07/03/28 21:22:27
朝目が覚めてみると、台所からいい匂いがしていた。レイが作る朝食の匂いだ。
……また、やられた。
夫婦共に料理好きの我が家では、朝食を作りたければ相手より早起きしなければならないのだ。
レイのほうが朝は弱いはずなのに、僕のほうが遅く起きるのはいろいろと理由があるのだが、そんなことを考えていても始まらないので服を着て寝室を出た。
居間に向かうと、台所に立っているレイの後姿が見える。
出会った頃に比べると格段に女性らしい丸みを帯びた体つきになったレイだけど、それでもかなり細いほうだ。そんなに細いのにどうしてあんなにやわらかいのか、女の人ってのは不思議でならない。
「起きたのね、シンジさん」
「ん。早いね、レイ」
僕が来たことに気がついて、レイが振り向いた。
「これで3日続けて。わたしが台所に立つの。……シンジさん、最近遅いから」
少し誇らしげにレイが言う。しぐさもどことなく弾んでいるみたいだ。
早く起きられない原因はレイにあるのだけれど、きっとわからないだろうし言うのも恥ずかしいので黙っておく。言えるわけない、レイの寝顔があんまりにもかわいいからつい見入ってしまうだなんて。
それにしても、朝食が作れなかったのは惜しいけど、嬉しそうなレイを見ているとどうでもよくなってくる。
僕は、レイの喜ぶ顔が見たかったから。できることなら自分で作った料理で喜ばせたかったけど、それは過ぎた願いというものだ。