07/02/09 23:48:27
>>1さん乙!
ゼーレの目的は原作とは違う方向からの補完だろうが
これからそれぞれの人間模様がどこに向かうか楽しみだ。
151:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/09 23:58:48
おいらの股間もお祭り中www
152:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/10 01:19:00
面白いっすよ~
153:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/10 13:32:32
乙だす!
154:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/10 22:16:45
「戦いは男の仕事!」
ビシッとポーズを決めて、出撃するシンジ。さて、いよいよ第12使徒レリエルとの対戦である。
中空に浮かぶ不気味な姿で得体の知れない所はあるが、
アスカとの最前の約束もある。壁のシミのような第12使徒イロウルとの戦いも正直言って肩すかしだった。
だからこそ、空元気にも見えるシンジの意気込みようも無理はない。
その勇み足の結果は、とてつもない危機的状況へと陥った。
使徒の影と思われていた地面の暗黒へと、初号機が取り込まれてしまったのだ。
(なんとしてでも、お止めするべきだった。作戦部長失格ね……これじゃ……)
ミサトの後悔は遅すぎた。これまでの使徒の傾向からして、このような展開になるとは考えても見なかった。
絶叫するミサト。迷走するアスカの弐号機。混乱するNERV司令部。
そんな中で、何故か綾波レイだけは落ち着き払っていた。
現場に緊急の司令部が設置され、主だった者達が集められる。
ホワイトボードに複雑な数式と図式を描き、解説とは言えない推論ばかりを並べているのは、
NERV技術部の第一人者、赤城リツコである。
「あの中空に浮び、使徒と思われていたゼブラの球体。あれが使徒の影でしかないと言えるかも知れません。」
「言えるかも?知れません?……それじゃ、シンジ様を取り込んだ地面の黒い影こそ本体ってこと?」
いらだっているミサトがズケズケとした調子でリツコに食いつく。何かアラが有れば殴りかかりそうな状態だ。
「そう考える他はないわね。あの、極薄の黒い影……別の宇宙空間に繋がっているのじゃないかしら。」
「聞いたこともないわね!そんなSF科学小説なんて!」
155:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/10 22:17:47
リツコも負けじと怒鳴り返す。
「考えられることを答えているだけよ!聞きたくないならいいわ。唯一、初号機を救出する方法は一つだけ。」
「……何よ。」
「現存するエヴァ2体のATフィールドを1000分の1秒だけ干渉させ、全てのN2爆雷をその瞬間に……」
つまり、考えられる限りの破壊力を全て注ぎ込む訳だ。
「何ですってッ……!」
思わずミサトはリツコの胸ぐらを掴む。
「何よそれッ!そんなことをしたら、シンジ様がどうなるか……」
「いえ……シンジ様のことは、自らを滅ぼしてでも使徒が守るわ。それが狙い……」
「……え!?」
ミサトはリツコのその言葉に驚きを隠せない。
きょとんとした表情で、リツコを掴んでいた手をゆるめる。
「どういうこと……ねぇ!使徒って何なの!?そしてシンジ様は一体……」
「あなたに渡した資料が全てよ!ミサト……私を信じて……」
「……」
ほぼ街全体を包み込むかのような地面の黒い影。そして中空に浮かぶ不気味なゼブラの球体。
地上ではNERV職員が奔走し、上空では戦略自衛隊の航空隊が結集しつつある。
これまでの楽天的な使徒との戦闘が一変して、正に総力戦と姿を変えつつあった。
そして使徒内部の初号機と、シンジである。
156:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/10 22:18:44
「生命維持モードに切り替えてから10時間……僕の命もあと数時間、か……」
生命維持モード。それは、まさか使うことになろうとは思っても見なかった初号機の機能だ。
「でも……何故だろう。あたたかい……いや……懐かしい……?」
何故かシンジは苦痛を感じることなく……むしろ、表情が和らいでいた。
「そうだ……何故か懐かしい……この感覚……そうだ……」
それは、シンジがすっかり忘れていた母ユイとの記憶であった。
「今帰ったわよシンジ!待たせちゃってごめんね!」
「あー、ママ!おかえりなさーい!」
「ごめんなさい。お腹がすいちゃったでしょ?」
科学者としての仕事を終え、預けていたシンジの元に帰り着いたユイ。
四六時中、一緒にいられないだけに互いの思いはひとしおだろう。
「シンジ、体を洗うからこっちにいらっしゃい。ほら、おちんちんもちゃんと洗わなくっちゃ。」
「きゃはは、ママやだ、くすぐったいよぅ」
「ウフフ……あらヤダ、そんなにママのおっぱい見つめちゃ恥ずかしいわ。」
「ねぇママ……おっぱい吸ってもいーい?」
「もう……赤ちゃんじゃないのよ?……ううん、いいのよシンジ……好きなだけ吸って……」
「ありがと、ママ……だいすき……」
「私もよ、可愛いシンジ……」
157:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/10 22:19:40
ユイはシンジを思う様に溺愛し、シンジもまた自分の気持ちの全てをユイにぶつけた。
何時までも続くかに見えた、とろけるように甘い日々。
だが、終わりは必ず来る。ユイは母親ではあるが科学者でもあり、そして女でもある。
「何だ?扉が開いてるぞ?」
「ねむれないよぅママ……あれ?このひとだれ?ねぇ!ママとなにやってるの!?」
「おい、なんとかしてくれよ。ユイ……」
「ご免なさい……ほら、シンジ?もう遅いから寝ましょうね……」
「ねぇママ、だれなの?ママとはだかでなにやってたの?」
「ほら、この間言ったでしょ?あの人がシンジのパパよ。」
「ぱぱ?なにそれ。ねえ、あのひととなにしてたの?」
そんな風にユイを困らせたこともあった。
(そうだ……思い出した……あの時の男こそゲンドウ……僕の父さん……)
初号機の中で夢うつつだったシンジの顔が、次第に苦痛で歪み始める。
「また、このおじさんがママをつれていくの?やだよママ、いっちゃやだ!」
「シンジ君……俺は君のパパなんだよ。な?パパを信じてくれ。」
「そうよ、シンジ。ここでおとなしく待っててね。」
「では、いいか?ユイ。」
「はい、やります。シンジの為に……そして、世界の為に……」
158:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/10 22:20:57
そして……初号機の起動試験が終わり……
「ねぇ!ママはいつになったらかえってくるの?ねぇ!ママをどこにつれていっちゃったの?」
「シンジ。もう、ママは帰ってこないんだよ。」
「うるさい!おまえなんてしらない!ママをかえして!ねぇ、ママはどこなの!」
「ママはちょっと遠くに行ったんだよ。ほら、新しいオモチャを買って来たよ。これなんか……」
「ぼくを……ぼくを……」
脳裏に蘇る記憶の映像がシンジを怒りの頂点へといざなった、その時。
(あれは!?)
全天真っ白だったレーダーに何か写っている。
赤く輝く球体。言わずと知れた使徒のコア。
さあ、これが出口ですよ、と言わんばかりの。
「ぼくを…………ぼくを………………僕をバカにするなァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」
激怒したシンジに呼応して初号機が吠え猛り、何もない虚無空間に鋭い爪をかけ、
そして!
159:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/10 22:22:38
「あれは……?」
浮かんでいた球体に突然の異変が起こり、ミサトやリツコが驚愕の声を上げる。
「そんな……何もしていないはずよ……?」
「まさか、シンジ様が……」
「そんな馬鹿な!初号機のエネルギーはゼロなのよ!?」
バリバリと使徒は引き裂かれ、その裂け目から姿を現す初号機。
その血しぶきを上げる使徒の姿は、うかつにもシンジの記憶を呼び覚まし、その逆鱗に触れた結果だろうか。
いや、あえてシンジを怒りの頂点へといざなうことが使徒の意図であった、とも……
虚無とも影とも言われた球体の使徒を粉々に砕き、すさまじい轟音と共に初号機は地上に降り立つ。
吠える初号機。その姿に驚愕し、恐怖するNERVスタッフ。
リツコも又、恐怖に顔をゆがませながら思わずつぶやく。
「なんてこと……これがエヴァの力……いや、これが碇シンジの……」
「……」
そんなリツコを怪しげに見つめながらも己の職務に立ち返り、シンジの保護のため奔走するミサト。
こじ開けられるエントリープラグ。病院へと担ぎ込まれるシンジの体。
その彼の尚も強ばり続ける怒りの表情のため、指を触れることもためらうミサト。
しかし、母に対するシンジの思いは誰も知らない。
160:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/10 22:23:59
「う……くッ……」
ベッドの上で苦悶の表情を続けるシンジ。そんな彼を見舞う二人の少女。
アスカと綾波レイである。
譫言とも言えない苦痛を漏らしながら悶えるシンジを見つめていたレイは、ふとアスカに振り返る。
「ご免なさい……少し席を外して……」
「えぇ!?」
アスカは不審がったが、しかし以前よりシンジに対する横暴は和らいでいる。
ふっと肩をすくめて、意外にも素直に病室から去っていった。
アスカがドアを閉めたのを見越して、はたして何を思ったのか。
突然に服を脱ぎ、胸をはだけて苦しむシンジに寄り添ったのだ。
「ん……んん……」
そして、未だ幼い自分の乳房をシンジに含ませる。夢うつつのシンジはそれに夢中でむしゃぶりついた。
そのレイの表情……あいかわらずの無表情だが、仕草だけはこよなく優しかった。
(ああ、ママ……やっと帰ってきたんだね……ママ……)
やがてシンジの表情は和らぎ、そして深い眠りにつく。
そんな彼を見て、レイは服を直して病室を出た。
(私には……シンジ様のお相手は無理かもね……とても、あの子の様に母親代わりには……)
シンジの思いを知ってか知らずか。
そんなことを考えながら、ミサトはシンジの病室にある監視モニタを停止させ、立ち去っていった。
161:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/10 22:28:41
今日はここまでっす。
162:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/10 22:51:08
モツカレー様です
163:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/11 01:10:41
シリアスなのも面白いな 乙
164:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/11 14:57:03
乙ですな
165:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/11 22:30:37
さて、引っ越しを終えた洞木ヒカリは台所で牛乳を飲みつつ、慌ただしい朝食の準備をしている。
まだまだ開けていない段ボール箱で一杯だ。今日も片付けに丸一日費やさなくてはならないだろう。
ふと振り返ってみると、妹のノゾミがTVのリモコンを片手に電源を入れている。
そして映し出された画面を見て、ヒカルは思わず口に含んだ牛乳をブッと吹き出してしまった。
『シンジ・アルバム』
見れば、冴えない顔をしたシンジ様で画面が一杯だ。
『本日、開催されたアジア陸上競技大会にシンジ様はご出席され……』
チャンネルをひねってみれば、これまたシンジ様のご登場。
『ここはシンジ様が幼少の頃すごされたこともあり、もっともシンジ様に近い街として……』
『エヴァパイロット・碇シンジの朝は一杯の果物ジュースで始まる。』
『ええ……健康には気を遣って……』
ハッとなって飲んでいた牛乳瓶を見てみると、愛想笑い満面のシンジ様の顔がそこにある。
実を言えば、これがNERV広報部の仕事であり、その手を日本中いや世界中に伸ばしつつあったのだ。
あ、シンジ様だ、と画面にかじりつくノゾミ。
これでは引っ越しした意味がない、と悪態をつきながら、TVのスイッチを乱暴に切る姉コダマ。
驚愕と恐怖に歪ませていたヒカリの顔は、次第に悲しい表情を浮かべてつつあった。
(逃げて、碇君……なんとしてでも……どんなことをしてでも……)
166:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/11 22:31:55
「シンジ様、こちらになります。」
机上のシンジに向かい、机の上に書類を置くマヤ。
が、マヤはその書類から手を離そうとはせず、何故か動きを止めている。
「あ……ご、ごめんなさい。」
思わず赤面しながら、横を向いてマヤから視線を外すシンジ。
マヤはシンジの視線が自分の胸に注がれていることに気づき、彼のために動かずにいたのである。
「い、いえ……いいんですよシンジ様……その……幾らでも……」
下手に誘い文句になってしまうと禁止事項に抵触する。
ましてや、ミサトから忠告を受けている。露骨に媚を売られることはシンジ様はお嫌いになる、と。
慌ててマヤは口ごもり、彼女もまた、顔を真っ赤にして部屋を立ち去る。
やっと一人になったことを確認したシンジは、
何故こんなに自分の執務室が広いのかと悪態を付きながら、トイレへと駆け込んでいった。
(シンジ様の様子が変わった……変、というか……肩の力が抜けた、というか。)
そんなことを思いながらNERV本部を歩くマヤ。先程のエピソードについて考えていたのだろう。
(でも、最近は夢見がちな様子もあるし……すこし、気を抜いておられただけかな……)
そのように、遠慮がちに自分をなだめようとする。自分に魅力を感じたわけではないのだろう、と。
しかし、実のところシンジの白羽の矢が立つのはマヤ、というのがもっぱらの噂が立っている。
マヤ自身もそれを耳にしている。しかし、それはシンジと共に行動することが多いだけの話で……
そんな、どうどう巡りの思いの果てに、マヤは大きな溜息をついた。
167:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/11 22:33:08
そんなマヤを察したのか。
ある男がマヤに声をかけてきた。本部内に居る男性は極めて限られている。
シンジでも司令のゲンドウでもなければ残るは一人、加持リョウジである。
冬月?まあ、日本のどこかでモグリの医者を続けていると考えて頂ければいいだろう。
「あいかわらず、ここの制服は男を楽しませてくれるね。」
「ああ、加持さん。お疲れ様……ちょっと、そんなにジロジロ見ないでください。」
抱えた書類で隠そうとするが、胸を隠してなんとやら、だ。
どんどん過激になるNERVの制服。この次にはビキニしかないだろうという有様である。
「私だって恥ずかしいんです。」
「つれないねぇ……でも、相手にしてくれてないんだろう?お堅いシンジ様は……」
「あの、止めてください。ホントに……ミサトさんに言いつけますよ?言いつけたら……」
「殺される……か?その前に君の……あ。」
トイレから出てきたらしいシンジの姿がそこにあった。
「し、シンジ様。参りましょう。さ、こちらに……」
慌ててシンジをなだめるのように腕を取るマヤ……が、ギロリとシンジは加持を睨んだままだ。
「やあ、シンジ君。えーと、どうだい?お茶でも。」
「……僕をバカにするんですか。」
その一言だけを残して、シンジはマヤを伴い去っていった。
168:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/11 22:34:35
(やれやれ。さてと……パスワードは……)
個室でMAGIの端末に向かい、何かを調べている加持。
実は、マヤですら許されていない権限をも彼には与えられている。
シンジに対する傾向と対策のために彼が赴任してきたのだから、当然と言えば当然だ。
そして画面に踊る画像の数々。それはシンジが自宅で閲覧しているお気に入りのものである。
(ふーん……あまり過激なものは好みではないんだな……)
実は、以前にミサトがモニタリングしたものとほぼ同じ内容なのだが、やはり男の見る目とは違いがある。
加持の頭の中で次第に集約され、そして行き着いた先。
(ん……そうだ、確か……)
全く別の画像を巨大なデータベースから引きずり出す。
それは幼いシンジと共に写る母である碇ユイの画像であった。
(なるほどね……それでかな?シンジ君の側にいることが多いのはショートカットの綾波レイ、そして……)
思わず頭をかく加持リョウジ。
(マヤちゃんにちょっかい出したのはまずかったかな……)
「あー、何エッチな画像見てるんですカー?」
何時の間にやら背後に立っていたのは、惣流アスカ・ラングレーであった。
「こ、こら!子供が見るもんじゃない!」
「それじゃ、しばらく留守にします。」
そういって、荷物を片手にシンジに挨拶するミサト。
169:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/11 22:36:13
保護者役のミサトが側を離れるのも珍しいが、前回の件を経て使徒との戦いが困難なものと成りつつある。
新たな戦略を組むために、作戦部長たるミサトは様々な活動を行わなければならないのだろう。
向かう先は松代の第2実験場。そして、その内容は?
「エヴァ参号機!?」
驚くシンジ。そんな彼を落ち着かせようとミサトはシンジに説明する。
「はい。戦力強化のためにアメリカで建造されていた参号機をこちらで引き取ることになったのです。」
「……」
「心配は要りません。私の留守の間は……」
その時、玄関からバタバタという足音が聞こえてきた。
「お、おはようございます!あ、あの……」
現れたのは、手荷物片手のマヤであった。
「……彼女がお世話をさせて頂きます。マヤ?よろしくね。」
ニッコリとミサトがマヤに微笑みかける。
「なんなら、荷物をまとめて引っ越してくれば良かったのに。手配しようか?」
「いえ、そんな、あの……よろしくお願いします。」
口ごもり、赤面しながらもシンジ向かい慌ただしいお辞儀をするマヤ。
とはいえ、お世話するといっても大したことがある訳ではない。生活面はメイド達がまかなっている。
あるといえば、NERV本部との連絡係ぐらいなのだが。
シンジと言えば、訳の分からぬ状態で頭をかくばかりである。
170:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/11 22:37:21
今日はここまでっすー
171:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/11 23:05:30
ヒカリキタ━━━(゚∀゚)━━━ !!
172:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/11 23:20:38 55DFzkG+
冬月・・・w
173:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/11 23:21:54
参号機誰が乗るんだろ・・・
174:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/11 23:29:03
流れ的にはヒカリじゃね?
おっと言い忘れた。相変わらずGJ!!
175:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/12 08:18:17
なるほど。
つまり危機に陥ったところを救われて惚れてしまうことで、まともな感性でシンジを気遣っていたヒカリが死んでしまうと言うことか。
勿論登場時に薬物誘導やら催眠やら何やら掛けられて戦場に出たときにはとっくにお亡くなりになっているんだがなw
176:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/12 10:13:40
アンソロ本でヒカリがエヴァに騎乗するのがあったの思い出しわ
177:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/12 11:08:54
??日本語でおk
178:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/12 12:54:19
クルナ
…… ニ チカヅクナ
オマエ ハ ジャアク
オマエ ガ …… ヲ クルシメル
オマエ ガ …… ヲ オトシメル
クルナ
チカヅクナ
サモナクバ……
179:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/12 12:55:18
「遅いわね。」
松代に到着し、参号機を待つミサト。
「そうね……何か有ったのかしら……」
その傍らで、リツコは落ち着き払ってノートPCに向かい、コーヒー片手にタイプを続けている。
その片手でフルキーボードをタッチタイプする様は実に年季が入ったものだ。
「ところで、リツコ。この松代で行う起動試験って……パイロットを使うの?」
「当然よ。パイロット無しではエヴァは動かないわ。」
「でも、シンジ様も居ないし、レイやアスカも連れてきていないわよ?」
「……あなた、何にも知らないでここまできたの?参号機に向けて新たにパイロットが選定されたわ。」
「では、4人目?」
「第4位は残念ながらボツ。ほら、シンジ様の学校で病院送りにされた子よ。」
「ああ……諜報部も酷いことしたわね。名前は……なんていったっけな。」
「聞いた話では大怪我をさせたのはシンジ様のファン達らしいわ。左足を切断するほどの複雑骨折。」
「嘘……そんな……」
「シンジ様への信仰心だから咎めるのも心苦しい、というわけで諜報部がしたことにしたんですって。」
(異常だわ……本当に、この連中はシンジ様をどうするつもりなのかしら……)
そんなことをミサトは考えていたが、気を取り直してリツコに訪ねる。
「で、リツコ。新しいパイロットって……」
リツコは一枚の資料をミサトに示した。
「参号機と一緒に輸送機でこちらに向かっているはずよ。名前は……」
180:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/12 12:56:09
シンジ邸。
「シンジ様が、差し支えなければ夕食をご一緒に、と申しております。」
マヤが与えられた部屋にメイドの一人が訪れ、礼儀正しく応対する。
「そうですか……何時から?」
「よろしければ7時に食堂へお越し下さい。献立はこちらになりますが、お嫌いな物があれば……」
「いえ……好き嫌いはありません。」
「そうですか。何かご用件がありましたら鈴を鳴らしてください。では、失礼いたします。」
マヤはシンジの世話役の代理としてやってきたのだが、完全にお客様扱いだ。
そして、マヤを迎えての夕食となる。
細長いテーブルの上座には当然シンジが座る。その両サイドにはレイとマヤ。
「……やっぱり、そういう服の方がいいな。マヤさんは。」
「そ、そうですか。ありがとう御座います……」
その日のマヤは、白いブラウスにパンツをはいたシンプルなものである。
女性らしいスタイルが映えるが、肌の露出は実に少ない。
やはりシンジは、本部の乱痴気ぶりに呆れていたのだろう。
(NERV職員を辞めて、本当にここでメイドをしたくなっちゃうな……)
見ていると、料理を運んでくるメイド達に対し、シンジは微笑みさえ浮かべて接している。
さっきのように服装に関して褒められたのも(今までの制服のセンスはともかくとして)初めてのことだ。
何だか、心の中にグラリと揺らぐものを感じて仕方がない。
181:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/12 12:56:58
しかし、その傍らでお相伴程度にお皿を突いている綾波レイは、相変わらずの無表情ぶりだ。
シンジがたまに話しかけるが、軽く頷き返すだけなのだが……
(あ……)
その瞬間、マヤは思わず声を上げそうになった。
ある時、レイがナプキンを手に取り、シンジの口元を拭いた。
それに対してシンジは言う。なんだか母親に拭いて貰ったみたいだ、と。
するとレイは微かに赤面して、しどろもどろに席に戻った。
実に微笑ましい光景である。マヤはそんな様を見て、ふっと溜息混じりの苦笑いを浮かべていた。
自室へ戻り、持ち込んだノートPCに向かい一仕事を終えた後、
マヤはシャワーを浴びて柔らかい部屋着に着替え、パタンとベッドに体を投げだす。
言いつければどんな飲み物でも持ってこさせる、という。
しかし初日から遠慮がちなマヤではなかなか言い出しづらい。
あらかじめ部屋に置いてある水を飲んで一息ついた。
なんだか水まで物が違うんだな、などと感じながら。
(でも……コンビニで自分で買ってきたペットボトルの方が気安くていいなぁ……)
シンジ様も、慣れないうちはこんな心境だったのだろうか、と考えていた時のこと。
(とんとん……)
誰かがドアをノックする。出てみると、そこに居たのはレイであった。
182:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/12 12:58:00
「レイ、どうしたの……え、あの、ちょっと……」
レイはマヤの手を取り、どこかに引っ張っていこうとする。そして一言。
「碇君、うなされているみたい。」
「え……でも、それが……」
マヤは何か言おうとするが、レイは取り合おうとしない。
ある扉の前に来るとノックもせずにドアをあけ、薄暗い部屋の中をどんどん進んでいく。
(あ、ここは……シンジ様の寝室?)
(入って……)
(ええ!?)
レイはシンジが潜り込んでいる毛布をめくり、指し示した。
ベッド上では、シンジは胎児の格好でうずくまっていた。
(入って……)
半ば押し込むようにして、レイはマヤを強引にシンジのベットへといざなった。
(あ……)
そして、レイは毛布をかけ直して扉から閉めて去っていった。
マヤは硬直して動けない。今の状態、シンジを背中から抱きしめるような格好になっている。
緊張のあまり、自分の脈が耳に響き渡たる中、ふと、微かな声を耳にした。
(ママ……)
急速に静まりかえるマヤの心。思わずシンジに身を寄せて、改めて後ろから抱きしめた。
183:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/12 12:59:05
やがて、穏やかな寝息が聞こえてくる。どうやら、より深い眠りへと入ったのだろう。
(もう、いいかな……)
そう考えたマヤはベッドを抜け出し、そっと部屋から出て行った。
何故、レイは自分にこの役を与えたのだろう。
実を言うと、病室でレイがシンジを慰めていた一件をミサトから聞いていた。
レイこそがシンジと連れ合う相手で、彼女もそれを望んでいるのだろう、と思っていたが……
(つまり、シンジ様をいたわることさえ出来るなら、どうでもいいのかな?……)
でも、何か腑に落ちない感じがする。
部屋へ戻り、何気なくノートPCを開く。
いつもの癖でMAGIに接続し、各部署の状況にざっと目を通した。
が、驚いて目を見開き、モニタを見直す。
「え……使徒!?」
「使徒ですってッ!?」
驚いたミサトはリツコに聞き直す。
「間違いないわ。パターン青……参号機とほぼ同じ座標ね。状況は?」
すると、輸送機に搭乗しているパイロットと思われる声が無線機のスピーカーから聞こえてくる。
『それが……(ガガッ)……機体が言うことを聞かな……(ガガッ)……あああッ』(ブチッ)
184:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/12 13:00:10
松代の司令部が沈黙に沈み込む。
もはや無線機からは、ザーッという音しか聞こえてこない。
「やられた……?」
そう言うミサトにリツコは冷たく答える。
「まだ、輸送機は飛行中だけど……恐らくは、ね。」
「こうなっては、ここに到着させる訳にはいかないわね。輸送機が操られている可能性がある。」
ミサトは苦悶の表情を浮かべていたが、意を決して指示を下す。
「参号機、およびその輸送機を破棄します。戦自の航空隊に連絡、空中にてN2爆雷の……」
その時、沈黙していたかに見えた無線機から、先程とは全く別の声が聞こえてきた。
『それは待ってくれないか。一つだけ試したいことがある。』
どうやらマイクのスイッチが入りっぱなしで、ミサトの声が聞こえていたらしい。
こんな状況だというのに落ち着き払った涼やかな声。
「誰……?」
尋ね返すミサト。だが、無線機はもう答えない。
しばらくして、リツコが言う。
「……レーダーから使徒の反応が消失。もしや……殲滅した?」
「ええ!?」
やがて、輸送機の姿が肉眼でも見え始めた。
使徒の反応が消えたとはいえ油断は出来ない。試験場に緊張が走る。
185:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/12 13:01:39
既に試験場は戦自の戦車隊で一杯である。
上空にも航空隊が飛来してきている。最悪の場合、試験場ごと使徒を吹き飛ばす算段だ。
現れた輸送機に釣り下げられている参号機……いや、違う。
既に参号機は稼働している。そして体を揺すり、輸送機の翼を操っている様子が見て取れたのだ。
まるでメーヴェを操る某アニメキャラと同じ要領で輸送機を操作し、
凄まじい轟音と共に見事に着地する参号機。
幾分、滑走路を掘り下げる結果になってしまったが。
「使徒の反応無し……でも、輸送機は半壊状態ね。」
ミサトに向かってリツコが言う。未だ緊張状態のミサトは何も答えない。
やがて、参号機はその場にひざまづき、エントリープラグが排出される。
扉が開き、吹き出すLCLと共に現れたのは一人の少年。
「いや、危なかったよ。あと少し放電が必要だったら、もう参号機は動かせなくなっていたところだ。」
そう言って、作業員の助けを借りて地上に降り立つ。
微妙な表情のミサトに対して、ニヒルな笑顔を浮かべて彼は軽やかに挨拶をした。
「渚カヲルです。よろしく。」
これが、フォースチルドレンが使えなくなったため見事に繰り上げ当選となった、
フィフスチルドレンたる渚カヲルの早すぎる登場である。
186:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/12 13:03:12 Nk/4KO9w
つーわけで、そろそろまとめにかかります。
といっても、こっからの量も多くなるかも知れませぬ。
こっからさき、さらに甘やかしとお笑いが少なくなってしまいそうですが、
そうなったらすんませーん。
187:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/12 13:18:34
すまなくないGJ
188:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/12 13:37:20
GJです
カヲルキュンktkrww
189:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/12 14:53:18
ペースが早くて素晴らしいです
乙!
190:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/12 18:14:30
>>188
腐女子乙
>>1
GJ!
191:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/12 20:18:12
>>186
トウジカワイソス
カヲルが来たって事はやっぱり
うほっ
192:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/12 20:20:21
>左足を切断するほどの複雑骨折
ちょwwwwwトウジの見せ場なのにシンジ様のファンのせいかよwwwww
しかしGJ!!
本当ペース早いな
193:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/12 20:21:23
>>191
あえてそれはないんじゃないかと言ってみる
194:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/13 03:05:19
>>1様を甘やかしてみたくなるほどGJです
195:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/13 09:12:20
しかし、男性のサブキャラにはホント容赦ねーなw
196:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/13 13:57:14
レイがどうゆう風に動いていくのかが楽しみだな。
197:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/13 19:14:25
「ようこそ、NERVへ!」
歓迎式典、というほどでもないが、その場に居合わせた職員達の拍手によって、渚カヲルは迎え入れられた。
その中で、私の時はこんなに歓迎してくれなかったと、愚痴るアスカのことはまあいいだろう。
歓迎する職員の中央に碇シンジの姿がある。カヲルはシンジにまっすぐに向かい握手を求めた。
「君が碇シンジ君だね?僕はカヲル。渚カヲル。」
「あ、ああ、よろしく。渚く……」
「カヲルでいいよ。碇シンジ君?」
「ああ……僕も、えーと、シンジでいいよ。」
シンジに親しもうと柔らかい笑顔で接するカヲル、しかし何故かシンジの顔は引きつっている。
「それでは、NERV本部をご案内いたします。こちらへ……」
マヤがカヲルを連れてNERV観光へと向かおうとしたところ、
「……マヤ。所用があるから誰かに代わって貰って。」
そう言ったのは、しかめっ面でカヲルを睨んでいたミサトであった。
そしてマヤの側に近づき、耳元でささやく。
(なんか、嫌な予感がするの。マヤはシンジ様の付き人として離れてはダメ。)
(え……はぁ……)
(それから、やっぱりウチに引っ越しなさい。命令よ。とにかくシンジ様から離れないで。)
(……はい。)
カヲルはご機嫌な様子で手を振ると、花のように色めき崩れる女性職員達。
彼はなかなかの美貌の持ち主だし、無理からぬことではある、が……
198:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/13 19:16:17
(おかしい。シンジハーレムと呼ばれているこの本部がこんなに沸き立つなんて。)
怪しむミサト。なかなか具体的に判っていることはないが、嫌な予感がしてならないようだ。
(先の使徒の件。輸送機に残っていた乗組員も全員感電死していた。)
つまり、松代に無事に到着したのはカヲル一人だけだったのだ。
到着後にカヲルはその事実を知ったのだが、それでも平然としている性格が気にくわない。
(確かにあの状況下では、ああするしかなかったけれど……)
そう頭を悩ませていたミサトは、ふっとシンジの方を見る。
カヲルから離れた後、表情からは笑みが消え手に握ったボールで握力を鍛え続けるシンジ。
どうやら、以前に性のうっぷんで悶々としていた時とは別の何かが、彼をそうさせているらしい。
(下ごしらえが済んだから……鍋を火にかけたって所ね……)
しかし、具体的なことは何も判っていない。少々、焦りを感じ始めているミサトであった。
(ダメだな……やはり、碇ユイの記録はほとんど残っていない。)
鍵がそこにあるらしい、と巨大なMAGIのデータベースを虱潰しに探りを入れる加持リョウジ。
改めて、ユイの画像を見直す。シンジと共に笑顔で移る母、ユイ。
残っている物と言えばそれくらいである。
(……ん?)
何を思ったのか、別の画像を画面に開く。それはNERV司令、碇ゲンドウのものであった。
(……)
その3枚の画像を並べて何かを考えていた加持であったが、立ち上がって誰かを捜し出した。
199:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/13 19:17:03
「えーと、つまりDNA情報のコンペア……ですか?」
やっとマヤを捕まえた加持。
最近ではシンジにくっついていることが多く、一人で居るところを捕まえるのにかなり苦労をさせられた。
「ああ、そんな感じかな。頼めるかな……俺には難しくて。」
「簡単ですよ。フリーソフトでも探せば……ああ、この二つですね。」
「うん……」
しばらくして答えが出たようだ。画面の表示を見てマヤは加持に結果を告げる。
「赤の他人のようですね。」
「肉親では無い?」
「はい。肉親ならおおよその等親数が出るのですが……誰のです?」
「いや、判ったよ。ありがとう。」
そして、部屋からマヤとともに出る。
(だからといって……なんの足しにもならんかな……あ。)
またしても、である。
丁度シンジが通りかかり、二人が部屋から出てきたところを鉢合わせになってしまった。
それも、以前よりも怖い目つきだ。病的、と言っても良かった。
「何してたの?」
シンジはマヤに訪ねる。加持には挨拶もしなかった。
「い、いえ……加持さんにパソコンの操作のことで……いや、ホントです……」
そんな二人を見送りながら加持は考える。
(やはり、碇ゲンドウとシンジ君は肉親ではなかったのか。母親の物も手に入れたいところだが……)
200:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/13 19:18:11
その一件をミサトに告げた加持であったが、大して興味を示さなかったようだ。
「それがどうしたって言うの?」
「いや……葛城。何を調べても大した答えが出ない時には、こうしてパズルのピースを集めるしかない。」
「まだ、成果はそれだけ?」
「いや……セカンドインパクト、ゼーレ、NERV、シンジ君の両親、使徒、エヴァ、そして渚カヲル……」
「……?」
「それぞれを掘り下げれば、一つの線に繋がると思う。ゼーレの目的は一つだろう。」
「訳が判らないわよ。探偵さん。」
「あせっても仕方がない。が……急いだ方が良い。シンジ君がどうも気がかりだ。」
「……判ってるわよ。」
エヴァの格納庫。
そこを二人の少年が歩いている。それは勿論、シンジとカヲル。
その少し後ろにマヤがついてきていた。警告は受けていたものの、カヲルを咎める理由は見つからない。
「エヴァンゲリオン参号機……近接戦闘において、従来型を上回る強化がなされているらしい、が……」
虫も殺さないような笑顔でカヲルはシンジに話す。
シンジは笑って請け合っているが、なんとも微妙な苦笑いだ。
「僕自身は何だって出来そうな気がするよ。この参号機は最高だ。」
そう言ってシンジに微笑みかけるカヲル。
「僕は君の忠実なナイトとして敵から守る盾となるよ。安心してくれ、シンジ君。」
その時、カヲルは何を聞き取ったのか。シッと唇に指をあて、静かに、というアクションをして見せた。
201:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/13 19:19:02
しばらくして、本部内にサイレンが鳴り響く。
「どうやら、使徒が現れたようだ。行ってくるよ。」
そういって駆け出すカヲル。
「君は着替えずに司令部で見ていてくれ。」
騒然とする司令部。ミサトは必死であちこちに指示を飛ばし、司令塔のスタッフはかけずり回る。
「エヴァ機は全て起動準備!パイロットの搭乗準備、急いで!」
「まっすぐにこちらを目指しています!ああッ!第1から18装甲まで損壊!」
「馬鹿な!一撃で!?」
巨大な人型の第14使徒ゼルエルの姿がモニタに映し出される。
無駄なことは一切せず、必要に応じて目と思われる部分から閃光を放ち、邪魔な物は全て吹き飛ばす。
そして直進する先、すでにジオ・フロント内に侵入し目指すはNERV本部。
「焦っているのかな。さあ、来るが良い……目当ては僕なんだろ?」
そんなことをつぶやきながら、通信モニタのスイッチを入れるカヲル。
すると、司令部の混乱ぶりが伝わってくる。
「エヴァの発進準備はまだなの?アスカは?シンジ様は?」
「セカンドチルドレンは、いま本部に到着しました。シンジ様は……」
『僕なら準備OKだよ。』
202:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/13 19:20:29
スピーカーから聞こえるカヲルの声。既にプラグスーツに身を包んで、エントリープラグの中だ。
「……いけるの?すぐに初号機、弐号機も出撃させてバックアップするわ。」
『その必要はないんじゃないかな?ま、とりあえず見ていてよ。』
「ちょっと……」
そのカヲルの台詞、新参のパイロットが作戦部長に対して、とても叩けるものではない。
何て言って良いか判らなくなっているミサトを置いてきぼりにして、参号機は出撃する。
『多分、5分とかからないよ。行ってきます。』
そういって、邪魔なアンビリカルケーブルを外して出撃した。
そして、マイクには届かないほどの微かな声でつぶやいた。
「行くよ……人間というのが如何なるものか、見せてあげるよ。」
格納庫の扉が開き、まっしぐらに使徒へと突進する参号機。
武器は何も持っていない。プラグナイフすら抜こうとしない。
そのまま強烈な頭突きを喰らわし、使徒は吹っ飛ぶ。そして、
「腕が……伸びた……!?」
驚愕するミサト、そしてNERV司令部。
参号機の腕が無機物のように伸びて、使徒の肩と思われる部分を掴み強引に引き寄せつつ、
そして自らも再び突進し、更に強烈な頭突きが使徒の胸部、赤いコアへと襲った。
「……む?」
凄まじい衝撃と耳を突き破るほどの轟音の中でカヲルは眉をしかめる。
203:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/13 19:21:58
参号機が衝突する瞬間、コアの瞼が閉じて破壊されるのを防いだのである。
衝撃で再び倒れる使徒。しかし、よろめきながらも立ち上がる。
「なかなかやるね……シンジ君なら閉じようとはしなかったのかな?」
ニタリと笑うカヲル。それはもはや、シンジと話していた時の天使のような笑顔ではない。
再度、使徒を捕まえて腕と思われる部分を引きちぎる。
どのような生物にもない悲鳴を上げる使徒。構わず襲いかかる参号機。
コアが破壊できないなら構わない、というかのように徹底的に使徒を破壊しにかかった。
使徒の体を掴み、爪を食い込ませ、青い血しぶきを撒き散らせながら使徒を引き裂く。
「や、やめ……」
いつの間にか司令部に来ていたシンジは思わず叫ぶ。
使徒がもはや抵抗する力も無くしたように力を落とし、
参号機の目がスッと細められたように感じた、その時。
「使徒を……喰ってる……!?」
使徒の肉を食いちぎり、ズルズルと何かをすすり込み、グチャグチャとかみ砕く。
「うえぇッ!」
思わずシンジがえづいてうずくまった。
助け起こそうとするミサトもまた塩の塊にかぶりついたような顔をしている。
204:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/13 19:22:51
そんな機能が参号機のどこに有していたのか。
そんな疑問が浮かぶ中、それに答えるかのようにミサトは知っていることを唱え直す。
「エヴァンゲリオン……最初の使徒と呼ばれるアダムをコピーした……」
「参号機は制御を失っています!暴走状態です!」
モニタを眺めるマヤが叫ぶ。
もはやNERV司令部は何をしてよいのか、どう判断していいのか判らず固まってしまった。
「クックックッ……」
エントリープラグの中で笑うカヲル。
まるで部下に女を犯させて眺めている上官のようである。
さんざん使徒を食い散らかして悠然と格納庫に戻ってくるまでの時間は、
出撃から3分とかかっておらず、予備バッテリーを使う必要すらなかった。
「ねぇ……あのカヲルって何者なの?エヴァって一体……」
「……」
知ってるのか知っていないのか。ミサトの問いかけにリツコは何も答えなかった。
205:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/13 19:34:21 wv6C0uRO
とりあえず、ここまでー
206:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/13 20:21:14
イイヨーイイヨー(・∀・)
207:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/13 21:06:05
>>1
ちょwww
だんだん路線がずれてる気もするがGJ!
208:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/13 21:19:00
3号機→S2機関取得?
まぁGJ
209:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/13 21:25:43
なんだこれは……普通に面白え……
210:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/13 22:04:28
GJ!!!!
楽しみだ!!
211:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/13 23:08:25
ここまで考えて書いてるとは思わなかったよ。
ただのハーレムかと思ってた。
212:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/14 00:34:06
乙!!
213:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/14 04:56:16
普通に良作。
おもしれー。
214:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/14 12:24:36
「ああ、そうだね。そういう感じが良いかな。」
格納庫で整備士達に指示を出すカヲル。もうすっかり司令部ではいい顔になっている。
勿論、カヲルは専門的な知識を持ち合わせているわけではないが、
参号機の改修や装備のコンセプトで、どちらでも良い、という部分について彼が選択しているらしい。
パイロットだから当然と言えば当然なのだが、新参者にしては手慣れた様子だ。
恐らく、アメリカで鍛えられていたのだろうか。
「でも、アメリカ支部での活動経緯なんてまったく聞いてないんだけど?」
そう言って首をひねるミサト。そして、傍らにいるリツコは答える。
「情報は何も入ってこないの。かなり前から、彼は活動していたのかも。それにしても……」
「何?」
「使徒の捕食により、これまでにない機能が参号機に備わったらしいわね。研究中であったS2機関が。」
「あの……事実上、不可能と言われた永久機関の……」
「コアが破壊されない限り、自身で修復可能となる機能。これで……」
「これで?」
「開発中であった量産型への搭載が可能になるかも知れないわね。」
「……」
話には聞いていたミサトであったが、何やらゾクッとするものを感じて身を震わせた。
(使徒殲滅にこれ以上の戦力が必要だというの……一体何を考えて……)
カヲルはあいかわらず周囲に愛想を振りまきつつ本部内を闊歩している。
正に、シンジハーレムを我が物顔で、と言いたい有様だ。
215:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/14 12:26:28
「フゥ……」
思わず溜息をつくアスカ。現在、住んでいるマンションに帰る途中である。
最近の彼女は自分の居場所が無いように思えて仕方がない。
シンジに手を振り払われ、使徒との戦いにおいても出番がない。
これでは何しに日本へ来たのか判らない、というところだろう。
そんなアスカが憂鬱な顔をして駅のプラットホームに立っていると、車のクラクションが聞こえてくる。
「あれは……」
「あれは……アスカ?」
本部からの帰り道。リムジンに乗せられていたシンジであったが、
信号待ちの折でアスカの姿を見つけたらしい。
「……」
以前の経緯もある。同乗しているミサトは何も言わなかったが、
「……乗せてあげようか。運転手さん?」
「はっ」
シンジが命じたのをミサトは止めようというそぶりを見せたが、もう遅かった。
しばらくして誰かが凄い勢いで車の方に駆け寄ってくる。
「シンジィー!!嬉しいデェース!私をシンジんちに泊めてくれるのデスネー!?」
駅のプラットフォームに居たはずなのに凄まじい勢いである。
「あ、いや、あのそこまでは……」
うろたえるシンジ。思わず顔に手を当てて眉をしかめるミサト。しかしもう遅かった。
216:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/14 12:27:34
で、招かれざる、というか、そこまで招いてない客は上機嫌で食卓に着いた。
ナイフ、フォークを両手にチャキチャキならして、シンジ邸の料理に舌鼓をするアスカ。
ミサトは渋い顔をしていたが、お人好しのマヤはクスクス笑う。
で、無表情のレイは相変わらずの無表情。
「ま、まあいいじゃないか。一晩ぐらい……」
そんなふうにシンジが頼りなさげな主人ぶりを見せていたとき、
「シンジ様。加持という方がお届け物をしたいとお越しに……」
メイドの一人がシンジに近づき、告げる。
「ハイハーイ!私が出迎えマース!」
もう調子に乗ってるアスカは玄関口へと走り出す。
「ちょっと、アスカ?勝手にそんな……」
ミサトはそう言うが、もうアスカはかまってやしない。
やがて、アスカにズルズルと手を引かれて現れた加持。
「や、やあ、どうも皆さん……いや、すぐに帰るよ……」
シンジの機嫌を取るつもりか、手にぶら下げているのは4つものスイカ。もちろん入手元は内緒の話。
「ほらほら、突っ立ってないで座りなサーイ!メイドサン!もう一人前追加デース!」
断っておくが、ここは居酒屋ではないのだよ、アスカ。
「それじゃ、冷やしてデザートにいたしますね。」
メイドの一人がそう言ってスイカを下げようとしたが、アスカはその内の一つを取り上げて、
「こういうのは、こうやって食べるのが一番デェース!おりゃぁぁぁぁッ!!」
アスカの手刀一閃!そして!
217:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/14 12:29:06
「あいたたたたた……」
これには流石のミサトもブッと吹き出して笑う。
「ああ……それじゃ僕が……」
ここまで黙っていたシンジが前に進み出た。そして軽く両腕の親指を突き刺し、パカッ……
「おお!?凄いじゃないか、シンジ君!」
「見事デェース!無駄に鍛えてはいませんネー!」
「あ、あのねぇ……無駄っていうことは……」
大勢の人でこれほど笑いに包まれるシンジ邸の食卓は恐らく始めての、そして最後のことだろう。
やがて宴も果て、皆それぞれの部屋へと戻り、加持もまた帰宅する。
アスカも空き部屋に案内されようとしたときに、ミサトに一言。
「心配いりまセン。今夜一晩で帰りマス。」
「……ありがと、アスカ。」
ちょっぴり大人の空気をみせたアスカをミサトは黙って見送った。
(フヘヘヘヘ……ここに入ってしまえばコッチのものデェース……)
実はまったくもって大人げないアスカであった。まあ、14歳ではあるのだが。
間違いなく夜ばいをかけるつもりである。足跡を忍ばせ向かう先はシンジの部屋。
曲がり角から左右を見渡し、一気に突撃を開始する……はずだったのだが。
誰かが現れた。マヤである。
218:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/14 12:30:01
嫌な予感は的中する物である。
マヤがシンジの部屋に立ち、ノックする。扉が開いて、やがて招き入れられる。
(……)
しばらく呆然とその様を見ていたアスカであったが、
やがて大きな溜息をつき、背を向けてその場から立ち去った。
既に所用のために訪問する時間ではない。そこまでアスカは勘の鈍い訳ではない。
(まあ……当然と言えば当然デス……流石のシンジも……いつまでも一人で居るはずも……)
果たして、どのような経緯を経たのだろうか。
恐らく、最初にレイに押し込まれて以来、添い寝に通っていた挙げ句、という訳だろうか。
そのような細かい話はどうでもいいことである。
かといって、二人は男女の行為に及んでいた訳ではなかった。
黙ってシンジはマヤの手を引き、マヤはそれに従ってベッドに向かう。
二人は着衣のままである。
シンジはマヤに寄り添い、自分の胸にうずめるようにしてシンジを抱きしめるマヤ。
そうしてマヤは震えるシンジの体を沈めて一夜を明かすのである。
そのシンジを悩ませているもの。過去の記憶か、それとも未だ見えぬ明日への不安か。
そして、翌朝。シンジ邸は大変な騒ぎとなった。
「シンジ様が……シンジ様が目を覚まさないんです!」
219:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/14 12:31:14 SkwvjPIj
ひとまずここまでっすー。うーむ、終わらせるのにかなりかかりそう……
220:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/14 12:44:14
「哀れね…」の数日後
アスカ「シンジ、まだ怒ってる?」
シンジ「…」
アスカ「ゴメンね。私、どうかしてたわ。」
シンジ「…」
アスカ「それに誰をおかずにしてもあんたのプライベートだもんね。」
シンジ「…」
アスカ「見て、漁港の市場のオジサンみたいなエプロンでしょ?」
シンジ「?」
アスカ「シャンプーしてあげる。おいで、シンジ」
221:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/14 12:47:41
乙!
222:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/14 13:37:04
シンジの腕力はかなりのものになってきたみたいだなw
乙!
223:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/14 17:20:50
らんまの爆砕点穴みてえだなwwwwww
224:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/14 19:35:13
……オチがアンチェインなシンジによる筋肉理論に拠っての救済だったりしたら嫌だなあ……
225:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/14 20:03:47
鍛えすぎだろシンジw
226:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/14 22:18:07
アスカおもしれーw
227:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/15 00:06:00
このアスカはかなりいい
228:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/15 00:18:07
アスカ壊れすぎwwwwwwww
229:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/15 14:24:56
「目標は衛生軌道上からピクリとも動きません!」
「まいったわね……シンジ様が大変だと言う時に……」
巨大な使徒の姿がモニタに映し出される。
光り輝く翼を広げ、天空に立つ使徒の姿。それは正に……
(正に天使の降臨……これを見て昔の人が天使の似姿を描いたと言っても間違いではない。)
そう考えたのはミサトだけではないだろう。
(私達は……この戦いは本当に正しいのかしら……)
が、ミサトのやることは一つだ。
「ポジトロンライフルの最大出力で超々距離射撃!これしかないわ!」
別室で使徒の姿を見ているカヲル。すでにプラグスーツを着用している。
そして、その背後に立っている男、碇ゲンドウである。
その後ろのゲンドウに対して振り向かず、カヲルは独り言のようにつぶやく。
「もう物理的な破壊は無理だと判っているはず。となると……」
「となると?」
「狙いは僕自身に標準を合わせるでしょうね。さて、どんな手かな……」
「槍を使うか?」
「多分いりませんし、後で必要になるでしょ?今の参号機ならやれますよ。きっとね。」
そういって、カヲルは部屋を出た。
230:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/15 14:32:45
出撃したカヲルの参号機は巨大な砲座に立ち、ライフルに指をかける。
長距離からの射撃はこれまでシンジが勤めてきた役目である。
が、それがシンジの特技というわけではない。標準を合わせて引き金を引くだけだったのだから。
「さて……ん?来たか!」
突然に使徒から放たれる光線に包まれる参号機。
その狙いは参号機ではなく、自分で予想した通りにカヲル目掛けての物だった。が、
「あの光線は……!?敵の指向性兵器?」
「しかし、参号機、およびパイロットに影響は有りません!」
「熱エネルギーはありません。ATフィールドの可視波長と似ていますが。」
「どういうこと?いったい使徒は何を……」
エントリープラグ内のカヲル。
攻撃されているはずなのに、ゆったりと座席に座り笑みさえ浮かべている。
まったく使徒の攻撃は効いていないのか?いや、そうではなかった。
使徒の光を浴びたカヲルの脳裏に、怒濤の如く何かが駆けめぐっている。
それはカヲルの思いを、行いを、欲望を、その全てを暴き立て、見せつける光であったのだ。
それは目も背けたくなるほどの凄まじい過去であった。
哀願する者とそれを噛み砕く牙、血塗れの手を嘗める舌、自らを切り裂く刃の狂喜、
犯し犯されるおぞましい痴態、等々……
正に、ありとある禁忌と冒涜と、そして悪徳と……それこそがカヲルの本性であったのだ。
231:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/15 14:35:04
「成る程。自らの姿を見せつける精神の拷問、と言うわけだな。」
そう言いながらカヲルはニタリと笑う。
「ご苦労だったな。これで、その手の攻撃は僕に効かないことが判っただろう?」
そして、ゆっくりと引き金に指をかけた。
「その自分の姿、大いに満足しているよ……では、消えて貰おうか?」
(君は……誰?)
そうだな。誰と言われても困るよ、碇シンジ。
(誰……誰なんだ?)
そろそろ君と話がしたいと思ってね。今、君の中にいる。
(え……君は……)
これまで、我々は君がしたいと思った通りに、君に倒されてきた。
だが、君はそれが不満らしくてね。いろいろ手を加えては見たんだが。
(使徒!?)
そう君たちは呼んでいる。あるいは天使とも。
(何故、君たちは……その……)
君の望みを叶えるために来ているんだよ。君の望むことはなんなりと。
(そんな馬鹿な……君たちは僕たちを……滅ぼすために……)
君が望まない限り、我々はそんなことをするつもりはない。君の願いを聞きに来たんだよ。
君にはどのようなことでも与えてきた。我々自らの死でも。これまでのように。
232:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/15 14:36:10
(判らない……一体、君は何を言っているの?)
君の前の者がそれを望んだからだよ。
彼は自らを、そして彼を取り巻く環境を、その全ての消滅を願った。
その望みのままに、それに従った。
(……セカンド・インパクトのこと?)
そうだね。それでは君は何を願うの?
我々はそんなことをしに来たのではない、といったら何を願うの?
(……何故、僕の願いを?)
本当はね。君にこれを話すべきでは無いことなのだ。
君が我々の破滅を望むならそれを叶える。
でも、我々のことを話したおかげで、今まさに既に君の心が変わってしまった。
だから、本当は話すべきことではなかったのだよ。
(……教えてよ。何故、僕の願いを?)
この世界で生きている君が何を望むのか。
その望みに答えることが我々の為すべきことだ。
この世に投げ落とされ、この世界で生きてきた君の願いそのままに。
(……僕は。)
ん?
(僕はただ、使徒を倒さなければ世界が滅びると聞いたから……)
そして選んだのは君だ。そうすると決めたのは君自身なのだよ。
233:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/15 14:37:29
(誰かが望んだからと言って、なぜセカンド・インパクトを起こしたり、君たちが倒されたり……)
人に何かを与えるには、いろいろな形がある。
その人の幸せを願い与える場合と、その人を自分が望む通りにするために与える場合。
女性に花を贈り、友人に金を与え、あるいは親の労をねぎらう。
これらは全て与える側が満足をするために行うことだ。如何に相手のためのように見えてもね。
受け取った側は喜びを得ることは多いが、的が外れることが多い。
相手の意志を無視しているからね。これらは与える側の自己満足に過ぎないのだよ。
また、そして子供を叱り、道しるべを立て、生き方を説く。
時として怒りを買うことは多いが、全て受け取る側が生きていくために必要なことだ。
あるいは、望むままに誰かを殺し、あるいは望むままに自らを滅ぼす。
これは盲目的であり、時として破滅に及ぶが、それは相手の望みのまま叶えた結果だ。
(……判らない……判るようで……それがなんなの?)
君の疑問に対する答えだよ。
一番最後の答えが間違いのように聞こえるが、相手がもっとも必要としているものを与えることになる。
君たち人間は生きることを欲する存在だ。それは当然だよ。そう作られたのだから。
しかし、それを超えた選択を取らなければならないときに、君たちには困難な課題だ。
時には神の声を欲する者も居たが、君の前の者は破滅を願い、その結果がセカンド・インパクトとなった。
世界の破滅を望むように考えるならば、その世界は破滅させるべき世界なのだよ。
(……)
君は確かに我々の消滅を願ったのだ。言われるがままの選択ではなかった。
君は、時として大いなる破滅を及ぼす我々だからこそ、その消滅を願ったのだよ。
234:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/15 14:38:33
(君たちはそれでも構わないの?)
生と死は等価値なのだよ。我々にとってはね。
生きることを欲して、あらゆる手を尽くすように作られたリリンには理解できないことだろう。
僕たちが消え去るべき存在であるならば、それが正しいことであり、我々はそれに従う。
(リリン……?)
ああ、ごめんね。君たち人間のことだよ。
さて……君は、君自身が望むべきことを見失いかけているね。
君はかつて、他の人間達と同様に生きるべく行動をしていた。
そして、そのために我々の消滅を願った。そう願うならそれも構わないことなのだよ。
その願いを叶えるべく、君の前に姿を現した我々に疑問を抱き始めた。
次第に君は自分を見失い、望むべきことが何かを見失い始めたのだ。
そして、その君の意識は過去の甘い記憶へと向けられた。
(過去……)
君はもう覚えていないだろうね。君が見た過去の記憶は再び沈められたのだから。
甘い記憶、しかし苦痛の種子でもある。
君が望むままに甘い記憶を蘇らせたが、それは君にとって大いなる苦痛となったのだ。
今はまた深く沈められたが、君に大きな傷跡を残してしまった。
甘い記憶、それは君の失われた母との切ない思い出。
苦痛であるのは、それは失われたためではなく、決して戻らない過去であるからだ。
過去は既に存在せず、存在したという事実だけが残り、それが戻らないことを君は知っている。
だからこそ、大いなる苦痛となるのだよ。
235:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/15 14:39:24
(判らない……何も覚えていない……判らない……)
君は知らずして似姿を引き寄せ、自らをごまかし、癒してきた。
そして普段は心の奥底に沈み込ませ、心の平穏を保とうとしている。
(……僕の母って……昔に死んだとしか聞いてない……)
君の心の奥底にしまい込まれた、君自身が見ることが出来ない記憶だよ。
何人たりとも侵されざる聖なる領域。実はこれが君たちが呼ぶATフィールドの本性なんだけどね。
しかし、最初は我々の手でこじ開けられ、時として繰り返して蘇り、そして君を苦しめてきた。
(AT……判らない……一体……)
あの者が君に近づいている。
あの者は我々のことを知っている。
あの者は何故、我々が君の元に訪れるのか知っている。
そして、あの者を生み出した者共が、我々を利用しようとしている。
あの者共が我々を利用することを、君を利用することを欲している。
それは我々の破滅よりも許されないことだ。この世界の破滅よりも。
既に君の心は折れて、何を望むべきか見失いかけている。
もはや時間がない。
さあ、再び君の心の領域を、ATフィールドを解き放て。
その過去の苦しみの、その更に奥にある君の望みを見せてくれ。
君が何を願うのか。その成就によって、この世界の補完が……ああ!貴様はッ!!
「え……!?」
236:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/15 14:40:17
「出ました!使徒です!」
「急げ!早く、シンジ様から引きはがせ!」
「レーザー照射します!出力最大!」
気が付くと、シンジは数多くのライトに照らされて、数多くのNERV技術者に囲まれていた。
眩しくて何が何だか判らない状態が続いていたが、
どうやら手術台のような所で寝ていることにシンジは気付く。
しばらくしてシンジはえづき、むせかえる。
どうやってか判らないが、口から何かを吐き出したらしい。
しばらくすると、強烈な熱気が体に襲いかかる。
それは口から吐き出した何かにレーザーが放射され、その照り返しであったらしいのだ。
「シンジ様……大丈夫ですか!シンジ様!」
涙ながらにシンジにすがりつくミサト。その近くでリツコは冷静に計器を読み上げる。
「脈拍、血圧、脳波正常……まったく寝起きのような状態ね。どこも異常は認めず。」
その場に居合わせているマヤが歓喜の声を上げた。
「ああ……奇跡です!」
「本当ね。まさか、使徒が自分から姿を見せるなんて。」
どうにかしてシンジは体を起こすと、ベッド横の床に焼けこげた何かがあるのを見つけた。
螺旋状の蛇のような物体。それこそが第16使徒アルミサエルであったのだ。
237:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/15 14:41:46
ゆっくりとシンジは周りを見渡した。
シンジの無事を喜び歓喜する者、使徒の処理に追われ右往左往する者、そして……
(こいつが……)
すぐ側に渚カヲルが居ることに気が付いた。
手にゴム手袋を着用してすぐ側に立っていたのだ。
一体、シンジに何を施したのか。それを考えるだけでもおぞましい限りだ。
(そうだ。間違いない。こいつが……僕を……)
そのシンジの心を理解しているのか、カヲルはこのうえなく優しくシンジに微笑みかけていた。
238:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/15 14:45:53
そのうち、次書きまーす
239:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/15 20:31:31 wbMBvnsB
GJ!!!!
wktk
240:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/15 21:17:20 bKQPOqSj
何かすげぇよ
GJ
241:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/16 00:57:23
gj
242:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/16 02:02:20
GJ!!
243:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/16 10:27:51
o nein, dieses nicht, etwas anderes gefalliges ist es was ich fordere
(いや、これではいけない、もう少し違ったものを、快いものだ、私の求めているのは)
auch dieses nich, ist nicht besser, sondern nur etwas heiterer
(これもだめだ、良くはなっていない、ただいくらか晴れやかなだけだ)
auch deises es ist zu zartl. etwas aufgewecktes muss man suchen ……
(これも甘美に過ぎる。何か目を覚まさせるものを探さねば……)
Nein diese …… erinnern an unsre Verzweifl.
(いや、この …… はわれらの絶望を想い出させる)
Ha dieses ist es! Es ist nun gefunden!
(ハハハ、これだ!ついに見つけたぞ!)
(注)
ベートーベン交響曲 第9番第4楽章 バリトンのソロパートより抜粋(やや改変)
シラーの詩に入る前にベートーベンが加えた歌詞。
244:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/16 10:28:49
海岸を一人歩くアスカ。手には鞄が提げられている。
向かう先は港。出航まではまだ時間がある。
恐らく、傷心を抱えてのドイツへの帰途、というわけだろう。
(さて……帰りますか。もはや、私の居るべき場所はここには無い。)
(船の長旅もいいでしょう。帰りつくまで、たっぷりと泣きの涙を楽しめる。)
(笑うのはそれからでいいよ、アスカ……ん?)
「♪Freude, schoner Gotterfunken, Tochter aus Elysium ……」
アスカが振り返ると、首を失った巨像に一人の少年が座り、そして歌っていた。
「歌はいいねぇ……そう思わないかい?惣流アスカ・ラングレー。」
「あんたがドイツ語を話せるとはね、渚カヲル。」
「いや、英語のほうが好きだけどね。日本語よりも楽だ。」
「そう……何か用?」
「見送りだよ。迷惑だったかな?」
「迷惑千万、大きなお世話よ。あんたに見送られるなんて最上級の皮肉だわ。」
「そう……それじゃシンジ君ならどうだい?」
「……ここに?」
「さ、こっちにおいで。」
「あ……」
もはや是非もなく、カヲルの後に続くアスカであった。が……
245:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/16 10:29:37
NERV本部。
「重体!?アスカが?」
驚愕するミサトに、部下の一人が言いにくそうに報告する。
「はい……何者かに暴行を加えられて……その……」
「どうしたというの?」
「何者かに犯されたらしい跡が……」
「……一体、何者が。」
「それが、諜報部が発見した時には、その……」
「一体、諜報部は何をやってたのかしら……あ。」
シンジがいつの間にか側に来ていた。
「今のを……聞いておられたんですか。」
「それは本当なの?アスカが……そんな……」
ショックを受けるシンジを覆い被せるように、ミサトは言う。
「シンジ様、何やら悪い予感がします。今すぐご自宅へお戻り下さい。」
「え……でも。」
「構いません。使徒が現れても、渚カヲルが居ることですし。マヤ?」
「はい、あの……ミサトさん。」
「……なによ。」
「レイが居なくなったんです。本部に来てから行方が……」
「なんですって?」
246:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/16 10:33:00
薄暗い部屋に立つ碇ゲンドウ。そして、もう一人。
「カヲル。」
「……ここに。」
「手筈は?」
「上々ですよ。綾波レイは既に捕らえて処置を施してあります。」
「そうか。しかし、アスカをああまでする必要は……」
「いいでしょ?こういうスパイスも必要だよ。」
「まあいい……では、時が来た。」
「はい、それでは……」
「さ、急ぎましょう。」
そういってシンジの手を引くマヤ。とにかく本部にいては何が起こるか判らない。
レイのことはともかく、とにかくシンジ邸に急ぐこととなったのだ。
あそこなら、まだミサトの信頼できる者達が居る。
「……シンジ様?お早く。」
「え?ああ、うん……」
何かに心をとらわれているようなシンジ。そんな彼の様子を見てマヤは尚更あせる。
(使徒が現れても、渚カヲルが居ることですし……)
(渚カヲルが居ればそれでいい……)
(カヲルが……カヲルが……カヲルが……)
そんな言葉ばかりがシンジの脳裏を支配していた。そして、
247:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/16 10:34:14
「う……うう……」
「し、シンジ様!?」
思わず、その場にうずくまるシンジ。もう自分が何を考えているか判らなくなっている。
ズルリ、ズルリと音を立てて、これまでにない思惑が禍々しく頭の中でとぐろを巻いている。
その時である。
「あ、マヤさん。カヲル様をお見かけしませんでしか?」
「え?いえ……」
「そうですか。それでは……」
マヤに声をかけてきた一人の女性職員は、シンジ様がうずくまっているというのに構わず去っていった。
(あ……あ……あ……ああ……ああああッ!!)
思わず声を上げて、己の狂気をまき散らそうとした、その時。
「シンジ様、私が居ます。」
そういって、マヤはシンジの手を取る。
どの程度、シンジの心情を察したのかは判らない。
が、あっぱれとも言うべき勘の良さでシンジの思いを感じ取り、抱きしめるマヤ。
「私がついています。私はシンジ様から離れません。さ、お早く。」
「う、うん……」
ようやく正気を取り戻して歩き出すシンジ。しかし、行く先に待ちかまえていた者が一人。
渚カヲルである。
248:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/16 10:35:17
「あ……」
思わず声を上げたマヤ。その顔に緊張と恐怖が走る。
「シンジ君……大丈夫?顔色が悪いよ?」
虫も殺さぬ天使の笑顔で話しかけるカヲル。
「はい……あの、今すぐお連れして休ませようと……」
「そうだね、急いだ方が良い。大丈夫、後は僕に任せてくれ。シンジ君」
(あ……ああ……)
シンジの肩を抱き、大急ぎで立ち去ろうとするマヤ。
もしかしたら、そのまま行けばやり過ごせたかも知れない。
しかし、カヲルは見事な追い打ちを仕掛けた。
「うらやましいね……こんな可愛い人について貰えるなんて。さ、急ぎたまえ。」
普段ならお愛想混じりの社交辞令でしかない、さりげない台詞。
しかし、シンジの心は音を立てて壊れ始めた。
(お前がアスカを……そして……綾波も……まさか、マヤさんまでも……)
疑念と、嫉妬と、妬みと、恐怖と、怒りと……そして狂気が、シンジを突き動かす。
「し、シンジ様!?お止め下さい!シンジ様!」
(貴様が……貴様が……僕の……)
シンジはカヲルに掴みかかり、そして首に手をかける。
カヲルは抵抗をしない。尚も柔らかい笑顔でシンジに微笑みかける。
(貴様が……貴様が……)
249:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/16 10:36:46
カヲルの首を絞めるシンジ……いや、違う。
首に指を食い込ませている。その指は既にのど笛を突き破り、
既にシンジの顔は返り血を浴び始め、カヲルの首は血潮の噴水と化していた。
「貴様が……貴様が……貴様が……僕の……ッ!!」
もはやシンジは声に出していた。それでも、それでもカヲルは笑みを絶やさない。
むしろカヲルは悦楽の境地へと達していた。そして……
ゴキッ……
食い破ったシンジの指が直接に頸椎を掴み、
これまで鍛え上げてきた恐るべき腕力がそれをへし折っていた。
ある森の中の小さな空き地。
そこには小さな小屋が建てられ、ささやかな畑が耕されている。
植えられているのはスイカ。そこで鼻歌交じりに水をまく一人の男。
加持リョウジである。
せっせと畑仕事に精を出すように見えて……その視線は別に注がれていた。
大きな切り株の上に乗せられた一台のノートPC。
それは地下にあるNERV本部の情報ケーブルに接続され、
物理的に情報を傍受し、画面に膨大なログを流し続けていたのである。
250:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/16 10:38:20
(やはり、暗号解析が甘いな……しかし、最近になって量が増えているのが問題だ。)
(使徒殲滅もいよいよ終焉に近づこうとしている。そうなると、はたして増えるものなのかどうか。)
(気になるのは、時々現れるこの文句……『処刑』……?)
カチリ……と、銃を握り直す音が背後から聞こえる。
「えーと、誰かな?困るよ、人の秘密の花園に勝手に踏み込まれては。」
「見事なスイカね。あなたにこんな趣味があったなんて。」
ここで後ろを振り向く加持。後ろに居たのは赤城リツコ博士だ。
「なんだ、リッちゃんか。久しぶりだな。」
「謎はとけて?」
「いや、さっぱりだ。人の秘密を知ったんだから、引き替えに教えて欲しいな。」
「そうね。死ぬ前に何が聞きたいの?」
「では……シンジ君の父親は?」
「もう知って居るんでしょ?『存在しない』が正解。」
「やはり……」
「そうした者が何百年か何十年かごとに生まれてくる。有名な人では二千年程前に生まれた、あのお方。」
「ああ……では、特務機関ネルフ、そしてゼーレはそうした者を追い求めていた、と。」
「ゼーレが結成される以前からそうした組織が存在していたの。あのお方が十字架に駆けられて以来。」
「……」
「そうした者……無原罪の御宿り、なんていう言葉があるわね。姦淫の原罪を知らず生まれたため……」
「それが聖なる証というわけか。シンジ君もその一人、と。」
251:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/16 10:39:49
「そう。しかし、原罪がどうの、というより誰が何の意図で産み落とさせたのかが問題。」
「ふむ……その結果が使徒の襲来?」
「これまでの歴史の中で、どのような形で使徒、つまり天使達が降臨してきたのかを彼らは追い求めてきた。」
「……」
「そして、それは何のためか。世界中を股にかけて数百年にわたり僅かばかりの情報をかき集めた結果。」
「それは?」
「その者に、こう尋ねるというの。『この世界で生きてきたお前が何を望むのか?』……と。」
「つまり天から派遣され、この世を目にした調査員に結果報告させてるって訳か。これは傑作だ。」
「彼らはそれに目を付けた。やがて世界は情報化が進み、そうした人物を捜し出すのが容易となり……」
「それを意図的に操作するのか。では、あのセカンド・インパクトは?」
「強烈なしっぺ返しを喰らった結果らしいわね。当時の組織の大半を滅ぼすために天使の力が使われた。」
「……」
「しかし、その後に奇跡が起きた。次に何時生まれてくるか判らない神の子が、その後にすぐ現れた。」
「……それが、シンジ君か。」
「今度は上手くやらなければならない。しかし、その神の子は世の常の子供とは違い、実に動かしがたい。」
「それで、あの巨大なハーレムを創設し、シンジ君に劇薬を投じた訳か。成る程ね。」
「幸い、壊滅の折りに共に倒れた使徒アダムの遺体が残され、ことを成し遂げるための用意は調えられた。」
「それを元に作られたのが使徒殲滅のためのエヴァンゲリオンか。しかし、どうして?」
「そうね。使徒が居なくなっては、その力を利用することができなくなる。」
「……」
「もはや通常の物欲といった単純な欲望などは彼らにはない。彼らがやろうとしていることは処刑。」
252:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/16 10:41:15
「何!?」
「彼らは、二千年前に行われた処刑をもう一度やり直そうとしている。この世界の有り様を変えるために。」
ここまで話していた彼らから、幾分はなれた所から騒々しい物音が聞こえてきた。
「あれは……戦自のジープか。装甲車、それに戦車まで……」
「それじゃ、お話はここまでよ。あなたに邪魔されては困るの。」
そうして銃を構え直すリツコ。
しばらくして、パンッ……という乾いた銃声が森の中をこだました。
253:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/16 10:42:02
まずここまでー。もう自分の立てたスレタイから遠く離れてるっぽいけど、ごめんねー。
254:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/16 11:06:01 yVOvSeF/
GJ
255:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/16 14:45:48
GJ!
256:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/16 16:28:35
おーい、この話はどこまで逝ってしまうんだよwすげぇなwww
257:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/16 17:21:24
>>253
気にすんな。ちゃんと風呂敷回収してくれるなら余程じゃない限り職人さんについてくぜ
258:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/16 20:25:53
しかし、シンジの筋トレは恐ろしい形で成果を出したなあ
259:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/16 20:53:07
首の皮突き破って骨折ったからな……
それにアスカも犯されたし…
痛がり怖がりな俺としては
今回ちょっとキツかったな…
もっと軽いスレだと思ってたから
260:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/16 23:59:10
「シンジ様ッ!!」
マヤに体を揺さぶられ、ようやく正気を取り戻してカヲルの首から手を離した。
ドサリ、と投げ出されるカヲルの遺体。
「あ……ああ……」
うめくシンジ。その後ろから静かで、そして恐ろしい声が彼を呼ぶ。
「シンジ。」
「あ、ああッ!!」
驚き振り返るシンジ。その顔はすでに蒼白である。
「お前は何をしたんだ、シンジ。」
そう尋ねたのは司令にしてシンジの『父』、碇ゲンドウである。
「あ……あの……」
ようやく言葉になりかけてきたシンジの声。
「あの……その……使徒……」
「使徒だと?」
「そ、そう……そうだ!使徒だ!カヲルは、カヲルは使徒だったんだ!」
「お前は……渚カヲルが使徒だと言い張るつもりなのか?」
「そうだ!使徒だったんだ!だから殺したんだ!そうしなければ、皆が死んじゃう……だから……」
あからさまな嘘を叫び、既に邪悪な形相で歪むシンジの顔。
殺人という破壊、虚偽、ずるがしさ、愚かしさなど、有りとある罪が既にシンジの体を支配し始めていた。
261:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/17 00:00:09
側に居たマヤはもう声も出せずにシンジの有様におののいていた。
(シンジ様……そんな……カヲルは人間だったのに……完全なただの人だったのに……)
(そんな見え透いた嘘を……この先、最後の使徒が現れたら……)
(ああ、助けて!お願いだから誰かシンジ様を助けて!)
「そうか……では、我々の念願は成就された訳だな。」
「え……?」
キョトンとしてゲンドウを見るマヤ。
「来い、シンジ。使徒を殲滅したからには、しなければならない仕事がある。」
「あ、あの……」
すでに引きずられるようにしてゲンドウに連れて行かれるシンジ。
その二人を、固まっていた体がようやく動き始めたマヤが追いすがる。
「あのッ!待ってください!シンジ様をどうする……」
そんな彼女を重装備の男達が立ちふさがる。
それは完全武装の戦略自衛隊の隊員だった。
リツコが引き金を引く少し前。
「じゃあね、探偵さん……」
そうして銃の狙いを定めようとしたその時、急激に絞られた視界が全て塞がれてしまった。
「す……スイカ!?」
262:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/17 00:01:42
彼女の動体視力は確かである。間違いなく飛んできたものはスイカであった。
引き金を引きスイカを見事に砕いたが、別の方角から強烈なタックルを受けて倒されてしまう。
「う……クッ……」
思わずうめき、起きあがろうとするリツコであったが、すでに加持は馬乗りで封じてしまった。
「ごめんね、リッちゃん。」
そう言いながら高々と振り上げられ、リツコの頭に振り下ろされたもの。
それもまた、当然ながらスイカであった。
気絶したリツコを縛り上げる加持。死んではいなかった。
「やーれやれ。可愛い子ちゃん達を二人も犠牲にしてしまったよ。」
そういいながら携帯電話を広げる。
「葛城?俺だよ。」
「何?……ちょっと待って。声のマスク化してくれない?傍受されるわ。」
「ああ、例の暗号でいいかな?……よし、聞こえているか?」
「OKよ……シンジ様ね?」
「いろいろなことが判ったんだが、とにかくシンジ君が危ない。とりあえず保護をして、話はそれからだ。」
「やはり……戦自が動き出したみたいね。」
「ああ、そちらに向かっている。何かをやらかすのかまでは見当も付かないが。」
「悪いけど、もう私はNERV本部じゃないの。今はシンジ邸よ。」
「なんだって……ではシンジ君は?」
263:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/17 00:03:05
「既に司令のゲンドウに連れて行かれたの。あんたの警告、今更だったわね。」
「そうか……では、助けに?勝ち目はないぞ?」
「私達に他にすることがあるとでもいうの?大丈夫、あんたに手伝えなんて言わないから。」
「……死ぬぞ?下手をすると世界中を相手にすることになるぞ。」
「上等よ。そのつもりでシンジ様に仕えてきたのだから。」
「葛城。」
「何?」
「もし、生きて再び出会えたら……8年前に言えなかった言葉を……」
「バァーカ!」
「え!?」
「もし無事だったら、シンジ様を皆で廻す祝賀会開くつもりなんだから、あんたとヨリを戻す余地は無いわよ。」
「ちょ……おい、葛城!」
パチンと携帯を閉じるミサト。側にいたメイドの一人がクスクス笑う。
「本当にそんなパーティー開くつもりなんですか?」
「あったりまえじゃない♪これまでの報酬はたっぷりノシを付けてシンジ様に払って貰うわよ。」
「ウフフ……そうですね。」
「楽しみにしてらっしゃい……ところで、今日の下着の色は?」
メイドはニヤリと笑ってスカートを引き上げた。
その下から覗かせたもの。それは、純白の愛らしくも艶めかしいパンティーとガーターベルト。
そして美麗な太ももに釣り下げられた短銃が一丁。
264:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/17 00:04:36
「なかなかセクシーじゃないの。でも、もう少しコーディネイトさせて貰うわよ。ほら!」
そう言ってミサトは自動小銃を投げつけた。
「似合わないなんて文句を言わないでね。さぁ、本部の大掃除を始めるから、全員招集!」
「さあ、来るんだ。」
そう言って、よろよろと歩くシンジを伴うゲンドウ。
連れて行かれた場所は広く薄暗い所であった。
そして、ゲンドウはどこかしらに合図を出す。一斉にライトが照らされ、映し出されたもの。
「エヴァンゲリオン初号機……」
「乗れ。おい!」
「ハッ」
自衛隊員の二人がシンジを両脇から抱えて連れて行く。
シンジはやや抵抗するそぶりを見せたが、しかし意気傷心した彼では力も入らない。
無駄に鍛えた筋肉では役に立たず、使い方もロクに知らない彼では為す術もなかった。
「う、うう……」
エントリープラグに押し込められ、慣れているはずなのにLCLにむせ返るシンジ。
そんな彼にゲンドウは容赦がない。
「シンジ……もう、判り切った嘘をつくのは止めろ。渚カヲルは使徒ではない。」
「……」
「が、それはいい。お前の言うとおりに世間に公表してやろう。辻褄は合わせてやる。」
265:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/17 00:05:59
「あ、あの……でも……」
「心配は要らん。最後の使徒は既に捉えてある。後は、ここで密かにお前が始末するだけだ。」
「あ……あれは!」
更に、ライトがあるものを照らし出す。
それは、巨大な試験管のようなカプセル。その中に一人の全裸の少女が浮かんでいた。
「あ、綾波!」
「これが……お前に近づき、取り入ろうとしてたらしい第17使徒、タブリスだ。」
あるNERVスタッフが計器を操作する。
そしてパネルに表示される文字。
『 Blood Type Blue ・・・ 17th Angel 』
「あ……綾波が……」
「さあ、お前の手で倒すのだ。シンジ、それでお前は救われるのだ。」
そして、スタッフが言う。
「標準は既に合わせています。では……引き金を引いてください。」
その言葉。使徒との戦いを始めて以来、何度も従ってきたシンジへの命令。
(撃てば……僕は救われる……それで……僕は……)
シンジは取り付かれたように引き金に指をかけた。
266:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/17 00:07:04
とあるNERV本部の入り口。
既にシャッターが閉じられ、戦自の陸軍隊員が一人で銃を片手に警備をしていた。
その前に、ふと現れたのは一人の女性。
「……め、メイド!?」
場違いの登場に驚く隊員。そんな彼にメイドはニッコリ微笑みかけ、そして相手の口をふさぎ、
ドスッ……と何かを突き立てた。
「う……うう……」
うめきながら血を吹き出して倒れる隊員。メイドが手にしているのは血塗れの卓上ナイフである。
彼女は遺体を冷たく見下ろし、シャッターの開閉ボタンを操作する。
開らかれるシャッター。そして、その向こう側に現れたのは、
清楚な制服の上からマシンガン、バズーカーなどを背負った、完全武装のメイド達が数十人。
その中央に立つのは隊長の葛城ミサト。
「さあ、行くわよ!シンジ様のために!」
267:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/17 00:08:23 pMYaChze
皆さんどうもですー。続きが出来たら次を貼りまーす。
268:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/17 00:17:48
wktk
269:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/17 00:53:23
予想外です
そうくるか
wktk
270:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/17 01:07:16
スイカあなどれねぇwwwwww
271:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/17 12:41:47
wktk
272:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/17 13:02:02
GJGJGJGJGK!!
273:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/17 13:57:06
>>263の祝賀会で「廻す」は「輪姦す」ってことか?そりゃ楽しみだw
274:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/17 14:08:31
まさか綾波とは思いませんでした
275:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/17 20:50:42
(撃てば、僕は救われる……綾波を撃てば……僕は……)
(いや、ダメだ……撃ってはいけない……使徒は僕達を滅ぼしに来た訳じゃない……)
(でも……撃たなければ……撃たなければ……僕は……)
ドクン……ドクン……ドクン……ドクン……
もはやシンジの耳が引き裂かれるほどに響き渡る、彼の心臓の音。
引き金を指にかけたまま、動かない指。
しかし、ゲンドウは確信していた。シンジがレイを撃つことを。
NERV、そしてゼーレという巨大組織が、さりげなく、そして長年にわたり教育した碇シンジ。
エヴァンゲリオンの存在は知らせずとも、必ず使徒を殲滅しなければならない、と教えこまれたシンジ。
そして、もはやボロボロに汚された彼の心。
(勝ったな……)
その思いにゲンドウはニヤリと笑う。
その時、今まで閉じられていた使徒タブリスの……綾波レイの目が開かれた。
そして、モニタ越しにシンジと視線を絡め合う。
いくつもの壁を隔てて、交わされる声なき会話。
そして、その末にシンジは。
276:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/17 20:51:57
次第に戦場と変わりつつあるNERV本部。
今のところは、隠密行動のスタイルで進むミサト達。
(3人ね……よし!)
ミサトが首を掻き切るアクションをしてみせると、進み出て始末するメイド達。
自衛隊員にとても勝ち目はない。
彼らの役目は警備であり、メイド達の目的は殺戮であるのだから。
が、それも長くは続かない。
『警報!警報!本部内に武装集団が侵入!』
『各員、ただちに戦闘態勢に入れ!敵は全て女性の模様!』
『見つけ次第の射殺を許可する!繰り返す!見つけ次第……』
(チッ……お忍びもここまでのようね……ん?)
ミサトの携帯がブルブルと震えている。それは加持からの連絡だった。
「葛城?俺だ。」
「何よ、この忙しいときに!」
「戦自が増援が来るぞ。戦車からヘリまで続々とそちらに押し寄せている。」
「でしょうね。連中、こちらがエヴァを繰り出すことを想定しているでしょうし。」
「そして……それだけじゃない。怪しげな巨大輸送機が9機。」
「エヴァシリーズ?」
277:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/17 20:53:03
「恐らくそうだろう。あれが来たらもう手に負えない。いや、手遅れになるぞ。」
「……判ったわ。ありがと。」
「死ぬなよ、葛城。難しいが、退路を確保しておくよ。それじゃ。」
その言葉を聞いて、ミサトは加持との電話を切る。
そして、別の番号を呼び出し始めた。
「マヤ?いける?」
その頃、司令部ではマヤが一人で端末に向かい、必死で操作していた。
通常なら複数人で操作しなければいけないところを、
コマ付きの椅子をガラガラと転がしながら、鬼のような早さでキーボードを叩いて回る。
周囲には幾人もの死体が蹴り転がしている。が、それをしたのはマヤではない。
銃を片手に背後を守る職員が数名。恐らく、ミサトが目を付けていた仲間だろう。
そして、ドライブモードにしてあった机上の携帯からのミサトの声に、マヤは答えた。
「はいッ!発進準備オーケーです!アスカさん?」
そして、モニタに一人の女性が映し出された。それは包帯姿も痛々しいアスカであった。
エヴァの操作は神経接続によって行われる。重傷で体が動かなくとも操作は可能だ。
そして、モニタの向こうのアスカは弱々しく腕を上げて、親指を立ててポーズを決めた。
「……ハイル、シンジ!」
それを見たマヤは苦笑しつつも、端末を操作し絶叫する。
「エヴァンゲリオン弐号機、発進!」
278:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/17 20:54:10
その声を聞いたミサトは携帯を閉じてメイド達に振り返る。
「皆、こっから先はこちらにも死人が出るわよ。覚悟は良いわね?」
すると、メイド達は口々に答える。
「ご心配なく。まだ、私達も本気を出してはいません。」
「私達が本気を出したら、目を背けたくなる地獄のような光景になりますが……構いませんね?」
「ミサトさんこそ、ご覚悟を。」
頼もしい限りの花のような女達。いや、少女と言ってもいい者も居た。
一体どんな教育を施されたのだろう。
底知れぬシンジハーレムの恐ろしさにミサトは思わず体を震わせた。
「すごいわね。それでは、たっぷり拝見させて頂きますか。その地獄とやらを。」
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァッ!!」
快進撃を続ける弐号機。
戦車達を踏みつぶし、戦闘ヘリを振り回し、破壊のかぎりを尽くすアスカ。
もはや戦自の増援は壊滅状態であった。
アスカは、怪我人とはとても言えない形相で弐号機を操作し、尚も殺戮を繰り返す。
「クッ……あれが、エヴァンゲリオン……」
「まさに悪魔だ……む、あれは?」
アスカの暴れっぷりに驚愕していた自衛隊員が、ふと上空を見上げた。
「あの攻撃機は……まさか!?我々を巻き添えにして……?」
279:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/17 20:55:41
そして、弐号機を中心に凄まじい衝撃と轟音が響き渡る。
攻撃機から投下されたN2爆雷は正確にアスカの弐号機へと着弾したのだ。しかし、
「無駄と言ってるデショ?弐号機には数千枚の特殊装甲と、ATフィールドがあるのデェース!」
もはや高笑いのアスカ。弐号機には傷一つついていない。
NERV本部は有る程度の距離を置いていたため巻き添えしなかったのだが、
周辺にいた自衛隊員は一人残らず消滅してしまった。
これで戦闘が終わったかに見えた……が、新たな敵が上空から現れる。
「それは……量産型のエヴァシリーズね。」
そう、アスカに教えたのはミサトである。
(S2機関搭載のエヴァシリーズ……とても、弐号機などに勝ち目はない……)
たとえそうであっても、引くわけにも行かない。
ミサトはそれが死刑宣告だと知りつつ、アスカに告げる。
「……全て倒しなさい。いいわね、アスカ。」
『判ったワ。ミサトもシッカリやるデスヨー!』
「あはは♪こっちは余裕よ、余裕。」
まさしくミサトの言うとおり、メイド達もまた快進撃を続けていた。
メイド達は有言実行し、圧倒的な強さで敵、戦自の隊員達を翻弄する。
280:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/17 20:57:06
「ルームサービスは如何っスかぁ?」などと言いながら隊員の居室に火炎放射を見舞うメイド。
「ワタクシが切り分けて差し上げますね。」といって首をナイフでかき切るメイド。
手榴弾を容赦なく投げつけ、降伏する者の頭を吹き飛ばし、みるも無惨な虐殺を繰り返す。
戦闘のプロであるはずの戦自相手に、子供を踏みにじるような大人げない戦闘ぶりを見せていた。
「あんた達、いい加減になさい!先へ急ぐわよ。私達は……」
「はいはい、シンジ様の救出ですよね。」
もうメイド達の統制などあったものではない。
残虐な彼女たちを叱り飛ばしつつ進むミサトであったが、彼女も然り。
「ほら、邪魔よ。悪く思わないでね。」
命乞いをさせる余裕も与えず、ミサトは突きつけた銃で相手の喉笛を吹き飛ばすのであった。
(ああ……撃ってしまった……僕は……綾波を撃ってしまった……)
初号機のライフルで撃ち抜かれたレイの体は、
もはや形を止めず、溶け出してジュクジュクと床に流れていく。
(これで……本当によかったのだろうか……本当に……え!?)
ガキッと何かが初号機を羽交い締めにした。
それは初号機とほぼ同じ全長を持つ、操縦できるパイロットが居ないはずの参号機であった。
その参号機には通常とは異なるエントリープラグが接続されている。
それは、エヴァシリーズにも搭載されている渚カヲルを模倣したダミープラグであった。
281:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/17 20:58:05
「ご苦労だったな、碇ゲンドウ。」
その場にホログラフが立ち上がる。それはゼーレのキール議長であった。
「さて、儀式を始めるとしよう。程なく、エヴァシリーズが到着する。」
彼らが居た巨大な空間。その天井が、ゴゥッ……という物音を立てて大きく開く。
そして差し込む光。はるか頭上は澄み切った美しい青空。
「では、始めるぞ。我らが二千年に及ぶ大いなる復讐を……」
「なんで……なんで倒れないんですカ!?」
その首をちぎり落としても、胴体を真っ二つに切り裂いても、
すぐさま体を修復して立ち上がり、弐号機に襲いかかるエヴァシリーズ。
もはや弐号機のアンビリカルケーブルは千切られて、バッテリーは底を突きかけていた。
「それでも……それでも!ここは通しまセンッ!!うおおおあああぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
最後の力を振り絞り突撃する弐号機。
しかし、エヴァシリーズは翼を広げて上空高く舞い上がり、一斉に手にしていた武器を投げ下ろした。
それは、イエス・キリストの処刑に用いられたというロンギヌスの槍のレプリカであったのだ。
こうしてエヴァシリーズは弐号機にとどめを刺し、向かう先はNERV本部上空。
「来たか。それでは初号機を、碇シンジを曳航せよ。」
バサバサと翼を羽ばたかせて舞い降りる、その禍々しいまでに白いエヴァシリーズの姿は、
まるで飛来する怪しいハゲタカの様であった。
282:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/17 20:58:59
初号機の両腕、両足、胴体、首などに喰らいつき、そして天高く舞い上がる。
こうして初号機を引き渡した参号機は、あるものを手にしていた。
それはエヴァシリーズが持っていたレプリカとは異なる、真性のロンギヌスの槍であった。
「ああッ!!遅かったか!」
ようやく、ゲンドウ達が居る空間へと辿り着いたミサト達。
ミサトはゲンドウの姿を見つけて銃を構える。
「降ろしなさい!早くシンジ様を地上に降ろして!」
「無駄だ。もう既に儀式は始まっている。」
そう言って、ミサトに振り向くゲンドウ。
「この大事において俺の命など何ほどのことがあるものか。撃ちたければ撃て。」
「クッ……」
ミサトは周りを見渡す。恐らく参号機が儀式を司る中心となるだろう。それを破壊するのも手だ。
しかし、S2機関を宿した参号機を倒す方法など有るはずもない。
そんな中、朗々としたキール議長の声が響き渡る。
「数千年来、我ら人類を支配し続けた大いなる矛盾……」
「殺戮が罪であり、男女の交わりが淫らであり、獲物に食らい付き蝕となすことが強欲であり……」
「人が生きるための術が全て悪徳であり、罪なる行為とした大いなる矛盾、天の教え……」
「我らは、この全てを変える。この儀式を経て人類は生きるためにこれらを覆す。」
「全ては我らが生きるために。全ては我が人類が生き続けるために。」
283:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/17 21:00:52
「個を滅して群れを尊び、無用に生きる全てを廃し、」
「地上の、天の、全ての万物を我らが掴む。それは全て生きるが為。」
「生物として生まれ出でたはずの我々にとり、天にねじ曲げられた真理を、我らは取り戻す。」
「我らはその全てを正す。我らが新たなる真理を掲げる。」
尚も高く、初号機が天へと登る。
それを見上げ続けているミサトが驚愕の声を上げる。
「あれは!?」
「あれこそが生命の樹。それを守る使徒を全て倒して、我らが目指した到達地点。」
そう答えたのはゲンドウである。
エヴァシリーズからアンチATフィールドが展開され、上空に不可思議な文様が展開される。
それはキリストが磔に用いられたという一説がある生命の樹。
その姿を現したという、太古の錬金術師ロバート・フラッドにより描かれた聖なる魔方陣であった。
ゲンドウはミサトに言う。
「お前達のお陰で最高の舞台となるだろう。我々の思惑通り、お前達によって流された血によって。」
ミサトはキッとゲンドウを睨み、改めて銃を向ける。
しかし、ミサトは撃たない。ゲンドウを撃ったところで、もはや何の意味もない。
それに、ゲンドウは自分が裁くべきではない、と感じたからでもある。
284:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/17 21:02:47
なおもキール議長の詠唱は続く。
「さて、碇シンジよ。世界の富の上に胡座をかき、欲しいままに性と蝕を貪りし者。」
「処刑される貴様の姿が、不浄と呼ばれる人の真の姿である貴様の姿が象徴となり、世界を支配するだろう。」
槍の投擲体勢を取る参号機。標的は上空の初号機である。
「現れ出でよ、生命の樹。不浄にして真実なる人の血で、その天界の御柱を砕き……」
何が起こったのか。ここでキール議長の言葉は突然に途切れた。
285:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/17 21:07:41
ここまでっすー。結末まであともう少しー。
286:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/17 22:30:30
いちおつがんばって
287:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/17 22:38:57
スゴイとしか言いようの無い・・・
1の脳内はどうなっているのか
288:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/17 22:56:44
↑どっちの意味で?
289:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/17 23:35:49
最近の分を一気に読んだ。
NERV施設内の女たちのシンジへの媚は、あくまでゲンドウらの指示で上辺だけだったのか。
なんでマヤだけ違ったんだ?
290:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/18 02:22:16
すげぇな
ただその一言に尽きる
ちゅーか博識だな
291:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/18 04:28:52
アスカがDIO化したのはワロタwwwwww
292:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/18 08:03:24
GJ!
293:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/18 10:31:49
最初はシンジの回りにいる人が皆過保護なくらいちやほやするギャグ話かと思って読んでたけど…
ちゃんとシリアスな部分も混じっててよく考えてるなって思った。
>>1の文才に(´Д`)ハァハァ
294:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/18 11:52:47
それだけに、"照準"がことごとく"標準"なのが……
295:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/18 12:08:44
>>288
いい意味で
296:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/18 16:17:55
>>1の文才は凄いと思うだけに、誤字が気になる。
297:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/18 18:57:56
なんだかわからなくなってきたから誰か説明しt
298:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/18 22:21:50
補完計画の設定を>>1が根底から覆したんだよ
299:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/18 22:54:06
ドンッ
「うわああああぁぁぁぁぁぁ……」
そこに居た全ての者は、何が起こったのか訳が判らなかった。
突然、ゲンドウの足下に暗黒の空間が開き、彼を深い奈落へといざなったのである。
「な、何事だ。一体!?」
おののくキール議長。しかし、彼の内側から容赦ない声が響き渡る。
(だ、誰だ?お前は!?)
滑稽だな。そんなことで生命の樹が姿を現すとでも思っていたのか。
(……!)
17の使徒を倒せば樹が姿を現す?ハッ!貴様らが細々と伝承してきた天使の数など氷山の一角。
天界の楽園には数千の守護天使が常に羽ばたき、かの樹を守っているのだぞ。
仮に、それらを全て除いたところで全能なる父が許すと思ったか?愚か者め。
(お前は……お前は……)
お前達は我をこう呼んでいるな。第16使徒アルミサエルと。
(馬鹿な……貴様は我らが倒し……)
碇シンジが願わなければ我らを滅することなど出来ん。
例えアダムの形骸を用いて、この姿を滅ぼしたとしても。
300:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/18 22:55:40
つまり、近年稀にみる優スレってことさ
301:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/18 22:56:13
(そんな……馬鹿な……)
我は存在であり、肉体を滅しようとも精神が砕かれようと、例え虚無に帰しても尚も存在する者。
如何に千年も朽ちぬ肉体を有しても、存在無くして肉体は虚無に等しく意味を為さぬ。
物質世界でしか生きられぬ貴様らが、物理的な破壊を用いて我らを滅することなど根底から可笑しい話だ。
こんな時はどんな顔をすればいい。笑えばいいのか?貴様らを。
(うう……ううう……)
さて、語るも飽いたな。我々を利用し、冒涜を語り、碇シンジを辱めた代償は払って貰おう。
地獄の底で悟りを開くがいい。その時間は数千年からたっぷりあるぞ。
さて……後始末だな。ゼルエルにここを清めさせ、碇シンジの世話は引き続きタブリスに。
お前の始末は、あの悪戯小僧がやってくれるだろう。
あの者、既に自分が好ましい闇の底へと招待されたようだな。それとも元々の住処だったのか。
では、達者でな。
キールは、遠く離れた箇所から通信により指揮をとっていたのだが、
距離など天使の御手には無意味の様だ。
そこまで語り終えたアルミサエルの意識がキール議長から離れた瞬間、
彼の足下にも、ドンッ……と巨大な暗黒の深淵が広がる。
「あああッ!貴様は……貴様は……」
その暗黒から現れたもの、それは青白く血にまみれた渚カヲルの顔であった。
「あああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
そして墜ちてゆく。深く暗い闇の底へと。
302:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/18 22:57:26
やがて、天空にある初号機から光が放たれ、幾枚もの巨大な羽根が開かれる。
バカンッ……と、初号機を構成していた拘束具が飛び散り、使徒アダムの巨体が姿を現す。
そして胸元に掲げられた手の中に、碇シンジの姿があった。
そして、そこにもう一人居る……それは第17使徒タブリス、綾波レイである。
慌てふためくエヴァシリーズ。もはや統制を失い、初号機の周囲を乱れ飛んでいた。
が、それらを滅するのは初号機の仕事ではない。
地上では参号機が苦悶に陥っていた。
もがき苦しみ、頭を抱え、挙げ句の果てには爪を立てて自らを真っ二つに引き裂いてしまった。
そこから現れた者、それは参号機に食い散らされたはずのゼルエルである。
次々と閃光を放ち、エヴァシリーズを殲滅していく。
搭載されているはずのS2機関は何の意味も為さず、全て空中において蒸発していった。
そんな中を初号機はゆっくりと地上へ降りていく。
(綾波……いや、その、なんていったっけ。)
(ううん、綾波でいい……元々、名前というものは無いのだから……)
(うん……)
(怖がらなくていい……何も不安に思うことはない……あなたは何の罪も、汚れもない……)
(でも……)
(ん?)
(僕は綾波を……)
303:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/18 22:58:11
(私を撃っても私は死なない……あなたが願った通りに死なずにすんだ……だから……)
(……)
(だから、あなたは私を殺さなかったのと同じ……あなたが私を撃ったことなど無意味……)
(でも、僕は……)
(もう何も不安に思うことはない……あなたを悩ませていたことは、既に消え去った遠い過去……)
(……)
(さあ……あなたは何を願うの?……ただ、想うだけでいい……何を願うの?)
そして、シンジはスッと目を閉じた、その瞬間。
(あなたの願いは聞き届けられました……)
レイはそう言って優しく微笑み、姿を消した。
それは綾波レイが初めて見せた笑顔であった。
気が付くと、シンジは涙ながらのミサトやメイド達に取り囲まれていた。
ここは元のNERV本部。既にボロボロの瓦礫と化していた。
既に戦闘は終わっている。彼らを攻撃する敵など全て消え去っていた。
ミサト達は傷つきながらも全員無事である。はたして、これも使徒の計らいだろうか。
そこに今更、退路を確保した、などという加持リョウジが滑稽な姿を見せる。
ミサト達はそれを笑いながらも、あまりにもあっけない事態の収束を感じ始めていた。
304:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/18 22:59:02
一応、付け加えで無事だったもう一人のことを。
エヴァシリーズに嬲られ、投げ落とされた弐号機の残骸。
もはや肉塊でしかない弐号機からモゾモゾと這い出てきた者。
ズボッと天に向かって腕を突き出して立ち上がり、そして一喝。
「惣流アスカ・ラングレー!華麗にふッかぁぁぁぁつ!!」
しかし、そこは深い森の中。その復活を見届けた者は誰もいない。
「む、空しいデェース……」
305:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/18 23:01:16
ううう、まだまだ誤字脱字をチェックできてないみたい。私の目は節穴ですorz
勢いで書いちゃってるので、などという言い訳などいいですね……
次でさいしゅーかーい。
306:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/18 23:28:30
乙!
原作よりこっちのほうがスッキリするな
307:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/19 00:51:45
面白いな!
作者の>>1さん乙カレー
308:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/02/19 06:09:10
原作を見たことがないのでこの話が俺にとってのエヴァになりそうだW
309:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/19 12:05:04
エピローグ
巨大なベッドで、スルスルと白いシーツの上を滑らせる艶めかしい両脚。
そして、これ見よがしに豊かな胸を揺らして仰向けになったのは葛城ミサトであった。
「んふふふふー♪初めてにしては、なかなか良かったわよ?」
「そ、そうですか……どうも……」
顔を真っ赤にして横に寝ているのは、見事に童貞を奪われてしまった碇シンジであった。
事を済ませて一息尽くためか、ミサトは咥えた煙草に火を付ける。
「あ、ごめんね。済んだ後に必ず吸いたくなっちゃうのよ。シンちゃんケムイ?」
「いえ……どうぞ。あの、灰皿。」
「ん、アリガト。」
NERVは既に崩壊したためか、様も付けずに親しげに接するミサトであった。
「それにしてもさぁ、シンちゃん?不思議というかなんというか……」
「え?」
「神様や天使様って……私達の想像できる範囲を遙かに超えているのかもね……」
「そうです……ね……」
「まだ、現れるの?シンちゃんの所に。」
「えっと……その……もう……」
「そっかぁ……なんか寂しいね。それも。」
「そうですね……」
310:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/19 12:05:50
ふと、シンジの方を向いたミサトは、突然にシンジをグイッと引き寄せる。
「ほらほら、指咥えて見てないで遠慮無くさわんなさいって。好きでしょ?おっぱい。」
「え、いや、あの」
「一回やっちゃった相手に遠慮してどーすんの。これから毎晩おっぱい枕してもいいのよ?」
「え……あ……あの……」
「ンもう、まだまだウブいわねぇ。これから先、そう言うところも鍛えなきゃ……所でさ。」
「え?」
「天使様に何てお願いしたの?」
「あ、ああ……その……」
「うんうん、何て?」
顔を尚も赤らめながら、シンジは言う。
「共に生きる喜びを……全てのものへ……」
「……ふむ?」
「……」
「……成る程ね。悪くないわよ、それ。」
「そ、そうですか?」
「よし、ご褒美を上げよう……おー、まだまだ元気じゃない♪物足りないなら早く言ってよ。」
「あの……ああッ……そんなとこ、触らないで……」
「こーら!人のを触っておいて、触るな、は無いっしょ?よーし、いいこと思いついた。」
「え?」
311:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/19 12:07:06
「メイドのコを一人呼んであげる。大半が未経験だし、初心者に処女のお相手大変よ?手伝ったげる。」
「え……あの……ちょっ……」
「んーと、それともマヤがいい?あ、そうそう、腕を怪我しちゃったあのコが良いわね。」
「あ、あのねぇ……ミサトさん……」
「きっとシャワーはおろか、服脱ぐだけでも大変よ。よしよし、内線で……」
「ちょっと、ミサトさん!僕は女の人を手当たり次第になんて……」
「……シンジ君?」
「え?」
「あんたの為に命がけで戦ったあのコたちの想い……受け止めてあげて欲しいのよ……」
「あ……」
「みんなNERVに洗脳されてたのよ?もう、他の男は愛せないかも……」
「……」
「死んでいったコが他のみんなに託していったの。私の分までって……」
「……」
「……OK?」
「あ……はい、あの……あれ?」
「みんなにタダ働きさせようなんて、ぜっっったいに許さないから。もしもし?えっとね……」
「あの、ミサトさん……そう言えば、だーれも死んでないって自慢してたはずじゃ……」
「あれれ?シンちゃんってば更に元気になっちゃって……この子はヤル気まんまんじゃないのさ!」
「いや、あの、その、」
「しょーがないわねぇ……もしもーし!今言ったコに加えて2人前ほど追加ね!大至急!」
312:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/19 12:07:53
そんな訳で、NERV崩壊後の今になってシンジハーレムは本格始動した訳である。
それから先の数ヶ月。
各国政府や国連までも交えて大変な大騒ぎとなり、NERVおよびゼーレ崩壊の後始末が繰り広げられた。
世界の富を自由に操ってきた連中であったが、怪しい儀式のために注ぎ込んでいたことが露見され、
世界中が互いに攻撃と言い訳の押収でごった返すこととなった。
そんな騒ぎがようやく終息し始めた頃。
碇シンジのハーレム生活が遂に幕を閉じることとなる。
これから大人になろうという男に、何時までもそのような生活をさせておくわけにはいかない。
実は言うと、NERV崩壊後の数ヶ月はそのための準備期間でもあった訳である。
ミサトが運転する一台の車に乗せられていくシンジ。
シンジは後部座席に、そしてミサトの隣の助手席にはマヤが座っている。
最後の時には泣きの涙で大変な騒ぎとなる……かと思いきや、意外とさっぱりした別れであった。
「これが全員の連絡先です。したくなったら何時でも呼んでくださいね♪」
そんな言葉と共にシンジに住所録が手渡され、笑いの渦でシンジハーレムは閉幕。
シンジは全員にバースデーカードを送ることを約束し、シンジ邸を後にした。
「で……これから、僕はどうなるんです?」
そういう聞き方も無理はない。何故なら世界規模の重要参考人であるのだから。
「うん、最後には名前も変えて、まったくの別人として生きていくことになるかもね。」
313:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/19 12:08:58
「そうですね……すっかり有名人になっちゃってますし。」
「でも、人里離れたところで生きて幾分には問題ないかも。」
「あの……僕はこれからそういう所に行くんですか?」
「そーよ。あら?言ってなかったっけ。」
「はい……で、住むところは?」
「はい、これが住所と地図。」
「あれ……あの……この名前……」
「そ。これからシンちゃんは洞木さんちのお世話になるのよ。」
「えぇ!?でも、僕は2、3回しか会ったことがなくて……」
「心配ないわ。私も話したけど、とってもいいコよ?それにシンちゃんのこと、ずっと心配してたみたい。」
「そ、そうなんですか。」
「んフフ、シンちゃん……ダメよ?いきなり餌食にしちゃ……」
「そ、そんなことしませんッてば!」
「そーね、もう散々やりたおしたし、溜まりっぱなしだったシンちゃんもスッキリしたでしょ?」
「もう、ミサトさん……」
やがて、付いた先は港であった。
「あの船よ。出航は一時間後。」
「はい……」
「それじゃね……ほら、マヤ!お別れのキスぐらいしてあげなきゃ!」
「え、そんな、ミサトさん……」
314:>>1 ◆LRvRIPAn.s
07/02/19 12:10:05
顔を真っ赤にしてうろたえるマヤであったが、
「当分会えないのよ?」
「……はい、あの……いい?シンジ君。」
ミサトに促されて、照れながらも済ませたマヤ。その後にミサトも続く。
「……ん……んんん?……ぷっはぁ……」
「この大人のキス……好きなコが出来たら、してあげなさいね。」
「……はい……今まで、有り難うございました。」
そうして船が出航するのを見送る二人。
「ミサトさん……シンジ君、上手くやっていけるでしょうか……」
「もう大丈夫っしょ!あんだけ皆に鍛えられたんだし。」
「そうですね。メイドのみんなに炊事洗濯、家事全般をみっちり仕込まれてましたし。」
「……まさか自分の送別会の料理を自分で作らされるとは思ってなかったみたい。」
「誰も思いませんよ。でも……」
「何?」
「いくらなんでも、銃火器の扱いから格闘技まで仕込むのはやり過ぎだったんじゃないですか?」
「そうねぇ……戦車やヘリの操縦よりも乗用車の方が役に立ったかも。」
「あの最後の遠足、あれは非道いですよ。ナイフ一本で山に放り込むだなんて。」
「あー、あれね。流石のシンちゃんも参ってたわね。蛇が不味くて嫌になったとか言って。」
「お塩ぐらい持たせてあげればよかったのに……」