エヴァの主人公が真ゲッターの竜馬だったら~参号機at EVA
エヴァの主人公が真ゲッターの竜馬だったら~参号機 - 暇つぶし2ch100:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/10 08:15:17
何を言う
新ゲの隼人だって十分にカッコイイじゃないか!






かっこいいキチガイ

101:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/10 10:58:11
キチかっこいい

102:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/10 11:34:36
新のキャラは全体的にやりすぎだ
まあ、これはこれで面白かったが

103:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/10 17:32:36
新の隼人なんか漫画版より、全然大人しいじゃないか。
漫画の隼人なんかいきなりゲロ吐くわウンコもらすわ
人質は無視するわ、あげくに弱い奴に生きる資格はねえ! と叫ぶ。

そういうキャラだぞ。
もう大好き。

104:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/10 20:34:32
大は漏らしてないぞ! 小だけだ!

105:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/10 20:48:31
がんばれムサシじゃ漏らしてなかったっけ
まあ、隼人以外も漏らしてたが

106:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/10 23:22:41
シモネタ大好きダイナミックプロ!

107:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/11 00:08:24
ところで2話の隼人と3話以降の隼人は  本  当  に同一人物だよな?

108:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/11 00:26:21
>>107
おとっつぁんそれは言わない約束でしょ…

109:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/11 00:29:11
ゲッター線に当てられちゃったんだよ
いや、ゲッター線を、と言ったほうがよろしいですかな?
特に、この場合は

110:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/11 01:01:20
何を言う、もはや目だ!耳だ!鼻!とボインスキーを隔てていた壁は崩れ落ちたのだ

111:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/11 06:11:17
それどころかゲッターロボの隼人とゲッターロボゴウ(文字でないので)が
同じと言うのも信じられん・・・約10年後とはいえ変わりすぎだろ!
そして、アークではチョッピリ、キチガイに戻ってきた気がする隼人・・・

112:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/11 07:14:46
>>111
街が破壊されようともゲッターを出撃させずメタルビーストが暴走してからやっと出撃!
なんていう司令官が気違いでないとでも?

113:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/11 07:17:56
ゲッター線に汚染された常人→キチガイに
ゲッター線に汚染されたキチガイ→正気に

ゲッター線の許容する狂気度に許容範囲があって
逸脱し過ぎた奴は補正がかかるんじゃないかと妄想した事があった

114:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/11 07:44:54
じゃゲンドウがゲッター線の洗礼受けた場合はどうなるの?

115:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/11 08:26:27
インベーダーに逆進化してしまう

116:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/11 10:50:22
ゲンドウ「ふはは…来るなら来てみろ
     貴様らなどに指一本たりとも触れさせはせんぞ
     この愛しのレイにはな」

キール、左様『補完って素晴らしいッ!』

117:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/11 17:15:26
日常への回帰か、再生のための破壊か。

118:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/12 00:04:31
ちょっとスレタイ通りに書いてみた


 ―僕には、将来の夢なんてない。いままでも、そしてこれからも。だからいつ死んで
しまったって、まったく構わない。
 そんな事をつねづね思っていたから、学校で出題された作文にそのような内容を書いた
ら、先生に怒られた。
 なんだよ。夢がないってのが、そんなに悪いことかよ?


 少年、碇シンジは揺られる列車―といっても、旧世紀のような車輪式に比べれば、こ
のリニアモーター列車の振動は少ないが―の中で、そんな事を思い浮かべながら吊革に
つかまっていた。

 碇シンジ。彼について、長々と語る必要はないと思うが、一応、書く。

 生年月日二〇〇一年六月六日。齢一四、中学生である。
 幼少時に母親を亡くしており同時に父親からは見捨てられるのも同然のあつかいを受け
たことから、極めて己のカラのなかに閉じこもる性格になった。

 本来は聡明な頭脳をもっており、物事を客観的に捉えて多角的に分析する鋭い切れ味を
もつ、いわば哲学者的な人間であるのだが、上のトラウマのせいでそれも己の中で終始す
るだけにとどまっている。

 そんな彼を乗せた列車が向かう先は、第三新東京市だった。
 二〇一五年のこの物語の中において東京、という地名がついている場所は、われわれの
住む日本でいうところの、神奈川県足柄群箱根町周辺と、長野県長野市松代町周辺のふた
つである。
 なぜ首都圏の機能が分割されて東京都から移動したか、また、第三新東京市がいかなる
機能をもった街であるのかは、この書き物を読む方はよく熟知されていると思うので、割
愛する。

119:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/12 00:06:46
 ともかく、セカンドインパクトが日本という国家の在り方を大きく変えた。
 そしてシトなる強大な存在が、人類に牙を剥き、それに対抗するために創り出された特
務機関がネルフである。
 少なくとも、表向きはそうだ。
 ネルフは、エヴァンゲリオンなる対シト用の決戦兵器を所持している。

 そのネルフが、ここ第三新東京市の地表から、地下にかけて存在しているのだ。
 少年、碇シンジはネルフの代表をつとめる父、ゲンドウに召喚されてそれまでの居住地
だった武蔵野を離れ、ここへやってきた。

 ゲンドウの目的はシンジ自身だ。
 というのも、これもよく熟知されていることだが、エヴァンゲリオンは誰にでも動かせ
るという代物ではない。
 パイロットの資格は一四歳の少年で、すでに母親を失っており、その母親の魂(と規定
される存在)が搭乗すべきエヴァンゲリオンに組み込まれていなければならない、という
極めて限定的なルールが存在する。

 シンジはその資格を満たした少年であり、ゲンドウに見いだされて呼ばれたのであるが、
当の本人がこのとき、そんな事実を知る由はなかった。
 それどころか、己を捨てた父に対する反応が乱射するように起きてしまって心の整理も
つかない状態だった。

(いまさら、なんだってんだ)

 吊革を握る拳に、わずかな力がはいった。
 ……やがて、列車は彼を降ろして走り去っていく。

 シンジは駅を出、街に降り立った。
 しかし、先ほどから妙な感覚が体から離れない。
 すれば、

「なんだ……?」

120:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/12 00:08:18
 ウアーッ、と、甲高い警報が街中にこだまする。
 つづけざまにその内容を告知するアナウンスが流れ始めた。

「緊急警報をおつたえします。本日一二時三〇分、関東中部全域に非常事態宣言が発令さ
れました。住民の方々はすみやかに地下シェルターに避難してください……繰り返します……」

 今、彼のいる第三新東京市に非常事態宣言が発令されたのだ。
 場所は、ネルフへ移る。


「正体不明の物体、海面に姿を現しました!!」
「物体、映像で確認」
「メインモニターに映像まわします!」

 ネルフ本部。その薄暗い作戦司令室は、かつてないほどの慌ただしさが満ちた空間へと
変貌していた。
 それも仕方がない。ほとんどの人間は存在こそは予感していても一度も戦ったことのな
い相手とこれから一戦交えようというのだから。
 出現した物体とは、そう。すなわち―

「一五年ぶり、ですな」
「ああ。間違いない……シトだ」

 かたわらに立つ初老の男の言葉に、机に突っ伏し掌を組んだ碇ゲンドウはみじかく息を
吸い込むと、吐くようにしていった。

「人類試練の時が、到来したのだ」


・・・

121:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/12 00:09:20
 シンジは、やかましくシェルターへ避難しろとアナウンスががなりたてる街中をゆく。
 だが、彼は避難するわけにはいかなかった。
 
「くそ、こんな時に待ち合わせだなんて」

 いつ死んでも構わない、といっても生き物の本能として死の恐怖はある。
 シンジは恐怖をのんで待ち合わせ場所に指定されている、古代ローマの円形劇場風にデ
ザインされた、駅前広場まで足をむけた。
 その名の通り円形にカッティングされた階段に、腰を下ろす。

「ちぇっ。こうなりゃヤケクソだ……けど、緊急避難だなんて。まさかまた戦争でも? 
そんなそぶりは全然かんじなかったのに」

 ぶつぶつとやる。
 辺りに誰もいないので話を聞くこともかなわず、シンジを己の憶測のみで緊急事態の内
容を予測する。
 そうでもしていないと不安をまぎらわせなかった。

 そうこうしていると、今度はキィン、と、空気をつんざくような音が轟と空から響いて
くる。
 なんだ、とシンジは頭を上げると、遠くに豆粒ほどに見えていた戦闘機があって、それ
がぐんぐんと近づいてくる。
 ついにはその機底が確認できるほどの低空へ下がって、彼の頭上を通り、いよいよ轟音
は激しくなっていく。
 その凄まじさにシンジは思わず耳をふさぐと、あっ、という間に戦闘機は消え去ってい
ってしまった。

 ほっと耳をはなした直後、今度はどこから発射されたのか、ミサイルが彼の頭上を通り
過ぎていく。また轟音が鳴る。
 ミサイルは巡航ミサイル、いわゆるトマホークである。

122:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/12 00:11:00
 そのなかでも最新に位置するタクティカルII型と呼称されるものだ。
 高性能だがコスト高ゆえに廃止された、以前のブロックIII型の性能を大きく上回り、
かつ、コストは初代タクティカル型とほぼ同じから、やや抑え気味程度という性能を誇る
ものだった。

 現時点では最強のトマホークといえる。

 これだけの装備を使用しているというだけでも、容易ならざる事態が起きている事が予
測できたが、軍事知識のないシンジにそんな事ができるはずも、また、その余裕があるは
ずもない。
 ただ、ミサイルという破壊兵器が頭上を通り過ぎる様に、目を見開いて硬直するのみで
あった。

 そしてトマホークは続けざまに三発飛来すると、箱根の山の方へむかって飛んでいく。
 やがて、ドワォッ、と爆裂して激しい轟音と振動が街を襲った。
 同時に、もうもうと立ちあがる煙の中から、巨大で奇っ怪ななにかが、ぬぅっと音もな
く山に現れる。

 それは人型をしていた。
 まるで、昔ばなしの見越入道が現実の世界にあらわれたようだった。

 薄っぺらくなった、人間の頭蓋骨を顎だけ外してモデファイしたような造形の妙なもの
が胸に張り付いていて、頭部そのものはない。
 まるで頭のない真っ黒のインナースーツに、ドクロを意匠した飾りを全身につけたよう
な妙な怪物だった。

「な、なんだよあれ……」

 シンジはぶるりと震えた。
 限りなく人型に近いのだが部分部分が異なるそれは、生理的嫌悪感をシンジの心理にも
よおす。
 ヒトは己の構造に近いモノに、愛情、あるいは恐怖を抱くのだ。

123:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/12 00:14:09
 たとえばヒトの姿を模したヌイグルミは愛らしいが、これがヒトを襲うといったホラー
映画などがよく見られるのが、良い例である。

 それに突然、それまで音信不通だった父に呼び出されたかと思えば、今度は戦争まがい
の光景を見せられ、さらには怪物を見せられたのである。
 少年には酷すぎる状況だった。
 しかし、そんなシンジにさらなる追い打ちが待っていた。

「おい」

 と、低くドスの効いた声色が彼の背中にふりかかる。

「ひぇぁっ!?」

 山に現れた怪物に気を取られているばかりだったシンジは、予期せぬ話しかけに飛び上
がって尻餅をついた。
 すぐに、ばっ、と後ろを振り向くが、さらに悲鳴があがる。
 声の主は、シンジの身長の倍はあろうかというほどの大男だった。

 その異様なまでにつり上がった目には眼光鋭く、服装はあちこち破れまくって半袖状態
になったデニムジャケットとぼろぼろのジーンズをまとった姿である。
 露出した肌は丸太のように太い筋肉で覆われていて、まるで凶悪な犯罪者を思わせるよ
うな風貌だった。
 シンジには、先ほどの怪物よりも恐ろしくみえた。

「わめくんじゃねぇ、ガキが」

 男は、尻餅をついたまますくんでしまったシンジを、そのつり上がった目でギロリと睨
みつける。
 そしてふい、と目玉だけ怪物の方へ動かした。

124:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/12 00:16:08
「あれが見えねえのか。死にたくなきゃ、ここからとっとと失せな」
「で、でも」
「死にてえなら勝手にしやがれ」

 それだけいうと、男はくるりとシンジに背を向けてどこかへ消えてしまった。

 一方、トマホークをつづけて三発も食らった怪物は、なにも感じないとわん
ばかりにゆっくりと、またぐようにして山を降りていく。
 市街にでるつもりのようだった。

「そんなっ」

 それを見てシンジが驚嘆する。ミサイル、という物がどれほどの破壊力をも
つものなのかは、近くの時代に戦争があった彼には、現代の我々よりも感覚的
に理解がしやすかったであろう。

 だが、トマホークを撃った方はもっと動揺していた。
 周辺を旋回していた戦闘機はつぎつぎと撤退していく……かなわない、と見
たのであろう。

 あわれにもその一機は進路を怪物の腕にふさがれて、そのまま爆散してしま
う。
 またしても響く轟音だったが、今度はあまりにも市街に近かったために四散
した戦闘機の破片があろうことにシンジの頭上へ降りかかってきた。

「わ、わぁああぁああ……っ!!」

 シンジはもんどりうちながら、なんとか立ち上がると破片から逃げようとす
る。だが、航空燃料の爆発エネルギーによってはじき飛ばされた破片の速度に
人間の足が勝るはずもない。
 瞬く間に頭上へせまる巨大な破片。シンジは、死を覚悟した。


125:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/12 00:19:19
とりあえずここまで。

126:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/12 07:50:22
>>125
うおお、GJ!なるほど、シンジは主人公というか読者に近い視点なのか。
名探偵ホームズにおけるワトソンみたいな。ものすごくワクワクして待ってる。

127:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/12 08:36:47
このスレでトマホークって言われてもミサイルの方思い浮かべるヤツいないんじゃないかな

128:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/12 10:13:18
ノシ
「なんで(ゲッター)トマホークが続けざまw」と一瞬wktkした

129:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/13 12:49:31
ゲッターファイナルトマホーク(星ぶった切るやつ)が続け様に・・・

130:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/13 17:06:24
使徒TUEEEEEEw
それはともかく続きまだー?

131:EVA初号機
07/10/13 19:15:16
 つづき。
 ミサイルをトマホークと記述したのは確かに解り辛かった。スマソ



 ―ああ、死ぬな。

 直前、シンジの思考を妙な冷静さが支配した。
 自分でも理解できなかった。ただ、それまで感じていた恐怖が、なぜかまったく霧散し
てしまったのだ。
 固く目をつむったシンジの視界はそのまま、永遠の暗闇に閉ざされる……はずだった。

 だが。

「……」

 いつまで経っても、意識がブラックアウトしない。
 シンジは恐る恐る目を開いてみると、赤い光が飛び込んでくる。強烈な色彩に思わず、
うっと唸ってまた目をとじかけるが、脳に喝をいれて阻止する。
 そして何が起こっているのか確かめようと、その首を天空に向けた。

「ろ、ロボット!?」

 赤い光の正体は、巨大な人型をしたロボットの掌だった。片膝をついて、腕を出し、
シンジを破片からかばうように覆っていた。
 怪物とは違って、完全に人間の姿を模している。怪物と違うのは、まるで鬼のように
巨大なツノが二本、頭に生えていることだった。
 姿だけではない。そのカラーリングも、頭部から肩にかけては真紅、丸太のような胴体
は白く、腰は黄色、手脚は白に赤のラインが走る、と地獄の鬼そのものであった。

 見ようによっては、怪物よりも凶悪に見えた。
 ロボットが、その首をシンジの方へ動かす。

132:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/13 19:19:37
注:
名前欄ミス。タイトルがEVA初号機vsゲッターロボとかいうわけではない。


 もはや起こっている事態に、脳の処理が追いつかなくなったシンジがぼけっとしている
と、その耳に先ほどのドスの効いたあの声が大音響であたりに響きわたった。

「だから邪魔だっつってんだろガキィィィ!! 今すぐ俺から一〇〇キロ離れやがれぇッ」

 無理な注文をいうロボットは、おもむろにぐわり、と立ち上がると、つぎに、

「ゲッタートマホーク!」

 と短くさけぶ。
 するとロボットの両肩、対に突起になっている箇所から突然、巨大な斧が一本ずつ現れ、
それを左右の手で勢いよく引き抜いた。
 ゲッタートマホークというのが、その名称なのだろう。
 むろん、今度はミサイルではなく本物のトマホークである。

 どう見ても肩に内蔵にするには物理的に無理がある大きさだったが、原理は不明だ。
 しかもそれどころか、
 
「トマホゥゥク! ラッシュ!!」

 ロボットは続けざまに叫びながら、手に持ったゲッタートマホークを力任せに怪物めが
けて放りなげると、さらに肩からゲッタートマホークが生えて来、それを次から次へと投
げつけていく。
 腕力、というか出力が凄まじいのか、ただ放っているのにゲッタートマホークはそれこ
そ先ほどのミサイルよりも速いのではないかと見える速度で飛んでいく。
 およそ、一〇本は連射したであろうか。

133:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/13 19:20:46
 最初の数本は、ビキッという音と共に怪物の周囲に現れた、赤い半透明の六角形に弾か
れてしまった。
 これも説明は不要だろう。A.Tフィールドである。
 このA.Tフィールドがさきのミサイルをも無力化していたのだ。
 
 だが、最後の二、三本で耐久力の限界を迎えたのであろうか。ゲッタートマホークの切
っ先がA.Tフィールドに亀裂を走らせた。
 それを確認したロボットの黄色く菱形につり上がった目が光る。
 やや姿勢を低めて、

「ゲッッターーーッ! ウィングッ!!」

 と叫ぶと同時に、背中にスーパーマンがまとう様なマントが生えてくる。
 これも原理は不明だ。

 ロボットはその場から跳ね上がるようにして怪物に向かって「発射」していった。
 数百メートルは離れていたが、瞬時に怪物に肉迫する。
 しかし弱ったといはいえA.Tフィールドはまだ健在で、密着は阻止されてしまった。
 だが、ロボットはそのまま、A.Tフィールドの亀裂に太い腕をつっこむとを掴むと力任
せに引っ張りはじめる。

「バリアごとき引っぺがしてやる! おおぉりゃぁああっ!!」

 地獄の底から響いてくるような雄叫びと共に、ロボットはその巨体を振るわせてA.Tフ
ィールドを、バキバキと引きちぎっていく。
 引きちぎったところからすかさず、もう片方の腕を突き入れると、その腕から生えてい
る回転ノコギリのようなものを勢いよく回しながら、斬りつけるようにして殴りかかって
いく。

134:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/13 19:22:54
 ぶわっ、と、どす黒く赤い血が噴き出した。
 A.Tフィールドの下は、普通の生物とそう変わらないのであろうか。
 怪物は妙な悲鳴をあげながら抵抗するが、どうやら力ではロボットが上回っているよう
だった。
 怪物はぎりぎりと掴まれ、身動きが取れない。
 そして、

「逃げんじゃねえっ」

 ロボットは怪物の細い腕を掴むと、凄まじい勢いでねじりあげていく。
 そのまま柔道の一本背負いの要領で怪物を仰向けに地面に叩きつけると、ロボットはそ
の上に馬乗りになって、これでもかといわんばかりに執拗に殴りつづける。
 一撃、二撃、三撃、四撃。
 撃ち込まれるごとに怪物からおびただしい量の血液がまき散らされていく。
 とくに、胴体の中央、赤い球体の部分へ攻撃を加えるといっそう怪物は苦しんだようだ
った。
 それに気づいたのか、

「おらァ!! てめえが有機物ならぶっ殺す! メカなら……」

 ぐわりと腕をふりあげ、

「ぶっ壊す!!」

 勢いよくハンマーを打ち付けるようにして叩きつける。
 ばきゃっ、と球体が砕けて飛散した。
 怪物は異様な痛みを感じたのだろうか、ひときわ激しくビクンと反応して跳ね起きると、
その細長い腕でロボットに巻き付くようにして密着する。

135:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/13 19:25:37
 直後、割れた球体からまばゆい光が放たれ始める。
 おそらく自爆する気であろう。
 いよいよ光が全体を包みはじめたとき、ロボットが再び叫んだ。

「オープン・ゲット!」

 その瞬間、ロボットは一瞬粘土のように形が崩れた後に三機の戦闘機(のように見える
物体)に分離して怪物の束縛を離脱すると、その上空でまた集まり、再びロボットの形に
変わる。
 物理法則もなにも無い。

 そして肩に手をやると、またしてもゲッタートマホークがにょき、と生えてくる。
 それを手にとると両手で構えて一気に怪物に向かって急降下する。
 先ほどの突撃よりも速い。
 ほぼ瞬間移動である。

「トぉドメだぁぁぁああッ!!」

 斬、と一閃。
 ゲッタートマホークは怪物を貫き大地へと突き刺さる。
 すれば、その切っ先が大地を割って穴が走りながら開いていく。

 いくつもの建築物が巻き添えになりながら、つぎつぎと倒壊していって、ごうごうと空
間が唸りはじめた頃には、すでに怪物は真っ二つに両断されて果てていた。
 後ろ下がりにロボットが離脱すると、直後に怪物はまき散らした内臓と血液を残して、
大爆発を起こす。
 その爆炎は、遠く離れた街からも見えたほどだった。

136:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/13 19:28:13
 異様な臭いと煙が立ちこめる中、浴びた返り血がボディの赤色と混じり、まだら模様に
なったロボットは一瞬、シンジの方を振り向くと、そのまま虚空へと飛んで消えてしまっ
た。
 戦闘は、終わったようだった。

「……た、助かった。でもあの声、さっきの人……?」

 そういい、ほーっと空をみつめたままのシンジ。唐突な展開の連続に脱力してしまった
ようだ。
 そんな彼に向かって一台の車が、猛速で目の前まで走ってきた。



とりあえず、ここまで。
>>128氏の発言でひらめいて
ちょっとゲッターの技を捏造したけど、寺田マジックだとでも思っておこう。

137:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/13 19:32:21
乙。
なんという力づく。これはひどいww
ウィングがマント状ということはチェンゲ版旧ゲッターかな?
文で描写されるとゲッターロボの無茶ぶりがあらためて浮き彫りになるな。EmGはゲッター出てなかったし。
GJ!

138:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/13 19:47:38
>>136
寺田マジックに吹きつつGJ。
スレタイにそって機体もパイロットもチェンゲ仕様でいいんですかね?
先が気になるけど待つことには慣れてるんでw

139:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/13 19:54:10
「黄色く菱形につり上がった目」だから新ゲッターロボ版かと思ったのは俺だけ?
ドラゴンという線もあるけどそれなら角は5本だし…

まあ、そんな些細なことはどうでも良いさ、ゲッターラッシュだしw

続きを待つのみ

140:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/13 20:02:00
新ゲの旅立った竜馬じゃないか?

141:131
07/10/13 20:08:38
なんか、またしても解りにくかったようで…
読む人がメインだから、好きな形態で想像してもらった方がいいんだけど、
一応、

・ゲッターロボは漫画基準(石川賢晩年風)デザイン、+マント
・竜馬は漫画の「真ゲッターロボ」もしくはOVA「新ゲッターロボ」準拠。

なので、それをベースに想像するといいかもしれない。
でも読む人が、こうだ、と思ったらそれが正解でいいと思う。
語りレスを失礼。
以上。

142:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/13 20:42:41
乙です
トマホーク下りでちょっと吹きつつやっぱりゲッターの無茶ぶりに燃えたw

143:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/13 21:41:55
ガンガン暴れるゲッターに、もうBIN☆BIN★DA☆ZE!

144:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/13 22:23:42
腕のシザー部分が超振動すると脳内補完した。   ところであえてブラゲってことは変形するのかな。

145:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/13 22:27:05
間違った、ブラゲじゃないってことは、だったwww

146:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/15 17:35:20
URLリンク(www.nicovideo.jp)
弁慶おとうさん! サキエルが来るよ!

147:つづき
07/10/16 00:03:22
 車種はルノー・アルピーヌA310という旧いタイプだった。
 いわゆるクーペスタイルの車だ。エンジンが車体後部に置かれているので、車室がせま
い。
 ヘッドライトが角形のものを横に六つ並べて配置してあり、顔が特徴的だった。

 エンジンはV型六気筒の排気量二七〇〇cc、一五〇馬力……だったが、時代に合わせた
改造で原動機はモーターとなっている。
 残念ながら、その出力は不明。

 その場で急ハンドルを切って車体を横滑りさせると、シンジの真横にキュッとついて停車した。
 すぐにボンッ、とドアが開かれる。旧い高級車特有の重い音だ。

「シンジ君!!」

 叫びながら車から躍り出たのは、赤いジャケットに身を包んだ女、葛城ミサトである。
 生年月日一九八六年、一二月八日。二九歳。
 特務機関ネルフ戦術作戦部作戦局第一課課長をつとめ、同時に作戦本部長も兼任している。
 いわば、ネルフの戦闘部隊長といったところだった。
 階級は三佐。

 性格はあっけらかんと明るく、誰と接するにも笑顔を絶やさない。
 また酒を好み、昼間から瓶を煽る癖があるところからは、一見すると豪放らい落に見え
たが、そのじつ緻密な論理的思考を組み立てることのできる人間である。
 策略家であった。
 が、それは彼女を形作る表面の一部にすぎない。

 その本当の姿はゼリーのような壊れやすい心と、その奥に成熟しきらない幼稚な部分を
多く残した人間である。
 逆に、それが彼女に人間的魅力を生み出しているともいえたのだが……。
 ともあれネルフの作戦部長として、シンジを彼女は迎えにきた。

148:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/16 00:04:57
 作戦部長みずからが、わざわざ出迎えにくるというのだからシンジがいかにネルフにと
って重要な存在であるかが伺える。
 ただの少年風情に、これほど上級のポストが出向くことは普通は、無い。

「あああ、無事でよかったわ……遅れてゴメンね。さぁはやく乗って」
「は、はい」

 シンジが乗り込むと、ミサトは彼がシートベルトを締めようとしている間にすでにアク
セルを煽り車を急発進させる。
 急加速の重圧にうわっとシンジが声をあげて、あわててベルトを締めた。

「か、葛城さんっ、安全運転してくださいよっ」
「ん~ミサトでいいわよ」
「そうじゃなくって……」
「それよりシンジ君、あなた、さっきのロボットに話しかけられてたわね」
「え?」
「え、じゃなくて。さっきの赤いロボットのことよ。あれ……知り合い?」

 ミサトは急に声色を低くし、しかし頭は前を向いたまま前進しつづける。
 運転中がゆえにシンジの側を向いてこそはいないものの、嘘をつけば承知しないぞ、と
いう文字がその横顔に張り付いていた。

 命の危機にさらされてやっと一息つけたところで、詰問めいた問答をされてシンジは内
心ムッとしたが、初対面で、しかも年上の人間に逆らうほどの気概を彼は持ち合わせてい
ない。
 正直に、

「知りませんよ、あんなの。けど、僕が待ち合わせていたら後ろから話しかけてきた男の
人の声とはそっくりでした」

149:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/16 00:06:02
 と、答えた。
 偽りのない言葉を喋るとき、どんなにコミュニケーションが苦手な人間でも、その態度
は堂々としてくるものだ。
 それはシンジとて例外ではなかった。

(なるほど……とすると、やっぱり正体不明って事ね。やれやれ、使徒だけでも頭が痛い
のに余計なモンが現れてくれるわ。
 ただシンジ君と話したってことは、また接触しに来る可能性はあるかも)

 ミサトはそう心の中で毒づくが、つぎにシンジに振り向いた時にはそんな様子はおくび
にも出さずに、ふっと明るくはじけた様な笑顔になっていた。

「……避難命令も出ているのに、外をほっつき歩くなんて怪しいわね。シンジ君、覚えて
いるだけでいいからその男の外見を教えてくれないかしら」
「み、ミサトさん。前見て、前見て運転してください……」
「あっとゴメン」

 一息。
 シンジはふむ、と車の天井を見上げると、先ほど自分に話しかけてきた人相の悪い男の
事を思いつくままに話す。
 それにミサトはいちいち頷きながら聞いていたが、やがて話が終わると一言
「ありがとう」とだけいうと、ウインクを最後にあとは沈黙した。
 得た情報を自分なりに咀嚼しようとしているのだろう。

 シンジにもそれが見て取れたので、あとは何も話しかけずに黙ってフロントガラスの向
こう側を見つめているのだった。
 やがて、車は街を抜けるとネルフの本部までへとたどり着いた。
 車両用の通路を抜けて、ターンテーブルのあるブロックまでたどり着くとその上に停車
する。
 ここから、一気に地下へと駆け下りていく。
 ネルフは地下要塞ともいえる施設であった。

150:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/16 00:08:53
・・・


「碇君……ありゃあ、一体なんだね!? 我々国連の力がシトに及ばないのはよく解った…
…が、あれも君の新兵器ではあるまい。見たかあの威力を。今回はシトを撃滅してくれた。
しかしだ。もしあれが我々人類の敵になるとすれば、それこそ世界は終わりだぞ!」

 ネルフ本部。
 その薄暗い地下で、国連軍の制服に身を包んだ老人ががむしゃらにわめき立てている。
 というのも先ほど現れた赤いロボットが原因だった。

 さて。ここから、怪物をその正式な名称であるシトと呼称する。
 シトはのもつA.Tフィールドは、タクティカル型ミサイルの直撃を受けても無傷で、悪
あがきで使うつもりでいたN2地雷(核兵器並の威力を有する爆弾、とされる)をもってし
ても、シミュレーションでは足止め程度の効果しか期待できないことが予測されていた。

 それを、ほとんど数分の内に屠殺するかのような勢いで葬ってしまった赤いロボットは
彼らの目には救世主というよりも、悪鬼羅刹のように映った。
 その、鬼をほうふつとさせる外見もイメージの形成に手伝ったであろう。
 老人のわめきを背にする碇ゲンドウは、それでもなお無言で立ちつくしていた。
 やがて、ゆっくりと眼鏡のズレを直しに手を顔にやる。

 碇ゲンドウ。
 生年月日、一九六七年四月二九日生。齢四八。
 この物語における世界を一変させた大異変・セカンドインパクト以前における彼の動向
は謎に包まれているが、なにかしら目的をもって研究等に打ち込んでいたとされている。
 このときの旧姓は六分儀であり、その後、碇ユイという女性と出会い結ばれ、碇性とな
った。この二人の間に生まれたのがシンジである。
 後に彼女とは死別している。

151:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/16 00:09:59
 彼は、このユイという女性には半ば偏執的なまでの愛情を示しており、それを失う事で
巨大な衝撃をうけたのは想像に難くない。
 彼女を失ったあとの彼の生き様は、あたかもこのユイを探し求めるかのようであったと
いう。

 現在はネルフの総司令役として動いており、その目的は表はシトの撃退、裏は後に語る
人類補完計画の遂行、とされている。
 だが、その本質はエヴァンゲリオンという存在に碇ユイの魂が組み込まれているところ
からも、実際は、極めて私的な感情による行動であるとも考えられよう。
 要するに彼の目的は、碇ユイの復活そして邂逅、であった。
 だが、そのことを知っている者は居らず、感づいていたとしてもごくわずかである。

 それというのも、

「ご心配なく……そういう事のためにも存在するのが、ネルフです」

 と、不敵にいうこの男は、その心の本質な弱さを隠そうとするためか、必要以上に冷徹
に振る舞うくせがあった。
 息子同様、物事を天から洞察して動かす能力があり、熟慮もし、同時に英断も辞さない
と英雄の要素はあったが、言葉に遠慮がなく切れすぎるのだ。

 カミソリのような彼の言葉は、正確無比であるが対する人間のこころを容易に切り裂い
てしまい、そのため無用の憎悪を抱かせてしまう。

 我々の世界での例になるが、碇ゲンドウの真逆に位置する歴史的人物を探せば、日本な
ら幕末時代の西郷隆盛が挙げられるだろう。
 彼は、その政治的能力は他の一流の志士たちに対して劣るところがあったものの、人の
こころを捉える、という点においては無類の凄みをみせた。

152:ここまで
07/10/16 00:11:24
 彼の信念の底に通っていたものは種々であるが、大きいものを取り上げるならば、巨大
なまでの「愛」であり、それを自他共に許容する「こころ」であった。
 このため、多くの志士が彼の言葉・動きに胸を打たれることになる。

「西郷どんのためならば命も要らぬ」

 と。
 そしていよいよ最後は熱狂的な信徒たちの手によって、西南戦争が引き起こされること
になったのは、よく知られていることだろう。
 それが、西郷が賊将とされてなお英雄の名を轟かせた要因の一部である。

 話がそれたが、ともかく、ゲンドウの弱点は人のこころ、というものの扱いが極めて苦
手なことであった。
 その苦手さたるや、息子のシンジよりも酷かった。
 それを補おうと必要以上に冷たく振る舞う彼に、根から付き従う人間は、だれもいなく
なってしまう。
 自分の能力ひとつを武器に世の中と渡り合うしかない。不器用なのである。
 能力はあるのに、英雄にはなりきれない。

 ユイはその彼のヴェールを見抜き、奥底の心に気づいたからこそ彼と婚姻を結ぶまでに
至ったのであるが、ほとんどの人間にそこまでの感や洞察力を求めるのは、わがままが過
ぎるというものであろう。
 もっともゲンドウ自身、あえて語りたくないところを語ってまで、自分を表現したくは
なかったのかもしれないが。
 彼は孤独だった。


・・・

153:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/16 01:25:41


154:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/16 01:59:13
エヴァと司馬は語感が似てるが合わないことがわかった乙。

155:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/16 05:14:41
乙そしてwktk

156:つづき
07/10/16 15:43:30
「ミサトさん……」
「なに」
「父さん、いえ父は、なんのために僕を呼んだんですか。もう、忘れられていると思って
たのに」
「それは―直接会って、聞いたほうがいいわね」

 ターンテーブルエレベーターに乗り、トンネルをぬけて直接地下へ向かう車の中で、二
人はそんなやりとりを交わしていた。
 びゅん、と過ぎ去っていく天井を見つめながらシンジは「これから父のところへ行くの
か」という問うた。
 ミサトは「そうだ」と、いうと、あとにこんな一言をつけくわえた。

「苦手なのね、お父さんのこと」

 その言葉に、シンジはしばらく反応を見せなかったが、やがてゆっくりと目をつむると
つぶやくようにいった。

「会ったって……ぎくしゃくするだけなのが、わかっていますから」

 その瞬間、エレベーターはトンネルを抜ける。
 突如として封鎖された空間から、ただっ広い大空間が目の前にぶわりと広がる。
 まるで、この世とはもうひとつの別の世界がそこにあるかのようであった。
 その別世界に迷い込んだような感覚に、一時的な開放感を得たシンジはつい先とはうっ
てかわって明るめの声をあげる。

「すごい。本物のジオフロントだ」
「そう。ぶっちゃけ、ネルフ警備隊秘密基地ってところね。ここは人類存亡の砦となる場所」

 車を乗せたエレベーターはどんどん進み、終点へと向かっていく。

157:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/16 15:44:34
 だが、その途中で空間に響き渡るような大音響で、警報が鳴りはじめた。
 地上で一度、すでに避難警報は出され、それも解除されている。
 すれば、この日二度目の警報は何を意味するのか。

 ところは、ネルフ作戦司令室に移る。

「正体不明機、ジオフロント地表に接近!!」

 広大な司令室の、ひときわ巨大なメインモニターに、さきほどシトを葬った赤いロボッ
トが再び街に現れて、しかもネルフ本部に急接近している姿をはっきりと映していた。
 司令室全体に不安の色が広がっていく。
 たとえシトを倒してくれた、という行動があったにせよ、まったくネルフ側があずかり
知らぬ存在である。

 あのロボットが、今度はその標的を自分たちに変えないとは誰にも断定できなかった。
 国連の人間たちはすでに用済みとなり、退散している。
 あとは自分たちでなんとかするしかないのだ。
 そんな中、碇ゲンドウは相変わらず椅子に座って机に突っ伏しながら、考え事をしてい
るようだった。
 その姿が悠長にみえたのか、後ろから補佐の冬月コウゾウが近づいて是非を問う。

「どうするんだ、碇」
「初号機を、起動させる」
「迎撃する気か? まだ敵と決まったわけではないぞ」
「あれは、我々のシナリオには無い存在だ……ゲストに用はない。ご退場願う」

 ゲンドウの指令が飛び、瞬く間にエヴァンゲリオン初号機(以下、初号機)が発進用意
に入る。
 地下のジオフロントから超高速エレベーターによってエヴァ初号機が、地上に吐き出さ
れた。
 目標は正体不明の赤いロボットの撃滅だ。

158:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/16 15:52:46
 エヴァ初号機のパイロットは蒼い髪の少女、綾波レイである。彼女に関する詳細は後述
するが、今、彼女はその全身に大きなダメージを抱えていた。
 本来ならば、戦闘に出られる状態ではない。
 だが、ゲンドウは躊躇しない。
 今この場での目的はネルフの任務遂行上、邪魔になる者の排除だった。

 初号機が地上に出た時、すでに赤いロボットはその真上にまで達していた。
 すかさず初号機が手にもったパレット・ライフル―巨大劣化ウラン弾を使用する超・
重機関砲―を空へ向けると、一気に弾をばらまいていく。
 銃撃と廃莢の二つの轟音が街に響いた。

 銃撃を受けたロボットは回避をすると思われたが、その予想を裏切って背中から生えて
いるマントをボディの全身をくるむようにしてまとい頭だけ露出した形になると、そのま
ま初号機につっこんできた。
 マントがバリアの役目を果たしているのか。
 劣化ウラン弾は命中しても弾かれるだけで、しかも爆煙があがるせいでカムフラージュ
の手助けをしてしまう。

 その爆煙を突き抜けて、ロボットが叫んだ。赤色の光線が、マントにくるまれた体中から
発射されると初号機におそいかかる。
 命中した光線が、A.Tフィールドを一時的に無効化する。
 A.Tフィールドを破ったのではない。消えてしまったのだ。

「俺の邪魔をするんじゃねぇ!!」

 そのまま巨大な弾丸となった赤いロボットが、初号機にぶち当たる。
 A.Tフィールドを

 ぐわん、と凄まじい衝撃が走り吹っ飛ばされた初号機は、背後にあったビルの一群を爆
散させながら大地にはり倒されたところで、やっと止まった。

159:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/16 15:53:49
「ぐ、ぐぅぅ……!!」

 コクピット内のレイが激痛のあまりに呻く。
 エヴァンゲリオンは、操縦に直接人間の神経を用いるために機体がうけたダメージの衝
撃の感覚だけが、そのまま人体に加わってしまう欠点があった。
 くわえて、この大けがである。レイに次の行動をエヴァに取らせる余裕は、もうなかった。
 初号機を吹っ飛ばしたロボットは地上に降り立つと、マントを引っ込めて腕を組み、仁
王立ちの構えをとった。

「小娘はすっこんでやがれっ。おい、地下にこもってる人間トカゲ共、聞こえるか!?」

 ロボットが、エヴァとネルフ地下、ジオフロントの存在を既知していてそれを指摘して
きた。
 作戦司令室に動揺がはしる。
 ロボットは続けた。

「俺は敵じゃねえ!! だが、また攻撃しやがったら今度は全員まとめてぶっ殺す!!」

 ロボットは、仁王立ちして怒気をはらんだ声で、本当にジオフロントまで届くだけの大
音響で上記の言葉を絶叫していた。
 あまりの音圧に、周囲の接近した構造物の表面がビリビリと震え、すでに亀裂に走って
いたものはわずかに割れるほどだった。
 もし人間が側にいたら間違いなく鼓膜が破られていたであろう。

「碇……」

 作戦司令室。
 ゲンドウの側に立った冬月が、脂汗をにじませて呻くようにいった。
 あまり刺激するな、ということであろう。
 その威力はさきほど見せつけられたばかりである。

160:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/16 15:54:55
「仕方があるまい……我々の事をそこまで知っているとは、気に掛かる。話ぐらいは、聞
こう。回線を開け。あの大声を止めさせるんだ」

 と、ゲンドウの指令が飛ぶとすぐにロボットにコンタクトが取られた。
 幸いにしてロボット側も、こちら側と同等の通信機器を内蔵しているようでメインモニ
ターにぱっ、と人の顔が映るのだった。
 ロボットはどうやら人間が操縦する機械であって、シトのように自立した存在ではなか
ったようだ。
 それを見て、ネルフ職員にふっと安穏の吐息が漏れる。
 こうも、人というのは外見でモノを判別してしまうものなのだろうか。
 ただ……その中において、ひとりだけ異なる反応を示す者がいた。

「い、ひぃッ……」

 と、悲鳴をあげたのはオペレーターのひとり、伊吹マヤだ。
 物静かだが、病的な潔癖のある女で、とかくグロテスクなもの、暴力的なものを極度に
嫌った。
 モニターに映ったのは、そんな彼女が苦手とする、般若面のように恐ろしい表情をした
男だったのだ。
 じっさいは鼻筋は通って線もするどく、醜いどころか美形の類に入るのだったが、とに
かく目つきが凶悪すぎた。
 その男が、低い声色でふたたび語りはじめる。

「俺は流竜馬ってモンだ。おめえらには、ちっと用があってここまで来た。要求がある…
…今、おめえらのトコにさっきの白い服着たガキがいるはずだ。そいつに会わせな」

 ロボットは腕を組んだまま、なおも仁王立ちしていた。

「司令……あんなこといってますが、どうします」
「要求をのまなければ、ここら一体をチリと化するといわんばかりだな。いいだろう……
言葉が通じんシトよりはマシだ。初号機を回収させろ」

161:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/16 15:56:02
・・・


 その後、赤いロボットを降りた男、流竜馬はネルフの案内に従ってジオフロントに降り
立った。

「ここが―テメエらの秘密基地か。で、ガキはどこに居んだ」
「そう急がないでほしいものね。これだけ広いのよ」

 竜馬を道案内するのは、ネルフの頭脳ともいえる技術開発部技術庁の赤木リツコだ。
 生年月日、一九八五年一一月二一日、三〇歳。
 女ながらに背は高く、また美人である。白衣を着ていたが、その下に身につけている服
装は身体のラインにぴたりと沿ったもので、そのグラマラスな体型ともあいまって匂うよ
うな色気を感じさせた。

 が、それよりも重要なのはわずか三〇歳という若さで、彼女がネルフの技術部の長をつ
とめているということだ。
 国連軍でさえも扱えないようなエヴァンゲリオンをはじめとする、特殊技術のかたまり
の数々を容易に扱うことからも、彼女がいわば天才的な感覚をもっていることがわかる。

 しかしそれでいて不思議なのは、これほど人員の揃っているネルフという組織において
彼女が何でも屋的な役割をこなすことだった。
 プライドも決して低くない彼女が、その役割に不満を漏らさずにいるのは謎であったが
ともかく、彼女はそういった経緯で竜馬の案内役となっていた。

 いや……ひとつ、危険な役を買って出た理由があった。

「ねえ、流さん、だったわね。ちょっと聞いていいかしら」
「なんだ」

162:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/16 15:57:04
「あの、赤いロボットのことだけど……」
「ゲッターロボなら、テメエらにどうこう出来る代物じゃねえぜ。間違っても破壊しよう
なんざ思わねえこった」

「そんな事は聞いてないの。あれは……あれはゲッターロボっていうのね!? 
 あんな無茶苦茶なメカを、私は今まで見たことがない!! 凄い!
 触ってみたい。動かしてみたいバラしてみたいッ!!
 いいわ、あなたの用件が終わってからでいいから。ちょっと詳しくゲッターロボについ
て聞かせて頂戴!!」
「な、てめえっ!? うお、敷島のジジィみてえな顔してくっつくんじゃねえっ」

 彼女、赤木リツコには多少なりともマッドサイエンティストの血があった。
 本来はもっとクールな振る舞いをする女なのだが、今は未知の技術を目の当たりにした
ことでその血を抑えきれないようだった。
 やがて、いくつかの通路の抜けた後にやっと作戦司令室にたどり着いた。

「碇司令、流氏をお連れしました」
「……ずいぶんと遅かったな」
「なにせ危険だと思いましたので、注意しながら」

 ふとゲンドウがリツコの隣の竜馬を見やると、なぜか疲労したような顔でこちらを睨ん
でいた。
 ゲンドウはそれを見て、まばたきをひとつするのだった。

「まあ、いい。わかった……」
「おう……おめえがここのボスだな。さっさとガキに会わせてもらおうかい」
「そうだ。私がネルフ総司令、碇ゲンドウだ……君の目的の人物は、今にくる」

 ゲンドウがそういうと、ちょうどのタイミングでまた司令室の扉が開かれた。

163:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/16 15:58:22
 薄暗い部屋に通路の明かりがわずかに差し込むと、その逆光の中からミサトに連れられ
たシンジが現れる。
 二人とも、肩で息をしていた。
 ゲッターロボと初号機が激突した振動が地下まで響いたのを感じて、ここまで走ってき
たのであろうが、それにしても息の上がり方が尋常でない。
 まるで、フルマラソンのあとのランナーのようだった。
 道に迷ったのであろう。ミサト自身も、まだネルフの施設になれてはいなかった。

「い……碇司令っ。外で、また、戦闘があった、みたいですが、これは、どういう―!?」

 切れ切れの言葉で状況を把握しようとしたミサトだったが、最後まで言い切る前に部屋
の人間の中に、見慣れない顔がある事に気づく。
 ものすごい太い眉毛と、三角の目が天を突かんばかりにつり上がった、凶悪な人相をし
た男が、目の前にいる。

「あ、あなた……誰?」
「葛城一尉、しばらく君は黙っていろ。場が落ち着いたら説明する」

 状況を飲み込めず、目を白黒させるミサトにゲンドウがしかめっ面をすると、苦い声で
いった。
 明らかに不機嫌でいるのがわかる。
 およそ特殊な事態でもない限り、感情を表に出さないゲンドウが怒っているのを見て、
ミサトは覇気を無くしてしまった。
 それほどまでに珍しいことだった。ゲンドウが感情を露わにするというのは。

「は、はっ……」

 ミサトが従って下がった。
 それに頷くと、今度はミサトの隣で息も絶え絶えになっているシンジに顔をむけた。

164:ここまで
07/10/16 16:07:26
 シンジは動くのも辛そうだったが、久々の父親との再会に複雑な表情をつくる。
 しばし沈黙の時が流れたが、やがてゲンドウは口を開いた。

「久しぶりだな、シンジ」
「父さん。今更、僕に何のようがあって……」
「本来ならそれを今から説明する予定だったが……事情が変わった。おまえの知り合いが
来ている」
「知り合いって、まさか……」

 わざと、目をあわせないようにしていたシンジだったが、そうまで言われてはもはや知
らんフリはしていられない。
 ゆっくりとなるべく、時間をかけるようにして首を回していく。
 その先には、

「おうガキぃ。生きてたか、手間ぁかけさせやがって」
「あなたは、さっきの……」
「そうだ。俺は流竜馬だ。ガキ、いや、碇シンジ。てめえに用があって来た!」
「な、なんで僕の名前を」
「んな事どうでもいいだろう。それよりも―」

 竜馬はそこまで言いかけたが、突然、オペレーターの青葉シゲルが監視していたレーダ
ーに異変を察知したらしく会話を中断させるように大きな声を出した。

「取り込み中すみません!! レーダーに反応が! パターン青、シトですっ。
 またシトが出現しました! 位置、駿河湾海上……こちら急接近しています!!」


どうでもいいわけねーだろといわれる前にツッコんでおく。
あと、次回からアップローダを使うので本来の雑談に優しい仕様に大変化。

165:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/16 19:01:11
GJ
やはりゲッターは濃い……エヴァが薄いというわけじゃないが、塗りつぶしていくタイプの濃さだ。
それにゲッター側が知られてなくて竜馬がネルフを知ってるってのも新鮮な展開。
竜馬の目的は果たして一体?早乙女やゲッターチームは?

166:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/16 19:09:37
乙です!
でも続きが上がるたびにまたその続きが気になってどうしようもないw
大変とは思いますが毎回めちゃめちゃ楽しみにしてますぜ!

それにしても竜馬を疲れさすリツコさんすげえ
最強だw

167:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/16 23:31:19
乙!
でもこのスレ元々小説書く人を待ってるスレだったんで、
そのままここに直接投下でもいい気がするがw

168:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/17 01:10:28
乙!
直接投下の方が携帯厨の俺としては助かるんだぜ(´・ω・)

169:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/17 03:18:57
雑談も小説の合間にやってたしね。こっちでもいいと思うぜ

170:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/17 13:44:05
使徒が連続で現れるとは…

171:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/17 20:38:02
ゲッター線は人類以外を否定する傾向にあるんだよな
で、黒き月リリスの末裔の人間と白き月アダムの末裔の使徒は発祥が違うから・・・使徒も本気出さないとやばい。本気出してもやばい
最悪、第1始祖民族はエンペラーに滅ぼされていそうだ

172:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/17 20:46:37
>>171
第3次スーパーロボット大戦αですな。滅亡に傾くイデ=第一始祖民族
人類の味方になることを選ぶゲッター線、そして判断に迷うビムラー…

173:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/17 21:37:47
この流れなら言える




イデオン放送の頃、ハルル様を女王様とお呼びしていた


174:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/17 23:17:57
>ちょっとゲッターの技を捏造したけど
真ゲッターで真ドラゴン相手に似たようなことやってるし捏造って程ではないかと。
確か、その時言った言葉は「トマホークランサー」だったと思うが。

175:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/18 00:16:16
>>173
そんな事を力説されても、その…困る

176:つづき
07/10/19 01:16:45
携帯の人のことを完全に考えてなかった。すまんです。


「なんだと!?」

 もっともはじめに反応して叫んだのは、いままで黙ってゲンドウの後ろについていた冬
月だった。
 細いその目を大きく見開かせて「ばかな、こんなシナリオはあり得ん」と、ひとり言を
ぶつぶつとやっている。

「ちっ! 邪魔が入ったか、しつけえ野郎だぜ!!」

 すれば竜馬はざわめく部屋をきびすを返し、真っ先に飛びだそうとする。
 言葉は上のとおりだが、心なしかその表情には愉悦の感情が浮かび上がっていた。
 戦うのが楽しくて仕方がない、といった風情だった。

 だが、それを快く思わないゲンドウが竜馬の行動を咎める。 
 当たり前のことだ。機密が満載のネルフ内部を、素性もわからぬ人間に動き回られたら
なにが起こるかわかったものではない。
 スパイの可能性もあるのだから。

「流竜馬。勝手に動くな」

 ゲンドウは低くいった。
 だが、竜馬はそれよりも低い声で応じる。

「あぁ? 俺に命令するんじゃねえ」
「動くなといっている」

177:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/19 01:17:45
 言葉ではなんともならぬと思ったのか、ゲンドウは懐から拳銃を取り出す。セーフティ
は解除され、いつでも発射できる用意であった。
 作戦司令室に一瞬で静寂がもどった。
 緊張した空気が流れる。

 だが、竜馬はそれをみて恐れるどころか、嬉しそうに口の両端を、その目と同じように
にんまりと天へつり上げていった。

「……ヘッ。やってみろよオッサン」
「二度はいわんぞ」
「上等だ!!」

 その叫びと共に、ドワッと銃口が火を噴いた。
 誰もが、竜馬が撃たれた、と思った瞬間だった。
 ほんの数メートルの距離で拳銃の弾丸を避けられる人間など、存在するはずがない。
 だが。

「なに!?」

 ゲンドウが目を見開く。竜馬が、いまその瞬間までいた場所にいない。
 次の瞬間で、ザッと

「遅えってんだよッ」

 竜馬がゲンドウの後ろに天井から落ちてきた。
 ゲンドウの居る場所は、作戦司令室の中でも最も高い位置になっているところだった。
 目測でも成人の数人分はありそうな高さである。
 竜馬は、一瞬でさらにその上の天井まで移動してしまったことになる。
 人間業ではない。

178:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/19 01:18:58
「ぐあっ!」

 竜馬はすぐさまゲンドウの腕を、最初のシトにやったのと同じように掴んでねじりあげ
ると、銃を強奪する。
 そしてそのまま下へ投げ飛ばしてしまった。
 ゲンドウはシンジのいた方向に落とされ、彼に抱きとめられる形で崩れ落ちる。

「と、父さん……」
「ぐ……貴様、た、ただではすまんぞ」

 その言葉と同時に、入り口からSPと思われる黒服に身を包んだ男たちが数人乱入してきた。
 彼らは迷いなく竜馬へ銃を向けると、一斉に発射しはじめる。
 職員たちの悲鳴が上がる。
 伏せる者、かばう者、逃げまどう者、様々だった。
 職員たちには戦闘訓練の施されていないことがよくわかる。

 だが、竜馬は―

「雑魚どもはすっこんでろ!!」

 激高して手にもった銃をブンとSPの一人に投げつける。まるで、ゲッタートマホークを
投げたようだった。
 その速度が凄まじく投げつけられたSPが避けきれない。鉄の塊を頭に直撃されて、
その場にどう、と倒れ伏した。
 その衝撃で暴発した弾丸が運悪くそのSPの頭部を撃ち抜いてしまう。

「ぎゃっ」

 血液と共に脳髄がわずかに飛び出る。
 即死であった。

179:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/19 01:20:00
 その隙をついて、竜馬は残ったSPの元へ走り、一人の顔面に正拳突きを喰らわせると飛
び上がってもう一人には鋭い蹴りを放つ。
 血しぶきが飛び散った。
 そして、

「おらァ!!」
「ぎゃあッ」

 と、最後の一人に強烈な頭突きをかまして昏倒させてしまう。
 竜馬は瞬く間にSPを全て倒してしまったのだ。
 職員全員が、その漫画のような光景にシトの事もしばし忘れて唖然としていた。

 その中を竜馬は走り、父を抱きとめるシンジの腕をつかむ。
 ゲンドウが支えを失ってずり落ちた。
 シンジがああっ、というが相手にならず、

「いくぜシンジ、出撃だ!!」
「く……しゅ、出撃って、な、なんなんだよ!」

 言葉が荒くなる。さすがに、シンジも目の前で肉親に暴力を働かれて感情が高ぶりを隠
すことができなかったのだ。
 まだ、彼が心の奥底から父親を憎み切れてはいない証拠だろう。
 だが竜馬はそんなことを気遣うような男ではない。

「敵が来たなら、ぶっ潰すに決まってんだろ。てめえもゲッターに乗るんだよ!!」
「ゲッターって、あ、あのロボット? あんた一人でやれよ、なんで僕が……」
「うるせぇ!! どっちみちてめえはエヴァとかってのに乗らなきゃなんねーんだ。だが、
 あれにはいつでも乗れる。今は、おめえを記憶させなきゃならねえ。ゲッターに!!」
「なに訳の分かんないこと……」
「いいから来いッ」
「うわあっ! 放せ、放せよぉ!!」

180:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/19 01:21:41
 シンジは人さらいに抵抗するかのごとくもがいたが、竜馬の怪力の前には赤子も同然……
いや、それ以下だった。
 糸でも扱われるかのように、シンジはずるずると引きずられながら作戦司令室を退出し
ていく。
 後に残された人間は、唖然とするしかなかった。
 やがて、真っ先に気を取り戻したのはレーダーの光にシトの接近を警告された青葉シゲルである。

「し……シト、なおも接近!! すでに第三新東京市内に侵入していますッ」

 その言葉に部屋にいた人間すべてが現在の状況を跳ね起きるように思い出し、
ぱっと散って個々の持ち場に戻っていく。
 そして冬月とリツコに支えられて、立ちあがったゲンドウがうめきながらも指令を
飛ばしはじめた。
 だが、

「肝心のパイロットが、さらわれてはな……」

 冬月が苦しげにつぶやいた。
 その通りである。あくまでシトに対抗できるのはエヴァであり、そのほかの兵装などは
エヴァをサポートする存在に過ぎない。
 それだけでシトと戦闘をするなどというのは、紙の上に描いた餅のような事だった。

 ゲンドウも苦々しげにつぶやいた。

「レイはもはや戦闘には耐えん。このうえは……」
「あのゲッターとかいうのに頼るしか、なさそうですね」

 次の言葉をいいよどんだゲンドウの言葉を継いだのはミサトだった。
 どうやら、事態をしばらく観察していることで起きた事をある程度察知してしまったらしい。

181:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/19 01:22:55
「全職員に通達だ。流竜馬の進路を開けさせろ。……葛城一尉。君はものわかりが良くて
助かる。私は、さきほどの暴力で声を出すのが苦しい。この場の全指揮を任せる」
「解りました。しかし、なぜあの男はシンジ君を……」
「……」

 ゲンドウはその質問には答えず、冬月とリツコの腕を離れると、よろよろと高台の席
へと戻るのだった。


・・・


「おっしゃァッ。おめぇはジャガー号に乗れっ」
「じゃ、ジャガー号ってなんですか」
「胴体の白い部分だ。そこのハッチを開きゃあ、レバーがある。引けば中に入れる」
「無理ですよあんな高いところ!!」

 と、押し問答をするのは作戦司令室から台風のような勢いで去っていった竜馬とシンジ
の二人だった。
 さきほどは怒りで普段みないような言葉づかいをしていたシンジだったが、すでに竜馬
に引きずり回されて、地上へ這い出る頃にはそれも消え失せていた。
 竜馬はジオフロント入り口の近くにそびえたつゲッターロボを指さし、そのちょうど腹
に当たる部分によじ登れ、とシンジにいう。

 無理である。

 ゲッターロボの全長は、四〇メートル弱ほどはあるように見えた。エヴァとほぼ同程度
の大きさである。
 足をかける場所さえまともにない、そんな巨大なものによじ登るなどは、たとえとび職
の人間をもってしても至難の業であっただろう。

182:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/19 01:23:59
 が、竜馬はとにかくそういったことを意に介さない。
 シンジが絶対に無理だとわめきたてると、やっと、

「ちっ、しょうがねぇな」

 と一言いったのちに、小脇にシンジを抱えて持った。

「うおッ!」

 竜馬は叫び、ぐっ、と膝に力を込めると伸ばし、ぶわりと跳躍する。
 ちょうどゲッターロボの膝のあたりまで跳んで突起になっている部分に捕まると、あと
は片腕でもってぐいぐいと腹の部分までよじ登っていく。
 そしてちょうどレバーのあるところまでたどり着くと、レバーの格納されているハッチ
を開いてそれを力任せに引いた。

 すればブシュ、とエアーが噴出される音と共にジャガー号のコクピットハッチが開け放
たれる。
 その内部は案外に簡素で、シートに数本のレバーとモニタがあるだけのものだった。
 そこへシンジを放り込む。

「ぷわっ」
「そこのメットをかぶってベルトをつけろ。ゲッターの操縦法を脳に送って勝手に腕を動
かしてくれる……おめぇはレバーを握ってるだけでいい」
「わ、わかりましたよ……やればいいんでしょ、やれば」

 といって、シンジはレバーに手を伸ばす。
 大人が座るように設計されているためか、少し彼には遠いようだった。

183:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/19 01:25:17
「上等」

 一応の覚悟ができたシンジを見て、竜馬はニヤリと笑うとすぐにコクピットハッチを閉
めようとする。
 それに一人にされると思ったシンジがあわてた。

「ま、待ってください。まさか僕だけにやらせるつもりですか!?」
「んなワケねえだろ。俺はイーグル号に乗るんだよ!」
「い、イーグル号……?」

 シンジが問い返す間もなく、コクピットハッチは閉じられてしまった。
 すぐに竜馬はさらにその上まで上ると、肩のあたりでゲッターをいじって中に入り込ん
でいった。
 そう、ゲッターの操縦席は三つあるのだ。
 その意味を、シンジはこれから知ることになる。

「いくぞ!! ゲッターウイングッ!!」

 再びゲッターロボの背中にマントが生えると、ふわりと空中に浮かび上がった。
 そんな中、通信が入る。

「ゲッターロボ。聞こえる!?」

 モニタにミサトの姿がうつる。
 竜馬はそれを認めると、面倒くさそうな顔になって通信に応じた。

「あぁ? これからいいトコなんだよ、邪魔すんな」
「いいから聞いて。シンジ君がそこに乗っているのね!?」
「そうだ」
「なら、お願い、彼の命だけは守ると誓って! 彼は大切な―」
「いわれるまでもねぇ! 俺は、そのために来たんだ!!」

184:ここまで
07/10/19 01:28:34
 そこで通信を強制的に遮断すると、竜馬はゲッターロボをシトの居る方角へと向かって
直進させていく。
 あとに残されたネルフ作戦司令室のモニタが、ノイズだけを映し出していた。

「シンジ君を……守るために、きた? 一体、彼は……」

 何も映さなくなったモニタを見入るミサトが、ひとりつぶやいた。


ここまで。
…エヴァが全然活躍しない件について。

185:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/19 06:20:42
続き来てたー
乙!
竜馬が来たのはシンジを守る為…?
シンジをゲッターに憶えさせる…?
思いもよらない展開にドキドキ
しかもまさかシンジがゲッターに乗ることになろうとは!
ますますこれからの展開から目が離せない!

しかしゲンドウに対してここまで自由にふるまえるキャラって
他にいないよね
さすが竜馬だw

186:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/19 06:50:29
GJ!
だが、誰か竜馬を止めて!シンジがシンジが死んぢゃう!


187:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/19 07:40:10
GJであります
今後も期待しております

シンジにはこの先、残酷な未来が待っているのかな?

188:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/19 09:04:01
やっぱりマヤちょむは血を見て吐いたのだろうかとか、全然関係ないところが気になる。
隼人よりよっぽど楽に乗せられるシンジ。
何で乗らなきゃならないんだとかはともかく、オレの力だは流石にないだろうなー。
GJ


189:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/19 13:09:46 DJRrP/kM
すげえ事になってる、GJ!
もうめちゃめちゃですねいい意味でwww

190:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/19 13:18:53 eyA8N+Qe
前に夕方のニュースでバックミュージックで甘き死よ、来たれが流れてた!相撲をしている小学生のお母さんのインタビューのときに流れてたぞ!そんなに補完されたいか!?

191:サンバカトリオ
07/10/19 13:22:41 eyA8N+Qe
前の夕方のニュースのバックミュージックで甘き死よ、来たれが流れてた!相撲少年の母親のインタビューの時に流れてたぞ!
すげぇ!

192:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/19 16:53:22
ゲッターに記憶というとアークの武蔵がいるわけだが・・・まさかこの竜馬は艦隊の・・・?

193:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/19 23:15:09
>>192
らめぇえええええええええっ!!!

194:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/20 00:04:13
GJ
毎日楽しく読んでるよ感謝
竜馬がシト相手に暴れまわってる間にシンジ死にそうw

195:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/20 00:26:52
>>194
いや、うん、冗談抜きでやばいよね
訓練受けてないどころか貧弱な部類に入る14歳がいきなりゲッターは無理だろ
しかも操縦するのがかなりイっちゃってる時点の竜馬とか

196:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/20 01:18:32
ゲッターなんか乗ったら、シンちゃんが死んじゃう…

197:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/20 01:20:05
結果としてはやられてるんだが竜馬に立ち向かうことが出来た
ゲンドウ&SPは相当な肝っ玉だと思う

普通の人間なら竜馬の前に立ったら逆らおうとする思考すら出来ないだろう。

198:つづき
07/10/20 01:43:34
 ゲッターロボは、第三新東京市の空を凄まじい速度で飛んでいく。
 戦闘機の最大速度以上で移動しているようだった。
 この速度になると、移動物体の先端から空気が円すい状の衝撃波となって発生する。
 衝撃波の威力、というかエネルギーは凄まじい。
 速度が上がれば上がるほど、あらゆる物体を破壊する魔の気流と化するのだ。

 また、その円すいの角度は速度ともに狭まっていく。
 そのため移動物体は速度に応じた流線形を取らなければならなかったが、ゲッターロボ
はそんな航空力学などは全く無視しているデザインである。

 にも関わらず、衝撃波や摩擦熱による破壊をうけずに済んでいる。
 その理由も不明である。まったくもって人知のおよばない存在であるというしかない。
 まあ、しかし、人が造った物であるのだが。
 だが……

「あ……が、ぎ、ぐ、げ、ご……り、りょうま、ざん……」
「どうしたァ」
「そく、速度を、速度をおとしてっ……ぐだざ……うげっ」

 当然のことながらそんな速度で飛べば、内部の人間には強烈な重力の負荷がかかる。
 竜馬は先にも見せた通りの人間レベルを超越した肉体のおかげで、それに耐えることが
可能だったが、シンジは違う。
 彼は、普通の人間である。
 それどころか、パイロットスーツさえも無しに乗っているのだ。
 その小ぶりな鼻から血を吹きだして、今にも息絶えてしまいそうだった。

「ちっ、ヤワな奴だ」

 と、竜馬は自分を基準にした感覚でものをいうと、急減速する。
 それがまたシンジには負担となった。
 まるで、体が剥がされてしまうのではないかと思うような感覚で前へ引っ張られる。

199:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/20 01:45:33
「げは……っ!」

 耐えきれず、少量の血を吐いてしてシンジはコクピットでうずくまった。
 もっとも、大量に吐しゃするようなことがあれば、もはや彼は生きていないだろうが。

「大丈夫か。仕方のねえ野郎だ」
「はぁ……はぁっ……だ、だから一人でいけば、よかった……じゃない……ですか」
「そういうワケにはいかねーんだよ」
「どうして」
「どうしてもだ!! ……見えたぞ!」

 ゲッターの先に、まるでウツボカズラを赤くして巨大にしたような、妙なシトが横に
なって空に浮いていた。
 それがゲッターを確認すると、ゆっくりと竿立ちになって、頭のヘタになっている部分
をぐわん、と九〇度倒してこちらへ向けた。

 見れば眼のような模様が、そのヘタの部分に二つあり、こちらを見つめていた。
 あるいは、本当に目玉なのかもしれない。
 その細長い胴体から生えている、短い腕の様な先端から触手を出すと、それが紅色の光
を帯びる。
 威嚇のつもりなのか、それをびゅんと振るうと近くにあったビルを真っ二つにして崩し
た。
 それを見た竜馬、

「趣味の悪ぃ野郎だ」

 吐き捨てるようにいった。彼はつづける。

「―聞けシンジ。今のおまえじゃ、ゲッターの戦闘には体がもたん。一気にケリをつける必要がある」
「……」

200:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/20 01:46:51
 シンジが息をのむ。

「だが、こいつらのバリアは強力だ。ゲッター1の武器で壊そうとすりゃあ、どうしても
でけえ反動が来る」
「げ、ゲッター1? じゃあ、2や3があるってことですか」
「おおよ。ゲッターは三形態に変形できる。2がスピード型、3がパワー型だ……こいつ
を一気にぶちのめすなら、2で一撃離脱するしかねえ。チェンジするぞ」
「チェンジって……まさか」

 と、シンジの脳裏に最初のゲッターとシトとの戦闘が脳裏によぎった。

(そういえば、ゲッターは戦闘機に分離してた)

「分離して、再合体するってことですか……あ、操縦席が複数あるのは」
「そうだ。いいカンしてるじゃねえか。今、おまえの座ってんのがゲッター2のメインコクピットよ。
 心配すんな、操作はコンピュータがやる……おめえはレバーを通じて感覚を覚えろ!!
 気絶なんかしやがったら、ぶん殴るッ」
「そんな」
「ぐだぐだいうんじゃあねえ、もう敵が来る。いくぞ、オープン・ゲェット!!」
「ま、待っ……!!」

 竜馬がいうと同時に、シトの触手がゲッターに襲いかかる。
 すんでのところで分離して回避すると、そのままシトの手がとどかない上空まで垂直に
駆け上ったのち、シンジの乗ったジャガー号を先頭に、自動操縦のベアー号、竜馬のイー
グル号という順で一列になると、そのまま衝突するような形でひとつになる。

 まず、ベアー号がジャガー号につっこんだ。
 コンピュータゆえの正確無比な連結は、パイロットへの負担を最低限に抑える。だが、
竜馬のイーグル号はそうはいかなかった。

201:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/20 01:48:15
「チェーンジゲッタァァーーッ、ツゥッ!!」

 ぐわーんっ、と最後尾から全体に巨大な振動を走らせてイーグル号が連結する。速度こ
そはコンピュータよりも速いが、パイロットの負担は最低限しか考えられていない。
 全身がしびれるような感覚をうけたシンジが悲鳴をあげる。
 直後に変形が始まった。
 まるで粘土アニメのような動きで、三機の戦闘機がぐにゃぐにゃと形を変えながら人型
を形作っていき、数コンマ秒後には細身で全体が鋭角的な、左腕に巨大なドリルを装着し
たゲッター2に変形が完了する。

 そのまま自由落下しながら、メインコクピットであるジャガー号にもっとも高い視界が
開けた。
 シトから数十キロ離れた場所に着地した。目標が豆のようだった。
 ゲッター2はその方向に向くと、姿勢をかがめはじめる。すれば、そのようにシンジの
視界も移動した。
 レバーが、シンジの手を導くように動いている……脳波ヘルメットによる操縦ではない
。どうやら、竜馬がイーグル号から動かしているようだった。

「シンジ、起きてるだろうな」
「……は、はい」
「よし。んじゃいくぜぇ、眼ん玉ひんむいてよぉく見てやがれ!!」

 ゲッター2はさらに姿勢を深くして、クラウチング・スタートの姿勢に臨む。シトがそ
れに気づいて触手を一気に伸ばしてきたが、距離が離れているためにまだ到達しない。
 そして、

「いけぇぇッ!!」

202:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/20 01:49:24
 竜馬が、レバーを力一杯に押し倒す。それと同時にゲッター2はつんのめるように前に
出たかと思うと、一瞬の間のあと、坂を子供が駆け下りるかのような勢いでシトに向かっ
て突進しはじめた。
 凄まじい勢いだ。

 さきほどの、ゲッター1の飛行速度よりも明らかに走行速度が上回っていた。
 ソニックブームが巻き起こり、ゲッター2は周囲の物体のすべてを破壊しながら突撃し
ていく。
 シトの触手すらも、まきつくことすら敵わずにゲッター2が進むごとに吹き飛ばされて
いく。
 豆のように見えていたシトの喉元へ、一気に迫っていく。
 だが、その最中でシンジがおかしな呻きをあげ、その視界が紅く彩られていく。
 常軌を逸した世界に、もはや彼の肉体は限界を迎えはじめていた。

「ぐぎ、ぎぎぎ……げぇぇ」
「もうちょっとだ我慢してろォ!!」

 我慢、することでどうにかなるレベルの問題ではなかったが、ここで止まったら、シト
を一撃で破壊することはできない。
 ゲッター2は火力においては他の形態よりも劣るため、速度を殺す事はすなわち死活問
題へと繋がってしまうのだ。
 もし失敗すれば、これ以上はシンジの肉体が持たないであろう。
 竜馬はコクピットで雄叫びをあげると、ゲッター2のドリルをシトに向けた。

「うおぉぉぉぉッ!!」

 接触する直前に、A.Tフィールドが展開されるが速度の乗ったドリルの一点集中的な衝
突に破られると、そのままコアに向かって突き刺さる。
 激しい衝撃を伴ってゲッター2はシトに組み付く形で停止した。

「ハ……ッ」

203:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/20 01:50:37
 やっとのことで極限状態から解放されたシンジが、息を短く吸った。
 だが、腕を動かすのがやっとだ。体の節々が悲鳴をあげている。
 目を見開くと、その前にシトの不気味な姿が現れる。コアをゲッタードリルによって削
られて震えていたが、

「ま、まだ……生きてる……」

 A.Tフィールドによって速度が殺されたゆえに、一瞬でシトを沈黙させるまでには至ら
なかったのだ。
 竜馬の予想よりも、シトのA.Tフィールドが強固だった。
 先のシトの戦績を学習したのか、はたまたこのシトが、たまたまそういう個体だったの
かは解らないが、ともかく。

 シトは苦しげな呻きをあげながらも、反撃に移る。
 停止したゲッター2めがけて触手を突き刺してきた。それはちょうど脚の付け根辺り、
イーグル号のコクピット位置であった。
 竜馬のコクピットに激しい衝撃が襲いかかり、それと同時に灼熱の触手が彼の頭上を通
り過ぎた。
 竜馬の全身が、燃え上がるように加熱していく。

「ぐっ……ぐおおお……このっ、しぶてえ野郎がッ……!!」
「りょ、竜馬さんッ」

 その光景が、ジャガー号からもモニタを通じて見ることができた。
 竜馬は火だるまとなって、なおもレバーを渾身の力をこめて押している。まるで鬼神の
ような迫力だった。
 だが、その勢いは長くは続かないだろう。
 このままいけば、竜馬は燃え尽きて死ぬ―。
 シンジに戦慄が走った。

204:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/20 01:51:48
 そのとき、ふとシンジが自分の手元のレバーをみると、竜馬の手の震えが伝わってくる
ように、ジャガー号のレバーも動いていた。
 はっ、とした。
 脳波ヘルメットのおかげで、あるていどは操作の概要がつかめていたシンジはこれを両
手で握りしめると、

「う、うわああぁぁあああぁッッ……」

 絶叫しながら体中の気合いを呼び起こすように、渾身の力をこめて、レバーを押し込んでいく。
 すれば、その気合いに呼応したかのごとく、ゲッター2のドリルはいよいよ回転の勢い
を増して深く深く、シトのコアに突き刺さり破壊的な勢いでえぐっていった。
 次の瞬間、盛大に火花が散ってコアが砕け散る。

 一瞬の間。

 ふっ、とシトの触手から紅色の光が消えた。それと同じくして、ジャガー号のモニタに
映るイーグル号のコクピットからも光が失せていく。
 レバーにしがみついていた竜馬が、どさっとシートにもたれ掛かったのが見えた。

「……竜馬さん、竜馬さん! 竜馬さんっ!!」

 シンジはその姿に竜馬の危機を感じると、必死に呼びかけ始める。
 すでに彼自身も操縦の負荷でボロボロになっていたが、こみ上げる感情に、シンジは突
き動かさざるを得なかった。
 ありったけの声を絞り出して呼びかけた。
 すると、ジャガー号のモニタから一瞬竜馬が消えたあとに、画面一杯にその目が映る。
 ぎらりと睨みつけてきた。

「わぁっ!?」
「うるせえッ。キィキィわめくんじゃねえ!!」
「あ。よ、よかった……」

205:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/20 01:52:58
 竜馬がモニタから引く。
 みれば服が燃え尽きて半裸になったうえ、その肌も黒こげになっていた。
 彼でなければとっくに燃え尽きて死んでいただろう。
 その恐るべき生命力に、シンジはあらためて息をのんだ。

「あれしきで俺がくたばるか。が……シンジよ。よく動かしたじゃねえか」
「えっ」

 竜馬はニヤリと笑う。

「ゲッターロボはな、乗る人間の意思が一つになるとパワーも増大するように出来てんだ。
 おまえの闘志は手に取るようにわかったぜ。よくやった」
「あ……は、はい、ありがとう……ございます」

 シンジは自身が連行してこられたのも忘れて、赤くなるとうつむいてしまった。
 今まで、誰からも褒められなかった……いや、シンジ自身が他人から認められなかった
と感じていた人生の中で、はじめて賞賛を受けた気分になったのだ。
 そう簡単には人を褒めそうもない竜馬が相手なので、なおさらそうだった。

 その時、ネルフからまた通信が入る。
 竜馬は面倒くさそうに受け取った。

「ネルフよりゲッターロボ、応答……って、キャァァァッ!!」

 やはり出たのはミサトだったが、焼死体のようになった竜馬を見て悲鳴をあげる。

「うるせえってんだろ!! ったく、この世界の連中は金切り声あげんのが仕事なのか!?」
「あっ! い、生きていたのね。ああびっくりした」
「約束通り、シンジのガキはきっちり守ってやったぜ。文句はねえだろうな」

206:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/20 01:56:31
「きっちりじゃ……」

 シンジが顎についた血もそのままに横やりをいれる。拭う余力もない。
 が、

「おめえは黙ってろ!!」
「ひゃっ、ひゃいっ」

 竜馬におどされ、かき消されてしまった。
 もっともそのやりとりを聞くまでもなく、竜馬があれほどの満身創痍なのだからシンジ
が無傷でいるはずがないということの程度は、ミサトにも容易に想像がつく。
 彼女は「命があっただけでもめっけもん……かな」と、思うことにした。

「え、ええ……シト撃破の功労で、今回は特別にあなたの全ての行動を不問に……いえ、
なんでもない。感謝するわ、ありがとう」
「……へ。わかってるじゃねえか。とりあえず戻るぜ」

 ず、とシトからドリルを引き抜いて離れると、ゲッターが分離する。
 三機の戦闘機はすでに暮れはじめた日の紅い光をあびて輝き、ゆっくりとグライダーの
ような速度で飛行しながらネルフを目指す。
 その中でシンジが竜馬へ話しかけた。

207:ここまで
07/10/20 01:58:48
「竜馬さん」
「なんだァ」
「あなたは一体……だれなんですか」

 何者なのか、と聞こうとしたのだろう。が、言葉が出てこない。

「俺は流竜馬だ。ゲッターの、導き手」
「ゲッター……導き手?」
「わはは、まあ今のおまえにゃ関係のないことだ!!」

 シンジと竜馬はネルフに戻っていった。


・・・


マヤちょむに吐かせるの忘れた。残念残念。次を狙う。

208:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/20 02:04:04
>>207
GJ!リアルタイムで更新して読ましていただきやした。
「この世界」とか「導き手」とかいろいろ気になる所だけど
次回マヤちゃん吐かせる気ですかw期待してます。

209:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/20 05:14:31
シンジ君、生還おめでとう・・・いや、ご愁傷様のほうがいいかw
「俺は流、流竜馬!これから先テメエに地獄を見せてやるぜぇ!!」
こんな状況なんだから死なせてやった方が良かったかもしれない・・・

210:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/20 06:14:44
作者に100万回のGJを!
内容の面白さもさることながら、なんて躍動感のある気持のいい文章なんだろう
竜馬の理不尽さがカッコイイ!
結構根性のあるシンジ健気!
上がって来たばかりでなんですが、続きを首を長くして待っておりまする~

211:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/20 08:19:49
シンジくんにゲッターガッツが宿った日ですね
さて、ベアー号はどうなるのかな?

リボルテックの関節動かしながら、続きを待つとしますか。カチカチカチ

212:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/20 09:39:15
ベアー号に誰が乗るのか楽しみだ。





ゲンちゃんだったりしてwww

213:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/20 10:24:22
このままシンちゃんがジャガー号に定着したら…ゲンドウと初号機がすねちゃいそうだw

214:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/20 10:50:53
まてまて、ベアー号には多分ミサトが無理矢理乗せろと言い出しかねん
なんせ、自分の手で使徒を倒すことが目的なのだから。

つーことは、ゲッター3の必殺技は大雪山おろしではなく
・・・・・ミサトカレー嵐か!・・・・汚染処理が大変だ・・・・(リッちゃん血管ブチ切れ捲りだな)w

>>213
初号機というより、ユイがすねて暴走しちゃいそうだw
・・・・・ゲッター対暴走ユイ(初号機)・・・・・見てみたいぞ!www



215:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/20 11:08:07
ゲッター2に慣れてしまったら(慣れるまで生きていれば)、トップスピードで
音速程度らしい初号機など、鼻歌交じりでフル稼働できるようになるかも…

216:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/20 14:04:28
シンジ「動く…初号機がボクになってるみたいだ! ボクが初号機なんだ!」
冬月「…勝ったな、碇」
ゲンドウ「む…(いいのかこれで…?)」

リツコ「ふふっ、計算どおりね」
ミサト「あんた、最初からそのつもりで…?」

こうですか><

217:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/20 14:11:30
>>216
そして初号機回収後…
リツコ「ふっ、計算ミス……無様ね」
ミサト「どうしたの…何このデータ? エヴァの筋組織が断裂しまくりじゃない!」
シンジ「ご、ごめんなさい!…そ、その……調子に乗ってゲッタービジョンをやっちゃって…」

218:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/20 14:14:33
>>217
筋組織断裂の感覚フィードバックに耐える強い子シンちゃん。
オープンゲットしようとしなかっただけまだ良かった。

219:つづき
07/10/21 16:02:45
 第四シトとの戦いから数日後。
 シンジは、とある病室の中で目を覚ました。見知らぬ天井が視界に飛び込んでくる。

「あ、ここは……」
「よう起きたか。いつまで寝てンのかと思ったぜ」
「竜馬さん」

 ふわりとベッドから身を起こす。
 竜馬は、シンジの向かいのベッドに居た。

「あの……ケガは?」

 全身に大やけどを負っていたはずの竜馬なのだが、すでに皮膚の色も元通りになって
ケロリとしている。
 点滴をされていたのだろうが、嫌になって外したらしい。チューブをぐるんぐるんと振り
回しながら、いう。

「あんなモンは風呂でも入っときゃ直る。なのに、ネルフの奴らあーだこーだとへ理屈い
って俺をこんなトコに押し込めやがってよ。
 大方、いまのうちゲッターをどうにかしてやろうってハラなんだろうが無駄なこった」
「はは……そ、そうですか」

 シンジは、ゲッターロボ云々よりも竜馬がゴキブリを遙かに超える脅威の生命力の持ち
主であることだけが感心だった。
 やがて、チューブを振り回すのにも飽きた竜馬がベッドから跳ね起きると、シンジのベ
ッドに近寄って布団を剥ぎ取る。
 急激に差し込んだ空気がひやりとした。

「な、なにすんですか!」
「ちと散歩へ行こうぜ。ここにいるのは飽き飽きした」

220:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/21 16:04:47
 起きたばかりだというのに、有無をいわさずシンジは連れ出されてしまう。

(……まあ、あそこで悶々としているよりはいいかな)

 そう思ってついて行く。
 すると、途中でがらがらと寝台が運ばれてくるのが見えた。近づくにつれて、その正体
がはっきりしてくる。
 そこには居たのはエヴァ初号機に乗っていた綾波レイと……

(……父さん)

 それに付きそう、ゲンドウの姿だった。
 彼は通路のシンジに気づくとちらり、と視線をむけたのだが、それっきりでレイへ目を
戻すと何事もなかったかのようにいってしまう。
 その背に、竜馬が皮肉めいて話しかける。

「よぉオッサン。ゲッターロボは解明できたかい」
「……我々に玩具は必要ない」
「けっ」

 ゲンドウ達は、通路の奥へ消えていった。
 竜馬も何事もなかったようにズンズン歩いていくが、後ろがスカスカしていることに気
づくと、振り向いた。
 そこには立ち止まって何もなくなった通路の先を見つめているシンジの姿があった。
 その後ろ姿を竜馬はしばらく見ていたが、やがて、

「……シンジよ」

 この男にあるまじき、しずかな声でいった。

221:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/21 16:06:03
「はい」

 シンジは振り向かずに反応する。
 竜馬は口をつぐむと、やがてゆっくり話はじめた。

「俺にも二〇……ちょっとくれえになるガキがいてな」
「え!?」

 その言葉には、ばっ、と振り向いてしまった。じろじろと、舐め回すように見る。

(この人、どうみても二〇代にしか見えないぞ……)

 それが、二〇代の息子がいるとはどういうことだろうか。
 だがそれを聞けば竜馬の怒りを買ってしまうような気がして、質問する勇気は現れなか
った。

「なんでえ」
「いえ、なんでもないです……」
「まあいい。結局、顔も会わせず仕舞いだったんだが、まあ、それでも息子は息子だ」
「……」
「親としての気持ちは、あるもんだ。微妙な表し方しかできねえけどよ」
「それって……」

「おめえのオヤジがどうかは知らねえ。が、シンジ。胸を張れ」
「胸を」
「おおよ。俺がいうのもなんだが、親父にびびって引っ込んでんじゃねえ。堂々と向かっ
て口をききゃあ良い。
 無視なんかしやがったら、ふんづかまえて一発殴ってやりゃいいんだ。それが男の口の
きき方ってもんよ」

222:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/21 16:07:07
 竜馬の言葉をシンジは正しいとは思えなかったが、しかしシンジはゲッター2を動かし
た時の気持ちを思い出した。
 あふれるような意思でレバーに力をこめたとき、ゲッターは鼓動をもって応えてくれた。

(あんな風に本気になれば、ゲッターと同じように人も反応してくれるだろうか)

 そう、思った。

「わかりました……胸、張ってみます」

 シンジはぐい、と胸をあげる仕草をした。
 そうこうしていると、すたすたと通路の先から葛城ミサトがやってくる。ちょうど、
シンジが直立不動の構えをしているところを見て、

「探したわよ二人とも迎えに……って、なにやってんのシンジ君」

 呆気にとられた。

「あ、ミサトさん……」

 恥ずかしくなってしまったシンジが普通の姿勢にもどると照れ隠しに、はにかむ様な表
情を見せる。
 ミサトは、目を見はった。

(あれっ)

 これが、目覚める前までは、鬱屈そのものといえたような少年の顔だろうか―。
 ミサトはそう思った。
 ふと、竜馬をみやる。相変わらず凶悪な顔だったが、そこから何か父性じみたものをミ
サトは感じとる。

223:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/21 16:08:27
 むろん、その表情や態度に表れていたわけではない。ただ、ミサトの女の勘、とでもい
うべきものが、そのような感覚をうけたのだ。
 竜馬が、その視線に気づいた。

「……あん?」
「おっとと。なんでもないわよん『リョウ君』」

 ミサトは軽くウインクをして受け流す。

「なんだそりゃぁ……」

 竜馬は、突然態度が柔らかくなったミサトを気味悪そうに見ると、通路の窓際によって
その視線から逃れる。

(こりゃシンジ君、おっそろしい父親代わりみつけちゃったかもだわね。……なら)

 その場でミサトは携帯電話を取り出すと、ものすごい速度でタッチしながら通信状態になる。
 以下、彼女の通話内容である。

「あ? リツコぉ? うん、私。ちょっち急だけど、シンジ君とあと竜ちゃん……は? あ
あ流竜馬のことよ。二人とも私が保護することにしたから。
 まーまーまー。落ち着いて。え、住居? 私のマンションでいいでしょ。
 ……なーにいってんの、男二人相手になんかしようってほど頭逝ってないわよっ。
 じゃ、そういうわけで上の許可とっといてねぇー!!」

 まくし立てまくった挙げ句、勢いよく通信を切る。
 まだ携帯からはリツコの甲高い抗議が漏れていたが、ミサトは相手にならなかった。
 そしてぐるりと笑顔のまま、その通話内容に唖然としていたシンジと竜馬に首を回す。

224:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/21 16:10:30
「じゃあ行きましょう! 歓迎するわよ二人ともっ」
「ちょ、待ってくださいよミサトさん! 勝手にそんなこと決められても……!!」
「問答無用! これは上司命令よ、従いなさい。……リョウ君も文句ないわよねー?」
「俺ぁ、飯が食えりゃどこでもいい。それよりおい、その呼び方」
「よっしゃ決まりぃ!! 二人とも、とっとと着替えて駐車場まで来なさいっ」

 ミサトは喋るだけ喋ると、そのまま通路を走っていってしまった。
 あとに残されたシンジがつぶやく。

「病院って、普通は走ったらいけない場所ですよね」
「知らん」
「……」

 こうして、奇妙な共同生活が始まることになった。


二、

 時間は、シンジがウツボカズラのような第四のシト、シャムシェルとの戦闘の後に病院
で目を閉じていた頃に巻き戻る。
 草木もねむる夜。
 シンジと同室となった竜馬の横に、リツコの姿があった。
 面会は許されないはずの時間だったが、彼女はネルフの権限を行使して病室へ進入していた。
 会話が聞こえる。

「……俺に、ネルフの職員になれだと?」
「ええそうよ。引き替えの条件は幹部級の生活保障と、そしてゲッターロボの整備」

 竜馬は、あれほどの騒ぎを起こしたにも関わらずミサトによって無罪放免とされた。
 挙げ句にリツコは、さらに幹部クラスの待遇をも用意するという。

225:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/21 16:12:23
 だが、どれもゲンドウの許可がなければ実現しないもののはずだ。
 すくなくとも彼に危害を加えた竜馬が、それほどの待遇を受けるのには特別な理由が必
要である。
 それは、以下のような内容のものだった。

 結論からいうと、ゲッターロボの威力を見た国連が自らの立場を強化しようとそのの確
保に動き出したのだ。
 ネルフはそれを阻止したかった。
 別にゲッターロボが欲しかったわけではない。彼らはあくまでエヴァンゲリオンのみを
シト迎撃の要として見ている。

 それどころか、国連ごときにどうこうされるようなゲッターロボと竜馬でないのも、
ネルフ自身がよく解っていることだった。
 が、余計な騒動を引き起こしネルフの行動の邪魔をされるぐらいならば、その強大な
戦力は味方に引き込んでおきたい―。
 それが、現時点でのネルフの総意であった。
 だが提示した条件は、流竜馬という男をあまりにも知らなさすぎる内容だ。

「そいつはご大層な申し出だが」

 竜馬は、差しいれられた肉の塊を頬張りながら目を閉じた。
 差し入れ品として問題があると思われたが、これをもたせたのはミサトだった。
 いわく、

「ああいう男には、がっつり食えるようなもの与えるのが一番効果的なのよ!!」

 とのことである。まあ、それはともかく。

 竜馬が目を閉じたのは別に、肉に薬が仕込まれているのを心配したわけではない。とい
うよりも、この男に生半可な薬物は通用しない。

226:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/21 16:14:09
 病院に運び込まれた際、手術をするために打った麻酔が全く効かなかったのだ。
 彼は、手術を拒絶して点滴だけで回復してしまった。
 そのせいで医者をはじめ、生物学者などが彼に詰め寄る結果となったのだが、すべて
竜馬の一喝とネルフの工作ではじき返されていた。

「断る。俺はあんな陰気くせえ所は嫌いなんだよ。だいいち、てめえらが欲しいのは、
ゲッターだけだろう。そんなに欲しけりゃ、小細工なんざしねえで俺を殺して奪いに来るんだな」

 目を開き、ぎらりとリツコを睨みつける。
 肉を食いちぎって、飲み込んだ。
 逃げ場の無い場所で熊に出会ったような生理的な恐怖が彼女を襲うが、そこはぐっとこ
らえて気丈にする。
 なによりも、彼女には果たしたい目的があったからだ。

「ええ、そうよ。ネルフの目的はゲッターだわ」

 リツコは竜馬の問い詰めを否定しなかった。

「けれど。もっと本音をいえば」

 リツコはバン、とベッドを叩くと竜馬に詰め寄るような体勢になった。
 そのまま頭を触れそうなほどに近づけると、

「本当にゲッターロボを欲しいのは、私だけ。ネルフ……碇司令は単に、厄介事を封じた
いだけだわ。
 あの素晴らしい機械を、私に見せて頂戴。お願い。見たいの。
 あれ、戦闘機に分離して姿を変えたわね。どういう構造をして……いえ、それよりも何
を動力に動いているの?
 いや。どうしてあんな凄まじい威力が湧き出てくるの。全部見たい。解明したい。
 あれが人間の科学力の果てにあるものだとするなら、それを私は……見てみたい!!」

227:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/21 16:15:29
 つばが竜馬の顔にばらばらと降りかかるほどに、じょう舌に語るリツコ。一瞬、彼女の
黒目が渦を巻いたようにみえた。

「カオ近づけ過ぎだ」
「……あっ。あら失礼」

 がらにもなく興奮してしまった自分を指摘されて恥ずかしくなったのか、リツコは身を
引いた。
 竜馬はそれをみて、少し考え込む。
 やがて、頭を上げると今度はすこし目もやわらかくなって、いった。

「むずかしいぞゲッターは。おまえに扱えるか」
「きっと……いえ。絶対に扱ってみせるわ」

 リツコは本気だった。
 まるで格闘家が発するような気迫が、その細い体から竜馬に伝わってくるのだ。
 竜馬は「仕方ねえ」というと、肉を一気に平らげてから腕を組んだ。
 彼は、粗暴であっても本気になった人間の意思を、むげにする男ではない。
 もちろん、この場合はゲッターロボをどのようにいじられても、自分が危険を打開でき
るという自信に裏付けされたものであるが。

「なら、条件付きで認めてやる。俺をネルフに当てはめるのは止めろ。その上でゲッター
に接するなら好きにしていい」

 つまり、ネルフの職員にならずに本部を自由に行き来できるようにしろ、というのだ。
 むずかしい注文だった。
 ネルフは他のどの組織と比べても、セキュリティにかけては厳格すぎるほどに厳格な
システムを構築している。
 実現するには、違法行為に及ばねばならないだろう。
 下手をすれば命がない。

228:ここまで
07/10/21 16:18:05
(それでもいい。たとえMAGIのシステムを、書き換えてでも)

 リツコは、躊躇しなかった。

「わかったわ、なんとかやってみせる」
「もうひとつ聞かせろ。なぜ、そんなにゲッターに興味をもつ」
「科学者なら、当然のことじゃなくて?」
「嘘をつくな。俺の目はごまかせねえ」
「……小難しい話は置いて言うわ。母を超えたいの。科学者としても、人としても」
「わかった……だが、今後は命なんざ無いものと思え。ゲッターに関わるならな」
「覚悟の、うえよ」

 病室での契約が交わされた。
 かくして、竜馬はネルフの人間とその命運を共にすることになる。
 ミサトが竜馬もふくめて病院まで迎えに来たのには、そういう経緯があったのだった。


・・・

229:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/21 16:23:06
訂正
>>223 
誤:シンジ君とあと竜ちゃん~
正:シンジ君とあとリョウ君~

230:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/21 16:42:11
息子って拓馬のことかな
なんにせよ乙!

231:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/21 17:08:33
GJ!リツコさん、それ非常に危険なフラグです!w

232:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/21 18:26:02
GJGJGJ!!!
うわあ~先が読めない
これからどうなるんだろう
ドキドキドキ

それはそれとして、竜馬の男っぷりにマジ惚れしましたw
シンちゃんへの接し方とかが本当に素敵!


233:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/21 19:39:03
僕たちの出番もある筈だよねぇ、スティンガー君?

234:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/21 20:21:48
た、たぶんないと思うよコーウェン君
だ、だけど出演できたら嬉しいよね

235:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/21 20:28:46
リツコさんがぐるぐる目玉ァ

236:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/21 20:29:57
>一瞬、彼女の黒目が渦を巻いたようにみえた。
ここでフイタ

237:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/21 21:54:59
やはりガイナックスなので、ゲッターではなく最近流行のドリル力の覚醒フラグか?

はたまた(年甲斐もなく)ピッチリスーツでゲッター3フラグか?wktkして参りました。

238:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/21 22:02:24
そういえばコミック版では最初の頃ゲッター3には、早乙女博士が自ら乗ってましたね

239:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/21 22:12:18
この話の竜馬のいた世界では早乙女研究所や隼人武蔵弁慶はどーなってんだろうな

なんかゲッターとエヴァは意外と取り合わせがいいように思えてきたw
職人さん乙

240:名無し氏んでも代わりはいるのもの
07/10/22 09:16:19 JZRjnEKH
それはたぶん一つの方向性しかもっていなかった物語に、竜馬というまったく真逆
の方向性をもったキャラが登場したので、キャラのバランスがよくなったからだとおもいます。
まさにGJ!!

241:名無し氏んでも代わりはいるのもの
07/10/22 12:37:45 JZRjnEKH
個人的にはベアー号にはレイを・・・。

242:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/22 14:00:40
レイがベアー号…結局自爆させる気かぁ?


243:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/22 19:24:12
ゲッター3のシートをミサトと奪い合うリツコの姿が浮かんだ

244:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/22 19:48:04
それは大丈夫でしょう。リツコは乗るより分解したいでしょうし

245:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/22 22:07:14
>乗るより分解
どっちにしろ危険だな

246:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/23 00:38:31
アスカと加持がどうなるか心配だ

247:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/23 08:20:52
>>246
アスカ、キャンキャン煩いのでひとまず修正、それで駄目ならゲッターで遊覧飛行

加持、竜馬の野生の勘と余計な詮索をした為滅殺或いは、ゲッターでの耐久分離合体演習別名パイロット壊しにチャレンジ

248:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/23 15:48:05
>>アスカ、キャンキャン煩いのでひとまず修正、それで駄目ならゲッターで遊覧飛行
いいな、それ♪

249:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/23 18:32:29
・アスカの場合
あんなボロットと野蛮人がこの弐号機と私に勝てるわけ無いわ!

エヴァ必要ねーよ、と思えるほど使徒とついでにアスカのプライドを竜馬がフルボッコ

やさぐれ始めて半ば自棄でゲッターに乗ろうとするも失敗。原作通り鬱に

ゲッターが憎くなってバズーカ撃ち込む
「私は悪魔を倒したのよー!」
あれ、それなんて大道さんフラグ?

・加持さんの場合
NERVやゼーレのSPに殺されかかるも通りがかった竜馬に助けられる
or
竜馬の影響を受けてSP返り討ちにする

弟達の写真を見て「また残されちまった」

250:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/23 19:04:06
ここでバグに乗ったカムイと恐竜帝国残党が次元を越えて来襲

251:つづき
07/10/23 19:54:00
 時間は元に戻る。
 シンジと竜馬が退院してから数日が経過している。
 その間、二人はミサトの案内で、その新住居となる彼女のマンションへ足を踏み入れて
いたのだが、凄まじいほどに汚れ散らかったミサトの部屋は、足の踏む場もないほどであった。

 竜馬があてがわれた部屋に入ると、適当にその辺りの物をぽいぽいと放り投げて横になって
しまったものだから、あとはこの惨状をなんとかできるのはシンジしかいない。
 むろん、その原因であるミサトはつまみと共に酒をかっ喰らい、へべれけになっているのみだ。
 歓迎もなにもあったものではない。

「なんで、僕が……」

 ぶつぶつやりながら、しかし生まれ持った几帳面さで、とことんまで散らかり果てたこ
の空間の清浄を行い始めた。
 竜馬とミサトの二人をみれば、どちらもまともに住みかの整理整頓を行って清潔に保つ
などという概念がないのは明らかだ。
 シンジは、自らの生活を守るため家政婦のまねごとをせざるを得なかった。

 作業は、二人が寝入ってから起きるまで夜通しとなった。
 眠気につきまとわれた朝、シンジが目をこすりながら朝食をつくり、この数日で新しく
編入された第三新東京市、第壱中学校への登校のための準備をしていたところ。

「……早いなシンジ」

 竜馬が、服も例の半袖状態になったデニムジャケットと、ボロのジーンズのままでリビ
ングへのっそり姿をあらわした。
 着替えはあるのだが、それをするのはめんどうくさいようだった。

「あ、おはようございます。着替えなかったんですか」
「俺は寝間着というのは好かん」
「はあ、そうですか……ご飯、食べますか」
「ああ」

252:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/23 19:55:48
 竜馬は立ったままシンジの用意したトースを一枚を手にすると、ほおばってから
一口で飲み込んでしまった。

「ごっそさん」
(なんて食べ方だよ)

 シンジは生活スタイルのあまりにもの違いに朝から疲れを感じたが、それを飲み込んで
登校の支度をすすめる。
 それに気づいた竜馬が、

「なんだ、もうあの薄ぐれえ地下にいくのか」

 と聞いてきた。
 レイやエヴァの事まで知っているわりには、学校など細かい部分についてまでは知らな
いようだった。

「違いますよ学校にいくんです」
「ガッコぉ?」

 と、竜馬は素っ頓狂な声をあげた。
 シンジの年齢をみれば納得いきそうなものだったが、彼にはそういう組織に通う、とい
った概念がなかった。
 彼にも学生時代はあるにはあるのだが、そもそも彼の青春時代は道場破りとゲッターロ
ボにあったので、学生としての記憶はほとんどない。
 ひとつあったとすれば、

「学校か……隼人を思い出す」
「だれですか」
「旧いダチだ」

 そこまでいうと、やっとミサトが寝室から這い出てくる。
 連日の激務のためか眠ったにもかかわらず死にそうな顔をしていた。

253:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/23 19:59:00
「……ぉはょ…………」
「……ミサトさん」

 シンジが絶句した。
 ミサトは、短く腹が露出したシャツに短パン一丁という、あられもない格好で出てきた。
 その姿は、竜馬に疲れたシンジに追撃を加えるに十分だった。

 それだけ書くと若いシンジには目の毒に思われるかもしれないが、しかし化粧もなく、
髪のあちこちが跳ねてみだれ、目やにだらけで枕の跡もついた顔が、だらしなく大口をあ
けてアクビをする、というのは彼女の本来もつ色気を破壊するのに十分だった。
 それがいいという人もいるかもしれないが。
 ともかく。
 シンジは、もう少しだけ異性を神聖視したい感情があったのだが、ミサトはそれをこと
ごとく打ち砕いてくれることになる。

「だらしねぇな」

 と、人のことをいえない竜馬がミサトを批判した。

「うるさいわね~」

 いいながらも、ミサトは冷蔵庫に近寄るとがばりとそのドアを開けて、中に大量に陳列
されていたビール缶に手を伸ばした。
 そのまま手に取ると、後ろ背でドアを閉めて片手でプルタブを開く。
 プシュ、と封入されたチッ素がぬける気持ちの良い音が響いたあとミサトはそれを口に
つけて、朝一番の茶の代わりにぐいぐいと飲み干していった。
 この日、彼女は非番だった。

「シンジ君、学校遅刻しちゃうわよぉ」

 と、言葉だけは母親のようなことをいうがビール缶片手では威厳がない。
 シンジは「わかってますよ」といいながら、カバンを下げて出入り口のドアノブに手を掛けた。

254:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/23 20:00:08
「いってきます」
「いってらっしゃ~い」

 間。

 シンジが出て行くと、あとはすでに殺気がみなぎりはじめている竜馬と、ほろ酔い状態
のミサトが残るのみである。
 しかし竜馬はともかく、ミサトには非番といえ必要な仕事があった。
 懐から折りたたみの携帯電話を取り出すと、片手で開いて連絡をいれはじめる。

「……あ、私。今シンジ君が出ていったわ」

 どうやら、ネルフの諜報員にシンジの身辺警護と情報収集を命じているようであった。
 いまだエヴァに乗ってはいないものの、彼は重要なパイロット候補なのだ。
 だが。

「ええ。あとのことは……って、えっ、ちょっ!?」
「よこせ」

 いつの間にかミサトの背後に立っていた竜馬が、携帯を取り上げる。そして、

「俺は流竜馬だ。おめえらの仕事は俺がやるからすっこんでろ。ついてきたらぶち殺す」

 といって、通話を切ってしまった。
 その横で怒りに震えたミサトが、酔いも手伝って竜馬に負けず劣らずに目をつりあげて
食って掛かる。

「なっ……なーにすんのよォ!!」
「聞いた通りだ」
「勝手な真似されたら困ンのよっ」
「俺がついてた方が安全だ。じゃあな」
「ちょっとリョウ君!? 待ってよっ、待ちなさい!」

255:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/23 20:01:29
 ミサトが制止するが竜馬は聞かず、マンションの外へ出ていってしまう。
 すぐに爆音が響いてきた。
 この数日で、どこからか竜馬が仕入れてきたバイクのエンジン音である。
 金の出所はむろん、ネルフだ。もっといえば赤木リツコ博士である。
 ミサトが道路を見渡せるベランダに出ると、すでに竜馬のバイクは遠く小さな影になっていた。

 朝の通勤時間を、猛速度でつきぬけていく竜馬のバイク。
 車種は、スズキGSX-R1300「隼」。
 いまどき珍しい、レシプロエンジンを搭載したいいかげんに旧い物だったが、自然界最速の
生物と、旧陸軍の名機とも同じ名をもつこのバイクは、未だなおそれに恥じぬ動力性能をそなえた高性能車だった。

 エンジンは一二九八cc、一七五馬力。これを重量二一七キロの車体に乗せたところから
時速にして三〇〇キロを超える速度で走ることのできる、モンスターバイクである。
 姿は全体に丸みをおびたカウルに覆われており、そのフロントマスクはどことなくハヤブサを
意識したディテールだ。
 しかし、なによりもの特徴は、その横っ腹に大きく筆文字で「隼」と書かれていることだった。
 とにかく全体的に筋肉質なイメージを感じさせるバイクで、竜馬好みといえた。
 ちなみに竜馬のは後部座席に本来ある、ラクダのコブの様なカウルを取り払ってシート
がつけられた、ダブルシート仕様である。

 それが、先に出たシンジを追いかけていく。
 街の人間たちは、恐ろしい顔をした男が恐ろしい速度で公道を暴走する様をこの日、目
の当たりにすることになった。ヘルメットを被っていないのである。

「シンジぃぃぃ!!」
「……え? え、あ、うわっなんだアレ、竜馬さん!?」

 ぐわりと前輪を天にかざして、竜馬のバイクがやってくる。
 そのまま歩道に乗り上げて着地し、車体を横にすると、キャキャキャと甲高いスキール
音をたてながらシンジの目の前に停車した。

256:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/23 20:03:06
「送ってやるぜ。後ろにのれ、どこだ学校は。案内しろや」

 竜馬流の警護のつもりなのだろう。
 あまりにも派手であるが。

「……あっちです」

 朝食の件ですでに疲れ果てていたシンジは、これ以上竜馬の行動に逆らっても痛い目を
見るだけだと思って素直に従った。

「おっしゃいくぜ、振り落とされないようにきっちりつかまってろ!」

 ぐわっ、とバイクが車道に躍り出て急加速しはじめる。
 ゲッター2に比べれば穏やかそのものであっても、何も守るものがない肌に直接強烈な風が
ぶち当たって景色がものすごい速度で流れていくのを見るのは、恐怖以外のなにものでもなかった。

 やがて爆音と共に学校へ到着する。
 校庭の砂塵をまきあげ、竜馬のバイクが横向きに停車した。
 その音に、すでに登校していた生徒たちがなにごとかと驚き、窓際にあつまってその様を見つめている。

(うえぇ……)

 他人の視線にさらされるのを、何よりも苦手とするシンジにとっては拷問に近い時間だった。
 もちろん、それは登校後も変わらない。

「ねぇねぇ碇くん! こないだのロボットに君がのってるってホント!?」
「なんて名前のなんだ?」
「恐くなかった?」
「シャインスパークとか出来るんだろっ」
「あの怪獣みたいなのってなに」


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