07/06/27 01:57:54 LgbfT4HA0
追加してちょっと書こう。
江川がよく使うテーマに、「個人の自立」 というものがあるよね。
これは 『BE FREE!』 の頃から一貫している、江川メッセージの一つだろうと思う。
まぁ正直、今時そんな 「古くさい」 事言ってんのか、という印象は拭えないけれど、作品のテーマとして
それを使うこと自体は悪いことではないでしょう。
で、作品の中でのメッセージをきちんと意図的に織り込んで描こう、とするなら、まずテーゼ (この場合、
「個人の自立」) が描かれて、それに対してのアンチテーゼが現されて、それらの対立の結果、どうあるべ
きだと主張したいのか、という、作家としての回答を示す、というのが、基本だと思うわけだ。
で、まずそのテーゼとアンチテーゼの対立、の部分が、江川は弱い。
江川は、自分が掲げる 「正しさ」 を強調しようとするあまり、反対側のアンチテーゼをとにかく陳腐化する
という手法をとる。
「見るからに」 俗悪で低俗な言動をさせたり、、醜悪な姿形に描いたりというやり方をする。
このやり方は、江川がバカにして見下している、「勧善懲悪で自己満足と快楽に浸る俗悪な娯楽作品」 の
やり方なんだよ。
悪役は徹底して悪人で、正義の味方は美形で善良で誰からも好かれる完璧超人。だから悪党をバサバサ
斬り殺すのがカッコイイという図式。
だから、江川の作品はドラマが弱い。
ドラマ性というのは、矛盾と軋轢によって深みが増す。
つまりは、正しいという事をしたい。けれどもそれを簡単には行えない。自分の信念に従いたいが、相手にも
理がある…という様な事の積み重ねによって、いわゆる 「深みのある重層的なドラマ」 というのが作られる。
この図式は同時に、誰でも身近に感じていて、抱えている矛盾でもある。
だから、共感も呼びやすいし心を打つのだけれど、同時にそういう現実の軋轢を忘れて娯楽だけを楽しみた
い人にとっては、出来れば忌避したいことであったりもする。