07/06/02 00:42:13
不幸中の幸いは相手たる加持も詰襟の制服ではなくいつものワイシャツにネクタイを締めただけのラフな姿だった事。ネクタイも彼程緩めればフォーマルさが抜ける。
「お? アスカはどうした?」
「とっくに寝たわよ、だーいぶ前に。こんな時間にお客さんが来るってのは迷惑なのよ」
「この時間なら。アスカ未だ寝てないんじゃ……」
鋭い。もしくは空気とミサトの気持ちが読めていない。
同じ家に暮らしているとはこういう事だと今回は嫌な意味で実感させられた。
自分が加持と暮らしていたあの懐かしい時分にも、こんな事が有っただろうか?
「……何でも明日朝から友達と映画見に行くんだそうよ」
だから夕食を簡単に用意してくれていったのは助かった。と言おうとして、加持が居る手前言葉を飲み込む。
「あの、皆が言ってるヤツですか?」
「多分ね。お陰で早くお風呂入らされちゃって困ってたのよ」
「そりゃ大変だ。じゃあシンジ君、グラス3つ用意してくれ。出来れば余りデカくないヤツを頼む」
「はい」
「何がじゃあなのよ! シンジ君もいちいち返事をしない! っていうか本当に出さない! その前に何で私じゃなくてシンジ君に言うのよ!!」
バン、とテーブルを叩いて立ち上がる。
「全部まとめてツッコミ入れるとは、やるな葛城」
「誉められても嬉しかないわよ!」
そもそも誉められている気がしない。
そんなやり取りを気にせずに、シンジは加持に言われた通り食器棚からグラスを3つ持ってきていた。
「これで良いですか?」
「有難う。お、これこの前の結婚式の引き出物だな」
運ばれたグラスを手に取って加持は目を細める。
「そうよ。ったく、どいつもコイツも結婚しちゃってさ」
378:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/06/02 00:43:28
グラスと言われたのでシンジは安いコップではなくワイングラスを持ってきた。
ペアのグラスと、もう1つはそれより一回り小さい、こちらは水色掛かったグラス。
加持が手にしているペアのグラスは透明だが、取っ手部分に綺麗だが邪魔な、よくわからない一応アールヌーボー調の模様が入っている。
別に貰っても嬉しくはないが、名前やら顔写真やらが入っている皿と比べれば何倍も使い勝手が良い。
「酒って言っても地酒が美味い所じゃなかったんでな。普通にワイン買ってきたんだよ。ほれ」
1番重たそうな買い物袋から出てきたのは赤ワイン。
見た事の無いラベルだが、決して安物じゃない。しかし年を重ねて宅飲みを良しとしなくなったらしい加持が高級品を買ってくるだろうか。
そもそも、どこに行って良い地酒が無いと言っているのだろうか。
……別にそんな事を訊く必要は無いし、今は訊ける立場でも関係でもない。
「美味しいの? それ」
「不味い時の為にもう1本」
同じ袋から出てきたのは瓶ビール。
「葛城はこっちのが良いだろ」
「それいつも飲んでるわよ」
今もまさに飲んでいた。
だが、口ではそう言いながらも目はそのビールを見ている。
「そうか? んじゃあチューハイとか」
同じ袋から缶チューハイ。
「気分を変えてカクテルとか」
同じ袋から缶ジュース……にしか見えない最新の安物カクテル。
「普通に酒だって買ってきたぞ。これは家の近くのコンビニでだが」
同じ袋から、遂には25度の焼酎瓶。
「最近のコンビニは何でも有るな、数年前と大違いだ」
「どんだけ買ってきてんのよ……」
「明日は休みなんだから良いだろ」
「加持さんも明日休みなんですか?」
379:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/06/02 00:44:48
袋に入っていた持参品のソムリエナイフを手に、どうやって使うか模索していたシンジが尋ねる。
「あぁ。シンジ君は学校が休みで、葛城も明日は休み。だから今日は3人でめいっぱい飲もうな」
「僕は未成年だから飲めませんよ」
「なぁに言ってるんだ」
シンジの手からひょいとソムリエナイフを取り上げる。
「ここまで来て飲まないなんて言わせないよ。別に誰に迷惑が掛かるでもなし、酒で成長が止まるワケでもない。シンジ君の健康状態からすりゃ、俺達がちょいと飲むより良い位だ」
口八丁とはまさにこの事。加持は口が上手い。
よく喋るとか語彙が豊富とか、そんな段階ではない。上手いのだ。自分の言いたい事を最後まで聞かせるように運び、相手が気付けば笑いながらYesと言ってしまっている。それに声も良い。
最初はその話と長身で顔の作りが良い所が気に入った。
だがその言葉達はセカンドインパクトの傷の1つでしかなく、その暗い過去やらギャップやらが格好良かった。
其の頃は自分も若く、そんな彼を受け入れてやれると驕っていた。
加持もミサトの過去の傷を、胸と心の傷を舐めて慰めてくれた。
愛し合っていると信じていたし、事実愛し合っていた。
最後は互いに溺れ合っていくその愛情の行く末がただただ怖かった。
―シュポン
もう8年近くも前の事を思い出している間に、加持はワインのコルクをどの袋からか取り出したスクリューで抜いている。
「まぁ1杯位は付き合えって。2杯目からは葛城と同じビールで良いから。あ、栓抜き取ってきてくれ」
「はい」
ビールもアルコール飲料だと言う暇も無く、シンジは素直に再び食器棚に向かった。
380:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/06/02 00:46:10
「葛城も最初の1杯位はワインにしてくれよ。折角手に入れたんだから」
「そんな良いワインなワケぇ? 諜報部の給料はよっぽどお宜しいようで」
加持にとって都合の悪い事はワインを注ぐコポコポという音に掻き消された。
ワイン独特の、でもどこか甘ったるさを覚える香りがテーブルの上に伸び広がる。
「年代物じゃないが日本人の好みやすいタイプらしい。話の種にでも飲んでみたって罰は当たらないさ」
「罰当たったって飲みたきゃ飲むのが基本よ」
神様の下す罰なんて少しも怖くない。
観念し、寧ろ楽しむ勢いでミサトはグラスを手に取った。
「シンジ君は少しの方が良いかな?」
「僕は……本当に結構です」
「じゃあ1口飲んで駄目そうだったら止めれば良い。大丈夫そうだったら少しずつ飲めば良い。これ以外に土産が無いんだ、受け取ってくれ」
拒む余裕を与えず、しかしペアではない方の小さめのグラスに少量だけ注ぐ。
香りも色も鮮やか過ぎて、まるでグレープジュース。
そう思えたからなのか、結局シンジもグラスを手に取りいつもの席へ座った。
「さて……特に乾杯する理由も無いな、乾杯!」
「か、乾杯」
アスカの座る席へ着いた加持のタイミングの掴みにくい音頭に続いたのはシンジのみ。
既にミサトは座り直し、グラスに口を付けている。
「あまっ」
そしてミサトの苦情。
「こりゃちょっと酒っぽくなかったな」
「赤ワインなんて小洒落た物にしようとするからよ」
「やっぱワインは寝かせた物じゃなきゃ駄目だな。でもまぁ、この方がどんどん飲めるだろ」
「次のビールまで、すぐっぽいわね」
ぐっ、とグラスの中を一気に飲み干すミサト。
381:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/06/02 00:47:25
普段ビールを飲んでいると、アルコール度数の高い酒でもついハイペースで飲んでいってしまう。
このままではすぐに悪酔いしてしまう。ただでさえ目の前の晩酌相手がこの男なのに。
空になって置かれたグラスにミサトの心情を知ってか知らずか、加持は再びワインを注いだ。
加持もかなり早いペースで飲むつもりらしく、ボトルの中身はどんどんミサトと加持とのグラスへと分けられていく。
どちらが先に酔い潰れるか、何かにも似た駆け引きが始まった。
しかしその駆け引きは意外な決着を迎える。
寧ろ決着を、終わりを迎えられなくなってしまった。
「んーペンペンあったきゃーい……」
強く強く抱き締めてくるシンジにペンペンは唸り声を返そうにも返せない。
「シンちゃんが笑い上戸なのはちょっと意外だったわね」
「全くだ。泣き出すか……もしくは父親に似てちっとも酔わないか、だと踏んでたが」
「碇司令って酒強いの?」
「一緒に飲んだ事は無いがな」
確かにゲンドウが酔い潰れてヘラヘラ笑っている姿やいきなり号泣し出す姿は想像が付かない。飲めば荒れる、という想像も何故か今は出来そうにない。
「ねぇっ」
いつの間にかペンペンを放したシンジが顔を真っ赤にして、テーブルに手を付いて向かいに座るミサトへと乗り出す。
「父さんのお話ぃ?」
「ん、違うわよ」
「なぁーんだぁー」
わざとらしい膨れっ面でガタンと椅子に座り直すシンジ。
ほんの1時間前までアルコールのアの字も知らなかった子供が、こんなにも酒を楽しめるようになるとは。
楽しむどころか完全に酒に飲まれているのだが。その所為で父親のゲンドウの怒り上戸で酔う姿が想像出来ないのだろう。
382:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/06/02 00:48:59
そんなシンジの姿を見せられては、ミサトも加持も酔うに酔えない。……だが、一応純粋な酒の味は楽しめている。
「じゃあ2人で何のお話してるんですかぁー」
椅子から落ちてしまいそうな程身を乗り出して加持に擦り寄る。
「さぁ、何の話だろうな?」
シンジの右肩に腕を回して加持もシンジを抱き寄せる。椅子が不安定に傾き、全体重を預けたような格好。
「加持さん、またヒゲ伸びてる」
身長差は有るが座っているので座高の違い程度しか無く、自然と顔と顔とが近付く。この距離なら互いの息遣い―確実に酒臭い―までわかる筈だ。
「剃らないのぉ?」
「んー……面倒臭くてな」
空いている左手でグラスを取り、加持は新製品の毒々しいカクテルを飲む。
「剃らないのぉ? 剃った方が良いのにぃ!」
普段ならば絶対使わない言葉は相手の男に気が有る女が使うそれで、見ているだけで何やら苛立たしい。
「ヒゲは嫌いか?」
「いつも位なら良いけどぉ、あんまり伸ばすと父さんみたいになっちゃうから駄目!」
「そうか、駄目か」
くつくつと笑う加持の顔はいつも彼が繕っている調子に乗っている顔に見えるが、酔いが回っているようには見えない。寧ろ酔えなくて必死に酔ったフリをしているような……
隣のシンジが酔い過ぎているからそう見えるだけかもしれないが。
「シンジ君に嫌われるワケにはいかないから、そろそろ剃るとするかな」
自らの手でザラザラともジョリジョリともいえない顎を擦る。と、その手にシンジの右手が触れた。
「剃った方が良い?」
「うん」
「剃ったらキスしてくれるか?」
「うん」
大きく頷いたシンジは加持の左手を払い、唇を押し当てる。
383:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/06/02 00:50:11
……ヒゲの有る頬に。
「ちょっとぉッ!」
ドン、と大きな音を立ててグラスを持ったミサトの手がテーブルを叩いた。
「おい、割れちまうぞ」
「うっさいわね! アンタ何考えてんのよ!!」
「何って……なんにも、なぁ?」
「なー」
ペンペンの次の犠牲者は加持といわんばかりに、椅子から立ち上がって首に両腕を巻き付ける形でシンジは抱き付く。
「例えアンタにそっちのケが有ったとしても、シンジ君には手ぇ出させないわよ!」
「そんなつもり無いよ。シンジ君は、いわば俺の娘みたいなモンだからな」
お手上げ、言葉通りに加持は両手を海外ドラマの要領で上げて見せた。
「娘じゃないよ、息子だよー」
「そもそも子供じゃないでしょ」
シンジの方は邪気が一切無いらしく間伸びした言葉を吐いてそのまま寝入るように体の力を抜いた。重たそうに、そして満足そうに加持は微笑む。
「息子はどっちかっていうとアスカだな。父親と遊んでもらいたくて母親に反抗的な息子。シンジ君は父親にオドオドしながらも本当は懐いてて、でもつい母親の方にいっちまう娘。で、どうだ?」
どうだと訊かれても何と答えれば良いのか。
「まぁ、そんな感じは有るのかもしれないけど……そのお母さんって私の事?」
「勿論」
悪びれる様子も無くどこか満足気に加持は頷く。
「こんな大きい子供、いきなり出来たら困るわよ」
「だが2人はきっと喜ぶぞ」
「そんなワケ無いわよ。……多分」
そういえば2人揃って両親に、家庭環境に恵まれているとは決して言えないのだった。
かといってミサトと加持の間の子供だったとしても、それはそれで宜しくないだろう。
「ま、これだけ家の中の仕事出来ない奴が母親ってのは、確かになぁ」
384:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/06/02 00:51:29
「うっさいわねー。これから家事は男がやる時代なのよ」
もう何年も前からどこでも誰でも言っているような台詞に加持は口の端を上げた。
「なら丁度良いな。一人暮らしを長年やってきた甲斐が有った」
「アンタみたいな浮気症の男……」
続く言葉が出てこない。それが彼の、仕事と人生の一部をスムーズにする為フェイクに過ぎないと知っているから。
軽そうな彼の容姿にかっちりと当てはまった、彼らしく彼の本性とはかすりもしない上辺。
「……アンタの子供なんて、見たくもないわよ」
「そうか」
「ッ!?」
今、自分は何と言った?
ミサトは慌ててほぼ空のグラスを押し当てて口―から知られかねない表情―を隠した。
目の前の加持は楽しそうにシンジに首を抱かせたまま、しかし悲しそうに視線を、2人を挟むテーブルの端から端までを泳がせている。
こんな事を言う筈じゃなかったのに。寧ろ正反対の事をずっと胸に秘めてきたのに。
そうだ、あの頃から何ら変わり無く今も未だ思い続けている。
「ち、がう……のよ……」
何を言っても後の祭りだが、それでも頭は言い訳を必死に探した。
「残念だな、そりゃ」
いつも通りの軽い口調なのに違いがはっきりとわかる。
その違いはシンジにはわからなかったのか、何かを探すように眠たそうな体を加持から離した。
その背を加持の手は子供を寝かし付けるように優しく叩く。
「俺は葛城の子供だったら是非見てみたかったんだけどな。出来れば俺とお前の子をさ」
ほろり、と。
止める気すら無い涙がミサトの右目から零れた。
「な、何馬鹿言ってんのよ、馬鹿!」
385:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/06/02 01:02:24
続いて左目の涙が零れる。それらを追い掛けるように両目から涙が次から次へと溢れて顎まで伝う道を作る。
欲しかった。あの頃、『それ』をする切っ掛けに、けじめに子供が欲しかった。
万が一出来たら「ちゃんと付けないから」なんて怒って、周りからも「お前達は」と肩を落とされて、そんなぐっだくだの流れで『それ』が出来てしまうものだと思っていた。
しかし叶わぬ夢。そんな平凡で、他者からすると恥ずかしい位の日常は、非日常を体験して非日常に生きる道を互いに選んだ2人には降りてこない。
セカンドインパクトはあれだけの痛手だったのだ。胸の消えない傷と心の癒えない苦しみの他に、治る事の無い病も残してくれた。
「無理なのよ、私には……」
「あぁ、知ってる」
「だから嫌になったんでしょ」
「別れを切り出したのはお前だ。それにお前を嫌だなんて思った事は無い。例え子供が産めなかろうと、育てられなかろうと、お前の部分コピーよりもお前自身の方が良い」
それこそ今更だ。付き合って輝いていたあの時代に、何とは無しに欲しいと言っていたのだから。今しがた、再び見てみたいと漏らしたのだから。
もしも自分が普通の女性だったら、きっと加持の言葉は何よりも嬉しかったのだろう。しかし自分は普通の『女性』ではない。
父と、それから母を失ったあの日に、自らが母になる資格すら失っている。
「ミサトさん」
テーブルを濡らす雫ばかりを眺めていた顔を上げると、視線の定まらないシンジがこちらを見ていた。
誰が見ても酔っ払いの顔を、心配そうに歪めている。
「あっ、ゴメンねシンちゃん、ちょっち感傷的になっちゃったみたいでさ! これだから年取るのは……」
386:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/06/02 01:04:41
目を真っ赤にしたままのミサトの言葉は、シンジが抱き付く事によって遮られた。
「シンジ君?」
酒が回っているのか体が温かい。
控えめではあるけれど柔らかな温もりに包まれてしまっては、涙も止まる事が出来ない。
「良かったじゃないか、ちょっと酒に弱いみたいだが、健康で優しい子供が出来て」
そんな言葉は涙腺を更に弱くする。もう泣き止まなくても良いのだと許しを得たように、ミサトは久々に素直になって、シンジを抱き締める。
「ちょっとぉ……」
数十分後、ミサトは遂に不満の声を上げた。
「寝るなら布団で寝なさいよぉ~」
抱き締めたのではなく、体を預けた……正確には寄りかかって全体重をかけてくるシンジの体は、引き剥がそうにも離れない。
「シーツ洗濯しちゃったんですー」
我儘な子供そのものの語尾の伸ばし方をシンジがしているのを初めて聞いた。この状況ではちっとも嬉しくないが。
「じゃあシンジ君、どこで寝るつもりだったんだい?」
加持も加持なりに酔いが回っているのだろう。いつもの軽快な舌の動きとは少し違う。
「泊まる筈だったから、良いかなぁって。あぁーどうしよう、ミサトさん、僕どうすれば良いんですかぁ?」
「知らないわよもぉー! 私の部屋で寝れば良いでしょ。ほら」
よいしょ、と掛け声を付けてシンジを抱える形で立ち上がった。
「そのまま運ぶのか?」
「そう、よ……重いぃ!」
どちらかといえば体重の少ないシンジだが、それでも14歳の少年ともなれば女の細腕―それなりに逞しくはあるが、一応女性なので―しか持ち合わせていないミサトには軽々と運べる程ではない。
「どれ、貸せって」
「良いわよ。ほらシンちゃん、歩きなさい」
387:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/06/02 01:06:27
引き摺る形でふらつきながらもミサトは奥の自室へと向かう。
「布団位敷いてやるか?」
「もう敷いてあるから平気!」
さり気無く万年床宣言をしてしまった事を後悔するのは、部屋に入って戸を閉めて、電気を付けるより先にシンジを布団に寝かせてから。
やばい、アイツ絶対勘違いしたわ。
勘違いも何も、事実なのだから言い訳も思い付かない。
「……ミサトさん」
「ん、なぁに?」
早々に目が慣れてきたのか、真っ暗な部屋の筈なのにシンジの顔はよく見えた。
布団の上に仰向けに横たわるシンジ。未だ赤らんだ頬は戻らず、重たい目蓋を必死に下ろさぬように黒目だけでこちらを見ている。
「眠い」
「はいはい、寝て良いから」
「うん」
遂にシンジは目蓋を下ろし、「ねぇ、ここミサトさんのお部屋ですよね? ミサトさん、今日どこで寝るんですか?」控えめな声で既に寝言のように呟いた。
「私はどこででも寝れるわよ」
布団の足元側にぐっちゃぐちゃに畳んで置いた薄手の掛け布団を腹に掛けてやる。
「僕も、どこでも平気です」
そう言いながらもシンジは目を開けず、呼吸音を徐々に大きくしてゆく。……しかし、心なしか先程よりも口調はしっかりとしている気がした。
今にも寝入りそうな子供の顔。染まった頬もまるで遊び疲れた幼い子供。そんなつもりは決してないが、子守りをしているような錯覚に陥る。
腹部を布団越しにポンポンと優しく撫で、ゆったりとしたリズムで軽く叩く。1つでも子守唄を知っていれば歌って聞かせてやれるのに。
寝入るまで見守っていたいが、戸の向こうで加持が1人寂しく飲んでいると考えると、向こうにも早く行ってやらねばなるまい。これでは2人の子供の面倒を見ているようだ。
388:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/06/02 01:08:06
「ん……」
そう思って手を離すと同時に、シンジは声を漏らして掛け布団の右端を抱き締める。
「何か……眠くなっちゃって……」
手が離れると寂しい、とでもいいたいのだろうか。
だとしたらこの子供は随分と手間のかかる、そして自分に近い可愛い子供だ。
ふふ、と女性らしい穏やかな何かがミサトの唇に乗る。
「……じゃ、私も寝っちゃおっかな!」
そんな笑みを隠すようにとシンジの体の左側にどん、と勢い良く寝転んだ。
その際に頭だけ敷布団に受け止めてもらえず、床にごんとぶつけてしまったが、少し痛いだけなので気にしない。
「ねぇ、ねぇ! 一緒に寝ちゃおうかなぁー」
嫌がられるのを承知で、寧ろ望んでシンジに右手を回してしがみ付くミサト。
「そうして下さい」
短い言葉を吐いてシンジはミサトの予想と180度違う行動に出た。ミサトの手が放れると同時に自分も掛け布団を放し、体をそれこそ180度回転させて、ミサトと向かい合う形になる。
「……シンちゃん?」
「いっしょ」
それだけ呟いて布団代わりにミサトに抱き締める。
「シンちゃ、ちょ、ちょっと! シンジ君!?」
今にも寝付いてくれそうな息遣いなので声を余り大きくしなかった……のがいけなかったのか、繰り返し呼んでも返事も無しに抱き付いたまま離れない。
「あのーもしもし? シンジ君? おーいシンジ、起きろー。起きなくて良いから放してー」
「嫌です」
目を閉じたままきっぱりと断言したシンジは豊満すぎるミサトの胸に顔を埋めた。
「あのねぇ……」
もしこんな所を加持に見られたら何と冷やかされるかわからないのに。下手をするとあらぬ誤解を受けるかもしれない。
389:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/06/02 01:09:56
否、誤解は誤解だが、別に誤解されてはならない関係ではない筈だ。ミサトと加持は。少なくとも今この時点では。
それでも気になってしまうのは、やはり意識しているからだろうか。別れてから今までずっと心の奥底の片隅で意識してきたからだろうか。
「……あのねぇ」
もう1度、今度は自分に対してミサトは呟く。
「寝るまでよ、寝るまで」
子供が眠るまで父親の傍から離れる母親位、居ても良いだろう。
自分もシンジの事を笑えない程度には酔いが回っているからと決めて、シンジの頭を更に埋めさせ、優しく髪に指を通した。
シンジの鼻からは健康的な息が漏れているが、起きている証に少し不規則。目も閉じたままではなく瞬きを不定期的に繰り返していた。
その所為で、鼻息も睫毛もくすぐったい。
大きいと感度が鈍るとの噂―迷信、だろうか―が有るが、それはミサトに当て嵌まらない。胸と胸の間、両方の胸の内側を指先で撫でられているようなもどかしさに、長い足と足を擦り合わせてしまう。
子供―当然娘ではないが、やはり加持のいうように息子も違う気がする―として見るにしてもシンジは既に14歳。子供から大人へ向かう青春の、更に1歩手前の思春期。誰よりも子供扱いしてはならない年頃。
「14、か……」
自分が14の頃はどんな考えを持っていただろうかと考えようとして、すぐに止める。丁度14歳だった、セカンドインパクトが有ったのは。
そういえば、加持が14の頃はどんな考えを持っていたのだろう。
ふと締め切っているので明かりも漏れてこない戸の方に目を向ける。奥で1人飲んでいるのか、もしかすると珍しく酒に潰れてテーブルに突っ伏して寝ているかもしれない。
390:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/06/02 01:12:08
「大人というより、オジさんよね。って言ったら、私も充分オバさんだけど」
そんな独り言を吐いているこの時分こそオバさん臭い、と付け足そうとした瞬間。
「そんな事無いですよ」
胸元がくすぐったく喋る。
「女の人は30歳からって、よく言うじゃないですか」
未だ29だが……いや、始まっていないと言いたいのだろう。これからだと言ってくれるのだろう。そうであって欲しい。
「家の中の事に関しては大雑把というよりズボラで、もう何やっても駄目ですけど……」
「シンちゃーん、私を貶したいのかしらぁ?」
「でもお仕事はちゃんとしてるし。それに、中身もこう……」
「中身若いって言われたって嬉しかないわよ」
ぐぃとシンジの頭を掴んで体から引き離した。
「じゃあ何で言えば良いんですか?」
寝惚け眼で不貞腐れた物言いをしたシンジだが、ミサトが口を開くより先に表情を一転させる。
それはどこか、少年なのに艶かしい雰囲気を持つものに。
「行動で示した方が良い?」
「えっ?」
「『貴女は魅力的です』って、言うよりも……」
顔が近付いてくる。右頬に、シンジの左頬が当たる。
「……駄目、よ」
言いながら、何故か止める気が起きない。手持ち無沙汰の両手は自分タンクトップの裾を掴む事しか出来ない。こうしている間にもシンジの頬はミサトの首筋へと降り、角度を変えて唇を押し当てているのに。
子供がじゃれ付いてきているだけに思えない。肌に掛かる息が酒の所為で熱く、酒気を移されているのか? それだけじゃない、ミサトも最初は何だかんだと言いながら数分前まで結局楽しく飲んでいた。
391:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/06/02 01:13:27
あれだ、思春期ド真ん中の14歳の男となれば、きっとそういう盛りなのだろう。こんな女子供のような顔をしていても、頭の中は『それ』でいっぱいで、酒や眠気で欲望が剥き出しになってしまった、なんて所だろう。
もしくは覚えたて、だからなのかもしれない。いつ頃からかはわからないが、可愛い部下の嫌な噂をミサトだって聞いた事が有る。話していたのは誰だったか忘れてしまったし、第一言っていた人も「まさかね」程度に流していた筈。
だがもしそれが本当だったら、覚えてしまったばかりなら、自意識過剰にも出る所は出て締まる所は締まった女の体が目の前に無防備に置いてあるのだから、仕方無い。
年上の女性と交際している。それも1人ではなく複数と。もしくは年上の男性と。
アバウト過ぎる気もしたが、噂なんてそんな物だ。女か男か両方かは知らないが、年上の人間と交際していると噂されるシンジは唸るように息を熱くしている。
何をしているんだろう、と思いながらミサトはシンジの唇に自分のそれをゆっくりと滑らせた。
抵抗はされない。それどころか、まるで待ってましたと言わんばかりにシンジも顔の角度を変えて応えてくる。
やがてミサトの意識もこれが至極当然との考えに変わる。薄暗闇の中、多少年が離れていようとも男女が布団の上で抱き寄せ合っているのだから、これは仕方が無い。
そう思う頃にはミサトの舌は2人の唇を割ってシンジの咥内へと進んでいた。
「ん―」
先に声を漏らしたのはシンジ。
ミサトは慌てて唇を放し、「しっ」と黙るように促して再び口付ける。
少年の咥内は熱い。しかしこの熱さと妙な苦さは酒が原因だろう。時にぶつかり合う鼻から酒の匂いが入ってきて、更に思考を鈍らせた。
392:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/06/02 01:14:49
くちゅくちゅと淫らで小さな音は徐々にテンポを落とし、やがて互いの唇が暗闇の中糸を引きながら離れる。
「ミサトさん……」
体を起こしたミサトに掛けられる呼び声。切なげに訴える声は掠れている。明かり1つ無い部屋で更にミサト自身の影も落とされて、それでもシンジの表情はよく見えた。
声に合った寂しげで貪欲な顔。まるでこちらに無理矢理押し倒された少女のよう。
慣れていない、もっと正確に言えば気が引ける、そんな状況。しかしミサトの豊富に見えて乏しい知識の中では男をこれだけ欲情させてしまったならば、きちんと責任を取ってやるのが女、となっている。
悪ふざけとはいえ、不覚にも最初に仕掛けたのは自分だ。……電気の一切無い自室がミサトの取るべき行動を間違えさせた。
―バサッ
布団へと落ちる黄色いタンクトップ。露になる下着を身に付けていない恥ずかしい程に成熟した乳房。
「シンジ君」
名を呼ぶ女性に向けて手を伸ばすシンジ。暗闇の中でもそのプロポーションが女性として理想的過ぎる程に整っているのがわかる。
「ん……」
寝起きのそれに似た声を出しながら伸ばされたシンジの手が無造作にミサトの左胸を掴んだ。手の平の中央に当たる突起の主張が硬い。
この闇の中ならば傷も見えまい。
「出す物出してスッキリして、良い子はとっとと寝るのよ」
下から伸ばされた両手が初めて触れる大きな胸に戸惑いを見せずに形を変えようと揉んでくる。愛撫とは程遠い好奇心だけの手付きが、くすぐったくて肌がぷつぷつと粟立つ。
シンジは、シンジの手はただ純粋に「大きな物」に触れたいだけなのだろう。外から内へと遠慮無く形と感触を楽しむ手。中央には敢えて触れない。
393:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/06/02 01:16:18
まるで時間が有る日の、彼の悪戯な手だ。
「ッ!!」
そうだ、その『彼』は引き戸を開けばすぐそこに居るのだ。思わず息を呑み、ミサトはシンジの手首を掴む。
「……駄目?」
自由気侭にしていた手の行方を拒まれたシンジは唇を尖らせる。
「え、あっ……」
慌ててその手を解放してやるミサト。
「ごめん、そうじゃないわ」
何も言われていない。でも見透かされているかもしれない。別の男の事を考えていたと。
それを知られて何だと言うのか。別にシンジと付き合っているワケでなければ、今は悲しい事に加持と付き合っているワケでもない。
1つ溜息を吐いて、ミサトは再びシンジの手首を掴む。そして今度は反対に自分の胸へと引き寄せる。
「柔らかい……おっきいし、気持ち良い……僕、大きいおっぱいの方が好き、かもしれません」
自分の趣味嗜好の話でも断言しきらないシンジらしい口調に苦笑いを浮かべ、その指先を胸の尖端に触れるように運ぶ。
「大きい方が好き?」
「……多分」
「煮え切らないなぁ、好き?」
息の多い、少し低い声になっている事に、ミサト自身も気付かない。細い指先の掠める感触がもどかしい。
「こんな大きなの、触った事無い……」
「そう……大きいとね、こういう事も出来るのよ」
足を滑らせてシンジの視界から消えるミサト。何事かと上半身を起こしたシンジの体の丁度曲がっている部分、つまりは股間へと露になった胸を押し付ける。
カチャカチャと音を立ててシンジの下半身を下着ごと脱がす。
「う……」
急に性器が冷気に触れてシンジは声を漏らした。
394:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/06/02 01:17:58
同居初日にもシンジの性器を目にしたな、と思い出す。激動なんて言葉すら陳腐に聞こえる程の毎日だったのですっかり忘れていたが、確か中高生向けの教科書に出てきても可笑しくなさそうな色形をしていたが……今は違う。
「なぁんか、可愛い形してるわね」
茶化すとシンジはムッと眉間に皺を作って顔を真横に背けた。
さて洗おうとしていたあの時の様子とは違い、先は天井へと向かっている。向かおうとしている。上手く勃ちきっていないような、所謂半勃ち状態。
興奮してもらえなかったのか……と思いたくないのか、ミサトの頭の中では「これが酒の威力なのだろう」とまとめられた。
未だ下がっても見える性器を胸の中央に当てる。
まるで憎い傷を自ら犯しているような、少し嫌な気分になったが、気にしてはいらなれない。思い返せれば、それはいつもの事だったのだから。
胸と胸の間に暖かいを通り越して熱い感触。久々の行為にミサト自身も興奮してきた。
大き過ぎる胸はコンプレックスの1つで大きさを誉められてもちっとも嬉しくなかった。だから胸の形なり何なりを誉められた時に初めてこうして奉仕してやっている。
そもそもこれ自体余り好きではない。子供を、赤子を育てる為の器官を育った大人がこうして使うなんて。
「ん、ぐにぐにする……んっ、ん……」
性器とは全く違う、当然誰かの手とも違う感触が勃ちきらない性器を無理矢理こそうとしてくる。
潤滑油が無い為に擦れて少し痛い。恐らくシンジとしても多少痛いだろう。痛痒い、のような感触。
ドクドクと脈打つ性器は先程の手付きより余程愛撫されている錯覚を与えてくる。わざとぶつけられているようなミサトの好む雄々しさが有り、挟んだ胸を動かす手に力が入った。
395:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/06/02 02:02:43
「ちゃんと感じてくれちゃってるのね」
性器の熱さも硬さもどんどん増していく。
「おっぱい、気持ち良いから、アぅ……」
この調子ならすぐにでも射精してしまうだろう。
胸を汚されるのは不本意だが、服を汚されるよりはマシだろう。白くねばついたそれの臭いが体に付くなんて考えたくないが、拭けば取れる筈。若い子の物はどうかわからないが。
髪に掛けられては拭くのに時間が掛かる。もし遅いと加持が見に来ては大変だ。きちんと胸に吐き出せるように更に性器を埋めさせる。
―ずりゅっ、ずりゅっ
上を向いた性器の小さな点から先走りが漏れて潤滑油の役割を果たし、同時に淫らな音を暗闇に轟かせる。
2つの尖端が同時に性器に触れ、尚且つそれを自ら擦る。……ミサトの体はビクリと跳ねた。
「ンっ、それ良い……コリコリしたの何? すご、く、イイんっ!」
「じゃあ、さ……さっさとイッちゃって、くれないッ?」
声が上擦る。首を使うのはミサト自身も感じてしまうので良くない。自分まで一緒に達するつもりは無いのだから。
しかしシンジは相当気に入ったのか胸の尖端を探して腰を浮かせてくる。
「ん……ね、口でシた方が良い?」
良い? と訊くよりも早い? と訊きたい。早く終わらせたい。
決して自分が悦しんでいないワケではない。悦しんではならないだけで。すぐ近くに加持が居るだけに、声を上げて楽しむのはミサト自身が許さない。
でも、もしこのままシンジの収まりがつかなければ。その時は自分の秘所を差し出すしか……
「んうンっ、駄目……僕、もっ……イキたいのに……」
「私の胸じゃイケないっての?」
396:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/06/02 02:04:40
もどかしげに起こした背を丸めてシンジは喘ぐが、性器は少しずつ先走りを漏らすのみ。ミサトが不満そうな口振りで両の尖端を擦り合わせても互いの口から熱い息が出る以上の事は無い。
「あのね……気持ち良いけど、何か変で、変ッえぅ……イケないの、おちんちん変で……」
もどかしさの余り自ら不器用そうに腰を動かすが、やはり達せそうにない。酒の威力はシンジにとって相当大きく、勃起だけではなく射精にも影響を及ぼしていた。
風邪で寝込んだ際に熱が下がらずに何時間も苦しいままの、あのどうしようも無い疲労感に似た物がシンジの体を支配してくる。ずるずると悦にまみれていられるのも最初は楽しいが、限界がずっと続き過ぎれば苛立ちすら出てくる。
―カタンッ
突然後から戸が動くような音がした。
と同時に、ミサトは大袈裟な動きでシンジから体を放す。
「……気の所為か」
寄せていた胸を撫で下ろす。心音がバクバクと煩いのは自分も興奮しているから。もっと興奮すれば加持がダイニングで待っているなんて気にしなくなる筈だ。
いい加減断ち切ろう。母親になれないなら良妻になれる筈も無い。彼の妻を気取れる日は来ない。
いきなり今まで与えられていた快楽が消えてしまい不思議そうにこちらを見るシンジに対して、母親を演じるべきではない。そんな資格は無い。
自分には所詮、娼婦の真似事程度がお似合いだ。
「ね、一層の事シちゃおっか」
妖艶な誘い方等知らない。知りたくもない。本当はこんな事、子供を作る前提以外でするべきではない。どんなに古風な考え方だと言われようとも。
8年前とは違う。誘った行為の意味が、その重たさが。今の彼はわかってくれるだろうか……なんて考えはそろそろ捨ててしまおう。
397:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/06/02 02:06:43
戸を開けてこないのは、案外テーブルに並べた酒の肴としてシンジと情事に耽る自分を想像しているのかもしれないし。……その妄想は酷く惨めな気がして、ミサトはシンジの体に擦り寄った。
どうせ酒に飲まれて泥酔しきっている子供だ、朝になればすっかり忘れてしまうのがオチ。
「嫌なら止めます」
丁寧な口調ながら、どこか冷たくシンジが言う。
「何か嫌そう……僕、嫌な思いさせる為に来たとかじゃない……」
「嫌じゃないわよ!」
大声で怒鳴ったミサトの唇がシンジのそれで塞がれ、そのまま位置が逆転した。
口付けを交わしたまま、しかし舌を交える事無く。ミサトはいつも寝ている布団に背を預けて天井を見上げる形になる。普段眠る直前に目にする光景で、違う所は近過ぎて何も見えなくなる位置にシンジが居る事のみ。これが日常なのか非日常なのかわからない。
シンジに似合わない乱暴な手付きがミサトの下着をショートパンツごと剥ぎ取って下半身を曝け出させる。
「ヴっ……」
疑似強姦のような流れにミサトは低い声を漏らして体を硬くした。
今までに秘所へと触れてきたそれよりもだいぶ細い指が2本揃って湿った茂みを撫で上げる。
未だ柔らかな秘芯が2つの指の腹に捕えられて、グリグリと押し付けてくる。乱暴ではないが自分勝手な指。
こんなに高揚しているのにどこか不愉快。それでも体が素直に反応して何度も指が通過する小さな秘穴から微かに零れ出る蜜を止められない。
人差し指が遂に性器へと侵入を試みた。
―ヌプッ
悔しい程に愛液は分泌されているのだから抵抗は全く無い。細く穏やかな人柄を持っていそうな人差し指は爪が短いので傷付けられる事無く、膣は安心したように指を飲み込んだ。
398:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/06/02 02:08:39
シンジの頬が甘えるように首筋に擦り寄る。くすぐったさともどかしさの交差した信号が足の指の先まで流れて動けない。
拒みたいのか受け入れたいのか自分でもわからないので動かない。その間にもシンジの指は出し入れする距離を伸ばして、挿れる度に深くまでえぐられた。
皮を持たない秘肉がキュウキュウと指に絡み付いてもシンジの指は止まらない。愛液が人差し指をどろどろにしたのを見計らい、1度引き抜かれる。
「ふンぅっ!」
次いで乾いた中指を添えてまた性器が拡げられる。再びゆっくりと、爪の分しか入らない小さなピストン運動は声を止めさせてくれなかった。
す、とシンジの体が離れる。
熱過ぎる体が離れると同時に、珍しく涼しい部屋の風が体の上を通った。
冷房を付けていないこの部屋がこんなに涼しいワケが無い。結局自分も興奮している。
そう考えると益々顔が熱くなっていきも荒くなった。
―ぐに、ぐにににっ
「い、痛ッ……」
2本に増えた指は無邪気に動いてビラビラと誘う襞を引っ掻く。爪ではなく指の先なので決して痛くはない筈だが、馴れない手付きでは何をされるのかわからず言葉が先行する。
呻いたり痛いと言ってみたりはするが、一向に「止めて」とは言えない自分が居る、とミサトは自覚していた。
指の動きに合わせて、寧ろそれを追いかけるように尻肉がいつも寝ているシーツの上をずり下がっていく。
キュポン、と空気の音を立てて肉びらを引きずり出すように2本共指が抜ける。指2本分の穴が開いたそこへ、指とは大きさも太さも違う物が押し当てられた。
ドキドキと胸が高鳴る。緊張して足の先まで力が入る。手の指なんて、しっかりとシーツを掴んでいる。
399:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/06/02 02:10:26
「んぅッ……あのぉ……」
声を漏らしながら猫の子のように顔を擦り寄せてくるシンジ。
セックスの最中なのに甘えられているのが可笑しいと思い、すぐに「それも1つの行為」だと気付く。声を殺す男ばかりじゃない、リードしたがる男ばかりじゃない。当たり前かもしれないが、ミサトは今この瞬間まで気付けないでいた。
「早く、挿れてっ!」
そして早く終わらせて。
相変わらず色の無い誘い文句しか吐けないミサトの両足が持ち上げられて広げられる。
長いそれは局部を晒される羞恥に自ら折り曲げた。
恥ずかしい……カエルか何かみたいな、こんなものだったかしら……?
調子が狂うのは交わりに夢中だったあの頃からもう何年も経っているからだろう。それにおっぱじめればすぐ思い出すに違いない。
すっかり先走りで濡れた性器は電気の灯る下で見れば淫猥に光っているのだろう。息を荒くしたシンジはそれをミサトの入り口の上、とろっとろに濡れた割れ目部分に3回擦り付けて、再び入り口へと当て直す。
―ずぷ……ずぶぶぶ……
こんなにも蜜に濡れているのに鈍い音が響く。息苦しい。このまま窒息死してしまいそうな程に。
最も敏感な箇所へ異物を挿れるのだから当然であり、そんな事を思う自分に違和感を覚えていたりもする。
やがて短い距離を単調に前後するだけでも、ミサトの愛液が奥から次々に溢れてきた。
「んっ、んッ……ンッ……」
息も声も上がってくる。何も考えていないような腰を打ち付ける音が、ミサト自身も何も考えさせなくなる。
抜き出す際に内臓の一部がニュルリと音を立てて引き出されてしまいそうで、このまま続けられては吐き出してしまう。
400:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/06/02 02:12:40
その焦燥感も良い。どこかの誰かと体を重ねていた時はそんな事を考える余裕なんて無かった。
テクニックを使われるから、悔しくて自分も力を入れて。どうすれば良いか探りを入れていくのも楽しいが、今はこうしてただ互いに貪り合う方が良い。
体の熱い部分に更に熱い物をぶつけられる。それが抉るように胎内に侵入してくる。
否、実際に抉られている。敏感な部分は勿論、対してそうでもない部分、もどこもかしこも乱暴に何かを探すように性器が擦り付けられてくる。
―ぶちゅ、ぐちゅっ、ぎちゅっ!
汚く派手な音女性の箇所から響いて恥ずかしい。
この奥まで犯しきれないもどかしさがまた良い。焦らされているような、物足りないと言わされそうな、自分が淫乱だと認めさせられて刻印を押されてしまいそうな。そして自ら腰を動かしたくなる。
「ふゥ、あっ! んッ!!」
声を殺す事を諦めたミサトは、過去に受け入れていたそれよりも幾分細くてたよりない性器がしっかり挿入っているか確かめるように膣に力を込めた。
ある日不意に覚えた膣壁の動かし方は未だ覚えている。こうすれば男の口から少し頼りなくて愛しい声が漏れる事も。
奥まで届かないが、それでも1番弱い所には狙ったように突き刺さる。太さも頼りない筈なのに、そのもどかしさ故に自ら締め付けてしまう。
熱い粘液が体に響く箇所を叩いては逃げ出そうと動く。不器用ながらもどんどん激しくなる腰の動きに、目が勝手に閉じた。
「……あっ、は、あ……もう、ん……め、駄目、付けてないのに出ちゃ、あ……」
体の上でシンジの辛そうな言葉が聞こえる。
嫌でも比べてしまう。そしてこの状況で誰かと違って余裕が無いのは、寧ろ可愛いと思ってしまう。
401:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/06/02 02:14:21
「ナカに、出しちゃって……良いのよ? アんっ!」
腰を掴んでくる手の力が強過ぎる。見るからにか細い子供のシンジも、こんな所は男だと主張するように。
「あ、ウぅ、ンッ!!」
―ドクン、どくどくどく……
今まで聞いてきた低い呻きとは全く違う、どちらかといえば自分が出す部類の甘い声を大きく漏らしながら子宮までの狭い道をシンジの精が駆け上った。
「く、うゥ……」
気持ち良い以前に熱く圧迫される感覚は苦しい。
見えもしないのに精がどんどん奥へと流れ込み、子宮も内臓も越えて口から吐き出してしまいそうになる。
それでもミサトの上ではまるで残尿感に苛立つようにシンジはビクビクと体を震わせて嚢の中身全てを注ぎ混んでいた。
膣がただれそうな程熱い粘液を注がれながらミサトは上げた足の先をピクンと動かす。
「……はっ、あん……シンちゃん、早いんじゃない……?」
回らない舌を何とか動かして出た艶っぽい軽口。
それに答える代わりに、体重は少ないだろうが力を抜ききって重たい体が倒れ込んできた。
「僕……そのまま、出しちゃっ……」
荒い息の合間の言葉は膣出しを詫びる言葉。……決して妊娠する事への期待も不安すらも無い。
「……良いのよ」
性器は萎えても結合したままだが、ミサト自身は冷めきっていた。豊かな胸の少し上に乗せられたシンジの頭に手を添える。
「気にする事無いわ」
性交も、膣内射精も、こうして甘え眠る事も。
シンジはミサトの返事を待たず眠りに落ちた。規則正しい寝息がくすぐったく、触れ合う汗ばんだ胸の上下も心地良い。
「どうせ出来やしないし、出来たら……嬉しいわ」
402:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/06/02 02:16:25
たっぷりと子宮を埋め尽した精液は早々に逆流を始めて2人の繋がる箇所をミサトの内側から溢れようとしている。
もう少し収まっていれば良いのに。どうせ何も変わらないんでしょうけど。
自嘲の笑みを浮かべたミサトは2人分の体重に苦しみながら体を起こし、今まで自分がしていたように眠ったシンジを布団の上へ寝かせた。
暑い夜にうなされて寝汗をかいたような、どこか疲れきったシンジの寝顔。
汗張り付いた短い前髪を上げてその寝顔を覗く役割は母親ではない自分でも許されるだろうか。
「何だか、ね」
早く眠らせる為にしてみた筈なのに、こうも簡単に終わってしまうのは味気無い。
よいしょ、と心の中で―そのまま口から出ていた気もするが考えずに―呟いてミサトは立ち上がる。
低い天井。普段自分が生活している自分だけの部屋。
いつもと違う所といえば、色々な匂いが入り混じって鼻をつく所位。
汗と精液と愛液がミサトの太股を流れ落ち、その匂いが部屋に充満している。嫌いな匂いとは言わないが、冷めた今では好きともいえない。
ふと手を自分の下腹部に当てる。
触れただけで宿った事がわかるとは思えないが、それでも今回もまた何も得られなかったのがわかった。
汚い部屋の中で更に汚い机の上の唯一綺麗なティッシュを取る。
局部を拭いて、もう1枚取って額や胸の谷間等の汗を拭く。ゴミ箱は遠かったので後で捨てようとそのまま足元に落とした。
明らかに行為の後だと思われるだろうが、一応最後の抵抗に桃色のTシャツを引っ張り出して被った。ボトムも洗濯に出し忘れたハーフパンツが有るので履いておく。
403:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/06/02 02:18:23
下着も履き替えようと思ったが、面倒なので今履いていた物のままにした。
どんな顔で加持と向き合うか。
なんて考えていればずっと出られなくなるので、考える前にフスマを引いてリビングへ出る。
「加持……」
当然といえば当然、加持は酔い潰れて眠っていたりはしなかった。
テーブルの上の酒瓶は虚しい位に空で、つまみ類もちらほらとしか残っていない。
「もう残ってないぞ」
どこか不機嫌そうな声音が怖い。
「何? 買ってこいっての?」
「いや……飲みきって悪かったな、と思って」
遠回しに遅かった事を指摘しているのだろうか? だとしたら、それ程頭が回るのなら、今のミサトの姿が何をした後かはすぐにわかるだろう。
「何、してたの?」
聞かれるより先に聞いてみる。
飲み終えていたのかはわからないが、口にする物が無くなってからどうしていたのか。
「……いつの事を聞きたい?」
しかし加持は勘違いをしたらしい。心やましい事が有るからだろうか。
「葛城になら何でも話してやるさ」
「嘘」素早く否定して目を反らし「別にアンタの嘘なんか聞きたくないわよ」
「ま、話す義務は無いしな。俺も聞く権利を持ち合わせていないし。……今は」
ふざけているのか今更本気で口説きたいのか。焦点は捉えているのに酒の所為で充血した目ではよくわからない。
「話したいってんなら聞いてやるわよ?」
ならば冗談で片付けてしまおう。どうせ酒の勢い、明日になって目を覚ませば忘れている。
きっと、シンジも明日にはけろっと忘れてくれている筈だ。
都合の良い事だけを考えながらミサトはいつもの自分の席―アスカの席に居る加持から見れば斜め前―に座る。
404:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/06/02 02:20:34
「じゃあ話すか。……シンジ君の事でも」
一瞬嫌味か? と思ったが、そうではないらしい。赤く濁った目はどこか真剣だ。
「アンタが何知ってるってのよ」
同居して、仕事の面でも直属の上司である自分より知る事は無い筈。
その自信を遮って加持は呟く。
「よくわからない所への出入りが激しいみたいだ。……って事は知ってるか」
まぁね、とだけ返す。確かにここ数ヶ月週末は家に居ない。出るようになり始めた頃からの「友人の家に泊まりに行く」は、もういい加減通用していない。
今日だって、今こそミサトの部屋で寝息を立てているが、本来なら嘘を吐いてどこかへ出掛けていったのだった。
「何やってるか、アンタ知ってるの?」
「……いや、俺は余り知らない方だよ」
軽い笑いを浮かべているのは知らない自分を自嘲しているのでも、知らなさそうなミサトを嘲っているのでもない。
「お前が勘違いしているか真実を見ているかは知らないが、止める権利は俺にはない。代わりにお前には有る。シンジ君はきっと、切っ掛けが無ければ始めもしないし辞めもしないだろう」
加持は空になった菓子の袋の下から煙草を取り出す。残り2本の内の1つを唇に銜え、貼り付けた状態で言葉を続ける。
「そういやリッちゃんが詳しく知ってるみたいだったな」
「え!?」
思わず声が引っ繰り返った。
「行き先が毎回リッちゃんの所だったら逆に安心出来るな」
「何でリツコは止めないのよ?」
「いやはや、赤木博士の立場は諜報部よりもずっと上だな。って、そりゃ当然か。な? もっと上の三佐殿」
「ねぇ」
ポケットの中から漸く探り当てたライターで煙草に火をつける。副流煙は風が無く蒸している部屋をぼんやりとただ上っていく。
405:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/06/02 09:35:27
対して白くならない煙を見ていると、自分も吸いたくなってしまう。普段は臭くて体に悪い物にしか見えないのに。
「ねぇ!」
「まぁそう苛立つな。1本どうだ?」
途端、ミサトは黙り込む。
欲しい。だが、欲しいとは言えない。まるで麻薬から足を洗ったばかりの人間が出来心を主張している瞬間の様な心境。
「……子供にだってきちんとした理由が必要だ。悪い事をしたからと頭ごなしに叱る、それだけじゃ駄目だ。シンジ君が俺の知ってる通りの子供なら怒鳴り付ければ同じ事はしなくなるだろうが、それは解決にならない」
「叱っちゃ駄目、怒っちゃ駄目って事?」
「そうじゃない、理由が必要なだけだ」
煙草の煙をくゆらせながら控えめな声量で続けた。
例えば今まで口を付けていたグラスをシンジが意図的に割ったとして。その場で叱ればもう2度と割らなくなるだろう。
何故割らなくなるか。怒られるのが怖いから。
それだけではいけない。教育論を振り翳すつもりも、そのまま政治の世界にまで飛び込むつもりも一切無いが、子供を育てる―敢えて加持は面倒を見る、という言葉を使っていたが―のなら「何故割ってはいけないか」を説明しなくてはならない。
グラスが高いから。思い出の品だから。2つで1つのセットだから。贈り主が悲しむから。割れた破片で手を怪我するから。掃除をするのが面倒だから。
本当の理由を探せば哲学的な話に広がって怒っている方も意味がわからなくなってしまいかねない。が、だからと言って取り敢えず声を大きくしておけば良いというのは有り得ない。
やがて自分なりの理由を見つけられれば、グラスを割ってはいけないと認識する。そしてそれを他の人にも伝えられる。
406:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/06/02 09:37:38
シンジの消極性を見ると他者が割る所を止められそうにないが、と軽口を叩いて加持の煙草は空のビール缶の中に落とされた。
「シンジ君がしてる事を、お前はきちんと叱ってやれるか?」
「……叱って、やれるわよ」
自信は、今は未だ余り無いが。
「リッちゃんは叱れなかった。それだけだろう」
「でも! ……そうね。何かアンタの長い話、疲れるわ」
「そりゃ悪い」
ミサトは机の上に突っ伏した。コンビニの買い物袋が嵩張る音を立てる。
「アンタ今日泊まってくんでしょ?」
「泊まってって欲しい?」
「馬鹿。ベロンベロンに酔っ払って運転したら捕まるわよ」
「てっきり代行タクシー呼んで帰れって言われるかと思ったんだが」
「思っちゃないでしょ」
ははは、と短く笑う。どうせこの笑いは適当に濁そうとする、つまりは肯定の笑いだ。
「どこで寝るつもりよ? 私の部屋の布団、シンジ君が占領してるからね」
「部屋に泊めてくれるつもりだったのか?」
「帰れ」
ぷいっと顔を背けるように横に動かして頬を机に押し付ける。無機質にひんやりとしたテーブルが酒と情事で火照りに火照った頬に気持ち良い。
「そこの座椅子伸ばしても良いし、別に床の上に寝たって良いさ」
「風邪引かないように腹にシャツかけてあげるわ」
「ついでに添い寝してくれたら良い夢が見られそうだな」
「やっぱり帰れ」
しかしミサト自身も眠る布団は無い。参った……と思いながら目を閉じると、急に世界が真っ白く染まる。
絶対に気の所為なのに、戸1枚隔てた自室からシンジの寝息が聞こえてきた。
407:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/06/02 09:39:54
そのまま目蓋を伏せたミサトに加持は何も言ってこない。きっと真似るように加持も机を布団に腕を枕に眠るに違い無い。
息子の非行を例え1回分だけだろうとちゃんと防げた母親が父親に誉められながら布団の外で眠ってしまう。今日見る夢はきっと、そんなどこにでも転がっていそうな安っぽい家族ドラマの類だろう。
続く。
最近はさるさん規制なんて有るんだな。知らんかった。
408:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/06/02 17:09:53
ミサシンキタ━━(゚∀゚)━━ !!!
酔っ払いシンジきゅんがカワユス
409:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/06/02 17:11:46
1) 一つのスレに
2) ある時間(H)内に
3) 最近の投稿(N)のうち沢山投稿(M回)したら
4) 「バイバイさるさん」になる
さるさん規制ってこれですか
長編SS投下してる人にはキツイですねえ
410:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/06/02 18:29:58
うおおおおおおお!
もう読めないと思っていた・・・・・・・・・GJ!!!
さすがだなぁ、夢中になって読んでしまったw今から勉強するつもりがww
411:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/06/02 19:26:33
ヤバいよ、酔ってるシンジきゅんテラカワユス
神お疲れ!!!!
6月6日を過ぎたら、孔雀氏の小説をまたまとめたいと思います。
前の方に了承を得てないけど、勝手にやってもよろしいですかな?
412:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/06/02 20:01:37
まとめサイトあるよ?
URLリンク(www20.atwiki.jp)
413:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/06/02 20:32:51
うん、そこにまとめようと。
414:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/06/02 23:59:16
孔雀氏乙
まとめ人さんも乙
415:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/06/03 06:03:27
ミサシンスレから来ました。
孔雀氏、感動!
ぜひ、続きを期待!!
416:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/06/03 17:39:43 TYkj4xP4
あげます
417:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/06/03 17:43:44
kawaiso
418:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/06/03 19:53:15
久々に来たら…更新キタ――(゚∀゚)――!!!
孔雀氏マジ乙!
419:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/06/05 21:32:57
おつ
420:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/06/06 01:06:15
シンジきゅん、誕生日おめでとう
421:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/06/06 10:00:15
>>411
自分の書いた物はもうご自由にどうぞです。まとめてくれてありがとうです。
あと読んでくれた人もありがとうです。
シンジきゅんおめ。
何か書くと不幸になってくだけだから、今年は何も書かないでひっそり祝いますね。
早く大きくなって俺の嫁に来てください。
422:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/06/06 14:44:02
いくら孔雀神といえど、シンジきゅんをやることは出来ない。
なぜなら俺の嫁だから。
423:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/06/10 13:33:16
シンジきゅんきゅん
424:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/06/15 02:40:18
ほす
425:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/06/19 20:12:26
ほっすー
426:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/06/20 07:23:46 3Ndz+ERc
りょ、両刀だったとは・・・
ショック。
427:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/06/20 08:30:57
男も女も関係なくお相手します
お仕事ですから
428:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/06/20 09:04:27
この「仕事だから、認めてもらいたいからなんでもやる」感がなんか悲壮感漂ってて好き
429:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/06/20 09:45:42
誰でもいいのよ
430:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/06/22 20:21:16
続きまだぁ~?
431:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/06/22 21:54:54
しかし孔雀氏は本当神だな
シンジきゅん小説に限らず、SS書き全般でもこれほどの人はあんまり見ない
432:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/06/26 20:48:44
肌を許すシンジきゅんに萌え
433:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/06/28 00:48:26
贅沢なお願いですが
アスカ視点でシンジの仕事を
覗くなんてシチュエーション希望
434:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/06/28 00:57:18
なんとなく、アスカはシンジの汚れた部分を知らないでいてほしい・・・かも
というか、彼女の罵倒が怖いだけだけども
435:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/06/28 03:19:45
LAS嫌いだからイラネ
436:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/06/28 08:21:32
>>9
437:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/06/28 20:41:25
アスカが知ったらどんなことになるか分からないけど、
自分もシンジきゅんを買うってことだけはなさそう。
438:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/07/01 18:41:35 Jyc23wkM
ほす
439:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/07/10 19:41:19
過疎ってんなあ
440:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/07/12 09:42:07
孔雀氏、続き待っとるよ!!
441:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/07/17 20:22:09
lヾ_i_/l
☆ チン '´ ^ ̄^ヽ
☆ チン 〃。 i。ノノリ从ソ! / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ヽ ___\jl\゚ ヮ゚ノl| < シンジきゅんまだー?
\_/⊂( v⊂)ソ_ \________
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/|
l ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| .|
| |/
442:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/07/19 15:52:29
ワッフルワッフル
443:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/07/22 00:08:24 PyEmAJ/O
気持ちは解かるが気を長くして孔雀氏の再来を待て。規制入ると投下のモチベーション下がるから見守っとけ
444:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/07/22 09:50:22
>>409
これって連投規制みたいだから
投下の途中で他の住人が感想を書き込めば平気なんじゃないかな
445:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/07/26 21:22:57 7pPHGvA5
ほしゅw
446:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/07/31 21:54:21 /gWRMbVp
ほしゅww
447:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/08/01 14:47:32 Jfqdv9xd
八月ほしゅw
448:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/08/03 15:07:09 TRltt6DM
しゅ
449:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/08/03 15:09:58
孔雀氏元気にされてるだろうか・・・
450:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/08/05 00:21:59
>>449
自分はとても元気です。但し自分のパソコンは不調です。
誰か携帯でちまちま書いている俺の代わりに書いてくれないかなーと思ってます。ボスケテー
451:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/08/05 00:34:48
生きてた!嬉しい!
452:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/08/05 10:00:41
携帯からだと大変ですね
投下はパソコンが直ってからでもいいと思いますよ
のんびり保守して待ってます
453:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/08/05 12:35:10
孔雀氏にPC差し上げたい・・・
お元気でよかった
投下、気長に待っております!
454:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/08/16 22:27:30
おまいら信者かwww
あっあの、孔雀氏、このパソコンどうぞ使ってやって下さい!
455:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/08/20 01:02:08
人 アザラシさんのケツマンコは本当によく締まるお!!
(_ ) アザラシさんのケツアナちんぽしごきはみんなを幸せにするお
(__) もぐちゃんにも分けてあげたい所存だお
( ´∀`)∞
( つつ/⌒ヽ゚Z
.(( ( ィ⌒` =´ω`) ・゚・。z アッーーーー!!!
とと、_入`_,つλう
カクカク
456:/03(月) 10:51:01 ID:???
457:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/09/03 10:52:59
土曜日駅で待ってます。仕事が終わるのは何時になるかわかりますか。
返信がこないようにと小さく祈る。その祈りが届いたのか授業が終わるまでは返信は無かった。
―キーン、コーン……
老教師の授業を遮るようにチャイムが鳴る。老教師はすぐに教科書を閉じて号令を掛けた。この部分だけは、生徒一同に気に入られている。
すぐに担任教師が来て、簡単なホームルームを終わらせる。6回の授業を終えて漸く中学生達の自由な時間が訪れた。
「シンジー、今日途中で……あ、今日ネルフ行く日やったか?」
「うん、ゴメン」
「じゃあまた今度だな。しかし羨ましいよ、毎週決まった回数以上エヴァンゲリオンに乗れて、しかも掃除がサボれるなんて」
トウジとケンスケは下校中の寄り道に誘ってくれようとしたのだろう。
シンジとしては掃除をしてでもそっちに行きたい気分だ。……改めて自分はエヴァに乗りたくて乗っているワケではない気がしてくる。
「馬鹿シンジぃ! 行くわよ!!」
「あ、ごめん!」
謝ってばかりと茶化される前に鞄を持って立ち上がった。
考え方を変えれば、エヴァに乗るからこそこの2人と出会えたのだ。そして早くしろと目を尖らせるアスカに呼ばれるのも、何も言わないし一緒に行っているつもりすら無いかもしれないレイがついてくるのも、ある意味エヴァのお陰。
「アンタ今日音楽室掃除でしょ? 無理ってちゃんと言った?」
「言ってあるよ」
「なら、とっとと行くわよ」
「うん。……あ、綾波はちゃんと言ってある?」
後ろを振り向いて尋ねる。
「前もって言ってあるわ」
それ以上は喋らない。しかし、きちんとシンジの後ろに居る。
「そっか、じゃあ行こっか」
458:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/09/03 10:54:48
「もう、2人共! 早くしなさいよね」
シンジが仕切っているようで気に入らないアスカは早口でまくし立てた。
帰り道。曜日によってネルフ本部に行く事を義務付けられているパイロット3人は掃除当番を合法エスケープしてその本部へ行く為のバス停へと歩いていた。
どんなに文明が発達しても屋外の気温は操作出来ない。常夏なんて言葉では片付けられない暑さが3人を襲う。
正確にはレイは襲われていないようだが。暑さを感じないかのような無表情。
そのレイが1歩分後ろで、シンジとアスカは並んでいる。
話題を振るのは専らアスカ。シンジはどこで身に着けたか豊富な相槌を打つばかり。
先日の肉体的には気持ち良く、精神的には気分が悪い出来事を忘れそうな程の日常。
……を、壊そうとする男がこちらへ歩いてきた。
「何あの男、何かこっち見てんだけど」
真っ先に気付いたのはアスカで―もしかしたら先にレイが気付いていたかもしれないが、当然の如く何も言わなかった―明らかに不愉快そうな表情を浮かべている。
「え?」
アスカの言葉に視線を向けると、そこには確かにこちらをジロジロと見てくる男が居た。
髪の長さと色で遠くからでもよくわかる。シンジはその男を見たことが有る。
どこでだろうかと考えてすぐに思い出した。
「あ……」
小さく声を漏らしてしまったのを、後ろからレイが聞いていた。やはり何も言わなかったが。
だらしない長さの髪。無理して抜いた色の髪。整っているといえば整っているけれど、その顔は覚えていない。ただその髪を何と無く覚えていただけ。
先日会ったコンビニバイトの男。
459:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/09/03 10:57:11
別に嫌な思いをさせられたワケではない。寧ろスタッフルームにかくまってもらった、と言っても過言ではない。
お礼をちゃんと言わなくては。
そう思っている筈なのに、ミサトとの一夜が思い出されて顔が強張る。
「別にアタシが見られるのは仕方無いけど、あぁいう目付きって何だか腹立つのよね」
可愛いなぁと見とれるのは勝手だが、はて誰だろうと伺われるのは嫌い、らしい。
確かにかなり距離を置いて真正面に居る男は時折目を細めて考えるような態度。
それでも足は止めていない。徐々にこちらに近付いていた。
男はいきなり目を逸らし、少し早歩きになる。
あのコンビニの近くに住んでいるとしたら、何故こんな所に来ているのだろうか。この辺りは住宅街でそれこそ3人の取り敢えずの目的地であるバス停しか無いし、ましてや男の進行方向は今授業を受けてきた学校位しか大きな建物は無い。
1度目を逸らした男は2度とこちらを見ずに、3人の横を車道側を通って何事も無かったように過ぎた。
そのまま少し無理をした早足でどんどんと遠ざかっていく。
あの男に見間違いは無いと振り返るシンジ。どうして中途半端に目を逸らしたのかわからずに苛立って背を睨み付けるアスカ。
「調子乗った髪の色しちゃって、何かウザいってヤツね」
後ろを向いて男の背を見たままアスカは首の後ろから髪をかき上げるように風に靡かせた。
「……何よ」
ずっとこちらを見ているようなレイの視線にアスカが苛立ちを込めて尋ねる。
その理由も「別に」とすらもレイは言わない。
元からアスカを見ていなかったのかもしれないが、シンジにはわからない。
460:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/09/03 10:59:36
ただ、気の所為かもしれないが、レイも通り過ぎていった男を気にしていたようには感じられた。
屋外とはうって変わって本部内は酷く涼しい。涼しいを通り越して少々肌寒い。
パソコンを使っての授業が一般と化してきた学校もある程度冷房を強めにしているが、ここ程ではない。
来るまでに沢山かいた汗が休息に冷やされて、体調を崩さない方が可笑しい位。だがパイロット3人は慣れてしまったのか早々にプラグスーツに着替えてテストプラグに座っていた。
プラグ内はLCLのお陰なのか必ず適温。屋外が暑かろうと本部内が寒かろうと、シンクロテストに影響が出る事は無い。
「シンジ君の伸び率は本当に凄いわね。感心せざるを得ないわ」
「そう……」
「気の無い返事ね。例えシンジ君が喜ばなくても、貴方は作戦部長として嬉しい筈でしょ?」
「そう……」
溜息まで混じってきそうなミサトの返事に、逆にリツコが溜息を吐く。
モニタリングされているパイロット3人は目を閉じている。瞑想している……のか、何も考えていないのか。リツコからすると隣に立つミサトも深く考えているようで何も考えていないように見えた。
今週の頭からずっとこう……
もう1度、今度はわざとらしく溜息を吐いてみる。が、ミサトは無反応。
「ミサト、貴方書類の整理残してたわよね」
「……え? あ、あぁ、そういえば残してたっけ。あぁー報告書って面倒臭いのよねぇー!」
余りにもわざとらしい言い方はテストプラグ内のシンジにも聞こえている。
461:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/09/03 11:01:22
「そっちを優先してきたら? 別に貴方はここで見ていなくても良いんだから。後で結果をプリントアウトするわ。ハッキリ言わせてもらうけれど、そんな腑抜けた貴方が居ると迷惑なのよ」
ミサトは答えない。
「仕事をする気が無いなら帰りなさいとまでは言わないわ。でもここに居られては迷惑よ。覇気の無い人間が居るだけで周りの士気も全て持っていかれる事位、作戦部長の貴方こそわかるでしょう」
凛とした声に捲くし立てられて押し黙っているワケではない。
寧ろ努力と根性のみで三佐まで上り詰めたミサトも言い返す能力は持っている。それをミサトも、目付きを鋭くしているリツコもわかっていた。
「どうせ後回しにしても問題無い報告書なんでしょうし、今の貴方じゃなかなか片付かないかもしれないけれど、ここに居て私達の業務を妨害するよりは貴方にとってマシだと思うわ」
これがもし友人として楽しく会話をしている時分ならば、ミサトも流石に怒りを見せていただろう。
「ゴメン……そうね、行ってくるわ。定時に上がる予定だから、それまでにシンクロ率と武器操作テストの結果報告をお願い。パソコンの方にメールで構わないから。赤木博士、頼みました」
「承知しましたわ、葛城三佐」
仕事を強く意識した時の2人の呼び方。
薄いファイルを片手にしたミサトは日向に「遠距離中心の訓練させておいて」と耳元で指示を下して部屋を後にする。
LCLの中、ゆっくりとシンジは目を開けた。
ミサトのあの落ち着きの無さは、あの日の自分が原因なのだろうか。
多分そうなのだろう。今の自分の落ち着き過ぎているようなテンションの低さは明らかに彼女が理由なのだから。
462:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/09/03 11:03:53
「ったく、ミサトの奴どうしちゃったのかしら。家でも何か変だったし」
右側に通信窓が現れる。大袈裟に両手を顔の辺りに上げる外国人風のリアクション。些細なミサトの態度の変化に、アスカは気付いていた。
「アンタも最近ちょっと変よね。もしかしてアタシの見てない所で喧嘩でもしたの?」
「えっ?」
「はぁあーばっかみたい! ミサトもガキじゃないんだから。ま、アンタはガキだけどね」
気付いていないのは寧ろシンジの方。シンジに負けずとも劣らない感受性豊かなアスカが共に暮らしている2人の変化を見逃すワケが無い。
そしてそれを指摘しない辺り、ガキと称されたシンジよりも大人なの態度が取れている。
「シンジ君、大丈夫? 具合悪くなっちゃった?」
優しいマヤの声が映像を伴わずに通信で入った。
「大丈夫です、すみません」
「そう? 葛城さん、別にシンジ君に怒ってるとかじゃないと思うわ。ほら、シンクロ率かなり伸びてるし」
でも今この瞬間は下がったか何かしたのだろう。だから声を掛けてきたのだろう。
再び目を閉じて、昼寝をする時に体を預けるようなイメージで。微かに鼻腔をくすぐるのはいかにも鉄分が豊富そうな血液の匂いだが、それでもプラグの内側に居れば徐々に心は落ち着きを取り戻してくる。
次に目蓋を開く時にはいつもの自分でなくては。これ以上ミサトを困らせるワケにはいかなく、またそれ以上にアスカに気付かれたくはない。
シンクロテストは簡単に終わり戦闘訓練に移る。先のミサトの指示通り遠距離からの射撃訓練をメインとするらしい。が、シンジにはプラグから出るように指示が下った。
463:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/09/03 11:06:24
「シンクロ率以外のデータも簡単に取らせてもらうわ」
「アタシ達のは良いの?」
当然リツコの言葉にアスカは不服そうに疑問を投げかける。
「えぇ」
それがまるで「お前達2人はデータを取るより出来ない事をしろ」と言われているように思える程アスカのプライドと日本語の理解力は高い。
あまつさえ相手がレイ。アスカからするとどうにも相性が悪い。我慢が出来ない程嫌いではないが、我慢したくない程度には苦手な相手。シンジが居るなら未だしも、2人きりは勘弁してもらいたい。
「アタシ別に援護射撃なんて出来なくたって良いじゃん! 3人の中で先陣切るのってやっぱりアタシでしょ? だったら接近戦の練習だけすれば良いじゃない」
周りが思っているよりもアスカは苛立っているらしい。声だけではなく、見事なまでに顔に表れていた。
「そもそも何で馬鹿シンジがやんないの? アタシやファーストより後から入ったんだから、シンジこそ訓練積ませるべきじゃない!」
異国の血が混ざっている事を差し引いても尚整った形を無駄にひしゃげてアスカは声を大きくする。
「ちょっとシンクロ率の伸びが良いからって、特別扱いするつもり!? アタシ達は、アタシはもうどうでも良いってワケぇッ!?」
「落ち着きなさいアスカ、これは身長の問題だから」
「身長!?」
「そう。シンジ君の身長が伸びているの。だから測り直すだけよ」
そこまで聞くと、漸くアスカの呼吸が落ち着いた。
「……何それ」
「可笑しな誤差が出ていると思ったら、言葉通り彼の身長が伸びていたの。勿論修正出来る範囲内だけど、この年頃はこれから更に伸びるだろうから、今の内に伸び率を測っておく、それだけよ」
464:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/09/03 11:08:39
「僕、身長伸びてますか?」
「自分自身じゃわからないでしょうけどね。それに、そんなに極端に伸びたワケじゃないわ」
それでも測らなくてはならないとは、意外と面倒な仕事らしい。測られる側の自分は別に、測る側の人間や機械はさぞ面倒臭いだろう。
「2人に関してはこのまま戦闘訓練に移行するわ。こっちでプラグを繋ぐから、待っていて頂戴。シンジ君は上がって」
「はい」
初号機に繋がれているテストプラグのみグゥンと音を立てて引き上げられる。
「シンクロ率も身長も、伸びて良かったですねー。ま、どっちもアタシには敵わないみたいだけど」
プラグから出る寸前のアスカの通信。
勿論シンジは答えず、しかしほんの少し唇を尖らせていた。
所謂身体測定なので特別な人件費は割けない。故にリツコだけが『身体データ計測』を担当する事になった。
大きなタオル―自宅で使うバスタオルとは違う感触がするし、どうやら素材が違うらしい―でスーツの上から体を拭いた後、計測器が有るらしい部屋へとリツコの後ろを歩く形で向かう。
「シンジ君、体が重くなったり軽くなったり、だるくなったという感じはしない?」
「重く?」
2歩分以上前をコツコツと音を立てながら歩くリツコが振り返らずに尋ねてきた。
「特に、何も感じませんけど……僕、重くなったんですか?」
「そうよね。普通自分の些細な体重の変動には気付かないわ。ましてやシンジ君の場合身長が伸びた、純粋に成長した証拠の体重の変動……気付けという方が難しいわよね。それに……」
呟いて、足は止めないが漸く肩越しにシンジの顔を見る。
「……もしかしたら体重は増えていないかもしれないし」
465:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/09/03 11:10:20
それだけ言うとまた前を向いてしまう。
「見た感じ背が伸びたのに逞しくなった印象は無いし……加持君だったかしら、シンジ君の頬がこけて見えると言っていたわ」
心当たりは無いがシンジは右手を自分の右頬に当ててみた。
プラグスーツ越しの感触は今までと変わらない……と言いたいが、今までの感触がわからない。こんな風に触れてみた事等無いのだから、プラグスーツで触れても素手で触れているような感触だった事しかわからない。
「……ねぇ、ちょっと訊きたい事が有るんだけど、良いかしら?」
唐突な言葉にシンジは小首を傾げた。
「余り人には聞かれたくないの。ここなら流石にビデオは設置されてないし、多分盗聴器の類も無いわ」
漸く着いた『身体データ計測』を行う部屋の戸を開けながら言う。
つまり他の部屋にはそれらが有る、らしい。別に見られたり聞かれたりして困る事は何も無いが。
「別に、構いませんけど」
その返事にリツコは満足そうな笑みを見せた。開いた扉を抑えたままシンジを中へと招き入れる。
そして器用に後ろ手にロックを掛けた。
「加持君の事なんだけど」
「加持さん?」
予想外というか何というか。
リツコの方が断然加持に近い位置に居るし、それでも訊けない事ならミサト辺りにでも訊きそうだが……しかし1度良いと言った手前引けない。
しかし身長を測るより先に質問をされるとは。予想より広い室内はまるで市立体育館のトレーニングルームのようで、ここで加持の話をするのは不釣合いに思える。
「別にね、知らないなら良いのよ。ミサトのあの調子、加持君と何か有ったのかなと思っただけだから」
466:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/09/03 11:11:36
しかしリツコは言い終えてから目を細める。
「……それだけだと少し嘘になるわね」
言いたくない素振りを見せながら、本当は言いたい。女性は時折、酷くわかりやすい。
その事にシンジは気付かなかったが、何も言えず黙っていればリツコから口を開いた。
「加持君の方に何か有ったのは間違い無いのよ。多分『お仕事』の関係でしょうけど」
ここで言う仕事は何か特別な事なのだろうか、いやに強調されている。
そんな彼女の雰囲気が恐ろしく思えてシンジは逃げるように部屋の中央へ、更に奥へと進んでリツコから離れた。
「その『お仕事』の都合で、彼はシンジ君の『お仕事』も知っているのね」
予想ではなく断言に近い。
「ねぇ……加持君から何か聞かされていない? 例えば、どこに行ってきたとか、どこに行かなくてはならないとか」
「聞いて……ません」
間は有ったが、嘘ではない。
どこに行ったか、どこに行くかなんて聞かされていないし、そもそも本部の外で働いている事だって何と無く知った程度に過ぎない。
見た目に反してどこかしっかりしている、頼れる大人として見ている面は有るが、よく考えれば秘密主義者を思わせる程に加持の手の内は教えてもらえない。
「言わないように口止された?」否定の意味で首を左右に振って見せたが「そう? 嘘は良くないわ。加持君に言っておいて頂戴。それを私に隠してあげるというのは取引材料にならないと」
リツコの方が先に知っていた。それだけじゃない、先に客までなっていた。
「これはシンジ君にも言える事ね」
そう言いながらリツコには余り似合わない大股で間合いを詰めてくる。
467:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/09/03 11:12:48
「私は貴方の知られたくない事を知っている。周りに知らされたくなければ正直に答えなさい、なんて言えてしまうのよ」
入ってきたドアを見ると、赤く『LOOK』と表示されている。鍵を掛けられていた。言い直せば、閉じ込められていた。
「本当に知らない?」
「知りません」
シンジにおいての精一杯の強い口調を向ける。
「そう……そうね、加持君がうっかり話す、なんて事はしないわね」
いつの間にかシンジは後退して壁に背を付けているのに対し、計ったように互いの手1つ分程の距離でリツコは足を止めた。
「まさか加持君が大切なお客様だから言えません、なんて事は無いでしょうし?」
語尾をわざとらしく上げて疑問形にする。
そんな単純な誘導尋問にはもう掛からないし、端から加持は客ではない。
不快。実に不快。加持と並んでいる姿を見て、加持の『客』だと思われるのは。加持に抱かれている自分を想像されるのは。
「すみません、本当に知らないんです。加持さんが今どこで働いてるのかも知らない」
多少口調を強くしても身長の差でどうしても見上げる形になり迫力が出ない。
「じゃあ加持君に直接訊かなくてはならないわね」
「そうして下さい」
降参を示すようにリツコは小さく溜め息を吐いて肩を落とす。
「……ねぇ、話は変わるけど、ミサトの様子に心当たりは無い?」
―ズキリ
胸の奥の方に強い痛みを感じた。
加持との関係は潔白を通り越して不快ですらあったが、ミサトとの間には彼女が調子を鈍らせる最たる理由が有る。
残念ながらリツコはそれを見逃さない。
照明器具は安っぽい白と黄色の混ざり合った色で2人を見下ろすように照らしている。
468:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/09/03 11:14:15
「もしかして、加持君に抱かれなかったけれど、ミサトは抱いた?」
先程と違い悪意の込められたリツコの視線が刺さる。貫かれてしまいそうな程痛い。
リツコから香るのはすっかり染み付いた煙草の香りと愛飲し過ぎているコーヒーの香りとそれらを隠す為に下品にならない程度に付けられた香水。
全てが入り混じってはいるが、何故か不快な悪臭には感じない。
それ所か脳髄を麻痺させる香りにすら思えた。誘惑、なんて言葉が相応しくも。
「身内をそんな仕事の客にするのは良くないわよ。私と寝て思わなかった?」
「別に、ミサトさんはお客さんとかじゃありません……」
「そうなの? ならどうして寝たの。若い性欲は『お仕事』だけじゃ発散出来なかったのかしら」
声尻がクスクスと笑ってはいるが、その言葉は疑っているのではなく確信していた。
「年、15近く離れてるわよね?」若干の自嘲を含み「ミサトだって……貴方と同居をする際に言っていたわ。子供には手を出さないと。それとも、シンジ君は大人になったから別かしら?」
ここで言う大人は当然性的な意味を持っていて、流石のシンジもそれには気付いて頬を染める。
「僕は……そんなんじゃ……」
「懲りてないのね」
元から綺麗な肌をファンデーションで彩った顔が近付いてくる。先の3種の香りの他にリツコ自身の体臭も混ざったそれがシンジの目蓋を下ろさせた。
「もういい加減足を洗いなさい。大人達は皆困っているのよ。……なんてね。私はそんな事言うつもり、全く無いけれど……」
耳に息を吹き掛ける要領で囁くリツコ。
彼女の言う『大人』の困惑の理由が心配なのか迷惑なのかはわからない。
「……身長測るのは……未だ、ですか?」
469:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/09/03 11:16:35
これだけで息が上がるなんて恥ずかしい。極力肩を動かさないように息をする。
「大丈夫よ、後からちゃんと測るから……こうして連れ込みたいからとそれらしい嘘を吐いたワケじゃないわ」
近寄る胸元につい目が向いてしまう。
見るからに大きく脱いでも大きかったミサトとは少し違った。
今も羽織っている白衣が隠しているのでリツコの体のラインはわかりにくい。しかし白衣も衣服も脱ぎ捨てれば、ミサトにも負けずとも劣らない豊満な肉体を持っていた。
体の作りからして違う。あれだけビールを煽っているミサトがスポーティーなスタイルの良さを維持しているのに対し、リツコからは少し不健康そうな印象を受ける。
恐らく肌の色の違いが理由だ。日光に当たる機会が無ければ徹夜で深夜勤務を繰り返しているリツコは相当白い肌をしていた。
そう脳内で比べているのも申し訳無い気がしてくる。
自分より随分と年上の、それも親友同士の女性の肉体を並べて、まるで評価するように乳房の大きさを考える事は、例え周りの誰もがやっていたとしても、シンジには失礼でいやらしい事。
「ミサト、胸大きかったでしょ?」
笑いを含んだ質問に素直にYesと答える所だった。
「私なんかの胸じゃ物足りない? この前は気に入ってくれていたと思うけれど……」
言いながらその胸を擦り寄せてくる。リツコはヒールを履いた靴で少し背伸びをし、わざとシンジの顔に胸が当たるように調節した。
「私の胸は嫌い?」
「い、え……」
「いいえ?」
「いえ……好き、です……」
「本当? 好きなら、触っても良いのよ?」
言葉に従い顔を下に向ける形で胸に埋める。
「う……」
470:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/09/03 11:18:21
口も鼻も大きな胸とそれを隠す衣服に塞がれて息が詰まりそうになり、苦しさに目を伏せた。
「そう、何も見なくて良いのよ」
―ばさっ
リツコが器用に両肩から白衣を落とし、両方の袖から腕を抜いて床へと脱ぎ捨てる。
視界は塞がれきっていないのでリツコの白い腕が露になったのがよく見えた。
こうして見てもレイの異様な白さにはやはり敵わない。
レイの肌を思い出す。彼女の肌の色と温もりと、その時の息遣いと。
簡単に思い出せる。想像ではなく回想。
数少ない自分と親しくしてくれる女性と次々に体を重ねていく事実に気付いて、精神的な意味でも胸が苦しくなった。
「こんな時に別の人の事を考えるなんて、本当誰かさんにソックリね」
笑いを含んだ優しい言葉と、苛立ちを含んだ冗談の無い眼差し。
「お客さんにそんな態度をとっていては商売上がったりじゃないの?」
リツコの左手がシンジの右手首を捕えた。
「それとも、前払いをしない女は客じゃないのかしら?」
プラグスーツの手首に有るのは体にフィットさせるボタン。
勿論フィットしている状態で押せば、着る前の異様なまでにダボダボとした大きなサイズになる。
「止め……止めて、下さい」
抵抗の意思が余り見えない声しか出せない。
まるで舌先で焦らすようにリツコの親指の腹は手首を撫で続け、自然と右手を上げる形にされた。
自由になる筈の左手は動いてくれない。まるで望んでいるかのような態度が、本当は許せない筈なのに。
「どう、して……こんな事、するんですか……?」
「シンジ君はどうしてこんな事続けているのかしら?」
何故と訊かれても答えは持ち合わせていない。
471:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/09/03 11:29:51
うおおおおおおおおおおおおおお
孔雀神きたこれーーーーーーーーーーーー
おかえりなさい!!!
472:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/09/03 12:00:48
最初の頃は色々と理由が有った気はするが……
強いて挙げるならほぼ毎週お買い上げしてくれるあのお客様が、もう会わないと言ったら何をしてくるかわからないから、辺りだろうか。
こうやって女性に迫られているのに全く違う印象を覚える。
ましてやリツコは性行した際に優しく―とまで言っては大袈裟か―された記憶も深い。このまま身を任せたくなる程。
―カチッ
小さな音が右手首から聞こえた。
次の瞬間にはもう肌とプラグスーツの間に大量の空気が流れ込んでいる。
「シンジ君、お願いが有るの」頬を擦り寄せて耳元で「この仕事……ずっと続けて頂戴」
甘い囁きのような声は意外な言葉を紡いだ。
「続け……る?」
止めろ、ではなく? 誰もが、買った客までもが言ってきた言葉とは正反対の意味。
「もっと私と寝なさいって意味じゃないわ」
だから安心しなさい、とでも言いたげなリツコ。
首の後ろにリツコの手が回り、構造全てがわかっている手付きでプラグスーツが前後に開かれた。
そのまま滑らすように脱がされる。
「身長は伸びたけれど、体重は変わってないかもしれないわね」
可哀想な位男として頼りないむき出しのシンジの肌に濃い口紅で彩られた唇を落とす。
吸い付くワケでも舐めあげるワケでもなく押し付けられた唇はゆるゆると鎖骨の辺りを往復した。
「は、あ……」
金色に染め上げた―正確には脱色した―前髪が肌に触れてくすぐったい。
「どうしてか、知りたい?」
離れた唇が尋ねる。顔が上がっていないのでこちらを見ていない
「復讐よ」
聞き返したいが声にならない。
しかしリツコが先に言葉を繋げた。
473:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/09/03 12:02:44
「私じゃどうしようも出来ないから、シンジ君にお手伝いしてもらいたいの。貴方がこうしてお仕事を続ける事で私はあの人に復讐出来る」
「誰かに言うんですか?」
あの人が誰を指すのかわからない。しかし出来るなら他人には知られたくない。
ましてやリツコの知人に知られるとなると……最も知られたくない人間の耳に入る可能性も高くなる。
最も知られたくない人。―父親。この期に及んで未だ父親にだけは知られたくないと考えているなんて滑稽だ。
蔑みたければ蔑めば良い。父親なんて大嫌いだ。……そう思いながらこんな時にまで気にしているなんて。
「わざわざ言ったりはしないわよ」
その後の質問はリツコの唇にシンジのそれを塞がれてしまい言葉にならなかった。
考える間も与えずに舌が咥内に押し入って暴れる。鼻から漏れ合う互いの息が熱くて苦しい。
苦しいのはそれだけじゃない。意図的に分泌させた唾液を送り込まれ、苦い薬を飲まなくてはならない時のような喉の弁の開かなさが苦し過ぎる。
頭の芯を暈そうとする濃い口付けは2分程続き、リツコが体を起こす事によって終わった。
唾液が橋を作るなんて物ではない。唇を重ねている最中からシンジの口の端は唾液でドロドロに汚れている。
それを身長差で見下ろすリツコ。
馬鹿にされているのか、子供と舐められているのか、両方なのか。
挑発的を通り越して侮蔑にすら見える視線がシンジを刺す。
「面倒だから始めちゃいましょう。前戯なんか要らないわ」
「でも、ちゃんとしなきゃ……」
「した所で何が変わるのかしら? 放っておいたってちゃんと挿入るし、妊娠の確率が変わるワケでもないわ」
474:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/09/03 12:04:43
リツコは短いスカートの下から右手を入れて股間を通り越してウエストの辺りを探る。こんなにも近く、そしてスカートも上がりきっていないので何をしているかは見えない。
漸くリツコの手が下りて、同時にベージュのストッキングとその下の白に近い色らしい下着がまとめて下りてきて何をしていたのかがわかった。
「僕……あの、僕……」
愛撫をしなくてはならないという義務感か、もしくはただ触れたいと思ってしまう思春期少年のサガか、シンジは恐る恐る右手を伸ばす。
が、その右手と反対の左手をリツコの手が捕らえた。
「早く始めて早く終わらせましょう」
性交ではなく復讐。
赤い口紅を唾液でたっぷりと汚した唇が素早く告げる。
未だストッキングに覆われた膝がシンジの脱げ掛けのプラグスーツを器用に下ろした。
露にされた半勃ちの性器が外気で冷やされる。この感触は自分で考えていたよりも勃ち方が大きいからだろうか。
膝で性器を一通り弄んだリツコは胸を中心にシンジに全身を預ける。
「ん……」
「重たい、なんて言っちゃ駄目よ。どの時代も女性は己の体重を異様なまでに気にかけるのだから」
「……リツコさんも、そうなんですか?」
掠れた疑問の声に、リツコは小さく鼻で笑った。
「そうね、私も女だわ。……私の『女』の感想は終わった後にでも聞かせてもらおうかしらね」
性器の先端が湿りを帯びた柔らかな肉に触れる。
漸くシンジの性器が先端まで血を巡らせて完全にそそり立つ形になったが、リツコの位置からでは近過ぎて見えない。
そのまま挿入せずにリツコは腰をグラインドさせる。ゾリゾリ、と独特な感触が背筋を通って頭まで響いた。
475:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/09/03 12:06:33
荒い息とくぐもった声がシンジの口から垂れるのをリツコは聞き逃さない。
「切り揃えておいたここが好きだなんて、貴方達本当にそっくりよ。尤も、どうせ好きな理由は違うんでしょうけれど」
誰とどう比べているのか今のシンジでは考える余裕も無いが、見下されているであろう事は想像が出来る。
巧みにリツコは腰を動かして剃毛した丘を過ぎて性器を陰核へと導いた。
「あぁ、うぅんッ……」
演技をしているかのような耳に響くわざとらしい声にシンジの腰がガクガクと震える。
「ねぇ……このトロトロとした先走りだけでも、妊娠する時はしてしまうって、ちゃんと知ってる?」
普段の白衣をピシッと音が出る程に着こなしたリツコには似つかわしくない語尾が蕩けるように甘く延びた言葉。
「はい……あ、んぅ、知ってます」
余り返事をしたくはない。出した声が上擦っている事をこのリツコが見逃してくれる筈が無い。
「じゃあお仕事の時はこの時点で避妊をしているのかしら?」
「してます……」
「そう……本当?」
顔がどんどん赤くなっていくのも、胸元にじんわりと汗をかいていくのも、つまりシンジは自分が興奮していく事をよくわかっている。
返事はついに声を出さずに頷く事に行き着いた。
「避妊方法は? コンドーム?」
そんな事に答えて何になるのだろうか。それでもその通りだと頷く。頷かされる。大きく、無駄にぶんぶんと頭を振ってしまう。
「可哀想に、貴方も面倒だと思っているんでしょう? ああ、何て可哀想」
舞台女優の大げさな芝居のような口振り。
この事実を『彼』が知ったら、もっと可哀想。嗚呼可哀想なのは果たしてどちらだろう?
476:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/09/03 12:08:18
嬉々としたリツコは1番可哀想の言葉を向けられるのが自分だと気付かずに、膣口を意図的に広げて蜜を益々垂らした。
ポタポタと愛液が性器に落ちてはなぞるように太股へと伝う。
リツコの愛液は本来の意味を成してリツコの膣はいつでも誰でも何でも受け入れられる状態になっており、それを知ったかのようにシンジの性器はムクムクと膨らんだ。
だがそれをシンジが自ら挿れるのではない。
リツコがいきり勃ったそれを玩具を扱うかのように自分の膣へ飲み込ませる。
―ドロッ
いつの間にかすっかり濡れそぼった―なんて言葉では足りない程になっていた―のか不明の膣は抵抗を一切見せずにシンジの性器を飲み込んだ。
「は、あぅ……くっ……」
シンジは自分の口から漏れる声を堪えきれない。例え声を出そうと出すまいと、飲み込まれる悦楽も恐怖も変わらないのに。
その声に気分を良くしたらしいリツコの視線が上から刺さる。
制御出来ない性器を女の自由にされて、頬を真っ赤に染め上げながら喘ぎ声を漏らす子供。
それはリツコにとって普段有り得ないシチュエーション。
リツコの好みに合致したのか、はたまた違うが単に珍しいからなのか、挿入すると同時に無理矢理腰を上下し始めた。
「ああぁっ! ううぅぅぁっ……ぐっ」
ネルフ本部内はどんなに大声を上げようとも外に漏れたりはしないだろうが、それでも男の自分がこんなに声を出しているのは恥ずかしい。
根元まで飲み込まれた性器が、その根元から全てを吸い上げられる感触。奪われてはならないと声はどんどん大きくなる。
477:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/09/03 12:10:25
快楽に負けて強く閉じていた目を開けると、その目前にはリツコの豊かな胸が迫っている。どの女性とも形・弾力・色と、全て違う乳房。
過去に見た事が有る筈の、だが初めて見る気がしてならないそれが上下に弾んで、どうにも恥ずかしい。
―ぬぷっ、ぬぷっ、ぐぷっ……
膝で動くリツコが少し体勢を崩すと、必ず嚢が押し潰されるように刺激される。ほんの少し痛むように苦しく、それが何故か気持ち良い。
口を真一文字に結んだリツコは声を出さない。変わりに唸り声に聞こえる息を漏らし、それがシンジの耳には嫌に響いて思考を麻痺させた。
幾らロックをしたとはいえ、何かの切っ掛けで扉が開いてしまうかもしれないし、リツコが知らないだけで監視カメラが有るかもしれない。
そう考えてリツコを制止するつもりだったのに、今はもう何も考えられず、何度も性器の上から下まで移動する細かにプツプツとした感触の有る粘液の壁しか考えられなくなっている。
「ふ、ふぅ、う……あ、アぁ……出ちゃ、う……ンんぅ……」
早いと言われるかもしれない。それでもいきなり射精してしまうよりは良い。
気付けばまた閉じていた目を開いてリツコを見る。良いと言ってくれる事を願って。
言わないワケが無いだろう。そんな残忍な事を言うのはあの人位だ。
ふと、脳裏にその名前が浮かび、目の前のリツコの顔がその女の顔に摩り替わる。
痛い事、苦しい事、恥ずかしい事を沢山させてくる。嫌で嫌で仕方無いのに、お金が欲しいから全部受け入れる自分。
そしてそれを楽しそうに見ている―見下している、か?―あの目にすら欲情しているのだと気付かされた。
478:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/09/03 12:12:50
「どうしたの? 未だイカなくて、大丈夫なの? 良いのよ、私を置いてイッて頂戴?」
どうせお前にはイカせられないだろう、と言ってくれても構わないのに。あの人なら言うのに。言ってくれるのに。
きっと聞こえないだけだ。そう思いたくて、シンジも膝を使って何とか腰を上下させてみる。
元から経験した事の無い無理な体勢で、更にリツコは身長から割り出される体重よりかなり軽いが、それでも成長期に片足を突っ込んだ程度のシンジにとっては重たい。言うなと言われたが、やはり重たい。
「……ンっ」
自分からはゆるゆるとした動きしか出来なかったが、それでも漸くリツコが声を上げた。
運動の後の少し掠れた声は高過ぎず艶かしい。
自分がリツコを支配しているのか、それともされているのか。昂り過ぎて一層射精出来ないまま逝ってしまいたい考えが頭に浮かんだシンジは更に腰を左右に揺らす。
「アうっ、ウ、おぁ、僕ッ! も、もう……イキた……」
未開の地の無い膣内を縦に抉られるだけではなく、肉壁への悦楽にリツコの生殖器がキュッと締め付けてきた。
そこに、ぶちまけたい。
声にならない言葉の変わりに、口の端からだらしなく唾液が垂れる。
―ガタガタガタッ
足元で何かが振動する音。と、同時に。
「は、あ……ッ!」
―どくん
心臓が跳ねるような、張り裂けるような音を感じさせながら精を一気に放出する。
膣の外でなければ奥でもない、ただその中に大量に吐き出された精は本来の目的を思い出したかのように奥へ奥へと進んでいく。勿論見えるワケではないが、シンジはそれを感じられた。
そしてそれは酷く気持ち良い。射精した事以上に。
479:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/09/03 12:14:18
耐えられず腰がカクカクと動く。
「……っ、う、くっ」
今日の為に精巣の奥に溜められていた精の全てを重力に逆らって注ぎ込む。何の感慨も無いのか、リツコは何も言ってこない。
罵る言葉も誉める言葉も、自分の悦を呟く声すらも無い。
それでもある程度は満足したらしく脱力した体を預けてきた。
「はぁ、は……あ……ど、うして……」
これが一体どんな復讐になるのか。誰に対しての復讐になるのか。シンジには検討も付かない。
ただ内罰的な考えをもってすると、親友のミサトを抱いた自分に対しての何らかの復讐、なのかもしれないと考えられる。
こんなにも申し訳無い気持ちにさせられるのだから。
「……どうしてか知りたかったら、今日の夜に貴方を1番大事にしている人に電話をしてみれば良いわ」
言い終えてから大きく深呼吸を1度してリツコは体を離す。
リツコの体が離れると、急速に体が冷えていく気がした。
他人の温もりを欲している……否、単に自分を囲んでいた物体が消えて火照って上昇した体温よりも低い空気が体に当たるだけ。
風によって着崩れした服を直すだけの手付きでリツコは素早く衣服を着直す。
そして屈んで白衣を、そのポケットの中に入っていた携帯電話を拾い上げた。
先程のガタガタという振動音はそれだったのかとシンジが察する前にリツコは携帯電話を開いて小さく溜息を漏らす。
「どうしたんですか……?」
幾分呼吸が整わないシンジの問い掛けに、リツコは平然とした表情で目を合わせた。
まるで2人の間には何事も無かったかのように。
480:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/09/03 12:16:26
「アスカがご立腹みたいなの。貴方が戻らないから。身長を測るのに何時間掛けるつもりか、って。戦闘訓練の真っ最中に何度も怒られたってマヤからメールが入っちゃって」
携帯の画面とシンジの顔を見比べてからリツコは己の顔立ちに良く似合う、ともすれば自嘲的にも見える笑みを口の端に乗せる。
「何て言えば良いのかしらね。アスカ、勘付いているんじゃない?」
「まさかッ!」
疲れきった喉から出る声は裏返ってしまった。
アスカに知られているワケが無い。知られたくはない。
「……多分、大丈夫です」
目を少し細めてみてくるリツコに安心させようとする言葉等必要無いのに。
もしかすると、自分が安堵したいだけ、なのだろうか。
「どうしたの? 顔が赤いわよ。大丈夫じゃないの?」
どこか冷たい微笑が含まれている。
大丈夫だと断言出来ないし、否定もしたくない。シンジは声を口をつぐんで首を左右に振った。
リツコは右手だけで携帯電話を操作して耳に当てる。
「もしもし? えぇ私。もう少し待ってもらえる? シンジ君も男の子だもの、私の前では脱ぎたがらないの。でも私が居ないと調べられないから手をこまねいていた所よ」
脱がない、と強調するように告げるリツコを遮る事は出来ない。
もしも電話の奥からこちらが見えていたら……そう考えると恥ずかしいし参るが、何故か同時に吐き出したばかりの愛液に汚れた性器がむくりと鎌首をもたげてしまう。
遂に体は自分の意思を大きく外れて悦だけを追うようになってしまったのか。
「……えぇ、頼んだわよ」
電話が終わる。白衣のポケットに無造作に入れてヒールを1度カツン、と鳴らした。
481:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/09/03 12:18:21
「じゃあ測りましょうか、身長」
「あ……は、はい」
「ほら、プラグスーツをちゃんと着て」
「着るんですか?」
「そうよ。どうしても全裸で測りたいと言うなら、私は別に構わないけれど。でもここは冷房がきちんと入っているからお勧めは出来ないわ。ただでさえ汗をかいた体は熱を放出しやすいのだから、すぐに風邪を引いてしまうわよ」
淡々と説明してくれる口調は日頃のリツコと何ら代わり無い。
その声で先程自分を慕ってくれているマヤに嘘を吐いていたのかと思うと、別にシンジ自身がした事ではないのに胸が痛む。
だがやはりリツコの言葉に間違いは無く、早々に体が冷えてきたのでシンジは素直にプラグスーツを着た。
そして着終えて先程の料金と金を渡された後、本当に素直に身長を測定される事になる。
どうせ午前と午後では身長が違うのだから、午前中に測って少しでも高く見せられれば良かったのにね、とリツコが軽い冗談を言うとも思っていなかったし、数センチだが本当に身長が伸びていたのも予想外だった。
身長と何故か体重も―だけ、の方が正しいかもしれない程念入りに―測られてシンジの身体測定もどきは終了し、戻る頃には制服に着替えたレイとアスカの2人が待っていた。
後者は兎に角苛立ちを露にして、よくわからない理由で責め立ててきた。それは帰宅してからも変わらずで―
「ンもぉーこんなに帰りが遅くなったのも全部アンタの所為よ!」
「ごめん……」
「ご飯が遅くなったのだって、アンタの所為なんだからね!」
「ごめん」
「ミサトがなんにも言わないから、反省しないアンタの為にアタシが言ってあげてるんだから!」
「ごめん!!」
482:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/09/03 13:00:07
何度謝ろうとアスカは引かないし、その内謝り方にまで難癖を付けてきそうな雰囲気の漂う夕食。
2人を見ながらミサトは苦笑気味に夕食とビールを楽しんでいる。
そう、楽しい。アスカが心の奥底からシンジに怨みを持って罵りたいワケではない事はわかる。
足元で魚をつついているペンペンにすらこの3人独特の夕食の楽しみ方が、それを楽しんでいる事がわかる筈だ。
ただ1つだけ、シンジは心に引っ掛かる事が有る。
「……どうしたのよ?」
「別に」
もしも例え誤魔化してだろうと口にしたら、よくわからないけれどきっとアスカは機嫌を更に損ねそうな気がするので言わない。
情事の後、リツコから垂らすように与えられたヒント。
でも心当たりが無いので答えが絶対に見付からない。
シンジは『自分を1番想ってくれている他人』が誰だかわからない。
キーキーと騒いでいながらも黙り込むと急に心配そうに伺ってくるアスカが、果たして自分を1番に慕っているのかと問われると答えは出ない。
「ご馳走様」
「もう良いの?」
「はい」
自分用にと配膳された―配膳したのはシンジ自身だが―ご飯と味噌汁は一応綺麗に空にした。
食器を台所へ運ぶ間にミサトは背に不安気な視線を刺してきたが、イコール1番大事に想っている、にはならない。
なれば良いのに、とは思うけれど。でもきっとならない。
そうして自ら可能性を排除して、他者から見れば望んで孤独に飛び込んでいっている状況に陥っている事に、シンジは未だ気付けないでいた。
「何? ダイエット? 折角伸びた身長が縮むわよ」
「縮まないよ」
483:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/09/03 13:02:41
アスカがやたらと絡んでくるのは身長を抜かれるのが嫌だから、とかかもしれない。勝手にそう解釈したシンジの顔が綻ぶ。
食器洗いの当番はいつの間にやら何故か毎日シンジになっていたが、未だ2人共食べ終わっていないので今すぐする必要は無い。
もし「どこへ行くの?」と聞かれればそう答えようと言い訳を胸に持って、途中魚を1口で飲み込むペンペンの頭を屈んで撫でて、シンジは自室へ向かった。
かなり狭く、これを部屋と呼んでは他の部屋に怒られてしまいそうだが、シンジは今の与えられた自室もそれなりに気に入っていた。
広過ぎて落ち着かなくなるよりは、多少手狭でも充分事足りる部屋の方が単純に好みなのかもしれない。
その中のベッドの上に腰掛けて、携帯電話を鞄から取り出す。
携帯していないワケではないが常に手元に置いているワケでもない。もし手元から消えても非常時の連絡が取れなくなって困る程度で、自ら買いに行ったり欲しいと強請ったりするつもりは無い。
……今は少し違うが。
『客』との連絡手段は携帯電話が基本。大半の客はその場で会って買ってもらってもう2度と会わないが、中には今1番稼がせてもらっている女性のように繰り返し会う事になる大人も居る。
今や携帯電話のアドレス帳に入っている人数の丁度半分が客になっていた。
そのうちの1人の名前をディスプレイにさせる。
リツコがこの人を知っているワケが無い。だけど、多分自分を今1番大事に想ってくれているのはこの人だ。
―当然シンジのその考えは大外れで、リツコは今『彼』の隣で電話が鳴ってしまわないかと嫌な期待をしているのだが。
484:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/09/03 13:05:39
電話番号を表示させて、音声通話で発信。
こちらから電話をするのはもしかすると……否、もしかしなくても初めてで酷く緊張する。
呼び出し音が3度。それに負けじと煩く響く心音の所為で胸が妙に痛い。
―カチャッ
[はい?]
どこか不審そうな声で相手が出た。
「も、もしもし、あの……碇シンジです」
誰かがこんな仕事をするなら偽名を使えと言っていた気がするが、そんな名前生憎持ち合わせていないし、相手にも既に本名を名乗ってしまっている。
[……何か有ったとか?]
シンジから電話が掛かってくる事が初めての相手は当然驚いて、寧ろ疑っているらしく声が低い。
「い、いえ、何でも無いんです! その……」
やはりリツコの指した人物はこの人じゃなかったのだろうか。それとも、この電話に何か意味が有るのだろうか。
わからないが、別段用事が有ったワケでもない。話題提供の苦手なシンジは必死に言葉を、話のネタを探した。
「……あの、今日のお昼、ちょっと気になって」
[昼?]
「はい。……返事、無かったから。土曜日の事」
気にして電話をくれたのかと合点した1番客の女性の声はこの瞬間に華やかになる。
続く。
485:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/09/03 13:11:30
キター!!
孔雀氏おかえりなさい!!そしてお疲れ様!
パソコンはもう大丈夫なの?
いやーしかし、相変わらず圧倒的な技量に飲み込まれてしまった
wktkがとまらない
486:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/09/03 18:50:11
乙です
487:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/09/03 20:11:21
* +
+ ∩_ _∩
キタァ━━━( ゚∀゚)━━━!!!
+ ノ /
+ (つ ノ +
(ノ *
+ * +
+
* +
+
孔雀氏まってたよ!
488:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/09/04 01:10:54
相変わらずGJ!
489:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/09/04 03:20:12
気になる気になる
490:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/09/08 01:12:41
愛からわず樹になる
491:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/09/08 01:21:48 HwX3JtI9
あ
492:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/09/08 01:24:27
孔雀さん、乙!
すごいGJ!こんな引き込まれる内容とは…
興奮しながら読み耽りました(´ω`)
493:カラシ
07/09/08 01:46:28
凄いです…!前々からロムさせて頂いてたのですが、文章力も素晴らしいですし、なによりも発想が素敵過ぎます。
ネ申 職人様と呼ばせて下さい!!
師匠と呼ばせてもらいたいです。
494:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/09/11 12:40:49
この職人さんの文章力…見事だ。GJ
495:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/09/17 13:50:18
エヴァ板良スレ保守委員会
496:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/09/17 14:29:50
孔雀氏はエヴァ板の中でも最上級の職人だと思う。
同じSS書きの自分から見ても遥かに足元に及びまへん…!
497:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/09/17 15:00:08
人物の書き方にリアリティがあるというか、上手い。マジで。
498:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/09/17 20:44:54
本当にプロとして作家活動をされているのかと思うくらいです。
とにかく、
すんばらしい!
499:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/09/19 13:20:05
久しく見ていなかったが孔雀氏凄い。
読みやすくそしてハラハラさせる。練りこまれたストーリーにジェラシー。
500:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/09/19 23:05:40
いや、本当に悔しい!
自分にはここまで書けないです。
501:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/09/22 20:05:39
>>512カラシさん
弟子はとっていないっていうか寧ろ俺の師匠になって下さい。学びたい。
ちょいとチラ裏なんだけど
いきなり了承も無く来月から時給下がるそうで、ただでさえ今月シフト少ない貧乏フリーターの俺はいつパソ修理に出せば良いんだよって話なんですよ
つかセンターに出さなきゃ直らない程ヤバい状況らしいのにパソ使うってどうなんだろうね
でも休みが多かったんでうっかり書きまくったら出来たんで投下します
・エロくない代わりにグロいかもしれない(お前にはこれがエロなのかとか訊かない
・やおいのターンは次でも怒らない(リクエストは嬉しいし答える予定だけど今回は無いんですスマソ
・間違っても真似しない(売買春やドラッグは犯罪です
502:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/09/22 20:08:10
冷房を付けていなくてもそんなに暑くならない部屋を彼女は気に入っているらしかった。
確かに暑くはない。寧ろ、少し肌寒い。
それはシンジが全裸だから。
あまつさえ四つん這いになり、その背にオレンジジュースの入ったグラスが乗っているから。
ワインの方が雰囲気が出るけれどアルコールは得意じゃない、と彼女は注ぎながら言っていた。実際酒の話をした記憶は無い。
「……は、ぁ」
「煩い」
短い言葉で制される。
背中が冷たいです。スナック菓子の小さなカスがくすぐったいです。両手が疲れて痺れました。僕もDVDが見たいです。
もう何も言えないシンジは、今はただのテーブル。ジュースの入ったグラスと、スナック菓子を飾った皿を置かれて、ソファに座る女性とテレビの間に置かれた家具。
それでも「椅子にしたら折れちゃいそうだから」と、お客様なりの譲歩が有ったらしい。
DVDを見ると言った時に流行りの映画か何かかと思ったので、アーティストのライブ映像だった時は少し驚いた。
余り知らないアーティストなので斬新で、面白いと言えば面白い。
それに、先日のリツコと違い、彼女のする事・させる事は決してシンジや誰かに対する憎悪の感情が無い。
寧ろ愛情に近い何らかの感情すら向けてくれている気すらする。
そんな素敵な物ではないが、そうするのが楽しいとか、そうすれば気持ち良いとか、所謂プラス側の感情が込められているのは確かだ。
だからだろう、甘んじて受け入れられるのは。グラスのかいた汗が背に伝って冷たくても我慢出来るのは。
「く……」
しかし1つだけ入っている氷が溶けてしまっては、つい声も出てしまう。
503:孔雀 ◆nULfbdzH0k
07/09/22 20:10:02
再びオレンジジュースよりも冷ややかな声が掛かるかと思ったシンジの耳に届いたのは意外な言葉だった。
「……この前、電話有難う」
「でん、わ……?」
腕が痺れて声が震える。
「うん。メールの返事全然出来なかった時……あの日ね、仕事で本当に、本っ当に疲れきってて。メールを打つのに携帯の画面を見るのだって辛いかもって思ってたんだ」
大好きなアーティストの大好きな曲に真剣な彼女はこちらを見ていない。
「シンジ君って余り電話が好きじゃなさそうだったから、まさかかかってくるなんて思わなくて」
確かに、正直に言えば電話は苦手だった。
表情や身振り手振りが見えないのは恐ろしい。声色だけで相手の些細な感情を掴める能力なんて当然持ち合わせていないし、相手がどこでどんな事をしているか見えないのもまた怖い。
声だけで済む、互いに顔を見せ合わなくても済むと考えれば少しは気が楽になるのだが。
「私も特別電話が好きって程じゃないんだけど、でもシンジ君からの電話は凄い嬉しかった」
「女の人は……電話、好きじゃないんですか?」
「あぁ、女の子って長電話するもんね。私も偶にやるよ? 女の子同士限定で、だけど」
そういう意味ではなかったのだが。取り敢えず訂正はしないし出来ない。テーブルの自分の言葉を聞いてもらい、返事を貰った事に感謝しなくては。
この『仕事』の都合で携帯電話を使う時、一定の法則が有る事にシンジは気付いた。
男性は電話、女性はメール。
勿論どちらも使う人も居れば、どちらも使わずに連絡先を教えているのに会った所で待ち伏せている人も居るのだが、比較的その組み合わせが多い。