07/10/12 01:30:31 n59enR/P
つかさは右左右とカウントした。必ず、かの邪智暴虐のハードルを飛ばなければならぬと決意した。
つかさは運動ができぬ。つかさは、神社の四女である。
笛を吹き、姉と遊んで暮して来た。けれどもアドリブに対しては、人一倍に敏感であった。
あじゃ、ぱー、走路を走り切り、ハードルを三本も薙ぎ倒し韋駄天、
ここまで突破して来たつかさよ。真の萌えキャラ、つかさよ。
今、ここで、疲れ切って動けなくなるとは情無い。愛する友は、
おまえを信じたばかりに、やがてアンカーで1位になければならぬ。
おまえは、稀代の不信の人間、まさしくおふとんの思う壺だぞ、
と自分を叱ってみるのだが、全身萎えて、もはや芋虫ほどにも前進かなわぬ。
身体疲労すれば、精神も共にやられる。
もう、立てましぇんという、萌えキャラに不似合いな不貞腐れた根性が、心の隅に巣喰った。
私は、これほど努力したのだ。約束を破る心は、みじんも無かった。
神も照覧、私は精一ぱいに努めて来たのだ。動けなくなるまで走って来たのだ。
私は不信の徒では無い。
ああ、できる事なら私の胸を截ち割って、真紅の心臓をお目に掛けたい。
たこわさとバルサミコ酢だけで動いているこの心臓を見せてやりたい。
けれども私は、この大事な時に、精も根も尽きたのだ。
私は、よくよく不幸な女だ。私は、きっと笑われる。
私の一家も笑われる。私は友を欺いた。
中途で倒れるのは、はじめから何もしないのと同じ事だ。
ああ、もう、どうでもいい。
これが、私の定った運命なのかも知れない。