破の功労で、今回は特別にあなたの全ての行動を不問に……いえ、
なんでもない。感謝するわ、ありがとう」
「……へ。わかってるじゃねえか。とりあえず戻るぜ」

 ず、とシトからドリルを引き抜いて離れると、ゲッターが分離する。
 三機の戦闘機はすでに暮れはじめた日の紅い光をあびて輝き、ゆっくりとグライダーの
ような速度で飛行しながらネルフを目指す。
 その中でシンジが竜馬へ話しかけた。

207:ここまで
07/10/20 01:58:48
「竜馬さん」
「なんだァ」
「あなたは一体……だれなんですか」

 何者なのか、と聞こうとしたのだろう。が、言葉が出てこない。

「俺は流竜馬だ。ゲッターの、導き手」
「ゲッター……導き手?」
「わはは、まあ今のおまえにゃ関係のないことだ!!」

 シンジと竜馬はネルフに戻っていった。


・・・


マヤちょむに吐かせるの忘れた。残念残念。次を狙う。

208:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/20 02:04:04
>>207
GJ!リアルタイムで更新して読ましていただきやした。
「この世界」とか「導き手」とかいろいろ気になる所だけど
次回マヤちゃん吐かせる気ですかw期待してます。

209:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/20 05:14:31
シンジ君、生還おめでとう・・・いや、ご愁傷様のほうがいいかw
「俺は流、流竜馬!これから先テメエに地獄を見せてやるぜぇ!!」
こんな状況なんだから死なせてやった方が良かったかもしれない・・・

210:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/20 06:14:44
作者に100万回のGJを!
内容の面白さもさることながら、なんて躍動感のある気持のいい文章なんだろう
竜馬の理不尽さがカッコイイ!
結構根性のあるシンジ健気!
上がって来たばかりでなんですが、続きを首を長くして待っておりまする~

211:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/20 08:19:49
シンジくんにゲッターガッツが宿った日ですね
さて、ベアー号はどうなるのかな?

リボルテックの関節動かしながら、続きを待つとしますか。カチカチカチ

212:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/20 09:39:15
ベアー号に誰が乗るのか楽しみだ。





ゲンちゃんだったりしてwww

213:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/20 10:24:22
このままシンちゃんがジャガー号に定着したら…ゲンドウと初号機がすねちゃいそうだw

214:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/20 10:50:53
まてまて、ベアー号には多分ミサトが無理矢理乗せろと言い出しかねん
なんせ、自分の手で使徒を倒すことが目的なのだから。

つーことは、ゲッター3の必殺技は大雪山おろしではなく
・・・・・ミサトカレー嵐か!・・・・汚染処理が大変だ・・・・(リッちゃん血管ブチ切れ捲りだな)w

>>213
初号機というより、ユイがすねて暴走しちゃいそうだw
・・・・・ゲッター対暴走ユイ(初号機)・・・・・見てみたいぞ!www



215:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/20 11:08:07
ゲッター2に慣れてしまったら(慣れるまで生きていれば)、トップスピードで
音速程度らしい初号機など、鼻歌交じりでフル稼働できるようになるかも…

216:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/20 14:04:28
シンジ「動く…初号機がボクになってるみたいだ! ボクが初号機なんだ!」
冬月「…勝ったな、碇」
ゲンドウ「む…(いいのかこれで…?)」

リツコ「ふふっ、計算どおりね」
ミサト「あんた、最初からそのつもりで…?」

こうですか><

217:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/20 14:11:30
>>216
そして初号機回収後…
リツコ「ふっ、計算ミス……無様ね」
ミサト「どうしたの…何このデータ? エヴァの筋組織が断裂しまくりじゃない!」
シンジ「ご、ごめんなさい!…そ、その……調子に乗ってゲッタービジョンをやっちゃって…」

218:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/20 14:14:33
>>217
筋組織断裂の感覚フィードバックに耐える強い子シンちゃん。
オープンゲットしようとしなかっただけまだ良かった。

219:つづき
07/10/21 16:02:45
 第四シトとの戦いから数日後。
 シンジは、とある病室の中で目を覚ました。見知らぬ天井が視界に飛び込んでくる。

「あ、ここは……」
「よう起きたか。いつまで寝てンのかと思ったぜ」
「竜馬さん」

 ふわりとベッドから身を起こす。
 竜馬は、シンジの向かいのベッドに居た。

「あの……ケガは?」

 全身に大やけどを負っていたはずの竜馬なのだが、すでに皮膚の色も元通りになって
ケロリとしている。
 点滴をされていたのだろうが、嫌になって外したらしい。チューブをぐるんぐるんと振り
回しながら、いう。

「あんなモンは風呂でも入っときゃ直る。なのに、ネルフの奴らあーだこーだとへ理屈い
って俺をこんなトコに押し込めやがってよ。
 大方、いまのうちゲッターをどうにかしてやろうってハラなんだろうが無駄なこった」
「はは……そ、そうですか」

 シンジは、ゲッターロボ云々よりも竜馬がゴキブリを遙かに超える脅威の生命力の持ち
主であることだけが感心だった。
 やがて、チューブを振り回すのにも飽きた竜馬がベッドから跳ね起きると、シンジのベ
ッドに近寄って布団を剥ぎ取る。
 急激に差し込んだ空気がひやりとした。

「な、なにすんですか!」
「ちと散歩へ行こうぜ。ここにいるのは飽き飽きした」

220:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/21 16:04:47
 起きたばかりだというのに、有無をいわさずシンジは連れ出されてしまう。

(……まあ、あそこで悶々としているよりはいいかな)

 そう思ってついて行く。
 すると、途中でがらがらと寝台が運ばれてくるのが見えた。近づくにつれて、その正体
がはっきりしてくる。
 そこには居たのはエヴァ初号機に乗っていた綾波レイと……

(……父さん)

 それに付きそう、ゲンドウの姿だった。
 彼は通路のシンジに気づくとちらり、と視線をむけたのだが、それっきりでレイへ目を
戻すと何事もなかったかのようにいってしまう。
 その背に、竜馬が皮肉めいて話しかける。

「よぉオッサン。ゲッターロボは解明できたかい」
「……我々に玩具は必要ない」
「けっ」

 ゲンドウ達は、通路の奥へ消えていった。
 竜馬も何事もなかったようにズンズン歩いていくが、後ろがスカスカしていることに気
づくと、振り向いた。
 そこには立ち止まって何もなくなった通路の先を見つめているシンジの姿があった。
 その後ろ姿を竜馬はしばらく見ていたが、やがて、

「……シンジよ」

 この男にあるまじき、しずかな声でいった。

221:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/21 16:06:03
「はい」

 シンジは振り向かずに反応する。
 竜馬は口をつぐむと、やがてゆっくり話はじめた。

「俺にも二〇……ちょっとくれえになるガキがいてな」
「え!?」

 その言葉には、ばっ、と振り向いてしまった。じろじろと、舐め回すように見る。

(この人、どうみても二〇代にしか見えないぞ……)

 それが、二〇代の息子がいるとはどういうことだろうか。
 だがそれを聞けば竜馬の怒りを買ってしまうような気がして、質問する勇気は現れなか
った。

「なんでえ」
「いえ、なんでもないです……」
「まあいい。結局、顔も会わせず仕舞いだったんだが、まあ、それでも息子は息子だ」
「……」
「親としての気持ちは、あるもんだ。微妙な表し方しかできねえけどよ」
「それって……」

「おめえのオヤジがどうかは知らねえ。が、シンジ。胸を張れ」
「胸を」
「おおよ。俺がいうのもなんだが、親父にびびって引っ込んでんじゃねえ。堂々と向かっ
て口をききゃあ良い。
 無視なんかしやがったら、ふんづかまえて一発殴ってやりゃいいんだ。それが男の口の
きき方ってもんよ」

222:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/21 16:07:07
 竜馬の言葉をシンジは正しいとは思えなかったが、しかしシンジはゲッター2を動かし
た時の気持ちを思い出した。
 あふれるような意思でレバーに力をこめたとき、ゲッターは鼓動をもって応えてくれた。

(あんな風に本気になれば、ゲッターと同じように人も反応してくれるだろうか)

 そう、思った。

「わかりました……胸、張ってみます」

 シンジはぐい、と胸をあげる仕草をした。
 そうこうしていると、すたすたと通路の先から葛城ミサトがやってくる。ちょうど、
シンジが直立不動の構えをしているところを見て、

「探したわよ二人とも迎えに……って、なにやってんのシンジ君」

 呆気にとられた。

「あ、ミサトさん……」

 恥ずかしくなってしまったシンジが普通の姿勢にもどると照れ隠しに、はにかむ様な表
情を見せる。
 ミサトは、目を見はった。

(あれっ)

 これが、目覚める前までは、鬱屈そのものといえたような少年の顔だろうか―。
 ミサトはそう思った。
 ふと、竜馬をみやる。相変わらず凶悪な顔だったが、そこから何か父性じみたものをミ
サトは感じとる。

223:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/21 16:08:27
 むろん、その表情や態度に表れていたわけではない。ただ、ミサトの女の勘、とでもい
うべきものが、そのような感覚をうけたのだ。
 竜馬が、その視線に気づいた。

「……あん?」
「おっとと。なんでもないわよん『リョウ君』」

 ミサトは軽くウインクをして受け流す。

「なんだそりゃぁ……」

 竜馬は、突然態度が柔らかくなったミサトを気味悪そうに見ると、通路の窓際によって
その視線から逃れる。

(こりゃシンジ君、おっそろしい父親代わりみつけちゃったかもだわね。……なら)

 その場でミサトは携帯電話を取り出すと、ものすごい速度でタッチしながら通信状態になる。
 以下、彼女の通話内容である。

「あ? リツコぉ? うん、私。ちょっち急だけど、シンジ君とあと竜ちゃん……は? あ
あ流竜馬のことよ。二人とも私が保護することにしたから。
 まーまーまー。落ち着いて。え、住居? 私のマンションでいいでしょ。
 ……なーにいってんの、男二人相手になんかしようってほど頭逝ってないわよっ。
 じゃ、そういうわけで上の許可とっといてねぇー!!」

 まくし立てまくった挙げ句、勢いよく通信を切る。
 まだ携帯からはリツコの甲高い抗議が漏れていたが、ミサトは相手にならなかった。
 そしてぐるりと笑顔のまま、その通話内容に唖然としていたシンジと竜馬に首を回す。

224:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/21 16:10:30
「じゃあ行きましょう! 歓迎するわよ二人ともっ」
「ちょ、待ってくださいよミサトさん! 勝手にそんなこと決められても……!!」
「問答無用! これは上司命令よ、従いなさい。……リョウ君も文句ないわよねー?」
「俺ぁ、飯が食えりゃどこでもいい。それよりおい、その呼び方」
「よっしゃ決まりぃ!! 二人とも、とっとと着替えて駐車場まで来なさいっ」

 ミサトは喋るだけ喋ると、そのまま通路を走っていってしまった。
 あとに残されたシンジがつぶやく。

「病院って、普通は走ったらいけない場所ですよね」
「知らん」
「……」

 こうして、奇妙な共同生活が始まることになった。


二、

 時間は、シンジがウツボカズラのような第四のシト、シャムシェルとの戦闘の後に病院
で目を閉じていた頃に巻き戻る。
 草木もねむる夜。
 シンジと同室となった竜馬の横に、リツコの姿があった。
 面会は許されないはずの時間だったが、彼女はネルフの権限を行使して病室へ進入していた。
 会話が聞こえる。

「……俺に、ネルフの職員になれだと?」
「ええそうよ。引き替えの条件は幹部級の生活保障と、そしてゲッターロボの整備」

 竜馬は、あれほどの騒ぎを起こしたにも関わらずミサトによって無罪放免とされた。
 挙げ句にリツコは、さらに幹部クラスの待遇をも用意するという。

225:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/21 16:12:23
 だが、どれもゲンドウの許可がなければ実現しないもののはずだ。
 すくなくとも彼に危害を加えた竜馬が、それほどの待遇を受けるのには特別な理由が必
要である。
 それは、以下のような内容のものだった。

 結論からいうと、ゲッターロボの威力を見た国連が自らの立場を強化しようとそのの確
保に動き出したのだ。
 ネルフはそれを阻止したかった。
 別にゲッターロボが欲しかったわけではない。彼らはあくまでエヴァンゲリオンのみを
シト迎撃の要として見ている。

 それどころか、国連ごときにどうこうされるようなゲッターロボと竜馬でないのも、
ネルフ自身がよく解っていることだった。
 が、余計な騒動を引き起こしネルフの行動の邪魔をされるぐらいならば、その強大な
戦力は味方に引き込んでおきたい―。
 それが、現時点でのネルフの総意であった。
 だが提示した条件は、流竜馬という男をあまりにも知らなさすぎる内容だ。

「そいつはご大層な申し出だが」

 竜馬は、差しいれられた肉の塊を頬張りながら目を閉じた。
 差し入れ品として問題があると思われたが、これをもたせたのはミサトだった。
 いわく、

「ああいう男には、がっつり食えるようなもの与えるのが一番効果的なのよ!!」

 とのことである。まあ、それはともかく。

 竜馬が目を閉じたのは別に、肉に薬が仕込まれているのを心配したわけではない。とい
うよりも、この男に生半可な薬物は通用しない。

226:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/21 16:14:09
 病院に運び込まれた際、手術をするために打った麻酔が全く効かなかったのだ。
 彼は、手術を拒絶して点滴だけで回復してしまった。
 そのせいで医者をはじめ、生物学者などが彼に詰め寄る結果となったのだが、すべて
竜馬の一喝とネルフの工作ではじき返されていた。

「断る。俺はあんな陰気くせえ所は嫌いなんだよ。だいいち、てめえらが欲しいのは、
ゲッターだけだろう。そんなに欲しけりゃ、小細工なんざしねえで俺を殺して奪いに来るんだな」

 目を開き、ぎらりとリツコを睨みつける。
 肉を食いちぎって、飲み込んだ。
 逃げ場の無い場所で熊に出会ったような生理的な恐怖が彼女を襲うが、そこはぐっとこ
らえて気丈にする。
 なによりも、彼女には果たしたい目的があったからだ。

「ええ、そうよ。ネルフの目的はゲッターだわ」

 リツコは竜馬の問い詰めを否定しなかった。

「けれど。もっと本音をいえば」

 リツコはバン、とベッドを叩くと竜馬に詰め寄るような体勢になった。
 そのまま頭を触れそうなほどに近づけると、

「本当にゲッターロボを欲しいのは、私だけ。ネルフ……碇司令は単に、厄介事を封じた
いだけだわ。
 あの素晴らしい機械を、私に見せて頂戴。お願い。見たいの。
 あれ、戦闘機に分離して姿を変えたわね。どういう構造をして……いえ、それよりも何
を動力に動いているの?
 いや。どうしてあんな凄まじい威力が湧き出てくるの。全部見たい。解明したい。
 あれが人間の科学力の果てにあるものだとするなら、それを私は……見てみたい!!」

227:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/21 16:15:29
 つばが竜馬の顔にばらばらと降りかかるほどに、じょう舌に語るリツコ。一瞬、彼女の
黒目が渦を巻いたようにみえた。

「カオ近づけ過ぎだ」
「……あっ。あら失礼」

 がらにもなく興奮してしまった自分を指摘されて恥ずかしくなったのか、リツコは身を
引いた。
 竜馬はそれをみて、少し考え込む。
 やがて、頭を上げると今度はすこし目もやわらかくなって、いった。

「むずかしいぞゲッターは。おまえに扱えるか」
「きっと……いえ。絶対に扱ってみせるわ」

 リツコは本気だった。
 まるで格闘家が発するような気迫が、その細い体から竜馬に伝わってくるのだ。
 竜馬は「仕方ねえ」というと、肉を一気に平らげてから腕を組んだ。
 彼は、粗暴であっても本気になった人間の意思を、むげにする男ではない。
 もちろん、この場合はゲッターロボをどのようにいじられても、自分が危険を打開でき
るという自信に裏付けされたものであるが。

「なら、条件付きで認めてやる。俺をネルフに当てはめるのは止めろ。その上でゲッター
に接するなら好きにしていい」

 つまり、ネルフの職員にならずに本部を自由に行き来できるようにしろ、というのだ。
 むずかしい注文だった。
 ネルフは他のどの組織と比べても、セキュリティにかけては厳格すぎるほどに厳格な
システムを構築している。
 実現するには、違法行為に及ばねばならないだろう。
 下手をすれば命がない。

228:ここまで
07/10/21 16:18:05
(それでもいい。たとえMAGIのシステムを、書き換えてでも)

 リツコは、躊躇しなかった。

「わかったわ、なんとかやってみせる」
「もうひとつ聞かせろ。なぜ、そんなにゲッターに興味をもつ」
「科学者なら、当然のことじゃなくて?」
「嘘をつくな。俺の目はごまかせねえ」
「……小難しい話は置いて言うわ。母を超えたいの。科学者としても、人としても」
「わかった……だが、今後は命なんざ無いものと思え。ゲッターに関わるならな」
「覚悟の、うえよ」

 病室での契約が交わされた。
 かくして、竜馬はネルフの人間とその命運を共にすることになる。
 ミサトが竜馬もふくめて病院まで迎えに来たのには、そういう経緯があったのだった。


・・・

229:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/21 16:23:06
訂正
>>223 
誤:シンジ君とあと竜ちゃん~
正:シンジ君とあとリョウ君~

230:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/21 16:42:11
息子って拓馬のことかな
なんにせよ乙!

231:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/21 17:08:33
GJ!リツコさん、それ非常に危険なフラグです!w

232:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/21 18:26:02
GJGJGJ!!!
うわあ~先が読めない
これからどうなるんだろう
ドキドキドキ

それはそれとして、竜馬の男っぷりにマジ惚れしましたw
シンちゃんへの接し方とかが本当に素敵!


233:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/21 19:39:03
僕たちの出番もある筈だよねぇ、スティンガー君?

234:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/21 20:21:48
た、たぶんないと思うよコーウェン君
だ、だけど出演できたら嬉しいよね

235:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/21 20:28:46
リツコさんがぐるぐる目玉ァ

236:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/21 20:29:57
>一瞬、彼女の黒目が渦を巻いたようにみえた。
ここでフイタ

237:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/21 21:54:59
やはりガイナックスなので、ゲッターではなく最近流行のドリル力の覚醒フラグか?

はたまた(年甲斐もなく)ピッチリスーツでゲッター3フラグか?wktkして参りました。

238:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/21 22:02:24
そういえばコミック版では最初の頃ゲッター3には、早乙女博士が自ら乗ってましたね

239:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/21 22:12:18
この話の竜馬のいた世界では早乙女研究所や隼人武蔵弁慶はどーなってんだろうな

なんかゲッターとエヴァは意外と取り合わせがいいように思えてきたw
職人さん乙

240:名無し氏んでも代わりはいるのもの
07/10/22 09:16:19 JZRjnEKH
それはたぶん一つの方向性しかもっていなかった物語に、竜馬というまったく真逆
の方向性をもったキャラが登場したので、キャラのバランスがよくなったからだとおもいます。
まさにGJ!!

241:名無し氏んでも代わりはいるのもの
07/10/22 12:37:45 JZRjnEKH
個人的にはベアー号にはレイを・・・。

242:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/22 14:00:40
レイがベアー号…結局自爆させる気かぁ?


243:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/22 19:24:12
ゲッター3のシートをミサトと奪い合うリツコの姿が浮かんだ

244:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/22 19:48:04
それは大丈夫でしょう。リツコは乗るより分解したいでしょうし

245:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/22 22:07:14
>乗るより分解
どっちにしろ危険だな

246:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/23 00:38:31
アスカと加持がどうなるか心配だ

247:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/23 08:20:52
>>246
アスカ、キャンキャン煩いのでひとまず修正、それで駄目ならゲッターで遊覧飛行

加持、竜馬の野生の勘と余計な詮索をした為滅殺或いは、ゲッターでの耐久分離合体演習別名パイロット壊しにチャレンジ

248:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/23 15:48:05
>>アスカ、キャンキャン煩いのでひとまず修正、それで駄目ならゲッターで遊覧飛行
いいな、それ♪

249:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/23 18:32:29
・アスカの場合
あんなボロットと野蛮人がこの弐号機と私に勝てるわけ無いわ!

エヴァ必要ねーよ、と思えるほど使徒とついでにアスカのプライドを竜馬がフルボッコ

やさぐれ始めて半ば自棄でゲッターに乗ろうとするも失敗。原作通り鬱に

ゲッターが憎くなってバズーカ撃ち込む
「私は悪魔を倒したのよー!」
あれ、それなんて大道さんフラグ?

・加持さんの場合
NERVやゼーレのSPに殺されかかるも通りがかった竜馬に助けられる
or
竜馬の影響を受けてSP返り討ちにする

弟達の写真を見て「また残されちまった」

250:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/23 19:04:06
ここでバグに乗ったカムイと恐竜帝国残党が次元を越えて来襲

251:つづき
07/10/23 19:54:00
 時間は元に戻る。
 シンジと竜馬が退院してから数日が経過している。
 その間、二人はミサトの案内で、その新住居となる彼女のマンションへ足を踏み入れて
いたのだが、凄まじいほどに汚れ散らかったミサトの部屋は、足の踏む場もないほどであった。

 竜馬があてがわれた部屋に入ると、適当にその辺りの物をぽいぽいと放り投げて横になって
しまったものだから、あとはこの惨状をなんとかできるのはシンジしかいない。
 むろん、その原因であるミサトはつまみと共に酒をかっ喰らい、へべれけになっているのみだ。
 歓迎もなにもあったものではない。

「なんで、僕が……」

 ぶつぶつやりながら、しかし生まれ持った几帳面さで、とことんまで散らかり果てたこ
の空間の清浄を行い始めた。
 竜馬とミサトの二人をみれば、どちらもまともに住みかの整理整頓を行って清潔に保つ
などという概念がないのは明らかだ。
 シンジは、自らの生活を守るため家政婦のまねごとをせざるを得なかった。

 作業は、二人が寝入ってから起きるまで夜通しとなった。
 眠気につきまとわれた朝、シンジが目をこすりながら朝食をつくり、この数日で新しく
編入された第三新東京市、第壱中学校への登校のための準備をしていたところ。

「……早いなシンジ」

 竜馬が、服も例の半袖状態になったデニムジャケットと、ボロのジーンズのままでリビ
ングへのっそり姿をあらわした。
 着替えはあるのだが、それをするのはめんどうくさいようだった。

「あ、おはようございます。着替えなかったんですか」
「俺は寝間着というのは好かん」
「はあ、そうですか……ご飯、食べますか」
「ああ」

252:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/23 19:55:48
 竜馬は立ったままシンジの用意したトースを一枚を手にすると、ほおばってから
一口で飲み込んでしまった。

「ごっそさん」
(なんて食べ方だよ)

 シンジは生活スタイルのあまりにもの違いに朝から疲れを感じたが、それを飲み込んで
登校の支度をすすめる。
 それに気づいた竜馬が、

「なんだ、もうあの薄ぐれえ地下にいくのか」

 と聞いてきた。
 レイやエヴァの事まで知っているわりには、学校など細かい部分についてまでは知らな
いようだった。

「違いますよ学校にいくんです」
「ガッコぉ?」

 と、竜馬は素っ頓狂な声をあげた。
 シンジの年齢をみれば納得いきそうなものだったが、彼にはそういう組織に通う、とい
った概念がなかった。
 彼にも学生時代はあるにはあるのだが、そもそも彼の青春時代は道場破りとゲッターロ
ボにあったので、学生としての記憶はほとんどない。
 ひとつあったとすれば、

「学校か……隼人を思い出す」
「だれですか」
「旧いダチだ」

 そこまでいうと、やっとミサトが寝室から這い出てくる。
 連日の激務のためか眠ったにもかかわらず死にそうな顔をしていた。

253:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/23 19:59:00
「……ぉはょ…………」
「……ミサトさん」

 シンジが絶句した。
 ミサトは、短く腹が露出したシャツに短パン一丁という、あられもない格好で出てきた。
 その姿は、竜馬に疲れたシンジに追撃を加えるに十分だった。

 それだけ書くと若いシンジには目の毒に思われるかもしれないが、しかし化粧もなく、
髪のあちこちが跳ねてみだれ、目やにだらけで枕の跡もついた顔が、だらしなく大口をあ
けてアクビをする、というのは彼女の本来もつ色気を破壊するのに十分だった。
 それがいいという人もいるかもしれないが。
 ともかく。
 シンジは、もう少しだけ異性を神聖視したい感情があったのだが、ミサトはそれをこと
ごとく打ち砕いてくれることになる。

「だらしねぇな」

 と、人のことをいえない竜馬がミサトを批判した。

「うるさいわね~」

 いいながらも、ミサトは冷蔵庫に近寄るとがばりとそのドアを開けて、中に大量に陳列
されていたビール缶に手を伸ばした。
 そのまま手に取ると、後ろ背でドアを閉めて片手でプルタブを開く。
 プシュ、と封入されたチッ素がぬける気持ちの良い音が響いたあとミサトはそれを口に
つけて、朝一番の茶の代わりにぐいぐいと飲み干していった。
 この日、彼女は非番だった。

「シンジ君、学校遅刻しちゃうわよぉ」

 と、言葉だけは母親のようなことをいうがビール缶片手では威厳がない。
 シンジは「わかってますよ」といいながら、カバンを下げて出入り口のドアノブに手を掛けた。

254:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/23 20:00:08
「いってきます」
「いってらっしゃ~い」

 間。

 シンジが出て行くと、あとはすでに殺気がみなぎりはじめている竜馬と、ほろ酔い状態
のミサトが残るのみである。
 しかし竜馬はともかく、ミサトには非番といえ必要な仕事があった。
 懐から折りたたみの携帯電話を取り出すと、片手で開いて連絡をいれはじめる。

「……あ、私。今シンジ君が出ていったわ」

 どうやら、ネルフの諜報員にシンジの身辺警護と情報収集を命じているようであった。
 いまだエヴァに乗ってはいないものの、彼は重要なパイロット候補なのだ。
 だが。

「ええ。あとのことは……って、えっ、ちょっ!?」
「よこせ」

 いつの間にかミサトの背後に立っていた竜馬が、携帯を取り上げる。そして、

「俺は流竜馬だ。おめえらの仕事は俺がやるからすっこんでろ。ついてきたらぶち殺す」

 といって、通話を切ってしまった。
 その横で怒りに震えたミサトが、酔いも手伝って竜馬に負けず劣らずに目をつりあげて
食って掛かる。

「なっ……なーにすんのよォ!!」
「聞いた通りだ」
「勝手な真似されたら困ンのよっ」
「俺がついてた方が安全だ。じゃあな」
「ちょっとリョウ君!? 待ってよっ、待ちなさい!」

255:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/23 20:01:29
 ミサトが制止するが竜馬は聞かず、マンションの外へ出ていってしまう。
 すぐに爆音が響いてきた。
 この数日で、どこからか竜馬が仕入れてきたバイクのエンジン音である。
 金の出所はむろん、ネルフだ。もっといえば赤木リツコ博士である。
 ミサトが道路を見渡せるベランダに出ると、すでに竜馬のバイクは遠く小さな影になっていた。

 朝の通勤時間を、猛速度でつきぬけていく竜馬のバイク。
 車種は、スズキGSX-R1300「隼」。
 いまどき珍しい、レシプロエンジンを搭載したいいかげんに旧い物だったが、自然界最速の
生物と、旧陸軍の名機とも同じ名をもつこのバイクは、未だなおそれに恥じぬ動力性能をそなえた高性能車だった。

 エンジンは一二九八cc、一七五馬力。これを重量二一七キロの車体に乗せたところから
時速にして三〇〇キロを超える速度で走ることのできる、モンスターバイクである。
 姿は全体に丸みをおびたカウルに覆われており、そのフロントマスクはどことなくハヤブサを
意識したディテールだ。
 しかし、なによりもの特徴は、その横っ腹に大きく筆文字で「隼」と書かれていることだった。
 とにかく全体的に筋肉質なイメージを感じさせるバイクで、竜馬好みといえた。
 ちなみに竜馬のは後部座席に本来ある、ラクダのコブの様なカウルを取り払ってシート
がつけられた、ダブルシート仕様である。

 それが、先に出たシンジを追いかけていく。
 街の人間たちは、恐ろしい顔をした男が恐ろしい速度で公道を暴走する様をこの日、目
の当たりにすることになった。ヘルメットを被っていないのである。

「シンジぃぃぃ!!」
「……え? え、あ、うわっなんだアレ、竜馬さん!?」

 ぐわりと前輪を天にかざして、竜馬のバイクがやってくる。
 そのまま歩道に乗り上げて着地し、車体を横にすると、キャキャキャと甲高いスキール
音をたてながらシンジの目の前に停車した。

256:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/23 20:03:06
「送ってやるぜ。後ろにのれ、どこだ学校は。案内しろや」

 竜馬流の警護のつもりなのだろう。
 あまりにも派手であるが。

「……あっちです」

 朝食の件ですでに疲れ果てていたシンジは、これ以上竜馬の行動に逆らっても痛い目を
見るだけだと思って素直に従った。

「おっしゃいくぜ、振り落とされないようにきっちりつかまってろ!」

 ぐわっ、とバイクが車道に躍り出て急加速しはじめる。
 ゲッター2に比べれば穏やかそのものであっても、何も守るものがない肌に直接強烈な風が
ぶち当たって景色がものすごい速度で流れていくのを見るのは、恐怖以外のなにものでもなかった。

 やがて爆音と共に学校へ到着する。
 校庭の砂塵をまきあげ、竜馬のバイクが横向きに停車した。
 その音に、すでに登校していた生徒たちがなにごとかと驚き、窓際にあつまってその様を見つめている。

(うえぇ……)

 他人の視線にさらされるのを、何よりも苦手とするシンジにとっては拷問に近い時間だった。
 もちろん、それは登校後も変わらない。

「ねぇねぇ碇くん! こないだのロボットに君がのってるってホント!?」
「なんて名前のなんだ?」
「恐くなかった?」
「シャインスパークとか出来るんだろっ」
「あの怪獣みたいなのってなに」

257:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/23 20:04:40
 などと、シト関連のことは完全な情報統制がしかれているにも関わらず、どこから漏れ
たのかクラスの生徒たちはシンジがゲッターロボに乗り込んでいたことをウワサとして聞
き知っていた。
 だが、それを機密だからと、うまくはぐらかして煙にまくほどシンジは口がうまくない。
 聞かれるがままに知っていることを喋ってしまう。
 ミサトあたりがやれば、まちがいなく機密漏洩の罪に問われるだろう。

「あれゲッターロボ……とかいって……あ、でも、僕は最後にちょっとレバー動かしただ
けで操縦は、あの、竜馬さんが……」
「リョーマってだれ? テニス部の子じゃないよね?」
「そこの……校庭に……いるひと」

 その言葉に、ぐわらりと窓際に落ちるかと思うような勢いで生徒たちがまた集う。
 みれば腕組みをして異様な殺気を漂わせた大男が、こちらの教室をじろりと睨み付けた
まま仁王立ちしていた。

(なんだガキども)

 竜馬はなにも反応しなかったが、それだけで生徒たちを萎縮させるには十分すぎるほど
に凶悪な威圧があった。
 次の間には逆再生するかのごとく、さあっと窓際から人が引いていった。
 一部、好き者と思われる男女が残っているのみである。
 質問は再びシンジに集中しはじめる。
 そんな中、それを快く思わない男子生徒の姿がひとつ、あった。

「……気に入らん」

 言葉の先端が跳ね上がるような、関西弁独特の語気でつぶやくのは鈴原トウジだった。
 黒いジャージに身を包んで派手さはないが、短くそろえた頭髪と負けん気の強そうな顔
から、跳ねッ返りであることを感じさせる少年である。
 彼はしばし事態を静観していたが、やがてずいっと他の生徒をおしのけながらシンジに
迫っていった。

258:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/23 20:06:24
「おい、転校生。用がある……ちぃと顔かせや」
「と、トウジ!」

 彼の親友である、丸い眼鏡と制服のすそを出したラフな格好が特徴の、相田ケンスケが
彼をとめようとするが聞くようなトウジではない。
 シンジは、無理矢理体育館裏へと連れて行かれるのだった。
 そこにつくなり、

「うわっ」

 トウジはシンジの胸ぐらを掴み挙げると、その拳でもって彼の顔を思い切り殴り飛ばし
た。
 尻餅をつくシンジ。
 じんじんと苦味を感じるような痛みが顔面に走った。

「すまんな転校生。ワイはお前をどつかんとあかんのや」
「ど、どうして」
「ワイな、妹がおんのや。オトンもオジーも研究所勤めよって、世話してやれるんはワシ
しかおらん……それがえらいケガしてもうたんや。ビル破片の下敷きになってな」
「そ……それは」

「傷モンになったらどないすんねん!! 例のロボット、おのれが動かしてたんやろがっ。
もちっと考えて動けへんのか、このドアホッ」
「か、かわいそうだと思うけどっ、ゲッターを動かしてたのは僕じゃないっていってるだろうっ!?」
「やかましいッ、この後に及んで……っ!」
「も、もうやめろよトウジ!」

 ケンスケの制止も聞かずに第二撃目を加えようとするトウジ。
 その拳が振り下ろされる寸前、この体育館裏に人影が現れた。

「待ちな」

259:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/23 20:08:30
 ちょうど、太陽を背にしていたので表情がよく見えなかったが竜馬である。
 騒ぎを聞きつけて来たのだろう。
 彼はずい、と三人の前にせまった。

「おめえのカタキは、この俺だ」
「う……」
「トウジっての。俺がゲッターのパイロット、流竜馬だ。話は聞いた……悪ぃが、俺もな
りふり構っちゃいられねえんでな、地上の人間のことまで考えて戦ってられん」
「せ、せやけど、妹はなァッ……!!」

 さすがのトウジも竜馬の威容を前にしては、語気が鈍い。
 それは竜馬にもよくわかっている。

「だが……おめえも、はいそうですか、たぁ言えねえわな。おう」

 と、腰を落としてトウジの目線と同じ高さになる。

「殴りな」
「え……」
「殴れってんだ、煮えるほど腹がたってんだろう。かまうこたあねえ。それとも、シンジ
のガキは殴れて、俺は恐くてできねえってか?」
「く……くぅぅっ、ほな、どつき回したるァッ!!」

 その挑発に感情を爆発させたトウジが、目を血走らせて竜馬へ飛びかかると、ありった
けの力をこめて殴りつけまくる。

「うぁぁぁぁ……ッ!!」

 何発打っただろうか。
 トウジの手はまるで、樫の木でも殴りつけたかのように赤く腫れ上がっていくが、竜馬
は目を見開いたままじっとしているのみで、なにも異変をきたさない。
 やがてトウジの方が殴り疲れて、その場にへたりこんでしまう。

260:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/23 20:10:36
「あ、あかん、バケモンや……」
「シンジ」
「あ、は、はい」

 それには何もいわず、竜馬はつぎにシンジの腕をとる。

「今度はおめえがこいつを殴れ」
「ええっ」
「おめえはいわれもなく殴られたんだ、殴り返す資格がある」
「い、いやですよ。そんな、他人を殴るなんて、絶対に……」
「そうかよ」

 というと、竜馬はへたりこんでいるトウジをかつぎあげる。

「う、うわっ、離せ、離さんかいぃっ」
「おめえがやらないなら、俺が代わりにぶん殴る」
「ひぃぃぃッ!!」
「や、やめてよ死んじゃうよ! わ、わかったよっ。僕が殴ればいいんだろう!?」

 その言葉に、トウジが地面に落ちた。ゆっくりと近づくと、

「て、転校生」
「ごめんっ」

 目をつむって、思い切りトウジをぶん殴る。
 ごっ、と派手な音がした。

「ぎえっ」

 トウジが額を抱えて転がる。
 最初にシンジがやられたよりもダメージが大きいようだったが、ケンカ慣れしていない
者が殴ったので、加減ができないのである。

261:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/23 20:12:13
「ごめんっ……さ、さぁ!! もういいでしょう竜馬さ……」

 そういい、振り向くがそこには合掌して握り拳を作り棒立ちになっているケンスケがい
るのみで竜馬の姿はどこにもなかった。
 シンジが目をつむっている間に、どこかへ消えてしまったらしい。

「ずるいよ……」

 シンジは、ぷっと頬を膨らませて不満を露わにした。
 その後ろで尻のホコリをはらった、トウジがよろめきながら立ち上がる。

「つつつ……転校生、ええパンチや言いたいとこやが、目ぇ狙うんはえげつないで!!」
「あっ、ご、ごめん、夢中でつい」
「ったくぅ、どつき合いのサジ加減もでけへんのかい」
「ごめん……」
「……まぁ……ワイが話も聞かんとつっかかったんも、悪かったんやけど」
「ううん、もう、いいんだ」

 お互い、不思議と自然体だった。
 殴る、というのは単に物理的衝撃が加わるのみでない。
 様々な感情がそこに宿っている。
 それが純粋な憎しみの塊で無い限り、鬱屈した精神が解放されることによってその場に
おいては多少の晴れ間をみることもあった。
 もっとも、これは本来的にシンジとトウジの相性がよかったからであるが。
 悪ければ血みどろの争いになっただろう。

「しっかしなんや、あの竜馬っちゅうのは。あんだけどつかれといて鼻血もださへんなん
ておかしいやんか!」
「はは。あの人に常識は通用しないよ、鈴原君」
「……まあ、なんや。トウジでええ。そんかわりワシも名前で呼ばせてもらうで」
「あ、うん……もちろんいいよ」

262:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/23 20:14:23
 しばらく突っ立っていると、その間へケンスケが割り込んできた。
 トウジとは違って感情表現の素直な彼は、あきらかに期待に満ち満ちた目でシンジをみ
ると、その肩に手を掛けてまくしたてはじめた。

「おっ俺は相田っていうんだ! ところで碇、あの竜馬って人がゲッターロボを動かして
いたのか。俺はてっきりお前だと思ってみんなに……」

 どうやら、学校中にシンジのことが知れ渡っていたのはこの男の仕業のようだった。
 彼は父親が要職についているおかげで、その気になれば多少の機密を知ることができた
のだった。

「君か……原因は」
「ちょ、ちょっと恐いけどぜひお近づきになりたいんだ。あれは男のロマンだっ」

 意味のわからないことを言いながら興奮するケンスケを前に、すこし雰囲気がなごやか
になった三人は休憩時間の終わりそうなことに気づいて、急いで教室に戻っていくのだっ
た。

 場所は、校庭へ。
 竜馬はとくにすることもなくなって、つまらなさそうに辺りをうろついていた。
 どこから見ても不審者にしか見えないが、それでも彼がなんの咎めもうけないのはネル
フによって街は完全な支配下におかれているからである。
 ミサトがあの後、竜馬の行動の邪魔をしないように諜報員をはじめとした人間に命令し
ていたのだ。
 もしすれば血の雨が降るだろう。
 学校の警備員も、見て見ぬふりだった。

 しばらくぶらついていると、校舎の方から影がでてくるのに気づく。

263:ここまで
07/10/23 20:17:43
「ン……」

 背格好から、女生徒のようである。
 しかし、まだ授業が終わるには早い時間だ。

(授業を抜け出したか)

 相変わらず自分を基準にした思考回路の竜馬は、しかしその影の正体が明らかになるに
つれて表情を引き締めた。

「小娘……綾波レイか。授業をさぼるような奴たぁ思わなかったぜ」
「……」
「なんか用か」
「……それはこっちの、セリフ」

 言葉だけとれば、学校に何の用だ、というところであろう。
 しかし、レイの目はそうはいっていなかった。

「用がなきゃ来やしねえよ」
「……あなたはイレギュラー。本当はこの世界に存在してはならないのに」
「おめえらが不甲斐ないせいで、わざわざ出張ってくるハメになったんだ」
「本当にいいの」
「これしか手がねえんだよ。それに、イレギュラーなのはおめえもだ」
「そうね……ごめんなさい」

 ぽつり、と雨がふってきた。
 少しずつ雨粒が校庭の砂の点となっていくと、やがてざぁっと降り出すのだった。


・・・

関西弁はたぶん間違いだらけ

264:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/23 20:25:15
乙!
初めてリアルタイムで読ませていただきました
やっぱり竜馬男前だー
しかもすんげえ大人だー
たまんないなあ
しかし竜馬とレイは互いの存在を認識してるんだ…
一体どういうこと?
気になる気になる気に(ry

なんか久し振りにぎっちり中身の詰まった読み物に出会えた気分です
これから先もがんばってくださいー!!!

265:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/23 20:35:46
同じくリアルタイムでGJ!
竜馬の目的が気になるなー・・・やっぱりエンペrぎゃあ!俺の目が!耳が!鼻があああああ!

>シンジが出て行くと、あとはすでに殺気がみなぎりはじめている竜馬
なんで朝っぱらからそんなに元気なんですか、師範ww

266:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/23 20:36:58
>>263
・・・この竜馬は魔獣どころか極道だな。日本の首領(ドン)的な意味で
なにはともあれGJ。いろいろ伏線が気になる展開で続きが楽しみ。

267:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/23 21:07:33
まさかレイもエンペラーのnうわ何をするやめドワォ

268:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/24 14:06:59
葛城家はすでにシンちゃんとリョウちゃんとペンペンを飼っているから一杯だ。
アスカの寝床はどこへゆく…

269:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/24 14:55:59
>>268
         ____
       /  ./  /|    
     _|  ̄ ̄ ̄ ̄.|  |___   
   /  |_____.|/  /
    ̄ ̄~        ̄ ̄

270:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/24 15:25:35
>>269
ダンボールかいw
素直に隣の部屋とかって発想は無いのけ?

271:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/24 15:31:54
そう言えば葛城家初日のお約束、ペンペンにビックリが無かったな…竜馬に食われたか?

272:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/24 15:44:39
温泉(風呂)に入るペンギンの非常識さw に思考停止して
「…なんだ人形か」。
以後は目に入らない(入っても無視)だと楽しい

273:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/24 17:18:20
漫画版竜馬は犬に芸をしこんでいたから同じように芸を仕込んでいるかもしれん。
既にかなりの芸達者だがw


274:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/24 20:17:55
つまりベアー号を駆り、ゲッター3で大雪山颪をかますペンペンが見れる訳だな?

275:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/24 20:56:19
なら何もないのも寂しいからと言ってペンペンと何か適当なフィギュアとか乗せるケンスケなど。

276:つづき
07/10/24 22:39:17
「どう、シンジ君。エヴァにもだいぶ乗り慣れてきたみたいだけど」

 シンジが退院してから、二ヶ月が経過した。
 ところはジオフロント地下、ネルフ本部。
 その一部、実際にエヴァを用いた戦闘シミュレーションを行うためのケージ(格納庫)
の中でネルフはようやくその目的である、碇シンジのエヴァ初号機搭乗を果たしていた。
 当初は彼の性格からして拒絶がおおいに考えられたが、それよりも前にゲッターロボに
乗せられた経験からか、彼はさしたる抵抗もなくエヴァに乗り込んだ。

「ゲッターと違って体は楽ですよミサトさん。これなら僕でも、なんとか」
「……ま、アレと比べちゃいけないわね。じゃあ続き、いくわよ」
「はい。センター目標に入れて……スイッチッ」

 シンジの声と共に、ケージ内のエヴァ初号機が構えたダミーのパレットライフルを用い
て射撃の体勢に入る。
 同時にコクピット内にはCGで表示された第三新東京市の中で、目標・弾丸などのオブジ
ェが動き、疑似戦闘を行う。

 シンジは幾分か手慣れた様子で手元のトリガーを引くと、表示されたライフルの弾丸が
画面を飛んで目標に命中していく。煙幕も再現された。
 ちなみに目標は先に戦闘したシト、サキエルおよびシャムシェルを再現したものだ。
 あくまで電子上の仮想体にすぎないが、それでもエヴァで実際に戦闘してみてシンジは
その強大さがよくわかった。

(もし、竜馬さんが現れずに僕がぶっつけ本番で戦ったら、満足に動くこともできずに倒
されただろうな……)

 比較論的に、ゲッターロボがいかに凄まじいかも理解できた。
 アンビリカル(電源)ケーブルは不要なうえに、あまつさえエネルギー補給も通常動か
しているだけなら必要なく、空を自在に飛べて変形による瞬時の特性変化まで持つ。

277:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/24 22:40:22
 A.Tフィールドの様な強固な防御こそないものの、それをものともしない機動力と火力
と汎用性は、パイロットの目から見ても異常といえたほどだった。
 攻撃は最大の防御、とはよくいったものである。
 もっとも、それを兵器として扱うためには人外的な体力と根性が要るのは、先に見せた
戦闘の通りである。
 その戦闘のせいで、シンジは死にかけたのだ。

(ゲッターか……リツコさんも恐ろしい物に夢中になるな。マッドサイエンティストって
やつなのかな)

 と、シンジはちらりと窓張りになった制御室にいるリツコに目をやった。
 リツコがゲッターに掛かりきりになっているのがシンジにわかるのは、竜馬以外に唯一
ゲッターロボに乗った人間として根掘り葉掘り、その感想を聞かれたからだった。
 以後、彼女は技術開発部長としての仕事をこなしつつも、ゲッターに関する研究に没頭
しているようだった。

「シンジ君どうしたの、急にシンクロ率が低下したわよ」

 と、そんなことをシンジが考えていると初号機の状態をデータから監視していたリツコ
が異変に気づいて呼びかけてきた。
 エヴァは人間の神経中枢により直接動かされる物なので、反応がダイレクトな代わりに
パイロットの精神状態ひとつで性能が大きく上下してしまう欠点があった。

「あ、すいません……ちょっと横ごとを考えてて……」
「わからないでもないけど、今はエヴァに専念して頂戴。これも大切な仕事なのよ」
「はい」

 シンジがトリガーを引く。
 すれば、何度目かになる命中の表示が示されたのち、シトのCGは消滅した。
 設定された耐久値を上回るだけの弾丸をぶち込んだのだ。理論上は、パレットライフル
だけで勝利したことになる。
 ゲッターロボの戦闘よりも街への被害は抑えられた計算だった。

278:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/24 22:41:25
 もっとも、

「実戦じゃ、そんなに上手くはいかないんだろうけど」

 シンジは実際の戦闘を思い出し、目を閉じる。
 あらゆる可能性に対するネガティブな予想をもち、それに対する心理的備えをあらかじ
め構築しておくことも、彼の自我を守るための一手段だった。
 これは、彼のみならず多くの人間が実践する心の防衛法であろう。

「OKシンジ君。おつかれさま、上がっていいわよっ」

 シミュレーションは、終了した。
 シンジはエントリープラグから出ると、制御室のミサトとリツコに結果報告等の事務作
業を終えたのち、シャワーを浴びに退出しようと部屋を出かけたときだった。
 リツコが、シンジを引き留める。

「待ってシンジ君」
「はい?」
「ちょっとあなた用に面白いものを造ってみたの。見てくれないかしら」
「僕に……?」

 美人からのプレゼント。
 それだけ考えれば嬉しいことだったかもしれないが、リツコの考えるところの面白い物
というのは、普通の人間にとっては迷惑千万な代物である可能性が高い。
 ことゲッターに関わってからというもの、彼女の言動は不可解なことが多かった。
 ゆえにシンジは身構える。

「な、なんでしょうか」
「ちょっとロッカー室で待っててもらえる?」

 そういうと、リツコはさっさと制御室を退出してしまった。

279:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/24 22:42:30
「はやくシャワー、浴びたいのに……」

 シンジはぼやきながらも、無視すればあとで何をいわれるか分かるものではないので、
大人しく従ってロッカー室へと移動した。
 しばらく手持ち無沙汰に待っていると、やがてその手にプラグスーツを持ったリツコが
現れた。

「またせたわね」
「いえ。それで、僕に見せたいものっていうのは」
「これよ」

 ずい、と手にもったプラグスーツを前に出す。

「……プラグスーツが、どうしたんですか」
「ただのプラグスーツじゃないわ」
「え」
「これはね、プラグスーツを基にして内部圧力を自在にコントロールできる用につくった
特殊スーツなの。いってみれば、極薄の宇宙服ね。自信作よ。メットもあるの」

 得意気にいうリツコ。どうだ、といわんばかりだ。

「はあ……」

 シンジには、だからどうした、という程度の感想しかなかったが次の彼女の言葉には度
肝をぬかれることになる。

「これを着れば、あなたでも短時間ならゲッターロボの操縦に耐えることが可能よ。訓練
をつめば、あるいは乗りこなすことも不可能ではないかもしれない」
「え? それって……え?」

280:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/24 22:43:33
「あのメカは操縦者のことはなにも考えてないけれど、逆手にとれば、私は操縦者の安定
性を図る対策を考えれば、わずかでもゲッターという存在に触れられるわけ。
 もちろん科学者としては機体の改良や設計に貢献できるのが最良だけど、その領域に手
を出すにはデータが全く足りないのよ」

 リツコはうれしそうに語る。
 だが、シンジにはいわれていることが理解できない。
 いや、したくなかった。

 たしかに、むりやりゲッターに乗せられたことで、エヴァを操縦する恐怖に対する免疫
をもらったのは事実だ。
 それには感謝しつつも、死ぬような目にあったので二度と乗ることはないだろう、と思
っていたところだった。

「それを着て……どうしろと。またゲッターに乗れっていうんですか? なんで、エヴァ
に乗れば十分じゃないですか、父さんだってそれだけが望みなんでしょう!?」

 シンジの頭の中に、ジャガー号の恐怖がありありとよみがえる。
 それは、例えるなら棺桶に閉じこめられたようだった。
 母親の腕の中にいるような暖かさすら感じられるエントリープラグとは違い、ジャガー
号のコクピットは乗る者を戦場へといざなう、死の臭いで満ちていた。

 あの当時は竜馬の勢いと戦闘の激しさでそれを感じる余裕もなかったが、思い返してみ
ればその感覚は、少年には酷な体験であっただろう。
 記憶をフラッシュバックさせたシンジが激しい拒絶を示す。
 だが、リツコもあきらめない。

「おねがいシンジ君。流君は見ての通りああいう人だし、データ取りに協力してもらえそ
うなのは、あなたしかいないのよ!!」

281:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/24 22:44:46
「嫌だッ! あんな恐い思いはもうたくさんだっ。どうしてもっていうならリツコさんが
乗ればいいじゃないですか、そのスーツを着て!!」

 正論だった。
 エヴァの操縦をさせるというだけでも、その身を超えた負担を強いているのに殺人マシ
ンのゲッターにまで乗せるというのはリツコのごう慢であろう。
 だが。

「ええ……だから、私の分も既に用意してあるわ」

 そういって、リツコは着ているものをしゅるしゅると脱いでいく。
 白衣がぱさりと落ち、ブラウスとタイトミニのスカートが放られた。
 突然のことにシンジが真っ赤になって目をふさごうとしたが、しかし衣服の下に現れた
のは裸体でなくプラグスーツを身につけた肢体だった。
 シンジは、目を剥いた。

「そ、それは……」

 リツコのプラグスーツは、腰から上が紫、下が淡い青というツートンカラーになったも
のだった。
 やや、紫が青を浸食するようなグラデーションである。
 リツコが腕についた圧力調整機をいじると、通常のプラグスーツとは逆に少し膨らむよ
うに圧着する。
 もともと細身のリツコが着ているので、わずかにふくよかな感じとなり、余計に色気を
感じさせた。
 シンジが赤くなりながらも、口をへの字にまげていう。

「僕がああいうって見越して着てきたんですか。けっこう陰険なんですね」
「それは好きに想像してもらっていいわ。見ての通り、私にも覚悟はある。けれど」
「けれど……?」
「ゲッターロボは、三人乗らなければその真価を発揮できないわ。二人では、不完全」

282:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/24 22:46:00
 妖しく笑っていうリツコ。
 話していくごとに、まるで、なにかに取り憑かれているような雰囲気を増していく彼女
に、いつしかシンジは後ずさっていた。
 それに呼応して、ゆらり、とリツコも一歩を踏み出す。
 幽鬼のような動きにシンジは生理的な恐怖をもよおして呻いた。

「う、うぁぁ」
「シンジ君、怖がることはないのよ……」

 一歩シンジが後ずされば、一歩リツコが踏み出す。
 二歩、ゆらり。
 三歩、ゆらり。
 四歩、ゆらり。

 ごり、とシンジの背に壁が当たった。
 ロッカー室は狭い。退路は完全に塞がれ、前にはリツコが迫る。

「ひぃ」

 恐怖に顔を歪ませ、もはや下がれない壁にすがり、それでも下がろうとするシンジに、
リツコの腕がゆるゆるとのびていく。
 そのしなやかな手が、彼のほそい顎に触れようとしたときだった。

「なにしてんのッ!!」

 バァン、と勢いよくロッカー室のドアが開け放たれると、血相をかえたミサトが飛び込
んでくる。
 シンジの戻りがあまりにも遅いので、心配になったのだろう。
 ミサトは二人へ駆け寄った。

283:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/24 22:47:18
「ちょっとカメラで様子をみてみりゃ、リツコ!! あんたなにやってッ……」

 ぐるり、
 と、リツコが首だけをミサトにむける。
 ミサトが言葉につまった。
 別にそれが一八〇度回った、などという訳ではないが、その無機的な動きが異様な
雰囲気を醸し出していた。

「み、ミサトさぁん……リツコさんが、おかしいんです」

 涙声になったシンジが、地獄で蜘蛛の糸にすがるように助けをもとめてくる。
 それに勇気を奮い起こしたミサトは、再び激してリツコに食ってかかった

「あんたシンジ君を実験動物か何かだと思ってんの!?
 ゲッターに乗った彼がどういう目にあったか、忘れたわけじゃないでしょう!! そんな
スーツ着たって、あんなの人間が乗りこなせる代物じゃないっ」

 ミサトは機関銃のように言葉を発しながら、リツコの肩を捕まえると上下左右にゆさぶ
りかけて、正気を取り戻させようと試みる。
 だが彼女は妖しげな笑みを貼り付けたままで応じない……それどころか、逆に肩をつか
み返すと、

「ミサト。この実験に成功すればあなただってゲッターに乗れる。そう。お父さんのカタ
キを直接、討つことだって出来るかもしれないわ」

 といって、じぃっとミサトの目を覗き込んだ。
 ミサトからはリツコの目が渦巻いて見えた。
 これで二度目である。

「っ……それは」
「あなたの悲願でしょう」
「だからってシンジ君を巻き込まないで」

284:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/24 22:48:51
 口はぎゅっとつぐみ、組み合ったままリツコを睨み付ける。
 それをリツコは、ふんと鼻で笑って受け流したあと、急に真顔になっていった。

「勝手な言い分ね。エヴァならよくて、ゲッターではいけないの? どちらにしたって彼
は命の危険にさらされるのに」

 そう言い返すが、ミサトは黙って動かない。
 その姿に、言葉で丸め込むのは無理だと判断したリツコがミサトの腕をふりほどくと、
瞬時に後ろへ飛び下がって、脱ぎ捨てた白衣から拳銃を引っ張り出した。

「あッ」

 セーフティを解除してミサトへ向ける。
 条件反射的にミサトも懐の銃を取りだそうとしたが、その瞬間、彼女の頭の側を鋭い発
射音と共に弾丸がすり抜けた。
 至近距離で発射音を聞いたため、じんじんと耳の奥が痛む。
 ミサトは、ゆっくりと手を元の位置にもどしていった。

(射撃に関してはリツコより私に一日の長がある、けれど―)

 手が届きそうなほどの距離で既に抜いている相手を早撃ちで、しかも殺さずに仕留める
のは西部劇のヒーローでも困難を極めるであろう。
 ミサトは武器を言葉に託す。

「自分がなにしてるか、わかってんの!? あんたともあろうものが、なんでたかがロボッ
トのためにここまで」

 ただのロボット、という単語にリツコはびくりと反応を示す。
 まるで禁句を口にしたかのようだった。

285:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/24 22:49:57
 ―なにも知らないくせに!

 リツコはそんなことをいいたげに恐ろしいほどの怒気を発していた。
 ミサトの額に、脂汗がにじむ。

「ただのロボットだったら、これほど夢中になるものですか。
 ゲッターロボの理論をも無視した動きは、全て動力源となるゲッター線エネルギーによ
るものであることが解ったの。
 単なるエネルギーではない……その正体はまだ掴めないけれど、でも、ときどきゲッタ
ーが私にささやくのよ。解明しろ、ってね。ゲッター線が私を導いてくれる」

「リツコ、なにをいって……あんた、詰め込み過ぎで頭おかしくなってんじゃないの」
「何とでもいいなさい。けれど私の邪魔は誰にもさせない」
「くっ。だったら私が代わりになる。三人いれば良いんでしょう。だからもうこれ以上、
シンジ君を追い詰めないでよ!!」

 腹の底から魂を吹き出すような勢いでミサトが叫んだ。
 すると、それが熱に浮かされたリツコの頭脳の冷却剤となったのか、なかば狂気に取り
憑かれたかのような表情がやわらいでいく。

「……ちょっと、焦りすぎたみたい、悪い癖ね。
 ごめんなさいシンジ君、あなたを怖がらせるつもりは無かったのだけど。
 でも、せっかく造ったスーツだから……気が向いたら、着てみて。ミサトもね」

 リツコは、ゆっくり銃をおろしたのち、衣服を着直すと来た時と同じようにさっさと出
て行ってしまう。
 しかし、最後の言葉をミサトは聞き漏らさなかった。

(……私の分まで造ってある? どのみち私も乗せるつもりだったっていうの)

286:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/24 22:51:17
「み、ミサトさん」

 きつい表情になって思い詰めるミサトの顔を、シンジが心配して覗き込んだ。
 あどけないシンジの目に、はっとした彼女は急いで笑顔にもどると、つとめて明るくい
った。

「あ……シンジ君。もう大丈夫よ。リツコの奴さ、ちょっとデスクワークのやりすぎで疲
れてたみたいだから。許してあげてよ」

 リツコの行動は許されるレベルの行為ではない、味方に銃を向けてあまつさえ発砲した
のである。
 ネルフの法規なら反逆罪で処分されても文句をいうことは出来ない。

 全てのいきさつは監視カメラに記録されている。今、彼女の罪を追求して失脚させるの
は可能かもしれないが、赤木リツコを失うことはつまり、ネルフの頭脳が破壊されるのと
同義といってもいい。

 それは今後のネルフの運営を考えた時に、あまりにも大きすぎる痛手だった。
 ゆえに、この場はああでもいって納めるしかない。
 シンジもそれはわかっている。

「は、はい。じゃあ僕はシャワーを」

 と、言いかけた時だった。
 ネルフ本部全体に警報の音がけたたましく鳴り響く。
 発令内容は「シト出現、総員第一種戦闘配置」である。それを伝えるアナウンスが繰り
返し流れていった。

「あっちゃあ。よりによってこんなタイミングで来るなんて。シンジ君、悪いけどシャワ
ーは後回しよ。ケージに戻ってエヴァで待機していて」


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