07/05/09 19:22:45
「もう少し体力を回復して、理由をつけて部屋を出ることを重ねて、この建物の構造をある程度理解してからのほうが、よかったですよ?」
─その通りだ。
言われなくてもわかっている。
でも、我慢できなかった。
月は、竜崎から逃げたくて逃げたくて─我慢できなかったのだ。
「たの、む…………」
身体が勝手に震えた。声も震えていた。
「頼むから……逃がして……」
ようやく整いつつある呼吸の合間に、月は喘ぐように言った。
「逃げたかったんだ……ここから……逃げたいんだ……」
逃げたいんだ、おまえから。
「頼むから、逃げさせてくれよ……!」
─涙が零れた。
こんなことを頼んだところで、竜崎が聞き入れてくれるわけがない。
なのに、頼み込むしかない自分に、月は泣いた。
情けなくて、哀しくて……絶望的過ぎて。
竜崎の手の中にいる限り、月に与えられている自由は、涙を流すことくらいしかない。
そのことを、月がハッキリと再認識させられた瞬間だった。
EMD