07/05/09 19:33:17
「そんなに逃げたいですか?」
悪魔の囁きだった。
「だったら、ひとつゲームをしませんか?」
逃げ出すのに失敗し、廊下で力無く泣き崩れていた月の耳に囁かれた、それは悪魔の言葉。
「ゲームに勝って月くんが逃げ切れたなら……解放してあげますよ?」
─ゲーム。
竜崎の言うそれが、どんな内容かなんて考える力は既になく。
「…………本当に?」
泣き濡れた顔を上げて月が言えたのは、ただその一言だけ。
「えぇ。本当に」
うっすらと笑って自分を見下ろしてくる男が、なにを企んでいるかなんて、月には考える余裕がなかったのだ。