ハードボイルドなエヴァat EVA
ハードボイルドなエヴァ - 暇つぶし2ch165:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/04 23:09:33
ハードボイルド調の書き筋
コイツは期待できそうだ

166: ◆IE6Fz3VBJU
07/11/05 23:37:40
すいませんこれ続かないっすwwwwwwww
プロットが思い浮かばないwwwwwwww

167:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/06 00:40:24
あんた、レイモンド・チャンドラーって知ってるだろ?
オマージュでも何でもいいから続きを書いてくれ!

168: ◆IE6Fz3VBJU
07/11/08 23:53:54
うーむ、そういわれると・・・やれるだけやってみます(てかこの流れすげー自演くさいwwww)

シンジが列車に乗って帰りそうになる場面がありますが、ご存知のようにアニメだと戻りますが、この話は帰ってしまったという設定で

169: ◆IE6Fz3VBJU
07/11/08 23:55:29
少年が事務所に入ると私は明かりのスイッチを入れ、「座れ」と言った。少年は椅子が紙か何かで作られているとでも
言いたいような仕草で浅く腰をかけた。封筒を手に持ったまま、落ち着かない様子で事務所の中を見回していた。 
もっとも依頼人で―この少年を依頼人にさせるつもりなどなかったが―落ち着いた様子を見せる人間など見たことがなかった。
ある特定の種族を除いては。

私はカーテンで仕切られた狭い台所に足を運び、ヤカンに火をかけると、両切りの"ピース"の端を壁に軽く打ち付けてコンロの炎に
かざした。それからコーヒーと紅茶どちらがいいかと少年に訊いた。少年は紅茶がいいですと答えた。タバコを口に銜えながら
どこかにあったはずの紅茶のTバックと来客用の菓子を探していると、電話が鳴った。少年の視線を感じながらデスクまで行き、
受話器を取った。私は私の名を名乗り、相手は相手の名前を名乗った。
久しぶりに聞く声だった。

170: ◆IE6Fz3VBJU
07/11/08 23:58:08
「相も変わらず女の尻を追いかけてるのか」と、私は言った。
「第一声がそれですか? 二年振りだってのにそれはないでしょう。ちゃんと仕事もしてますよ」
「まだスパイごっこをしているのか。寿命を縮めるぞ。職を変えたらどうだ」
「ごっことはあんまりだな。まぁ、転職はしましたがね」
「転職? ……その口ぶりだと、どうせ蛇が蠍になったくらいの変化だろう」
「ご明察」相手は含み笑いをした。「さすがは名探偵さんだ」

「それで、何の用だ。まさか女を紹介してくれと言うんじゃあるまいな」
「逆に俺が紹介したいくらいでね。どうせまだヤモメ暮らしなんでしょう?」
「余計なお世話だ」私は苦笑を浮かべていた。一回り以上年下のこの男と話す時は、どういう訳か苦笑することが多かった。
「……そこに碇シンジという中学生がいるでしょう」
私は少年のほうは見ないまま、タバコを灰皿に押し付けてゆっくりと消した。少年が私の手元を注視してるような気がした。
力を込め過ぎたか、時間をかけ過ぎたのかも知れなかった。

171: ◆IE6Fz3VBJU
07/11/09 00:01:07
「ああ」何故分かる、とは言わなかった。私はブラインドの隙間から窓の外を見たいという衝動を抑えた。
「その子のことをよろしく頼みますよ」
「お前が見ればいい。俺よりも」危うく"子供の扱いは上手だ"と言いかけた。「そっち方面は得意だろう」
「俺も子供の面倒を見にちょいと海外に出張でね。大人が子供のご機嫌伺いとは、まったく嫌なご時世だ」
「それだけじゃあるまい?」
「まぁ、色々と。これから忙しくなりそうなんでね。男の子はそっちに任せるってことでお願いしますよ」
「……断ると言ったら?」
「あなたは断りませんよ。それじゃあ頼みます」相手は電話を切った。
私は「いい加減髪の毛を切れ」と呟いて受話器を置いた。

電話の相手が、金か、私が彼に負っている返済不可能の"借り"のことを持ち出したら、私は何か適当な理由をつけて断る
つもりだった。しかし一言も口に出さなかったので、少年から何も聞きだしていないのにもかかわらず、引き受けざるを得なくなった。
「待たせたな」私は少年―碇シンジに向かって言った。「ただし、家庭教師なら余所を当たってくれ」

172:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/09 18:43:29
ああ~、こういう文章読むだけでゾクゾクする~!
まさにこのスレに相応しいSS!
GJであります!(`・ω・´)ゝ

173: ◆IE6Fz3VBJU
07/11/13 00:38:22
「家庭教師……そんなことじゃ、ありませんよ」少年はややむっとしたように口を尖らせた。「ちゃんとした依頼なんです」
中学生が探偵に持ちかける"ちゃんとした依頼"が何か、私にはまるで見当がつかなかった。もっとも見当がつく人間がいるとも思えなかったが。
私はテーブルを挟んだ少年の向かい側の椅子に座った。ほとんど無意識にタバコに手を出しかけたが、止めておいた。
中学生の前でタバコを―それも両切りのタバコなどを―吸ったことが知れると"児童虐待"で逮捕されかねない。

テーブルには紅茶を入れたカップが2つ置いてあり、湯気が立ち昇っていた。
「すいません……勝手に」少年が私の視線に気づき、謝った。別に構わないと私は言った。
意外に図太いところがあるのか、あるいはよく気が回るタイプなのか―いずれにせよ、私が思ったほど線が細いわけではないの
かも知れなかった。どの職業でもそうだろうが、特にこの稼業では先入観や思い込みは禁物だった。
この年頃の子供は秋の空と同じくらい変わりやすいもので、ちょっとしたきっかけで借金取りもかくやというほど無神経になったり、
反対に子供が生まれたばかりの親猫のように過敏になったりするのが常だった。
今の様子で少年の性格を決め付けるのは、今日が雨だから一年中雨が降っていると判断するようなものだった。
「男心と秋の空、と言っても分からんだろうな」と、私は言った。
少年が戸惑ったように私の顔を見た。季節というものを知らない世代だった。
ある大人に言わせれば四季を知らずに育つ例の大災害後の子供たちは"可哀想"であり、ある大人に言わせれば
"日本の歴史はここで断絶する"のだそうだが、当の子供たちにとってはどうでもいいことだった。
私に言わせれば子供は子供であり、それ以上でもそれ以下のものでもなかった。

174: ◆IE6Fz3VBJU
07/11/13 00:41:20
「ところで、親御さんには電話はしてあるんだろうな」
少年は固い表情を浮かべ、首を振った。「いいんです。あの人たちは僕のことなんか、別に心配してませんから」
私は立ち上がり、少年に家の電話番号を訊いた。戸惑う少年に口調を強め、重ねて訊いた。
何か言いたそうな顔をしたが、今度は素直に電話番号を口にした。
その番号をダイヤルすると、5回目のコールで相手が出た。中年の男の声だった。
「はい。六文儀ですが」
私は偽名を名乗り、碇シンジ君の同級生の父だが、彼の家ではないのか訊いた。六文儀と名乗る人物は、碇シンジは従兄弟の子で、
今はこちらで預かっているのですと言った。碇君は今私の家にいるがもうすぐ帰る、私が送るので心配しないように述べると
六文儀はそれはご丁寧にと礼を述べて電話を切った。時計を見ると9時半を回っていた。ロンドンの明日の天気に寄せるのと
同じ程度の関心はあるようだった。

「実の親と一緒に住んでるわけではないんだな」
「ええ。父さん……父は」一瞬口ごもった。「大事な仕事があって……ずっと離れて暮らしていて……でも、この間まで一緒に……
一緒に住んでたわけじゃないけど……働いていて、でも、僕は―僕は父さんの期待に」そう言うと絶句した。
泣き出すのかと思ったが、少年はその代わりにカップを口に運び、薬でも飲むように紅茶を飲み干した。カップを持つ手が震えていた。
「すいません。何のことか、分からないですよね」
私は少し考えて言った。「言いたくないことは言わなくていい」
これからの状況次第では強引に聞き出すことがないとは言えなかったが、今はこちらからの行動や問いかけは最小限に留めるべきだった。

175:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/14 00:12:27
乙!

176:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/17 00:35:27
シンジ「…ケンスケ、僕を撮れ。逃げ出さないように」

177:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/17 00:43:51
原典を極めてよく読みこんでるな!

178:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/17 00:45:12
…遅筆だけは勘弁。
以前別の板で、某遅筆作家のパスティッシュSSが元ネタ同様
断絶してしまった事があるので。

179: ◆IE6Fz3VBJU
07/11/19 22:42:53
十秒ほど沈黙が続いた。私の親切ごかしの言葉はむしろ逆効果になったようだった。
さらに十秒が過ぎ、中学生との会話を再開するきっかけを作るという、"実録囲碁講談"収録の詰め碁並みの難問に
取り組む気になった時、私は少年の様子がおかしいことにやっと気がついた。
何と、緊張しているのは少年だけではないのだった。
「おい、君……碇君」
少年は私の問いかけがまるで耳に入らないように手元の封筒をじっと見つめていた。これから何を言うか考えている風には
見えなかった。精神がどこか別の世界に去り、肉体だけがここに置き去りにされたような感じだった。
「聞いているか?」私は声のボリュームを少し上げた。
少年が弾かれたように顔を上げた。
「えっ? 何ですか?」
「俺は言いたくないことは言わなくていいと言ったが、何も言うなとは言ってない」
「……すいません。……ぼーっとしてました?」少年は顔を赤らめた。
「少しな。眠たいのか?」ぼーっとしてるとは少し違うような印象があったが、取り敢えずはそう答えた。
「いえ。大丈夫です」
「良かったら日を改めてもいい」改めた日が永久に来なくても特に文句はなかったが、勿論それは心の内に留めて置いた。
「本当に、大丈夫です」少年は深々と溜め息をついた。中学生らしくない仕草だったが、この少年には妙に似合っていた。
「ちょっと疲れてるだけです……。色々あって……。」気弱そうな笑みを浮かべると、はじめてそれに気がついたように封筒を見た。

180: ◆IE6Fz3VBJU
07/11/19 22:44:59
「そう……そうです。これ……」少年は封筒から二十万と二つ折りにされた白い紙を一枚取り出した。
「これを見て欲しいんです」
私はカネの方はなるべく見ないよう最大限の努力を払いつつ、少年が差し出した紙を受け取った。
A4のコピー用紙に、新聞や雑誌から切り抜いたと思われる文字が貼られていた。大きさ自体はばらばらだったが、
縦一列、きちんと等間隔に並べられていた。文字はこう読めた。
「オマエノ イバショハ ココジャナイ モドラナイト コロス」
私は予想以上に金額が多かった税金の督促状を読むように、三度読み返した。何度読み返しても督促状の金額が変わらないように、
脅迫状の内容も変わらなかった。
私の頭をかすめたのは、素手で受け取ったのは失敗だった―ということだった。しかし、今さらどうすることも出来なかった。
私は脅迫状をテーブルに放り出して少年に言った。「これを出した人物に心当たりはあるか?」
「いえ……ありません」やや口ごもりつつ少年は答えた。本当は心当たりがあるのかも知れないが、当面は無理強いはしないと
決めていたので、次の質問に移った。
「では、この"戻れ"と言ってるのは?」
「……分かります」今度は少年は断言した。
「どこだ?」
「第三新東京市です」と、少年は言った。

181:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/20 00:51:32
乙でやんす

182:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/20 03:28:10
乙です

183:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/26 00:14:43
キール「ココにバットがある。
    俺は野球が好きだ!!」
(バコッ!!ドガッ!!)
キール「裏切り者は殺す。」

184: ◆IE6Fz3VBJU
07/11/27 01:16:18
私は改めて少年を見た。少年の口からどんな言葉が出ても細く頼りない姿に変化はなかった。
第三新東京市は謎めいた都市だった。完成したあかつきには日本の首都になると喧伝されているが、ここ最近連続して
起きている原因不明の爆発事故のため、市近辺の警戒は―市内部のことは漏れてこない―戒厳令なみの厳しさで、
潜入しようとした%8W 03ーナリストが逮捕監禁された、酷いときには射殺されたという噂を耳にしたことがあった。
もっとも野次馬が近寄らないよう市側が流したものなのかも知れないが、観光に行く気になれないことは確かだった。
「あそこは国連の関係者しか入居できないという話だったが……」
「父が、そうです」少年はどこまで喋っていいものか迷っているような様子だった。
私はふと碇という名字をどこかで見た覚えがあるような気がした。あるとしても最近ではなく昔の話だと思われたが、
取り敢えず後回しにすることにした。
「脅迫状は、いつ、どういう経緯で送られてきた?」
「2日前に郵便受けに入ってたのを見つけて……封筒に僕の名前だけが書いてありました。犯人が直接投函したんだと思います」
「あるいは無関係の人間が頼まれて投函したか。……ところで、脅迫状は俺が預かろう。いいな?」
「はい。構いません」少年はぎこちなく頷いた。私は脅迫状を中に何か入れたためしがほとんどない小型の金庫に入れると、
窓際に行って窓を開け、タバコに火をつけた。そろそろ肝心の用件に入らねばならなかった。
「それで、俺にどうして欲しい? 分かってると思うが、脅迫状を出した人間を見つけろというなら来るところが間違っている」
「……いえ。それはいいです。頼みたいのは……僕がどうするか決心するまで、僕の身を守って欲しい……というのが、依頼です」
「ボディガードか」
「そういうこと……ですね」

185: ◆IE6Fz3VBJU
07/11/27 01:20:20
私は煙を深々と吐き出した。「いいか、碇君。護衛なんてのは一人でやるものじゃない。俺は漫画に出てくるような探偵じゃない
から飯も食わなきゃならんし、便所にも行かなきゃならん。睡眠もとらなくてはならないんだ。やはり警察に行くべきだな」
「いえ……大丈夫です。一日中ついてくれなくてもいいんです」少年は切迫した口調で食い下がった。「学校に行くときと
帰るときだけで、大丈夫ですから。お願いします」
「君が大丈夫でも俺が大丈夫じゃない。君の身に何かあったら俺の責任だ」
少年の顔に翳が差した。「別に、僕は……僕なんかどうなっていいんです。だって僕は、逃げ出したんだから。逃げ出した僕に
価値はないんだ」
「……どうでもいいなら、ボディガードなど必要ないな」外を見ると、駐車場に車が一台、入ってくるのが視野に入った。
「い、いえ……違います。そうじゃなくて……」少年は自分が言ったことが信じられないような顔つきで私を見た。
「そうじゃないんです……今言ったことは撤回します。お願いします。僕、おじさんに断られたらどうしていいか……」
私は少年のいまにも消え入りそうな姿をタバコの煙越しにじっと見つめて、少年の話を考えた。しかしその実、私に選択肢はないのだった。
「分かった。そこまで言うなら引き受けよう」
「本当ですか」少年はぱっと顔を上げると安心したようにため息をついた。
「しかし、いつまでだ。脅迫状には期限が書いてないな」
少年は、言われてみると、という顔をした。しばらく考えたあと、「……一週間でいいです。一週間で決めます」と言った。
時計の短針は十時を指していた。私はタバコを灰皿に押し付けた。
「期間のことはまた考えよう。今日はここまでだ。家まで送る」
「いえ、いいです。まだバス、出てますから。それにおじさん、疲れてるみたいだし」
こんな子供に心配されるようでは私もお終いだ。私は苦笑して言った。「脅迫された子供を一人で帰す訳にはいかんな」
「そう……ですか。それと、お金……これ、前払いで」こちらのほうは、子供に心配される心当たりがないではなかったが、
窓を閉め、立ち上がって言った。「カネは仕事が終わったら受け取る」
それから私たちは事務所を出て駐車場に向かった。


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