古畑任三郎と戦わせたいエヴァキャラat EVA
古畑任三郎と戦わせたいエヴァキャラ - 暇つぶし2ch403:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/08/18 00:08:41
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 (∵ (・∀・ ))) ドンドン ガンガル
  )←━cc )))
 (    し-Jll   ホホジボジセッセセ ホジセッセ
 )  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 (
  ).            _..,∞,,,
 (.           ●'''" * ""'';;,         大きなスコップに パワーアップ!
  )  / ̄ ̄|    \.从 从 ;;;ミ
 ( /     |     ゝ゚ー ゚ν ;;;ミ.  /|   壱ちゃんに負けずに ほじせっせ
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 ( \     |      ヽ    ;;ミ.  \|     (´´ほじほじせっせ ほじせっせ
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404:351
07/08/18 02:00:10
犯行編10レス投下します。
(犯行編、事件編、解決編で一作です)

>>403
グロ(エロ?)注意

405:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/08/18 02:23:27
早いな。前回から

406:VSレイ
07/08/18 02:41:51
※ 前回とは連作ではありません。シンジやアスカは何事も無かったかのように生活して
います。しかしながら、『特別客員技術者』という設定だけは本作でも使います。古畑や
今泉はエヴァについてある程度知識を持ち、ネルフの面々とは顔見知りで、一般職員が出
入り可能な施設に、古畑たちも出入り可能という設定です。


アヴァンタイトル

 アニメーションはドラマよりもリアルだ。
 ……ん~ふっふ、これは嘘っぱちです。
 「絵」であるアニメが、「実写」であるドラマよりもリアルなんてことはありえません。
 んー、でもみなさん、本当にそう言い切れますか?

 たとえば、家族。

 実際に親戚が一同に会した集合写真を思い出して下さい。
 顔立ち、身長……なんとなく血の繋がりがあるのが想像できたりします。

 しかし、ドラマに出てくる家族は全然似ていません。
 アニメの方は……


古畑任三郎 VS 綾波レイ(被害者:碇ゲンドウ)

407:犯行編-少女は瞳を閉じたまま
07/08/18 02:43:10
 少女は裸のままベットの上に横たえられていた。
 一糸纏わぬ少女の肢体、その肌を蒼白く見せている月の明かり。レースカーテンの影が
まだら模様となって、ベットと少女に張り付いている。
 少女は両手を鳩尾の上で組んだまま瞼を閉じていた。その組んだ両手の下には一冊の大
学ノートがある。背表紙や角が丸まっていて、少なくとも新品ではないだろう。

 室内の照明はただ月明かりのみ。
 少女の四方を囲むコンクリートの壁には、ポスターやコルクボードの類は一切存在しな
い。目立った家具も無く、その灰色の空間からは、住んでいる者の生活の匂いがまったく
感じられなかった。もしも、窓に鉄格子でも嵌っていれば、ここが刑務所の独房だと言っ
ても通用しそうな雰囲気だ。

 唯一、ベットの脇に5段のひきだしが置いてある。高さ1メートル程度でプラスチック
製のものだ。
 ひきだしの上には飲みかけの錠剤の包装や、水が入ったビーカーなどが散乱している。
そこに埋もれている小さな置時計は、「PM 08:04」を表示していた。

 少女の瞼は閉ざされたまま、開く気配は無い。

408:犯行編-ゲンドウの住まいへ
07/08/18 02:44:21
 見上げた頭上にそびえ立つ、25階建てのマンション。その巨大なコンクリートの箱が
綾波レイを見下ろしている。レイの目的地はこのマンションに居を構えるゲンドウの部屋
だ。

 レイがそのマンションの正面玄関に到着した頃、すでに時計は午後9時を回っていた。
縦横に整列する窓の多くは明かりが灯っており、8割以上の住人が帰宅していることが窺
える。

 レイは中学校の制服を着ていた。
 今日、学校の授業が終わると、レイはそのまま帰宅した。自宅にカバンを置き、代わり
に黒いトランクを持ってきた。トランクは今日のためにあらかじめ用意していたものだ。
 トランクはレイの胸の高さほどある、かなり大きめの物だ。底面にはキャスターがつい
ており、アスファルトの路面を転がってゴロゴロという音が立つ。レイはその音と共に、
このマンションまでトランクを押してきた。

 マンションの正面玄関は自動扉である。その脇には、電卓のキーようなものが取り付け
られている。ここで暗証番号を入力するか、訪問先の住人に開けてもらわないとマンショ
ンの中には入れない仕組みだ。

 レイの細い指がキーを打つこと4回。自動扉が左右に開く。

 レイがゲンドウ宅を訪れるのは初めてではない。正面玄関の暗証番号は、ゲンドウ本人
からずっと昔に教えられていた。レイは無意識のうちに正確な番号を叩く。指先が番号を
覚えていた。もう過去に何回も入力した番号だったから。

409:犯行編-立入禁止
07/08/18 02:45:51
 集合玄関に入って、レイが向かった先はゲンドウの部屋ではなかった。22階のゲンド
ウの部屋に行くためには、高層用エレベーターに乗る必要があるが、レイはエレベーター
乗り場には向かわず、そのまま1階の廊下を奥へと進んだ。向かう場所はゴミの焼却施設
である。

 このマンションは各部屋にダストシューターが備え付けられている。ダストシューター
に捨てられたゴミは、全て1階の焼却施設に集まるよう配管されていた。ダストシュータ
ーを落ちてきたゴミは焼却炉の中に貯まり、毎週、管理者によって焼却処分される。

 レイが焼却施設のドアを押し開ける。中は真っ暗だ。手探りで照明のスイッチを探り、
明かりを点ける。

 まず目に入ったのは、本棚、使い古したロッキングチェア、布団。これらが部屋の一角
を陣取っている。ダストシューターに入らない大型のゴミである。
 奥の壁の中央には、灰色の長方形が見える。焼却炉の蓋である。蓋には小窓がついてい
る。たぶん耐熱ガラスだ。蓋のすぐ脇の壁には、いくつかのスイッチが配置されている操
作盤があり、今は緑色のランプが点灯している。

 レイはトランクを大型ゴミの一角に置くと、足早に退室する。そしてポケットから一枚
のプレートを取り出す。プレートはプラスチック製で、今日のために三日前、東急ハンズ
で購入したものだ。レイはそのプレートを焼却施設のドアノブに吊るす。そして白地に赤
い文字で「使用禁止」と書いている面が表になっていることを確かめると、来た道を戻り、
エレベーター乗り場に歩を進めた。

410:犯行編-夜景の見える部屋1
07/08/18 02:47:18
 レイがふと顔を上げると、制服姿のレイと、ゲンドウの姿が半透明になって窓に映って
いた。窓の外、ベランダを越えた眼下には、煌びやかな都会の夜景が広がっている。

 ここはゲンドウの部屋。レイとゲンドウの二人きりのディナー。

 二人を隔てる透明なガラスのテーブルの上には、色とりどりの料理が並んでいる。すべ
てゲンドウの手料理だ。二人のフォークとナイフが、10枚の皿の上を行き交う。食器と
皿が触れるたびに乾いた音が響く。

「どうだ、レイ」
 ゲンドウは沈黙を破ると、不器用に微笑み、その手を止める。
 彼はネルフ司令の制服のまま着替えておらず、白い手袋も嵌めたままだ。度が入ってい
るメガネを掛けており、その黄色いフィルターの奥、闇が張り付いているかのような暗い
瞳に、蒼い髪の少女が閉じ込められている。

「……美味しい」
 答えるレイの声は弱々しい。瑞々しいレタスにフォークが刺さる、ザクッという音。

「そうか」
 双眸の檻に14歳の少女を囲ったまま、ゲンドウのナイフが牛肉の焼けた表面に切り込
んだ。赤みのある断面から肉汁が滴り、真っ白な皿を汚してゆく。フォークが切り離され
た肉片をゲンドウの口の中まで運ぶ。肉片は咀嚼され、ゲンドウに快楽を供して飲み込ま
れていった。

411:犯行編-夜景の見える部屋2
07/08/18 02:48:27
 レイは食事の手を止めた。食べかけのシチューの皿、その上で交差するフォークとナイ
フ。ゲンドウが眉をひそめる。
「どうした。もう、いいのか」
「ええ」
 レイは言わなかった。彼女から食欲を奪っているのは、彼女の一挙手一投足を監視する
目の前の男だということを。

「デザートも用意しているが……」
「いらない。……おなか、一杯だから」
 レイの言葉に混ざる否定的な感情。その不快な響きがゲンドウの耳の奥に引っかかる。
「そうか。それでは食事はこれまでにしよう」ゲンドウが手を差し出す「さあ、こっちに
来なさい」
 その白い手袋。
 レイは知っている。その中身が、どれだけ穢れているかを。

412:犯行編-夜景の見える部屋3
07/08/18 02:49:52
 真っ赤な血が、ガラスの灰皿から滴っている。
 直径20センチくらいで厚みのある灰皿だ。その灰皿を握っているのはレイの両手だっ
た。短く息を吐くレイ。彼女はソファに座っており、ゲンドウがその膝を抱きかかえたま
ま後頭部から血を流している。

 ゲンドウはもう息をしていない。

 ディナーの後の事だった。レイがソファに腰を下ろすと、ゲンドウは無言で抱きついて
きた。ゲンドウはレイの下腹部に頭を埋め、その両手で彼女の制服を乱した。

 その行為に呼び起こされる嫌悪。そして、決心。

 幸いソファの近くに小さなテーブルがあり、灰皿があった。重量感があるそれは、レイ
の目には最適な凶器として映った。
 心を決めるとすぐに行動に移す。エヴァに乗って戦っているときのような気分だった。

「私は……あなたの人形じゃない!」

―ガラスの凶器は2回、ゲンドウの頭蓋骨に振り下ろされた。

 それきりゲンドウは動かなくなった。
 レイは死体を膝の上から乱暴に跳ね除けた。タバコの吸殻と灰が散乱した床に落ちるゲ
ンドウ。ドスッという音。その衝撃で、だらしなく開いたゲンドウの唇から、涎が一筋垂
れた。

413:犯行編-ディナーの後始末1
07/08/18 02:50:59
 レイはソファから立ち上がった。灰皿を片手に持ったまま、制服についたタバコの灰を
払い落とし、乱れを正す。壁に掛けられている時計を見ると、午後10時20分ちょうど。

 レイはまず、凶器から指紋を消す作業に取り掛かった。灰皿をキッチンに持って行き、
水道水で洗い流す。うっかり凶器に触らないよう、鍋つかみを手に嵌めての作業。最後に
キッチンタオルで満遍なく灰皿を拭く。灰皿は元のテーブルの上に戻しておく。

 次は、今夜レイがここに居たという物的証拠を消す作業だ。流し台にはディナーのとき
に使った食器や、調理器具が積み重なっている。まだ、洗っていない、汚れたままだ。皿
も、フォークも、ナイフも、2人分ある。

 レイは2人分の汚れ物を、1人分だけ洗った。洗った食器は、キッチンタオルで念入り
に水分を拭き取り、食器棚に戻す。もちろん指紋は残さないよう鍋つかみを嵌めたままだ。
これで「今夜ゲンドウは自分で1人分の料理をつくり1人で食事をした」という状況に見
えるはずだ。

 食器を洗い終わると、鍋つかみを元の場所に戻し、これで終わりと言わんばかりに、ギ
ュッと蛇口を締め上げた。

414:犯行編-ディナーの後始末2
07/08/18 02:52:20
 リビングに戻ったレイは、ゲンドウのハンドバックと財布を探し出した。そこから一つ
ずつカギを取り出す。この部屋のカギと、そのスペアだ。カギはこの二つしか持っていな
いはず。死体が着ている制服の内ポケットに2つのカギを忍ばせる。

 次は施錠。玄関、南側の大きな窓、西側の小さな窓、寝室の窓。この部屋の出入り口全
てに施錠する。

 レイは玄関から自分の靴を持って来て、キッチンの奥に備え付けられているダストシュ
ーターに向かった。ダストシューターの蓋は、目測で縦30センチ、横50センチといっ
たところか。蓋の上部の壁にスイッチがついている。スイッチはレイの目と同じくらいの
高さだ。このスイッチを押さない限り、蓋は開かない。小さな子供がダストシューターの
中を探検しないようにするための配慮だろうか。

 レイはスイッチを押し、蓋を押し開いて靴を捨てた。そして、ふうっと息を吐き出すと、
一番困難な「仕上げ」に取り掛かった。これが最後の作業だ。

415:犯行編-少女の帰宅
07/08/18 02:58:20 xw0TomJC
 アルバムを開くと、レイと一人の少年と目が会う。写真の中の少年は、照れたような控
えめな笑顔をカメラに向けている。

 時計の表示は「PM 11:37」。レイはすでに自室に帰っていた。

 帰り道は、黒いトランクと一緒だった。ゴロゴロというトランクの足音と共に、一人で
夜道を戻って来たのだ。

 帰宅した後、レイはずっとノートとアルバムを読み耽っていた。びっしりと文字で埋め
尽くされた大学ノートと、たくさんの人が写っているアルバムを交互に見比べていた。

 レイの視線は時折アルバムから離れ、黒いトランクに泳いだ。トランクは部屋の片隅に
無造作に置いてある。その大きさと色、殺風景なこの部屋にあってその存在感は大きい。
そして、密閉された空間で、目覚めることの無い眠りについているであろう碇ゲンドウを
想像した。

 レイは再びアルバムに目を戻す。 指が、写真の少年の輪郭をなぞる。
(碇シンジ……碇くん……)
 赤い瞳から、一粒の涙が零れた。


犯行編ここまで

416:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/08/18 03:03:11
上げちまった。スマン・・・orz

>>405
事件編からはマターリいきませうヽ(´ー`)ノ

417:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/08/18 11:24:09
キッチンの蛇口の指紋
ハンドバッグと財布と鍵の指紋
エレベーター(上がる時に使用)の指紋
オートロックの使用記録
(言動の部屋の)ダストシューターのスイッチの指紋

418:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/08/18 11:26:32
アスカ編は丸めたエプロンの中に何か包まれてると思った。

419:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/08/18 19:00:02
証拠が無いのは身内の犯罪である証拠、と言われてるかどうかは知らない

420:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/08/19 00:32:15
>>412
>タバコの吸殻と灰が散乱した床に落ちるゲンドウ。
これだと凶器を簡単に見破れるんじゃないかな? かな?

>>418
おれはペンペンが全て解決してくれると睨んでました

421:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/08/19 02:03:55
レイが裸エプロン姿で台所に立ち食器を洗う まで読んだ

422:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/08/19 02:23:42
オレは犯人だ!
レイたんじゃない!

423:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/08/19 19:32:41
>>420
凶器はすぐに特定されるだろうが、イコール犯人の特定ではない。

424:420
07/08/21 02:54:37
なるほどね

425:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/08/22 18:51:37
そろそろ事件編みたいな~

426:351
07/08/22 20:59:33
ちょうどできました。
事件編その1(5レス)落とします。

ちなみに事件編はその4(5?)までの予定です。

427:事件編その1-古畑の疑問
07/08/22 21:01:26
>>415

「えー、もう一度訊きます―」
 古畑が振り返る。
「本当に警察が到着するまでの間、この部屋から出たり、逆に入ったりした人はいないの
ですね?」
 その質問は2人の人物に向けられていた。
 ゲンドウが住むマンションの管理人である市村と、ネルフ保安部職員の室伏である。
 二人は事件の第一発見者だ。

 今日、ゲンドウは朝から第2新東京市まで出張する予定であり、ゲンドウ付きの秘書の
一人が第3新東京空港でゲンドウと待ち合わせをしていた。しかし、待ち合わせの時間に
なっても空港にゲンドウが現れない。携帯電話や、自宅の電話に連絡してみるが、無駄足
に終わる。異状を察したその秘書はネルフ保安部に「司令がまだ来ない。連絡がつかない」
という旨の連絡を入れた。

 連絡を受けたネルフ保安部は当直だった室伏をゲンドウ宅に急行させた。マンションに
到着した室伏は、管理人の市村に事情を説明して、共にゲンドウの部屋に向かう。
 室伏が押したチャイムも、ノックにも返事は無かった。ドアノブを捻ってみるが、回ら
ない。ドアにはカギが掛かっていた。
 市村が持ってきたマスターキーを使って鍵を開ける。「司令! 司令!」と叫びながら
リビングに飛び込む室伏。彼はすぐに変わり果てたゲンドウの姿を発見する。そのとき、
市村はそのまま玄関に立っていた。

「申し上げた通りですよ、刑事さん。そのあとこの方が連絡して警察の方が見えるまで、
私はずっと玄関に立っていました。その間、この部屋に出入りした人はいません」
 市村が答える。隣に立っている室伏も相槌を打つ。
「んん……わかりました。ありがとう」
 古畑の表情は釈然としない。現場の状況と合致しない疑問が一つ残っているのだ。

428:事件編その1-密室殺人
07/08/22 21:03:33
 古畑が現場に到着したとき、すでにゲンドウの遺体は検死に回されて部屋には無く、代
わりに死体があったリビングの床には、白いテープが張り巡らされていた。

 凶器は古畑が到着する前に特定されていた。リビングのテーブルの上に置いてあったガ
ラスの灰皿である。ゲンドウが倒れていた付近の床にタバコの吸殻と灰が散らばっていた
ことと、致命傷となった後頭部の傷と灰皿の形状がぴったりと一致したことがそれを裏付
けている。さらに、灰皿はきれいに洗ってあった。しかし、水で洗ったくらいでは、指紋
は消すことが出来ても、血痕が付着していたことを隠蔽することは出来ない。灰皿からは
ゲンドウの血がべっとりと付着していたという痕跡が検出されていた。

 古畑が到着した後も次々と犯人を示す手がかりが発見され、犯人の特定も時間の問題か
と思われた。ところが、一つだけ不明な点が出てきた。
 逃走経路である。
 現場はいわゆる「密室」であった。玄関や窓、部屋の出入り口はすべて内側から施錠さ
れていた。ゲンドウを殺害した犯人はどこから逃走したのか?

 玄関のカギは、遺体の上着のポケットに入っていた。しかも2つ。古畑はこれに疑問を
抱く。スペアのカギとメインのカギを同じポケットに入れるとはどういう事か。普段はメ
インを使い、スペアは財布の中にでも忍ばせておき、メインの紛失に備えるのが普通では
ないか?

429:事件編その1-逃走経路
07/08/22 21:04:44
 古畑は2つのカギに何か作為的な匂いを嗅ぎ取る。そして、見つかった2つ以外にゲン
ドウが合いカギを作らせていないかを調べるよう、古畑は他の警官に指示した。
 また、その一方で古畑自身は別の可能性も探る。

 まず、犯人がまだ室内に潜んでいる可能性。
 リビング、キッチン、寝室。古畑は人が隠れられそうな場所は全て調べて見たが、猫一
匹見つからない。この可能性はなさそうだ。

 次に、なんらかの機械を用いて自動的に施錠した可能性。
 部屋中を調べても、そのような機械も痕跡も見つからない。この可能性もなさそうだ。
糸とか針を使って何とかゲンドウのポケットにカギを入れるような細工も考えられるが、
この部屋の造りは気密性が高く、外からカギを滑り込ませられるような隙間はどこにも無
い。

 第一発見者が犯人である可能性はどうか。
 これは死亡推定時刻が合わなかった。遺体の状態から、死亡推定時刻は昨夜で間違いな
いだろう。検死の結果次第でもっと狭い範囲に絞られるだろうが、少なくとも、今朝発見
した人間が犯人とは考えにくい。

 第一発見者と入れ違いで室外に脱出した可能性は、どうか。
 この可能性も薄い。1人ならともかく、第一発見者は2人いた。しかもその中の一人は
警察が来るまでずっと玄関に立っていたという。犯人が脱出できる隙は無さそうだ。

 考えられる可能性がもう一つある。犯人は通常の出入り口から脱出したのではないとい
うものだ。つまり、普通人間が出入りしないような場所から脱出したという可能性だ。
 この部屋にはその候補が一つだけあった。ダストシューターである。

430:事件編その1-焼却施設
07/08/22 21:05:48
「うわあ、すごく深いね~」
 ダストシューターに顔を突っ込んで、懐中電灯を暗い穴の底に向ける古畑。懐中電灯の
光は、深い縦穴の闇に飲み込まれ、底の様子は杳として知れない。
「今泉君も見てみなさい。まったく底が見えないよ」
 古畑の後ろに控えていた今泉が、古畑と交代してダストシューターに頭を突っ込む。
「―この穴、1階まで続いてるんですかね?」

 古畑と今泉は、管理人の市村を連れて1階の焼却施設まで降りてきた。
「えー、これが焼却炉ですね。そして、これがその蓋」
 古畑が焼却炉の蓋を指して、市村を振り返る。
「はい。そこの操作盤のスイッチで開け閉めできるようになっています」
 古畑の指が反射的にスイッチを押そうとして、直前で止まる。
「……これを押したら、いきなり火が付いたりするんですか?」
「いえいえ、そのスイッチは蓋の開閉だけです。燃焼させるスイッチは管理人室にありま
す。住人の方が誤って押したら大事故になりかねない」
「ごもっともです―えい!」
 古畑がスイッチを押す。ウィーンという音と共に、焼却炉の蓋が右にスライドし、炉の
奥に続く四角い穴が開いた。
「ははあ、なるほど―えい!」
 もう一回押すと、左から蓋がスライドしてきて、穴を塞ぐ。
「これ、たとえば焼却炉の内側からこの蓋を開く方法はないんですか?」
 市村はその質問の意図がわからず、苦笑する。
「ないですなぁ」
「えー、万が一、誰かがこの中に迷い込んだとしたら、どうなるのでしょう?」
「炉の中にはセンサーがあります。センサーが動いているものを感知している間は、燃焼
スイッチを押しても火が付かないようになっているんですよ」
「では、もし、燃焼中に上の部屋からゴミを落としたらどうなります?」
「燃焼中はダストシューターと焼却炉が隔絶されます。炉の奥に隔壁がついているんです
よ。燃焼スイッチを入れると隔壁が閉じ、新しいゴミは入ってきません」
「んー、なるほど……参考になりました」
 古畑は口を尖らせてその蓋を睨んだ。

431:事件編その1-蛇口の指紋
07/08/22 21:06:57
 現場―ゲンドウの部屋に戻った古畑を、一人の警官が待ち構えていた。合いカギの件
だ。この部屋のカギは特殊なタイプで、複製できる業者は指で数えるほどしか無く、問い
合わせたところ、複製した事実は確認できなかった。カギはゲンドウの上着の中にあった
2つのみ。他の合いカギを使った可能性はほぼ消えた。

 報告はもう一つあった。同じ警官が古畑に告げる。
「水道の蛇口の指紋ですが、古畑さんがおっしゃっていた通り、綾波レイのものと特定で
きました」
「―そう、ごくろうさん」
 古畑の隣で聞き耳を立てていた今泉が口を挟む
「綾波レイって、ネルフで会ったあの子ですか? でも、碇司令とは親しいみたいですし、
指紋くらい残っていても、おかしくないと思うんだけどなぁ」
 その言葉に古畑は呆れ顔で答える。
「私はこれから綾波さんのところに行くから、君は実験していなさい」
「実験? 実験って、何をですか?」
 無理難題の予感を察し、今泉に緊張が走る。
「この部屋のダストシューターから、外に脱出してみて。ロープでもトランポリンでも、
どんな道具を使っても構わないから」
「む、無茶ですよ! 22階ですよ、ここ! 不可能です。いやだ!」
 古畑、パチンと今泉のオデコを鳴らす。
「可能な方法を探しなさい。頭を捻って。綾波さんは昨夜ここいて、恐らく事件に深く関
わっているはずだよ。私は本人から探ってみるから、君はこの密室を何とかしなさい。い
いね!」
 泣き出しそうな今泉をよそに、古畑は踵を返してエレベーターに向かった。

 古畑は考える。なぜ、犯人は部屋を密室に仕立てたのだろう。どうやって作ったかとい
う問題はとりあえず脇に置いておくとして、密室を作る必然性が古畑には分からなかった。
 同時に、心に決める。犯人に会ったら忘れずに訊かなくてはならない、と。

事件編その1ここまで

432:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/08/23 01:08:18


433:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/08/23 19:49:50 lxX5GAFi
俺はこういうの好きだ

434:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/08/23 22:03:33
おやぁ?スイカですか?えぇ~私スイカ大好きなんですよ~んっふふふふ…あのですね~やっぱり赤城先生はあの日誰かと会っていたみたいんですよぉ~
あれぇ~?どうしました?ずいぶんと不思議そうな顔をなさいますねぇ~
赤城先生ですね~、誰かにホクロのこと言われていたみたいなんですぅ~何を言われたのかは知りませんけど、えぇ~おそらく、泣きボクロのことを言ったのでしょう。レーザー除去しようとしてたみたいなんですよぉ~んっふふふふ、えぇ~…

435:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/08/23 22:59:16
>>434
加持さんロックオン?

436:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/08/24 17:46:40
つっづっき♪つっづっき♪さっさとつっづっき♪しばくぞ♪
…いやすんません、ちょっと調子のりすぎました。でもそろそろ続きが読みたいです。

437:351
07/08/25 10:33:46
事件編その2落とします。6レスです。

>>436
お待たせしました。そして懐かしいフレーズ・・・

438:事件編その2-レイの部屋へ
07/08/25 10:35:38
>>431

 チェーンを外して、ドアを開けると、古畑が立っていた。
 それはレイが制服のままベットに腰掛け、アルバムに目を落としていたときのことだっ
た。時刻は「AM 11:14」。レースカーテンから漏れる明かりが、ゲンドウの死か
ら一日経過したことを物語っている。

 ミサトから自宅待機命令が伝えられたのは3時間前、レイが通学路を歩いていたときの
ことだった。学校はもちろん、一切の外出を禁止するという命令だった。ミサトはその理
由を「本部でごたごたがあった」と濁していたが、レイにはもちろん分かっている。ゲン
ドウの死が発覚し、ネルフ本部はその対応に追われているに違いない。命令に従い、レイ
は素直に帰宅した。それからずっと、アルバムを捲っていたのだ。

「ごぶさたしてますぅ、綾波さん。警視庁の古畑です」
 レイは無言で古畑を招き入れた。小さな折りたたみテーブルを出して、そこに座らせ、
自身もその向かいに座る。古畑は2、3ヶ月くらい前からネルフに出入りするようになっ
た人物で、綾波レイとも顔見知りだった。
「えー、少しお話を伺いたいのですが」
 そう言いながら、古畑がぐるりと部屋の中を見渡す。五段のひきだし、黒いトランク、
ベット、そしてベッドの上のアルバム。
「何の話?」
「あー、まだ聞いていないのですね。実は……碇司令がお亡くなりになりました」
「どうして?」
「それがですねぇ、なんとも言い難いのですが……殺されたのです」
「そう」
「そう? えー、初めて聞いた割りにはずいぶんとあっさりしたお答えですねぇ。碇司令
と綾波さん、親子のような間柄だと聞いています。もっと驚かれると思っていましたぁ」
「そう」
 答えるレイの表情は、切り抜いた写真を貼り付けたように動かない。声にも抑揚が無い。
感情の波を示さないレイの応答に、古畑の眉間の皺が深くなっていった。

439:事件編その2-アリバイなし
07/08/25 10:37:11
 突然、古畑の指がベッドの上を指し、その顔が綻ぶ。
「そこのアルバムは、もしかしてこの前、撮影していたやつですか?」
「……そう」
「見せて頂いても?」
 レイはベットの上のアルバムを古畑に渡す。古畑はテーブルの上にアルバムを置くと、
先頭のページから順に捲り始める。
「ネルフの皆さん、大変、驚いていましたよ。なにしろあなた、カメラを持ち歩いて、会
う人会う人、片っ端から撮り続けたらしいじゃないですか。あんまり急にのめり込み始め
たから、周りの方たちが戸惑ってしまったようです」
「…………」
「あっ! すいません、話が逸れてしまいましたぁ。私がお聞きしたいのはですね」
 アルバムの写真たちを眺めながら、古畑が続ける。
「綾波さんが昨夜どこにいらっしゃったか、ということなんです」
「ずっと、ここにいたわ」レイは間髪入れずに答える「学校から帰ってきてからはずっと
この部屋に」
「うーん、質問を変えます。昨夜、碇司令の部屋に行きましたか?」
「ここにいたわ」
「もう一度質問を変えます。昨夜、碇司令の部屋の水道を使いましたか?」
「……ここにいた」
「最後です。昨夜、碇司令の部屋にある流し台の蛇口に触れましたか?」
 徐々に古畑の声が大きくなる。それでも、レイの表情は変わらない。
「ここに」
「えー、流し台には洗っていない調理器具や食器が積み重ねられていました。皿の枚数か
ら、おそらく司令は一人で調理し、それを一人で食べたものと思われます。調理する時に
は、和洋中を問わず、必ず水を使います。司令も手袋を外し、蛇口を捻ったはずなんです。
でも、蛇口にはあなたの指紋が残っていました。これは、司令が食事を終えた後、あなた
が蛇口を捻ったと考えるのが普通じゃないでしょうか」
 古畑が畳み掛ける。しかし、レイの静かな物言いは変わらない。
「……私はここにいた。それは事実。証明するもの、何も無いけど」

440:事件編その2-ハッピーバースデー
07/08/25 10:38:37
 古畑が初めてレイの動揺を見たのは、その次の会話だった。
「あっ、忘れるところでした。その前に、あなたに言おうと思っていたことが」
 それは、古畑のもう一つの切り札だった。
「お誕生日おめでとうございます」
 満面の笑みをつくる古畑。
 効果はあった。赤い瞳が一杯に見開かれる。
「ど、どうして? なぜあなたが知っているの?」
 レイはテーブル叩いて立ち上がり、その声色にも震えが混ざっていた。
「えー、ケーキです。バースデーケーキ。上にチョコレートの板が載っているやつです。
現場の冷蔵庫に手付かずのまま置いてありました。プレートには、昨日の日付と『ハッピ
ーバースデー レイ』というメッセージが書いてあったので、私、昨日があなたの誕生日
だと」
 手ごたえを確信していた古畑。
 しかし、古畑の言葉を聞いたレイの顔からは、古畑の期待とは裏腹に、急速に動揺が消
えてゆく。そしてほんの数秒後には、何の感情も読み取れない元の顔に戻っていた。
「そう。私、15歳になったの」
「昨日、司令に呼ばれました?」
 レイは頷いた。頷くまでの間は、殆ど無かった。
「……呼ばれたわ。でも、行かなかった」
「えー、そうですか」
 古畑は口をへの字に結ぶと、またアルバムを捲り始めた。

441:事件編その2-図鑑?
07/08/25 10:40:26
 ふと、アルバムを捲っていた古畑の手が止まる。
「あっ、ありました」
 古畑が写真の一枚を指して喜ぶ。
 それは、古畑と今泉のツーショット写真だった。1ヶ月ほど前に、ネルフ施設内で撮影
したものだ。シャッターを切ったのはレイである。施設内を迷っていた二人をレイが撮っ
たものだった。
「んっふっふ、私、これが見たかったわけで……ところで、一つ教えてください」
 古畑には疑問が一つあった。それはアルバムを見始めたときから思っていた。
「何?」
「このアルバム、1ページ目と2ページ目は碇司令、3ページ目は赤木博士、4ページ目
と5ページ目はシンジ君というふうに並んでいます」
「それが?」
「普通はこういう並べ方はしません。普通は昔のものから順番に並べます。最初のページ
は一番古いもので、ページを捲るたびに新しくなり、最新の写真の後はずっと空白になり
ます」
「そうなの?」
「この写真の並べ方だと、なにか、こう、綾波さんのお知り合いを集めた図鑑みたいです、
はい」
「そう……知らなかったわ」
「まぁ、好き好きですがね」
 古畑は悟る。何気ない世間話でも、レイの表情は変わらなかった。レイは元々感情の起
伏が少なく、表情の変化に乏しいのだ。加えて口数も極端に少ない。このような相手に対
し動揺を誘う作戦をとっても、難航は必至だ。アルバムを捲る古畑は決して笑顔を絶やさ
なかったが、内心、苦戦を予感していた。

442:事件編その2-シンジからの電話
07/08/25 10:42:30
 電話のベルが二人の会話を中断した。鳴ったのは備え付けの電話だ。レイが電話に出る
と、若い男の声が聞こえてきた。
『あ、綾波? 僕だけど』
「えっ……誰?」
 古畑がアルバムから顔を上げ、受話器を耳に当てるレイの横顔を見る。
『あっ、ごめん。碇シンジです』
「碇くん? どしたの?」
『綾波もやっぱり家にいるんだね。僕も今、家に居るんだ。学校に行く途中で突然ミサト
さんから電話掛かって来て、自宅待機だって』
「そう。碇くんもなのね」
『でも、ミサトさん、理由を教えてくれないんだ。それで、綾波なら何か知っているかな、
って思って電話したんだけど』
「知ってる……今、ちょうど刑事さんが来て教えてくれたの」
 古畑が焦った。レイの声は古畑の耳に届いていた。レイの肩を引っ張って振り向かせる
と、自分の口に人差し指を立て、何も言わぬよう、ジェスチャーで催促する。
「司令が殺されたの」
『えっ……嘘……』
「本当よ。刑事さんがそう言っていたもの」
『…………』ガチャ。
 しばしの沈黙の後、唐突に電話が切られる。レイは受話器を本体に戻した。
 振り返ると、古畑がコメカミを抑えていた。
「えー、先にお話しておくべきでした。実は葛城さんから、碇シンジ君には、事件のこと
伏せておいて欲しいと頼まれておりまして。うーん、弱りましたぁ」
「そう。どうして碇くんに教えないの?」
「シンジ君はなんと言いますか、とてもナイーブな少年だと。父親の死、それも他殺とい
う事実に耐えられるか、と、葛城さんは気にされていました、はい」
「もう知っていると思ったわ」
 レイは淡々と言ってのけた。あくまで、淡々と。

443:事件編その2-ミネラルウォーター
07/08/25 10:44:32
 古畑がアルバムをレイに返す。
「えー、お時間取らせましたぁ。そろそろお暇します」
 古畑が立ち上がる。テーブルを片付けようとするレイを制して、自分でテーブルを裏返
し、脚を折りたたみ、元の場所に戻した。
「今日はずっとこちらにいらっしゃるんですか?」
「命令次第ね」
「そうですか。では」
 革靴を履き、ドアノブに手を掛けて外に出ようとする古畑。それを呼び止めたのはレイ
の声だった。
「古畑さん」
 部屋の中を振り返る古畑。レイは光溢れる窓を背負って、古畑と向き合っていた。影と
なったその顔面の、2つの赤い瞳が古畑を見つめていた。
「ミネラルウォーター」
「ミネラルウォーター?」
「そう。司令は料理するとき、水道水を使わないの」
 微かに笑っている赤い瞳。
「えー、しかし、料理の前には手を洗います。その時はさすがに……」
「その時もミネラルウォーターよ」
 レイの小さな唇が言っているのは、蛇口の指紋のことだった。
「私が司令と一緒に食事をするときは、全部、私が食器を洗うの」
「つまり、蛇口に指紋がついたのは、昨夜ではなく、それ以前だと。そして、それ以降、
司令は蛇口をたまたま捻らなかった。だから、いま蛇口にあなたの指紋が残っている、と
おっしゃりたいのですね?」
 コクリ、と頷くレイ。
「ありがとうございました、参考になりました」
 古畑は会釈をして、外に出る。
 厳しい顔つきのまま、憎々しげに夏の日差しを見上げ、舌打ちを一つ鳴らした。

事件編その2ここまで

444:トリック判明した!
07/08/25 16:37:26
乙!

445:444
07/08/25 16:39:35
名前とメル欄逆・・・orz

446:ついかっとなって長文を(ry
07/08/25 17:24:08
乙。つか、レイの描写とそれに苦戦する古畑がいいな。これから、どうやって古畑がレイの冷静さを崩していくか、というとこか。
アルバムも気になるー!なんか事件に関係あるのか?…まとめると、あんたは少なくともおれの中ではネ申だということだ。

447:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/08/26 13:30:30


448:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/08/26 19:59:19


449:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/08/26 20:45:08


450:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/08/26 22:26:58


451:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/08/27 07:07:33


452:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/08/27 10:27:51


453:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/08/27 11:59:31


454:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/08/27 12:20:12


455:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/08/29 20:11:38
事件編その3
5レス投下します

456:事件編その3-今泉の挑戦
07/08/29 20:13:11
>>443

 古畑がレイの部屋を訪ねていたその頃、現場では今泉が密室を解明すべく捜査を続けて
いた。実は古畑や今泉よりも前から現場にいた向島がそれを手伝っている。後から応援に
駆けつけた西園寺は、すでに聞き込み捜査に出掛けており、ここにはいない。

「今泉さん、本気でやるんですか?」
 向島が今泉にそう問いかけた。向島は警官の制服姿で、その手にはロープを握っている。
ロープを辿っていくと、ダストシューターの前で背広を脱いだ今泉の胴体に行き着く。今
泉はロープを腹に巻きつけ、腕まくりし、靴下を脱いで裸足になっている。

「向島君、信じてるよ」
 今泉は古畑がいなくなった後も現場で「密室」と格闘し、やはりダストシューターから
脱出したとしか思えない、と結論していた。そして実際に脱出できるかどうかを今、実験
しようとしていたところである。

 実験にあたり、21階の住人の協力を得た。22階の犯行現場の真下に当たる部屋に住
んでいる人である。実験は、犯行現場のダストシューターから内部に入り、1階下の部屋
のダストシューターから脱出するというものである。そのため、出口となるダストシュー
ターはあらかじめ蓋を開けておかなければならず、そのための協力である。

 当初、向島はその実験に反対した。今泉が何の道具も使わずにダストシューターの中に
入ろうとしたからである。足場になったり、掴めるような凸凹が無いダストシューター内
部に、徒手空拳で入るのは無謀だと主張したのだ。そこで、ロープが登場した。今泉の胴
体にロープを巻き、向島がその一端を掴んで、今泉滑落に備えるのである。

「じゃ、行ってくるよ」
 今泉は躊躇いを振り切るのに十分な時間を使った。何度もダストシューターの蓋を開け
閉めし、向島と役回りの交替を申し出たりしたのだ。ようやく迷いが無くなると、足から
蓋の中に入れていき、垂直に切り立つ穴の中に身を投じた。

457:事件編その3-ダストシューター内部
07/08/29 20:14:33
 ダストシューターの内部は真っ暗だが、真っ暗な中にも光点は2つあった。1つは入っ
ていた蓋、すなわちゲンドウの部屋の蓋から漏れてくる明かりであり、それは今泉の眼前
にある。もう一つは、5メートルほど下に見える、1階下の蓋だ。

「向島君、降ろして。ゆっくり、そーっとね」
 ロープを掴む手が、力みすぎて震える。壁に足を突っ張っているが、膝がガクガクと笑
っている。
 そのとき、急激な浮遊感。
 頭が穴の底に落ちていく感覚。
 しかし、それはすぐに止まる。向島がロープを降ろしたのだ。
「あ、あぶないじゃないか! もっと、もっとゆっくり降ろせよ!」
「……今、降ろしたのは、たぶん5センチくらいですよ」
 今泉の抗議に対し、向島は部屋の中から冷やかな反応を返す。
「やめましょうよ、今泉さん。上がってきて下さい。作戦を練り直しましょう」
「もうだめ。戻るだけの余裕無いんだよ……引き上げてよ」
「実は、僕も支えるだけで限界なんですが」
 今泉の顔が、闇の中で引き攣った。

 ダストシューターの中で進退窮まった今泉を救出したのは、聞き込みから戻ってきた西
園寺だった。西園寺は22階の現場から今泉を引き上げたのだ。引き上げられ、床にへた
り込んだ今泉は涙目である。
「今泉さん、実験なんかしなくても、犯人がダストシューターを通ったかどうか分かりそ
うですよ」
 西園寺の視線は、今泉の足の裏に向いている。
「どういうことですか?」
 そう疑問を投げる向島に対し、西園寺が答える。
「見てください。今泉さんの足の裏、真っ黒ですよ。ダストシューターの内壁はかなり汚
れているんじゃないでしょうか。もし、犯人がロープやそれに準じた物を使って穴を降り
たとしたら、足跡なり、ロープの跡なりが残っているはずです」
 今泉は実験が無駄にならなかった事に、とりあえず胸をなでおろした。

458:事件編その3-黒いトランク
07/08/29 20:16:33
 西園寺の推理を受けて、向島がダストシューター内部の捜査に乗り出した。自分の頭と
右手を突っ込み、懐中電灯の明かりで内部の壁を調べている。

「ところで、聞き込みはどうだったの?」
 今泉は雑巾で足の裏を拭きながら西園寺に尋ねた。
「それなんですが、出ましたよ。関係ありそうな証言が」
 西園寺が内ポケットから手帳を取り出し、素早く数ページ捲る。
「青髪の少女が、昨夜9時くらいに、この先のコンビニエンスストアの店員に目撃されて
います。第壱中学校の制服を着ていて、黒くて、大きなトランクを押して歩いていたらし
いです」
「青い髪……綾波レイだ。ネルフであった、エヴァのパイロットやってるあの子!」
「その店員がちょうど、窓拭きをしているときに店の前を通りかかったそうです。しかも、
このマンションがある方向に向かっていたと」
「よく覚えていたね。その店員」
「少女が押していたトランクはかなり大きいもので、とても目立っていたので覚えていた
らしいです」
「黒いトランクかぁ。他には?」
「同じ店員の証言ですが、少女を目撃した2時間後、つまり、昨夜11時頃、もう一回同
じ少女を目撃したと言っています。しかも、やはり黒いトランクを押していたと」
「え? どういうこと?」
「一つだけ違うのは、少女が向かっていた方向です。9時に目撃した時とは逆に向かって
歩いていたと」
「じゃあ、9時にトランクと一緒にこのマンションに向かってきて、11時にはトランク
と一緒にこのマンションから遠ざかったということ?」
「そうです」
「でも、トランクなんて何に使うの?」
「トランクは荷物を運ぶための道具です。僕の考えでは、犯人が密室を作るためになんら
かの道具が必要で、それをトランクに入れて運んだのではないかと睨んでいます」
 その時、ダストシューターの内部を調べていた向島が顔を上げる。
「駄目です。今泉さんの足跡以外、何にもありませんね」
 顔をあわせて、考え込んでしまう3人。

459:事件編その3-リツコとの面会
07/08/29 20:21:14
「赤木博士、これは一体どういうことでしょうか?」
 古畑が見知らぬネルフ職員に案内された部屋は、異様に薄暗く、中に人がいることが信
じられないほどだった。しかし、薄暗い闇の中からは確かに赤木リツコの声が返って来た
のである。
「古畑さん? お久しぶりね」

 古畑はリツコに会うためにネルフに来ていた。心当たりがある場所を訪ね歩くも、リツ
コはどこにもおらず、呼び出してもらおうと冬月に頼んだところ、見知らぬ職員にこの部
屋に案内されたのだ。

 古畑にはリツコの姿がはっきりとは見えなかった。ただ、背を向けて座る姿がぼんやり
と浮かんで見えるような気がするだけだった。
「ここは、独房なの。私は今、閉じ込められているのよ」
「え~、また、どうして?」
「軍規違反をしてね。それも、過失じゃなくて、故意に」
「ああ、だからですか。早めに済ませろと副指令に釘を刺されまして」
「碇司令の事ね?」
 話の核心を察した問い掛けに、古畑はリツコの親切を感じ、頬が緩んだ。
「碇司令の事はご存知でしたか?」
「亡くなった、とだけ聞いたわ。でも、あなたが動くなら殺人ね」
「現場は碇司令の部屋です。えー、そして、寝室のベットからはあなたの髪の毛が」
「碇司令とは、そういうお付き合いですよ。男女の関係。そして私は1週間前からこの独
房で暮らしています。証人はここの監視係り、証拠は監視カメラの記録でいいかしら?」
「結構です。大変話が早くて助かります。はい」
 手帳のメモが追いつくのを待って、古畑が最後の質問をする。
「碇司令の部屋の合いカギをお持ちでしょうか?」
「持っていません。過去に作ってもらったこともありません」
「えー、ありがとうございました。お訊きしたいのは以上です」
「……待って。一つだけ分からなかったわ。合いカギの質問の意図は、何?」

460:事件編その3-助言
07/08/29 20:22:47
「古畑さん、私はあなたの質問から、あなたはもう犯人の目星はついている、と感じてい
ます。これは合っているかしら」
「ええ~、合っています。はい」
「では、なぜ合いカギの有無が問題になるのかしら? とても興味があるわ」
「うーん。形式的な捜査の一環、という事で許していただけませんか」
「独房の中って、ヒマなのよ」
「んっふっふ、分かりました。実はですね……」
 古畑は現場の状況を説明した。現場が密室であったため、合いカギの有無を確認する必
要があったとこも含め、包み隠さずに。
「なるほど……」
 リツコはそう言って、黙り込む。
 沈黙が続くこと3秒ほど。
「『ターミナルドグマの枕泥棒』」
 リツコがぼそりと呟く。
 その言葉の意味が分からない古畑に、リツコが後を続ける。
「副司令に尋ねてみて下さい。『ターミナルドグマの枕泥棒』を」
「『ターミナルドグマの枕泥棒』? それは何でしょうか?」
「秘密の軍事施設で起きた盗難事件よ。被害はどこにでもあるような枕を一つだけ。盗難
届けは未提出。きっと、殺人事件を解決する手がかりになるはずよ」
「うーん、それは助言と受け取ってよろしいのですか」
「ふふふ、どうかしら?」
「つまり、あなたは事件の真相を知っていると……」
 その質問を言い終える前に、古畑を肩を叩かれた。古畑をこの部屋に連れてきた職員だ
った。彼は腕時計を指して「時間だ」と古畑に告げた。
「無事、事件を解決なさることをお祈りしていますわ、古畑さん」
 リツコの得意げな声。
 闇の中で手を振るリツコに、古畑は軽く会釈し、部屋を辞した。

事件編その3ここまで

461:351
07/08/29 20:48:37
>>446
ありがと! 励みになります

462:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/08/29 21:52:21
(・∀・)イイ!!

463:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/08/29 23:12:57
今回もクオリティ高いですね…さすがにリツコさん登場、しかも独房verはよめなかった。wktkがとまりません!
あぁ、枕の意味が気になる~!!

464:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/08/31 22:31:49
やっべ、すげー続きが気になる
期待下げ

465:351
07/09/01 18:33:40
事件編その4+幕間、6レス投下します。

466:事件編その4-ドグマの枕泥棒1
07/09/01 18:35:02
>>460

 古畑は早速、リツコから受けた助言に従い、『ターミナルドグマの枕泥棒』というキー
ワードを冬月に伝えた。冬月は僅かに戸惑う様子を見せたものの、協力をする事を古畑に
約束する。そして、冬月は青葉を伴って、古畑を本部内の一室に案内した。

 その部屋は奥の壁一面が巨大なモニタになっていた。横幅は4、5メートルもあるだろ
うか。高さは床から天井ぎりぎりまである。その様子はさしずめミニシアターといったと
ころだ。
 冬月の指示を受けた青葉が、端末で何かを操作する。数秒後、真っ暗だったモニタに映
し出されたのは、一本の通路と、通路の行く手を阻むドアだった。薄暗い通路に、白い扉
が浮かび上がっている。その扉は本部内のいたるところで散見できる両開きのもので、脇
に磁気カードを通すスリットが見える。

「これはターミナルドグマと呼ばれる軍事施設の唯一の入り口だよ」
 長椅子に腰を下ろして足組みする古畑に冬月が説明する。
「軍事施設というのは、具体的にはどのような?」
「詳しいことは答えられない。この施設内でもトップクラスの機密事項なのだ」
「その施設に入った勇気ある泥棒がいるのですね。でも、盗んだのは枕一つ」
「そうだ……青葉、事件当日の映像を」
 冬月の号令を受けて、青葉の指がキーボードの上を軽やかに踊る。

467:事件編その4-ドグマの枕泥棒2
07/09/01 18:36:35
 冬月が言うには、その映像はターミナルドグマ入り口のドア付近に設置されている監視
カメラが写したものらしい。画面の右下に表示されている数字は、日付と時刻を表してい
るのだろう。その数字を見る限り映像は2週間前のものだ。
「事件当日、最初にターミナルドグマに入ったのは、赤木君とレイだ」
 映像は早送りされる。青葉の操作だろう。そして最初0時0分だった時刻が15時43
分に達すると、白衣のリツコが現れた。その後ろに制服姿の綾波レイが続く。リツコがス
リットにカードを通すと、扉が左右に開く。レイも同じようにスリットにカードを通し、
二人で扉の中に入っていく。扉は二人を飲み込むと、自動的に閉まる。

「次に30分後、赤木君だけが出てきた」
 16時09分、扉が開く。その向こうからリツコが姿を現す。小走りで、何か急いでい
る風に見える。そのままリツコは監視カメラの視界の外に消えていった。リツコを送り出
した扉は間もなく自動的に閉じる。
「さて、問題は、この次だ」
 注意を促すような冬月の言いように、古畑は足を組み替えて、モニタに身を乗り出した。

「さらに30分後……」
 16時41分、また扉が開く。
 まず、ベットが現れた。ベットの上には綾波レイが横たわっていた。制服のままだ。レ
イは目を閉じて眠っているように見える。ベットは、病院で使われるような、足にキャス
ターがついているタイプの物だ。
 ベットを押してきた人物が現れる。赤いレインコートを着ている。フードを目深に被り、
顔は見えない。古畑から見れば小柄だ。レインコートから突き出た革手袋が、ベットのパ
イプを掴んで、押している。
「こいつが枕泥棒だ。こいつは、レイが寝ているベットごとドグマの外に運び出し、枕だ
けを奪って姿をくらましたのだ」
 冬月は映像の一部を指差す。人差し指の先にはレイの頭がある。そして、頭の下には確
かに枕があった。

468:事件編その4-ドグマの枕泥棒3
07/09/01 18:38:16
「えー、いくつか質問させてください」
 足組みを解いて冬月に向き直る古畑。
「このとき綾波さんは気付いていなかったのですか?」
 映像が切られ、モニタが暗転する。
「そうだ。気付いていなかった。後でレイに聞いたところ、ずっと寝ていたそうだ。起き
たときにはベットはドグマの外、本部施設内に放置されており、その上で目が覚めたと言
っておる」
「盗まれたのは枕一つをおっしゃいましたが、それは確かなとこですか?」
「これも後になって調べたことだが、あの枕以外に無くなっている備品は無かった」
「ターミナルドグマに入る道は今の扉だけ?」
「そう。他に出入り口は無い」
「換気口の類は?」
「人間が出入り出来るようなものは無い」
「赤木博士が綾波さんよりも先にドグマから出ました。あれはなぜ?」
「本部からの呼び出しだよ。確かエヴァの実験に関することだったはずだ」
「赤いレインコートの人物は、見つかりましたか?」
「見つかっていない。今日に至るまでな」
「ターミナルドグマには何があるんでしょうか?」
「教えられん」
「赤木博士と綾波さんは中で何をしていたのでしょう?」
「それも秘密だ。ただし、赤木君とレイは頻繁にドグマに出入りしていた、ということだ
けは教えておこう」
「最後に一つ」
 古畑が眉間に人差し指を立てて言う
「副司令、あなたは枕泥棒の正体、ご存知ですか?」
 古畑と冬月の会話を聞いていた青葉は、僅かな驚きの表情で冬月の顔を伺う。
「……さあな。知らない、ということにしておいてくれ」
 冬月はそう答えると、暗くなったモニタに向かったまま、口元に皺を作った。

469:事件編その4-自販機コーナーにて1
07/09/01 18:39:50
 古畑の携帯電話に西園寺から連絡が入った。
 連絡の内容はコンビニ店員の目撃証言に関する報告である。
 綾波レイと思しき人物が黒いトランクを押して歩いている姿が目撃された。目撃された
時刻は事件当日の午後9時と午後11時の2回。おそらく、犯行のために事件現場に赴く
ときと、その帰り道だろう。西園寺はレイが押していた黒いトランクに関して、密室を作
るために必要な道具を運んだと考えているようだ。

 自販機コーナーの長椅子で缶コーヒーを啜りながら、古畑は推理する。
 西園寺の報告に出てきた「黒いトランク」。かなり大きめのものだという。西園寺は何
かを現場に運び入れるために使ったと考えているようだが、そう結論するのはどうか。ま
ったく逆の可能性、つまり、現場から何かを運び去るのに使った可能性は無いだろうか。

 今泉はまだ密室を解明してはいない。西園寺や向島も協力して、様々な方法を試してい
るが、これといった決め手は見つかっていない。
 古畑はある仮説を立てていた。その仮説が事実ならば、密室を解明できる。それどころ
か、レイの不思議なアルバムも、枕泥棒も、黒いトランクの中身も、すべて説明がつくの
だ。
 ただ、その仮説には裏づけが無い。何でもいい。その仮説を確信できるような証拠、ま
たは証言は無いだろうか。

 古畑は考え込む。そのまま、1秒、1分、刻一刻と過ぎていく時間。見知らぬネルフの
職員が自動販売機でジュースを買って、立ち去る。

 不意に、ドサッという音。
 古畑が座っている長椅子に、誰かが勢いよく腰を下ろしたのだ。
 思考を中断して顔を上げる古畑。
 そこには、碇シンジがいた。顔色は青白い。古畑は直感する。彼はレイから父ゲンドウ
の死を聞いた。そして、事実を確認するためにネルフ本部に押しかけて、望みどおり事実
を知ったのだ。

470:事件編その4-自販機コーナーにて2
07/09/01 18:42:12
「シンジ君」と、壊れ物に触れるように古畑が声を掛ける。
「あっ……古畑さん」驚いて顔を上げるシンジ。
「大変なことになったね。でも、あまり思いつめない方がいい。まだ無理だろうけど」
「ハハ……僕、どうすればいいのか……」
 シンジが上げた顔を伏せ、床と向き合う。
「犯人は必ず見つけるよ。あまり気を落とさないで」
 そう言って古畑が俯いたシンジを覗き込む。
「ひとつだけ訊きたいことがあるんだよ」

「君、今日、綾波さんの部屋に電話を掛けたね」
「は、はい。掛けましたけど」
「何の用だったの?」
「えーっと、急に自宅待機なんて珍しい事だから、綾波なら何か知ってるかなって思って、
聞いてみたんです。そして、その時初めて知りました。父さんが死んだ、って」
「君、電話を掛けて、綾波さんが出たとき、一番初めに何て言ったか覚えてる?」
「あ、ええっと……『綾波? 僕だけど』だったかな?」
「よく覚えているね」
「綾波に電話するときは殆どそう言ってますから」
「名乗らなかったの? 普通、電話を掛けたらまず自分から名乗るものじゃない?」
「ええ、他の相手ならそうします。でも、いつも名乗ってないんです。綾波に電話すると
きは。だから、今日も名乗りませんでした。というより、そこまで考えませんでした」
「今日はどうだったの?」
「今日は……そうだ、そういえば、今日は名前を聞き返されました。なんでだろう? い
つも声だけで通じていたのに」
「……ありがとう。十分参考になったよシンジ君」
 小銭を自販機に投入し、缶コーヒーを買う古畑。取り出し口から出てきたそれを、シン
ジに渡す「とにかく、今は気を落とさないで。葛城さんや、周りの大人の人ととよく相談
して、余り深く悩まないように」。
 古畑は笑顔でシンジの肩を叩く。シンジが受け取った缶に2、3粒、水滴が垂れた。

471:幕間
07/09/01 18:43:53

 え~、今回の犯人は強敵でした。
 どうやら私はずっと間違った推理をしていたようです。
 しかし、シンジ君のおかげで、なんとかこの事件を解決できそうです。

 問題は4つです。
 1つ、密室はどのように作られたか?
 2つ、黒いトランクの中には何が入っていたのか?
 3つ、ターミナルドグマの枕泥棒の正体は誰か?
 4つ、レイのアルバムの写真は何故、図鑑のように並べられているのか?

 この事件の最大の謎はやはり『密室』です。
 あの晩、碇司令の部屋に綾波レイが居たことは確かなようです。
 そして、碇司令を殺したのもおそらく彼女でしょう。
 では、どうやって彼女はあの密室を作ったのか?
 この謎を解けば事件の全貌が見えるはずです。

 え~、ヒントです。
 忘れている方は、テレビ本編、特に終盤あたりをよく思い出して下さい。
 んっふっふ、以上、古畑任三郎でした。

事件編その4および幕間ここまで

472:351
07/09/01 18:53:25
>>462->>464

ども。合いの手があると、とてもやりやすいです。感謝。

解決編は1週間くらいで書きあがる予定ですが、
いつごろ投下しましょうかね?
私としては9月末頃に落とそうかと考えていますが、
ご希望があればなるべく沿うようにします。ご意見くださいませ。

473:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/09/01 19:54:58
乙。やっぱりシンジが重要な役割を果たすんですね…うわぁ解決編が楽しみやわぁ。
で、投下時期ですけど、個人的には出来次第読みたいです。結末が気になって夜も寝られそうにありませんので。(もちろん、書くスピードは作者様がやりやすいように、ですけど。)
皆さんはどうお考えですか?

474:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/09/01 22:33:53
解決編+(0゚・∀・) + ワクワクテカテカ +

475:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/09/02 13:56:37
1ヶ月もじらされるのは勘弁してくださいですぅ><
早めに投下してくれるとうれしいな

476:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/09/02 16:16:26
中には早くしてくれとの声もありますが
執筆を早くして作品の質を落とすより
作者さんのペースでじっくり書いていただけた方がうれしいです

477:351 ◆c9OwFy0cL.
07/09/02 18:16:44
みなさん、ご意見ありがとうございます。

解決編投下は9/8の23:00からにします。
このレスと同じトリップをつけるので、
まだ見たくない方はあぼーんして下さいね。

478:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/09/02 23:41:12
油断してると落ちそうだな

479:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/09/03 20:34:57
今泉君、ちゃんと保守しなさいよ↓

480:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/09/04 17:38:59
映画関連スレが次々出来てるけど
1000いくのも早い分・・・どうなんだろね

481:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/09/04 20:36:29
良スレあげ

482:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/09/04 21:09:08
>>481お前にサドの名は不要だ
Sはいただくっ

483:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/09/05 01:41:49
うーむ、「問題」の答えはなんとなくわかったような気がするが、
それをどう利用したのか全く予想できないw
職人さん尊敬します。

484:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/09/05 19:17:39
ホッシュ

485:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/09/07 12:48:33
いよいよ明日♪

486:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/09/07 21:00:17
明日か~

出張で見れないよorz

487:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/09/08 07:00:06
+(0゚・∀・) + ワクワクテカテカ +

488:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/09/08 10:24:45
ふー、一気に読んだ。職人さん、お疲れさまです。

ターミナルドグマのくだりは、なんか世界観に違和感あるの俺だけ?なんかそこだけ引っかかった。
リツコの描写はうまいなぁ。映像まで浮かんでくるし、情景描写もイイ。

でもやっぱり、俺の考えてる推理は間違ってるのかも。
わかったと思ったけど、俺の中の答えがエヴァの世界と相容れない気がする。

489:351
07/09/08 22:56:30
おまたせしました。
解決編、10レス投下します

490:解決編-再びレイの部屋 ◆c9OwFy0cL.
07/09/08 22:58:34
>>471

「―もう一つだけ確認したいことがあります」
 レイが玄関のドアを開けると、そこに古畑がいた。
 レイの部屋でのことである。待機命令がいまだ解除されないレイがアルバムとノートに
目を通していると、ドアを控えめにノックする音が聞こえてきたのだ。その聞き覚えがあ
るノックに、レイは古畑が訪ねてきたことを悟った。

「どうぞ」
「失礼します」
 レイは古畑を迎え入れる。古畑の目的は明瞭だ。新たな証拠を手に入れ、それを突きつ
けてくるだろう。そして、古畑はきっと多くの疑問をぶつけてくるのだ。気を引き締めて
対応しなければならない。レイは古畑に背を向けたとき、ふぅっと息を吐く。

 レイが折りたたみテーブルを出すと、古畑が床に腰を下ろす。座るや否や、古畑は懐か
ら携帯電話を取り出し、レイの目の前に突き出し、にんまりを笑った。
「確認したいものはこれです」
「携帯電話?」
「いえ、これは私のものです。問題はこの中に録音してきたものなんです」
 古畑が携帯電話を操作する。
「よーっく、聞いていてください」

『―レイ、私だ。もうすぐ君の誕生日だな。ささやかなものだが、プレゼントと料理を
用意する。当日は私の部屋に来なさい。誕生日とは祝うものなのだ』

 ふたたび古畑が携帯電話を操作して、再生を止める。
 再生されたのは、男の声。野太い、大人の声だった。

491:解決編-お祝い ◆c9OwFy0cL.
07/09/08 22:59:59
 レイは再生された声が述べた一言一句を頭の中でリピートする。
(―声の主は綾波レイを『君』と呼ぶ)
(綾波レイの誕生日を知っている)
(そして『来い』としか言わなくても、綾波レイは「彼」の部屋に行ける。つまり、彼の
部屋を訪ねたことがある)

「これが何?」
「実はこれ、事件の2日前に碇司令の部屋から、この部屋に掛けられた電話の録音なんで
す。諜報部の方に提供して頂きました。単刀直入に言えば『盗聴』ですね」
「それで?」
「あなた、本当にこの電話を受けましたか?」
 レイは古畑の意図を理解した。古畑はレイの動揺を誘っているのだ。前に失敗した方法
と同じである。もし、この電話に対する綾波レイの応答が残っていたとしても、「行く」
という約束をしただけであって、「行った」証拠にはならない。
「ええ、司令から掛かってきた電話よ」
「それは確かな事ですか? はっきりと言い切れますか?」
 古畑が念を押してくる。しつこい。レイはそう思った。
「ええ」
「では、これはいかがですか―」
 古畑がまた携帯電話を操作する

『―レイ、私だ。もうすぐ君の誕生日だな。ささやかなものだが、プレゼントと料理を
用意する。当日は私の部屋に来なさい。誕生日とは祝うものなのだ』

 その再生音を聞いたとき、レイは縮み上がった。
 急に寒気が襲ってきて、不覚にも反射的に俯いてしまう。気を張って顔を起こし、再び
古畑と向き合うも、膝が震えて止まらない。
 今、再生された音は中年の男性の声で、1回目の再生と全く同じ言葉を綴った。だが、
違う点がひとつあった。……声の主は明らかに別人だったのだ。

492:解決編-たくさんのお祝い ◆c9OwFy0cL.
07/09/08 23:01:12
「えー、実はまだ続きがあります」
 再び録音を再生する古畑。10秒ほど無音が続いた後、また別の声が聞こえてきた。

『―レイ、私だ。もうすぐ君の誕生日だな。ささやかなものだが、プレゼントと料理を
用意する。当日は私の部屋に来なさい。誕生日とは祝うものなのだ』

 レイの動揺は明らかだ。古畑はそれを見て得意げに続ける。
「もう一つあります。これが最後です」

『―レイ、私だ。もうすぐ君の誕生日だな……』

 古畑が携帯電話を懐に収める。無論、最後も別人の声である。
「えー、私がお訊きしたかったのはこれなんです。碇司令の声はどれでしょうか?」
 レイにはその答えが分からなかった。どの声も中年男性の声であることに間違いない。
しかし、レイはそのどれが碇ゲンドウの声がまったく判別つかなかった。なぜなら―

「ちなみに、最初の声、あなたが碇司令との通話だと言ったあの声は、冬月副司令の声で
す。私がついさっき副司令にお頼みして録音しました」
 レイに反論は、無い。
「あなた、知らないんです。碇司令の声を。それどころか、あなたは司令とは面識があり
ません。つまり、あなたは……」

 古畑の人差し指が、レイに向けられる。

「『綾波レイ』さんではありませんね」

493:解決編-密室の真相 ◆c9OwFy0cL.
07/09/08 23:02:19
 古畑の指摘は正鵠を射ていた。全部見抜かれた、レイはそう思った。一番隠したかった
ことだった。いつのまにかレイの額には汗が浮かんでいた。そのうちの一つが額から落ち
てレイの眉間を伝う。
「だ、だとしたら、何?」
 レイは自分が発した声に驚いた。その声はもはや無感情なものでは無かったのだ。意図
しただけの音量は無く、語尾は震えていた。

「私は碇司令を殺したのは綾波レイだと考えていました。これは間違いないでしょう。間
違いだったのは、あなたを綾波レイだと思っていたということです。この間違いに気付い
たとき、同時に、密室の謎も解けました」
 レイの動揺が顔に出たのか、古畑が饒舌になる。
「私は、こう考えていました。つまり、碇司令を殺した綾波レイさんは、部屋の出入り口
に全て施錠した上で、なんらかの方法を使ってその部屋から脱出した、と」
 古畑の声が、コンクリートに囲まれた狭い部屋の中を支配する。
「でも、事実はまったく違うものでした。綾波レイさんは、脱出したのではなく、あの部
屋の中に隠れていたんです。我々も部屋の中を探しましたが、その時は見つかりませんで
した。見つからないはずです。彼女は意外な場所に隠れていたんです」
 レイは膝の上に置いた拳を、さらに握り締める。

「彼女は、ダストシューターの中に、『隠れた』のです」

 レイに言葉を紡ぐ時間を与えず、古畑が続ける。
「言い方を変えれば、『落ちた』のです。ダストシューターの中に。22階の高さから落
ちたので、え~、間違いなく命は助からなかったでしょう。そして、綾波レイさんは最初
から助かるつもりは無かった。それが彼女が立てた計画なのですから」

494:解決編-トランクの中に1 ◆c9OwFy0cL.
07/09/08 23:03:43
 蝉が鳴いている。時計は「PM 01:12」を示している。天空から降り注ぐ日差し
は、今日も相変わらず強い。
「しかし、事件はここでは終わりませんでした。ダストシューターから落ちて亡くなった
彼女を迎えに来た人物がいます。その人物は焼却施設から焼却炉の蓋を開け、死体となっ
た綾波レイさんを回収しました。そして、持って来た大きな黒いトランクに死体を詰めて、
運び去ってしまったのです」

 古畑が間を置く。
 彼は少し大きく息を吸い込む。吸い込んだところで、また間を取る。2秒程度。そして、
吸い込んだそれを一気に吐き出す。
「綾波レイさんの死体。これを運び去った人物……それが、あなたです」

 古畑の指摘は紛れも無い事実であった。
 レイはそれでもその言葉を言わざるを得なかった。もう、言い逃れできるとは思えない。
しかし、レイの乾いた唇は、なかば無意識のうちにその言葉を吐き出していた。
「……その証拠は?」

 古畑がレイを指差す。右手の人差し指だ。
 レイは自分の鼻先を差すその指先を思わず見つめてしまう。
 指がゆっくりとレイの右に移動する。レイの視線もその動きに釣られて、古畑が指し示
す先にあるものに移動する。
 ベットの上に投げ出されたアルバム。ひきだしの上の薬剤、コンクリートの壁。
 古畑は部屋の中のあらゆる物を指し示す。やがて、身を捩って、部屋の隅を指すと、そ
こで動きが止まる。古畑が指した先、そこには、どっしりと腰を据える黒いトランクがあ
る。
「開けてもよろしいですね?」

495:解決編-トランクの中に2 ◆c9OwFy0cL.
07/09/08 23:05:07
 古畑は返事を待たなかった。トランクを引き寄せ、横倒しにすると、トランクの蓋を起
こした。

 そこには『ミイラ』が眠っていた。ピラミッドで発掘されるようなミイラが、トランク
の中で膝を抱えて蹲っているのだ。ただし、そのミイラは包帯ではなく、食品用のラップ
に身を包んでいた。

 古畑は顔の部分のラップを剥がしていく。レイはただその作業を見守る。

 ラップの下から現れたのは、『綾波レイ』の顔だった。
 真っ白であっただろう肌は土気色で、乾いた傷跡と、そこから流れたであろう赤黒い血
の跡が、彼女の顔の半分を隠している。瞳は閉じられていた。だが、眠り姫というには少
々、生臭さすぎる光景だった。
「これが、証拠です」

「もう、おしまいね」
 レイは瞳を閉じて呟いた。そのまま二人は沈黙する。コンクリートの部屋の中で、重苦
しい時間が過ぎていった。それは、ほんの1分に満たない時間だったかもしれない。しか
し、沈黙を共有していた二人にとってその時間経過はもっと長く、重いものだった。
 長い沈黙を破ったのは古畑だった。
「一つ教えてください。あなたが綾波レイさんでないのなら、あなたは誰でしょうか?」

496:解決編-あなたは誰 ◆c9OwFy0cL.
07/09/08 23:06:28
 レイが瞼を開ける。
「あなたは、私を誰だと思うの? あなたの意見、聞きたいわ」
 問い返すレイに古畑が苦笑する。
「えー、実は、そこのところはまだよく分かっていないのです」
「いいから、言ってみて。あなたの推理が合ってるかどうか、楽しみだから」

「んっふっふ、なんとも、突飛な説なので、笑わないで下さいね―」
 逡巡したものの、古畑は楽しそうに自分の考えを述べ始める。
「実は、あなたは綾波レイさんの双子の姉妹なんです」
「あなたは何らかの事情で、ターミナルドグマに閉じ込められて育った。一方、綾波レイ
さんはここでエヴァのパイロットとして育っていた。しかし、綾波レイさんは碇司令に憎
悪を抱くようになる。やがて、自分の命を投げ打ってでも殺したいとまで考えるようにな
り、司令を殺害する計画を立てます」
「それと同時に、双子の姉妹であるあなたを助け出すこと計画に盛り込む。つまり、それ
が、今回の事件です。碇司令を殺害し、その犯人である綾波レイさんが自殺し、あなたが
綾波レイになりすます、という」
「ドグマの枕泥棒、赤いレインコートを着ていたのは、他でもない、綾波レイさんです。
そして、あのときベットに寝ていたのが、あなたです。綾波レイさんはこのようにあなた
を助け出しました」
「綾波レイさんが、あなたのために用意していたのが、あのアルバムです。他にも何か用
意していた可能性はあります。綾波レイさんはあなたが覚え易いように、写真を図鑑のよ
うに並べて、アルバムにしまっておいたのですね。しかし、アルバムで顔は分かっても、
声は分からなかった。あなた、碇司令だけではなく、綾波レイさんのお知り合い全員の声、
知らないのでしょう。だから、シンジ君からの電話を受けたとき、声が分からず、名前を
聞き返した。いかかでしょうか?」
 古畑がまくし立てた推理を、レイはゆっくりと噛みほぐす。
 小さな雲が一瞬太陽を遮り、部屋の中に影が差した。

497:解決編-減点理由 ◆c9OwFy0cL.
07/09/08 23:08:11
「……すごいのね。合格」
「ありがとうございます」
「でも、80点ね」
「うーん、よろしければ減点の訳を」
「『双子の姉妹』というのは間違い」
 古畑が考え込む。推測ではあったが、他に辻褄が合う仮説が思いつかなかったのだ。双
子の姉妹説を否定されると、辛いところだ。
「考えても、きっとわからないわ」
 レイはそう言いながら、『ノート』に書いてあった真相を頭の中で反芻した。

 『2人目のレイ』が、彼女のクローンの中の1体である自分を助け出したのは、2週間
前のことらしい。赤木リツコがその他のクローンを破壊して独房に入ったのが1週間前で
ある。この時点でクローンは『2人目のレイ』が助け出した1体だけである。

 この状態で『2人目のレイ』が死んだら、魂はクローンに宿り、クローンは『3人目の
レイ』となる。クローンが複数いれば、どのクローンに魂が宿るのかは予測できないが、
他のクローンは赤木リツコに破壊された。魂が宿るのは、助け出されたクローンである。

 魂が移動する際、記憶の欠損が起こるらしい。『2人目のレイ』はそれに備えて、ノー
トやアルバムで記憶の継承を試みた。ただ、古畑の指摘どおり、声の記憶を継承できるよ
うなものは何一つ残さなかったのは、失敗だった。

「あなたとはじめて会ったとき、あなた、私に言ったわ。お誕生日おめでとう、って。あ
のときは本当に驚いた。だって、私は昨日生まれたばかりだもの。なんでこの人がその事
を知ってるのかな、ってね」
 緊張から解放されたレイの顔から笑みがこぼれる。真紅の瞳は、涙で潤んでいた。

498:解決編-刑罰 ◆c9OwFy0cL.
07/09/08 23:09:46
 古畑が携帯電話を切る。
 漏れて聞こえてくる会話を聞く限り、部下に2人目のレイの死体を運び出すための指示
をしていたようだった。

「えー、署の方で詳しいお話を伺いたいのですが」
「どうなるの、私。逮捕、されるの?」
「碇司令を殺した犯人、綾波レイさんは、既に死亡しています。殺人事件は被疑者死亡の
まま書類送検ということになるでしょう。あなたに伺うお話は、死体遺棄の件について、
ということになります」
「……そう」
 レイは立ち上がり、古畑に促されるまま、玄関を出た。

 レイは前のレイ、つまり2人目のレイが立てた殺人計画を振り返える。計画の目標はお
おむね達成されたと言っていい。

 最大の目標は、警察が密室を解けずに、ゲンドウの部屋のマスターキーを持っている管
理人を誤認逮捕することだった。しかし、その目標は達成できなかった。疑惑が管理人に
向くことすら無かった。

 だが、もう一つの目標は達成できた。殺人罪を被らないことだ。おそらく警察は『魂の
移動』など信じないだろう。2人目のレイと3人目のレイは別人格として扱われるはずだ。
2人目のレイは殺人罪を背負ったまま、消えた。3人目のレイは死体遺棄罪に問われるだ
ろうが、殺人罪に比べれば微罪であり、刑も軽い。完全犯罪とも言えるだろう。

 3人目のレイは考える。前のレイの思いは遂げられたのだ。ただ、今となっては、前の
レイがなぜ碇ゲンドウを殺害したかったのか、動機が不明であった。でも、それはどうで
もいいことで、蛇足なのだ。今のレイは、2人目の想いなど、もう覚ええていなかったか
ら。

499:解決編-昨日のこと ◆c9OwFy0cL.
07/09/08 23:13:30
 時は事件当日の夜に遡る―

 少女は裸のままベットの上に横たえられていた。
 一糸纏わぬ少女の肢体、その肌を蒼白く見せている月の明かり。レースカーテンの影が
まだら模様となって、ベットと少女に張り付いている。

 レイは少女の胸の上に一冊の大学ノートを置いた。そして、少女の両手をノートの上で
組ませる。
 ノートには色々なことを書いた。今まで起こった事、出合った人、その人の名前、呼び
方。もちろん一冊では収まらない。続きのノートが10冊以上ひきだしの中に眠っている。
顔は、やはりひきだしの中にあるアルバムの写真を見ればわかるだろう。
 しかしノートを開いた少女が一番初めに目にするのは、これから自分がやろうとしてい
る殺人計画のことだ。その計画の全てと、目覚めた彼女がどう行動すれば良いのかも書い
てある。

 室内の照明はただ月明かりのみ。
 レイと少女の四方を囲むコンクリートの壁には、ポスターやコルクボードの類は一切存
在しない。目立った家具も無く、その灰色の空間からは、住んでいる者の生活の匂いがま
ったく感じられなかった。でも、事実、レイはこの部屋で何年もの歳月を重ねてきたのだ。
 唯一、ベットの脇に5段のひきだしが置いてある。高さ1メートル程度でプラスチック
製のものだ。ひきだしの上には飲みかけの錠剤の包装や、水が入ったビーカーなどが散乱
している。レイは包装を破り、錠剤を3錠、口に含んだ。そしてビーカーの水でそれを流
し込む。

 レイはベットを一瞥する。少女の瞼は閉ざされたまま、開く気配は無い。
(さようなら。そして、また会いましょう。3人目の私―)
 レイは玄関のドアを押し開け、自身の棺となる黒いトランクを押して、外へ踏み出す。
頬を撫でる生温い夜風。夜道を行くレイの背中に、星の無い都会の夜空が覆いかぶさる。
夜空に漂う妖艶な蒼い月が、彼女の儚い存在を、いつまでも見守っていた。

解決編ここまで  古畑任三郎 VS 綾波レイ fin

500:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/09/08 23:19:14
やっぱりほぼ予想通りのトリックだったか。
ただ自分は二人目レイがミイラなんかじゃなく完全に焼けてて
三人目レイに食べさせたという展開を期待していたのでチト残念。

501:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/09/08 23:21:17
(・∀・)イイ!!

kdちょっと悲しいエンディング・゚・(ノД`)・゚・

502:351
07/09/08 23:34:09
>>500
うわぁ~ えぐい~ 。・゚・(ノД`)・゚・。

>>501
きっと、さんまが無罪にしてくれます

レイ編これにて終了です。
読んで頂いたみなさん、本当にありがとうございました。

503:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/09/09 00:02:05
そのころ現場で...

今泉:ちくしょう、わからないなぁ。
   どうやって抜け出したんだよ、綾波レイは。
向島:今泉さん、もうあきらめましょうよ。ここまでやったら古畑さんもわかってくれますよ。
今泉:いや、君はまだあいつのことをわかってないよ、向島君。
   ぜったい僕のことバカにするんだ。そうに決まってる。
   あ~もう、どうしよう。何かいい方法はないあかなぁ、向島君。
向島:それは、怒られずに済む方法ってことですか。
今泉:あたりまえだろ。
向島:それより、あいつだなんていったら、それこそ怒られますよ。
今泉:君が言わなきゃいいだろ。
西園寺:いま連絡が入って、古畑さんが解決したそうですよ。重要参考人も署に同行だそうです。
今泉:面倒なことは僕に押し付けて、また自分ばっかりおいしいとこもっていきやがって。
西園寺:今泉さんが解決したわけじゃないんだから、持っていかれたことにならないのでは?
今泉:(うるさいな!チビは黙ってろよぉ)

504:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/09/09 08:18:42
作者乙。本筋のトリックは予想がついたけど、それを古畑が「声」で追い詰めるのは、古畑らしくてうまいと思った。綾波レイもいい感じに古畑任三郎にでてくる犯人って感じではまってた。最高にGJな作品をありがとう!次回作も期待してるぜ!

505:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/09/09 17:19:10
うおおおお1日遅れたが読みふけってしまった
GJ!
だが結局動機はなんだったんだろう(・・?)

506:351
07/09/09 19:58:36
>>503
 後味スッキリなエンディング(・∀・)イイ!

>>504
 ありがとう。
 計画殺人が続いたので、次は衝動殺人をやってみたいです。
 いつになるかわからないけど。

>>505
 どもです。
 犯人ああなってしまった以上、動機は闇の中・・・

507:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/09/09 20:57:06
otukare
次はシンジ編かな

508:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/09/11 21:57:25
シンジが犯人だとすぐに捕まりそうな罠

509:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/09/11 23:46:48
次の犯人は庵野。
現実の復讐をアニメの中で果たす。
古畑はアバンタイトルとか真相究明前の暗点で視聴者に語りかけてくるタイプだから
こういうメタフィクション的展開もうまくいきそう。

510:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/09/17 13:52:28
西園寺くんが華麗に保守

511:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/09/20 21:40:19
ほしゅ

512:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/09/22 19:02:12 5oIfMM8v
同じくシンジ希望。ラスト直前の壊れ気味のシンジが、「みんな死んじゃえ!」を実行にうつすようなやつキボンヌ。

513:キングなり
07/09/22 19:50:55
山井ちゃ~ん、CHU…パン買ってきて…

514:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/09/22 21:45:51
いや、シンジは衝動的に殺ったあとに淡々と証拠いん滅しそうな。

515:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/09/23 17:23:56
ネルフ全滅→シンジだけ生き残る→犯人は?→やっぱりシンジ

516:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/09/24 23:49:15 7blSOC0h
冷静に証拠隠滅していくシンジ、か…ありだな。
静かな狂気って感じで。はじめは衝動的に相手を殺してしまったけど、その過程で狂気に目覚めるみたいな感じか?

517:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/09/25 00:01:31
シンちゃんは普通に頭良さそうだし。今泉さんに「あんな気の弱い子に殺しができますかね~」とか言われるのも良い。
トリックを古畑に暴かれ「仕方ないじゃないですか。こうするしかなかったんですよ」と淡々と言い放つも、「でも、本当は殺したくなかったんですよ、」と一筋の涙を流すシンちゃん。

518:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/09/25 03:25:27
古畑「ンフゥ~あなたハァ…殺しファ~のハァ…犯人…フォ~♪」

全員「『早く喋ろよ!!!』」

519:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/09/25 12:39:51
喋ろって

520:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/09/29 20:27:52
保守すれば良いと思うよ?

521:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/08 12:36:52
普通におもしろい
一気に読んでしまいました。作者様GJ
でも黒トランクは必要なかったんじゃないかな。二人目はダストに落ちて焼却炉で焼かれちゃえばゴミと一緒に炭化しちゃうので二人目の遺体は見つからない上、見つかっても犯人は自殺したことになり完全犯罪になりそう。
もしかしたら、二人目もさすがにゴミと一緒に処分される死後は嫌だったのかも?

522:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/08 12:39:40
なんか難癖つけてるようでしたらすみません
殺害のためにかなり準備周到な二人目だったので気になってしまい

523:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/08 14:35:37
焼却炉程度の炎で遺体が炭化して原型が分からなくなるとは考えにくい。
せいぜい表面が焼け焦げて身元不明になるくらいだ。それもDNA鑑定ですぐにばれる。

それに、焼却炉に勝手に火を付ける訳にはいかない。どう考えてもそっちの方が怪しまれる。
加えてゴミの焼却時は、点火から終了まで係の人が見ている可能性が高い。

以上から、その場で燃やすという選択肢は考えられない。
遺体を持ち帰るしかあり得ないのだ。

524:351っす
07/10/14 19:31:29
>>521
読んでくれてありがとう。そして亀レスごめんなさい。

>>523が書いてくれたことが物理的な理由の全てです。
(たとえ火葬場くらいの火力と時間で焼却しても、
少なくとも骨と、身に着けていた金属は残りますよね?)

ひとつ付け加えるなら、二人目の死体は三人目にとって
殺人罪から逃れるための保険という意味もある、ということです。

殺人を犯したのはあくまで二人目なので、
その死体が出てきたら、警察は三人目への容疑を取り下げざるを得ないでしょう。
だから三人目は二人目の死体を手元に残していた、というのが作意です。

という回答でいかかでしょう?

525:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/18 14:29:20
はじめてきた。351さんすばらしいです
古畑の魅力はトリックより丁々発止の対決するとこだと再認識
2人目のレイの動機は想像通りだとすると哀しいな~

526:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/18 14:31:54


527:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/02 05:32:57
エヴァ板良スレ保守党


528:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/15 04:59:34
age

529:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/15 07:41:44
青葉
古畑のSP、古畑vsスマップのキムタク=青葉
刑事に歯向かうイヤンな男。それが青葉シリカゲル

530:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/15 21:03:15
なかなか名前を覚えてもらえない巡査っていたよね
青葉はそれの役で

531:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/15 22:46:04
えぇ~と、

向島です!

あ、そうそう、向島君。

532:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/02 22:36:31
ほす


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