07/08/29 20:22:47
「古畑さん、私はあなたの質問から、あなたはもう犯人の目星はついている、と感じてい
ます。これは合っているかしら」
「ええ~、合っています。はい」
「では、なぜ合いカギの有無が問題になるのかしら? とても興味があるわ」
「うーん。形式的な捜査の一環、という事で許していただけませんか」
「独房の中って、ヒマなのよ」
「んっふっふ、分かりました。実はですね……」
古畑は現場の状況を説明した。現場が密室であったため、合いカギの有無を確認する必
要があったとこも含め、包み隠さずに。
「なるほど……」
リツコはそう言って、黙り込む。
沈黙が続くこと3秒ほど。
「『ターミナルドグマの枕泥棒』」
リツコがぼそりと呟く。
その言葉の意味が分からない古畑に、リツコが後を続ける。
「副司令に尋ねてみて下さい。『ターミナルドグマの枕泥棒』を」
「『ターミナルドグマの枕泥棒』? それは何でしょうか?」
「秘密の軍事施設で起きた盗難事件よ。被害はどこにでもあるような枕を一つだけ。盗難
届けは未提出。きっと、殺人事件を解決する手がかりになるはずよ」
「うーん、それは助言と受け取ってよろしいのですか」
「ふふふ、どうかしら?」
「つまり、あなたは事件の真相を知っていると……」
その質問を言い終える前に、古畑を肩を叩かれた。古畑をこの部屋に連れてきた職員だ
った。彼は腕時計を指して「時間だ」と古畑に告げた。
「無事、事件を解決なさることをお祈りしていますわ、古畑さん」
リツコの得意げな声。
闇の中で手を振るリツコに、古畑は軽く会釈し、部屋を辞した。
事件編その3ここまで