07/11/01 04:22:01 T7n7kM+N
続>>617
放課後、今日もハルヒは部室に寄らずに帰るつもりらしいので、
俺も一緒に帰ることにした。なんとかしてハルヒの考えを改めさせないと、
男女の理が危ない、しかしどうするべきか。
「なぁ、ハルヒ」と並んで歩くハルヒに声を掛けた。
「お前、親に自分が生まれたときのこと聞いたことあるか?」
「あるわ。親父はあたしが生まれるとき、分娩室まで付き添ったけど、
途中で気を失っちゃたらしいわ。情けない話よね‥‥。
それがどうかしたの?」
「そうか‥‥。俺の親父は俺が生まれるとき、仕事を早く切り上げさせて
もらって、病院に駆け込んで分娩室の前で待ったそうだ。
分娩室からお袋の悲鳴が聞こえて、1秒が数時間にも思えるほどだったそうだ。
一番大事な人が、大事な自分たちの子供を産むために
必死になっているのに、自分の無力感に苛まれたそうだ。
妹が生まれるときは俺も病院に行ったんだけど、お袋がお袋のものとは
思えないような声で絶叫を繰り返すのが聞こえてな、死んじゃうんじゃないかと
本気で心配したぜ」
その話をどう思っているのかわからないが、ハルヒは大人しく聞いていた。
「母親ってのは偉大だと思うぜ。新しい生命を生み出すっていう神聖な営みの前に、
男ってのはこの上なく無力で矮小なんだと思う。それに苦しい反面、子供を
産んだときの喜びや幸せも男親には得られないもんなんじゃないかな」
ハルヒは不気味なぐらい静かに聞き続けている、というかちゃんと聞いているのだろうか?
「だからさ、そんななにかの罰ゲームみたいに言うなよ。男にはない特権を与えられている
と思えばいいじゃないか」
言い終えた後もしばらく無反応で、本当に聞いてないじゃないかと思ったが、
「あんた、そんなことを言うためにわざわざあたしに付き添ったわけ?
女のこの苦しみも知らないでよく言うわ、男の理屈よそんなの」
無駄な説得だったか‥‥、やれやれ次はどしたものか。
「それよりあんた、どうせこの後ヒマでしょ? カラオケ行かない?」
おまえ、身体の調子は大丈夫なのか?
「歌を歌うぐらい平気よ、っていうか大声で思いっきり歌ってうさ晴らししたい気分なの!
といってもあたしカラオケって行ったことないのよね~、何を歌おうかしら‥‥」
そういうとハルヒは俺がこの後ヒマかどうかも聞かずにカラオケボックスに引っ張り込んだ。