07/09/08 01:06:01 Dpk5CR3d
「注目を集めるにはやっぱりバニーかしら」
唐突なハルヒのその一言に悪寒が走る。一歩遅れてビクッとする朝比奈さん。
嫌な思い出が仕方ないだろう。でもそのワンテンポ遅れてるのも可愛らしいですよ朝比奈さん。
「世間の鈍感な耳目を覚醒させるには萌えとかエロが必要なのよ」
いつの間にか団長は総統になっていたらしく演説が始まっていた。
正直そんなもんに耳を傾けたくはないのだが放っておけば朝比奈さんに魔の手が伸びるのは確定している。
朝比奈さんの平穏なる生活の為ここは俺が口を挟むべきだろう。
「ハルヒ、ちょっといいか」
「だいたい今の…って何よ。神聖なるSOS団の団長が話を聞かせてあげてるんだからちゃんと聞きなさいよ」
「いやいや大筋は聞いてたさ。つまり注目を集める為に朝比奈さんにバニーやらおかしな服を着せるって言うんだろ?」
「何聞いてたのよ!それはただの手段!目的はもっと崇高なの!」
崇高だろうが下劣だろうが手段がそれなら俺や朝比奈さんにとっては同じことだっての。
「ご高説痛み入るが別にそれは朝比奈さんにやらせなくてもいいだろ」
ハルヒはきょとんとした様子で「じゃあ有希?男はみんな巨乳好きだと思ったけど違うの?」なんて言いやがった。
長門の肩が動いた。もしかして気にしているのだろうか。
「あ!さては狭く深く狙う気ね?マイノリティなオタクのほうが熱意ありそうだもんね。やるわねキョン」
長門の肩が震えている…ような気がする。長門、俺が言ったんじゃないからな。
「違う。お前が行けって言ってるんだ」
「え?あたしも行くけど二人のほうが目立つでしょ?」
「そりゃそうだがお前くらいなら一人でも十分目立つよ」
「そうかしら」と呟き自分の体をぺたぺた触るハルヒ。
なんとなく見ていられずにハルヒから視線を逸らしつつ続ける。
「スタイルだってちゃんとは見てないが悪くないし、顔だって、その、まあ平均以上だろうし」
「なによ、それじゃ平均よりちょっと上ってだけじゃない。それじゃ注目なんて集められないわ」
わざわざ俺の正面に回って言うハルヒ。あまつさえ自分の胸元を覗き込んでる。というかこの位置だと俺も見える。
「だから平均よりだいぶ上だってんだ。少しだけ見えたり押し付けられたこともあるし」
ハルヒがはしたない格好をやめさせる為に一気にまくし立てる。
「顔だって黙ってりゃ10人が10人が振り向くよ。それだけお前は美人だよ。だからお前だけで十分だろ」
なぜだかハルヒが黙っている。むしろ怖いな。
「あんた、あたしのこと美人って思ってたんだ」
「…悪いか」
口が滑ったのは認めるがおかしなことは言っていないはずだ。
谷口だって古泉だって認めてる。いまさら俺が何をいったところで変わりないはずだ。
「…しょうがないわね。聞いてあげるわ。団長の寛大な心に感謝しなさい」
そう言ってハルヒは「でてけ」と俺と古泉を追い出した。まったく何するつもりなんだか。
「さてなんでしょう。ところで一つよろしいですか?」
よろしくない。黙ってろ。
「いえ、これは大切な話ですよ」
「わかったからさっさと話せ。もったいぶるな」
「涼宮さんがこれから何をするのかわかりませんがどうもバニースーツを着て何かなさるようですね」
「みたいだな。またビラくばりか?」
「この際目的はかまいません。問題なのはあの扇情的な服装で一人でどこかに行ってしまうということです」
「…何が言いたい」
「あなたのおっしゃるところの美人の涼宮さんをお一人にしてよいのかな、と思いまして」
「そんなこと起こるはずもないし、何かあっても自業自得だろ」
「そのとおりですね。…おや、どうやら着替えが終わったようですね」
ドアを開けて見えたのは久々のバニー姿。
…まあたしかにこの格好を見て何も思わない男は少ないだろう。
「じゃあちょっと行ってくるわ」
ハルヒはなぜか乗り気でないように見えた。だからかもしれない、呼び止めてしまったのは。
「なによ」
「やっぱりやめとけ。前も同じことして注意されたろ。同じミスを二度やるなんてお前らしくない」
「…関係ないでしょ、あんたには」
「ある。ただでさえお前の仲間だと思われてるんだ。今やったらまた何か言われる」
「…それだけ?」
「他にもいろいろある。けど、とにかく……行くな」
ハルヒはふっと息を吐き部室へと戻っていった。なぜか機嫌よさそうに。
ハルヒの着替えが終わって部室に戻るとハルヒはいつもどおりだった。
「キョンはわがままよね」とよくわからない発言をするハルヒだった。