07/04/02 11:36:13
零号機は超長距離射撃の体勢をとっている。リツコがマヤに声をかけた。
「レイの様子がいつもと違うわ。数値的にはどう?」
「はい。ハーモニクスにコンマ2以下、周期0.04の波があります」
それを聞いて、ミサトが尋ねた。
「作戦遂行への影響は?」「ありません。シンクロ率の変動による照準の
ブレは、誤差修正範囲内です」「よろしい。あと60でライフル充電完了。
それと同時に発射。レイ、いいわね?」「・・・・・・了解」
レイの返答がやや遅れたのを、リツコは聞き逃さなかった。
「やはり何かおかしいわ。シンクロに変化があったら、MAGIに射撃精度を
サポートさせましょう。急いで準備して」
しかし、彼女がこう言い終らないうちに、その事態はやってきた。
「ハーモニクス乱れていますっ。シンクロ率37%に低下!」「MAGIへの
切換えは間に合う? 最悪、手動で操作するわ」「レイ、どうしたのっ?
落ち着いて!」
発令所に報告と指示の大声が飛び交う。レイが「問題、ありません」と
小さな声で答え、モニターの数値が元に戻るまで、それは続いた。
「シンクロ率回復、照準に問題なし。目標にロックしています」「もう~
何なのよ~。・・・・・・レイ、あと40よ」「はい」「一体どうしたの? 急に
トイレにでも行きたくなった?」
ミサトがこう軽口を叩いた途端、再び数値が乱れ始めた。「ちょっと、
どうなってんのよっ、リツコ!」「パイロットの血圧と体温に変化。筋肉が
緊張。これは・・・・・・」「これは、何よ!?」「これは、何かに耐えている、
我慢している状態に酷似しているわ」「何かって、何よ!?」「いわゆる、
生理的現象・・・・・・」
この後、またも数値は元に戻り、レイはライフルを発射。使徒を殲滅した。
「よくやったわ。レイ」
だが、ミサトのこの労いの言葉は、レイによって遮られた。
「本部へ戻ります。回収ルートは?」「へ?」「回収ルートはどこですか?」
「あ、ああ、えーと。日向君、何番?」「どこですか?」「ちょ~っちレイ、
何をそんなに急いで」「ど こ で す か?」
回収ルートへ向かう零号機の姿は、やや猫背で小走りになっている、と
発令所の誰もが思った。